7
白虎租界任侠伝~厄災【Q】を阻止せよ

#獣人戦線 #人民租界 #ワルシャワ条約機構 #中国戦線 #始祖人狼 #白虎租界任侠伝 #白虎幇 #石化 #オーバーロード歓迎 #団体様のご参加大歓迎 #プレイングボーナスを要確認

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#獣人戦線
🔒
#人民租界
🔒
#ワルシャワ条約機構
🔒
#中国戦線
🔒
#始祖人狼
#白虎租界任侠伝
#白虎幇
#石化
#オーバーロード歓迎
#団体様のご参加大歓迎
#プレイングボーナスを要確認


0




 ――獣人戦線・中国大陸。
 オブリビオン超大国の人民租界軍が支配する中国大陸には『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』と呼ばれるタイプの都市……ひとつの山を改造した仙術サイバー都市が宝石をちりばめたかのように電子ネオン看板を煌めかせている。
 その『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』にはサーバー任侠マフィアのトラ達の互助組織『|幇《パン》』が普段は幅を利かせて人民租界軍から市民を守っている。
 だが、この日の『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』に訪れた厄災は、人民租界軍ではなく今まで経験したことのない未曽有の危機であった。

「うわああぁぁっ! 身体が、石になって、く……!」
「助けて! 両足がもう石になって動けないの! 置いていかないで!」
「石になった奴に近付くな! 石化は『感染』するぞ!」

 突如、街の獣人達の身体が石化してゆく怪奇現象が発生したのだ。
 それは石化した獣人達を中心に『感染拡大』してゆき、あっという間に『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』全体を蝕んでゆく。
 これに白虎の獣人達だけで構成された『|白虎幇《パイフーパン》』も事態の収拾に駆り出されるが、石化の原因や解決方法の糸口が見えずに次々とひとり、またひとりと石化現象の餌食になってゆく。
「ああ、もう、駄目だ……! 猟兵が、猟兵がいたら、未来が変わったかもしれねぇのに……クソがァ!!」
 最後のひとりが悔しさを滲ませた絶叫を響かせて、すぐに沈黙してしまった。
 その様子を、仮面を被ったヤギめいた謎の獣人がじっと建物の屋根の上から眺めていた。
「……全ては、『始祖人狼』様の御意思のままに……」
 この獣人は、幽鬼のようにふらりと踵を返すと、『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』全体を石化の砂塵嵐で包み込んだ……。

 ――グリモアベース。
 蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)は頭上に浮かべているグリモアから予知の映像を投影し終えると、招集に応じてくれた猟兵達に今回の任務内容を伝達し始めた。
「今回は獣人戦線で【Q】を操る『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンの討伐をお願いしたいなって!」
 レモンの言葉に猟兵達の中には耳を疑う。
 有力敵ならいざ知らず、一介のオブリビオンが儀式魔術【Q】を扱うなんて!
「えっと、今回の討伐対象が操る不思議な力を便宜的に【Q】と呼ぶことになってるらしいんだけど……とにかく、その不思議な力で都市ひとつが丸々石化の危機に瀕しているんだよっ!」
 今から転送すれば、予知のような悲劇が起きる前に手を打てるので、今すぐに猟兵達は現地で今だ石化していない市民達の保護と避難をお願いしたい。
 なお、予知に登場していた『|白虎幇《パイフーパン》』を始めとするサイバー任侠マフィア以外にもサイキック宿星武侠、ヤクザ寵姫、中国サイバネ仙人などが自主的に市民を守ろうと奔走している。
 彼ら中国の獣人達は「信義と友情」をたいへん重んじる。故に街の人々を迅速になるべく沢山この危険から助け出すことができれば、この後に想定されるオブリビオン軍団との戦闘に協力してくれるだろう。

「それと今回の敵は中国大陸を支配する『人民租界軍』じゃなくて、ロシアを牛耳るワルシャワ条約機構に属する精強なオブリビオンのロシアンマフィアだよっ! 特に【Q】を操る『始祖人狼の使者』は猟兵達へ直接『石化の砂塵嵐』を展開してくるから気を付けてねっ!」
 レモンは早速、グリモアに輝きを宿して転送準備に取り掛かった。

 果たして、理と現実を捻じ曲げて不思議な現象を発生させる【Q】の厄災を前に、猟兵達はどうやって対処するのだろうか……?


七転 十五起
 獣人戦線強化月間キャンペーンを勝手に打ち出してのシナリオ公開です。
 ロシアからの刺客が中国大陸で巻き起こす厄災を阻止してください。
 なぎてん はねおきです。

●概要
 このシナリオ限定で『現地の獣人達と連携を取る』と、プレイングボーナスが発生します。

 第1章冒険フラグメントでは、厄災【Q】から市民の保護と救助を行います。
 街を襲っている【Q】は以下の通りです。
『都市周辺に砂塵嵐が吹き荒ぶ間、ワルシャワ条約機構に所属しない存在は石化する』
(※石化した対象に近付くほど石化の速度は増す)
 既に市民の一部が石化してしまっており、他の市民へ石化が伝播しています。
 石化は『始祖人狼の使者』を倒さない限り、回復できません。

 第2章集団戦。
 前章で味方につけた現地の獣人達と共に、いよいよ『始祖人狼の使者』達の拠点に乗り込みます!
 まずはボスを守る取り巻きとの戦いですが、彼らは全員『ワルシャワ条約機構の精鋭』です。
 第1章で仲間になってくれた人達がいなければ、熟練の猟兵でも勝利は難しいでしょう。

 第3章ボス戦。
『始祖人狼の使者』のボスとの決戦です。
 厄災【Q】を操る強いオブリビオンなので、第1章で仲間になってくれた人達の加勢がなければ勝利は難しいし、彼らの負傷度や残存状況によっては、攻略も難しくなることでしょう。
 この厄災【Q】への対処を行うと、プレイングボーナスが発生します。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしてます!
211




第1章 冒険 『シュミセンを襲う【Q】』

POW   :    建造物の崩落を力任せに防ぐ

SPD   :    一般人を間一髪で危険から助け出す

WIZ   :    異常現象に魔術や仙術で対抗する

イラスト:del

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――その日、とある『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』の外周に異変が起きた。
 初めはただ黄砂が風に待って漂ってきたのだと思った。
 しかし、それは『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』の外周をぐるっと取り囲むように吹き荒れると、都市に住まう獣人達に変化をもたらした。
 それは、肉体はおろかサイバネ部位も含めた身体全体が意思に変わってゆく奇妙な現象だった。
 獣人達は石化してしまった者達をどうにか出来ないかと介抱していたが、次第に介抱していた獣人達へ石化現象が伝染していった。
 これにより、石化現象は『石化している対象の傍に居続けると、対象の肉体の石化速度が加速する』ことが証明されたため、街中はたちまちパニックに陥ってしまった。

「まだ石化してない奴はこっちへ来い! 少しでも石化した奴は諦めろ! 家族の無事を願うなら、石化した奴は出来るだけ遠くへ離れてくれ……っ!」
 白虎達だけで構成されたサーバー任侠マフィアこと『|白虎幇《パイフーパン》』の首領は、未だ無事な市民達の避難誘導を率先して行っている。
 他の『|幇《パン》』や、この街の裏社会の住人であるサイキック宿星武侠、ヤクザ寵姫、中国サイバネ仙人達が一致団結して未曽有の危機に立ち向かっていた。
 だが、一向に石化への対策方法は目途が立たず、次第に避難誘導班の中にも石化に蝕まれるものが出始めた。
「ボス……俺ァもう駄目です……早く離れてくだせぇ。でないとボスに石化が感染しちまいやすよ……」
「くっ……すまん!」
 首領は苦渋の決断で部下をその場に置き去りにせざるを得なかった。
 こうして、ひとり、またひとりと脱落してゆく。

 そんな中、猟兵達は渦中へ転送されてきた。
 逃げ惑い、混乱する市民達とそれを避難させる者達を、猟兵達は果たしてどれだけ救うことが出来るのだろうか?
シルヴィ・フォーアンサー
……石化する砂嵐とか怖いね。
『そう思うならもう少し安全度の高い依頼を選んだほうがよいと思うが』
……モフモフのためだから仕方ない
『君のそのモフモフ推しはなんなのだろうな……』

使用するユーベル・コードの仕様につきキャバリアにのったままこんにちわ。
うっかり怪我させないようゆっくりとね。
混乱させたくないから猟兵であることと避難を手伝いに来たことを伝えるよ
顔が見たいなら問題ないからコックピット開けるけど。

スピーカーを使って声大きくして石化してる人達から遠い方へ誘導。
離れるのが嫌って人達がいるなら責任者の人達が
許可してくれるなら指定コードで言うこと聞いてくれないか試すけど。
一時的洗脳みたいなものだからね。



 シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)がクロムキャバリア《ミドガルズ》に登場したまま、件の街中へ転送してきた。
 突然のキャバリアの登場に、市民や現場の音頭を執っていた『|白虎幇《パイフーパン》』の構成員達がにわかに目を見張って驚く。
 しかし、シルヴィは機体の外部スピーカーから自身の肉声を獣人達へ伝えてゆく
『……驚かせてごめん。シルヴィは、シルヴィ・フォーアンサーって名前で、猟兵だよ。みんなを助けに来た。……白虎のマフィアのみんなとも、協力したい。いいかな?』
 シルヴィは彼らの信頼を獲得するべく、コクピットから少しだけ顔を覗かせた。
 金の長い髪と紅く輝く瞳、透き通った肌を視認した獣人達は、ようやく彼女を猟兵だと認識してくれた。

 シルヴィは恐慌状態になって騒ぎを起こす獣人達を重点的に諫めて回ることになった。
 石化していない勝機を保った市民達は『|白虎幇《パイフーパン》』の構成員達に任せてある。
 話し合いの結果、やはり危険が伴う箇所は猟兵が出張るべきであろうと。
「ヨル……石化する砂嵐とか怖いね」
 シルヴィの言葉に、ミドガルズ専用成人男性型サポートAIユニット『ヨルムンガンド』……通称ヨルが答えた。
『そう思うなら、もう少し安全度の高い依頼を選んだほうがよいと思うが』
「……モフモフのためだから仕方ない」
 即答だった。反応速度は過去最速だと、ヨルはこれまでと比較して確信する。
『了解した。しかしどうして、君のそのモフモフ推しはなんなのだろうな……』
 ヨルは主人の嗜好に少々呆れながらも、心なしか口元が緩んでいる事に前向きな印象を抱いていた。

『モフモフのみんな……避難場所は、あのおっきな赤い屋根の遊郭だよ。でも、身体の一部でも石化してる人はごめんね。あとで必ず元に戻してあげるから。今は無事なモフモフのみんなのために、出来るだけ避難所から離れててくれるかな?』
 シルヴィが機体の外部スピーカーの大音量で、街中に避難所の場所を知らせてゆく。
 これだけでも、随分と街中の混乱がマシになっていった。
 恐らく、何処へ逃げていいか皆が右往左往していたのだろう。
 その過程で不用意な石化感染に遭い、余計に感染範囲が拡大していた要因にもなっていた。
 まずはここを抑えることがマストな事例である。

 しかし、獣人達にも情がある。時に情は、生命の危機本能を無視して不合理な行動をとらせてしまう。
「ママは早く、逃げて……! あたしに触ると、ママまで石になっちゃうよ!」
「いやよ! 娘を置いて逃げる母親がいるものですか! ほら、避難所へ一緒に行きましょう!?」
 シルヴィは下半身が既に石化した少女……16,17歳ほどの階梯2のキツネの娘を背負う、同じく階梯2のキツネの母親を見かけた。幸い、母親は石化は全くないが、娘は母親がその重さに耐えながら歩を進めるたびに石化がどんどん進んでゆくのが見て取れた。
 たまらずシルヴィは母娘に声を掛けた。
『キツネのお母さん、その娘さんは避難所へ連れていけないよ。避難しているみんなが石化しちゃうから』
「猟兵の貴女まで酷い事を言うのっ? 私は夫を戦争で先立たれて……もうこの|娘《こ》しかいないんです! お願いです! 娘と一緒に避難させてください! 離れ離れは、もう嫌なのよ!」
 母親はただ、娘と一緒にいたい、守りたいという気持ちで彼女を背負っているのだろう。
 だがそれしか今は見えていない。周りにどういった影響を及ぼすかまでは思考が回らない。
 故に、シルヴィは冷静に、冷淡に告げた。
『……駄目。このままじゃお母さんも石になっちゃうから。きっと娘さんも悲しむ』
「そうだよ、ママ……私はママや他のみんなに迷惑掛けたくないよ……」
 涙を流す娘に、母親は憔悴しきった表情で立ち尽くしてしまう。
「じゃあ……どうすればいいんですか? この未曾有の絶望を、貴女ならどうにかしてくれるんですか……!?」
 目を血走らせ、キャバリアの顔を見上げる母親。
 シルヴィはコクピット内部から、抑揚のない語気で言葉を紡ぐ。
『今は、ごめん。シルヴィは、すぐにどうすることもできない。娘さんも、このまま石になっちゃう、と思う』
「……っ!」
 一瞬、憎悪の籠った視線をヨルムンガンドへ突き刺す母親。
 しかし、シルヴィはこうも言った。
『……けど、この厄災を引き起こすオブリビオンは、絶対にシルヴィが倒す。倒して、絶対に石化したみんなを元に戻すよ』
 ミドガルズの巨大な鋼鉄の小指が、キツネの母娘の前に差し出される。
『……約束、するから。ゆびきりげんまん、しよ?』
「あ、うっ、うああ……あああああぁぁぁ……っ!」
 母親はぐしゃぐしゃの表情で、そのまま泣き崩れてしまう。
 ここで娘がシルヴィへ願い出た。
「ねえ、猟兵さん? ママを、ユーベルコードで避難所まで連れていってほしいの……こんな様子じゃ、独りで迎えそうにないから。……お願い、します」
 娘の石化はもはや下半身と両腕まで浸食しており、まるで生きた胸像彫刻のようになっていた。
 意識を失う寸前の彼女の願いを、シルヴィは無碍にするわけにもいかない。
『……このユーベルコード、一時的洗脳みたいなものだからね。シルヴィも極力使いたくなかった、けど』
 切迫した事態に、もはや判断の是非はない。
 シルヴィはスピーカー越しに、母親へ“命令”した。

『言 う 事 を 聞 け』

 この瞬間、搭乗中のキャバリアから洗脳電波を発射する事で、シルヴィに有利な行動を対象に取らせる。
 母親は背負っていた娘を丁寧に建物の壁に寄りかからせて下ろした後、夢遊病者めいて避難所へゆらゆらと歩いてゆくのだった。
「……ママを、よろしくお願い、しま……」
 地面に下ろされた娘は、シルヴィにお礼を言い切る前に完全に石化を果たしてしまった。

『心拍数並びに血中アドレナリン濃度の急激な上昇を確認……シルヴィ、大丈夫か』
 ヨルの呼びかけに、シルヴィは普段通り抑揚なく、しかしどこか思い詰めた声色で返答した。
「……大丈夫。問題ない。……うん、シルヴィは、大丈夫……」
 コクピット内部のモニターに映し出された、都市の外周を覆う砂嵐をシルヴィはじっと見詰めていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨飾・樒
始祖人狼の使者、こんなことが出来るなんて、厄介な敵
落ち着いて対処しないと、助けられない

まだ石化していない市民を冷静に説得しながら、避難誘導する
石化が始まると防げないこと、伝播することは避けられない
でも元凶を仕留めれば助けられる、絶対に助ける、約束する
失敗すればみんな石になる、承知の上で私達猟兵はここに来てるから
石化している人もしていない人も全員で生還するために、落ち着いて行動してほしい

身体が石になっていくのは怖いと思う、錯乱する人もいるかもしれない
それでも"眠り薬の魔弾"を使うのは止めなきゃいけないものがあるときだけ
加減しても危険だし市民に向けて撃つことはしない、絶対に助けるって約束したから



