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Plamotion Christmas ACE

#アスリートアース #その他スポーツ #プラクト #五月雨模型店

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●在り得た未来
 世界の破滅というものがあるのだとして、それは一体誰が引き金を引くのか。
 ボーイ・ミーツ・ガールは終わりを告げる。
 世界に君と俺とだけであったのなら、きっとこんなことにはならなかったのだろう。
 ごめんね、と謝られた言葉は己の胸を引き裂く。
 忸怩たる思いを胸に『クリノ・クロア』は立ち上がる。己の腕の中には冷たくなった『ツェーン』の骸があった。
「謝るなよ。怒ってくれよ。いつもみたいに。君は生きて。君だけは幸せになるべきだったのに」
 戦いに翻弄され。
 戦いに利用され。
 戦いに死んだ。
 それが『ツェーン』と呼ばれる少女の全てだった。

 卓越したキャバリア操縦技術は、人の生き方すら規定する。
 誰かの幸せを踏みにじることでしか生きることができないのならば、何もかも失うのが筋であった。
 戦うことしかできなかった。
 戦う以外の術を知らなかった。
 自分の存在を証明する手段を保たなかった。けれど、彼女は幸せだったのかもしれない。
 己の死に涙する愛しい人がいることが。
「なら、俺は……」
 彼女に生き方を強いた世界を滅ぼす。
 赤い機体が立ち上がる。
『アスラ』と呼ばれた機体。

「『クロア』!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の声が聞こえる。
 彼女の『ツェーン』の声は聞こえないのに。アイツの声だけが聞こえる。憎しみに歪んでいく。彼女が好ましく思っていた優しさは、ねじれ、歪み、破滅へと足を踏み出させる。
「彼女のいない世界なんて、なくなってしまえばいい――!」

●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
 それはプラスチックホビーを作り上げ、自身の動きをトレースさせ、時に内部に再現されたコンソールを操作して競うホビースポーツである。
 思い描いた理想の形を作り上げるというのならば、たしかに『プラクト』は心・技・体を兼ね備えたスポーツ。

 プラスチックホビーを作り上げ、フィールドに投入し自分自身で動かす。
 想像を育む心、想像を形にする技術と、想像を動かす体。
 そのいずれもが欠けてはならない。どれか一つでも欠けたのならば、きっと勝利は得られないだろうから。

「おいおいおい! クリスマス前なのになんつー展開だよ!」
『アイン』と呼ばれる少女は第二回世界大会、『ワールド・ビルディング・カップ』――『WBC』の第三回戦を前にしてモニターに映し出された人気アニメシリーズ『憂国学徒兵』の最新作『CC』の最新話を見て、あんぐりと口を明け広げていた。
「どうなるんでしょうね、この後……」
 同じく『ツヴァイ』と呼ばれる少女も思わずモニターを見つめ、作業の手を止めてしまっていた。彼女らしからぬことであった。
 けれど、それもそうなのである。
 最新作である『CC』は争い絶えない世界観でのボーイ・ミーツ・ガールな作品だったのだ。そこに来てヒロインが死ぬというなんともバッドエンド一直線な展開に彼女たちは目を見開いているのだ。

「とは言え、『アスラ』のデザインは良いな! 光の翼エフェクトでお値段が跳ね上がりそうだが!!」
「で、ででも、あんなに展開ギミックあって強度は大丈夫なんでしょうか?」
『ドライ』と『フィーア』も別角度から首を傾げている。
 だが、今はそこに注目している暇はない。
 そう、WBC第三回戦が迫ってきているのだ。
 彼女たちが作り上げたホビー『セラフィム』は人型ロボットである。
 第二回戦で急遽組み上げたのだが、元々の機体は第三回戦に間に合わぬため、引き続き同じ機体を使うのだ。

 けれど、第三回戦の形式が問題であった。
「確かにクリスマス前っていうのはわかっているよ。心躍るさ。でもさ!」
「ええ、どう考えても相手チーム……『梟門鴉鷺連合』に有利な形式です」
「レース形式とはな! 元々二つのチームが連合になったチーム……一つは射撃特化、一つはレース特化……!」
「つ、つつつまり、妨害と最速最短で一気に試合展開を決められちゃうってことです、よね……!?」
 しかも、今回も観客席から両チームのサポーターが飛び入りできる形式になっている。
「なんだよ、このクリスマス商戦チラシレースってのは――!」

●第三回戦
 ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は一枚のチラシを広げ、グリモアベースでウンウン唸っていた。
 集まってきていた猟兵たちは皆、まだかな、と思ったが、いつまで経っても彼女は面を挙げなかった。
 一人の猟兵が彼女からチラシを奪う。
「あああっ! 待ってください! 待ってください、選んでますから!!」
 そういうの良いから、と猟兵たちは思っただろう。
 彼女が手にしていたのはおもちゃ屋さんのクリスマス商戦のチラシであった。
 赤と緑に縁取られたクリスマスカラー満載なチラシ。
 特に値引きしているわけじゃないのに、なんともワクワクしてしまう紙面である。

「……ぶー」
 ぶーじゃないが。
「……今回も変則マッチです。第三回戦、『五月雨模型店』のお相手は例に漏れずダークリーガーです。『梟門鴉鷺連合』と呼ばれる連合チームで、射撃チームとレースチームの両面を持った手強いチームです」
 なんか彼女の説明が雑である。
 そんなにチラシ取り上げられたのが不服であったのだろうか。
「雑じゃないです。ちゃんと説明しています! 今回の変則マッチは、両チームのサポーターも参加できます。けれど、前回のようにチケットが買い占められている、ということはないようです」
 つまり、正々堂々、とうわけだ。
 しかし、それだけならダークリーガーである、というところだけが問題であって、自分たちがすることは少ないように思える。
 だが、そこに今回の変則マッチの肝がある。

「はい、今回はクリスマス商戦チラシレースなのです!」
 何もわからん。
 何一つわからん。
「試合会場が一つの大きなおもちゃ屋さんのチラシを模しているのです。レース会場フィールドにはチラシに乗っている商品が積み上げられている。
 本来なら、生身である自分たちが組み上げて遊ぶものであるが、今回は、フィールドに投入されたホビーで、ホビーを作成しながらフィールドコースを開拓していかなければならないのである。

「つまり、ちょっと変わった障害物競走と言いましょうか。障害物を乗り越えるのではなく、作って積み上げられた罪を……あ、いえ、積みを崩しながらコースを走破しなければならないのです」
 今、罪って言った?
 ナイアルテは頭を振る。言ってませんけど? みたいな顔をしているが、彼女は大声で叫ぶのだ。
「さあ、皆さん。クリスマス商戦に乗り遅れてはなりません。『レッツ・アクト』です――!」


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアスリートアースにある未だ公式競技化されていないスポーツ『プラクト』の世界大会『ワールド・ビルディング・カップ』――『WBC』の三回戦。
 今回も変則試合で、観客席からサポーターが飛び入り参加できます。

 ※『プラクト』は正式には『プラモーション・アクト』と呼ばれるホビースポーツです。
 フィールド内に自作したプラスチックホビーを投入し、アスリートの動きをトレースする『モーション』タイプと、操縦席を作り込んで操作する『マニューバ』タイプが存在しています。
 主に『モーション』タイプはロボットや美少女プラモデル。『マニューバ』タイプは、カーモデルやミリタリーモデルとなっております。

●第一章
 すでに試合は始まっています。
 まずはレースコースに山積したホビーを、自らが作り上げたホビーたちでもって組み上げ、罪を精算……あ、いえ、積みを解消していくことからはじめなければなりません。
『五月雨模型店』のメンバーたちも一生懸命に積みを解消しようとしていますが、圧倒的な物量を前に苦戦しています。
 プラスチックホビー大のニッパーなどの工具も装備するのを忘れずに。
 自らのホビーをフィールドに投入し、手助けしてあげましょう。

●第二章
 集団戦です。
 皆さんのお手伝いでコースに積み上げられた積みホビーは解消されようとしています。ですが、『アーチャーガールズ』による遠距離狙撃で妨害してきます。
 皆さんはこの妨害を排除するため、人型ロボットホビーを操る『アーチャーガールズ』たちを打倒しなければなりません。

●第三章
 ボス戦です。
 凄まじい速度で積みの解消されたコースを直走るダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーへと追いすがります。
 基本レースは妨害ありきなので、彼の操るホビー『ハチヨン駆』と戦うことになります。
 ですが、彼もまた攻撃を仕掛けてくるので、これをうまく躱しつつ『五月雨模型店』の面々をゴールに届けましょう。

 それでは、新たなるスポーツ競技『プラクト』を巡るダークリーガーと戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『その他スポーツを練習しよう』

POW   :    体当たりで果敢にチャレンジする

SPD   :    器用にコツを掴みながら練習する

WIZ   :    ルールや戦術の理解を深める

イラスト:十姉妹

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 すでに『WBC』第三回戦は始まっていた。
「どんだけ積んでんだよ!」
「お金持ちなんですかね?」
「『ゼクス』の家みたいだな! これは!」
「で、でも……自分たちのほ、ホビーでホビーを組み上げるって、なんだか新鮮でいいですね」
『五月雨模型店』のメンバーたちは、皆一様に試合会場のレースコースを塞ぐようにして山積されたプラスチックホビーの箱を前にして足を止める。
 これはレース競技という変則マッチである。
 妨害はもちろん許されているが、コースを塞ぐホビーを自分たちのホビーを操って作って退けていかねばならないのだ。
 つまり、言ってしまえば等身大ホビーを作りつつ、レースコースを広げていかなければならない、ということだ。

 対する『梟門鴉鷺連合』も多くのサポーターたちが集って、レースコースを拡張していくためにホビーを組み上げていく。
「毎回、みんなのお手伝いをもらえるとは限らねーけど……でも、手伝ってくれてありがとな!」
『アイン』の言葉は参加してくれているサポーターたちに向けられている。
 彼女たちは無名の『プラクト』チームであったが、しかし、此処まで強敵を打ち破ってきている。
 そのおかげか、彼女たちにも多くのサポーターがついてくれているのだ。
 とは言え、まだ足りない。『梟門鴉鷺連合』は以前のダークリーガーたちのように卑怯な手はうってはこない。けれど、それでも有り余る力を有しているのはうかがえるだろう。
 彼女たちがダークリーガーに敗れることは猟兵たちにとっても望むものではない。

 ならば、猟兵たちが為すべきことは一つ。
「さあ、積みを解消して、新年を気持ちよく迎えようぜ!」
 プラスチックホビー大のニッパーやらデザインナイフをやらを構えた彼女たちの『セラフィム』が拳を突き上げる。
 大掃除めいた、罪の……積みの解消の始まりだった――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊だが、関係ない

陰海月「ぷっきゅ!」

…陰海月語を翻訳します…

わー!とても楽しそう!
だから、最初からぼくで行くんだー。使用機体は操舵手クラゲ、モーションタイプだよ!
※販促になってたりする。

えーと、ホビー大の工具は、この前買ってた!
うん、クラゲ兵に似合うかなって思って。

それを使って組み立てていくよ!
モーションだからね、ぼくもマイ工具持っての動き。それが操舵手クラゲに伝わるから…速く。でも丁寧に組み立てていこう!
広くしなきゃいけないから、もう目の前にあるのを作っていく!

たーのしーいなー!



 眼の前に広がるレースコース。
 それは普段であれば夢のような光景であったことだろう。さながら、此処は1/1スケールの世界。
 とは言え、それは自身のプラスチックホビーが投入されたが故である。
 そう、今回のWBC第三回戦は変則マッチ。
 世界大会らしいお祭り騒ぎめいたルールが追加されている。

「ぷっきゅ!」
 わー、楽しそう! と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と共にある『陰海月』は自分のプラスチックホビー『操舵手クラゲ』をフィールドに投入し目を輝かせる。
「ルールわかってるか?」
「ぷきゅ!」
『五月雨模型店』の『アイン』と呼ばれる少女の言葉に『陰海月』が頷く。
 今回はレース形式。
 けれど、目の前に積み上げられたプラスチックホビーを作ってコースを作っていかなければならない。それも、自分たちが操るホビーと同スケールのホビーを、だ。
 つまり、1/1スケールのホビーを組み立てるのと同じことをしなければならないということなのだ。
 それは途方もない労力を要することだろう。

 けれど、互いのチームを応援するサポーターたちの飛び入りが認められている。
 対する相手チーム『梟門鴉鷺連合』も同様の条件なのだ。
「よーし、んなら、作って作って作りまくるぜー!」
「きゅ!」
『陰海月』はモーションタイプであるがゆえに、自分の多数ある触腕を最大限に発揮し、次々とホビー大の工具を操って行く。
 パッケージの箱を明けるだけでも結構な重労働である。
「タイミング合わせてなー!」
「ああ! こっちを持ち上げる!!」
「ふ、袋まで開けないといけないんですかぁ!?」
『五月雨模型店』のメンバーたちも苦戦している。けれど、開封されれば『陰海月』の独壇場である。

 彼の操るホビーは『操舵手クラゲ』。
 そして、モーションタイプで操るということは。
「きゅきゅきゅ~!!」
 全ての触腕が自在に扱えるということだ。
 一瞬でランナーから切り離されていくパーツたちが宙を舞う。それを『アイン』たちが受け止めて、説明書を見上げる。
「よっし、切り出しは任せたぜ!」
「きゅ!」
 おまかせ! と『陰海月』は一瞬で切り離したパーツたちをみやり、すぐさま別の触腕で持ってゲート跡を紙やすりで処理していくのだ。

「きゅきゅ~!」
 楽しい。
 レースコースを切り開いていくためには積みあげられたホビーを作り上げなければならない。
 いつもなら、それはお金を払ったり、お小遣いの範囲でしなければならないことであったけれど、今回は違う。競技という形を借りている以上、いくらでも作って良いのだ。
 それが楽しくて仕方ない。
 なんのしがらみもない、ただ順髄に組み上げることが楽しいという気持ち。
 大人が忘れてしまいがちな、そんな感情を目いっぱいに発露する『陰海月』は『五月雨模型店』のサポーターとして、次々にレースコースを塞ぐ積みを崩していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニィナ・アンエノン
良いね良いね、こーゆーのってわくわくする!
それが誰かの罪の精算の為だったとしても、ね☆

せっかくプラモ大の工具も用意してくれたけど、にぃなちゃんやってみたい事があるんだよね!
ほら、人型の小さなロボットが人間のお手伝いするアニメとかあるよね?
フレームで武装な少女や姫とかそーゆーの!
人間用の道具を全身で使って一生懸命頑張る姿……健気だよね!
だから自分がモデルのプラモで大きなニッパーとか使って組み立てる!
ほら、アニメに出てくる子達みたいでしょ?
移動速度はユーベルコードで瞬間移動して補うよ。
色んなポーズしたにぃなちゃんモデルの立体映像をたくさん作っておけば、目の保養にもなるでしょ☆
さ、どんどん行こう!



 クリスマス。
 それは冬の一大イベントであり、子供も大人も心躍る響きである。一部ちょっとこう、怨嗟の声とか聞こえてきそうであるが、今回はそういうのとは無縁である。無縁であるったら無縁である。
 恋人たちのクリスマスだけがクリスマスではないのである。
 つまり?
 そう! クリスマス商戦! 特にセールもなんにもやっていないが、なんかこう勢いに飲まれてつい買っちゃうし、チラシを見れば心踊っちゃうやつである!
「良いね良いね、こーゆーのってわくわくする!」
 WBC第三回戦、変則マッチである『五月雨模型店』と『梟門鴉鷺連合』の試合に選ばれたのは、『クリスマス商戦チラシレース』なのである。

 ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は己がフィールドに投入したホビーを通して見える光景に目を輝かせていた。
 そう、彼女の眼の前に広がるのはチラシをもしたコースに所狭しと山積されたプラスチックホビーと同じ等身大の箱、箱、箱、箱の山である!
「見ているだけで楽しくなってくるのは同意する!」
『五月雨模型店』の『ドライ』の言葉にニィナは笑う。
「誰かの罪の精算の為かもしれないけれど、ね☆」
「それはそうだ! でもまあ、にぃなお姉さんならば、お茶の子さいさいだろう!」
 そういって『ドライ』の『セラフィム』がホビー大の工具を投げ渡してくれるが、ニィナは受け取らなかった。
 何故かと言うと。

「にぃなちゃんやってみたいことあるんだよね!」
「何を?」
「ほら、人型の小さなロボットが人間のお手伝いするシーンってアニメによくあるよね?」「ああ、ミニミニな青い狸型ロボット的な……」
「フレームで武装な少女や神姫とかそーゆーのもね!」
 ああ、と『五月雨模型店』やサポーターたち、はては『梟門鴉鷺連合』のダークリーガーたちも、あったなぁという顔をする。
 ということは、ニィナはそれを再現したいと思っているのだろうか?
 できるのか? そんなことが、と思っているのかも知れない。

「人間用の道具を全身で使って一生懸命頑張る姿……健気だよね! だから!」
 ニィナの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女のホビーは彼女をモデルにした美少女プラモデルである。水着仕様なのは、まあ、そういうことである。気にしたら負けなのである。販売促進の一貫なのである。そういうもんなのである!
 そんな彼女が掲げるは天球儀型の杖。
 掲げたその天球儀から現れるは、無数の立体映像。
「……これは?」
「特になにかしてくれるわけじゃないけど、一杯いろんなポーズを取ってくれるよ☆ ほら、目の保養になるでしょ☆」
「なるにはなるけど! これはなんていうか!」

 そう、立体映像は皆みーんな、ニィナの水着姿であった。
 それがあれやこれや、グラビアアイドルも裸足で逃げ出すレベルの抜群なプロポーションでポーズを取ってくれているのだ。
 そのユーベルコードは、本来、立体映像を消すことによって、その位置まで瞬間移動するためのものであった。
 だが、今回は違う。
 まあ、瞬間移動も大きなホビーを作り上げるために必要であったけれど、なんといってもニィナとコラボーレションしたプラスチックホビーの販売促進になるのだ。

「寒い季節だけれど、それでも心はホットにね☆」
「販売促進がすごいな!」
「コラボ先企業様案件だからね~☆ さ、どんどん行こう、『ドライ』くん☆」
 ニィナはほらほら、と『ドライ』の『セラフィム』を引っ張って、立ちふさがる積みを解消すべく、彼女のプロモーションムービーと共にフィールド内を席巻するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八洲・百重
●POW

どっひゃ~
これまた積みに積んだもんだなぁ
おらもこうならねぇように気を付けねぇとだ
倉庫番ゲームなら関太郎の出番だども、ホビーでホビーを組むのなら…この前組んだ『ヴァンガイ』の人気プラモシリーズ『機甲戦騎シュヴァリエ』
格闘戦特化型フレーム採用でヴァンプラ最高峰の可動を実現した『ライジング・シュヴァリエ』の出番だべさ!
まるでおらがプラモになったかのような可動性なら朝飯前だぁ

…あ、これってウィルくんが自慢してたネオ四駆ってホビーだべ
|GP《グランプリ》ウォッチとか言う…スマートウォッチだっけか?
それを介して指示を送っと搭載されたCPUが自己判断して指示通りに走る上に学習して行くだなんて、おらが子狸だった頃にはマンガでやってたみてぇな話だから科学の力ってすんげぇなぁ
まるでラジコンを作るような精密部品ばりだども…っしゃ!
気合入れて作るべ!

…ふぅ~、いい感じに仕上がったべさ
GPウオッチもライジングにぴったりだし、#ネオ四駆レース のように並走できるべな
名前は…ライトニングエッジに決まりだべ!



