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ルミロフキエロに雪は囁く

#スペースシップワールド #スペースオペラワールド #ロサーリオ群星連合王国

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#ロサーリオ群星連合王国


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 雪の如き鈴蘭。
 清く愛らしい、純白。
 汚れを知らず、密やかに咲く。

 ロサーリオ群星連合王国内に所属する星、カーモスプタルハ。
 常に雪で覆われた惑星で、クリスマスの時期になると極夜が続き、各地で大規模な市が開かれる。
 ルミロフキエロはこの地で市の開かれる時期にしか咲かない、希少な花だ。可憐な見た目とは裏腹に、雪の下から顔を出す強い花――だが、この花の希少性はまた別の特徴にある。
 この花は一見、地球などに見られる鈴蘭と然程違いはない。雪にも似た純白の小さな花が鈴なりに連なる姿。しかし不思議なことに、極夜の時期のみ光を受けると淡い碧に装いを変えるのだ。
 市が開けば碧く煌めき、人々が寝静まると雪の一部に戻る。そんな花だった。

 クリスマスが近づき、花も眠りから目覚める頃。
 この星の近くに、この星によく似た――しかし、花なき星が現れた。


「あの星系、イベント時期になると毎度何かしらの事件に見舞われてますよねえ。そういう星の下、ならぬそういう星系なんでしょうかね」
 今回もまたロサーリオ関連の話だと、虹目・カイ(○月・f36455)は微苦笑と共に語り出す。
「ロサーリオ群星連合王国に所属する諸国家は、主星たる王国含め『青い花』の産地ならぬ産星系として有名です。今回向かっていただくカーモスプタルハも御多分に漏れず。青い鈴蘭『ルミロフキエロ』の咲く星です」
 と言っても、青く見えるのは極夜に光を受けた時だけ。
 その希少性と美しさも然ることながら、その花の咲く時期になると、カーモスプタルハでは大規模なクリスマス市が開かれるということで、スペースオペラワールドでは冬の観光名所として知られているようだ。
「ただ、現在ちょっとした問題が起きているようで。……カーモスプタルハ、分裂しちゃったんですよねえ」
 なんて??????
「正確には、現地や周辺の諸国家の人々がそう思い込んでしまっている状態でして。と言うのもですね、どうやらオブリビオンがカーモスプタルハに化けて、間違えて訪れた人々の生体情報を奪おうと画策しているようなのです」
 星に化けて?
「星に化けて」
 スケールが大きい。
「正確には本体は数メートル程度の球体で、幻覚作用のあるガスを自身の周辺に張ることによって星に擬態するようです。本来は特定の星に擬態するのではなく、資源としてガスを求める人々の前にガス状巨大惑星を装って現れるようですが……まあ、その辺りの詳しい話は割愛しましょうか」
 今回の個体が何故そのような行動パターンの変化を見せたのか、また生体情報を集める理由は何なのか。
 疑問は色々とあるが、恐らくはカイにもそこまでは解らなかったのだろう。それにどうせ碌でもない理由であろうことは容易に想像がつく。
「皆様にお願いしたいのは言うまでもなく、この惑星型オブリビオンの討伐。決して弱くはありませんが、とんでもなく強いということもございませんので。無事に終わりましたら、カーモスプタルハのクリスマス市を楽しんでくるといいと思いますよ」
 市では軽食にクリスマス飾り、ルミロフキエロをモチーフにした工芸品などが売り出されている他、広場にはパフォーマー達が歌やダンスなどを始めとした一芸を披露する会場もある。参加者側で準備さえ整えられれば、飛び入り参加も歓迎だそうだ。
 また、市で時間を過ごしつつ、極夜も深まりを見せる頃合い、そっと市を抜け出せば、碧く煌めくルミロフキエロと降り注ぐ光のオーロラ、その共演が拝めるかも知れない。
「偶には見知らぬ場所にふらっと出かけた先でのクリスマス、なんてのも楽しいのではないでしょうか。勿論、お仕事を終わらせてからにはなりますが。どうぞよろしくお願いいたしますね」
 さあ、夜と光と花を抱えた、冬の星へと出発だ!


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 ミュンヘンクリスマス市楽しんできました!