 雨飾・樒(Dormouse・f41764)が渦中の都市へ転送された。
 既に周囲は恐慌状態だ。石化した獣人達は助けを求めて彷徨うものの、無事な獣人達は彼らへ攻撃してでも感染を防ごうと小競り合いまで起きている。
 雨飾にまず必要な事は、この“戦地”で如何に冷静さを保っていられるかであった。
(私が落ち着いて対処しないと、助けられない。それにしても始祖人狼の使者、こんなことが出来るなんて、厄介な敵)
 現状、都市外周をぐるりと吹き荒ぶ砂塵嵐を止める手立てはない。
 ならば目の前の小競り合いを今すぐ止めなくては。
「待って! 助けてって言ってるだけでしょ!」
「来ないでよ! 右手が石化してるじゃないのよ! 感染するじゃない!」
 身体のごく一部が石化しただけで、空き缶ゴミを投げつけられる分断の真ん中に、雨飾りが唐突に割って入った。
「ここで争っていても意味がない。無事な獣人達は速やかに避難所へ急行。石化が始まった獣人達は生存者のために少しでも避難所から距離を取るように。それが最善だ」
 この通達に無事な獣人達も石化が始まった獣人達は、余計にいがみ合いだす。
「こいつ等が勝手に付きまとうんだ! 今すぐに避難所に行きたいのに、付いてくるから迷惑なんだよ!」
「だからって暴力を振るうなんてあんまりだ! 自分が肉食獣のオオカミだからって草食動物のヒツジをしいたげていいとか日頃から思ってるから酷いことが出来るんじゃないのか!?」
 いよいよ対立が激化してゆく中、堪忍袋の緒が切れた雨飾が一喝した。
「そこまでだ! 確かに現状、石化が始まると防げない。伝播する事を止められないし避けられない。でも元凶を仕留めれば助けられる。間違いない事実だ。だから絶対に助ける、約束する」
 真っ直ぐに訴えかける雨飾。
 背の低いネズミの少女兵の叱責を受け、両陣営はひとまず声を荒げる事は止めてくれた。
 しかし、いつまでたっても睨み合いは続いている。
 こうなってくると雨飾も大きな溜息を吐かざるを得ない。
「……睨み合うのは自由だ。しかしこのままだとみんな石になる。勿論、私を含めた猟兵達が任務に失敗すれば、この街は猟兵達の石像が並ぶことになる。それを承知の上で私達猟兵はここに来てるから」
 誠実な対応。
 雨飾の説得から滲み出る『この街を救いたい』という想いの強さから想起させるのは、誠実という言葉だった。
「お願いだ。石化している人もしていない人も全員で生還するために、落ち着いて行動してほしい」
 そして真っ二つに別れたグループ双方に雨飾が頭を下げてしまうのなら、それぞれはもういがみ合うことが無益だと理解するしかなかった。
 面を上げた雨飾は石化してゆく獣人達へ敢えて歩み寄ると、精一杯の想いを言葉にして伝えてゆく。
「身体が石になっていくのは怖いと思う、錯乱する人もいるかもしれない。でも私達猟兵達は何度も世界の危機を乗り越えて、沢山の人々の絶望を打ち破ってきた。どうか、私達を信じて」
 獣人達は口々に目を潤ませて感謝の言葉を雨飾に零す。
 こうしてようやく、互いのグループは素直に指示に従って行動を移す。
(……よかった)
 表には決して出さなかったが、どうしようもなくなったら一般人相手にユーベルコードで鎮圧することも考慮していたのだが。
(それでも“|眠り薬の魔弾《ヒプノティク》”を使うのは、止めなきゃいけないものがあるときだけ。加減しても危険だし市民に向けて撃つことはしない、絶対に助けるって約束したから)
 その雨飾の気高き志は、必ずやこの厄災【Q】の歯止めになるであろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブ歓迎

石になっちゃった人は今はマリアの光でも治せない……それなら、少しでも動ける人たちに逃げてもらわないと……!

ユーベルコードの効果で、石化の感染する時間の流れを遅くすれば、無事な人たちは安全に逃げられるよね。

怪我してる人、小さな子やお年寄りはマリアが念動力で運んであげるから、サイキックの人達も手伝って!
虎さんやサイボーグさん達は邪魔なものをどかして道を広げてくれるかな?
他の人もみんな、助け合いながら逃げて行ってね。

石になっちゃった人は絶対にマリア達がなんとかするから、今はこれ以上被害者を増やさないことだけ考えて……!
大丈夫、マリアは聖者だから……ちゃんとみんな助けるからね!



 クリスタリアンの聖者であるアヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)は、街の至る所で石像と化して佇む獣人達を目の当たりにして、思わず唇をぎゅっと真一文字に結んでしまう。
「グリモアベースでは無駄だって、言われたけど……でも……!」
 アヴァロマリアは石像の前で祈りを捧げると、己の身体の中から放たれる聖なる輝きを照射してみせた。
 普段ならこれで他人の怪我や病気が快癒するはずだが、獣人達を一向に石化から解除する事は出来なかった。
「やっぱり……石になっちゃった人は今はマリアの光でも治せない……それなら、少しでも動ける人たちに逃げてもらわないと……!」
 くよくよなんてしてられない。今はできる事を全力で打ち出すしかないのだから。
「このまま避難誘導しても、時間の流れとともにいずれみんな石化しちゃう……でも、マリアの念動力なら、時間だって動かせるんだから!」
 アヴァロマリアの『みんなを救いたい』という強い願いがユーベルコードへ昇華すると、なんとこの街全体を聖なる光が氾濫してゆくではないか。
 聖なる光は念動力が織り込まれ、この導きの輝きを浴びた獣人達の『時間の流れ』を彼女は変更できてしまうのだ。
「お願い、『|時の針は指先で踊る《オン・シャオン・スヴァーハ》』……! みんなの石化の感染する時間の流れを遅くして……!」
 都市全体を包み込む光が引いてゆく。
 目を瞑っていた獣人達は自分の身体が軽くなっていくのを感じた。
「あれ? なんだか身体が動きやすい!」
「一瞬、とても暖かい何かに包まれたわ……」
 獣人達は自分の身体に何が起きたかは理解できなかったが、本能で石化への耐性を得られたことを理解できたようだ。
 そしてアヴァロマリアはそんな彼らへ声をかけて回っていた。
「無事な人たちは安全な場所まで移動して! マリアの念動力でみんなの石化する速度を遅くしたから、慌てずに避難してね!」
 獣人達は彼女の指示に従い、各避難所へ向かっていった。
 とは、いえアヴァロマリアだけでは街全体の獣人達の交通整理を全うできずにいた。
 そこでアヴァロマリアは更に方々へ声をかけてゆく事にした。
「怪我してる人、小さな子やお年寄りはマリアが念動力で運んであげるから、サイキック仙人の人達も手伝って! それと虎さんやサイボーグさん達は邪魔なものをどかして、道を広げてくれるかな? 他の人もみんな、助け合いながら逃げていってね」
 石化の感染速度を操作してくれたアヴァロマリアへの恩義を返すべく、『|白虎幇《パイフーパン》』を始めとする街の裏社会の獣人達は彼女の陣頭指揮通りにキビキビと行動してくれた。
「マリア姐さん、こっちは終わりやした!」
「次は如何いたしやしょうか?」
「オレ達の事はマリア姐さんの手足だと思ってコキ使ってくだせぇ!」
 サイバー武侠マフィアの白虎の若衆のソンケイを集めていたアヴァロマリアは、いつの間にか街のチンピラ達も巻き込んで急造の救護班を結成していた。
 アヴァロマリアは年上の獣人達が頭を下げる光景に少々戸惑いながらも、毅然と彼らへ指示を飛ばした。
「石になっちゃった人は絶対にマリア達がなんとかするから、今はこれ以上、被害者を増やさないことだけ考えて……! 今やっちゃいけないのは、石化してないみんなと石化しかかってるみんなとの分断……この恐怖のせいで、そんな悲しい事が起こっちゃ駄目だから。白虎のみんなは、そういういざこざを見かけたら鎮めてあげて!」
「「へぃ! ヨロコンデー!」」
 こうして白虎達は逃げ遅れた獣人達の捜索と恐慌状態で我を失っている獣人達の鎮圧に乗り出す。
 彼らを送り出したアヴァロマリアは溜息を吐くと、街の外を覆う砂塵嵐を眺め、小さく首を縦に振った。
「みんな、怖いよね……身体がどんどん動かなくなって、冷たくなって。しかもそれが感染しちゃう……だから逃げ出したり遠ざけたがるのも無理はないけど……でも、これで争いが生まれるなら。むしろそれを含めての目論見だとしたら。『始祖人狼の使者』は……相当狡猾な相手だね……」
 今までも厄災【Q】で色々な現象が発生した事例が報告されている。
 だが、ここまで街の獣人達の心身を弄ぶような事例は稀である。
 人一倍他者の救済を強く願うアヴァロマリアは、この最悪の事態を引き起こす相手がいる事こそがショックでならない。
「でもマリアは世界を救うの。だから、こんな悲劇は絶対に食い止めなくっちゃ。大丈夫、マリアは聖者だから……ちゃんとみんな助けるからね!」
 その決意はアヴァロマリアの夢……そして自身に課した呪縛である。
 彼女は自身に『すべての世界を救いたい』という命題を無意識に課している。
 しかも本当に世界救済を実現できるための埒外の力――“|罪深き刃《ユーベルコード》”を彼女は持っているので、その熱量は日に日に増すばかり。
 そして地獄のような絶望を前にクリスタリアンの少女は、己の無垢なる“|希望《よくぼう》”を満たすべく、聖女としての役割に奔走してゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
今回相棒鸚鵡は懐で待機
作戦上手くいくよに祈ってユキエ

感染する石化かー呪いだな
移動はUC活用
先ず白虎幇に接触し手早く【情報収集】
未石化の住民避難を最優先
石化者は置き去りにするが
敵首謀者を倒せば回復見込み有り
なので動ける者を確保、救助
と、目的告げ行動すりあわせ
小柄な幇メンバー1名一緒ならオレが運べるし信用度上がって避難させやすいなァ
とお願いしてみる

捜索中は【野生の勘と地形の利用】で、砂嵐到達経路避け【念動力】で物理的に抵抗

避難所へ誘導は【情報伝達と催眠術】も少し活用
単に逃げ遅れならともかく
石化してるのと一緒だと揉めるよな…
感情を抑え正攻法
助かるのを優先
後で必ず再会させるから今は堪えてくれ

アドリブ可



 石化の厄災【Q】の渦中に呑み込まれた『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』にて、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)の表情は険しく、眉間にしわを寄せて状況判断に努める。
「感染する石化かー。呪いの類か何かだな。いや、もっと上位の概念か? 要するに今のオレではどうしようもできねーのな」
 グリモアベースでのブリーフィングにて、石化の阻止は『始祖人狼の使者』の撃破だけだと伝達されていた。
 故に砂嵐を念動力でどうこうしたところで石化を防ぐことが出来ない事くらい、鹿村の思考から簡単に導き出されてしまう。
「となると、流石に厳しいかもな? ユキエ、今回はオレの懐の中で大人しくしててくれよな。作戦上手くいくように祈ってて」
 相棒の白鸚鵡を服の中に押し込んだ鹿村は、早速あたりをうろつく白虎達に声をかけた。
「あんたら、『|白虎幇《パイフーパン》』か? オレは猟兵だ。今、避難状況はどうなってる?」
 猟兵の名を出したことで白虎達はスムーズに取次ぎが行われ、この『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』の避難所周辺の情報収集をしてくれた。
「今、確認が取れやしたぜ。南と東は滞りなく。ですが、上層部が収集ついてねぇみたいですね。オレら下っ端は、上へは行けませんので」
「上? ああ……」
 鹿村が『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』の山頂の都市部を見上げた。
 確かに、下層の庶民の避難だけではなく山頂付近の富裕層もきっとパニックになっている事だろう。
「だったらオレが見てくるよ。白虎達は引き続き、下層のみんなを面倒見てくれ。あと、そっちの若い奴をオレの後を追わせて上へ登らせてくれる? 何かあったらオレの事を出していいから」
「へい。かしこまりやした。でしたら、うちの新入りを向かわせます。猟兵の旦那もお気をつけて」
 互いに奥ゆかしくオジギを交わしたのち、鹿村はユーベルコードを詠唱してみせた。
「寄せの術……うかみの渡り足、ここへ。さて、行くかな?」
 ユーベルコード『瑞渡り』……鹿村の身体部位ひとつをどんな場所でも平地同様に歩行できるように変異させる、先祖由来の口寄せ術。ゆえに鹿村は靴を脱いで裸足になると、その足裏にタコのような吸盤が生えてきた。
「んじゃ、一気に山頂までダッシュしてくっかね」
 ほぼ垂直の山の崖を鹿村は何事もないかのように、足裏の吸盤で張り付いて駆け上がりはじめる。
 重力が狂ったかのような錯覚を受けるほどすんなりと崖を歩いてゆけば、あっという間に山頂の富裕層が住む区画へ到着した。
 そこは下層よりも酷い有様だった。
 山頂はもとより逃げ場所が限られているせいか、石化しかけた獣人達と未石化の獣人達が激しくぶつかり合っていたのだ。
「こっち来んじゃねぇよ! 巻き込む気か!」
「私達を見捨てる気か、薄情者!」
 恐らく情報が正しく伝わってないのだろう。
 大混乱の上層街の治安は部外者の鹿村の目からしても最悪な状況まで落ちてしまっていた。
 なので鹿村がまず行ったのは喧嘩の仲裁だった。
「おい、あんたらそこまでにしておけって。猟兵のオレが来たんだ、もう争うなよなー?」
 突如現れた羅刹の青年に、獣人達は怪訝な視線を一斉に向ける。
 まるで部外者は黙ってろと言いたげな排他的行動に、思わず鹿村は苦笑いを浮かべてしまう。
 しかし、彼らへ正しい情報を伝えるべく必死に説得を試みた。
「未石化の住民避難を最優先、石化者は今は置き去りにするが敵首謀者を倒せば回復する見込みが有るんだ。なので動ける者を確保、救助って感じで動いてほしい。喧嘩してても、このままじゃ全員が石像になっちまうからな」
 富裕層の獣人達は殴り合う手を止め、釈然としない態度で狼狽する。
 どうやら気位が高すぎて他人を敬う事に欠けているようだ……。
 そこへ、白虎達から派遣された新入り白虎がサイバー軽トラに乗って山頂へ駆け付けた。
「猟兵の旦那、早すぎますって! つかお偉いさん方、無事な人は下山してください! 下層はまだまだ避難所として使える場所が余ってますぜ!」
 白虎の言葉に、一部の富裕層は拒絶反応を示すが背に腹は代えられない。
 上層を石化しかかっている獣人達で固めて、なるべく被害を抑えるというのが街全体の方針に傾きつつあると白虎が言うのだ。
 鹿村はこれに首肯し、富裕層の輸送に名乗りでた。
「単に逃げ遅れならともかく、石化してるのと一緒だと揉めるよな……でも必ずこの街の厄災は食い止める。後で必ず再会させるから今は堪えてくれ」
 鹿村は富裕層の獣人達に強く訴えることで、どうにか無事な彼らの下山への理解を得られた。
 そしてユーベルコードで崖を何往復しながら、念動力で獣人達を一気に浮かばせて下山させてゆく。
 白虎の新入りも軽トラの荷台に獣人達を乗せてピストン輸送に励む。
 こうして、徐々に未石化と石化済みの獣人達の輸送が順調に進んでゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
竜眼号搭乗

大量の石化被害…砂嵐が吹くと石化が発動する…こりゃ一種の概念攻撃か
理屈じゃなくて砂嵐が起きたら石化が起こるという一種のルールみたいなもんか
……ぐぅぅぅぅ!!(これからやる事考えるとこれしか思いつかなくて崩れ落ちた
「ご主人サマの考えてる事判るよ☆それならもう…あれが使えるよね♥」
うっがぁぁぁ!!

