●ここまでのサイバーザナドゥ
龍街、タンパーツと続けざまに猟兵による妨害を受けた黃神公司。しかしメガコーポの暗躍は止まらない!
ところかわってサイバーザナドゥのメジャースポーツ、「ジェノサイドボール」の話題を取り扱うフリーライターのケンゴ・マヅダは一部選手の間で違法ドーピング・ドラッグ『チャンコO-141』が広まっているという噂を調査し、その背後に黃神公司の存在を突き止めた。
このままではネギトロを超えたネギトロ的大惨劇がジェノサイドボール界隈を襲うと予感したケンゴは龍街の保安官にして元マフィアのシライシを頼るのであった・・・。
●
「メガコーポ『黃神公司』が違法ドーピング・ドラッグをばら撒いてジェノサイドボールの試合をぶち壊そうとしているらしい。そこで、お前さんたちにはそれを阻止してもらいたい。」
セイカ・ヤブサメ(ハイウェイの戦女神・f36624)はそう言って火のついたタバコを口元に戻す。
「知っての通りジェノサイドボールってのはいわゆるバスケに似たスポーツだが、何でもありの乱闘が許可されているって点で大きく違うサイバーザナドゥのスポーツだ。何なら勝敗はこの乱闘で大体決まるといってもいい。だから連中は乱闘に使えるなら何でも使ってくる。そこで違法ドーピング・ドラッグ『チャンコO-141』が登場ってワケだ。」
骸の海を主成分とする『チャンコO-141』は既存ドーピング剤を過去のものとする程の効力を有する一方で健康面における安全性は一切度外視、全身義体であろうと|一般人《パンピー》が服用すれば一発でアウトの劇薬である。
「ぽっとでのチームが格上のチームを盛大に蹂躙。そんなジャイアントキリングの立役者が『チャンコO-141』だって宣伝を打てば間抜けがジャンジャカ飛びついてくる…黃神公司の描いてる絵図はそんなところだろうさ。」
セイカは猟兵たちに対戦の組み合わせを公開する。一方はジェノサイドボールの上位ランクに位置する「バーリトゥーディスト」。メンバー全員がカラテ数十段以上の実力者であり、様々な格闘術、武器術に精通した玄人好みの実力者集団である。
もう一方は戦績ゼロの無名チーム「チャンコチーターズ」。傍から見れば一攫千金に目が眩んだヨタモノ集団といった具合のチームで、当然オッズはバーリトゥーディスト優勢である。
「お前さんたちにはバーリトゥーディストの助っ人として試合に紛れ込み、相手チームを叩き潰してもらう。|連中《バーリトゥーディスト》は自分たちが負けるなんざ露とも思っちゃいないがエンターテイナーでな。気に入られれば快く選手登録をしてくれるはずさ。」
セイカは猟兵たちを試合場に併設されたクラブに転送する事を伝えると同時に、選手登録してもらうためのコツを伝える。
要するに「自分達を雇えば盛り上がるぞ」ということをPRしてやるのがコツらしい。嘘も方便だ。オブリビオンとの戦闘になればそれどころでは無くなるのだから大いに法螺を吹くのもありだろう。
「いくら流血上等のジェノサイドボールと言えどショウって枠を超えちまったら興ざめってもんだ。そいつを黃神公司の馬鹿どもに叩き込んでやりな!」
マーシャル後藤
お久しぶりです、マーシャル後藤です。
クスリ、ダメ絶対!みんな|薬《ヤク》キメろぉー!
今回はサイバーザナドゥのスポーツ「ジェノサイドボール」メガコーポ「黃神公司」がばら撒いたドーピング剤「チャンコO-141」で強化されたオブリビオンとの戦闘シナリオをお送りいたします。
「チャンコO-141」の読み方はご自由に。関係ないですがちゃんこ鍋っておいしいですよね。
第一章は日常です。
ジェノサイドボールの試合場を併設する高級闇クラブで「バーリトゥーディスト」のメンバーに売り込みをかけましょう。
彼らは乱闘の腕っぷしには自信があり、戦闘能力の高さをアピールするのはあまり受けがよくありません。
彼らが助っ人により求めているのは「試合を面白く盛り上げられる」といったエンタメ性となります。
第二章は集団戦『スラム・ハッカー』です。
ジェノサイドボールの試合開始から程なくして敵チーム「チャンコチーターズ」が「チャンコO-141」の摂取により戦闘能力が劇的に向上、バーリトゥーディストが押され始めるタイミングで猟兵たちは試合場に乱入します。
スラム・ハッカーは「チャンコO-141」摂取による能力向上の他、プログラミングによるバフとデバフを用いた戦闘を得意とします。
第三戦はボス戦『アッシュ・クイーン』です。
真打登場と言わんばかりのタイミングで試合場に入ってきます。
スラム・ハッカー同様「チャンコO-141」を摂取しており、クイーンの名に違わぬ高火力と物量による戦闘を得意とします。
●黃神公司について
「低価格・高品質」をウリにする庶民向けメガコーポ。消しゴムから大量破壊兵器まで手広く扱っており、自社運営の商業施設「黃神モール」でしか販売権を認めないストロングなビジネススタイルから「地域産業の破壊者」の異名を持つ。
今回は表に出てこないが、「チャンコO-141」をデモンストレーション目的でばら撒いた模様。
OPに登場したフリーライターのケンゴ・マヅダがそれを突き止め、黃神公司と因縁のあるシライシ保安官に連絡を取り、そこからグリモア猟兵へと伝わった。
●プレイング募集について
プレイング募集はOP承認直後から開始となります。
また第二章、第三章については断章などを挟まず開始直後から募集開始予定となります。
受け付け状況などはタグにてお知らせします。
それでは皆様のホットなプレイングをお待ちしております!
