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|グリーディ・ギガント・オーダー《GGO》

#ゴッドゲームオンライン #憂国学徒兵

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#ゴッドゲームオンライン
#憂国学徒兵


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●夢の中で悪夢を見るように
 |『統制機構』《コントロール》での生活は、灰色だった。
 永遠の停滞。
 そこにあるのは変わらぬことへの執着が生み出したかのような、灰色の日常だった。
 人は生まれた時に定められた運命があるのだという。
 その通りに生きて、死んでいくことこそが人の生き方であるという。
 道より外れる者を外道というのならば、その誹りを自分たちは甘んじて受け入れよう。

 ――究極のゲームにようこそ。

 ログインした世界は色彩に彩られている。
 いつ来ても、この此処は『ゴッドゲームオンライン』は最高だと思う。
 此処こそが自分たちの生きる世界だと思うのだ。
「『アイン』、メールが届いていますよ」
「『ツヴァイ』、誰からだよ。クランクエストはまだ先のはずだろう?」
「『ドライ』、貴方の方にもメールが来ているのではなくって?」
「『フィーア』、俺のメールボックスを見てきたかのように言うのは関心しないのだが」
 彼等と自分は一つのクランに所属している。
 クラン『憂国学徒兵』――彼等はそう名乗っていた。名前の由来を聞いた時、彼等は『なんとなく!』と語っていた。
 由来がわからないのだとしても、そう名乗るのが自然であると言ったのだ。
 どうしてか、それが例えようのないくらいに嬉しいと思ったのだ。
 まるで竹馬の友に再会したかのような、そんな感情が湧き上がってきて、眦に涙が浮かびそうになった。

「お前のところにも来てるんだろ、『エイル』――」

●バグプロトコル
 レイドクエスト。
 それは『ゴッドゲームオンライン』においても人気のあるクエストの一つである。
 言うまでも無いが、このクエストは曜日ごとに決められたボスが存在している。そして、装備を強化したり、ジョブを変更する際に必要な素材などがドロップするのだ。
 故に、このレイドクエストはいつだって満員御礼だった。
 しかし、『高難易度レイドクエスト』は別だった。
 あまりの難易度に上級プレイヤーの中でも一握り……所謂『廃人プレイヤー』達が綿密な連携と装備を持って当たることに寄って安定してクリアできる、ということが周知されている。
「……おいおいおいッ! なんだよこれはよ!」
「バッドステータスが付与できない!? 『ヒルジャイアント』は、バッドステータス耐性が低かったはず……!」
「この威力! 先週戦った時とは比べ物にならないぞ!?」
「修正が入ったということ? いいえ、でも何もお知らせには来ていなかったはずよ」
『高難易度レイドクエスト』に参加していたゲームプレイヤーたちは一様に焦りを隠せなかった。
 レイドクエストの最終ボスに挑むための道中ボスの強さが彼等の知る者とは異なっていたからだ。あまりにも強い。
 明らかに別物になっていると言って良い。

 この事象を彼等は認知できない。
 重大なバグが起こっている。これは自分の用意したクエストではない。いつの間にか、このレイドクエストはバグによって破壊されている。
 いうなれば、『生存確率0%の超凶悪クエスト』へと変貌してしまっているのだ。
「慌ててはダメだよ。落ち着いて。回避に集中して」
 亜麻色の髪の少女『エイル』は言葉とは裏腹に焦り始める。
 ダメだ。
 このままでは全滅する。
 彼等が全滅してしまう。どう演算しても負ける。それほどまでに目の前に迫る、中ボス『サイボーグジャイアント』は強すぎた。

 負ける。
 死ぬ。
 彼等の|『遺伝子番号』《ジーンアカウント》が焼却されてしまう。
 誰か。
 誰かいないのか。誰か。誰か、助けて。私、俺では、僕では助けられない――。

●ゴッドゲームオンライン
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。究極のゲームにようこそ!」
 ナイアルテが微笑む。
 グリモアベースではグリモア猟兵による予知した事件のあらましが語られる。しかし、今彼女はなんと言った?
 究極のゲームに?
 ようこそ?

「はい、新たに見つかった世界……|『統制機構』《コントロール》へと私達猟兵は未だ行くことができていません。ですが、『ゴッドゲームオンライン』には行くことができるのえす」
 ゴッドゲームオンライン。
 それは何者かが作り出した究極のオンラインゲームである。
 何故か、猟兵たちはこの世界に転移することができるのだ。
「わかっております。このゲームの世界に私達は生身のまま|出現《ログイン》することができるのです。そして、この世界におけるバグプロトコル……即ちオブリビオンが事件を起こすのです」
 このゲームの中でもしもバグプロトコルによってゲームプレイヤーが倒されたのならば、『遺伝子番号』と呼ばれる人権が抹消され、ゲームプレイヤーは『統制機構』において労働奴隷へと堕とされてしまうのだ。

「私達は、このバグプロトコルが引き起こす事件を解決しながら、襲われるゲームプレイヤーを救わねばなりません」
 とは言え、と彼女は言葉を区切る。
「此度の事件は、『高難易度レイドクエスト』がクリア不可能な『生存確率0%の超凶悪クエスト』に成り果ててしまい、これに巻き込まれたゲームプレイヤーたちと協力し、このレイドクエストをクリアすることなのです」
 つまり、猟兵達がしなければならないのは、このレイドクエストに挑むゲームプレイヤーたちの犠牲を阻止し、なおかつバグプロトコルを打倒しなければならないということだ。
 厄介である。
 いや、正直に言えばゲームプレイヤーたちを押しのけてクリアしてもよいのではないかとさえ思えるだろう。

 だが、これは廃人プレイヤーたちですらクリアできない程の難易度なのである。
 猟兵達だけでも打倒できないのだ。
「……はい、故に廃人プレイヤーの皆さんと協力し、レイドクエストのボスを打倒して初めて、此度の事件は解決できるのです」
 理不尽過ぎる。
 その一言に尽きる。
 しかし、これを成さねばならない。確かにゲーム内でのキャラクターの死亡は現実世界、統制機構における人命を損なうことにはならない。
 けれど、『遺伝子番号』を失った人々は人権を剥奪され、労働奴隷へと落とされてしまう。
 それは即ち死に等しい。
「死んでいるように生きているのと同じことです。どうか、この理不尽なレイドクエストで『遺伝子番号』を焼却されるゲームプレイヤーさんたちがいないように……」
 お願いします、とナイアルテは猟兵たちに頭を下げるのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回は新たなる世界『ゴッドゲームオンライン』において発生したバグプロトコル、彼等が乗っ取った『高難易度クエスト』をゲームプレイヤーたちと共に、彼等の犠牲無くクリアすることを目指すシナリオとなっております。

 すでに『高難易度クエスト』はバグプロトコルによって破壊されており、『生存確率0%の超凶悪クエスト』に成り果てています。
 またこのクエストには四人の廃人プレイヤーと一人のNPCが参加しています。
 彼等の犠牲なく、この狂ったレイドクエストに挑まねばなりません。

●第一章
 ボス戦です。
 このレイドクエストの最終ボスに挑むためには、まず中ボス『サイボーグジャイアント』を倒さねばなりません。
 すでに、この中ボスもバグプロトコルとなっており、中ボスでありながらあり得ないくらいの難易度に設定されています。

●第二章
 集団戦です。
 中ボスを倒し、『挑戦権』を得た皆さんは、クエストの前座として現れる数多のバグプロトコルを退けなければなりません。
 雑魚戦に見えて、このバグプロトコルもまたステータス強化されています。
 圧倒的な物量ですが、これを蹴散らすことができなければ、そもそもボス戦に挑むのは無謀とも言えるでしょう。

●第三章
 ボス戦です。
 このレイドクエストの最終ボスの座を乗っ取ったバグプロトコルとの戦いです。
 クリアさせる気が全くない異常なステータスを持っています。
 強敵以上の強敵です。
 猟兵の皆さんだけでは到底倒せません。これを倒すためには共に参加している廃人プレイヤーたちとの協力が必須となるでしょう。
 彼等がバグプロトコルに倒されれば『遺伝子番号』が焼却されてしまうことは言うまでもありません。
 彼等を倒されないように立ち回るしかありません。

 それでは究極のゲームに飛び込む皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
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第1章 ボス戦 『サイボーグジャイアント』

POW   :    ギガンティックパンチ
【渾身】の【ロケットパンチ】で、レベルmの直線上に「通常の3倍÷攻撃対象数」ダメージを与える。
SPD   :    機鬼壊界拳
【両拳】を【ロケットブースト】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
WIZ   :    ジェットランページ
【肉体の機械化部位】から【生命エネルギー】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。

イラスト:ぎんぼし

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 振るわれる巨腕の一撃。
 それは戦闘義体に置き換えられた巨腕を砲弾のように飛ばす一撃であった。
「あんな攻撃モーションあったか!?」
 廃人プレイヤーたち四人はあまりの一撃に目を見張る。今までの『サイボーグジャイアント』の一撃は、巨腕を叩きつけることはあっても、巨腕事態を砲弾のように飛ばしてくることなどなかったのだ。
 大地を一直線にえぐるようにして放たれた巨腕の威力は見ればわかる。
 あれに当たっては、一撃死は免れない。

 じゃらじゃらと鎖の音が響く。
 それは飛ばされた巨腕に繋がれた鎖。それを巻き戻す……いや、巻き戻しているのではない。『サイボーグジャイアント』の巨腕を錨のように大地にうがって、高速で移動してきているのだ。
 さらにはロケットブーストで加速している。
「受けるな! 装甲がぶち抜かれてしまうぞ!」
「まじかよ! 何だあれ!?」
「……に、二回攻撃も!?」
 さらに『サイボーグジャイアント』の戦闘義体からエネルギーが噴出し、凄まじい速度から一気に方向転換し、躱す廃人プレイヤーたちへと迫るのだ。
「明らかに強すぎるわ! 撤退を……できない……っ!?」
 そう、ログアウトなど許さぬ。
 リタイアなどもってのほか。
 そう告げるように、この『生存確率0%の超凶悪レイドクエスト』は彼等の撤退を許さない。
「生き残るには、これを倒さないと行けない。クエストをクリアしないといけない」
 それを理解し、廃人プレイヤーたちは覚悟を決めるしかないのだった――。
イリスフィーナ・シェフィールド
廃人プレイヤーって言いましたわね、ナイアルテ様。
あまり良いイメージでなさそうな言葉ですけどすごいってことでしょうか。

お助けいたしますわっとロケットパンチの軌道上に乱入。
リミッター解除で限界突破して怪力で武器受け(無手)して
グラップルで捕まえてダメージはオーラ防御で軽減して激痛耐性で我慢。

捕まえた手をグランド・インパクトで振り回して鎖で繋がった本体をあっちこっちに叩きつけますわ。
他プレイヤーの方々が立て直し必要そうなら立て直しを。
そうでなく追撃可能なら追撃をお願いいたしましょう。

プレイヤーの方々が知ってる人に似てるような名前が分かるなら同じと思いつつも後回しですわねと一旦忘れます。



 廃人プレイヤー。
 それはゲームをやり込めるだけやり込んだ者たちのことを差すものであり、また同時にゲームなくば立ち行かぬ者たちのことをも差すだろう。
『統制機構』が齎す灰色の日常。
 停滞こそが美徳であり、変化こそが悪徳であるという世界において、この究極のゲーム、ゴッドゲームオンラインは『統制機構』の言うところの人道より外れたものであることは言うまでもない。
 故に、このゲームにのめり込む者たちのことをこそ、廃人プレイヤーというのならば……。
「いえ、それにしたってあまり言葉のイメージがよろしいものではないように思えるのですが……とにかくすごいってことでしょうか」
 イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)はゴッドゲームオンラインの内部へと生身のままログインする。

 転移、という形を取っているが、此処はゲームの世界である。
 とは言え、敗北してしまえばどうなるかなど言うまでもない。統制機構に生きる人々が『遺伝子番号』を焼却されるのと同じように、猟兵たちもこの世界で倒されれば、それは即ち死に至ることは言うまでもない。
 ゲームにログインしたイリスフィーナは、その眼下に戦闘義体の巨腕を振るわんとしているバグプロトコル『サイボーグジャイアント』の一撃を受け止める。
 凄まじい衝撃が身に走る。
 これがゲームの中の世界であると知ってなお、この凄まじさは彼女にとって現実そのものであった。
「――カバー!? なんで!?『重騎士』なのか!?」
 廃人プレイヤーであるクラン『憂国学徒兵』のプレイヤーの一人が呻く。
 彼等にとって、あの『サイボーグジャイアント』の一撃は絶対に受けてはならないものであった。だが、イリスフィーナは一撃を受け止めて見せたのだ。

「なんという力でしょう。これがクリアさせるつもりのない高難易度クエストの敵の力……!」
 オーラの防御を重ねても、怪力でもって受け止めても威力を殺しきれない。
 それほどまでの一撃にイリスフィーナは痛みに眉根を寄せる。
 けれど、それでもライフゲージが残っている。
「耐えきったのか!」
「ええ、ここは皆様、わたくしにおまかせを!」
『サイボーグジャイアント』の巨腕を受け止め、その巨大な拳をイリスフィーナは握りしめる。

「な、なにをするつもりだ!?」
「こうするのですわ!」
 捕まえた『サイボーグジャイアント』の腕を掴んで振り回す。
 それは尋常ならざる膂力でなければできないことであったし、また同時にそれほどのステータスを有するイリスフィーナの姿に廃人プレイヤーたちは目を見開く。
「も、もしかしてSTRカンストしているのか!?」
「で、でも、どう考えても!」
 そうは見えない装備をしているイリスフィーナに彼等は驚愕を隠せない。
「『アイン』、『ドライ』! 今は敵の攻撃に集中して!」
「……どこかで聞いたお名前ですわね。あ、でも今はそれどころではないのでした!」
 叫ぶ亜麻色の髪の少女アバターにイリスフィーナは一瞬、知っている名前が聞こえたことに首を傾げる。
 けれど、今は後にしなければならないと持ち上げた『サイボーグジャイアント』の巨体を地面に投げつけ、叩きつける。

「今がチャンスですわ! 追撃を!」
 彼女の号令に従うようにしてクラン『憂国学徒兵』の廃人プレイヤーたちは一斉に己たちの武器を『サイボーグジャイアント』へと叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット
神ゲーをクソゲーにするバグ…許せません!倒します!
ついでにレイド報酬も貰いに行きますよ!
この敵とは何度も戦ってるので余裕……っではなさそうですね。

小さい体でちょこまか飛び回りながらプレイヤーをカバーするように動きます。
敵の攻撃をブーストの音を聞いて覚えます。課金アバターの兎耳で聞き耳たてます!

覚えてきたら双剣パリィでどんどん弾いて攻撃チャンスをつくります
早い攻撃はタイミングさえわかればパリィしやすいので!余裕です!
相手の大技に合わせてパリィからのマキシマムカウンターも狙ってみたりっ。
バシッと守って 怪我はありませんか?なんて…言ってみたいですね
(廃人達からかっこよく見られたいちやほやされたい兎



『生存確率0%の超凶悪クエスト』と化した高難易度レイドクエスト。
 それは本来であればゴッドゲームオンラインにおける周回クエストのエンドコンテンツであった。
 けれど、バグプロトコルによって敵のステータスはクリアさせるつもりのないものへと変貌しており、ゲームプレイヤーの『遺伝子番号』を焼却するためだけの狩り場へと変貌していたのであrう。
「神ゲーをクソゲーにするバグ……」
 バグプロトコル。
 それは猟兵にとってはオブリビオンであり、打倒すべきものである。
 しかし、ルナ・キャロット(†ムーンライトソードマン†・f41791)にとってバグプロトコルとは許しがたい存在であった。

「許せません! 倒します!」
 彼女は一気にレイドクエストのフィールドへと乱入を果たす。
「次から次になんだ!?」
 クラン『憂国学徒兵』のパーティメンバーたちは目を見開く。
 レイドクエストフィールドに乱入されることは珍しいことではない。けれど、その乱入してきたアバターが問題であったのだ。
「お怪我はありませんか?」
「兎獣人!? かわいっ!」
 メンバーの一人が、ルナのアバターを見て黄色い声を上げる。
 それを受けてルナは、ふへへ、と少しだけ表情を崩した。確かにアバターは可愛い低身長の兎獣人である。
 格好良く決まった、と彼女は内心笑う。でも、ちょっとなんか漏れてる。そういうところもなんだか廃人プレイヤーである彼等にも可愛いポイントが加算されるところであった。
 それに高レアリティ武具に身を包んでいるのもポイントが高い。
 高貴な姫騎士兎といったところであろう。

 だが、ルナの本質は陰キャである。
 褒められたいけど、褒められ慣れていない彼女にとって、『憂国学徒兵』のメンバーたちの声はなんともむず痒いものであったのだ。
「オオオオ!!!」
 しかし、バグプロトコル『サイボーグジャイアント』にとってはルナの可愛さも関係がない。
 両腕のブースターを噴射させながら凄まじい速度で彼女に迫るのだ。
「すごいスピードです。けれど、直線的。当たればただではすまないってわかってますけど、動きは単調! なら、タイミングさえ合わせられれば!」
 パリィ!
 そう、手にした双剣でもってルナは『サイボーグジャイアント』の突進を弾く。
「あれを弾くのか!」
「見て覚える! これはゲーマーの基本にして基礎! なら、あなた様たちもできるはずです!」
 ルナは自分の動きを見て廃人プレイヤーである彼等に覚えてと言わんばかりに『サイボーグジャイアント』の巨腕の弾き続ける。

「覚えれば余裕です!」
「オオオ!!!」
 その言葉に苛立つようにバグプロトコル『サイボーグジャイアント』の巨腕が振るわれる。
 大技。
 苛立つのに合わせて、大ぶりになった一撃をルナは見逃さなかった。
「パリィ! からの! スキルクロス・リユニオン!」
 瞬間、ルナの瞳がゆベーベルコードに輝く。
 スキル『カウンター』と『捨て身の一撃』を組み合わせた新たなる技能、『マキシマムカウンター』が発動する。
 煌めく光と共に弾いた腕、そのこじ開けられたガードの奥へとルナは双剣と共に十字の一撃を叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クィル・ルーダス
ゲームの中、ですか
妹達が好んだのはどちらかというとこういう物では無かったので私もあまり判らないのですが…
…強敵と戦えるというのは盲点でした
燃えるような闘争があるというのなら、私に出向かない理由はありません。行かせてもらいます…!

私に出来るのは前に出て撃ち抜く事しかありません
まぁ今回は…どうやら向こうから来てくれるみたいですね
なら逆にそれを利用させてもらいましょう
左腕にサイキックでシールドを張って攻撃を防いで被弾を減らしつつ
突撃してくる相手の軌道を読み、正面から否杭撃で迎撃します
さぁ、勝負です…ッ!

※協力・アドリブ歓迎



 新たなる世界、ゴッドゲームオンライン。
 それはゲームの中の世界であるのだという。このゲームが存在する『統制機構』には未だ猟兵は転移することはできない。
 しかし、このゲーム内において人権である『遺伝子番号』を焼却せんとするバグプロトコル……オブリビオンの影があるのならば、クィル・ルーダス(杭撃皇女・f39666)はゲームの中であろうと躊躇いなく転移するのだ。
「ゲームの中、ですか」
 彼女の妹たちもゲームというものを好んでいるようだった。
 ようだった、と言うのはクィル自身がよくわからない、と思うものであったからだ。それに彼女の妹たちがやっていたゲームはゴッドゲームオンラインとは異なるものであった。

 だが、である。
 そう、彼女は意気揚々としていた。
「難しいことは後にします、今はこの闘争を始めましょう」
 彼女のサイキックはゴッドゲームオンライン内部であっても健在であった。
 なぜなら彼女は猟兵。
 このゲームのなかに生身でログインすることができるのだ。ならば、これは普段彼女が求める戦いと何ら変わるところのないものである。

 そして、このゲームの中、『生存確率0%の超凶悪クエスト』のレイドボス、それもまだ中ボスであるというバグプロトコル『サイボーグジャイアント』が今日的であるというのならば。
 そこには彼女が最も求める強敵との戦いがあった。
「……盲点でした。燃えるような闘争があるというのなら、私に出向かない理由はありません」
 眼前に迫るはあふれる生命力。
 クィルの放つサイキックと拮抗するようにクエストフィールドに嵐が吹き荒れるようにして、その力の本流が激突する。

「オオオオ!!!」
 咆哮が迸り、『サイボーグジャイアント』の巨腕がクィルめがけて放たれる。
「躱さないとダメだ! 受け止めては!」
 クラン『憂国学徒兵』の廃人プレイヤーたちの注意の声が聴こえる。
 だが、クィルはそのアドバイスめいた注意があったとしても関係なかった。どのみち自分に出来ることはたった一つ。
 それを示すように彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「踏み込んできてくれるのならば好都合」
 踏み出す。
 横に躱すのでもなければ、後退するでもなく。
 クィルは迫る巨腕を前にして踏み出し、その手に宿るサイキックエナジーの奔流をパイルバンカーの炸薬が封じられているであろう機構へと押し込める。

 拳を握りしめ、腰だめに構えた鉄杭を突き出す。
 ルーダス星人であるクィルの力を通しやすい金属で削り出された一本の杭。そこにサイキックエナジーが炸薬となって弾ける。
 火花が内部機構で弾け、その圧力が高まった瞬間パイルバンカーの一撃が真っ向から『サイボーグジャイアント』へと放たれるのだ。
「|否《ネゲイト》……|杭撃《バンカー》ッ!」
 どんな強烈な攻撃も、ユーベルコードである以上、クィルを前にしては無意味だった。
 そう、彼女のサイキックエナジーが込められたパイルバンカーの一撃は、ユーベルコードを相殺する。
 例え、敵のステータスが尋常ではなく高く設定されているのだとしても、クィルの否杭撃(ネゲイトバンカー)は、それらを破壊し、貫くのだ。

 砕け散る巨腕。
 咆哮は痛みか、それとも怒りか。
「す、すっげぇ……あの一撃を真っ向から消し飛ばしたぞ!?」
「安心するのはまだ早いです。『サイボーグジャイアント』……あなたもそうでしょう。これからだ、と」
 ならば、とクィルは、その瞳に闘争の意志を宿して『サイボーグジャイアント』に向き直る。
 楽しみは、喜びは、ここからだと示すように。
「さぁ、勝負です……――ッ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウュル・フゥ
うわあ。
アレ元々結構強かったのに、とんでもなく強くなってるじゃん…
こりゃ皆で協力していかなきゃ倒すの無理だね。

というワケで現地のプレイヤーさん達と合流、共闘を呼びかけるよ。

アタシは前に出て、キャットクローで巨人に斬りつけ攻撃。
|狙い《タゲ》をアタシに引きつけさせたところで皆に攻撃を仕掛けてもらう形を取れればと。

巨人の攻撃は基本全部ガード不能と考え、頑張って回避。
余裕を持って躱せそうな攻撃が来たらそこでUC発動、攻撃躱しざまにマキシマムカウンターの一撃を叩き込むよ!

