先駆けシープ・ハード
#獣人戦線
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●チェイサー
頑強な体に生まれたことは幸いであった。
もしも、自分の体が頑強でなかったのならば、きっと放たれた榴弾の放つ衝撃で骨身は折れ果てていただろうから。
そして、強靭な筋力を持ってなかったのならば、すぐさま迫る爆風の中に己の生命は散っていただろう。
全身の神経を集中させる。
砲火の瞬きが己の視界に星のように明滅している。
「ヒラツ!」
その言葉を耳にして、己の聴覚は、この戦場における必要な情報を最大限に捉えることができていることを知る。
確かに榴弾の炸裂音は恐ろしい。
けれど、背後から迫る軍用バイクのエンジン音は正確に聞き分けられることができた。
戦友の駆るバイクのエンジン音だ。
腕を上げた瞬間、サンタ・ヒラツ(明日に向かう者・f42275)は己の体が凄まじい勢いで引き上げられるのを感じ、そして戦友の匂いを敏感に鼻腔に捉える。
匂いという情報を元に今、己の腕を取っているのが戦友であるという確証を得て、彼女は瞳を一度伏せて、またもう一度見開く。
「先頭車両だ。リーダーはあの車両の中にいる」
「とは言え、護衛の装甲車が2、自動二輪が8か。ゾルダートグラードは思いの外本気らしい」
「やってやれなければ、リーダーは連れて行かれる」
彼女たちはレジスタンスである。
超大国ゾルダートグラードに対抗する、という意味で。そして、その小規模なレジスタンスのリーダーは、先頭行く護送車にとらわれているのだ。
今まさに彼女たちは、リーダーの奪還というリスクの天秤が大いに揺らいでいるシチュエーションに飛び込んでいるのだ。
全身神経のような体が跳ねるようにして戦友のバイクから飛び立つ。
機械化兵士たちの銃撃が飛ぶ中、彼女は構わず強靭な足蹴でもって彼らをバイクから蹴落とし、さらに跳躍する。
生命の危機に己の体躯は燃えるように拍動を加速させていく。
銃撃が頬をかすめる。
組み合った機械化兵士の冷たい体躯を感じる。
それでもなお、彼女は己に流れる血潮が沸き立つのを感じただろう。
「ぐぁっ!」
「邪魔だ。少しの間とは言わない。ずっとそうしてろ」
ヒラツは護送車のコンテナの天井の装甲にライフルの銃身を差し込んでテコの要領で引っ剥がすのだ。
「少しばかりの休暇は楽しめたか、リーダー」
その言葉に己が奪還すべき人物は見上げて笑っていた。
短い休暇だった、と。
「それは幸いだ。明日からも生きるおお仕事が待っている――」
成功
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