第1章 日常
『サイバーナイトショウ』
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POW : いっそ自分も舞台に上がる
SPD : ショウにまつわるギャンブルに参加する
WIZ : スリリングなショウを見物して楽しむ
イラスト:high松
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
乱闘上等のスポーツかい。
いいねぇ。嫌いじゃない、むしろ大歓迎さ!
ま、そっちの腕っぷしは兄さん方に任せるよ。
そのガタイにゃさすがに負けらぁ、だからからめ手でアピールかな?
サイキックの『念動力』でアタシ自身を浮かせて空を飛び、『衝撃波』で離れたボールを弾き飛ばしたり。
『電撃』でスコアボードやネオンサインを思い切りスパークさせて、文字通り会場のボルテージを上げていこうじゃないのさ。
……ま、さすがにまじめにスポーツに取り組む以上は、宇宙カブは持ち込めないのが痛し痒しだけれども……ガレージにはこっそり置いておこうかねぇ。
いざという時にゃ合体して暴れ回りたいからさ!
●
「あぁ?ウチの助っ人に入りてぇだぁ?」
「盛り上げ役は幾ら居たって多過ぎるって事は無いだろう?」
ジェノサイドボールの|試合場《コート》を有するとあるクラブのVIP専用ルームで、猟兵数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は一人の男と交渉をしていた。
男は――一言で言えば「山」であった。
筋肉増強剤に加え、人工筋肉や皮下インプラント型装甲パーツが無数に組込まれた体躯は一般アスリートのそれとは明らかに異なる歪な隆起を生じさせ、そして骨格そのもの延長や強化合金製パーツに手をだしているのは確定的であった。
肉戦車、肉の要塞、仁王……それだけでは形容尽くしがたい正真正銘の「|山男《マウンテンマン》」であった。
(……いやでっけぇなオイ!)
選手登録のためVIP専用ルームに通された多喜は座ってるはずの「山男」に「見おろされ」ながら交渉を続けていた。
「俺達バーリトゥーディストは超強え。全員がカラテ、アイキドー、レスリングにスモウ…あらゆる格闘技の実力者だ。今更腕っぷしだけのヤツなんざ必要ねぇぜ。」
「確かにそっちも楽しそうだけどアンタの言う通り|喧嘩《ソレ》はバーリトゥーディストのモノで構わないさ。あたしはスポーツとしてのジェノサイドボールで手助けしてやりたいのさ。」
「ほぉう…?」
「74戦65勝9敗、今シーズンのバーリトゥーディストの戦績だ。9敗はどれも純粋なボールプレーで敗北を喫した…違うかい?」
「…続けな。」
「乱闘なら間違いなくバーリトゥーディストだ。だが乱闘度外視のスポーツマン系チームが相手となりゃ旗色が悪くなるのも事実。それも既に9敗だ。目の肥えてない客にもそろそろ気づかれちまうぜ?」
74戦65勝9敗、VIPルームに通される前に見かけたテキ屋が言っていた数字を思い出した多喜は適当な理由をこじつけて言いくるめに掛かった。
山男の反応は……そこそこ図星のようである。
「なるほどなるほど…確かにお前の言い分には一理ある。だがバーリトゥーディストは乱闘あってのチームだ。行儀良くタマ遊びなんざした日にゃ街中の笑いものだ。」
「そこであたしの出番ってワケさ!アクロバティックには自信があってね、こんな具合にさ。」
山男の食い付きを確認した多喜は超能力で地面から浮き上がったり、目の前に置かれた酒瓶を浮かせて手元に引き付けたりなど自らの技を披露した。
これには「山男」も驚き、そして巌のような顔を綻ばせた。
「客はボールの行方よりもあたしの身のこなしに夢中、それに電光板をゴールと同時にスパークさせてやれば盛り上がるって寸法さ。」
「ハッハッハ。お前さんがどんなパーツを使ってるかはわからねぇが中々個性的なスキルを持ってるようだな……|通信《コール》だ、ちょっと待ってくれ。」
「山男」は多喜に目配せをすると通信に応じその相手と二、三言交わす。
「あぁそうだ、今日出場のメンバーは決まってるか?……そうか、なら一人追加だ。今日のMVPをかっさらうかもしれん逸材だ。丁重に扱ってくれ。」
そして「山男」は話題がひと段落したところで多喜を選手登録するように相手に伝え、通信を終えた。
「聞いての通りだミス・多喜。選手登録は終えた。お前の役割はサプライズだ。自分の思うタイミングで乱入してもらって構わねぇ。…ほかに何か要望はあるか?」
「あー、そういえばバイクで来てるんだけど駐禁取られたら面倒なんだよねぇ…どこか止めるのにいい場所とかあるかい?」
