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スフェーン・メモリーズ

#UDCアース #ノベル

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黒影・兵庫
下記の内容でノベルの作成をお願いします!アレンジ・改変、OKです!問題ありません!

●シチュエーション
夜、黒影が就寝した後、脳内で教導虫が黒影の記憶の整理を行いながら、自分の過去を回想する

回想に出てくる「黒影・兵庫」の口調などはお任せします!

●教導虫の過去
・元々はUDCアースの絶海の孤島を統治する人型の虫、蜂皇族の外交官
・潮流と気流の関係で近年まで外部との交流がなかったが、UDC組織に島の存在を感知されたため、蜂皇族の女王に、外交官の職を任命された
・外交官に任命された際に、名前がないと不便ということで「スクイリア」と名乗るようになった

・スクイリアは当初、人間を下位の存在とみていた
・我々、蜂皇族が教導し保護しなければならない存在と見下していた
・これは蜂皇族が統治した島にも人間は存在していて、島の人間たちから統治者として崇められてきた歴史があったためだった
・また、蜂皇族は人間より大きくて強靭で、寿命も数倍あるという、生物としても完全上位な存在だったことが、偏見を強くしていた
・そんな考えがあったため、スクイリアはUDC職員を嫌悪していた
・スクイリアは人間が対等な立場で接してくるのが受け入れられなかった
・接見したUDC職員たちもスクイリアから嫌われている雰囲気を感じ取り、距離を置いていた

・しかし、その壁を突き破り頻繁にスクイリアに絡もうとするUDC職員がいた
・名前は「黒影 兵庫」
・黒影は酒と煙草をこよなく愛する豪快な男性だった
・スクイリアは最初、粗野で野蛮な黒影を疎ましく思い、離れるよう仕向けたが黒影は離れず、ずっと絡み続けた
・ついにスクイリアは根負けし、スクイリアは黒影という存在を受け入れるようになった

・やがてスクイリアと黒影は公私ともに深い付き合いをするようになった
・スクイリアはUDC職員の黒影をサポートする傍ら多くの人間たちと接し自分の人間に対する認識を改めるようになった
・黒影がUDC職員を引退し、長年の酒とタバコのせいで病床に臥せってから亡くなるまでスクイリアが介護し続けた
・黒影に家族はいなかった
・黒影が亡くなる直前、スクイリアに何も遺してやれないことを謝ると、スクイリアは、それならば「黒影 兵庫」の名前が欲しいと言い、黒影は承諾した

・それから数十年後、蜂皇族が統治する島の一組の夫婦から赤ん坊が献上され、スクイリアが教育係となった
・蜂皇族が統治する島の人間たちの間では蜂皇族に全てを捧げるのは義務と考えているため、こういった行為も珍しくはなかった
・教育係の最初の仕事として命名することになりスクイリアは赤ん坊に「黒影 兵庫」と名付けた



●回顧の夢
 憐れに思ったのはいつだっただろうか。
 少なくとも上位者たる己たちが人間に抱くのは、そういう感情ではなかった。
 恵まれた体躯。
 長い寿命。
 侮蔑、とまでは行かずとも、己たちと違う存在であり、劣っているという感情は、圧倒的であるがゆえに軋轢すら生み出すことはなかったのだ。

 少なくとも『スクイリア』はそう思っていた。
 絶海の孤島。
 それが己が住まう場所である。
 UDCアースにおいて、この島を統治するのは我らが女王である。
 とは言え、世界はこの島だけではない。
 自分が知らなかったことではあるのだが、どちらにせよ、この世界に満ちる人間というものが矮小な存在であることには変わりない。
「『スクイリア』」
 そう呼びかけられて振り返ると、己はきっと不愉快な表情を浮かべていることを自覚させられる。

「なんだ人間」
「そういう呼び方はあんまり好きじゃあないぜ」
 眼の前の人間をいちいち個体として認識するのは面倒だった。個体としての認識を為すのは、互いに対等たる立場であるからこそだ。
 けれど、目の前の人間は弱者だ。
 自分の手が今、この眼の前にいる、女王から賜った名を気安く呼ぶ男を薙ぎ払えば、生命は潰えるだろう。
 そう確信できる。
 だが、無駄な軋轢を女王は望まないだろう。