 眼の前に広がるはレースコース。
 しかし、積み上がった数多くの商品は、『プラクト』競技そのものが企業案件であることを示すように多くの企業が持ち寄った新商品であったり、在庫商品であったことだろう。
 WBCの第三回戦において、これらを自らのホビーで持って組み立ててレースコースを作り出していく、というのは販売促進という観点に置いても大いに奮うところであった。
「どっひゃ~これまた積みに積んだもんだなぁ」
 八洲・百重(唸れ、ぽんぽこ殺法!・f39688)は自らが所属するプロレス団体の寮にはプラスチックホビーの類を手狭故に置いておけないとレンタルガレージを借りている身である。

 この積み上がったホビーの箱、パッケージの山は遠くない彼女の未来を示していたかもしれない。いや、そうであったのならば、メーカー的にはありがたいことであるけれど。
 しかし、これはレース。勝負なのだ。
「倉庫番ゲームなら『関太郎』の出番だども、ホビーでホビーを組むだかぁ……」
「倉庫番ゲームってなんだ?」
「コンピューターゲームの一種です。パズルゲームと言えばいいでしょうか」
『五月雨模型店』のメンバー、『アイン』と『ツヴァイ』が百重の言葉に首を傾げる。
 これがジェネレーションギャップというやつである。
 百重はちょっとしょんぼりした。
 倉庫番ゲームもいずれ、カクリヨファンタズム行きになるのだろうか。

 とは言え、それは今横に置いておかねばならない。
「ほったら、今回はこれだべ!『ヴァンガイ』の人気プラモシリーズ!『機甲戦騎シュバリエ』、各当選特化フレーム採用! ヴァンプラ最高峰の可動域を実現した『ライジング・シュヴァリエ』の出番だべさ!」
 ぺっかー! と百重は自らが組み上げたプラスチックホビーをフィールドに投入する。
 流れるような着地。
 モーションタイプで駆動させることを前提としたような可動範囲でもって彼女は己のプロレスラーとしての技量を示すようにしてフィールドに立つのだ。

 まるで自らがプラモデルとなったかのような錯覚を覚える。
 否!
 今こそ百重はプラスチックホビーと一心同体となっているのである。
「これなら、細かい作業もお手のもんだべ!」
「じゃあ、こっち頼んだぜ!」
 よいせ、と『アイン』の『セラフィム』が運んできたのは『ネオ四駆』と呼ばれるプラスチックホビーである。
 類似ホビーに『ハチ四駆』というホビーもあり、今回の『梟門鴉鷺連合』のダークリーガーも使用している。世には多くの類似ホビーが存在するものである。
「……あ、これってウィルくんが自慢していた『ネオ四駆』ってホビーだべ」
 たしか、と百重は|GP《グランプリ》ウォッチとかいう……スマートウォッチだかなんだか、そういうものを使って指示を出すことで搭載されたCPUが自己判断し指示通りに走る上に学習していくのだとか、そんなことを語られたことを思い出した。

 はっきり言ってすごい。
 メーカーの本気を感じる。謂わば、次世代を見越した商品仕様であると言えるだろう。
「おらが子狸だった頃には漫画でやってたみてぇな話だなぁ……科学の力ってすんげぇなぁ」
 とは言え、これを自分が、いや自分のホビーで組み上げるのはちょっと大変に思える。
 細かいパーツが多いのだ。
「んだぁ……これはこまったべ……あ、でもそっか。人間大なら細かくて大変だけんども、ホビー大の視野なら!」
 そう、細かいパーツも大きなパーツに早変わりというものである。
 彼女は奮起する。
 いつもだったら、箱を開けて、そっと閉じてしまうであろう難しいキットも、この『プラクト』フィールドにあっては作業しやすいのだ。

 如何に精密部品ばかりであったとしても!
「っしゃ! 気合入れて作るべ!」
 彼女は臆することはなかった。次々とパーツを説明書と照らし合わせていく。
 少し説明書が大きいのは気になったが、むしろ、形を確認しやすくなったと思えば良いのだ。
 シャーシにタイヤ、モーター、CPU。
 そうしたパーツを組み上げていけば、自分のホビー大ほどもあろう車体が組み上がる。
「ふんむー! いい感じだべさ。こいつの名前を決めてもいいんだべ?」
「そりゃ作ってくれた人のもんだろうからな。でも、どうするんだ?」
「GPウォッチがあれば掛け声に合わせて走らせることができるべ。なら、並走してみてぇって思うもんだべ?」
「それはそうだ!」
「んだら、名前は……『ライトニングエッジ』に決まりだべ!」
 百重は己のホビーで組み上げた『ネオ四駆』ホビーを掲げ、盛大に命名するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーシア・ロクス
積み……そういえば今年も遊べてないゲームがまだ
2P「まだいいじゃないっすか……わたしの好きジャンル、SLGとかADVとかそっちっすよ……」
3P「全員分の結婚END見るんだー、とか言ってましたっけね。……新年のころに」

……この話、止めましょう
2P「気を取り直して。いつものようにわたし(2P・小)がモーション操作で『アルミィ先生』。
わたし(1P)がマニューバー…というか『鋼鉄のカギ』を介しての操縦で『アイゼンケーファー』っすね」
3P(通常サイズ)「そして、わたしのUCの効果でわたし(3P)を「召喚」、わたしが指示を出し、細かい作業を2P、大雑把な作業を1Pのわたしが担当してください!」



 あらゆる趣味において積み、というのはいかんともしがたい問題であろう。
 少なくともホビー趣味には収納スペースという問題が存在している。
 アレも欲しい。これも欲しい。
 人の物欲というものには限りはなく。けれど、居住問題からして無限には収納することはできない。そういうものなのだ。悲しいけれど。
 とは言え、ゲーム趣味を持つ、いや、ゲームというそのものに対して並々ならぬ思いと特性を持つユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)は目の前に広がるWBC第三回戦、変則マッチである『クリスマス商戦チラシレース』のフィールドを見上げて、己の積みを思い出していた。
「積み……そう言えば今年もあsべてないゲームがまだ」
「まだいいじゃないっすか……わたしの好きなジャンル、SLGとかADVとかそっちっすよ……」
「全員分の結婚END見るんだー、とか言ってましたっけね……年始の頃に」
 2Pの言葉に3Pは、別に同情的でもなんでもない言葉を紡ぐ。
 いやまあ、諸々忙しかったのだという言い訳はできる。

 そうでなくても猟兵というのは年始にかけて大忙しになりがちである。
 年のはじめに抱負を抱く前に迫りくるオブリビオンをちぎっては投げ、ちぎっては投げしなければならないのだ。
 今年はこれを! と思っても中々手つかずのままにずるずると言ってしまうのは無理なからぬことであった。
「……この話、やめましょう」
 不毛が過ぎる、とユーシアは肩を落とす。
 どんなに願っても流れていった月日は戻っては来ないのだから。

「気を取り直して!」
 2Pがフィールドに投入したのは『アルミィ先生』である。
 大変に素晴らしいデザインの美少女ホビーはフィールドの中でも一層輝きを放つようだった。そして、ユーシア自身は『アイゼンケーファー』を投入する。
 今回は『クリスマス商戦チラシレース』と呼ばれるレースコースをホビー自身が組み上げることによって積みを解消し、開拓していく形式になっている。
 となれば、やはりサポーターの人数というものが鍵となるのだ。

「マルチプレイ:口出しアドバイザー(ワタシノチカラガヒツヨウカナ)というわけです! わたしたち、いきますよ!」
 3Pのメガネがきらんと光る。
 ユーベルコードに寄って人数を増やしたユーシアたちのホビーが駆け出す。
 美少女ホビーとロボットホビーの共同作業。
「さあ、あっちのホビーの箱から片付けていきましょう!」
「でっかくないですか!?」
「あきらかにパーツ数すごそうっす」
「確かにそうでしょうとも。けれど、大物はいつだって後回しにしてしまうもの! ならば、先に大物を片付けてしまえば、後は小物を片付けるだけです!」
 人の心って不思議なものである。
 面倒なことや、大きな仕事っていうのはついつい後回しにしたくなるのである。
 大事の前の小事って言葉もあるしねって、誰もが納得してしまうのだ。

 けれど! だからこそ!
「先に大物を片付けないで後で泣きを見る羽目になるのです! 夏休みの宿題だってそうでしょう!」
 3Pの言葉に並々ならぬ説得力を感じたのはユーシアたちだけではなかった。
『五月雨模型店』のメンバーたちも、思い当たる節があるのだろう。
 痛いところを突かれたように硬直してしまっている。
「尻込みしていないでやりますよ!」
 3Pのその言葉に後押しされるようにユーシアたちは大物キットを片付けるべく、己のホビーでもってフィールドに駆け出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

きたね!
って、いえ、ナイアルテさんのサンタコスじゃなくて!
くるとは確信してるけども!

それじゃなくて、こういうシチュがついに来たねってこと!

必要なのは人手。
しかもそれをホビーでするなら、これはもう『フィーア』さんの独壇場!

『フィーア』さん、いまこそわたしたち2人の愛の結晶『幻影』の出番だよ。
手数をどどーんと増やして、レースコースを広げていこう!

さぁ『フィーア』さん、わたしが隣で支えていてあげるから、
その実力を発揮しちゃってー♪(むぎゅむぎゅひしひしりおりお)

……痛いの。
サージェさん、最近ツッコミ強くない!?

わかったよー。
わたしも【RFTRD】使いながら妖精さん召喚するから!


サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、トラメちゃん大ピンチの巻っ?!
えっ、にくきゅうなトラメちゃんでどうやって罪を清算しろと!?
とりあえず手を出してみましょうか……
えいっ(ねこぱんち。積みは崩れる)
理緒さん、私たちはここまでのようです……
ってすでにりおりおしておられる!?
っていうか、むぎゅむぎゅひしひしりおりおってなに!?
進化の石とか使いましたか!?
いえ、此処こそトラメちゃんの出番!
ひっさつ!ツッコミにくきゅうぱんち!!
ふぅ、大惨事は阻止されました

えーとトラメちゃんの機動力で運搬とか支えるとかお手伝いしましょうかね
【かげぶんしんの術】でトラメちゃん大増殖なお手伝いをしましょう!



 クリスマスが今年もやってくる。
 楽しい思い出を作るために! そう、クリスマスとはすなわち多くの幸せな思い出でもって形作られる一大イベントなのである。
 寒い冬に暖かい気持ちを!
「きたね!」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は思わずガッツポーズを取っていた。
 なんで?
「サンタコス! くるよね!?」
 来ません。
 予定はないのです。悲しいことだけれどね。
「あ、うそうそ! それじゃくて。あ、いやそれもあるとうれしいけれど、こういうシチュがついに来たねってこと!」
 どういうことなんだろうと、『五月雨模型店』のメンバーは思った。

「およびとあらば参じましょう! 私はクノイチ、『トラメ』ちゃん大ピンチの巻っ?!」
 意気揚々とやってきたは良いが、今回の『クリスマス商戦チラシレース』の概要を知ったサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思わず天を仰いだ。
 そう、彼女のホビーは四足歩行の獣型なのである。
 肉球カワイイね。
 じゃあなくって! そう、『クリスマス商戦チラシレース』はフィールドに山積されたホビーという名の積みを組み立て解消していくことでレースコースが現れる仕様になっているのだ。
 それも、ホビーがホビーを組み上げるという変則マッチ!
 つまり、サージェの操る『トラメ』は圧倒的に不利!
「この積みをどうやって精算しろと……」
 にゅ、と出した肉球パンチ。
 積みは崩れるが、しかし、それは物理的にである! だめだめ、今回はちゃんと組み立てないと積みは精算されたことにはなりません!
「理緒さん、私達は此処までのようです……」
 と、サージェはともにやってきていた理緒に顔を向けて目を見開く。

 そこにあったのは理緒と『五月雨模型店』のメンバーの一人『フィーア』の姿。
「『フィーア』さん、いまこそわたしたち二人の愛の結晶『幻影』の出番だよ」
「あ、で、でも、これ……」
 幻影装置で生み出せるのは、実態のない分身だけである。
 つまり、手数が増えたように見えて実際には増えていないのである。
「そんなの関係ないよ! わたしが『フィーア』さんを隣で支えてあげるから、その実力を発揮しちゃってー♪」
「え、え、ええ……?」
 そう、理緒はユーベルコード、Greasemonkey(グリースモンキー)でもって電子の妖精を呼び出しながら、幻影装置に寄って生み出された『セラフィム』の幻影に実態を持たせているのだ。
 これで手数は倍増!
 そしてついでにむぎゅむぎゅひしひししているのは、りおりおってことで。
 なんかこう言葉の通じないあれな感じがしているが、とにかく理緒は『フィーア』をサポートすることに決めたようである。

「……むぎゅむぎゅひしひしりおりおってなに!?」
 そんな理緒の姿にサージェは目を見開く。
 まあ、さもありなんって感じである。わからん。誰にもわからん。
 けれど、理緒のむぎゅむぎゅひしひしりおりおって状態が、青少年の健全な精神の育成にはあんまりよろしくないってことだけはサージェにもわかった。
「進化の石とか使ったのかも知れませんが、今こそ『トラメ』ちゃんの出番!」
 くらえっ! と言わんばかりに理緒に叩き込まれるは!
 ひっさつ! ツッコミにくきゅうぱんち!!
「……痛いの」
 痛くない!
「大惨事いたる前になんとか阻止できました!」
 何を? 諸々である!

「サージェさん、最近ツッコミ強くない?!」
「強くありません。これも皆さんの健全な精神を守るために必要なことだったのです! いいですか、理緒さん。私達ができるのはお手伝い! つまり、このパーツを運搬したりなどのサポート!」
「うぅ、サージェさんがクノイチっぽくないのはいつものことだけど、さらに輪をかけてまともな事言ってる……」
「それでよくないですか!?」
「わかったよもー」
 手伝います、手伝いますぅと理緒は電子の妖精を召喚し、そのままサージェのかげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)でもって増えた『トラメ』と共に切り出したパーツの運搬に勤しむ。

「……前置きのやり取りがなければ、至極真っ当なことしてくれてるんだけどなー」
『アイン』たちはそう思ったが、それ以上はいけない、と自重するように彼女たちの活躍によってレースコースが切り拓かれていく様を見守るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

五月雨のみなさま、おはよーございます!
|ステラさん《やべーメイド》の|朝のルーティン《雄叫び》、いつもご迷惑おかけしてます。

『もんっ』とか言っちゃってるぶん、やべー度爆上がりしてますから、
店長が脱出済みみたいですね、よかったです。

って、エイルさんとかいたら、ステラさん使い物にならないじゃないですか。
今回は召されてる時間ないですからね?

ということで、さっそく【ソナーレ】でごー、です!

ソナーレは楽器も扱えるくらい手先も器用ですし、
今回は音楽の可能性を追求……って、ステラさん!?
いまの斬艦刀本気でしたよね!? 加速したら効率良くなりますのに!

え。
なんでみんなまでジト目なんですか……?


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!
いえ、此度もお留守番でしょうか?店長様?
残念ですがメイド寂しくないもんっがんばります!
あ、ところでエイル様(仮)やフュンフ様はいらっしゃるのでしょうか?
もしいらっしゃるならぜひご助力をお願いしたいところです

ではでは
レッツ・アクト、です
私はもちろんクリムゾンリッパーで(赤いセラフィム・リッパー)
マニューバコントロールでも
クリムゾンリッパーの手先なら問題なく挑めるでしょう

最大の問題はルクス様の演奏……
いえ、今回は演奏する隙とかありませんし
真面目にお手伝いすれば終わりそう……って早速応援の演奏をしようとしない!!(斬艦刀ツッコミ)



 それはいつものことであったので『五月雨模型店』の面々は、聞こえているが特に驚くことはなかった。
 何にって、それは。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びであったし、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)に言わせれば、それは|朝のルーティン《雄叫び》であったことだろう。
「『五月雨模型店』のみなさま、おはよーございます! いつもまいどご迷惑おかけしてます」
 その言葉に『クリスマス商戦チラシレース』というWBC第三回戦、その変則マッチに挑んでいた『五月雨模型店』のメンバーたちは、いつもどおり、という顔をして頷く。

 わかってる。
 みなまで言うな、と言わんばかりの得心顔であるのは、ステラの叫びが恒常化しているからであろう。
「いえ、此度もお留守番でしょうか? 店長様は!?」
「そりゃそうでしょ。これ世界大会だぜ?」
『アイン』の言葉に至極真っ当なこと言ってるなぁとルクスは思ったが、ステラが執拗に会いたがっている店長はお店のモニターで配信を見ていることだろう。
「残念ですがメイド寂しくないもんっがんばります!」
「『もんっ』とか言っちゃってるぶん、やべー度爆上がりしてますから」
 ステラの『もんっ』にルクスはちょっと、うわ、という顔をした。『五月雨模型店』のメンバーは、まあ、そういう『もんっ』かな、と思っていたので特にコメントはしなかった。塩である。

「あ、ところで『エイル』様(仮)や『フュンフ・ラーズグリーズ』様はいらっしゃるのでしょうか?」
「いや、あいつら最近見ないよな」
「ああ! なんだか目が覚めたとかなんとか言っていたような気がするが、そのうちひょっこり顔を出すだろうさ!」
『アイン』と『ドライ』の言葉にステラはいるのならば助力を願いたかったのだが、いないものはしかなたい。
「というかですね、『エイル』さんとかいたら、ステラさん使い物にならなくなっちゃいますから、実質今の状況の方が作業効率的に良いのでは?」
 ルクスは訝しんだ。
 正解である。ここに『エイル』関連の某がいるのならば、ステラはそっちにかまけてしまう。否定したって無駄である。
 これまでの経験というか、これまでの経緯っていうか、そういうのを見れば一目瞭然だし、常識なのである。

「そんなことはございません。私、完璧で最強なメイド様ですよ? メイドに不可能などありませんので」
「音楽の可能性・そのいち(オンガクノカノウセイソノイチ)!」
 早速、と言わんばかりにルクスが『ソナーレ』から演奏を開始しようとしている。
 だが、その瞬間放たれているのは『クリムゾンリッパー』の無敵斬艦刀の一撃であった。
「ちょぉい!? ステラさんなんで!? なんでなんです!?」
 ギリギリで『ソナーレ』が無敵斬艦刀の一撃を真剣白刃取りで受け止めている。
「いえ、今回は演奏する隙とかありませんから。斬艦刀ツッコミというやつです」
「危なすぎません!? 漫才やってる暇ないんですよ!? それにわたしの演奏で作業効率がアップしますよ! 加速しますよ!」
 だから、とルクスは演奏をしようとしていたのだ。
 至極真っ当な理由である。
 大変素晴らしい援護であることは言うまでもない。

 けれど、である。
 その代償が鼓膜というのであれば、話は別なのだ。
「加速しても鼓膜やられるんじゃあな……」
「わ、悪い演奏だとは思っていないんです、けど……けどぉ……」
「この後の試合に影響でませんか? エビデンス取れてますか?」
『五月雨模型店』のみんなのジト目とツッコミにルクスはたじろぐ。
 総ツッコミであった。
 なんていうか、ここまでツッコまれるとなんて言っていいかわからない。というか、今の今までこの二人特に何もしていない。
 いや、年末に繰り広げられるお笑いコントのショーレース的なネタを見せられている気分ではあったが。

「兎も角、作業してくれよー!」
『アイン』の言葉にルクスとステラは一先ず同士討ちの危機を乗り越える。
「わかりました。はい、ルクス様、がんばりましょう」
「な、なっとくいきません……なんで、ステラさんの方が良識派みたいな雰囲気で締めくくられているんですか?」
 尺の都合である。
 そう、クリスマス商戦チラシレースはまだまだ始まったばかりなのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シルヴィ・フォーアンサー
……久々のお手伝い。
『正確にはお手伝いのお手伝いだが』
(某銀髪で青い瞳のスーパーヒロイン猟兵に貴方の方がお役に立てそうですと頼みこまれた)

とりあえず受けた以上はお仕事こなすよっと。
前と同じマニューバータイプなミドガルズそっくりのプラスチックホビー。
今回はガトリング砲の代わりに工具装備で出撃。
シルエット・ミラージュ使ってからのハンドレッド・イリュージョン。
複製体1176機作って並列操作で協力して箱開けたり切り取る班組み立てる班と班分けして作ってく。

瞬間思考が得意だからこのぐらい平気……ドーピングすれば楽なんだけど駄目?
(当然ツッコミ入って)……残念。

……ところでクリスマスって何?(そこからかい)



「……久々のお手伝い」
 シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はWBC第三回戦の変則マッチ『クリスマス商戦チラシレース』にて『五月雨模型店』のサポーターとして参加するべく、会場入りを果たしていた。
 最初、『クリスマス商戦チラシレース』と聞いて、一体なんなのだろうと思ったがフィールドに積み上げられたホビーの山を見て得心が行く。
 そう、これは結局のところ、メーカーの販売促進でもあったのだ。
 こういう変則マッチが仕掛けられているところも世界大会らしい所以であったことだろう。
『正確にはお手伝いのお手伝いだが』
 サポートAIの『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
 何処かのスーパーヒロインな猟兵に頼み込まれたので、そういう事になっているらしい。