「お安い御用だ。この店のガレージにおいておくといい。地元の警官やチンピラが難癖をつけてくるようなら|山男《オレ》の名前を出すといいだろう。」
「助かるよ山男。さて、それじゃあ文字通り会場をシビれさせるとするか!」
「|ビッグマウス《法螺吹き》じゃあないことを祈ってるぜ、期待しているぞ。」
山男はそう言い多喜に岩のような拳を突き出した。
――あぁ、なるほど。これがバーリトゥーディストの挨拶なのだ。
直感的に理解した多喜は突き出された拳に拳を突き返すと、|試合《戦闘》に向けて準備するのであった…。
大成功
🔵🔵🔵
チトセ・シロガネ
ボクがこういう場で売り込むときは腕っぷしで認めさせる。口で言っても信用は勝ち取れないからネ。
選手交代のタイミングを見図ってハッキングで交代選手の情報を書き換え参戦。元々交代する選手? 今控室で|再起不能《おねんね》してもらったヨ。
アピール方法はいたってシンプル、一番盛り上がる|ゴール下の攻防戦《リバウンド合戦》で空中機動を使ってタフガイたちからボールを奪い取り、強引なドリブルで相手陣地へダンクを決める。その際、相手選手2人くらい病院送りにするケド些細な事故ヨ。あとはカメラに向かって「ボクはチトセ・ザ・スターライト、どんな場所でも輝いて見せるネ!」とキメ台詞を言って、投げキッスでアピールするヨ。
●
――クリダ・シャビエル。
「バーリトゥーディスト」のオフェンスマンでありニンジャ伝説に縁のある伝統式古代カラテとカポエイラの二つのブラックベルト有段者。ヒサツワザは「メイアルーアジコンパッソ」。
驚異的な身のこなしと持ち前のカラテで立ちはだかる敵選手を次々に失神KOさせ、遂に「ニンジャ」の異名を取った男であるが、彼には秘密があった。
クリダ・シャビエル、その正体とは……実際にニンジャなのである!
「シャ…シャビエルッッ!」
「な、何が起きたんやっ…?」
そんなニンジャが、一人の襲撃者の手により失神KOされていた。
連絡がつかないことを不審に思ったチームメイトが控室を見に行ったときには既に襲撃の後であり、一分の無駄もない手際に関係者はえらく驚いたという…。
「…というワケでニンジャの助っ人にやってきたサムライのチトセだよ。よろしくネ☆」
「…ワケがわかんねェ。」
チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)の唐突な登場に頭を抱える「山男」。控えのメンバーだったとはいえ実力者のシャビエルをKOしたのはこの女であろう……奇妙な襲撃者を前にして男はどう対応すべきか決めあぐねていた。
(しかもいつの間にか出場リストに入ってる……おぉブッダ、これは試練なのか?)
「ボールの奪い合いなら誰にも負けない自信があるし、リバウンド合戦から敵ゴールへ向けて一気にダンクを狙いに行くのも|ベイビー・サブミッション《赤子の手をひねるほど簡単》!もちろんボールを奪われないくらいには腕っぷしも立つサ!」
(ゴモットモ…)
チトセは失神KO製造機のシャビエルをKOしたのだ。
失神KO製造機を超えた失神KO製造機、少なくともそこらの三下選手の2000倍の強さがあるはず……バーリトゥーディスト向きの人材であることは間違い無い。
(そして何よりも『華』がある…!オイランチアガールを雇うよりも実際イイっ…!)
同時に男所帯のバーリトゥーディストに必要不可欠なものをチトセは有していた。彼女ほどの美人がいれば観客はもちろんチームの士気も盛り上がるのは間違い無い。
ジェノサイドボールの客層は「|暴力《バイオレンス》」と同じくらいに「|色気《エロス》」を求める傾向にある。故にオイランチアガールを雇ったり、そうした趣向専門の要員を雇っているのだが、それらが霞むほどの魅力が|チトセ《サムライ》にはあった。
シャビエル襲撃――そしておそらく名簿改ざんも――という強行手段を取れる相手である以上不興を買うわけにはいかないという生存戦略的判断と、
チトセ目的で寄ってくる客が常連以上に金を落としてくれるだろうという打算的希望が「山男」の重くなった腰を動かした――!
「エーイママヨ!こうなりゃ出たとこ勝負だ!」
「決めゼリフはこう、『ボクはチトセ・ザ・スターライト、どんな場所でも輝いて見せるネ!』……ってウワ!びっくりするヨ!?」
覚悟のこもったシャウトでチトセの意表を突いた「山男」は着座姿勢から0.1秒で起立、合金プレートで強化された頭蓋骨で天井を破壊するのも気にせずチトセに向けて腰を折り曲げる。
その角度、ジャスト90度。サイバーザナドゥ世界におけるリスペクト態度のベスト・オブ・ベストである!
