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救援、応援、支援!初心者キャリー三拍子!

#ゴッドゲームオンライン

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『緊急事態発生、緊急事態発生』
 視界の至るところが黒の赤のストライプに染まり行く。
 ──景色もこのゲームの醍醐味なのに!
 そんな文句も浮かばない程、サウンド設定を無視したアラートが頭の中でけたたましく鳴り響く。

 ただ事ではない。それだけは分かれども、それ以上を察せないのは今しがた、このゲームを始めた初心者だからこそだ。
 初期装備のウォリアーとパラディンは、常識外れのアラートに顔をしかめながらも首を傾げて、一方でアーチャーは青ざめて息を呑む。
 素早く周囲を見渡し何かを口にしようとするも、アーチャーが言葉を放つよりも早く、三人の頭の中には鋭い警告が響き渡る。

『警告。当クエストにバグプロコトルが発生しました』
 ──ウォリアーとパラディンがようやく息を飲む。次の瞬間には、ゲームを蝕むその脅威は既に、この場へ溢れ出しかけていた。

「逃げろッ!|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却されるぞ──ッ!」

 ●

「すごいよねーっ!究極のゲームだって!」
 GGO──ゴッドゲームオンライン。ゲーム内の賑やかな酒場の一角で、布都御魂・アヤメは浮かれた様子で周囲を見渡す。
 どれほど見渡そうとも、ここは|現実《リアル》との差異がわからなくなりそうなゲームの世界だ。とはいえ生身でこの世界にログインした猟兵たちにとっては、この世界もまた新たな現実に他ならない。
 アヤメは浮かれた心を落ち着けるように、大きく深呼吸をしてから猟兵たちに向き直る。

「すっごくワクワクする世界だけど、ここでもオブリビオン…ううん、バグプロコトルが、この|世界《ゲーム》を壊そうとしてるみたいなんだ」
 僅かに声をひそめると、アヤメは今回の予知を語りだす。

「バグプロコトルが今回出現するのは、初心者クエストだよ」
 初心者クエスト──その名の通り、GGOを始めたばかりの初心者向けに設定された、短時間・低難易度・爽快シナリオの三拍子が揃ったお手軽なクエスト群だ。
 駆け出しの、まだまだチュートリアルもままならないような、初心者プレイヤー達の最初の一歩。そのスタートラインの楽しみを提供する筈のクエストに、バグプロコトルの群れが出現し、プレイヤーの遺伝子番号を次々に焼却しようとしているのだ。
 遺伝子番号を焼却されたプレイヤーは、現実世界での最低限の人権すら剥奪される──それは、彼らの現実では社会的な死に等しいものだろう。

「初心者を狙うなんて…なんとかして救わなきゃ!」
 アヤメは拳を握り締めて意気込むと、指先を空中でスライドさせる。風の音のような軽いエフェクトと共に、ぱっと宙に浮かび上がるのは青いホログラムのスクリーンだ。
 そこに並ぶ文字列──クエスト群のひとつをタップするとマップを開き、ピンを刺して猟兵たちに情報を共有する。

「バグプロコトルが出現するのはこの森、襲われるのは三人パーティの初心者だよ。受注してるクエストは、『森の洞窟探索』っていう…そう、それ!」
 猟兵のひとりが示したクエストにアヤメは大きく頷く。
 『森の洞窟探索』…森を進み洞窟のボスへ向かう単純なチュートリアルクエストのひとつだ。本来であれば、程々にポップするモンスターを数体倒し、幾ばくかの経験値を稼いでからワンフロアダンジョンへ挑み、宝箱を獲得するお手軽なものである。
 だが今回ばかりは、森の中のバグプロコトルは比べ物にならない数となっているだろう。

「初心者だし、アイコンに従って行動してると思うんだ。クエスト受注して行けば、矢印のアイコンが案内してくれるから迷わないよ!」
 アヤメの言葉に頷きながら、猟兵たちは次々に該当クエストを受注する。すると猟兵たちの視界の端では早々に、小さな矢印のアイコンが点滅し、クエストの目的地を指し示した。さして邪魔にはならないものだが、不要であれば非表示にもできるのが、いかにもゲームらしいところだろう。
 新たな世界の機能に、思い思いの反応を見せる猟兵たちを見渡して、アヤメは大きく頷く。

「それじゃ、善は急げだよ!みんな、頑張ってね!」
 アヤメの突き出した握りこぶしに、猟兵たちはひとりひとりゴツンと拳を合わせた。


後ノ塵
 後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。GGOで初心者プレイヤーを救う三章構成のシナリオとなります。

 一章は集団戦です。早速、初心者プレイヤーがバグプロトコルの群れに囲まれています。颯爽とお救いください。

 二章は冒険です。救出した縁、ということでクエストへの同行をお願いします。操作慣れにも経験値的にもやはり戦闘が一番です。強化バフをかけて見守ってあげてください。初心者たちが扱えるかどうかは別として、所持アイテムの貸し出し等もバフとして扱えます。指導もして頂くと得難い経験となるでしょう。

 三章は集団戦です。初心者たちにとっては、いよいよボス戦ですが、一章で出現していたバグプロコトルの群れがボスの配下として出現しています。ボスはバグっておりませんので、ボス戦はお任せして、露払いをしてあげてください。

 皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『アマルガムビースト』

POW   :    バグプロトコル・クロー
自身の【爪】が触れた対象に【バグ】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。
SPD   :    アマルガム・ゲイル
【魔獣のオーラ】を纏いレベル×100km/hで疾走する。疾走中は攻撃力・回避力・受けるダメージが4倍になる。
WIZ   :    ミューテーション・プロトコル
【体表面に出現する「魔獣の顎」】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 バグプロコトル──|異形の四足獣《アマルガムビースト》が吼え、ウォリアーの背中に巨大な爪を振り被る。回避も防御も間に合わない、彼がそう諦める寸前に一本の弓矢が異形の体を貫く。

「っわり…」
「やってない!逃げろ!」
 アーチャーが鋭く発する言葉の通り、アマルガムビーストのステータスバーは1ドットたりとも減ってはいなかった。急いで走り出す初心者たちの背には、アマルガムビーストの無数の瞳が迫っている。

「僕が盾にっ」
「馬鹿!止まるな走れ!」
 足を止めかけたパラディンの言葉をアーチャーが遮り、背後へいくつも矢を放つ。狙いも定めず放った矢では、せいぜいほんの僅かなヘイトを稼げるかどうかに過ぎない。ろくな牽制も足止めもできやしないだろう。

「いいから逃げるんだよッ!」
 だがそれでも、彼らは逃げなければならなかった。アーチャーは所持爛を開くと、ありったけのアイテムを背後にばら撒く。
 バグプロコトルになんて、しかも初期装備の下級アイテムなんて、効くのかどうかも分からない。それでも何かが効けば良い。森を抜けて、クエストから離脱できればログアウトできる。

 一縷の望みにかけてアイテムを消費していく最中、こんな時だからこそ、どうしても過ぎってしまうのは今日費やした|課金額《トリリオン》だ。
 この日の為に──|統制機構《コントロール》に抑圧されたリアルから逃避したくて捻出したトリリオン。スターターパックと余剰で費やした額は、重課金に比較すれば決して高くはないが安くもない。だが、|現実《リアル》から逃げる為なら安いものだった。

「リアルがどんだけクソでも…ッ遺伝子番号を焼却されたら、その生活にだって戻れなくなる!」
 そんな課金アイテムだって、バグプロコトルから逃げる為なら、それだって安いものだった。課金アイテムもありったけを投げ捨てて、アーチャーはただ叫ぶ。

「走れええッ!」
中村・一哉
連携/アドリブ可

「初心者クエで初見殺しとは、彼らも本当運が無いな」
弾道計算とスナイパーで初心者たちに矢が当たらないようにしつつ、月光弓で矢弾の雨を降らせる。
こちらが受けるダメージはシャドウクロークのシャドウパリィと衝撃吸収、受け流しで何とかする。
UCは攻撃回数を選択。
「・・・旨そう」
無意識のうちに魔喰と生命力吸収でバグプロトコルをモグモグ。体力回復。魔喰部位が鋭い爪を持つ魔獣の手に変化。
「あ、これじゃ弓使えないか」
応用力で爪攻撃に変更。UC由来の連撃をぶち込む。
「これで時間稼ぎぐらいはできたか?」



 森の梢に潜みながら、中村・一哉はユーベルコードを発動すると、静かに月光弓を構える。

「初心者クエで初見殺しとは、彼らも本当運が無いな」
 息も絶え絶えの様子で一哉の視界に走ってくるのは、どうみても初期装備の初心者パーティだ。
 このところ、アップデート以外でも騒がしくなったGGOで一番のイレギュラーといえば、今まさに初心者に襲いかからんとするバグプロコトルだろう。早々に出くわすのが、どうしようもない不運であれど、しかし彼らは幸運だった。助かる機会があるのだから。

 一哉は弓に矢を番えると、細く息を吐き呼吸を整える。弾道計算に優れた月光弓を、スナイパーが手に取れば──それは、必中の弓となる。

 短く息を吐くと同時に矢を手放せば、アマルガムビーストの群れに降り注ぐのは矢弾の雨。月光の輝きは煌めきながら、アマルガムビーストのHPバーを次々に削り取る。

「な、ハァッ!?」
「えええっ?」
 迫る脅威へと襲来した月光の輝きに、驚くのはもちろん初心者たち。素っ頓狂な声を上げて足を止めた初心者パーティに、一哉は落ち着いた声で、しかし鋭い声を上げる。

「時間は稼ぐから、逃げるんだ」
 矢弾の雨を食らって、アマルガムビーストが怯んだところでそれは群れの一部に過ぎないし──範囲攻撃によってヘイトを集めた一哉の側こそ、今度は最も危険な場所となる。
 月光の矢を免れたアマルガムビーストの一体は、一哉の潜むその梢に向かって牙を剥き出しにすると、地面を蹴って飛びかかる。

「索敵範囲もバグってるんだな」
 目前に迫る鋭い牙と鋭い爪。一哉は焦ること無く枝を蹴って回避する。そのまま空中でアマルガムビーストの眉間を撃ち抜けば、大仰なエフェクトと共にHPバーは一瞬で削り落ちた。
 一哉が地面に着地して振り向けば、ポカンと口を開ける初心者パーティの姿はまだそこにあった。

「次が来る。ボサッとしない」
「は、はいっ!」
「あざっす!」
 バタバタと慌てて走り出す初心者パーティの背中を見送る暇は、一哉にはない。
 にわかに瞬く月光のエフェクトが発生すると、一哉の視界には三枚のカードが出現する。女神の神託から素早く一枚を選び取ると、恐るべき速度で襲い掛かってくるアマルガムビーストに対峙する。

 先頭の一体は角の突進。一哉はシャドウクロークで素早く受け流す。そのまま姿勢を落とし、クロークの裾を広げ次の攻撃をパリィするも、数体の群れによる攻撃は絶え間がない。流し切れずに幾らか爪を食らってしまうが、一哉の装備しているシャドウクロークは高Tier環境装備。多少の衝撃はなんなく吸収してくれる。

 高性能に感謝しながら、一哉は難なくアマルガムビーストの包囲を抜けると、バックステップで距離を取りながら、今度は弓を空へ向けて矢を放つ。アルテミスカードによって攻撃回数の倍化した月光の矢は空中で倍増し、アマルガムビーストへと降り注ぐ。再び降り注いだ矢弾の雨は、アマルガムビーストたちのHPをまとめて削り落とした。