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:ボス戦『開拓者騙し『夢幻惑星ファントムペイン』』
 第2章:日常『惑星都市の夜の祭』
 第3章:日常『この星に抱かれて』

 第1章にてオブリビオン討伐。
 第2章、第3章でクリスマス市を楽しむ流れになります。
 第3章では(お声掛けあれば)グリモア猟兵を呼び出せる他、行ける場所が増えます。
 各章、詳細は断章にて公開いたします。

 グループ参加は【3名様まで】とさせていただきます。
 (拙宅グリモア猟兵はこの制限に含みません)

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 前述の通り、各章での追加情報も断章での描写という形で公開させていただきます。
 今回は断章が公開された直後からプレイング受付開始とさせていただきます。
 (締切は確定しましたらタグにてご連絡させていただきます)
 それでは、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『開拓者騙し『夢幻惑星ファントムペイン』』

POW   :    開拓者の悪夢
戦場内を【過酷な惑星環境】世界に交換する。この世界は「【惑星環境及び重力の影響付与】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
SPD   :    好奇心は開拓者を殺す
対象に【過去にしくじった事】の幻影を纏わせる。対象を見て【後悔や羞恥心】を感じた者は、克服するまでユーベルコード使用不可。
WIZ   :    偽りのフロンティア
【幻覚を見せる精神干渉波】が命中した敵に、「【此処は資源豊富な惑星に違いない】」という激しい衝動を付与する。

イラスト:みささぎ かなめ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は神樹・鐵火です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達はカーモスプタルハ――ではなく、その手前(?)の宇宙空間へと転移した。
 身一つで向かってくれて大丈夫と言われたが、確かに生身でも窒息することなく生命活動は可能で、動きを無重力に阻害されることもなく自らの意思で動けるようだ。
 改めて視線を上げれば、ふたつの酷似した星が並んでいる。とは言え、猟兵達にはその片側がオブリビオンの化けたものであると、本能的に看破することが出来た。
 すると、見破られたと察したのか、オブリビオンはその周囲に濃厚なガスを噴出した。成程、あれが幻惑作用のあると言うガスだろうか。
 どうやら猟兵達を敵と認定し、抵抗するつもりのようだ。ここで放っておけば間違えて足を踏み入れた者から生体情報を抽出し、良からぬ企みに利用されてしまうだろう。
 戦いは避けられない。敵の目的が達成されていない今の内に、討伐してしまおう。
八坂・詩織
生憎と、偽物の惑星に用はないんですよ。
|起動《イグニッション》!
髪を解き、瞳は青く変化。防具『雪月風花』を纏う

紛い物のガスが何を見せてくるのやら…と警戒していたら見せられたのは銀誓館の学園祭のお化け屋敷でゾンビに扮した生徒達にガチでビビった恥ずかしい記憶で。
やだ私ったら生徒の前であんな醜態を…しかも先輩に抱きついちゃったりしてもう…恥ずかしい!

…仕方ないじゃないですか、あそこまで本格的だなんて思わなかったし…だいたい先輩が隣で突っ立ってるのが悪いんですよ!
【恥ずかしさ耐性】で開き直り克服、指定UC発動。姿を隠し吹雪の竜巻をぶつけガスを【吹き飛ばし】。
…別に恥ずかしくて隠れたわけじゃないですよ?




「生憎と、偽物の惑星に用はないんですよ」
 解いた髪はふわりと靡き、青の瞳はきりりと敵を射抜く。
 |起動《イグニッション》を済ませ、その身に淡紅乗せた風花纏った八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は。
 自らを星であると偽るその存在へと対峙して。
(「紛い物のガスが何を見せてくるのやら」)
 敵はガスを操り、星に化けるのみならず幻影まで見せてくると言うが。
 何があっても心を強く持っていれば、揺らぐことなどない筈。そう信じて、警戒しつつも真っ向から立ち向かおうとして。
「? ……!! 〜〜〜〜〜〜ッッ!!??」
 見えたものに、ぼっと赤面した。
 目の前にありありと再現されたのは、母校であり自ら教鞭を執る銀誓館の学園祭。
 生徒主催のお化け屋敷に入った詩織は、ゾンビに扮した生徒達の姿にガチビビりした。
 その上、弾みで傍にいた密かに想いを寄せる相手に……そんな記憶。
(「やだ私ったら生徒の前であんな醜態を……しかも先輩に抱きついちゃったりしてもう……恥ずかしい!」)
 思わず熱くなった頬を押さえてあわわとなる詩織。
 ブラックホールがあったら入りたい、そんな心境。
 いや、ハイリスクが過ぎるので近づかないけれど。
「……仕方ないじゃないですか、あそこまで本格的だなんて思わなかったし……だいたい先輩が隣で突っ立ってるのが悪いんですよ!」
 なんて|黒歴史《もの》を思い出させてくれたと開き直る詩織。元よりするつもりのなかった容赦の二文字はここで完全に消え失せた。
「ホワイトアウト級の吹雪で、あなたのその正体を暴きます!」
 詩織は吹雪の中へ身を隠すと、乱れ舞う雪を取り込んで竜巻を起こす。そのまま竜巻をぶつけ、強風でガスを吹き飛ばし、露わになった本体である光の球体へと、雪の冷たさで刺し貫く!
(「……別に恥ずかしくて隠れたわけじゃないですよ?」)
 とは思うものの、今の他の誰にも見られてないですよねと、つい他の猟兵達の様子をチラッと窺ってしまう詩織なのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
ロサーリオ群星連合王国。先日にも来たばかりね
行きつけの星系があるなんて、何だかピンとこないわ……
まして、宇宙空間に踊り出て二つの星に相対し、悪い星を退治するなんて
まるでお伽話みたいねえ