「助っ人お願いします!センセイ!」
「……アレ?なんか想像していたのと違うような…?」
――傍から見れば用心棒の雇い入れであった。
しかし確かにチトセはバーリトゥーディストに実力を認めさせ、無事試合への出場資格を得たのである。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
正面からアイサツでござるよ!アイサツを欠かすことはスゴイ・シツレイでござるからな!
おう拙者だ!ジェノサイドボールとやらをやりに来ましたぞ!まあ返事を聞く前にいつの間にか椅子に座ってるんだが…
拙者はね、手品師なんでござるよ
例えば座ったまま、瞬きする間もなく急にどこからかジュースを取り出したり…気づかれることなく隣の奴のタバコを獲ったり…ネ!
ようは暴力アリのバスケなんでござろう?拙者ならどんな時でも100%スティールキメてやるでござるよ
それでカウンター決めたなら間違いなく盛り上がるでござろう?
実際は一人だけビビットカラーな残像が出そうな勢いで超高速行動してるんだが…
まあ手品と似たようなもんだろ!
●
「ドーモ、|山男《マウンテンマン》=サン。エドゥアルトです。」
「ドーモ、エドゥアルド=サン。マウンテ……ワッザファ!?」
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)のアイサツにアイサツ仕損じる「山男」。
サイバーザナドゥのマナー識者の方は承知のとおりであるが、アイサツを仕損じることは場合によっては|セプク《腹切り》・ケジメ事案になるほどシツレイ!
しかし、突如アイサツの相手が着席し、特上のオーガニック・マグロスシ二貫を一度に食べながら茶を啜っていたら誰が驚かずにいられようか、いやそんな者はいない!
「…スシナンデ!?」
「状況判断でござる!それよりもジェノサイドボールとやらをやりに来たので早速選手登録をしてほしいでござるよ!」
すでに言いたい放題やりたい放題なエドゥアルトを前に頭を抱える「山男」。おおブッダよ、まだ寝ているのですか!
「…OKOK、とはいってもウチも慈善試合をやるようなチームじゃないんでな。お前さんが試合で何を与えてくれるのかってのを確認しておきたい。」
「山男」はとりあえず形式的な……というか彼自身の精神衛生上の観点から、企業面接官めいたインタビューをエドゥアルトにぶつけてみた。
「よくぞ聞いてくれたでござる。……拙者はね、手品師なんでござるよ。」
「スシ専門の?」
「そうそう。へい一丁お待ち、スシ食いねぇ……って違わい!」
などと言いながらバイオ・タマゴスシのパックをいつの間にか取り出しているエドゥアルト。この猟兵、ノリノリである。
「ゴホン……例えば座ったまま、瞬きする間もなく急にどこからかジュースを取り出したり…気づかれることなく隣の奴のタバコを獲ったり…ネ!」
まさに「瞬く間」の出来事であった。座っているエドゥアルトの手元にはクラブのバーテン特製のミックスジュースが注がれたグラスと火のついたままのジョイント(問題なく合法な)があった。
『ダッテメー!ジュースをお茶にすり替えテッコラー!』
『お~い、オレの葉っぱちゃんはどこだぁ~葉っぱァ~』
そしてクラブのどこかで怒声やらざわめきが起きていた。
「ふぅーむ、噂に聞く軍用サイバネティクスのそれに似たようなスキルだな。」
「あら、意外と驚かないでござるね。」
「状況判断だ。目にもとまらぬ速さ、というよりあらゆる知覚手段でも捉えられない高速移動か…敵に回したくねぇな。」
「でござろう?拙者ならどんな時でも100%スティールキメてやるでござるよ。そりゃもう…こんな具合に!」
ゴウランガ!皆様は猟兵並みの動体視力をお持ちであろうか!?
持っていれば、エドゥアルトがユーベルコード「SAN Device」の連続発動を行い、クラブ内をビビットカラーな残像を出しながら移動しているのがお分かりになるはずであろう!
「この連続発動耐性に一番戸惑っているのは拙者なんだよね。すごくない?」
「そんな使って精神がぶっ壊れてないあたり特別な存在かもしれねぇな。……よし、お前さんの選手登録は完了だ。試合ではよろしく頼むぜ?」
「ハイヨロコンデー!」
そう言ってエドゥアルトの実力を認めた「山男」は快く選手登録を済ませた。
大成功
🔵🔵🔵
ティー・アラベリア
一度やってみたかったのですよね、ジェノサイドボール
適度に殺伐としていて、相手がオブリビオンなら尚のこと楽しめそうです
戦力に不足が無いならば、不足している所を探しましょう
攻めるポイントは|玄人好み《コア層向け》という評価でしょうね
概ね目星は付いておりますが、接触前にチームの運営企業にハッキングして経営課題を仕入れておきます
…やはり、コアなファン層以外の集客がからっきしでございますね
ファイトマネー以外の収益は壊滅的、ビジネスとして伸びしろがありません
と、言うわけで。オイラン風選手としていかがでしょうか
個人的に皆様の屈強な胸板は嫌いではありませんが、強いだけではファンは付きませんもの
歌って踊って宙を舞って、誰彼構わず誘惑する事には自信がございます
ついでに相手選手をサンズ……こほん、病院送りにする自信も人並み以上にございます
相手選手と顧客を色々な意味で軟体動物にする手際ならお任せくださいませ
皆様は試合に勝ってお金を稼ぐ
お客様は楽しみながらお金を落とす
ボクはスポーツを楽しむ
三方良しでございますね
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「つまり乱闘一辺倒の試合は競技自体のマンネリ化だけではなく、故障による選手の引退や新規ファン取り込み機会の損失など様々な悪影響を……」
(|畜生《ブッダミット》、すごく重要な話をされてるのに全く耳に入ってこねぇ……!)