レイドクエは一度参加したらクリアか死か回線切断でしか終われないからねえ…こうなったら、意地でもクリアしてやろうね!



『サイボーグジャイアント』――それは高難易度クエストを主戦場とする廃人プレイヤーの間において今難易度の登竜門とも言える存在であった。
 この中ボスに勝てなければ、高難易度クエストの奥に座す最終ボスを倒すことなど出来ないからだ。言ってしまえば、己の実力を図るための物差しにされがちなエネミーであったのだ。
 しかし、今まさに迫る『サイボーグジャイアント』はバグプロトコルとなり、そのステータスは一度高難易度クエストを経験した者にとって未知なる存在へと成り果てていた。
 放たれる戦闘義体の巨腕の一撃が速い上に威力も段違いだ。
 即ち、当たれば一撃死もありえるということだ。
「うわあ」
 思わず、ウュル・フゥ(貪り喰らうもの・f41775)はうめいていた。
 彼女もまた所謂廃人プレイヤーに類するゲームプレイヤーの一人であった。
 基本的にエンジョイ勢とも言える立ち位置で遊んでいるのだが、共にパーティを組んだことのある者からすれば、彼女こそ廃人プレイヤーと呼ぶにふさわしい存在であると語られる。

 そう、彼女は多くのプレイスタイルをものにしている。
 敵を喰らい、その技も力もモノにしていく。
「アレ元々結構強かったのに、とんでもなく強くなってるじゃん……」
 何アレ、知らない、とウュルは天を仰ぐ。
 どう考えても今の廃人プレイヤーたちのステータスではどうにもならない相手である。
 とは言え、である。
 どうにかしなければならないのが、ゴッドゲームオンラインである。
 キャラクターが死亡すれば『遺伝子番号』は焼却され、人権を剥奪される。それは死と同義であった。
 故に、死にものぐるいで躱さなければならないのだ。

「共闘オッケー?」
「助けてくれるのか!?」
 先んじて戦っていたクラン『憂国学徒兵』のメンバーはレイドボスとの戦いに乱入してきたウュルの姿に目を見開く。
 ありがたいことだ。
 このレイドボスは明らかにおかしい。けれど、同時に共闘を呼びかけてくれるウュルにとっても危険なことである。
「でも、こいつマジでつえーぞ!」
「だいじょうぶだいじょぶ! |狙い《タゲ》はこっちで受け持つから、皆で一斉に宜しく!」
 彼女は一気にレイドボスの間合いに飛び込む。
 手にしたキャットクローの一撃を叩きつける。かすり傷だ。まるで攻撃が届いていない。覇権ジョブである『聖剣士』のチャージした攻撃でなければ傷すら追わないようであると理解して彼女は、振るわれる巨腕を交わし続ける。

「基本ガード不能です! 正直、がんばって回避するしかないです!」
「だよね! わかってる!」
 ウュルは頷く。
 ひらりひらりと躱す姿に余裕はあるように見えるが、実際にはかなり紙一重である。掠めただけではダメージ判定にならないことを利用するように彼女は『サイボーグジャイアント』のヘイトを稼ぎ続ける。
「まだ!?」
「もう少しよ!」
 敵を引き付ける。バグプロトコルは疲弊しない。ゲームのプログラムであるから、というのもあるだろう。

 ステータスが異常だというのもあるが、しかし、プログラムであるがゆえにラグは生まれるのだ。
「その一瞬に! スキルクロス・リユニオン!」
 ウュルの瞳がユーベルコードに輝く。
 2つのスキル。
 カウンターと捨て身の一撃。
 この2つを組み合わせ、新たなスキルを誕生させる。
「また……! なんだ、あのスキル!?」
「マキシマムカウンター!」
 それは絶大なるカウンターの一撃。シビアなタイミングさえクリアできたのならば、敵の攻撃を躱して一方的なダメージを与えることのできるカウンターと己のHPを全て上乗せした軽減不可能な攻撃を叩き込む捨て身の一撃を組み合わせた最大の一撃。

 鉤爪の一撃が『サイボーグジャイアント』を穿ち、チャージされた『聖剣士』たちの一撃が叩き込まれる。
「これでもまだ……!」
「まだまだ仲間たちはやってくるよ! レイドクエはクリアか死か回線切断でしか追われないからねえ……意地でもクリアしてやろうね!」
 ウュルは笑う。
 これは生命を賭けた戦いなのだと、笑っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
これがゲームの世界なのですね。なんだかすごいのです。

今日のわたしはサポート特化です。
バッドステータスやデバフが通じないならそれ以上のバフで対応です。愛唱・希望の果実を歌いましょう。なんとなくボーカル付きBGMが流れるだけで彼らは共感してくれる気がしますし。ついでに歌いながらクエストBGMを耳コピして、即興で歌詞を付けて歌えば更に士気も上がりますかね?

目視に加え第六感と心眼と気配感知も駆使して敵の動きを見切り、咄嗟の全力魔法結界術で敵の攻撃を防いだり、ロケットブーストや生命エネルギーの噴出口を塞いで攻撃を失敗させましょう。

さぁ、あと少しなのですよ!このまま決めちゃいましょう!



 ゴッドゲームオンライン。
 それは究極のゲームである。『統制機構』の強いる停滞から逃れるようにして人々はこのゲームに没入する。
 それだけの理由があることを七那原・望(比翼の果実・f04836)は知る。
「これがゲームの世界なのですね。なんだかすごいのです」
 彼女は猟兵であるがゆえに、このゴッドゲームオンラインの中へと生身でログインすることができる。
 いや、生身でしかログインできない、というのが正しいだろう。
 いまだ猟兵は『統制機構』たる世界に転移することができない。
 何故か、このゴッドゲームオンラインの中にしか転移できないのだ。とは言え、オブリビオンであるバグプロトコルがゲームプレイヤーたちの『遺伝子番号』を焼却し、労働奴隷として確保しようとしているのならば、これを止めぬ理由はない。

 すでに『生存確率0%の超凶悪クエスト』と成り果てた高難易度クエストに巻き込まれた廃人プレイヤーのクラン『憂国学徒兵』たちのプレイヤーとバグプロトコル『サイボーグジャイアント』との戦いは始まっている。
 未だ犠牲者がいないことが幸いであった。
「やはり、何度やってもバッドステータスの付与ができない。確率を下げることも、弱体化もできないなんて……!」
「無理ゲーじゃないか!」
 そんな彼等の様子に望は頷く。
 クエストへの乱入。いや、共闘の申し出がすぐさまに承認される。

 クエストフィールドに降り立った望の姿に廃人プレイヤーたちは目をむく。
「なんだその装備!?」
「天使の羽根!?」
 今の望は生身である。彼女の容姿や手にした武器がまるで見覚えがないものばかりであったので、彼等は一瞬驚いたようであった。
「その話は後にしましょう。一瞬でも気を抜いたら……」
 やられますよ、と彼女はユーベルコードを発露する。
 その煌めくような歌声が戦場に響き渡る。
「これは……バフ……! あんたバッファーか!」
「はい、サポート特化しています。バッドステータスやデバフが通じないなら、それ以上のバフで対応すれば良いのです」
 望の歌声が響く。
 BGMが流れ始める。それは壮大であり、また同時に希望を齎すものであったことだろう。

「綺麗で眩しいこのせかいを 二人で行こうどこまでも 明日もきっと晴れるから I wish Eternity with you……♪」
「……STRもINTも上がっている……これなら行けるぞ!」
 クエストBGMはすでに望むによって耳コピされている。即興であるが歌詞をつけたのは、彼等の心を鼓舞するつもりもあったが、それ以上に彼等のバフ効果が上乗せされているようであった。
 それが、彼女のユーベルコード。
 愛唱・希望の果実(ユニゾン・オブ・ホープ)であった。
「来ます……!」
 バフの源である望を『サイボーグジャイアント』は認識したようである。
 廃人プレイヤーたちを倒すよりも早く、彼女を打倒したほうが良いと考えたのだろう。いや、考えたのではない。そういうふうにプログラムされているのだ。
 バッファーを優先的に攻撃する。
 その優先事項に望が引っかかっているのだ。ならばこそ、迫るは『サイボーグジャイアント』の巨体。
 
 だが、その一撃を望は躱す。
 まるで心眼そのもの。
「すっげ……なんであのタイミングで避けられるんだよ……」
「さぁ、後少しなのですよ! このまま決めちゃいましょう!」
 望は微笑み、この絶望的なステータス差を持つバグプロトコルとの戦いが終わりに近づいているのだと励ますように歌い続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
寧々に無理やりこのゲェム?とやらをやらされてるんだが…。
まあ、これも一種の修業と割り切るしかないか…。

ロケットパンチねぇ…腕飛ばすとは恐れ入るが…腕無くしたらどうするんだ?
飛んできた拳を『覇気』を込めた拳で『見切り』武器の覇気で『武器受け』し、そのままロケットパンチを『受け流し』て回避する。
その瞬間に『ダッシュ』で接近し『カウンター』に拳を撃ち出した断面部に炎の『属性攻撃』をこめた『功夫』で殴って『焼却』し『部位破壊』そのまま『2回攻撃』の二撃め追撃に『電撃』で『マヒ攻撃』も追加だ。
これで腕は引っ付かなくなったろ?

そのまま〆だ。
『ジャンプ』して≪陸断≫で『踏みつけ』る



 正直に言えば、あんまり気乗りしないのである。
「このゲェム? とやら……なんとも妙な感じだ」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は生身でゲーム世界にログインするという感覚にどうにもなれない様子であった。
 ゴッドゲームオンライン。
 それは『統制機構』と呼ばれる世界に存在する究極のゲームである。
 その内部へと猟兵はログインしているのだが、ゲームプレイヤーたちと違って、猟兵たちは生身でこのゲームの内部に存在しているのだ。

 感覚は生身と変わらない。
 けれど、感触というのか、力の振るい方というのがどうにもしっくりこない。
「まあ、これも一種の修業と割り切るしかないか……」
「おい、あんた、ロールプレイもいいんだけど、あいつの攻撃は……!」
 迫る巨腕。
 それは戦闘義体の巨腕が砲弾のように打ち出された瞬間であった。
 バグプロトコル『サイボーグジャイアント』。
 あの敵は本来ならば高難易度クエストの中ボスとして位置づけられる敵であった。しかし、今はバグプロトコルとして異常なるステータスを得て、ゲームプレイヤーの『遺伝子番号』を焼却せんと迫っているのだ。

「おっと……腕を飛ばすとは恐れ入るが……腕なくしたらどうするんだ?」
 着弾して爆発する巨腕。
 すると『サイボーグジャイアント』の腕がデジタルプログラムによって再構築されるのだ。
「なーる。攻撃プログラムだからダメージ判定なし、と。反映されないわけな」
「言ってる場合か! 来るぞ!」
 クラン『憂国学徒兵』の廃人プレイヤーの警告が飛ぶ。
 だが、名捨は正面から飛来する巨腕の一撃を受け止める。覇気を込めた拳で、だ。それはあまりにも無謀な行為に見えたことだろう。
「ダメだ、押し負けるぞ!」
「いーや、こうするんだよ!」
 名捨は覇気纏う拳で飛来する巨腕の軌道をそらし、受け流すことで回避してみせたのだ。

「なんだそのモーション!?」
「なんだって出来るもんなんだよ!」
 次の瞬間、名捨は踏み込む。
 瞬く間に『サイボーグジャイアント』の間合いへと踏み込み、カウンターの一撃を叩き込む。
 放たれてしまった後の巨腕の接合部へと炎纏う拳を叩きつける。
 基部がダメージを受けたと判定されたのならば、あらたに攻撃プログラムとして再構築されても、うまく接合できない。
「なら、腕がないってことだ。ひっつかないなら!」
 それはラグとなって目の前に現れる。
 連続攻撃が繋がる。
「コンボ!」
「お次は電撃の、マヒ攻撃だ!」
 迸る雷撃に『サイボーグジャイアント』の体が揺れる。

「繋げていくぜ……んじゃな。――あばよッ!」
 振るわれるは蹴撃の一撃。陸断(リクダチ)。
 超高速の一撃はカミソリのような鋭さでもって『サイボーグジャイアント』の巨体へと叩き込まれ、その一閃が大威力を示す数値を示すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

新しい『エイル』さんの香り……どんな香りなんでしょうか?
いえ知りたいわけではないですが。

とりあえずこの世界で初手からドン引きは厳しいですので、
ここは他人のフリで『うっわ、やべーっ!』 って顔して……。

って、呼ばないでください!?
わたしもやべーって思われるじゃないですか!

まぁ、勇者的にはシンクロ率高い世界だとは思いますが、
ステラさんのやべー率とはシンクロしてないですからね?

え、パーティですか?
久しぶりに【勇者パーティ】とか?

これで経験値は山分け、ドロップ率も上がるんですね。
あ、でもステラさんの『エイル』さんげっと率はあがらないですよ?

なんか酷いルビもらってますが、演奏はしますからね!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまぁぁぁす!!
新たなエイル様の香りに誘われて
メイド推参しました
はじめましてエイル様
貴女様のメイド、ステラです
誰がやべーメイドですか

さて
|女性のエイル様《この因子》の場合
勝利には苦戦する事が多いよう様子
前に出て応戦といきましょうか
ルクス様?ルクス様ー?
そこで他人のフリしてる勇者ー?
こんなに世界観がマッチした世界も無いんですから
頑張ってください|光の勇者《破壊の申し子》

あ、エイル様
経験値とかドロップとかを考えると一時的にクランかパーティーに入れて頂けると助かります

【スクロペトゥム・フォルマ】で応戦です
いかに早かろうと私の銃からは逃れること叶いませんので!



「|『エイル』様《主人様》の!」
 やっぱり新世界に来たら、これがなくちゃね、と思うのならば、それはもうちょっとした病気ではないのかと思うのだが、仕方ない。
 仕方ないのである。
 何が、と言われたのならば応えよう。
「香りがしまぁぁぁぁす!!!」
 これである。
 このやべー叫びの源たるメイド、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はクエストフィールドに響き渡るほどのすさまじい声量でもって叫び倒していた。
 高難易度クエストに参加していたクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちも、共に戦っていた猟兵たちも、はたまたバグプロトコルである『サイボーグジャイアント』さえも、一瞬、びくっとしていた。

 それほどまでの叫びであったのだ。
「新たな『エイル』様の香りに誘われて、メイド推参しました!」
「『エイル』……? 知り合いか?」
「えっ、えっ、し、知らない人だよ……?」
『エイル』と呼ばれたNPCがたじたじとした様子で戸惑っているのを他所にステラはぐいずいと距離を詰めた。
「はじめまして『エイル』様、貴女様のメイド、ステラです」
 ちゃっかり手を握っている。
 本当にちゃっかりしている。
「え、え、っ、メイド? そんなジョブありました……?!」
「今それ言うことじゃないよな!? クエスト中だってば! 一撃死しちゃうぞ!」
 メンバーたちの声が聴こえるが、ステラは知ったことではなかった。

 そんな彼女の姿を認め、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は他人のふりをしていた。
 新しい『エイル』の香りとは一体どんなものなんだろうかと思っていた。いや、別に知りたいわけではないのだ。
 というか香り、というからには何か認識するすべがあるはずなのだ。
 それをステラが確実に嗅ぎ分けている、という事実になにかヒントがあるような、ないようなってところである。
 とは言え、初手でステラがこれである。
 仲間である、知り合いであると認識されては自分もドン引きされてしまうとルクスは思ったのだ。
 ファーストインプレッションって大切。
 初手ドン引きはちょっと自分でもきびしーなって思うのでルクスは他人のふりをしたのである。

「うっわ、やべーっ!」
 そんな顔もしていたし、口にも出した。
「誰がやべーメイドですか」
「気が付かれた!」
 ルクスの様子にステラは手招きする。やだ、手招きしないでくださいよう、とルクスは思った。此処では他人の振りしましょって打ち合わせたじゃないですぁ! と顔で訴える。でも無駄であった。

 そう、ステラは色々考えていたのである。
『エイル』と呼ばれる存在。
 男性であることが多いこの名を持つものは、多くが勝利することに長けていた。だが、女性の『エイル』はとことん負け続けている。
 まるで陰と陽を分かたれているかのように、敵に敗北し続けているのだ。
「となれば、前に出て私どもが応戦いたしましょう。ルクス様、ルクス様ー? そこで他人のふりしている勇者ー?」
「あー! 名前よばないでください! わたしもやべー人って認識されるじゃないですか!」
「こんなにも世界観にマッチしている職業もないんですから、がんばってください|光の勇者《破壊の申し子》」
「今ルビ打ったぁ!」
「いいですから。あ、『エイル』様、経験値とかドロップとかを考えると一時的にクランかパーティに入れて頂けると助かります」
「それはもうやってるってば!」
 パーティメンバーの一人が叫ぶ。

『サイボーグジャイアント』を抑えるのに手一杯なのだろう。
 何せ、敵の攻撃は一撃死を齎すものである。受けるわけにはいかないのだ。
「どうも、はじめましてご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)です」
 よしなに。
 よしなにじゃないが、とルクスは思ったが、悪魔のトリル(アクマノトリル)を演奏する。
 演奏していいか、とは聞かない。
 承諾を得ている時間がもったいないからである。どんなに抵抗されたっていつも答えは一緒なのだ。
 出オチってやつである。
「今、ひどいこと言われた気がします!」
 気の所為。

 三半規管を狂わす程の音の洪水。
 それに巻き込まれるようにして『サイボーグジャイアント』は動きを止める。
「バステが通らないはずなのに……なんだこのバステ……!? こっちまで耳鳴りするんだが!?」
「これが魂の演奏です! 魂の演奏は、すべてを貫きます!」
 そんな理屈ある!? とパーティメンバーたちは皆突っ込むが、ルクスは気にした様子もなく、ゆうゆうと演奏し続け、ステラは神アイテム、耳栓でバステを打ち消すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーシア・ロクス
ユーシア・ロクス、新世界に見参、です!
…っていきなり大ピンチじゃないですか!す、助太刀します!

わたし(3P)は「攻撃を受けないようにひたすら移動を続けながらちくちく削っていくべき」って言いますけど、
それだと他のプレイヤーさんが狙われかねません……ここは!逆転の発想です!
『絶望撃ち抜く砲火のカギ』(凸な形状)とUCで……その高速パンチ、受けちゃダメなら
クイックドロウ・制圧射撃での連射力と強化された攻撃力で「撃ち落とせばいい」んです!!

被弾が何です!距離が縮めば撃った弾がすぐパンチに当たるという事、ギリギリまで撃ち続けて、その|オブジェクト《パンチ》、そして本体、……全部壊させてもらいますよ!!



「ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)、新世界に見参、です!」
 彼女は意気揚々と究極のゲーム、ゴッドゲームオンラインの内部へとログインし、その中世ファンタジー世界とSFとオカルトと、あとなんかいろんなものがごっちゃになった世界観の光景に目を奪われ……るよりも先に、転移先にてバグプロトコルと戦うクラン『憂国学徒兵』メンバーたちの苦境を見つけてしまう。
「……いきなり大ピンチじゃないですか!」
「そうだよ! なんかすげー敵が強くなってる! あんたも巻き込まれないように……」
「す、助太刀します!」
 即断即決。
 メンバーがレイドクエストに乱入さえしなければ、『サイボーグジャイアント』の攻撃の的にならないことを告げるよりも早くユーシアはレイドクエストに参加していたのだ。

 あまりの即決ぶりにメンバーたちはあっけにとられてしまう。
「一度参加したら、クリアするしか生き残る道はないぜ……?」
「やりますとも!」
「敵の攻撃は一撃死するほどの威力を持ってるわ。気をつけて」
「なら、攻撃を受けないようにひたすら移動しながらチクチク削っていくべきですね」
 ユーシアの3Pがそういうけれど、それではダメだとユーシアは考えたのだ。
「それだと他のプレイヤーさんが狙われかねません……ここは! 逆転の発想です!」
「逆転?」
「はい! 敵の高速パンチが受けちゃダメな攻撃だって言うんなら!」
 ユーシアの瞳がユーベルコードに輝き、また同時に『絶望撃ち抜く砲火のカギ』を手にしる。
 迫る『サイボーグジャイアント』の巨腕の一撃。

 その一撃に目にも止まらぬ引き撃ちでもってユーシアは『撃ち落とす』のだ。
 それは、ユーシアのプレイ日記~シューティング~(トクテンカセギモード)にあるように、全て撃ち落とせばハイスコアになる。
 目に見えるもの全てがターゲットであり、また同時に撃ち落とさなければ、という精神状態になったユーシアによる理性無きシューティング形態。
「この状態になったらもう止まりませんよ! 皆さん離れてー!」
 3Pの声が響く。
 今のユーシアは速く動く物を無差別に攻撃し続ける状態なのだ。
 つまり、速く動いた瞬間彼女の標的になってしまうのだ。

「え、えええ!?」
「ちょ、ちょい待って!? なんで!?」
「そういう状態なんです! 目に見えるもの全てが的に見ちゃうんです!」
 なんということだろうか。
 ユーシアは迫る『サイボーグジャイアント』の巨腕を打ち続けている。攻撃を攻撃で防御するというわけのわからない状況。
 だが、ユーシアにとって『サイボーグジャイアント』の放った巨腕は攻撃ではなく、オブジェクト。
 即ち、破壊できると思ったのだから破壊するというだけなのだ。
 壊したら高得点!
 そんでもって、本体も壊せば、さらにスコアが伸びる。

「ハイスコアはわたしのものですよ!」
 そのすさまじい精神状態になったユーシアは、迫る巨腕を圧倒的な集弾性能でもって破壊し、さらに『サイボーグジャイアント』の本体へと弾丸を叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
凶暴な巨人ね
お前には戦士の誇りもないのかしら

プレイヤーたちに攻撃が当たらないよう結界を張り
言葉を交わせる時間があれば名乗るわ
私はこの世界のことがまだわからないの
あなた達の協力がなければ先に進めない
だから、力を貸して

護符を飛ばし巨人の動きを阻害する
飛んでくる腕と本体を皓月結界で締め付け
彼等の刃が届く隙を作るわ



 咆哮が轟いている。
 それはバグプロトコル『サイボーグジャイアント』の上げる咆哮であり、そこに感情は乗っていないように思えた。
 なぜなら、それはエネミープログラムとして設定されたものであり、演出でしかないからだ。故に、その咆哮は猟兵たちも参戦したレイドクエストが終盤に差し掛かっていることを示していたのだ。
「いいぞ……敵のHPが3分の2を切った!」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちの声が聴こえる。
 彼等の名はレイドクエストに参加した時のメンバー一覧で確認することができる。
『アイン』、『ツヴァイ』、『ドライ』、『フィーア』、『エイル』。
 この五人の名前に新たな世界、ゴッドゲームオンラインに生身でログインした薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は瞳を細める。

 見覚えのある名前だった。
 だが、この世界はゲームの世界。
 ログインしている彼等はゲームプレイヤーであり、動いているのはアバターであるのだ。彼女の知る名前と同一であっても、アバターの容姿は異なっており、また同時にゲームプレイヤーである本人たちの『真の姿』は認識できない。
「凶暴な巨人ね。お前には戦士の誇りもないのかしら」
 その言葉に呼応したわけではないが、怒り狂うようなモーションと共に『サイボーグジャイアント』が巨腕を彼女に向かって解き放つ。

「受けたらダメだ! 威力が強すぎるから!」
 その声を受けて静漓は頷き、結界を張り巡らせた後、一瞬の攻撃のラグを利用してその場を離れる。
 爆風が吹き荒れるようにして彼女が張り巡らせた結界が砕け、凄まじい威力であることを様々と見せつける。『憂国学徒兵』のメンバーたちの声がなければ、彼女はあのまま倒されていたことだろう。
「助言をありがとう。私は、薄翅・静漓。私はこの世界のことがまだわからないの。あなたたちの協力がなければ先に進めない。だから、力を貸して」
「ビギナーかよ! いきなりでこんな凶悪クエストに巻き込まれてしまって運がないな! でもさ!」
「ああ、乗り合わせた船だ。呉越同舟……だったか」
「攻略法は見えています。なら、共に!」
『憂国学徒兵』たちは、彼女の言葉に答える。アバターも違う。プレイヤーの『統制機構』での姿も知らない。けれど、その言葉の端々から伝わる気配に静漓は確信する。
 名前が同じあの子たちにどことなく似ている、と。

 クラン『憂国学徒兵』たちが静漓との共闘を承認し、即座にパーティメンバーとしての効果共有に寄って静漓のステータスが向上していく。
 手にした護符はアイテムとして機能するのだろう。
 投げ放つと、『サイボーグジャイアント』の巨体が動きを止める。どうやら、一時的な拘束アイテムとして機能しているようだ。
「あ、あんた、そんな貴重なアイテムをバンバン……!」
「負ければ、『遺伝子番号』の焼却、でしょう。なら、躊躇っている時間はないわ。私はビギナー……初心者。なら、あなたたちを助けるわ」
 その言葉と共に静漓の瞳がユーベルコードに輝く。
 蝶の形をした飛び舞う護符が煌めき、『サイボーグジャイアント』の巨体を月光の結界が閉じ込める。
 動きを止めた『サイボーグジャイアント』が暴れるが、しかし、締め付けられる結界によって動くことができない。

「今よ」
「恩に着るぜ……! これなら!」
 十分な火力が出せる、と静漓の結界が縛り上げる『サイボーグジャイアント』を尻目に『聖剣士』としての力を示すように『憂国学徒兵』のメンバーたちのスキルが煌めき、『サイボーグジャイアント』の巨体へと叩きつけられるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
オンラインゲーム…ログインすれば素性も場所も関係なく、同じゲームを楽しむプレイヤー同士ってとこっすか。
ハマる人が多いのも頷けるっす。
まあ、究極のゲームだからって連動してリアルでも実質死亡なんてしていい訳ねえんすけど。

って事で失礼するっすよ。【瑞風】発動、『モルダバイト』でプレイヤーの使用武器をコピーし出力。
ゲーム内なら経験も課金もそっちの方が圧倒的に上でしょうから。
タダ乗りするようでアレっすけど、ちょっとの間能力ごとコピらせてもらうっす。
バグろうが既存のレイドボスベースなら実装武器が通じない道理はねえっしょ。
拳は直で受けずに<第六感>で回避して一撃入れさせてもらうっすよ。



 ゴッドゲームオンライン。
 それは究極のゲームであり、停滞こそが美徳たる世界『統制機構』においては、多くの変化と成長に富んだ世界でもある。故に人々はこのゴッドゲームオンラインにのめり込んでいくのだろう。
 互いの素性は知らず。
 場所も、性別も、年齢も、境遇も関係ない。
 そこにあるのは同じゲームを共に楽しむ同好の士たち。
「だから、ハマると。それはわかるっす」
 とは言え、と安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は頭を振る。
 ログインしたゴッドゲームオンラインは確かに、中世ファンタジーにSFとオカルトが入り混じったごった煮の世界であった。
 しかし、この世界での死がリアル世界でのある統制機構での実質的な死亡である人権剥奪と直結しているのは笑えるわけがなかった。

「それを主導しているのがバグプロトコルっすね」
 穣は猟兵である。
 このゴッドゲームオンラインの世界へと転移すれば、それはログインとみなされるがアバターを作ることは出来ない。
 生身でログインしているのだから、この世界での死は即ち穣の死でもあるのだ。
 気が抜けない。
 それほどまでに『サイボーグジャイアント』は敵としてはステータスが異常なのだ。
「ってことで失礼するっすよ」
「ご助力感謝……って、君、武器を持ってないようだが!?」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは穣の装備を見て驚愕する。何も装備していない状況なのだ。
 あるのは穣のスキンのみ。
 そんな状態で、この高難易度クエストにやってきたのかと彼等は目を見開いて驚愕しているのだ。

「あー……なるほど。確かに。なら、ちょっと失礼してっと」
 彼は『モルダバイト』と呼ばれる浮遊ビット型印刷機を持って、『憂国学徒兵』たちの装備をスキャンしていく。
「タダ乗りするようでアレっすけど、ちょっと間能力毎コピらせてもらうっす」
「なにそれ!? そんなアイテム見たことナイんだけど!?」
「やー、申し訳ないっす。ゲーム内なら経験も課金額もそっちが圧倒的に上でしょうから」
 すんません、と穣は笑ってコピーし、出力された装備を得て『憂国学徒兵』たちと同格のステータスを発揮するのだ。
「ぶっつけ本番だけど……!」
「大丈夫、ズブの素人でも扱えるっす。そういう風に組み上げたんで」
「そういうもんなの!?」
「そういうもんなんす、これが」
 穣のユーベルコード、瑞風(ミズカゼ)は、コピーしたそれを扱うに足る能力を得るものである。

 それによって彼は『サイボーグジャイアント』へと立ち向かう。
「拳の一撃は受けるなよ!」
「わかってるっす! 一撃死は勘弁してほしいっすからね!」
 即座に『憂国学徒兵』たちと連携し、穣は『聖剣士』としての力を発揮する。体が軽い。紙装甲だが、しかしDPSは圧倒的だ。
「例えバグプロトコルだろうが、既存のレイドボスベースなら実装武器が通じない道理はねえっしょ」
 振るう斬撃が『サイボーグジャイアント』の体を切り裂き、ダメージ数値を走らせる。
 それは正しく廃人プレイヤーたちと同じ数値であり、それ故に足跡ながら連携でもって、理不尽な性能を持つバグプロトコルを追い詰めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

んもー
クリア不能なんてクソゲーじゃーん
いや、でもやりこめばギリ…えー無理?無理め?
しょーがないなー

●神プレイヤー
そういわばボクは神ならぬ神プレイヤー!神だけど!
チュートリアルや序盤だけパーティに入る高レベルお助けキャラ的なやつ
あでもこういうこというとラスボスに殺されたりレベルをナーフされそう!(きょろきょろ)

ロケパンが直線状の全てにダメージを与えるなら攻撃対象を増やせばダメージ減ってことだよ!
とボクらと彼の間にズラズラっと受け役の球体くんを並べてさらに…UC『神撃』で衝撃を相殺する玉突きパンチ!

なんで見えてないのに分かるのかって?ボクは神プレイヤーだからね!【第六感】



 高難易度クエストはすでに『生存確率0%の超凶悪クエスト』へと変貌していた。
 それがバグプロトコル……猟兵の言うところのオブリビオンの仕業であることは言うまでもない。
 まるでクリアさせる気のない難易度。
 バグったかのようなステータスを誇る敵。
 それらを前にしてゲームプレイヤーたちは撤退できない。ログアウトもできない。この世界、ゴッドゲームオンラインでの死は、即ち『遺伝子番号』の焼却である。
『遺伝子番号』を焼却されてしまえば、『統制機構』に生きる彼等は人権を剥奪され、労働奴隷として一生を生きることになってしまう。
「んもークリア不能なんてクソゲーじゃーん!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はそういうのってよくないなって思いながらも、しかし、ギリギリやり込めればやれるのではないかと思っていた。

 いや、普通に無理である。
 猟兵たちの力だけでもクリアできないとされているこの『生存確率0%の超凶悪クエスト』、これをクリアするためには廃人プレイヤーであるクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちを死なさず、なおかつ協力する必要があるのだ。
「しょーがないなー。このボク、神ならぬ神プレイヤー! 神だけど! が! 助太刀してあげようー!」
 言ってしまえば、自分はチュートリアルや序盤だけパーティに入ってくれる高レベルのお助けキャラ的なあれ! と胸を張ってレイドクエストのフィールドに降り立つ。
「あ、でも」
 でもこの立ち位置ってゲーム的にはどうなのだろうって思う。
 こういうポジションって、ラスボスに殺されたり、レベルナーフされたりして、役に立たなくなるのが相場ってもんである。

 もしかしたら、そういう世界の真理てきなあれそれが自分に降り注ぐかもしれないとロニはキョロキョロしてしまうのだ。
「よそ見してんなよ! 食らったら一撃死だぞ、敵の攻撃は!」
 その言葉にロニは己に迫る『サイボーグジャイアント』の巨腕の一撃を受け止める。
「ばっ、受け止めるなって!」
 だが、ロニは己の眼前にずらっと並べ立てた球体であった。
 直線的な一撃。
 それが『サイボーグジャイアント』の巨腕の一撃の正体である。
 ならば、その直線的な一撃を逆手にとって、並べ立てた球体で威力を軽減させているのだ。しかし、ここはゲームの世界。
 物理的な法則なんて、ご都合主義で無視されてしまうのだ。

 だからこそ、ロニは拳を振り上げる。
「なら、こっちは玉突きパーンチ!」
 神撃(ゴッドブロー)。
 その小節はユーベルコードであり、また同時にずらりと並べ立てられた球体へと放たれる。
 衝撃は殺されない。
 なら、己の拳もまた道理。
 衝撃と衝撃が激突し、その中心で相殺されるようにして風を吹き荒れさせる。
 けれど、すでにロニの姿は其処にはない。
 彼は中を舞うようにして『サイボーグジャイアント』へと飛びかかり、その煌めく拳を叩き込む。
「なんで見えてないのに攻撃できるんだよ!」
「そりゃ、ボクは神プレイヤーだからね! これくらいのことは出来て当然なのさ!」
「理不尽が過ぎるだろ! エイムも神かよ!」
「神ってなのったからね!」
 そう笑って、ロニは叩きのめした『サイボーグジャイアント』が、咆哮を上げながら立ち上がるのを見やる。

「さあ、中ボスクリアは目前だよー――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

明和・那樹
●SPD
この前のハロウィンイベントでTを結構散財したから実入りの良いクエストでひと稼ぎ…と思えば、まさか知り合いの救出依頼とはね
面倒事に巻き込まれないよう秘密にしてた、俺が『猟兵』である事がバレちゃうかもしれないけど…友達の危機だからね、仕方ない

よ、大将軍
随分と手こずってるじゃないか、救援に来たぜ
それと…『シデン』じゃなく『閃光のシデン』な?
基本的に俺はソロか野良PTでやってるから、他のPLを俺は知ってるかもしれないし知らないかもしれない
だから、ここはしっかりと名乗らせて貰うよ

さ、バグプロトコル狩りの始まりだ
エイル、コイツは一定のタイミングでしか決定的なダメージを与えられないようデータを改竄されてるかもしれない
アタッカーは俺に任せて、皆には守りを固めながら牽制するように伝えてくれ
どのタイミングかって?
…そんなの俺にもわからないさ
色々やって消去法で導き出すしかないよ

残るは両拳を加速させる瞬間か最中か…
廃人PLでもまずやらない死にたいバカなタイミングだけど、マキシマムカウンターでなら…!



 明和・那樹(閃光のシデン・f41777)はゴッドゲームオンラインにログインし、己の手持ちのT(トリリオン)が心許ない数字となっていることにため息を付いた。
 仕方ないことである。
 別に不正利用があったとかそういうわけではない。そこにあるのは見覚えのある購入履歴ばっかりである。全部自分のせいである。誰かのせいにしたいけど、自分の顔しか思い浮かばないのである。
「仕方ない……ハロウィンイベントで散財しちゃったからな……此処は実入りの良いクエストで一稼ぎ」
 しようかなと、思っていると己のメールボックスに救援依頼が飛び込んできている。
 高難易度クエスト。
 レイドボスクエストの救援依頼だ。よくあることだが、しかし、救援依頼の主に那樹は目を見開く。

 そこにあったのはバグプロトコルとの戦いを行う彼のゴッドゲームオンラインでの知り合いである『エイル』の所属しているクラン『憂国学徒兵』の姿があったのだ。
「バグプロトコル!? クエストが壊されてるのか……それにあいつらが」
 どうしよう、と那樹は考えた。
 猟兵に覚醒した自分のことを誰かに言うことはなかった。
 面倒事に巻き込まれてしまうことが目に見えていたからだ。けれど。そう、けれど、だ。
 猟兵であることがバレてしまうかもしれないという可能性と友達の危機を天秤にかけるまでもなかった。
 気がついたら、救援依頼を受諾し、クエストフィールドに一瞬で転移していたのだ。
「『シデン』!」
「よ、大将軍。随分と手こずってるじゃないか、救援に来たぜ」
 ニヒルに決めてみる。
 照れ隠しではないけれど、こうするって決めていたのだから仕方ない。とは言え、状況は良くない。お世辞にも。
「ありがとな……助かるぜ!『シデン』!」
 他のメンバーたちの言葉に那樹は頷く。
「……『シデン』じゃなく『閃光のシデン』な?」
 一応訂正させてもらう。
 重要なことなのだ。

「『シデン』、敵はデバフが通りません。純粋な火力で押し切らねばなりませんが、敵の攻撃は一撃死の可能性があります。極力避けて」
「いやだから」
「来るよ、『シデン』!」
「だから」
『閃光のシデン』だってば! と思わず素がでそうになるのをこらえて、那樹は構える。
「ええい、バグプロトコル狩りの始まりだ」
「うん、やろう!」
 那樹は走る。フィールドの中に降り注ぐようにして『サイボーグジャイアント』の一撃が叩き込まれる。
 凄まじ異衝撃だ。
 一撃死、というのもうなずける。それに、と那樹は理解する。
 ここまで他の猟兵達が『サイボーグジャイアント』を追い詰めているのにも関わらず、決定的な勝利演出が入らないのは何故か。

「こいつ……一定のタイミングでしかHPゲージを割らないようにデータ改竄されてる!」
 極悪である。
 まるでクリアさせる気がない。ならば説明がつく。
「『エイル』! コイツのヘイトは俺に任せて、皆には守りを固めながら牽制を!」
「どういうこと?」
「一定のタイミングじゃないとHPゲージ削りきれないような仕様になってる。クソ仕様ってやつだ!」
「じゃあ、どうする。そのタイミングが……」
「……そんなの俺にもわからないさ。ならさ、色々やって消去法で導き出すしかないよ」
 だから、と那樹は踏み出す。
 勝利を得るためには踏み出さなければならない。
 後退して得られる勝利なんてどこにもない。なら、やるしかないのだ

「そのタイミングはダメだ……!『シデン』!」
「だから、『閃光のシデン』だってば!」
 踏み込む。このタイミングが死に急ぐみたいなタイミングであることはわかっている。けれど、バグプロトコルが悪辣なるプログラムならば、このタイミングしかない。
 絶対ムリなタイミングでしか削れないようにしているのならば、その絶対を乗り越える。
 それがユーベルコードを扱う猟兵に覚醒した自分にしかできないというのならば。
「スキルクロス・リユニオン!」
「だから、それみんな使ってるけど、なにそれ!?」
「話は後だ! マキシマムカウンターなら、このクソみたいなタイミングだって……!」
 越えられる!
 交錯する巨腕とツインブレードの斬撃。
 それがすり抜けるようにして一瞬速く『サイボーグジャイアント』へと叩き込まれる。だが浅い。

 いや、違う。
 浅く見えただけだ。それはあまりにも見事な一撃であったため、浅く踏み込んだようにしか見えなかったのだ。
 まるでバターにバターナイフを入れたような、そんな手応えのない感触。
 だが、しかし那樹は理解していたのだ。
「……な?」
 瞬間、『サイボーグジャイアント』のHPが爆散するように弾けて霧散する。
 それは中ボス戦のクリアを示すファンファーレ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ネームレスベイビーズ』

POW   :    たすけて
【飛ばした手】が命中した部位にレベル×1個の【呪詛を込めた掴み痕】を刻み、その部位の使用と回復が困難な状態にする。
SPD   :    ねむたいな
【眠りに就く】動作で、自身と敵1体に【眠り】の状態異常を与える。自身が[眠り]で受けた不利益を敵も必ず受ける。
WIZ   :    くらいよ、こわいよ
レベルm半径内に【泣き声】を放ち、命中した敵から【気力や精神力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。

イラスト:イツクシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 高難易度クエストの中ボス『サイボーグジャイアント』をクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちと共に降した猟兵達。
 しかし、未だこのクエストは途中。
 切り上げることもできなければ、ログアウトもできない。
 しかし、バグプロトコルはそんな彼等に追い打ちをかけるように凄まじい数でもって迫ってくる。
「……おいおい。集団戦もあの数かよ。マジでバグってんじゃん」
『アイン』と呼ばれる少女のアバターが獰猛に笑む。彼女にとって、それは恐れではなく、戦うことへの喜びを示すようなものであったのだ。やる気は十分に思えた。
「とは言え、集団戦の敵とは思えないほどにステータスが向上しています。従来どおりのクエストを踏襲しているなら、この敵を全滅させないとレイドボスへの挑戦権が得られません」
「ああ、、どのみち退けない。なら進むしかないな」
『ツヴァイ』と『ドライ』と呼ばれるアバターが頷く。
「でも、大丈夫でしょ。助太刀してくれた人達、みんな強いし」
『フィーア』が頷いて猟兵達に手を振っている。よろしくねーと、スタンプマークが連打されているのは猟兵達への信頼の現れだろうか。単純に焦ってスタンプ連打してしまっただけかもしれない。

「……助けてくれてありがとう。本当に」
 だが、『エイル』というアバターだけは、この事態をゲームそのものとして認識していないようだった。
 彼女は亜麻色の髪を揺らして猟兵たちに頭を下げる。
 迫る数多の敵。
 その敵を殲滅し、レイドボス……さらなる強敵への挑戦権を得る、後退できぬ進軍を強いねばならぬことを悔いているようだった。
 けれど、それを待ってはくれない。
 敵は洪水のようにクラン『憂国学徒兵』と猟兵たちを飲み込まんと迫ってきているのだ――。
イリスフィーナ・シェフィールド
アスリートアースの五月雨模型店の皆様と同じ名前ですのね。
詳しくないですけど並行世界がどうのということなのでしょうか。
……まぁ気にしても仕方ありませんわね、名前がおなじだけで別の方と思えばよいでしょう。

名前のない赤子達と随分陰惨そうな名前ですわね……まぁゲームですしこちらも気にしなくてよいでしょうけど。

近づいて攻撃しようとすると飛んできた手で集中攻撃されそうですしこちらも遠距離攻撃とまいりましょう。
指定コードで雪女風の真の姿(ハロウィンSDイラスト及びイェガーカード参照)に変身して
生み出した氷の氷柱で飛ばされた手も本体も攻撃して凍らせて無力化しますわ。



 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちはそれぞれ『アイン』、『ツヴァイ』、『ドライ』、『フィーア』と名乗った。また最後の一人は『エイル』と名乗る亜麻色の髪の少女。
 その名前に聞き覚えのあったイリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は首を傾げる。
 それはアスリートアースと呼ばれる世界の『五月雨模型店』のアスリートたちと同じ名前であったのだ。
 だが、ゴッドゲームオンライン上にあるアバターの見た目は、アスリートの彼等と似通ってはいなかった。
「……まぁ樹にしても仕方ありませんわね」
 名前が同じなだけの別の人、と考えるのが一番良いとイリスフィーナは思った。
 そもそもゴッドゲームオンラインの中にログインしているわけだから、『統制機構』にある生身のプレイヤーたちの姿までは猟兵である自分たちにはわからない。

 もしかしたら、『統制機構』に存在する彼等の生身はアスリートアース世界の彼女たちと同じ姿をしているのかも、と彼女は考えるまで至ったが、しかしそんな暇をバグプロトコルたちは許してくれないようである。
「たすけて」
 それは最初か細い声のように思えた。
 だが、段々と広がっていく。
『たすけて』
『たすけて』
『たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすたすたすたすけけけけけけけ――』

「うわー……」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは辟易していた。
 この高難易度クエストを何度も周回しているのだろう。この演出も見飽きたと言わんばかりであった。
「これは……?」
「『ネームレスベイビーズ』と呼ばれる敵ですね。集団で現れて……所謂ザコ敵なのですが、ステータスを見ていただければ分かる通り……」
 なるほど、とイリスフィーナは理解する。
 なんとも陰気な名前と姿の敵。
 それに加えて演出。
 それはもうなんというか、オカルトというかホラーというか。中世ファンタジー風な世界観なのにSFも混じった上に、こうしたオカルトホラーまで混じっている。

「本当にごった煮なのですわね。とは言え、まあ、ゲームですし」
 イリスフィーナは気にしないことに決めた。
 なんだか今日は気にしないことを決めるのが多い日でもあるように思えた。
「とは言え数が多い。取り囲まれないような立ち回りが重要だ」
「なるほど。ならば、迫る敵を打ち払うまでですわ!」
「敵の攻撃はデバフを打ち込んでくるから注意な!」
 互いに背中を守ってカバーし合う。そうすることでデバフの起点となる攻撃を防ごうというのだろう。

「吹けよ氷雪、降り注げ氷柱、アイシクル・レインですわっ」
 ユーベルコードが発露する。
 敵が近づいてくるというのならば、これを打ち払う。
 雪女風のアバターへと変じたイリスフィーナが放つ氷柱が次々と迫る霊障齎す手を打ち払い、寄せ付けない。
「おおっ、すっげーな! っていうか、そのアバター変わるのって演出?」
「ふふ、どうでございましょう。新しいスキル、とでも言っておきましょう」
 そう言ってイリスフィーナはいたずらっぽく微笑んで、迫りくる敵の大群、その無数の手を氷柱で打ち払い、防ぎ続ける。

「氷柱が命中すれば、凍りつかせる……これならば!」
「ええ、敵の大群の利を打ち消すこともできましょう。このまま敵を殲滅し、『挑戦権』を獲得と参りましょう」
 そう言ってイリスフィーナは氷柱の乱舞と共にバグプロトコルの群れを凍りつかせていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
また手が飛んでくるのか…
このゲェムというか世界はこれがデフォなのか?