 なぜかはわからない。けれど、この男はそんな己の葛藤というものになんら頓着しない様子で、あの煙を出す筒を加えて火を生み出す道具を使う。
「ふぅ~……俺には『黒影・兵庫』って名前があるんだ。『スクイリア』、お前にもあるようにな。だから、どっちかっていうと、そう呼ばれた方が嬉しいんだぜ」
「知ったことではない。提示報告が終わったのならば、島をでろ、人間」
「釣れないことを言うなよ。こっちだって船が来るまで暇で仕方ないんだ。話し相手になってくれたっていいだろう?」
「お前の都合など知らない」
 素気なくあしらうも『黒影・兵庫』は、それから何度も何度も何度も。
 それこそ呆れ果てるくらい自分に絡んできていた。

 他の人間ならば、とっくに諦めているし、最初から関わり合いになろうとさえしないだろう。なのに、この男は構わず己に絡んでくる。
 鬱陶しい。
 こいつの身にしみた煙の臭いも不快であるが、時折感じる奇妙な臭いも嫌いだった。
 それは知らなかったことだが、酒、と呼ばれるもの臭いであることを『スクイリア』は後に知る。
 とにかく、この『黒影・兵庫』という男はとかく、この煙を出す筒……煙草と酒というものをこよなく愛する男であったのだ。
 この男はしつこかった。
 本当に何度も何度も何度も。
 数えるのも億劫になるほどに己につきまとってきた。
 
 何が楽しいんだ。
「いやあ、美人っていうのは見ているだけでも楽しんもんなんだぜ?」
 彼はそう言っていた。
 思い出せる、ということは、きっとその時はくだらない言葉だと思っていても、どこかひっかかるものがあった、ということだろう。
 けれど、己は素気なくあしらうことしかできなかった。
 何度も何度も何度も。
 飽きることはなかったのだろうと、今でなら思える。

「わかった。お前は人間の中でも特に物分りが悪い部類なんだということが」
「諦めが悪いって言ってくれねえかな」
「何をだ」
「いや、お前を諦めてないって意味だ」
 その言葉に『スクイリア』は己が今どのような顔をしているのか、わからなかった。
 混乱だけが心の中にあった。
 でも、その混乱は嫌なことではなかった。己の中をかき乱すような言葉も、仕草も、何もかも、自然と受け入れいている自分がいることに困惑する。

 それが何処か楽しい。
 楽しい?
 そう思ってしまえば、もう『スクイリア』はどうしようもなかった。
 変化という激流はあっという間に彼女の人間に対する認識を改めさせた。確かに人間は遥かに自分たちより弱々しい存在だ。
 絶海の孤島で自分たちは、人間たちから捧げられるものを受け取るだけだった。
 けれど、外の世界ではこんなにも多くのことを積み上げてきたのが人間たちなのだと知ることができた。
「感謝はしている」
「何をだよ。そんな改まって」
 紫煙くゆらせる『黒影・兵庫』の顔を近くで見る。目と目を合わせれば、きっと伝わると思ったのだが、どうやら人間というのは、言葉にしても伝わらない事柄を有しているのだとため息混じりに理解してしまう。

「『黒影・兵庫』、お前がいてくれたことにだ」
「大げさなこといじゃねーか。でもま、そう言われて悪い気がしないってんだから」
 困ったことだ、と互いに笑う。
 だが、それは己にとって泡沫のような時間でしかなかったのだ。
 僅かな時間。
 己と『黒影・兵庫』の間に流れる時間は違う。異なっている。
 それに。

「……あー……なんともまあ、不摂生ってやつだな」
「当然でしょう。過ぎればあれも毒だということを知らないわけでもなかったでしょうに」
 己の言葉に『黒影・兵庫』は仰向けになったまま苦笑いを浮かべていた。
 長年の酒と煙草による心肺機能の低下。
 病床にふせっているというのに、まだ彼は苦笑いを浮かべていたのだ。
「悪いな。お前は俺にこんなにも多くをくれたというのに、俺はお前に何もやれない。それが今、歯がゆいと思うよ」
「なぜそう思うの? あなたが思う以上に私はあなたから受け取っているというのに。これ以上も、と」
「俺は欲張りなんでな。あれもこれも全部、と思ってしまうのさ」
 それが人間の進化の根源であろうと彼は笑っていた。わからないでもない。
 そんな彼に感化されてしまった自分も欲張りなのだろう。だから、と『スクイリア』は望んだのだ。

「あなたの名前がほしい」
 あなたを示す事柄の全てが詰まったものを欲しいと願ったのだ。
 名前が何かを示すなら、きっとそれは己の救いになるだろうから。
「いいよ。俺を救ってくれたお前になら」
 告げる言葉は最期。
 けれど、受け取った名前はきっと紡がれていくだろうと思えた。
 そして、それは遠くない未来、一人の赤子と共に彼女の眼の前に現れる。

 そう、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)という己が育て導くべき存在として――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年12月15日


挿絵イラスト