敵に対峙して瓦斯を浴びれば、目の前に幻覚が広がって……
…………成る程、豊かな星
自然資源に恵まれて、明るく穏やかで、美しくさえあるわ
漸く辿り着いた桃源郷、宝の山に見える人が居るのも止む無しだけれど

‪でも、相手が悪かったわね

「照らして、“まそえ”」

ゆっくりと人差し指を天に向け、UC《まそえ》を発動
幻惑の瓦斯で隠れ逃れようとする敵を、灼熱の陽光で炙り出す

「どれだけ豊かで綺麗でもね……私の心が焦がれるものは、|地上《ここ》には無いのよ」

私の心が、私の【負けん気】が、星の資源などに靡くものですか

【気配感知】して敵の本体を見定められたら
【|武器《魔鏡》から光線】を【全力魔法】で放ち、穿ち抜く
たかが星が、太陽の瞋恚に敵う筈も無いわ




 ロサーリオ群星連合王国は、ひとつの恒星とそれを取り巻く小さな惑星群で構成された王国だ。
 ここ半年ほど、猟兵達はこの王国を形成する星系の事件解決に乗り出したり、観光で訪れたりを続けていた。
 神野・志乃(落陽に泥む・f40390)も、その一人だ。
(「先日にも来たばかりね。行きつけの星系があるなんて、何だかピンとこないわ……」)
 同じ星系であり王国に所属するカルロッタルーナでの事件を解決したことは、比較的記憶に新しい。
(「まして、宇宙空間に踊り出て二つの星に相対し、悪い星を退治するなんて。まるでお伽話みたいねえ」)
 自分が夢物語のような、そんな一幕の登場人物になるとは、何とも不思議な感覚だ。
 そんなことを考えながらもゆっくりと、敵へと近づいていく。いざ対峙すれば降りかかるガスは避けようがなかった。
(「……これが、幻覚の瓦斯?」)
 広がる光景は理想郷。
 カーモスプタルハに擬態したそれは、今や新天地を求める人々が求める姿に変じた。
(「…………成る程、豊かな星」)
 星の開拓者ではない志乃にだって、ぐるり見渡せばそれがいとも容易く解る。
 木々が立ち並び、清らかな水が湧き、奥に見える山からは鉱石が採れるだろうか。手つかずのフロンティア。
(「自然資源に恵まれて、明るく穏やかで、美しくさえあるわ」)
 開拓者達が求めるもの、その全てがここにはある。そう、心から思わせる光景だった。
「漸く辿り着いた桃源郷、宝の山に見える人が居るのも止む無しだけれど――でも、」
 志乃も『そう』であったなら。目が眩むこともあったかも知れない。
 しかし彼女が求め焦がれるものは、ここには、ない。
「相手が悪かったわね」
 緩慢に、人差し指が天を向く。
 天網恢々疎にして漏らさず、偽りは悪、悪には罰を。
 星を騙る大罪には、天道の火刑が相応しい。

「照らして、“まそえ”」

 纏う幻ごと光は灼いた。
 灼熱の陽光で炙り出されたのは、太陽よりも惑星よりも、余りに矮小な光球。
「どれだけ豊かで綺麗でもね……私の心が焦がれるものは、|地上《ここ》には無いのよ」
 志乃の憧憬は、天にこそ向けられる。
 天空に輝き、地上を照らし、近づきすぎればその身を焦がし、けれど人々が頼りに生きる|天つ日《ひかり》。
 屈しはしない――心が叫ぶ。
 譲れない、負けられない――心は静かに燃えている。
「星の資源などに靡くものですか」
 太陽司る女神が、光を降らせる如く。
 鏡は陽光集め、その全て惜しむことなく解き放つ。
 穿ち抜かれた偽りの星は、光と熱に呑まれてごうと燃えた。
「たかが星が、太陽の瞋恚に敵う筈も無いわ」
 その力、余りに強大。
 怒りを買っては、ならぬもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
相手が強いのなら、削れる機会は逃さず、相手に隙は見せず、
長期戦を覚悟して着実に狙うのがいいわね。
勿論、隙があれば見逃したくないけど。
見切ったり足には自信があるけど、過信せずに落ち着いて戦況を見極めるわ。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.囮役としてボスの注意を引き付け、味方の攻撃を当てやすくする。
2.ボスの移動手段→攻撃手段の優先順で奪っていく。
3.仕留められそうな場合は積極的に仕留めに行く。
 (他に仕留めたい人がいればその手助け)