 あとに残るのは、アマルガムビーストの巨大な躯たちだ。
 時間経過で程なくドロップアイテムに変換されるその肉に、一哉はゴクリと喉を鳴らす。

「・・・旨そう」
 その|魔喰者《モンスターイーター》の小さな呟きは、ほとんど無意識のことだった。
 一哉はアマルガムビーストの前足を掴むと、引き千切って齧り付く。筋肉質な塊を噛みちぎってよく咀嚼し飲み込めば、一哉のほとんど減ってないHPが回復し、前足を掴む手にはアマルガムビーストのような鋭い爪に変貌し、ついでに僅かばかりの経験値が加算される。

「あ、これじゃ弓使えないか」
 我に返った頃にはもう遅く、凶悪な爪では月光弓の弦を引くこともままならない。だが一哉はいたって気にせぬように立ち上がる。

 一哉の背後に迫るのは、アマルガムビーストの第二波。散らばる躯とそれを貪る一哉に警戒心を高めたのか、アマルガムビーストは素早くユーベルコードを発動すると、魔獣のオーラを身に纏い、一哉に向かって疾走する。

 目にも止まらぬその速度が迫るその前に、一哉が再び選択していたのは攻撃回数倍化のアルテミスカードだ。襲い掛かってくるアマルガムビーストに、正面から爪を突き刺しそのまま引き裂くと、カード由来の連撃を浴びせてゆく。

「これで時間稼ぎぐらいはできたか?」
 額の汗を拭くように、異形の手の甲で前髪を撫でる一哉の前に、再び並ぶのはバグプロコトルたちの巨大な躯。その肉のひと欠片を再び咀嚼してから、一哉は森の梢に消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

可愛川・サキ
わーお、大変な事になってるね。でもアタシが来たからには安心して。
先輩プレイヤーとしてカッコいいところ見せちゃうからね♪

ザコモンスターのくせにかなりのスピードだね。いや、バグってるからかな?
でもこっちに向かってきてくれるなら好都合かな。【スキルクロス・リユニオン】の【マキシマムカウンター】を狙うチャンス!
ハイリスクだけどその分リターンは大きいよ。なんたって相手は被ダメージ4倍だからね。



 異形の四足獣、アマルガムビーストが森を疾駆する。その幾つもの生物が混ざり合った大きな図体からは、想像もつかないほどの恐るべき速度は、確かな脅威となって初心者たちへ迫り寄る。

「追い付かれるぞ!」
 一時的に危機から逃れられたところで初心者たちは未だ森の中、バグプロコトルの発生したクエストの最中である。彼らの背後には新たにポップしたアマルガムビーストの群れが迫ってきていた。

 一時の救済にゆるんだ気力は、既にもう尽きかけていた。どれほど走れど脅威との距離は離れるどころか縮まるばかり。もうどこにも逃げられない、そんな焦燥にかられながら振り向けば、アマルガムビーストの爪は、牙は──歪に混ざり合ったその眼差しは、彼らの目前にあった。

 もうダメだ──!
 最後の気力が諦めに飲み込まれるその瞬間、一匹のアマルガムビーストが初心者たちのアバターを切り裂く──その寸前、黒銀の槍が風を切り裂いた。

 初心者たちの目前へ迫っていた獣は、空を切り裂き突き刺さった槍に驚き、たたらを踏んで後退る。呆気に取られる初心者たちの目の前で、ミントグリーンのツインテールがふわりと揺れた。ジャラリ、と鳴るのは槍に繋がれた長い鎖。

「わーお、大変な事になってるね」
 緊迫した空気を裂くように。軽やかな言葉を口にしながら、可愛川・サキは初心者たちに背中を見せると、アマルガムビーストの前に立ち塞がった。

 一足遅れて追い付いてきたアマルガムビーストの群れの後続が、サキヘ素早くヘイトを切り替える。鋭い牙を剝き出し周囲を取り囲むアマルガムビーストの群れに、しかしサキは全く臆さぬどころか、楽しげにも見える余裕を見せる。

「アタシが来たからには安心して。先輩プレイヤーとしてカッコいいところ見せちゃうからね♪」
 腰を抜かして言葉を失う初心者パーティへ屈託のない笑顔を向けると、サキは鎖を引き寄せ槍を掴む。
 まるでそれが合図かのように、アマルガムビーストの群れは大地を蹴った。

「ザコモンスターのくせにかなりのスピードだね。いや、バグってるからかな?」
 ユーベルコードによって魔獣のオーラを纏い、目にも止まらぬ速度を見せるアマルガムビースト。だが目の前の脅威にもサキは至って余裕の表情で、ユーベルコード【スキルクロス・リユニオン】を発動する。カウンターと捨て身の一撃、二つの技能を掛け合わせて、狙うのはマキシマムカウンター。

 サキは迫り来る槍の柄をくるりと回して、迷わずアマルガムビーストの懐へ踏み込む。アマルガムビーストはユーベルコードによって攻撃力も回避力も四倍になっている。だがだからこそ、その攻撃の瞬間こそが最大のチャンスだ。

 振り上げられた爪を回避しグラファイトスピアを大きく振り薙ぐと、柄で思い切り横っ面を引っ叩く。次に迫ってくる剥き出しの牙には槍の穂先を突き刺すと、そのまま押し込み引き抜いた。
 ハイリスクなカウンターはそれだけにリターンは大きく美味しい。アマルガムビーストの攻撃はサキの体を掠めるだけでも装備耐久とHPをゴッソリ減らしていくが、姫プ装備を纏ったサキのHPバーを削り切るにはまだまだ遠く、一方でマキシマムカウンターを繰り出す度にアマルガムビーストはHPを減らし、次々にその数を減らしていく。

 角を振り上げ襲ってくるのは、アマルガムビーストの最後の一体。正面から眉間を貫けば、アマルガムビーストは大仰なエフェクトと共にHPバーを一瞬で減らし、その巨体は地に崩れ落ちる。

「楽勝、楽勝!イェイ♪」
 光の粒子となって霧散するアマルガムビーストの残骸を前に、サキは満面の笑顔を浮かべると、初心者たちへピースサインを向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・菊生
アドリブも他PCやNPCとの共闘も大いに歓迎じゃ。

初陣に臨む若武者ばかりを狙うとは随分と恣意的な動きじゃな。戦略的なものなのか、はたまた奴等の本能か。
まあ、やる事は変わらぬか。

横槍、失礼する。

逃げる3人とすれ違う形で間に入り、まずは弓を持って獣へとしこたま矢を射かけよう。
距離が詰まれば薙刀に持ち替え、更に秘術にて霊を喚ぶ。
ー来れ、武蔵坊
奴らの爪牙、この世界の者に届かせる訳にはいかぬ。我らが壁となり足を止めるぞ。
我と武蔵坊、他に猟兵が居るならその得物にも破魔の力を宿し、獣を相手取ろう。
主に我が脚を狙い、武蔵坊が頭を狙う。
足を払い、横っ面を薙ぎ、姿勢を崩した所を更に突く。
徹底して動きを封ずるぞ。


岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎

ルーキーを狙った敵ですか……状況は了解しました。急ぎプレイヤーたちの救援に向かいましょう。
救援となると人手が必要かもしれませんね……ふむ、ここはゴーレムを利用しましょう。

UCを発動して装備した大剣の「輝鉱」を封印することで、腕が大剣と一体化した戦闘用のゴーレムを召喚、プレイヤーに向かっていく敵に突撃させます。
鋼の体を持つゴーレムであれば敵の攻撃にも耐えることは可能ですし、リーチのある大剣は接近する必要がある敵UCには有効でしょう。

ゴーレムに突撃するよう指示を出した後は拳銃を用いてゴーレムを援護するように戦闘を行い、プレイヤーの方へ害が及ばないように立ち回っていきますね。



 ──二度あることは、三度ある。

 初心者たちは未だ、森の中。
 二度の救援にほっと胸をなでおろし、謎の|上級者《プレイヤー》たちとも一時別れ。ようやく足取りも緩んだところで──彼らは奇しくも、バグプロコトルの|再配置《リポップ》に遭遇していた。

「なん、でだ、よーっ!」
「うるさい走れ!」
「もう無理だってぇ!」
 もはや見慣れたそのバグプロコトルに、初心者たちは黙って即座に回れ右。そして湧いて早々に標的を見つけたアマルガムビーストは、もちろん揃って彼らの背中を追い掛けていた。
 初心者たちは急いで来た道を戻れども、彼らは既にアマルガムビーストのその恐るべき速度を体感していた。ただでさえ逃げる事が難しい相手、その上アイテムもスタミナももう限界。となれば、このまま逃げ切れる筈もない。

「誰か助けてくれえぇ!!」
 だからこそ、藁にも縋る思いで初心者たちは大声をあげる。二度あることが三度あると言うならば、再び助けてくれる誰かがこの森に居ることを、願っても良いだろうとそう縋る。

 そうしてヤケになって走る初心者たちの──視線の先には、人影がふたつ。

「ルーキーを狙った敵ですか……」
「初陣に臨む若武者ばかりを狙うとは、随分と恣意的な動きじゃな」
 落ち着いた様子で、どこか穏やかにも思わせる言葉を交わせているのは、かたや大弓の白拍子、かたや大剣の傭兵。それぞれ異なる巨大な武器を伴った二人の猟兵は、白拍子が先んじて動きをみせる。

「横槍、失礼する」
 素早く初心者たちへ近付いた白拍子、春乃・菊生が通り過ぎざまにそう囁くのと、アマルガムビーストへ弓を射かけるのは殆ど同時のことだった。
 菊生は身の丈を遥かに越える大弓を構えると、弦を引き絞り矢を放つ。絶え間なく放たれる矢は次々にアマルガムビーストへと命中しその疾走を阻んでゆく。

 そして菊生の背後では、もう一人のひと影──大剣の傭兵、岩社・サラが静かにユーベルコードを発動する。

「召喚開始、攻勢に出ます」
 サラがその大剣「輝鉱」を手放すと、大地がせり上がり大剣を包み込む。巨躯を思わせる岩石となったそれは内側からひび割れて、喚び出されたのは青白い光沢に輝く鋼の巨人だ。大剣を腕に一体化させたスティールゴーレムは、すぐさま群れへ突進すると大剣を大きく振り、アマルガムビーストの体を圧し潰すように両断して蹴散らしていく。

「下がっていてください」
 サラは呆気に取られる初心者へ忠告しながら、ゴーレムの動きをサポートするべくアマルガムビーストの足元を狙って拳銃を発砲する。

 硬質のスティールゴーレムの体は強固な上に、リーチの長い大剣では、アマルガムビーストの爪は容易く届かない。幾度となく輝くユーベルコードのエフェクトはそのどれもが不発を繰り返し、一方で制圧射撃と巨人の剣戟によってHPバーを削られたバグプロコトルは、着実にその数を減らしてゆく。

「すげぇ…!」
 圧倒的とも言える戦闘に初心者パーティが感心を溢した、次の瞬間。新たに|湧いて出た《ポップした》アマルガムビーストが彼らの背後に迫りくる。しかし鋭い爪が、初心者たちのアバターを引き裂くその寸前、サラの弾丸と菊生の矢は素早くバグプロコトルを仕留める。

