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【RTA】竜牙兵団撃滅エクストリームハード(Any%)

#ゴッドゲームオンライン #GGORTA学会

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#ゴッドゲームオンライン
#GGORTA学会


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●ゴッドゲーム・オンラインのRTA勢
 GODGAME//ONLINE。究極の自由を謳う、MMORPGである。プレイヤーは普通に冒険してレベルアップしてもいいし、対人戦に明け暮れてもいいし、アイテムのクラフトや農業などでスローライフを疑似体験してもいい。すべてがプレイヤーのすぐ目の前にある。あとは好きに遊び倒すだけだ。「MMORPGはもう飽きたと思うかね? なら最後にGGOを試してみるといい」と言われる程の高い自由度は、統制機構によって縛られた人生を送る人々の、ささやかな抵抗の場として機能していた。

 その自由を最も享受しているのが、「RTA走者」たちであった。彼らはGGOの文字通り「全て」を、ただスピードランのためだけに費やしている。しかも、RTAに興じるのはプレイヤーだけではない。そのスピードランの世界に魅せられたAIのNPCたちもまた、RTA走者としてNPCならではのアプローチからダンジョンの攻略やボスの撃破のタイムを競うようになった。

 RTA走者たちはただの廃人プレイヤーとは一味違う。彼らの目的は「達成までのタイム」を競うことにある。1秒どころか1|F《フレーム》の無駄を削り、ダンジョンの踏破や強敵の撃破をより速く達成する。彼らのゲームプレイはそのために最適化されており、通常のベテランプレイヤーであれば時間をかけてでもゲーム内スキルを習得するところを、彼らはプレイテクニックで代用してゲーム内スキルの習得の手間を減らすのだ。

 その結果どうなるかというと──。

「ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥ」
「ヤッフゥヤッフゥヤッフゥヤヤヤヤヤヤヤ」
「ムッムッムッムッムッ」
「カサカサカサカサ」
「ズサーッズサーッズサーッズサーッ」

 人間離れした冒涜的な動きで凄まじい速度を出しながらフィールドやダンジョンを縦横無尽に駆け巡る変態たちの完成である。「通常の」廃人プレイヤーたちも口を揃えてこう言い始める。

「あいつらには関わらん方がいい。話が通じない」
「いや参考になる部分もあるんだよ? 今広く知られてる攻撃回避テクとかRTA勢から輸入されてるし。でも流石に乱数調整とか任意コード実行とか始めだすのはもう別ゲーの領域なんよ」
「こないだ壁からいきなりNPC出てきてびびったんだけど直後にカサカサ移動し始めたから『あぁRTA勢か』と」
「というかNPCとかのAI組がRTA始めたらそれはもう半分TASなんよ……」

 廃人ですらも恐れ慄き、PKすらもあまりに動きが気持ち悪すぎて近寄ることすらせず、黒教信者もRTAに染まった連中に対して「異端と呼ぶことすらおこがましい何か」と口をつぐむ。カタギのプレイヤーは絶対に関わるべきではないと強く忠告される変態たちの巣窟、それがRTA勢であった。

 そのRTA勢たちにかかればバグプロトコルも「ちょっと面倒な障害」レベルの存在となる。何しろ乱数調整で攻撃が当たらず、いざとなれば壁抜けや任意コード実行によるワープでエリア外に逃走、挙句の果てにはバグプロトコルではないただのバグやグリッチを利用して「その場に当たり判定が残り続ける攻撃」だの「敵のHPがオーバーフローを起こして爆発四散」だの「スキル合計41連携(なお名前がオーバーフローして「剣」としか表示されない)」だの非常にアレな手段で抹殺を始める。

 ただし、これらはあくまで上手く行っている場合のみ。RTA勢も時には|致命的な失敗をする《ガバをやらかす》。バグプロトコル相手のガバの結果、待っているのは|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却され人生そのものを再走してください、というオチである。

 そんな悲劇が多発する事態が、難関レイドクエスト「竜牙兵団撃滅」で発生しようとしていた。

●竜牙兵団撃滅・エクストリームハード
「皆さん、はじめまして。GGOの冒険者ギルドでクエスト受付担当を務めております、イヴ・イングスです」

 グリモアベースに現れたドラゴンプロトコルの女性、イヴ・イングス(RTA走者の受付嬢・Any%・f41801)。GGO内では元々クエストの受付を担当する他、自身もクエスト「ディバイドゲート・クエスト」の管理運営を行っている、いわば運営側のNPCであった。だが彼女には固有の意思が宿っており、プレイヤーとしてフィールドに出ることも少なくない。その際の彼女のプレイスタイルだが──。

「趣味はダンジョンのRTAです。よろしくお願いしますね」

 ──まさかのRTA走者であった。何名かの猟兵たちはあぁ、と曖昧に頷く。彼女は猟兵としていくつかの依頼に赴いているが、乱数調整でダンジョンを無力化するわ、しゃがみジャンプを連発したかと思いきやいきなりすごい速度で吹っ飛んでいくわと、RTA走者としてのテクニックを遺憾なく発揮していたのだ。

「今回、皆さんには多人数向けレイドクエスト『竜牙兵団撃滅』のエクストリームハード級をRTA勢の方と共にプレイしていただきます。このレイドクエストにはバグプロトコルが発生すると予想されておりまして、通常のプレイヤーが挑むのは少々危険です」

 エクストリームハード級。本来の推奨レベルはかなり高い上に、敵の攻撃も苛烈でソロ攻略はまず不可能。モブも多数出現することから、ゴッドゲーム・オンラインのエンドコンテンツのひとつとして多くのプレイヤーの目標となっている。それがバグプロトコルによってさらに難易度が引き上げられるのであるから、廃人プレイヤーもクリアは厳しい。

 そこで登場するのが手段を選ばず最速攻略を目指すRTA勢たちであった。多くのレイドクエストの攻略タイムランキングの上位に名前を刻んでいる連中である。もちろんカタギの攻略方法ではないが。

「今回バグプロトコルが現れますから、間違いなく通常のレギュレーションではタイムアタックになりません。そこでレギュレーションは『Any%』。あからさまなチートなど規約違反にならない限りはなんでもありです。通常のプレイで理論上再現可能な手段であればグリッチ利用も任意コード実行もサブフレームリセットも全てOKです!」

 そう、バグを利用して壁抜けしようが特定の乱数でデバッグモードを開いて無敵になろうがサブフレームリセットによって増殖しようがAny%である以上、理論上再現可能な手段であれば何ら咎められることはない。現に目の前の運営関係者がGOサインを出しているのだ。

「クエストの流れですが、まずフィールドに行きますとデータドレイナーとの戦闘が始まります。いわゆる前段作戦ですね。これを倒すことで後半戦となり、砦の中に入ります。竜牙兵が襲いかかってくるので、これを倒すかやりすごすかしながら砦の最奥部を目指し、竜牙兵指揮官と戦って撃破するという流れですね」

 門番であるデータドレイナー戦を終え、竜牙兵が待ち構えるダンジョンの中を駆け抜け、大ボスである竜牙兵指揮官との決戦を行う。いずれも強力であり、通常プレイでも役割分担をしっかりと行わなければクリアは不可能。バグプロトコルまで絡んでしまえば基本は「無理ゲー」である。故にこその「Any%」。

「それでは……竜牙兵団撃滅・エクストリームハードRTA、はーじまーるよー」

 突然合成音声になったイヴは「はいよーいスタート」と告げ、猟兵たちをポータルに送り込んだ。


バートレット
 どうも、バートレットです。

 オンラインゲームは某赤い石のゲームと塔登るやつと宇宙を舞台にしたやつを遊んだ経験があります。最後のやつはリアルの友人と共に遊びましたが「時を超える弾丸事件」やら「二人乗りの銃座事件」やら、ラグによって発生した抱腹絶倒の事態で腹筋が鍛えられました。

 さて今回はまさかのオンラインゲームでAny%のRTAを走ってもらいます。RTAと言いつつTASさんも混じっているのはご愛嬌ということで。

 第1章ではレイドの「門番」であるボス敵、「データドレイナー」との戦いです。レベルを下げてくる強敵ですがRTA勢にとってレベルは飾りです(「レベル上げRTAがまたできる!」と喜ぶ連中です)。RTA勢の力を借りたり、RTA勢からテクニックを教わったりして、データドレイナーを撃破しましょう。もちろん、RTAの様々なテクニックを我流で駆使するのもありです。

 第2章では砦の内部を、集団敵「竜牙兵」の襲撃をやり過ごしながら踏破します。無限湧きのため殲滅は難しいでしょう。放っておくとRTA勢がどんどん先行していくので頑張ってついていってください。

 第3章ではバグプロトコルによって極限まで強化されたボス敵「竜牙兵・指揮官」との戦いです。ここでもRTA勢はやりたい放題しますが彼らだけでは勝てません。「Any%」に恥じない、なんでもありの戦いでクエストをクリアへ導きましょう。

 各章は断章執筆後にプレイング募集を開始します。プレイングの募集状況はタグをご確認ください。また、MSページに諸注意が記載されておりますのでご確認をお願い致します。

 それでは、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『データドレイナー』

POW   :    レベルドレイン
【先端を尖らせたデータドレイン触手】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
SPD   :    ドレイナーファング
【触手で貫いた敵への食らいつき攻撃】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。
WIZ   :    テンタクルスバインド
【データドレイン触手】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【データドレイン】による汚染を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●GGORTA学会へようこそ
「ほほう、この竜牙兵団撃滅・エクストリームハード級に挑むニュービーが現れるとは!!」
「歓迎しよう!! 盛大にな!!」
「新しい走者が来たぞ!! 囲め!! 逃がすんじゃないぞ!!」
「バグプロトコルがなんぼのもんじゃい! 我々GGORTA学会員は決して屈しはしない!!」