さて、この世界の体の慣らしもだいたい済んだな。
まだ違和感感じるが、まーなんとかなるか?

あの手に捕まると回復困難か…こんなんで困難なんてぬるいぞ(寧々「0点じゃ」)
飛んできた手をあえて『覇気』を込めた左腕の覇気で『武器受け』しはたき落とす。
ああ、確かに厳しいな。
寧々の『道術』と自前の『薬品調合』で作ったポーションで『回復力』を強化し最低限の治療をしてるが、呪詛の解呪は困難か…だから?
『ダッシュ』して一気に接近する。片手がないなら…『頭突き』で『気絶攻撃』で動きを止めて、残った右手で<一撃必殺>だッ。



「また手が飛んでくるのか……」
 迫りくるバグプロトコル『ネームレスベイビーズ』の放つ攻撃モーションに黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は嘆息する。
 先程の中ボス『サイボーグジャイアント』の攻撃も巨腕を砲弾のように飛ばしてきた。
 今回の集団戦、『ネームレスベイビーズ』たちも霊障たる手を飛ばし、こちらにバッドステータスを付与する攻撃を行ってきているのだ。
 似たような攻撃手段を持つ敵、という括りでもあるのだろうか。
「この高難易度クエストは、そういう攻撃モーションを集めたコンセプトなんだよ」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーの言葉に名捨は頷く。
 なるほど、ゲームであるからこそコンセプトは大切に、ということか、と納得する。他のクエストであればまた違った敵がいるのだと知って、少し安心する。

 それは同じ様な攻撃手段ばかりであったのならば、修業にならないからだ。
「さて、まあさっきのデカブツで体が温まって来たところだ。まーだ違和感感じるが、まーなんとかなるか?」
 体を動かす。
 迫りくる集団的。
 圧倒的な洪水じみた数である。はっきり言ってゲームバランスがおかしい。それもこれもバグプロトコルの仕業であるというのならば、一般のゲームプレイヤーたちが次々とクリアできずに『遺伝子番号』を焼却されてしまうというのもうなずける。
「あの手に捕まっちゃならねーってことだよな?」
「そうそう……って、おわー!? あんた集中攻撃されてるぞ!?」
「ん? ああ、こんなんヌルいぞ」
『0点じゃ』
 な、と名捨は己の髪の中から出てきた『寧々』と共に頷く。
 飛んでくる腕を叩き落し、覇気でもって吹き飛ばす。

「ああ、確かに厳しい攻撃だとは思うんだが……」
 はたき落とせなかった『ネームレスベイビーズ』の腕が名捨の五体に組み付く。
 たしかに体が更に赴くなった気がする。
「受けたもんはしょーがねー。なら、治すまでだよ」
 道術と薬品調合。
 2つのスキルでもって名捨はポーションを生み出し、飲み干す。回復力が底上げされ、呪詛による回復困難を払拭しようとする。
 だが、うまくいかない。
「……呪詛の解呪は困難か……」
「下がってくれ! そのままじゃ、的にされるぞ!」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちがカバーに入る。だが、名捨はそれを制して頭を振る。

「……たしかにな。だから? この程度でオレを止められるものかよ」
 名捨は一気に敵陣へと飛び込む。
 腕が仕えないのならば、と頭突きでもって『ネームレスベイビーズ』の頭蓋を叩き潰し、さらには残った腕を振るう。
 さらには仕えない腕を棒のように振り回してバグプロトコルを薙ぎ払って見せるのだ。
 凄まじい戦いぶりであった。
 敵の攻撃が名捨の体を制御困難なものとしても、まるで構わないというように五体があるのならばと彼は拳を、足を、頭蓋を持って『ネームレスベイビーズ』を一撃必殺の元に叩き潰し続けているのだ。
 その戦い振りを見てクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは、えぇ……と驚愕する。
「なーにちょっと引いてんだよ」
「いや、だって……」
「使えるもんは使う。集団戦終わったら、デバフ解除されるよな?」
「それは、そうだけど……」
 でもさー、とメンバーたちの若干引いた顔に名捨は首を傾げ、まるで構わないというように洪水のごとく迫る『ネームレスベイビーズ』たちを叩き潰し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウュル・フゥ
うわー、凄い数の赤ちゃん達だね。しかもいつもより強いときた。
でもまあ、やってやれないコトはない…かな!

とりあえず眠らされると面倒だから、憂国学徒兵の皆とお互いに眠らされた時の対応は話し合っておこう。
まあ仲間が寝てたらド突いて起こす、ってぐらいだけども。
後は眠らされる前に速攻潰すってコトで!

というわけで戦闘開始。
眠たいんだったら冷凍睡眠はどうかな!ってノリで氷衝撃波発動、辺りの赤ちゃん達を纏めて攻撃。
後は弱ってる子から止めを刺していくよ。

攻撃は基本キャットクローでの【切断】だけど、適宜ワームヘッド・テイルで【捕食】し【魔喰】でバフや回復を行ってく。
ふふふ、ここからが魔喰者の本領ってね!



『ネームレスベイビーズ』は普段であればザコ敵として一蹴される敵である。
 けれど、これだけの数を誇りながらも『ネームレスベイビーズ』のステータスはこれまで見たことのない上昇を見せていた。
 少なくともウュル・フゥ(貪り喰らうもの・f41775)の知っている『ネームレスベイビーズ』ではない。
「厄介なのは、やっぱり『眠り』のバステだよね」
「ああ、敵の数はこっちより多いのに、等価交換でこっちを確実に眠らせてくる。『眠り』のバステを受けている間は何も行動ができない。その間にあいつらの範囲攻撃がうっざいから、一気にぶっ飛ばすって手を今で使ってたけど……!」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは、それがうまくいかないだろうと理解していた。
 いつもよりもステータスが向上しているザコ敵。
 さらには面倒なバッドステータスを付与してくる特性。
 数は洪水みたく多いと来ている。

 この状況で普段と同じ戦法を取れば、瞬く間に彼等は蹂躙されてしまう。
 しかし、この状況をくぐりぬけなければ、そもそもこの先にあるレイドボスを打倒するのは夢のまた夢である。
「でもまあ、やってやれないコトはない……よね!」
「ああ、『眠り』バステは幸いに挑発モーションの、どつくだけで解除できる。なら」
「うん、そのときは遠慮なくド突いて!」
 ウュルと『憂国学徒兵』のメンバーたちは『眠り』を付与された時の対策をすでに講じていたのだ。
 バステを与えられた瞬間に挑発モーションでド突く。
 本来であればマナー的に褒められたことではないが、ダメージを伴わないやり方でバステが解除されるのならば、それに越したことはない。

「後は……眠らされる前に速攻潰すってコトで!」
 ウュルの瞳がユーベルコードに輝く。
「なにするつもりだ!?」
「最初の一撃は任せておいてよ。ちょっとストーップ♪」
 次の瞬間彼女が振り下ろした拳が大地に叩きつけられる。
 それは凄まじい衝撃と共に極低温の衝撃波を解き放ち、『ネームレスベイビーズ』たちの動きを一瞬で止めるのだ。
 動きを止める。
 それはゲームの中において最大のバッドステータスであろう。
 ウュルの魔喰戦技:氷衝撃破(アイスブラスト)は、しかも敵味方を識別しているのだ。無差別なように見えて無差別ではないのだ。

「なんつースキルだよ……」
「えげつないです。一方的に狩り放題じゃないですか、そのスキル」
「えへ♪ 便利っしょ。眠たそうにしているからさ、冷凍冬眠はどうかなって!」
 ノリである、と言わんばかりにウュルは笑う。
 彼女の放った衝撃波は確かに『ネームレスベイビーズ』たちの多くを移動不能にした。
 けれど、それでも並み居る数は如何ともし難いものがあった。
「なら、後は俺たちに任せてもらおうか!」
「ええ、流石にゲーム内最高のDPSを叩き出せる『聖剣士』の面目躍如しなきゃね!」
 踏み出す四人の『憂国学徒兵』メンバーたちの放つ聖剣が次々と『ネームレスベイビーズ』たちを打倒していく。

「弱った敵は捨て置いて! アタシがトドメ指していくから!」
 キャットクローで弱った『ネームレスベイビーズ』を切り裂き、時にはワームヘッド・テイルが『ネームレスベイビーズ』を捕食し、バフを得て傷を癒やしていく。
「ふふふ、ここからが魔喰者の本領ってね! さあ、行くよみんな! 眠ったら?」
「どつく!」
「そう! 油断なくいっくよー♪」
 そう笑って彼女は、一気に『ネームレスベイビーズ』たちを『憂国学徒兵』達と共に連携でもって倒していく。それは次なるレイドボスとの戦いにおいて得難い経験となっていくことだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット
んへへ……頼りにされちゃってますね。
ホラーな敵は苦手ですが我慢して頑張ります。

集団相手はまとめて攻撃するのが楽です!
大剣を思いっきり振って集敵スキルでミチっと集めちゃいますよ
集めると見た目がグロいことになりそうですがよくあることです……。

攻撃も兼ねてるので連打してればそのまま倒せるはずです。
眠気デバフはクエ周回中いつも我慢してるので耐えます!耐え……zzz
一度にいっぱいくらったら眠っちゃうかもしれませんがきっと猟兵と廃人プレイヤーがなんとかしてくれますね。
守ってもらえたらありがとうスタンプです!



 頼りにされることは心地の良いことだった。
 それはルナ・キャロット(†ムーンライトソードマン†・f41791)にとって最も求めるところのものであり、クラン『憂国学徒兵』たちの言葉に心が浮足立つ。
 黙っていればクールな兎獣人の姫騎士なのだが。
「んへへ……頼りにされちゃってますね」
 漏れていた。
 中身が、というか、素が、というか。
 盛大に漏れ出した本音というものをルナは抑えられなかった。確かに迫る集団的の圧倒的な数も、ホラーめいた姿も恐ろしいものであった。
 苦手な分類な敵であるのだが、それを差し置いても彼女はクラン『憂国学徒兵』たちの高レア装備に対する羨望の眼差しが心地よくてたまらなかった。

 わかることである。
 誰だって一目置かれたい。特別な存在であると思われたい。
 それは確実にある欲望の一つであろう。
 だが、それが恐怖を乗り越えるための力となるのならば、悪いところばかりが目立つだけで本質的には彼女を支えるのだ。
「集団相手はまとめて攻撃するのが楽です!」
 高レア装備グラファイトブレイドのグレードは『SSR』! 見た目は普通のグラファイトブレイドであるが、ルナの装備するそれはステータスが特別仕様なのだ。
 具体的に言うと、とってもつよい! でかい! 問答無用!

「それはそうだけど、どうやって敵を集める?」
「こうするのです!」
 ルナは『憂国学徒兵』たちの言葉に頷いて、大剣を振るう。すると彼女のスキルに寄って振るった斬撃が次元断層を生み出し、『ネームレスベイビーズ』たちを一箇所に引き寄せ、集めるのだ。
 それは見た目的にはちょっと、その……。
「うわ、ぐろっ!」
 言わなくていいのにそんなこというものだから、本当にそんなものにしか見えなくなってしまう。
 正直に言って、肉団子というか。うっ、食事に出てきたら食べられなくなりそうな光景である。

 そんな光景を、ぐっと我慢してルナは次元斬(ジゲンザン)の一撃を一塊に集めた『ネームレスベイビーズ』たちを一刀の元に切り捨てるのだ。
「ねむたい」
「ねむたい」
「ねむたい」
 だが、『ネームレスベイビーズ』たちも異常ステータスによって普段なら一撃の元に霧散する所を耐えている。耐えれればバッドステータスを付与せんとユーベルコードを放つのだ。
 その眠りのバッドステータスは凄まじい。
 抵抗することもできない。
「眠らされたら、どつくからな! 挑発モーションでも起きるのはわかってるんだ!」
「いえ!」
「えっ!?」
 ルナはそれに及ばないと手で制する。
 何をと『憂国学徒兵』たちは思っただろう。

「眠気デバフはクエ周回中にいつも我慢しているので耐えます!」
「それはリアルの話だろ!?」
「大丈夫です、これしき……耐え……zzz」
「寝てるじゃねーか! おらぁ!」
 ごすん、と挑発モーションがルナの後頭部に炸裂し、彼女は眠気から回復する。
 ルナは頭を振って、ありがとうスタンプを連打する。周回クエ中の意思疎通はやっぱりこれが一番楽でいい。
 そんなことを思いながら、ルナもまたともに戦う『憂国学徒兵』たちの眠りに落ちた後頭部を挑発モーションで小突くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
なるほど。多いですね。でも数には数です。

アマービレでねこさんを急いで大量召喚。多重詠唱結界術で耐久面も強化です。これでねむたいなのヘイトは分散するはず。眠ってしまったねこさんも更に召喚された他のねこさんが護るから問題ないのです。

なるべく消耗は避けたいですし、ここはLux animaです。
これなら最悪わたしが寝てしまっても効果時間いっぱいまでは自動的に光の粒子で敵への攻撃と味方の回復を行えるから安定性は高いはず。ねこさんも多重詠唱全力魔法で攻撃しますし。

憂国学徒兵のみんなはなるべく眠らせないように立ち回りたいですね。せっかくの楽しいゲームプレイ、動けないなんてもったいないですもんね。



 あふれるようにして『ネームレスベイビーズ』たちはクエストフィールドに殺到している。いくら高難易度クエストとは言え、この数は異常であった。
 これがバグプロトコルの仕業であり、『ネームレスベイビーズ』たちもまたバグプロトコルであることを知るのは猟兵達のみである。
 クラン『憂国学徒兵』たちは、この異常事態の原因がバグプロトコルであると認識できない。だが、此処で敗北すれば彼等の『遺伝子番号』が焼却されることだけは理解している。
 人権を剥奪された者が行き着く先は労働奴隷。
 そうなれば、人らしい生活をすることはできないだろう。死んでいるように生きているのと同じだ。
 だからこそ、抗うのだ。
「数が多すぎる!」
「互いにカバーしあうぞ!」

 その声に七那原・望(比翼の果実・f04836)は頷く。
「確かに多いですね。でも、数には数です」
 望が手にした指揮棒が振るわれると、大量の猫たちがあふれる。
 大量に召喚された猫たちが、結界術でもって強化されて『ネームレスベイビーズ』たちの放つバッドステータス攻撃に対抗するのだ。
「これでヘイトはバラつくはずです」
「どうなってんの、そのアイテム!?」
「『アマービレ』です。これで猫さんが沢山来てくれるんです」
「そういうもの?!」
 ユニークアイテムの一種だろうかと、『憂国学徒兵』たちは首を傾げる。あんなアイテムみたことがない。

 しかし、ここはゴッドゲームオンラインである。
 自分たちが知らないからと言って存在していないという理由にはならないのである。故に、今は助かったということだけが実感として残っている。
「でも、それでも眠らされてしまいますね……」
 望は召喚された猫たちが次々と眠らされていくのを見やる。しかし、さらに召喚した猫たちが、眠らされた猫たちを起こしていくのだ。
「ねむりたい」
「いいえ、眠りません。猫さんたち、眠りに落ちた人達を助けてあげてください」
 望のユニークアイテムによって『ネームレスベイビーズ』たちの眠りのバッドステータス攻撃は無効化できている。
 
 だが、このままでは消耗戦になることは目に見えていた。
 ならば、と彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「Lux anima(ルクス・アニマ)――絶望を晴らす光を……!」
 その言葉と共に無数の光の粒子が雨のように降り注ぐ。
 それは赤い粒子となって『ネームレスベイビーズ』たちに降り注ぎ、浄化の力を解き放つ。
 さらに白い光は癒やしとなって『憂国学徒兵』や望、彼女が召喚した猫たちを回復していくのだ。
「攻撃と回復を同時に行うスキル……!?」
「綺麗ですね、こんなスキル見たことがない……」
「ゴッドゲームオンラインにはまだまだ未知の領域がたくさんある、ということでしょう。折角の楽しいゲーム……」
 動けないなんてもったいない。
 あくまでこれはゲームだと望は言う。
 それは『憂国学徒兵』たちにとっても同様であったことだろう。そう、バグプロトコルさえ居なければ、これは『統制機構』の齎す停滞の、灰色の日常を彩ってくれるゲームなのだ。
「みんな一人も欠けずにクリアしましょう」
 ならばこそ、望は、このゲームに寄って『遺伝子番号』を焼却されるなんて許されないと己の力を行使するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クィル・ルーダス
次の敵は質より数ですか…あまり楽しくはなさそうですね
それに困りました、あまり多数相手は得意ではないのですが…
しかし期待されてしまった以上、それには答えたいものです

範囲攻撃を持たないので手数を増やすしかありませんね
『|貫き通すは杭撃皇女《イナーシャルキャンセラー》』を発動させ、杭撃機を撃ち込んでは次の奴に接近し撃ち込む…これを繰り返します
相手の攻撃には左腕にサイキックでシールドを張り、飛ばしてくる手を防ぐか不規則な動きで回避して杭撃機を撃ち込みます

出来るだけ彼等が一斉に襲われないようには気を付けますが…
申し訳ありません、私にはこういう戦い方しかできないので

※協力・アドリブ歓迎



「次の敵は質より数ですか……あまり楽しくはなさそうですね」
 強敵との戦いを求めるクィル・ルーダス(杭撃皇女・f39666)にとって、それはあまり心踊らないものであった。
 先程の中ボスたる『サイボーグジャイアント』との戦いはよかった。
 異常なステータスを持つ敵。
 そんな敵との戦闘は心躍るものであった。
 しかし、集団的である『ネームレスベイビーズ』たちは、数だけのようだった。しかし、それは誤りであることをクィルは理解しただろう。
「ステータスがおかしい?」
「そうです、明らかに集団敵のステータスじゃありません!」
 クラン『憂国学徒兵』たちの言葉が真実であるのだろう。

 高難易度クエストとは言え、このクエストに挑戦しようというゲームプレイヤーであれば、一体一体など問題にならない敵なのだ。
 例え、バッドステータスを付与していくるのだとしても、先制攻撃で撃破してしまえばいいのだ。
 だが、一撃で倒せない。
 耐久値が高いのか、いじられているせいで倒れないのかわからないが反撃で確実にバッドステータスを付与されてしまうのである。
「なるほど。とは言え、困りました。あまり多数相手は得意ではないのですが……」
「どうにかなんねーのかよ! あのパイルバンカーの一撃すごかったじゃねーか!」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーが言う。
 彼女の一撃は確かに凄まじものだった。目を見張る威力。覇権ジョブである『聖剣士』を越えるような一撃火力。

 それを認めているからこその期待であるとクィルは受け取ったようである。
「ならば応えるとしましょう。私は、『貫き通すは杭撃皇女』(イナーシャルキャンセラー)ッ!」
 ユーベルコードに輝く瞳。
 同時に強力なサイキックエナジーが体に纏われる。
 クィルの本領はここにある。
 そう、自身にかかる衝撃や慣性を消去する力。それによって即座に彼女はイニシアチブを無視して、行動順を繰り上げる。
 暖機運転が必要なエンジンを、一気に臨界まで引き上げるユーベコード。

 踏み込んだ彼女は一気に『ネームレスベイビーズ』へと踏み込み、そのパイルバンカーの一撃を叩き込む。一撃で倒せないほどに耐久値が設定されているのだとしても、ダメージを与えた、という結果があるのならば、彼女は慣性を無視して即座にパイルバンカーの一撃を叩き込むのだ。
 それは目にも止まらぬ連続攻撃。
 ただの一撃で粉砕したかのように他者からは見えただろう。
「あのステータスの敵を一撃で倒すのかよ!?」
「いえ、一撃ではありません。倒れるまで打ち込んだまで。ただ、それが一瞬だっただけの話ですよ」
 迫る手をサイキックシールドで受け止めながら、クィルはフィールドを一直線に走る。
 確かにクラン『憂国学徒兵』たちのメンバーが倒されないことを優先すべきであったが、しかし、彼女ができるのはこういう戦いかただけだった。

 即ち、吶喊あるのみ。
「私が敵ヘイトを引き付けます。その間に皆さんは」
「一人だけ良い格好はさせない」
「ええ、共に戦いましょう。突っ込みすぎては、一つのプレイミスが命取りになりますから」
 クィルは少し驚く。
 自分の無為無策のごとき吶喊に『憂国学徒兵』たちはついてくる。ついてくることができるのだ。
 それを認め、クィルはならばと自分の得意な戦いを繰り広げ『ネームレスベイビーズ』の群れを撃退するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
UC常時

…ちっ…間に合わなかったか
「それでもまだ終わってないよご主人サマ☆」
なら…やれる事をやるまでだな?

