●前日譚:イングランド戦線、開幕。
ドーバー海峡。
そこはイギリスとフランスを隔てる狭い水域であり、海上交通の要所でもある。
獣人戦線においては、多数の植民地を支配する巨大王国『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国ブリテン島を守護する『狂気艦隊』と、ドイツ及び周辺ヨーロッパを支配する機械帝国『ゾルダートグラード』の侵攻軍である『鋼鉄艦隊』がひしめく激戦区であった。
ここを通過するには二つの超大国を同時に相手しなければならないため、獣人戦線のレジスタンスたちは安易に踏み込むことができず、両勢力の抗争を臍を嚙みながら観察するしかできなかった。
だが、その情勢は猟兵たちの活躍により変化した。
何らかの理由により、ゾルダートグラードの艦船数が減少したのだ。
狂気艦隊を突破することができればブリテン島への橋頭堡を築き、上陸作戦を……すなわち、ブリテン島への猟兵の転移を可能とすることができるのだ。
「これは、好機ですわ」
獣人戦線のグリモア猟兵であり、イングランド出身のシカの戦闘猟兵。
クロックワーク・ヴィクトリアとゾルダートグラード、両勢力に抵抗するレジスタンス勢力を率いるエドワルダ・ウッドストックはイングランド内の秘密基地で目を光らせた。
ついに、反抗の時が来たのだと。
エドワルダは急ぎグリモアを手に掲げ、予知を始めるのであった。
●招集:狂気艦隊を撃破せよ!
「皆様、ご協力をお願いいたしますわ」
エドワルダが、グリモア猟兵として初の依頼を発する。
プロジェクターを用意して、敵戦力の情報を公開しつつグリモアベースで居合わせた猟兵たちに作戦への協力を要請している。
「何故か知りませんが、最近ゾルダートグラードの鋼鉄艦隊の数が激減しました。
そのため、現在ドーバー海峡の周辺海域に存在するオブリビオンの戦力層が薄くなっております。
この機会、逃す訳には参りません。
ブリテン島を守護する、クロックワーク・ヴィクトリアの狂気艦隊を撃破すれば……電撃的にブリテン島へと上陸が可能に……ひいてはグリモアによる転移での作戦行動が可能となるのですわ!
そのためにまず、皆様には狂気艦隊の戦艦、『狂気戦艦』を一隻撃破してもらいたいのですわ」
投影されるのは、……とても船とは思えない、蒸気仕掛けの洋館であった。
ステンドグラスが夕陽に照らされて輝き、オルガンで演奏される賛美歌が響き渡っている。
ヴィクトリア朝の教会が、そのまま海上を滑るように進んでいるというのだ。
「見ての通り、屋敷がそのまま動いているような不気味な戦艦ですが……これが狂気戦艦ですわ。
この船には神聖を司る強力な魔人が搭乗しており、その力を蒸気機械を通して戦艦の動力として提供することで、運航や戦闘能力を発揮させているのです。
その魔人……『上昇する白練』を撃破すれば、狂気戦艦は機能不全を起こし、轟沈するでしょう」
続けて映し出されたのは、まるで天使のような白い男の姿だ。
祭壇のように整えられた広い機関部で、祈るように祭事を行い……尊大な笑みを浮かべている。
かのUDC邪神『上昇する白練』を撃破すれば、狂気戦艦を破壊することができるだろう。
「ただし、道のりは容易ではありません。
狂気戦艦を直掩するクロックワーク・ヴィクトリアのオブリビオン部隊が周囲を飛び回っているので、それを排除しなければ乗り込むことはできません。
乗り込んだ後も、目標のいる機関部に至るためには蒸気機械の入り組んだヴィクトリア調の豪奢な屋敷を踏破しなければなりませんわ。
内部には宗教的な装束に身を包む蒸気人形がひしめいているのですが……どうやら、『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』と呼ばれる条件を満たさなければまともに動くことができないようですの」
『紳士淑女の作法』。
それが、この船の主である魔人が定めた強烈なUDC反応によるルール。
個体ごとに異なる作法や所作が求められ、それに応じた振舞いを見せなければ廊下を歩くことすらままならない。
逆に言えば……このルールにさえ則れば、蒸気人形たちは妨げることなく、むしろ最深部まで案内してくれることだろう。
「この狂気戦艦における紳士淑女の作法、それは『礼拝』。
心から祈る必要はなさそうですけれど、気品ある佇まい……ようは、礼儀正しく、静かに穏やかに振舞うことを求められるのです。
暴れたり叫んだり、乱痴気騒ぎを引き起こしたりすれば、際限ない蒸気人形に群がられて前進はおろか撤退すら困難になるのですわ」
突入までの戦闘状態のまま艦内を進めば、ルールに抵触して身動きが取れなくなる訳だ。
そのためすれ違う蒸気人形たちと争うことなく、表面上だけでも取り繕う必要がある。
なお宗派は問われないようなので、和式の参拝でも問題はない。
「最奥に座す魔人も、何らかの紳士淑女の作法で自己を強化していることは推測できますわ。
ここからではまだ予知できませんが……おそらく、宗教色に関わるものでしょう。
ですが、相手はオブリビオン。遠慮も容赦も不要です、全力でぶちのめしてくださいませ」
説明漏れがないかカンペを確認してから、エドワルダはグリモアを起動して現地へ通じるゲートを開く。
現地の刻限は、夕方。天候は、快晴。
沈みつつある太陽に隠れて近づける、奇襲に程よい頃合いだ。
初戦はドーバー海峡上での戦闘ゆえに、船やキャバリアなどの乗物や、飛行能力があると有利に働くだろう。
「それでは、皆様。武運長久をお祈りいたします」
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回の舞台は獣人戦線、ドーバー海峡の海上に存在する『狂気艦隊』です。
艦隊に編成されている『狂気戦艦』の一隻を轟沈させることが目的です。
そのためには戦艦の最深部にある機関室に座すオブリビオン、『上昇する白練』を撃破する必要があります。
第一章:狂気戦艦を守護しているオブリビオン部隊、『宵闇歌唱兵団』との戦闘です。
歌で物理的・精神的に浸食する闇を生み出す力を持つ歌唱隊で、海上を飛び回ることで空から歌声を浴びせかけます。
とはいえ飛行能力に秀でている訳ではないため、機動力は回避性能はそれほど高くありません。
プレイングボーナスは、『海上戦に備えること』です。
第二章:狂気戦艦の中に突入し、最深部を目指してください。
ここから先では『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』というルールが敷かれており、完璧な紳士淑女であることを示さない限り、この先へは進めません。
気品ある佇まい、優雅な振る舞いを見せることで、ひしめく蒸気人形の妨害を受けずに進むことができます。
この戦艦では『礼拝』を要求されますが、内面までは参照されません。
第三章:狂気戦艦の主であるUDC邪神、『上昇する白練』との戦闘です。
人造UDCの魔導書が開かれたことで現れた魔人であり、その極めて強大な力を戦艦の運用に活用しています。
自らに何らかの『紳士淑女の作法』を施すことで強化しており、その決まり事を満たさない対象を超弱体化させます。
故に、ルールを守って戦えば猟兵も強化を得ることができます。
プレイングボーナスは、断章にて公開される『紳士淑女の作法を守ること』です。
オープニング公開後、断章を公開します。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『宵闇歌唱兵団』
|
POW : 絶望の海にのまれて
【歌の届く範囲に自由に生み出せる闇の音符】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を闇で塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 心なんていらないでしょう
【喉】から大音量を放ち、聞こえる範囲の敵全員を【障害物】を無視して攻撃し、【戦意喪失】状態にする。敵や反響物が多い程、威力が上昇する。
WIZ : メーデー、助けてください
自身が【陰鬱な雰囲気で歌って】いる間、レベルm半径内の対象全てに【精神を蝕む闇の音符】によるダメージか【全てを飲み込む闇の安寧】による治癒を与え続ける。
イラスト:うぶき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:オレンジ色の空の下で。
「~♪ ~♪ ~♪」
夕焼けに染まるドーバー海峡を征く、クロックワーク・ヴィクトリアの『狂気艦隊』。
その内の一隻、教会を模した狂気戦艦の周囲で聖歌隊のように歌を口遊むオブリビオンたちが飛び交っている。
『宵闇歌唱兵団』。
獣人戦線の兵士たちからは戦死者の末路を想像させる歌声から嫌悪され、塹壕であろうと戦車であろうと遮蔽を問わず攻撃を放てる歌唱部隊だ。
「~♪ ~♪ ……?」
彼ら彼女らの陰鬱な歌が届く範囲では、可視化された闇の音符が地涌自在に跳び回っている。
精神を蝕み、地形を闇で塗りつぶし、全てを飲み込む闇の安寧をもたらす宵闇の歌は、狂気的な賛美歌を思わせる。
だが、彼らの何体かが不意に声を止める。
目を細め、水平線に沈む陽射しの中に浮かぶ黒点を注視する。
「―――敵の接近を確認しました。メーデー、助けてください」
「わかりました。死にたくはありません」
猟兵の登場を察知したオブリビオンが、心にも無い救援要請を呟く。
助けてくれと乞う声で、敵を殺すためのユーベルコードを構築していく。
「絶望の海にのまれても、自棄にならないで。武装を解除して、投降してください」
「悲しい想いをするくらいなら、心なんていらないでしょう。諦めてください」
感情を感じさせない虚ろな瞳のオブリビオンたちが微笑みながら、猟兵たちを迎撃するべく編隊を組んで合唱を開始する。
狂気戦艦を守護する。
ただその命令を順守するシステムのように、宵闇歌唱兵団は戦闘準備を整えるのであった。
フリル・インレアン
ふええ、ここがドーバー海峡ですか。
まさかとは思いますけど、泳いで渡れとか言いませんよね、アヒルさん。
ふえ?そういう部活があるらしいけど、今回はちゃんと船があるから大丈夫なんですね。
よかったです。
ただ、相手に失礼がないように礼儀作法は身につけていないといけないんですか?
それは緊張してきましたね。
まずは出迎えの楽団を倒すって、
まさかその船って、オブリビオンさんの船じゃないですか!!
それより、船まではどうするんですか?
そこまではふええ劇場でいいんですね、よかったです。
それじゃあ、闇の音符を躱して攻撃です。
●ドーバー海峡横断アヒル。
「ふええ、ここがドーバー海峡ですか。
まさかとは思いますけど、泳いで渡れとか言いませんよね、アヒルさん」
「ぐわっ」
「ふえ? そういう部活があるらしいけど、今回はちゃんと船があるから大丈夫なんですね。よかったです」
サイキックエナジーを扱うことができるアリス適合者の少女。
フリル・インレアン(|大きな帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)はアヒルの形をしたガジェット『アヒルさん』と共にドーバー海峡を横断するべく転移していた。
空中をフワフワと浮遊しながら移動手段を『アヒルさん』に問うたフリルは、回答を得られて安心した様子で漂っている。
辺りを見渡せば遠くで戦っている猟兵たちの姿が散見される。彼ら彼女らと合流するのだろうか?