 猟兵たちがログインし、クエスト受付嬢も兼ねるグリモア猟兵からクエストの受注を完了させた瞬間、冒険者ギルドのロビーに突如現れた異様な一団に取り囲まれた。

「ようこそGGORTA学会へ! この竜牙兵団撃滅・エクストリームハード級は別名『RTA勢のおもちゃ』だ! つまりこのクエストを選択した諸君らはRTAの世界に足を踏み入れたも同義!」

 先陣を切って演説を始めた男のプレイヤーネームは「ジュリアス」。カイゼル髭が特徴的な壮年の男で、|聖剣士《グラファイトフェンサー》でありながら装備は鞭。ウエスタン風のファッションに身を包んでいる。

 他にも、ノートを持って常に微笑を浮かべている黒聖者の少年「マックス」、赤いシャツにオーバーオールを着た格闘職の若者「マルコ」など、剣と魔法のファンタジーが基本のGGOの中でも異様な連中が集まってきている。

「では早速クエストに行こうか! エリア到着後計測開始だ! ドゥドゥドゥドゥドゥ……」

 言うが早いがジュリアスたちは揃いも揃って奇声を上げつつ狂ったモーションを披露しながら凄まじいスピードで移動していく。その姿は紛うことなき変態であった。猟兵たちは彼らのテンションに圧倒されつつ遅れるまいとクエストエリアに移動するのであった。

 ◆◆◆

 そうしてやってきたのは「竜牙兵砦の大平原」エリアである。この中心に位置する竜牙兵砦が今回のクエストの舞台だが、まずは砦の前に鎮座する巨大な虫、データドレイナーを倒さなければならない。

「このデータドレイナーの攻略レコードは3分20秒61だ! 今日こそこの記録を突破するぞ!」

 早速異様な挙動でデータドレイナー目掛けて飛び出していくRTA勢。もはやどちらがバグなのかもわからないが、今は1フレームのムダも惜しい。猟兵たちはRTA勢の勢いに負けじとデータドレイナー討伐に赴く。タイマーがスタートされ、ここにまたひとつスピードランへの挑戦が始まったのであった。
スターレイル・エストレジャ
超えてやる!英雄の速さを!
指定UCを使用して敵に向かって行く
『お姉さん?!どうしたの!』
アウラは困惑しているが無視して敵の方へ向かう

触手は視力や心眼で周りの触手を見ながら湿り気や動きを利用して身体を捻って回避しながら加速する

【アウラの狙撃】
『とりあえず敵の動きを止めればいいのかな?』
視力でスターレイルの位置を確認して心眼で的確な軌道を感じ取り指定UCの効果でUC必殺・プロキオンショットを発動して敵の動きを封じる(スナイパーで狙撃する)

【タイムは…】
今だ、喰らえ!
波動属性攻撃の衝撃波を纏い敵を殴り飛ばした


あいつだけには負けられない!
『だからお姉さんどうしたの?!』
ムキになっている私を宥めるアウラ


エリュファシオン・アルティウス
これがゴッドゲームオンライン…!
『オォォ〜!』
オーさんと周りを見渡していると

『何をしている!エル!早く攻撃を開始しろ!』
ミナルアさんが叱責を飛ばしながらUCの効果で精霊の神・ミナルアを発動した

『まずは触手をオーラ防御で防ぎながら素早く近づく!』
ミナルアさんがオーラ防御で触手を防ぎながらUCを発動して攻撃する

『殺れ!テトラ!』
テトラが光線を放ち攻撃した後にミナルアさんが敵に破壊属性攻撃の斬撃波を飛ばしながら攻撃する

行くよ!オーさん!
『オォォー!』
オーラ防御で周りを囲いながらオーさんに搭乗して呪殺弾を放ちながらサポートする

『ふん…あの馬鹿には負けん!』
何の事ミナルアさん?
『昔の同期の話だ…ふふっ』



●スピード勝負
「これがゴッドゲームオンライン…」

 エリュファシオン・アルティウス(“やんきー”を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208)はフィールドの高精度ポリゴンに圧倒されていた。しかしそんな時間も惜しいとばかりに星霊ミナルアが急かす。

「何をしている! 早く攻撃を開始しろ! タイムアタックだということを忘れるな!」

 その言葉を裏付けるように飛び出していったのがスターレイル・エストレジャ(星虹の超越者・f40527)。

「超えてやる! 英雄の速さを!」

 従えているフラワースライムのアウラが何事かと視線でスターレイルを追う中、最小限の動きでデータドレイナーの攻撃を回避しながら狙撃。彼我の位置を確認しながら弾道を予測し、愛銃で撃ち抜く鮮やかな攻撃だ。痛撃にデータドレイナーはもがく。

「まずは触手を防ぎながら素早く近づく!」

 一方のエリュファシオンは触手をオーラでガードしながら接近。多少の被弾よりも撃破速度を取る格好だ。蒸気獣テトラとミナルアの連携攻撃で動きを止める。オオサンショウウオ型バイクの「オーさん」に搭乗しながらミドルレンジからのヒットアンドアウェイを繰り返す。

「あいつだけには負けられない!」
「ふん……あの馬鹿には負けん」

 張り合うミナルアとスターレイルだが、他のものは知る由がない。エリュファシオンと入れ替わるようにスターレイルが前に出て、衝撃波のおまけ付きのパンチで一気に殴り飛ばす。データドレイナーは大きく後退。邪魔者を追い払うように触手をさらに伸ばしていく。

「ちっ……キリがない!」
「タイムは……!」

 ここまででまだ30秒。見れば他のRTA走者たちは各々の戦略でかなりのHPを削りつつある。

「ぼやぼやしている暇はないぞニュービー諸君! その程度かね!」
「まだまだ!」
「こんなものではない!」

 ミナルアとスターレイルはジュリアスに発破をかけられさらに闘志を燃やす。タイム更新を目指す上ではお互いもそうだが、他の参加者にも負けるわけにはいかないのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミネルバ・レストー
アドリブ歓迎

わたしの『中の人』も大概廃人だったけど、RTAとは無縁だったわね
ゲームがサ終してレベリングし直しも味わったし
ここらでひとつ新しい世界の扉を開くのも…
(学会員に囲まれて)
ちょ!待って!まだ入会するとは言って…ええ!?もう逃げられない!?
あんたたち、わたしがいなくても全然大丈夫なんじゃないの!?

しょうがない、郷に入りては何とやらだわ
データドレイン触手を無抵抗で敢えて喰らう
抵抗するだけ時間の無駄でしょ?
そうしてレベルが相手より低くなった瞬間を見計らって
【氷花は逆境にて咲き誇る】発動よ
3倍になったステータスで圧倒してはい、おしまい

…どうだったかしら?
改善の余地があればぜひ教えてもらいたいわ



●対人勢、RTAの世界へ
 バーチャルキャラクターであるミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)は元々PvPのオンラインゲームにおいてトップランカーが操るアバターであった。彼女を操っていた「プレイヤー」は対人戦において敵なしであり、それはアバターである彼女自身にも反映されている。とは言え彼女が元々活躍していたゲームはサービス終了して久しく、電子の海を漂っているうちに猟兵として「再起動」を果たしてからは再度のレベリングも味わった。

 だからこそ、このあたりでひとつ新しい世界の扉を開くのも悪くないと思ったのだ。MMORPGという世界は必ずしも対人がメインコンテンツではない。自分で「エンドコンテンツ」を定めることができるのはミネルバにとって新鮮であった……のだが。

 ロビーでRTA勢に取り囲まれた瞬間に「あっ終わった」と軽く絶望しかけた彼女を誰が責められようか。よりにもよってGGOにおける一種の極みに到達した魑魅魍魎の地獄変に叩き込まれたのであるから。

「ようこそGGORTA学会へ!! 我々はニュービーを決して拒まない!! だが逃がしもしない!!」
「ちょ! 待って! まだ入会するとは言って……ええ!? もう逃げられない!?」

 かくて彼女はRTAの世界へと連行されたのであった。

 ◆◆◆

 とは言え、郷に入りては何とやら。早速RTAの流儀を学ぶべくデータドレイナーと対峙する。

「まぁ、この一手よね」

 なんと、ミネルバは無抵抗のままデータドレイン触手の直撃を受けたのである。赤い数値によるダメージ表記が中空に浮かんだかと思うと、自分を構成する電子データが敵に渡り、視界にオーバーレイしているステータス表記の数値が減少していたのを確認する。効果は覿面のようだ。

「いい気分に浸れたかしら? じゃあ、そろそろ反撃させてもらうわね」

 レベルやステータスが相手よりも低くなったところでユーベルコード「氷花は逆境にて咲き誇る」が発動し、全てのステータスが3倍になる。即ちドレインされる前よりもむしろ強化されるのである。たちまち圧倒的なDPSを稼いでしまったミネルバにRTA学会員は惜しげもない拍手を送る。

「ブラボー、流石は対人勢! 敢えて敵の攻撃を受けることでDPSの底上げと時短を図ったのは見事。だが唯一欠点を挙げるとするならば……行動パターンの固定化チャートを作るのがベストだ!!」
「パターン化か……まぁ相手はバグとは言えCPだものね……」

