ここにはかつて、緑があった。
少女はそう聞いていた。尤も、どれほど以前のことかは解らないけれど。
確かなのは当時の名残であろう、半円型――本当はもう半分あったのかも知れない――の骨組みが残されていて、そこに建物があったことだけ。
それでも少女は夢見ていた。いずれは緑の再生をと。
ゾンビから隠れ住む為の拠点を密かに抜け出して、危険を承知でこの遺構へと足を運ぶほどに。
(「とは言え、流石にこんな状況だしね」)
徒労なのだろうとは、心の何処かで解っている。
それでも、少女にとってはこの殺伐とした世界で生きていく為の希望であった。
無駄だと理解はしていても、彼女なりに周辺の掃除や整備を行っていた、ある日のこと。
「……あっ!!」
大きな瞳が輝く。
そこには確かに、緑があった。
小さく、ぽつねんと。しかし確かな萌芽が。
己の瞳にも映ったそれに、少女は感動で打ち震える。
その背後へと、影の波が押し寄せていることを知らぬまま。
●
「女の子と、植物。助けて、あげて、ほしい、です」
未だ慣れぬらしい人語で、セラピア・ヒューレー(枯れた森の最期・f38058)が告げる。
彼女が示した行き先は、近未来からの来訪者『アナザー』の住む世界。
ゾンビにより荒廃し、人々はいつ襲われるとも知れぬサバイバル生活を強いられている、そんな世界だ。
故に、この世界で生きる人々は、数こそ少ないものの比較的安全な拠点に身を寄せ合って暮らしているのだが、一人の少女がそこを抜け出し、ゾンビの標的になってしまったところから、事件が始まったと言う。
「緑が、好き、みたい、です。だから、植物園、あった、ところ、通ってた、みたいで」
無駄だと解っている。
危険だと解っている。
それでも、緑の再生を夢見た。その為に起きた、悲劇。場面転換は小さな希望から、大きな絶望へと。
叶うかも解らない――否、叶わない可能性の方が高かった、そんな夢の為に危険を顧みず、外へ出た。彼女の行為を、愚かと思う者もいるかも知れない。
それでもきっと、少女にとっては縋りたい希望だったのだと、セラピアは悲しげに言った。
いずれにしても、ゾンビによって命の危機に曝されている人間を、放ってはおけない。
「彼女を、助けて、ください。……あと、出来れば、新しい、|生命《みどり》も」
セラピアは深々と頭を下げてから、作って貰った資料を集った皆の目の前に並べるのであった。
絵琥れあ
第六猟兵ではお世話になっております。
アナザープレヱス・リフレインでは初めまして。
絵琥れあと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、詳細は以下の通りになります。
☆今回の目標
ゾンビの殲滅、及び『草笛・瑶樹』の護衛。
※植物の生死は成功条件には含まれません。
☆現場について
かつて植物園だった場所。
この世界においては遠い昔のものかも知れません。
ともあれ、全面ガラス張りの温室の骨組みのみが残っています。
その骨組みを背に、瑶樹が包囲され追い詰められています。
☆護衛対象について
|草笛・瑶樹《くさぶえ・たまき》。
十代後半ほどの少女で、外見はセラピアに似ています。
大人しい性格ですが、植物への情熱は並々ならぬもの。
指示には従いますが、非力です。護ってあげましょう。
☆今回の敵(ゾンビ)について
知能は低く、取り敢えず目についた人間である瑶樹を狙っている、といった様子です。
半円状の温室の骨組みを背にした瑶樹に対し、残りの半円状に展開して包囲しています。
突破、或いは気を引く方法は幾つか想定されますが、比較的自由に動けるので色々試してみるのもよいでしょう。
☆採用キャラクターについて
今回は【コンバート】【猟兵】の皆様のご参加を募集しております。
なるべく全採用を予定しておりますので、お目に留まりましたら奮ってご参加いただけますと幸いです。
公開された時点で受付開始とさせていただきます。
それでは、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御薬袋・彩葉
あー、はい!分かりました!
私に任せちゃって下さい☆
目的はアレですよね!
畑を耕せば良いんですよね?え、違う?
瑶樹さんをゾンビから護りながら畑を耕せば緑も育ちますよ?
大丈夫大丈夫、私実家では畑耕してご飯作ってましたからなんとかなりますって!
土壌は豊かそうですしきっと立派な作物が育ちますよー!
あと最近思ったんですよ
ゾンビって、良く燃えますよね?
燃やしてご飯作る燃料にしましょう!
さぁ、任されたからにはしっかりやらないといけませんね!
…あれぇ?瑶樹さんってどこ居るんだっけ?