 とは言え、お仕事として引き受けた以上、シルヴィはやるべきことをなさねばならないと『ミドガルズ』そっくりのプラスチックホビーをフィールドに投入する。
 操作タイプは『マニューバタイプ』を選択しているため、普段の操縦と変わることはない。神経接続ができない、という点だけがプラスチックホビーを使用している相違点であろうか。
『ガトリング砲の代わりに工具を装備しているから、装備の感触の違いを意識することを奨励している』
『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
 確かにこうして見るとキャバリア用の重機装備をしているような気がする。
 となれば、いつものガトリング砲の扱いとは異なるのは承知の上。
 だが、彼女にとってこれくらいは平気なことだった。

「残像分身を作り出して、並列に作業を進めていく」
『処理が追いつくかな? いや、愚問だったね』
「これくらい平気……ドーピングすれば楽なんだけど、だめ?」
『ここがアスリートアースでないのならば、同意できる所であったけれどね』
「……残念」
 シルヴィはそう言って自らが作り上げた分身と共に目の前に山積するホビーを見上げる。
 これを今から自分で組み上げなければならない。
 それ途方のないようなものあったけれど、それを為さなければならない。この『クリスマス商戦チラシレース』は山のように積み上げられたホビーを自分たちのホビーで作り上げ、コースを作り上げなければならない。

 そういう意味では彼女のユーベルコードは相手チームである『梟門鴉鷺連合』にプレッシャーを与えるものであった。
「人数増えた! けど、あっちのペースも早ぇ!」
『五月雨模型店』のメンバーたちの言葉にシルヴィは頷く。
 物量で押す、というのが『プラクト』の基本戦術である。ここでユーベルコードの手を緩めるわけにはいかないのだ。
「……ところで」
「なに!?」
 彼らもそれどころではないのだろうが、シルヴィの言葉に顔を向けるくらいの律儀さはあったのだ。

「クリスマスって何?」
「そこから!?」
「クリスマスを知らないってことあるのですか!?」
 彼らの反応は当然であったことだろう。
 年の頃は確かにシルヴィの方が上であるが、しかし、クリスマスと言ったら子供らの一大イベントである。
 それをシルヴィは知らないというのだ。
「そんなことある!? クリスマスっていうのはさ、ほら、一年間良い子にしていた来にサンタさんがプレゼントを持ってきてくれる日だよ! この日はわがまま言って良いんだぜ!」
 その言葉にシルヴィはどう思っただろうか。
 何かを誰かにねだることを彼女はしてこなかったかもしれない。
 となれば、誰にねだれば良いのだろう。

 思い当たるのはサポートAIである『ヨルムンガンド』くらいなのかもしれない。
 彼がどのように答えたかはわからないけれど、しかしシルヴィは初めて知ったクリスマスなるイベントに興味を持ったかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
『アイン』、元気ね
よかった
彼女の顔を見て、心を落ち着けてから試合に挑むわ
モニターに映ってたアニメの展開にも、すこし動揺してしまったから

私も『セラフィム』で参加しましょう
お揃いの機体、私もついに手に入れたの
今回はこの子と一緒にがんばるわ
工具を手に跳び回り『想いの翅』で皆の戦闘力を上げてサポート
刃物の切れ味がよくなったりするんじゃないかしら

当たり前だけど、知らないホビーが沢山ね
特に『憂国学徒兵』シリーズは気になってしまうわ



 あれはアニメの、物語だと理解している。
 けれど、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)の心中は穏やかではなかった。
「『アイン』……」
「んん? 静漓ねーちゃんじゃん! 今回も手伝ってくれんの?」
 フィールドに降り立った静漓の機体をみやり、『五月雨模型店』の『アイン』と呼ばれる少女は明るく笑った。
 その様子を見て、彼女は心を落ち着かせる。
 まだ心はさざ波が立っているように思えたけれど、それでも『アイン』の顔を見れたことは大きかったように思える。

 あのモニターに映った物語の展開に動揺したのだと指摘されれば、そうだと静漓は答えたかもしれない。けれど、それでも変わりない『アイン』の表情を見れば、それも僅かなことであったと彼女は理解するだろう。
「それ!」
「ええ、あなたたちと同じ『セラフィム』よ。お揃いの機体、私もついに手に入れたの」
「胸熱じゃん!」
 うわー、と『アイン』たちは静漓の作り上げた『セラフィム』を見たい気持ちになっているのだろう。状況を忘れて近づいてきそうになる。
 けれど、『ツヴァイ』が我に返って彼らを止める。
「気持ちはわかりますが、試合が終わってからにしましょう」
「そうだが! お揃いというのはなんとも!!」
「そ、そうですよ。同じ機体を使うなんて仲良しさん担ったも同然じゃないですか」
 彼らの反応を見て、静漓は静かに頷く。

「私もこの子と一緒にがんばるわ」
 だから、と静漓の瞳がユーベルコードに輝き、彼女の『セラフィム』のアイセンサーもまた煌めく。
「いい風が吹いているわ。この風に乗りましょう」
『セラフィム』の背面部から想いの翅(オモイノツバサ)とも言うべき光の翅が広がる。それは光の翼とは異なるものであったし、どこか生物的な要素も加味されているように思えただろう。
 そして、それは『五月雨模型店』に味方するサポーターたちの機体にも生え、勝利への希望と戦闘能力を強化させるのだ。
「これで行けるはずよ」
 さあ、と彼女の言葉に応えるようにフィールドに存在するサポーターたちのホビーもまた手にした工具を掲げる。

 切れ味の増した工具は分厚いランナーゲートさえも、ばっちん! と断ち切って切り離していく。
 流石にホビー大でホビーそのものを作り上げる、というのは慣れないことであったが、しか工具の切れ味が増す、ということは彼らの助けになっただろう。
「当たり前だけど、知らないホビーが沢山ね」
「こういう時じゃなければ、じっくり楽しみたい所だけどな!」
「悲しいかな、これはレースなのです」
『アイン』たちの言葉に静漓は頷く。

 そうなのだ。これはあくまでレースなのだ。ホビーを作り上げるのは、レースコースを開拓していくことと同じなのだ。
 とは言え、だ。
 静漓は気になっていた。
「『憂国学徒兵』シリーズ……」
 シリーズナンバリングに『SSW』であったり『SOW』、『BA』だとかアルファベットが割り振られているのが気になった。
 それがどうやらシリーズを示す符号になっているようである、ということはわかる。
「このシリーズはどれだけあるの?」
「今ん所、36!」
 その言葉に静漓は頷く。それぞれの物語が如何なる展開を紡いでいるのかも気になる。けれど、今は、ホビーを作り上げてレースコースを開拓していくことをこそ求められているのだ。

「その話はまた後でな! みんなたっぷり語りたいって思ってるだろうから!」
 彼女たちのそんな言葉を聞き、静漓は小さく頷きながらも眼の前のホビーの箱を開け、積みを解消しちえくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
…人は誰しも積みを持つもの
そう、誰もが原罪を抱えて生きている…
だから積みがあるのは当然、必然、絶対
そう、積みとは何時でも作ることを選べる自由を作る事!
…正当化ヨシ!

プラモサイズでプラモを作るとき、必要な物とは…即ちよく動く指!
ブラモ大のニッパーは当然ながら、きちんと指関節が動くキットこそ安牌
そこでこの改造キット
外装型の支援ユニットと合体する事で、五指全ての関節が自由に動く腕部ユニットが手に入る!
ちょっと大きくて動かし辛いけどパワーは十分
これで後は…地道に積みを崩そう

出来れば最新キットより、古めのキットを処理していこう
古いキットは大胆なモナカ構造が多くて作りやすい!

…合わせ目消ししなくて良いの?



 積み。
 それは罪とも言える人の業であった。
 人の物欲に果てはなく。されど、その業を背負ってこその人の生であるとも言える。
「……人は誰しも積みを持つもの。そう、誰もが原罪を抱えて生きている……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)はなんかいい感じの雰囲気を身にまといながら、フィールドに佇んでいた。木枯らしが吹くような、なんというか、とても寂しい雰囲気だった。
 逃れ得ぬ原罪。
 払拭しきれぬ業。
 だからこそ、積みが人の身に降りかかるのは必定にして、当然、必然、絶対であった。

 心無いものは言うだろう。
『それ何の役に立つの?』
『作らないのに買うなんておかしいんじゃないの?』
『どうせ買っても作らないで場所だけ圧迫するんだから』
 とか!
 そんなことを言われても玲は平気だった。
「積みとは、いつでも作ることを選べる自由を作る事!」
 そう、作っていない状態もまたホビー趣味の一端なのである。状態が作っていない、積んでいる、という状態なだけで、そこからどうにでも転がっていける、所謂シュレディンガーの積み状態なのだ!

「……正当化ヨシ!」
 どうして大丈夫だと思ったんです?
 とは言え、目の前の積みはどうしたって解消しなければならない積みである。
 そう、玲の眼の前にあるのはWBC第三回戦の変則マッチ『クリスマス商戦チラシレース』である。眼の前の積みを作り、レースコースを開拓していくのが今回の試合形式なのだ。
「ふふん、プラモサイズでプラモを作る時、必要なものとは……すなわちよく動く指! プラモ大のニッパーは当然ながら、きちんと指関節が動くキットこそ安牌! つまり!」
 玲は己のホビーを投入し、さらに別枠で支援ユニットキットを投入する。
 外装型のキットは玲の投入した機体の背面に合体し、巨大なアームユニットとなって展開する。
「ちょっと大きくて動かしづらいけど、パワーは十分!」

 ぴっしゃーん! と派手なエフェクトと共に外装腕部を得た玲の機体が集中線と効果線を得てフィールドに降り立つ。
 無駄にかっこいいし、無駄にパースの効いた構図でニッパーを構えている。
「さあ、地道に積みを崩そうか!」
「やってることと言っていることが真逆なんだよなぁ」
『五月雨模型店』のメンバーたちは玲の自信満々な態度とは裏腹な言葉にいつも通りだな、と思うのだった。

「できれば細心キットより、古めのキットがいいんだけど……とあったあった。これこれ。このパッケージとは絶対違う感じになるって分かっているのに何故か期待しちゃう感じ!」
 玲が取り出したのは、所謂旧キットと呼ばれる代物であった。
 昨今の世相の事情に寄って再生産された古き善き時代のキットである。
 大胆な二分割。
 モナカ構造と呼ばれる所以である。
 しかし、単純な構造とは裏腹に、その制作難易度は最新キットのそれではない。
 なにせ、ダボとピン……つまり、スナップキットではないのだ!

 パーツをあわせるためには、接着剤が必要となるし、稼働も少ないからこそ流し込み接着剤を流してはならないところに流して変な感じで固定されたりしちゃったりするという罠もあるのだ。
「……合わせ目消ししなくて良いの?」
「玲ねーちゃん、絶対懲りだすと一つのキットしか完成しないだろ!」
「なんでそれを!」
「見てきたから、今まで!」
 そう、玲はこれまでも『プラクト』における機体の選定基準であったり、キットの選択が若干……その、ズレていた! それを『アイン』たちは何回も見てきたので、絶対今回も一つのキットを作り出したら、それ一個しか完成しないだろうということを理解していたのだ。
「いいから! 合わせ目は明日すればいいから! 完全硬化まで待って! 今は数こなそ!」
 その言葉に玲は、仕方ないなーと別の旧キットを引っ張り出してきて、これはこれで……とか回り道を行ってしまうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

戦いはもう始まっている!
うおー!インド人を右へ!

●シャキーンシャキーン
バラバラXくんは形状自由流体金属化合の樹脂素材で表面を覆っているね
つまりニッパーハンドやデザインカッターハンドを形成するなんてラクショーだね!
わーいバラバラXくん作業用アームをいくつも形成して作業したりボクよりお上手!えらいえらい

●もぐもぐ
やっぱりケーキはショートケーキに始まりショートケーキに終わるってとこ、無い?
ふんふんふーん、このチョコレートの飾りがよいよねークリスマスって感じでー
生クリームももっとマシマシにしちゃおう!
いやいやこれは後の祝勝会もかねてみんなに振る舞うためのものだから!もぐもぐ



 戦いというのは、戦いのゴングが鳴る前から始まっているものである。
 いや、場外戦術的な話をしているわけではない。
 なんというか、心構えの話である。
「うおー! インド人を右へ!」
 定番の掛け声と共にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は己のホビー『バラバラX』と共にフィールドにかっ飛んできていた。
 いやまあ、まだフィールドの積みを解消していないので、レースに至るには至っていないのだが、しかし、気合というものは必要なものである。
「ふんふん、レースコースを自分たちで開拓していかなければならない、と。なるほどねー」
 そう言いながら『バラバラX』の腕部がニッパーハンドになったり、デザインカッターナイフハンドになったり、超振動ナイフになったりと、それはもうオーバーテクノロジー的なあれな性能を未sつける。

「ラクショーだね!」
 ロニの言葉と共に『バラバラX』が次々とホビーの箱をバラしては、袋からランナーを取り出して切り刻んでいく。
 切り出しの跡はとても綺麗だった。
 超振動ナイフは熱を発するので、どうしたって切り口が溶けてしまう。
 けれど、そこらへんの微妙なさじ加減を『バラバラX』は見極めて切り離して行っているのだ。
「なんかすげーけど……」
『アイン』たちが『バラバラX』の活躍に目を見開いているが、しかし、どう考えてもホビーの性能じゃないよなぁ、という顔をしている。
 確かにそれはそうである。
 世の何処に形状自由流体金属化合の樹脂素材が存在しているというのだろうか。

「今目の前にあるでしょ!」
 もぐもぐ。
「いや、それにしたって……」
 もぐもぐ。
「っていうか、何だこの音! 何食ってやがる!」
「あ、これ? ふふん。やっぱりケーキはショートケーキに始まり、ショートケーキに終わるってこと!」
「いや、意味がわからん! なんで今ケーキ食ってるんだよ!」
『アイン』たちの言葉にロニは作業を全て『バラバラX』に任せて優雅にティータイムに浸っていた。
 ショートケーキを手づかみで口に放り込んでは、口周りをべとべとにしている。

「クリスマスって感じがしない? 特にこのチョコレートの飾りがさ! あ、生クリームもっとマシマシにしちゃおう!」
「そういことじゃないんだが!?」
「いやいや、わかってるってば。皆のぶんもあるってば。後の祝勝会も兼ねてみんなに振る舞うために、あえてボクが今味見……や、毒見しているんだってば! アスリートに何かあってはいけないからね! もぐもぐ!」
 いいから食べるのやめてくんないかなぁ、と『アイン』たちは思った。
 そうでなくても彼女たちはアスリートだ。
 競技に参加しているだけでお腹が空いてきてしまうのだ。こんなところでケーキなんて食べられた日には、それはそれはとっても胃袋を刺激されてしまって辛いのだ。

「だめだめ! これは祝勝会の時用だから! みんなー勝ってからだからねー!」
 そんな応援なのか、よくわからないロニの行動に翻弄されながらも『五月雨模型店』のメンバーたちは必死に積みを解消し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アーチャーガールズ』

POW   :    リンクショット
【上方から降り注ぐ矢の雨】【左右から挟み込む曲射】【正面から放つ鋭い矢】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
SPD   :    クイックショット
【誇り】を宿した【矢】を射出する。[矢]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
WIZ   :    ホーミングショット
自身が発射した【矢】の軌道を、速度を落とさずレベル回まで曲げる事ができる。

イラスト:えんご

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 フィールドに降り立った猟兵達の活躍に寄って、山積されていたホビーは崩されつつあった。
 そして、開拓されたレースコース。
 しかし、相手チーム『梟門鴉鷺連合』も負けていない。
「あーっと、両チームほぼ同ペースでレースコースを開拓している模様! ですが、此処で『梟門鴉鷺連合』が動きます!」
 実況のアナウンスと共に『梟門鴉鷺連合』の開拓されているレースコースからホビーの山の上に立つのは、『アーチャーガールズ』であった。
 彼女たちが操るは人型ロボット。
 その武装は遠距離狙撃用の弓であった。

「……妨害、来ます!」
『ツヴァイ』がいち早く気がついて、彼女たちの狙撃武器の射線を遮るようにホビーの山の影に隠れる。
 一斉に放たれた矢にやられた味方はいないようだったが、雨のように降り注ぐ矢は厄介だった。此方のレースコース開拓を邪魔だてしながら、同時に戦力をも削ろうという魂胆なのだろう。
 流石は連合チームである。
 今レースコースを開拓しているのは、レース特化のチームなのだろう。
 そして、狙撃特化チームがこうして『五月雨模型店』の面々を妨害するために矢を射掛けて攻撃してきているのだ。
「狙撃自体は大したことはありませんが……」
「だが! このままではレースコース事態が開拓できない。此方がホビーを作っている間に狙い撃ちされて消耗してしまうぞ!」
 そう、このままでは相手チームにレースコースを開拓され、一気にゴールを狙われてしまう。
 ならば、どうするか。

「頼めるか、みんな!」
『アイン』が猟兵たちを見やる。
 そう、猟兵たちがあの『アーチャーガールズ』の操るホビーを排除してくれれば、レースの勝敗はまだわからないのだ――!
シルヴィ・フォーアンサー
……良い子ってどういう子?
『クリスマスでなら一般的には親の言うことを良く聞き
悪いことをしない手間のかからない子だろうか』
ふぅん……でもクロムキャバリアだと空飛んでたらサンタさん撃墜されるよね、やっぱりいないのかな。
『気になるのはそこなのか……』

引き続き同じコード構成で複製体を並列操作。
ハイペリオンランチャーで飛んでくる矢を撃墜しつつミサイルで反撃。
更にロケットパンチを撃って手に持ったニッパーで敵プラクトを切断してしちゃう。
さっさと倒してコース構築に戻るよ。

だって良い子には程遠いでしょ、人殺したりしてるし。
『何、親が気にしなければ良いのだ、戦闘AIの私は気にしない、欲しい物でもあるのかね』

続く



 良い子ってどういう子?
 それは至極真っ当な質問であったことだろう。
 善悪の基準を示すのは親である。ならば、親無き子にとっての善悪の基準を示す者とは一体どのような者のことを指すのだろうか。
『クリスマスでなら一般的には親の言うことをよく聞き、悪いことをしない手間のかからない子だろうか』
 最後の一言を付け加えたのは、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)が、それに該当するということを暗に伝えたかったサポートAI『ヨルムンガンド』の親心めいたものであったのかもしれない。
 それは苦し紛れの言葉であったかもしれないが、『ヨルムンガンド』にとっては真実であったことだろう。

「ふぅん……」
 しかし、シルヴィはなんとも言えない表情を浮かべていた。
 理解したような、していないような。
 微妙な、曖昧な表情だった。
「でも、クロムキャバリアだと空トンでたらサンタさん撃墜されるよね、やっぱりいないのかな」
『気になるのはそこなのか……』
 なんとも締まらない。
 けれど、それでいいのかとも思う。
 別段取り立てて言うわけではないけれど、彼女だって子供だった時期があったのだ。その時期にクリスマスを経験できなかったのならば、今から経験すればいい。
 それだけのことだというように、『ヨルムンガンド』は己のAIとしての性能を発揮する。

「いないんだろうね。だから、シルヴィのところには来なかった、来れなかったんだと思うし……さっさと倒してしまおう」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 シルエット・ミラージュによって生み出された性交な残像分身たちが飛び出す。
 ダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちのホビーが放つ矢は一度放たれれば、それでおしまいというわけではない。
 空中で軌道を変え、標的を置い続けるのだ。
「私達の矢か逃れられると思うな!」
 彼女たちの放った矢はシルヴィの生み出した分身を貫く。

 だが、それは分身であって実体があるわけではない。
 貫かれても、透過していくだけだ。
「分身……だが、空中で軌道を変えれば!!」
 彼女たちの言葉と共に矢が分身をすり抜け、本体であるシルヴィを目指す。
 しかし、それを座して待つほどシルヴィは甘くはない。
『ミドガルズ』の背面に装備されたハイペリオンランチャーでもって飛来する矢を撃ち落とし、ミサイルを解き放つ。