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎


響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです


バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ご安心くだサーイ! ワタシが来マシタ!」
ご用命あらば即参上! アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
戦闘スタイル:白兵射撃の物理系

各種武装の中から敵に有効なものを選択して用いてくだサーイ!
刀も銃器も、内蔵兵器や換装式ウェポンも、何でもOKデス!

アタック重視でもディフェンス重視でも対応可能デース!
斬り込み、爆撃、弾幕を張ったり、パリィ盾したり、臨機応変に立ち回りマース!

指定ユーベルコードが使いづらいなら、公開している他のものを使用しても問題はありマセーン!
オブリビオンを倒して、ミッションクリアのために力をお貸ししマース!




「今回の|標的《ターゲット》はあちらデスネー!」
「もうだいぶ弱ってはいるみたいだけど、着実にトドメを刺しに行きたいところね」
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)とラムダ・ツァオ(影・f00001)が敵の様子を窺い。
「私が囮になるから、攻撃はお願い出来る?」
「了解デース! 確実に仕留めてご覧に入れマショー!」
「では、私がラムダ様のサポートに回りますわね」
 名乗りを上げたのは響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)だ。回復支援は彼女の得意とするところ。
「それじゃあ、仕掛けてくるわ。――さあ、次は私が相手よ」
 敵の前へとラムダが姿を現す。黒炎の鎧を纏った彼女は機動力が飛躍的に向上し、移動速度や回避反応を活かして逃げ回る構えだ。
 不可視の攻撃すらも、気配を察知して見切り、ひらりひらりと避け続ける。
「ご無理はなさいませんよう」
 それでも避け切れぬ攻撃は、リズが杖を振るえば青水晶を抱く月が輝き、放たれた光で癒していく。
 聖なる光は惑わされそうになる心すらも清めて、今一度敵に立ち向かう力を与えた。ふう、とひとつ溜息を吐き、リズはラムダと敵の様子に再び注視する。
 それを繰り返して、敵の注意が完全にラムダとリズに向いた頃合いを見計らって、バルタンが動く。
「ラムダ殿とリズ殿、お二人の働きを無駄には出来マセン! 一撃で仕留めマース!」
 抜き放つファルシオン風サムライソード。
「骸式兵装展開、剣の番!」
 変じた姿は邪剣と呼ばれた将軍の残滓。
 宇宙空間すらも足場にして蹴り、剣を振りかざしたまま空間を貫くかのような超スピードで、敵へと肉薄する!
 バルタンの接近に気がついた敵は咄嗟に重力を強めて機動力を落とそうと試みるが、もう遅い。そこは既にバルタンの間合いだ!
「これでトドメデース!!」
 光でさえも一刀両断!
 矮小なる真の姿を曝け出した開拓者騙しは、その上下を半球状に分けられたまま、宇宙の彼方へと押し出され――やがて、消滅した。


「一先ずこれにて一件落着デスネー!」
 バルタンの言う通り、今やカーモスプタルハの姿はひとつ。ロサーリオ群星連合王国も、猟兵達の働きによってあるべき姿に戻ったのだ。
「そう言えば、本物のカーモスプタルハには珍しい花があるみたいね。クリスマス前後にしか咲かないとか何とか……」
「丁度この時期は市が立つとも、極夜が続いてオーロラが見られるとも聞いていますわ。花と光の共演、きっと素敵ですわね」
 ラムダとリズが、本物のカーモスプタルハへと視線を向ける。今頃は住民達が、クリスマス市の準備を進めているのだろうか。
 楽しい筈の催しの裏で、悪しき企みに巻き込まれて危険な目に遭う人々が出なくてよかったと、作戦の成功を噛み締める。
 ひとつの星の平和は守られ、住民も観光客も無事にクリスマスを楽しむことが出来る。それを思えば、達成感が湧いてくるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 日常 『惑星都市の夜の祭』