それは違った。
「ぐわっ」
「ただ、相手に失礼がないように礼儀作法は身につけていないといけないんですか? それは緊張してきましたね」
「ぐわっぐわっ」
「まずは出迎えの楽団を倒すって、……まさかその船って」
気づいたフリルが面を上げた先に存在するのは、海上の洋館。
『狂気戦艦』だ。
その周囲を飛び交っているオブリビオン部隊、宵闇歌唱兵団は近くにいる猟兵……すなわちフリルを出迎えるべくユーベルコードの射程距離まで接近して来る。
陰鬱な雰囲気で歌い出し、精神を蝕む闇の音符がフリルに迫って来る。
「メーデー♪ 助けて~ください~♪」
「オブリビオンさんの船じゃないですか!! それより、船まではどうするんですか?」
「ぐわっ」
「そこまではふええ劇場でいいんですね、よかったです」
迫る音符の弾幕に慌てたフリルだったが、『アヒルさん』にユーベルコードの使用を指摘されると安心して発動し、忽ち小っちゃくなってしまう。
これが《ふええ劇場『親指フリルの冒険』(ミニマムフリル)》。
フリルが、普段の身長が10分の1のミニマムサイズに変身するユーベルコードである。
15cmに満たないこの状態であれば、ガジェットである『アヒルさん』の背中に乗ることができる。
さらに、ユーベルコードの効果により『アヒルさん』の威力が増強し、時速730kmで飛翔することができるのだ。
「ぐわっ!」
「ふえぇ、それじゃあ、闇の音符を躱して攻撃です」
フリルを乗せた『アヒルさん』が機敏な空中機動を披露する。
《ふええ劇場『親指フリルの冒険』》による速度は音速にこそ及ばないものの、闇の音符を避けるには十分な機動力を有していた。
軽やかな動きで闇の音符の間を潜り抜け、すれ違いざまに宵闇歌唱兵団を頑丈な『アヒルウィング』で攻撃していく。
『アヒル』さんの翼は、実は武器だったのだ。
「ぐわっ!」
「ぐわあ」
「いまです、アヒルさん」
『アヒルさん』の翼に切り裂かれた歌唱兵が倒れたことで生じた陣形の穴を突き、フリルは『アヒルさん』と共に狂気戦艦への突入を成功させるのであった。
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
では、道を空けて貰いましょう。
『FAS』を使用し飛行、『FLS』の空間歪曲障壁で遠距離攻撃に備えまして。
『FES』で『FLS』の外側に真空結界を展開、【崇卓】を発動し戦場全体に『大竜巻』の『現象』を発生させますねぇ。
『大竜巻』の轟音の中では『歌』の届く範囲は極めて狭く、飛行能力の高くない兵団の方々では機動も困難となるでしょう。
仮に近づけても『真空』を超えて歌は届かず、外側に発生させての攻撃は『FLS』で逸らして防げますぅ。
此方は[空中戦]の経験に加え『ハリケーン』の風を自由に操れる以上機動面の問題は皆無ですので、攻撃用の各『祭器』と共に[範囲攻撃]で一気に叩きますねぇ。
●ハリケーンと共に歩む少女。
「~♪ ~♪」
「では、道を空けて貰いましょう」
童顔且つ小柄ながら桁違いに発育の良い体型の少女、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は三対の翼型祭器『フローティング・エアロフォイル・システム』を使用して夕陽に染まる戦場を飛行している。
周囲には浮遊する16枚の札型祭器『フローティング・リンケージ・システム』による空間歪曲障壁を展開しており、遠距離からの攻撃に備え、さらに20枚の浮遊する布型祭器『フローティング・エレメンタル・システム』で音を遮断するべく真空の結界をも展開していた。
これで、ユーベルコードによる防御を突破しようとも、宵闇歌唱兵団の歌声はるこるに届くことはない。
るこるを絶望の海に塗りつぶすべく歌を歌うオブリビオンたちの様子を油断なく眺めながら、るこるは敵を排除するためのユーベルコードを起動する。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その祭壇の理をここに」
るこるが発するユーベルコードは、《豊乳女神の加護・崇卓(チチガミサマノカゴ・カツゴウノクギダイ)》。
それは、るこるが操縦する様々な『現象』を形成して戦場全体を覆い、その内部の敵全員に『現象』による攻撃を行うと同時に、自身の『戦闘能力』と『身体機能』を増強するものである。
此度、るこるが発生させた『現象』は、轟音の鳴り響く『大竜巻』。
『大竜巻』の轟音の中ではオブリビオンたちの歌はかき消され、歌の届く範囲に自由に生み出せる闇の音符の射程が極めて狭くなっていた。
狂気戦艦を守護する関係上飛行能力を有している宵闇歌唱兵団だが、その能力は決して高くない。
激しく荒れ狂う暴風の中で、オブリビオンたちは姿勢を維持することが精いっぱいであった。
「―――! っっ?」「―――!? っ―――!!」
それでもなお口を大きく開いて歌を届けようとする宵闇歌唱兵団だが、互いの声すら届かないほどの風に包まれていてはユーベルコードで地形を闇で塗りつぶすことも難しい。
一方でるこるは日頃から空中戦の経験は豊富なうえ、この『現象』を作り出した本人だ。
機動面の問題は皆無であり、『大竜巻』の中を自由に飛び回ってオブリビオンに照準を合わせて行く。
避けることも防ぐすべも持たない宵闇歌唱兵団にできることは、攻撃を見つめることだけだ。
「それでは、通らせていただきますねぇ」
「っ、っ―――!!」
るこるは周囲に浮遊する20台の球体型祭器『フローティング・レイ・システム』を始めとする、砲撃・斬撃・レーザー射撃といった攻撃用機能を有する各『祭器』を展開して、範囲攻撃で一気に宵闇歌唱兵団を叩き落して行く。
暴風に包まれた一画が夕焼けの明かりを取り戻した時、そこに佇むのはるこるだけとなっていた。
眼前の敵を一掃したるこるは、おっとりとした笑顔を浮かべたまま狂気戦艦へと踏み入れて行くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(改造装甲車エンバールに搭乗)
まずは狂気戦艦に乗り込む前に護衛を排除しないとね…
…ふむ…音を介して攻撃を仕掛けてくる……か
…いや、あの如何にもな音符は音を介した攻撃か……?
…まあ音の一種ではあるんだろうから…操音作寂術式【メレテー】を発動…音符をエンバールの周囲から消してしまおう…
…そしてここは海…相手は治癒能力を持っているけど…
【星を墜とす大地の手】を発動…飛んでる宵闇歌唱兵団達を地面…
…つまり海の底へと引きずり落とすよ…
……海の底でも歌えれば大した物だけど…その場合でも上がってくるまでには時間がかかるからね…狂気戦艦へと乗り込んでしまうとしようか
●海底の月を掬わず、海底へ星を堕とす。
「……まずは狂気戦艦に乗り込む前に護衛を排除しないとね……」
異なる世界・各世界の技術や魔法に類するものを研究・分析して、オリジナルの術式に取り入れているウィザードにしてワールドハッカー。
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は陸上水上水中空中等あらゆる状況を走破出来る改造装甲車『エンバール』に乗り込み、ドーバー海を征く狂気戦艦に向かっていた。
水面を打つ波濤もものともせずに進み続ける『エンバール』の行く手を阻むべく、狂気戦艦を守護するオブリビオン部隊が……宵闇歌唱兵団が集まって来る
宵闇歌唱兵団は息を合わせて、その歌声をメンカルに向けて放射する。
彼女たちが陰鬱な雰囲気で歌っている間、一定の半径内の対象全てに精神を蝕む闇の音符を放つ……ユーベルコードによる攻撃だ。
「メ~デ~♪」
「……ふむ……音を介して攻撃を仕掛けてくる……か……。
……いや、あの如何にもな音符は音を介した攻撃か……?」
オブリビオンの放った音が届くまでのほんのわずかな時間で、敵の攻撃を解析して思考を巡らせるメンカル。
メンカルは瞬きにも満たない時間で分析を済ませると、適切な対抗策を打った。
「……まあ音の一種ではあるんだろうから……これで……」
起動したのは、周囲の音を操る操音作寂術式『メレテー』。
任意の音を自由に操作できる術式により、飛来した闇の音符はたちまち『エンバール』の周囲から消失させられた。
攻撃を意に介することなく快適な走行を続ける装甲車に、宵闇歌唱兵団は自分たちに全てを飲み込む闇の安寧による治癒を振り撒く。
そしてその身を挺して『エンバール』を止めるつもりなのか、互いの腕を組み合って文字通り進路上に立ち塞がった。
「助けてください~♪」
「……そしてここは海……相手は治癒能力を持っているけど……」
そのままぶつかれば、回復し続ける宵闇歌唱兵団を相手にしなければならなくなる。
そこでメンカルは、ユーベルコードを発動させた。
『エンバール』が敵と接するよりも早く、敵を排除するために。
「重き力よ、掴め、落とせ。汝は重圧、汝は天墜、魔女が望むは底より出でし昏き腕」
《星を墜とす大地の手(スターライト・フォール)》。
空にあるものを天から地へと引きずり降ろす、疑似重力術式を放つユーベルコードだ。
押しつぶすと共にその場に縛り付ける事により、対象の動きを一時的に封じることができる。
つまり、飛んでる宵闇歌唱兵団たちを地面へ……海面の更に下の海の底まで、引きずり下ろして行く。
「ごぼっ」「がふっ、おぶっ……!」
「……つまり海の底へと引きずり落とすよ……」
溺れながら《星を墜とす大地の手》により海底まで引きずり落とされた宵闇歌唱兵団たちは、水圧と窒息に苦しめられながらもがき続けている。
そのような状況にあってもなお猟兵を食い止めようと懸命に口を開くが、流れ込む水で肺を満たされ、激痛に耐えきれないオブリビオンが消えて行く。
沈んだ敵が浮上する様子が無いことを確認したメンカルは、警戒を怠らずに宵闇歌唱兵団が布陣していた地点を通り過ぎて、狂気戦艦へとまっすぐ進んでいく。
「……海の底でも歌えれば大した物だけど……その場合でも上がってくるまでには時間がかかるからね……狂気戦艦へと乗り込んでしまうとしようか」
そしてメンカルは、無事に狂気戦艦へと接舷を果たすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
雨飾・樒
投降を呼びかけてくるのか、生かすつもりなんてないくせに
邪魔するなら容赦しない
空中跳躍符の扱いも慣れてきたし、立体的な機動で闇の音符を避けながら近付く
狙える距離に入ったら"眠り薬の魔弾"で片端から墜としていこう
歌えなくさせれば無力化できそうだし、無理に敵の頭を狙わなくても胸に当てれば充分かも
数の多さも回復されるのも厄介だし、合唱できなくなれば戦い易いだろうし、なるべく早く数を減らしたい
敵の変態に飛び込んだら離れず、動きを止めず攻撃を続けて殲滅する
紳士淑女の作法、なんて定めてるのに、こんなのを歌ってる連中に護衛させてる
所詮はオブリビオンのやること、狂ってて当たり前か
レヴィア・イエローローズ
イエローローズ王国海軍所属首席艦隊旗艦――磁界戦艦『サートゥルヌス』、発進!
磁界操作により首席艦隊に所属する全ての艦船は海上を浮遊し、制空権も支配しながら『宵闇歌唱兵団』を砲撃と磁界操作で撃墜していく
精神汚染に特化している代わり、機動力と回避性能は低いから弾幕砲撃で即座に殲滅
更にUCで認識迷彩を艦隊に付与し、狂気艦隊の索敵能力をすり抜けて優位に制空権・制海権の確保と維持を保ち優位なまま砲撃で『宵闇歌唱兵団』と狂気艦隊を攻撃
――さぁ、今こそブリテンをわたくし達の手に取り戻すわよ!
イエローローズ王国海軍首席艦隊、漸進しなさい!
