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韓信窘まって封人台を搬び、于禁屯して南蛮門を守る

#封神武侠界 #戦後 #『韓信大将軍』

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#『韓信大将軍』


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●雪辱
 三国志の史上において。
 于禁という人物は、一般には晩節を汚した将とされる。関羽との戦いで水攻めによって危機に陥った際、大した抵抗もせずに己の指揮する軍勢を挙げて降伏したからである。不忠、臆病のそしりは免れなかった。
 しかし一方、于禁の行動は保身によるものではなく、必敗の状況から絞り出した策だったのではないかという説もある。
 一度に大量の捕虜を抱えることとなった関羽軍はたちまち兵糧を消費してしまい、呉への掠奪行為という暴挙を余儀なくされた。これに激怒した孫権は、後に魏と連携して関羽を討った。つまり于禁の降伏は、関羽の死の切っ掛けになったのである。
 彼の真意がいずれにあったのかは、わからない。語られることもあるまい。骸の海から舞い戻った彼本人の口からさえも。
「退却も降伏もできぬ、選択の余地のない戦場か」
 全身甲冑姿の絡繰兵士たちを周囲に侍らせつつ、痩身の将はつぶやく。
「望むところだ。今度こそ、最期まで戦おう」

●瀬戸際
「最初に相手してもらうのは、于禁っていう将軍だよ。韓信から神器をもらってて、別の世界の集団オブリビオンを兵隊として使えるっていう能力を持ってる」
 グリモアベースの一画にて、難しい顔をした大宝寺・風蘭(狂拳猫・f19776)は言った。
「兵隊は、サクラミラージュから召喚された『朧侍』っていう人型戦闘メカ。全身装甲の防御力に任せて突撃して、刀で攻撃するってパターンが多い。まあ神器の性質上、于禁一人を倒せればそいつらは消えるから、いちいち殲滅しなくってもOKだよ」
 于禁を撃破できたなら、次は南蛮門――次元の渦から人界に流れて出ようとしている、魔獣の大群を相手することになるのだという。
「こっちでいう三国志演義に登場する、いわゆる南蛮軍のメンツだよ。前に、兀突骨ってゆーゴッツいのと戦ったじゃん? あれのお仲間っていうか、ご同類っていうか」
 それら南蛮王と呼ばれる魔獣らは強大なものばかりで、いかに猟兵といえど討ち尽くすのは不可能だろう。ただ、放置すれば人界の滅亡は免れないので、どうにか押し返して南蛮門の奥へと戻ってもらわねばならない。
 それが果たされた後に、ついに本命たる韓信との戦いに臨むこととなる。
「韓信は、一人でいるわけじゃない。『刻印玄蜂』っていう、でっかい蜂のオブリビオンの群れを従えてる。国士無双とまで謳われた統率力オバケだかんね……手足も同然に軍勢を操ってくるよ。実力でいやー圧倒的格上だから、対峙したら間違いなく、先手は取られる」
 この先制ユーベルコードに対しての対策は、必須といえるだろう。無策で吶喊したところで、韓信の用兵の前に手玉に取られるだろうことは、想像に難くない。
「と、まあ……敵の戦力についちゃこんなところかな」
 難渋であった顔を一層険しくしつつ、風蘭は言う。
「改めて言うけど……韓信の狙いは、儀式魔術で『封人台』をどっか別の世界のオブリビオン・フォーミュラの元へ送ること。南蛮門を使って魔獣の大群を引っ張りだそうとしてるのは、儀式を完成させるまでの時間稼ぎだ。それでも、放置すれば人界が滅ぶくらいのことは起こる。タイムリミットの十二月二十七日まで、何としてでも韓信を討たなきゃいけない」
 ごん、とテーブルに突っ伏すように頭を下げる。
「力を貸してほしい!」


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良です。

 このシナリオは、封神武侠界を舞台にした決戦シナリオです。これと同種の決戦シナリオを合計「20回」成功すれば、韓信大将軍の計画を阻止し、人仙を封印できるという『封人台』が他世界のオブリビオン・フォーミュラの手に渡るのを防げます。
 ただし、タイムリミットは「12月29日」までです。

 第一章は、神器【異世界オブリビオン兵団】の力を得たボスオブリビオンとの戦いです。
 【異世界オブリビオン兵団】は、ボスを倒せば消滅する軍勢で、サクラミラージュより『朧侍』が召喚されています。どんなユーベルコードを使うというのはそこまで気にしなくて構いません。人間大の全身鎧型ロボットが刀でうりゃーっと攻撃してくると認識できていればOKです。

 第二章は、南蛮門からあふれてきそうな南蛮王(超強力な魔獣)の軍勢を押し返すターンです。全てを打ち倒す必要はありません(というか、まず不可能)が、門の奥へと軍勢を押しやらないと、人界が滅んでしまいます。何とか頑張ってください。

 第三章は、韓信との決戦です。個人の武勇にせよ軍を率いた戦術にせよ、極めて高い能力を持った強敵ですので、無策で突撃しても思ったような戦果は期待できないと思ってください。
 韓信は、必ず先制してユーベルコードを使ってきます。このユーベルコードの先制行動に対する対策を盛り込んだプレイングには、ボーナスが付きます。
 さらに、ユーベルコードとは別に、集団オブリビオンの『刻印玄蜂』の大軍勢による包囲攻撃を仕掛けてきます。刻印玄蜂については、どんなユーベルコードを使うというのはそこまで気にしなくて構いません。普通に、毒針でうりゃーっと攻撃してくるでかい蜂だと認識できていればOKです。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『🌗左将軍『于禁』』

POW   :    旧友(とも)をも罰した我が身なれば
レベル×10m内のどこかに【光に縁取られた闇の巨大な『昌覇』という字】を召喚する。[光に縁取られた闇の巨大な『昌覇』という字]を見た敵は全て、【『裁定』属性の不可視で物を透過する涙雨】によるダメージを受ける。
SPD   :    于曹村伝記譚
戦場内を【雨が降り、土嚢に守られた村(住民不在)】世界に交換する。この世界は「【強化と反射無効】及び【村外に出るな】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
WIZ   :    曰く『暴慢無親曰厲。殺戮無辜曰厲。』
【諡『厲侯』の持つ概念】と合体し、攻撃力を増加する【ことにより空から敵のみへ降るレベル本の剣】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【『病毒』属性を帯びたレベル×5本の矢】が使用可能になる。

イラスト:シオルド

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は荒珠・檬果です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

村崎・ゆかり
于禁将軍ね。三國志はさして詳しくないし、経歴とかもさっき聞いた程度。
ただのオブリビオンとして討滅してあげる。

あなたは色々な雨を降らせるのが得意なのね。奇遇だけど、あたしもよ。
「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」で紅水陣。
将軍とあたしを、そして朧侍を取り込む形で展開する。
あたしは、「オーラ防御」「浄化」「環境耐性」「毒耐性」で影響を軽減する。機械仕掛けの朧侍には、酸の雨と靄は致命的でしょう?
頭上からの剣の雨は、偶神兵装『鎧装豪腕』で「盾受け」。病毒の矢は、薙刀を振るった「衝撃波」で吹き飛ばし、その隙を突いて特攻。
薙刀で「なぎ払い」「串刺し」にしてあげる。

ここからが本番ね。


神臣・薙人
封人台…
何処の世界のフォーミュラの元へ行こうと
厄介な事になるのは間違いありませんね

敵の数が多いですね
ヤドリギの織姫を使用し
植物の槍で攻撃しつつ
一点突破で于禁の元を目指します
高速詠唱で可能な限り立て続けに
槍を繰り出します
多少の負傷は気にせず
于禁を射程に入れる事を重視
深手を負った場合は生命の実で治療

于禁の元まで到達したら
頭上に白燐蟲の壁を作り
空から降る剣への盾とします
全ては防げずとも威力は削げる筈
その間に于禁へ槍を撃ち込みます
追尾する矢は槍で撃ち落として対処
防御には固執せず
于禁への攻撃を優先します
動きに支障が出るほどの傷を負った場合は
生命の実で治療
戦いは序盤ですからね
立ち止まっている暇はありません