 腰を抜かして恐れ慄きながら、二人の元へ後退る初心者たちの視界に映るものは、森の茂みから新たに湧き出るアマルガムビーストの群れだ。徹底的に初心者をターゲットにしている様子は戦略なのか、はたまた或いは本能なのか。

「まだ増えるようですね」
「なに、やる事は変わらぬよ」
「同意します」
 二人の落ち着いた言葉に、初心者たちは目を見開く。どんな気掛かりがあれども、どれほど数が増えようとも、猟兵にとっては倒すべき有象無象が増えただけに過ぎない。
 菊生は初心者たちの盾になるように一歩前へ出ると、大弓から薙刀へ持ち替える。長い柄で弧を描けば、水干の袖が風もないのにふわりと浮かぶ。

「──来れ、武蔵坊」
 |秘術《ユーベルコード》によって誘われるのは怪力無双の荒法師、武蔵坊弁慶。菊生が薙刀をゆらりと振るうと、一帯の武器はみな破魔の力を宿した。

「奴らの爪牙、この世界の者に届かせる訳にはいかぬ。我らが壁となり足を止めるぞ」
「了解。援護します」
 サラの拳銃が再び火を放ち、菊生と武蔵坊が一斉に前へ出る。菊生が薙刀の柄で足を薙ぎ払い、姿勢を崩したところを武蔵坊が岩融で突き刺し裂く。
 群れは二人を囲い込み、ユーベルコードのエフェクトはアマルガムビーストの在らぬ箇所に牙を与えるが、サラの拳銃が巧みに気を引き立ち回り、不意打ちすら届かぬままに横っ面を薙ぎ叩かれる。破魔の力の|強化《バフ》で威力を増した攻撃の数々は、もはやアマルガムビーストを脅威とはしていなかった。

 徹底的に動きを封じられた獣の頭を、無双の荒法師は次々と突き裂いて、大仰なエフェクトは一気にHPバーを削り切る。
 クリティカルの判定にエフェクトは輝き弾け続ける。目の前で繰り広げられる百戦錬磨の活劇を前に、初心者たちの瞳にあるのは──強い羨望の光だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キキョウ・ハットリ
|悪《バグ》はこんな初心者クエストにも魔の手を伸ばしていたか。
猶予は無いな。これより助太刀に入る。

忍者(シノビ)らしく暗殺術を披露するとしよう。
森の中ならば障害物も多い。木々に紛れ、気配を隠し、背後から仕留める。
敵がプレイヤーに気を取られているのなら成功率は高いだろう。

いざ正面からの戦闘となれば【忍法・空蝉之術】で攻撃を回避し、敵の不意を突き仕留める。
攻撃の瞬間は誰であろうと隙が生じるものだ。どのような速度、回避力を持っていたとしてもな。

先にだまし討ちしたのはお前たちだ。まさか卑怯とは言うまい?
……ふっ、獣に言葉は通じんか。


月隠・三日月
遺伝子番号の焼却……村八分にあう、みたいな感じなのかな?
ごめんね、私にはどうにも難しくて。異世界の決まり事にも少しは慣れたつもりだったのだけれど。

ともかく、この世界の人はあの……バグプロトコル? にやられるとまずいのだよね。
戦うのは楽しいけれど、逃げるのも戦術のうちだ。敵は私が相手をするから、その間に逃げてもらいたいな。

敵の爪に当たると無事では済まなそうだね。【妖刀解放・大太刀】で妖刀を大太刀に変化させて、敵に間合いを詰められないよう牽制するように立ち回ろう。
敵を観察して(【情報収集】)、隙を見つけて攻撃しよう。
もし敵が飛びかかってきたら、逆にこちらから間合いを詰めて先に相手を攻撃したいね。



 初心者たちがどこまでも、紙一重で逃げ果せていたのは、何故だろう?
 当然、それは|幸運値《LUCK》だけで終わる話ではない。この|世界《GGO》の|悪に侵された《バグった》初心者クエストへ──介入し、助太刀する存在が居たからだった。

 キキョウ・ハットリはいち早く森へ辿り着くも、逃げ惑う初心者パーティへ即座に手出しはしなかった。
 この森は初心者向けのクエスト群の舞台だ。正常時であればモンスターのポップ上限は数が少なく、湧き場もその殆どがクエストに紐付けられている事が多い。

 しかし今回のバグプロコトルのそのバグは、アマルガムビーストの存在のみに留まらず、エリア一帯の湧き場の位置も再配置の頻度も、バグっている事はAIの目にも明らかだった。

 猶予はない。されど一部の群れにかまけていては、パニックに陥り絶え間なく逃げ惑う初心者たちが次の湧きに遭遇した瞬間、彼らはHPバーを呆気なく散らして|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却されてしまうだろう。
 ──なればこそ、他の猟兵を使って立ち回る事こそ|忍者《シノビ》足らむと言えるだろう。

「これより助太刀に入る」
 木々に紛れ気配を隠したキキョウの囁きはその刹那、くないを放つ。鋭く放たれた両刃の暗器は木々を抜け、風を切って初心者たちに迫る魔の手へ突き刺さる。不意打ちを食らったアマルガムビーストは僅かに姿勢を崩すと振り上げた爪は空を切り、一方で彼らは何も気付かぬままに走り続ける。

 神回避とでも呼ばそうなほどの紙一重を繰り返す初心者パーティが、他の猟兵と合流すればキキョウは即座に身を引き影に徹する。初心者たちがからくも逃げおおせると、彼らの後ろをキキョウは再び追いかける。

 入れ替わり立ち代わり、森を進みいよいよ|出口《ゴール》が近付き始める──そんな時にもやはり、|想定外《バグ》はあるものだ。

 幾度目かの危機を脱した初心者たちの背後に潜んでいたキキョウは、足元に湧いた胡乱な気配に足を止めると、地面を蹴って跳躍する。前触れもなく湧き出すのは、アマルガムビーストの新たな群れだ。

 ──無数の瞳がキキョウを映し、飛び掛るその刹那。ふいに現れた黒い影が、群れへ飛び込みアマルガムビーストの頭を斬り落とした。
 謎の闖入者の暗殺にヘイトが移る、その隙をキキョウが逃すことはない。くないを逆手に持ち替えると不意打ちの一撃で急所を穿ち仕留める。

「あなたも忍かな」
 アマルガムビーストの群れが取り囲む中心でキキョウと背中を合わせながら、その闖入者──月隠・三日月が口にする言葉は、場違いなほどに穏やかだ。
 この|世界《ゲーム》のプレイヤーとは異なる世界の|猟兵《プレイヤー》に、キキョウが僅かに眉をあげる。

「|遺伝子番号《ジーンアカウント》の無い|猟兵《プレイヤー》か」
「遺伝子番号…ないと、村八分に合う、みたいな感じのものだよね」
「……」
 三日月の気の抜けそうな言葉にキキョウは答えず、くないを振るってアマルガムビーストの爪を払う。

「ごめんね、私にはどうにも難しくて。異世界の決まり事にも少しは慣れたつもりだったのだけれど」
 三日月はどこか気恥ずかしそうな笑顔で謝罪を口にしながら、迫り来るアマルガムビーストを斬り上げると、今度は笑みを忍ばせて、敵に鋭い眼差しを向ける。

「ともかく、この世界の人はあの……バグプロトコル? にやられるとまずいのだよね。ここは私が相手をするから、彼らを逃がしてあげてほしいな」
「…かたじけない」
 キキョウが囁きをひとつ落とすと、その姿は音もなく掻き消える。アマルガムビーストの無数の視線は残らず三日月に集まり、その爪はユーベルコードの輝きを帯び始める。

「爪に当たると無事では済まなそうだね」
 剣呑なエフェクトは爪の威力もさることながら爆破する|力《バグ》を秘めている。三日月は注意深く観察しながら間合いを取って牽制し、次々に襲い掛かってくる爪を掻い潜る。

「この刀、本来はもっと大きいんだよ」
 戦いに猛る羅刹は笑みを浮かべると、妖刀に敷き詰められた封印の呪符を一枚引き剥がす。微かに火花を零しながら呪符を剥がれた刀身は、ずるりと妖気を吐き出し刀身を這いずった。妖気はそのまま鍔を覆い、三日月の手を伝いその精神を侵食する。

 三日月は僅かに眉をしかめ──けれどやはり温和な微笑みを浮かべたまま、軽々と刀を振った。解放されたその妖刀は、瞬きひとつで三日月の身の丈を越える大太刀へと変貌する。

「得物は大きい方が有利、だろう?」
 獣は答えず、爪を振りかぶり三日月へ飛び掛る。その忍はユーベルコードの輝くエフェクトを素早くすり抜けて、大きく踏み込むとアマルガムビーストを一刀で両断する。たじろぐ獣に、三日月はやはり微笑みを浮かべたまま、流れるように間合いへ踏み込むと大太刀を振るう。

 ほどなく静けさを取り戻した森の中では、バグプロコトルの分かたれた胴体が音もなく消失していった。


 ──|初心者《プレイヤー》の背中に追い縋るアマルガムビーストへ、|忍者《シノビ》は素早く近付き音もなく仕留める。

 再び木々へ紛れ気配を隠したキキョウは、群れの残党を着実に減らしていく。獲物に気を取られ潜む忍者に翻弄される|悪《バグ》は、もはや脅威と呼べぬ。しかし幾らヘイトを稼がぬ立ち回りであろうとも、戦闘が重ねればいよいよ|標的《タゲ》は移るもの。

 アマルガムビーストは前脚を踏み締め急停止。瞳をぐるりと回し体を反転させると、そのまま勢い良くキキョウへ飛びかかる。
 ユーベルコードによって魔獣のオーラを身に纏った、その目にも止まらぬ疾走は避ける事もできはしない。瞬時に迫る恐るべき速度に、キキョウは目を見開いた。

 アマルガムビーストは獲物の体を跳ね飛ばし、キキョウはそのまま四肢を木々に打ち据え倒れ伏す──かに、見えた。

「残念だったな」
 影に潜む囁きと共に、くないが翻る。空蝉之術──無防備を装った残像の、そのユーベルコードの身代わりは音もなく消失し、キキョウは容易く獣の喉笛を掻き切った。
 くないを持った手をだらりと落としたキキョウの、無防備な背中をもう一体のアマルガムビーストが狙うが──それもまた、|身代わり《ダミー》だ。

「先に騙し討ちしたのはお前たちだ。まさか卑怯とは言うまい?」
 獣はもはや、その忍者を捉えることはできない。バグプロコトルのユーベルコードを物ともせずに、転がる躯に|忍者《シノビ》は笑んだ。

「……ふっ、獣に言葉は通じんか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
ここがGGOの中でござるかぁテーマパーク見たいでござるな
テンション上がるなァ~

全身を鈍色に輝かせた拙者が初心者達の前にエントリーだッ!拙者ちゃんインしたお!おいすー
これは【流体金属】と拙者が合体したスーパーハンサム形態でござる!新たなモンスターじゃねぇですぞ!
何やら楽しそうに走ってたでござるからな~拙者も仲間に入れてくれよ~

爪振りかざして暴れる|わんちゃん《ビースト共》!拙者はそんな子に育てた覚えはありません!躾が必要でござるな!
文字通りの鉄拳で愛のパンチだ!反射速度を上げているから爪で攻撃される前に顎を撃ち抜くでござるよ
悪戯する子はこうやって軽くお仕置きすれば死んでしまったか他愛ない…