POW   :    賑やかな屋台で異星の食を楽しむ

SPD   :    街灯に照らされた夜市の街を行く

WIZ   :    ライトアップされた宮殿を歩く

イラスト:ももんにょ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 常冬の星、カーモスプタルハ。
 極夜の安らかな闇に包まれる中、賑やかに灯る光の中へと雪を踏み、その足を踏み入れてみれば。
 この時期だけに開かれる、クリスマス市が姿を見せるだろう。
 市で売られている軽食は、種類こそそう多くはないが、店によって味が違うようで、食べ比べてみるのもいいだろう。
 どの店でも共通して売られているのが、ホットチーズドリンク。どうやら市の名物らしい。
 味は甘みが強めの飲むチーズケーキといったところ。甘いものが苦手な人の為に、甘さ控えめで酸味強めのものもある。
 特徴は、ルミロフキエロの花を砂糖漬けにして干したものが入っていること。どうやらレーズンのような味らしい。苦手な人は抜くことも出来るようだ。
 料理は地球で言うところの、フィンランドのクリスマス料理に似たラインナップのようだ。
 星を象ったパイタルトには、ジャムがたっぷり。店によって入っているジャムが違うが、定番のプルーンジャムは、これも殆どの店で売られている。
 三つのごろっと大きめな豚肉の塊を使った串焼きは、甘めのマスタードとパン粉を混ぜたソースが塗られている様子。これも店によって配合や隠し味が違うようで、食べ比べ……るには少しばかり量が多いか。
 他にもクリスマスと言えばな骨付きフライドチキンや、店によって太さや塩加減の違うフライドポテト、ルミロフキエロを模したホワイトチョコクッキーなども楽しめる。
 この時期だからこそ売られている、クリスマス飾りを見るのも楽しいかも知れない。
 例えば、ルミロフキエロのように、ひとつで幾つものボール状の花が連なったジュエルボールオーナメント。定番はルミロフキエロの色である白や青だが、華やかなゴールドや、クリスマスカラーの赤や緑も人気があるようだ。
 ツリーに飾れる、ルミロフキエロのライトチャームも楽しい。光を灯せば青く煌めき、消せば白く揺れる。クリスマスが終われば紐を付け替えて、キーチェーンやストラップとして普段使いも出来るのだ。
 クリスマス飾り以外の伝統工芸品として、ルミロフキエロ型のアロマランプやハーバリウムも並ぶ。前者は丸い花部分に小さなアロマキャンドルを入れれば、青く灯りながら芳香を放つ。後者はルミロフキエロの花をふんだんに使った可愛らしいハーバリウムだ。香りや瓶の形は、やはり店によって違う模様。
 また、奥の広場ではパフォーマー達が歌やダンスを披露し、会場を盛り上げている。主催が司会進行も兼ねているようで、頼めばスケジュールが大幅に崩れない範囲であれば飛び入り参加も出来そうだ。
 極夜の市は客を決して拒まない。宝探し気分で、歩いてみるのもいいかも知れない。
神野・志乃
八坂先生(f37720)と

「戦ってる間に吹雪が見えたから、もしかしてと思ったけれど」
やっぱり八坂先生だったのね
そうね、折角の縁だから一緒に見て回りましょう

寒い地だからかどっしりした食べ物が多いのね……見ているだけで豪華な気持ちになるわ
「欲しいもの?そうね……それなら、私も同じものがいいわ」
お揃いのライトチャームなんて。何だか良いじゃない
どうせなら今回もまた、お互いに贈り合いましょうか

オーロラ、そういえば見られると言われていたわね
へえ……そうだったの
太陽の無い極夜が深まった時にだけ見える、太陽からの贈り物……
「……本当、空って何処までも浪漫|的《チツク》」
地球もロサーリオも、それは変わらないのね


八坂・詩織
志乃さん(f40390)と

やっぱり志乃さんも来てたんですね、せっかくですし一緒にクリスマス市まわりませんか?
私この星形のパイタルトが気になってて。

雑貨も素敵なものいっぱい!
このライトチャーム綺麗ですよね。アクセサリーにもできそう。
志乃さん何か欲しいものありますか?私からのクリスマスプレゼントです。
お揃いのクリスマスプレゼント、いいですね!

そういえばこの星ではオーロラが見られるんでしたね。
オーロラは太陽から飛んでくる電気を持った粒が大気とぶつかって発光する現象ですから、太陽からの贈り物とも言えるんですよ。
この地の太陽は地球の太陽とは違いますが、夜ではあってもちゃんとそこにあることを実感しますね。