●昏き雨
「于禁将軍、ね……知らないわ」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は三国志に明るくない。
 ゆえに、于禁――魏軍にあって五子良将と讃えられた中の一人の名を聞いたところで、ピンと来る道理はない。まあ、仮に少々聞きかじっていたとしても、桃園三傑や孔明、呂布といった有名どころと比べれば、于禁は陰に隠れた存在ではある。
「だから、ただのオブリビオンとして戦って、討つわ」
「そうか」
 ゆかりが己を知らないことに、于禁は格別の情もなさげであった。驚くでもなじるでもなく淡泊に応じるや、ヒョウっと大刀めいた槍を振るう。数十メートルほども離れた猟兵らに切っ先が向くように。
 途端、于禁の周囲を固めていた白い甲冑型ロボット――朧侍の集団が一斉に抜刀し、整然とした突撃を敢行する。
 さながら沖つ白波。呑まれればひとたまりもない。呑まれればの話だが。
「古の絶陣の一を呼び覚まさん。魂魄をも溶かす赤き世界よ、我が呼びかけに応えよ。疾っ!」
 ゆかりの呪言が吐き出されると同時、天が曇る。ただし曇ったと見えたのは一瞬であって、次の瞬間には周囲一帯に血のような真紅の雨が降った。地面を叩いて弾け、飛沫となった雨は宙に漂い、たちまちに濃霧を形成していった。
「……む?」
「この赤い雨と靄は、強酸。械仕掛けの朧侍には致命的でしょう?」
 ゆかりの言葉を肯定するように、【紅水陣】の中に捕らわれた朧侍の集団は、ギギギ、と軋んだ音を立てつつ、動きを鈍らせていく。流石にそれだけで戦闘不能まで持って行けるほどでもないが、明らかに戦闘力半減程度のことは起きていた。
 そして、それが起きているならまずは充分である。
 どっ、と雨に濡れた地面を蹴立て、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)が走った。ヤドリギで編まれた雨合羽めいたローブによって、真紅の雨は弾かれている。
 動きの鈍った朧侍らを無視して隊列の隙間を突破し、薙人が狙うのは于禁ただ一人だった。神器の効果によってもたらされた朧侍の軍勢だが、いくら数が揃っていようが于禁を討ってしまえば消える。ならば、一気に于禁一人を狙える状況を作れれば、それに越したことはないのである。
「悪くない戦術だ」
 猟兵を賞賛する于禁の元へ、薙人の繰り出した槍が迫る。
 木の軸に蔦を巻き付けたような柄に、棘を幾重にも重ねてこしらえたような穂という、植物製の槍。一見して柔弱な印象のある奇妙な槍だが、ユーベルコードに由来するそれは、見た目からは決して量れない超常の強度と威力が宿っている。
 于禁は己の槍の腹を薙人の槍穂に合わせ、突きを逸らした。
 そのまま反撃の薙ぎ払い――と動くより先に、素早く槍を引き戻した薙人が二の突きを放つ。
「ぬ……」
 于禁が柄を盾にして弾くが、薙人はさらに攻め立てた。まるで守りを捨てたかのような、前のめりな苛烈さである。一気呵成に于禁の首を獲るという気概が、そこにはある。
 どっ! と。
 何度目かの刺突をさばきそこね、于禁の左肩に槍が突き立った。
 于禁の表情が苦痛に歪む――が、眼光は鋭く、また所作に淀みは生まれない。
 薙人が槍を戻すより先に、于禁は薙人の槍の柄をつかんだ。
「っ――?」
「易々と討たれてはやれん」
 于禁に槍をつかまれて一瞬動きの止まったところ、薙人の頭上に唐突に数十の剣が生まれた。
 次の刹那、ざっ! と剣の雨が降り注ぐ。
 前のめりになった薙人といえど、その直撃を受ければ命が危ういという判断はできる。槍を手放し、白燐蟲を纏わせた腕を盾として頭上に掲げた。
 剣の雨は白燐蟲の盾によって勢いは削がれたものの、完全に防がれるようなものでなはい。急所は避けたものの、両腕は傷まみれになった。
「ぐう、っ……!」
「終わりだ」
 後方に跳びつつ、于禁がばさりと袖を振る。同時、袖口から黒灰色の十数の矢が吐き出された。弓弦に弾かれたわけでもなさげだというのに、それらは出現と同時に雷光のごとき速さで薙人へと殺到した。
 貫かれた者に病毒を与える魔矢。腕の利かぬ状態では防ぎようもないタイミング。
 しかし、そこに薙刀を担いだゆかりが駆け込む。
「でやぁっ!」
 衝撃波を伴った斬撃が薙ぎ払われ、矢のことごとくが弾かれた。
 さらに薙刀を切り返し、于禁へと斬りかかる。が、その一撃は槍を合わせられてあっさりと弾き返された。神器の力を別としても、ボスオブリビオンたる者だけあって戦闘力は高い。
「くっ……!」
「しぶといな」
 于禁は怜悧な眼差しで二人を睨んだ。
 それを見返しつつ、薙人はヤドリギのローブから新たな槍を生やす。
「まだ緒戦……ここで立ち止まっているわけにはいかないんですよ」
「本番は、まだ後に控えているのよ」
 ゆかりが続けると、于禁は「ふむ」とあごに手を当てた。
「本番とは、韓信大将軍のことか。いいや、貴様らはこの先に進むことはできん」
 肩に刺さっていた槍を抜いて捨て去り、于禁は威圧的に言い放った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォルティス・ワーライン
【コウネリのメンバー】
(戦況劣勢時にUCで味方の上空に登場)
ヨウ、無事か?
他の奴らもまだ生きているな。
ふん、機械兵とはな。
だが、近接武装しかないようだ。このまま数を減らしてやる。
船底プラズマ放射砲、対空対地パルス機銃、発射シーケンスよし。
そうだな…。ヨウ達を巻き込むわけにはいかない。

かといって機械兵は無限に湧き出てくるだろうが、それでも瞬間的には敵は減るだろう。
EPイーグル、コウネリのメンバーを援護する。
発射シーケンスが準備した武装の火気管制は任せるぞ。

ヨウを狙うやつは・・・プラズマチャージカノンで俺がじきじきに当ててやる。


ヨウ・ツイナ
【コウネリのメンバー】
では、私はコミュニ殿の露払いといくでござる。
皆準備は良いでござるな?(サジーがUCを発動した後にこちらもUCを発動するでござる。)
私自身も胡蝶の鎧で、寒さには耐えられるでござる。
氷をテーマにした戦闘で、ここは戦い抜くでござる。機械は寒さに弱いが道理。
どこまで朧侍とやらが動けるか、見ものでござる。

コミュニ殿に襲いかかる敵は、精霊弓・氷華蝶で露払いを。
着弾時の爆風が朧侍とやらに効くでござろう。相手の将軍との対決、邪魔はさせぬ。
くっ、装填までに間に合わねばフリーズグレネードで誤魔化す!

ぐぬ、相手のUCで被弾をしたとしても、私の氷蝶で少しは回復できるでござる。


サジー・パルザン
【コウネリのメンバー】
周りは俺達が蹴散らしてやる。次俺に譲れよな?コミュニ。
戦争だ!行くぞ野郎ども!(ヴァイキングの角笛を吹きながらUCを発動)

おぉ、寒くなったな。
だが、耐寒のルーンの入れ墨で問題ねえ!
デーンアックスで、朧侍とかいう人形共をちぎってやるぜ!
おら、寒さで縮こまってしまったのか?
いいね、乱戦だ!周りをよく観察し、暇ならきつそうな味方にハチェットの援護投擲をしてやる。
ははっ、いいねえ。この連携もどきが楽しいのさ。戦争のな!

雑魚どもはどんどんいなくなっちまうな。
コミュニ、蹴散らしきる前に終わらせなければ俺が貰うぞ?


コミュニ・セラフ
【コウネリのリーダー】
ふんむ、集団戦ですかに。そこに将軍が1人。
私が戦いに行きますかに。
露払いを頼むに。

ふんむ、ヨウのUCで雪原に変わったかに?
だが、私の力のオーラであれば、特に気にすることないに。
足場の悪い中、于禁とやらに戦いを挑んでやる。
逃げ場のない、超接近戦に!
チェイン・ハンマーで被弾を気にせず、強引に攻撃してやるに。
その槍、へし折ってやるに!多少の被弾は私の筋肉そのものがカバーし。修復してくれる。

数合素直に撃ちあったら
UCを使用して、敵を拘束してやるに。これにより、上から落ちる矢、剣を守りつつ相手にダメージを与えてやりますに。
自分自身の力で!潔く散るがいいに!



