ハッピースイーツ、ハロウィンチャレンジ!
心躍っちゃうくらい賑やかな街がもうすぐ迎えるのは、特別な夜。
だって、今日はそう――年に一度のハロウィンなのだから!
そんな盛り上がっている様子を見れば、天風・光華(木漏れ日の子・f37163)もわくわく、色んなことがしたくなって。
ジャックオランタンに火が燈れば始まるのは、かわいくて食いしん坊な小さなおばけ達のパレード。
小さなおばけさんたちに、トリックオアトリートされちゃうかもしれないから。
「だから小さい子達の為にお菓子作るのー!」
そうぐっと気合十分に挑戦するのは、お菓子作り!
「クッキーなら前にも作ったことあるから大丈夫なの!」
ということで、張り切る光華と一緒に、深山・樹(処刑人・f37164)が訪れたのは。
(「銀誓館、こういう時オーブンとかを先にちゃんと言えば貸してくれるのすごくありがたいです」)
銀誓館学園のキャンパスのひとつにある、家庭科室。
いや、最初は寮でと思ったのだけれど、何せハロウィン、考えることは皆同じで。
先輩たちが多くて順番待ち状態だったから、銀誓館のオーブンをかりることにしたのだ。
そんな学園のキッチンは最新式で、必要な道具だってちゃんと全部揃っているから。
「材料は買ってきたの、カボチャさんとオバケさんの型抜きとデコペンも! ちゃんといっぱい作れる準備はできたの!」
用意するのは、材料だけで大丈夫。
そして今回光華が、いっぱいたくさんうんと作りたいって思っているのは、おばけかぼちゃの顔のクッキーみたい。
樹はうきうき張り切るその姿が可愛いって思いながらも、でも、やっぱり心配でもあるのだけれど。
材料をずらりと作業台に並べながら……だから兄様はそんなに心配しなくていいのー! なんて。
「自分だけでやるのー! いつき兄様は見ててなの!」
兄様は心配しすぎなの! って言われちゃって。
それでも、ただ見ているだけではいられない樹なのだけれど。
道具を用意するのを手伝おうとすれば、むー。
材料を一緒に準備しようとすれば、むーむー。
いざ作り始めようとする様子に手を出そうとすれば、むーむーのむー!
光華がぷくり、ほっぺを膨らませるものだから。
(「すっごく! 可愛いですけど!」)
そう思いつつも、樹はハラハラ。
言われた通りにじっと見守ることにするけれど、こぶしをぎゅーって握ってしまう。
そんな兄の心配を余所に、早速光華はクッキーを作り始めるべく。
「生地は南瓜さんいりの黄色と、卵白だけの白色の二種類なの」
さっそくはかりーって思って見回せば、手の届かない高いところにあるのを発見。
そうなれば、すかさず我慢できなくてつい。
お目当てのはかりを、代わりに取ってあげた樹だけれど。
「に、兄様、めっなの!」
自分だけでやると言う光華に、メッ! とされちゃって。
(「めちゃめちゃ! 可愛い!」)
そうきゅんとしながらも、手を貸すことは諦めることに。
ということで、光華が気をとりなおして取り組むのは、生地作り!
一生懸命まぜまぜしていけば、黄色の綺麗な生地からふわりと漂うカボチャの香り。
そして卵白だけで作るのは、砂糖多めの白くてあまーい生地。
二種類の生地を作り終われば、冷やして少しやすませて。
ちょっとかたくなったら、んしょんしょ、頑張ってめん棒で伸ばしてから。
すちゃりと、カボチャさんとオバケさんの型を手に取るけれど。
「ちょっとだけこれもたいへんなのー」
型抜きはちょっぴりニガテ。
でも自分で全部やるって決めたから、頑張ってさくりっ。
いっぱいたくさん、型を抜いていくけれど。
「あ、くっついちゃったの」
なかなか上手にいかなくて、いくつも綺麗に取れずやり直しに。
そんな、涙目になっている光華を見れば。
一度は手伝うのを諦めた樹は思わず手伝ってあげるけれど。
でもお手伝いはお手伝いでも、クッキー作り自体ではなくて、光華がひとりで出来るようになるお手伝いを。
そして、ちょっとないちゃいそうだったけれど、自分で出来るようになれば……大丈夫なの! と。
「一人でできるのー!」
そう改めて言われれば、やっぱり。
(「必殺技って思ったぐらい可愛い!」)
一生懸命頑張る妹のその言動が、たまらなく可愛いです!
そんな再び引き下がった兄を後目に、何度も何度もがんばれば、綺麗にいっぱい型も取れて。
次はそれを、オーブンで焼き上げます!
ということで、慎重にそーっとそっと、生地のおばけたちを鉄板に並べて。
オーブンに入れて焼き始めれば――思わず、じいっと。
「お菓子を焼くこの時間もとっても大好きなの」
焼きあがるまでオーブンの前で仁王立ち。
そんな姿もまたとても可愛くて、ほわりと見守る樹。
そして光華はそうっと、ちらり。
見守ってくれている姿を見れば、そわそわ、ふわふわしちゃうのは。
うれしくて、とってもとっても楽しみだから――兄様がよろこんでくれるかな、って。
それから、一回目の焼き上げが終われば、気を抜かずきりりと慎重に。
そーっと光華は、あぶなくないように鉄板をとりだしてから。
しっかり熱を取ってひやしながら、チョコペンでクッキーのおばけさんたちをかわいくしてあげる。
樹は、頑張っているその姿を見つつ、やっぱり少しハラハラするけれど。
でも、重くても熱くてもしっかり鉄板を出して落とさないで、きれいに顔を書いていく光華のことを見守って。
クッキーが冷え切って完成すれば――ふと、瞳を見開いてしまう。
「兄様兄様、さいしょは絶対、いつき兄様になの」
一番最初に冷えたクッキーを、光華が最高の笑顔で差し出してくれたから。
そして、はむりと食べてみれば。
うんうんと味わいながら、大きく頷いて返して。
「すごくすごくおいしいよ、みつか!」
そう言えば、もっともっと、ぱあっと笑顔がはじけて。
喜んでいる様子を見ながらも、樹も嬉しくなる。
世界で一番大事な光華が、なんでも出来るようになっていくことが。
でもそんな成長に、少しだけ……ほんの少しだけ。
樹の心の中に生じるのは、寂しいきもち。
自分が居なくても大丈夫になっていく、その姿を見れば。
けれど、それ以上にやっぱり。
「ふふふ、良かったの! 兄様大好きなのー!」
樹は、満足で幸せだって、そう思うのだ。
だって今日も、一番大切な光華の「兄さま大好き!」が聞けたから。
でもそんなきもちは、光華も同じで。
とってもとってもやさしくて、いつもそばにいて、温かく包んでくれる大好きな兄様に。美味しいっていってもらえたことが、とっても幸せで。
ひとりでちゃんと出来たことも、うれしくて満足で。
けれどまだまだ、もっとたくさん、クッキーを焼き上げないといけないから。
「さあ、年少の子たちのとこ配るなら包まないとね」
樹が焼き上げた子達を可愛く包んでくれている間に。
二度目三度目の焼き上げに取り掛かる光華は、再びオーブンの中をひょこりと覗き込みながらも、ますますわくわく。
だって、確信しているから――きっと絶対、楽しいハロウィンになるの! って。
そしてクッキーを包んでいきつつ、樹も心躍らせる。
(「仮装はできなかったけど絶対楽しいハロウィンになります」)
――トリックオアトリート! って。
可愛くて大切な光華と一緒に楽しむ、特別なハロウィンの時間が待ち遠しくて。
成功
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