朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)はげんなりしていた。
まあ割りと、結構頻繁に、「白いほう」のユェーにげんなりすることが多い「黒いほう」のユェーであったが、今回はまた格別であろう。
万が一分裂して顔を合わせることがあれば一言二言言ってやりたいことは山ほどある。……と、そこまで考えて、ユェーは考えるのをやめた。たぶん一言二言言ってやったらその返答で自分が三倍疲れる未来を想像したからだ。……黙っていよう。それに尽きる。
そういうわけで、ユェーは諦めたようにテーブルの上に広がるそれに目を落とした。
テーブルの上には黒くてつやつやした衣が横たわっている。
コートでも仕立てればきっと素晴らしく暖かくなるだろう。そんな上等な衣だ。
だが……残念ながらその衣は、見るも無残な姿になり果てている。……丸いフォルムで。作られたそれ。
「……」
数時間前のことを、ユェーは思い出した。
「あぁ? ハロウィン?」
「そーよ! ゆぇパパは知らないの?」
ものすごく怪訝そうな顔をしたユェーに、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が可愛らしく頬を膨らませた。ルーシーの手には本日用の衣装を抱えている。
「いや、それくらいは知ってる。南瓜の祭りか何だか知らないが変な格好をしてうろうろする日……だろう」
俺的には全く興味の無いというか関係無い日だ。
言外にそう言って、ユェーは二度寝を決め込もうとする。何となく嫌な予感がするのは、別にユェーは黒と白で完全分離しているからではなく、一応記憶はつながっている一人の人間だからだ。だから、なんとなーく記憶がある。嫌なことにしかならない。さっさと逃げを決め込むユェーだが、その服の袖をぎゅむーッと握ってルーシーが止める。
「もう! だから、今日はそのハロウィンでしょう? だからね、仮装するの!」
「あぁ? 何で俺がそんなのを着ないといないんだ?」
「何でって……、ちょっと前にゆぇパパとお約束したじゃない。お互い用意した仮装を、一番最初にお互いにお披露目しようねって」
コスプレなんて趣味じゃない、と一蹴するユェーに、むくれたルーシーが言いつのった。いつもは割と黒いユェーのことも尊重するルーシーだけれども、今日は一歩も引かないぞ、という気概を感じる。
む。とユェーは袖をつかまれたままルーシーを見下ろす。そういえば……そうかもしれない。白い方が衣装を作ってお披露目すると約束した……気がする。
「いや、俺は全く関係ないだろ」
「関係なくないもん!」
「いーや、関係なくなくないな」
「関係なくなくなくないもん!」
「……」
ユェーは一呼吸、つく。
「別にアレが何しようが何着ようが俺には全く関係ない。それが何故俺があの衣装を着ないといけない? そんなに着替えがしたいなら、アレがいる時にすればいいだろう」
「ハロウィンは、今日なのよ? 今日しなきゃ、ただのコスプレじゃない」
「いや、今日でもただのコスプレだろうよ」
「む!」
ぷくーっ。とますますルーシーのほっぺが膨らむ。
「あの時お約束したのは白パパとだけれど、黒パパになっても覚えてるって知ってるんですからね! パパはパパでしょう? お・や・く・そ・く!」
どっちのパパも大好きなルーシーとしては、黒だから白だからといって譲るつもりはさらさらない。
ユェーはがりがりと己の頭を掻く。
「珍しく白いアレがダウンしたと思ったら……」
久しぶりに出てきたと思ったら途端にこれだ。愚痴の一つも言いたくなる。……そう、言いかけたところで、
「えっ」
ユェーの呟きを聞いて、ルーシーの表情が思わず揺れた。
「ダウン? 白パパはどうしてお休み中なの?」
「あーーーー」
しまった。そういう表情をされたら……面倒臭いだろう。
「それに……黒パパは大丈夫?」