●コウネリ
「ふんむ……」
 周囲を見回し、コミュニ・セラフ(女傑なる狂天使・f12530)が唸る。
 于禁を取り巻くように、大勢の朧侍が隊列を組んでいる。神器の効果ゆえか、あるいは元々の将としての統率力が高いからか、その隊伍は整然としている。
「敵将は私が相手しますに。露払いはお願いできるかに?」
 相手取るに骨の折れる集団だというのは、一見すればわかる。露払いというのは易くとも、そう楽にこなせるものでもない――が。
「いいとも。次の大将首は俺に譲れよ?」
 余裕げにサジー・パルザン(ヴァイキングの生き様・f12550)は応じた。
 そして腰に提げた角笛を手に取り、吹き鳴らす。重低音――さながら、海鳴りのような。
 その音に答えるように、空間が黒色にねじくれる。そして泥が捻り出されるようにして、捻れた空間から人影が這い出てくる。角付きの半ヘルメットに、剣やら盾やら戦斧やらで武装したヴァイキングの群れだ。
「戦争だ! 奴らを蹂躙するぞ!」
 冗談のように巨大な片刃戦斧を掲げ、サジーが大声を張り上げた。
 ヴァイキングらも同じように得物を掲げた。整列した朧侍たちに比すると荒々しく乱雑な所作であるが、しかし、何より力強い。
「賊軍風情が猛るか」
 于禁が静かに槍を振るうと、抜刀した朧侍の軍勢がヴァイキングたちを、引いては猟兵たちを包囲殲滅するような陣形を取りつつ襲い掛かってきた。
 と。
「雨雪降らせ! 敵を裁け!」
 ヨウ・ツイナ(絶対守護の女武者・f18276)が叫ぶ。
 途端、雪崩が起きたかのような豪雪が不意に周囲一帯に降り注いだ。瞬きを三つか四つもする間に、雪は膝下をすっぽりと埋め尽くすほどの積雪を生み出す。
 必然、足を取られた朧侍らの突撃の速度は大いに鈍ることになる。
 その様を見たヨウは、図に当たったとばかりに笑みを浮かべた。
「機械は寒さに弱いというが道理。その絡繰の兵隊どもがどこまで動けるか、見ものでござるな!」
「……道理、と来たか。お互い超常のモノに堕した身だというに」
 ヨウの台詞に、于禁は鼻から薄い吐息をもらした。嘲笑に似て、しかし、どこか寂寥も感じる吐息だった。一度は命を失っておきながら、未練がましく超常の妖異となってこの場に立つ己自身について、思う所でもあるかのような。
「ならば、こちらも道理に従って物を言わせてもらおう。兵器として生まれた絡繰と生身の人間とを比べて、より寒さに弱いのはどちらだろうな」
「答え合わせがご所望か? なら見せてやる! 野郎ども、蹴散らせ!」
 サジーが鬨の声を上げ、ヴァイキングらとともに津波のように朧侍に斬りかかっていった。
 サジーの戦斧は刃が大きく重い。対する朧侍の刀も相当の剛強さを持ち、また全身に施された装甲も頑丈そのものである。鋼と鋼がぶつかり合う轟音が鳴った後、押し勝ったのはサジーの方だった。
 斬撃というよりは打撃。鋭さより圧力。そんな風情の一撃が、朧侍を破壊する。
 その動作には、寒さによる筋肉の萎縮といったものは感じられない。それは単なる気合いや根性に依存したものではない。サジーの体に刻まれたルーンの入れ墨によって寒さへの耐性を得ているからである。
「なるほど、見事だが――」
 サジーの奮戦ぶりを見やりつつ、しかし于禁は焦るでもなく、槍の石突でトンと地面を叩いた。
 それだけだ。これという変化はない――否、それと気付かぬ程度の些細なものがあった。ヨウの降らせる大雪に、雨が混じったのだ。冷たい雨が。
「于曹村には法がある。強化、反射の効果は認められん……まあ、従いたくないなら、従わぬでもいいが」
「あん……?」
 首を傾げるサジーに、朧侍が袈裟懸けに斬りかかってきた。
 どうというほどの動きでもない。戦斧を盾にして防ぐ――つもりだったが、なぜかその動きがぎこちない。
「っ!?」
 ざっ! と肩口に刃が食い込み、鮮血が噴出した。
「サジー殿!」
 よろめくサジーに朧侍が殺到しようとするところ、ヨウが弓矢を放つ。
 氷華蝶の矢は凍てつく爆発をもたらす。爆風に煽られた朧侍らの装甲に、あっという間に霜が降りていった。一拍か二拍ほど置いて、刀を振り上げたままの姿勢で動きを止める。
 よろりと朧侍から距離を取りつつ、サジーは寒気にそぐわぬ汗を払う。
「定められた法に従わぬ者は、思うようには動けぬようになる」
 冷淡な眼差しを猟兵らに向けつつ、于禁は言った。
「さて、強化を切って味方の力で凍死するか、ろくに動けぬ体を引きずって斬り刻まれるか、好きな方を選ぶがいい」
「ぐぬぬ……私のせいなのでござるか?」
 ヨウが顔をしかめる。
 実際のところ、ヨウの生み出す豪雪が凄まじいといったところで、それがために直ちに凍死するほどコウネリの面々は柔弱ではない。ただ、耐寒能力で上回るというアドバンテージを消されてしまえば、数の差が物を言うようになってしまう。
 かといって、ならばユーベルコードを解いたとしても状況が好転する要素はない。戦う前こそ整然たる様を誇っていた朧侍の軍勢が、ヨウのユーベルコードによる大雪原に放り込まれて動きを乱しているのは確かなのだ。雪を消し、万全の朧侍の群れを相手にするのとどっちがマシかは迷うところだ。
 と、ヨウが歯がみしているところ。
『ヨウ、無事か!?』
 鋭く叫ぶ声は、轟音と全方位にまき散らされる衝撃波と同時である。そしてさらに同時、戦場の上空には突如として鋼鉄の巨影が出現していた。
 声の主はフォルティス・ワーライン(宇宙を駆けるケントゥリオ・f18278)であり、巨影は彼が操る宇宙用駆逐艦のものだ。
 駆逐艦の船底や舷には、いかにも近未来の機械然とした砲が備え付けられている。
『シーケンスよし――船底砲、対地機銃、斉射!』
 フォルティスの号令に従い、どどどど! と、ビームの乱撃が放たれた。雨のごとく霰のごとく、破壊の暴熱が降り注ぐ。頑強な装甲で覆われた朧侍はそんなビームの一撃では吹っ飛びはしないが、リーチ外からの弾幕で一方的に攻撃されているとなれば時間の問題でしかあるまい。雪で足が鈍った状態であれば、なおさら。
『ふん、近接武装しかない機械兵など的でしかないな!』
「次から次へと……多彩なものだ」
 フォルティスが勝ち誇る声を聞きつつ、于禁は感心したような台詞を吐く。ただ、劣勢に瀕した危機感なり悲壮感なりといったものは、全くない。
「だが、空にあろうが地にあろうが、私がまとめて貫けばいいだけのこと」
 于禁が再び石突で地面を叩くなり、雨混じりの雪に剣が混じるようになった。ユーベルコードの超常の剣、敵対する者のみを刺し貫く呪われた刃群である。
『うお!?』
 遥か高みから降るその刃は、必然、空にある航宙駆逐艦にも届く。ガンガンと剣が当たり、駆逐艦の装甲に幾条もの裂傷が刻まれていった。
 剣は、さらにサジーやヨウにも降り注ぐ。
「うお!?」
「くぬっ!」
 サジーは戦斧を振るって剣を弾き飛ばし、ヨウは宙にグレネードを投げ付けて吹き飛ばした。
 対応できないではない。しかし、手の届かないところからの弾幕攻撃という、さっきの戦法をそのまま返された格好である。時間の問題で不利になっていくのは、今度は猟兵の方だ。
「……む?」
 ふと、于禁は眉間にしわを寄せた。
 足りない。剣の雨の切っ先が向くべき者は、もう一人いたはずだ。
 于禁が視線を巡らせた刹那、雷撃を纏ったチェイン・ハンマーを振り回すコミュニの姿が視界に飛び込んでくる。それはすでに、于禁の目の前にまで迫っていた。
「露払いは十二分にしてもらいましたに!」
 ハンマーが于禁の頭上に迫る。
 于禁は槍穂の腹をハンマーヘッドに打ち当てて弾いた。と、コミュニは鎖を繰り出して槍の柄へと絡み付かせ、グンと近寄る。
「逃がさないに! 接近戦で仕留めてやるに!」
「――っ!」
 于禁は鎖の絡んだ部分を軸に槍を旋回させ、コミュニを斬り裂こうとする。
 が、寸前にコミュニは身を屈めて刃をやり過ごし、さらに于禁に密着した。次の瞬間には腰に腕を回し、剛力を全開にした【天使の抱擁】で締め上げる。
 超常の圧力に、肉がちぎれて骨が砕ける音が、確かにした。
「ぐっ!?」
「潔く散るがいいに!」
 コミュニは力任せに于禁を抱え上げ、天へと掲げるような格好になる。
 天からは、于禁の生み出した剣の雨が降っているところだ。コミュニはその切っ先が于禁に当たるよう、振り回した。
「自分自身の力を味わうがいいですに!」
「それほど――己の刃で死ぬような間抜けに見えたか、私は」
 于禁は槍を手放した。そして、天から降る剣をあっさりとつかみ取る。敵のみを貫く呪いの刃。それが于禁自身を断つことはなかったのである。
 両手に剣を持った于禁は、そのままコミュニへを斬りつける。
「――っ!」
 コミュニはとっさに于禁を放し、後方に跳ぶ。しかし一瞬遅く、脇腹を浅く裂かれて鮮血を舞わせる。
『いかん――ショックに備えろ!』
 于禁がコミュニに追撃するより早く、フォルティスが【スリップポイント】で両者の間に割り込んだ。
 予想外だったのだろう。剣を振りかぶった于禁はその衝撃波を真正面から喰らい、吹っ飛んだ。
『EPイーグル、撃て!』
 さらに駆逐艦からのビーム砲の連射が、体勢を崩した于禁へ襲い掛かる。弾ける。焦がす。焼く。
 爆炎と黒煙のもうもうたる――が、よろめきつつも于禁は立ったままであった。
『まだ立てるのかよ……』
「み、見た目よりタフですに」
 かなりのダメージが重なっているのは間違いない。何なら、あと一押しで死ぬだろうほどに追い詰めているという感触もある。
 それだというのに、于禁の眼光はまるで弱ったような様子を見せない。
「それほど容易い相手だと思ったか」
 言って、于禁は拳大の血塊を地面に吐き捨てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

