どっきりハロウィンパリピナイト!
――サイバーザナドゥで起こった案件に協力して欲しい。
友である筧・清史郎(桜の君・f00502)にそう言われれば、ええよ~と。
終夜・嵐吾(灰青・f05366)が気楽に返事をしたのは、こうやって頼まれることもあれば頼むこともある、それは特段珍しいことではないから。
だが……まさか、あんなことになろうとは。
この時の嵐吾は思ってもいなかったのだ。
聞けば、潜入先は、サイバーザナドゥで行なわれるハロウィン仮装パーティー。
この世界のパーティーといえば、きな臭いものであることは言われなくてもわかるが。
そんな依頼にも、もうこれまで何度も赴いているし。
仮装と聞けば丁度、黒陰陽師的な装いを誂えて貰ったものだってあるから。
それを着ればいいと脳内に思い浮かべながら。
魔王な衣装を今年来ていた清史郎とふたりでぶいぶい……なんて、思っていれば。
「らんらん、どちらか選んでくれ」
「えっ?」
いきなり友が差し出してきたのは、赤と青のふたつのキノコ……?
とりあえずよくわからないけれど、何となく赤のキノコを選んで。
残った青のキノコを手に微笑む清史郎と共に、そうっと赤キノコ口にしてみれば。
「せーちゃん、これ……っ!?」
「ふむ、らんらんの方が『当たり』だったか」
「!!?」
刹那、ぐぐっと身体が縮む感覚がしたかと思えば――。
「潜入するハロウィンパーティーの参加条件は、カップルであるとことらしいからな」
「ちょ、えっ、せーちゃん!?」
「ふふ、女子になったらんらんは可愛いな」
なんと、女の子になっちゃいました!?
――というわけで。
アルダワで清史郎が調達してきたという魔法のキノコで女の子になった嵐吾であるが。
潜入するパーティーがカップルでしか参加できないならば、仕方ないし。
赤のキノコを選んだのは自分であるし、魔法なので副作用などはないようだし。
パーティーにいざ、潜入……と、いきたいところだが。
そういえば、仮装パーティーだと言っていたが……女子の姿では、思っていたイケてる黒陰陽師的な衣装は着られそうにない。
けれど、心配無用だ、と。
にこにこ清史郎が用意したというのは。
「ナ、ナース服!?」
ナースとお医者さんのペアの仮装!
いえ、今回の案件は、既に壊滅させた組織によってドラッグ漬けにされかけたパーティー参加者に、薬の効果を消す薬をさり気なく投与してアフターフォローをする依頼だというから。
「この格好であれば、ドラッグ中毒者に薬を投与しやすいと思ってな」
「そう言われれば……そじゃね」
他に女子用の仮装のあてもないから、ナース服に袖を通す嵐吾。
そしてふと、白衣のお医者さん姿の友を見れば、思わず納得してしまう。
「せーちゃんは、お医者さんの格好も似合うの」
中身はともかく、顔だけはいい医者に薬をあーんされれば、きっと人々も軽率に薬を飲んでしまうと思ったから。
そんな嵐吾の言葉に、清史郎は笑んで。
「らんらんナースもとても可愛いぞ。では参ろう」
「可愛いって言われて、喜んでええんじゃろうか……って、ひゃっ!?」
いきなり腰を抱かれ、お耳をぴこんっ、思わず声を上げてしまうが。
「らんらん、俺達はカップルという設定だ」
「えっ? そ、そうじゃったの……」
勝手に想定していた黒陰陽師と魔王ではないけれど。
ナースとお医者さんで、ハロウィンパーティーに潜入です!
最初は慣れない女子の格好に、尻尾もそわりと揺れていたけれど。
「せーちゃん、この酒うまい~」
「ふふ、飲み過ぎては駄目だぞ、らんらん」
安全だと分かっているパリピな美味い酒を飲めば、ご機嫌にふにゃり。
思わずちょっぴり飲み過ぎてしまいそうになるけれど。
仕事もしなければだぞ、とそっと友に囁かれれば、そうじゃった、ときりり。
とりあえずふたりでまずは、近くにいるパリピカップルに声をかけてみることに。
「ハッピーハロウィン。さらに心地良くなる、医者の薬などどうだろうか」
そう清史郎が意味ありげににこやかに言えば、興味を示す薬中毒者。
そして。
「愛らしいナースが、あーんと注射、好みの方で投与してくれるサービス付きだ」
「えっ、わしが?」
勝手なことを言う箱……いや、お医者さんの発言に一瞬、嵐吾は瞳を見開くも。
「うおっ、それはいいな! じゃあ、お注射で!」
容易に話に乗ってきた患者をみれば、嫌とは言えず。
「私はお医者さんにあーんして貰いたいな!」
「ふふ、いいぞ。では、あーんだ。らんらんナースさんは、彼にお注射を頼む」
「……お注射」
わくわく腕を出す男に、ちょっぴり遠い目になりながらも。
手渡された注射器で、お注射をぷすっ。
喜ぶカップルの姿に複雑な気持ちになりつつ、とりあえずは投与に成功したから。
「らんらん、次はあのカップルに声を掛けようか」
「……そじゃね」
これも、れっきとした猟兵のお仕事。
パーティー参加者に、お薬をあーんしたり、お注射をぷすりと打ったりと。
見目は良いナースと医者の手によって、順調に人々へ薬が投与されていくのだった。
そして、無事に参加者全員に薬の投与が済めば、依頼も完了。
ようやく落ち着いて、ふかふかパリピソファーに腰を落ち着ければ。
「お疲れ様だ、らんらん。酒でも飲もうか」
キラキラ雅スマイルで酒を渡されれば、どきっ……!?
気持ちも何だか女子化に??
「? らんらん、どうした?」
「いや……せーちゃんは、顔は良いからの」
でもやはり目の前の友は、顔はいいけれど変な箱だから。
気を取り直し酒を受け取って、互いに労いの乾杯をすれば。
「自然と時間が経てば魔法も切れるようだが、女子ならんらんは可愛いな」
「ふあっ!?」
囁くように甘やかに言われれば、またまた、どきっ??
「ふふ、らんらん。俺達は今カップルだぞ」
「えっ、あっ、そうじゃった」
もう薬の投与は終わってはいるものの、いまだ怪しまれるわけにはいかないから。
カップルの演技……と呟きつつ、酒を呷る嵐吾。
そんな姿を、にこにこと楽し気に眺めながらも。
「では今回協力してくれた御礼に、俺がらんらんにあーんしよう」
そう友が言った瞬間、何だかめくるめく嫌な予感が――した、瞬間。
「ちょ、待って、せーちゃ……ふごっ!?」
「ふふ、特注で作って貰った、甘さ増し増しのケーキだ。存分に味わってくれ」
空気の読めない箱……いや、お医者さんに、いつも通り。
何気にしれっと尻尾をもふもふ、もふられながらも。
ハッピーハロウィン――そう女子になっても、やはりどろ甘な御礼を、容赦なく口につっこまれる嵐吾であった。
成功
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