一転、心配そうに聞かれるとどうにもユェーにとっては居心地が悪い。
「……精神的なダウンだから俺には影響は無い。アッチも明日になったら目覚めるだろう」
「精神的?」
「あー。なんか今回の件で、根を詰めてたらしいぞ。とはいえ放っておいても大丈夫だ」
「そう、大丈夫ならいいけれど……」
そう、とほっとしたように息をつくルーシー。ユェーもひとまずはほっとする。この隙にとりあえず逃げ出して……なんてユェーが退路の確保を始めようとすると、
「じゃあ! それならなおさら! おーやーくーそーくー! 良いわよね、仮装!」
「あーーー、めんどくさい! なにがじゃあ! だ。明日にならアッチが目覚めるだろうから明日にしろ明日に!!」
さっきまで俯いていたのに、一転してまた勢い取り戻したルーシーに思わずユェーは突っ込む。
「だって、ハロウィンは今日だし、一番最初にパパにお披露目したかったんだもの!」
「知るか!」
「明日じゃ最初じゃなくなっちゃう!」
「俺には良くわからん。見せるだけなら一番でも二番でもどっちでもいいだろう」
「どっちでもよくないわ、とっても大切な事なんだから!」
「じゃあ、明日まで我慢するんだな」
「それもい~~~や~~~! そんなのただのコスプレじゃない!」
「そうでなくともただのコスプレだろう!」
何を言っているんだ。お互いがそんな気持ちだっただろう。そしてこういう口での争いでは決着がつかないかもしれない。ルーシーはそう思ったのだろう。
「………………、それに今日、本当に楽しみにしてて……。ワガママかもしれないけれど、……ダメ?」
目を潤ませるルーシーに、そう来たか、とユェーは言葉を詰まらせた。
「ほら、黒ヒナさんもこう言っているし……」
「……」
「……」
「……フン。そんな顔してもやらんものはやらん」
つれない返事にルーシーはぎゅっと衣装を抱えていた手に力を籠める。なんだか悲しくなってしまう。衣装、頑張って用意したのに……。
衣装選びは楽しかった。何にしようか考えて、きっとユェーも喜んでくれるだろうと思っていた。そんな、楽しい思い出がよみがえって、それがまた心を重くする。息が止まりそうな沈黙の中、ルーシーは今にも泣きだしそうな顔で泣かずにルーシーは堪えるように唇をぎゅっと噛んだ。
それを見て、ユェーの方に乗った黒くて丸い黒雛が動いた。しきりにユェーの頬をくちばしでつつく。『泣かせてはダメ』と言っているようであった。というか痛い。割と本気でガスガスやってくる。
「あーーー」
やっぱりめんどくさい。とてもとても面倒臭い。別に本気でつつかれても黒雛をはたき落とせばそれで終わりなのはわかっている。けれどもその後のことも考えると……、
「はいはい、わかったわかった」
やってられない。ユェーは両手を挙げた。
「!! ……えへへ、ありがとう!」
とたんに、ルーシーの表情がぱぁっ。と明るくなる。早い。一瞬であった。
「何だかんだ黒パパもお優しいのよね」
「やっぱり着るのやめ……」
「じゃ、ルーシーも別部屋で着替えてくるからね!」
笑顔でとんでもないことをのたまうルーシーに、思わず言いかけたユェー。その言葉を制するように、ルーシーは歓声を上げてひらりとその場で一回転、駆け足で衣装を抱えて部屋を出ていった。
「……」
そして、引き返し損ねたユェーと勝ち誇ったようにニヨニヨしている黒雛が残された。
「……いや別に。ちっさいのがお願いしたからじゃないからな。あのまま拗ねられたらめんどうなだけで」
思わず呟く。呟いても一体だれがきいているというのか。「ふぅん?」とでもいうように、わざとらしく子首を傾げる黒雛のくちばしをユェーは指先で弾き飛ばす。
「アレが用意した衣装……そういえばあったな」
こうなってしまえば仕方がない。さっさと着て、さっさと終わらせるに限る。ユェーはそう思って、記憶を手繰る。そうして白いほうが夜なべして作っていた衣装を思い出したのであった。
「……」
