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ティタニウム・マキアの遊戯

#サイバーザナドゥ #ノベル #猟兵達のハロウィン2023 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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#猟兵達のハロウィン2023
#巨大企業群『ティタニウム・マキア』


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ステラ・タタリクス




●仮装・悪戯・♥
 目の前に幽霊がいる。
 いや、正確に言うのならばシーツのようなローブを羽織った紫の髪を持つ女性である。
 亜麻色の髪の男『メリサ』は、またか、と思った。
 またか、と思うほどには彼女――ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は度々彼の元を訪れていた。
 もうぶっちゃけ通い妻である。
 待て待て。それは語弊しかない。
「というわけで『メリサ』様! ハロウィンです! |Trick yet Treat!《お菓子くれても悪戯します!》」
「ルビ、ルビがおかしい。この場合副音声っていうのかもしれないけれど、翻訳機仕事しろ」
 亜麻色の髪の男『メリサ』は冷静に言う。
 彼はしれっと脱獄した後、こうしたセーフハウスを転々としている。
 巧妙に隠蔽しているし、巨大企業群の追跡も完全に振り切っている。だというのに、なぜだかどうしてか紫の髪の女性ことメイドのステラはこうやって『メリサ』の元へとやってきている。
 どうやっているのだろうか。
 ていうか、なんて?
「ハロウィン? そんな旧時代のイベントのことを言われたってなぁ……」
「ちなみに仮装の下はほぼ全裸です♥」
 少しめくれば生足が見える。
「いつでも生ステラのお届けが可能です♥」
「やめろやめろバカ! 何考えてんだあんた!?」
「それとも、いつものメイド服の方がよろしいですか? もー『メリサ』様ったらメイド好きすぎ♥」
「話聞いてくんないかなぁ!?」

 いつものやり取りである。
 まじで困る。
 ていうか、息ヤバイ。
「はー♥ はー♥」
「息荒すぎない!?」
「いえ、ただの恋の動悸が凄まじいだけです!」
 めちゃくちゃくっついてくる。色々当たってる。当ててるし。もうなんていうか、どうなってんだろう、この人。
 一端、『メリサ』はステラの肩を掴んで引き離し、真正面から顔を見る。
「はい、吸って吐いて。はい吸って」
「やん♥ そんな吸ってなんて」
「息を吸ってって意味ね!? 吐いてって言ってるだろ!」
 なーんだ、とステラはぶーたれている。ひらひらとシーツの裾を揺らすものだから危ない。めちゃくちゃ危ない。倫理観どうなってる。

「あのさぁ、マジでアンタどうやって来てるの? マジでセキュリティしっかりやってるつもりなんだけど」
「悪戯していいですか?」
「話聞いてる!?」
 隙あらがイチャつきたい。ステラは本気でそう思っている。それがわかるからこそ、無碍に出来ない。いや、なんで無碍に出来ないのか。
『メリサ』自身もよくわからない。
 ステラとしては恋人の逢瀬である。
 めちゃくちゃズレてる。
 片や追いかけ回されていると思っている『メリサ』。片や通い妻なつもりのステラ。
 噛み合わなすぎである。

「悪戯♥」
「ダメって言ってるでしょ!?」
「いいじゃないですか。猫のひげ書くだけでも」
「ダメだっつの」
「くすぐるとか! 当てるとか! 当てて頂くとか!!」
「要求のハードル上がってない?」
 そんなじゃれ合うようなやり合いの中でステラは笑む。どうして笑っているのか『メリサ』にはさっぱりであった。
「最近の『メリサ』様は『平和』なのでしょうか?」
「何、急に」
「いえ、普段がわかりませんので少々心配を。貴方様は『どうしても』闘争に引き寄せられる御方。それに……」
 少しきな臭くなりそうな気配がしているので、とステラは自身が猟兵であることの予感を直感として受け取っているようである。
 確かに彼がのんびりと闘争ではなく逃走生活を楽しんでくれているのならばそれで良いのだ。
 ただまあ。
 その。
 ほら、あれである。

 枯渇するのである。
 何がって。
「『メリサ』様成分の補給をしておきたいところなのです! というか、押し倒したいというか!」
 がばりんちょ。
 すぐこれである。シリアスのシの字すらない。
『メリサ』は、猫みたいにヌルっと避けてステラの手を取る。

「あ、淑女らしくなかったですか? それとも、こうして組み敷いて……なんて、キャー♥」
「……それなりに『平和』なんじゃない? こうしてアンタとじゃれ合う程度には」
 後ろ手に組み伏せるような形になっているステラと『メリサ』。
「お菓子はやれないけどさ」
 ステラは振り返る。
 そこに在ったのは『メリサ』の甘やかな微笑みだった。

「『これ』ならあげるよ」
 ガチャン。
 音がする。
 え、と思った先にあったのは『手錠』であった。
 にこり。
「拘束プレイですか!」
「ちっがーう! それは時限式の拘束なの。時間稼ぎしてアンタから逃げようって腹積もりなの!」
「ねー『メリサ』、あんたさ、なんか変なの買った? クレジットおかしいことに……」
 だが、そこに来訪者が現れる。
『ケートス』である。彼女は、二人の様子を目の当たりにして、『うわ……最低』と吐き捨てて消えるのだ。

「……あーもー!!」
『メリサ』の嘆きめいた叫びが木霊し、ステラは悪戯と牽制ができたことに満足するのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年11月12日


挿絵イラスト