ルー・ガルフィオン
【アドリブ&連携歓迎】
水平線に沈む夕日が綺麗。
あの奇妙な戦艦さえなければ、素敵なお昼寝ポイントなのだけれど。
私には海上の移動手段がない。なので、現地の方に協力を要請する。
母国フランスの軍羊さんに駆逐艦か軽巡洋艦を配備してもらえないか聞いてみる。
難しそうなら他の猟兵たちの協力に徹する。
出航したら夕日を背に東の方角へ進む。
夕闇に潜めば船影も目立ちにくい、はず。
闇に紛れつつ敵兵に接近し距離400~500m付近で狙撃開始。
揺れる船上での狙撃は初めて。……集中(技能『スナイパー』『落着き』『弾道計算』『集中力』を活用)。
(私と同じヒツジだけれど彼らはオブリビオン。躊躇いはない)
●獣人たちのララバイ。
ドーバー海峡に君臨する、クロックワーク・ヴィクトリアの狂気艦隊。
そこに属する一隻の狂気戦艦、その周囲を『宵闇歌唱兵団』のオブリビオンたちが哨戒している。
夕焼けの空を緩やかに飛び回り、襲撃者である猟兵を迎撃するために喉を震わせ、陰惨な歌を奏でている。
「心なんていらないでしょう~♪」
「メーデー、助けてください~♪」
陰鬱な雰囲気で歌い続け、効果範囲内にいる対象の精神を蝕む闇の音符を放つ宵闇歌唱兵団。
遮蔽や障害物を無視して戦意を喪失させる大音量の歌は、近づく者を海の藻屑へ変えてやろうと戦場に響き渡っている。
だが、それに臆さず進む船がある。
そこへ接近する戦艦がいる。
それは、クロックワーク・ヴィクトリアに滅ぼされたイエローローズ王国の元王女が統率する、水陸空いかなる戦場においても運用可能な三次元的戦略を取れる特殊戦艦だ。
「イエローローズ王国海軍所属首席艦隊旗艦―――磁界戦艦『サートゥルヌス』発進!」
シカのパンツァーキャバリア乗り、レヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は自らの手勢を率い、共に戦う猟兵たちとともに戦場へ参じたのだ。
強大な磁界操作機構を用いて海上を浮遊し、制空権も支配しながらドーバー海峡を越えてイングランド上陸のための一手……狂気戦艦の一隻を撃破するべく『サートゥルヌス』を進めている。
「水平線に沈む夕日が綺麗。あの奇妙な戦艦さえなければ、素敵なお昼寝ポイントなのだけれど」
「投降を呼びかけてくるのか、生かすつもりなんてないくせに。邪魔するなら容赦しない」
そして『サートゥルヌス』に相乗りしているのは、ヒツジのデアボリカスナイパーとネズミのサイキッカー。
ルー・ガルフィオン(夢幻の狙撃手・f41066)と、雨飾・樒(Dormouse・f41764)だ。
孤独に慣れた狙撃手と孤独を強いられた傭兵は、冷徹にそして冷酷に、眼前の標的を見つめている。
狂気戦艦と、それを守るオブリビオンの群れを討つために、二人は愛用の銃器を構えて戦闘準備を整える。
「精神汚染に特化している代わり、機動力と回避性能は低いから。狙いやすいはずよ」
「東の方角へ進んでいる、夕日を背に出航しているから、夕闇に潜めば船影も目立ちにくい、はず」
「紳士淑女の作法、なんて定めてるのに、こんなのを歌ってる連中に護衛させてる。
所詮はオブリビオンのやること、狂ってて当たり前か。殲滅する」
宵闇歌唱兵団の歌声が届くより先に、『サートゥルヌス』の砲撃を開始するレヴィア。
先制攻撃による一斉発射により陣形が乱れた敵の群れに向けて、レヴィアは『サートゥルヌス』の磁界を操作することで加速した勢いのまままっすぐ突撃する。
……そのように見せかけて、レヴィアはユーベルコードを起動する。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。
それは認識不能の加護を我が同胞にも授ける迷彩の権能。
―――黄薔薇は華美を誇るのは常在に非ず!」
《黄薔薇開花・認識の反対たる迷彩加護(イエローローズ・アンチミームステルス)》。
それは、レヴィア自身とその同胞へ認識不可の迷彩を付与し、各々の装備する武器に敵を狙う時間に比例して武器の攻撃力・命中率・必殺率が上昇する効果を充填し続けるユーベルコードだ。
宵闇歌唱兵団は認識迷彩を付与された『サートゥルヌス』を見失い、索敵を繰り返す。
右往左往する敵の横を悠々とすり抜けていく『サートゥルヌス』から、レヴィアからの迷彩を付与された樒が飛び出した。
「空中跳躍符の扱いも慣れてきたし。容赦は要らない」
樒は戦闘靴の底部に仕込まれた、空中での跳躍移動を可能とする力場を発生させる『零式空中跳躍符』を用いて敵に近づいていく。
途中、無差別に放たれる闇の音符を立体的な機動で避けながら、射程に収まったオブリビオンに減音器を内蔵した愛用の自動拳銃……『六式拳銃丙型』の銃口を向ける。
「沈め、静寂の奥底に」
樒が放つのは、《眠り薬の魔弾(ヒプノティク)》。
愛用の拳銃から、物質を透過し敵に睡眠の状態異常を与えるペールブルーの魔力弾を放つユーベルコードだ。
不意に魔力弾が直撃した宵闇歌唱兵団は、攻撃されたことへの驚愕とダメージがないことへの不審を抱くと同時に、すぐさま意識を失う。
活動を強制休眠させられて、永遠の眠りについてドーバー海へ墜落していく。
仲間が墜落する様子に反応した他の宵闇歌唱兵団が全てを飲み込む闇の安寧を広めて治癒を与え続けようとするが、その個体もまた撃ち抜かれる。
ルーによる狙撃である。
「(私と同じヒツジだけれど彼らはオブリビオン。躊躇いはない)」
夕闇と迷彩に紛れつつ、『サートゥルヌス』の艦橋の上から射程距離400~500mの地点にいるオブリビオンを狙い撃っていく。
揺れる船上、それも空を飛ぶ特殊戦艦からの狙撃は初めてだが、ルーは微塵も動じる素振りはない。
「……集中」
高い集中力により、弾道を計算して落ち着いてスナイプを決めて行く。
放たれるのは、ルーの母から教わった呪術の基礎を元にしたユーベルコード。
《一時休戦(ラ・トレヴ)》だ。
「―――命中。おやすみなさい」
歴戦の相棒であるデアボリカライフル『ヴォルコフSVV』から放たれた呪いの睡眠弾は、命中した対象の動きを強い眠気により一時的に封じる。
禁呪級の呪詛を込められた呪殺弾は、宵闇歌唱兵団に断末魔を上げることすら許容せず、決して冷めない眠りの中へと叩き落して行く。
「ん、まともに回避もできない。狙い放題」
「歌えなくさせれば無力化できそうだし、無理に敵の頭を狙わなくても……胸に当てれば充分かも」
二人の射撃は敵に合唱する隙を与えず、回復のための歌を歌う余裕も与えない。
樒は数多く居る敵の編隊の中に飛び込んで行き、次々に攻撃を続けて数を減らしていく。
ルーは敵の指揮を執るものや独立して動こうとするものに狙いを定め、確実に仕留めて行く。
連携の取れた子守歌の如し銃弾によって、宵闇歌唱兵団は安らかな眠りを与えられていく。
「めぇ……メーデー……」「助けて……助けてください」
「お望みなら、永遠の眠りを」「―――命中。よい夢を」
迷彩を付与された樒とルーは、そしてレヴィアの戦艦は宵闇歌唱兵団に認識されることはない。
ろくに反撃されることもないまま、二人の眠りの弾丸が宵闇歌唱兵団を殲滅していく。
そして、『サートゥルヌス』が宵闇歌唱兵団の背後に回り込み、制空権・制海権の確保と維持を保った状態で狂気戦艦へ砲口を向ける。
夕焼けに照らされたステンドグラスが輝く蒸気仕掛けの洋館に向けて、レヴィアの号令の下で攻撃が叩き込まれる。
守護する兵も防衛設備も粉砕された狂気戦艦は轟沈することこそないものの、抵抗することができない。
猟兵たちを迎え入れるしかできない。
「―――さぁ、今こそブリテンをわたくし達の手に取り戻すわよ!
『サートゥルヌス』、漸進しなさい!」
斯くして、『サートゥルヌス』は目標の狂気戦艦へと無事に接舷を果たした。
海中に没していく宵闇歌唱兵団に一瞥をくれることもせず、樒、レヴィア、ルーの三名は狂気戦艦への侵入を果たすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
火土金水・明
「戦艦が相手なら航空魚雷や酸素魚雷を横っ腹に叩き込みたい所ですが、周囲のオブリビオン部隊が邪魔するでしょうから、まずはそちらを潰していきましょうか。」「私は攻撃をしつつ、味方の猟兵のみなさんの回復を受け持ちましょう。」
自分の移動は魔法の箒に跨って【空中戦】と【空中機動】の技能を使用します。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【巷に金色の雨の降るごとく】を【範囲攻撃】にして、『宵闇歌唱兵団』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【第六感】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
兎乃・零時
アドリブ歓迎
…なぁ、夢想、此処にいる魔人って…もしかしてお前が愛呪の時に言ってた『地獄くん』とか『神聖くん』とか関係してたりする?
あ、やっぱ関係あるのか!でもなんかお前の時ともまた状況は違うみたいだし…
まずは俺様たちで!道を切り拓こうぜ!
ふふん、俺様にとって海はホームグラウンド!それに杖で浮いてりゃ海上の上でもどうにかなるし!
夢想とパルは俺様の援護宜しく!
あ、てか夢想とかはこーゆう精神系とか対策どうしてるよ、俺様気になる!
成程?なら色々試しつつ、戦うさ!
多重詠唱×高速詠唱を用い
水場から魔術で水流の砲撃を威嚇射撃の様に使いつつ!
絶望、良いじゃねぇか、抱えてこうぜ!俺様の夢は、困難なほど超えがいがあるってもんだ!
其れに深い闇の中でこそ、光はよりまばゆく輝く物さ!
『希望を此処に!|希望の輝光《ポジ・ライト》ッ!』
光の魔術で閃光と鼓舞の効果付き魔術を発射だ!
そしてその闇に紛れる形でUC発動!
体の属性を光に変えつつ空中浮遊×空中戦!
|光線《レイ》を槍のように持ち替えつつ奴らに零距離光線連射だ!
●輝ける二つの魔の|粋《すい》を。
『魔法の箒』に跨っている魔女と『魔導機械箒』に跨っている魔法使い。
二人の猟兵が、眼下に群がる残存する『宵闇歌唱兵団』を見下ろしている。
猟兵たちの活躍により狂気戦艦を守護するオブリビオン部隊のほとんどは潰えており、残るは視界に収まる黒羊たちだけであった。
「戦艦が相手なら航空魚雷や酸素魚雷を横っ腹に叩き込みたい所ですが……。
周囲のオブリビオン部隊が邪魔するでしょうから、まずはそちらを潰していきましょうか」
魔王の落とし子にしてオーヴァーランダーを称するウィザード。
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は『七色の杖』を手に戦場を睥睨していた。
誰よりも先遣して戦地に踏み入り、全体を見通して趨勢を見守ってきた熟練の猟兵だ。
劣勢に陥る猟兵がいればさり気なく援護を行い、誰も欠けることなく戦艦へと乗り込めるよう支えてきていた。
それもあとは明自身と、隣に浮かぶクリスタリアンで完遂される。
「……なぁ、夢想、此処にいる魔人って……もしかしてお前が愛呪の時に言ってた『地獄くん』とか『神聖くん』とか関係してたりする?」
「うん、そうだよ。神聖くん、こんなところにいたんだね」
最強の魔術師に憧れ、数々の冒険を経て数多の魔導書を手にしてきたウィザード。
兎乃・零時(|其は断崖を《遥か高みを》駆けあがるもの・f00283)は『夢想』に纏わる術式が記載された魔導書を携え、そこに眠る魔人に問いかける。
神聖を司る強力な魔人というフレーズに、関連性を見出したのだろう。
「でも主はここにいないみたいだし。どういう状況で開かれたんだろうね?」
「あ、やっぱ関係あるのか! でもなんかお前の時ともまた状況は違うみたいだし……。
まずは俺様たちで! 道を切り拓こうぜ!」
狂気戦艦の最奥を目指す理由が増えたことで、零時はやる気が上がっている様子だ。
明もまた、零時の様子を見て微笑みを浮かべながら連携を取るように位置取りを整える。
「行きましょう、零時さん。私は攻撃をしつつ、回復を受け持ちましょう」
「頼んだぜ、明! 夢想とパルも俺様の援護宜しく!」
「おー」
明は『魔法の箒』を巧みに操り、空中戦を開始する。
その機動力は宵闇歌唱兵団の目には止まらず追い切れず、ゆえに闇雲に喉から大音量を放つしかできない。
だが、その音こそが宵闇歌唱兵団の武器であった。
「心なんていらないでしょう~♪」
障害物を無視して声の聞こえる範囲全域の攻撃するそのユーベルコードは、直撃した敵全員を戦意喪失状態にするものだ。
音波攻撃を避け切れなかった明が衝撃に消し飛ばされ……その姿が文字通りに揺らいで消える。
実体のない、残像だ。
「ッ!?」
「残念、それは残像です」
明は攻撃の予兆を第六感で察すると、オーラを展開して残像を生み出しかく乱したのだ。
無傷の明は、虚をつかれて動きを止めたオブリビオン部隊の背後に回り込み、ユーベルコードを展開する。
それは、夕闇の海に輝く|金色《こんじき》の雨をもたらすもの。
《巷に金色の雨の降るごとく(ゴールドレイン)》だ。
「私の心にも雨が降る」
戦場全体に発生させた金色の雨は、敵には虹色の稲妻の攻撃を行い、味方には優しい雨の回復を与えるユーベルコードである。
戦場にいる、先行して戦ってきた猟兵たちを癒しながら、フェイントを絡めた稲妻が防御を無視して宵闇歌唱兵団を貫いていく。
「メェェェッ!」「め、……メェ、デェ……!」
「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です」
二度、三度と、金色の雨の中で虹色の稲妻に囲まれ継続ダメージを受け続けているオブリビオンたち。
そこへ零時が夢想の魔神と『紙兎パル』を伴い、敵群にトドメを下すために接近する。
「ふふん、俺様にとって海はホームグラウンド! それに杖で浮いてりゃ海上の上でもどうにかなるし!
あ、てか夢想とかはこーゆう精神系とか対策どうしてるよ、俺様気になる!」
「対策? わかんない。なんとなーく?」
「成程? なら色々試しつつ、戦うさ!」
零時は多重詠唱と高速詠唱を組み合わせ、海水を魔術『|水流《ウォーターフロウ》』で巻き上げて威嚇射撃のように砲撃として乱れ撃つ。
オブリビオンたちは上からの雨に下からの奔流に蹂躙されながらも、《絶望の海にのまれて》もなお、歌を歌い続ける。
最後まで足掻かんとばかりに、歌の届く範囲に自由に生み出せる闇の音符が零時を襲う。
「絶望の海にのまれても、まだ抗うというのですか~♪」
「絶望、良いじゃねぇか、抱えてこうぜ! 俺様の夢は、困難なほど超えがいがあるってもんだ!