 RTA勢のゲームの捉え方は対人勢とはまた異なる。奥が深いなぁと感心するミネルバであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩永・勘十郎
「3分? 1分半だ」

敵の攻撃に合わせて瞬時に構える居合から、その攻撃を受け流しすれ違いざまに斬り捌く。あまりの早業に遅れて傷口が開く程。

「単純なモーションだ」

と挑発気味に言いつつ、攻撃が止むと自分に爆弾を投げ爆発した勢いを受け流し居合斬り。そして敵が怯んだであろう頃に敵を足場に蹴り上がり真上からの兜割り。

「まだまだ!」

納刀した次は槍。柄を地面に突いて飛び上がると腕の端末で呼び出したワイヤーを相手の頭に刺し、2度突進後に突き下ろす大技。敵が雄叫びを上げると同時に弓に切り替え受け流しつつ矢を放つ。

「トドメだ!」

空から放つ3連打の撃ち下ろし。一回も被弾しない魅せるプレイ“魅せプ”を魅せつけていき。


ゼーレ・ユスティーツ
まずは集中しないと…!
気功法で集中して敵と対峙する

次よ!
敵の触手攻撃は視力で見ながら回避してクイックドロウの要領で黒蝶刃銃から呪殺弾を放ち攻撃

ダメージを食らうのはロスになるわ!
敵のUCに対しては推力移動で触手を回避しながら指定UCで敵を攻撃する

まだよ…今!
触手の攻撃はまだ続くから最後まで気を抜かずに視力で触手を見続けて回避しながら次の攻撃に移る

これでどうかしら!死蝶の乱撃!
指定UCの効果でUC『迎え蝶』死蝶の乱撃で触手を破壊しながら敵本体にもダメージを与えて攻撃した

RTAは初めてだけど何とかやって見せるわ…
敵の攻撃を回避しながら再び指定UCを放ち攻撃した


ルナ・キャロット
ひい皆様動きがきm…洗練されてます……っ。
私はRTA勢ではないですが効率周回は好きです!役に立ちそうなテクニックを色々覚えさせてもらいますね。

私はただの兎なので超精密な動きは無理ですが……
移動は…こんな感じですかね?双剣でダッシュ攻撃を高速連打してカサカサ動きます。おお早いですね!(双剣絡みだけはめっちゃ上手い兎)
他にも私にできそうなものはどんどん盗んでいきます!

でっかいボスならこの技です!
回転乱舞で敵の体に沿って移動しながら斬りつけていきます!敵が大きくて長いほどコンボが稼げるのでワーム相手にはぴったりです!
お尻までたどり着いたらそのまま逆側移動して無限ループしちゃいます!



●最適化
「3分? ならば目指すは1分半だな」

 岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は目標を高く定めた。実際のところ今回はそれだけの速度で攻略が進む可能性は高い。いくつもの短縮箇所が猟兵の手で発見されつつあるのだから。

 勘十郎は居合を応用して敵の攻撃にカウンター気味に攻撃を浴びせていく。特定の型に囚われず、相手の動きに合わせて常に最善手を浴びせ続けるのは剣士としての経験が物を言う。

「まずは集中しないと……!」

 勘十郎に触発されたか、ゼーレ・ユスティーツ(彷徨う『黒蝶の死神』・f41108)もまた自身の行動を極限まで最適化して臨む。ダメージを受けるのはロスだと判断して触手を回避。ノックバックなどが積み重ねればそれは1秒、1分の遅れを生む遠因となるのだ。

「次よ!」

 最小限の動きで回避しながら呪殺弾を浴びせ、徐々に追い込みをかけていく。ともすればギリギリでの攻撃回避を繰り返すのは他から見れば──。

「魅せプレイか。ならばこちらは!」

 勘十郎は自身の背後に爆弾を投げて、爆風の勢いで加速して敵に肉迫、速度の乗った居合斬りでダメージを稼ぐ。勘十郎のテクニックは「ダメージブースト」と呼ばれ、RTA勢にとっても馴染み深いテクニックである。

 勢いに乗った勘十郎は敵を足場代わりに駆け上がり、頭部目掛けて兜割りを一閃。すかさず納刀し、空中で槍に持ち換える。着地の瞬間、柄を地面に突いて再度飛び上がると、腕の端末で呼び出したワイヤーを相手の頭に刺し、2度の突進。空中機動もお手の物だ。その後一気に突き下ろす大技を披露したかと思えば、弓に切り替え敵の咆哮を受け流しつつ矢を放つ。

 ゼーレも負けていない。無限影斬・スタールイー・レイドから死蝶の乱撃に繋げ、とめどない連撃を浴びせて触手を破壊。その余波で敵本体にもダメージを与える。高DPSの連撃はデータドレイナーのHPを大きく削った。

「ノーダメージとは見事……こちらも負けていられんな!」

 2人は一切被弾せずここまでのことをやってのけた。RTA勢も俄然気合が入るというものである。珍妙な動きと共に攻め手を強めていく。

「ひい皆様動きがきm……洗練されてます……っ」

 言葉を選びながらもそんな感想を口にしたのはルナ・キャロット(†ムーンライトソードマン†・f41791)。流石にRTA勢の動きを直接目の当たりにすればこうもなるが、実はルナとしては高効率を目指すRTA勢のスタンス自体は嫌いではない。ただ極め過ぎた結果変態になっているだけであるが。

「移動は……こんな感じですかね?」

 見様見真似で双剣でダッシュ攻撃を高速連打すれば、カサカサと凄まじいスピードで動けることを発見する。RTA勢の動きを我流で自分の物にしながら徐々に最適化を繰り返し、技を学んでいった。

「おぉ、速いですね!」
「なるほど、素質はあるようだね!!」

 マルコが親指を立てる。いかん、仲間と思われそうだ。

「ひい! 私はただの兎なので!!」

 気を取り直してデータドレイナーに最接近すれば、「回転乱舞・月兎」で敵の体に沿って移動しながら斬りつけていく。敵が大きくて長いほどコンボが稼げるので、データドレイナーのようなワーム系の的には最適解なのだ。

「お尻まで行ったら切り返し……!」

 敵に密着しながらDPSの高い攻撃を浴びせる。三者三様の最適化によって、クリアレコードを大幅に更新する目が見えてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
はい、よーいスタート

世界的大人気MMOのRTA、はぁじまぁるでござるよぉー!
早速スタートでござる

まず最初にやることは【|知らない人《にくかべ》】の召喚でござる
名前は入力しやすさを考慮してほ…しらないひとにしておきますぞ!
こいつは奴隷ナー対策の要でござるがレベルは必要ありませんぞ!ここでやたらレベルの高い知らない人を召喚しないよう注意でござるよ(1敗)

戦闘では知らない人がドレイン触手されるように前衛に配置ですぞ!知らない人殴って!知らない人殴って!ペッ、甘ちゃんが…

レベル逆吟味した知らない人はデータを吸われてもカスですぞ!
そして捕縛中は単体攻撃なので今のうちにひたすら攻撃でござるよ!皆踊れー!!



●チルドレン
「世界的大人気MMOのRTA、はぁじまぁるでござるよぉー! 早速スタートでござる」
「!?」

 エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)の宣言は、RTA勢にとって奇妙な懐かしさを覚えるものであった。

「まず最初にやることは【|知らない人《にくかべ》】の召喚でござる。名前は入力しやすさを考慮してほ……しらないひとにしておきますぞ!」

 早速エドゥアルトは「知らない人」をユーベルコードで召喚。割りと際どいネタを口走りかけたエドゥアルトの様子を見てRTA勢は確信を深めた。

「あんた……『チルドレン』か……!」
「親父殿に最大限のリスペクトを。当然でござろう」

 RTA勢は知っている。かつてこの世界でRTAの敷居を大きく下げるという偉業を成し遂げた「親父殿」の敬称で呼ばれる一人の伝説的プレイヤーの存在を。そして、その命脈を受け継ぐものを『チルドレン』と呼ぶ。エドゥアルトはまさに、親父殿のスタイルを受け継ぐチルドレンであったのだ。

「さてこいつは奴隷ナー対策の要でござるがレベルは必要ありませんぞ! ここでやたらレベルの高い知らない人を召喚しないよう注意でござるよ(1敗)」

 1回失敗していることもしっかりと笑いのネタにしつつ後進に注意喚起。これが「RTA」の敷居を大きく下げるポイントであった。失敗も包み隠さず見せることで「自分でもできそう」と思ってもらえるのである。

「戦闘では知らない人がドレイン触手されるように前衛に配置ですぞ! 知らない人殴って! 知らない人殴って! ペッ、甘ちゃんが」

 ともすれば「ガバチャー」とも呼ばれるやや運任せのチャートも笑いどころのひとつであるが、成功すれば大きく短縮できる。エドゥアルトの祈りが通じたか、データドレイナーは知らない人のレベルをドレイン。

「レベル逆吟味した知らない人はデータを吸われてもカスですぞ! そして捕縛中は単体攻撃なので今のうちにひたすら攻撃でござるよ! 皆踊れー!! レッツダイナモ!!」
「うおおおおお『チルドレン』に続けー!!」