絶望と悲しみのUC発動
「「やーっはぁぁぁぁ!!」」
【属性攻撃・念動力・弾幕】
水の弾幕(雨)を周囲に都市周辺に展開
更に水と念動力の障壁で砂嵐の原因である砂を通させない

地面を固め外部からの砂を防げば…少しは砂嵐防げるか…?(片翼展開しロッド掴み属性強化

【情報収集・視力・空中戦】
散開し都市構造把握
石化してない市民の捕捉

空より飛来する幼女軍団が市民を保護して安全な場所へと避難誘導もとい運搬

【浄化】
石化が始まってる人は一か所に集めてく
浄化の力で石化発生を少しでも遅らせようとしつつ石化が始まった幼女は自ら消滅
「全員助けるぞ☆」
「石になった人も後でちゃんと助けるぞ☆」
「だから今は避難の時間だぞ☆」



 砂塵嵐に外周を覆われた『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』の上空に、巨大な飛空戦艦が忽然と出現した。カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が所有する帝竜大戦艦『竜眼号』である。
「大量の石化被害……砂嵐が吹くと石化が発動する……。こりゃ一種の概念攻撃か。理屈じゃなくて『砂嵐が起きたら石化が起こる』っつー、一種のルールみたいなもんか。つまり……ぐぅぅぅぅ!!」
 カシムは司令室のモニターを眺めながら頭を抱えた。
 この状況での最善手がカシムにとって最悪のそれだと、一瞬で理解してしまったからだ。
 そこへ相棒のメルシーが司令室のドアをビーム大鎌剣ハルペーでぶち破り、その隙間から顔を出した。
「ハァイ☆ ご主人サマ☆」
「ギャアアァァァアッ! シャイニングゥゥゥッ!?」
「ご主人サマの考えてる事判るよ☆ それならもう……あれを使うっきゃないよね♥」
「アッー!!」
 こうして魔力を絞り尽くされたカシムの犠牲を払って、メルシーは幼女メルシーとなって2000万以上の超軍団にまで増殖、上空から降下作戦を決行するのだった。
「「カワバンガ!!」」
「「ヤァァバダァァバドゥゥゥ!!」」
 まず幼女軍団が行ったのは、砂塵嵐で舞う砂塵の除去であった。
 量産した魔砲カドゥケウスで水属性魔弾を乱射する事で疑似的な雨を再現、これで砂塵の影響を抑え込もうとした。
 しかし……。
「うわぁぁ! メルシーが石になっちゃう~!」
「なんで~!? 砂塵の影響を抑えれば大丈夫じゃなかったの~!」
「もう、メルシーはダメっぽい……みんな、任せたよ……☆」
 この目論見は見当違いであった。
 疑似雨の効果は全く現れないどころか、厄災【Q】を直接阻害したことで優先的に幼女軍団が石化の標的になってしまい、2000万の大軍があっという間に石像になって墜落して粉砕してしまう。
「マジかよ……だったら、僕が地面を固め外部からの砂を防げば……少しは砂嵐を防げるか……?」
 カシムは真の姿を曝け出し、黒竜の片翼を背中に顕現させて金の瞳でモニターを見詰める。
 そしてヴァルギリオス・ロッドで砂塵嵐に抵抗しようとした瞬間、なんとカシムまで石化が進行し始めたではないか!
「なに……? まずい! これは……『砂塵嵐に直接働きかけるのは悪手』だ!」
 石化してゆく黒竜の片翼をカシムは強引に念動力で引きちぎると、真の姿を解除した。
 すると途端に石化の影響は止まった。
 先程の聖者の猟兵が獣人達の感染度合いを遅らせることが出来たのは、聖者の癒しの光が砂塵嵐自体には手を出していないからだ。あくまで獣人達への作用に限定される。
 しかしカシムは厄災【Q】そのものに手を出した。この【Q】がルールだと分かっていたのなら、いやわかっていたからこそ、カシムの性分ではいずれこの結果に至っていただろう。
 それほどまでに【Q】とは、何よりも絶対の最上規範であり、有象無象を捻じ曲げる鉄則なのだ。
 これに対抗するためには、規定された事項を達しない限り解除されない。
 例外は、一切存在しない。
「はぁ……はぁ……だが……どうやら……猟兵は『常の姿』と『真の姿』を切り替える事で……石化の感染度合いがリセットされるみてーだな?」
 真の姿を解除したことで、引きちぎった背中の片欲も消滅。艦内のカシムに石化のリスクは無くなった。
 これは猟兵にとって有益な情報である。
 とはいえ、既に壊滅状態の幼女軍団は手遅れだ。
 こうなったら、残る頭数で避難誘導に徹するしかない。
「全員助けるぞ☆」
「石になった人も後でちゃんと助けるぞ☆」
「だから今は避難の時間だぞ☆」
 恐慌状態で混乱する者や身内が石化して離れたがらない者、あるいは|諍《いさか》いに巻き込まれて怪我をして動けない者など、幼女軍団は上空から捜索して猛禽類めいてピックアップしてゆく。
「くそ……動ける幼女軍団は1000分の1以下か……くそっ!」
 元が約2000万人いるので、それでも十分な頭数を誇るメルシー幼女軍団であるが、石化してしまった分身体を放置するわけにはいかずに消滅させていく。
 その数の多さに、カシムは厄災【Q】を企てた『始祖人狼の使者』へ強い憎悪を抱かざるを得なかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

皇・絶華
おお
白虎幇達も健在だな!

よしさっちゃん!彼らと共に市民を助けるぞ!
「分かったぞ主様!…って主様…その持ってるのは…ま、まさか…!?」
当然分かっているだろう!今こそ圧倒的なパワーの出番だ!
「やっぱりぃぃぃ!?」
UC発動!
白虎の皆さんや勇士達にも振舞う!
「白虎さん達がもりもりマッチョにー!?」

くっ…我がチョコでも石化を癒す事ができないとは…!だが多少は防ぐ助けにはなる筈だ!動けない獣人にはチョコを振舞い回復(?)させる!

石化が始まった者は離れるのだ!安心しろ…この惨劇を引き起こした者には私が裁きを与え…必ず元に戻す!

この私も【Q】を発生させてやる!
【Q】:チョコは世界を救う

「ぴぇぇ!?」



 皇・絶華(影月・f40792)は『|白虎幇《パイフーパン》』と久々の再会を果たして、早速彼らに激マズ漢方チョコを振舞ってみせた。
「おお! 白虎幇達も健在だな! さあ、私のチョコを食べて石化に負けない身体を手に入れるのだ!」
「「オエーッ!!」」
「やっぱりやりやがったーっ!!」
 下僕のサートゥルヌスはもはや鉄板の流れにツッコミを入れざるを得ない。
 当然のように悶絶する白虎達。しかし次の瞬間、その肉体がもりもりと肥大化してゆくではないか。
「うわぁぁ! 白虎さん達がもりもりマッチョにー!?」
「見よ、さっちゃん! これが、チョコのパワーだ!」
 絶華のユーベルコードでもある激マズ漢方薬チョコと狂気カカオ汁を摂取した対象は、死すら一時的に克服する無敵の肉体を獲得できてしまうのだ。
 しかし、それでも厄災【Q】の石化現象だけは抑制できなかった。
「くっ……我がチョコでも石化を阻止できないとは……! だが多少は防ぐ助けにはなる筈だ! そう、この石化現象を『攻撃』と定義するなら、私のチョコを食べれば一時的だが石化が快癒する! つまり、石化で動けない獣人にはチョコを振舞い回復させればヨシ! さあ、そこの右腕が石化したウサギさん! そういう事なので私のカカオ汁を飲み込め!」
「ギャアアァァァッ! マッズウウウゥゥッ!?」
「主様! もはやそれはオブリビオンのやる事ですって!」
 サートゥルヌスが憐れに思ってウサギから絶華を遠ざけるが、その刹那、ウサギの右腕が元通りに鳴ったではないか!
「オエ……ッ! マズ過ぎて石化が解除された……? よ、よく分からないですけど、助けていただきありがとうございます!」
 ウサギは見違えるようなマッチョになって避難所へ向かっていくのだった。
「うっそだろ……? マジで主様の糞マズチョコってエリクサーレベルの万能薬じゃねーか?」
 完治は出来ないが、一部分だけなら一時的な復活を促す絶華のチョコはユーベルコードをもはや超えてんじゃね?と疑うレベルの効能であった。
「くっ! だが身体の大部分が石化してしまった者へは流石に効果がないか……石化が始まった者は避難所からできるだけ離れるのだ! 安心しろ……この惨劇を引き起こした者には私が裁きを与え……必ず元に戻す! 私のカカオ汁を鼻から流し込んでな!」
「ひぃっ!?」
 サートゥルヌスはこれから出会う『始祖人狼の使者』が薬物中毒死する未来が確定したような気がして、思わず敵ながら憐憫さに合掌してしまうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラ・オルトリア
アドリブ◎

混乱と不安と絶望が雪崩れ込んでる
こんな悲痛な厄災を起こすなんて…

込み上げる感情を堪え深呼吸
避難、手伝わないと…!
感染した人も、覚悟を決めた人も守れるように

誘導する白虎幇に駆け寄って声をかける
「私も手伝うよ!待たせてごめんね…!
私もこの世界で歌う猟兵です
感染した人の移動は任せて
このまま避難誘導の方を任せていい?

…辛い戦場になるけど
皆を助けるために私も最後まで戦うわ」

感染した人達の方へ駆ける
無線マイクを握り
私の存在を皆に認識させる位置に立ち
【絡繰心操】を歌唱

『この聲が示す方へ』
まだ動ける感染者を無事な人から遠ざけるよう
これは精神に作用し、歌で他者を操る魔曲

怖い思いさせて…ごめんなさい
恐怖を和らげる為の祈りを音に乗せる
敵を斃し…必ず、助けるわ
必ずよ!

避難する人にも振り返る
「命に代えても皆を救ってみせる
家族、恋人、仲間…みんな!
だから、今はどうか…わたし達を信じて!避難を!」
乗せる聲は覚悟と鼓舞の思い紡ぎ

――この身が壊れど歌う
この世界の皆が知るワンフレーズ
戦場の歌姫として誓い、強く放つ



 ――その声は炎のように焦がれていた。

 ミラ・オルトリア(デュナミス・f39953)は転送された直後に目に飛び込んできた光景に、聞こえてくる悲鳴に、混乱と不安と絶望が心に雪崩れ込んできて思わず胸を抑えてしまう。
「こんな悲痛な厄災を起こすなんて……」
 呼吸が乱れる。吐き気がする。
 当たり前のように悪辣な行いをやってのける『始祖人狼の使者』に眩暈を覚える。
 決して戦闘経験が豊富といえないミラにとって……それこそ各世界のオブリビオン・フォーミュラやネームドオブリビオンと一度も刃を交えたことのない彼女には、恐らく今迄こなしてきた任務の中で過去最悪の現場だ。
 今までの依頼とは訳が違う。
 一歩間違えば、隣で死が吐息を漏らす声が聞こえる程の距離を感じる焦げ付く空気。
 あと数秒後にはミラも目の前の石像の仲間入りするかもしれない緊迫感。
 地獄が目の前に広がっていた。

 怖い。怖い。怖い怖い、恐ろしい。
 普段はポジティブな態度で自分を律し続ける彼女は、根幹に抱える弱さに今にも飲み込まれかけてしまう。
(……違う。そうじゃない)
 だが、込み上げるグチャグチャな感情が喉元まで込み上げてくるのを、ミラは下唇をぐっと噛んで堪える。
 ミラの整った顔が醜く歪むほど力を振り絞り、鼻から深呼吸、肩を上下して大きく肺に酸素を送り込む。
 血中に駆け巡る酸素が彼女の脳を刺激し、絡まった思考を解きほぐしていく。
 目の前が明滅する。だが、それがどうした。
 毅然とした態度で、弱い自分を必死にミラは抑え込んだ。
(避難、手伝わないと……! 感染した人も、覚悟を決めた人も守れるように。私は、そのために此処に来たんだから!)
 早まる鼓動が彼女の脚を急かす。
 そのまま避難誘導を行う『|白虎幇《パイフーパン》』と思しき白虎達へミラは声をかけた。
「私も手伝うよ! 待たせてごめんね……! 私もこの世界で歌う猟兵です」
 黒雀のミラは背中の小さな両翼を広げて挨拶をする。
 これに一際体格の良い白虎が、右拳を左手で包み込む「|拱手《きょうしゅ》」という挨拶で返してくれた。
「おお、嬢ちゃんはこの世界出身なのか。俺は『|白虎幇《パイフーパン》』の首領をやっている者だ。よろしく頼む」
「首領さんだったの!? こ、こちらこそっ!」
 慌ててかしこまるミラだったが、すぐに彼らへどう動いてほしいか要望を伝えた。
「感染した人の移動は任せて。だから首領さん達はこのまま避難誘導の方を任せていい?」
「ああ、任せておけ。どっかの猟兵がさっき、街中にあったけぇ光を放ってくれたおかげで俺達も動きやすくなったからな?」
 それはクリスタリアンの聖者が解き放った導きの輝きであった。彼女のユーベルコードが獣人達の石化感染の速度を遅延させたおかげで生存者の避難誘導は格段に効率アップしていた。
 ミラは後ほどこの詳細を聞くことになるのだが、それは別の話である。
「とにかく、まだ十分に避難誘導が出来てねぇ区画もある。例えば……あの辺りとかだな?」
 首領はとある方角を指差す。
 これにミラはすぐに頷いた。
「そうなんだね。それじゃ誘導はお任せするよ。……辛い戦場になるけど、皆を助けるために私も最後まで戦うわ」
 互いに健闘を祈り合うと、ミラは翼を羽ばたかせて建物の壁を蹴る。
 そのままサイバーネオンがぎらつく違法高層建築の屋上へ跳び移ると、屋根伝いにパルクールめいて厄災が覆う街の空を駆け抜けてゆく。
 白虎の首領が言うには、まだ避難誘導が十分でない区画があるらしい。
 大体の方角しか指し示されなかったが、すこし先へ進めば目を背けたくなる惨状が嫌が応にも目に飛び込んできた。
 石化した者達を庇う獣人達。恐らく家族か親しい間柄なのだろうか。
 その石化した獣人達を破壊しようと暴徒化している獣人達と、彼らは激しく衝突していたのだ。
「やめてよ! この人を壊さないで!」
「うるせぇな! 石化した奴を壊せば感染が止まるって聞いたぞ!」
「そんなのデマに決まってる! 猟兵はそんなこと言ってなかった!」
「猟兵が来てるとか、そっちがデマでしょ!?」
「こいつら、オブリビオンのスパイなんだ! 全員ぶち殺せ!」
「お前らこそ! 死ね! 殺してやる!」
 なんていう恐慌状態だろうか。
 情報が錯綜し、未曽有の厄災の中で誰もが清浄な判断を下すことが出来ずにいた。
 そして行き着く先は分かりやすい感情……憤怒に辿り着き、互いを分断し、害し始めてしまう。
「ひどい……」
 ミラは地上の無益な争いにやるせなさを覚え、ぎゅっと無線マイクを握って覚悟を決めた。
 一際目立つ建物の屋根の上に飛び乗ると、ミラは自分の存在を認識させるべく大声を張り上げてみせた。

「――この聲が示す方へ!」

 突然、頭上から響いたミラの歌声に、争っていた獣人達が一斉に屋根を上に視線を向けた。
 それはまだ動ける感染者を無事な人から遠ざけるようにしむけるべく精神に作用し、歌で他者を操る。
 ユーベルコード『|絡繰心操《トリック・デュナミス》』。13秒ごとに自分の寿命を削りながらも、他者の行動を掌握する、まさに魔曲であった。
(怖い思いさせて……ごめんなさい)
 獣人達の怒りを、恐怖を、ミラの歌声が徐々に打ち消してゆく。
(敵を斃し……必ず、助けるわ。必ずよ!)
 寿命が縮んだって構わない。
 だって覚悟はとっくに決めたのだから。
 世界の危機に瀕した大戦に参加はすれど、その首謀者と戦ったことのないミラにとっては大きな覚悟だ。
 石化しかけた者達を遠ざける歌を歌い切ったミラは、今度は争っていたもう片方……未だ無事の獣人達へ向き直って告げた。
「わたしの命に代えても、必ず皆を救ってみせる! 家族、恋人、仲間……みんな! だから、今はどうか……わたし達、猟兵を信じて! だからお願い、避難を!」
 そして再びミラは歌い始める。
 楽曲名は『ユーベルコード』。
 この世界に伝わる、はじまりの猟兵の武器を呼び出すあの言葉を紡ぐ歌声。

 ――『m'aider』

「この身が壊れど歌う Uh 泣かない貴方の代わりに」
 獣人戦線の世界において皆が知るワンフレーズを、ミラは戦場の歌姫として誓い、強く放つ。
 残酷なままに美しい世界に、その聲は何処までも響き渡り、怒りに心をやつした獣人達を鎮める事に成功した。

 ――故に、その声は炎のように焦がれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『コウモリ爆撃兵』

POW   :    無差別爆撃
戦場にレベル×5本の【焼夷弾】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【多くの被害と死者が出る】対象を優先して攻撃する。
SPD   :    反響定位
【超音波】を体内から放出している間、レベルm半径内で行われている全ての【攻撃】行動を感知する。
WIZ   :    空飛ぶ悪魔
戦場内で「【助けて・死にたくない・怖い・熱い・神様】」と叫んだ対象全員の位置を把握し、任意の対象の元へ出現(テレポート)できる。

イラスト:はるまき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の迅速な対応と現地の獣人達との連携が功を奏し、一般人の避難はつつがなく行われた。
 そのため数刻までの華やかな喧騒が嘘みたいに、『|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》』は石像が至る所で立ち並ぶゴーストタウンに変わり果ててしまった。

 そんな中、突然、街中の一画で轟音と共に火柱が上がったではないか。
「ヒャ~ッハッハッハッハァ! 『始祖人狼』様の御意思だァ! 石になった奴らを優先してぶっ壊せぇ!」
「「ラリホーッ!!」」
 空から飛来してきたのはワルシャワ条約機構軍……ロシアの尖兵であるコウモリ兵団が、爆弾を上空から投下して街中を爆撃し始めたのだ!
 しかも敵軍の目的は、石化した獣人達の破壊のようだ!
 このままでは、街中に放置された石化した獣人達が粉々に爆破されてしまう。
 当然、粉砕した石像は二度と戻らない。たとえ『始祖人狼の使者』を殺しても、彼らは生き返らない……!
「ヒャ~ッハッハッハッハァ! 石になってもまだ感じるぜェ? 『助けて・死にたくない・怖い・熱い・神様』って泣き叫ぶ、てめぇらのダセェ声がよォ~ッ!? 安心しなァ? 石になった身体は痛みを感じねえからなァ!? 安心して粉々になんなァ! そんでェ……いるんだろ猟兵のクソカス共ォ! ほらほらァ? 御大層に全員守れるもんなら守ってみろよ、このボケタコがァッ!」
「「ゲヒャヒャヒャ~ッ!」」
 上空で嘲笑うコウモリ爆撃兵達が忽然と姿を消し、各々が石化した獣人達の元へテレポートをしてゆく。
 このままでは市民達に被害が出てしまう!
 何としてでも彼らを守り抜き、ワルシャワ条約機構軍の強襲を跳ね返さねば!
 果たして、猟兵達の運命や如何に?