其れに深い闇の中でこそ、光はよりまばゆく輝く物さ!」
希望を此処に! 『|希望の輝光《ポジ・ライト》』ッ!」
零時はターボジェットエンジンが搭載された魔導機械箒『クリスタル』を乗りこなし、避けた先で闇に塗りつぶされた地形へ目掛け、光る球体を出す魔術を行使する。
球体の放つ光を浴びた者の気分を上昇させてくれる、一種の精神干渉型魔術により鼓舞された零時が、閃光に紛れて宵闇歌唱兵団の視界から消える。
闇の届かない光の中で、零時はユーベルコードを発動する。
「我が身、我が魔、我が力、我が名―――我が輝きを、此処に。
果てなき道も、永劫の歳月も、この輝きと共に駆け抜ける。
さぁ、改変し、変質せよ、我が手によって変革を為せ―――!」
《物体変質(マテリアルモデュヘケイション)》。
それは魔導書が示す変革の力、零時が特定の属性の魔力を制御しきった証。
自身の存在を、指定した魔力属性へと自在に変換を為して、物理的な危害を無効化し、触れた全てのモノを魔力へ変える体に変形するユーベルコードである。
今回、零時は光属性を選択した。
肉体と物質を光に変えたことで、光魔術の練度及び威力が通常時より跳ね上がる。
「|物体変質《マテリアルモデュヘケイション》|〖輝光〗《・グリッター》!」
光に変化した零時は空中を自在に飛び交い、虹色の稲妻に貫かれている宵闇歌唱兵団へと接近する。
|光線《レイ》を槍のように持ち替えて、至近距離からオブリビオンを撃破していく。
「メェ……デェ……」「艦を……守……」
零距離からの光線の連撃を受けた宵闇歌唱兵団は、耐えきれずにが倒れて行く。
最後の一体に至るまで狂気戦艦を守護しようと、零時と明へ手を伸ばしたが……その手は届くことなく、輝く光線と稲妻に貫かれて消えていった。
「片付いたな。さあ、行くぜ! 狂気戦艦へ!」
「ええ、進みましょう」
敵オブリビオン部隊の全滅を確認した零時と明は、高度を落として海上の洋館へと踏み込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『紳士淑女の作法』
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POW : 気合と根性の一夜漬けで何とか作法を覚えて来る。
SPD : 細かいミスをさりげなくごまかす。
WIZ : 一分の隙もなく完璧なマナーと所作を披露する。
イラスト:fossil
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:ささやき、つぶやき、いのり、ねんじる。
守衛のオブリビオン部隊を蹴散らし、狂気戦艦の内部へと踏み込んだ猟兵たち。
入ってすぐのエントランスホールにて、柱の陰から姿を見せて猟兵たちを迎えたのは……先行していた獣人戦線のレジスタンス兵であった。
「来てくれたか、猟兵たち……! 時間が無い、手短に伝える……!」
満身創痍のウマの兵士は、駆け寄ろうとする猟兵たちを蹄で制して伝言を残すべく語り掛ける。
ウマは、猟兵たちに後を託すために紳士淑女の作法を伝えようとしているのだ。
「この狂気戦艦の内部では『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』という狂気が蔓延っている!
社交ダンスやテーブルマナーなど、船によって規定されているルールは異なっているが……完璧な所作を披露しなければ、艦内にひしめく『蒸気人形』たちに排除されることになる!
これはユーベルコードをも上回る、ルールなのだ……!」
そうして話している間にも、船の奥から蒸気人形たちが現れてくる。
宗教的な装束で飾られた無数の人形たちがウマに気づき、歩み寄って近づいていく。
ウマは慌てることなく、両腕の蹄を合唱しながら猟兵たちを見つめている。
「この戦艦の紳士淑女の作法は、『礼拝』だ。
祈りでも、挨拶でも、動作でも、なんでもいい。相手への礼儀を、尊重する雰囲気を、気品ある佇まいを見せて進むことだ。
暴れたり叫んだり、戦闘行動をみせたりすれば、たちまち蒸気人形たちに取り押さえられ、外に捨てられることになる。
……こんな風にな!」
そしてウマは真紅の疾風を纏い、時速数百kmの疾走をみせる。
ユーベルコード《テスタロッサ・テンペスタ》により蒸気人形の手から逃れようとするが……信じられないことに、ウマはいとも容易く拘束された。
どれほどの速さも、護りも、攻撃も、その一切を考慮せず。
『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』は適応されるということを、その身を以て猟兵たちに知らしめたのだ。
蒸気人形たちに担ぎ上げられたウマは、神輿のように持ち上げられて船の外へと運び出されていく。
祭りもまた、神聖なる礼拝の一種なのだろう。
「「「ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ」」」
「猟兵たち! オレたちはこの異常な空間に耐えられなかった!
だが、君たちならば! きっと最奥に辿り着けるはずだ!
頼む、この船を落としてくれ―――!」
「「「ドッコイショ」」」
尾を引く絶叫を残し、海へと放り捨てられたウマ。
そして、作業を終えた無数の蒸気人形たちが一斉に振り向き、猟兵たちを見つめている。
紳士淑女の作法に対応できなければ、猟兵であろうと海へ投げ捨てられることになるだろう。
この狂気の屋敷のような戦艦の最奥、機関部へ到達するためにも……璧な紳士淑女としての所作を示さなければならない。
※狂気戦艦の中に突入し、最深部を目指してください。
ここから先では『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』というルールが敷かれており、完璧な紳士淑女であることを示さない限り、この先へは進めません。
気品ある佇まい、優雅な振る舞いを見せることで、ひしめく蒸気人形の妨害を受けずに進むことができます。
この戦艦では『礼拝』を要求されますが、内面までは参照されません。表面上の姿勢や言動が重視されるため、ご注意ください。
プレイングボーナスは、『紳士淑女の作法を守ること』です。
捕捉ですが、ウマの兵士の方はスタッフが回収したので無事です。
レヴィア・イエローローズ
礼拝ね…わたくしは王国があった時に作法を習ったわね
では、表面と言動はありったけの礼賛を
内面は…迸る程の殺意を御して礼拝をしましょうか
では、提示される作法を丁寧に習い…礼拝を
シスターの如く、貞淑にね…
ええ、やれるわ…クロックワーク・ヴィクトリアの懐に入れるというのならね
…内面を御する事が条件じゃなくて、助かったわね
お陰で…ありったけの殺意と憎悪を押し込めるだけで済むんだから
ここを乗りきって狂気艦隊を沈めれば…ブリテン島奪還作戦を仕掛けられる
その時こそ…ありったけの殺意を形にしてやるわ…!
そんな心境を貞淑な作法の内側に押し込め、礼拝をクリアしていくわ
●内に秘めるは燻る炎。
「礼拝ね……わたくしは王国があった時に作法を習ったわね」
『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』。
狂気戦艦の中に満たされているルールに則り、相応しい優雅な振る舞いを見せなければならない。
館内をひしめく蒸気人形たちを武力で排除することはできず、むしろ館から放逐されてしまうことになる。
そのため、猟兵たちは思い思いの作法を……『礼拝』を披露していく。
「では、提示される作法を丁寧に習い……礼拝を。シスターの如く、貞淑にね……」
レヴィア・イエローローズは、居並ぶ蒸気人形たちの前で表面と言動ではありったけの礼賛を振舞ってみせる。
手を組み、姿勢を整え、軽く頭を下げる。その姿は正しく、静謐で穏やかな……見事な『礼拝』をしてみせた。
「祈りましょう。礼儀をもって、拝しましょう」
蒸気人形たちはレヴィアの所作をしばし眺め、それが完璧であると判断したのか静かに一礼をする。
そして、蒸気人形たちはレヴィアの前から離れ、各々の所作を振舞いながらほうぼうへと散っていく。
完璧な所作を披露したレヴィアを妨げるものはいなくなり、レヴィアは屋敷の中で歩き回る権利を獲得した。
「ええ、やれるわ……クロックワーク・ヴィクトリアの懐に入れるというのならね」
穏やかな表情を浮かべて、焦らないようにゆっくりと歩みを進めるレヴィア。
だが、その内面は……迸る程の殺意を御していた。
「(……内面を御する事が条件じゃなくて、助かったわね。お陰で……ありったけの殺意と憎悪を押し込めるだけで済むんだから)」
今、レヴィアが自動的に発動しているユーベルコードがある。
その名は《黄薔薇開花・歯車仕掛けへの聖憎(イエローローズ・セイクリッドオディオ)》。
【クロックワーク・ヴィクトリアへの敵愾心】を感じると自動発動し、それに決着をつけるかおよそ二時間以上経過するまでの間、レヴィアの攻撃力と跳躍力、そして魅力のうちのどれかが3倍になるという効果を有している。
黄色に応じて開花するのは、羨望の深淵。
生命も想いも踏みつぶす歯車仕掛けの機械機構への気持ちを糧として燃やし、レヴィアの能力を向上させているのだ。
「(ここを乗りきって狂気艦隊を沈めれば、ブリテン島奪還作戦を仕掛けられる。その時こそ……ありったけの殺意を形にしてやるわ……!)」
屋敷の中で出会う蒸気人形にはおくびにも出さずに通り過ぎ、貞淑な作法の内側にそんな心境を押し込めて、レヴィアは紳士淑女の作法をクリアして進み続ける。
間もなく訪れるだろう、聖なる憎悪を解き放つ時を待ち望みながら、最奥にある機関部へ向けて歩き続けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
そういうことでしたら、やってみましょうかぁ。
【豊饒宿霊】を発動、[礼儀作法]を指定しますねぇ。
これに、自動で同時強化される[祈り]を併せ、『豊乳女神様の使徒』としての『礼拝の作法』に従って進みましょう。
『会話と表情はあくまで穏やかに、強い感情を見せてはならず、可能なが限り「情」を抑制すべし』
『盗人にも三分の理、敵対する相手であっても「思想」を否定すべからず』
『女神様の象徴である「豊満な体型」は出来るだけ誇示する様に』
基本はこの3点、ですねぇ。
最後は兎も角、残る二つは普段から心がけていることですし、問題無いのではないかと思われますので、洞さを[礼儀作法]で補い進みますぅ。
●豊饒の使徒の本領発揮。
「そういうことでしたら、やってみましょうかぁ」
夢ヶ枝・るこるは『豊饒の女神』を祀る宗教組織にて集められた者の中でも、高い資質を持つ使徒である。
それ故に、ここの『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』である祈り……『礼拝』への対応は、自然な流れで振舞うことができる。
るこるに気づいた蒸気人形たちが近寄る猶予を与える間もなく。
るこるは完璧な所作を披露している。
「大いなる豊饒の女神、古の使徒よりの豊かなる恵みをお貸しくださいませ」
《豊乳女神の加護・豊饒宿霊(チチガミサマノカゴ・ホウジョウノミタマ)》。
かつての『豊饒の使徒』の魂を降ろすことで、その技術を借りるユーベルコードである。
るこるの有する技能、【祈り】と【礼儀作法】のレベルが1470に変更され、『豊饒の女神』の使徒としての作法を執り行って見せる。
「それでは『礼拝の作法』に従って進みましょう」
るこるが見せる作法の基本は、三点。
会話と表情はあくまで穏やかに、強い感情を見せてはならず、可能なが限り『情』を抑制すべし。
盗人にも三分の理、敵対する相手であっても『思想』を否定すべからず。
女神様の象徴である『豊満な体型』は出来るだけ誇示する様に。
「最後は兎も角、残る二つは普段から心がけていることですし、問題無いのではないかと思われますので、動作を礼儀作法で補い進みますぅ」
るこるは廊下を行き交う蒸気人形にも穏やかに微笑みかけ、情をあらわにすること無くなくすれ違う。
例え、ここにいる何の感情も感じられない蒸気人形たちがクロックワーク・ヴィクトリアの手のものであり、敵であろうとも。
人形たちの礼拝を頭ごなしに否定することはせずにお辞儀を返し、……そして恥じらいを抑えながらも、完璧な所作でその身を誇示して見せて、蒸気人形たちを魅せて、るこるは艦内を進んでいく。
「すみません。機関部はどちらでしょうかぁ? ……なるほどぉ。ありがとうございますぅ」
狂気戦艦の、蒸気人形たちの『狂信』とも捉えられる紳士淑女の作法の中。
るこるは穏やかに蒸気人形たちに相対しながら、悠々と屋敷の最奥へと向かっていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
フリル・インレアン
ふええ、さっきのウマの人は大丈夫でしょうか?
私も正しく礼儀作法ができないとあんな風に……。
それは嫌です。
アヒルさん、礼拝ってどうすればいいんでしょうか?
ふええ!?スカートを摘まんで持ち上げるって、どういうことですか!
下着が見えちゃうじゃないですか!
そんなのが礼儀作法な訳ないじゃないですか!!
あ、見つかってしまいました。
ふええ、いいからアヒルさんの言う通りにしろって、
えっと、片足を少し後ろに下げて、スカートを軽く持ち上げて、会釈する。
あれ?私、これどこかで見たことがあるような気がします。
これで大丈夫なのでしょうか?
●大きな帽子とカーテシー。
「ふええ、さっきのウマの人は大丈夫でしょうか?」
狂気戦艦の内部へと侵入を果たしたフリル・インレアンは、先ほど猟兵たちの目の前で不法投棄された獣人戦線のレジスタンス兵の心配をしていた。
安心してください、無事です。
だが、『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』に適応できなければ、彼と同じように猟兵たちも同じ目に遭うだろう。
「私も正しく礼儀作法ができないとあんな風に……。それは嫌です。
アヒルさん、礼拝ってどうすればいいんでしょうか?」
「ぐわっ」
『アヒルさん』は身振り手振りでフリルに適当な礼儀作法を示す。
宗教的でなくても、敬意を感じさせる所作ならいけるはずだと主張している。
そして、ふんふんと『アヒルさん』の声と動作を聞いていたフリルは、提示された所作に驚愕する。
「ふええ!? スカートを摘まんで持ち上げるって、どういうことですか!