ついでに作っていた時のなんとも緩んだ顔を思い出して、若干げんなりしたりもした。
そして衣装を発見し、「どうしてこんなデザインのものをこんなに気合入れて仕上げたのだろうか」と思わずつぶやいたユェーを、やっぱり楽しそうに黒雛が見るのでもう一回唇を指ではじいておくのであった。
「……どうでもいい」
結論、どうでもいい。この衣装に対して小言を言ったとしても、きっと三倍返しで反論が来るのは想像に難くなかった。
ユェー(白)が用意したのは、黒雛の着ぐるみだったのだ。
ユェーに残された選択肢は、諦めるか、諦めるかだけだったのである。
「ふんふんふんふんふーん」
ルーシーはご機嫌であった。用意していたのは『ガッコウ』の衣装だ。ブラウンの制服は、ルーシーが選んだもの。一目見てかっこいいと思っていたのだ。
しかも衣装は男物である。丈の短いズボンは履いたことがない、とまではいわないけれども割と珍しくて新鮮であった。だからなんだかそれだけでも楽しいし……、
「あら。……あら?」
ネクタイ、上手に結べるだろうか。いつもだったらユェーに泣きつくところだけれど、今日はいつもじゃない。素敵な仮装を見せて、ユェーをあっと驚かせたいのだ。なのでこんなこともあろうかと。用意していたメモ書きに沿って、鏡の前で四苦八苦しながらネクタイを結ぶ。
「それからそれから」
次は髪の毛。折角だからウィッグを用意した。これを被れば男の子に見えるかも? 丁寧に自分の髪をあげてウィッグをかけてみる。……ちょっと、やっぱりかわいいかもしれない。
「あっ、そうだ!」
きりりと。最後に眼鏡を装着。これでまじめな顔をすれば、男の子に見えるかも?
「ふふーん! もういいよ、パパ! びっくりしちゃわないでね!」
ご機嫌なルーシーの言葉に、「するかよ」なんて返答がある。それがOKの合図だ。
そうして二人は、感動の対面を果たし……、
「――パパ、黒ヒナさんだわ! なんてカワイイの……!!」
まず最初に歓声を上げたのはルーシーであった。ユェーの黒雛着ぐるみを見た瞬間、全力で駆け出しぼふんっ! と抱き着くようにしてユェーの黒雛に埋まった。
「すごいすごい! 毛並みも本当の黒ヒナさんみたい!」
「っ、と」
普段ならそんなことでぐらつくことなんてないユェーの体がちょっと揺れる。なかなかこの着ぐるみ、動きにくし丸くて大きい割に足元があれなので安定しないのだ。それでもルーシーが転ばないよう、しっかりと受け止めてくれていることをルーシーも知っている。
「はいはい。それは良かったな」
けれどもユェーは気のない風でそんなしれっとした返答をした。もっとも、かわいいだの言われても、どうでもいい、みたいな表情をしているが……着ぐるみに包まれている身としてはそれもかわいい! のであろう。
「……お前が褒められてる訳じゃないだろ?」
そしてユェーの頭の前ではなぜか本物黒雛が胸を張っていた。このどや顔。なかなか憎々しい。と思ったら、黒雛はもっていたフォークでユェーの前髪をつつく。
「あぁ? 自分もおめかしてる? ……あぁ、そうかよ」
「あら、黒ヒナさんもオシャレしてるのね? ふふ、かわいいわ!」
可愛いカボチャ飾りやリボンもあるよ! 胸を張る黒雛に、ルーシーは歓声を上げた。ちなみにユェーの胸にも向日葵とリボンが揺れていたが、ことさらユェーは主張しないことにした。
「……」
ひとしきりモフモフを堪能しているルーシーをユェーは見下ろす。ちっさい。のはいつも感じていることだが、今日は趣が違う。
「……髪が短い? 普段の服装と違うな」
いつまでももふもふ可愛いと言われるのも何だったので、ユェーは声をかける。
「学校? 学校の制服か、何で男なんだ?」
もしかして、学校に行きたいとか。そういう無意識の願望があったりするのだろうか。
……無くはないかもしれない。ユェーは思う。
同年代の友達と一緒に、何かを学ぶ。行ったことはないけれども、ユェーだってそういう場所があるというくらいのことは知っている。