 幾度の危機を乗り越えて、初心者たちの視界にはいよいよ森の出口が見え始める。体力も気力も尽きかけていた彼らはワッと声を上げて、諸手を上げて走り出す。長かったような短かったような道中も、終わって振り返りみればあっという間だろうか。
 森を抜ければ、ようやく一息つける──そんなことを思ったのも束の間。初心者たちの休息はまだ遠かった。
 がさりとあらぬ音を立てる茂みに彼らは揃って驚き振り返る。それはもはや、|お約束《テンプレ》と言えそうなほどに馴染み深い。

「まだ居るんかい!」
 走り出しながら繰り出す盛大な突っ込みは、飛び出してきたアマルガムビーストにとっては何の効果もないものだ。次から次へと押し寄せるバグプロコトルの群れには、いよいよ|猟兵《センパイ》方も間に合わない──いやいや?そんな事は、ある筈もない。

「全身を鈍色に輝かせた拙者が初心者達の前にエントリーだッ!拙者ちゃんインしたお!おいすー」
「ぎゃああああ!」
 緊迫極まる最中、前触れもなく茂みから飛び出す隠し玉。アマルガムビーストへ肘鉄を食らわせながら初心者たちに併走するのは、新たなバグではなくモンスターでもなく、エドゥアルト・ルーデル。ご安心あれ猟兵だ。
 しかし初心者たちはエドゥアルトの姿に、ノータイムで悲鳴をあげる。助けに来た猟兵に対してヒドい、なんて責めるなかれ。だって、ユーベルコードでメタルに輝くエドゥアルトのその姿は、どうみても新たなモンスターにしか見えないのだから。

「ここがGGOの中でござるかぁテーマパーク見たいでござるな〜テンション上がるなァ~」
「話しかけてきたああぁ!?」
「AIなの!?モンスターなの!?」
「いやいや、これは【流体金属】と拙者が合体したスーパーハンサム形態でござる!新たなモンスターじゃねぇですぞ!」
「嘘つけどうみてもモンスターだろ!」
「え?皆キャラメイクやらんタイプ?ビビッドカラーの肌色とかレインボーとかサ〜」
「色物プレイヤーじゃねえか!」
「ハッハッハ」
 初心者たちの悲鳴もアマルガムビーストの群れもそっちのけて、至って気さくに話を広げるエドゥアルト。その表情はハンサムを自称するに問題のない笑顔といえども、鈍色に輝くメタルカラーは白飛び反射し表情なんぞは潰れているもの。むしろ好意的な分を割増で、初心者たちはますます困惑が深まるというものだった。

「いや〜何やら楽しそうに走ってたでござるからな~拙者も仲間に入れてくれよ~」
「そういう状況じゃねぇってえぇ!」
 悲鳴と言うよりももはや泣き言──そう、初心者たちの状況は相変わらずひっ迫しているのだ。迫るバグプロコトルの群れにいよいよ限界を迎えたパラディンの膝ががくりと落ちる。彼らが声を上げる間もなく、鋭い牙がその身を噛み千切る──その瞬間。

「やかましい!」
 アマルガムビーストの顔面にはエドゥアルトの裏拳が突き刺さる。牙を弾かれたアマルガムビーストはめこっと顔をめり込ませ、群れを巻き込み後ろに吹っ飛ぶ。驚き転がる初心者たちの目の前にはメタルに輝きバグプロコトルへ立ち塞がるエドゥアルトの姿が映る。

「拙者はそんな子に育てた覚えはありません!躾が必要でござるな!」
 何故か説教がましい言葉を口にして、ファイテングポーズを取るエドゥアルトの後ろ姿は──ヒーローには見えないだろう。

 間髪入れずに襲い掛かってくるアマルガムビーストへ、エドゥアルトは文字通りの鉄拳パンチ。ユーベルコードのメタル化で反射速度の上がったエドゥアルトにとっては、爪の攻撃はもはや止まって見えるもの。四方八方から襲いかかる攻撃を容易く回避し、ステップで懐に踏み込み素早く顎を撃ち抜いていく。

「悪戯する子には愛のパンチだ!」
 アマルガムビーストのユーベルコードは不満げなエフェクトを散らしながら空を切り、次々にHPバーを減らしていく。エドゥアルトにとっては軽いお仕置きに過ぎぬそれは、あっという間に群れを撃退していった。

「死んでしまったか他愛ない…」
「ええ…ええぇ…?」
「なんのジョブなんだよ…」
「ジョブの問題…かなぁ~?」
 初心者の困惑もなんのその。|わんちゃん《ビースト共》を|躾けた《ボコった》エドゥアルトは拳をを突き上げ顔を上げる。雲一つなく晴れ渡る秋空のようなその清々しい笑顔は、初心者たちの困惑をますます深めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『【全体チャット】強化おねです。』

POW   :    物理攻撃系統の強化を行う。

SPD   :    速度系統の強化を行う。

WIZ   :    魔法攻撃系統の強化を行う。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ようやくバグから逃げおおせ、森を抜ることができた初心者たち。緊急アラートもすっかり鳴り止んだその視界に広がるのは、現実と身構えるほどの壮大なグラフィック──本来のGGOの姿である。
 諸手をあげてわっと飛び出し彼らは顔を見合わせると、安堵に胸を撫でおろす。そしてくるりと振り返ると、ここまでの道中を助け続けてくれた猟兵たちに向かって、彼らは揃って深々と頭を下げた。

「ありがとうございましたーッ!」
 幾度となくその身を救われた初心者たちの眼差しにあるのは、深い感謝と強い羨望だ。顔をあげた彼らは肩を寄せて頷き合うと、アーチャーが一歩前へ出る。

「あの…勝手なお願いなんですけど、もし良かったら、俺達とパーティ組んでくれませんか?」
 ゲーム開始早々バグプロコトルに遭遇し、からくも生き延びた諸新茶たち。彼らはこのゲームに恐怖を抱き、うんざりしてログアウトしても良い筈だった。だがそれを良しとしないのは──このゲームを恐ろしいものだけで終わらせたくはないのだろう。
 そんな事情はさておいても、バグプロコトルはいつまた現れるとも限らないのだ。猟兵がアーチャーの手を取り了承すれば、彼は顔をあげて嬉しそうな笑顔を浮かべる。

「ありがとうございます!俺たち初心者なんで、色々教えて貰えると助かります!」
 猟兵の中にはまだこの|世界《ゲーム》に慣れていない者もいるだろうが、猟兵たちが戦闘面での先達である事は間違いない。戦闘のイロハならば、世界は違えど猟兵の領分だ。

「っしゃー!それじゃ自己紹介っスね!オレは【サーシャ】っス!ジョブはウォリアーやってます!」
「俺は【12_12】、アーチャーです。イチニーって呼ばれてます」
「【にょっき】で〜す。パラディンです〜よろ〜」
 賑やかな自己紹介を手早く済ませて、パーティは楽しげに森を進んでゆく。矢印の示す目的地は森の中腹の伐採地。少し開けたその場所はチュートリアルに相応しくエンカウントも控えめで、広く見通しの良い場所だ。
 猟兵たちは彼らを見守りながら、技能やユーベルコード、あるいはアイテムを使ってサポートするのが良いだろう。恩人である猟兵たちの助力も言葉も、そのどれもが心強い助けとなるのだから。

「そんじゃ、狩り場に付いたら【全体チャット】強化とか色々おねでーす!…あれっ?」
「あっ全チャになってるよ〜」
「【全体チャット】やっべミスったスンマセン!」
「あー…うるさかったら、すみません」
キキョウ・ハットリ
元よりお前たちを|サポート《支援》するように言いつかっている。
そうでなくともプレイヤーの手助けをするのはNPCの務めだからな。喜んでパーティに参加するとしよう。

タンクが味方を守り、アタッカーが攻撃し、ヒーラーが回復する。
これがパーティプレイの基本だがお前たち3人に味方を回復できる者はいないか、あるいは回復量の少ないスキルしか持っていないはずだ。
今後はパーティの組み方も工夫した方が良いだろう。

だがヒーラーがいなくともやり様はいくらでもある。
【忍法・煙眩無明】を使えば敵を隙だらけにして一方的に攻撃が可能だ。
さらに煙幕をうまく使えば反撃も受けずタンクの負担も少ない。
では、実戦で試してみるとしようか?


春乃・菊生
アドリブに共闘、ご随意に。

これはただの噂じゃが。
バグプロトコルとやら、ひとたび湧けば大元を絶たねば収まらぬとか。
くふ。貴様らだけではちと心許ないのう。

我は菊生。春乃・菊生と申す。
霊を喚ばうを得手としておる。よしなに。


やれやれ、声だけは大きいの。
さて、この者ら。先ほどは随分と浮足立っておった。
我は武こそ修めぬが、舞を修める者としてひとつ手ほどきを。
まずは両の足で真っ直ぐに立つことじゃ。
首から下は落ちるがままに垂らせ。肩も腰もじゃ。
そして動くときは首から上を倒してはならぬ。
すべての基本は立位にある。

…彼らの鍛錬の間はUCで鷹を喚び索敵しつつ、彼らの得物や具足へと破魔の力と呪詛への耐性を授けよう。



 程なく一行が辿り着くのは森の中腹の伐採地。開けた場所に切り株が固定のオブジェクトとして設定されているせいか、閑散としているようにも見えるが、視界にはすぐさまぽんっと軽い音を立てて動物系モンスターが湧いてくる。

「それじゃ早速、よろしくお願いします!えっと…」
「キキョウ・ハットリ。|忍者《シノビ》だ」
「我は菊生。春乃・菊生と申す。よしなに」
 前へ出た二人の猟兵に向かって初心者たちは頭を下げると、そうしてすぐに顔を見合わせる。
 この|世界《GGO》の|職業《ジョブ》も|技能《スキル》も多岐に渡るもの。彼らは勿論全てを把握しきれているはずもないが、それでも知識として知っていることはある。

「|忍者《シノビ》に和服…東方って未実装なんじゃ…?」
 二人のジョブや見て取れる装備から、つい連想してしまうのは初心者ですら噂に聞き及ぶ未実装のエリアだ。

「|お前たち《プレイヤー》にとっては実装前でも、里やNPCは存在しているからな。お前たちを|支援《サポート》するように言いつかっている」
「NPC!?」
「GGOすっげェ…」
 GGOの初心者にしてみれば、NPCといえば決められた言葉を繰り返す案内人という認識であろうが、この世界のNPCはプレイヤーと全く遜色のないAI人間だ。究極のオンラインゲームの一端に、わっと湧き立つ初心者たちの視線は勿論、菊生にも向けられる。

「もしかして、菊生さんも〜?」
「なに、我はしがない白拍子じゃ。霊を喚ばうを得手としておる」
「へえ…?霊ってことは、菊生さんは魔法職って感じですか?」
「然り」
 菊生がおもむろに扇を取り出し、ゆるりと揺らせば|秘術《ユーベルコード》がひと本の翼を誘う。高く響きわたる笛の鳴き声と共に現れた蒼鷹は、大きな両翼を広げ滑空すると菊生の拳に留まる。