荒珠・檬果
何故かね、私が来なければならないと思いまして。

七色竜珠を合成、白日珠[槍]へ。赤兎馬に騎乗して、薙ぎ払いつつの突貫です。
さらにオレンジライト・スピードキャバリア(略してO.L.S.C.)を召喚、式神使いの要領で操作。EP硝子の盾を構えたままの突撃…シールドバッシュですね!

そうして相手…あちらの于禁殿に近づけたのなら、UCを。
契約時に、こちらの于禁殿も『樊城のことは決して話さない』と言ってましたから。問うこともなく。
そして、退けぬ戦いというのもお互い様なので、正面からぶつかるしかありませんね。
浄化属性の結界で病毒を退け、剣は見切って赤兎馬の機動力で避けつつ。
今の白日珠は、于禁殿へはただの槍ですからね…。しかし、薙ぎ払い、おそらく断つ動きもできるその武器の範囲を見切ってからの…人馬一体の突き穿つのは変わらず。
こちらの矢の病は『衰え』です。
ただ、突き穿つのは読まれる気もするので、その時にO.L.S.C.を突入、もしくはEP硝子の盾を投擲させてもいいかもしれませんね。



●厲
 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)はゲーマーであった。
 それと同時に、いわゆる歴女でもある。ゆえに、三国志を題材としたゲームも、タイトルを挙げればきりがないほどにプレイしてきた。
 そんな蓄積があれば、自然、『推し』の武将というのも出来てくる。
 世間で人気の武将といえば、例えば一身是肝と賞賛された蜀の趙雲、泣く子も黙ると恐れられた魏の張遼、知勇抜群の軍師であり音曲にも通じたという呉の周瑜などか。もちろん、そういった将のことは檬果も好きではあった。
 だが、檬果の『最推し』は、于禁であった。健将として名が挙がらぬではないが陰に隠れがちな彼に、どうしてか檬果は心をつかまれてしまったのである。
「嫌味か、それは?」
 激戦の果て、満身創痍の于禁に問われ、檬果は一瞬、何のことかわからなかった。
 しかし、その視線が己の騎乗する馬へ向けられているのを認めると、察した。赤い肌の戦馬である。元は董卓、次いで呂布、最終的に関羽に渡ったという千里馬――赤兎馬と同じ色である。関羽は、樊城の戦いを経て于禁を捕らえた将だ。
「いや、嫌味のつもりはなかったのですが。私の持ち物で、あなたに対抗できる足を確保するにはこれが一番だと思ったまでで」
「そうか」
 于禁は力ない動作で袖口を振るった。刹那、数十の黒灰色の矢が宙に出現し、一斉に檬果へと殺到する。さらに同時、天からは逆しまの利剣が刃の雨となって降ってくる。
 檬果は赤兎馬を走らせた。剣の隙間を縫い、槍の形状となった白日珠で矢を薙ぎ払う――それで全てが防げるわけでないが、それでも纏ったバリアで致命傷は避けられる。致命傷が避けられるなら、前進できる。
 槍を杖にしてやっと立っているような状態の于禁。寄ってしまえば討つのは難しくない。
「――その馬と槍ならば。そう思ったか」
 膝を突くように于禁が身を屈める。倒れたのではない。槍の柄に手を滑らせて、石突付近を握った。
 蛙跳びの要領で身を跳ねさせ、馬上の檬果に刺突を放つ。
「!?」
 リーチと速度、ついでに威力も優れた突き。檬果は馬首を返すが間に合わず、バリアも薄紙同然に破られて右腕を斬り裂かれた。
 意識が吹っ飛びそうになるのをつなぎ止めるものの、槍は振るえない。
 しかし同時、檬果の体の周囲に百個近い水塊が生み出された。それらは一瞬で水塊からダーツほどの矢へと成形される。さらに次の刹那、ダーツは于禁の全周を取り囲むようにしつつ、一挙に飛んだ。
「――!」
 于禁が槍を超速度で薙ぎ払い、ダーツを纏めて粉々にする。が、全てではない。衰弱の病毒が込められたダーツの十数本は、于禁の体に突き刺さった。
「ぐ――!」
 今度こそ、于禁は膝を突く。
 それでもなお立ち上がろうとはするものの、その背中に半透明の円盤めいた何かが激突した。立ち上がりかけた于禁が、その衝撃でつんのめって倒れる。
 円盤はキャバリア用の盾だった。朧侍を押さえていたキャバリアが投げ付けたものだ。
 倒れた于禁の背中に、左手に槍を持ち直した檬果が倒れ込むようにしてその穂を突き立てた。
 さしもの于禁にとっても、致命の一撃である。
「……この程度か、私は」
 地面に縫い止められて身動き一つできなくなった于禁は、淡泊に言う。
「死に戻っても、厲の字で汚された名を復すること能わぬか」
「そんなこと言わないでください」
 血みどろの右腕を引きずるように立ちつつ、檬果は言った。
「私の最推しなんです、あなたは」
「それは私ではない」
 ぴしゃりと戸を閉ざすように、于禁は言った。封神武侠界の于禁は封神武侠界の于禁であって、UDCアースの史上にある于禁でもなければ、ましてやゲームや妄想の中のそれではない。どれほど経歴が似通っていようと、どこまでもよく似た他人に過ぎない。
 そんな事実を叩きつけるだけの台詞だけを遺し、于禁は灰となって消え失せた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『『南蛮王』を撃退せよ』

POW   :    苛烈に攻め立て、南蛮王の軍勢を後退させる

SPD   :    超強大な魔獣の僅かな隙や弱点を突く

WIZ   :    計略で敵の動きを誘導する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

村崎・ゆかり
このまま人界に溢れられると困るのよね。南蛮王たちを追い返そう。

「全力魔法」「範囲攻撃」「衝撃波」「竜脈使い」「仙術」で地烈陣。
大地を砕き、南蛮王たちを地の底に飲み込む。その上で、岩塊が牙となって南蛮王の身体を「引き裂き」突き刺さる。
この先には一頭たりとも通さない。

「地形耐性」で瓦礫の山となった領域を進んで、新たな南蛮王を視認したら地烈陣の第二陣。南蛮仙界といえども、地面はあるわよね。それで十分。
文字通り地形を変えながら、南蛮王たちを南蛮仙界の奥へ「吹き飛ばし」追い払っていくわ。
さあ、大地の怒りをその身に受けなさいな。