そこで学ぶことは、たいていは人生の役には立たないかもしれない。それでも友達を作り、仲良くなったり喧嘩をしたりして過ごすことは決して悪いことではないとユェーは思うのだ。
もっとも、白いほうの主張としたら、「ルーシーちゃんと離れるなんてとんでもないしどこの馬の骨とも知れぬ輩にルーシーちゃんを預けるぐらいなら僕が勉強を教えればいい!」というかもしれない。
勿論、それもまたルーシーを大事に思っての言だろう。その後でも結局、「どうしてもルーシーちゃんがそうしたいなら……」と折れる未来まで想像できる。
だが、もしルーシーが学校に通いたいなどと言い出したら、自分はそれに最初から味方をしよう、と黒いほうのユェーは思ったのだ。別に大事に思ってるからなんかじゃない。客観的に見て、そういう経験もまた必要なことだろうと……、
「はっ、そうよ……じゃない。そうだよ。男の子の僕も悪くないでしょう?」
だというのに。
そんなユェーの親心……本人は否定するだろうが……を全く無視して、くるりとルーシーは黒雛から体を離して一回転した。
「前から見ていて、とーっても気になってたの……じゃない。なっていたんだ! 制服っていうのは、本当にかっこよくて素敵なデザインだよね!」
「……」
心配して損した。ユェーの眉が跳ねる。どうやら、デザインだけ気に入っているらしい。
もっとも、ルーシーに直接学校に行きたいか、なんて聞いたら「ゆぇパパの傍を離れるなんて!」と答えが返ってくるだろうな、ということはなんとなくユェーにも分っていたのだけれど。
そんなユェーの内心に全く気付くことなく、ルーシーもまた心の中で肩を竦めてみた。かわいく言ってみたものの、きっとパパは興味無いとか言いそうね、と思っていたのだ。
「ふーん。まぁいいじゃないか?」
だが。今日はいつもと違った。口ぶりはいつもの興味のなさそうな口ぶりだったけれども、その言葉は予想とは反していて。
「えっ」
「良く似合ってる」
そして、いつもはくしゃくしゃにルーシーの頭を撫でるその手が、
ウィッグを気遣って優しくルーシーの頭を撫でたので。
「……何だよ、俺が褒めたのそんなに珍しいか?」
思わず目を丸くしたルーシーに、ユェーが怪訝そうな顔で言う。
「だ、だって……」
いつもは、興味ないって……。
言いかけて、ルーシーは言葉を飲み込んだ。
それを言ってしまえば、ユェーはきっとそうだ、興味がないと、言ってしまうと思ったから。
だから……、
「……えへへ……。ありがとう」
嬉しそうに微笑んで、心からのお礼を言った。
「約束を守って下さったのも嬉しいわ、すごく」
「……」
その顔に、ユェーは頭を掻く。
「……まあ」
こいつが楽しんだのなら。その言葉は一つユェーは飲み込んで、
「今日みたいな日があっても、たまにはいいかもな」
クスリと、ユェーは笑って。
そうして微笑ましいハロウィンは過ぎていったのであった……。
●後日譚
「この世の終わりだ……」
黒いほうから白いほうに戻ったユェーは、部屋の隅で蹲っていた。小さく丸くなって、ルーシーもかくやという様子で不貞腐れていた。というかしくしく泣いていた。
「僕がお披露目したかった。ルーシーちゃんに僕が……」
白いほうのユェーからしてみれば、倒れるほど頑張って衣装を作り上げたのは自分である。すべては可愛いルーシーの顔を見るためで、かわいいルーシーに喜んでほしくて、笑顔が見たくて、やったことである。
だというのにお披露目会当日には寝込んでしまって。そりゃ、黒いほうが約束をすっぽかさなかったことはありがたいと思っていたけれど、それにしても肝心な笑顔を白いほうのユェーは見ることができなくて。記憶があるとかないとかそういう話ではないのだ。それよりもっと人間の尊厳的な何かが……。
「パ、パパ……」
