札幌の秋は本州のそれと比べ、ずっと早く訪れる。
「食欲の秋もその分早く来るのかな?」
「さぁな?」
ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)がグラスを傾けるのを見ながら、梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)は軽く首傾げた。
東西に広がる大通公園。オータムフェストと言う食の一大イベントに道内様々な美味が集うのを聞きつけやって来たシャチ一頭、フクロウ一羽添え。
「北の国は色々美味しい料理があるのは知ってるけどこの季節は特にすごいと聞いたからねー」
簡易的に設けられてる飲食ブースに太ましいボディを収め、ヴィクトルはこの日何杯目かのグラスを空にした。どうやらザルらしい。
「聞いたからにはチャレンジするのがキマイラの性質だし」
「新しモノ好きって事だろ? その気持ち解るぜ」
札幌っこも新しモノ好きだから、と呟き。ならば、と玲頼はヴィクトルに席の確保を頼んで北国ならではのツマミを調達しに行ったり来たり。
まずはエゾシカ肉の串焼き。炭火で香ばしく丹念に焼かれたそれは臭味も無く、しっかりとした歯応えと独特の旨味が詰まっていた。
「ジビエで人気あるんだぜ、鹿肉」
「へぇー」
次は塩ジンギスカン。玲頼オススメだと言うそれは一口サイズのラム肉を塩味で漬け込み炒めたもの。
「んん……どっちも美味しい! 旨味も甘みも感じる」
「だろ?」
酒も特に苦手は無いとの事で北海道の有名蔵元から至極の日本酒を。北の大地の美味しい水と寒冷地で育った逞しい稲が生み出した純米酒は辛味の奥に旨味と甘味をたっぷり含んでいた。
「他にも北海道の地酒ってあるの?」
「そうだな、余市のワインとかウイスキーも有名だけど……」
「あ、是非飲んでみたいなー」
「いや、その、チャンポンにも程がねぇか……?」
酔いつぶれてぶっ倒れたらどうやって運ぶよこの巨体、と玲頼は眉ひそめたが。
想像以上にこのシャチ酒豪だった。そもそもジョッキもお猪口みたいに小さく見える。
「玲頼は飲まないの?」
「いや、オレ酒癖悪いらしいんで……」
ヨーグルトリキュールソーダ割をチビチビ飲む青年に対し、ヴィクトルの前には空のグラスやジョッキが沢山。
その良い飲みっぷりに年配のオッサン達が勝手に買ってきて奢りだと置いていくから止まる気がしない。
「賑やかで楽しくて美味しくて……うん、いいね」
多くの人々が秋の味覚を享受して。お腹も心も満たされる。冬が来る前の温かな一日のお話。
成功
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