それで、韓信大将軍はどこにいるのかしら? こいつらに尋ねても無駄か。


神臣・薙人
気の抜けない戦いが続きますね
人界に被害を出す訳には行きません
力を尽くしましょう

兀突骨と、同類
それだけで発動条件を満たすには十分でしょう
敵が射程に入った段階で
リアライズ・バロックを使用
バロックレギオンを敵に叩き付けます
蟲笛で白燐蟲も呼び出し
追い打ちも
手足を狙い動きを阻害します

目的は倒す事ではなく退ける事
レギオンで攻撃すると同時に
南蛮門の向こうへ押し返すようにします
物量が足りなくなるという事は無いでしょう
私が恐怖を感じる度にレギオンは生まれますから

負傷による恐怖も
レギオン召喚のトリガーになるとはいえ
今は回復手段がありません
敵の動きには注意を払い
なるべく攻撃に巻き込まれないよう
意識し位置取りをします



●強く恐ろしいからこそ
 次元の渦、南蛮門。
 見た目は、建造物としての門という雰囲気ではなかった。ミルクを入れてかき混ぜている最中のコーヒーのような、渦巻いている空間の淀みといった風情である。
 その歪みから、キリンめいた長い首の魔獣がヌッと顔を出す。キリンにしては目つきが鋭く、ドリルのような凶悪な角が五本生えている。
 その魔獣は高定と名乗った。南蛮王の中の一王である。
「あれが人界まで出てしまったら……」
「考えたくもありませんが、甚大な被害が出るに違いないでしょうね」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)と神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は、両者ともに顔を強張らせた。
 南蛮王は、それぞれ兀突骨とほぼ互角の強さを持つという。かつての大戦で戦った経験がある者にとっては脅威が思い出されるところだし、そうでなくとも見た目と気配からして尋常の敵でないのは知れる。
 深呼吸した薙人の吐息が、口元を覆うストールに跳ね返って生温かさを伝えてくる。
「気が抜けない戦いです」
「もちろんよ。だからって逃げられないし、逃げる気もないけど」
 ゆかりは薙刀を上段に振りかざし。
「南蛮王たちを押し返そう――まずは足止め!」
 振り下ろす。刃はもちろん、高定には届かない。地面に当たってわずかな傷を刻み――そして、その傷は幅を広げ、深さを増し、枝葉のような幾条もの亀裂と化して広がっていった。
 亀裂は高定の前脚の立つ地面にまで至る。
「竜脈宿せし大地よ、目覚めよ! 疾!」
 ゆかりが叫ぶのと同時、亀裂の入った地面が崩壊する。必然、高定の足元も。
 崩れた地面から逃れるべく、高定のキリンじみた長い脚がフル回転する。しかし、ゆかりの【地烈陣】の範囲は広く、踏み出した端から足を取られ続ける有様だった。まるで蟻地獄のテリトリーに入った蟻のごとくだった。
 足止めがうまく行ったなら、後は押し返すのみ――なのだが。
「っ!?」
 高定の長い首がしなり、遠間にあったゆかりへと角を叩きつけてくる。
 ゆかりがそれを横っ跳びに回避すると、角の叩きつけられた地面は爆撃でも受けたように粉砕されて土塊をまき散らした。さらに高定は首を鞭のようにしならせ、今度は横薙ぎにせんとする。
「嘘――?」
「……っ!」
 刹那、ゆかりをかばう位置に薙人が割り込んだ。両腕を白燐蟲で覆って盾と成し、高定の頭を受ける。
 ゴッ!
 と、凄まじい衝撃が二人を襲い、もろともに野球ボールよろしくかっ飛ばされて地面を転がった。
 目もくらむようなダメージ――だが、直撃でないだけ、死んでないだけマシではある。
「……ああ、良かった」
 薙人は安堵の声をもらした。それは、一つには己らが無事であることへの安堵だが、今一つ。
「本当に兀突骨と同等の強さがある。本当に恐ろしくて怖い……だからこそ、条件を満たせる」
 薙人の全身から、緑青色の靄めいたものがにじみ出て行く。靄は寄り集まってぼやけた大猪じみたシルエットを形作るや、凄まじい勢いで空中を奔って高定の胸へ体当たりを炸裂させる。
 轟音。そして、高定の苦悶の声。そうさせるだけの衝撃はあった。
 高定が怯んで、後ずさるような仕草をする。と、その背中に、真紅の体毛に覆われた大柄なチンパンジーのような魔獣が乗り出してくる。チンパンジーの魔獣は朱褒と名乗った。
 朱褒は高定の首を伝って駆けた。ゆかりの崩した地面の影響をかわすためだ。
「っ、この――この先には通さないわ」
 ゆかりは崩れた大地に流れる竜脈に仙力をねじ込み、亀裂に分割されて生まれていた岩塊をエネルギーの奔流に乗せて撃ち出した。
 朱褒の体ほどもある巨大な岩塊。しかし。
 ギイイィィ――!
 朱褒の怒号一閃、力任せに振るわれた拳で岩塊の腹を殴りつけた。衝撃で拳が砕けたのか花火のように血がまき散らされたが、岩塊の軌道は逸れてあらぬ方へと飛んでいく。呆れんばかりの怪力だった。
「な!?」
「――それでこそ」
 ゆかりが驚愕する横で、身が震えるほどの恐怖を覚えた薙人は、ゆえにこそ【リアライズ・バロック】由来のバロックレギオンを生み出せる。
 怪力の朱褒に襲い掛かる緑青の靄は、今度はワイバーンのような形状をしていた。朱褒の両腕とワイバーンの両脚とががっぷり四つに組み合い、押し合う――と、何の拍子にか朱褒は高定の首から足を滑らせた。
「あっ」
 朱褒とワイバーンはもみくちゃの団子状になって、地面の崩れた中へと埋没していく。
 それを見送ったゆかりは、ぽつりと。
「韓信大将軍がどこにいるのか、尋問の一つもしようかと思ってたんだけど……」
「……どうでしょう。答えてくれるか以前に、そもそも知ってるかどうかも怪しいと思いますが」
 薙人はゆかりを横目に、軽く首を傾げた。
「まあ、南蛮王が押し返されたとなれば、彼の方から勝手に出張ってきてくれると思いますよ」
「それもそうか」
 ゆかりは首肯し、改めて南蛮門へと向き直った。
 後続の魔獣らは、まだ勢いをゆるめる気配はない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒珠・檬果
右腕負傷したままなんですが…気を取り直しまして。
南蛮軍をどうにかしなければ。
最低限、押し返せばいい…とはいうものの。強力無比というのは知ってますし…それしかできなさそうというか。
ここは、押し返しに特化しましょうか…!

相変わらず赤兎馬には乗ってますし、白日珠は念動力で動く矢にしてます。
UCを使用して、こちらも軍勢で対応を!
仲間というのは、この召喚騎兵も含みますからね…このまま押しかえしていきます!
でも、妨害はあるでしょうから…そこへは、白日珠の矢を向かわせますね。目を狙うようにして、ね!