 それらを華麗に『アーチャーガールズ』たちは躱す。
 爆風が荒ぶ中、シルヴィは見定める。
「この程度!」
「狙撃特化ということだったから、警戒していたけれど、距離を取るわけじゃないんだね……なら」
『ミドガルズ』の腕部がバーニアの噴射光を放ちながら飛ぶ。
 それはいわゆるロケットパンチというべき武装であったことだろう。だが、それだけではない。山積したホビーを崩すために手にした工具……すなわち、ニッパーによって『アーチャーガールズ』のホビーを胴から真っ二つにしてみせたのだ。
「馬鹿な……!」
「こうするよね。さっさと倒してコース構築に戻らないと」
 でも、とシルヴィは思う。

 自分にはサンタさんは来ないだろうな、と。
 自分は良い子には程遠い。
 人を殺すこともあった。クロムキャバリアという戦乱に生きていれば当然のことであっただろう。だから、と思う。
 けれど、『ヨルムンガンド』は告げる。
『何、親が気にしなければ良いのだ。戦闘AIの私は気にしない。欲しい物でもあるのかね』
 自分には、と思うのならばこそ、そう思うのだろう。
 なら、と『ヨルムンガンド』幾ばくか優しげな声色で持ってシルヴィに尋ねるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八洲・百重
●POW

はわわ…こんなのありとか聞いてねぇべ!?
おらのライジングは格闘に特化されてっから飛び道具なんて積んでねぇし、ここはエッグボイラー先生のありがてぇ御言葉を思い出すだよ

えーとえーと…「絶体絶命の死中にこそ活路がある」だべな

ライジングで全力疾走すれば何とか行けそうだども、四方八方から弓を射られればひとたまりもないべっさ
んだもど、ここはレースコースだべさ
立体的なコースを利用してライトニングエッジを別に走らせれば、相手の意表を突けるベ

ライトニングに飛び乗ったらGPウォッチで指示して矢の雨を躱しながら近づいたら、急停止の反動を利用したジャンプでとっ捕まえたら『グレートハリケーン』で一網打尽だべ



 ダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちは『五月雨模型店』のレースコース開拓を阻むため、遠距離狙撃用の弓でもって妨害に走った。
 その矢の精度は凄まじいものだった。
 上空より雨を降り注がせるかのような矢の雨に、左右から追い込む射撃、そして、一直線に走る矢。それらを自在に組み合わせた矢によって射線さえ通っていれば、即座に矢を打ち込んでくる。
 この状況でホビーを作り、組み上げていく、というのは正直に言って無謀だった。
「はわわ……妨害ありなんだべか!? こんなの聞いてねぇべ!?」
 八洲・百重(唸れ、ぽんぽこ殺法!・f39688)は思わずうめいていた。
 彼女のホビーは確かに運動性能、可動域においては無類のホビーだった。
 だが、格闘に特化した機体であるがゆえに、こういう距離を取られて一方的に攻撃される展開に弱かったとも言える。

 それに飛び道具を搭載していない。
 何処まで行っても彼女のリングネーム『ヤッシマー魔魅』を証明するためのホビーだったのだ。
 ならばこそ、彼女は呻く。
「序盤はコースを形成するのに忙しいから妨害する暇なんてなかったんだろうよ!」
「むしろ、此処から互いの妨害、互いの機体を破壊する激戦になることは必至でしょう」
『五月雨模型店』のメンバーたちの言葉に百重はうなう↑う。
「んだ! なら、ここは一つ先生のありがてぇ御言葉を思い出すだよ!」
「何の話!?」
「超人プロレス的語録から一つ!『絶体絶命の死中にこそ活路がある』だべな!」
 それってやけくそ的な話? と『五月雨模型店』のメンバーたちは思った。
 世代差かな。わからんことはあるけれど、なんとなくやけくそ感は伝わったのだろう。その言葉と共に百重は己のホビー『ライジング・シュヴァリエ』と共に降り注ぐ矢の雨の中に飛び込んでいく。

「無茶だ!」
「いんや! むしろ、敵の矢にビビって縮こまってる方が敵の思うつぼだべ! だから!『ライトニングエッジ』!」
 百重は己の手首に巻き付けたGPウォッチに叫ぶ。
 それは音声入力に寄ってCPUが待機状態から稼働状態へと移行するワードだった。
 唸るようなエンジン音を立て、『ネオ四駆』たる『ライトニングエッジ』がコースに飛び出す。
 それは彼女が先程作り上げたホビーだった。
 即席であるが、彼女は『ネオ四駆』を先行させ『アーチャーガールズ』たちの放つ矢の真っ向へと飛び出させたのだ。

 その速度は『アーチャーガールズ』たちの意表を突くものであったことだろう。
「『ネオ四駆』!? だが、それでも!」
 放たれる矢の数々。
 それは一斉に『ライトニングエッジ』へと襲い掛かる。しかし、百重はGPウォッチから呼びかける。
「右、左! 右右左右! えーびーだべさー!」
 その言葉に応えるように『ライトニングエッジ』は蛇行走行を繰り返し、降り注ぐ矢を躱して急停止の反動を利用した車体を回転させるような大ジャンプでもって『アーチャーガールズ』たちの頭上を捉えるのだ。
「私達の上を!?」
「んだべ! 車と『ネオ四駆』は急には止まれねぇんだべ! そんだらグレートハリケーンだべ! いっちょやってやるんだべ!」
 その言葉と共に百重のホビーが意表をついて『アーチャーガールズ』たちの元へと飛び込む。

 ホビーが人型であってよかった、と百重は思っただろう。
『アーチャーガールズ』たちのホビーの腕部をつかみ、その機体をスイングし己毎回転させる。
 それは大旋風と呼ぶに相応しい圧倒的な力の奔流。
 ユーベルコードにまで昇華した彼女のプロレス技は、『アーチャーガールズ』たちのホビーを打ち据え、盛大に吹き飛ばすのだ。
「見たかー! これが『ヤッシマー魔魅』のパワーだべ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
陰海月「ぷっきゅ!」

…陰海月語を翻訳します…

任せて!ぼくのホーミング光珠をポイポイ投げちゃって!
相手には絶対に当たるからね、これ!

で、矢が向かってくるけど…うん、大丈夫!
四天霊障(極彩色)で、叩き落としちゃったらいいんだ!
ええと…これって、武器受けっていうのかな?
でも、広域なら…こっちも四天霊障(極彩色)を広域に。範囲攻撃での武器受けで叩き落とす!

あ、もちろん、皆の邪魔にはならないからね?
極彩色が見えるのも、相手だけにしちゃった。内側に、無色化の呪詛使ったんだー。



 降り注ぐ矢。
 それは雨のように『五月雨模型店』メンバーとサポーターたちに襲い掛かる。言うまでもなく妨害である。けれど、これはルールによって許容された範囲の妨害である。
 今まで妨害がなかったのは、互いのチームがレースコースを開拓するためであった。
 中盤に差し掛かったのならば、即座に相手チームのレースコースの構築の妨害と敵戦力の消耗。これを行うのは定石と言えば定石であったことだろう。
「くっそ、こっちはまだまだ昇華しないと行けない積みがあるってのに!」
『五月雨模型店』のメンバーたちは、動けない。
 積み上げられたホビーはまだ山積しているのだ。
 それは相手チーム『梟門鴉鷺連合』にとってもそうなのだろう。

 だが、あちらは『五月雨模型店』の積み昇華を阻害し、コース構築を遅延させることを目的として己たちの戦力を割いてきているのだ。
「今ならまだ間に合います。挽回だってできるはずです。でも……」
「このままでは敵の妨害にコース構築はままらないぞ!」
「ぷっきゅ!」 
 なら任せて! と言わんばかりに『操舵手クラゲ』が飛び出す。
「なぁー!? めっちゃ輝いてるー!?」
「きゅ!」
 そう、それは馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と合体を果たした、四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)もとい、『陰海月』であった。
 ダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちの放つユーベルコードの矢が遅いクルサ中、ゲーミングカラーに輝く呪詛を纏った光珠を投げ放つ。

 それは空中で速度を落とさずに軌道を自在に変える矢に追いすがり、激突して霧散するのだ。
「きゅっ!」
「私達の矢が空中で相殺されるだと……!?」
 そう、こちらに降り注ぐ矢は確かに空中で軌道を変える恐るべき射撃である。
 けれど、それを打ち消すのは四悪霊の呪詛を纏ったゲーミングカラーに輝く『操舵手クラゲ』であった。
 いっそ、幻想的とも言える輝きを放つ『操舵手クラゲ』はゆらゆら揺れながら放つ光珠が次々と迫りくる『アーチャーガールズ』たちの矢を迎撃していくのだ

「ぷきゅ!」
「矢には構わずホビーを作って積みを崩せっていうのか!」
「きゅ!」
 その通り、と『陰海月』は頷く。
 こちらのレースコースに降り注ぐ矢の全ては自分が撃ち落として見せる、と『陰海月』は自信満々に頷いた。
 それを見た『五月雨模型店』のメンバーたちは覚悟を決める。
「なら、任せたぜ! こっちもすぐにレースコースを開拓したら、援護に回るからよ!」
「きゅ~! きゅきゅ!」
 それには及ばないよ、というようにゲーミングカラーの呪詛を纏った『操舵手クラゲ』はフィールドに飛び出す。

「撃ち落とせ!」
『アーチャーガールズ』たちの矢が迫る。
 だが、『操舵手クラゲ』には関係ない。広げた霊障で矢を受け止め、光珠で叩き落とす。それは一進一退の激しい攻防として配信のスクリーンを彩ることだろう。
 そして、『陰海月』は『五月雨模型店』のメンバーを護りながら、その光珠でもって光の乱舞を、それこそイルミネーションのようにコース場に彩るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
溢れる求知心を抑え
今はレースに集中しなくては……
一度目を瞑り、気持ちを切り替えるわ

防御は任せて
『天人結界』を発動し、矢を障壁結界で受け止めるわね
相手も弓使いであるならば
こちらも弓で矢を乱れ撃ちお相手するわ

弓型装備を展開し、月光の祝福を宿した矢を放つ
これが私の『セラフィム』に施したカスタム
さあ『レッツ・アクト』よ
互いに全力で、良い勝負をしましょう



 知りたいという欲求がある。
 それを抑えることは難しいことだ。自分でもどうしようもないことだと理解できている。だからこそ、溢れ出る、という表現が正しかったのだろう。
 願うことは多くはない。
 けれど、願ったことの一つが枝分かれしていく。
 手を伸ばすように。 
 天に在る日を目指すように。
 故に薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は操縦パーティションの中で瞳を伏せる。

 一度。
 ただ一度で良い。気持ちを切り替えるためには、それだけでいいのだ。
 多くのことを知りたいと思う。知らなければと思う。
 けれど、今此処でダークリーガー率いる『梟門鴉鷺連合』に『五月雨模型店』が敗北することは許されない。
 彼らは彼らなりに楽しんでいる。
 そこにオブリビオンであるダークリーガーの介在があっていいわけがない。
 だからこそ、彼女は目を見開く。
「静漓ねーちゃん、来てる! 敵の!」
『アイン』の声が聞こえる。
 閃光のように走る声に静漓は応えるように己のホビー『セラフィム』のアイセンサーをユーベルコードに輝かせる。

『セラフィム』。
 遠くは銀河の海征く世界の戦術兵器。
 時に空の世界に在りて遺失されたもの。
 または鋼鉄の巨人疾駆する大地に在った兵器。
 そして、電子の楽園にて座すもの。
「来なさい」
 静かに静漓はユーベルコードに輝く瞳で飛来するダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちの放った雨の如き矢を前に天人結界(テンジンケッカイ)たる障壁結界でもって己の『セラフィム』を覆う。
 矢は、その障壁に弾かれる。
「私達の矢が通らないだと!?」
「此処は私に任せて」

 静漓は静かに『アイン』たちに言い放つ。
 自身の機体を覆う障壁ならば敵のユーベルコードは通さない。たとえ、自身が苦境に立たされるのだとしても、己の機体の戦闘力は増強されていく。
 翅が羽撃く。
 その一瞬で『セラフィム』は矢の雨をものともせずに飛翔し、フィールドの上空から『アーチャーガールズ』たちのホビーを見据える。
「飛んだ……! だが、射掛けられぬとでも思ったか!」
「いいえ。だからこそ、私は弓で会いたいする。これが私の『セラフィム』に施したカスタム――さあ『レッツ・アクト』よ」
 その言葉と共に『セラフィム』が掲げるは月光の祝福宿した矢を番える弓。

 腕の装甲が弾けるようにして展開する。
 弓の形へと変形する腕部の装甲。引き絞られるビームの弦。
「互いに全力で、良い勝負をしましょう」
 胸に抱くは敵愾心ではなく。あるのは、ホビースポーツとしての『プラクト』を楽しむという気持ちのみ。
 引き絞った月光の矢が真っ向から『アーチャーガールズ』たちの放った雨あられの如き矢と打ち合っては明滅していく。

 その光景を見上げ『アイン』たちは目を見開くだろう。
「すっげぇ……」
 楽しむ、ただそれだけでどこまでも自分の可能性を拡張していける。
 それを示すように静漓は己の作り上げた『セラフィム』と共に戦場を飛翔し、『五月雨模型店』のメンバーたちに降り注ぐ矢を射落としていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーシア・ロクス
2P「任されたっすよ!」
3P「いや近接キャラが一人で弓兵の群れに突っ込んでもいい的ですよ!
いいからわたし(2P)は積みの解消の方手伝ってください!」

うーん……妨害を避けるなら迷宮?……でもこれだと味方も迷宮入りしちゃうし、「地図を完成」させれば抜けられるから数が多い方が有利ですよね……よし、だったらこっちです!
相手が妨害狙いの弓兵なら、こっちの進展具合とかコースの状態とか見て判断してるはず!
だから、UCでコース上に「モンスターの巣」を設置して見た相手にモンスターをけしかけた後、アイゼンケーファーで攻勢に出ます!相手の矢には近接信管ミサイルとサブマシンガンで撃ち落とし、接近してのパイルです!



『五月雨模型店』が勝利を得るためにしなければならないことは、レースコースの開拓である。
 そのために必要なのはフィールドに山積した積みを解消すること。
 つまり、ひたすらにホビーを作り上げなければならないということ。
 しかし、これを妨害するために敵チーム『梟門鴉鷺連合』のダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちは打って出てきたのだ。
「ホビーを作るメンバーさえいなくなれば、戦いの趨勢は此方に傾く! なら!」
 放たれる矢は曲射といった芸当以上であった。
 空中で軌道を変える矢は速度を緩めることはない。
 たとえ、積み上げられたホビーの箱に身を隠していたとしても、軌道を変える矢は潜むホビーを貫かんと宙を走るのだ。
「くそっ、なんつー技術だよ! どうなってんだ!」
『五月雨模型店』のメンバーたちは驚愕するしかなかった。

 それほどまでに『アーチャーガールズ』たちのユーベルコードは凄まじいものだった。
 けれど。
「任されたっすよ!」
「任されたじゃないですよ。何近接キャラが一人で弓兵の群れに突っ込もうとしてんです!」
 ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)の2Pと3Pが言い合う。
『アイゼンケーファー』の機体に迫る矢を弾きながら、後退する。突っ込もうにも、敵の矢の方が早い。近接武装しか積んでいない機体は、確かに3Pの言う通り良い的だった。
「もー!」
「もー! じゃないです。いいからわたしは積みの解消を手伝ってください!」
「でもさ! なら、あいつらどうするの!」
 妨害されているんだよ、と2Pの言うことも理解できる。

 このまま妨害されていたら、レースコースの開拓は遅々として進まないのだ。
「うーん……妨害を避けるなら迷宮? ……でもこれだと味方も迷宮入りしちゃう……なら!」
「何か思いついたっすか、わたし!」
「うん、これなら!」
 ユーシアのユーベルコードがが焼く。
 それは、ユーシアのプレイ日記~ダンジョンRPG2~(キョウフノシンボルエンカウント)。
 つまり?
 そう、フィールド上に出現するは超強力な無敵徘徊モンスターの巣を召喚したのである。
 一体全体どういうことなのか。

「相手が妨害狙いなら、こっちの進展具合も確認しようとするはず。そして、フィールド上に見慣れないオブジェクトがあるのなら!」
 確認せずにはいられない。
 そして、巣を見たのならば。
「無敵徘徊モンスターは!」
 飛び出す。それは番犬パニックめいた子供じみた造形ながら、しかし無敵徘徊モンスターであることを示すように『アーチャーガールズ』たちの矢すらものともせずに彼女たちのホビーに襲いかかっていくのだ。

「な、なんだ、このオブジェクト……!?」
「こっちの攻撃がまるで効いていない!?」
「わたしだって苦労したんです! そう簡単に対処できないですよ! さあ、行きますよ!『アイゼンケーファー』でかき回してあげます!」
「混乱に乗じて接近戦だっていうなら!」
 ユーシアの言葉と共に『アイゼンケーファー』がフィールドを一直線に駆け抜けていく。
 それこそ矢のように飛ぶ機体は一気に『アーチャーガールズ』たちのホビーに肉薄し、パイルバンカーの一撃を叩き込む。
「ここはわたしの距離ですよ!」
 打ち込まれたパイルバンカーの一撃が『アーチャーガールズ』たちのホビーを打ち抜き、爆散させ、妨害の一手を見事に叩き潰すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニィナ・アンエノン
お、妨害が来たね!
ここは進軍と防衛に分かれるのはどう?
罪の清算に勤しむ子達をにぃなちゃん達が狙撃から守る、って感じで!
とゆー事で一緒にディフェンスしようね、ドライ君♡

まずはブラスターを【クイックドロウ】!
相手はいっぱいいるからユーべルコードで銃を増やすぞ。
後は【視力】と【瞬間思考力】で相手の位置を大まかにつかんで、増やした銃を【一斉発射】!
【早業】で【制圧射撃】を仕掛けるよ☆
まぁ【スナイパー】たるにぃなちゃんもこれで全員は撃ち落とせないけど、攻撃の妨害は出来る。
だから撃ち漏らしは任せたよ、ドライ君☆
ほら、あそことあそこ!あっちからも狙われてる!
プリンセス・ニィナを守ってぇー!なんてね☆



 WBCの第三回戦、その変則マッチである『クリスマス商戦チラシレース』は中盤を迎えようとしていた。
 序盤はとにかく山積する積みを解消してレースコースを開拓していくことに集中するのが定石。そして中盤は互いのレースコースを開拓がどれだけ進んでいるのかを偵察で情報を得る必要がある。
 途中でレースコースが合流することは知られている。
 だが、レースコース開拓が遅いのならば、それは謂わば一本道でしかない。
 だからこそ、中盤にて行われるのは偵察というよりも妨害の方に重きを置かれるのは当然であったことだろう。

 ダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちのホビーが『五月雨模型店』のメンバーガ開拓するレースコースへと現れ、そのホビーから射掛けられる矢でもって妨害してきているのだ。
「お、妨害が来たね!」
 ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は積みを解消していたが、迫る『梟門鴉鷺連合』の『アーチャーガールズ』たちの妨害に気がつく。
 間一髪、矢の雨を躱す。
 観客の一部は、惜しい! と思った。
 ニィナの操るホビーは彼女とのコラボモデル。ついで言うと水着モデルである。
 こう、いい感じに矢が当たって、サービスシーンにならんかな、と密かに思っているのである。わからんでもない。

「ここは進軍と防衛に分かれるのはどう? 罪の清算に勤しむ子たちをにぃなちゃんたちが狙撃から守るって感じで!」
「確かにその必要はありそうですね。妨害を防ぐだけではジリ貧です」
『五月雨模型店』のメンバーたちは頷く。
 なら、それは、と言いかけた所でニィナは『ドライ』の腕を引っ張って引き寄せる。
「うわ、何を!?」
「とゆーことで一緒にディフェンスしようね、ドライ君♡」
 ニィナは笑っている。
 だが、とっても心臓に悪い。ニィナの笑顔は眩しすぎる。

「わ、わかった……だが、その、ちょっとくっつき過ぎでは!?」
「えー、そんなことないよー☆ さ、いっくよー!」
 ニィナのホビーがフィールドに飛び出す。
『アーチャーガールズ』たちの矢の切っ先が彼女を狙う。会場の多くのニィナファンの観客たちは皆ハプニングが起きないかなって期待の眼差しを向けている。わからんでもない。
「無茶だ、ニィナお姉さん! 敵の狙撃が!」
「だいじょーぶ☆ せーの」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは、ガジェット忍法・弾丸祭の術(ガジェットアーツバレットフェスティバル)。
 引き抜いたブラスターが一気に複製されて宙に浮かぶ。
「ばぁん☆」
 その銃口から放たれる熱線の一撃が、『アーチャーガールズ』たちの放った矢を一瞬で焼き切っていくのだ。

