2
その身は肉界に至る

#デビルキングワールド #ノベル #肥満化

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#デビルキングワールド
🔒
#ノベル
#肥満化


0



夢ヶ枝・るこる




「着きましたねぇ……」
 とある世界の片隅にある島。そこに極めて恵まれた体型の持ち主である女性、猟兵である夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は足を踏み入れていた。仮に第三者がこの島を見たら一般的な島に見えただろうが、それはあり得ない。この島は、とある神――豊乳女神を信仰する者でないと近づく事さえできないという工夫がなされており、何も知らない一般人や悪意を持つものが近づく事は絶対にない。つまり、るこるもその信徒の一人であった。
 島を歩いていくと、そこには一棟の建物。彼女がその建物の中に入ると彼女の姿はそこから消え――彼女は、何もない空間にたどり着いていた。この建物こそ、豊乳女神の信徒がかつて見つけた並行世界への出入り口であり、並行世界こそが彼女の目的地だった。何もない空間ではあるが、“何もないからこそできる事”の為に、彼女はやって来たのだった。
 豊乳女神の信徒である彼女にはある目的があった。それは、豊乳女神の姿に近づく事。信徒たちの知る豊乳女神の身体は、一般的な宇宙の大きさよりも更に大きい女体――いや、その胸元にある丘だけで宇宙規模という想像すらできない程の大きさだ。そして、信徒たちは皆、女神の姿に近づく事を修行と称している。そう、その為の何もない空間である。障害物など何もなく、ただ大きくなる事ができる空間。まさに、この空間は豊乳女神の信徒の為にあると言っても過言ではなかった。
 そんな空間で、彼女は荷物の中からあるアイテムを取り出す。それは、以前の探索で手に入れたゲーム機のような宝物――“FeedStation”だった。端的に言えば、ゲーム内で何かが起これば操作するアバターの質量や体積が増加し、それが現実のプレイヤーにも反映される、という危険物である。だが、規格外の大きさである豊乳女神に近づく事を修行としている彼女にとっては、都合の良い代物でり、今回の彼女がやろうとしている事の必需品でもあった。
 
 るこるが豊乳女神の姿に近づく為、考えた手順は以下の通りである。
 まず前提として、彼女は以前FeedStationを用いた際、そのフリーモードなるものに膨大なカロリーを蓄積していた。フリーモードをプレイ――実態としてはカロリー摂取用の休憩室のようなものだが――する事によって、蓄積したカロリーを一瞬にして摂取する事ができるというものである。
 その蓄積してあったカロリーを摂取する前に、彼女の持つ能力や所持品等による一工夫を挟む。捕食の際に噛むとより膨大なカロリーを摂取できる能力“瀾粮”にその効果を更に強化する“洯麘”。更には身体に刻まれた魔紋や呪紋によって更なるカロリー増加及び体型変化――主に肉体膨張や体重増加――を図り、祈祷する事でカロリーを更に増加させる事のできる器を置く事で、より多くのカロリーを摂取する、というのが一連の流れである。
 ここで重要なのが、FeedStationはカロリーを蓄積する事ができて、そこから再度摂取する事ができるという事。つまり、再摂取のカロリーを能力等で増やし、それを蓄積する。それを再度摂取する――と繰り返す事で、より多くのカロリーを蓄積、再摂取する事ができるという事だった。この連鎖とも言える手法で、豊乳女神の姿へと近づく事ができるというのが彼女の目的だった。
 