「山男」は文字通り山程ある巨躯を縮こまらせ、目の前で「バーリトゥーディスト」が抱える課題を並べるオイランめいた出で立ちの|少年《・・》の言葉に耳を傾けていた。
『馬に説法するグレーター・ボンズが蹴り殺された。』平安時代の著名な哲学剣豪が残した批判的コトワザがあるが「山男」は懸命に聴く姿勢を貫く。貫くが彼の心中はそれどころではなかった。
(なによりも胃がいてぇっ…!)
実は全身の8割以上を義体化している『山男』だが胃袋は数少ない生体の一つであった。
その臓器は生涯において食あたりや病とは無縁であり、彼の母親をして「鋼鉄の胃袋」と称賛されたことを「山男」は誇りとしている。
故に今現在襲ってくるキリキリとした痛みは彼の人生において初めての体験であった。
「山男」を襲う胃痛とは?それは今から半刻ほど前の出来事に起因していた。
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ティー・アラベリア(|ご家庭用奉仕人形《自立駆動型戦略魔導複合体》・f30348)が来店したその時、クラブにあるどよめきが起きた。
「ヒューッ!見てみろよあのオイラン!」
「これまで色んな女を見てきたが……アレはゲイシャ、いやオイランの歴史を塗り替えるぞっ…!」
身に纏う特注のきらびやかな簪に着物、そしてなによりティーの整った|相貌《かんばせ》は、決して成金特有の悪趣味さはなく、むしろ場違いなほど気品のある奥ゆかしさを漂わせていた。
「フィ…フィーヒヒヒ!なぁ……オレと良いことしようやぁ……。」
「お、おいお前!?」
時に眩しいほどの光は不相応の羽虫を寄せ付けるものである。
その証拠に…おお、見よ!一人のヨタモノが周囲の静止を振り切りティーに触れようと徐ろに手を伸ばしているではないか!
焦点のあっていない目は低品質の合成薬物と過度なアルコール摂取で理性の箍が外れている証拠だ!
おおブッダよ、まだ寝ているのですか!このままではティーはヨタモノにされるがままにっ……!
「ごめんなさい、今日の目的はジェノサイドボールなので“そういうの”はお受けできません。」
「フィっ…あ、アイエエエエエ!?」
……ならなかった!
ティーの肩に触れようとしたヨタモノが突如血しぶきを撒き散らしながら悲鳴を上げる。
そしてティーの側にはヨタモノの引き千切られたサイバネ腕を咀嚼する対人同化妖精!コワイ!
「「アイエエエエエ!?」」
そんな惨劇を目撃してしまった衆人は当然ながら阿鼻叫喚の集団パニック状態に陥った。
「ワッザ!?クラブ内に危険物の持ち込みは……!」
「やめとけ、“彼”はアンタッチャブルだ。…とにかくパニクってる客を正気に戻すぞ。」
「ハイヨロコンデー!」
クラブ・バウンサー達はトラブルへの介入を断念。代わりに騒いでいる客を囲んで棒で叩き沈静化していた。
正気をなんとか保っていた一部の客や従業員、そして「山男」は心底から生きた心地が無くなり、「無事一日を乗り切りたい」と切に願っていたのだという。
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「――|山男《マウンテンマン》様、どうもご気分が優れていないようですが大丈夫ですか……?」
「アイエッ!?い、いや!決してそんな事はナイ!もちろん無い!」
ティーの言葉にハッと我に返る「山男」。そうだ、今はビズの話を――つまり、このオイラン……オイラン・ボーイ?をジェノサイドボールの助っ人にするかどうかって商談をしていたのだと彼は思い出した。
「フゥーム…確かにオイラン風選手も昨今のジェノサイドボールにおいては欠かせない花形。お前の提案は非常に魅力がある。幸運にも今回の試合は|有料放送《ペイ・パー・ビュー》試合だ。試合中に口コミが広まれば儲けはさらに期待できるな……。」
「皆様は試合に勝ってお金を稼ぐ、お客様は楽しみながらお金を落とす、ボクはスポーツを楽しむ。Win-Win-Winの三方良しでございますね。」
両手でピースサインを作り無邪気な笑顔を向けるティーにドキリとする「山男」。不整脈であろうか?
「…良し、ならば取引成立だ。業界の未来のためにもしっかり話題を作ってくれ。」
「承知しました山男様。楽しませていただく分はしっかり皆様を“誘惑”させていただきます。」
ティーを助っ人として迎えることは最終的にチームのメリットになると踏んだ「山男」は遂に決断し、選手登録を済ませる。それをニコニコと見守るティー。
「あと、一応言っておくが自分の身は自分で守ってくれよ。変態な連中はオイランがいたぶられる展開を好む傾向があるからな。」
「ふふ、山男様は紳士であらせられるのですね。ご忠告ありがとうございます。ですがご安心を、そのような選手がいたらついでにサンズ・リバー送りに……」
「サンズ……?」コワイ!