フォルティス・ワーライン
一度、艦を着陸させる。
ヨウ、コミュニ、サジーは一度船に戻れ。
一旦、体力を回復させる必要があるだろう。

そして、再度浮遊しよう。

魔獣が多いな…。
今回もUCを使わせてもらおう。
雑魚相手ならまだ、こちらで戦える。
500名を超える機鋼部隊だ。

着陸時に急減速する降下用ポッドによって各班は降下準備せよ。
準備ができた班から随時降下しろ。横に広く降下ポッドを下す。
包囲殲滅戦にて敵を押し戻せ。

班同士の連携が重要になるな、
光学迷彩を利用して局所的な挟み撃ちを行え。

雑魚が終わったら、本命の出番といったところだ。
EPイーグル。休憩に出ていたメンバーを航宙艦用『降下システム』に移動させろ。次のタイミングで降下させる。



●数の力
『魔獣が多いな……雑魚が相手なら、こちらで受け持てるんだが』
 フォルティス・ワーライン(宇宙を駆けるケントゥリオ・f18278)の思案げな声が、航宙駆逐艦のスピーカーから漏れ出ている。
『常識的に考えて、王しかいない軍勢などというのはあり得ないだろう。三国志に詳しいなら、どれが南蛮王相当の魔獣でどれが雑兵なのか、わからないのか?』
「無茶言わないでください!」
 悲鳴に近い怒鳴り声で、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は反駁した。
「こっちの知識基準じゃ、そもそも南蛮の諸王が魔獣なんてことはないんですよ! 見た目でどれが誰だか将だか兵だかなんて、判断する材料はありません!」
『むむむ……』
「雑兵が混じっているなんて期待はせず、魔獣は強力無比な南蛮王ばかりだという前提で戦うしかありません。グリモアベースでも説明されてたでしょう? 殲滅は不可能、押し返すのが精一杯だと」
『むむむむむ……そう言えば、そうだったな』
 フォルティスは苦々しげな声でうめいた。
 南蛮門から出て来ようとする魔獣は、兀突骨とほぼ同等の戦闘力を持つ個体ばかり。兀突骨は、かつて封神武侠界で起きた大戦で猟兵の軍勢を散々に苦しめた強敵である。それと同等の魔獣を二体、三体同時に相手にするだけでも厳しいというのに、群れと呼べるだけの規模となると殲滅は非現実的に過ぎる。
 だからこそ、韓信という大敵は何としても討伐しろとせっつかれているくせに、南蛮王の群れについては押し返すだけで充分と通達されているのである。単純な戦力の総量を比較すれば、本命である韓信とその配下軍勢を合わせたよりも、眼前の魔獣の群れの方が遥かに上回っているのだ。
 それを見誤って敵を侮って戦えば、死が待つのみである。
「押し返す力ならば、こちらに特化したものがあります。援護をお願いできますか?」
『うむ。数なら揃えられる』
 駆逐艦からブシュ、という炭酸の弾けるような音が鳴り響き、鋼鉄製の大きなソリめいたものが射出された。そのソリの上には、ドラム缶に機関砲の両腕を取り付けたような簡素な量産型キャバリアが五体、積載されていた。
 ソリは一つではない。同様のものが駆逐艦の両舷から四つずつ射出され、バラバラと横に伸びるように降下していく。ソリから降りたキャバリアらは、南蛮門に対して半包囲陣形を取るようにしつつ機銃の銃口を向ける。
 その気になればもっと多くの【降下強襲機鋼部隊】は出せるものの、地形上、これ以上出したところでかえって互いが邪魔になって戦力低下を招くだけだ。
 魔獣らの先陣を切るように進み出てきたのは、小山のような甲羅を背負った巨大なリクガメ型の魔獣であった。またその甲羅の上には、やはり小山のように巨大なガマガエル型の魔獣が座していた。
 リクガメは孟優と名乗り、ガマガエルは孟節と名乗った。
『包囲攻撃開始! 押し戻せ!』
 フォルティスの号令で、キャバリアが一斉に機銃を撃ちまくる。
 幾本もの火線が整然と伸び、重なり、綾を成すカーテンのごときとなった。猛烈なる鉄と火の布になでられ、孟優の甲羅上に間断のない破裂音が奏でられる。
 孟優はわずらわしげに目を細めると、首を甲羅の中へと引っ込めた。一方、孟節は泰然と座したままであって、体中からジワリと油をにじませて全身を包み込む。弾丸は油でぬめり、火花を散らすこともなく明後日の方へ逸れていく。
『なっ……効かないだと?』
「いや、怯んではいる――なら、もう一押しは私が!」
 檬果の怒鳴り声と同時、その周囲に横列陣形を敷いた白馬騎兵の一団が出現する。胡服を纏い、長槍を携えて身構えた軽騎兵の兵団である。
「行け!」
 その采配は魏の名軍師郭嘉さながら。【兵貴神速(ゴッドスピードストラテジー)】が軽騎兵団を白い稲妻へと変え、孟優の前脚に突撃させる。
 どごっ! と、十の槍が同時に炸裂して音が一つとなって鳴る。甲羅ほどではないはずだが、脚を覆う表皮は凄まじく堅く、刃を通さなかった。
 ただし、それでも押し返しはする。大樹のごとき孟優の脚が、地面をこすりつつ追いやられていく。
「よし、これだけできれば上等!」
 ――……!
 首を引っ込めた孟優は、恐らくは完全に心を萎えさせたのだろう、ず、ず、と後ろ歩きに後退していく。
 そんな孟優の様子を見やった孟節は、孟優の背中からビョンと跳躍して地面に降り立ち、孟優の代わりとばかりにのしのし前進しはじめた。
 油に守られたその体は、神速をもって突撃する騎兵の槍をも、ぬるんぬるんと逸らしてしまう。
「厄介な……!」
『くっ、特殊な油かもしれんが、無敵のバリアというわけじゃあるまい! 各部隊、角度を考慮しつつ挟撃しろ!』
 再び弾幕が張られた。理屈でいえば、弾丸なり槍穂なりが当たる角度が垂直であれば、摩擦がどうでも肌、肉に届いてくれるはずではある。
 どどどどど! と殺到する暴威の八割は逸れていく――が、膨大な物量を誇る大攻勢のうちの二割が直撃するとなると、それで死ぬまでには至らないにせよ、孟節がうんざりするには充分であったらしい。
 「やってらんねぇ」とでも言うかのようにゲコリと一声鳴くや、孟節は回れ右して自ら南蛮門の奥へと跳ねていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『韓信大将軍』

POW   :    楽浪郡勇士集結
レベル×1体の【神器で武装した楽浪郡の勇士(異世界人)】を召喚する。[神器で武装した楽浪郡の勇士(異世界人)]は【他世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    南蛮魔獣集結
自身の【召喚した、南蛮界の魔獣の軍勢】に【背水の陣】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
WIZ   :    三国武将集結
【偉大なる三国時代の武将達】の霊を召喚する。これは【生前に得意とした武器】や【韓信大将軍に与えられた『神器』】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:瑞木いとせ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●国士無双
 雨雲を引きつれているように見えた。
 が、違う。韓信の頭上の空に、雲と見まごうばかりに集まっているのは、一匹が人ほどの大きさもある黒い蜂であった。威圧的な重低音を鳴らしつつ群れ成して飛ぶ、刻印玄蜂の大軍勢である。
「己の非才が呪わしいな。南蛮王たちの力を借りてさえ、大した時間を稼ぐこともできなかったとは」
 フッと口の端を歪めつつ、韓信はつぶやいた。
「しかし、この身がこうして立っているからには、まだ雌雄は決しておらぬ。来るがいい、猟兵どもよ。この韓信が大願、阻めるものなら阻んでみるがいい!」
 背負った巨刀の柄を握り、留め金を外して振り上げる。
 一弾指の後、刻印玄蜂の軍勢は雪崩を打って猟兵たちに襲い掛かった。
 それが、決戦の始まりを告げる合図であった。
村崎・ゆかり
ご機嫌よう、韓信大将軍。ようやくお顔を見られたわ。
あら、ろくに言葉も交わさず仕掛けてくるなんて、がっつく男は嫌われるよ。

「全力魔法」で「オーラ防御」「侵入阻止」をかけた「結界術」を展開。
蜂はこれでやり過ごす。あと突っ込んでくるのは魔獣の軍勢。
陰陽師の得意技で対抗する。幽世千代紙を禽獣の形に無数折って、実物大の大きさの群れを作る。魔獣の群れの動きに合わせ「式神使い」で前進させ喰らいつかせ。
そっちの兵力は多いようだけどこっちも負けてないわよ。

やっとこっちの番。「全力魔法」重力の「属性攻撃」「範囲攻撃」「封印術」で天威千里法。相手が巨大な程よく効くわ。
大将軍、あなたには薙刀のなぎ払いをくれてあげる!