…よぅ憂国学徒兵
僕はぶっちゃけ最強で無敵だが…実はこのゲーム初心者でな?
まぁ…足を引っ張らないようにさせてもらうか

あー…エイル?…フュンフ…それともメリサというべきか…?(亜麻色の少女に

【情報収集・視力・戦闘知識】
敵集団の動きと状況を把握

【属性攻撃】
光風属性を己達と憂国学徒兵に

光で闇を払い風の障壁で泣き声を妨害

【空中戦・念動力・弾幕・スナイパー】
飛び回りながら念動光弾を叩き込む
【電撃・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣と太刀による連続斬撃に電撃を流し込みアイテム諸々根こそぎ強奪!!



 ゴッドゲームオンライン。 
 それは『統制機構』において停滞と既定路線を義務付けられた人々にとっての娯楽であり、また同時に心から己を開放できる場所でもあったのだ。
 だが、そのゴッドゲームオンラインの中にオブリビオン……バグプロトコルは現れ、人々の『遺伝子番号』を焼却し、労働奴隷へと堕とそうとしている。
 これを許しておけるわけがない。
 故に、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は猟兵として生身でゴッドゲームオンラインの中へとログインしたのだ。
「……ちっ……間に合わなかったか」
『それでもまだおわってないよ、ご主人サマ☆』
 カシムは共にある『メルシー』の言葉に頷く。
 確かに遅れてログインしたが、まだ高難易度クエストのフィールドへ侵入することは許されているようである。
「なら……やれることをやるまでだな?」
 カシムは躊躇いなく、『生存確率0%の超凶悪クエスト』と呼ばれたクエストフィールドに飛び込む。

 そこにはクラン『憂国学徒兵』と猟兵、そして亜麻色の髪の少女のNPCがいた。
「……よぅ『憂国学徒兵』」
「ん!? なんだアンタ、まさか入ってきたのか!? マジであぶねーぞ、このクエスト!」
「いやまあ、僕はぶっちゃけ最強で無敵だが」
「みんなそういうんだって!」
「極悪すぎますよ、この難易度」
「だろーな、だがまあ、大丈夫だ。でもこのゲーム自体は初心者でな?」
「どこから出た自信だったんだよ!」
 カシムの言葉に『憂国学徒兵』たちの総ツッコミが走る。だが、問題は其処ではない。今まさに迫る大量の集団敵。
 これを打倒さなければ、このクエストをクリアするためのレイドボスへの挑戦権が得られないのだ。

「まぁ……足を引っ張らないようにさせてもらうが……あー『エイル』?……『フュンフ』……それとも『メリサ』というべきか?」
 カシムは亜麻色の髪の少女のNPCに問いかける。
「えっ、私?『エイル』だけど、それが?」
 他の名前には反応していない。
 どういうことだろうとカシムは己の推測を引っ込め、頭を振る。
「こっちの話だ。メルシー! 魔力を回すからお前も手伝え!」
『了解だよご主人サマ♪』
 その言葉と共にカシムのアイテム扱いの『メルシー』の瞳が輝く。
 銀髪の少女アバターがフィールドに降り立つ。それは、鎌剣を構えた少女剣士のように思えたことだろう。

「対人戦術機構『詩文の神』(メルシーマホーショウジョモード)……行くぜ、敵を薙ぎ払う!」
 フィールドを飛び回るようにしながら『メルシー』が鎌剣を閃かせる。
 その度に集団敵である『ネームレスベイビーズ』たちの体が吹き飛ばされる。
 だが、異常ステータスによって耐久値の上がっている彼等を一撃で倒すには足りない。だからこそ、速度で上回るのだ。
「なんつーINT値だよ。繰り上げ行動しまくりだろ!」
「これが僕の最強で無敵たる所以よ!」
「ずっけーアイテムじゃねーか!」
「そういうもんなんだよ!」
 カシムと『憂国学徒兵』たちは言い合いしながら、しかし、迫りくる『ネームレスベイビーズ』たちを撃退し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーシア・ロクス
…敵、数多くないですか?
3P「……わたし、作戦があります。UCで敵とこっちの間にモンスターの巣を出し、壁兼削り役として使いましょう。後は抜けてくる敵を砲台で迎撃しつつ、得られた猶予で彼らから本来のこのクエストの概要…地形やトラップ、ギミック等の情報を聴き取りましょう」
2P「…でも、記憶にないモンスターの巣があったら警戒されない?」
3P「そこは…………バグの仕業という事で」


わー、大変です、あんなところにモンスターの巣がー(棒)
2P「なんだか手を出すとやばそうなモンスターが沸いてるっすー(棒)」
3P「同士討ちしている……あれもバグかもしれません。漏れてきた敵を迎撃しますから、あなた達もこっちへ!」



 集団敵『ネームレスベイビーズ』。
 それは本来であれば、ザコ敵として数だけを頼みにした敵だった。しかし、バグプロトコルとなった『ネームレスベイビーズ』たちは、別物へと変貌していたのである。
 雑魚敵にはありえないほどの耐久値。
 それに加えて圧倒的な数。
 まるで洪水じみた光景を前にしてクラン『憂国学徒兵』たちは、懸命に戦っていた。
 彼等もまた廃人プレイヤーと言われる類のゲームプレイヤーたちである。
 如何に耐久値が上がったとは言え、何度も周回しているがゆえに『ネームレスベイビーズ』たちの動き、その挙動というものを熟知していたのだ。

 とは言え、である。
「……敵、数多くないですか?」
 ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)はあまりの多さに辟易していた。
 猟兵である自分たちであるのならば、まだ対応しきることもできただろう。だが、ゲームプレイヤーである『憂国学徒兵』たちには疲れも見えている。
 ならば、ここで彼等への負担を軽減させなければならないと判断したのだろう。
「……わたし、作戦があります」
 ユーシアの中の3Pが言う。
 作戦があるのだと。
「どうするつもり?」
「ユーシアのプレイ日記~ダンジョンRPG2~(キョウフノシンボルエンカウント)をお使いましょう」
「え、あれ!?」
 ユーシアは眉根を寄せる。

 それはユーベルコード。
 しかし、この圧倒的な数で迫る敵の中に、さらに超強力な無敵徘徊モンスターの巣を召喚するユーベルコードなのだ。
 それを此処で放つ、ということはデメリットになるのではないかと思ったのだ。
「的には敵をぶつけるんです。壁役にして削り役もやってもらえれば、みなさんの負担はぐっと減るはずですよ」
「でもさ、それでもすり抜けてくるんじゃ……」
「そこはわたしたちで受け持ちましょう。得られた猶予で『憂国学徒兵』の彼等から、本来のこのクエストの概要……地形やトラップ、ギミックなどの情報を聞き取りましょう」
「でも、記憶にないモンスターの巣があったら警戒されない?」
 確かに、と2Pの言葉にユーシアは頷く。

 けれど、猶予はない。
「バグの仕様ってことにしておきましょう」
「じゃあ、もうそうしよう! わー、たいへんですーあんなところにもんすたーのすがー」
 ユーシアは棒だった。
 大根役者だった。
 もっと自然な感じで誘導できなかったのかと3Pは頭を抱えたが仕方ない。
「何!?」
「え、あんなところからエネミーがポップすることなんてあったかしら」
「バグじゃないですかねー、あーなんだか手を出すとヤバそうなモンスターが沸いてるっすー」
「同士討ちしている……あれもバグかもしれません。漏れてきた敵を迎撃します、その間に休息を」
 その言葉に『憂国学徒兵』たちは、そうなのかなぁ、と思いつつも、確かにユーシアのユーベルコードで生み出された徘徊モンスターたちによって『ネームレスベイビーズ』たちが削られていく様を見やる。

 確かにこれで少しは休憩ができるかもしれない。
「でも、なんか敵の毛色違いすぎない?」
「それもバグでしょうね!」
 バグ、なんて便利な言葉なのだろうとユーシアは思いながら、無理くりに『憂国学徒兵』たちを休ませることが出来たのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

赤ちゃんと手とか、なんかガチホラーですね!?

『エイル』さん、わたしこういうの苦手なんですー♪
とか言いつつ抱きついてみたりしちゃいましょう。

痛い、痛いですからやめてください!?
ちょっとした勇者ギャグじゃないですかー!

え、えっと。これは倒すというよりは浄化する方向でいきたいですね。
そうなりますと、今日は演奏封印でしょうか。

あ、ステラさん、さみしがらなくていいですからね。
依頼が終わったら、ちゃんとステラさんのために演奏しちゃいますから♪

さーてそれではいきますよ!
てれれてってれー【光の音叉】ー♪

これでしっかり、在るべき世界に還してあげますからね。
勇者のわたしも、たまには見せておかないと!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
さて
自己紹介も終わらせたところで真面目にメイドしましょう
ええ、メイドとは生き様
ジョブならばガンナーとご認識いただければ
|ちょっと特殊《360度オールレンジ型》ですけどね
見えてますよ勇者……?
エイル様に何しておりますか……?(ゆらり)
エイル様をご注意ください
その勇者、破滅しか持ってきませんので

いえ、永遠に演奏は封印いただければ私としては天にも昇る気分なのですが

ともあれ
皆様の背後はお任せくださいませ
『ニゲル・プラティヌム』を両手に
【アウクシリウム・グロウバス】で支援します
誰がやべーメイドですか
出来るメイドとお呼びください!

ルクス様は常に物理と魔法で戦えばいいのに
何故演奏したがるのか……



 迫りくる無数の『ネームレスベイビーズ』たち。
 その光景はオカルト、ホラー、そういうエッセンスを凝縮したようなものに思えた。少なくともルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)にとってはガチであった。ガチホラーである。
「赤ちゃんと手って、その組み合わせ不気味すぎませんか!?」
 ルクスは恐怖に青ざめたまま『エイル』へと抱きつく。
「『エイル』さん、わたしこういうの苦手なんですー♪」
 きゃ、とルクスは大げさにNPCである『エイル』に抱きつく。
 亜麻色の髪の少女のNPCは、そんなルクスを跳ね除けるでもなく、されるままであった。
「なら、私の後ろにいてくださいね。お守りしますから」
「女の子なのに男前ですね! 守られまーす!」
 勇者。
 勇者としての矜持は何処に行ったのだろう?

 そんなルクスの背後にゆらりと揺らめく影があった。赤い瞳の残光が、眼前に迫る『ネームレスベイビーズ』たちよりも、よほどホラーだな、とクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは思ったが口に出さなかった。
 というか、口に出す余裕がなかったのである。
 せまる『ネームレスベイビーズ』たちの大群への対応に追われていたからだ。
「見えてますよ勇者……?『エイル』様に何しておりますか……?」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)、メイドであった。
 自己紹介を終えた真面目なメイドであった。真面目? 真面目ってなんだっけ? と思わずには居られない自己紹介であったが、しかし、クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは誰ひとりとしてツッコまなかった。
 ツッコんだら、絶対にヤバイ、と理解していたからだ。

「ひゃっ!? ってステラさん、冗談ですよ! 冗談! ちょっとした勇者ギャグですから背中に銃口ぐりぐりしないでください!? 痛い、痛いですから!?」
「『エイル』様ご注意ください。その勇者、破滅しか持ってきませんので」
 主にステラの耳の破滅的な意味で。
「だ、だいじょうぶですって! 今回は倒すというよりも浄化する方向で行きたいんです。そうなりますと、今日は演奏封印しないとですけど……」
 ステラさんは寂しいですよね、とチラ見する。
「いえ、永遠に演奏は封印していただければ私としましては天にも上る気分なのですが」
 ステラはにべにもないことを言う。
「あ、あの、でも、どうやって……? 敵のステータスは異常なんですよ?」
『エイル』の言葉にルクスは、にっこり微笑んで手にした音叉を掲げて見せる。

「てれれてってれー『光の音叉』ー♪」
 何やら青い猫型ロボットがお腹のポッケから取り出すような効果音が響いた気がするが、気の所為であろう。気の所為ったら気の所為である。
 これ以上は権利的にヤバイのでアウトである。
「あ、ステラさん、寂しがらなくていいですからね。この戦いが終わったら、ちゃんとステラさんのために演奏しちゃいますから♪」
 んねっ、とルクスは微笑む。
「盛大にフラグ立ててんなーあっち」
『憂国学徒兵』たちは、そんなルクスとステラのやり取りを見て思った。

 それは所謂死亡フラグってやつであったが、この場合はステラの耳の死亡通知みたいなもんであった。
「……ともあれ皆様の背後はおまかせくださいませ」
「あっちはあっちでやべーメイドだし」
「ゴッドゲームオンラインの裾野は広いな」
「やべーメイドにやべー演奏家のコンボね。やばいわね」
『憂国学徒兵』のメンバーたちは口々に好き勝手に言っている。なんていうか遠慮がない。本当に初対面かと疑うほどであった。

「誰がやべーメイドですか、出来るメイドとお呼びください!」
「これでしっかり、在るべき姿に還してあげますからね! 光の勇者であるわたしも、たまには見せておかないと!」
 勇者としてのアイデンティティが喪われてしまうからね。
「ルクス様は常に物理と魔法で戦えばいいのに。何故演奏したがるのか……」
「逃げるからじゃないです?」
「逃げないと鼓膜が死にます」
「……それは、その……」
 ご愁傷さまです、と『エイル』に見送られ、ステラは銃撃と光の音叉が見せる輝きの中へと飛び込んでいくのだった。
 それは盛大な死亡フラグ。
 けれど、メイドは死なない。鼓膜が頻繁に死ぬだけである――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明和・那樹
●SPD
別にいいよ、困った時はお互い様
知り合いの遺伝子番号が剥奪されるのを黙って見過ごすほど、俺は薄情じゃないだけだ
(それに父さんが皆の摘発に関わるかも…だし)
感傷に浸るのはここまで
父さんは父さんで僕は僕だ
緊張が緩まない内にこのクソクエを終わらせないと

さっきの中ボスで解決法はあってもクリアさせる気が全く無いのは分かった
この異常な湧き方もその一端で、本命のレイドボスまで辿り着けても消耗し尽くすという考えだろう
なら、手早く最小の消耗で片付けるだけ
聖騎士の本領発揮だ
眠りの状態異常を与える動作を取られる前にツインブレードのアクセルコンボで纏めて駆逐する
間に合わなければグラファイト・スピードを交えるぞ



 本当にありがとう、とクラン『憂国学徒兵』たちのメンバーは言った。
 高難易度クエストの周回は、本来彼等ほどの実力があれば問題なくこなせるものであったはずだ。だが、バグプロトコルの発生によって、この高難易度クエストは『生存確率0%の超凶悪クエスト』へと変貌していたのだ。
 この難易度では如何に彼等とて無事ではすまない。
 この事態を認識し、打破することができるのが猟兵としての力であるというのならば、明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は己の力を振るうことに躊躇うことはなかった。
「別にいいよ、困ったときはお互い様。知り合いが危ないってのに、黙って見過ごすほど、俺は薄情じゃないだけだ」
「『シデン』!」
「『閃光のシデン』な」
 そのやりとりがいつも通りであることに那樹はホッとする。

 この状況にあっていつものやり取りができるのならば、クラン『憂国学徒兵』たちの精神状態は安定しているといえる。
 ならば、このまま戦い続けることもできるだろう。
「さっきの中ボスで解決法はあってもクリアさせる来がまったくないのはわかったよな?」
「ええ、このザコ敵の異常な出現率、加えて耐久値の上昇……これもその一端なのでしょう?」
「そういうこと。本命のレイドボスまでたどり着けても、消耗しきってしまう」
「回復アイテムを温存しても、この分ではボスを倒せるかどうかも妖しいな」
 その言葉に那樹は頷く。
 これはバグプロトコルが仕掛けた『遺伝子番号』の焼却のための罠だ。

 確かにゴッドゲームオンラインは違法とされている。
 けれど、こんなやり方が許されて良いのだろうかとも那樹は思う。
 己の父は警察機構に準ずる組織の人間だ。
 もしも、これが『統制機構』の仕掛けたものであるというのならば、皆の摘発に父が関わるかもしれない。そう思えば……。
 いや、と頭を振る。
 自分は自分だ。
「このクソクエを終わらせよう」
「なんとか敵の波状攻撃は防げているけど……」
「消耗させようって言うんなら、手早く最小の消耗だけで片付けるだけだ。ならさ、『聖剣士』の本領発揮じゃないか?」
 那樹は笑う。
 いや、『閃光のシデン』としてニヒルに笑ったつもりだった。

「眠りの状態場を与える動作をとられる前に!」
 那樹は踏み込む。
 手本を見せるように手にした双剣より放たれる衝撃波。
 それはツインブレードのアクセルコンボ。一度開始してしまえば、圧倒的なDPSを叩き出す『聖剣士』が覇権ジョブと言われるゆえんである。
 そして、那樹は自身の防具が紙装甲であるがゆえに、その速度を圧倒的なまでの水準にまで引き上げていたのだ。
「やっぱり、スピードはぴかいちだな!」
「伊達に『閃光』とは名乗ってないよ」
「『シデン』、カバーは任せろ!」
「だから、『閃光のシデン」だってば!」
 ああ、と思う。こんな状況にあっても、ゲームは楽しい。それは『憂国学徒兵』たちにとってもそうなのだろう。

 灰色の日常の中にあっても、虹のよに輝く刹那があるからこそ、自分たちはこのゴッドゲームオンラインの中でこそ充足を得るのだと那樹は改めて思うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
バグってはいるが流れは従来通りみたいっすね…
慣れた反応なのは流石歴戦ってとこっす。

小型の鳥型機械兵器群を召喚。機械なら奪う気力もクソもねえっすからね。
衝突すると爆発し、近くの同兵器も誘爆させるよう『フローライト』で設定。これを敵に放つっす。
ああ、参加者は離れるかタンク役の後ろ行った方がいいっすね。
光とか衝撃が来ると思うんで。ラグったらすみません。
数?ざっと600は放ちましたけど。

…というか、本来純粋に遊んで終わりだったのを横槍入れてきたバグが悪いに決まってんじゃねえすか。
だったらこの先も楽しんでもらいましょう。
難易度盛るからには|報酬《ドロップ》も期待できるってもんでしょ?



「高難易度クエストってことでしたよね、これ?」
 安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)の言葉にクラン『憂国学徒兵』たちは頷く。
 確かにバグプロトコルによってクエストは変容させられている。
 だが、流れは変わっていないように思えたのだ。
 つまり、今迫っている『ネームレスベイビーズ』たちの群れは、ステータスこそ異常であっても、クエストの流れは変わっていない。
 となれば、この敵を蹴散らせばクエストの最終ボスの元へと至る道が必然現れるということだ。
「そういうこと」
「この集団敵を倒すことが『挑戦権』に繋がるんです」
 穣は頷く。

 確かに廃人プレイヤーと呼ばれるだけあって、敵が異常な高さのステータスを持っていても、なんなく対応している。
 消耗はしているが、それも他の猟兵達によって軽減されている。
「流石は歴戦って感じっすね」
「そんなんでもねーよ。慣れたらみんなできることだ」
「そういうものっすかね? じゃあ、少しでも楽に突破できるようにがんばるっすよ」
 穣の瞳がユーベルコードに輝く。
 瞬間、彼の手元から飛び立つは小型の鳥型機械兵器群であった。
 エレクトロレギオンと呼ばれるスキル名で呼ばれるそれは、一気に飛び立ち、『ネームレスベイビーズ』へと殺到する。
 穣によって設定された機械群は、すぐさま激突し爆発していく。

「自爆攻撃かよ!」
「敵はこっちの気力を奪おうとするっすからね。そんなのに付き合って消耗させられるなんてバカバカしいっす」
 だから、機械群に相手をさせるのだと穣は言う。
 けれど、『憂国学徒兵』たちは少し表情を曇らせる。
「……あのさ、そのスキル、一回でどれだけ出せるの?」
「これっすか? ざっと600っすかね?」
「600!?」
「え、少なかったっすか?」
 多いわ! と『憂国学徒兵』たちから穣は総ツッコミを受ける。確かにゴッドゲームオンラインは多くのスキルや、複合スキルなどが随時生まれるゲーム世界である。
 とは言え、穣の放った機械群の数は凄まじかったのだろう。

 あまりのことに自爆兵器と変貌した機械群は、まるで絨毯爆撃のように『ネームレスベイビーズ』たちを駆逐していくのだ。
 凄まじい爆風でラグが生まれる程の光景。
 それをみやり、穣は納得する。
「殲滅できそうっすね」
「いや、やりすぎ!」
「そんなことないっすよ」
 だって、と彼は思う。
 ゴッドゲームオンラインを楽しんでいたゲームプレイヤーたちに横槍を入れてきたのがオブリビオン……バグプロトコルである。
 なら、問答無用でぶっ飛ばすのが猟兵としての己である。
 それに、これがゲーム世界であるというのならば、この先も楽しんでもらいたいと思うのだ。

「それにこの難易度っす。|報酬《ドロップ》だって期待できるってもんでしょ?」
 何をおいてもクエストには報酬があるものである。
 だったら、と穣は爆風遊ぶ中笑うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎

まーまーそう深刻にならないで
ふつーデスゲームってリアルでも死んじゃうやつじゃん?
それにくらべたらこのゲームはハーフ…半分?いや、そう、いうなれば半殺しゲーム!
負けても精々残りの生涯を塵肺に喘ぎながらチンチロリンしか娯楽のないような地下で地下帝国建設に従事させられたりするくらいさ!
ワンチャンあるあるー

●ボクのパンチは|0F《フレーム》で出る
じゃあボクが散らすからそれを処理してね!
【第六感】まかせに伸ばされる手を縫うようにMOB集団のなかほどに移動してからUC『神パンチ』でドーーーーンッ!!
ボクたちもキミたちのリアルにはまだ干渉できないしできるだけ死なないようがんばろー!