 ユーベルコードの高まりを感じる……っ!
【追記】
 この章では獣人達と連携を行うことでプレイングボーナスが発生します。
シルヴィ・フォーアンサー
……趣味悪いね、モフモフとも言いがたいし。
『判断基準はそこなのか……まぁコウモリだしな』

街中に戻ってと……超音波で効果内の攻撃は
出が分かるから余裕と思ってるみたい。
ならフレアブラスターで焼き尽くしてあげる。
735mが最大だからこれなら範囲外から届くんじゃないかな。
持続させたまま凪ぎ払ってキィキィ五月蝿いのは全部落としちゃおう。

落ちた後はミサイルとか銃撃で石像巻き添えにしたら不味いし踏み潰しちゃおうか。



 上空から強襲してくるコウモリ爆撃兵隊がところ構わず街を爆破してゆく。
 幸い、まだ石化した獣人達へ被害は出ていないが、このまま見過ごすわけにはいかない。
 シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はクロムキャバリア《ミドガルズ》を駆り、避難所から全速力で最前線の市街地へ戻ってきた。
「……趣味悪いね、モフモフとも言いがたいし。やっつけよう」
『判断基準はそこなのか……まぁコウモリだしな』
 サポートAI『ヨルムンガンド』はシルヴィの言葉に驚いていた。
 するとヨルムンガンドは周囲に高周波音波を多数キャッチした。
『上空に複数の高周波音波を確認。コウモリ兵の超音波探知によるものだと推定』
「つまり、シルヴィの攻撃が読まれてるってことかな? ふうん……?」
 試しにシルヴィは両手の左右2門分のキャバリア用の大型ガトリング砲を装備して上空へ弾幕を張ってみた。
 通常ならば高密度の弾幕を回避する事はエースパイロットでなければ至難の業なのだが……。
「ギャッハハハハ! 弾の軌道! 速度! 射撃角度! 全て俺達の声で予測済みなんだよマヌケーッ!」
「「キキキキィーッ!」」
 なんと対空射撃を軽々とコウモリ爆撃兵達がすり抜けてゆくではないか。
 本当に弾丸を鳴き声の反響で予測して回避しているようだ。
 これにシルヴィは武装を切り替えて対応する。
「出が分かるから余裕と思ってるみたい。ならフレアブラスターで焼き尽くしてあげる」
 ハイペリオンランチャーを上空へ掲げた瞬間、凄まじい大火炎が空を焦がすかのように噴射された。
「キィッ!?」
 コウモリ爆撃兵の一部は一瞬にして翼を焼き焦がされ、ボトボトと墜落死していく。
 中には一命を取り込める個体も見受けられたが……。
「おい嬢ちゃん! 俺達も手伝うぜ!」
 応援に駆け付けた白虎達が墜落してきたコウモリ達にトドメを刺してくれるので、シルヴィは憂いなく上空に集中できた。
「……全部燃やすね。最大射程が735mだから、これなら超音波が届く範囲外から届くんじゃないかな」
『どうやらコウモリ爆撃兵共の射程は140m程度らしい。逃げる奴らはまとめて焼き払ってしまえ』
「うん、そのつもり。じゃあ、これ持続させたまま凪ぎ払って、キィキィ五月蝿いのは全部落としちゃおう」
 超音波よりも長い射程を誇る超高温の熱線ビーム火炎放射が、逃げてゆくコウモリ爆撃兵達を焼き払う。
 更に火薬に誘爆して事で、上空で次々と敵が爆散していった。
「それじゃみんな、落っこちた奴はトドメ刺しちゃって。あと爆破させないようにね? 石になったみんなが壊れちゃうから」
「おう、任せとけ!」
「邪魔な石像は脇道に押し込んでおくか!」
 獣人達もシルヴィのキャバリアの動きを予測しながら落っこちた敵兵を潰してゆく。
 猟兵達の反撃の狼煙が、今あがった……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨飾・樒
コウモリ共、良い情報を言ってくれた
対抗策はある、絶対に助けてみせる

周囲の市民に、自身と私達の力を信じて冷静に行動すれば必ず勝てる、全員助かることを伝える
敵がテレポートできる条件を満たせる箇所が減れば、出現できる位置は絞られる
絶望せずに立ち向かうことで敵の能力を制限できることを市民に伝えながら、私の言葉が届いていない市民を探す
出てきたコウモリには"眠り薬の魔弾"を遠慮なく撃ち込んでやる

石化状況に関わらず、助けた市民には同じ言葉を伝える
多分、身体が石になっても心は違うんだと思う
言葉だけじゃなく行動で私の意志を伝えていけば、奴らがテレポート可能な位置は減っていくはず
逃がさず全員、撃ち墜としてやる



 襲撃される都市の別の区画では、雨飾・樒(Dormouse・f41764)が単独で上空のコウモリ爆撃兵達の対処に追われていた。
「コウモリ共、良い情報を言ってくれた。対抗策はある、絶対に助けてみせる」
 愛用の六式拳銃丙型を上空に構え、ユーベルコード『|眠り薬の魔弾《ヒプノティク》』を発動させる。
「沈め、静寂の奥底に」
 銃口からペールブルーの魔力弾が撃ちだされ、命中させたコウモリ爆撃兵達を次々と眠らせる事で撃墜させてみせた。
 しかし、敵は如何せん数が多い上にユーベルコードを駆使してテレポートして雨飾へ肉薄、すれ違いざまに手元の爆弾を転がしてくる。
 石像や建物に被害が及ばないように立ちまわることに、雨飾は精一杯の状況であった。
「ギャッハハハハ! どこ狙ってやがる!?」
「「げらげらげらげら!」」
 コウモリ爆撃兵達は、市民達が発する特定の単語に反応してテレポートを実現させていた。
 故に、雨飾はこう考えた。
(テレポート先が限定されれば、おのずと敵が一点集中するはず)
 なのでまずは、周囲の市民へ呼び掛ける。
「恐れないで。自身と私達の力を信じて冷静に行動すれば必ず勝てる、全員助かる。コウモリ達は、助けて・死にたくない・怖い・熱い・神様という単語に反応する。だから口にするな、心に浮かべるな。敵がテレポートできる条件を満たせる箇所が減れば、出現できる位置は絞られる。絶望せずに立ち向かうことで敵の能力を制限できる。だから、安心して。私が必ず守ってみせる」
 雨飾の呼びかけに、パニックになっていた獣人達が落ち着きを取り戻し始める。
 それは石化した人達も同様のようで、コウモリ達の反応に変化が表れ始める。
「お、おい? さっきから全然、石化した奴らから声が聞こえてこねーぞっ? 何でだよ!?」
 これではご自慢のテレポートが上手く活用できない。
 雨飾は右往左往するコウモリ達を容赦なくヘッドショットで昏睡させて墜落死へ導く。
(多分、身体が石になっても心は違うんだと思う。言葉だけじゃなく行動で私の意志を伝えていけば、いずれこうなるのは予想できた)
 作戦が功を奏し、コウモリ達は地上から乱射されるペールブルーの魔力弾の弾幕にクルクルと身を翻してゆく。
「助けて」
 そして雨飾がテレポートのトリガーとなる言葉を意図的に口にすることで、コウモリ達を近くへ強制転移させて逃がさない。
「全員、撃ち堕としてやる」
 これを繰り返すことで、着実に敵の数を減らしていった。

 ……もっとも、雨飾の作戦が功を奏したからよかったものの、本来ならば街で戦う『|白虎幇《パイフーパン》』を始めとする裏社会の獣人達と共同戦線を張るべきであったのだが。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
真っ先に民草狙うゲスは好かねーな
白虎幇方
さっきはあんがと
もいっちよ頼んでも?
オレが【念動力】で石化した人車に積むんで敵から距離取って欲しい
今から使う術は少々危なくてね
奴等は絶望や気弱な気持ちを嗅ぎつける
強気で行け
白虎幇は頼れる任侠だ
鼓舞し行かせ

ホラ来たぜコウモリ共
「…神様、神様」加勢頼むぜ
姿見せ挑発し敵UC逆手に【おびき寄せ】
【音響弾】活用し遠吠えの要領でUC詠唱を広範囲に響かせる

UCの不浄の鳥は詠唱を聞いた敵の耳の傍に浮く
惑い魂よ道連れは傍に居るぞ
爆ぜて蝙蝠共を連れて行け
疲労も【激痛耐性】で凌ぎ取り零しは全長の七葉隠を振り抜き【追跡、暗殺】
オレもお前らも捨て駒同士
狩り合いと行こーか

アドリブ可



 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は『|白虎幇《パイフーパン》』のサイバー任侠マフィア達と共闘していた。
「ったく、真っ先に民草狙うゲスは好かねーな」
 石化した獣人達の周囲で駆け回る鹿村は、接近してきたコウモリ爆撃兵の一体を念動力で操るクナイで滅多刺しにして息の根を止めた。
 そこへ白虎達の爪の一撃が、別の方向から飛んできたコウモリを盾に引き裂く。
「ニンジャ=サン、こっちは任せな!」
「俺らのサイバネヒートファングで、コウモリ野郎共をボロ雑巾に変えてやらぁ!」
 義に篤い白虎達の助力のおかげで、鹿村の負担が大幅に軽減されたのは大きなアドバンテージである。
「白虎幇のみんな、あんがと。助かるよ。んでさ、もいっちよ頼んでも?」
 鹿村は白虎達へ、石化した獣人達の避難を依頼した。
「オレが念動力でそこのリヤカーの荷台に石化したみんなを積み込むからさ、それ曳いて戦場から遠ざかってほしい。なんせ今から使う術は少々危なくてね。うっかり被害が出たら申し訳ないんだ」
 鹿村の願い出た行動は理に適っているが、それは白虎達に石化のリスクを背負わせることにもなる。
 石化した獣人達の傍にいると、石化の感染速度が上昇するからだ。
 当然、これは石化した獣人達を守り続ける鹿村も同様である。
 しかし今はこれが最善手だ。
 だから、鹿村は白虎達を信じ、そして鼓舞した。
「奴等は絶望や気弱な気持ちを嗅ぎつける。強気で行け、剛毅であれ。白虎幇は頼れる任侠だ。やってくれるか?」
 鹿村の熱い気持ちに、白虎達は力強く頷いて応えてくれた。
「任せろ! 街の奴らには指一本、触れさせやしねぇよ!」
「俺らもリアカーの護衛につけ!」
「「ヘイ、ヨロコンデー!」」
 こうして素早い白虎達の人員配置によって、白虎達はリアカーの荷台に積まれた石化中の獣人達を避難させていった。
 こうして鹿村は周囲に敵しかいなくなったことを確認すると、手元で印を結んでから詠唱を始めた。
 しかも、絶叫に近い大声で。

 荒野の朽ち身の落ち梯子
 楽土へ至る鳥路の逸れ路
 彷徨う死魂の成れの果て
 其は其は 不浄の迷い魂
 聞けや 此の血此の魔の言寄せの――!

 それは禍言。一言一句間違うことは許されぬ降魔忍術。
「ホラ来たぜコウモリ共。何がって? 決まってるだろ、神様だ。願わくば目の前の忌み敵を滅したまえ、かしこみかしこみ申す……ってな?」
 コウモリにとって大声は敏感過ぎる聴覚に不快感を与えるだけでも辛いのだが、そこへ145個の虚ろな鳥の姿をした不浄魂の群れが召喚される光景に思わずゾッとしてしまう。
「な、なんだ? 気色悪ィな!」
 しかも鹿村が大声で詠唱したことによって、虚ろな鳥の姿をした不浄魂達はコウモリ達のすぐ耳元に出現したのだ。
「惑い魂よ、道連れは傍に居るぞ。爆ぜて蝙蝠共を連れて行け」
『■■■■――!』
 不浄なる魂はおぞましい呻き声を上げたと同時に、次々とコウモリ達の真横で破裂するように爆発を起こした。
 接触がトリガーとなって起爆する仕組みらしく、鹿村の言葉のせいでこぞって不浄なる魂はコウモリ達を追い回しては爆発に巻き込んでいった。
「や、やめろ! 助けてくれ! あっ」
 不意にコウモリの誰かがそう叫んだ。
 すると周囲のコウモリ達が一斉に、叫んだコウモリ達の周囲にテレポートしてしまう。
 当然、それぞれのコウモリ達の傍には不浄なる魂が随伴しているわけで、そうなれば迎える結末は明白である。
「「ギャアアァァァアーーーッ!」」
 一斉に誘爆して、一網打尽であった。
「ああ、そっか。味方の言葉にも反応するのか。割と難儀なこったなー」
 ユーベルコードの反動でどっと疲労感が鹿村の全身に押し寄せてくるが、ここからが本番だ。
 撃ち漏らしたコウモリ達の討伐に乗り出すべく、透明な刀身を持つ忍刀こと最高刀長420cmを誇る『七葉隠』を膂力任せに振り回してゆく。
 横一線に空中で血飛沫が噴き出し、錆鉄の匂いがする雨が一帯に降り注いだ。
「いわばオレもお前らも捨て駒同士、仲良く狩り合いと行こーか」
 返り血を浴びた鹿村は、文字通り鬼神めいた勇猛さで敵を力任せに斬り伏せ続けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット
敵も味方もケモケモな素敵世界って聞いたのに…全然楽しくないですホラーゲームです!
私も協力してボスを倒しますよ!虎もふもふを堪能するために!

み、皆様を守ります!
課金兎耳の【聞き耳】で悲鳴を聞いて場所を感知します。
その近くでゲスい笑い声やテレポートの音が聞こえたらそこに向かって斬撃を飛ばして倒し、爆撃されそうだったら残るキラキラエフェクトを壁にして守ります。
あのキラキラした場所に石像が在るので守ってあげてください!と周りにお願いしつつ空の敵も減らしたいですね。
マッハ斬撃なので避けられないと思いますが…もし避けられたら当たるまで双剣乱舞です。キラキラ飛ばしまくり
私が守れる範囲のケモは絶対守ります!



「は、話が違います! もしかして私、騙されました!?」
 戦場の真ん中で頭を抱えているのは、ゲームプレイヤーのルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)だ。
 猟兵に覚醒した彼女は、異世界でのクエストを受領して、遅ればせながら獣人戦線へ転送されてきたまでは良かった。
 しかし、目の前に広がる惨状にルナはドン引きしていた。
「クエスト紹介の時に、ここは敵も味方もケモケモな素敵世界って聞いたのに……全然楽しくないですホラーゲームです! でも、私も協力してボスを倒しますよ! 目の前の白虎をもふもふを堪能するために! み、皆様を守ります!」
 中の人は重度のケモナーであり、自身のアバターも高レアの武具に身を包んだ低身長の兎獣人だ。そしてなによりも、彼女の胸は豊満であった。ケモナー的にかなりエチチチッであったし、同志から評されれば「こいつ分かってやがるな」というツボを的確に押さえていた。
 とにかく、リアル獣人達をこれ以上苦しませるコウモリ達をまずは討伐するべく、課金兎耳で周囲の悲鳴に聞き耳を澄ます。
「やや? あれは! キツネの幼女さんのこやんこやんと泣く声! そしてその近くに耳障りなコウモリ達の声も! そ、そこですねっ? 眩しかったらごめんなさい!」
 ルナの判断は早かった。
 即断即決でユーベルコード『クレセント・スラッシャー』を声のする方向へ放った。
 速度マッハ5.0以上のキラキラエフェクト付きの斬撃が空を裂いて飛んでゆけば、目視していないにもかかわらず、コウモリ達の身体を真っ二つに切断してみせたのだ。
「白虎の皆さん! あのキラキラした場所に石像が在るので守ってあげてください! あと逃げ遅れたキツネの幼女さんもいるので、その子の保護もお願いします!」
「「ヨロコンデー!」」
 こうして白虎達はルナの斬撃で発生した三日月型の衝撃波の軌道を辿ってゆき、無事にキツネの幼女と石化した彼女の母親の石像の保護に成功した。
「あとは空を飛ぶ鬱陶しいコウモリ達の数を減らしていきたいですね」
 空を見上げるルナはSSR:宝双剣ローゼンクイーンに宿る薔薇の女王の暗き炎を限定解放させると、連続してユーベルコードを上空へ乱射してゆく。
「いくらそっちが超音波で回避できるとはいえ、音速以上の速度を誇る私の剣閃は避けられない、はずです!」
 そのルナの目論見は正しく、マッハ5以上の輝く斬撃波はコウモリ達をスパスパと切断してみせる。
 更に斬撃の奇跡の上に発生した三日月の衝撃波を足場代わりにすることで、パルクールめいた立体三次元機動を実現。空飛ぶコウモリ達と謙遜なくルナは斬り合いに持ち込むことが出来たのだ。
「私が守れる範囲のケモは絶対守ります! でもやっぱり、眩しかったらごめんなさい!」
「「グワーッ!」」
 神速の双剣が振るわれるたびに輝く斬撃は、コウモリ達の目を眩ませては瞬時にバラバラに斬り裂いていった。
 圧倒的な戦力差を誇る戦況のおかげで、後にルナは白虎達の間で『黒い双剣が堕天使の翼みたいだった』と評されるのだが……それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブ歓迎

このままじゃ、石化した人もみんなのお家も壊れちゃう……!
落ちてくる爆弾も飛んでるコウモリさんもどっちもなんとかうするには……お返しだね!