【PL意図】
敵の目につく行動をしながら瑶樹さんの脱出を促す
【行動】
ご飯を作る
畑を耕す
鍋でゾンビを確保して燃やす
※本人の意図はご飯作る
●
「あー、はい! 分かりました! 私に任せちゃって下さい☆」
グリモア猟兵に元気よくそう告げて、御薬袋・彩葉(自称『モガ』・f39642)は現場へと転移した。
と、すぐに目についたのは何かに群がるように蠢いているゾンビ集団、その背中。
それを見た彩葉は、全て理解したと言わんばかりにドン、と何かを地面に突いた。
「目的はアレですよね! 畑を耕せば良いんですよね? ……え、違う?」
音に反応したのか、振り返ったゾンビの一体に首を傾げられた、気がした。
何かおかしなこと言ったかな、という表情の彩葉。
「瑶樹さんをゾンビから護りながら畑を耕せば緑も育ちますよ?」
作物、即ち野菜だって立派な緑である。青々と葉を生い茂らせ、大地に力強く根を張り、何より栄養満点の食料が収穫出来るのだ。いいこと尽くめである。
因みに地面に突いたのは鍬の石突部分である。勿論、畑を耕す為のものだ。
「大丈夫大丈夫、私実家では畑耕してご飯作ってましたからなんとかなりますって! 土壌は豊かそうですしきっと立派な作物が育ちますよー!」
そうしたらきっと、瑶樹も喜んでくれる筈だ。
……と、考えている間にも、一部のゾンビがこちらに向かってきている。やはり声や音に反応しているらしい。
だが、彩葉も審判の刻を乗り越えた身。ゾンビは勿論、鬼にさえ自慢のお握りを手に立ち向かったこともある。今更、怖じ気づくようなことがある筈もない。
「あと最近思ったんですよ」
そんな彩葉は、ふと無邪気に言った。
「ゾンビって、良く燃えますよね?」
すかさず彩葉は鍋を取り出し、さっと構えた。
「燃やしてご飯作る燃料にしましょう!」
自分達が恐れられるどころか、積極的に確保されそうになっているなどとは露知らず、ゾンビ達は変わらず彩葉へと躙り寄っている。
「さぁ、任されたからにはしっかりやらないといけませんね!」
やる気十分。
まずは正面から噛みつこうとしてきたゾンビに鍋を被せてせいっと確保!
ぽいっと後ろに押し出して倒し、また別のゾンビを確保しては、先のゾンビが起き上がる前にその上に積み上げていく。
それを向かってくるゾンビがいなくなるまで繰り返し、彩葉の背後には燃料、もといゾンビの山が出来た。これで鍋の火力に困ることもないだろう。
と、ここで彩葉はふと思い出した。
「……あれぇ? 瑶樹さんってどこ居るんだっけ?」
===
Result report
▼Get
称号『緑化活動、はじめました(野菜)』
→獲得リストヲ参照サレタシ
▼Status
護衛対象:生存、包囲ヨリ脱出
ゾンビ:交戦開始、残数減
植物:生存
===
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
全員リクエストによる、各シナリオへの救援プレイングです。
長らく滞っていたり人手が足りてない時など、ご自由にご利用ください。
台詞のアレンジ、行動のアドリブ、他猟兵との連携歓迎。自作PBWも採用歓迎です。
ユーベルコードも指定外の、公開中から適当なものを使用してもらって構いません。
HAHAHA!
グリモア猟兵殿の要請に応じて参上デース!
お困りのようデスネー? ドントウォーリー! ワタシが手伝いマスヨー!
アタック、ディフェンス、他の方への支援! おまかせくだサーイ!
白兵戦、射撃戦、集団戦もボス戦もオーライ!
冒険の踏破や日常への奉仕活動も得意であります!
臨機応変に対処可能デース、よろしくお願いしマース!
●
「に、逃げてきちゃったけどどうしよう……!」
「Hello! 草笛殿デスネー?」
「わっ!?」
包囲から脱出したものの、ちらちらと背後を気にかけている瑶樹へと、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)が気さくに声をかけた。
一瞬驚かれてしまったが、ニコ! と笑んで見せれば悪い人ではなさそうと判断したのか、瑶樹がほうとひとつ溜息を吐く。
「何か気がかりなことでもございマスカ?」
「わ、私、その……折角出た芽が……」
瑶樹は躊躇いがちにごにょごにょとそう言い、要領を得ない。
バルタンとしては、瑶樹にとって何が気がかりなのかは既に聞き及んでいる為、聞かずとも解っている。だが、グリモアによる予知など、あっさり信じられるものではないだろう。
恐らくは『そんな些細なことを心配しているのか』と呆れられるのが怖いのだろう。それでも、ここは瑶樹に話させるべきと判断したバルタンは、どんな話でも聞くよと言わんばかりの鷹揚な雰囲気を醸し出して見せた。
すると、瑶樹はやはり遠慮がちながらも、ぽつぽつと話してくれた。
「あっちに、植物の芽があって……折角生えたのに、ゾンビに踏み潰されるんじゃないかって心配で……」
「フム、デハ……ゾンビの動きを止めてしまいマショー!」
「えっ」
「骸式兵装展開、朱の番!」
出来るのか、と言いたげな瑶樹の視線に、バルタンは答えの代わりに緋色の女海賊を模した姿に身を変じて見せる。
そして、ファルシオンを一薙ぎすれば、赤い大津波がゾンビの集団を呑み込んだ!