下着が見えちゃうじゃないですか! そんなのが礼儀作法な訳ないじゃないですか!!」
「ぐわっぐわわっ」
「紳士淑女ノ作法ニ従ワナイ?」「デシタラ、担ギ上ゲテ差シ上ゲマショウ」
「あ、見つかってしまいました」
違う、そうじゃないとフリルの勘違いを訂正しようとする『アヒルさん』だったが、フリルの叫び声に反応した蒸気人形たちが殺到する。
紳士淑女の作法に従い、騒がず走らず床を滑るようにスライドするように移動してきて、フリルを担ごうと手を伸ばす。
慌てて『アヒルさん』が、フリルへと動作の指導をする。
「ぐわーっ!」
「ふええ、いいからアヒルさんの言う通りにしろって、えっと、片足を少し後ろに下げて、スカートを軽く持ち上げて、会釈する。
……あれ? 私、これどこかで見たことがあるような気がします」
フリルが見せたその所作は、立派なカーテシー。
イングランドではよく知られている文化的な挨拶であり、フリルが披露した前に出した足は膝を軽く曲げて、後ろ側に残した足はまっすぐ伸ばし上体を前傾させずに上下させるというスタイルは、ヴィクトリア朝にて浸透するようになった作法だ。
社会的地位が下位の者から上位の相手に対して行われるのが伝統的であったが、昨今では、
|閑話休題《それはさておき》。
フリルの会釈を見て、蒸気人形たちは動きを止める。
その無機質な表情からは何の感情も感じ取ることはできないが……じっとフリルの振る舞いを観察しているように見える。
「これで大丈夫なのでしょうか?」
「ぐわっ」
『アヒルさん』の肯定の言葉を裏付けるように、蒸気人形たちは緩慢な動作でそれぞれの『礼拝』の所作に戻っていく。
《たった一人の生存者(スタンドアローン)》。
フリルが非戦闘行為に没頭している間、フリル自身の行動があらゆる環境下でも妨げられなくなるユーベルコード。
その行為が紳士淑女の作法に反してたならば、蒸気人形たちの魔の手は防げなかっただろう。
だが、フリルのカーテシーは気品ある佇まいとして受け入れられ、相手への敬意があると判断された。
取り囲んでいた蒸気人形たちはフリルの所作を妨げることなく、遠ざかっていく。
硬直していたフリルは少ししてから、安心して一息吐いた。
「ふわぁ、よかったです。それじゃあこのまま進みましょうか」
「ぐわっ」
行く先で蒸気人形に出くわすたびにカーテシーを披露して潜り抜けるフリル。
いつしかカーテシーに慣れてきた頃、フリルは狂気戦艦の最奥に位置する区画へと到達するのだった。
成功
🔵🔵🔴
雨飾・樒
礼儀正しく、静かに穏やかに振舞うこと、か
特定の宗派の作法を求められてるわけじゃない、大丈夫
使用人になったつもりで振舞いながら進もう
拳銃は仕舞って歩き、足音は殺さず、でも余計な音は立てないように
耳も尻尾もみだりに動かさない、広い通路は中央を歩かない
人形達の進路を塞がないことを徹底、近付いてきたら道を空けて一礼する
再度進み始めるのは人形達が完全に通り過ぎてから、絶対に急がず慌てないこと
あまり人形達の目に留まらないように、ただし隠れながらじゃなく静かに、粛々と進むことを心掛けよう
礼儀として正しいかどうかは見る側、人形達の基準次第だけど
正解として通してもらえるか、祈るしかない
メンカル・プルモーサ
…礼拝ねぇ…ヴィクトリアンというならイギリス国教会辺りがベースかな?
…表面上の姿勢さえ辻褄が合ってれば良さそうだな…まあ礼儀作法は一通り修めてるので所作は問題無いとして…
…突発的に紳士淑女力を試す罠が配置されていそうなのが怖いな…
…このルールを敷くなら侵入者には作法を破らせるようにする仕掛けの一つや二つはありそうだ…
…内心は関係無いとは言え…相手を尊重する事が大事…つまり…
…「相手の事を思えばこそあえて礼儀の作法から外れる」事ぐらいは要求してきそうだ…その辺に気をつけて先に進むとしようか…
●二つの完璧な立ち振る舞い。
「礼儀正しく、静かに穏やかに振舞うこと、か」
「……礼拝ねぇ……ヴィクトリアンというならイギリス国教会辺りがベースかな?」
「特定の宗派の作法を求められてるわけじゃない、大丈夫」
雨飾・樒とメンカル・プルモーサは、狂気戦艦の最奥を目指すべく『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』に対応しようと連携した。
メンカルは身に着けている礼儀作法の知識を、一分の隙もなく披露する。
身嗜みを整え、一人の淑女として完璧な所作を振舞い、『礼拝』を重んじる狂気の環境に適応する。
「……表面上の姿勢さえ辻褄が合ってれば良さそうだな……まあ礼儀作法は一通り修めてるので所作は問題無いとして……」
「わかった。なら私は、使用人になったつもりで振舞いながら進もう」
樒は『拳銃』を仕舞い武装を隠し、静かにメンカルを先導する。
樒は足音は殺さずに、しかし余計な音は立てないように、規則正しく歩き出す。
耳も尻尾もみだりに動かさず、広い通路は中央を歩かないよう配慮して、行き交う蒸気人形たちの進路を塞がないことを徹底し、近付いてきた時には道を空けて立ち止まり、一礼する。
樒は、気品あるハウスキーパーのような所作を見事にこなしていた。
「……突発的に紳士淑女力を試す罠が配置されていそうなのが怖いな……。
……このルールを敷くなら侵入者には作法を破らせるようにする仕掛けの一つや二つはありそうだ……」
樒の後ろを礼儀正しくついて行くメンカルは、油断することなく狂気戦艦の内部構造を観察していた。
堂々と、しかし横柄にならないように佇まいを見せながら、さり気なく周囲を洞察している。
罠や仕掛けの有無を見抜こうとして、そして何も在りはしないという事実を見抜いた。
メンカルは樒が立ち止まり蒸気人形に一礼をしている隙に、秘かに樒へ囁きかける。
「……物理的にこちらを試すような仕込みはない……。
……これは相手も同じように紳士淑女の作法に抗えないのだと思う……」
「そう。それなら、ミスしなければ問題ない」
樒はメンカルの言葉を聞いて、再度進み始める。
決して蒸気人形の目の前を横切らず、人形たちが完全に通り過ぎるのを待ってから動き出す。
絶対に急がず慌てないこと、
蒸気人形たちの目に留まらないように、ただし隠れ潜むのではなく、静かに粛々と進むことを心掛けて。
樒は一分の隙もなく完璧な一挙手一投足を披露して、廊下を進んでいく。
「礼儀として正しいかどうかは見る側、人形達の基準次第だけど。
正解として通してもらえるか、祈るしかない」
「……内心は関係無いとは言え……相手を尊重する事が大事……。
……つまり……『相手の事を思えばこそあえて礼儀の作法から外れる』事ぐらいは要求してきそうだ……。
……その辺に気をつけて先に進むとしようか……」
肯いた樒の後ろでメンカルが備えたのは、精神的な試練。
すなわち人形たちから接触された時の対処法である。
お互いに道を譲り合う時にどちらから動くのか、長話を切り上げるタイミングをいつ切り出すか。
そういった場合には、無作法をあえて被ってでも相手を立てるという所作を振舞って良いのだろうか?
名高いプルモーサ家の次女であるメンカルには、そうした機微を見抜き判断することは造作もないことであった。
紳士淑女の作法というルールの中で諍いを起こすことなく、蒸気人形たちと円満に応対して見せている。
「…………」
「……ではお先に失礼する……」
「エエ、アナタタチニ神ノゴ加護ガ有リマスヨウ。ゴ機嫌ヨウ」
先導して道を進み沈黙と動作にて対処する樒と、物怖じすることなく言葉を発し対話のイニシアティブを握るメンカル。
二人の猟兵は互いの立ち位置を活かし合い、補い合いながら狂気戦艦の機関部への道を探して、進むのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルー・ガルフィオン
【アドリブ&連携歓迎】
面倒なルール。でも、平和的なのは嫌いじゃない。
任務『礼拝』を遂行する。ターゲットは蒸気人形。
胸の前で手を組み目を閉じる。そして祈る、ひとつの願いを。
ああ神よ。私の罪をおゆるし……ください……すぅ。
……ん、寝てない。祈りに集中していた。
淑女は礼拝中に居眠りしない。だから寝てない。
(少し思考した後)
……取り乱しました。見苦しい言い訳をおゆるしください。
淑女らしく潔く過ちを認めます。私は居眠りをしていました。
ああ神よ。愚かな私に罰を……お与え……すぅ。
兎乃・零時
アドリブ歓迎!
夢想の時と違って主が居ない
ならそもそも何が原因なのか…この不思議ルールとも関係してそうだし
今回は此れに則って動くとするか!(小声)
夢想も折角だし衣装チェンジしとく?多分お前も出来る気がするけど…。
礼拝…ふむ、祈り、って事なら………和風的な舞も祈りではあるよな?
流石に詠唱はしないけれど…神を降ろすって事はすなわち、礼を尽くすって事でもある。
其れイメージでしゃなりと動くか。
(いそいそ夢想に手伝って貰って和風姿へはや着替え)
UCとしてではなく、神前で動くつもりで―――
もし必要なら舞もみせるぜ、このUCの本家から学んできてるからな
俺様は『魔』に関する事は貪欲に吸収するタイプなのだ(どやや
●静粛に祈り手、厳かに舞い手。
「夢想の時と違って主が居ない……。
ならそもそも何が原因なのか…この不思議ルールとも関係してそうだし」
「面倒なルール。でも、平和的なのは嫌いじゃない」
兎乃・零時とルー・ガルフィオンは『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』が敷かれた狂気戦艦に突入し、蒸気人形の目を盗んでエントランスホールを通り抜け、小さい廊下の隅で行動指針を思案していた。
最深部を目指して行動するために、それぞれの思う『礼拝』に思いを馳せる。
零時に至っては、この奥にいるUDC邪神への縁があるために、よりいっそう思索を深めているようだ。
「……まあ、今回は此れに則って動くとするか!」
「任務『礼拝』を遂行する。ターゲットは蒸気人形」
小声で意気込む零時の隣で、ルーは胸の前で手を組み目を閉じる。
そして祈る、ひとつの願いを。
敬遠なその所作は、気品ある佇まい。
ルーの清廉な雰囲気に、零時も感嘆の吐息をもらし……。
「ああ神よ。私の罪をおゆるし……ください……すぅ」
「お、おいっ、寝るな、寝るなー……!」
うつらうつらと船を漕ぐルーに堪らず声をかけた。
ルーはすぐに瞼を上げて、零時に視線を向ける。
「……ん、寝てない。祈りに集中していた。
淑女は礼拝中に居眠りしない。だから寝てない」
「そ、それならいいんだが……。礼拝……ふむ」
そのまま静かに瞑目して礼拝を再開するルーの隣で、零時は自分なりの礼拝を思い描く。
蒸気人形に見つかる前に答えを導き出さなければ、神輿のように担がれてしまう……。
その時、零時の脳裏に過ぎったのは、零時の友である朱赫の神の姿だった。
「祈り、って事なら………和風的な舞も祈りではあるよな?