「先の戦いで見せた武蔵坊の他にも、このようにな。鷹であれば索敵に適しておる」
 鷹が同意するように声をあげると菊生が腕を大きく振った。飛び立つ鷹の、そのようようとした姿に初心者たちは思わず歓声をあげる。

「さて、先ほどは随分と浮足立っておったな。我は武こそ修めぬが、舞を修める者としてひとつ手ほどきをしてやろう」
 菊生はぱちりと扇を閉じる。この世界では戦いのすべも勿論必要であろうとも、まずは|基本の動作《チュートリアル》からだ。

「まずは両の足で真っ直ぐに立つことじゃ。首から下は落ちるがままに垂らせ。肩も腰もじゃ」
 扇を初心者たちの目前に向けて、そのままスッと足元に落とす。初心者たちは慌てて菊生の言葉にならって姿勢を正した。素直な様子に菊生は頷くと、ぐるりと周囲を歩いて彼らの体の位置を改める。

「そして動くときは首から上を倒してはならぬ。すべての基本は立位にある」
 武器を持つよう促せば、彼らの動きはやはりどこかぎこちない。だがそれも、言われたことを意識している証拠だ。
 菊生の手ほどきのもと、素振りを繰り返していればぎこちない動きも徐々に滑らかになる。真に馴染むにはまだ幾分かかかろうが、この様子ならばいずれ身に付くことだろう。

「うむ、よかろう。少しは見違えたようじゃな」
「ヨッシャ!」
「ありがとうございます」
「じゃ〜戦ってみていいですか?」
 待ちきれないのだろう。うずうずと落ち着かぬ様子で武器を持った彼らの視線の先には、ちらほらと呑気な姿を見せる動物性モンスター。非アクティブのそれらは初心者向けの恰好の的だ。

「待て、待て。破魔の力を授けてやろう。念のため呪詛への耐久もな」
 菊生が扇をゆるりと揺らすとそこには二色のエフェクトが輝く。初心者たちの武器や防具に触れていけば、それらは強化をまとい仄かに光を発していく。

「ではその間に、私が簡単な座学をしてやろう」
 そして今度は、菊生の手ほどきを見守っていたキキョウが初心者たちの前に出る。

「タンクが味方を守り、アタッカーが攻撃し、ヒーラーが回復する。これがパーティプレイの基本だ」
「テンプレッスね!」
「そうだ。そして、お前たち三人にはヒーラーが欠けている。回復量は生存力だ。今後はパーティの組み方も工夫した方が良いだろう」
「うーん…|転職《ジョブチェンジ》か…」
「早まる必要はない。ヒーラーが居らずとも、やり様はある」
 そう言いながらキキョウが開いた手の上には、ユーベルコードのエフェクトが輝き煙玉がひとつ現れる。そのままモンスターに向かって投げれば、煙玉は弾ける瞬間に煙幕を噴き出した。

「例えば私のユーベルコード【忍法・煙眩無明】を使えば、敵を隙だらけにして一方的に攻撃が可能だ」
 それだけで隙を作る煙幕は、敵にはダメージと麻痺の効果を、味方には姿を隠す隠密効果を与えるものだ。

「さらに煙幕をうまく使えば反撃も受けずタンクの負担も少ない」
 キキョウは麻痺で動きの鈍ったモンスターへ歩いて真っ直ぐ向かう。アクティブ状態となったモンスターはキキョウへ緩慢なタックルを繰り出すが、煙幕に惑わされたその攻撃はあらぬ方向を向いていて、とてもではないがキキョウに当たりそうもない。モンスターの背後に回り込み、一瞬でそのHPを削り切り戻ってきたキキョウは、当然のように無傷だ。

「では、実戦で試してみるとしようか?」
 キキョウは煙玉をもう一つ取り出すと、おもむろに放り投げた。


「やれやれ、声だけは大きいの」
 煙幕の中に響くのは、初心者たちの賑やか過ぎる大声だ。まだまだぎこちなさはあれど、それでいて悲痛な声はひとつとなく、楽しげな様子が見て取れる。

「…言われた事は、意識してやろうとしているようだ」
「くふ。まだまだ心許ないがのう」
 初心者たちの奮闘を眺めながら、菊生がふっとその目を細める。

「これはただの噂じゃが。…バグプロトコルとやら、ひとたび湧けば大元を絶たねば収まらぬとか」
 索敵に放った鷹の視界は、目ぼしい危険を見付けてはおらず、まるで先の騒動が嘘のように平穏そのものだ。

「…噂に過ぎんな。NPCの私にも、未だわからんことが多すぎる」
「この世界の者とて、何も断言できぬか。致し方ないのう」
 もうひと波乱を予期しながらも、後手に回るしかないのは歯痒いところだ。猟兵たちの胸中をよそに、初心者たちは煙幕の中で勝鬨をあげていた。

「プレイヤーの手助けをするのはNPCの務めだ。何が来ようとも、必ず|悪《バグ》は討つ」
 |彼ら《プレイヤー》の姿を見守りながら、キキョウは強い覚悟と決意を口にする。そうしておもむろに煙玉をもう一つ取り出すと、そのまま彼らの近くへ放り投げた。煙玉が命中し、アクティブ状態になったモンスターは近くのプレイヤー…初心者たちに突っ込んでいく。

「ちょっ…キキョウさん!?連戦なんスけどーッ!?」
「攻撃は受けていないだろう」
 キキョウは涼やかにそう返しながら、連戦に慌てる彼らの近くにまた煙玉を投げ込んだ。麻痺で鈍くなっているモンスターであれば複数くらいが丁度良い、とでもいうように。景気よくあがる悲鳴はされど、しっかりと楽しそうな色を乗せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

中村・一哉
アドリブ/連携可 SPD
(手は元に戻ってます)

「無事に逃げ切ったかー、よかったよかった」
さて、今度は中級者として彼らをサポートしていかないとな。
とりあえずアーチャーのイチニー、同じ弓使いとして彼にパーティプレイ時の立ち回りと援護射撃のやり方を教えておこう。
まずはお手本として、サーシャが戦っているモンスターに援護射撃(この時完全に倒さないで、サーシャが止めを刺せるように立ち回る)
「この時、間違って味方に当てないようにな。じゃ、次はイチニーがやってみようか」


エドゥアルト・ルーデル
つまり貴様らもメタルキメてメタルマンになりたいと…違うの?

しゃーなしでござるなぁパワーレベリングに行くでござるよ!
という訳でチュートリアル地を離れ初心者じゃ死にそうで死なない少し死ぬ敵が出る場所に連れていくでござるよ!

大体攻撃とか防御とかするたびに熟練度的なものがあがると思うんでござるよね
システムよく知らんけど
HPとかも一戦毎大きく消耗した方が大きく上がると思うんでござるよね
システムよく知らんけど

つまり極限まで追い込んでから拙者がパワーを発揮するって事でござるよ
ギリギリ攻めるねッ!大丈夫、多分死ぬ前に回復用のUCを使ってあげるから…
という訳で常に動き続けろ!何勝手に死にそうになってんだ殺すぞ!


月隠・三日月
ふふふ、私が教える側とはね。なんだか緊張してしまうな。私はあまりこの世界に慣れていないのだけれど、よろしくね。
私は月隠三日月。ジョブは化身忍者×妖剣士……あれ、この世界では違う表現をした方がいいのかな?

戦い慣れていないのなら、一度に多くの敵を相手取るのは大変かもしれないね。敵の数の少ない場所だから大丈夫だとは思うけれど、もし敵を倒し切れていないようであれば【影縛り】で敵の動きを止めて補助しようか。

こういった呪術めいた忍術はあまり得意ではないけれど、使う暗器に護符を巻けば何とかなるからね。時には、この護符のような補助具を使うのもいいのではないかな。この世界にも似たようなものはあるだろうからね。



「よっしゃ!」
 程なく鳴り響いたレベルアップのファンファーレに、サーシャは空へ両拳を突き上げる。どれほど慣れずとも、圧倒的な優位からの戦闘は初心者たちへ|経験値《EXP》を与えていた。
 もちろんそのステータスに表示されている数字は、まだまだ初心者の域を脱せぬものだが、それも確かな一歩には違いない。続けて他の二人の元にもファンファーレが鳴り響き、初心者たちは各々の成長に喜びを噛み締める。
 このまま順調に行けば、クエスト進行の推奨レベルにはすぐに辿り着けるだろう。ともなれば──。

「|基本《チュートリアル》は完璧でこざるなぁ!お次はパワーレベリングに行くでござるよ!」
「え?」
 もちろん、順調の更に上を目指すのがその猟兵、エドゥアルト・ルーデルである。エドゥアルトは初心者三人の襟首をむんずと掴むとそのまま次の狩り場に走り出す。

「ギリギリ死にそうで死なない場所はどこかなーっ!」
「えええーッ!?」
 困惑も冷め切らぬ初心者たちは当然のように悲鳴を上げるが、彼らにとっては不幸な事に──この場で強引なレベリングを強要するエドゥアルトに、異論を唱える猟兵はいなかった。|強さ《レベル》は正義、ゲームは強くなってこそである。

 蚊ほども届かぬ抵抗むなしく、一行が次に辿り着いたのはチュートリアルエリアに隣接した、初心者だけでも死にそうで死なない…とはいえ一歩間違えば初心者なんてサクッと死ぬくらいの狩り場である。

「熟練度的なものがあがると思うんでござるよね〜システム知らんけど」
 ゲームといえばやはり、いつだってそういうもの。システム如何に差はあれど、戦えば戦う程に経験値は増え、熟練度《プレイヤースキル》はあがっていくというものだ。エドゥアルトの言葉に納得しきれぬ顔を見せつつも、初心者たちは大きく頷く。

「そんでHPとかも一戦毎に大きく消耗した方が大きく上がると思うんでござるよね〜システムよく知らんけど」
「このおっさんテキトー言い過ぎじゃね!?」
「丁度良いって意味の適当ネッ!褒められると照れるでござる〜、なッ!」
 わざとらしい笑顔を見せながら、エドゥアルトは初心者たちの背中を蹴っ飛ばして、容赦なく狩り場へ放り込む。先程のモンスターは非アクティブだが、今回はアクティブ。一定距離のプレイヤーを視認したモンスターは初心者たちは勢い良く向かってくる。

「ああぁ!死ぬ!死ぬって!」
「大丈夫、多分死ぬ前に回復用のUCを使ってあげるから…初心者だからデスペナもないし。という訳で常に動き続けろ!」
「めちゃくちゃだろ!」
「にょっき、盾!盾!お前タンクだろ!」
「あわわ…っぐえっ!」
「にょっきー!!」
「何勝手に死にそうになってんだ殺すぞ!」
 急かされ慌ててにょっきは盾を取り出すも、それを構える間もなくあっさりと盾ごと吹っ飛ばされる。そして仲間の無残な姿にまんまと気を取られる二人にも、やはりモンスター攻撃は襲い来る。

 そんな初心者たちの様子を月隠・三日月と並んで、遠目に眺めていた中村・一哉は乾いた笑いを浮かべて頬を掻く。

「ちょっと可哀想だな…」
「そう?手っ取り早くて、悪くないと思うよ」
 同意を求めていたわけではない。とはいえ三日月の、その温厚そうな見た目からは予想もつかなかった感想に、一哉は思わず天を仰いだ。