 まさかの「チルドレン」登場に大盛りあがりのRTA勢たち。彼らの勢いによってさらにタイムは縮まっていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…えーと…礼儀として解説しながらだっけ…はいタイマースタート…
…まずは良い感じのタイミングでダッシュ→前転→ジャンプの順でキャンセルし続けることで加速し続けて高速移動…現実と違うからこう言うこと出来るんだね…
…データドレイナー戦だけど…こいつのデータドレイン汚染は実は成功率が異常に高い状態異常なので…
…【起動:応用術式『星符』】から【災禍を映す水鏡】を起動…
…状態異常反射で跳ね返せるんだよね…
…反射することでとデータドレイナーのステータスを奪えるのでここでステータスを増強する事で後々の準備を整える事が出来る…
…用が済んだら術式で作った魔力剣を飛ばしてデータドレイナーとその触手を斬ってしまおう…



●システムへの理解度
「……えーと……。礼儀として解説しながらだっけ……」

 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は一応RTAという文化についてある程度知識があった。もちろん、このGGOの各種テクも事前にリサーチ済みだ。

「はいタイマースタート……まずは良い感じのタイミングでダッシュ→前転→ジャンプの順でキャンセルし続けることで加速し続けて高速移動……」

 メンカルは早速ダッシュから前転、前転の終わり際でジャンプして着地寸前にダッシュを行う。それぞれのアクションにはモーションのキャンセルポイントが設定されており、キャンセルポイント中に行われたアクションは以降の動きを省略して次のアクションに移ることができる。もちろん物理演算エンジンの慣性は働き続けているから、結果として凄まじい加速をしながら移動することが可能となる。

「現実と違うからこう言うこと出来るんだね……」

 ゲームの世界は快適なプレイ体験のために意図的にいくつかの要素が欠落している。そもそもモーションの「キャンセル」という概念自体がゲーム世界独特のものである。ゲーム世界ならではの感覚はメンカルにとって新しい発見だったと言えるだろう。

「ほぼ初見でありながらキャンセルを理解し使いこなすとは……凄まじいカンの良さだな」
「同志マルコ、それだけじゃない。操作精度も高い。あのキャンセルムーブの入力受付時間は僅か数|F《フレーム》。狙って出すにはある程度練習が必要だが、ほぼ初見でここまでやってのけるとは」

 歴戦のRTA勢をして感嘆するほどに精度の高い入力を行うメンカル。そのままデータドレイナーを見上げると瞬時に戦術を構築する。

「……データドレイナー戦だけど……こいつのデータドレイン汚染は実は成功率が異常に高い状態異常なので……」

 そう宣言すると【起動:応用術式『星符』】から【災禍を映す水鏡】を起動。術式がカードとなってメンカルの手元に現れ、宣言のみで起動する。複雑だが汎用性の高い術式はこれで詠唱時間や構築時間を圧縮することが可能だ。1Fの短縮を狙うRTAにとっては欠かせないものと言えるだろう。

「結局のところ状態異常反射で跳ね返せるんだよね……反射することでデータドレイナーのステータスを奪えるのでここでステータスを増強する事で後々の準備を整える事が出来る……」

 なんとデータドレイナーの攻撃を逆利用して自身のステータスを一気に上昇させてしまった。データドレイナーのデータドレイン攻撃はバグではあるものの、そのバグは「状態異常付与」のロジックのもとで攻撃しており、メンカルはそのロジックを利用して状態異常への対策を行うことで逆利用してみせたのだ。

「……用が済んだら術式で作った魔力剣を飛ばしてデータドレイナーとその触手を斬ってしまおう……チョッキンなー、っと……」

 ステータスに何重ものバフがかかった状態でズタズタに斬り裂かれるデータドレイナー。ゲームのロジックを理解したメンカルの前には、バグプロトコルも「ルールに従って動くプログラム」でしかない。RTAは極論すれば「如何にゲームの動き方を理解しているか」に尽きる。特級のウィザードであるメンカルにとってはまさに得手分野だったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メイティナ・ヴァーンフォルカ
【バグ何でもありRTAはーじーまるよ〜】
OK!クソゲー神!やってやるよ!
裕士はメイティナの看板を見て判断し推力移動で加速しながら心眼と気配感知を使用しながらチープウェポンで触手を捌く

【まずはもう一つの終断でクソゲー『ゴリラ』の起源に書き換えます】
ちょっ!そのクソゲーは!
(『ゴリラ』ゴーイング・リステッド・ライジングの略称で、最新VRの癖に上下と横にしか移動出来ないシューティングゲームでクソゲーである、ちなみに敵の弾幕は凄く速い)

【敵の触手攻撃にシャドウパリィで弾いた瞬間に推力移動しましょう】
例のバグだな!オラァ!

【すると超加速します、ゴリラの必須テクです。】
天誅ぅぅぅ!
裕士は敵の攻撃を避けながらUCの効果でUCクレセント・スラッシャーを発動して敵を攻撃した

【では私が追撃してフィニッシュです】
月光神銃で弾道計算して裕士に当たらないように早撃ちして呪い属性攻撃の弾丸を放ち攻撃する


【そしてもう一つの終断を放ち起源を戻しておきましょう】
UCを発動してちゃんと戻しておきました



●Any%の真髄
『バグもグリッチも何でもありのRTAはーじーまるよ〜』

 メイティナ・ヴァーンフォルカ(狂人と勘違いされた神がクソゲーハンターとなる話・f41948)が掲げる看板にはそんな文字が踊っていた。

「OK! クソゲー神! やってやるよ!」

 彼女と行動をともにする謎の男、裕士は前衛を担当。触手を捌きながら、メイティナの出方を伺う。そう、彼女はレギュレーションを宣言した。バグ、グリッチ、全てを使いこなす「Any%」レギュレーション。つまりここから先、ユーベルコードという名のグリッチで攻略を開始することになるのだが……。

【まずはもう一つの終断でクソゲー『ゴリラ』の起源に書き換えます】
「……あっ、そのクソゲーは」

 「ゴリラ」とは、VRSTG「ゴーイング・リステッド・ライジング」の略称……否、蔑称であった。というのも、このゲームは最近発売されたVRゲームでありながら移動範囲が上下と横移動のみでしかない弾幕STGであり、「すぐ死ぬ」ことからストレス耐性が低くすぐに心臓発作で死んでしまうゴリラになぞらえた蔑称で呼ばれるようになった。匿名掲示板のクソゲー品評会では「ゴリラ」に対する怨嗟の籠もった選評が長々と書き込まれ、今年度のクソゲー大賞という恥の殿堂に輝くかどうかというところまで来ている。

 かくして、ユーベルコードを使用したグリッチによって任意コード実行を行うことで、操作系のプログラムが「ゴリラ」のそれに置き換わってしまったのであった。ただ、この「ゴリラ」、選評が書かれるということは攻略できた猛者が存在するということである。その攻略の際に使われたテクニックは「ゴリラ」のプレイにおいて必須とされている。それこそが──。

【敵の触手攻撃にシャドウパリィで弾いた瞬間に推力移動しましょう】
「例のバグだな」
【その通り、当たり判定が消えた上で超加速します】

 そう、最初の一撃こそいなすことができれば後はヌルゲーと化すテクニック「Active Enemy Defence」。略して「AED」、心臓発作に対する延命策であった。三日月型のエフェクトを出しながら裕士が攻撃、さらにメイティナも追撃を仕掛けて一気にデータドレイナーの残存HPバーを消し飛ばす。

【そしてもう一つの終断を放ち起源を戻しておきましょう】

 もちろんこのままだとこの後の攻略に支障をきたすため、再び任意コード実行で操作系をもとに戻す。任意コード実行を早速使いこなす走者の出現にRTA勢はどよめいた。

「同志マックス……対抗馬が現れたな」
「いいや同志ジュリアス……彼女と同等のことができるのはおそらく同志ネイトだ」

 ノートを片手にした少年、マックスは同じくらいの背格好の野球帽を被った少年を見やる。ネイトと呼ばれた少年は頷くが、

「いや僕でも別のゲームの操作系上書きはできないかな、まだ」

 RTA勢は今見た技を自分のものにしようとこぞってメモを取り始める。

 レコードタイムを大幅更新し、2分弱でのクリア。だがデータドレイナーは前座に過ぎない。バグプロトコルに汚染されているとは言え、元々難関クエストの「竜牙兵団撃滅」エクストリームハード級だ。最速攻略のため、猟兵とスピードランナーたちは次のステージへと移行する。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『竜牙兵』

POW   :    竜牙兵の剛撃
単純で重い【武器】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    竜牙兵の連撃
【武器】【シールドバッシュ(盾による殴り)】【蹴り】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ   :    竜牙兵の真撃
自身が装備する【武器】から【闘気の刃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【回復不能】の状態異常を与える。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お先に失礼
 データドレイナーを倒したプレイヤーたちは砦の中へと転送される。ここからが「竜牙兵団撃滅」というクエストの本番だ。ダンジョンとなっている砦の内部を踏破して最深部である「儀仗の間」を目指す。設定では、ここが竜牙兵団が駐屯する砦の指揮所ということらしいが、要はRPGでありがちな「ボス敵との対決を行うフィールド」である。

 しかし砦の内部も一筋縄では行かないのが「竜牙兵団撃滅」エクストリームハード級。相応にレベルの高いmob敵があちらこちらから出現し行く手を阻む。mob敵とは言えレベルの低いキャラクターを瞬殺できるほどの強さを持ち、しかもそれが集団で襲ってくるのだから、無策で挑めばたちまち袋叩きに遭い、気がつけばリスポーンポイントに転送されて一定時間の能力値が半減する|死亡時ペナルティ《デスペナ》を背負うことになる。

 だからこそ、通常であればある程度装備を整え、パーティを組んで各メンバーが役割分担を行い、力を合わせて踏破していくことが想定されているのだが、今この場にいるのは猟兵を除けば百戦錬磨のスピードランナーどもである。それも今回のレギュレーションは「Any%」。至上目的である「|Beat the game《クエストクリア》」のためならばチート以外の全てが許される。