流石に詠唱はしないけれど……神を降ろすって事はすなわち、礼を尽くすって事でもある。
其れイメージでしゃなりと動くか」
「和風? あのかっこいい姿になるの?」
夢想の魔人が零時の意図を察して問うた。
これから披露する零時の礼拝の姿に興味があるようで、零時も少し考えて提案を投げる。
「夢想も折角だし衣装チェンジしとく? 多分お前も出来る気がするけど……」
「おー、いっしょにやろ」
いそいそと廊下の角を曲がって身を隠し、夢想の魔人に手伝って貰いながら零時は和風姿へはや着替えをする。
再びルーの前に戻ってきた時、二人の姿は桜の花弁が散りばめられた華やかな和装に代わっていた。
「そして、ユーベルコードとしてではなく、神前で動くつもりで―――」
「うん。おごそかに」
零時と夢想の魔人が、神聖な作法を振舞う。
《禍津神楽・櫻繚乱舞《練式》(マガツカグラ・オウリョウランブ・レンシキ)》。
それは、本来は禍津神楽を順に舞って、降ろした禍津の神威と合体することで身体能力の向上を始めとする自己強化の加護を得るユーベルコードである。
適正を持たぬ者が踊ればその厄災に身を滅ぼされる為に、厄災に徐々に慣らすため段階的に下ろして出力を上げる必要があるのだが、此度は強める必要のない礼拝儀礼。
ただ静かに、神懸るだけ。
何処となく七つ神楽と似通っているその所作は、友たる神を想う作法。
身に降ろすは想いの力、荒ぶる力を振うことなく、ただ一心に祈りを捧げる祈祷。
|戦場《いくさば》に非ずとも、その佇まいは正しく神聖な礼拝と言えるだろう。
「もし必要なら序舞から終極までの舞もみせるぜ、このUCの本家から学んできてるからな。
俺様は『魔』に関する事は貪欲に吸収するタイプなのだ」
「おー、えらいえらい」
《禍津神楽》を披露した零時が身に纏う空気は、今や厳粛で神聖なものであった。
叫んだり走ったりしなければ、蒸気人形に会っても咎められることなく館内を征くことができるだろう。
そんな零時の様子を感じ取り、目を開いたルーは少し思考してから再び祈る姿勢を見せる。
「……取り乱しました。見苦しい言い訳をおゆるしください。
淑女らしく潔く過ちを認めます。私は居眠りをしていました」
「やっぱ寝てたんじゃねぇか……!」
「この子は良く育つよ、レイジ」
神々しい零時に告解したことで、ルーの祈りは正しく礼拝として断定されたのだろう。
通路を歩いてきた蒸気人形たちがルーと零時に顔を向けたものの、敬意を表す動作を見せて通り過ぎて行く。
神道系の礼拝を宿した零時と正統派な祈りを捧げるルーは、紳士淑女の作法を守っていると認識されたようだ。
遠ざかった蒸気人形の背を見つめる零時の隣で、ルーが再び舟を漕ぎだす。
「ああ神よ。愚かな私に罰を……お与え……すぅ」
「やっぱ寝てるだろっ、おーい、起きろーっ」
「それじゃあ、いこー」
度々居眠りするルーを連れて、零時は恐る恐る館内を闊歩していく。
先導する零時が蒸気人形たちの注意を引き付ける間に夢想の魔人がルーを起こすという連携により、三者は見咎められることなく機関部に近づいていく。
そして、礼拝堂の如き厳粛な佇まいの機関部へ……『神聖』なる魔人が座す場所へ辿り着くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『No-F3F3F2『上昇する白練』』
|
POW : 天聖絶器:さぁ、君らはどうやって超えてくるかな?
【身に纏う力や『神聖』の魔導書を用いて、空】から、戦場全体に「敵味方を識別する【神速の、神聖の力により創られた数多の武器】」を放ち、ダメージと【武器が触れた部位を抉り消失させる『抹消』】の状態異常を与える。
SPD : 聖響鳴神:さぁて、止まらぬ此れを君はどう止める?
攻撃が命中した対象に【聖なる存在や攻撃への心体問わずの拒絶反応】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【天より絶えず鳴り響く、神光による神鳴/雷】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ : 白天聖域:さぁ、其処から這い上がってこれるかい?
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【存在以外に効果在る空間術式を即時展開して】から【実体捉え時間経つ程敵の重力増し続ける世界】を放つ。
イラスト:ち4
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「兎乃・零時」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:奉じられし神聖の魔人。
「書開かれた時 魔人は現れる 打倒が叶えば 書が一つ残る」
ついに辿り着いた、狂気戦艦の最奥区画に設けられた機関部。
超常的な力場によって保護された蒸気機械が所狭しと稼働し、このヴィクトリア朝の屋敷船を運航させている中枢だ。
仰々しい扉を開いて中に入った猟兵たちの目の前にいるのは、祭壇の前で膝をついて祈りを捧げているように見える一体のオブリビオン。
この船の動力を提供するUDC邪神……No-F3F3F2『上昇する白練』だ。
「再度開けば 第二の試練 魔人は君を乗っ取ろうとする」
眼前の白い男が、振り向きながら口遊む。
彼が語るのは、人造UDCである『神聖』の魔導書に記されているという文言。
『上昇する白練』が自ら告げる、自身の由緒……取扱の手順であった。
「超えたなら君は書の主 主無き書は蘇る」
一度目の打倒と二度目の試練を乗り越えれば、『神聖』の魔導書はその者を主とする。
それが叶わなければ魔人は開いたものを乗っ取り、魔導書は再び閉じられるのだろう。
その旨を告げた魔人は、尊大な笑みを浮かべて猟兵たちを睥睨している。
その視線には猟兵たちを見下す心情が透けており、慇懃無礼な雰囲気を醸し出している。
「ここに在る僕に書の主は不在。すなわち僕は主を越えた存在なのです。
故に、諸君……偉大なる僕のために祈りましょう。
優れたる猟兵たち、精強なる獣人たち。
君たちのその命を、その魂を、その意志を。偉大なる僕に捧げることを許します」
この魔人の書を開き、打倒した存在がクロックワーク・ヴィクトリアにいるのだろう。
だが、その者は再び書を開くことなく、『上昇する白練』を狂気戦艦の動力源にするべく安置した。
第二の試練を課すことができず、開き手を乗っ取ることも、再び書に戻ることもできない。
正常な儀式を経ていない、システムエラーのような状態でこの場に維持され、延々と扱われ続けているのだ。
通常であれば気が狂う所業を受けても、『上昇する白練』は表面上は平然と笑い続けている。
人類より上位の存在だという矜持が、狂気の中でも自意識を保ち続けているのだろう。
あるいは……。
「僕の名はNo-F3F3F2『上昇する白練』。僕こそがクロックワーク・ヴィクトリア。
人々よ、表敬せよ。人々よ、崇拝せよ。人々よ、平伏せよ。
『敬意』を表すること。それが僕の敷く『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』!」
諸手を広げた『上昇する白練』の所作に応じるように、狂気戦艦が躍動する。
複雑怪奇な蒸気管が唸り、金属板やグレーチングがスライドして、天井が開く。
瞬く間に狂気戦艦が変形して、機関部が屋外に露出する。
水平線に日が暮れており、暗くなりつつある夜の闇には無数の白い輝きが煌めいている。
それは……『上昇する白練』により創られた数多の武器に神鳴、雷……『神聖』の力だ。
「僕がこの船の王、この船の神、この船の主、支配者、君臨者なのです。
君たちはどうやって超えてくるかな? 止まらぬ此れを君たちはどう止める?
―――さぁ、君たちは|底《其処》から這い上がってこれるかい?」
純白の羽根を広げて浮かび上がる『上昇する白練』が、猟兵たちへの攻撃を開始する。
『紳士淑女の作法』にて強化されたこの邪神を、この魔人を打倒すれば戦艦を破壊することができる。
イングランドへの海上封鎖を開放するために、あるいは狂気の戦艦に囚われた魔人を解放するために。
夕と夜が交わる刻、恐るべき強敵との決戦が幕を開ける。
※狂気戦艦の主であるUDC邪神、No-F3F3F2『上昇する白練』との戦闘です。
人造UDCの魔導書が開かれたことで現れた魔人であり、飛翔能力を有し上空からの広範囲攻撃を得意としております。
『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』により、この狂気戦艦という戦場において『敬意』を表することを強制しております。
『上昇する白練』を崇拝させ、信仰させることで他の対象より上位にあると定義して自らを強化しており、『上昇する白練』に歯向かう対象を不敬であると断じて超弱体化させようと目論んでいます。
ですが、『敬意』を表しつつ戦うことは不可能ではないはずです。
『紳士淑女の作法』を守り、『敬意』を表して戦えば猟兵も強化を得ることができ、『上昇する白練』に太刀打ちできるでしょう。
一方で不敬になりかねない言動、嘲ったり蔑んだり、憐れんだりすることを表明するのは抑えるべきと具申します。
プレイングボーナスは、『紳士淑女の作法、敵対者への敬意を表すこと』です。
また、うまく言動を誘導して『上昇する白練』から猟兵たちへの『敬意』を取り除けば、弱体化させることができるかもしれません。
こちらはプレイングボーナスには当たりませんが、状況によっては有利に働くかもしれません。
それでは皆様、よろしくお願いいたします。
フリル・インレアン
フッリフリフリ(笑い声)!
私はここまでの『紳士淑女の作法』で顕現した真の姿の1つビブリオ・フリルです!
どうぞよろしくお願いします!
『敬意』を表す、それは私達の先先々代kingのキング・ブレインさんのモットーとしていたことです!
私もキング・ブレインさんに倣い『敬意』をもってお相手しましょう!
では、まずはあなたのユーベルコードに対して、私はあなたの『紳士淑女の作法』で対処させていただきます!
私は私の狂気耐性を蔑ずみます!
あなたのような強大な魔人さんを前にこれっぽっちの狂気耐性で立っているなんてなんて愚かなことでしょう!
『紳士淑女の作法』に則り、私は超弱体化を受けます!
それによって、私は耐性を失います!
拒絶とは抗うから起こるので抗う力がなければ自然と受け入れるんです!
そして、私は恐れ多くも質問をします!
「絶対のルールが破られたら、あなたはどうしますか?」
その答えが真実なら、『紳士淑女の作法』を解除します!
もしそれ以外なら、あなたは私への『敬意』が認められず超弱体化を受け、罰がくだります!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
敬意でしたら、元々有りますねぇ。
過去の全存在がオブリビオン化出来るわけでは無い以上、その『何か』をお持ちの方には当然ですぅ。
その上で「互いの役目を果たすこと」こそが『礼』かと。
『FAS』により飛行、【禩覉】を発動し『半神』化しますねぇ。
『数多の武器』の挙動は『FPS』で探査、『FIS』の転移で回避しつつ白練さん上方に移動、躱しきれない分は『FLS』の空間歪曲と『FMS』のバリアで防ぎ『即時修復』で再生させることで対処、尚突破されても『負傷&状態異常』は解除後の『体型反動』へ置換可能ですぅ。
後は[空中戦]の技量で逃がさない様捕捉、全攻撃用『祭器』の攻撃を集中させますねぇ。
レヴィア・イエローローズ
――では、貴方に敬意を表して……全力で、貴方を倒すわ
そう言って真の姿を開放
光り輝くシカの神となり、周囲の数多の武器は『全ての法則を無視し行われる物質再構築術式』の射程範囲内に入ったと同時に武器を構成する『物質』に宿る『法則』を無視し、再構築していく
敵と味方……その間で交わされる敬意とは――『全力で、己の最高のUCを以て撃破する』という事!
故に――わたくしの現在所有するUCの中で、最も強大なUCを以て、貴方を撃破する!
更にこの室内の壁や床、天井という『物質』を『法則』ごと書き換え、『抹消』の法則を付与して邪神を『抹消』するわ
雨飾・樒
敬意を表することがルール、なのにあの態度
強敵ではあるけど、これなら何とかなりそう
私みたいなのが敬意を表するとなると、捧げ銃、かな
拳銃でやるものじゃないかもだけど、それらしく見えるようにビシッと決める
敵が返礼するのを待ってから、しないなら不敬ということで"眠り薬の魔弾"を撃つ
重力を増し続ける術は厄介、飛行する相手に跳躍で接近して撃たなきゃいけない
速攻で近付いて命中させられれば良いけど、無理そうなら敵の敷いたルールに敵自身が違反していそうな点を指摘して、弱体化を狙ってみる
一つは飛行していることで、私達を物理的に見下していること
もう一つは私達を精神的に見下していること
王でも神でも、一方的に下々の者を虐げようとしているなら、それは敬意を表していない
礼儀も敬意も、表面だけ取り繕っても意味がないって思ってた
それが重要になることもある、良い経験になった
メンカル・プルモーサ
ふーむ…変わらず敬意を表する事が大事な訳か…なるほど
…しかしこう…この蒸気を使って動かしている戦艦の機構にも興味が出てきたね…アルダワの人間としては
…それはさておき…上昇する白練…貴公は私にとって全力で立ち向かうに値する敵だね……敬意を持って打ち倒すとしよう…
…空間術式を用いてこちらの行動を制限するそのUCが見事だけど…
…重力が増すまで時間がかかるから…動けなくなる前に【崩壊せし邪悪なる符号】で解くことが出来る…
…飛翔能力を失って落ちてきても油断は出来ない…再び展開される前に術式槍を多数生成して叩き込むとしようか…
ルー・ガルフィオン
(この部屋、それにあの高慢な存在、どこかで……)
……多分、気のせい。夢心地はおしまい、気を引き締めないと。
『紳士淑女の作法』に従い、彼への敬意を忘れない。
勿論、本心ではないし、直接語らうつもりもないけれど。
……強者の蹂躙は時に悪夢を生む。敵であることが残念。
蒸気機械に身を隠しながら対空狙撃を行う。
敵は上空。射線上に遮蔽なし。ん、狙える。
……でも、何か嫌な予感?
スコープを覗くと数多の白い煌めきが視界に入り、再びの既視感を覚える。
……!思い出した。さっきの夢の中、私はキミと対峙した。
──攻撃、来る。
UCで回避に専念。持久戦に持ち込んで好機を待つ。
お疲れ様。そして、おやすみなさい。
兎乃・零時
アドリブ歓迎
『夢想』の時も眠りと願い、二種の属性だったけど
『神聖』は光の上位の聖、神威の二種…って所か
夢想、準備は良いか
超えるし、終わらせる、この試練を
俺様はどん底からだって這い上がれるぐらい頑張るぜ!
敬意?抱くさ、当たり前だろ
王であり神であり主なら、手加減こそ不敬だろう
強い相手だからこそ、全力全開で、俺様の本気を御見せしよう!