「この津波は呑み込んだ相手の積極性を奪う効果がありマース! どんなに欲望に忠実なゾンビもご覧の通りデース!」
「あっ、皆へたり込んでる!?」
バルタンがファルシオンを向ければ、その切っ先を瑶樹も見る。
そこには確かに、大津波から生還しながらもやる気なさげに座り込むゾンビ集団の姿があったのだった。
===
Result report
▼Status
護衛対象:生存、英雄(猟兵)ニヨリ身柄確保
ゾンビ:残数変化無、行動停止状態
植物:生存
===
大成功
🔵🔵🔵
ルネ・ロッサ
ルネの救援プレです。
日常か戦闘向け。
【日常系】
「種族」か「ジョブ」を活かした行動描写をお願いします。
ダンピール(種族)が活きる場面は、吸血鬼ネタで対応です。
ジョブは、ブラック・メイドナイト(黒騎士×パーラーメイド)です。
ジョブが活きる場面は、メイドネタや喫茶店ネタで対応です。
『コイネガウ』の希島でルネ・カフェを経営するメイド長です。
【戦闘系】
戦闘の立ち位置は前衛の物理&魔術アタッカーです。
魔法の大剣を振り翳して戦います。
パワータイプよりはテクニカルタイプです。
メインで戦う人がいたら役割は補助的です。
逆にメインで戦う場合かソロの場合は前衛攻撃に特化です。
UCお任せ。
アドリブ・連携歓迎。
NG無し。
キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?
キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?
●
「キノキノ、助けに来たよー」
星霊バルカンを引き連れて救援に駆けつけたのはキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)だ。両手には舞茸を始めとした、茸を沢山抱えている。
「燃料になるゾンビが沢山いるって聞いたからね。さっバルくん! どんどん焼いていこうねー」
動きを止めたままのゾンビの群れ、その頭上へと高く茸を放り投げる。それらを取り囲むようにして黒い影――バルくんが周囲をぐるぐると回れば、そこに太く高く、そして熱く燃え上がる火柱が立ち昇った。
「キノもバルくんもいつもより多く回っちゃうよー」
くるくる、キノも合わせて回れば火は勢いを増していく。
流石に外周で被害を逃れた一部のゾンビは、生存本能からか火柱から距離を取ろうとしたが。
「逃しませんよ」
回るバルくんの合間を縫って、同じく救援に駆けつけたルネ・ロッサ(ブラック・メイドナイト・f27104)がブラック・メイドナイト・ソードを手に飛び込んだ。
勢いに任せて、まだ動きのあるゾンビを斬りつけていく。柄も合わせてルネの身の丈をも越えるその黒剣は、狙いをつけずとも多くのゾンビに手傷を負わせた。
そしてその傷は、浅い深いに拘らず、受けた者へと不幸を齎す。
「さあ――呪われてしまいなさい」
瞬間。
火柱から、爆ぜ飛んだ火の粉が降り注ぎ。
寸分違わず、ルネが追わせた全ての傷へと飛び火した。
全てのゾンビが炎に包まれ、断末魔の大合唱が巻き起こる。
そして――やがてそこには、灰の山が生まれたのだった。
●
「ご無事ですか、草笛さん?」
「は、はいっ。ありがとうございました」
「マツタケ、無事でよかったよー。あっ、焼き舞茸食べる? 美味しいよー」
瑶樹の無事を確認し、ルネは安堵に表情を和らげ、キノはニコッと焼き舞茸のお裾分け。
どうやら怪我もなかったようで、一安心だ。とは言えこの世界にはまだまだ危険が多い。拠点まで送り届けようと、英雄達は瑶樹を伴って、歩き出す。
――瑶樹は最後にもう一度、振り返る。
遠目からは、緑はもう、見えなかった。
===
Result report
▼Status
護衛対象:救助成功
ゾンビ:殲滅成功
植物:生死不明
===
大成功
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