「さて……ここは一気に突破だ! mobはできる限り無視! ボス前まで一気に行くぞ! ムッムッホァイ」
「Here we go!! Yeah Foo!!」
「スピードランナーの真骨頂だね!」

 かくして始まる変態的な動きでのダンジョン突破。連続飛び蹴りで残像すら残さずカサカサと動いたり、しゃがみジャンプを繰り返したかと思うと凄まじいスピードで彼方へとかっ飛んだり、「ドニ」と呼ばれる小舟を呼び出して乗り降りすることで壁抜けを始めたり、前転したまま空中に飛び出し無限加速を始めたりと、もはやGGOというゲームの極北の光景がそこには広がっていた。まともなプレイヤーならば卒倒ものだろう。

 猟兵たちは果たして、彼らの変態的な動きについていけるのか。
メイティナ・ヴァーンフォルカ
【今度は回避を利用した最速攻略で行きましょう…歌え、私の名の元に!】
敵の武器に気を付けねえとな!メイティナさん!
UCを発動して裕士と共に推力移動で素早く敵に近寄る

【敵の攻撃は武器と蹴りを意識します、シールドバッシュは発動の挙動は分かりやすいけど盾が前にあるなら意識していきましょう】
要は集中しろって事ですね!メイティナさん!敵の攻撃が終わった瞬間に弾幕だぁぁぁ!
敵のUCは武器と脚を心眼で見て回避しながら素早く凍結攻撃の弾幕を放ち凍らせる


【裕士!今です!】
とりあえず素早く天誅ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
UCの効果で裕士はUCクレセント・スラッシャーを発動して敵を蹴り飛ばした後私が斬撃波を放ち追撃しました。


ゼーレ・ユスティーツ
ここは最速で走り抜けなきゃいけないのよね?なら集中しないとね…
気功法と指定UCを発動して集中力を上げて視力で敵の動きをしっかり見る

敵のUCに対しては結界術を使用して防御します

推力移動で敵に加速しながら概念破壊斬を放ちます
この時にできる限り武器を狙います
『おや?これが噂のRTA勢って奴だね?』
呪神鎌から声が聞こえるがこれはゼーレには聞こえてないです

『なら、僕も手伝おうかな?』
指定UCの力で時空呪神・エーリュシオンを発動して鎌が神になりUC時と空間
を発動して時空干渉の力で敵の周りの空間を歪めて武器と盾を破壊する

あら?何か良く分からないけどチャンスね
私は武器と盾が壊れた敵に凍結攻撃の斬撃波を放ち攻撃


ミネルバ・レストー
レギュレーションの確認するけど、ユーベルコードの使用はオッケーなのね?
よし、じゃあわたしにもできそうなヤツから始めてみましょうか
変t…先輩たちのアドバイスを思い出して…チャートを作る…

【あいつがわたしにくれたもの】でSSR装備でガッチガチに固めてた頃の姿に変身、次に「アブソリュート・ウィッチ」を丸い輪っか状に変形させて両端を掴む
天高く舞い上がってからひたすらに輪っかを潰すように押し込みまくると、押し込んだ分だけ空を飛ぶ勢いが増すのよ!
しかもこれを頑張って続けることで、無限湧きしてくるモブの頭上を飛び越えてエンカウントを回避できるんだって聞いたわ!

…腕!腕の筋肉が痛い!でも我慢よ、これもRTA!



●交戦は最小限に
「レギュレーションの確認するけど、ユーベルコードの使用はオッケーなのね?」

 ミネルバが確認を取る。実際のところ、ユーベルコードはチート扱いではない。猟兵や一部のプレイヤーが使用可能なユニークスキルの一種とみなされているためだ。故にシステム上でもサポートが効いている。

「よし、じゃあわたしにもできそうなヤツから始めてみましょうか。変t……先輩たちのアドバイスを思い出して……チャートを作る……」
【一応やってみますか】
「最速で走り抜けなきゃいけないのよね? なら集中しないとね」

 ミネルバに続き、メイティナとゼーレもそれぞれ自分なりのチャートを組み始めた。先んじて進行するRTA勢たちのお陰でmobの発生パターンや行動パターン、ダンジョンの進路は把握している。そのうえでどう攻略するかが肝だ。1分1秒、いや1Fの無駄も許されない。

「まずは……全身をあの頃のSSR装備でガチガチに固めておいて……と。使うのは『アブソリュート・ウィッチ』でいいわね」

 ミネルバは念には念を入れて、ユーベルコードの力を使いランカー時代に所持していたSSR装備で全身を固めた。というのも、この装備には飛翔スキルが備わっていたので、今回のチャートには欠かせない存在なのだ。加えて、氷の結晶「アブソリュート・ウィッチ」をリング状に変えて両端を掴む。

「天高く舞い上がってからひたすらに輪っかを潰すように押し込みまくると、押し込んだ分だけ空を飛ぶ勢いが増すのよ! しかもこれを頑張って続けることで、無限湧きしてくるモブの頭上を飛び越えてエンカウントを回避できるんだって聞いたわ!」

 腕を小刻みに動かしてリングを押し込み続け、加速しながら飛翔を続けるミネルバ。mobの対空攻撃の射程圏外を維持しながら猛スピードでダンジョンの奥へ奥へと飛んでいく。傍から見れば優雅なものだが、当人はリングを押し込む動きを続けているため腕の筋肉が悲鳴を上げていた。

「次の日は確実に筋肉痛……でも我慢よ、これもRTA!」

 一方、早々に敵の完全無視を諦めたのはゼーレとメイティナである。2人は交戦は最小限に抑えつつ可能な限り最速で向かう方法を取った。幾分ロスにはなるが移動で時間を稼げばトータルではトントンとなる計算だ。

【今度は回避を利用した最速攻略で行きましょう……歌え、私の名の元に!】
「敵の武器に気を付けねえとな! メイティナさん!」

 メイティナはユーベルコード「|星導覚醒・破滅の歌劇場《ステラ・バースト・カタストロフオペラ》」を発動して裕士と共に推力移動で素早く敵に近寄る。光を纏うことで瞬間移動に近い移動速度を確保。あとは湧いてくるmobの竜牙兵と会敵次第最速で倒すだけだ。

【敵の攻撃は武器と蹴りを意識します、シールドバッシュは発動の挙動は分かりやすいけど盾が前にあるなら意識していきましょう】
「要は集中しろって事ですね! メイティナさん!」

 メイティナが掲げるプラカードを見た裕士は頷き、敵の攻撃パターンを頭に叩き込んだ。シールドバッシュの予備動作、盾を前に構える動作を見て次のアクションに移る。

「敵の攻撃が終わった瞬間に弾幕だぁぁぁ!」

 横方向へのステップで回避しながら素早く凍結攻撃の弾幕を放ちmobを凍らせ、動きを止める。メイティナと裕士は息を合わせてmobの動きを止めることに集中していた。

 ゼーレもメイティナのアドバイスを参考に、敵の放つ攻撃の予備動作を見て結界術を使用。防御しつつ推力移動で敵に加速しながら概念破壊斬を放つ。武器を狙った攻撃で敵を無力化する構えだ。

『おや?これが噂のRTA勢って奴だね?』

 呪神鎌から声が聞こえるが、ゼーレには届かない。

『なら、僕も手伝おうかな?』

 突如として周囲の時が止まったかと思うと、時空呪神・エーリュシオンが出現し、時空干渉の力で敵の周りの空間を歪めて武器と盾が破壊される。だがこれは持ち主のゼーレすらも認識できない零時間内の出来事。ゼーレからの主観では「突然」武器と盾が破壊されたにすぎない。

「あら? 何か良く分からないけどチャンスね」

 突然の事象に困惑しつつも敵を撃破するゼーレ。先行するメイティナとミネルバの後を追い、ゼーレは再び駆け出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
【このへんの敵 |竜牙兵《まずあじ》】

第二部はぁじまぁるよー!
竜牙兵は見ての通り鎧を纏った分面倒ですぞ…無駄に硬いステージ雑魚のクズがこの野郎…!
オイゴルァ!どけよ!RTAやってんのか!
通常は一体ずつ潰したり範囲攻撃等だが思いついたのでここでオリチャー発動!

竜牙兵共が攻撃姿勢になったらUCの|超スピード《ヘイスト》!
スロウリィな竜牙兵共を押して向きを変えてお見合いさせますぞ!これで同士討ちを誘発するでござる!
うむこれにて一斉撃破…これ手持ちの火力で普通に殴った方が速かったのでは?次の為にチャートにちゃーんと書いておくでござるよ(やるとは言ってない)
まあいっか、このまま超スピード!で駆け抜けろ!