 それは彼女の類まれなる視力と瞬間思考があってのことだった。
 一斉射によって位置が割れた『アーチャーガールズ』たちのホビーにさらに砲撃が飛ぶ。
 それは『ドライ』の『セラフィム』による長距離砲撃であった。
 ニィナの熱線が敵の攻撃を撃ち落とす妨害であったのならば、『ドライ』の一撃は正しく一撃必殺にして必殺必中の一撃。
「さっすが、『ドライ』君☆」
「任せてもらおうか! 撃ち漏らしはない!」
「ほら、あそことあそこ! あっちからも狙われてる!」
「わかっているともおわぁ!?」
 背後からニィナが抱きついている。『セラフィム』の背後にニィナの美少女ホビーもまたくっついていた。

 場内から狂おしいほどの「そこかわれ」的な視線が『ドライ』を射抜く。
 そんな視線の嵐の中、ニィナはいたずらっぽく笑うのだ。
「プリンセス・ニィナを守ってぇー! なんてね☆」
 しっかり守ってね、と耳元で囁かれて『ドライ』は顔を真っ赤にしてしまうのだった。わからんでもない――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レジーナ・ビエルニィ
……プラクトの大会、気になったから見に来てみたけど。
ダークリーガーか……うん。自分の試合って訳じゃないけど、助太刀する

とりあえず、会場の物販の……ええと、『憂国学徒兵』?のプラモを組み立てて参加する。雪だるま(という名のほぼ氷像)を創るのとは勝手が違ったけど、悪くない、かな
(不慣れにしては出来は悪くない。色も塗った…けど完全にペンギンなカラーなので台無し感すごい)

……UCで姿を隠して、付属武器の狙撃銃で狙撃する。命中か否か関係なく撃つ度に即移動し一か所には留まらない。時折風を放って相手の矢にぶつけ邪魔する。つまり妨害の妨害。
……それじゃあ、射手と狙撃手とで、勝負といこう。

※アドリブ等歓迎です



 アスリートアースにおいて未公式スポーツは数多ある。
『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』もまたその一つである。
 けれど、アスリートたちにとって未公式であろうが、公式であろうが、そこにスポーツがおこなれているのならば心躍るのは当然のことであったかもしれない。
 レジーナ・ビエルニィ(雪女のバトロワシューター・f37984)もまたその一人だった。
「……『プラクト』の大会、気になったから見に来てみたけど」
 フィールドの中には世界大会の代表戦が行われている。
 今回は変則マッチである。
『クリスマス商戦チラシレース』
 言葉面だけではよくわからないと思ってしまうのも無理なからぬことである。

 しかし、ダークリーガーが『梟門鴉鷺連合』というチームを率いているのならば猟兵であるレジーナには捨て置くことのできない状況である。
「……うん」
 彼女はバトロワシューターであるが、しかし、関係ない。
 これがスポーツだというのならば、レジーナは果敢に挑戦するのだ。会場から踵を返して物販に駆け込む。
『プラクト』はフィールドに自分で組み上げたプラスチックホビーを投入し、己の体の動きを再現する『モーションタイプ』か、操縦する『マニューバタイプ』の二つに大分されている。
 そのために、自分で作り上げるという技術が必要であり、動かす体力が必要になるのだ。

 自分だけの形を見つける心。
 レジーナは己が思う形がある。何かを作る、ということに掛けては彼女も自身があった。
 いつも雪だるまを作っている。まあ、ほぼ氷像である、というツッコミはあるのだろうが、しかし、それでも彼女の心には確かに何かを作る、という心があったのだ。
「……これ」
 頂戴、とレジーナは物販にて販売されていた『憂国学徒兵』と呼ばれる人型ロボットシリーズを手に取る。 
 工作スペースが完備されているのが世界大会らしいといえばらしい。
 すぐさまレジーナは自分のホビーを作り上げる。

 不慣れではあるけれど、と前置きしても彼女の技術は悪くない。いや、むしろ良い。
「やっぱり雪だるまとは勝手が違う、けど、悪くない、かな」
 彼女はホビーを手にとってフィールドに投入する。
 操縦パーティションで彼女の瞳がユベールコードに輝く。
「……風は、簡単には捉えられないよ……」
 彼女の人型ホビーは、カラースキームが完全にペンギンカラーであったが、それも愛嬌というものだろう。
 フィールドに飛び込んだ瞬間、纏う凍える竜巻によって、レジーナのホビーが姿を消す。
 視聴嗅覚での感知を不可能とする凍える竜巻は、突如としてフィールドに巻き起こった事象としてダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちの視界に映っただろう。

「……竜巻!? こんなフィールド仕様があったか……? いや、これは!」
 ユーベルコードか、と彼女たちは気がつく。
 竜巻が何故起こっているのかはわからない。
 けれど、確実に言えるのは、あの竜巻の中心にユーベルコードの主がいる、ということだ。故に彼女たちは矢を放つのだ。
 けれど、すでにそこにレジーナのホビーはない。
「……それじゃあ、射手と狙撃とで、勝負といこう」
 レジーナは竜巻を放ちながら、細かく移動していく。
 己の位置を悟らせぬ狙撃手としての挙動で持って、彼女のホビーが構えた狙撃銃から弾丸が発射され『アーチャーガールズ』たちのホビーを撃ち抜いていく。

「……妨害の妨害……あの子たちの邪魔はさせないよ」
 そう言ってレジーナは『五月雨模型店』に加勢しながら、さらに迫る『アーチャーガールズ』たちの矢を真っ向から撃ち、弾くという絶技を見せつけ、凍える竜巻の中にて姿を晒すこと無く妨害を為していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

こういう局面はわたしの得意!
相手の連携もなかなかですけど、こちらも負けませんよー!

ステラさん、五月雨のみなさま。
いまこそわたしの曲に乗っていくときだと思います!

弓は集中力とか大事ですから、
【悪魔のトリル】の爆音と三半規管異常のバステなら、弓なんて射れないですし、
こちらには回復と士気上昇もありますからね!
【ソナーレ】の外部スピーカーで増幅すれば、効果もバツグンです!

これぞまさに攻守完璧!
……こ、今回は演奏してもいいですよね?

最近、五月雨のみなさまも、わたしの演奏に当たり強いんですよね……。
こんなにしっかりサポートする勇者とか、少ないと思うんですけど!

ね、ステラさん!
そう思いますよね!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
ええいっ
見た目の地味さとは裏腹に着実すぎる妨害ですね
こういう時は……ええ、まぁうん
そうですね
唇を噛み切る勢いですがルクス様の言う通りですね?
くっ、効果を見れば完璧な勝利が見えるのに
こんなに乗りたくない|作戦《ギャンブル》あります??
仕方ありません
今回はルクス様の演奏をベースに作戦を立てるとしましょう
弓手はルクス様にお任せして
私は降り注ぐ矢の対処ですか
フィーア様、障壁で手伝っていただけますか
ルクス様の演奏で精度を欠いている射撃ならば
ええ、大部分は私が墜とします!
いきなさい、【クリムゾンビット】!!

とはいえ、なんかこう釈然しませんね
こんなにルクス様の演奏が役に立つシーンってあります??



 敵チーム『梟門鴉鷺連合』の妨害は的確なタイミングだった。
 変則マッチである『クリスマス商戦チラシレース』において、積みを解消しレースコースを開拓することは最重要目標だった。
 なにせ、ゴールまでの道筋がなければ、この試合は勝利に至らないからだ。
 だからこそ、積みを消化する序盤は互いに専念していて試合は動かなかった。けれど、中盤に差し掛かることでレースコースの開拓に目処が立ったのだろう。
 となれば、始まるのは相手チームの妨害である。
 これはれっきとした戦術だ。
 ルールでも認められているし、そのタイミングを図ることが最も困難であった。

 早いタイミングで妨害をすれば、コース開拓の手勢が足りず、いたずらに戦力を消耗するだけだ。
 遅ければ、相手チームに妨害され戦力を失うどころか、完全ゴールへの道筋を絶たれてしまう。
 そういう意味では『梟門鴉鷺連合』の戦術は見事だった。
「ええいっ、見た目の地味さとは裏腹に堅実過ぎる妨害ですね!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は歯噛みする。相手チームの妨害によってレースコース開拓が思うように進んでいないのだ。
 唇を強く噛みしめる。
 ものすごく遺憾である。
 そう、彼女が非常に躊躇っているのは、こういう盤面において頼らざるを得ないのが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)であるという事実である。

「こういう鏡面はわたしの得意! そうですよね! 相手の連携も中々ですけど、こちらも負けませんよー!」
 ものすごーくやる気になっている。
 とってもやる気になっている。
 ステラは唇を噛み切らんばかりに葛藤している。
「ステラさん、『五月雨模型店』のみなさま。いまこそわたしの曲に乗っていくときだと思います!」
 にこっ。
 えぇ……と『五月雨模型店』のメンバーたちは、ちょっと、いや、かなり嫌だなぁって顔をしていた。言葉に出さないだけまだ人情であったことだろう。
「ルクス様の、言う通り、ですね?」
 めちゃくちゃ苦渋の決断っぽい顔をしてステラはルクスの言葉に同意する。
 確かにルクスの演奏する悪魔のトリル(アクマノトリル)は敵の三半規管を狂わせる。集中力を要する『アーチャーガールズ』たちの射撃には確かに有効な手段だったことだろう。

「くっ、完璧な勝利が見えるのに! こんなに乗りたくない|作戦《ギャンブル》あります?」
「でも、やらないと負けるってんなら!」
 覚悟を決めるんだ、と『五月雨模型店』のメンバーたちは頷いている。
 なんという勝利への執念だろうか。
 ならばステラは覚悟を決めるしかなかったのだ。
 どれだけルクスの演奏がヤベーものだったのだとしても、それでもやらねばならぬというのならば!
「ルクス様! 射手はお任せします! 私は!」
「はーい、おまかせあれ!」
 ルクスの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『ソナーレ』の外部スピーカーが彼女の演奏を増幅させていく。

 効果はバツのグンである。
「魂の演奏は、すべてを貫きます! これぞまさに攻守完璧!」
 その音は凄まじかった。
 演奏、と呼ぶにはあまりにも強烈な音の奔流。
 耳をふさいでも、耳栓していても響き渡る音。
『アーチャーガールズ』たちは苦悶の声を上げる。それは同時に『五月雨模型店』のメンバーたちも同様であった。
「わかってたけど、変な感じ! 元気出てるような、やけくそみてーな! そんな気持ち!」
「えぇ!? なんか最近『五月雨模型店』の皆さんもあたり強くないですか!? こんなにしっかりサポートする勇者とか、希少だと思うんですけど!」
 ね、ステラさん! とルクスが振り返った先では、ステラが『クリムゾンリッパー』と共に駆け出す。

「積層シールドなら!」
 共に駆け出した『ツヴァイ』の『セラフィム』の装備が展開する。
 同時にステラはその積層シールドの背後で【プラクト専用】クリムゾンビット召喚(クリムゾンビット)によって呼び出された真紅のクリスタルビットを解き放つ。
 レーザー射撃によって『アーチャーガールズ』たちの放った矢を焼き切るようにして寸断していくのだ。
「集中を欠いた射撃など、一矢たりとて『五月雨模型店』の皆様には届かせません! いきなさい、クリムゾンビット!!」
 その言葉と共に宙を走る真紅のクリスタルビットが飛び立ち、ルクスの演奏によって混乱している『アーチャーガールズ』たちのホビーを貫く。

「……確かに有効的ですが、なんかこう釈然としませんね。こんなにルクス様の演奏が役に立つシーンってあります??」
「なんでそんなこというんですか!」
 役に立たなかったシーンなんて……そんな、ない、はず。ない、よね? 活躍していたよね? とルクスの言葉に『五月雨模型店』のメンバーたちは曖昧な、それこそ、はい、とも、うんとも癒えない微妙な顔を作るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

弓での遠距離攻撃……だと?
その弓を、誰に、当てようと、してるの、かな?(黒笑

ま・さ・か。『フィーア』さんにじゃないよね?
わたしの『噛み姫』に、そんなもの当てようとか、してないよね?

うん。ぎるてぃ。
その矢、全部返してあげるから、自分の矢に刺さって逝っちゃえ♪

『希』ちゃん、五月雨のレースコースの範囲に【リフレクションマリス】ね。
『おねーちゃん、黒りおりおが全開で漏れてるけど……』

『希』ちゃんの言葉は笑顔でするー。

サージェさん、相手の攻撃に隙ができると思うから、
今こそにくきうぱんちでやっちゃってー♪

相手の攻撃はみんな跳ね返すから、
サージェさんも『フィーア』さんも、安心して、ねー!


サージェ・ライト
【理緒さんと】
おお、理緒さんが荒ぶっておられる
この人が一番穏やかじゃないファンだと思うのですが
アッハイダマリマス
しかしついに黒りおりおまできましたかー

……前置きが長いクノイチっていわれるとさみしいので
妨害工作対策うごきまーす!

なんか目視してそうなのでさくっと目潰しで妨害しますか
はーい、【ちまっとかぐや隊!】集合!
そしてあの弓を持ったおねえちゃんたちと遊んできてくださーい!
具体的にはチカチカで酔うくらいめいっぱい周囲に纏わりついてください

理緒さんのリフレクションと視認不可による誤射とで
敵陣はめちゃくちゃになるでしょう
そこへトラメちゃん、ゴー!
疾風ネコツメ斬りです!(走ってひっかくだけの行為)



 敵チームの戦略は見事だった。
 序盤は確かに互いのレースコースを構築することにかまけていたが、中盤に至る絶好の機会を逃さず妨害を行ってくる。
 それも遠距離射撃でもって、だ。
 ダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちの放つ矢は時に軌道を変え、時に雨のように降り注ぐ。
 これではレースコースを開拓するためにホビーを作る暇もない。
 それほどまでに間断なく矢が射掛けられているのだ。
「こ、こここのままじゃ……!」
『五月雨模型店』のメンバー『フィーア』の焦った声が聞こえる。
 そう、このままでは相手チームのレースコース開拓の進捗と離されるばかりだ。

 だが、彼女の『セラフィム』の前に菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は立つ。
「大丈夫だよ」
 にこっと微笑む理緒。
 うーん、此処だけ見たら確かに勝利の女神に見えなくもない。 
 だが、その内情は違う。
 ビキビキとこめかみに血管が浮いている。
 そう、今の彼女は怒っていた。
 弓による遠距離攻撃。その標的となっているのが『フィーア』なのだ。確かに彼女の『セラフィム』に搭載されている幻影装置は脅威であろう。
 だが、そんなこと関係ないのである。
「わたしの『噛み姫』に、そんなもの当てようなんて、そんなの許せないよ。うん、ギルティ」
 次の瞬間、黒い笑みを浮かべた理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
 リフレクションマリスと呼ばれる電子結界が広がり、放たれた矢が結界に触れた瞬間、反転し『アーチャーガールズ』たちのホビーへと襲い掛かるのだ。

『おねーちゃん、黒りおりおが全開で漏れてるけど……』
 サポートAIである『希』の言葉を理緒は華麗にスルーした。にこ。にこ、あないが、とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思ったが黙っていた。
 いや、なんていうか、理緒は一番穏やかなじゃないファンというか。
 こうなんていうか、過激派というか。
 でもまあ、黙っとこ、とサージェは思った。
「でも、ついに黒りおりおまででてきましたかー」
「矢を反射してくれるのはありがてーけどな!」
『アイン』の言葉にサージェは頷く。
 なんか今回静かじゃない?

 そう、サージェも思ったのだ。自省したのだ。
 前置きが長いクノイチって言われるとなんかこう寂しいのだ。わかってる。それが愛あるツッコミだってことは。
 けれど、それでもなのだ!
「サージェ、うごきまーす!」
 その言葉と共にサージェは『トラメ』からユーベルコードの輝きを発露させる。
 飛び出すは、ちまっとかぐや隊!(ゲーミングカグヤヒメトアソボウ)。
「なにそれかわい!」
「はーい、みんなせいれーつ!」
 その言葉と共に現れたのは、ゲーミングちまかぐや姫である。なんだゲーミングって、と思われた方は1680万色のあれを思い出して頂こう。
 とにもかくにも眩しい。眩しすぎる。

「なんだこの光!? 目がチカチカするんだけど!?」
『アーチャーガールズ』たちも同様であった。
 彼女たちは狙いをつけるためになおさら目を細める。けれど、視界を埋め尽くす1680万色の光。ええい、本当に画面がうるさい!
「ふっ、目がチカチカするでしょう。ふふ、これで黒りおりおさんの反射と私のかぐや隊による目眩ましでまともに射撃はできないでしょう! そこに!」
 おらー! とサージェが『トラメ』と共に飛び込んでいく。
「ごーごー『トラメ』ちゃん、今こそにくきうぱんちでやっちゃってー♪」
 ふれふれーと理緒が後方で応援している。
 確かに心強い。
 けれど、『フィーア』は思った。『噛み姫』ってなんだろうって。いやまあ、自分の噛み癖があるのが、そう言われているのはわかってるけど。
 なんか公式っぽく言われると恥ずかしいのだ。

「いいえ、疾風ネコツメ斬りです!」
 サージェはにくきうぱんちではなく『トラメ』の前足に装備された鋭い爪でもって『アーチャーガールズ』たちのホビーを切り裂く。
「どうです、これでもう私のことを前置きが長いクノイチなんて言わないでしょう!」
「いや、クノイチ要素は何処にもないけど、大丈夫か?」
 確かに。
 そこにあるのは、忍、という言葉の文字もないほどに、やかましい1680万色の世界だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

むむー敵の妨害は当然取るべき戦法!
先手を打たれたかー

●すり抜け御免
あの子たちに迫ろうにもコース開拓は道半ば!
あるのはごくごく狭いスペースのみ!
だけどバラバラXくんならば違う!
そう彼は全身をバラバラに分離させることで頭がくぐれるくらいのスペースがあれば通り抜けることができるのさ!
にょーんと伸びる流体金属で繋がれ頭が先頭になって移動するバラバラパーツはちょっとホラー的で蛇くん的なアトモスフィアがあるけれども!

【第六感】で積みの隙間を通り抜け彼女らへの最短ルートを指示しよう!肉薄すればこっちのもの!
迎撃の矢も同様にスネークモードと【第六感】ですりぬけ一気にドーーーンッ!!



 確かに、とロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思う。
 確かに試合において敵の妨害は当然取られるべき戦法であると。
 けれど、彼にとって誤算だったのは、先手を打たれた、ということだった。敵チーム『梟門鴉鷺連合』は見事な連携でもって、中盤戦の機先を制するように妨害するダーク化アスリート『アーチャーガールズ』たちを繰り出してきた。
 となれば、相手チームはすでにレースコースの開拓が順調であることを示していただろう。
「むむー敵もやるねー! でもあの子達に迫ろうにもこっちはコース開拓道半ば!」
 しかも、狭いスペースしかないからホビーの箱に隠れて『アーチャーガールズ』たちの放つ矢をやり過ごすことは難しい。
 そうでなくても、とんでもない軌道でもって彼女たちは矢を放ってくるのだ。

「でもね!『バラバラX』くんならば違う!」
 そう! とロニは己のホビー『バラバラX』を文字通りバラバラに分解させ、さらには流体金属でもって、ひとつなぎの……それこそ蛇のような形になって狭いスペースを飛ぶのだ。
 ちょっとあれである。
 見るものよっては酷く嫌悪感が出るあれである。
「ひゅー!」
「なにあれ」
「いや、蛇? かな? なんか気持ち悪い動きしてる!」
 正しくそう云う他無い光景であった。ロニの操る『バラバラX』は一体全体どういう原理であの動きをトレースしているのか。
 操縦しているのだとしても、あまりにも生物的過ぎる動き。
 有り体にいって、ちょっと引いてしまうレベルの技術であった。

「ええい、どちらにせよ、撃ち落としてしまえばこっちのもの!」
『アーチャーガールズ』たちは、その言葉と共に矢をいかける。
 凄まじい雨のような矢。
 けれど、蛇みたいなアトモスフィア的なあれそれになった『バラバラX』には矢は当たらない。
 まるでそうなるのが当然とでも言うかのようにロニは『バラバラX』を動かして『アーチャーガールズ』たちのホビーへと肉薄するのだ。
「近づけばこっちのもの!」
「近づけさせるな! あのニョロニョロを!」
 はい残念、とロニは笑う。
 すでに間隙を縫うようにして飛ぶ『バラバラX』は『アーチャーガールズ』たちへと迫っている。
 だが、蛇の形になった『バラバラX』でどのように攻撃するというのだろうか。

「手も足もないっていうんなら、後は頭突きでしょ! どーんっ!」
 神撃(ゴッドブロー)の頭突きの一撃が『アーチャーガールズ』たちのホビーを打ちのめす。
 それはあまりにも理不尽な一撃であったことだろう。
 頭突き。
 ドシンプルな一撃。
 ただそれだけで作り上げたホビーが粉砕されるのだ。
 それは信心とか、そんなものを超越した一撃であった。あとなんかこう、根源的恐怖を駆り立てるものっていうか、感じさせるものっていうか。
 とにもかくにもロニの一撃は凄まじい衝撃となって妨害チームを粉砕するのだった――ん。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーむ、適材適所!
役割分担が出来てるって事は、良いチームって事
敵ながらやりおるわ!