「おっと、そういうタイプか。ま、この手のゲームはできる事が多いほうが楽しいか」
「そうだね。戦うのが楽しくなると良いね」
「はは。それじゃ楽しませる為にも、俺は堅実に行かせてもらおうかな」
 一哉は一歩前へ出て月光弓を構えると、初心者たちに襲いかかろうとしていたモンスターを素早く射抜く。改めてよくよく見れば、盛大に吹っ飛ばされていた割に、彼らのHPにはもう少し余裕がある。猟兵たちの意図に関心しながら、一哉は大きく手を振った。

「おーい!同じ弓使いだからな、イチニーはこっちで預かるよ」
「オッケー!ビシバシいくでござるよ!」
「ほどほどにな」
 今度の一哉は中級者として彼らをサポートしていく番だ。走り寄ってきたイチニーに、同じ弓使いとして一哉が伝授するのはやはり基本から、パーティプレイの立ち回りと援護射撃のやり方だ。

「基本はヘイトを稼がない立ち回りだ。後衛職はなんせ近寄られると弱い。敵の攻撃が届かない位置取りを心掛けるんだ」
「はいっ」
「あとは…まあ、理屈より見て覚えろ、やって慣れろだな。お手本を見せよう」
 相変わらずすったもんだしている二人の目前のモンスターへ一哉は矢を射かける。HPを削り切らぬように急所を外し、タンクであるにょっきの態勢が崩れていれば足止めし、モンスターの攻撃に合わせて怯みを狙い援護する。
 あくまでも完全に倒し切らない弱い攻撃で、アタッカーであるサーシャが止めを刺せるように立ち回れば、歓声をあげて手を振って喜ぶサーシャの姿が見える。――そのすぐ後ろには、新たに別のモンスターが迫っていたが、いつの間にかあちらへ行っていた三日月が、モンスターの動きを止めていた。あちらは任せておいて問題ないだろう。
 一哉は弓を下ろすとイチニーに向き直る。

「この時、間違って味方に当てないようにな。じゃ、ちょっと矢の飛距離と弾道を把握したら、次はイチニーがやってみようか」


「根性無しでござるなァ、拙者泣いちゃうよ?」
「根性の問題じゃなくない!?」
 泣きそうなのはどちらかというと初心者である。アクティブモンスターばかりの狩り場では、無作為に逃げれば逃げるほどモンスターは集まってきてしまう。あっという間に囲まれた初心者たちに影縛りで助け舟を出したのはエドゥアルト、ではなく三日月だ。ともなれば、シゴキに堪えた初心者が縋る相手も決まっている。

「三日月さん、ありです~。ついでに色々教えてくださ~い」
「うわ、ずっりぃ!」
「ふふふ、私が教える側とはね。なんだか緊張してしまうな。私はあまりこの世界に慣れていないのだけれど、よろしくね」
 見るからに優しそうな相手に助けを求める二人に、三日月は穏やかな笑みを浮かべると、今度は頭を悩ませるように首を傾けた。

「私のジョブは化身忍者×妖剣士なんだけど……あれ、この世界では違う表現をした方がいいのかな?」
 この世界の|住人《プレイヤー》にとってはゲームの中であれど、三日月にとってはここは異世界だ。|決まり事《ルール》には慣れたつもりでも馴染まぬ言葉は数多く、彼の認識はほんの少しズレている。
 とはいえここはゲームの世界で、彼らはこの手の|娯楽《ゲーム》にも慣れている。三日月の言葉を受け取った二人はぱっと顔を輝かせる。

「もしかして、異世界転生RPてやつスか?」
「…うん?転生はしてないよ」
「転移系か〜いいな〜、そういうのも楽しいですよね〜」
「オレ、前世女子の転生RPとかしたら需要あっかなー」
「ええ〜ないよぉ~」
「コラコラッ!拙者を差し置いてちょっと楽しそうな話をするんじゃありませーんッ!」
 あれやそれとあらぬ方向へ飛躍し盛り上がる会話に、待ったをかけるのはエドゥアルト。三日月の背中にサッと隠れる二人に微笑みながら、三日月は懐から護符を取り出すと二人に手渡した。

「こういった呪術めいた忍術はあまり得意ではないけれど…この辺りの相手は少し強いようだから。今回は補助具を使うのもいいのではないかな」
 霊力のこめられた護符は、心得がなくとも簡易な陰陽術を行使できる使い捨てのものだ。当然この世界の由来ではないが、こちらにも似たようなものはあるだろう。使ってみる事も良い経験となる。
 三日月が護符の一枚を己の暗器に巻き、指先で触れると希薄なエフェクトが繭のように暗器を包む。二人の武器にも同じように護符の強化をかけて三日月は頷いた。

「それじゃ、一度に多くの敵を相手取るのは大変だから…少しずつ増やしていこうか」
 言うが否や、三日月はモンスターの影縛りを解いてその場からフッと姿を消した。残された初心者二人の目前には、拘束が消えたことに驚き頭を振るアクティブモンスター。
 ──アクティブモンスターは、近くのプレイヤーを攻撃するもの、というのはこの世界の|決まり事《ルール》だ。

「うわああぁっ!」
「不意打ちはダメだよぉ〜!」
 目があった途端に繰り出される攻撃を、二人は悲鳴の中でなんとか回避する。二撃目は態勢を立て直しきれずに食らうものの、無理やり増えた場数は彼らに度胸を与えたらしい。続く攻撃はにょっきが盾で受け止めて、後ろから飛んできたイチニーの援護射撃で怯んだ隙に、サーシャがすかさず反撃する。被ダメージこそなかなか減らないものの、なんとか攻勢を保ちながら彼らはモンスターを倒し切り──そうして彼らのHPはすっかりカツカツだ。

「ンモーッ!そんなんじゃメタルマンになれませんよっ!」
「目指してねーよ!」
「しゃーなしでござるな〜情けない初心者に温情をかけるのも仕事だよネ」
 そう言って不甲斐ない姿の初心者たちを救済すべく、エドゥアルトが発動するのはユーベルコード【いとも容易く行われるえげつない行為】…ランダムに選出されたユーベルコードの輝きは、神々しいエフェクトを放ち──大きな光の翼を背負いエドゥアルトは飛び立つ。
 呆気にとられて空を見上げる初心者たちに降り注ぐのは無数の光の羽。【ヒーリングフェザー】の柔らかな光は彼らに休息を与え、その負傷を癒やしていく。

 初心者からしてみれば、エドゥアルトという人物は言ってることもやってることも要求もめちゃくちゃな相手だ。とはいえそれは、ログイン早々に苦境に立たされていた、初心者たちを思ってこそのスパルタなのかも知れない──などと、思わぬ神々しさに胸を打たれかけた彼らに向かって、エドゥアルトがかける言葉は決まっている。

「休む間もなくオカワリでござるよ〜!回復はまかせろり!」
「ハア!?」
 容赦なんてある筈はない。だって彼の目的はパワーレベリングなのだから、ここで終わるはずはなかった。全快に喜ぶ暇も感謝を抱く暇もなく、初心者たちは容赦なく次の戦闘にエンカウントする。

 いくら悲鳴があがれども、バグプロコトルに襲われていた時とは違って何も心配はない。彼らのことは、頼れる|猟兵《センパイ》たちが見守ってくれているのだから──。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎

強化ですか……そうですね、では魔法による支援を行うとしましょう。

UCを使用し、「ダッシュ」の技能を強化するアクセサリーを創造しパーティの方に配りますね。
私自身はゲームというものについて疎いのですが、傭兵としての経験から考えると機動力というのはどんな状況においても重要なはずです。

味方の援護、射線の確保、敵への急襲、敵から逃走する必要がある場合等、前衛や後衛の区別なく常に状況が変化し続ける戦場において有利なポジションへの速やかな移動は必要となってくるでしょうからね。

アクセアリーを配ったらパーティの方に「戦闘知識」に基づいたアドバイスをしつつ周囲の警戒をしながら見守るとしましょう。



 猟兵たちの分厚いサポートの中、着実にレベルアップを重ねる初心者たち。適正レベルギリギリの狩り場であることも相まって、彼らのレベルは早々とクエスト進行の推奨レベルに辿り着き──。

「限度はあるって!!」
 そして早々に、限界を訴えたのはサーシャである。HPは回復してもらっていても、ほどほどに容赦のないシゴキは|心のMP《メンタル》消耗がそこそこ激しくなってくるもの。|現代っ子《ルーキー》の|やる気《モチベ》は些かダレてくる頃合いだった。…ようはつまり、|作業感《レベリング》に飽き始めたのだった。

「出た〜、不真面目サーシャだ〜」
「いや、そんなんじゃなくて!ゲームつったらもっとこう、|オレ強ェ《・・・・》って感じあるじゃん!ここのモンス硬えし!痛えし!強えし!」
「適正レベルギリだとこんなもん…というか、手を貸してもらってるから充分ヌルいだろ」
「死にゲー基準は狂ってんだよ!強ェ敵見つけたら逃げるだろ普通!」
 いくらそれっぽい話を並べていても、彼が言いたい事は結局のところ「飽きた」程度のものである。友人二人にすら呆れられているサーシャだが、一方で岩社・サラは納得したかのように大きく頷く。

「確かに、逃走というのもひとつの戦術です」
 サラ自身はゲームというものに疎いが、傭兵としての経験からしてみれば、機動力というのはどんな状況においても重要なものだった。
 味方の援護、射線の確保、敵への急襲──そして、敵からの逃走。今回バグプロコトルという太刀打ち出来ない強敵に遭遇し、逃走する他なかった彼らは、機動力の重要度は身に沁みているだろう。
 幸いなことに、ほどほどに飽きるまで戦闘をこなしていたお陰で、彼らの|戦闘経験《レベリング》は充分だ。訓練に重要なのはメリハリである。

「趣向を変えましょうか」
 サラはその変わらぬ表情に──少しだけ穏やかさを滲ませて、ユーベルコードを発動する。
 エフェクトが輝き、足元の地面がせり上がる。腰辺りまで盛り上がった硬質の土は沸騰するように蠢くが、サラが手をかざせば砂のように崩れ落ちた。サラの手の中にあるのは、ごくシンプルな鉱石の輪だ。

「どうぞ。ダッシュを強化するアンクレットです」
 初心者たちはサラに手渡されるがままアンクレットを足へ装備すると、魔法でできた鉱石のアンクレットは淡い光を発する。使い方のわからぬアクセサリに首を傾げる彼らに向かって、サラが使い方を説明しようとしたところで、サーシャがふいに足を蹴り上げた。

「うおおおぉっ!?」
「サーシャ!?」
 鉱石は強く輝くエフェクトを放ち、彼の足はそのまま|加速《ダッシュ》する。強化され増大したダッシュの技能が使い手の意思に反して力を発揮すれば、あるべきはずの地面を蹴りそこねた足は宙返り。もんどり打ってひっくり返ったサーシャの身体が地面に叩き付けられるその前に、サラは素早く駆け付ける。

「出力調整はできません、気を付けてください」
「ウッス…」
 逆さまのサーシャを確保したサラは、少し遅い忠告を口にすると彼をそのまま地面に下ろし、初心者たちに向き直る。

「視線は落とさず、進行方向を向いて。最初はゆっくり踏み出してください」
 まだ|技能《スキル》も少なければその|経験《レベル》も少ない初心者は、サラの言葉に注意深く耳を傾けながら慣れぬアイテムに四苦八苦。GGOの初心者にしてみればインフレしたアイテムでも、しばらくもすればその出力にも慣れてくる。使いこなすにはまだまだ遠くも、真っ直ぐ走って止まる事ができたら上出来だ。サラはひとつ手を叩く。