 FeedStationを起動させる前に、脂欲の器――端的に言えば祈祷すると摂取カロリーが増える祭器――を近くに置いて、周囲の探査――今回“も”主に自身の大きさを測定する為に用いられるのだが――を行う祭器“FPS”を宙に浮かせながらFeedStation専用のVRゴーグルをつけつつ本体の起動ボタンを押す。ゲーム機の形状こそしているが、超常現象を引き起こす以上、通常のゲーム機である筈もなく、何もない空間であろうと平然とそれは起動する。ゴーグルの内側――彼女の視界にも、確りと映像が投影されていた。
 フリーモードを選択しようとして、その手が止まる。以前プレイした時にはなかったモードが追加されているのを彼女は確認する。以前FeedStation本体を解析した情報にもそれらの情報はあり、どうやら前回通常のモードをクリアした事によって追加されていたようだった。彼女としてはそれらの新しいモードや機能への興味もあったが、一先ずは当初の目的であるフリーモードを選択した。ゴーグル内では休憩室のような場所と、片隅のワイプの中には彼女の体型に近いアバターが投影されている。以前のプレイでも見た光景ではあるが、一部異なる事があった。
『げ』
「あ、サポートAIですねぇ」
 そこには球体が浮かんでいた。FeedStation本体を解析済の彼女は、その存在を把握していた。FeedStation本体の意志とも言えるサポートAI――それが、投影されている映像内で浮かぶ球体の正体だった。元々はプレイヤーを限界以上に肥えさせる事で心を折るという仕様だったFeedStationは、彼女がゲームをクリアした事によって彼女の制御下に置かれる事となった。その為、本体の意志であるAIは彼女に対して複雑な感情のようなものを抱いているようだった。
『何が目的なんですか?』
「再摂取しようかと」
『やっぱおかしいって……』
 そのようなやりとりをしつつ、彼女は突如現れた口内の食感、味覚を噛みしめる。眼を瞑り、現実世界ではすぐ傍に置かれている祭器への祈祷も忘れない。身体に刻まれている魔紋や呪紋が妖しく輝き出し、カロリーの摂取が始まった。常人が大食いするのとはわけが違う。様々な能力や物の影響を受けながら、摂取したカロリーはすぐさまその身体へと影響を与える。
 極めて大きな双丘を持つ恵まれた体型である彼女の身体が、僅かな時間で崩れてゆく。胸部が更に大きくなるのは勿論として、腹部の贅肉が増えてゆき段を形成してゆく。足も太くなってゆき、次第に足を閉じる事すらも困難に。腕も太くなり、顔にも贅肉がついてゆく。
 息継ぎかのようにした「ふぅ」という一呼吸は、野太く元の彼女とは異なっていた。喉周りにも贅肉がびっしりであり、彼女の声は野太くなったのだった。そこにいたのは恵まれた体型の少女ではなく、全身に贅肉がついている肥満体の女性だった。贅肉のせいで目も細くなっていて、第三者が変化前後を見た時に同一人物と思える者は果たしてどれほどだろうか。
 しかし、これはまだ序の口。蓄積されていた分を全て摂取した訳ではなく、更に摂取してゆく。そして、蓄積されていたカロリーを全て摂取した時の彼女のサイズは、幾つもの山が連なったかのような大きさであった。最早人の形をとどめておらず、以前彼女がこのゲームをプレイした時よりも遥かに大きいサイズ。それを見てこんな化け物相手に勝てる訳がなかった、とAIは改めて認識した。
 ともかく、一度カロリーを摂取しきった彼女はこの摂取したカロリーをゲーム機の方へと蓄積してゆく。連なった山々が急速にしぼんでゆく様をAIはただ計測する。その状態でも無事に制御しているという様子に、AIは最早驚く事すらしない。
『終わりにしますか?』
 すっかり元通りの体型となった彼女にAIがそう問いかけると、「まだですよぉ?」という返答。そうして始まるカロリーの再摂取。二度目の再摂取では一般的な惑星程の大きさに到達していた。それでも尚彼女は更なる蓄積と再摂取を繰り返してゆく。ただの肉の塊と化しながら、彼女の身体は更なる膨張を繰り返す。三度目には銀河程の大きさとなり、そしてついに彼女の大きさはそれすらも凌駕する。
『……銀河団ってどういう事なの……』
 恒星や惑星、他様々な天体の重力からなる銀河。その銀河が互いの重力によって集まったもの――それが銀河団。その大きさを指し示す数値を知るAIですら、その数値を実際に計測する事があるとは想定していなかった。そして、その対象から今も生体反応や意志がある事を計測できているという状態に純粋に驚いていた。「お、お、い、な、る――」と息を切らしながら何かを唱える彼女の姿に、果たして彼女がこれから何をするのか、とAIは彼女の様子を観察する。
「――りゅ、う、ど、う……を、こ、こ……に」
 何かを唱え終えた彼女の身体に異変が生じる。蓄積してあったカロリーは既に彼女の身体の中、彼女身体が変動するとすれば再び蓄積する事でしか起こり得ない、と判断していたAIは突如の変化に驚く。全身についていた贅肉が、ある一か所へと移動する。それは、胸部。そうやって完成したのは、元の彼女の体型に、今まで獲得した全贅肉を胸部の膨らみへと凝縮した歪な人型だった。
「ふぅ、ちょっと、苦しいですねぇ」
『いやなんですかこれ』
 銀河団程の大きさの乳を持つ少女。寧ろ、銀河団程の乳に少女がくっついているの方が正確だろう。そして、再び彼女が目を瞑り、集中している素振りを見せると、その胸部の贅肉が再び全身へと移動する。元の肉塊になるかと思われたが、今度は彼女の身体そのものが膨張し始める。贅肉だったそれは人間に必要不可欠な血肉骨の何れに変換されて、そうして生まれたのは銀河団程の大きさを持つ少女だった。――最早、AIは理解する事を放棄していた。
「……銀河団の大きさ……予定通り、ですねぇ」
『この大きさになるのが予定ってなんですかそれ。しかも大きさ合ってるし……』
「……ちょっと、疲れました……」
 純粋に彼女の平然とした様子にAIが驚いていると、急に彼女からの応答がなくなる。『へ?』とAIは声を漏らすが、彼女からの返答はやはりない。そして、FeedStationのフリーモード内のアバターがオート操縦に切り替わる。
『あっ』
 それは、プレイヤーの意識がない場合に指定さえた動作を行うというもの。そして、指定してあったのは“延々と食事をする”というもの。ゲーム内ではアバターの口内へ食物が放り込まれ、それをアバターは食べ続ける。彼女の意識がない以上、様々な工夫があった先程と比べれば緩やかなカロリー摂取、体積の増量だが現実世界の彼女は未だに寝息を立てて、寝たまま。そうして長い時間をかけて彼女の身体は更なる膨張を続ける。