こっちも負けてはいられない
手を動かしながら、敵にも対処!
外装パーツは指をわきわきさせながら、出来る範囲で積みを消化

内部のプラモは敵を迎撃だ
サーベル展開、【剣技・蒼嵐剣】起動
斬撃と風の刃を飛ばして敵を迎撃
更に竜巻を残して敵の矢を『吹き飛ばし』て、こっちの邪魔をされないようにしよう
兎に角数を設置
どれだけ軌道変更しようとも、竜巻の壁の中を通り抜けられる数はたかがしれてる筈!
後はどうとでも迎撃出来る

この竜巻を簡易的な乾燥機として使えば、塗装まで行けるのでは…?
ビッグアイデア!
あ、塗料持ってきてない畜生…!



『梟門鴉鷺連合』の戦術は見事だった。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、しかし不敵に笑む。
「うーむ、適材適所! 役割分担ができてるってことは、良いチームってこと。敵ながらやりおるわ!」
 なんかこう、アニメだったら老獪な四天王の一人って感じのムーヴをしながら玲は、にやりと笑った。
「笑ってる場合じゃねーと思うんだけど!?」
『五月雨模型店』メンバーたちの声が響く中、玲は冷静だった。

「たしかにね。こっちも負けてはいられないっていうのは当然のことだよ。だけどさ、手の動きを止めるのはよくないよね」
 そう言いながら玲のホビーのバックパックに装着された外装腕部が忙しくなく動いているのだ。
 彼女はあんなことを言いながら、しかし手を止めていなかった。
 例え、矢が雨のように降り注ぐのだとしても。
 ただひたすらに眼の前のホビーに真摯だったのだ。
 彼女は止まらない。
 このホビーを作り上げ続け、積みを消化するその時まで彼女の戦いは終わらないのである。なんかこう、外装腕部のマニュピレーターがワキワキとなめらかに動きすぎて、若干ちょっと怖い。
「た、たしかに……でも、敵チームの迎撃だってしないとだし」
「なら、せっかく自由になる腕があるんだからさ!」
 玲のひとみがユーベルコードに輝く。

 彼女のホビーが放つは、サーベルによる斬撃波。
 生み出された風の刃は迫りくる『アーチャーガールズ』たちの矢を切り裂きながら、その矢を射かけるホビーを切り裂かんとする。
 だが、敵もさるものである。
「やはり此方を迎撃するか。それも腕を止めずに! なら!」
 引き絞る弦。
 そして、放たれる矢は曲射と天より降り注ぐ矢、そして玲のホビーが放った剣戟の刃すらも射抜く強烈なる一射。
「射抜くのみ! あのチームの要を!」
 玲は見ただろう。
 あれはブラフだ、と。

『アーチャーガールズ』たちの狙いは、こちらの手を止めることに終始している。
 徹底した役割分担。
 故に読みやすい。
「剣技・蒼嵐剣(プログラム・ストームソード)、その大系の礎となる基本の技を舐めないでよね!」
 そう、その斬撃放つ軌跡は蒼き竜巻となってフィールドに残り続けるのだ。
 故に、玲は手数と迎撃、そして敵の妨害を妨害するという複数の役割を一手で成し遂げてしまっているのだ。

「この竜巻は……! だが、曲射でなら!」
「甘いよね、そんな無理くり軌道を変えたような矢がさ!」
 自分に届くわけがない、と玲はホビーの腕部で振るう斬撃でもって、これを迎撃する。
「くっ……これだけの大量の竜巻を巻き上げるなど……!」
「……ん?」
 玲はその言葉に気がついた。
 竜巻?
 風?
 サイクロン?

「来た! ビッグアイデア!」
 え、なに、と『五月雨模型店』のメンバーたちは玲の言葉に振り返る。何がどうなったのかわからないが、しかし玲が起死回生の一手を思いついたことはわかったのだろう。
「この竜巻を簡易的な乾燥機として使えば、塗装まで行けるのでは……?」
 用法以外の用途で使うのはご遠慮頂きたい!
 どこかの食器乾燥機のメーカーだって言ってるでしょ! 用途外で使用した際の損害は絶対に認められんのである!
「あ、そもそも塗料持ってきてない畜生……!」
 玲は膝を折ってがっくりと項垂れる。
 そこ? とみんな思ったが、しかし、誰もツッコめないのであった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『最速の』レジー・トレイラー』

POW   :    俺の前は走らせねえ!
自身の【速度】を、最も近接する対象と同値にする。対象が変わらない限り、自身の[速度]のみ徐々に上昇する。
SPD   :    おっとそうくるか。なら俺はこうするぜ!
【追い越されそうになる】事で【世界最速記録を出した時の自分自身】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    俺を止めようなんて100年早い!
状態異常や行動制限を受けると自動的に【逆境を逆手に超加速する不屈の魂】が発動し、その効果を反射する。

イラスト:田口 マサチヨ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リオン・リエーブルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ダークリーガー率いる『梟門鴉鷺連合』の妨害を退け、なんとか『五月雨模型店』のメンバーたちもコースを開拓する事に成功する。
 だが、すでにダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーはコースへと躍り出ている。
 彼の操るホビー『ハチ四駆』は凄まじいモーター音を立てながら、一気にコースを直走る。
「やはり妨害をものともしないか! それでこそ、世界大会! それでこそこの第三回戦まで勝ち上がってきたチーム! いいぞ、俺はこういうひりつく様なデッドヒートを求めていたんだ!」
 疾駆するホビー。
 そして、背中から猛追してきている『五月雨模型店』メンバーたちの操るホビー。
 レースコースの開拓はたしかにそれぞれのチームのコースを積み上げられたホビーを作り上げることで生み出される。
 だが、それだけではないのだ。

 そう、時に合流するように交錯し、時に正面からぶつかるようにコースが設計されている。
 とは言え、それは互いのチームの進捗、そして速度が噛み合っていればの話だ。もとより速度に劣っていたのならば、交錯するタイミングもずれる。
 けれど、コース作成は互角!
「ならば、後は此方の速度が上回るか! それとも高速戦闘での雌雄を決するか! いずれか!」
『最速の』レジー・トレイラーは笑う。
 ダークリーガーらしからぬ闊達さで笑い、この勝負を楽しんでいる。
 そこに陰湿な罠も、策略もない。
 ただ、己こそが最速であることを示すために彼は『ハチ四駆』を駆り、コースを走っているのだ。
「追いついた! 後は合流コースか、正面交錯コースかでアイツを!」
『五月雨模型店』のメンバーたちはそれぞれ装備の違う『セラフィム』を扱っている。いの一番に飛び出しているのは、大型突撃槍をもつ『アイン』の機体。ついで『ツヴァイ』、遅れて『ドライ』、『フィーア』だ。
 いずれも攻撃圏内には入っている。
 猟兵たちは、先程まで『アーチャーガールズ』たちに妨害されていたのを意趣返しするようにダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーへと彼の進撃を食い止めるために戦いを挑まねばならないのだ――!
馬県・義透
陰海月「ぷきゅっ!」

…陰海月語を翻訳します…

途中で星パーツ拾っちゃったから、頭に載っけてるよー。
これでクリスマス商戦チラシレース盛り上げつつ。
(光るのはこのためだけにした。後述)

……速いってカッコいいよね!!(溢れる少年心)
だから、妨害したいけど…うーん、たぶん跳ね返ってくるね、これ。どこまで行動制限になるかわからないし、光るのはイルミネーション分だけにしておこっと!
なら!これは直接!取っ組み合い!
スピード出しつつ近づいたら…そのまま、ストレートにパンチ!
カウンター警戒するから、他の触腕でガードはしてるけど!

こういう爽やかにできる勝負、ぼくは好きだなぁ!



 疾走疾駆する『ハチ四駆』を駆るはダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーであった。
 彼の走りは見事なものだった。
 ハンドリング、コーナーリング、トラクションコントロール。
 汎ゆる点において『最速の』理論を実践するものであったことだろう。構築されたレースコースが事前に情報を得ることのできない仕様であったのだとしても、彼の瞬時の判断力は凄まじいものだった。
「流石だな! やはり追いついてくるか!」
 己の車体のバックミラーに映る機影……いや、あれは!

「眩しいな! キラキラと輝く流星と言ったところか!」
「ぷきゅ!」
 それは馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と合体し、四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)たる1680万色の呪詛を纏う『陰海月』の操る『操舵手クラゲ』の姿であった。
 何故か、頭部にと宇宙で拾った星のパーツを付けている。
 あ、もしかしてクリスマスツリー的なそういう装いということなのだろうか?
「きゅ!」
 その通り、とこの『クリスマス商戦チラシレース』の意味を示すように『陰海月』は『操舵手クラゲ』と共にレースコースを疾駆し、『最速の』レジー・トレイラーを追っているのだ。

 速いってかっこいい。
『陰海月』はそう思う。
 合体した四悪霊の一人がなんだか照れくさそうにしているのは、気の所為じゃあないかも知れない。ともかく、なんとかレースコースの交錯地点で真っ向からぶち当たるしかない、と『陰海月』は理解する。
 それほどまでに『最速の』レジー・トレイラーの駆る『ハチ四駆』は速いのだ。
「きゅ!」
「真っ向勝負と来たか!」
 正面衝突。
 その勢いは凄まじかった。だが、動きが止められない。それほどまでに『最速の』レジー・トレイラーの馬力は凄まじかった。

 けれど、『陰海月』は諦めない。
 己の『操舵手クラゲ』の触腕で持って打ち据える。車体のカウルがへこむ。だが、その衝撃を使用して『最速の』レジー・トレイラーは車体を滑らせるようにして触腕の高速を振りほどくのだ。
「なるほどな! こちらのユーベルコードを警戒したか! だが、それで止まれるほど俺もヤワじゃあないんでな、坊主!」
 コースの路面を斬りつけるような凄まじいグリップ音と共に『ハチ四駆』がドリフトターンして『陰海月』を後輪でもって弾き飛ばす。
 しかし、それを『操舵手クラゲ』の触腕がガードしているのだ。

「きゅ!」
「ほう! ガードが間に合ったか。間に合わさせるつもりなど毛頭なかったが! やるな、坊主!」
「きゅ、ぷっきゅ!」
 互いに一進一退。
 されど、デッドヒートめいた戦いは、さらに会場を盛り上げ、さらなり疾走疾駆をフィールドコースに刻む。
『陰海月』は、ダークリーガーとの戦いである、ということを一時忘れただろう。
 それほどまでに彼の走りは爽快だった。
『最速の』レジー・トレイラーもまた同様であったはずだ。
 その確かな手応えを感じながら、『陰海月』はさらに互いの力を尽くすような走りを見せるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八洲・百重
●POW

やっとコースが開通して大将とタイトルマッチだっぺ
向こうのハチ四駆はマニューバタイプだども、ネオ四駆はおらのすぐ横で並走できるハイテクホビーだぁ
ライトニングエッジの速さに置いてかれねぇように、日頃の走り込みトレーニングの成果を見せっべ

走れば走るほどライトニングが指示せず自動でコーナーリングを切るようになってきたべ
さっすが次世代型ハイテクホビーのネオ四駆だども、相手も追い抜かせまいとすんげぇ動きだべ

えぇっと…スリップストリームだったか?
それを狙って後方にビタリとくっつきながら追いすがるだよ
相手がヘマしたら一気に勝負だべ!
フロントバンパーのローラーを利用した『ぽんぽこボンバー』で抜けるべさ!



 とうとう、というべきか。
 それともやっと、というべきか。
 八洲・百重(唸れ、ぽんぽこ殺法!・f39688)はついに訪れた相手チーム『梟門鴉鷺連合』の総大将とも言うべきダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーとの戦いに挑む。
 彼が『最速の』と渾名されるのも頷ける走りをコースに見せている。
「タイトルマッチだべ!」
『最速の』と渾名される以上、彼はチャンピオンと言っても良い。 
 彼の走りは見事の一言に尽きる。
 恐らく『マニューバタイプ』での操縦になっているのだろう。だが、そのハンドリングやグリップ、トラクションコントロールなど切り替え。
 どれもが一流と言える。

「だけんども、おらも負けねぇさ!」
 そう、己の『ライジング・シュヴァリエ』と共に並走する『ネオ四駆』、『ライトニングエッジ』はハイテクホビーである。
 CPUを搭載し、コースの癖を学習することでコーナリングさえも自動で行うのだ。
 最適解を導き出す力。
 それは度重なる学習に寄ってのみ導き出されるものであったことだろう。
 故に百重は走る。
 日々の走り込みを思い出す。

 プロレスも一緒だ。
 反復練習によって体に染み付かせた動きは、どんなに疲弊していようとも、どんなに怪我をしていようとも、その場、その時担った瞬間に動くものだ。
 そういう意味ではハイテクも、アナログも関係ない。
 あるのは修練という名の積み重ねだけだ。
「漲る気迫、見事だと言っておこうか!」
『最速の』レジー・トレイラーの声に百重は見やる。
 すでに並走してきている。交錯ポイントを通過し、合流コースに至ったのだ。
 こちらのハイテクホビーである『ネオ四駆』に引けを取らぬ速度は、やはりダークリーガーの技量あってこそだろう。
「そっちだってすんごいべぇ! さっすが『最速の』と名乗るだけはあるぅ!」
「その動きについてくるレディ、キミもな! だが、俺の前は走らせない!!」
 ユーベルコードが煌めく。

 瞬時に『ネオ四駆』と『最速の』レジー・トレイラーのホビーが並ぶ。
 彼我の速度を同一にし、彼のホビーだけが徐々に速度をあげていくのだ。
「なにー!? すんげぇ動きいましたべ!?」
 一瞬で前後が入れ替わった。
 その圧倒的な力に百重は目を見開く。徐々に距離を離されていく。だが、百重は諦めなかった。
「すりっぷすとりーむ! だべ!」
 ぴったりと『最速の』レジー・トレイラーの車体の背後につける『ライトニングエッジ』は、空気抵抗を受けず、労力をかけず、流れる空力に引っ張られるようにして張り付いているのだ。
「ふっ、なるほどな! 考えたようだが! しかし!! 俺の走りはデンジャラスだぜ!」
「やってみせるだよ!『ライトニングエッジ』!!」
 次の瞬間、百重の瞳がユーベルコードに輝く。

 それは瞬間的なものだった。
 狸火の炎を宿す『ライトニングエッジ』、その突進はピッタリと張り付いた『最速の』レジー・トレイラー』の後部バンパーへと激突し、その一撃をぶちかましたのだ
「!? 後部から激突、だと!? この俺の速度を僅かでも上回ったのか!」
「そうだべ! これは一瞬の勝負! ヘマもできねぇ! だから! これが『ライトニングエッジ』のぽんぽこボンバー(ポンポコボンバー)だべ!!」
 百重の言葉にGPウォッチが反応し、『ライトニングエッジ』のCPUが応えるようにして、炎宿す車体でもって、『最速の』レジー・トレイラーを最強の突撃でもって盛大に後ろから吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルヴィ・フォーアンサー
……速さなら負けないよ。
『被ダメージ増加の副作用を忘れるな』

お互い高速で競い合いながら正面交錯コースで勝負。
交錯コースに入った所でロケットパンチを撃ち出し切り離してビームサーベルを構えて真っ向勝負。
……に見せかけてぶつかり合って膠着状態の所へ切り離しておいたロケットパンチを
誘導して後ろからガトリング砲で攻撃しかけるよ。
ダメージで勢い弱まったら斬り裂いて吹っ飛ばす……油断と思い込みは禁物だよ。

ちなみに試合終了後、どデカい熊のぬいぐるみ買って貰ってご満悦のシルヴィを見たとか。



 ダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーは気持ちの良い男であったかもしれない。
 さっぱりとした性格ながらも、しかし勝利への執念を持ち得ている。
 そして、対戦者に対する敬意も持っている。
 ハッキリ言って、ダークリーガーらしくない好漢であると言える。
 そんな彼が本気を出している。
 猟兵たちの猛追と少しでもゴールから遠ざけ、コースを直走る速度を落とそうとしている。だが、逆にそれは彼の勝利を渇望する心に炎を灯す。
「流石だな! そう来るのならば、俺は!!」
 その操るホビー『ハチ四駆』がコースを疾駆する。
 凄まじい速度であることはいうまでもないが、それ以上に、コーナーリングが見事だった。

 鮮やかとも言えるドライビングテクニックは、一気に詰まっていた距離を引き離すようにカーブをクリアしていくのだ。
「速ぇ! なんだよあのコーナーリング!?」
『五月雨模型店』のメンバーたちが呻く。
 しかし、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はたじろがなかった。むしろ、挑戦しがいがあるとさえ思っただろう。
「……疾さなら負けないよ」
 瞳に輝くはユーベルコード。
 己のホビー『ミドガルズ』の装甲が真紅の疾風を纏う。
 それは圧倒的な加速で持ってコースへと飛び込み、走る。しかし、彼女が目指していたのは『最速の』レジー・トレイラーの背中ではなかった。

 目指すは交錯コース。
 そう、正面から『最速の』レジー・トレイラーの『ハチ四駆』と相対するのだ。
 シルヴィが狙ったのは彼に追いつくことではなかった。
「そうか、俺と真っ向からぶつかるつもりか!」
「……そう、だから」
『被ダメージ増加の副作用を忘れるな』
『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
 そう、今の彼女のホビーは真紅の疾風を纏っている。確かに失踪中の攻撃力は底上げされる。けれど、同時に受けるダメージもまた4倍にまで引き上げられているのだ。
 つまり、ハイリスクハイリターン。
 踏み込む。
 ためらいはない。

 この『プラクト』というスポーツにおいて人の生命の生き死にはない。
 故に、というわけではないけれど、シルヴィは踏み込む。
 交錯する互いの視線。
「チキンレースだな、これは!」
「チキンは関係ない」
 シルヴィはそう言って目視した凄まじい速度を持って走る『ハチ四駆』へとロケットパンチを放つ。
 引き抜いたビームサーベルを構えた二段構え。
 しかし。
「どれだけ速かろうが、今の俺を捉えるには遅い!」
 ロケットパンチの一撃を躱して、『最速の』レジー・トレイラーは後輪を滑らし、蛇行運転でもってシルヴィの『ミドガルズ』へ迫る。
 ビームサーベルの一撃を躱す。

「不規則な動きは狙いが付けられないだろう!」
「そうだね‥…でも、油断と思い込みは禁物だよ。私の、『ミドガルズ』の武器は」
 次の瞬間『最速の』レジー・トレイラーの『ハチ四駆』のリアウィングを吹き飛ぶ。それは後方からの衝撃で持って弾けたのだ。
「なに!?」
 彼は見ただろう、そこにあったのはシルヴィが放ったロケットパンチが構えるガトリング砲。
 そう、シルヴィの最初の一撃はブラフだったのだ。
 腕部を浮遊砲台にするための。
「あの一撃は……!」
「そう、油断を誘うための……けれど、あなたも相当やる。直撃させるつもりだったのに」
 リアウィングしか吹き飛ばせなかった。
 疾風のように交錯し、駆け抜けていく『ハチ四駆』にシルヴィはもはや追いつけないことを悟る。
 後は、『五月雨模型店』と他の猟兵達次第だ。

 そして、これは後日談だけれど。
 シルヴィはどでかいクマのぬいぐるみを抱えて喜ぶことになる。
 それは少しだけ遅れたクリスマスプレゼントであっただろうし、親代わりの誰かの心を配った贈り物であったことだろう。
 それもまた一つのクリスマスの在り方だ。
 しあわせなゆめを見れますようにと、誰かが願ったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーシア・ロクス
速い……!最速って名前は伊達じゃないって事ですね……!?
3P「けれど…!わたし(2P)!」
2P「障害物だったプラモから車両タイプ、確保してるっすよ!勿論カスタム済み!」
3P「……アイゼンケーファーのLEGパーツを換装し、二脚型から車両型にチェンジです!!(武器・防具改造)」

これで速度は得ました!そしてUCで多少の障害物なら問題ありません!
後は一点突破、あるのみです!
後方より近接信管(※直撃せずとも接近で起爆)ミサイルを牽制で大量発射しながら一直線に追い上げて……、
すみませんが普通のレースじゃないので普通に「追い抜き」はしません、リボルビングパイルで、まっすぐ相手自体を狙って直接打ち貫きます!