 バグプロトコルによる高難易度クエストの改竄。
 それによって絶対にクリアできない条件を付与されたクエストに巻き込まれたクラン『憂国学徒兵』たちは『遺伝子番号』焼却の危機に瀕していた。
 それは『統制機構』に生きる彼等にとって深刻過ぎる問題であった。
 そう、それは人権を剥奪されることとであり、死ぬことと同義であったからだ。
 しかし、そんな深刻な状況を笑い飛ばすようにしてロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は言う。
「まーまーそう深刻にならないで」
「いやなるだろ。何いってんだ」
「えーでもふつーデスゲームってリアルでも死んじゃうやつじゃん?」
 謎の引き合いである。
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは、ロニの言葉に一応頷く。まあ、確かにデスゲームってそういうもんである。
 普通に助からないやつである。

「それに比べたら、このゲームはハーフ……半分? いや、そう、いうなれば半殺しゲーム!」
「物騒だな!」
「ひどい目にあうことは確定じゃないか」
「半殺しも嫌なんですが」
「というか人権剥奪されてるんだから死んだほうがマシって状況じゃない?」
 やんややんやとロニに総ツッコミが飛ぶ。
「でもさー、負けてもせいぜい障害を塵肺に喘ぎながらチンチロリンしか娯楽のないような地下で地下帝国建設に従事させられたりするくらいさ!」
 ワンチャンあるよ! とロニは笑っている。
 冗談ではない。
「よくない! まじで!」
「そっかー。ならどうしよっか。まあ、安心していいよ。さっき言ったことは多分怒らないからさ」
 そうカラっと笑ってロニはせまる『ネームレスベイビーズ』へと飛び込んでいく。

 彼にせまる手。
 たすけて、と叫ぶ手。
 それを前にしてロには己に触れるか触れないか。その瞬間に拳を叩き込む。
 彼の拳は0秒で打ち込まれる無限回のパンチ。そう、いうなればチートみたいなスキルである。いや、十分にチートであると認識されるには十分な光景だった。
 なんだ、0秒に打ち込まれる無限のパンチって。
「どうなってるかわからん! 何がどうなってぶっ飛ばしているのか全然わかんねー!」
「あはは! 悪い夢でも見ているような気分になるでしょ!」
「敵じゃなくてよかったって心底思ってる!」
「たしかにね! まあ、がんばってよ! ボクは死なないけど、君たちは倒される可能性だってある。キミたちのリアルにはまだボクたちも干渉できないし」
 だから、なるべく死なないようにがんばろー! と他人事みたいにロニはまた笑いながら『ネームレスベイビーズ』たちを刹那の内にぶっ飛ばしていくのだ。

 そのすさまじい戦いぶりに『憂国学徒兵』たちは思った。
「もう全部あいつに任せていいんじゃない?」
「ダメダメ、ここから先はキミたちの力だって必要なんだから!」
 ロニは雑にぶっ飛ばした『ネームレスベイビーズ』の群れの中から手招きし、さらなるボスの元へと『憂国学徒兵』たちを導くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
アバターとホビーは似ているのかもしれないわね
……だから、こんな風に気配を感じられるのかしら
一緒に戦う仲間があなた達で良かった
体と心に力が湧いてくるわ

相手は闇の中で効果が増す技を使うのね
ならば暗闇を照らす月の力で対抗よ

『水精の剣』から光刃を放ち敵を『ぶっ飛ばす』わ
こうやって気合を入れるって、友達から習ったの
泣き声ごときで怯んだりしないわ



 気力奪う泣き声が響いている。
 クエストフィールドに溢れる集団敵『ネームレスベイビーズ』たち。彼等のスキルは相対するプレイヤーたちの気力を根こそぎ奪うものであった。
 本来であれば、『ネームレスベイビーズ』は一撃でケチらせる程度のザコ敵であった。
 数を頼みにしてくる敵であれば、スキルでもって一蹴できる。
 けれど、ステータス異常でもって廃人プレイヤーである彼等の一撃でもって倒しきれない『ネームレスベイビーズ』は数という暴力を正しく振るっている。
 その勢いに一度飲み込まれてしまえば、体勢を整えることなどできはしないだろう。
 故に、クラン『憂国学徒兵』たちは力を振り絞って、ザコ敵と侮っていた『ネームレスベイビーズ』たちを打倒しているのだ。

 そんな彼等と共にクエストを進行しながら薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は初めて訪れる世界であれど、どこか安心感を覚えていた。
 心が安定している。
 心強いと思っている。
 それは共に戦う『憂国学徒兵』たちのアバターについた名前に由来しているのかもしれない。
 彼女の知る『アイン』を始めとした名前を持つ『憂国学徒兵』たちは、どことなくアバターから放たれる気配が似ているように思えたのだ。
 初めてだけれど、初めてではない。
 そんな奇妙な感覚を互いに感じているのかもしれない。
「一緒に戦う仲間があなた達でよかった」
「そりゃ、こっちのセリフだぜ。なんだか初めて会った気がしねーよな!」
 振るわれる攻撃。
 受け止め、返す刃で敵をねじ伏せていく。

 この先にも強敵が現れることが予見されている。最終ボス。このレイドクエストのボスであるバグプロトコルは、これまでとは比較に成らぬ強力なステータスを持っていることだろう。
 けれど、それでも戦わねば、彼等の敗北は必定。
『遺伝子番号』を償却されればどうなるかなど言うまでもない。人権の剥奪。それによる労働奴隷として一生を生きることになる。
 なんたる悲惨だろうか。
 そのような境遇に、静漓は彼女の知る同じ名前を持つ彼等を堕とすわけにはいかないと、フィールドに満ちる暗闇を切り裂くように水晶の刀身の中で水が揺らめく『水精の剣』を掲げる。
 月と水の力を宿す刃。
 その刃がユーベルコードの輝きに満たされていく。

「月よ、月よ」
 それは刀身の輝きがそのまま月光へと変じたように輝き、暗闇を切り裂いていく。
「フィールド属性変更スキル……!?」」
「『ぶっ飛ばす』わ」
 静漓の静かな声色とは裏腹な言葉に『憂国学徒兵』たちは、吹き出してしまう。あまりにもキャラクターが違いすぎる言葉がツボに入ってしまったのだろう。
 吹き荒れるようにして三日月の光刃が『ネームレスベイビーズ』たちを切り裂いていく。
 霧散していく集団敵を前に静漓は『憂国学徒兵』たちが何故笑っているのかわからなくて首を傾げる。
「どうして笑うの?」
「い、いや、だって……なんだかクールなねーちゃんなのに、そんな言葉が飛び出したから」
 悪気はないんだ、と『アイン』が目尻の涙を拭って言う。

「そう。こうやって気合を入れるって、友達から習ったの」
『ネームレスベイビーズ』たちの泣き声に怯んだりはしない、そういうように彼女は手にした剣を掲げ、暗闇を切り裂く。
 その様子に『アイン』は目を細めて笑う。
「いい友達じゃねーの。気が合いそうだぜ」
「そうかもしれないわね。さあ、行くわよ。次は」
「ああ、最終ボスだ。これまでのことを考えれば……」
 容易い相手ではないだろう。けれど、静漓は大丈夫だ、と確信する。

 彼等と共に戦うのならば、と。
 アバターから伝わる似た気配。彼女の友達を感じさせる、その気配が共にあるのならば。
 何も恐れる必要はないのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『バグ・ヘビーウェイト』

POW   :    タンク・オブ・スティール(バグ)
装備の【重量と呪いによるマイナス効果】ペナルティを無視できる。また、[重量と呪いによるマイナス効果]の合計に比例して、全装備の威力と防御力が強化される。
SPD   :    スキルクロス・リユニオン(バグ)
【武器巨大化】と【武器変形】と【瞬間強化】と【回復阻害攻撃】と【アクセルコンボ】を組み合わせた独自の技能「【アバランチ・クラッシュ(バグ)】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
WIZ   :    ダンジョンマスター・プロトコル(バグ)
【t0りRi怨(バグ電子通貨)】の消費量に応じた強さの【バグモンスター(マスター指定の👾)】や【致死トラップ】を召喚する。[バグモンスター(マスター指定の👾)]や[致死トラップ]が敵を倒すと[t0りRi怨(バグ電子通貨)]を獲得する。

イラスト:nno

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鏡繰・くるるです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『ネームレスベイビーズ』たちを蹴散らしたクラン『憂国学徒兵』と猟兵たち。
 彼等の快進撃は続く。
 けれど、猟兵たちにはわかっている。この先に座す最終ボス。それはバグプロトコルであり、また本来の高難易度クエストのボスの座を奪った敵は、まったくもってクリアさせるつもりのないステータスを持って現れることを。
「……な、なんだあの敵……?」
「初めて見るタイプです。新種、なんでしょうか?」
「どう考えても一筋縄ではいかない感じだな。とは言え!」
「ええ、私達には仲間がいる。心強い仲間がね」
『憂国学徒兵』たちは猟兵たちを見やる。
 廃人プレイヤーである自分たちだけでは、このクエストはクリアできない。けれど、猟兵達だけでもまたそれができないことを理解している。
 これは共同戦線である。

 一時のパーティ結成。
 けれど、確かに感じる戦友としての感情。
 それが一方通行でないことを確信した彼等の表情をみやり、猟兵たちは決意する。
「生きましょう。『戦いに際しては心に平和を』」
『エイル』の言葉と共に『憂国学徒兵』と猟兵たちは、この『生存確率0%の超凶悪クエスト』の謳い文句をこそ破り捨てるべく最終ボスのフィールドへと踏み込むのだった――。
クィル・ルーダス
…なるほど、共に戦いますか
たまにはそれもいいですね、問題はありません
ならば、私のやるべきことは…

私も前に出て前衛の一人として戦いましょう
左腕にサイキックでシールドを張り、そらすことで回避します
いわゆる回避盾ですね
そして協力して隙を作り出し、この一撃を加えましょう

…大体この世界での戦いもわかってきました
ならばこのUCは、この世界でなら明確に力を発揮するでしょう
本来なら私の杭撃を通すための力ですが、ゲームとして設定されているなら、このような敵に標準的に組み込まれているこの耐性も破壊できるはずです
予知を見るに、あなた方はこれを準備していた筈
ならば、私はその準備が無駄ではなかったと、あなた達も確かに戦士なのだと証明しましょう
彼らの努力を確実に向こうへと通すそのために!
私の攻撃と共に壊れなさい、|バッドステータス耐性《・・・・・・・・・・》!|壊杭撃《ブレイクバンカー》ッ!

※協力・アドリブ歓迎



 戦うということは己の生存を賭けることである。
 であるのだとすれば、戦いとは元来孤独なものであるはずだ。しかし、人に言葉あり、意志あるのならば、其処には共に立つ者という立場が生まれる。
 それがパーティである、というのならそれは一種の運命共同体であったことだろう。
 少なくともクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは猟兵たちをそうした運命共同体であると定めているようであると、クィル・ルーダス(杭撃皇女・f39666)は理解していた。
「いよっし! 行くぜ、この極悪クエストのラスボス!」
「ええ、確かにステータスはなにかの間違いではないかと思うほどでありますけれども」
「それでも戦わねば生きられないというのなら」
「戦いましょう。誰一人欠けること無く!」

 彼等の言葉を聞き、クィルは彼等が少しも怯えていないことを知る。
「……なるほど、共に戦いますか。たまにはそれもいいですね、問題ありません」
 彼女は一番に駆け出す。
 フィールドに存在するラスボスことバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』は、その小さな体躯には似合わぬ凄まじく巨大な大剣めいた武装を振り上げている。
「――」
 言葉無く。
 けれど、そこには意志もない。
 あるのはただ目の前に動く存在を打ち倒すという決定づけられた行動のみ。

 振るわれる鉄塊じみた大剣。
 どう考えても身の丈にあっていないが、それまるで重量などないかのように振り回しているのだ。
「敵の一撃は強力無比。やはり変わることのない一撃死ということですか」
「そういうこっった! あの一撃は受け止めるなよ、逸らすか、躱すか! 掠っただけでもHPごっそりもってかれるぞ!」
 その言葉にクィルはサイキックシールドを左腕に張り巡らし、振るわれる一撃を逸らすことで直撃を避けるのだ。
 振り抜かれた大剣の一撃が大地を抉り、粉塵を撒き散らす。
 視界がまるでない。
 だが、そんな視界にあってもなお、『バグ・ヘビーウェイト』は大剣をクィルへと振り下ろす。
 その一撃は不可避なる一撃であった。
 けれど、その一撃を『憂国学徒兵』のメンバーの一人である『ドライ』が聖剣でもってクィルと同じように受け流す。

「うまく反らしたつもりだったが……! HPがそれでも削られる! あなたたちのように完璧にはできないようだ」
「ですが、助かりました。協力いたしましょう。敵の隙を生み出し、一撃を」
「ああ、任せておけ! HPギリギリまであがき続けてやるさ!」
 クィルと『ドライ』は二手に分かれて粉塵舞う戦場を走る。
 視界が悪い。
 いや、違う。視界が悪い、と感じるのはクィルがこの世界に生身でやってきているからだ。
 故に視界が遮られるとどうしても現実世界での戦いに引っ張らられる。
 此処がゲームの世界である、というのならば。

「ルールがある……大体この世界での戦いもわかってきました」
 煌めくクィルの瞳。
 此処がゲーム世界であるというのならば、己の攻撃は確率という名の不確定要素によって支配されている。
 であるのならば、如何に視界が悪いのだとしても。
「ターゲットアシスト機能……!」
 そう、ゲームでは確実に実装されている機能。
 ターゲットを見失っても、ターゲットリングがそこに現れている。
 その一点をこそ狙うべきなのだ。故にクィルのユーベルコードはあらゆる防御、耐性、無敵能力の尽くを食い物にする。

 そこにルールがある限り、逃れ得ぬ必定。
「あなた方は、ラスボスを前にしてこれを準備していたはず……つまり、耐性の破壊。バッドステータスで敵を雁字搦めにして、敵に利を与えない戦い方をするつもりだった」
「ああ、だけど、敵のバッドステータス耐性は異常だ! 通らない!」
「ええ、ですから」
 その準備こそが無駄ではなかったと、『憂国学徒兵』たちこそもまた確かな戦士であったのだと証明するようにクィルの手にしたパイルバンカーが剣呑なる輝きを放つ。
 彼等の努力は正しく報われるばかりだ。
 ならばこそ、クィルの瞳は輝く。

「――」
「理解しているようですね。己のバッドステータス耐性を知るからこそ、私の前から逃れない。かわそうとしない。故に、私の攻撃と共に壊れなさい」
 振り抜くパイルバンカーの一撃。
 鉄杭の一撃が放たれ、それは証明する。
 何を、と問う者がいたのならばクィルは答えるだろう。
 彼等の、『憂国学徒兵』たちの戦士としての正しさを。

「|バッドステータス耐性《・・・・・・・・・・》|壊杭撃《ブレイクバンカー》ッ!」
 放たれる一撃は轟音と共に『バグ・ヘビーウェイト』の体に施されたバッドステータス耐性を確実に貫く。
 そう、クィルが敵の攻撃を確実に通すために踏み込んだように。
『憂国学徒兵』たちが己達が確実に勝利できるように用意したことが間違いではなかったように。
 クィルの一撃は絶対に引き剥がせぬはずのバッドステータス耐性というパラメーターそのものを打ち砕く。
「努力が報われるとは限りませんが……ですが、その努力を確実に実らせるのは、やはり人の意志なのです」
 そう告げるようにクィルの一撃は『バグ・ヘビーウェイト』のラスボスたるを支えるパラメーターの一つを穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
うん、呪詛の解呪もすんだようだな。
左腕もまた動くし、無問題だな。

ところで、こいつも腕を飛ばすのか?
なんだ飛ばさないのか…

連携か…俺は前衛でいく。
アタッカーだな。

百里神剣とアーラーワルの剣と槍の二刀流でいく。
『属性攻撃』炎を百里神剣に、アーラーワルには『毒使い』で毒属性を付与し、『2回攻撃』で剣による『斬撃』で『焼却』し火傷と、槍のよる『串刺し』で毒を与える。いくらステータス高くても、スリップダメージはきついだろ?
攻撃を『見切り』回避しつつ、隙を見て<牙猟>を叩き込む。



 猟兵のユーベルコードが煌めく。
 その一撃によってバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』の持つバッドステータスへの耐性は砕かれ、本来の高難易度クエストにおいて必須なるバッドステータス付与の効果が通るようになったことをクラン『憂国学徒兵』たちは知る。
「バッドステータスが乗る……! これなら!」
 本来、高難易度クエストにおいてバッドステータス付与は必須だ。
 しかし、バグプロトコルによって『生存確率0%の超凶悪クエスト』へと変貌したこのクエストのレイドボスはバッドステータスを無効化する耐性を有していたのだ。
 これによって猟兵達が駆けつけなければ、クラン『憂国学徒兵』たちは全滅し、『遺伝子番号』は焼却されていたことだろう。

「うん、呪詛の解呪もすんだようだな」
 大量のザコ敵『ネームレスベイビーズ』たちの攻撃に寄って躰のあちこちがバッドステータスまみれになっていた黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は漸く、己の五体が満足に、それこそ十全に動くことを理解する。
「左腕もまた動くし、無問題だな」
 しかし、と名捨は迫る『バグ・ヘビーウェイト』を見やる。
 体躯は子供のそれである。
 であるのに、その手にしているのは身に余って有り余る大剣である。重量制限や、その重量ゆえのマイナス効果を持っているはずであるが、しかし『バグ・ヘビーウェイト』はそのマイナス効果を打ち消して大剣を凄まじいステータスで振り抜いてくるのだ。

「こいつは腕を飛ばすのか?」
「飛ばさないって! けど、こいつの攻撃は単純に重いんだよ! 受けたらダメだ!」
「なんだ飛ばさないのか……とは言え、またガード不能技ってわけか。好きだな、こいつらも」
「いつものことさ。高難易度クエストっていうものはね!」
「連携していくぞ。バッドステータスが乗るなら、ずっとやりやすくなっているはずだ」
 名捨はバッドステータスのことはよくわからない。
 けれど、それが戦局を有利なものとするのならば、彼等の言葉を信じるしか無い。
「俺は前衛でいく。アタッカーだ」
 手にした剣と短槍。
 この二刀流でもって名捨は真っ向から『バグ・ヘビーウェイト』へと迫る。
 振るう斬撃は振るわれる斬撃と交錯し火花を散らす。

 凄まじい攻防である。
「バッドステータスっていうのは、即ち火傷や毒ってことだよな?」
「そうだけど、そんな武器持ってるのか?」
「あるんだよ、これがな!」
 名捨は手にした神剣による斬撃で持って炎を宿し、その炎で持って『バグ・ヘビーウェイト』の躰へと火傷を付与する。さらに槍の一撃が入れば、それは毒を与える。
 どれだけステータスが高かろうが、バッドステータスによるスリップダメージは蓄積されていく。
 むしろ、高ステータスを保持しているからこそ、スリップダメージは貴重なダメージソースとなるのだ。
「――」
「何言ってるのかわからんねーよ……けどさ」
 名捨は踏み込む。

「バッドステータスで動きが鈍ってる。これなら届くぜ、百龍拳…奥義…牙猟天星!!」
 正拳突きの一撃。
 それは百里離れた場所の龍を倒した伝説を持つ秘技。
 牙猟(ガリョウ)と呼ばれるユーベルコードの一撃。しかし、その一撃は外側には現れない。拳の一撃は内部をずたずたに破壊する。
「これもまたスリップダメージだろう。動く度に走る激痛に、消耗していきなッ」
 名捨の拳に吹き飛ぶ『バグ・ヘビーウェイト』。
 彼は黒い髪を振り乱し、さらに敵を追い込むために『憂国学徒兵』たちと共に消耗戦を強いるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

超級職・征夷大将軍
擬似的なPvPか。こういうのも悪くない。
さあ、我が剣を受けてみよ。

征夷大将軍巨竜神鎧をキャバリアの様に操り、参戦。
一器刀千を念動力で飛ばして攻撃するぞ。
UC天地無双剣は、敵のあらゆる攻撃を返し刀で受け止められる。そう、どんな攻撃でもだ。
更に、神速の突きで反撃も可能だ。
これで憂国学徒兵のメンバー達を守るぞ。

アタッカー兼……タンクと言うよりもディフェンダーやガードナーと言った所か。



 バグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』は、その小さな体躯とは裏腹な巨大な大剣を自在に操って猟兵やクラン『憂国学徒兵』たちへと攻撃を仕掛けている。
 その一撃一撃が重たく、ステータスが異常に高まっているがゆえの威力であることは、もはや疑いようがない。
「あれだけの威力のアイテムであるというのに、まったくデメリットらしき部分が見当たらないというのは一体全体どういうわけなのでしょうか」
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーの一人が首を傾げる。
 そう、本来ならあれだけのステータス強化を受けているのだ。
 なんらかのデメリットが発生していなければ、ゲームバランスというものが崩壊してしまう。

 だが、『バグ・ヘビーウェイト』は、そのようなデメリットをまるでないかのように振る舞っているのだ。
「とは言え、バッドステータス耐性は消失しているのであろう?」
 超級職・征夷大将軍(《コンクエスト・アークジェネラル》・f41819)は周囲に浮かぶ大太刀と共にクエストフィールドを走る。
 巨大な武者甲冑でもって一撃を受け止めるが、その一撃は凄まじい重さを持っている。
 あの巨大な大剣が由来していることはわかるのだが、それにしたって威力が段違い過ぎる。
 ただの一撃で防御を貫通してHPにダメージが与えられ、半数以上が削れてしまうのだ。
「無理だ、そのままじゃ! 次当たったらHPゲージが消し飛ぶぞ!」
「いいや、心配無用! 見よ、割れこそは征夷大将軍! このスキルを受けよ!」
 煌めくユーベルコードの輝き。
 神速の突き。
 それはあらゆるイニシアチブを逆転させ、その一撃でもって『バグ・ヘビーウェイト』の躰へとつきたて垂れる。

 しかし、その一撃は『バグ・ヘビーウェイト』に手傷を追わせた程度でしかない。
 それほどまでに敵のDEF値が高いのだ。
「貫けない!」
「いいや、構わぬ! この天地無双剣の真価は一撃の重さにあらず!」
「来るぞ! 躱せ!」
 クラン『憂国学徒兵』たちの叫ぶ声が聴こえる。
 けれど、彼女は頭を振る。
 彼女のユーベルコード、天地無双剣は一撃を叩き込むものではない。そう、このユーベルコードはあらゆる攻撃を返し刀でもって受け止めることにこそ真価が存在する。

 即ち、躱す必要はない。
 それは自動的な防御と言っても差し支えないものであった。
「――」
「甘いわ! その程度の踏み込みで征夷大将軍たる我を打倒できるものか!」
 返し刀は神速の突きへと変貌し、『バグ・ヘビーウェイト』の躰へと叩き込まれる。浅い。
 けれど、確実に攻撃を凌いだのだ。
 それだけではない。
 彼女のユーベルコードは神速の突きを当てる度に返し刀による絶対的な防御でもって受け止め、さらに反撃するのだ。
 いわば、アタッカー兼タンク。
「いやさ、いうなればディフェンダーやガードナーと言ったところか! 見よ、征夷大将軍の戦いざまを! これこそが我の戦いよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット
んへへ交流…楽しいですね。絶対に床ペロさせません!