●唐突なオリチャー
 ところで、GGOにおける敵は基本的に設定がダンジョンを管理するドラゴンプロトコルの胸先三寸である。同じ敵でも経験値の量やドロップアイテムの質は違うことが少なくない。その意味では、この場にいる竜牙兵は「倒すことがあまり推奨されない」敵であった。無限湧きするmobは稼ぎに使われることを防ぐため基本的に倒す労力に結果が見合わない、「不味い」敵として設定されるが、竜牙兵もその例に漏れることはなかったのである。

 L字型のフレームウィンドウ付きで解説しながらRTAに挑むエドゥアルトもこのことはよく知っていたので、サイドバー部分に「このへんの敵 |竜牙兵《まずあじ》」と画像付きで紹介する。

「第二部はぁじまぁるよー! 竜牙兵は見ての通り鎧を纏った分面倒ですぞ……無駄に硬いステージ雑魚のクズがこの野郎……! オイゴルァ! どけよ! RTAやってんのか!」

 襲い来る竜牙兵に対して罵声を飛ばすエドゥアルト。ここで2つの選択肢が与えられる。グリッチで強引に突破するか、最小限の戦闘で切り抜けるか。グリッチに関しては今回エドゥアルトは切り捨てていた。あまりグリッチに頼りすぎるチャートは不確定すぎるのと、何より「チルドレン」らしくない。

「通常は一体ずつ潰したり範囲攻撃等だが……思いついたのでここでオリチャー発動!」

 と、ここでエドゥアルトは「オリチャー」の発動を宣言。基本的にRTAは「チャート」と呼ばれる攻略法を予めパターン化したものに従って挑戦するが、エドゥアルトは「オリジナルチャート」、即ち予定していたチャートを投げ捨ててその場の思いつきによるアドリブ攻略に移行することを決めたのである。

「ここで!?」
「何を始める気だチルドレン!?」

 RTA勢たちはエドゥアルトの唐突なオリチャー宣言に目をむいた。ここオリチャーを差し込む余裕あったか、と首を傾げるものもいる。そんな動揺を他所に、エドゥアルトは|超スピード《ヘイスト》を実現するユーベルコード「SAN Device」を発動。攻撃モーションに入った竜牙兵たちの間に滑り込むとキャラを「押した」。固定オブジェクトではないため、敵キャラクターは物理エンジンに従い特定の力学ベクトルが働くとその方向に移動する。エドゥアルトは超スピードで動きながら敵キャラクターを押すことで立ち位置を変えさせたのだ。

「ほい、これで同士討ちを誘発でござる」

 一度発動した攻撃モーションは止まらない。ヒットしたのは味方の竜牙兵。攻撃された竜牙兵のヘイト値は攻撃した竜牙兵を対象にMAXとなり、竜牙兵同士が敵対状態となる。かくして同士討ちが始まった。

「うむ、これにて一斉撃破……」
「おっそうだな(適当)」
「普通に手持ちの火力で殴ったほうが速かったのでは」
「ガバチャーでは?」

 RTA勢たちから飛び交う熱い罵声。この「真っ当にチャート通り走ったほうが早いのにその場のノリで軽率にオリチャー発動する」というのも「親父殿」と呼ばれるプレイヤーの特徴であり、エドゥアルトのリスペクトポイントでもあった。RTA勢たちの合いの手じみた罵声に応えてエドゥアルトは鷹揚に片手を挙げる。

「次の為にチャートにちゃーんと書いておくでござるよ(やるとは言ってない)」
「激ウマギャグ頂きました」
「これ終わったら大人しく再走して(憤怒)」

 罵声のようにも聞こえる感嘆の声を聞きながら、エドゥアルトは超スピードでダンジョンの出口目指して駆け抜ける。ちょっとした「ガバプレイ」すらもエンターテイメントに変える「親父殿」へのリスペクトは健在だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スターレイル・エストレジャ
ライバル

『さっきの人とどういう関係なの?お姉さん』
昔からの腐れ縁…だよ!

そう言うとUCを発動して推力移動で敵の武器の攻撃範囲外ギリギリまで移動する

眼は動きは見切る為にある!
敵がUCを発動するが心眼で敵の攻撃する気配を感知して武器の動きを視力で確認しながら素早く鎧砕き属性の衝撃波を放ち反撃

これは集団戦…お前に構っている暇は無い!
殴り飛ばしたのと同時に敵の鎧に爆弾の性質を付与して敵は大量の敵を巻き込んで爆破

汚い花火だ…
『私も仕事しようっと』
アウラは心眼で敵に狙いを定めてからマヒ攻撃と鎧砕きのプロキオンを放ち痺れさせた

ナイス、アウラ
私は再び敵を爆弾の性質を付与した後に敵を蹴り飛ばして爆発に巻き込んだ


エリュファシオン・アルティウス
ライバル

ミナルアさん…あれ誰ですか?
『腐れ縁で露出狂でドМの変態だよ、その癖…実力はあるから、たちが悪い』

『ここは素早く突破しないと後が面倒になる』
ミナルアさんが指定UCを発動して敵を切り裂いた

さあオーさん、素早く敵を倒そう!
『オォォー!』
念の為オーラ防御を展開してオーさんに乗りながらガンナイフから鎧無視攻撃の呪殺弾を放ちながらオーさんは弾幕を放ち敵を攻撃する

『行くぞスタレ、勝つのは私だ!』
ミナルアさんは指定UCの効果でUC精霊の神・ミナルアを発動してUC原初の精霊を発動して概念干渉無視の力を付与した矢弾の雨を放ち敵を一網打尽にした

喧嘩する程、仲がいいって…言うけど仲良さそうだな
『オォォー!』



●鎬の削り合い
「ミナルアさん、あれ誰ですか?」
『腐れ縁で露出狂でドМの変態だよ、その癖実力はあるから、たちが悪い』
『さっきの人とどういう関係なの? お姉さん』
「昔からの腐れ縁だよ!」

 スターレイルとミナルアは互いの相方からの質問に答える。この2人は昔から何かと張り合うことが多いのだ。

 とは言え、今はRTA中。互いを意識しすぎてモタついてしまえばいずれ待つのは共倒れだ。ただでさえ他の猟兵やRTA勢たちは先へ先へと進んでいる。

『ここは素早く突破しないと後が面倒になる』

 ミナルアが「精霊魔導・ヴァイオレンス・パラドックス」を放ち、立ちふさがるmobを両断する。一方スターレイルは敵を撃ち抜くため一旦間合いを離す。観察しながら動きを見切り、武器を狙って衝撃波を放ち、戦闘能力を奪うにとどめた。

「お前に構っている暇は無い!」

 なにしろこの場の敵は倒してもリターンが労力に見合わない。故に最適解は無視。だが無限湧きという特性がこれを妨害する。そこで戦闘能力を奪いつつ、敵の鎧を爆弾に変化させて他のmobを巻き込むように突破するのがスターレイルの導き出した攻略法である。

「さあオーさん、素早く敵を倒そう!」
『オォォー!』

 一方、オオサンショウウオのオーさんに乗って強引に突破を図るエリュファシオンは若干先行していた。弾幕を展開して敵を近づけさせないようにしていることがプラスに働いたらしい。竜牙兵は近寄ろうとするが弾幕に当たればノックバックで動きが止まる。その間に前へ前へと進むことができていた。

『私も仕事しようっと』

 スターレイルの相方であるアウラはこれを見て敵にマヒ攻撃と鎧砕きのプロキオンを放つ。被弾によるヒットストップよりも確実に敵を止められる手段を選んだのだ。これでスターレイルはエリュファシオンに追いすがる。

『行くぞスタレ、勝つのは私だ!』
「いいや勝つのはこっちだ! 負けてたまるか!」
「喧嘩する程仲がいいってやつかな……」

 張り合うスターレイルとミナルアの様子に、エリュファシオンはやれやれと肩をすくめる。この分だと先行している他の猟兵に追いつけそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メンカル・プルモーサ
…ここは予め目を通しておいたチャートを試そう…
…心理隠密術式【シュレディンガー】と操音作寂術式【メレテー】で竜牙兵から存在を認識されないように…
…(移動しながら早口で)
巡回竜牙兵が居るけど今回は隠密状態なので発見されず脇をすり抜けることが可能
次の分かれ道からはしばらくは壁を蹴って床を踏まないことで警報罠を回避
(中略)
儀仗の間の前に竜牙兵が複数居るけどここでオリチャー発動…
【開けてはならぬ玩具箱】を使用…少し離れた位置に音を立てて設置…
設置音を認識した竜牙兵が箱に近寄ることで扉が短時間だけにフリーになるので
封印解除術式【ルーナル】で扉を即解錠して急いで中に入って鍵を閉めて終了…少し短縮出来たかな



●隠密こそが最適解
「……ここは予め目を通しておいたチャートを試そう……」

 メンカルはこのクエストに臨む前にWebフォーラム上で情報交換されていたこのクエストのRTAチャートを入手していた。そして今目の前に広がるダンジョンを見て、これは確かにチャートが無ければ難しい、と判断する。

「チャートだとアイテムが必要だけどこれで代用はできるか……」

 心理隠密術式【シュレディンガー】と操音作寂術式【メレテー】で隠密アイテムの代用とする。これで竜牙兵から存在を認識されなくなった。移動しながら早口でメンカルは実況し、記録をつけていく。

「……巡回竜牙兵が居るけど今回は隠密状態なので発見されず脇をすり抜けることが可能、次の分かれ道からはしばらくは壁を蹴って床を踏まないことで警報罠を回避」

 ぴょんぴょんと壁蹴りを繰り返しながら床に仕込まれた警報を発動させること無く着地。その後も通常移動は出来る限りの最速で、なおかつ警報やダメージ系のトラップを一切発動させずに進んでいく。

 やがてボス前の部屋に到達。扉の向こうはボスが待ち構える「儀仗の間」だ。だが、その周辺にはmobが数体。通常のチャートでは高火力技を浴びせて不意打ちボーナスダメージ込みで一撃で倒すのだが、メンカルはひとつ思いつく。

「ここでオリチャー発動……」

 ユーベルコード「開けてはならぬ玩具箱」を使用した|独自の攻略法《オリチャー》が始まった。『危険!開けるな!』と書かれた罠付きの箱を扉から少し離れた位置に配置。音を立てて置くことで竜牙兵の気を引くことを忘れない。

