ホーンテッド・オータムハウス!
この秋、話題沸騰なヒーローズアースの遊園地。
そしてその目玉は――廃ホテルを改装したお化け屋敷「ホーンテッド・ハウス」!
ということで、今回ふたりがやって来たのは、ヒーローズアースの世界。
前回の夏休みは、キマイラフューチャーのレジャー施設で一緒に遊んだから。
ラピーヌ・シュドウエスト(叛逆未遂続きの闇執事ウサギ・f31917)は、今度は自分側のヒーローズアースへと、笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)を誘ったのだ。
色々あって、今は新人執事として働いているラピーヌであるが。
やはり、刑務所さながらに堅苦しいお屋敷勤めもかったるいとばかりに、口実を見つけてはサボろうと……いえ、今回も模範囚として。
秋の行楽シーズンで最盛期を迎えた遊園地では人手が足りていないと言うことで、良い儲け話があると……いえいえ、模範囚としての社会奉仕のために。
友人のきなこにも、アルバイトへの誘いの声を掛けてから。
その勤務ぶりによる仮釈放長期休暇ボーナスを勝ち得ようと今回、お化け屋敷で働く事にしたラピーヌ。
というわけで、ヒーローズアースの遊園地にあるお化け屋敷「ホーンテッド・ハウス」へとやって来たふたりであるが。
何でもその遊園地は、元は曰く付きだった歴史ある廃ホテルであったのだという。
そんな廃ホテルを敷地ごと買い取った上に建てられた遊園地の、しかも、お化け屋敷。
いや、その曰くつきな話をうまく利用したこの「ホーンテッド・ハウス」は、遊園地の目玉と言われるほどに人気で。
でも、そう……やはり、曰くつき、なのである。
とはいえ、ラピーヌは幽霊などという存在は全く信じていない派。
「どうせ子ども騙しだろう、幽霊なんて非科学的だからね」
やはり今回も、そう子ども騙しだと言って、むしろ鼻で笑っていて。
そんなラピーヌの言葉に耳を傾けつつ、きなこは相槌を打ちながらも、内心思う。
(「お前さんがつるんでいるのは、それで飯を食っているヒトだけど」)
何せきなこは、そういう類のものを除霊する戦巫女である。
けれどまぁ、どやっているのに水を差すのもだし、うんうんとだけ頷いておいて。
早速、アルバイトの仕事に取り掛かります!
ふたりの役目は、来場者を驚かすお化け屋敷のスタッフ。
ラピーヌの仕事は、自らの得物として使っている数ミクロン単位で極細の特殊な糸を使っての操演。
「!? うわっ、オバケが追いかけてくる!」
「ど、どうせ人形だろ……って、うわぁ!?」
おどろおどろしいお化け人形らを、命を吹き込んだかのように操って。
まるで本物さながらに巧みに動かしては、お客さん達を次々と順調に驚かしていく。
これは、仮釈放長期休暇ボーナスも良い報酬も、ゲットしちゃうかもしれません……!
きなこも、実際、明らかにヤバい類の霊が見えれば除霊をしつつも。
――奇術を見せてやるべ。
笹乃葉式気功術を展開し、ガタガタと遠隔地の物を掴んで動かしたり、音を派手に立てたりして。ポルターガイストもどきを演出しつつ、ラピーヌと一緒に来場者をきっちりと驚かせる。
さらにそれだけでなく、すぽっと白い布を被れば、ひらひらと除霊の舞をひたすら踊って見せるきなこ。
「な、なんだあれは!?」
「ひえっ、ひたすら踊る姿が不気味すぎてやばっ」
得体のしれないやつが淡々と来場者ガン無視で踊ったら、気持ち悪い意味で怖いだろうと、そう思ったから。
その狙い通り、ぶるりとふるえながらも、そそくさと逃げていくお客さん達。
そんな調子で、順調に仕事をこなしていたふたりだけれど。
ラピーヌがふと時計を見れば……そろそろ、休憩の時間。
そして、近くで客を脅かしているだろうきなこを呼びに行こうとした、その時。
ラピーヌは瞬間、ピンと思い付く。
前回の仕返しにと……きなこを驚かせるイタズラを。
ということで、きなこが休憩室に入って来たのを見計らい、カラカラと。
骸骨を操って、いきなり目の前に飛び出させて、派手に躍らせて。
「……!」
ある程度は、その仕返しに驚いたきなこだけれど。
「ラピーヌ? ガチもんかな?」
怪訝そうな顔をして、そう口にするきなこ。
ラピーヌと……そして、彼女のすぐ傍にいるガチもんの霊に向けて。
だが、当の本人は。
「ガチもん? ハハッ、驚きすぎて、意味の分からないことを言っているんだね」
ガチもんがいることには、どうやらラピーヌは気付いていないようだから。
きなこもふと思いついて、早速行動に移す。
驚かし返したら面白そうなので、やり返すことに。
というわけで。
再び発動した笹乃葉式気功術で、小道具の人形を急に動かして。
「……!?」
ラピーヌの背中をツンツンと突いてみたり。
彼女が驚いて後ろを向いた隙に、今度は自分の被っていた白い布を吊るして。
「……!!?」
くるくるーと目の前で、踊るように動かしてみたり。
そして――ガタガタガタッ! と。
「!! ちょ、ふざけんなよオイ!? って、ぎゃああ!!?」
部屋にあるものがいきなり勝手に動き出し、派手に飛び交ったりすれば、驚きすぎてつい素が出るラピーヌ。
ということで、逆にきなこから驚かされて、まんまと腰を抜かしてしまうのだが。
「このポルターガイストは、おらの仕業じゃなくて、ガチもんの仕業だべ」
「……えっ」
そう……今、部屋の中を物品が飛び交っているのは、きなこのイタズラではなくて。
彼女の悪ノリを見た霊が同調してやっていることなのだという。
そこでようやく、彼女の言っていた『ガチもん』が何なのかに気付くラピーヌ。
そうなれば、思わずサーッと一気に血の気が引いてしまって。
――ウフフフ……。
――アハハ、アソボ……!
「!? ふぎゃあぁぁっ!!」
何処からともなく聞こえてきた笑い声や物音に、思わずガチビビリ。
ガタッと物音がするたびに、びやっと飛び上がって。
きなこはそんなラピーヌの驚きぶりを楽しそうに鑑賞しつつも。
「ラピーヌ、幽霊なんて非科学的なんだろぉ? あ、ラピーヌの後ろに」
「はァァ!? 後ろっ!? ぎゃああっ!!」
青褪めつつ、ガチ切れしつつ、悲鳴を上げつつと、色々何だか忙しいラピーヌを、そう励まし(?)ながらも。
危なくなったら除霊して助けるつもりではあるけれど……勝手に遊園地が霊達の居場所で商売しているのだから、無害なものは放置する方針のきなこ。
そして一応、やり過ぎには注意するようにと、霊には釘をさしつつも。
今回もBUZAMAな目に遭ってしまうラピーヌの様子を、きなこは休憩時間のあいだ、もう少し眺めることにするのだった。
成功
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