そのためにちょっと…今だけこれを着てください!
トレードでケモノスキン(アバター)を押し付けます。
皆もふもふ可愛いぐへへ……ふざけてません!
満月をだしてケモにだけ超バフです!
これで攻撃力も回復力もアップです。ヤバいの貰わなければやられません!

近接DPSとして突撃です!懐に潜り込んで双剣で切り刻みます!
巨大化した回復阻害攻撃は私がパリィで止めます!安心して攻撃してください!
もふもふptに囲まれた状態ならテンションあがってなんでもできるはずです。

敵も小さい体で大きな武器を振るう可愛いスタイルですが、私のほうがケモ度が高い分強くて可愛いです!



 兎は寂しいと死んじゃうんだぞ! というのはよく聞く話である。あとギスギス空気にも弱いのである。
 せっかく楽しいゲームをしているのだから、ちょっとしたことで人と衝突するのはもったいない。
 だからこそ、ルナ・キャロット(†ムーンライトソードマン†・f41791)はクラン『憂国学徒兵』たちとの交流に胸踊らせていた。
 彼等をバグプロトコルに倒させはしない。
『遺伝子番号』も焼却させない。
 何よりもクエスト中に床ペロさせない。
「絶対に!」
 気持ちよく交流という名のチヤホヤをしてくれた彼等がゴッドゲームオンラインからいなくなるなんて、絶対に嫌だ。もっとチヤホヤしてほしい! そんな思いがルナの体を突き動かす。

「え、ちょ、何? 何々?! なんかアイテム送られてきてるんだが!?」
「いいですから!」
「何が1?」
「ためにし! ちょっとだけ! いまだけ! 今だけこれを来てください!」
 トレード機能という名の押し付け機能でもってルナはクラン『憂国学徒兵』たちにケモノスキンを押し付けていた。
 ワンコ、猫ちゃん、兎に、くまさんである。
 受け取った彼等は困惑していた。
 とは言え、彼女の言葉に押されてケモノスキンを纏う。
 そこにはもふもふがあった。

「皆もふもふ可愛いぐへへへ……」
「今ふざけて得る場合じゃあないんだが」
「ふざけてません!」
「お、おう」
 ルナの真剣な眼差しにたじたじである。温度差どうなってるのだろうか。
「いいですか、月が私を獣に変えるんです!」
 煌めくユーベルコード。
 フィールドが暗転し、空に浮かぶは満月。それは確かに偽物であったが、しかし、フィールドバフがケモノスキンを纏った『憂国学徒兵』とルナに降り注ぐ。
 ステータスが異常に上昇していくのだ。
「な、なんだこれ!? 連続攻撃スキルに超再生能力!?」
「はい! これがケモノ属性キャラたちへの強化バフなのです! これでみんな超DPDと再生能力で無敵です! ヤバイ一撃をもらわなければ大丈夫です!」

 さあ、れっつごー! とルナはもふもふケモノとなった『憂国学徒兵』たちと共にフィールドへと駆け出す。
 見た目的にはなんていうか、こう……ほのぼのとしているが、れっきとした生存を賭けた戦いなのである。
 わー! という感じで一斉にバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』へと躍りかかる。
 手にした双剣の斬撃が切りつけ、ダメージを蓄積させていく。
 HPゲージが消し飛んでも、また新たなゲージが復活している。
「どんだけHPゲージ持ってるんですか、この敵!」
「やっかいすぎる!」
「でも、私は今テンションマックスです! 今ならなんでもできまーす!」
 右を見ても、左を見ても、ケモノスキン。
 此処が天国か。
 そして何よりも、このもふもふパラダイスにおいて、自分が一番可愛い! だから1

「敵も小さくて大きな武器を振り回すスタイルですが、私のほうがケモ度高くて強くて可愛いです!」
「どこに張り合ってたんだ!」
「むろん、私のケモかわいさに、です!」
 自信たっぷりに言うなよぉ、と『憂国学徒兵』たちは思ったが、超強化のフィールドバフに文句が言えない。
 そして、共に『バグ・ヘビーウェイト』へと凄まじいバフの乗ったスピードと斬撃を嵐のように見舞うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
あなた達からなにも奪わせない
その為に私は此処にいる
気持ちが通じ合っている今なら……使えるはずね

『応援の翼』を発動
『憂国学徒兵』に光の翼を与えるわ
勝利への意志がその翼を輝かせる
その輝きは彼等の中から生まれたもの

『アイン』、速度が上がっている今なら
相手の攻撃よりも速く、あなたの技が通る
飛んで、叩き込んでやりなさい

私もあなたも、誰かの奴隷になるために生まれてきたんじゃない
想像すれば、きっとどんな事だってできるわ

がんばれ



 薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は自分が何のために此処にいるのかを知っている。
 ゲームの世界。ゴッドゲームオンライン。
 仮初めの、仮想の世界。
 けれど、此処はリアルの世界を生きる『統制機構』の人々にとって楽園なのだ。灰色の日常。変わらぬ停滞のなかにあることを忘れる虹色の輝き。
 たとえ、それが作られた虹であったとしても。
「あなた達からなにも奪わせない」
 そのために自分は此処にいるのだ。
 そして、奪われたくないと叫ぶ心が共にあるのならば、それは心が通じ合っているということだ。

 そして、それならばと彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 応援の翼。
 勝利への意志を共有する者たちの背に光の翼が羽ばたくようにして広がる。光の羽根が舞い散る中、クラン『憂国学徒兵』たちの背に広がる光の翼。
 加速する。
「INT値が急上昇……!? どういうスキルです!?」
「今のあなた達ならばわかるはず。その勝利への意志が、奪われたくないという叫びが、その翼を輝かせるということを。その輝きはあなた達の中から生まれたもの」
「ステータスを上げるのは、私達次第ってことか」
「そういうことよ『アイン』」
 静漓は友達と同じ名を持つアバターに告げる。

 彼女が別の世界で出会った友人。
 その笑顔を思い出す。屈託のない笑顔。ホビー・スポーツに夢中になって、共に遊ぶ者を引っ張り上げてくれる。楽しいという思いを共有したいと願ってくれる者。
 その尊さを知るからこそ、静漓は彼女のように誰かと共に意志を共有する術を得たのだ。
 応援が何になる、という者だっているだろう。
 何の力になるのだと。
 ただの言葉ではないかと。
 けれど、彼女は思うのだ。確かに言葉は言葉のままである。声援は声援である。感じることができたのならば、言葉は力に変わる。言葉に意味が生まれる。
「『アイン』、速度が上がっている今なら『閃光』と渾名されたあなたなら。相手の攻撃より速く、あなたの技が通る」

 その言葉に『アイン』は頷く。
 これなら行ける。応援してくれる誰かがいるから戦える。ステータス的には反映されないことであったかもしれないけれど、確かに己のなかに湧き上がるものがある。
 故に。
「ああ、行くよ! 私は!」
「飛んで、叩き込んでやりなさい」
 静漓はその背中を見送る。声を届ける。応援する。
「私もあなたも、誰かの奴隷になるために生まれてきたんじゃない」
『統制機構』は彼女たちの『遺伝子番号』を焼却して労働奴隷にしようとしている。変化を許さず、成長を否定し、灰色に続く未来を見せようとしている。
 けれど、人々の想像は、そんな灰色の未来さえも乗り越える虹色を宿している。

 心があるからだ。
「想像すれば、きっとどんなことだってできるわ」
 それを彼女は知ったのだ。教わったのだ。他ならぬ『アイン』から。故に、彼女は声を張り上げる。
 それこそが彼女たちの未来を形作るのだと知るから。
「がんばれ」
 その背を受けて光の翼が羽撃いて『バグ・ヘビーウェイト』の体を切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

『戦いに際しては心に平和を』(キリッ
……どうですどうです? 似てました?

ウィッグをかぶってセリフを決めて、
『エイル』さんとステラさんにアピールしちゃいます。

ステラさんすとっぷ!?
謝りますから、銃口は降ろしてもらえませんか!?

いえ、深い意味はないんですよ。
荷物探ってたら、ウイッグ見つけたんです。
ここだと『エイル』さん女の子ですし、わたしでも似れるかなーって。

あ、はい。すぐやめます。シリアスします(ウイッグしまって、ラムネぼりぼり)

それでは!
音楽家勇者の本気の一撃、見せてあげちゃいますよ!

ステラさんの援護を受けてのミュージックコンボをくらえー♪

あ、ユーフォニアムの出力間違えました……。


ステラ・タタリクス
【ステルク】
『戦いに際しては心に平和を』
その言葉が出てくるならば、貴女様もまた|分かたれし存在《エイル様》なのですね
|主人様《エイル様》の道は|メイド《私》が切り開きましょう

……ルクス様ー?シリアスが苦手な光の勇者様ー?
ボス戦ですよしっかりしてください
というか何故に楽器をめいっぱい持っていますか?
あの、死亡フラグは回収しなくて……ええい!
主人様の前でメイドは最強です!!
いきます!!(耳栓は使う)

『ニゲル・プラティヌム』を手に前へ
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!!
攻撃力と防御力極振りとて
ダメージが入らないわけでは!
VITだけがタンクではありません
AGIタンクの極致、おみせしましょう!



『戦いに際しては心に平和を』
 それは幾度となく紡がれてきた言葉である。
 いつかの誰かが叫んだ。
 いつかの誰かが祈りと共に呟いた。
 いつかの誰かが心に抱いて走り出した。
 そうした言葉が紡がれるのならば、それは。
「その言葉を貴女が紡ぐのならば、貴女様もまた|分かたれし存在《エイル様》なのですね」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は幾度となく聞いた言葉を耳の奥で反芻する。
 いつかの誰かは彼女にとって『エイル』と呼ばれる存在であった。
 己には自負がある。
 彼のメイドであるという自負が。
 故に、この言葉に責任を持つ。戦いの果にあるのが滅びではないことを。誰もが望んだ平和であることを。それを示すために彼女がすべきことは唯一だった。
「|主人様《エイル様》の道は|メイド《私》が切り拓きましょう」
 その言葉にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は無駄にキリっとした顔をしていた。

「『戦いに際しては心に平和を』……どうですどうです? 似てました?」
 あーもー、メイドの作った空気がバリンバリンである。
 亜麻色の髪のウィッグを被ったルクスはステラの前で反復横跳びするみたいに、似てました? と首を振っている。あっぴーるしているつもるなのである。それ逆効果じゃないかなって思うけれど、それを告げてくれる程、今のクラン『憂国学徒兵』たちは暇ではなかった。
 今まさに彼等は高難易度クエストのラスボスであるバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』との戦いに夢中であったのだ。
 一時も気を抜けない。
 一撃を貰えば、即座にゲームオーバー。
 そんなひりつくような緊張感の中、彼等は多くの亮平たちのユーベルコードの後押しを受けて戦っているのだ。

「……ルクス様ー? シリアスが苦手な光の勇者様ー?」
 ステラの笑顔が怖い。
 笑顔が怖いって一体全体どういうことだろうか。普通笑顔というのは他者に安心感を覚えさせるものである。間違っても怖いとか、恐ろしいとかそういう感情を呼び起こさせないものである。
 なのに、ルクスは、あ、こわっ、と思ってしまったし、鈍く輝く銃口を見て手を上げる。
「ステラさんすとっぷ!? 謝りますから! 銃口はおろしてもらえませんか!?」
 詳しく説明してください。
 今まさにメイドは冷静さを欠こうとしています。
「いえ、深い意味はないんですよ。荷物探っていたらウィッグを見つけたんですここだと『エイル』さん女の子ですしわたしも似れるかなーって」
「ボス戦ですよしっかりしてください」
 ど正論のボディブローがルクスの鳩尾を捉えた。
 ぐうの音も出ないほどのド正論で腹パンしてくるじゃん。

「うぐ……はい。すぐやめます。シリアスします」
 ラムネをぼりってるところはシリアスなのだろうかと思わないでもない。毎回のことであるが、彼女たちの戦いというのはこういうことである。
 敵、即ちオブリビオン、バグプロトコルとの戦い依然にすでに戦いが始まっているのである。
「それでは! 音楽家勇者の本気の一撃、見せてあげちゃいますよ!」
「どうして?」
 なんで楽器をそんなにかかえているのかとステラは耳栓を静かにはめる。神アイテムである。演奏バフっていうかデバフを一定時間無効化してくれるのである。
 それをステラは手放せない。
 使い捨てのアイテムであるが、無いよりはマシなのである。 
 そして、光の勇者が出せないシリアスはメイドが補うのが相場である。

「それでは参ります、スクロペトゥム・フォルマ!」
 両手に構えた拳銃。
 それこそが銃の型。二丁拳銃を持って迫る近接戦闘。『バグ・ヘビーウェイト』が振り回す大剣をかいくぐりながらステラの銃撃が敵を穿つ。
 だがHPゲージがなかなか消し飛ばない。
 それだけステータスが異常になっているということなのだろう。
 凄まじい敵である。
「ええ、ミュージックコンボ! あなたの鼓膜に勇者の祝福を!」
 今なんか物騒なこと言った?
 だが、メイドは耳栓をしてAGIタンクのロールに真っ最中である。

「……――ッ!?!?」
 唯一備えのなかったNPCである『エイル』はめちゃ硬いNPCである。だが、そんな彼女をしても、バイオリンの演奏で装甲が削れに削れ、叩きつけられるグランドピアノの物理が生み出す衝撃波に吹き飛ばされる。
 さらにはユーフォニアムの放つ全力演奏の大ボリュームの一撃が『バグ・ヘビーウェイト』ごと彼女をぶっ飛ばすのである。
「な、え、えええ!?」
「あ、ユーフォニアムの出力間違えてました。てへぺろ」
 てへぺろじゃないですが! と『エイル』は叫んだが、演奏にかき消されて届かない。ルクスは満足気にしていたし、ステラは神アイテム耳栓がロストしたことを理解し、また盛大にため息をつくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七那原・望
そうですね。誰一人欠けることなくクリアしちゃいましょう!

まずは再び愛唱・希望の果実でみんなの士気と能力を限界突破で大幅強化です。今回はアマービレで呼んでいたねこさん達も強化されますね。

ねこさん達との多重詠唱全力魔法の結界術で防御もより鉄壁に。

第六感と心眼と気配感知で致死トラップの位置を見切り、光属性の魔法で光らせてマーキングを。
かつては視覚を封じたまま戦ってたのです。見えないように隠されていてもこれくらい簡単に見つけられます。

光ってる場所はトラップなのです!気を付けてください!

マーキングさえしてれば彼らの技量なら容易く回避できるはず。

攻撃は一部のねこさん達と憂国学徒兵のみんなに任せるのです。



 クラン『憂国学徒兵』たちは言った。
 此処まで来たのならば、誰ひとり欠けること無くクリアしようと。
 その言葉は七那原・望(比翼の果実・f04836)が願ったものであったし、また思いを同じくするものであった。
 パーティというのは、意志を同じくすればするほどに強固な繫がりを得るものである。連携が必須な高難易度クエストであれば尚更に力を発揮するだろう。
 それを知っているからこそ、望もまた力強く頷く。
「そうですね。誰ひとり欠けること無くクリアしちゃいましょう!」
「ああ、一緒に行こうぜ!」
「必ずクリアしましょう。そうすれば、ドロップアイテムも山分けです!」
「それはいいですね。では、まずは皆さんの指揮と能力の限界を突破します1」
 指揮棒を振るう望の魔法によって猫たちが大量に召喚されていく。

 それは『憂国学徒兵』たちのメンバーたちを守る盾。
 猫たちは多重詠唱の結界術によって防御をより鉄壁の者としていた。
 しかし、バグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』もまた望と同じようにバグモンスターを出現させる。
 致死の罠もフィールドに設置され、迫る『憂国学徒兵』と望を前に立ちふさがるのだ。
「――」
 声はない。
 セリフもない。
 バグであるがゆえに、その力が示すのはただの暴力だった。『遺伝子番号』を焼却する。その目的のためだけにプログラムを弄り倒す。
 そうすることで人々を奴隷に落とそうというのだ。

「それはさせません!」
 望の魔法が致死トラップを光らせ、マーキングする。
 かつては視覚を封じたまま望は戦いに赴いていた。だが、今は違う。見えぬようにと隠されたものは、彼女にとって意味をなさない。
 故に、彼女は致死トラップを見抜き、光るマーキングでもって『憂国学徒兵』たちに知らせるのだ。
「ありがたい! これで罠に引っかかることはない。残すは……!」
「雑魚モンスターですね。でも、先程の敵みたいに強化されたステータスを持っているわけじゃないようですよ」
 望は迫る『ネームレスベイビーズ』たちを見やる。

 挑戦権を得るために迫った洪水じみた敵。
 けれど、今『バグ・ヘビーウェイト』によって呼び出された敵は通常のザコ敵と同義。
 ならば。
「ザコ敵はねこさんたちに任せてください。皆さんは!」
「ああ、攻撃は任せてくれよ! こっちでなんとかして見せる!」
「気をつけてくださいね、油断しちゃだめですよ!」
 その言葉に『憂国学徒兵』たちは笑う。
 こんな命がけの状況にあっても、笑っている。これがゲームであるからだろうか。いや、違う。
 望の言葉が、猟兵たちの応援が、心強いからだ。
 これだけの援護をもらって負けるわけがない。だからこそ、彼等は笑って戦いに挑む。

「綺麗で眩しいこのせかいを 二人で行こうどこまでも 明日もきっと晴れるから I wish Eternity with you……♪」
 愛唱・希望の果実(ユニゾン・オブ・ホープ)が響き続ける。
 望は願う。
 己の歌声は無限の歌声。
 この歌声に答えようとするもの、共感するもの、そうした者たちがいる限り途切れることなく続くものであると。
 そして、そんな歌声を背に走る『憂国学徒兵』たちとねこたちを望は頼もしげに見送るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーシア・ロクス
とうとうクエストボス…って、いっぱい出てきました-!?
3P「取り巻き召喚…それにやはりデストラップを出してきましたね…!」
2P「罠は巣を見ないからさっきの手は使えないっすよ!」

……あれ?でも、罠は曲も聴きませんよね?
だったら【指定UC】でわたしの周囲のBGMを変更します!
…さあ、リズムゲームの始まりです!
敵も味方も罠もリズムに乗れたら行動強化、外したら弱化です!

再度『カギ』の接続先を繋ぎ変えて『剣』に!
前に出て攻撃を見切り、くるりと回転して『マントヒーローのマント』で攻撃を受け流しです!

わたし達(2・3P)は盛り上げ役(鼓舞)お願いします!
さあ皆さん、「プレイヤー」の力、見せてやりましょう!



『生存確率0%の超凶悪クエスト』と呼ばれた高難易度クエストもラスボスステージへと移行している。
 クラン『憂国学徒兵』と猟兵たちは、ラスボスの座へと君臨したバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』との戦いを今も繰り広げている。一進一退と言えるだろう。
 それほどまでに互いの力は拮抗していた。
 いや、驚くべきことだろう。
 敵であるバグプロトコルのステータスはチートを使ったかのように異常に高いステータスを持っていた。バッドステータス耐性をも有していたが、それは今や猟兵の一撃に寄って砕かれている。
 押し込むのならば今だ。
「くっ……ここに来てザコ敵かよ!」
「まだこんな隠し玉をもっていたなんて……!」
 溢れる雑魚モンスターたち。

 ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)はバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』が放つユーベルコードの光を見る。
 溢れる『ネームレスベイビーズ』の群れ。
 そして、致死トラップ。正直やってられない程の高難易度クエストである。
 油断して一撃を受ければHPは消し飛ぶ。
 致死トラップにかかれば、これまた一撃でゲームオーバー。
 はっきり言ってやってられない。
「いっぱいでてきましたー!? それに……」
「やはりデストラップを出してきましたか……!」
「罠は巣を見てくれないから、さっきと同じ手は使えないっすよ!」
 ユーシアと2P、3Pが大慌てである。

 クラン『憂国学徒兵』たちは一人も欠けてはならない。
 彼等の『遺伝子番号』を焼却させられるわけにはいかないのだ。だが、彼等を助けるためには、彼等にバフを乗せなければならない。
「……んんんっ! なら、ユーシアのプレイ日記~リズムゲーム2日目(リミックス・ミンナノリズムワールド)です!」
「なにそれ!?」
「それってスキル名なの!?」
「いっぺんに質問しないでー! 兎にも角にも、リズムに乗って!」
 その言葉と共にフィールドに流れるはBGM。
 そう、それはユーシアが好きなリズムゲームのBGMであり、また最初のステージの優しいノリのものであった。

 キック、パンチ! 空手チョップ!

 なんかそんな幻聴が聞こえてきそうな独特なリズムで、軽快でポップなグルーヴ。
「いいですか、このBGMのリズムに乗れたら行動強化、はずしたら弱化です!」
「ここに来て追加要素か!」
「敵もってことは……」
「大丈夫です。あの『バグ・ヘビーウェイト』に意思はありません。ただのプログラム! でも、わたしたちなら!」
 リズムに乗れる。 
 このゲーム、ゴッドゲームオンラインを楽しめる心があるのならば、リズムに乗って攻撃することなんて造作もない。
 そして、意思無き者はバフを得られない。
 一方的な強化によって敵を穿つことが出来るのだ。

 リズムに乗ってユーシアの体が揺れ、手にし『カギ』を剣に変える。
 ステップ、アップ、ジャンプ!
 空中で回転したユーシアの赤マントが翻り、見事な回転を生み出しながら『バグ・ヘビーウェイト』へと剣の一撃を叩き込む。
 それは明らかに強化された一撃であった。
 きしむ大剣。
 大地に沈む『バグ・ヘビーウェイト』の体。
「わたし達は、盛り上げ役お願いします!」
「もうすでにやってますよ!」
「いえいいえい!」
 すでに2P、3Pはご機嫌なパリピモードである。どんちゃかぶんちゃかと音が体に響き渡るサウンドに乗って、『憂国学徒兵』たちも笑いながら楽しげに『バグ・ヘビーウェイト』へと攻撃を加えている。

「楽しいな、これ!」
「ええ、これが楽しむということ! これが『プレイヤー』の力! 見せてやりましょう!」
 ユーシアの言葉と共にリズムに乗ったごきげんな斬撃が『バグ・ヘビーウェイト』の意思なき体を切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウュル・フゥ
うわあ、なにこれ…なんかもう有り得ないレベルで強いんだけど。
でも、皆で戦えばきっと倒せるハズ。
よし、やるよ!