サイコキネシスで降ってくる爆弾を捕まえてコウモリさんに投げ返すよ!
空で爆発しちゃえば街も石化した人も無事だし、超音波を聞き分けるくらい繊細な耳なら爆発が直撃しなくたって音でびっくりして落ちるかも。
もしコウモリさんが落ちてきたら、虎のおじさん達にやっつけてもらうね。

ねえコウモリさん、助けてって言ってもいいよ? そしたら他のコウモリさんもテレポートして、サイコキネシスの範囲に来てくれるもんね?



 猟兵達は奮戦するが、まだまだワルシャワ条約機構軍の軍勢は留まるところを知らない。
 あちらこちらで爆撃されており、アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)と『|白虎幇《パイフーパン》』の若衆達は爆発から石化した獣人達を守るのに必死だった。
「このままじゃ、石化した人もみんなのお家も壊れちゃう……!」
 焦るアヴァロマリア。
 付き添う白虎達が上空を睨む。
「マリア姐さん! あまり石像に近付きすぎると石化しちまいますぜ!」
「俺達は石化しても構いやせんが、マリア姐さんが石になっちまったら首謀者をぶっ潰せなくなっちまいますよ!」
 共闘しているとはいえ、白虎達ではコウモリ達を殲滅する事は出来ない。
 故に主戦力のアヴァロマリアは石化のリスクを負わせたくない、というのが白虎達の思いだ。
 しかし、アヴァロマリアは恐れない。積極的に石化した獣人達を爆撃から守っていた。
 念動力で編まれた不可視にして不可侵の防壁が爆風を遮っているので、自身や白虎達、そして石化した獣人達には被害は及ばないものの、このままでは徐々に不利……ジリープアーに追い込まれてしまう。
「祈りの盾で守ってるだけじゃダメ! 落ちてくる爆弾も飛んでるコウモリさんもどっちもなんとかするには……お返しだね!」
 そこでアヴァロマリアは思い切って念動力のリソースの一部を攻撃へ転じた。
 上空から投下される無数の焼夷弾は、敵味方関係なく降り注がれる。そして最も被害が出る対象を集中的に攻撃する。
 この区画では、アヴァロマリアさえ倒せれば周りの獣人達は為す術なく瓦解するのは明白だ。
「あの褐色肌のガキを狙え! あいつのバリアがなければ、ここら一帯は火の海だ!」
「「ラーリホー!」」
 コウモリ達もすぐに標的をアヴァロマリアへ定め、敵一体につき700発の焼夷弾を透過してきた。
 凄まじい局地的絨毯爆撃は、並の軍隊ならばあっという間に消し飛んでしまうだろう。
 しかし、念動力を攻撃へ割いたアヴァロマリアは、落下してきた無数の焼夷弾を空中で押し留めると、ユーベルコードを乗せた念動力で上空へ弾き返したではないか。
「サイコキネシスだよ……! 爆弾は返却しちゃうね?」
 よもやコウモリ達も、自身が投下した焼夷弾が巻き戻し再生めいて自分の懐へ突っ込んでくるなどとは予想だにしていなかった。
「うおおっ! 総員退避、退――!」
 部隊長が号令を下した時点で、無数の焼夷弾は眼前に迫っていた。
 ひとつが命中したら最期、周囲の焼夷弾へ爆炎が引火して次々と上空は花火大会めいた大輪の花を咲かせた。
「空で爆発しちゃえば街も石化した人も無事だし、超音波を聞き分けるくらい繊細な耳なら、爆発が直撃しなくたってその音でびっくりして落ちるかも?」
 アヴァロマリアの読み通り、辛うじて爆発を免れた敵兵は衝撃波と爆発の轟音で意識を失って墜落してしまう。
 そこを白虎達が青龍刀や己の爪で、寄って集ってトドメを刺していった。
「アッテメッ! スッゾコラー!」
「ナマッコラー!」
「マリア姐さん、落ちてきた奴らは俺らに任せて下せえ!」
「みんなまとめてネギトロ死体にしてやりますんで!」
 血気盛んな若衆達に、アヴァロマリアは本物の任侠の女将のような気分でコクリと頷く。
 それでも逃げようとするコウモリ達を眺めて、アヴァロマリアの脳裏に悪魔的な策略が浮かんだ。
「あのね白虎さん、一体だけコウモリさんを殺さずに尋問できないかな? お話しがしたいんだけど、大丈夫?」
「ええ、構いやせんぜ。なるほど、敵の首魁の居場所を吐き出させるんですね! 流石です姐さん!」
 こうして白虎達は嬉々として半死半生状態のコウモリを捕らえ、彼らなりの『尋問』を始めた。
「オラ、情報を吐きやがれ! テメェ等の親分の居場所は何処だ!?」
「大人しく喋らねぇと……両手の指が反対方向に折り畳まれちまうぞ? まず一本目っと」
「ギャアアァァァアッ!」
 コウモリが絶叫すると、アヴァロマリアは慈愛に満ちた微笑みを向けたまま歩み寄った。
「ねえコウモリさん、助けてって言ってもいいよ? マリアはこんな酷い事をする『始祖人狼の使者』さんの居場所を知りたいだけ。でももしコウモリさんが知らないなら、助けてって言ってもいいから」
 地獄のような『尋問』を受けた後、アヴァロマリアの女神めいた温かい笑みを目にしたコウモリは泣きながら叫んだ。
「助けて……助けてください! 死にたくない! 怖い! 助けて神様!」
「はい、よく言えたね。これで他のコウモリさんもテレポートして、サイコキネシスの範囲に来てくれるもんね?」
 咄嗟にアヴァロマリアの笑みが吹雪のように冷え冷えとした雰囲気に変わる。
『優れたブタにはムチを与え、愚かなオオカミにはアメを与えれば、大抵は騙される』……獣人戦線の中国には、古来からそんな兵法がある。
 泣き叫んでいたコウモリはすぐにこれを思い出し、自身のウカツを悔いたが、もう遅い。
「ギャッハハハハ! どこだどこだァ? 命乞いをするマヌケはよォ!?」
「つかここ、さっきやべーやつと交戦した場所じゃねーか!」
「ヤバい! 逃げろ、これは罠――がフッ?」
 逃げようとしたコウモリが急に宙へ浮かんだかと思えば、びたーんっと地面に叩きつけられて真っ赤な染みを撒き散らす。
 アヴァロマリアのサイコキネシスで叩き潰されたのだ。
「いらっしゃい。マリアは絶対にコウモリさん達を逃がさないよ。街を守るために、ここで潰れてね?」
 そして背後に控える白虎達へ合図を送るアヴァロマリア。
「みんなもお願いできるかな?」
「「ヨロコンデー!」」
 逃げ惑うコウモリ達へ、一斉に白虎達が襲い掛かる。
 青龍刀や爪で引き裂かれ、拳法で叩きのめされ、丁寧に絶望を植え込んでからコウモリ達を始末してゆく。
 そして念動力の『見えざる手』が、コウモリ達を纏めて壁に叩きつけてぺしゃんこにしてしまう。
 それを捕らえられたコウモリだけが、目の前の殺戮を身ながら絶望と狂気に精神を侵されてケタケタ笑っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
チョコ!

疾駆する神発動中
く、くそ…!本当に久しぶりだなカシムさんの危機は
「ご、ご主人サマごめん…!」
おめーのせいじゃねー
カシムさんのミステイクだ畜生め

そして獣人を守りながらってことは石化のリスクがあるってか

どうする…!

『爾雷彌』参上発動!
「猟兵の危機にワシは在り!爾雷彌推参!」

なぁ!?呼んでないんだが!?
「メルシー達のHPが半分以下になったからだよ!」
だが増えた所で石化が…

って、今度はむきむきマッチョな白虎達!?
「ぜっちゃんだ!」
……ぜっちゃん!…それなら…!カカオ汁寄越せ!
あと爾雷彌にも飲ませろ!
「ムゥ?ワシにチョコを食す機能等…アバババババーっ!?」(絶叫と共に超絶強化!何か4回行動できそう!)

…僕はマッチョにならないからな?
「メルシーもだぞ☆」

【属性攻撃・念動力】
石化した獣人と味方全員に水属性混ぜた念動障壁展開

守りは得意じゃねーがやってやる!

【空中戦・弾幕・二回攻撃・切断・盗み攻撃】
獣人達と共に連携し念動光弾や手裏剣乱舞
鎌剣や刀で切り刻

身包み剥ぎ

UC発動
集まった蝙蝠共を殲滅!!


皇・絶華
チョコ!

何だと!?
石化して動けないものを破壊と言う弱き行動に出るとは…これは深刻なパワー不足だな!
「違うと思うんですが主様!?」

そしてカシム達がピンチだ!
行くぞ白虎さん達!
(むきむきマッチョの白虎達と共に)

【薬品調合】
と言うわけで庇いつつカシム達にもカカオ汁進呈!
「この忍者ロボ…巨神だ!?何でこんなところに!?」
おお!忍者か!確か最近の忍者の挨拶はこれだな!

ドーモ、ぜっちゃん=です

ジライヤと石像にも振る舞

【戦闘知識】
蝙蝠達の動きと癖を把握するぞ
【空中戦・乱れ撃ち・弾幕・念動力・切断・第六感・二回攻撃】
飛び回りながら蝙蝠に念動光弾と手裏剣乱れ撃ちだ
手裏剣で羽根を切り裂き念動光弾で動きを封
白虎さん達と連携を取り切り裂


お前達には足りないものがある!
それは圧倒的なパワーだ!

(輝く笑顔で熱々に熱した真のパワーチョコ(数多のビルシャナを葬った奴)を捩じ込み)

おお!石像よりも此方に転移してくるとは皆チョコを求めてるのだな!
「これ蝙蝠共の悲鳴を誤認して来てるんじゃ…?」
むきむき白虎さん達と共にボコボコに



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は飛空戦艦『竜眼号』艦内で、忌々し気にこの状況を俯瞰していた。
「く、くそ……! 本当に久しぶりだな、カシムさんの危機は……!」
 カシムの厄災【Q】への認識のズレが、自身と相棒を石化の窮地へ追い込んでしまった事を恥じていた。
「ご、ご主人サマ、ごめん……! メルシーが数を増やし過ぎて、感染拡大させちゃったから……!」
 分身を解除してひとつにまとまった相棒のメルシーは、地上から上空の『竜眼号』へ通信する。
 苛立つカシムを庇うように、メルシーは自分のミスだと訴える。
 しかし、今は責任の所在よりも現状の打破へ力を注ぐ方がよっぽど建設的行動である。
「おめーのせいじゃねー。これはカシムさんのミステイクだ畜生め。そして獣人を守りながらってことは……石化の感染範囲内に留まることを意味する、つまりメルシーに石化のリスクがあるってか、どうする……!?」
 いくらメルシーが賢者の石で出来た特殊な身体とはいえ、先程の幼女軍団がたちまち石化した光景を目の当たりにしたカシムはメルシーへの影響を危惧せざるを得ない。
 故に念の為、カシム自身はこうして安全圏で指示を出さざるを得ない。
「僕が現場に出て石化しちまったら、それこそアウトだ……すまないメルシー、今は耐えろ……!」
「いいよ、ご主人サマ? こういうときこそメルシーの出番だよ!」
 契約者を守るのが当然だと、艦内のARモニターに映し出されるメルシーが上空へ手を振ってみせた。
 しかし、実際カシムに有効打は持ち合わせていない。
「ああ、くそっ! 何か、何か逆転の一手はないのか……? ぐぬぬ……」
 唸りながら苦悩するカシム。
 と、その時だった。
『カシム殿! 助太刀致す!』
 聞き覚えのある、暑苦しい声が戦場に轟いた。
「お、おめーは!?」
 カシムが艦外のカメラを全方位チェックすると、黄金のニンジャ巨神が腕を組んで虚空に浮かんでいた。
『ワッショイ! 猟兵の危機にこのワシ、爾雷彌がァ、あッ、推参ンンッ!』
 カブキの大見得を切って、周囲を飛翔するコウモリ爆撃兵へ畏怖の念を抱かせるニンジャ巨神『爾雷也』!
 これにカシムが思わずツッコミを入れた。
「なぁっ? てめーは呼んでねぇーぞ!? ありがたいけどな! つかなんで来れたんだ!?」
「ご主人サマ! それはメルシーのHP残量が50%を切ったからだぞ☆」
「え、なんだって? メルシーのHPゲージって爾雷彌召喚のトリガーなのかよっ? いつの間に!?」
 契約者のカシムでも気付かないうちに、そんな因果関係になっていたとは。
 だが戦力が増えたことは素直に喜ばしい事だ。とはいえ、爾雷彌自身もこのままでは石化するのは目に見えていた。
「おい爾雷彌! 助太刀は構わねーが、おめーもここに来たら石化しちまうぞ! どーすんだよっ?」
 未だ石化の感染速度を遅らせる手立てを持ち合わせていないカシムは、とにかく周囲のコウモリ爆撃兵を戦艦の艦砲で撃ち落とすしか出来なかった。