「やっぱり志乃さんも来てたんですね」
「ええ。戦ってる間に吹雪が見えたから、もしかしてと思ったけれど」
 やっぱり八坂先生だったのね、と。
 並んで歩く、天文部の二人。八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)と神野・志乃(落陽に泥む・f40390)。
「せっかくですし一緒にクリスマス市まわりませんか?」
「そうね、折角の縁だから一緒に見て回りましょう」
 夜の間をくり抜いたように、零れる市の光の中へと踏み込めば。
 食欲をそそる香りと、温かく心安らぐ灯りが訪れる人々を出迎える。
「寒い地だからかどっしりした食べ物が多いのね……見ているだけで豪華な気持ちになるわ」
「そうですね。……ああ、ありました。私この星形のパイタルトが気になってて」
 というわけで、まずはジャムたっぷりのパイタルトをいただきます。
 角の部分からさくりと齧れば、甘酸っぱいジャムと、繊細で仄かな砂糖のきめ細かい甘さがふわり。
「形といい作り方といい、フィンランドの伝統的なクリスマス菓子に似ていますね」
「フィンランドにも、これと似たお菓子があるのね」
 そう言えば、この星の命名規則はフィンランドのそれに似ている。
 新たな気づきを得つつ、パイタルトを食べ終えれば、再び市を眺めて歩く。
 食べ物の屋台が連なる地点を一旦後にして、二人が足を向けたのは。
「雑貨も素敵なものいっぱい!」
 クリスマス飾りや伝統工芸品などの、雑貨の店が並ぶ一角。
 この時期は極夜が続くらしい星であるからか、灯りに纏わる品が多いように感じられる。
「このライトチャーム綺麗ですよね。アクセサリーにもできそう」
 紐やチェーンを変えれば、色々なものに合わせることが出来そうだと。
 ひとつ手に取った詩織が、柔らかく微笑む。
「志乃さん何か欲しいものありますか? 私からのクリスマスプレゼントです」
 遠慮はいりませんよ、と笑う詩織に、志乃は少し考え込むような素振りを見せて。
「欲しいもの? そうね……それなら、私も同じものがいいわ」
 ややあって、そう答える。
「お揃いのライトチャームなんて。何だか良いじゃない」
 と、次いで志乃は思いついたように声を上げ、言葉を続けて。
「ああ、どうせなら今回もまた、お互いに贈り合いましょうか」
「お揃いのクリスマスプレゼント、いいですね!」
 名案だ、と言わんばかりに頷いてくれる詩織に、志乃もほんのりと微笑みを深める。
 それぞれにライトチャームを選び合って、店員さんのラッピングを待って。
 受け取ったそれを、早速互いに手渡して、贈り合えば。
 聖夜の灯りにも負けない、温かな気持ちで二人、微笑み交わす。
 まさに、その時二人のすぐ横をすれ違っていった子供達。
「早く行こうよ!」
「今日はオーロラ見られるかなあ?」
 無邪気な、そんなやり取りにふと、思い出す。
「そういえばこの星ではオーロラが見られるんでしたね」
「オーロラ、そういえば見られると言われていたわね」
 オーロラと言えば、と詩織はひとつ、天文学的知識を。
「オーロラは太陽から飛んでくる電気を持った粒が大気とぶつかって発光する現象ですから、太陽からの贈り物とも言えるんですよ」
 太陽に焦がれる少女を前にしたからこそ、そんなことを思い出したのかも知れない。
 そして当の少女――志乃はと言うと。
「へえ……そうだったの」
 表情の変化こそ大きくはしなかったが、驚きと感心の入り混じったような、何処か純ささえ感じられる瞳を瞬かせた。
「太陽の無い極夜が深まった時にだけ見える、太陽からの贈り物……」
「この地の太陽は地球の太陽とは違いますが、夜ではあってもちゃんとそこにあることを実感しますね」
 不思議で、でも。
 素敵ですよね、と続ける詩織に。
「……本当、空って何処までも浪漫|的《チツク》」
 志乃は今はまだ明けぬ空へと、憧憬の眼差しを向けるのだった。
(「地球もロサーリオも、それは変わらないのね」)
 どの世界でも、どの星でも、変わらぬ空へと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『この星に抱かれて』

POW   :    満喫しよう!

SPD   :    満喫しよう☆

WIZ   :    満喫しよう♪

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 終わらぬ夜も更けていく。
 それでもなお、市の光は変わらず灯っていて、人々が寝静まる気配はまだまだない。
 もう少し、市を回ってみるのもいいだろう。例えば、さっきまでとは違う店に行ってみたり。気に入った店にもう一度行ってみたり。先程から開いていた店は全てまだ開いているから、やり残したことがあったらやっておくといいだろう。
 また、今から市に到着してもまだ楽しめる、ということでもある。
 パフォーマンスを見に行ったり参加したり、もありだろう。こちらは参加者が少なくなってきているから、飛び入り参加も寄りしやすいかも知れない。