「前衛や後衛の区別なく常に状況が変化し続ける戦場において、有利なポジションへの速やかな移動は必要となってきます」
 サラが次に向ける言葉は、これまで傭兵として経験してきた戦場、その戦闘知識に基づくアドバイスだ。それぞれのポジションを確認しながら、より実践的な動きのレクチャーをしていれば、にょっきがふいにアッと声をあげた。

「そろそろクエスト進めたいかも〜」
「今日は飯当番だっけ」
「そう〜」
 どれほどリアルでもこの世界はゲームで、プレイヤーには現実世界での日常がある。日常生活を侵食しない事が、賢いゲームの遊び方だ。

「わかりました。クエストの目的地は先ほどの森ですね。ポジションを意識しながら走って戻りましょう」
「あざっす!」
 バグプロコトル出現の気配は今はなくとも、まだ油断はできないだろう。警戒を怠らぬサラの眼差しは、再びチュートリアルの森へと向けられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ジェットソード』

POW   :    ソードアンドビーム
【原始的な形状の剣】が命中した敵を【宝石からの魔力光線】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[宝石からの魔力光線]で受け止め[原始的な形状の剣]で反撃する。
SPD   :    バグプロテクター
【弱点の宝石を覆うバグの塊】を召喚装着し、無敵になる。ただし視覚外からの攻撃は回避不能となり、防御力も適用されない。
WIZ   :    超高速斬り
速度マッハ5.0以上の【斬撃】で攻撃する。軌跡にはしばらく【宝石色の輝き】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──木漏れ日の差し込む森の中、そこにあるのは小さな洞窟の入り口だ。チュートリアルクエストの最終地点までの道中は、呆気ないほど平和で、いっそ退屈なほどだった。
 だからこそ初心者の彼らは、何事もなく終わるのだとほっと胸を撫で下ろし、いよいよ洞窟に一歩足を踏み入れる。

 洞窟の湿気った土を踏みしめた、その次の瞬間。サウンド設定を無視したアラートが頭の中でけたたましく鳴り響く。

『緊急事態発生、緊急事態発生』
 視界の至るところが黒の赤のストライプに染まり行き、もはや聞き慣れた警告が洞窟を反響し響き渡る。
 元々ワンフロアに設定されており、広々としていた洞窟はそのグラフィックが大きくぶれると更に奥行きを広げ、ゲームを蝕むその脅威は洞窟を埋め尽くさんとばかりに出現する。

「またかよ!」
 しかし二度目ともなれば、そしてすぐ側には猟兵たちが伴っているともなれば、初心者たちの反応はまたひとつ変わるもの。

「せっかくのクエストがぁ〜」
「仕方ないな…」
「せっかくレベル上がったのにー!」
 ──そう。猟兵たちが側に居る、という安全のアドバンテージを得ている彼らにとっては、バグプロコトルはもはや単純な脅威ではなく、自分たちでは全く手の出ない分、ゲームを妨げる煩わしいだけの存在でしかなかった。
 彼らは早くもクエストを諦めて脱力するものの、そのうちひとりがアッと声を上げる。

「なんか〜モンスター名の表示、違くない?」
「…一体だけ緑だな」
「マジじゃん!え、雑魚表示?なんで?」
「俺達のがレベル上だからだろ。多分あれ…」
「バグってない!?」
 バグプロコトルの瞳は赤に染まっており、コアと思わしき胸部|宝玉《パーツ》もまた赤く発光している上に、それは絶え間なく全身を移動し続けていた。
 一方で緑色の文字で表示されているモンスター、そのバグっていない個体の瞳とコアは緑色で、位置も胸部に固定されている様子だ。

 よく観察し比較してみれば、その違いは一目瞭然。わっと湧いた気持ちはしかし、まだまだ出現するバグプロコトルを視界にいれれば、空気の抜けた風船のように萎んでしまう。バグっていない個体がいたとて、バグプロコトルに囲まれていれば初心者たちの手は届かないのだ。

 しかしそんな初心者たちをみて、猟兵たちは前へ出る。元より猟兵の目的は、バグプロコトルの討伐は勿論のこと、彼らを助けることにある。猟兵たちの意思を察した彼らは、気持ちを引き締めると己の武器を構える。

 巨躯のゴーレムの群れはゆっくりと首をもたげ、真っ赤に|染ま《バグ》った瞳を一斉に初心者たちに向ける。
 このクエストを妨げるバグプロコトルは、初心者たちを狙ってくるだろう。猟兵たちの|任務《クエスト》は、バグプロコトルが彼らに近付かぬように守りながら、彼らがその手でクエストを達成する道を切り開く事にある。

「最後のキャリー、よろしくお願いします!」
春乃・菊生
WIZ選択

ひとつ、手本を見せよう。

先の章で喚んだ蒼鷹を空に舞わせたまま、太刀を手に提げ前へ出る。
(両の脚で真っ直ぐに立ち、首から下をただ垂らせばそれは自然体。重心を整え、関節の可動域を大きく使えるからこそ)
十全に足の腱を活かし、また得物に力を乗せることもできよう。
(己と鷹、二つの視界で周囲の敵の攻撃の出掛かりと軌道を見定めんとし、地表を滑るように舞う神楽舞の動きで回避を試みる。回避に成功すれば躱しざまに斬りつけよう。さらに神楽舞によって破魔の力を高め、それを太刀の刃に込めて行く)

良いか。人は皆、己が思う以上の力を秘めておる。
己が力を低く見誤るな。
若武者よ、己を知れ。
胸を張れ、前を見よ。



「ひとつ、手本を見せよう」
 春乃・菊生はゆるりと穏やかな動作で太刀を手に提げ前へ出る。洞窟の空にも迷いなく飛び込んできた蒼鷹の声が、まるで鳴物のように反響している。

 高く響く笛のもとで、その白拍子は両の脚で真っ直ぐに立つ。首から下をただ垂らせばそれは自然体。静かに呼吸を整え、鋭い眼差しで敵を見る。
 ──そしてひと息でその懐に飛び込むと、太刀で大きく切り上げた。大胆不敵なその太刀筋は立位があればこそ。重心を整え、関節の可動域を大きく使えるからこそ。驚嘆に声をあげる後進たちに菊生は淡く笑みを浮かべる。

「十全に足の腱を活かし、また得物に力を乗せることもできよう」
 凛と澄んだ菊生の声は、揺らぎのない水鏡だ。たゆたうようにゆるやかにも思える動きは、されど刹那に|宝玉《コア》を切り裂く。群れの先鋒が容易く倒され、その胴がなめらかに滑り落ちる──それらを見届けたジェットソード群れは大きく剣を振り上げて、荒波のように襲いかかる。

 次々に菊生の元へ寄せるその白波は、音をも切り裂く高速の斬撃だ。しかし菊生は決して臆さずに己の眼と鷹の眼、空と地の二つの視界で敵の攻撃の手掛かりを見定めて、地表を滑るように舞っていく。

 菊生のその流麗な神楽舞は、破魔の力を高めゆく。太刀の刃に込めてひとたび振れば、|邪悪《バグ》を滅するその力は穢れた宝玉《コア》を容易く両断する。
 だがそのひと太刀に込められているのは、破魔の力だけではない。

 ジェットソードの一挙を己の眼で躱し、次の追撃を鷹の眼で躱していく。荒れ狂う白波も菊生の前ではさざ波に過ぎない。絶え間なく寄せるそれらを大仰に、されど慎重に攻撃を見定めて、そのすべからくを躱しざまに斬りつける。

「良いか。人は皆、己が思う以上の力を秘めておる」
 ──己が力を低く見誤るな。
 二つの視界を携えて、菊生は宝石の軌跡を足場に群れの中を駆けてゆく。

 ──若武者よ、己を知れ。
 ジェットソードの剣撃がその身に振り下ろされるその前に、宝玉を両断された胴体がゆっくりと崩れ落ちる。

 ──胸を張れ、前を見よ。
 白拍子に斬り開かれた荒波を乗り越えて、若武者たちが駆けてゆく。
 蒼鷹がひとつ高く鳴く。響く笛の中で、彼らが背中に飾るものは、揺るぎのない勝利である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

中村・一哉
アドリブ/連携可

「オッケー!こいつらは任せろ!」
弱点を覆う|無敵の鎧《バグプロテクター》にも欠点はある。という訳で、物陰に隠れて連中の視界に入らないようにしつつ、スナイパー+ヘッドショットで急所狙い。
UCは「状態異常力」を選択。
「慣れてくると、こういうこともできちゃう」
応用力で人差し指を魔喰部位としてアマルガムビーストの爪に変化。矢の先端に毒性のバグを塗る。
「よし、これでいいかな」
毒矢をジェットソードに向けて発射。
「この毒に勝てるかな?」



「オッケー!こいつらは任せろ!」
 初心者たちの言葉に快く返しながら、中村・一哉はユーベルコードを発動すると月光弓を構える。狙うのは当然、弱点の|宝玉《コア》ただ一つだ。短く吐いた呼吸と共に放った一射は惑うことなく弱点へと命中し、ジェットソードはHPバーを急激に減らして崩れ落ちる。

 絶え間なく移動する弱点にも、一哉は的確に、矢を命中させていく。その一方で次々に現れ続けるジェットソードの群れは、こぞってユーベルコードを発動する。不規則に点滅するエフェクトがブレたグラフィックを出現させると、それはそのまま弱点の宝石を覆い隠した。

 放った矢はすかさず、弱点を覆う|無敵の鎧《バグプロテクター》に飲み込まれる。見るからに|怪しい《バグった》挙動に一哉は僅かに目を見開くと、素早く戸惑いを隠して岩影に身を潜める。
 しかし一哉を見失ったバグの塊は戸惑う様にコアの上を這いずり回り、チラチラと露出させている。無敵の防御のそのわかりやすい欠点に、一哉はニヤリと笑みを浮かべると人差し指を突き出した。

「慣れてくると、こういうこともできちゃう」
 |魔喰者《モンスターイーター》の特性は、なにも無意識下でばかり発動するものではない。グラフィックが揺らぐと途端に、一哉の指の先端は本日食べたばかりのアマルガムビーストの爪に変じる。爪に込められたバグの毒を矢の先端に注ぎ込めば、あっという間に|特製の《バグった》毒矢の完成だ。
 目には目を歯には歯を──バグには|毒《バグ》を。

「よし、これでいいかな」
 先ほど与えたダメージ分で目の前に出現した三枚のカードから、状態異常力を選択すれば、アマルガムビーストの本来の力の弱点すらカバーできる。一哉は素早く影から飛び出すと、ジェットソードの視界に捕捉されぬように、死角に回り込んで弦を引き絞る。ジェットソードの赤い瞳とバグの塊は依然として一哉を見失ったまま、守るべきものを露出させ続けていた。

「この毒に勝てるかな?」
 スナイパーにとって、ガラ空きの急所を狙うのはヘッドショットよりも容易いことだ。放たれた毒矢は次々にジェットソードの弱点に命中し、ねじ切りながら爆発すると、ジェットソードのHPを呆気なく散らしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キキョウ・ハットリ
お前たちは成すべきを成せ。油断しなければ必ず勝てる相手だ。
|悪《バグ》は私が引き受けよう。お前たちの邪魔はさせんさ。

胸部の弱点がバグにより無敵化しているな。弱点を狙う練習台としての役割もあったであろうに。
とはいえ、弱点を狙わなければ倒せぬ訳でもない。【手裏剣投げ】で奴らの影を縛ろう。
まさか影まで無敵という事もあるまい? 隙だらけの背後から忍刀で斬り伏せる。

さらに【影分身之術】で私の分身を作り出し、数の不利を覆そう。
|分身《私》たちが敵集団を抑えてやれば、プレイヤーたちも戦いやすいだろう。


エドゥアルト・ルーデル
うnうnちゃんと自分で討伐したと言う実感は大事でござるからねぇ…という訳で初心者諸君はバグってないのに向かって突っこめ
今回の総仕上げでござる!先のスパルタで生半可な鍛え方してないはずでござるよ!行けーっ!