 設置音を認識した竜牙兵たちがたちまち集まってくる。罠の効果は麻痺を設定してあるが、効果範囲から漏れる竜牙兵もいる可能性はあるし、何より麻痺のバッドステータスは確率付与だ。メンカルが接地した箱はあくまで気を引くためのブラフ。本命は「扉から竜牙兵を引き離すこと」そのものにあった。

「設置音を認識した竜牙兵が箱に近寄ることで扉が短時間だけにフリーになるので封印解除術式【ルーナル】で扉を即解錠して急いで中に入って鍵を閉めて終了……」

 素早く扉の前に立つと強引に解錠、僅かに扉を開けて滑り込むように中に入り扉を閉める。施錠もすることで完全に竜牙兵はメンカルを見失ったまま侵入を許す格好となったのであった。

「……少し短縮出来たかな」

 計測のために視界の隅に表示していたタイマーを見て、メンカルは一息つく。後はこの儀仗の間にて待ち構えるボスを倒すだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『竜牙兵・指揮官』

POW   :    竜王の武威
【闘気を帯びた武器】が命中した敵を【返し刀】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[返し刀]で受け止め[闘気を帯びた武器]で反撃する。
SPD   :    竜王の呼気
【闘気を帯びた武器】から、戦場全体に「敵味方を識別する【荒ぶる炎の渦】」を放ち、ダメージと【消えない炎】の状態異常を与える。
WIZ   :    竜王の爪牙
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【闘気の刃】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アッティラ・ドラゴンロードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●バグプロトコルvsAny%ランナー
「よーしここを超えればタイムの大幅更新も見えてきたぞー!」

 mobの無限湧きと広いダンジョンの踏破を終え、ついにRTA走者たちと猟兵はクエストの最終局面であるレイドボス、「竜牙兵・指揮官」との決戦の刻を迎えていた。常人であれば「待望の強敵との戦いだ」と覚悟を固めるが、通常ではありえないタイムでゴールまでたどり着いた彼らからしてみれば「後はこいつを処して終わり」くらいの扱いでしか無い。

 問題はこいつがバグプロトコルであるのだが、それも表も裏も知り尽くしたRTA走者たちにとってはカラクリを見抜くのは造作もない事だった。むしろこの敵がバグプロトコルであることで生じる問題がひとつある。

「このHPバーのバグり方からいってHPの値がオーバーフローしてる感じ?」
「あー、桁あふれしてるってことは回復技ぶち当てたら一撃っぽいな。回復技当てれば桁あふれ直ってHPが負の値になるから即死させれる」
「でもさー、その手段で倒しても本来あの敵はHPバグってないわけで、そうなると再現性が無いから記録として認められないんじゃ……」
「あー……その問題があったな」

 そう、バグプロトコルは通常のプレイでは出現しないイレギュラーな存在である。倒し方はあるにはあるのだが、通常状態の「竜牙兵・指揮官」で再現出来ない以上、記録を出しても参考記録扱いになる可能性が高い。正式なコースレコードとは認められないため、モチベーション的にちょっと徒労感を感じてしまうのである。

「んー、どうする? 他にもやり方あるけどめんどいぞ?」
「サブフレームリセットでステータスいじるやつか? 行動パターンの乱数で良いの引かないときつそうだぞ。というかこれ通常の乱数テーブルで行けるか?」
「敵の種類ごとに乱数テーブルは固定って検証結果出てたろ。表示名とグラフィックは『竜牙兵・指揮官』でステータスだけがおかしいから乱数テーブルはそのままでいい」
「マジで? 初期seed値もそのまんまで良いってこと?」
「うん。だから後はサーバーにデータが保存されるタイミングで回線瞬断させれば任意のセーブデータを上書きできる。名前変更アイテムで名前『テカ』に書き換えときな」

 何やらカタギの人間にはついていけない話題で盛り上がるRTA走者たち。一番の問題は「クソ面倒だけどなんとかなりそう」という体で話が進んでいることであった。居合わせた猟兵達は思わず自分たちの存在意義とは、と首を傾げるがそうは言っても彼らにばかりリスクを負わせるのも忍びない。

 ともかく、割と勝ち確な状態で最終決戦が始まろうとしていた。
ゼーレ・ユスティーツ
何でもいいからやるわよ…
気功法で息を整えつつ推力移動で敵に近寄る

これは不味いわね、一旦凍りなさい!
敵が闘気を帯びた武器から炎の渦を放ってきたので視力でしっかり見つつ凍結攻撃の呪殺弾を放ち凍らせて回避する時間を稼ぐ
炎の渦から逃れるように推力移動で回避

『ゼーレ、僕も力を貸そう』
UCの効果でUC時空呪神・エーリュシオンが強制発動して鎌からUC時と空間が発動して炎の渦が消滅させる
(勿論、ゼーレにはこの声は聞こえていない)

チャンスね、無限影斬・スタールイー・レイド!
指定UCを発動を発動して相手の動きをしっかり見ながらを切り裂いた

『さあ、最速記録を目指すんだ…ゼーレ』
やってやるわ!ここまで来たんだからね!



●最終決戦の火蓋
「何でもいいからやるわよ……!」

 最初に動いたのはゼーレだ。ここまでの行程で上がってしまった息を気功法で整えつつ、推力移動で一気に距離を詰める。もちろん竜牙兵指揮官はこれに対応すべく攻撃スキルを行使。武器から炎の渦が飛んできて、ゼーレを焼き尽くそうとした。

「これは不味いわね、一旦凍りなさい!」

 流石に炎に巻かれる訳にはいかない。凍結攻撃の呪殺弾を放つことで炎の渦を掻い潜りつつ、竜牙兵指揮官を凍らせて回避する時間を稼ぐ。だが相手はレイドボスだ。状態異常には一定の耐性を持っている。氷が溶けるのも時間の問題だ。炎の渦から逃れるように横っ飛びで逃げる。

『ゼーレ、僕も力を貸そう』

 その時、時空呪神・エーリュシオンの力によって炎の渦が掻き消える。ゼーレは知覚できないが、炎の渦の攻撃エフェクトをエーリュシオンが自身の権能で消滅させたのだ。

「チャンスね、無限影斬・スタールイー・レイド!」

 広範囲を巻き込む斬撃で、竜牙兵指揮官の巨体を一刀両断せんと切り刻む。ノックバックで敵がよろめくが、HPのオーバーフロー・バグのためまだ倒れるには至らない。

「でもノックバックをしたなら攻撃自体は有効……なら、まだ手はある! やってやるわ! ここまで来たんだからね!」

 エーリュシオンに見守られながら、さらに攻撃を重ねる。HPは削れないがノックバックや状態異常は通った。であれば、倒すことは不可能ではない。ゼーレの先制攻撃は、まさにそれを示すことに成功したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
第三部はぁじまぁるよー!
前回竜牙兵を討伐したが今回はその指揮官討伐でござる…代り映えしないボスのクズがこの野郎…!

HPバグっててヤバいわね!グリッチなしじゃ終わらん可能性もあるが…まあこの後ノーミスで意外と速攻で終わるって事もあるし続行しますぞ
敵は物理攻撃なので…UCでバフでござる!物理無効!暴力!切腹!って感じで
早くも作業でござる…後は死ぬまで殴るだけだが終了時間が不明ですぞ、なので…


みなさまのためにぃ
こんな動画を用意しました


完走した感想でござるが…いやーきついっす、HPバグで何発殴るか計算できない…こんなんじゃRTAになんないよ
まあ完走するのが大事だって親父殿からもそれ一番言われてるから



●うわでた(shita red big)
「第三部はぁじまぁるよー!」

 ボスとの対決。だが結局のところ、相手は「竜牙兵・指揮官」。要するに一般mobの強化版である。歯ごたえを求めるプレイヤーからすればなんか物足りない。

「代り映えしないボスのクズがこの野郎……!」

 と辛辣な台詞を吐いてみせるが、問題はそのHP。バグっている以上通常の攻略方法ではまず無理である。しかしそこはエドゥアルト、ここでやや俯瞰して状況を把握。

「グリッチなしじゃ終わらん可能性もあるが……まあこの後ノーミスで意外と速攻で終わるって事もあるし続行しますぞ。それにこれはオンゲ、他のプレイヤーがグリッチでHP正常値に戻す可能性にワンチャン期待ってことで」

 そう、普通であれば一人で全てのチャートを網羅する必要があるRTAだが、このGGOはオンラインゲーム。現在も他のプレイヤーと共闘して敵を倒すのであるから、他のプレイヤーがグリッチでHPバグを正常化できれば後は撃破まで時間はかからない。

「ジュリアス氏、グリッチ発動までの乱数調整ってどんな具合でござるか」
「今ネイトが乱数調整中だが……良い乱数を引けるまで足止めできるか」
「ういー……となればノックバックで動き止めるだけでござるな」

 近くにいたRTA走者から乱数調整の完了見込み時間を聞き出すと、エドゥアルトは竜牙兵指揮官の前に飛び出した。敵は豊富なスキルこそ持ってはいるものの基本的に物理攻撃が主体だ。となれば、やることはひとつ。

「物理無効! 暴力! 切腹! って感じで……早くも作業でござるなぁ」

 全身に流体金属を纏って絶え間ない物理攻撃スキルを浴びせていく。ノックバック属性のある攻撃なので敵は攻撃を出す間もなく一方的にエドゥアルトの攻撃を受け続ける格好となった。基本的にはこれで撃破まで持っていけるのだが、現在はHPバグでいつ終わるかもわからない状況だ。