●失墜
「ご機嫌よう、韓信大将軍。ようやくお顔を……」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)がそこまで言った時には、すでに彼女の頭の真上あたりにまで刻印玄蜂が迫りつつあった。
「……ろくに言葉も交わしてないのに。がっつく男は嫌われ――!?」
 ゆかりは仙力を編み、笠めいた障壁を生んだ。
 それを頭上に掲げるのと急降下した四、五匹の刻印玄蜂が針を突き出してくるのが、同時。針は間一髪で笠に阻まれ、甲高い音を上げる。
 そしてさらに数匹の蜂が一瞬にして入れ替わるように襲撃し、さらに数匹――と、数に物を言わせた刺突の嵐に、障壁がひび割れる。
 突破されるより先に、ゆかりは周囲に折り紙をばらまいた。刹那、折り紙の一つは芦毛の馬に変じてゆかりをかっさらって後方に駆け出し、他の折り紙は鷹や狼の群れと化して刻印玄蜂を迎撃する。
 猛禽の爪が裂く音と猛獣の牙が砕く音、そして凶虫の針が刺し貫く音が交錯し、混線し、絡み合って地べたを転がり回る。
 不協和音の協奏曲の果て、ゆかりはその場からの離脱に成功している。
「やっとこっちの番」
 どん、と馬から降りた足で地面を踏む。
 途端、地面が波打つ。地面が砂となり液となり、足を中心に波紋を生んだ――と見えるが、より正確には、波紋は地面でなく空間そのものに歪みをこしらえつつ奔ったといったところか。【天威千里法】は波紋に包まれた地面の性質というより空間丸ごとの性質を変える。常識外の重力に支配された空間に。
 ――――!
 声ともいえぬ悲鳴を上げ、雲のごとくに空を埋めていた刻印玄蜂の大軍勢が一斉に落下する。必然だろう。重力に逆らって飛んでいたところ、逆らいがたいレベルまで重力が増したのだ。波紋の及ぶ範囲の刻印玄蜂は、羽をもがれたも同然だ。
 手勢の多くが無力化された韓信は、しかし、状況を一瞥し。
「……重力か。ならば」
 韓信の眼前に、全身を炎で包まれた大鷲のような南蛮魔獣が出現した。魔獣は祝融と名乗った。
「重さのない炎ならば届く。火神の裔よ、その力を示せ!」
 ゴォッ!
 と、祝融の口から人の背丈ほども直径がある火球が吐き出され、ゆかりへ飛ぶ。炎はなるほど重力増加の影響を受けず、超速度を保つ――が。
「負けないわ!」
 いつの間にやらゆかりの手には薙刀がある。刃に仙力を込め、紫電を纏わせつつ薙ぎ払うと、火球は両断された――といって余波で多少肉を焼かれないではないが、直撃するよりはマシだ。
「天威の前に、墜ちなさい!」
 波紋を生み出しつつだかだかと駆け寄ると、火鳥の魔獣といえど体の全てが炎でできていたわけでもないらしく、祝融は苦しげに地面を這う有様となっていた。その首目がけて薙刀を一閃させ、斬り伏せる。
「馬鹿な!?」
「次はあなたよ!」
 怒鳴ったゆかりは、韓信に薙刀を繰り出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

神臣・薙人
やはり一筋縄では行かない相手のようですね
気を引き締めてかからなければ

真の姿解放
先制攻撃に対しては白燐蟲を呼び出して対抗
光量を最大にするよう指示
敵の目を眩ませるようにします
少しでも効果があれば
その隙に立ち位置を変更して回避行動を
接近されれば武器を蟲笛で弾きます

その後は可能な限り多くの敵を巻き込んで
白燐桜花合奏を使用
私だけの力では討つ事など出来ないでしょうが
体力を削る事は可能でしょう
蟲笛の演奏を途切れさせないよう留意

近くに負傷者がいれば
その方が治癒の範囲に入るよう位置を変更
負傷が回復すれば
また敵を巻き込む事を重視して位置を変えます
少しでも敵の力を削ぐ事
些少なりとも他の猟兵の支援になる事を優先します



●布石
 韓信の左右に、堂々とした風采の武将が出現した。
 武将は二人とも弓矢を携えている。韓信のすぐ右の武将は、ほうきのように長い真っ白なひげを生やした老将だった。三国志の英傑で弓を得意とした老将といえば、黄忠だろう。とすれば、左側にいる壮年の将はやはり、黄忠と死闘を繰り広げたライバルであり、演義にて弓の名手とされた夏侯淵か。
 つがえた矢の向く先には、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)の姿がある。彼の周囲三百六十度を、刻印玄蜂の軍勢が包囲する。逃げ場を奪った上で、必殺必中の矢で射抜こうという腹だろうか。
「一筋縄で行く相手ではありませんよね」
 薙人は身震いを抑えるように白い上着を握りしめた。怯んだわけではない。恐るべき強敵を正しく恐れているのである。心の隙間に油断が入り込まぬよう、気を引き締めているのである。
 英傑らが矢を放つ寸前、薙人は己の周囲に綾絹のように広げた白燐蟲の群れから、一弾指、強い光を発した。
「――――!?」
 言わば、音と風を伴わぬ爆発のようなものだ。
 近くを飛ぶ蜂の軍勢も、ずっと間合いの離れた英傑たちも、一瞬目を灼かれるほどの苛烈なる光だった。
 その光の中、英傑らがとっさに矢を放ったが、必中であるはずだったそれの狙いは逸れた。どちらが放ったかは知れぬが、一本は薙人の頭の桜をかすめて花弁を散らし、もう一本は肩をかすめて浅い傷を刻む。
「っ!」
 無傷でこそないが、十二分だ。
 薙人は蟲笛を口に当て、【白燐桜花合奏】を発動させた。真珠の転がるような軽やかで張り詰めた音が尾を引いて響き、同時に薙人を中心に竜巻が発生したかのように桜吹雪が巻き起こる。
 先の光は刻印玄蜂の隊列も乱しており、そのせいでもあるだろう、回避する暇もなく桜吹雪の直撃を受けて斬り刻まれる。
「むっ!?」
 韓信が瞠目する。
 桜吹雪は刻印玄蜂のみならず、韓信や黄忠、夏侯淵のいるところにまで届いて吹き荒れんとする。
 おろし金やミキサーでできた地獄に放り込まれたようなものだが、流石史上に名が記される英傑たちなだけあり、威を纏わせた得物を振り回して桜吹雪を散らして抗ってみせる。それでも、瞬く間にマントや鎧がずたぼろになり、露出した頬や手から鮮血が散っていくが。
「――!」
 無間の攻撃にさらされる中、黄忠と夏侯淵がが強引に矢を放ってくる。
 十全でない状態で射たとは思えぬ、精密に眉間を狙った二矢――だが、薙人は慌てず横に跳んでかわす。刻印玄蜂の包囲を崩した今、回避スペースで困ることはないと見ていい。
(やはり簡単には討てない――けど、削ることくらいはできている)
 蟲笛から口を離さず演奏を継続しつつ、薙人は間合いの離れた韓信を睨み据える。
 薙人は一人で戦っているのではない。韓信に会心の刃を届かせるのは、他の猟兵でもいい。薙人の奮戦は、確かにそれへとつながる布石になっているのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍(サポート)
生まれも育ちもサクラミラージュ。誰かの願いで転生した元影朧。そのため影朧には同情しがち。
それなりの良家の出で言葉遣いは丁寧。だが両親とは違う種族で生まれたのを悩み高等部(高校短大相当)卒業を機に家を出ている。現在は帝都で占い師。

もふもふ大好き。
実家ではいろいろ我慢してたのもあって、飼えなくとも一人暮らし&猟兵となったことで爆発しがち。
猟兵になっていろいろ経験し悩みを乗り越えた。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭いません。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は絶対にしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


シホ・エーデルワイス(サポート)
助太刀します!