しょうがねぇなあ他のバグ蹴散らしてやるから
歌舞伎めいた八方睨みでスイと敵を見やりイヨー!っと念じればポン!と爆発が生じるでござるよ
バグ塊で防御してるって事でござるが爆発の座標を敵の足元とか斜め後方至近とか視野に入らない場所にしてやればいいんでござるよね!
爆風で特に足を念入りにへし折ろうぜ!転ばしちまえば好きに調理できますぞ!

初心者を˝沼˝に堕とすのはやはり成功体験でござるな
肩まで浸かっていけ



 裂けたグラフィックの裏から次々にと出現するジェットソード。赤く発光する瞳はこぞって初心者たちに向けられる。
 威圧的なその眼差しは、勇み駆けていた初心者たちの足を竦ませる。ジェットソードが彼らへ振り被ったその剣撃は──しかし、振り下ろされることなく、ピタリと宙で停止する。
 |悪《バグ》のその影を縫い留めるユーベルコードはキキョウ・ハットリの手裏剣投げだ。

「|悪《バグ》は私たちが引き受けよう。お前たちの邪魔はさせんさ。お前たちは成すべきを成せ。油断しなければ必ず勝てる相手だ」
「うnうnちゃんと自分で討伐したと言う実感は大事でござるからねぇ」
 キキョウの頼もしい言葉に、エドゥアルト・ルーデルもまた腕を組みながら深く頷く。そしてスイと流れるように蠢くジェットソードの群れを見やり、片足を大きく踏み込むと肩をいからせ平手を突き出し、まるで歌舞伎めいた鋭い八方睨みをきかせる。
 とたんにジェットソードの足元ではエドゥアルトのユーベルコードがポンっと弾けて、爆発がコアも諸共ジェットソードを吹き飛ばしていく。

「という訳で初心者諸君はバグってないのに向かって突っこめ。今回の総仕上げでござる!先のスパルタで生半可な鍛え方してないはずでござるよ!行けーっ!」
 二人の猟兵に背中を押され、彼らはこのクエストを成すべく駆けていき──それを見送る間にも、ジェットソードは留まる事を知らないように溢れ出す。
 さりとて、その数に怖じる猟兵などはいない。
 
「爆風で特に足を念入りにへし折ろうぜ!転ばしちまえば好きに調理できますぞ!」
 エドゥアルトがさっそくイヨー!と念じればあらぬ方向からポポン!と爆発が弾け、ジェットソードは足を飛ばされ転ばされ、体勢を崩してドミノのように倒れるとその身で仲間の動きを阻んでいく。
 そうなってしまえばジェットソードの視覚はまともな機能を失うというもの。弱点を覆い隠すはずの無敵のバグは、容易くそのコアを露出させている。

「弱点を狙う練習台としての役割もあったであろうに」
 キキョウは言葉に僅かな憐憫を滲ませながら、ジェットソードの隙だらけの背後に忍び寄ると素早く忍刀で弱点を斬り伏せていく。

 溢れ出すジェットソードは未だ尽きぬとも、されど現れる端からそれらの足元や視野の外の座標には絶え間なく爆発が連鎖していく。
 爆風の中でも弛まずに迫り来る剣戟をキキョウは回避すると、両手を合わせ続けざまにユーベルコード【影分身之術】を発動する。精巧に模倣された無数の分身を召喚すると、キキョウたちは不敵に笑んだ。

「|分身《私》たちが敵集団を抑えてやれば、プレイヤーたちも戦いやすいだろう」
 次々に剣を振り上げるジェットソードの群れへ手裏剣を放ち影を縫いとめ縛り付けると、爆発が連鎖し黒玉の鎧が雪崩れ崩れていく。
 数の不利を覆すキキョウたちの視界の先では、今まさに初心者たちが彼らの|正しき道《クエスト》へ飛び掛かっていく。

 ──|異常な《バグった》モンスターであれば、初心者どころか一般プレイヤーでは手も足も出ない。けれど正規クエストの正常なモンスターが相手であれば、|成長《レベルアップ》した初心者たちの敵ではない。

「初心者を˝沼˝に堕とすのはやはり成功体験でござるな。…肩まで浸かっていけ」
 爆風をバックにエドゥアルトが彼らの背中に向けるのは、彼らの勝利を祝福するハンドサイン、ただそれだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月隠・三日月
コアが移動していない敵はバグプロトコルではない……ということは、ここの人たちが倒すべき敵だね。そちらには手を出さないよ。
バグプロトコルの方は私たちが相手しないとね。

とはいえ、守りながら戦うのはあまり得意ではないのだよね。私は敵を早く倒す方を優先しようかな。万一彼らが狙われても守るのが得意な猟兵もいるだろうし、彼らも戦えないわけではないしね。

敵の弱点はバグに覆われて無敵……でも、視野外からの攻撃には無防備なのだね。じゃあ、【暗殺】の要領で背後からコアを攻撃すれば通じるかな。
【制限破壊・怪力無双】でパワーを上げて、妖刀で敵を貫こう。コアは動き回るから、攻撃するときは避けられないよう一気に、ね。


岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎

いるのはバグプロトコルの群れだけかと思いましたが…ふむ、どうやらバグプロトコルではないモンスターもいるようですね。あれならパーティの方達でも対処できるでしょう。

UCを発動して大量のゴーレムを召喚し、バグプロトコルをプレイヤーの方達から引き離すとしましょう。
敵のUCは防御に特化したものですし、ゴーレムの戦列を突破することは難しいはずです。
上手くバグプロトコルを隔離することができれば、プレイヤーのみなさんも安心して戦いに臨むことができるでしょう。

バグプロトコルに関してはゴーレムと向かい合っている所を拳銃で横から攻撃していきましょう。横からであれば無敵化の効果もなくなりますしね。



 ぱきん、と微かな効果音が鳴り響いたかと思えば、僅かな亀裂は大きくひび割れ砕け散る。緑玉のコアを破壊され、ジェットソードのHPはごっそりと削り落ちた。チュートリアルボスに第二形態などはない。唯一正常な|個体《ボス》の体が崩れ落ち、瞬くエフェクトが噴き出して、そのグラフィックは消失する。

 そして続くのはクエストクリアのファンファーレだ。その証とでもいうようにテロップが視界に表示される──そこで、初心者たちは目を剥いた。

『繝√Η繝シ繝医Μ繧「繝ォ繧ッ繧ィ繧ケ繝医さ繝ウ繝励Μ繝シ繝』

 盛大な文字化けテロップに、いつまでも繰り返し止まらぬファンファーレ。さらには消失エフェクトの消えきらぬ明滅はクレーム必至の、|異常な《バグった》演出のオンパレード。クエスト達成条件を満たしていようとも、バグは未だこのクエストを蝕んでいた。

 だが、初心者たちがクエストをクリアしたことによる変化は確かにある。洞窟内部は未だバグの温床ではあるが、そのグラフィックの裏からは、新たなバグプロコトルが|出現《ポップ》していないのだから。

 単純な殲滅戦ほど容易いものはない。蠢くバグで|弱点《コア》を覆い隠したジェットソードに牽制の銃撃を浴びせながら、岩社・サラはユーベルコードを発動する。
 グリップの魔石が輝けば、サラの周囲のそこかしこから岩がせり上がり、大盾を携えた無数のストーンゴーレムがまたたく間に召喚される。

 ゴーレムは隊列を組むと残存するジェットソードを取り囲み、初心者たちから引き離すように隔離する。ジェットソードは剣を振り上げ防御を切り崩そうとするも、大盾を敷き詰めたストーンゴーレムにはただの攻撃は通用しない。隙間のないその戦列は、そびえ立つ城壁よりも強固な防御壁だ。

「安心して戦ってください」
 そう言ったサキの言葉に応えるように、影がひとりゴーレムの防御壁を飛び越える。

「ありがとう。助かるよ」
 守りは充分すぎるほど。だからこそ躊躇いなく戦える。月隠・三日月は一足飛びに戦線へ飛び込むと、|羅刹紋《ユーベルコード》を発動する。

「制限解除──全力だ」
 にわかに浮かび上がる三日月と桜花の刻印は、その羅刹の怪力を解放する。踏み出す一歩は、小さな罅割れと共に──ジェットソードの背後に回った三日月が、箍の外れた怪力で一息に妖刀を振るえば、剥き出しのコアは次から次へと呆気なく貫かれる。

 ジェットソードが数を減らせば減らすほどゴーレムはその鉄壁の包囲を狭め、側面からの銃撃と視野の外からの暗殺よって、無敵を携えていた筈のジェットソードはまたたく間に数を減らしてゆく。

 最後のバグプロコトルのコアが砕け散れば、白く目映いエフェクトが洞窟内部を埋め尽くす。
 眩しさに目を閉じ再び瞼をあげれば、洞窟に繰り返し響き続けていたファンファーレも、文字化けしたテロップも──バグプロコトルの警告アラートと共にいつの間に消えていた。

 チュートリアルクエストを達成した一同の前に、残されたのは小さな宝箱がひとつきり──。


「あー!」
 チュートリアルクエストを終えて、街へと戻ったウォリアーのサーシャは突如、思い出したように大声をあげる。

「誰ともフレンドになってねえじゃん!」
「お、お前…助けてもらって友達気分か…」
 そんなサーシャに、アーチャーのイチニーは思わず引き攣った声をあげる。
 |遺伝子番号《ジーンアカウント》を残したまま、無事に街へと戻る事ができた彼らの話題はもっぱら、ほんの数分前までの衝撃的としか形容できない|出会い《エンカウント》の数々。そして中でもやはり一番印象深いのは、謎の|猟兵《センパイ》たちの事だ。

「まあ〜運が良かったら、また会えるよ〜」
 残念そうに唇を尖らすサーシャに、イチニーは渋い顔を見せるも、パラディンのにょっきはそうのんびりと窘める。
 何せ彼らはバグプロコトルを倒してしまうほどの実力者。あんなに強いのだから、この|ゲーム《GGO》を続けていればいつかどこかで──会えずとも、噂くらいは耳にすることはあるだろう。
 頷きあうサーシャとにょっきに、けれどイチニーはひとり苦笑を浮かべる。

「いや。…運が悪かったら、だろ」
「そりゃそうか」
「あぁ〜」
 初心者たちは顔を合わせて笑い合うと、次の約束を取り付けてログアウトする。もしも彼らと次に会うことがあるのならば──運が良いと、そう言い切れるような形であれば良いのにと願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月26日


挿絵イラスト