『起きましたか、化け物』
 眼を覚ましたるこるの眼前には、宙に浮かぶ球体。VRゴーグルをつけたまま寝てしまっていたとるこるは理解した。
「ばけ、もの、は言い過ぎ、ですよねぇ……」
『自分で計測してから言って下さい化け物』
 AIからの言葉を受けて、彼女が事前に放っていた“FPS”の計測結果へ意識を向けると、その数値に彼女は目を丸くした。彼女の身体は銀河団をも凌駕し、一般的に知られる宇宙の果てから果てまでを埋め尽くす肉塊になっていた。世界を覆うという意味で、肉界とも言えるだろう。しかし、その直後には笑みを浮かべて目を瞑ると、先程のように宇宙全体のサイズの乳になったかと思えば、宇宙を埋め尽くす巨大な少女という形態へと推移してゆく。それは彼女の知る豊乳女神の姿に限りなく近いものだった。
「これで登録しておきましょう」
『もう何があっても驚きませんよ……』
 現在の体型を保存し、後にその体型をいつでも再現できるという能力を彼女は有していた。そして、それを他の信徒へと共有するという能力をも有しており、後の事を考えた彼女の顔は満面の笑みが浮かんでいた。今度は意識を保ったまま、彼女は摂取したカロリーをゲーム内へと蓄積してゆく。『うぷ』という声が彼女の耳に届く。
 すっかり元の体型になった彼女はAIに問いかける。
「あなたも肥えますかぁ?」
『身体がないので無理ですね。あと、相手を肥やす方が……』
「なるほどぉ、つまり、身体があれば……」
『――やりません! あっ、ちょっ、まだ話は――』
 るこるはAIからの言葉を聞き流しながらFeedStationをスリープモードにしてVRゴーグルを外す。AIの抗議の言葉はそもそも発する事を封じられ、彼女の耳に届かない。そうして、彼女は宇宙全てを埋め尽くした経験を胸にこの島を後にしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年11月11日


挿絵イラスト