「……こほん、病院送りに致しますね。|骨抜き《・・・》にする手管には自信がございますので。」
そういってティーは「山男」にニコリと微笑みかけた。
そして微笑まれた当人はというと…ぞわり、と全身の人工血管が縮み上がるような感覚に襲われていたのだとか。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『スラム・ハッカー』
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POW : クラッシュ・プログラム
対象に【肉体暴走プログラム】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD : アクセラレーション・プログラム
自身に【超加速プログラム】をまとい、高速移動と【ショットガンからの散弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : クレイジーワールドプログラム
戦場内を【バグまみれのゲーム】世界に交換する。この世界は「【移動はゆっくりとした歩行のみ】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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――ジェノサイドボールでスリーポイントを決めるコツだって?|45口径自動拳銃《フォーティーファイブ》と金属バットで敵チーム全員を失神KOさせてからスリーポイントが決まるまで粘るんだよ、為せば成る!
『ジェノサイドボールの神様』マァマァイケテル・ジョーダン。
――ジェノサイドボールにスリーポイントは無ぇよ。
とあるジェノサイドボールファン、ジョーダンの発言を受けて。
ジェノサイドボール。サツバツとマッポ―を六価クロムでメッキした寸胴鍋にぶち込み、焦げ付くほど煮詰めたサイバーザナドゥ世界に生まれるべくして生まれた|お誂え向き《・・・・・》の競技。
|殺戮劇《ジェノサイド》などチャメシ・インシデントであり、その日の試合も「バーリトゥーディスト」による凄惨な試合運びになるだろうと大半の観客は予想していた。
『みんな!“チャンコ”キメろォォっ!』
しかし、あるタイミングから試合は番狂わせとなる。
試合開始から15分が経過した頃を境に無名チーム「チャンコチーターズ」が明らかに格上の「バーリトゥーディスト」を圧倒し始めたのだ。
『全世界のジェノサイドボールファンの皆様!信じられない光景が広がっております!乱闘上等のあのバーリトゥーディストが!バーリトゥーディストが乱闘で圧されています!バーリトゥーディストのベンチはさながらツキジめいてネギトロであります!強し!チャンコチーターズ全く強し!観客席では賭博師達の阿鼻叫喚が響いております!』
「オボボーッ!」
「ウワーッ苦しい!苦しい!タスケテクレーッ」
バーリトゥーディストの勝ちに賭けていた客は信じられない光景に精神をやられていた。オッズにして1.25。大勝ちは望めずとも確実にリターンが得られる配当のはすが、まさかこんな地獄が待ち受けているとは思うまい。
しかしそれ以上の苦境に立たされていたのがバーリトゥーディスト、そして「山男」本人であった。
「ハキヨイ!……ブッダミット!俺のスモウが効いてねぇだと!」
「山男」渾身のブチカマシを受けたヨタモノ、『スラム・ハッカー』の身体が吹き飛ぶが受け身で衝撃を逃がし「山男」をタイピング・カラテで再強襲!
「イヤーッイヤーッイヤーッ!」
「グワーッグワーッグワーッ!…バカナーッ!こんなヨタモノのカラテに俺がーっ!?」
『おおブッダ!あの「山男」が今にも崩れ落ちそうであります!さながら伝説に描かれるゴリアテの最期を見ているようであります!』
このままではバーリトゥーディストを生贄とした“チャンコO-141”の、つまり黃神公司のデモンストレーション会場と化してしまうのは火を見るより明らか。
故にバーリトゥーディストを助け、黃神公司の企みを潰すならこのタイミングしか無いだろう……。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
どうしたよ、山男。
そこまで大層な|揉め事《アクシデント》か?
チンケな|ドラッグ《チャンコ》如きのカラテに押し切られるなんて、
土俵際でもないのにオウジョウ-サイドが良すぎやしないかい?
そんなんじゃ、アンタらに喧嘩を譲ったアタシの立つ瀬がないじゃないのさ!
メンバーチェンジだ、横合いから挨拶代わりに『電撃』で一撃入れながら、喧嘩場仕込みの『グラップル』で敵メンバーを抑え込んで投げ飛ばす。
そのまま『オーラ防御』で威嚇しながら、コート全体を睨めつけるよ。
フリーになったボールは『念動力』で動かしスリーポイントを叩き込むよ。
さあ、この【超感覚領域】の中で挑む命知らずはどいつだい?
エドゥアルト・ルーデル
インストラクション・ワン!
薬物使用者は正面から相手をしてはならぬ、ハック&サヨナラをするのだ!
重篤違法ヤクブツをキメようがそれが作用するのは肉体のみ…身体に入れたサイバーウェアの耐久はジッサイ変わらぬでござるよ
拙者肉体にクロームを入れてる訳じゃないでござるからな、サンデビルドから即座にネットランナーに変身するのでござる!