「なので……

み な さ ま の た め に ぃ

こんな動画を用意しました」

 その意図に気づいた一部のRTA勢から「おいやめろ」「視聴者に苦痛を与えなくていいから(良心)」「やだ!! 小生やだ!!」「お ま た せ」「い つ も の」「親 の 顔 よ り 見 た 苦 行」などの悲鳴が飛び交う。それを無視してエドゥアルトが流すのは作画崩壊や脚本の破綻で伝説となった往年のTVアニメである。

 通しで見ることを「懲役30分」と言われるアニメを強制的に見せられたRTA勢たちの阿鼻叫喚の地獄絵図を他所に、エドゥアルトは淡々とノックバックを繰り返していく。これもまた、親父殿のRTAではおなじみの光景であった。

 後に、完走した感想を求められたエドゥアルトはこう語る。

「完走した感想でござるが……いやーきついっす、HPバグで何発殴るか計算できない……こんなんじゃRTAになんないよ」

 最後の最後、HPバグはチャート殺しと言われるほどの難関であった。しかし、それでも完走できたのは、ひとえに「親父殿」の金言のお陰である。

「まあ完走するのが大事だって親父殿からもそれ一番言われてるから」

 「親父殿」がRTAの敷居を下げたのは、最速記録を更新してなくても投稿するというスタイルが大いにウケたからだった。RTAと言えど、タイムはともかくしっかり完走することがまず重要。エドゥアルトをはじめとする「チルドレン」は、そんな「親父殿」の精神を広く一般に伝導しているのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
確かにHP量がおかしいね……えーと…でもダメージは通るのか
…状態異常の類も通る…ねぇ
…えー…つまり攻撃にさえ対処出来ればなんとか…あとは誘導だな…
…部屋の隅に移動して…確か竜王の爪牙を防げば接近してくる…だっけ…
…攻撃方向は限定されるし術式障壁を多重に張って凌ぐとしようか…
これで遠距離攻撃は効果が薄いと判断して直接攻撃に切り替えてくるから…
…接近に合わせて【空より降りたる静謐の魔剣】を指揮官に叩き込んで凍結させよう…
…凍結中はノックバックしやすくなるから位置を入れ替えた上で壁の隅に押し込んで…
…解除された瞬間にタイミング良く魔剣を叩き込んでの繰り返しで動きを封じて時間を稼ごうか…



●停滞
「確かにHP量がおかしいね……」

 HPバーとそこに書かれた残量表記を見てメンカルは状況を理解する。ただし、おかしいのは「HPバー」のみ。他は通常のボス敵と同様であり、ダメージはしっかりと通るし状態異常も効く。先行する猟兵たちの活躍からもそれはしっかりと把握できていた。

「……えー……つまり攻撃にさえ対処出来ればなんとか……あとは誘導だな……」

 どうにかRTA勢たちのサブフレームリセットを成功させるためにも、攻撃を誘導させる方向に持っていきたい。また、その後の有利な状況を作るためにも位置取りは重要だ。

「ここ室内だったか……それなら……」

 周囲を見回す。「儀仗の間」は砦の中の大広間ということもあり、四方を壁に囲まれた空間だ。天井は高く、アーチ状の屋根で支えられている。柱は少ない。メタ的には、戦闘空間を広く取るための設計と考えられる。逆に言えば、隠れる場所は少ないのだ。

「となると部屋の隅に移動だな……」

 メンカルはすぐに部屋の隅、角部分に向かって移動する。竜牙兵指揮官は即座に攻撃スキル「竜王の爪牙」を使用。闘気の刃を周囲に放つ範囲攻撃だ。攻撃方向は限定されるので、メンカルは障壁を多重に張ることでこれをノーダメージで受けきってみせた。果たしてメンカルの読み通り、敵はすぐさま接近戦に移行する。このあたりの行動パターンも事前調査どおりだった。

「停滞の雫よ、集え、降れ。汝は氷刃、汝は驟雨。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣……よし凍結入った」

 指揮官の近接攻撃に割り込むように放たれたのは|空より降りたる静謐の魔剣《ステイシス・レイン》。凍結のバッドステータスを与える魔法攻撃で最大740ヒットの連続技であった。当然これをしたたかに受けた指揮官は凍結状態となり、動きを止める。

「……凍結中はノックバックしやすくなるから位置を入れ替えた上で壁の隅に押し込んで……」

 動きを止めた敵の脇を通り過ぎ、そのまま敵を押す。凍った敵は移動可能オブジェクトであるから、メンカルが押すことで物理演算エンジンは移動方向に力学的ベクトルを発生させる。すなわち、荷物か何かのように敵を押して移動させることが可能となるのだ。

 凍結状態は毎秒発生する解除判定に成功する必要がある。だが解除したところで魔剣が叩き込まれて再び凍結状態になってしまう。1回の凍結状態にならなくとも、ノックバックで動きは止まる上に攻撃は740回。凍結する確率は1/5のため試行回数の暴力でいつかは凍結状態を引き当てる。この繰り返し、いわゆる「嵌め殺し」戦法に持ち込んだのであった。

「後はサブフレームリセット成功まで待つだけだな……落ち着いてやっていいよ……」

 メンカルは気怠げに振り向きつつRTA勢に親指を上げてみせる。タイマーストップも間近に見えてきていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

風花・雪月
正直、バグの利用を前提としたプレイは感心せぬが――
管理者の許可の範囲で行われるのであれば、それもこのゲームの楽しみ方の一つかもしれぬな

さて、今はタイムアタック中
プレイヤーの身に危険が及ばぬ限り、わしは手を出してはいかぬな
UCで管轄権の一部を譲り受け、《監視》で各キャラクターのHP等を確認
《結界》による防護の準備だけはしておくとしよう

クエストクリアとなったならば、後始末じゃな
バグプロトコルの残滓がないか、ステータスを確認し、あったならば《抹消》
破損箇所がある場合は《修復》しよう

それにしても、あのようなバグをよくも見つけ出すものじゃ
修正対象となるかは分からぬが、上には報告しておくとしようかのう



●タイマーストップ
 風花・雪月(龍型AI・f41951)はRTAに興じるプレイヤーを観察していた。このゲームの管理AIとして創造された自分から見れば、規約で許されている範囲とは言えバグ利用を前提としたプレイは少々不健全で感心しないな、と思う。だが、グリモア猟兵である運営側の管理者の1人が許可する範囲内に留まっている遊び方ではあった。

 現に、RTA勢たちは「一般プレイヤーでもやろうと思えば出来なくもない」という一線をしっかりと守っている。あからさまなチートや外部のツール・マクロといった手助けは一切借りていない、競技のごとくストイックで厳密なルールとマナーの下行われていたのである。

「それもこのゲームの楽しみ方の一つかもしれぬな」

 雪月はそう結論づけると、彼らの「競技」を邪魔することなく、しかし致命的な状況は避けるための行動に出る。管理者権限の一部を取得するとバグプロトコルと化した指揮官、そして各プレイヤーのステータスを可視化。万が一に備えて結界をいつでも張れるようにしておく。

 次の瞬間、雪月の目の前で凄まじい現象が起きた。突如名前欄を「テカ」に書き換えたプレイヤーが一時的に消えたかと思うと、再び元に戻る。回線が瞬断され、再び再ログインしたのである。次の瞬間、バグプロトコルのHP表示が正常なものに書き換わっていた。一時的に回線が瞬断されたことでセーブデータが上書きされるが、その瞬間にシステム側のチェックロジックが働き、不整合となるデータを一気に矛盾がないように正常値に戻す。それはバグっていたHPも例外ではなく、本来あるべき数値に戻った。

 名前を書き換えたプレイヤーは、アイテムやスキルの配列も特定の内容に固定していた。そう、この特定の配列を作ってセーブデータの書き込みを行うことで、システム側がチェックロジックを呼び出すようになっていたのだ。

 データの整合を行う過程で、これまで動きを止めるために浴びせ続けられていた攻撃のダメージ蓄積も反映された。猟兵によって絶え間なく攻撃され続けていたそのダメージ蓄積は、竜牙兵・指揮官の本来の最大HPを3回消し飛ばしてもお釣りが来るほどだったのだ。即ち──。

「一瞬で溶けてしもうたわ、HP」

 竜牙兵・指揮官は地面に倒れ伏し、クエストクリアと相成った。タイマーストップの結果、コースレコードが塗り替わったことを確認したRTA勢たちは新記録達成に沸き立つ。

「全く、とんでもないことを考える者もおるものじゃな。サブフレームリセットとは。規約で許されているギリギリの崖っぷちじゃぞ?」

 新記録を達成したプレイヤーたちがドロップアイテムの取得を行う中、雪月はバグプロトコルの影響がクエストエリアに残っていないかをつぶさに確認する。データの破損箇所は修復し、さらにリポップが予約されている竜牙兵・指揮官のデータを再確認。HPなどのステータスバグはなく、次は正常にプレイができるはずだ。

「いやはや驚いた。あのようなバグをよくも見つけ出すものじゃ……修正対象となるかは分からぬが、上には報告しておくとしようかのう」

 ユーザー側で特定のデータを作るとシステムの管理ロジックを発動可能というのは再現性の困難さに目をつぶるとなかなかクレイジーな事態になる予感はする。そう考えて、雪月はバグレポートをまとめてゲーム運営側への提出を行うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年02月03日


挿絵イラスト