 一方、その頃。
「何だと!? 石化して動けない彼らを破壊するだと!? そのような弱い者イジメを画策するとは……これは深刻なパワー不足だな! パワーが足りないから自分より弱い相手を狙うんだ! 情けないぞ!」
「それは違うと思うんですが主様!?」
 こんな窮地でも安全運転平常運行を貫徹する皇・絶華(影月・f40792)と下僕のサートゥルヌス。
 絶華はサートゥルヌスへ言い放つ。
「さっちゃんはまだ分からないのか! パワーは全てを解決する! そして究極のパワーの源といえば、そうだ、カカオだ! これを見るんださっちゃん! 我がチョコとカカオで屈強な心身を獲得した、白虎達の雄姿を!!」
「「フロントダブルバイセップスッ!」」
 絶華が指差した先には、筋肉ムキムキになった白虎達が両腕を掲げて力こぶを誇示していた。
 彼らは皆、絶華の糞マズチョコと地獄と狂気の超高濃度カカオ汁を飲んだことで、24時間以内は“ほぼ無敵”に仕上がった。この戦場下において、絶華のチョコはユーベルコードの効果も相まってチートアイテムである。
「我がチョコは石化の感染は免れないものの、その感染速度を極端に遅らせることが可能っ! そして圧倒的なパワーは、空中を飛ぶコウモリに屈したりはしない! 征け! 筋肉白虎隊!」
「「ヤーーーーーーーーーーー!」」
 絶華の号令が下った次の瞬間、なんと白虎達はただの跳躍力だけで空中へ飛び出し、コウモリ達を蹴る事で多段ジャンプを実現させてしまう。なんたる強靭なハムストリングスの躍動か!
「えぇ……? そんなのアリなのかよ……?」
 上空でコウモリを踏み潰しながら白虎達が立体三次元機動で跳び回る光景に、地上で見上げるサートゥルヌスは呆れ返ってしまう。
 そんな中、メルシーがサートゥルヌスに気が付いて接触を図ってきた。
「あ! さっちゃんだ! 筋肉ダルマの虎さん達が物理法則を無視してたからまさかと思ってたけど、やっぱりぜっちゃんがいたぞ☆」
「げ、メルクリウスゥ……!? いや、今は私怨どころじゃねぇな! 主様! メルクリウスがいました! どっかにカシムのゲス野郎もいるはずです!」
「おお! カシムがいるのか! ならばさっそくパワーを……む? 上空のあれは? 戦艦と……巨神か?」
 ようやく上空に浮かぶ2つの巨大な存在に気付いた絶華。
「さっちゃん! 神機に戻って、あの巨神のところへ私を運ぶんだ!」
「了解です主様!」
 サートゥルヌスは黒いワンピースドレスを着た黒髪翠目の美少女の姿から、本来の姿……神の名を冠したキャバリアに変身すると、その鋼鉄の掌の上に主を乗せたまま飛翔してゆく。そして爾雷彌と対面すると、絶華は奥ゆかしく合掌したまま直角オジギをしてみせた。
「ドーモ、初めまして。マッドカカオです」
 これは古式に倣いしニンジャの神聖な儀式めいたアイサツ様式だ。
 ニンジャに対して本名を名乗るのはモータルかサンシタだけ。
 歴戦のニンジャは固有のニンジャネームを名乗るのが一人前の証なのだ。
 爾雷彌も絶華の奥ゆかしいアイサツに感銘を受け、真摯にアイサツを返した。
『ドーモ、マッドカカオ=サン。巨神ジライヤです。ワシが来たからには、猟兵は大船に乗ったつもりでいてくれぃ!』
 自信満々の爾雷彌であったが、絶華の目からしたら不服であった。
「お前にはパワーが足りない! よって、我がカカオを摂取する事で! 圧倒的なパワーを獲得する権利を授けよう!」
 こいつ、巨神にカカオ汁を飲ませる気だ!
 いや過去に神機へ飲ませているので何を今更というのだが、出会い頭5秒で即断即決はやはりヤバイ級状況判断である。
『ムゥ? ワシにチョコを食す機能など有して……アバババババー!』
「食せないなら浴びればいいではないか! 遠慮はいらないぞ! オイルの代わりに我がカカオ汁で満たしてやろう!」
『うわぁ、ただの拷問じゃん……』
 サートゥルヌスはもはや主のブレない行動にツッコミの語彙力が低下してしまう。
 そしてカカオ汁を浴びた爾雷彌の姿が急激に変化!
『ぬはぁぁーんっ! キャストオフ!』
 なんと、纏っていた装甲を周囲に弾けさせてコウモリ達を撃ち堕としてみせた。
 そして装甲の中から現れたのは……。
『軽いッ! ワシの身体が、軽いぞォォォォッ!』
 黄金のオーラを放つ上半身裸のイケオジであった。まさにスーパージライヤ人というべき存在だ。
『なんでえぇぇぇっ!?』
 サートゥルヌスがコンマ1秒でツッコミを入れざるを得ない。
『ロボの中におっさんが入ってたのかよ!?』
「素晴らしい! 我がチョコが巨神を進化させたようだな! よし! 征くぞ、ジライヤ=サン! カカオで軟弱コウモリ達を圧倒的なパワーで分からせてやろう!」
『承知ィッ!』
 自らもカカオ汁を飲んでボゴォッと筋肉を隆起させた絶華は、髪の毛を逆立たせて空中を舞い始めた。
 そのまま覚醒ジライヤと共にテレポート移動を繰り返してコウモリ達を次々と殴り飛ばしていった。
 テレポートするたびに『ヂュイン!』という効果音が聞こえてきそうだ。
「ふはははは! 身体が勝手に動く! 身勝手なカカオの極みだな! いっそユーベルコードにしてしまおうか!」
『思考よりも前に! 肉体が躍動する! これは愉快なり! ガッハッハッハ!』
 とても既視感のあるバトル展開に、サートゥルヌスは惰性でチャクラムと射出して2人を援護していた。

 その頃、カシムは絶華の乱入に複雑な心境を抱いていた。
「もう、ぜっちゃんだけでいいんじゃないか?」
 カシムは訝しんだ。
 しかし竜眼号は標的として格好の的だ。
 当然、爆撃を喰らう羽目になった。
「くそっ! 竜眼号を落とされて堪るか……! メルシー! 命令だ! ぜっちゃんからカカオ汁を奪い取れ!」
「え゛っ!?」
 まさかの命令にメルシーは絶句してしまう。
 カシム自身も苦渋の決断であることを伝える。
「残念だが……今、僕達に足りないのはパワーだ! ぜっちゃんの糞マズチョコとカカオ汁をてめーが摂取すれば……魔力回路で繋がっている僕も同時に超絶爆烈強化される! そうすれば石化に感染リスクも最小限に抑えられるはずだ!」
「うわぁ、理に適ってる……! 気が進まないけど、メルシー頑張る☆」
 メルシーは一気にマッハ43の速度で空中へ飛翔すると、絶華へ向かって絶叫した。
「ぜっちゃあ~~~んっ! ギブミー、チョコレート☆」
「パワーが欲しいか? ならくれてやる! 鼻の粘膜から味わえ!」
「んほぉッ❤」
 絶華はメルシーの鼻の中へカカオ汁を噴射!
 鼻から喉奥へ流し込まれた絶望の暗黒液体は、メルシーの魔力を数段上の次元へ昇華させた。
「ぬはぁぁーんっ! カカオの不味さで只今降臨っ♪ 美少女♂戦士! プリティ☆メルシー、爆誕だぞ☆」
 24時間の無敵効果を獲得したメルシーは、ニチアサ特有の女児アニメ御用達な美少女♂戦士に大変身!
 そして竜眼号で後方待機していたカシムも、強制的に真の姿へ変身!
「ちっ……パワーが溢れすぎて、不本意ながら嫌な姿になっちまったじゃねーか!」
 カシムは竜眼号を飛び出すと、念動力で己を飛翔させたまま周囲のコウモリ達をユーベルコードで一網打尽にしてゆく。
「帝竜眼よ……ひと時の間、帝竜へと至った者の力をここに示せ……!」
 天へ掲げる魔力宝玉から、最大5000℃を誇る太陽の紅炎が周囲に吹き荒れる。
 それは出現しただけで周囲を溶解し焼き尽くすレベルの高熱だ。
 しかしカシムのユーベルコードである偽典帝竜眼『ライトブリンガー』は、敵味方の識別を可能にしているため、焼き尽くされるのはコウモリ達だけであった。
 しかも超高熱によって焼夷弾は勝手に爆発を起こし、あちこちで誘爆が発生。
 墜落して地べたを這うコウモリ達は、ムキムキ白虎達がトドメを刺してゆく。
 メルシーの超音速斬撃もこれに加わることで、この区画の安全は揺るぎない状況へ移りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミラ・オルトリア
アドリブ◎

恐怖を嘲笑う声を振り払うように
獣人達の前に立ちFinal.で宙を薙ぐ
凛として声を放つ
「守れるよ!私たちなら」

救いも願いも恐怖も
全て掬い上げて背負う覚悟があるから
私は戦場で歌ってる

「誰一人として傷つけさせない
皆、私が守るもの」

”反転詩想”
|Èpée ou Bouclier?《盾か剣か》

不敵な笑みが奏でるは挑発的なリリックは
鋭く凍てつく黒光の音響刃から魅せる
音刃は敵を追跡しながら
敵の超音波を絡めとり
テレポートと伝達を狂わすジャミング
石化した人から遠ざけるよう翻弄

反転
仲間に捧ぐは聖の金光
輝く盾に響かす音の粒子:オーラ防御
石化人にも戦う皆にも
祈りに乗せた癒しの旋律を捧ぐ
優しく包んで鼓舞する譜

――もう大丈夫
恐怖に震える人の心を宥め
戦場に示すは勝利へ導く強き歌声

瞬間思考
狡賢く飛ぶ敵の位置を把握し
音の刃で空で仕留めたい

歌の合間
獣人達に振り返り

「私が敵兵の動きを狂わせるから
出てきた処を確実に討つよ!」

敵の接近時は
Final.で受け、カウンターを繰り出す
爆破させる前に仲間と連携しトドメを穿つ!



 ミラ・オルトリア(デュナミス・f39953)は『|白虎幇《パイフーパン》』の首領と彼の部下達、その他この街の裏社会に住まう獣人達と共に、上空からテレポートして強襲してくるコウモリ爆撃兵団を相手取っていた。
「守れるよ! 私たちなら!」
 彼女の凛とした声が戦場に響く。
 石化した獣人達の周囲にランダムで転移してきては爆弾を転がすコウモリ爆撃兵達を、ミラは時計針の形状をした暗器こと『Final.』で薙いでは退けてゆき、爆弾を空中へ放り投げてどうにか事なきを得ていた。
 漆黒の細剣めいた『Final.』は恐怖を嘲笑う敵兵の声を振り払うように、もしくは救いも願いも恐怖も全て掬い上げて背負う覚悟を体現するかのように、ミラの剣閃は大楽団の指揮者のタクトめいて優雅で苛烈に舞う。
 ミラが戦場で歌う理由、それは聞いてくれる者達を勇気付けるためだ。
「誰だって戦争は嫌だよ。恐れるのも当然。だからこそ、それを嘲笑って利用する、あなた達を此処で野放しになんてできない!」
 片手の『Final.』では手が足りず、ミラは空いた手にライフルを握る。
 そのまま遠近両用のガン=カタを即興で披露してみせる。慣れない戦術にぎこちなさが当然あるが、投下される爆弾を投げ返すよりも空中で撃ち落とした方がはるかに効率がいい。
「誰一人として傷つけさせない。皆、私が守るもの」
 彼女の覚悟が極まった時、黒雀の|戦歌姫《ディーバ》は新たな戦歌を唄い上げる。

「――|Èpée ou Bouclier《盾か剣か》?」

 途端、上空のコウモリ爆撃兵達を不敵な笑みで見詰めながら放つ挑発的リリックがユーベルコードを帯びる。
 ミラの歌声が届く半径136m圏内に存在するすべてのコウモリ爆撃兵へ、鋭く凍てつく黒光の音響刃が空を迸る。
 疾駆する黒光の音響刃はユーベルコード射程圏内のコウモリ達をどこまでも追尾してゆく。
 一見すると単なる飛ぶ斬撃波に思えるが、ミラの歌声から発生した鋭く凍てつく黒光の音響刃は飛来するだけで周囲の空気を激しく震わせる。
 これによってコウモリ爆撃兵のユーベルコードである超音波による攻撃予測を阻害する狙いもあった。
 案の定、コウモリ爆撃兵達は回避困難の音速の斬撃波に次々と切断されて地面へ墜落してしまう。
 大半は落下の際に絶命するが、それでも生き残った敵兵達を待ち構えていた獣人達がトドメを刺しに回っていた。
 とはいえ、それでもテレポートでの奇襲攻撃は止む気配はない。
(石化した獣人達のみんなに近寄らないで!)
 ミラは石化した獣人達の周辺を重点的に守護する事で、テレポート直後のコウモリ爆撃兵を漆黒の針で各個撃破してみせる。
 しかしそれは自身の石化感染のリスクを高める事にもなる。
(……体が、重い? まだ石化したような感覚はないけれど……?)
 もしかしたら、身体の内部で石化の兆候が始まっているのかもしれない。
 だとしても、ミラがこの場を離れる理由にはならない。
(絶対に守るから!)
 ならば、今度は味方を治癒して少しでも石化感染の速度を送らせなくては。
 同時に石化した獣人達の精神を癒すことで、コウモリ爆撃兵達のテレポートの起点を潰すこともできる。
「|反転詩想《リバーシブル・デュナミス》――!」
 先程とうってかわって、リリックは他者を慈しみ祈る優しさに満ちたそれへ移り行く。
 周囲に満たされるのは金光に輝き帯びた聖盾から響く音の粒子。
 優しく包んで鼓舞する旋律は、すっかり冷え切った石像に僅かな温もりを通わせていった。
(――もう大丈夫。私の歌声で、恐怖に震える人の心を宥めて、この戦場に勝利を齎すよ!)
 今まで名のある強大な敵と戦ったことがなくとも、その力強い歌声は誰かを守るために響き渡る。
 それを証明するべく、ミラは喉を焦がして、再び凍てつく黒光が瞬く音響刃をコウモリ爆撃兵達へ放つ。
(絶対に逃がさないから)
 放たれた音響刃は、まるで漆黒の檻めいて半円状に空間を取り囲む。
 こうする事で中に閉じ込められたコウモリ爆撃兵達は射程外へ逃れられず、不意に「助けて」と漏らせば、そとから次々と残存するコウモリ爆撃兵達が勝手にミラの射程内へ飛び込んでくれるわけだ。
 こうなれば、あとは食うか食われるかだ。
 コウモリ爆撃兵達は自爆突撃を敢行するべく、一斉にミラ達の全方位から急降下し始めた。
「私が敵兵の動きを狂わせるから、出てきた処を確実に討つよ!」
 獣人達へ指示を出し、ミラは絶唱しながら『Final.』とライフルを駆使しながら音響刃を操作する。
 もはや壁と見紛うほどの物量作戦に、手数を稼ぐためにとうとうミラは慣れない足技まで繰り出しでまで敵を蹴散らす。音の精霊の加護を宿した妖精靴『Espressivo.』がなければ、うまく戦えていなかったであろう。ただでさえミラは技能面の熟練度が低く、装備も未だ整ってるとは言い難い状況の中で、ここまで戦えているのは奇跡に近い。
 そんな歌いながら獅子奮迅の大活躍を見せるミラに感化され、獣人達も持てる武装とユーベルコードでコウモリ爆撃兵達を返り討ちにしてみせた。
「行くぜ! 虎軍奮闘!」
 白虎達の首領がユーベルコードで爪と牙でコウモリ爆撃兵達の行動を阻害する。
 そこへミラの音響刃がブーメランのように背後から飛来して、身体の左右を両断していった。
「あと少しだよ! みんな、この戦い、絶対勝つよ!」
「「おおっ!」」
 ミラは後ろ回し蹴りからライフルをぶっ放して敵の頭を零距離で吹き飛ばすと、黒き時計針で振り向きざまに敵の喉元を刺殺してみせた。
 こうして己の活躍と歌で獣人達を鼓舞し続けたミラは、まさに歌う戦姫に相応しい無双の活躍をしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『邪仙化僵尸妖術師』

POW   :    砲勁
【見えない衝撃波 】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD   :    凶嵐連弾
【凶つ風を帯びし拳 】【凶つ雷を帯びし蹴り】【妖術による幻覚フェイント】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    宝貝「淵喚陣」
レベル×1体の【恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》】を召喚する。[恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》]は【力強くもおぞましき容貌から放たれる破砕】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は郷・玲です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして、猟兵達は街の裏社会に住まう獣人達の助力と共に、ワルシャワ条約機構軍のコウモリ爆撃兵団を退けてみせた。
 しかし、今だ厄災【Q】は発動中。今まで戦ってきた獣人達にも、石化の症状が出ている者も現れた。
 早く元凶を探して潰さなくては……!
 そう焦っていた矢先の出来事だった。

 ――あれを切り抜けるなんて。猟兵の危険度を二段階上昇させて再設定します。

 まるで機械のように感情のない口調が聞こえた。
 目の前で砂塵が吹き荒れると、その場に忽然と現れたのは、黒い仮面を被ったヤギのような獣人の女キョンシーであった。

「邪仙化僵尸妖術師、識別番号|восемь《ヴォースェミ》。これより『始祖人狼の使者』として使命を遂行開始。厄災【Q】を局所展開。『半径150m以内にもうひとつの石化砂塵嵐を発生』させ、猟兵達の石化を試行。成功確率……95%。厄災【Q】を実行します」

 次の瞬間、周囲にもうひとつの猛烈な砂塵嵐が発生する!
 しかも、猟兵達の身体が徐々に石化してゆくではないか!
 これは同伴していた獣人達も同様だ。
 何か手を打たねば、猟兵達の身体は戦う前に石化してしまうだろう……!