このコート内全て拙者の射程内…正に|ブッダ・オン・ザ・プラム《釈迦の掌の上》!カブキめいて睥睨しちょいとハック信号を送ればこの場の機械は違法めいて激しく前後!さすれば暴走するスラムハッカーのサイバネはハナビめいた炎を噴き上げ爆発四散!
シナプスをカリカリに焼くに限るでござる
ティー・アラベリア
楽しむのも勿論ですが、山男様のご期待には応えませんとね
番狂わせは確かに話題性に溢れるイベントですが、あまりの展開に会場が付いていけないのではショーとしていただけません
雰囲気と流れを変えるためにも、会場の音響システムをハックしてバーリトゥーディストのテーマ曲でも流して頂きましょうか
バーリトゥーディストの曲ですもの、相応しい楽器が必要です
ギターや横笛? ええ、ええ。お上品に過ぎますね
ドラムや和太鼓? いい線をいっていますが響きの多様さに欠けます
ファンの皆様ならご存じのはずです。バーリトゥーディストのテーマを彩るに相応しい楽器の名前は?
そう、人体でございます
テーマ曲を歌いながら、コート上にひしめく|楽器《相手選手》を演奏していきましょう
相手の骨の折れる音、ボールにサイバネ義肢が粉砕される音、そしてもちろん痛みに苦しむ悲鳴や泣き声
ジェノサイドボールチームのテーマ曲を彩る音はこうでなくてはいけません
勿論、ゲームそのものも忘れてはおりませんよ
歌いながら、踊りながら、壊しながら、得点を積み重ねましょう
チトセ・シロガネ
さて、ボクの出番ダネ。
目の色変えたケダモノの群れから味方選手を守るネ。襲い掛かるケダモノをあいさつ代わりに蹴り飛ばしてカメラにウィンク。
瞬間思考力から超加速プログラムと見抜く、ボクにおあつらえ向きの相手だ。同時にUC【彗星舞踏】を選択し起動。抜きナ!どちらが|光速《はや》いか試してやる!
動きが速かろうが狙いが甘い、ヨタモノの集団ダナ。そういう動きだ。
心眼で銃弾の軌道を読み。
極限まで高めた早業でダンスしながら回避。
自身のカラテから放つ斬撃波で散弾銃を持った悪い腕ごと切り落とす。
命までは奪わない……けどチートに手を出した報いを悔やみながら死んでゆけ。
中村・裕美
途中参加のヤバイ級ハッカー
救護班に扮しベンチで治療にあたる
「……ドーモ……救護に来ました」
まずは負傷したバーリートゥーディストの治療。コミュ障なので基本的には「アッハイ」か「アイエエエ」しか受け答えができない
「……肉体データを試合前の健常時のものに上書きして治療します」
【リアリティハッキング】で彼らを治療して肩慣らし。疲労はドラゴンエナジーをキメて紛らわせる
「……チャンコチーターズの『治療』も開始します」
彼らの肉体情報をスキャンし【情報収集】し【早業】【ハッキング】。チャンコ成分を抜き取った状態に肉体情報を上書き。バフ解除&禁断症状で相手を弱らせる。精神状態の治療も可能だが、それは試合後に
●
『バーリトゥーディスト、|ジリ・プア―《徐々に不利》!急行回転スシ・レーンめいた予備選手投入も全く歯が立たず!万策尽きたかぁっ!?』
「フィーヒヒ!タイピングは剣よりもツヨシ!所詮マッチョだけが能のイディオットなど|チャンコ《薬》キメし我らの敵ではないわー!モノドモカカレー!」
「ハイヨロコンデー!」
おお見よ!大量のスラムハッカーが「山男」めがけて両腕を突き出しながら突撃を始めている!これは古代ローマの天才プログラマーが編み出した伝説のカラテ技「タイピング・ケン」ではなかろうか!?
「Wasshoi!動かざること山のごとし!|山男《マウンテンマン》は倒れねぇぞ!」
対する満身創痍の山男は気合とともにエンチャント・シコを踏みしめ耐ショック姿勢!しかしチャンコで強化されたカラテを受ければ今度こそ無事では済まない!
おお、ブッダよ!まだ寝ておられるのですか!!!
W A S S H O I !
突如試合場に響く気合の一声!観客でもなければ山男のものでもない。
「「アバババーッ!?」」
そしてスラムハッカーは絶賛ブッ飛ばされているので彼らの発声でもない!では誰ぞや!
「どうしたよ、山男。土俵際でもないのにオウジョウ-サイドが良すぎやしないかい?」
「ドーモ、スラムハッカー=サン。エドゥアルトです。薬物使用者め、貴様らが行くのは骸の海にござらん。病院でござる(ギュッ)」
「番狂わせは確かに話題性に溢れますが…会場が付いていけないのではショーとしていただけませんね。」
「というわけでボク達の出番ダ。宣言通り、輝いて見せるネ!」
猟兵だ!我らが猟兵のエントリーである!
「山男」に襲い掛かっていた数ダース規模のスラムハッカー集団を蹴散らしながらの参戦に観客、特にバーリトゥーディスト・ファンは大いに盛り上がりを見せる!