憂国学徒兵の皆と連携してボスへ立ち向かう。
って、雑魚やフィールドトラップも凶悪だね…!
此処はスキル:サーチャーアイ発動!(【情報検索】)
罠の場所を把握して皆に伝達するよ。

後は罠に注意しながら雑魚をキャットクローで【切断】。
やられそうな子がいれば【ダッシュ】で急行し援護攻撃。

流石に手数が足りず、押し切られそうになるけど。
この敵に勝って皆で帰る、その|欲望《ねがい》を皆に呼びかけると共にUC発動、回復しつつ再行動で一気に攻勢に出る。
雑魚を突破、そのままボスへ一斉攻撃を仕掛けるよ!



 それはもうステータスと呼ぶのもはばかられる数値であった。
 バグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』。
 その本来のステータスは重戦士に少々色をつけた程度のものだった。けれど、今バグプロトコルとして対峙している敵は、まるで遠慮のないステータスアップを遂げた上に、本来ない挙動である雑魚モンスターすら生み出し、致死のトラップさえフィールドに仕掛けてくるのだ。
 はっきり言って、あり得ない。
「うわあ」
 だから、ウュル・フゥ(貪り喰らうもの・f41775)はなんとも言えない気持ちになった。 
 とは言え、この事実を彼等に告げたところで簡単には受け入れられないだろう。
 彼等にとってバグプロトコルとは尋常ならざるステータスの敵でしかないのだ。彼等をオブリビオンとして認識できるのは猟兵だけ。
 故に、自分がすべきことは唯一。

「皆で戦えばきっと倒せるハズ。よし、やるよ!」
「おうよ!」
「撤退できない仕様になっている以上、すでに腹は決まっています」
「此処まで来たのならば、絶対にクリアしたいしな!」
「連携を密にしていきましょう!」
 クラン『憂国学徒兵』たちの言葉にウュルは頷く。敵が雑魚モンスターを湧き上がらせるのだとすれば、それはきっと目眩ましだ。
 先程と同じ『ネームレスベイビーズ』だが、ステータスが違う。
 本来のクエストの雑魚モンスターと同じステータスに下がっている。ならば、『バグ・ヘビーウェイト』の本命は致死トラップ。

「スキル、サーチャアイ発動! 罠の位置のマッピング、送るね!」
「助かる! ザコ敵蹴散らすのはこっちに任せな!」
 流石は覇権ジョブ。
『聖剣士』のDPSにまさる敵などいない。どれだけ数が多いのだとしてもステータス異常を起こしていない『ネームレスベイビーズ』など『憂国学徒兵』たちのレベルから考えて、壁にすらならない。
 そこにウュルがスキルでもって罠の位置を知らせるのならば、すでに罠はないに等しい。
「とは言え……数が多すぎるな」
「押し切られちゃう……!」
「弱きになっちゃダメだよ! 皆で敵に勝って、皆で帰るんでしょ! なら、その|欲望《ねがい》を!」
 ウュルの瞳がユーベルコードに輝く。

 それは、己の欲望を肯定し、解放を促す呼びかけ。
 魔喰魔術:黒擾乱風(ブラックウインド)。
 それは欲望を力に変える黒い旋風。身にまとう旋風が広がっていく。それほどまでに猟兵たちと『憂国学徒兵』たちの願いは強烈なのだ。
「再行動スキル!?」
「こんなことが……!」
「さあ、一回の行動でザコ敵を蹴散らせ無いなら、二回行動で囲いをぶち抜くのみだよ!」
 その言葉と共に『憂国学徒兵』たちとウュルはザコ敵の囲いを突破し、『バグ・ヘビーウェイト』へと迫る。
 願うだけでいいのだ。
 勝ちたい。
 勝って帰りたい。
 報酬ドロップのリザルトを見たい。

 そういう欲望こそが人の歩みを進ませるのだ。
 故にウュルは笑う。
 みんなの欲望の色こそが、この停滞した世界を突き動かす原動力になるのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
…さて。広さによっては全体ではなく部分召喚にすべきか…
まあ、喚べるか否かについてはさほど心配してない。
そうだろ、『カサンドラ』。

って訳で『ローレル』による<レーザー射撃>と<盾受け>で援護するんで。
ゴーレム使うプレイヤーもいるそうじゃないすか。同じ同じ。
前座で把握したサイズ差も考慮して<戦闘演算>しましたから。誤射の心配は不要っすよ。

重量と呪いで強化されてるならデータ上のそれを『ジェード』の<ハッキング>で0にしますか。
データ上の話っすよ?装備が外れる訳じゃねえっす。
ただ、理不尽なステではなくなってるはずっすよ。
それこそ、コツコツ周回研鑽してるなら問題なく倒せる程度に。



「なんつーか、此処まで来るとゲームとリアルの区別がつかなくなっちまうっすね」
 安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)の瞳が輝く。
 その輝きはサイキックエナジー。
 迸る凄まじいまでの量を示す光はフィールドに居たクラン『憂国学徒兵』たちの目をも見張らせるものであった。
「な、な、なんだ、あれー!?」
「え、ええええ!?」
 全員が全員、穣の放つ光に目を見開いて固まっている。

 そう、そこにあった輝きは極星(キョクセイ)の如き機体。
 リアル世界からゲーム世界に召喚されたサイキックキャバリア『カサンドラ』の姿であった。
「これが、俺の『カサンドラ』っすよ!」
 そう、穣はこのゲーム世界に己のサイキックキャバリア『カサンドラ』が召喚できることを確信していた。呼べる呼べないなど関係ない。
 だって、己が呼んだのだ。
 ならば、来るはずなのだ。
「そうだろ、『カサンドラ』」
 その言葉に応えるようにして『カサンドラ』の機体からサイキックエナジーが迸る。その輝きとと共に浮遊砲台が飛び立ち、レーザー射撃で持って『バグ・ヘビーウェイト』へと襲いかかるのだ。
「ろ、ロボット!?」
「え、えええー!? かっこよ! なにあれなにあれ!?」
『憂国学徒兵』たちは皆、穣の呼び出した『カサンドラ』に夢中であった。

「あ、いや、その皆攻撃してくださいっすよ。これ、一応援護なんすから」
「だって、ロボだぜ!?」
「え、どんなジョブならできるんですかこれ。スキルツリーは? いえ、そもそも習得条件は!?」
 めちゃくちゃ食いついてくる。 
 怖いくらい食いついてくる。
「いや、ゴーレム使うプレイヤーだっているそうじゃないですか。同じ同じ」
「同じなわけないだろ! こんなかっこいいの!」
 無茶苦茶である。
 穣もたじたじであったが、しかしゲームは進行している。
「あ、あの、積もる話は後にしないっすか?」
「やってる場合か! こっちのが重要だよ!」
「えぇ……」

 穣は困ってしまった。
 此処までサイキックキャバリアに彼等が反応を見せるとは思っていなかったのだ。仕方ないな、と思いつつ穣は一人で一生懸命『バグ・ヘビーウェイト』のステータスにハッキングをかまし、そのすてーたす強化を0にするのだ。
 とは言え、敵の装備が外れるわけでもない。
 言ってしまえば、理不尽さだけを解除したに過ぎない。
「あー、いつのまにか敵のステータスが下がってるっすよー。他のメンバーさんたちのおかげっすかねー」
 なんて言う。
 見え見えだったかな、と思ったが『憂国学徒兵』たちは目を見開く。
「本当じゃねーか! あの人達どんなスキル使ってんだよ! わけわかんねー!」
「でも、一時的っす。これで畳み掛けるっすよ」
「だな!」

 あ、よかった、と穣は胸をなでおろす。
 とは言え、ここまで反応されるとは。
「これならコツコツ周回研鑽している皆さんなら問題無く戦えるはずっす」
 だから、と穣は笑う。
 ここからは楽しいゲームだ、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イリスフィーナ・シェフィールド
これはまぁ……無茶苦茶な能力ですわね、
ですがなんとかするしかありませんものね。

長引かせると不利ですし一気に削り切るのを目指しましょう。
トルネード・シュレッダーで拘束して動きを抑制したところに憂国学徒兵の皆様に攻撃していただきましょう。
続いてシャイニング・スラッシュを叩き込んで吹き飛ばしますわ。



 装備しているアイテムのマイナス効果を無いものとする。
 それがバグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』のユーベルコードである。そして、装備したアイテムのマイナス効果が大きければ大きいほどに強化されていく。
 確かに猟兵たちの働きによって『バグ・ヘビーウェイト』の理不尽なステータスは、本来の高難易度クエストのボスのステータスと同格にまで落ち込んだ。
 とは言え、これは高難易度クエスト準拠である。
 そもそもが難しいボス戦闘であることは言うまでもないのだ。
「それでもまあ……なんとも無茶苦茶な能力ですわね」
 イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)はバグプロトコルゆえの理不尽なユーベルコード能力に息を吐き出す。

『バグ・ヘビーウェイト』が手にしていた大剣は、その圧倒的な重量に寄ってINT値が著しく低下するというデメリットがあった。
 プレイヤー側が2回行動する内に漸く一回行動できる。
 それほどのデメリットであったのに、それを今『バグ・ヘビーウェイト』はないものとして、その絶大な大剣を振るっているのだ。
 大地が砕け、凄まじい衝撃が襲う。
「これが高難易度クエストってやつだよな、っぱな!」
「ええ、デタラメなステータスはなくなりましたし、バッドステータス耐性を失ってもなお、この強さ!」
「よく周回しようと思ったものだ」
「しないとレアドロップしないでしょ」
 だから、とクラン『憂国学徒兵』のメンバーたちは笑っている。

 余裕が出てきた、というのであれば僥倖であろう。
「とは言え、長引かせるのは得策ではありませんわね」
 ならば、とイリスフィーナが飛び出す。
「一気にカタをつけましょう!」
 その言葉と共にイリスフィーナの瞳が輝く。
 放つトルネード・シュレッダーが『バグ・ヘビーウェイト』の装甲を切り裂く。装甲らしい装甲はないが、しかし、何か隠し玉を持っている可能性があった。
 故に、彼女は生み出した竜巻でもって牽制し、その懐へと飛び込む。
「続けざまにシャイニング・スラッシュですわ!」
 放たれた一撃が『バグ・ヘビーウェイト』の体躯を大地に沈める。

「ダウンを取った! でも、スタンじゃないから復帰してくるぞ!」
「畳み掛けるというのなら!」
『憂国学徒兵』たちの双剣が矢継ぎ早にダウンした『バグ・ヘビーウェイト』へと叩き込まれ、その場に縫い留める。
「ナイスですわ! これならば、オーラを流し込める!」
「流し込む!?」
「ええ、内側からオーラで爆破ですわ! これならば防御無視攻撃となりましょう!」
「な、なにそれ!?」
 そんなスキルあった!? と驚愕する彼等を前にイリスフィーナは曖昧に微笑んだ。

「何その肯定とも否定とも取れない間の顔!」
「企業秘密ですわ」
 なんて、誤魔化しながらイリスフィーナは『バグ・ヘビーウェイト』へと流し込んだオーラを炸裂させ、その体を空へと吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

みんなの協力が必要だ!
みんなの命をボクにちょうだい!そしてラストにありがとうみんなのこと、ボクは忘れないよ…ってやつ!
ちょっと違う?

●|がんがんいこうぜ!《信頼という名の丸投げ》
ここは確実に倒すため廃人プレイヤーのみんなの力を借りよう!
あの子にはこのままじゃボクの力も通用しない!
定番のデバフとかそういうキミたちのいつものやり方が必要なのは今回も一緒!
チャンスを作ってくれれば必ず手繰り寄せてあげる!
腕の見せ所だよ!
ボクはみんなを信じる…だからみんなもボクを信じて!

といい感じになったら【第六感】に任せて攻撃をかいくぐりUC『神撃』でドーーーンッ!!
わーいクリア報酬はー?



「みんなの協力が必要だ!」
「急にどうした!」
「みんなの生命をボクにちょうだい!」
「物騒過ぎません!?」
「そしてラストにありがとうみんなのこと、ボク忘れないよ……ってやつ! やるから!」
「はいそうですかってならないでしょ!?」
 そんなやり取りがあった。
 クラン『憂国学徒兵』たちは、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の提案というか、要望というか、そういう無茶振りを前にして律儀にツッコんでいた。
 できるわけないだろ! と全員が全員ロニに突っ込んでいた。

「ちょっと違う?」
「だいぶ違うし、今そんなコト言ってる場合じゃないんだけど!?」
「アハハ! |がんがんいこうぜ!《信頼という名の丸投げ》」
「ルビ見えてんぞ!」
 もうシッチャカメッチャカである。
 戦いは佳境に向かっている。けれど、このノリは変わらない。これがゲームであるからだろう。どこか楽しげな雰囲気があることをロニは喜ぶ。
 こんな状況にあっても『憂国学徒兵』のメンバーたちは悲観的ではなかったからだ。
 だったら、と少し弾けてもいいかなと思ったのである。
「でもでも、このままじゃボクの力はあの子には通用しない! 定番のデバフってのがあるんでしょ! 今回もそれやろうよ!」
 チャンスさえ作ってもらえるのならば、必ず勝利を手繰り寄せてみせるとロニは頷く。

「みんなの腕の見せ所だよ!」
「わーってるよ! 見せてやるさ、『聖剣士』のDPSが最高だってことをな! 行くぜ、みんな!」
 その言葉に合わせるようにして四人が走る。 
 それは嵐を思わせるものであった。4人の双剣が乱舞し、剣閃を輝かせる。雷鳴轟くかのように斬撃が絶え間なく『バグ・ヘビーウェイト』の体を包み込み、行動をさせないのだ。
 防御するにしても回避するにしても、必ず行動順が削られる。
 彼等の斬撃事態がバッドステータスになっているのだ。
 言ってしまえば、拘束バッドステータスというべきか。
 本来なら、その状況に敵を陥らせてから、チャージした味方の一撃で趨勢を傾けさせて追い込んでいくやり方で、この高難易度クエストを突破してきたのだろう。

「なるほどなー。ボクはみんなを信じる……だから、みんなもボクを信じて!」
 なんかいい感じに場が温まってきた! とロニは確信する。
 第六感が言ってるのだから間違いない。
 剣閃煌めく嵐の中をロニは走る。
 味方の攻撃もダメージになるのだが、しかし、それらをかいくぐってロニは『バグ・ヘビーウェイト』へと肉薄する。
 その拳に宿るはユーベルコードの輝き。
「いい感じにド――ンッ! クリア報酬は全部全部ボクのものだー!」
 神撃(ゴッドブロー)の一撃が炸裂し、『バグ・ヘビーウェイト』の体を吹き飛ばす。

 うん、いい感じ! とロニは締めくくろうとして、それが叶わぬことを知る。
 そう、クリア報酬ってみんなで……。
「いや、山分けに決まってんだろ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

明和・那樹
●SPD
ようやく最下層に到着だ
件の最終ボスは俺も初めてお目にかかるタイプだから、聞かれても知らないねとしか答えようがない
ただはっきりとしているのは、俺のような手数でDPSを稼ぐ双剣使い型の|聖騎士《グラファイトフェンサー》と様々なビルドが発明され続けている|重戦士《ヘビーウェイト》とは相性が最悪という事だけ
いくら聖騎士は瞬間DPSを叩き出せるからって防がれてしまえばだし、バグプロトコルが相手なら尚更さ

じゃあ、打つ手はないかって?
何を言うんだ、俺達は『|パーティ《仲間》』だろ?
アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーア…そしてエイル
君達の協力がなければ、生存確率0%の超凶悪クエストは到底クリア出来やしない
奴のヘイトは俺が担当するからありったけの支援をよろしく頼む

武器巨大化、武器変形、瞬間強化にその他諸々
本当にチートを盛り込んだかって言う鉄壁の守りって訳か
相手がバグ挙動の技能を使い放題な分、俺単騎では到底厳しすぎる…が、皆の協力があれば別だ
それで一瞬、ほんの数フレームの隙さえ出来れば…斬り込むだけ!



 バグプロトコル『バグ・ヘビーウェイト』――本来であれば、それは発生し得ない敵であった。しかし、猟兵となった明和・那樹(閃光のシデン・f41777)にはわかる。
 あれはオブリビオンだと。
 世界の破滅を願い、『統制機構)に生きる人々の『遺伝子番号』を焼却し、労働奴隷へと堕とさんとする者たち。
 己の友達を。
 たとえ、此処が仮初めのゲーム世界であるのだとしても。
 それでも自分に出来た友達を、労働奴隷へと落とすことなど許してはおけない。だからこそ、彼はその激情を晒すことなくニヒルなロールプレイのままに、クラン『憂国学徒兵』たちへという。
「俺も初めて見るタイプだ」
「ステータス異常は取っ払った、バッドステータス耐性も!」
 そう、如何に強大なステータスを持つ敵であったとしても、此処には猟兵がいる。彼等のユーベルコードが、異常なステータスを破壊したのだろう。

 そして、今まさに追い込んでいる。
 ここが勝機であることは言うまでもない。
 だが。
「スキルクロス・リユニオン」
「な――」
 那樹は目を見開く。
 スキルクロス・リユニオン。それはユーベルコードだ。自身も使う新たなスキルを生み出すユーベルコード。
 それを『バグ・ヘビーウェイト』を使ったのだ。
 自分たちが2つのスキルを組み合わせるのに対し、ざっと見ただけで五つもスキルを組み合わせている。
 ヤバイ、と直感的に理解する。

 巨大化していく大剣が変形し、瞬間的に強化されていく。
 それだけではない。あの一撃は回復阻害が組み込まれている上に、アクセルコンボが融合している。
 つまり。
「一撃受けたらHPゲージがぶっ飛ぶまで攻撃が止まらない飽和攻撃が来るってことかよ!」
 理解する。
 自分たち『聖剣士』はゲーム内最高のDPSを有している。
 だが、それは単一のヒルドでしかない。
 だからこそ、『重戦士』のような多種多様なビルドを前にしては食い物にされてしまう可能性があるのだ。
 故に、目の前の『バグ・ヘビーウェイト』は、自分たちの天敵であるとも言えたのだ。
 そして、それがバグプロトコルであるというのならば尚更だ。

 言ってしまえば、目の前の敵は『聖剣士』を多く有する『憂国学徒兵』たちを狙い撃ちにした敵であるということだ。
 どうして、そんな狙い撃ちのようなことができるのか。
 不可解なことが多い。 
 けれど。
「打つ手無しってことかよ!」
「いいや、違うね。俺たちは|『パーティ』《仲間》だろ?」
『アイン』、『ツヴァイ』、『ドライ』、『フィーア』……そして『エイル』。
 彼等がいる。
 ならば、乗り越えられな異理由なんて無い。
「これが『生存確率0%の超凶悪クエスト』だっていうんなら、皆で協力すれば良い。到底クリアできないってゲームをクリアする。挑み甲斐があるってものだろう?」
 その言葉に彼等は力強く頷く。

 悲嘆はない。
 そこにあったのは笑顔だった。これがゲームだと知っているからこそ笑うことができる。たとえ、ゲームオーバーになってしまえば『遺伝子番号』を焼却されて労働奴隷へと堕とされるのだとしても。
 それでも笑ってのけているのだ。
 その気概に那樹もまた笑う。隠すように目深に制帽を被ってしまったけれど、それは偽らざる気持ちだった。
「俺がヘイトを稼ぐ。だから」
「ありったけの支援を、だろ?」
「おまかせください。いつぞやのエンシャントドラゴンとの決戦のときと同じですね」
 その言葉だけで十分だった。
 走る那樹。
 そして、それよりも先に先行する『憂国学徒兵』たち。

 彼等の双剣の剣閃が雷鳴のように迸る。
 それこそが彼等のバッドステータス『拘束』である。最高DPSを誇る音速を越えるかのような斬撃の嵐によって、敵の行動順を吹き飛ばし続ける。
 それによって生まれるは敵の停滞。
 停滞こそが『統制機構』の称賛しむるところであるというのならば、これほど皮肉のきいいた連携もないだろう。
「……相変わらず、力押しみたいなことして」
 けれど、十分だった。
 敵がバグ挙動技能の連発みたいな攻撃を繰り出すことができない。攻撃を放とうとしても、即座に『憂国学徒兵』たちにキャンセルされてしまうのだ。

 那樹単騎ではできないこと。
 けれど、彼等とならばできる。
 生み出されるは数瞬。
 ワンフレームにも満たない時間。
 けれど。
「頼んだよ、『シデン』!」
『エイル』の声が聴こえる。
 放たれる極大の一撃。巨大な刀が振り下ろされた瞬間こそが、ワンフレームにも満たない時間を、ワンフレームへとこじ開ける。
「制限なしのスキルなんて、それほどつまらないものはないよな。だから、受けろよ。これが本当のスキルクロス・リユニオン――マキシマムカウンターだ!」

 閃光が迸る。
 その剣閃はこれまで猟兵たちと『憂国学徒兵』たちが紡いできた糸のようなか細い可能性を手繰り寄せ、彼の刃を交錯させる。
『バグ・ヘビーウェイト』の体を切り裂く一撃は、クエストクリアのファンファーレと共に消えゆく。
 リザルトが浮かぶ。
 経験値、ドロップアイテム、そして。

「コングラッチュレーション、か。ハハ、こんなメチャクチャな『生存確率0%の超凶悪クエスト』なんて、言い過ぎだって」
 なあ、と那樹は共に戦ったメンバーたちにもみくちゃにされるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月12日


挿絵イラスト