UC起動!
リミッター解除×限界突破!此れが俺様の桜魔の極式!
夢想は援護を頼む!空中を浮かびながら戦闘!
神聖の武器は龍櫻の花弁を舞わせ神器の攻撃を妨害しつつ
結界術の災転禍巡で敵の攻撃を封じつつ!
俺様の夢は、全世界最強最高の魔術師、だからこそこんな凄い術式を持つお前を凄いと思う
――お前は其れを嗤うか?それとも別の感情を向けるか?
でも、俺様はそんな凄いお前が欲しい
主が居ないなら、お前が認められるぐらい凄い新しい主ってのになる為に!
俺の全力を受け取りな!
自分へ|全属性付与《フルエンチャント》
多重詠唱で更に刀へ魔力溜め拡張しつつ、戦艦ごと切り裂く気持ちで魔人へぶつけるぜ…!
●逢魔が時に交わる干戈。
『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』のルールに支配されている狂気戦艦が征く、薄暗い海の上。
純白の羽根を広げて上空を翔け、猟兵たちを見下ろすUDC邪神である『神聖』の魔導書の魔人。
No-F3F3F2『上昇する白練』を見上げて、猟兵たちが次々に声を上げて意気を示していく。
「フッリフリフリ!」
不思議な笑い声を上げるのは、フリル・インレアン。
いつもの帽子を外して、意気揚々と真の姿を|開放《オーバーロード》している。
普段とは一味違う様子で、堂々と胸を張って立っている。
「私はここまでの『紳士淑女の作法』で顕現した真の姿の1つ、ビブリオ・フリルです!
どうぞよろしくお願いします!」
「よろしくお願いしますぅ。そうですねぇ、敬意でしたら、元々有りますねぇ。
過去の全存在がオブリビオン化出来るわけでは無い以上、その『何か』をお持ちの方には当然ですぅ」
夢ヶ枝・るこるは常日頃から対峙するオブリビオンへの敬意を抱いている。
基本として身に着けた佇まいは、この艦の『紳士淑女の作法』に完璧に対応できているのだ。
「―――では、貴方に敬意を表して……全力で、貴方を倒すわ」
そう言ってレヴィアは、ユーベルコードを行使して真の姿を開放する。
光り輝く角を生やす、自然階梯のシカの姿をした鹿神へと変身する。
《黄薔薇開花・形あるもの全て掌握する鹿神(イエローローズ・ディア・オブ・サートゥルヌス)》。
レヴィア・イエローローズの真の姿の一つである。
「敬意を表することがルール、なのにあの態度。
……強敵ではあるけど、これなら何とかなりそう」
雨飾・樒は緑色の瞳で『上昇する白練』を見つめている。
傭兵として数多くの戦場を生き抜いてきた樒からすれば、理不尽な戦場のルールに対応することも、対峙する相手に合わせて動くことも慣れたものであろう。
艦内にて『紳士淑女の作法』を振舞った経験を思い返しつつ、『六式拳銃丙型』を握り締める。
「ふーむ……変わらず敬意を表する事が大事な訳か……なるほど……しかしこう……この蒸気を使って動かしている戦艦の機構にも興味が出てきたね……アルダワの人間としては……それはさておき……」
メンカル・プルモーサはいつもと変わらない表情の、眼鏡の奥の瞳に好奇心の輝きを宿していた。
UDC邪神の力を利用して運航される狂気戦艦の構造が、クロックワーク・ヴィクトリアのノウハウが、気になるのだろう。
だが、今は調べる猶予はない。早く『上昇する白練』を倒さなければ、猟兵たちが倒れてしまうことになる。
そのことを重々承知している故に、メンカルは強敵へと視線を向ける。
「……上昇する白練……貴公は私にとって全力で立ち向かうに値する敵だね……敬意を持って打ち倒すとしよう……」
「(この部屋、この夜空、それにあの高慢な存在、どこかで……)」
……多分、気のせい。夢心地はおしまい、気を引き締めないと」
そんな中、ルー・ガルフィオンは眠たそうな眼を開けて、白いオブリビオンに対応するべく移動を開始した。
狙撃手であるルーは大きく開けた場所に残るより、遮蔽のある物陰に身を隠して狙いを付けるつもりなのだ。
相手が空高く飛び、こちらの動向を見下ろすならば尚更だ。
「『夢想』の時も眠りと願い、二種の属性だったけど……。
『神聖』は光の上位の聖、神威の二種……って所か。夢想、準備は良いか」
「いつでもいいよ、レイジ」
そして兎乃・零時は、夢想の魔人と共に神聖の魔人へと挑戦する。
その眼差しには、一片の濁りもない。
縁のあるオブリビオンとの戦いに意気込みこそすれ、緊張や恐怖は感じられない。
「超えるし、終わらせる、この試練を。
俺様はどん底からだって這い上がれるぐらい頑張るぜ!」
「おー」
そして、猟兵たちが戦いに臨む意志を示したのを待っていたかのように。
『上昇する白練』が、その畏怖されるほどの武威を示す。
●激戦。
「さぁ、さぁ、さぁ!
大いなる六番目の猟兵たちの力、存分に披露するといい!
この僕に捧げるに相応しいその魂の輝きを披露するといい!」
『上昇する白練』が片手に持つ『神聖』の魔導書から、壮絶な術式が展開されていく。
時速数万kmで飛翔しながら自身の存在以外に効果が有る空間術式を即時展開しつつ、戦場全体に敵味方を識別する神聖の力により創られた数多の武器を神速で放ち、天より絶えず鳴り響く神光による|神鳴《かみなり》を引き起こす。
襲い来る武器に触れればダメージを負うに留まらずその部位は抉られ消失してしまう『抹消』の状態異常を与えられ、聖なる存在=『上昇する白練』へ攻撃を繰り出すことへの拒絶反応を心身の状態問わず付与し、戦場は実体を捉えて時間が経過する程に重力を増し続ける世界と化していく。
これこそ、『上昇する白練』のユーベルコード。
《天聖絶器》・《聖響鳴神》・《白天聖域》の猛威である。
「ははハハはは! これが僕だ! 僕の、クロックワーク・ヴィクトリアの力!
崇められ、拝まれ、敬われることは当然のことなのだよ!
許す、この僕が赦す。僕の力を前に膝を折り、潔く降伏することを認めよう!」
『紳士淑女の作法』により超強化されたそれらは、ただ人であれば、単身であれば、乗り越えることは極めて困難な試練。
『神聖』なる脅威を前にして、だがそれでも。
この場に集った猟兵は、誰一人屈する気配はない。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その変遷の理をここに」
まず先にるこるが『フローティング・エアロフォイル・システム』を展開して飛行を開始すると同時に、ユーベルコードを発動させる。
《豊乳女神の加護・禩覉(チチガミサマノカゴ・ジンミョウヘノリテイ)》。
負傷や状態異常を『体型反動』に置換する『奉』に覚醒して、全『祭器』に『即時修復』付与する『半神』姿に変身する。
そのユーベルコードは戦闘能力が爆発的に増大するが、戦闘終了まで毎秒寿命を削る諸刃の権能である。……もっとも、それすらも『反動』に置換されるのだが。
「それでは白練さん。参りますぅ」
「抵抗するか、おろ……。ならば! 神威を以て応えよう!」
戦場を飛び交う数多の武器の挙動を、浮遊する147個の涙滴水晶型の祭器『フローティング・プローブ・システム』の力で探査し、時空間に干渉し得る16本の浮遊する水晶柱型祭器『フローティング・インタディクト・システム』の機能で転移を繰り返すことで回避を試みる。
十、二十と避けた先に飛来するのは、幾百の刃。
るこるの実力でも躱しきれない《天聖絶器》の攻勢を、『フローティング・リンケージ・システム』の空間歪曲で逸らし、浮遊する12枚の円盤型祭器『フローティング・ミラーコート・システム』のバリアで防いでいく。
命中したことで『抹消』された祭器の箇所は、すかさず《禩覉》の効果で『即時修復』で再生していく。
消耗と回復を繰り返しつつ、猛攻を潜り抜けたるこるが『上昇する白練』の上方へと現れると、反撃の構えに移る。
「これは……! 君、人が僕の上に立つとは、不敬だぞ!」
「位置座標で見下すことにはなりません。
手を抜くことなく、その上で「互いの役目を果たすこと」こそが『礼』かと」
『上昇する白練』は祭器による攻撃を発揮するるこるへの対応して、空中戦を繰り広げる。
るこるは砲撃、斬撃、レーザー射撃など、攻撃用の祭器すべてを用いて巧みな技量で組み合わせ、三次元の機動で『上昇する白練』を追い立てている。
激しく攻防を繰り返す二人の眼下、天井が大きく開かれた機関部に立つ猟兵たちの中で、レヴィアが面を上げている。
るこるが率先して飛び立ち《天聖絶器》による攻撃を受け持っていたことで、神速で襲い来る神聖武器は地上にいる猟兵たちには数えられるほどしか向かわなかった。
その武器たちはみな、レヴィアのユーベルコードによって無効化されていた。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。
それは鹿の神としてのあるがままの権能。
全ての物質に宿る理を破却し、その形を掌握せよ」
《黄薔薇開花・形あるもの全て掌握する鹿神》は、全ての法則を無視し行われる物質再構築術式を行使する。
その真価はレヴィアの攻撃射程外からのダメージを全て100分の1にして、射程範囲内に入った武器を構成する『物質』に宿る『法則』を無視し、瞬時に再構築していくことだ。
レヴィアの周囲には、数多の武器が……そして、機関部の壁や床や天井といった『物質』のすべてが書き換えられ、《黄薔薇開花・形あるもの全て掌握する鹿神》の下でコントロールされている。
フリルも、樒も、メンカルも、零時も。物陰に潜んだルーも、レヴィアの庇護下で各々の攻撃準備に集中することができている。
「誰一人『抹消』などさせません。
『抹消』の法則を付与して、UDC邪神……貴方を『抹消』するわ」
「……物質の再構築術式助かる……上昇する白練も空間術式を用いてこちらの行動を制限するそのユーベルコードが見事だけど……」
そして、メンカルが練り上げていたユーベルコードを開放する。
メンカルが選択したのは、《白天聖域》への対応策。
上空を高速で飛翔する『上昇する白練』の放つ《白天聖域》。時間が経過するにつれて猟兵たちに不利になる重力増加を放つユーベルコードを早期に打ち破るために、メンカルは降り注ぐ武器や雷鳴への防御をるこるとレヴィアに任せて、十全な詠唱を唱えていた。
その完全詠唱は、《白天聖域》が最大効力を発揮するよりも、速く完成したのだ。
「……重力が増すまで時間がかかるから……動けなくなる前に解くことが出来る……。
―――邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理―――」
じっくりと、正確に詠唱されたのは《崩壊せし邪悪なる符号(ユーベルコード・ディスインテグレイト)》。
メンカルが対象のユーベルコードに対して情報を分解する魔術を放ち、相殺するユーベルコードである。
事前にそれを見ていれば、そして解析が正確であれば成功率が上がるが、詠唱を短縮したり破棄したりすると成功率が落ちる。
仲間たちと共にあることで、メンカルは敵のユーベルコードをしっかりと見ることができた。
完全な状態で発動された《崩壊せし邪悪なる符号》が見事に成功し、《白天聖域》を打ち破る。
「っ……! これは、貴様……僕の術式を!」
「……飛翔能力を失って落ちてきても油断は出来ない……」
急に速度を落とした『上昇する白練』が、るこるの砲撃を受けて態勢を崩す。
再び《白天聖域》を展開される度に、メンカルは即座に《崩壊せし邪悪なる符号》を放ち、相殺していく。
そして、動きが遅くなって高度を落としていく『上昇する白練』に、樒が跳躍して接近する。
「重力を増し続ける術は厄介、飛行する相手に跳躍で接近して撃たなきゃいけない。
……一人では難しいことも、連携すれば速攻で決められる」
「っ、君、まさかこの僕に傷をつけるというのかい!」
咄嗟に神聖武器を向けて向けての素振りを見せる『上昇する白練』とは対照的に、樒は機敏な動きで拳銃を両手で持ち、身体の中央前に垂直に掲げる。
攻撃ではないその動作は、『紳士淑女の作法』に適した振舞いである。
「私みたいなのが敬意を表するとなると、捧げ銃、かな」
「ささげ、つつ……?」
本来拳銃で行うものではないが、それらしく見えるようにビシッと決める軍隊の敬礼の一種。
それを認識していない『上昇する白練』は返礼することなく怪訝な表情を浮かべ、樒へと攻撃を発しようとして……『敬意』を損なう。
「っ!? な、これは……しまった!」
「礼儀も敬意も、表面だけ取り繕っても意味がないって思ってた
それが重要になることもある、良い経験になった」
不敬により超弱体化した『上昇する白練』の胸に、《眠り薬の魔弾(ヒプノティク)》が撃ち込まれる。
物質を透過し敵に【睡眠】の状態異常を与えるペールブルーの魔力弾が『上昇する白練』の胸に吸い込まれ、意識を混濁させる。
『上昇する白練』は直ぐに返礼を行い、再び『紳士淑女の作法』の強化を得ることで意識を保つが、その動きは明確に鈍っている。
「くっ……! き、貴様、よくも、この僕を……!」
「一つ、飛行していることで私達を物理的に見下していること。
もう一つは私達を精神的に見下していること。
王でも神でも、一方的に下々の者を虐げようとしているなら、それは敬意を表していない」
「戯言を宣う……! この僕が、敬意を表していないだと……!」
感情を露わにした『上昇する白練』が再度数多の武器を創り出す。
《天聖絶器》による攻撃を繰り出そうとしたその時、フリルが高らかに敬意を宣言する。
「『敬意』を表す、それは私達の先先々代kingのキング・ブレインさんのモットーとしていたことです!