 また、市を抜け出して、遠くに仄かに見える青い光を頼りに雪の中を進んでいけば。市の外れに咲く、ルミロフキエロの群生地に辿り着ける。
 鈴蘭のような可愛らしい鈴なりの白い花が、夜の闇の中で淡く青く輝く姿はそれだけで幻想的だが。
 そこで寒さもぐっと堪えて暫しの間、時を過ごせば。
 降り注ぐ光のオーロラに照らされ、柔らかい|青緑《エメラルド》や|青紫《ヴァイオレット》に装いを変える姿さえも、目の当たりにすることが出来るだろう。

 カーモスプタルハの、極夜の市。
 その光は、まだ消えない。
八坂・詩織
虹目・カイさん(f36455)をお誘いしてオーロラ鑑賞を。

先日のベレザエピルナも綺麗でしたがルミロフキエロもまた綺麗ですよね。どちらも淡く青く光るというのが興味深いです。
虹目さんに選んでいただいたベレザエピルナも夜に仄かな明かりを灯してくれていますよ。
…花弁の付け根が薄桃色の、白に近い碧の花。私のイメージであの色を選んでもらえたのが嬉しくて。
理屈っぽくなりがちな私にかけてくれた言葉も。
ええと…前から言おうと思ってたんですがその、カイさん、と呼んでもいいですか?

そうこうするうち空にはオーロラ、それを受けて光る足元の花。
わあ…花も青緑や青紫に変わって、まるで地にもオーロラが瞬いているみたいですね。




 さくさくと、二人分の足音が雪を踏む。
 その爪先が、淡く碧い花の光に照らされた時。
「これがルミロフキエロ……」
 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)が、ほうと溜息混じりの声を上げる。
「まさに青い鈴蘭、でございますね」
「先日のベレザエピルナも綺麗でしたが、ルミロフキエロもまた綺麗ですよね。それに、どちらも淡く青く光るというのが興味深いです」
 誘った虹目・カイも見入っている様子で、暫し二人で言葉を交わしつつ、花を愛でる。
「虹目さんに選んでいただいたベレザエピルナも、夜に仄かな明かりを灯してくれていますよ」
「ああ、大切に育ててくださっているのですね。私も夜毎の光を絶やさぬよう、尽くしております」
 |儚くも美しき、月の花《ベレザエピルナ》。
 花を贈り合った想い出が、昨日のことのように思い起こされる。
(「……花弁の付け根が薄桃色の、白に近い碧の花」)
 薄桃の六花は、雪女として――銀誓館学園所属の能力者としての、詩織の象徴のようなものだ。
 カイが詩織の為にと選んだのは、まさにその彩り宿した花だった。
「私のイメージであの色を選んでもらえたのが嬉しくて。……それに」
 花の想い出だけではない。
「理屈っぽくなりがちな私に、かけてくれた言葉も」
 その時、詩織は己の在り方に悩んでいた。
 けれど、カイに贈られた言葉で、その悩みごと自分を受け入れられる気がして。
「ええと……前から言おうと思ってたんですが、その、」
「?」
 首を傾げるカイ。
 表情は平素の穏やかなまま。今も、断られたらどうしようなんて考えてもしまうけれど、意を決して。
「カイさん、と呼んでもいいですか?」
 またこうして、学園の外でも会って出かけて、言葉を交わせる関係であれればと願って。
 カイの纏う穏やかな雰囲気は変わらなかったが、それでも彼女は微笑みを深めた。
「ええ。私のことは、心のままに、呼びたいと思うように、呼んでいただければ幸いです」
 その言葉に、安堵する。
 改めて、受け入れられたその名を呼べば、はい、と返事が帰ってきた。
 釣られて詩織も花綻ぶように笑った、直後。
「あっ! カイさん、上……」
「まあ」
 カイの顔色が変わったような気がして、詩織が見上げた空の先。
 空は輝くヴェールに覆われ、その装いを変えてゆく。
 そしてはたと思い出し、今度は視線を下に向ければ。
「わあ……」
「これは」
 ルミロフキエロもまた、纏う光の彩を変えて。
「花も青緑や青紫に変わって、まるで地にもオーロラが瞬いているみたいですね」
 天は光に、地は花に。
 照らされ華やぐ幻想的な光景もまた、想い出の一頁となる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
セラピアさん(f38058)をお誘いできれば
一緒に見たいものがあるの‪、とお声掛け