 猟兵の一撃でダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーのホビー『ハチ四駆』のリアウィングが吹き飛ぶ。
 後部バンパーも後部からの突進で破壊されているが、しかし、そんな車体の状況にあってなお彼の『ハチ四駆』は疾走疾駆を止めない。
 ただ前進する。
 ただ最速を求める。
 その単純で完璧な目的なためにこそ、彼は己の持てるドライビングテクニックの全てを注ぎ込んでゴールを目指していたのだ。
「疾い……! 最速って名前は伊達じゃないってことですね……!?」
 ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)は追いすがる。
 けれど、合流コースに入ってなお、その背中は遠い。
「まだまだ追いつかせはしないさ! この俺の世界新記録はな!」
「流石はってところですね!」
「けれど……わたし!」
 3Pのメガネが光る。

 きらん、と。
 それは妙案を思いついた時の3Pの顔だった。
「ええ、お任せっす! 障害物だったホビーから車両タイプ、確保してるっすよ! もちろんカスタム済み!」
 2Pの操る『アルミィ先生』がユーシアの駆る『アイゼンケーファー』の元へと運んできたのは、同じ『ハチ四駆』の車体だった。
 ルーフ部分に接続品が備えられているのがカスタムの拡張性を大幅に増加させているのだ。
「いいですか、わたし!『アイゼンケーファー』のアンダーフレーム換装です! 二脚型から車両型二チェンジです!!」
「はい!」
 その言葉とともに『アイゼンケーファー』の上半身が飛ぶ。
 車両パーツと合体することに寄って、その特性を変えるのだ。

 ユーシアのプレイ日記~レースゲーム~(ダレモヤツヲトメラレナイ)。
 それは散々っぱらにプレイしてきたレーシングゲームの賜物だった。例え、下半身が車両になろうが、操作に問題はない。
 これまでだってユーシアは多くのゲームをこうやってクリアしてきたのだ。
 クリアできないゲームなんてない。
 いつだって人の創意工夫でもって乗り越えることができるように作られているのだ。現実だってそうだ。
 絶対勝てない相手なんていないのだ。
「これで速度は得ました! 障害物なんて!!」
 一気に激走する。
 それはレースコースをショートカットするような障害物を無視するかのような直線的な走りだった。

「それはもうレースじゃあないだろう!」
「いいえ、ショートカットだってれっきとしたコーステクニックです!」
 放つは大量のミサイル。
 追いかける『最速の』レジー・トレイラーの車体の周辺に着弾し、爆風が吹き荒れる。
 だが、凄まじいトラクションコントロールでもって『最速の』レジー・トレイラーはミサイルの爆風をも躱すのだ。
「まだまだ! この程度で俺を追い抜けると思うな!」
 妨害もなんのそのである。
 
 だが、ユーシアは構わなかった。
「普通のレースじゃないから、『追い抜き』はしません! わたしがあなたに勝たなくっても、きっと追いすがるみんながあなたを追い抜いてくれます! だから!」
 そう、ユーシアは追い抜きを狙っていない。
『最速の』レジー・トレイラーを少しでもコースに縫い留めること。
 この試合の勝利は、いつもの殲滅戦ではないのだ。
 最初にゴールテープを切った者が所属しているチームの勝利なのだ。だからこそ、『アイゼンケーファー』のパイルバンカーの一撃は『最速の』レジー・トレイラーの『ハチ四駆』を縫い留めるようにして、そのサイドカウルを撃ち抜くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レジーナ・ビエルニィ
……流石に本職だけある
悔しいけど、向こうの土俵じゃ勝てそうにないかな
……悔しいけど(2回目)

交差する地点辺りに全力で移動、そのまま相手の進路上に飛び出して止めに入る。
何発かタイヤを狙って撃つけどこれだけで止まったら苦労しないし、多分そのまま撥ねられる

……悔しいけど(3回目)、後は彼らにお願いする

けど、油断してると足元をすくわれるよ。勝負は、最後まで分からないもの。
それに、私はここまでみたいだけど、だからって黙ってこのまま終わらせる気は、無いから

(戦闘不能前にレジーを対象にUC【バトルフィールドの亡霊】を発動。
誰かの攻撃をトリガーに、もう居ない筈の狙撃手の弾丸が、何度でも「最速」へと襲い掛かる)



『梟門鴉鷺連合』率いるダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーのホビー、『ハチ四駆』の疾走疾駆は凄まじいものでった。
 鬼気迫るものがあったと言っても良い。
 これは妨害ありのレースだ。
 猟兵たちが彼に追いすがり、そのホビーに攻撃を叩き込んでなお、彼のホビーは走ることをやめない。単純だが、それだけの、単一の目的のためだけに作られたホビーは、走ることを決してやめないのだ。
 その凄まじき走りにレジーナ・ビエルニィ(雪女のバトロワシューター・f37984)は感嘆の息を漏らす。
「……流石に本職だけある。悔しいけど、ここは向こうの土俵……悔しいけど」
 勝てる見込みがない。
 己が追いつける気がしない。

 例え、己のホビー、『憂国学徒兵』シリーズの機体をもってしても、と理解できる。
「……悔しいけど」
 レジーナはもう一度言った。
 悔しい、と。
 けれど、と思う。これは個人の勝負ではない。チーム同士の戦いなのだ。
 この試合は変則マッチ。
『プラクト』の試合は基本殲滅戦だ。
 相手のチームを一人残らず倒して初めて勝利をえることができる。けれど、このレースは違う。
 最初にゴールテープを切った者が所属しているチームの勝利となるのだ。

 なら、レジーナは己がすべきことを見定め、交錯コースにて待ち受ける。
 真正面から迫りくる『最速の』レジー・トレイラーのホビーを見据える。
「真正面から来るか! だが、俺を止められるものか! 弾き飛ばしてくれる!」
「……わかってる。私があなたを止められないことは」
「それでも立ちふさがるかよ!」
 ええ、とレジーナは己のホビーと共に狙撃銃を構える。
 黒と白。
 ペンギンカラー。ペンギンは飛べない鳥だけれど、水中を飛ぶように泳ぐ。なら、自分もこのレースという海中で、最大限のことをする。
 すなわち。

「……こうする」
 引き金を引く。
 狙うは『ハチ四駆』の車輪。ホイールとタイヤだ。 
 あのタイヤのグリップが加速を生んでいる。なら、破損すれば加速が喪われる。彼女の狙撃は確かに『ハチ四駆』のタイヤに打ち込まれる。
 けれど、止まらない。
 わかっていたことだ。これで止められたら苦労はないし、ダークリーガーもちょおいもんである。

「なら……身を挺してでも止める」
「チームのために身を犠牲にするか! その志は立派だが! 志だけでは!!」
 激突する『ハチ四駆』の車体。
 レジーナのホビーが宙を舞う。装甲が砕けながら散る。
「ああっ!」
『五月雨模型店』のメンバーたちの悲痛な顔が見える。
 けれど、レジーナは頭を振る。

「……ごめん。でも、このまま黙って終わらせる気……ないから。悔しいけど」
 あなたたちに、とレジーナは託すようにしてユーベルコードに輝く瞳で見つめる。
 自分のホビーの装甲が砕けている。
 一生懸命作ったのがわかるからこそ、『五月雨模型店』のメンバーたちはレジーナに悲痛な表情を向ける。
 わかっている。でも、これが、最適解なのだとレジーナは深く頷く。
「ナイスファイトだったと言っておくが! さらばだ!」
『最速の』レジー・トレイラーは走り去る。

 いや、走りされなかった。
 そう、彼女のひとみは、ユーベルコードに輝いていた。
「……なんだ? 何故、まだ……!」
 彼に襲い掛かるは狙撃銃の弾丸。いや、あの狙撃手は弾き飛ばしたはずだ。なのに、何故まだ弾丸が己のホビーに襲いかかっているのだ。
 これではまるで――。

 バトルフィールドの亡霊(ファントムスナイパー)は確かに存在する。
 レジーナは頷く。
「油断してると足元をすくわれるよ。勝負は、最後までわからないもの」
 それに、とレジーナの瞳はユーベルコードに輝き続けている。
 そう、彼女こそ亡霊の主。
 彼女の放った弾丸は、残響のように『最速の』レジー・トレイラーの進路を妨害し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

えっ。
『憂国学徒兵』の……最新、作?
ま、またあのデスマーチなんですか?今度は何日ミッションなんですか?

わたしはもう無理です。わたしの屍を超えていってください……(がっくり)
(以前のイッキ見のトラウマで真っ青になって震え)

……支援?(きゅぴーん)
支援って支援ですよね?演奏していいってことですよね!
わたし、求められてます!(復活の光)
(ステラさんと五月雨のみんなの表情を確認して、さむずあっぷ)

ではいきます【魔弾の射手】!

相手のコースに機雷を敷き詰めちゃいましょう。
触ったらもちろん爆発あーんどコースアウトですからね♪

躱そうにも、ハチ四駆の性質上、コースから外れることはできないはず!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
そういえば『憂国学徒兵』の最新作『CC』の最新話について
お話をする機会を失ってますね
後で語り合えると良いのですが
ルクス様?逃がしませんよ?

さてスピード勝負ならば
クリムゾンリッパーの機体でも追いつけるはず!
ルクス様は支援を……支援を、して、くださ、い……(諦)

気を取り直して、皆様耐えてください。
勇者の爆撃が来ます

それはそれとして
公式お墨付きの妨害レースならばこちらも遠慮なく叩き込めるというもの
クリムゾンブレード展開!
とりあえず両手に1本ずつ二刀流
追いかけて並走できたなら、真横から叩き斬ってあげましょう!
【クリムゾンブレード連続攻撃】です!
近接範囲から逃れたらブレードを投擲して時間稼ぎ



 アニメがあってホビーがある。
 ホビーがあってアニメがある。
 それはこの世界においてでもなく、互いに販売促進の意味合いを保管するものであった。どちらかだけではなく、どちらもあるからこそ互いを高めていく。売上という名の成功の度合いを。
『憂国学徒兵』シリーズと呼ばれるアニメは多くの作品が乱立している。
『CC』と呼ばれる最新作も、その一つだ。
「そういえば、『憂国学徒兵』の最新作『CC』、その最新話についてお話する機会を失ってますね」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は最新話の衝撃の展開について語り合わねばならないと思いつつも、ダークリーガーの絡んだ試合故に機会を逸していたのだ。

 ここらで一発論議に花を咲かせてみてもいいかなと思ったのだが、試合の状況は予断を許さない。
「今じゃないとだめ、それ!?」
『アイン』がコースを走りながらステラに問う。
「いえ、後でも良いのですが。ですが、やはり鉄は熱いうちに打て、ともいいますし。今後の展開がハラハラする今こそが最も熱い時かと」
 確かにな、それな! と『アイン』が同意したが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はちょっと渋い顔をした。
 だって、この間までシリーズ作品の多くをマラソンしていたのだ。
 まあ、デスマーチとも言うよね。
 どこかの銀河の英雄の伝説的なあれもそう。
 シリーズが多いってことは、単純に見なければならない話数も多い。
 そして、話数が多いってことは、当然視聴時間も伸びるのである。

 そうなればどうなるかなんて言うまでもないことである。
 彼女が微妙な顔をしたのもわかる。
「ま、またあのデスマーチなんですか? 今度は何日ミッションなんですか? デイリーミッションばりに長くなるのは……」
 にこ。
 みんな、にこ、としていた。
「え、なんでみなさんにっこりしているんですか? え、まさか。無理ですよ? 無理です。一気見は無理ですってば!」
 ルクスは以前のトラウマを刺激されて真っ青になっている。 
 先までの演奏ハイテンションは何処に言ってしまったというのだろう。

「とは言え、あのダークリーガーの速度は脅威ですね……スピード勝負ならば『クリムゾンリッパー』も追いつけるはずです……ですが、そのためには……」
 ステラはくじゅうのけつだんをする。
 いやまあ、予定調和って言われたらその通りなのだが。
 そう、支援。
 あの『最速の』レジー・トレイラーにおいつくためには、何を置いても支援が必要なのである。
「……ルクス様は支援を……支援を、して、くださ、い……」
 諦めろ。
 もうルクスの演奏という名の支援は確定しているのである。
「……支援?」
 ぐっぽん。あ、いや、きゅぴーん。
 ルクスの瞳がユーベルコードに輝く。もう止められない止めたったって無駄である。
「支援って支援ですよね? 支えて援助するの支援ですよね! していいってことでですよね、演奏を! わたし、もとめられていますよね!」
 ルクスのひとみは最大にかがやいている。
 復活の光とともに血色良くなったルクスは盛大にサムズアップした。

 だが、『五月雨模型店』のメンバーもステラも、ちょっと、その……って顔してしまうのは無理なからぬことであった。
 正直支援はありがたい。
 ありがたいけど!
「ほどほどで!」
「がんばります!」
 ほどほどつったろ! とメンバーたちの言葉が響くがルクスは聞いちゃいない。
「ではいきます、 『魔弾の射手』序曲(マダンノシャシュ・ジョキョク)!」
 あ、そーれ! とルクスの生み出した音符の機雷がコース上に散らばる。
 だがしかし、『最速の』レジー・トレイラーが操る『ハチ四駆』は稲妻の如き挙動で持って機雷の如き音符を躱していくのだ。

「ええー!? そのホビーの性質上、コースを外れることはできないはずじゃないですかー!」
「悪いな! 俺のドライビングテクニックは『最速の』と言われる所以なんだぜ! この程度!」
 軽いものだと言わんばかりに『最速の』レジー・トレイラーはルクスの機雷を躱していく。
「鼓膜無いなった!」
「そんな! でも……」
「ええ、速度は落ちましたね!」
 そこに駆け抜けるは真紅の閃光。
 そう、ステラ操る『クリムゾンリッパー』である。

「妨害は公式ルールというのであれば、ここで切り刻みます! クリムゾンブレード展開! 『セラフィム』!」
 その言葉に応えるようにして『クリムゾンリッパー』のアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
 それはステラのユーベルコード。
 一気に追いつき、『最速の』レジー・トレイラーのホビーへと連続攻撃を叩き込む。
 躱し、受け流し、それでも彼はステラの【プラクト専用】クリムゾンブレード連続攻撃(クリムゾンブレード)の猛攻を躱して見せる。
 しかし、それにも限度がある。
「ちぃ……! 息もつかせてくれないか!」
「ええ、そのとおりですとも! 鼓膜の犠牲は尊いもの! それほどの代償を払ったのですから、せめて!」
 時間稼ぎだけでも! とステラは『クリムゾンリッパー』と共に斬撃を叩き込み、『最速の』レジー・トレイラーを押し止めるのだ。

 だがしかし、ルクスだけがなんというか釈然としない気持ちになっていた。
「演奏していただけなのに、鼓膜がなんでなくなっちゃうんです?」
 あ、とみんな思った。
 自覚ないんだ、と――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

さー、これであとはスピード勝負だね。
ここまできたら『フィーア』さんに優勝してもらいたい、ねー♪

『フィーア』さん、わたしが支えるから勝っちゃおうね。
このまま『世界の噛み姫』になろうね♪

あ、『フィーア』さんがどんなに有名になっても、
わたしがいちばん側にいるからね、怖いことなんてないから……。

え?邪魔?あれ?『フィーア』さん、びっくりしちゃった?ごめんごめん。

それじゃ気を取り直して、勝利に向けていっくよー!

相手がモーター駆動なのは確認したし、
ここは【フィリングウェーブ】でモーターの回転エネルギーを奪って、
それを五月雨チームとサージェさんに分配だー♪

みんな、いっきに抜き去っちゃえー!


サージェ・ライト
【理緒さんと】
りお|力《ちから》が最高に高まっている気配を感じます
具体的には理緒さんの変態的昂りが最初からクライマックス

理緒さんがきっとフィーアさんから離れないので
フィーアさんと協力していきましょう
というか、理緒さん?フィーアさんの邪魔をしないように

フィーアさん、クリスタルビットを進路上に展開してください!
進路変更を余儀なくさせて加速のロスを発生させる作戦!
そして私とトラメちゃんは【電光石火】で最速のレジ―と併走しましょう!
追い抜かさないように横から体当たり!
ネコ力を舐めてもらっては困ります
弾かれてもこの程度は全然余裕で立て直しが出来るのです
トラメちゃん!
今度近づいた時にばりっとやりますよ!