「この街を岩と砂に変えよ、と『始祖人狼』様が仰いました。故に私はそれを実現すべく作戦を遂行するのみ。この砂塵嵐は『ワルシャワ条約機構軍に属さぬ存在全てを石化させる』ための厄災【Q】。抗う術など、ありません」

 邪仙化僵尸妖術師・識別番号|восемь《ヴォースェミ》が功夫の構えをとる。
 その両腕には禍々しい赤と緑のオーラが輝いていた。

 猟兵達よ、もはや一刻一秒の猶予もない!
 身体が完全に石になる前に元凶である目の前の『始祖人狼の使者』を討伐しなくては、この厄災【Q】は消滅しない!
 この街の獣人達を元に戻すためにも、猟兵達の最期の戦いが、今始まる!
 ユーベルコードの高まりを感じる……っ!
(※追記1:『街の屈強な獣人達と連携して敵を攻撃する』とプレイングボーナスが発生します)
(※追記2:プレイングボーナスが発生しないと判断した場合、苦戦若しくは失敗判定になる恐れが高まります)
シルヴィ・フォーアンサー
……キャバリアも固めてくとかヤバいね。
『君もな、短期決戦で勝負を決めるしかない』

連撃を叩き込もうとしてくる所にパラライズ・ミサイル。
麻痺して動きが鈍った所を獣人の皆に攻撃して吹き飛ばしてもらうよ。
その間にシルエット・ミラージュして分身達とアブソリュート・キャノンを叩き込むよ。
そっちが石化させるならこっちは氷漬けにしてあげる。
固まったら再度追撃してもらおうかな、自分でツイゲキシても良いけれど。


キノ・コバルトリュフ
マーツータケ、キノコセラピーはいかがかな?
かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!!
美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ!
ナメコ!?なんだか、目が血走ってるね。
キノは食べても……おいしいけど食べちゃダメだからー。



 厄災【Q】の猛威は、想像以上に猛威を振るった。
 その証拠に、クロムキャバリア《ミドガルズ》に乗り込むシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はコクピット内部に居ても指先が石化しているのを確認したからだ。更にミドガルズの機体の一部も石化が始まり、一部の機能が徐々に使用不可になりつつあった。
「……キャバリアも石化させて固めてくとかヤバいね」
『君もな、こうなったら短期決戦で勝負を決めるしかない』
 サポートAIユニット『ヨルムンガンド』の提案した|電撃作戦《ブリッツ》に、シルヴィは即座に行動に移した。
(体格差とリーチを生かして、敵をミドガルズの懐へ飛び込ませない)
『始祖人狼の使者』と名乗る邪仙化僵尸妖術師のユーベルコード『』は、凶つ風を帯びし拳 ・凶つ雷を帯びし蹴り・妖術による幻覚フェイントを織り交ぜた150連撃を繰り出してくることは、出立前のグリモアベースで予知されていた。
 ならばまだ石化していない脚部スラスター機構での機動力で敵をかく乱しつつ、ガトリングキャノンを持ったままロケットパンチを発射することで、オールレンジ射撃を可能とした。
 これで敵は迂闊にミドガルズの懐へ飛び込むことが出来ず、弾幕の檻の中へ閉じ込めらえてしまう。
『……こちらから攻め立てる事は困難と判断。しかし戦闘が長引くほど、猟兵の石化は進む。依然として東風他の優勢は揺るがない』
 使者の言う通り、敵の動きを封じたところで電撃作戦の要である攻撃を行わなければ意味合いが薄い。
 ならばとシルヴィは攻撃を畳みかけようとするが……。
『武装の一部に石化を確認。両肩部のミサイルポットの蓋が開かない模様』
「そんな、気合でどうにかならない?」
『メカに根性論を求めないでくれ』
 まさかのトラブルにシルヴィは焦る。
 どうすればいいか旬jんしている最中、それは突然現れた。

「キーノキノ♪ キーノキノ♪ マーツータケ、キノコセラピーはいかがかな?」
 脈絡もなく転送されてきたのはキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)であった。
 恐らく状況を全く理解できてない中でこの戦闘に乱入してきたのだろう。
 使者とシルヴィの戦闘そっちのけで、キノは持参したマツタケを七輪で焙り始めた。
「美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ! かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!!」
 焼いたマツタケの香りが戦場に漂う。
 同時にキノの全身からもかぐわしいキノコの香りが放出され、ミドガルズのコクピット内部にまで香りが充満する。
「うわ、いい香り。いや、そうじゃなくて。そこにいると危ないよ」
 流石にシルヴィもキノの天衣無縫ぶりにツッコミを入れざるを得ない。
 そんな自由過ぎるキノは、注意されるとようやく周囲の状況を把握し始めた。
「そういえばやけに此処は砂が待ってるね。エリンギ!? キノの身体が石になってる~!」
 厄災【Q】の影響がキノの身体を蝕む。
 他の猟兵が思わず『悪いのはあの黒い仮面を被った奴だ』と叫ぶ声を聞いたキノは、何を思ったのか焼いたマツタケを敵へ差し出した。
「キノの身体を石にするのはやめてほしいからー」
 そんな事がまかり通るわけがない。
 その場にいた誰もが思い浮かべた。
 当然、死者は自身の周囲に恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》を150体召喚する。
 一斉にそれらがキノを圧殺せんと襲い掛かる。
 もう駄目だ、シルヴィはコクピットを飛び出して、無理矢理にミサイルポッドの蓋をこじ開けに向かった、その時だった。
「がふッ!?」
 突然、死者の身体が空中へ弾け飛んだではないか。
 攻撃したのは、なんと使者が召喚した|深淵の落子《アビススポーン》達であった。
「マイタケ? キノの焼いたマツタケ、ほしいのかな?」
 なんとキノの体臭と焼いたマツタケの香りが、ユーベルコードの効果で|深淵の落子《アビススポーン》達をたちまち懐柔させてしまったのだ。故に死者に反旗を翻し、キノを守ったのだった。
 おかげで時間稼ぎができたシルヴィは、強引に石化したミサイルポッドの蓋を破壊して使用可能に持ち込めたのは幸運以外の何物でもなかった。
「ヨル、いくよ」
『ミサイル自体はまだ生きている。発射シークエンス開始――』
 まさかの展開に救われたシルヴィは、ここから反撃に繰り出した。
『パラライズ・ミサイル、発射』
「……ビリビリってするよ」
 吹っ飛んだ使者へ目掛けて高圧電流を撒き散らすミサイルを乱射。
 着弾すると青白い電撃が着弾点で迸る。
 続けてユーベルコード『シルエット・ミラージュ』を起動させ、14体のキャバリアの精巧な残像分身を召喚。
 更にユーベルコード『アブソリュート・キャノン』で使者を15機のキャバリアが狙い澄ます。
「……ボコボコにして、カチンコチンにする」
 ハイペリオンランチャーから神殺しの絶対零度の冷気属性のビームを放つ。
 自身よりレベルが高い使者には2倍ダメージとなり、更に残像分身のおかげでさらに威力アップ。
「そっちが石化させるなら、こっちは氷漬けにしてあげる」
 容赦ない冷凍光線が使者の身体を真っ白な霜塗れにしたのを確認したシルヴィは、これ以上の石化の影響を受けないために戦場150m圏内から離脱していった。
「……キミも危ないから来て」
「シイタケ~!?」
 キノは訳も分からないまま、キャバリアの手の中に包まれて強制離脱させられていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●緒戦を終えて
 こうして、2人はどうにか獣人達の助けを借りずに使者へ一発かますことが出来た。
 だが、これは偶然にも2人が幸運に恵まれていたからこそ成立した先頭であることを忘れてはならない。
 次はこんな幸運は滅多に起きない。故に、再度、猟兵達は獣人達との連携を密にして戦術を練ってほしい。
 そうしなければ、君達の末路は石像である……!
鹿村・トーゴ
話の通じる相手じゃねーな
任務至高てか洗脳?思考放棄してるよーだし
白虎幇方、出遅れたら石か死体だ
三方に展開
常に猛撃を頼むぜ
決して奴に怖じ気づくな
何度でも殺す気で挑まれよ
石化する恐怖感を紛らせ攻撃特化の為にも【催眠術】込みで鼓舞

自分も【激痛耐性】で石化箇所無理にも動かし速さ維持

相棒ユキエ
懐から出て『ユキエもやるよ』
頼もしーな
助けてくれる?可愛いユキエ
UC行使

手裏剣を【野生の勘、念動力で投擲】し敵UC達を蹴散らし
UCユキエの後を追い敵へ接近、至近から猫目雲霧を槍化し【串刺し】
刺したまま手持ちクナイで頸動脈や【目潰し、暗殺】狙い【捨て身の一撃で傷口をえぐる】
お前の死はこの街の救い
戦は辛いねェ

アドリブ可



 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は一瞬で理解した。
 目の前の『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが常軌を逸している事を。
「話の通じる相手じゃねーな。任務至上主義てか……洗脳か? どうも思考放棄してるよーだし」
「いやアンタ、よく冷静でいられるなっ?」
「やべぇ、俺の左手が完全に石になっちまった!」
 白虎達は凄まじい速度で石化してゆく己の身体に恐怖を出だしてパニックになってゆく。
 そんな彼らを鹿村は一喝した。
「騒いだってどうにもならねーよ、|白虎幇《パイフーパン》の白虎さん方。こっから先は決死戦だ、出遅れは即座に死と石化が待ってる。腹を括んなー?」
 情けなく狼狽える白虎達に気合の言葉をかけると、鹿村の懐からやれやれと言いたげに相棒の黄芭旦のユキエが顔を出した。
『図体でかいだけで肝っ玉が小さいったらりゃしないわ。こうなったら、ユキエの出番ね?』
「おっ? 頼もしーな? んじゃ助けてくれる? オレの可愛いユキエ?」
『任せてトーゴ』
 ユキエは砂塵嵐が吹き荒れる戦場に飛び出すと、大きく翼を広げて獣人達の頭上で羽ばたく。
「そこの腰抜けの『ネコちゃん』達、よーく見てなさいね? トーゴ、やっちゃって?』
「りょーかい。んじゃ……」
 鹿村は手元で複雑な印をいくつか素早く結んでゆく。
 これをさせまいと使者はユーベルコードで150体の恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》達を召喚し、鹿村へ殺到させた。
「|白虎幇《パイフーパン》、三方に展開してあれらを止めてくれ。怖いかもしれねーけど、自分が石化するよりはまだマシだろ?」
「くっそ! やってやるよ!」
「あとでメシ奢れよ、オニの坊主!?」
「|白虎幇《パイフーパン》の意地を見せてやるぜ!」
 白虎達は鹿村のユーベルコード発動の時間を稼ぐため、必死になって異形の怪物を爪と牙で足止めしてゆく。
 だがひとり、またひとりと石化して地面に転がってゆく。
「みんなは必ず元に戻す。だから、今は悪いが……耐えてくれよな?」
「ああ……信じてるぜ、ボウズ!」
 そいう言い残し、最後のひとりも完全に石になって硬直してしまった。
 だがそのおかげで、完全に鹿村はユキエを別次元の聖獣へと昇華たらしめる事に成功した。
「灯の羽 白の尾 火の雪の 寄せる緋の目のしらとりを──寄せの術……依り代は、ここに」
 次の瞬間、砂塵嵐が炎に包まれる。
 顕現するは四聖獣・鳳凰。南の方角を守りし不死の火の鳥だ。
『邪魔よ、退きなさい!』
 鳳凰化したユキエの燃え盛る強烈な連続蹴りが、異形の怪物達を蹴り飛ばしては焼き払ってゆく。
「ユキエ、そっちは任せた」
 鹿村はユキエが怪物を処理してくれている間に、ガラ空きの使者へ向かって飛び込んでいった。
「お前もただ利用されてるだけなんだろうさ、だから救ってやれればいいんだろうけどなー?」
 投げた苦無がすべて使者を素通りしてゆく。
 鹿村が手にしているのは、刀身が透明な巨大忍刀『七葉隠』。その圧倒的なリーチを悟られないように、まっすぐ使者へ突き立てる。
 それを先読んで使者は身体を半身退くも、先程素通りした苦無が鹿村の念動力によってUターンしたことに気付かずに直撃を喰らってしまう。
 関節に刺さって動きが鈍ったところへ、長大な透明の刃が逆袈裟に振り抜かれた。
 頸動脈と内臓をバッサリと切り裂かれれば、キョンシー化してるとはいえ大ダメージは免れない。
「悪りーな、お前の死はこの街の救いなんだ。戦ってのは辛いねェ」
 どす黒い使者の血液が砂塵に混じってゆく。
 その場で膝を付いた使者へ、今度はユキエの燃え盛る蹴りがクリーンヒット!
『トーゴ、あのキモい怪物は全部やっつけた』
「でかしたユキエ。って、こりゃオレもそろそろやべーか?」
 鹿村の左脚が完全に硬直してしまっていた。
 このまま完全石化に至る前に、鹿村はやむなく相棒と共に戦場から離脱していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット
仮面筋肉ケモ…なかなかフェチいですね…
ってひいい…石化デバフはこりごりです(過去依頼のトラウマ

砂嵐に向けて次元斬です!思いっきり!
砂嵐を断ち切りたいですが無理そうなら砂嵐を吸い込んで留めておきます。
これできっと石化もある程度抑えられるはず
今のうちにケモさん達と突撃です
小さい体を活かして潜り込み、双剣乱舞です!敵のやりたいことをやらせません
私ごとでいいので思い切り皆で攻撃しちゃってください。
嗅覚も聞き耳も全部使って空間認識頑張ります!けものくさい(嬉しい)
シャドウパリィで敵の攻撃は弾き、仲間の攻撃は敵に当たるように受け流します

砂嵐を抑えるのに限界を感じたら撤退します!もう像にされるのは嫌なので!



「う゛っ! 唐突な仮面筋肉ケモキョンシーの供給ですって……? それは、なかなかフェチい癖の塊ですね……」
 ルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)は、胸元を急に抑えて動悸息切れが激しくなっていった。
「ふ、ふへへ……な、なんですか、そのエチチチコンロ点火不可避な組み合わせは! 始祖人狼は天才ですかっ? 対ケモナー性癖創造神ですかっ!? いや、今はそんな呑気な事を言ってる場合じゃありませんでした! っひいぃっ! 私のキレイな毛皮が石化しかけてます! いやだあ~~!?」
 ルナは過去の依頼のトラウマを今も引きずっており、石化の状態異常に恐怖を抱き続けていた。
 このままでは自分もあの時の二の舞に……。
 そうなる前に、手早く『始祖人狼の使者』を撃破しなくては!
「やる事はシンプル is ベスト! 砂嵐に向けて次元斬です! 思いっきり! まとめ狩りです! おりゃっ!」
 SSR:宝剣ローゼンハートを上段から力任せに振り下ろすと、ルナの目の前に次元断層が発生!
「これで石化の砂塵嵐を吸い込んじゃいます! つまり、なかったことにしてしまえば石化は抑え込めるはず!」
 厄災【Q】は石化の砂塵嵐に直接作用する行動はペナルティが発生する。
 既に他の猟兵がそれで手痛い目に遭っていたのだ。
 だがしかし、ルナの行動は厄災【Q】の盲点を突いた。
 大剣で斬った軌道上に発生した次元断層は、138m以内の任意の全対象を引き寄せ、吸い込むことが出来る。
 つまり、次元断層の中へ砂塵嵐そのものを吸いこんでしまえば、現実世界での被害のペナルティごと別次元へ送り込めてしまうため、ルナの実害はゼロ!
 これには使者も黒い仮面の下の表情が曇ってゆく。
「こんな事、まさか起きるなんて。ユーベルコード、やっぱり油断ならない」
「えっ? わ、私、なんかやっちゃいましたかっ?」
 凄まじい殺気を放つ使者の様子に、ルナは思わず身震いしてしまう。
 使者は緩慢な動きながらも隙のない構えを取ると、一気にルナの懐へ飛び込んでいった。
「だったら……これで――凶嵐連弾」
 凶つ風を帯びし拳、凶つ雷を帯びし蹴り、妖術による幻覚フェイントを組み合わせた、150回の連続攻撃を放つ。
 これにルナは街の獣人達と一致団結し、狙いを一箇所に集中させないように包囲攻撃してゆく。
「ケモさん達! 此方が攻撃し続ける限り、相手は幻覚フェイントで避けざるを得ません! それが包囲攻撃なら猶更のこと、攻撃をさせずに150回行動を使い切らせましょう!」
 つまり、実力が猟兵に劣るといえど、波状攻撃で獣人達が周囲から攻撃を加え続ければ使者は回避行動をとらざるを得ない。獣人達は互いの死角をカバーし合うことで、死者が反撃に転じる隙をことごとく潰していった。
「私も負けてられません! 小さい体を活かして潜り込んでの、双剣乱舞です!」
 SSR:宝双剣ローゼンクイーンの漆黒の二連炎斬撃が、立て続けに放たれた死者の拳と蹴りを弾き返してカウンターを浴びせる。
 ルナはむしろ自身が使者を足止めする事で、無理矢理に隙を生み出してゆく。
「さあ! 私ごと打ちのめしてくださって構いません! 覚悟はできてます!」
「ごめんね、お嬢ちゃん! やぁっ!」
 羊のサイバー寵姫が功夫でルナごと使者を蹴り倒す。
 押し寄せる獣臭に、ルナは思わず恍惚の笑みを浮かべてしまう。
「ああ、とってもけものくさい!」
 だが、愉悦の時間はそう長くは続かなかった。
「うむむ、そろそろ皆さん、石化が進んじゃってますね! 残念ですが、ここで一時撤退しましょう! もう二度と石像になるのは御免ですので!」
 そう言いながらもルナは他の獣人達が逃げるまで|殿《しんがり》を務め、双剣で敵の連撃の残りをパリング防御し終えると、最後は駄目押しで大剣の斬撃で次元断層を生み出して使者の追撃をかわしてみせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
24時間以内ならあのカカオ汁効果は続くよな…?