こっちみたいよ、と遠く見ゆる碧を頼りにセラピアさんを導いて
光彩溢れるルミロフキエロの群生地へ

まるで満天の星空の如く、あたかも生命の煌きのように、淡く儚くも精一杯に光る花々に
樹霊たるセラピアさんが興味を持ってくれるといいのだけれど

でも、それだけじゃないのよ
以前私は、セラピアさんに青と緑の彩持つ花(ベレザエピルナ)を贈ったことがあったけれど
八坂先生曰く太陽からの贈り物、オーロラの光を受けて
このルミロフキエロも‪、|青緑《エメラルド》に輝くというから

‪──‬この光景を見せたかったの

言葉はまだ難しいと彼女は言うから、言葉にならないくらい素敵なものを一緒に見たかったの
言葉なんて拙くとも構わない、一緒の気持ちになれればいいなって……

セラピアさん、メリークリスマス
“お友達になってくれてありがとう、これからもよろしくね”って
言葉にするのは照れ臭いから、聖夜のおまじないだけを告げる
……私もセラピアさんと同じくらい口下手よね




 ――こっちみたいよ、と。
 時折、神野・志乃(落陽に泥む・f40390)は振り返る。白い厚手のコートワンピースに身を包んだセラピア・ヒューレーが、ゆっくりと雪を踏み分け歩く姿がそこにある。
 視線を前に戻して、目指す先はまだ少し遠くに見える光。道標の如く微かに揺れる淡く碧い灯。
 冷たい彩を宿しながらも温かささえ覚える光の花。鈴なりの小さな花、ルミロフキエロの群生地。
 漸く、瞳にその光を映した志乃は幾度か短く瞬いて、ほうと感嘆の溜息を零した。
(「まるで満天の星空の如く、あたかも生命の煌きのよう」)
 志乃は淡く儚くも精一杯に光る花々に、そんな風に感じ取る。
 さくり、と雪を踏む足音が、すぐ横で途切れた。視線を向ければセラピアが、その目を丸くし見入っていた。
「樹霊たるセラピアさんが、興味を持ってくれるといいのだけれど」
「ン、……きれい、です。そして、とても、不思議」
 思ったこと、感じたことを素直に告げてくるセラピア。
 飾り気こそないが、一生懸命で清廉潔白。そんなところが、志乃がこの友人を好ましく思う由縁のひとつだ。
「でも、それだけじゃないのよ」
「?」
 冷たく刺すような冬の夜の空気を感じさせぬほど、温かく柔らかく志乃は微笑む。
 実際、その胸は、その心は、温かな想い出に満たされていた。
「以前私は、セラピアさんに青と緑の彩持つ花を贈ったことがあったけれど」
 夜毎、月の光を受けて咲く花――ベレザエピルナ。
 志乃がセラピアへと贈ったそれの彩は、伸びやかに瑞々しく生い茂るような、青々しい|青緑《エメラルド》。
 セラピアを思わせるその彩と重なる色が、ここにもあると聞いては、いてもたってもいられなくて。
「八坂先生曰く太陽からの贈り物、オーロラの光を受けて、このルミロフキエロも‪、|青緑《エメラルド》に輝くというから」
 今はまだ、仄青い灯。
 けれど、その時は不意に訪れた。
 さらり、流れるように変わりゆく彩は、青藍の筈の天を仰げば緑の光のヴェールが揺蕩って。
 降り注ぐ彩が光る|青緑《エメラルド》が、ここにある。
「‪──‬この光景を見せたかったの」
 セラピアからは言葉がない。
 それでもいいと、志乃は思った。
 樹霊の娘は天と地を交互に見比べ、その瞳を奪われている。その仕草が感情を雄弁に伝えてくれていた。
(「言葉はまだ難しいと彼女は言うから、言葉にならないくらい素敵なものを一緒に見たかったの」)
 綺麗だ、と純粋に思う。同じ思いを抱いてくれていると、志乃は確信出来る。美しいと思う感情を、共有出来る。
 願いは叶った。志乃は微笑んだ。
「言葉なんて拙くとも構わない、こんな風に、一緒の気持ちになれればいいなって……」
 綺麗ね、と続けた。
 こくり、セラピアが頷いた。
 それでよかった。寒さなんてもう感じない。
「セラピアさん、メリークリスマス」
「……メリー、クリスマス」
 反復するように、言葉を贈り合う。
 けれど、セラピアは気づいただろうか。
 志乃は聖夜のおまじないだけを告げた。そこには、別の思いも乗せたのだ。
 お友達になってくれてありがとう、これからもよろしくね――って。
 言葉にするのはどうしたって照れ臭かったから。
(「……私もセラピアさんと同じくらい口下手よね」)
 それでも。
 言葉から、この思いが滲み出てくれればいい。
 少しでもいい、この切なる感情が緑の娘の心に触れてくれればいい。
 天の光に願うのは、ただそれだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月22日


挿絵イラスト