 疾走疾駆するホビーたちに会場の熱気はさらに高まっていく。
 クリスマスの季節。
 冬だというのに世界大会会場は大いなる熱気でレースの行方を見守っている。
 快進撃を続ける新星『五月雨模型店』か、それとも古豪が連合を組んで結成した『梟門鴉鷺連合』か。
 どちらが勝利を収めてもおかしくない。
 そんなデッドヒートが繰り広げられ、会場のボルテージは最高潮に達していたのだ。
「スピード勝負って簡単に言うけど、やっぱりあの人疾い……!」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はすでにレースが終盤にむかっているのを肌で感じる。
 とは言え、ここまでやったのだ。
 精一杯やったのならば、やっぱり彼女の推しである『フィーア』に優勝してほしいと思うのが推し事するファンの心理であったことだろう。
「でも、『フィーア』さん、遅れてる?」
「す、すすみません……! 私の機体、速度があんまり出なくって……!」
「いいのいいの。『フィーア』さん、わたしが支えるからね。このまま『世界の噛み姫』になろうね♪」
 なにそれやだー! と『フィーア』は首をふる。
 だが、理緒にとっては、関係のないことである。
 むしろ。

「ううん、『フィーア』さんがどんなに世界的有名人になっても、わたしが一番傍にいるからね、怖いことなんて無いから……」
 いや、それを言っている本人が一番ちょっとこわいなって思わないでもなかった。
 ていうか、機体同士が近い。
 支えるからって物理的に……ってコト!?
「りお|力《ちから》が最高に高まっている気配を感じます」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は己のホビー『トラメ』と共にコースを欠けながら、理緒と『フィーア』のやり取りに深く頷く。
 なんか陶芸界が土塊を前にして精神統一しているような、ろくろを回しているよな気配さえ感じるのは気のせいだろうか。気の所為だよ。

「具体的には理緒さんの変態的昂りが最初からクライマックス!」
 言わんで良い。
 刮目! と言わんばかりにサージェの瞳が見開かれる。
「理緒さん、それでは返って『フィーア』さんを邪魔していますよ。推しとの接触を持ちたいという気持ちはわかりますが!」
「えー、じゃま? あれ?」
『フィーア』の『セラフィム』の速度が落ちている。
 そう、なんていうか、理緒の推しと押しが強いせいで、彼女は注目されることに慣れていないからこそ、余計に縮こまってしまっているのだろう。
「あ、ああう」
「ごめんごめん。びっくりさせちゃったね? でも、大丈夫! 敵が疾すぎて追いつけないなら、速度を上げれば良いんじゃないよ! そう、相手の速度を落とせば良いんだよ!」
「そんな相手を自分の土俵に引きずり下ろすみたいな、やり方……でも、今はそれしかないですよね!」
 サージェの瞳が煌めく。

 そう、卑怯なことはクノイチの専売特許である。なんだ、色仕掛け的なあれか。
「違います!『フィーア』さん、クリスタルビットを『最速の』レジー・トレイラー』の進路上に展開してください!」
「は、はははい!」
 宙を飛ぶクリスタルビットが交錯コースの支点に展開する。
 これで敵は進路を変更せざるを得ないだろう。
 だが。
「甘い! その程度の障害物なんてのはな!」
 乗り越えるものだと、言わんばかりに『最速の』レジー・トレイラーのホビー『ハチ四駆』の車体が跳ねて飛ぶ。
 なんということだろうか。
「え、えええー!?」
「そんなのありですか! でも! 隙は生まれましたね 理緒さん!」
「おっけー! 相手がモーター駆動だっていうのなら! フィリングウェーブ!」
 放たれるマイクロウェーブが『ハチ四駆』のモーター駆動を奪う。
 そして、その奪ったエネルギーを『トラメ」に注ぎ込むのだ。

「回転が止まった……!?」
「ええ、モーター再始動は時間がかかるでしょうが、それを!」
 電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)の如く『トラメ』たちが駆け抜けていく。
 そう、敵の動きを止める。
 敵の加速が捉えられないのならば、捉えられる領域まで引きずり下ろす。
 それが理緒たちの方策であったのだ。
「さあ、みんな一気に抜き去っちゃえー!」
「まだまだ!」
 交錯コースですれ違いざまにサージェは『最速の』レジー・トレイラーの『ハチ四駆』のカウルへと一閃を見舞う。
 弾かれるようにして車体が浮かぶが、しかし、モーターの再始動が間に合ったのだろう。
 空転させる後輪と共に路面を掴んだ『ハチ四駆』が壁面を奔ってコースに復帰するのだ

「しぶとい!」
「これが俺の走り方なんでね!」
「まだまだ勝負はわかりませんね! ですが!」
 敵の稼いだ距離は今ないものとなった。
 勝負はここからだと言うように理緒とサージェ、そして『五月雨模型店』のメンバーたちは死力を尽くすようにコースを駆けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニィナ・アンエノン
今度はレースだぁ!
今回の勝負、結構にぃなちゃん向きだったかもね☆
かもーん、にぃなちゃんのバイクのプラモ!
これは多分武装の範疇だから、前例からして持ち込んでおっけー!なはず!
いっくぞー!
ここはとにもかくにもゴッドスピードライド。
追い越そうとすると相手が速くなっちゃうから、暫くは後ろで様子見だね。
にぃなちゃんもバイクも体力温存して、コースが交差した時に勝負をかけよう。
後方から輝く【音響弾】を放って【目潰し】しつつ、一時的に耳も聞こえなくしちゃえ!
そしたら追い抜かれたなんて思われる間もなく先にいけちゃうはず。
派手に花火をばら撒いて、目を引いてるうちににぃなちゃんは遥か彼方って事!
ちょっとズルいかな?



『クリスマス商戦チラシレース』は終盤を迎える。
 レースコースの構築は終わり、敵の妨害をも退けた。
 後は、ゴールテープを切るだけだ。けれど、最後に立ちふさがるはダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーである。彼の駆る『ハチ四駆』は疾走疾駆という言葉がしっくり来るほどに凄まじい速度で持ってレースコースを駆け抜ける。
 猟兵たちの妨害に寄ってボロボロになりながらも、しかし車体をコントロールしてゴールを目指す執念は凄まじいものであったことだろう。
「すっごい執念だね☆ でも、にぃなちゃんも負けないぞ☆」
 ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は己の美少女ホビーをくるりと空中で翻すようにして跳ねる。

 舞う彼女の体が地面に着地する時、彼女は呼び出したバイクプラモ……『ミニテンプテーション』にまたがっていた。
「いっくぞー!」
 エキゾーストパイプから唸り声のような排気音が響き渡る。
 これもまた武装の範囲。
 ならば、呼び寄せてまたがるのはなんら違反でもない。
 そして、ニィナの瞳はキラリと輝く。
「ゴッドスピードライド!」
 その言葉と共に『ミニテンプテーション』は一気に加速し、コースを直走る。目指すは『最速の』レジー・トレイラーであるが、まずは仲間である『五月雨模型店』のメンバーと合流を目指すのだ。

 カメラがなんか背後から舐めるようなアングルだったのは、気にしてはならない。そういうサービス精神である。たぶん。
「ニィナお姉さん!」
「追いついたよ! でも……!」
「ああ、『最速の』レジー・トレイラー、すごい選手だ……追いつけない! ジリジリと離されて行っている……!」
『ドライ』の言葉にニィナは頷く。
 確かに、無理に食いつこうとすれば、すぐさま引き離されてしまう。
「悪いな、お嬢さん方。俺は追い抜かれるわけには行かないんだよ!」
 合流コースに突入してなんとか『最速の』レジー・トレイラーの背を見ることはできた。
 だが、なおも敵は加速していくのだ。

「これは……うん、やるっきゃないよね!『ドライ』君、耳塞いでてね☆」
「え、耳?」
「そ、こうするんだぞ☆」
 操縦パーティションの背後からニィナが『ドライ』の耳をふさぐ。
 え、いや、そういうこと!? 
「え、直接!?」
「はい、音響爆弾!」
 ニィナの言葉と共に放たれる光り輝く音響弾。それは『最速の』レジー・トレイラーにも不足のことだったのだろう。
 攻撃、と認識した瞬間にそれは終わっていた。

 炸裂する音。そして、光。
 次の瞬間、コーナーリングで『ミニテンプテーション』の車体が路面をかすめ、火花をちらしながら『最速の』レジー・トレイラーを追い抜く。
 追い抜かれた、と認識されなければいいのだ。
「ちょっとズルいかな?」
「いいや、これもまた駆け引きだろう! とは言えいいのかい、お嬢さん。いたいけな少年が真っ赤だぞ?」
「えっ」
 その言葉にニィナは目を見開く。

「そ、その、ニィナお姉さん、恥ずかしいんだが……!」
 いつまで耳をふさいでいればいいのだというようにニィナの手を取って『ドライ』が顔を真赤にしている。
 背中から塞ぐ手前、どうしたって彼に密着せざるを得なくって。
「……てへ☆」
 そんな可愛く言ったてだめである!
 二ィナはなんかもじもじしている『ドライ』の頭を撫でて、『ごめんね』ってウィンクするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

●なんかパーツをそれっぽく見えなくもない感じに並べたり再接続したりして戦闘機モード!とか戦車モード!とか言う感じのやつ
いっくぞー!
バラバラXくんヴィークルモード!
何人もボクの前は走らせないぞー!
そして決め手は…流体金属で作ったハリボテの分身を使った大技名、付けてバラバラXゴーストアタックでドーーーンッ!!
と敢えて囮にした分身のパワーとスピードをコピーさせた相手に攻撃するよ!

メリーメリークリスマースッ!
ちゃーんと勝った時のための用意をしてあるよもぐ
うんうんちゃんとみんなの分のケーキもプレゼントもあるってばもぐもぐ
大丈夫大丈夫まだなくならないよもぐもぐもぐもぐ



『バラバラX』はその名の通り、ばらばらになることができる。
 各所パーツを組み換え、姿形を変幻自在に変えることは当然できるのだ。
「なんかパーツをそれっぽく見えなくもない感じに並べたり再接続したりして戦闘機モード! とか洗車モード! とか言う感じのやーつ!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は無理くりに『バラバラX』のパーツを再接続して、ヴィーグルモードと言い張る形状へと形を変えていく。
 それは言ってしまえば、奇抜なスーパーカーみた形態であったことだろう。

 元が人型なのだと言われたら、あー、なんか名残があるなぁって感じの形だった。
 かなり無理がある。
 これで走る、と言われても、え……? となりそうだった。
 けれど、ロニは構わなかった。
「これで走る! いっくぞー!『バラバラX』くんヴィーグルモードだー!」
 言ったもん勝ちである。
 これで走れると言ったら走れるのである。物理法則もあったもんじゃないのである。
 飛べるって言ったら飛べるし、走るって言ったら走るし、人型って言ったら人型なのである。
 強引すぎると思われるかも知れないが、それがロニの通常運転である。
「何人もボクの前は走らせないぞー!」
「威勢は良いようだが!」
『最速の』レジー・トレイラーの駆る『ハチ四駆』は遥か前方である。
 並み居る猟兵たちの妨害をかいくぐり、さらに彼らの猛追をかわして未だトップに立っているのだ。

 ロニはそんな彼を見つめる。
「ぬう! でも、これはどうかな! 流体金属で作ったハリボテの分身を使った大技! 名付けて!」
 え、なに?
 急に何? とみんな思ったかも知れない。
 なんか『バラバラX』の流体金属で生み出されたハリボテが風に負けてガタガタ言っている。
「つまり?」
「バラバラXゴーストアタック!」
「全然わからんが!?」
 説明しよう!
 バラバラXゴーストアタックとは!

 剥離した流体金属をハリボテ状にし、ヴィーグルモードの加速と共に砲弾のように打ち出す、神撃(ゴッドブロー)の如き一撃なのである!
 加速すればするほどに威力が増大するぞ!
 本当かな? 本当かも?
「つまり、体当たりだな!」
「そうとも言うよね!」
 だが、『最速の』レジー・トレイラーは見事なドライビングテクニックでもって後輪を滑らせドリフト走行するようにして車体を滑らせ、そのハリボテの一撃を躱す。

 そして、ターンした後輪でもってハリボテを粉砕するのだ。
「やるね! でも勘違いしないでね! こっちが本命なのさ!」
 飛ぶ『バラバラX』。
 そのヴィーグルモードから変形した人型の姿で振るう拳の一撃は『最速の』レジー・トレイラーのホビーの外装に罅を入れる。
 何たる耐久力だろうか。
「肉抜きしてたら一発だったのに!」
「今の流行りは軽量化ではないのだよ!」
「でも、ボクだってまけられないよ! この後はメリークリスマースっ!だからね! はんとみんなのぶんのケーキだってもぐもぐもぐ」
「今なんか食ってないか!?」
「気の所為だよ。大丈夫大丈夫まだなくならないよもぐもぐもぐ」
 やっぱりなんか食ってる! とロニは場内からの総ツッコミを受けながら、もう心はすでにクリスマスだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
……これ普通に攻撃していいやつ???
いや何ていうか…速さ勝負!的な雰囲気の所で攻撃して、ブーイング喰らいたくないんだけど?

外装ユニットの要らない部分を放棄、ブースターだけ装備して身軽に行こう
【剣技・嵐流剣】起動
蒼嵐を纏い、疾走!
『斬撃波』で牽制しながらも、純粋に速度勝負といこうか!
更にブースターユニットを点火
加速!
後はコースの最短を攻める!
おおっと!ここでインド人を右に!
じゃなくてコーナリングはしっかりと!

インはしっかり最短経路
直線は可能な限り速度を上げて、全速で進む!
運転技術は向こうのが多分上
ならこっちは出力で押し切る!
無理矢理上等!

最終的に勝てば良かろうなのだ!



 月夜・玲(頂の探究者・f01605)はちょっと思った。
 確かに『クリスマス商戦チラシレース』は妨害有りのレースである。わかっている。
 けれど、なんていうか、その。
 ダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーの真っ向勝負な気質と相まって、許されているとは言え、妨害攻撃を行って場内からブーイングの嵐になったりはしないかと思ったのだ。
「……速さ勝負! 的な雰囲気で攻撃し辛いんだけど。ブーイング喰らいたくないんだけど」
 ブーイングすれど、されたくない。
 わからんでもない心理である。
 だが、『最速の』レジー・トレイラーは言う。
「問答などいらぬさ! 強さもまた勝負に必要なこと! 速さだけで決着が付かぬのが、この『プラクト』の良いところだろう! 来いよ! 全身全霊で相手してやる。そのうえでお前たちをぶっちぎってみせるぜ!」
 その言葉に玲は頷いた。
 了承は得た。
 敵からも。
 そして、場内の雰囲気だって察した。

 となれば、もう玲さんは止められない。
 彼女のホビーのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「そんならいいよね! 嵐はただ、全てを乱す! 剣技・嵐流剣(プログラム・ストームエッジ)!!」
 その言葉と共に彼女のホビーが蒼嵐をまとい、一気に疾走する。
 その速度は凄まじいというレベルではなかった。
 純粋なる速さ。
 その加速に寄って背面部に装備されていた外装腕部が引きちぎれるようにしてパージされ、地面に落着する間に玲は『最速の』レジー・トレイラーへと追いすがっていた。
「……疾いなッ!」
「まだまだ! こっからだよ!」
 放つ剣閃が斬撃波となって『最速の』レジー・トレイラーの『ハチ四駆』を襲う。
 牽制の一撃だったが、それを華麗なるドライビングテクニックによって躱される。やはり伊達ではない。

「加速!」
 背面ブースターユニットが更に火を噴出させるようにして玲のホビーを加速させる。一気に追い抜こうとした瞬間、『最速の』レジー・トレイラーのひとみがユーベルコードに輝く。
「させるものかよ!」
 それは世界新記録を樹立した時の走り。
 見事、という他無い凄まじい加速で持って追いすがる玲を引き離し、コーナーリングに突っ込んでいく。
 
 だが、玲も負けてあは居ない。
「加速は互角かッ!」
「なら、後はコーナーリングで! 最短を攻める! おおっと! ここでインド人を右に!」
 文字が読みづらかったって悲しいことだよね。
 でも、ネットミームに昇華するまでにネタになったのは喜ぶべきか否か。あ、いや、今は関係ないことである。
「ほんとそれ! じゃなくって! コーナーリングはしっかりと!」
 加速に寄って膨らんだ『ハチ四駆』のインに玲のホビーは突っ込む。多少強引でも良い。最短経路を取る。
 取らなければ負ける。

 ドライビングテクニックは遥かに『最速の』レジー・トレイラーが上だろう。わかっている。なら、自分にできることは!
「うおおおっ!!」
『最速の』レジー・トレイラーが吠えた。
 それに呼応するように玲のホビーの奥に備えられたユーベルコード発生装置が唸りを上げる。出力を上げたのだ。
「無理矢理上等!」
 強引にインに割り込んだために玲のホビーと『ハチ四駆』が接触する。
 もしも、これまで猟兵たちの妨害に寄って『ハチ四駆』が破損せず、万全であったのならば、当たり負けしたのは玲のホビーであったことだろう。

 けれど、そうではなかったのだ。消耗した車体がかしぐ。弾くようにして玲は『最速の』レジー・トレイラーの車体を壁に弾かれるようにして前を取るのだ。
 がくり、とホビーの膝関節が砕ける。
 だが、抜いたのだ。
「最終的に勝てばよかろうなのだ!」
 そして、『最速の』レジー・トレイラーの車体が壁面に叩きつけられる。
 速度は減ぜられた。
 なら! 後は!
「ぶち抜くだけだよ! 最初にゴールに飛び込むのが『五月雨模型店』の誰かで、『梟門鴉鷺連合』じゃあなければいいんだからね1」
 玲のホビーが拳を突き出す。
 その拳が生んだ風が吹き荒れるようにして、最後のデッドヒートが始まるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
カスタマイズしたとはいえ、互いに使用機は『セラフィム』……条件は同じ
勝負しましょう『アイン』
レジー・トレイラーへ同時に接近して彼を翻弄するのよ
互いを追い抜くぐらいの気持ちで走りましょう

駆けていくあなた達を何度も見たわ
経験を重ねた今の私なら、前より上手に走れる
追いつくわ、必ず

レジー・トレイラー、あなたはすごい選手よ
でもあなたが『最速』なら、あの子は『閃光』
本気を出したあの子のスピードは、もっと鋭くて、強い
だから私は、今よりもっと疾くならなくてはいけない
……そうする理由ができた気がするから



 ダークリーガー『最速の』レジー・トレイラーは確かに凄まじい速度を持っている。
 侮れないとは言わない。
 そこには強敵足り得る実力がある。
 故に薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は決意する。
 確かに彼女は猟兵である。『五月雨模型店』に味方する理由を持っている。ダークリーガーが敵であるからだ。
 けれど、彼女は『アイン』と呼ばれる少女に告げる。
「勝負しましょう『アイン』」
 彼女の言葉に『アイン』は振り返る。
 操縦パーティションに隔てられているが、しかし、彼女は笑った。

 静漓の意図を『アイン』は理解しただろうか。
 この期に及んで勝負?
「な、何を言っているんですか!?」
『ツヴァイ』は理解できなかったようだ。けれど、『アイン』も同様だった。笑っていた。
 勝負。
 そうだ、と彼女は笑ったのだ。
「カスタマイズしたとはいえ、互いに使用機は『セラフィム』……条件は同じ。そうよね」
「ああ! 五分五分の五分だぜ! 確かにいつも静漓ねーちゃんたちには手伝ってもらってばっかりだったからな!」
 だったら! と『アイン』の瞳に獰猛な光が宿るのを静漓は見ただろう。
 そこに彼女の意図は含まれていない。

 ただ、単純に『アイン』が静漓に勝ちたいと思っただけなのだ。
 言うまでもない。
『最速の』と謳うレジー・トレイラーに追いつくためには互いに競い合って限界の先を引き出すしかない。そういう意図を持って静漓は『アイン』に勝負を持ちかけたのだ。
 けれど、『アイン』は笑ったのだ。
「いいぜ! やろうぜ! そうこなくっちゃあな!」
「ええ」
 駆け出す。
 もっと、疾く、と静漓は己のユーベルコードの輝きを瞳に宿す。
 彼女は多くの経験を得てきた。自分のホビーは体の延長線上にある。そういうものなのだ。だからこそ、前よりも上手に走れる。
 昨日より今日。今日より明日。
 目指す先にあるのは光。
 幻視するのは、いつか見た『閃光』……。
「追いつくわ、必ず」
「内輪で随分と楽しそうだが! 俺の前は走らせねぇ!」
『最速の』レジー・トレイラーの笑い声が聞こえる。

 彼の速度は凄まじいが、しかし並ばれたのならば確実に彼が勝利してしまう。
 だからこそ、彼は負けない。
 全てのレースにおいて『最速』であることを宿命づけられたユーベルコード。
 故に。
「俺の前は誰も走れねぇのさ!」
 その言葉に静漓は頷く。

「レジー・トレイラー、あなたはすごい選手よ。此処まで猟兵たちの妨害を受けてなお、『最速』を誇っている。でも」
 静漓は己の『セラフィム』から噴出する光の翼の背後に迫る重圧を感じた。
 こみ上げるような、誇らしいような。
 この感情をなんと名付ければいいのか、彼女は知らなかったかも知れない。
 もしかしたら恐れであったかもしれない。
「あなたが『最速』なら、あの子は『閃光』」
「超える! 今此処で越える! 限界なんてクソ喰らえだぜ!『最速』も! あの空に浮かぶ『月』だって私は越えて見せる!!」
『閃光』が奔った。
 それは『アイン』の『セラフィム』。
 手にした大型突撃槍が変形する。まるで巨大な顎のように開かれ、噴射する熱波が一気に彼女の機体を加速し、静漓の『セラフィム』の光の翼さえ食らうように追い越していく。

 そして、それは彼女が願ったように『最速の』レジー・トレイラーすらも追い抜いていく。ユーベルコードの輝きよりも疾い。
「本気を出したあの子は、もっと鋭くて、強い。だから、私は、今よりもっと疾くならなくてはいけない」
 いつかの誰かがそうであったように。
 あまりにも疾すぎる生き方は、もしかしたら、と。だからこそ、静漓は望む。
 それに応えるように『セラフィム』のアイセンサーが応える。
『アイン』の『セラフィム』と機体をぶつけながらデッドヒートを繰り返す。
 
 其のさまを『最速の』レジー・トレイラーは見送るしかなかった。
「なんだよ……俺抜きで楽しそうにしやがって……だが、悪くないな。だが、あんたはいいのかい、あれで」
「……私にはそうする理由ができた。あなたが凄まじい選手だったからこそ、よ」
 だから、と静漓は『アイン』の『セラフィム』の背を見つめ、盛大に立ち上るゴールフィナーレと共に、自身の背で敗着によって満足気に消えていくダークリーガーへと賛辞を贈る。

 そして。
「私が、一番だ!」
『閃光』に追いすがる理由を掴む――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年12月24日


挿絵イラスト