ルーシーが若干絶句しながらもユェーの背中をさすってくれる。優しさが身にしみる。身に染みるからこそやっぱり逃してしまったものが悲しくてユェーは涙をこぼす。
そんなユェーを見かねたのか、
「えっと、ハロウィンは過ぎてしまったけれど……、今日もお披露目会、するのはどうかな?」
と、ルーシーは恐る恐る提案した。
「今年最初と最後のお披露目をパパにしてくれる?」
「!」
ルーシーの言葉に、ユェーはまるで救われた囚人のような顔をしていた。ゆっくりと顔を上げると、光を取り戻した瞳でルーシーを見る。
「白パパの黒ヒナさん姿も見たいし! ふふー」
「ああ……」
やっぱりルーシーちゃんはルーシーちゃんだ。感極まってユェーはルーシーを抱きしめる。
「勿論だよ! 待っていて、飛び切り凄い着ぐるみを用意したんだ!」
「……あ、うん」
知ってる。見たから。喉元まで出かかった言葉をルーシーは飲み込んだ。
「そうと決まったらこうしちゃいられないよ! ちょっと待っていてね、準備をしてくるから!」
うっきうきで部屋から飛び出していくユェーに、ルーシーは苦笑する。それじゃあ、着替えなきゃねえ。と少し遅くなってしまったハロウィン衣装を、再び手に取るのであった。
今日一日でルーシーはほんのちょっと大人になった、気がした。
「はーっ。可愛いです。天使です」
それでこれである。黒雛と化したユェーは、黒いほうとは違って非常に精力的である。
どこから持ってきたのかUDCのカメラ迄取り出して、右から左からルーシーの姿を収めている。あの着ぐるみであるというのに非常に動きも俊敏だ。
「ねえ、ゆぇパパ。もしルーシーが突然男の子になってしまっても、ゆぇパパは大事にしてくれる?」
そんなユェーを見ながら、ルーシーがふとそんなことを言った。きっと黒いほうであるならば、「男も女もどっちでもいい。興味ない」なんて言ったのかもしれないなあ。なんてルーシーは想像した。それは、ルーシーの性別に興味がないだけでルーシーに興味がないわけではないことは、ルーシーもちゃんと知っている。
「何を言っているんですか、ルーシーちゃんがルーシーちゃんであることには変わりがないじゃないですか! あ、いえ、もちろんルーシーちゃんが元に戻りたいとなったら全力を尽くしますよ! 命に代えてでも! でもルーシーちゃんがそれでいいというのなら、僕はまったく気にしません! ルーシーちゃんはルーシーちゃんでいるというわけでそれでいいので、ルーシーちゃんが好きな方で生きられるように、僕は全力を尽くします!」
果たして。くぁっ。と擬音語が付きそうなくらい勢い良く、ユェーは首を横に振る。言われた言葉はすさまじく勢いがあって早口であったが、言いたいことはきちんと全て伝わった。
「……うん」
その勢いに、思わずルーシーは頷く。
「黒パパと一緒……なんだね」
「はい? 何がですか?」
首を傾げるユェーに、ルーシーはひみつ、と首を横に振った。
白パパと黒パパ。
言葉も言い方も違うだろうけれども、
きっと中身は同じ。ルーシーが好きな方でいい、と二人のパパは言ってくれるだろう。
それがルーシーには、嬉しかったのだ。
「! ルーシーちゃんが僕に秘密なんて……」
けれども何やら勘違いしたのか、ユェーはショックを受けている。その顔にルーシーはくすりと笑う。
「うん、ひみつだよ」
「!」
ちょっぴり意地悪なことを言って、ルーシーはふるりとショートヘアーを揺らす。
今日は男の子のルーシーだから、それくらいのいたずらは……きっと許してくれるだろう。
ちなみに。
「もし学校に行きたいっていったらどうする?」とルーシーが聞いた時、白いユェーは散々迷った挙句最後に黒いユェーが思ったことをそっくりそのまま言った。
後にそれを思い出して黒いほうは自分への理解度の高さにちょっと頭を抱えたし、ルーシーはとても嬉しかったのであった……。
成功
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