私もキング・ブレインさんに倣い『敬意』をもってお相手しましょう!」
「―――ほう? 君が相手をするというのか」
ビブリオ・フリルの言葉に反応した『上昇する白練』が、鳴り止まぬ雷を放つ素振りを見せながらフリルへと向き直る。
「では、まずはあなたのユーベルコードに対して、私はあなたの『紳士淑女の作法』で対処させていただきます!」
「ふっ……殊勝な心掛け……「私は私の狂気耐性を蔑ずみます!」……何を言っているんだい?」
「あなたのような強大な魔人さんを前にこれっぽっちの狂気耐性で立っているなんて、なんて愚かなことでしょう!」
「だから何を言っているんだい? えっと、降参かな……?」
フリルはおもむろに自分自身の狂気耐性を蔑んだ。
何が起こっているのだろうか。
困惑する『上昇する白練』を無視して、フリルは更なる言動を振舞う。
「『紳士淑女の作法』に則り、私は超弱体化を受けます! それによって、私は耐性を失います!」
「頼むから会話してくれないか? 何を言っているのか聞いているんだ!」
「拒絶とは抗うから起こるので抗う力がなければ自然と受け入れるんです!」
「誰か、通訳はいないのか! 君たち、ちょっと!」
つまり、どういうことなんだろうか。
教えてくれ紳士淑女の諸君。
……この場にいる猟兵の誰も何も答えず、真剣に戦闘を継続している。
『上昇する白練』は他の猟兵と攻防を繰り広げながらフリルの言葉を耳に入れなければならないのだ。
「そして、私は恐れ多くも質問をします!
『絶対のルールが破られたら、あなたはどうしますか?』」
「突然何の話をしているんだい! 僕の質問に「真実を答えてくれなかったので、あなたは私への『敬意』が認められず超弱体化を受け、罰がくだります!」話をしよう!!」
トラップユーベルコード、オープン!
《猟兵文庫『ドキドキ心理テスト』(ビブリオフリル・ドキドキシンリテスト)》!
質問と共に持続効果に干渉する心理テストを放つユーベルコードである!
命中した対象が真実を言えば持続効果、今回の場合では『紳士淑女の作法』が解除されるのが、それ以外の場合はダメージを与えられる!
簡単な質問ほど、その威力は上昇するのだ!
属性不明の謎のダメージが『上昇する白練』を襲う!
「がふっ!? ふ、ふざけるなぁぁぁっ!! 理不尽だろぉぉぉっ!!」
「……強者の蹂躙は時に悪夢を生む。敵であることが残念」
フリルの心理テストで藻掻いている『上昇する白練』を狙撃するべく、ルーは魔導式照準器『PSK-1』を覗き込んで『ヴォルコフSVV』の銃口を向ける。
ルーは蒸気機械に身を隠しながら、ずっと攻撃の機を伺っていた。
レヴィアたちのおかげで敵の攻撃に被弾することなく、じっと静かに好機を待つことができていた。
るこるが空中戦をしている時も、樒が跳躍して接近した時も、動かずに辛抱を続けていた。
持久戦に持ち込んだ状態で、絶好の時を……この瞬間を待っていたのだ。
「(勿論、本心ではないし、直接語らうつもりもないけれど。敬意を忘れずに)」
ルーもまた『紳士淑女の作法』に従い、撃ち抜く標的への敬意を忘れない。
言葉に、そして態度に表さなければ、『紳士淑女の作法』による超弱体化は免れる。
技量も威力も通常のまま、ルーは吼える『上昇する白練』の顔に照準を合わせた。
「敵は上空。射線上に遮蔽なし。ん、狙える。……でも、何か嫌な予感?」
スコープ越しに、数多の白い煌めきが視界に入り、再びの既視感を覚える。
その瞬間、ルーは思い出した。
先程、祈りを捧げている最中に見た夢の出来事を。
「……! 思い出した。さっきの夢の中、私はキミと」
―――攻撃が、来る。
直後、ルーの潜んでいた蒸気機械が無数の武器に貫かれた。
『抹消』される間もなく天より《聖響鳴神》が放たれ、その付近を凄まじい雷による追加攻撃が埋め尽くす。
「やったか!? 」
聖なる存在や攻撃への心体問わずの拒絶反応を感知したのだろう、『上昇する白練』の迎撃が叩き込まれた。
ようやく猟兵の一人を始末することができたと、息も絶え絶えに嘲笑を浮かべる『上昇する白練』の顔に、銃弾が撃ち込まれる。
「なぁ……!?」
「お生憎様、キミの行動はすべて筒抜け」
《朧な啓明(デジャ・ビュ)》。
それは、遠くない過去に見た夢から既視感を発見するユーベルコード。
夢の中で体験した対象の攻撃を予測し、回避することができるのだ。
そしてその恩恵は、既視感を教えられた者たちにも得られる。
「みんな。雷は大丈夫。あれは、攻撃が命中した場所にしか降り注がない。
初撃に注意していれば……神光は怖くない」
「こ、の……! イェェェガァァァア!!」
顔面に貫通痕を残した『上昇する白練』が、攻勢を激しく振るう。
無数の神聖な武器が荒々しく振り回され、上空の雷鳴が鳴り響き、一瞬で破却される《白天聖域》を繰り出しては高速飛翔を重ねる。
だが、精密さを損なった攻撃は容易く回避され、雷鳴は気にする必要がなくなった。
フリルの心理テストとるこるの集中砲火に翻弄され、レヴィアの物質再構築術式に攻撃を防がれ、メンカルに飛翔術式を分解され、樒の魔弾とルーの弾丸に貫かれ……肉体と精神双方にダメージが蓄積した『上昇する白練』は余裕を失いつつある。
人を見下すような笑みを湛えていた傲慢不遜の『上昇する白練』が、苛立たしさを隠せずに歯ぎしりをしていた。
「君っ、たちは……! この僕に! 王に、神に、主に!
クロックワーク・ヴィクトリアたる僕に! 敬意を抱かないのかっ!!
屈服しろ! 服従しろ! 命乞いをしろ! この僕に、従ええええ!!」
『紳士淑女の作法』を駆使し信仰をその身に受けることで超強化されていた力も、樒とフリルの言葉に揺さぶられたことで取り繕っていた『敬意』が剥がされ弱まっていた。
まさに満身創痍。
それでもなお、『上昇する白練』は大勢の猟兵を相手に立ち回りを続けている。
大きな翼で揚力を得て、空から攻撃を繰り出し続け……そこへ、アクアマリンの輝きが迫る。
「敬意? 抱くさ、当たり前だろ。王であり神であり主なら、手加減こそ不敬だろう。
強い相手だからこそ、全力全開で、俺様の本気を御見せしよう!」
「!? 貴様はっ……!」
仲間の庇護の下で集中して術式を練り、渾身のユーベルコードを展開するために力を溜めていた猟兵。
零時がその力を魅せる。
「呪い転じて祝い為す、友に授かり我が縁。
試練果たして鳴り響け、世界に通ず我が夢想。
纏い踊りて神降ろせ、この地は此れより我が神界ッ!
《|龍櫻樹鎮羽織螺界皇《桜魔呪術式・極式》(リュウオウジュシンハオラカイオウ)》!!」
全身に桜魔の書×夢想の魔導書×エルスタル・ヴォベの魔術書を宿す三目の化身を帯びた零時。
これぞ、桜魔呪術と夢幻術式、そして自然術式を一身に纏い、数多の力を発揮する零時の切り札であるユーベルコードである。
文字通りの全力を尽くすために、零時はリミッターを解除して限界を突破した。
「此れが俺様の桜魔の極式! 夢想は援護を頼む!」
「おっけーだよ」
空中を浮かびながら、零時は戦闘に突入する。
戦場内全ての敵の行動を妨害し得る、桜魔呪術式の真骨頂。
神聖の武器には龍櫻の花弁を舞わせて妨害し、結界術の災転禍巡により神鳴を封じ、夢想の魔人が眠りをもたらす力で移動を阻止する。
そして、零時が『上昇する白練』に肉薄する
「俺様の夢は、全世界最強最高の魔術師、だからこそこんな凄い術式を持つお前を凄いと思う」
「なにを……!」
『上昇する白練』は全身に纏う神聖の力を集め、迫る零時を迎撃するための光の剣を形成する。
眼前で強い敵愾心を向けてくる魔人へと、零時が問いかける。
「―――お前は其れを嗤うか? それとも別の感情を向けるか?」
「っ、僕は―――!」
零時は桜属性で召喚した桜の花弁を一塊にした櫻刀を手に、『上昇する白練』と切り結ぶ。
打ち合い、逸らし、受け流し。攻防の応酬を重ね、鍔迫り合う中、なお零時は問答を紡ぐ。
「でも、俺様はそんな凄いお前が欲しい。
主が居ないなら、お前が認められるぐらい凄い新しい主ってのになる為に!」
「貴様……君は……だが、僕は……!」
「さあ! 俺の全力を受け取りな!」
零時が最後に施すのは、自分自身への|全属性付与《エンチャント》。
多重詠唱で更に櫻刀へと魔力溜めて、拡張していく。
邪にこそ災厄を齎す断魔の刃は、『聖なる神の威』を以てしても弾かれることはない。
零時が『上昇する白練』へ全力の攻撃を叩き込む瞬間に合わせて……仲間たちの一斉攻撃が集結する。
「みなさん! 今です!」 文庫本を振っての声援するフリル。
「攻撃を集中させますねぇ」 祭器による砲撃と爆撃と重量攻撃を放つるこる。
「敵と味方……その間で交わされる敬意とは―――『全力で、己の最高のユーベルコードを以て撃破する』という事!
故に―――わたくしの現在所有するユーベルコードの中で、最も強大なユーベルコードを以て、貴方を撃破する!」 掌握した『物質』の射出するレヴィア。
「沈め、静寂の奥底に」 再装填した《眠り薬の魔弾》を放つ樒。
「……術式槍多重展開……ここで一気に叩き込む……」 術式制御された多属性による槍の弾幕を繰り出すメンカル。
「お疲れ様。そして、おやすみなさい」 そして、眠りをもたらす静かな狙撃を決めるルー。
猟兵たちの猛攻を浴び、『上昇する白練』は耐えきれず失墜する。
翼を損ない、そのまま機関部の床に……《黄薔薇開花・形あるもの全て掌握する鹿神》により再構築された猟兵の陣地へ叩きつけられる。
そして、零時が『上昇する白練』に切りかかる。
「いっっっけぇぇぇっっっ!!」
「ぐ、お、ああああっっっ!!」
神聖なる光剣で受け止めた『上昇する白練』は、しかしその勢いを受け止め切れず。
その手の光剣がへし折られた。
振り抜かれた櫻刀の刃が、狂気戦艦ごと『上昇する白練』を切り裂いた。
真っ二つに断たれた『神聖』の魔人は、絶叫を上げながら眩い閃光に包まれて消えて行った。
●試練を越えて。
狂気戦艦が轟沈する。
狂気戦艦の主であった『上昇する白練』が撃破されたことで、そして猟兵たちのユーベルコードの余波を受けて、その異様な屋敷は形状を維持できなくなったのだ。
ステンドグラスは砕け散り、賛美歌は途絶え、蒸気人形たちも海面に投げ出されていく。
猟兵たちは各々の手段で退艦し、その様子を遠巻きに見つめていた。
太陽が水平線に沈み、辺りは暗く静かな夜になっている。
遠くでは他の猟兵たちによる活躍で何隻もの狂気戦艦が沈んでいることだろう。
猟兵たちの活躍により、ドーバー海峡を封鎖していた『狂気艦隊』に穴が開いた。
これで、ブリテン島への上陸が可能となるだろう。
「さて、と……。俺様を認めてくれるかどうか」
そして、兎乃・零時の手元には一冊の魔導書が抱えられている。
魔人の打倒が叶ったことで残された、『神聖』の魔導書。
正規の手順を踏まずに二度打倒された形になる彼が、果たしてどうなっているのか。
第二の試練を繰り返すことになるのか、それとも主として認められているのか。
それは、再度開かねばわからない。
なにはともあれ。
激戦を乗り越え無事に任務を完遂した猟兵たちは、轟音を立てて沈んでいく狂気戦艦の最後を見届けてから帰路へと着くのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2023年12月15日
宿敵
『No-F3F3F2『上昇する白練』』
を撃破!
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