…本当に厄介な能力だな【Q】ってのは
儀式魔術の【Q】ってそういうのだったか…?
「便宜上同じ名前だけど…無関係でもない…のかな?」
…猟兵の【Q】で相殺とかできないか…?

ま、今はぶちのめすのが先だな

よぅ…中々手こずらせてくれたじゃねーか
「メルシーの幼女祭りを壊滅まで追い込んだのはスーパー戦車君以来だぞ☆」

さてむきむき白虎達…協力してもら…テンションたけーなおい!
「ドーモ、восемь=サン。爾雷彌です。」(イケオジが挨拶
あれちゃんと戻るよな…!
「爾雷彌君猟兵の共有兵器だからね…!」
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の動き…戦い方…妖術の性質を分析把握
獣人達とも情報共有
【属性攻撃・迷彩】
己達と白虎達と爾雷彌に光水属性を付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で匂いと音を隠蔽
【念動力・弾幕】
UC発動!超高速で飛び回り念動光弾を叩き込み
【電撃・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
爾雷彌や獣人達と連携しながら鎌剣と太刀で切り刻み電撃を流し込み
角とかパーツとか強奪!


皇・絶華
カカオ汁効果継続中


成程…そのような考えに至るとは…そして心無き在り方
判ったぞ…!
ヴォースェミよ!お前には足りないものがある!だが安心するがいい…この私が!未だ仲間に使えない至高のチョコでお前に圧倒的なパワーを授けてやろう!
「「ぴぇ!!」」(さっちゃんと白虎達もぷるぷる

UC準備開始
【戦闘知識・第六感】
敵の動きと攻撃の性質把握
【念動力・乱れ打ち・弾幕・バーサーク・空中戦】
飛び回りながら念動光弾を乱射しつつ白虎達の攻撃を援護
そして狂戦士化により深淵の落し子も怖くはない!
【二回攻撃・切断・武器受け】
妖術師に襲い掛かりTCで切り刻む

地獄のUC発動
さぁ!我がチョコを食し歓喜の叫びをあげるがいい!



「う~ん、マズい! もう一杯!」
「はっはっは! カシムもパワーを求め始めたか! いいぞ!」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は皇・絶華(影月・f40792)特製のカカオ汁を飲み干してお代わりを求める。
 こうする事で24時間以内は即死すら克服できる無敵モードになれるのだ。
「つか……本当に厄介な能力だな【Q】ってのは。儀式魔術の【Q】ってそういうのだったか……?」
「う~ん? 便宜上同じ名前だけど……無関係でもない……のかな? おええぇ……」
 相棒のメルシーも渋い顔をしながらカカオ汁を喉の奥へ流し込んだ。
「……猟兵の【Q】で相殺とかできないか……? って、あれは実現まで時間がかかりすぎるな?」
 グリモア猟兵の提唱する儀式魔術【Q】は、そもそもが確証が心もとない上に実現まで半年はざらにかかる。
 即効性がない以上、厄災【Q】への対抗策にはなりえない。
「何を言うかカシム? 要はカカオとパワーで解決すればいい!」
 そして絶華は相変わらず頭がおかしい。
 下僕のサートゥルヌスは主の奇行に、もはやツッコミすら起こす気概もなくなっていた。
「ところでさっちゃん、あの仮面を被ったケモエッチな相手をどう思う?」
「いや、急に癖の話をされましても?」
 困惑するサートゥルヌスに、絶華は予定調和をぶっかました。
「青白い肌! 生気のない様子! ダウナーな言動! そもそも顔を隠して恥ずかしがっているマインドがよろしくない!」
「ん????????????????????????????????」
 サートゥルヌスは改めて『こいつ何言ってんだ?』みたいな顔で絶華を見詰めた。
 だが当の本人は通常運行で、通常通りの結論に至った。
「成程……そのような考えに至るとは……そして心無き在り方! 判ったぞ……! ヴォースェミよ! お前には足りないものがある! それはパワーだ!」
「やっぱり!?」
「フフ、さっちゃんもだいぶ理解してきたな? ヴォースェミよ、だが安心するがいい……この私が! 未だ仲間に使えない至高のチョコで! お前に圧倒的なパワーを授けてやろう!」
「「ボンバイエ! ボンバイエ! ボンバイエ!」」
 カカオ汁で脳を焼かれた上半身裸の白虎達が狂喜乱舞する。
 この時点で常人離れしたアトモスフィアにつつまれ、SAN値チェックのダイスを振らざるを得ない。
 対して、始祖人狼の使者は功夫の構えを取ると、虚空に拳を突き出した。
 次の瞬間、見えない衝撃波が前方150m先にある物質を粉々に砕いてゆくではないか!
 その先には、石化した獣人達もいる!
「やばい! くそ!」
 サートゥルヌスは神機の姿へ戻り、石化した獣人達を庇うように衝撃波を受け止めた。
「ああ、ったくよぉ! なんで俺はこんなことをしてるんだ!?」
 以前のサートゥルヌスは極悪非道で、誰かを庇うなんてしなかったはずだが。
 これに絶華はニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「でかしたぞ、さっちゃん! 我がカカオ汁を常飲しているおかげで、正しき心が身に宿りつつあるな!」
「え?」
 サートゥルヌスはカカオ汁に洗脳効果まであるのかと、今更ながら身震いしてしまう。
「よし! たかが衝撃波だ! カカオマッスルボンバータイガー軍団よ! 私と共にチョコレートボンバイエ祭りだ!」
「「WOOOOOOOOOOO!」」
 こうして、絶華もカカオ汁を飲み干すと、上半身がムキムキになって衣服を弾き飛ばすと、ゴリマッチョになった白虎達と一緒に始祖人狼の使者にとても酷い事をした。
「うわ、集団リンチってあーいうことをいうんだな?」
「もうぜっちゃんだけでよくないかな?」
 カシムとメルシーもドン引きするほどの肉弾戦の応酬が目の前で繰り広げられている。
 とはいえ、何もしなければカシム達もただ石化してゆくだけだ。
「わしも忘れるな! ドーモ、ハチバン=サン。ジライヤです」
 巨神もカカオ汁を飲んで黄金のオーラを放出すると、身勝手な極意を発揮して超高速連撃を放ち始めた。
 ここまでくると本当にカシム達のやることがなくなってゆく。
「……取り合えず、僕達はいつもの奴をやるぞ!」
「光学迷彩魔術からの~? ユーベルコードで滅多切りだぞ☆」
 こうして、カシムとメルシーはステルスモードへ移行し、野菜星人めいた戦闘から弾き出された始祖人狼の使者の死角から、超音速斬撃をこれでもかと叩き込んでゆくのであった。
「ヤーバダーバドーーー☆」
「メルシー、おめーヤケクソじゃねーか!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨飾・樒
状況は厳しいけど、敵も追い詰められてる
方法はあるはず、抗ってみせる

私の"眠り薬の魔弾"は物質を透過するけど、厄災【Q】の砂塵を無力化できるとは思えない
そのまま撃ち込んでも減衰させられるかも
敵を確実に仕留めるために、戦える人達に協力を要請したい

感染していくような広がり方、今展開された砂塵嵐の効果を見ると、石化には指向性がある
嵐を遮ることができれば石化の進行は遅らせられるはず
深淵の落子を迎撃しながら、石化が進んでしまっている人から順に嵐が吹き付けてくる側に立って遮ってもらう
その間に他の動ける全員で近付き、仮面の敵に火力を集中する
近付いた分、敵との間にある砂塵嵐も薄くなって魔弾も通じるかもしれない

私の魔弾より決定打になり得る攻撃手段を持っている人がいるなら迷わない、私が嵐を遮る盾になる
私達の誰かが敵を仕留められたら作戦成功、勝って全員が助かるんだから


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブ歓迎

見つけた、石化の犯人!
でも仲間を出すみたいだし、本人もすごく強そう。
街や石になった人への被害を考えると、マリア一人だと大変……虎さん達、お願いがあるの。必ず元に戻すから……石になってくれる?


『海たる水に満ちよ』

無機物を海と、海に生きる生命に変えるこの奇跡で、地面や建物を海水に変えて戦場を塗り替える。
ヴォースェミ?とその仲間全部を海に飲み込んだら、自分から石になってくれた虎さん達。
みんなをサメやタコ、シャチにクジラ、ウミヘビその他、作り出した海で自由に戦える強い生物へ変えて、一緒に戦う……!

そうしたら此処はもう、念動力で海流も水圧も自由自在な、マリアの動かす戦う水族館!
どれだけ石化したってその端から変身しちゃえば平気だもん!

だから絶対勝って、みんなみんな助けるんだから!!



 雨飾・樒(Dormouse・f41764)は吹き荒れる砂塵嵐を注意深く観察していた。
(状況は厳しいけど、敵も追い詰められてる。方法はあるはず、抗ってみせる)
 六式拳銃丙型を身構えて150体の恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》達を撃ち抜きながら、周囲の獣人達にも要請して抑え込んでもらっていた。
(私の“眠り薬の魔弾”は物質を透過するけど、厄災【Q】の砂塵を無力化できるとは思えない。そのまま撃ち込んでも減衰させられるかも)
 厄災【Q】の砂塵嵐が吹き荒れる限り、ワルシャワ条約機構軍に所属しない全てを石化する。
 つまり放たれた弾丸が使者に命中する前に石化してユーベルコードが無効化されてしまう恐れがある。
 と、ここで雨飾は獣人達に指示を出した。
「石化には指向性がある。嵐を遮ることができれば石化の進行は遅らせられるはず。だから石化が進んでいる人達、砂塵嵐を遮るように風上に立ってほしい。もしかしたらそうする事で風下の人達の石化速度が遅くなるかもしれない」
 そう考えて周囲に白虎達を配置するが、石化の進行度合いは総じて一定であった。故に石化の指向性の仮説は否定された。
 だが、この指示が後に雨飾も想定していなかった思わぬ効果を生み出す。
「さあ、今のうちに。動ける全員で使者と落とし仔達を撃退しよう」
 雨飾は全身が石化しながらも、懸命に何度もユーベルコード『|眠り薬の魔弾《ヒプノティク》』を乱射する。
「私の魔弾より決定打になり得る攻撃手段を持っている人がいるなら迷わない、私が嵐を遮る盾になる。私達の誰かが敵を仕留められたら作戦成功、勝って全員が助かるんだから」
 そう呟き、雨飾は完全に全身が石化してしまうのだった。
 左右にずらりと並ぶ石像の数々は、まるで博物館めいて始祖人狼の使者を取り囲んでいた。

 そこへ遅ればせながらアヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)は舎弟の白虎達を引き連れ、砂塵嵐の中へ飛び込んできた。
「見つけた、石化の犯人! って、いっぱい石化しちゃってる!?」
 変わり果てた雨飾と獣人達の石像に、彼女は目を瞬かせて驚いた。
 アヴァロマリアの腕の節々も、どんどん石化が進んでいる。
「この砂嵐の中にいるだけで石化しちゃうみたいだね? むしろ砂嵐を浴びに行くと余計に石化しやすくなるのかな? しかも仲間を出すみたいだし、本人もすごく強そう……」
 何か勝利のためのヒントはないか、アヴァロマリアは思考をフル回転させる。
 すると風上に率先して立つ雨飾達の石像の位置から、アヴァロマリアはすぐさまこの戦場の必勝法を編み出した。
「そっか! そういう事なんだね! でもこれを実行するには街や石になった人への被害を考えると、マリア一人だと大変……」
 そんな困り顔のアヴァロマリアへ、舎弟の白虎達が進み出てくる。
「マリア姐さん! 俺らに出来る事なら何でもしますぜ!」
「マリア姐さんに命を預けやす! 鉄砲玉でも何でも言ってくだせぇ!」
 漢気溢れる白虎達の申し出に、アヴァロマリアはこれ幸いとニッコリ微笑んだ。
「なんでも、してくれるの? じゃあ虎さん達、お願いがあるの。必ず元に戻すから……砂嵐を浴びて石になってくれる?」
 まさかの申し出に、一瞬だけ白虎達の表情が引きつった。
 しかし、彼らは任侠に生きる白虎達。姉御と慕った相手の命令は絶対なのだ。
「「ヨロコンデー! うおぉぉぉっ!」」
 白虎達は落子達を爪と牙と青龍刀で薙ぎ払いながら、使者が放つ砂塵嵐の中へ果敢に飛び込んでいった。
「愚昧。自ら石になりたいの?」
 功夫で白虎達の猛攻を次々といなしながら、使者は石になって転がる彼らを見下してみせた。
 だが、次の瞬間、使者の足元にはいつの間にか水が満ちているではないか。

「――虎さん達、ありがとう」

 クリスタリアンの聖者の手元に輝く光の剣が周囲を照らす。
 その光が、瓦礫の建物を海水へ変え、石化した獣人達を海に住まう多種多様な生物へと変換してゆく。

「さようなら。骸の海まで、送ってあげる。|『海たる水に満ちよ』《オン・ヤム・スヴァーハ》――これが、マリアの戦う水族館!」

 あっという間に周囲は深海へ変貌を遂げ、始祖人狼の使者は呼吸もままならずに溺れ始めた。
「ゴボ……ッ! ゴボボ……ッ!?」
 黒い仮面の下で、使者は信じられない光景を目撃する。
 今まで石化した獣人達は、アヴァロマリアのユーベルコードによってイルカやクジラ等の海洋哺乳類になったり、巨大なタコやイカ、カニや二枚貝、更には毒を持った魚群や鮫などに変身し、アヴァロマリアの念動力で一斉に使者へ襲い掛かってくるのだ。
 これも雨飾が規則正しく風上に石像を並べるような配置で砂塵嵐を防いでくれたおかげで、いつの間にか半径150以内に使者の包囲網が自然と構築されていたのだ。
「……この身体は、一体……?」
 しかも、雨飾は上半身は鼠獣人かつ下半身はシャチの下半身を持つ半魚人となって、自意識を取り戻すことに成功。
(そうか……あの子が遂に敵を追い詰めてくれたのか。なら私も出来る事をしよう)
 海中で素早く尾ひれを動かしながら、使者へ愛銃からユーベルコードのペールブルーの魔力弾を放つ。
 溺れて身動きが効かない使者の死角から放たれた昏睡弾は、容赦なく落子達の意識を手放させてゆく。
 他の石化した獣人達も、次第に自我を取り戻し、今までの報復とばかりに使者の身体へ四方八方から突っ込んでいった。
「マリア姐さん! こういう事だったんスね!」
「俺達はマリア姐さんを信じてました!」
「野郎共! ヤギを食いちぎってやろうぜ!」
 ウツボになった白虎達がアヴァロマリアを称賛しながら使者へ噛みついてゆく。
 そんな中、アヴァロマリアは念動力で周囲に空気の空間を作ってそこへ収まりながら、浸透圧を調整して水中呼吸を実現させていた。
「えぇと、ヴォースェミ?さんだっけ? あなたは石化したみんなを見下してたけど、マリアはそんなみんなと一緒に戦うの!」
 半径134mの領域水族館に閉じ込められた使者は、海洋生物に変身した今まで侮ってきた獣人達に取り囲まれてしまう。雨飾の魔法昏睡弾で意識が途絶え欠ける中で、アヴァロマリアの光の剣の切っ先を突き付ける姿を最期に見た。
「あなたがどれだけ石化したって、その端からマリアがみんなを変身しちゃえば平気だもん! だから、絶対勝って、みんなみんな助けるんだから!! それが、マリアの願いだからっ!!」
 この言葉が合図となり、獣人達の反撃は最高潮に達する。その中から前に出るのは、シャチ半魚人になった雨飾だ。
「その願い、私が手伝おう」
 使者へ体当たりを行うと、押し付けた愛銃の引き金をもう一度引いた。
「沈め、静寂の奥底に」
 黒い仮面の上から額の位置に密着した銃口。発射されたペールブルーの魔力弾が、冷え切ったヤギ獣人の頭蓋骨をうなじまで撃ち抜いた。
 押し寄せる睡魔と魚類の群れに、使者はただひたすら飲まれてゆくのみであった。

 戦闘が終わると、アヴァロマリアはユーベルコードを解除して皆を元に戻した。
 厄災【Q】はすっかり焼失し、今まで石化していた獣人達と猟兵達は元通りになっていた。
 白虎達を始めとする、この街の裏社会の獣人達も全員が無事だと分かり、これでようやく猟兵達は街の危機を退けたと安堵したのであった。

 ロシアのワルシャワ条約機構軍が、何故、中国大陸へ侵略をしてきたかは未だ不明だ。
 しかし、猟兵達はこれからも街と人々の命を救い続けるだろう。
 いずれ起こりうる、世界大戦のその日まで……!

<了>

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年12月05日


挿絵イラスト