人柄

普段は物静かで儚げな雰囲気ですが
戦闘時は仲間が活躍しやすい様
積極的に支援します


心情

仲間と力を合わせる事で
どんな困難にも乗り越えられると信じています


基本行動

味方や救助対象が危険に晒されたら身の危険を顧みず庇い
疲労を気にせず治療します

一見自殺行為に見える事もあるかもしれませんが
誰も悲しませたくないと思っており
UCや技能を駆使して生き残ろうとします

またUC【贖罪】により楽には死ねません

ですが
心配させない様
苦しくても明るく振る舞います


戦闘

味方がいれば回復と支援に専念します
攻撃は主に聖銃二丁を使用


戦後
オブリビオンに憎悪等は感じず
悪逆非道な敵でも倒したら
命を頂いた事に弔いの祈りを捧げます



●剛撃
「我が元に集え、三国時代の猛将たちよ!」
 巨刀を天に掲げるようにして、韓信が大音声を張り上げた。
 途端、天はにわかにかき曇り、漆黒の雲がぐるぐると渦巻きつつ木の根のような放電を纏う。一呼吸の後、極太の稲妻が四本、韓信の目の前の地に落ちて爆発を起こした。
 しゅうぅ、と白煙が立つ中に現れたのは、甲冑姿の四人の武将たち。その四人ともが、身の丈ほどの長さの柄がある大きな戦斧を持っていた。
「三国時代の猛将……誰でしょう?」
「わかりません。ただ、気配からして、全員かなりの手練れのようです」
「ええ、それは間違いないでしょうね」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)とシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)がささやきあう。
 三国志演義において大斧を得物とする将といえば、まず筆頭に魏の五将の一人である徐晃が挙げられる。勇猛さと同時に慎重さを持ち合わせ、劣勢時を想定した策を立てて戦に臨んだので、一度として大敗というものをしなかったといわれる。
 他に斧の使い手と知られているのは、万夫不当と称された零陵の邢道栄、多くの息子らとともに趙雲と死闘を繰り広げた韓徳、華雄と一騎打ちを演じた潘鳳あたりか。
 誰が誰だかわからずとも、いずれも武勇抜群の豪傑ばかりであるのは、確かに気配で知れる。
 そんな猛将四人組はめいめい大斧を構えるなり、刻印玄蜂を鶴翼の陣形に広げつつ、藍とシホにを包囲攻撃を仕掛けてきた。
「あの斧は受けられませんよ!」
 シホが叫びつつ、黒白一対のオートマチックハンドガンで牽制射撃を行った。
 狙うは陣の中央から突進してくる四将。弾丸を真正面から受けているにも関わらず猛将たちは止まってはくれないが、足が鈍る程度のことは起きる。
「ええ、わかってます!」
 藍は両刃刀を抜き放つと、四将は無視して左翼の刻印玄蜂の群れへと斬り込んでいった。
 襲い来る刻印玄蜂の針は数えるのも馬鹿らしいほどだが、それでも大斧四閃を相手取るよりマシというのは藍としても同意するところだった。
 群れを一気に仕留めるというより、防ぐ、払う、追い散らすといった意識でもって斬撃を振るう。手足を掠めるくらいの針は、いっそ無視する。そうでもしないと手数が足りない。致命傷を避けるだけでも手一杯だった。
 そうやって生まれたスペースに体をねじ込むようにしつつ、シホに向かって叫ぶ。
「こっちです!」
「――っ!」
 シホは拳銃を撃ちつつ横っ跳びに転がった。
 間一髪、落雷のごとき大斧四閃が一瞬前までシホの立っていたあたりの地面に叩きつけられ、轟音とともに爆砕した土塊をまき散らす。
 やり過ごせた――といって、跳び込んだ先が安全圏というわけではない。追い散らされた刻印玄蜂が再び飛来し、全周から剣呑に輝く針を突き出してきている。
「――轟け!」
 藍が刀を掲げると同時、刀を中心に蜘蛛の巣状に紫電が奔った。その一瞬の後、紫電の一本一本は短剣めいた形に結実し、ジグザグに乱舞して刻印玄蜂の軍勢を斬りつけていった。翅に穴を空けられ、あるいは甲殻を貫かれるなどした刻印玄蜂は、次々に地に墜ちていく。
 一方、同じように【雷光(ケラヴノス)】にさらされる四将はといえば、大斧をヘリコプターよろしく旋回させて雷剣を弾き飛ばしにかかっていた。といって、雷剣の数は膨大であって、さしもの猛将どもといえど防ぎきれるものではない。見る間に鎧が砕かれ、貫かれ、斬り刻まれていく。
 倒せた――と思った次の刹那、四将の体がどろりと溶けたかに見えるや、無傷で半透明な状態で復活して再び突撃を仕掛けてきた。
「なっ――!?」
 神器【渾沌の諸相】、恐らくは【戦場の亡霊】のアレンジか。
 だが、それら新たな大斧が二人に届く前に。
「とっておきです!」
 シホが放った拳銃から放った弾丸は【邪を清め祓いし聖霊樹の庭(セイクリッドピュリファイガーデン)】の聖弾である。邪悪を祓う聖力のこもった弾は、亡霊にはよく効くだろう。
 聖弾が将らに炸裂した瞬間、まばゆい白光が放射状に爆散する。頑強を誇った鎧や大斧だったが、相性のせいだろう、撃ち込まれた端から破壊されていく。
 そうして崩された果て、四将は今度こそ復活することなく、消えてなくなってしまった。
「……まさか、不敗の徐晃の奥の手が破られるとはな。これほどか、猟兵」
 韓信は奥歯を噛みしめた。
 そこへ、藍の雷剣とシホの銃弾が飛来する。韓信は巨刀を盾にして防ぐが、濃密な弾幕の全てを弾くまでは能わず、手足にいくらか裂傷を負った――その程度で済ませているのがとんでもないことではあるが。
「まだだ。私はまだ立っている……諦めんぞ!」
 鬼気迫る形相で、韓信は吼えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒珠・檬果
真の姿へ
音に聞こえし国士無双…やはり油断はできぬのよ
が、まあ…位置はわかっておる

蜂に対しては、オレンジライト・スピードキャバリア(O.L.S.K.)にEP硝子の盾を振り回してもらう。対毒ゆえ、わりと効こう
そして、先制に対しては…誰が来るかわからぬ。ゆえに、こちらも白日珠を盾にし、武器による攻撃ならば盾受け、そうでなければ結界術による弾きとしようか

UCが使えるようになれば、即座に使うこととしよう。戦意は韓信に向いておるし
そしてこの時、白日珠を叩きつける…と見せかけて、七色竜珠に戻してからの光線とする。武器に指定はないからの
ちなみに、最大光量にしたでな
帰りはO.L.S.K.に拾うてもらう



●蒼天
「……目減りしたな」
 戦場を望み、韓信は覇気なく嘆息した。
 空を覆うほどだった刻印玄蜂の軍勢は、猟兵との戦いを重ねて減っていき、今や開戦時のざっと二割程度にまで減っている。
「音に聞こえし国士無双といえど、率いる軍がなくてはの」
 そう言う荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)の姿は、いつものシャーマンズゴーストのそれではなく、宮司めいたデザインの黒い衣を纏った人型――真の姿である。
 韓信はその変貌振りに特に言及するでなく、微かに口の端を歪めた。
「兵を補充する策はあるのだよ」
 韓信が巨刀を掲げる。
「蒼天の守護者たちよ、私の元へ集い、神器【異世界オブリビオン兵団】を受け取れ!」
 ごう! と韓信を中心に強烈な旋風が巻き起こり、空間が黒く染まるほどの土煙が発生する。
 その土煙が少し薄まったと思ったら、青い戦袍の上に豪華な金属鎧を着込んだ武将が進み出てきた。さらにその後ろから、似たり寄ったりな甲冑姿の将が二人。三人は三人とも、白い髪とヒゲとを蓄えた老将だ。
 さらにその周囲には、サイバーザナドゥ由来だろう、ボディスーツと警棒で武装した警官らしき部隊も出現した。
 蒼天とは後漢王朝のことだろうとは、檬果はすぐに察せた。三国時代が本格化する前、漢室を守るべく奮戦した名将といえば。
「皇甫嵩、朱儁、それと盧植あたりかの?」
「直に会ったことはなくとも、彼らの武略の冴えは想像できよう。押し潰されるがいい、猟兵」
 サッと韓信が手を振ると同時、空からは刻印玄蜂、地からは警官たちの突撃が津波のように殺到してきた。左右はもちろん頭上にまで逃げる隙のない、必殺を期した攻勢だ。
 その怒濤にまず立ちはだかるのは、透明な大盾を構えた橙色のキャバリアだった。空から襲いくる針の雨を受け止め――代わりに警官へはやや無防備にはなる。が。
(やはり数は少ない)
 白日珠を盾に変えた檬果が、八方からの警棒のことごとくを弾き返し、押し返す。生易しいとは思わないが、戦い開始時ほどの絶望的な物量はない。
 そんな乱戦中にあってなお、檬果の眼差しは韓信だけを睨んでいた。
「――!」
 地を蹴るのとは違う。珠を槍に変えた直後に行ったそれは、先鋒か殿軍かという猛将楽進の魂を宿した縮地――瞬間移動だ。
 漢の三将が慌てて剣を抜くが、遅い。檬果の狙いは韓信ただ一人であって、一弾指の後は三将も警官の軍も置き去りにしていた。
 その神速の檬果を、しかし、韓信は見失うことなく捉えていた。
「させん!」
 完全に機を合わせ、袈裟懸けに巨刀を一閃。完璧なカウンターの一撃――に、ならなかった。
 その間合いの一寸手前で、檬果は急停止していたからだ。
「!?」
「油断しとらぬよ」
 兵を失おうが最後の一人になろうが、敵は韓信。致命の反撃が見舞われるだろうことは檬果は予測していた。
 巨刀を空振りして韓信の体勢の流れた刹那、檬果が珠から最大威力の光線を放ち、韓信の胸を刺し貫く。
「読み負けた――とはな……」
 仰向けに倒れていき、地に触れるより先に、韓信の体は砂のように崩れて消えていく。
 それは、この場の戦いが猟兵の勝利で終わった証明であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年12月06日
宿敵 『🌗左将軍『于禁』』 を撃破!


挿絵イラスト