『バーリトゥーディスト、ここで急遽登録となった助っ人選手の投入!チャンコチーターズ前衛を蹴散らしたぁっ。ポイントは以前チャンコチーターズ優勢だが巻き返せるでしょうか!』
「巻き返せるか、じゃないんだ。…巻き返すんだよ!行くぞぉ!」
スラムハッカーが落としたボールを拾い上げた多喜は高速ドリブルとともに敵ゴールめがけて走り出した。
「はーっイディオットめ!飛んで火に入る夏の虫とは正にこのこと!そんなウカツな貴様は我らのフーリンカザンでベンチ送りだ!」
迫りくる多喜に対してスラムハッカー達は腕に埋め込んだキーボードに毎秒2000打の高速タイプ!でたらめなプログラム・コトダマを対象に打ち込むジツの発動動作だ!
「ウカツはどっちだろうねぇ?アタシに目を付けたのがアンタの運の尽きさ!」
「グワーッ電撃!」
インガオホー!多喜のカウンターめいたユーベルコードがスラムハッカーを直撃!身体に埋め込んだ電子機器類を通してダメージ倍増重点!
「ついでに選手交代してきやがれ!」
「サヨナラ!」
多喜、続けて片手ドリブル姿勢のままスラムハッカーの首根っこをひっ捕まえるとチャンコチーターズのベンチめがけてスリケンめいて投擲!スラムハッカー、ベンチ内でしめやかに爆散!
●
「チャンコは持ったな!行くぞぉ!」
ベンチに再起不能となったスラムハッカーが投げ込まれると同時に|補欠選手《おかわり》として出てきたスラムハッカー。
その手にはポータブルちゃんこ鍋!
「まさか我々がちゃんこ鍋に見せかけて常時ドーピングを行うとはだれも見抜けまい…」 欺瞞!ちゃんこ鍋の正体は違法ドーピング・ドラッグ『チャンコO-141』!
スラムハッカーはちゃんこを美味しそうにかき込みながら猟兵たちに迫りつつあった…!
「インストラクション・ワン!薬物使用者は正面から相手をしてはならぬ、ハック&サヨナラをするのだ!」
「ブゴフォッ!ゴホーッ!」
エドゥアルトのアンブッシュによりちゃんこ鍋でむせるスラムハッカー。しかしチャンコ摂取により彼らの筋肉は明らかに強化重点だ!
「ほざけーっイディオット!むざむざ身を晒した愚、貴様の全経絡孔への無差別タイピングで知らしめてくれるわーっ。」
空になった土鍋でエドゥアルトに殴り掛かるスラムハッカー達!このままではエドゥアルトの頭部はネギトロである!
「……『ハックする』と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているのでござるッ!」
「アババババー!」
補充スラムハッカー、物理的炎上!背部に埋め込まれたサーバー群がいきなり火柱を上げ始める!これは超実戦的ハッキング・ジツ「クイックハック・ジツ」だ!コワイ!
「ウアアア炎ダーッ 助ケテクレーッ」爆発四散!
「アバッバッバー…サヨナラ!」またもや爆発四散!
「流石の|薬《チャンコ》もサイバーウェアは強化できなかったみてぇでござるなぁ~!コート全域にハック領域展開したからシナプスの一本に至るまでカリカリに焼いてやるぜぇ~!ムハハハーッ」
ゴウランガ!エドゥアルトの対電子戦フーリンカザンによりチャンコチーターズは正に|ブッダ・オン・ザ・プラム《釈迦の掌の上》!自ら築いたマッポー光景にスゴク・ワルイスマイルを浮かべるエドゥアルトのご尊顔は|有料放送《ペイ・パー・ビュー》を通してサイバーザナドゥ全域に晒された。
●
「流れは変わってきましたが、雰囲気がイマイチですねぇ、ふぅーむ……。」
猟兵の介入によりバーリトゥーディストは確実に巻き返せている。しかし依然として超展開であることも事実であり、ティーは会場の空気が追い付けていないことを察していた。
そんなティーの様子にチトセは助け舟を出すことにした。
「ファンサービスにバーリトゥーディストのテーマソングとか流すなんてどう?」
「それは…すごく名案ですね!」
チトセの何気ない言葉にティーは|ぱぁっと明るい笑顔を見せる《笑うという行為は本来攻撃的なものである》。
そんなティーの様子にチトセもつられて照れ笑いをしてしまう。
「エェ―、そんなに?でも音源とかどうしようカナ?ネットとかで拾えればいいケド…」
「せっかくのファンサービスですし、生演奏にいたしましょう。楽器もコート内にたくさんあることですし。」
「……ワッザ?」
『なんでもありだぜ、なんでもこいだぜ~♪』
「アイエエエエ!?」スラムハッカー、頚椎挫傷!
『まいぼでぃ~いず、べすとうぇぽぉ~ん♪』
「アバッ!アババ―ッ!」スラムハッカー、全身筋断裂!
『ふんふふーん、ふんふんふーん(※公式歌詞です)♪』
皆さんご存じのバーリトゥーディスト公式ソング『常在戦場』を少年特有のソプラノボイスで歌いながらティーはスラムハッカーを|振り回して《・・・・・》いた。
スラムハッカーのちょうど脛骨あたりをぎゅっとつかみ振り回すさまは新体操のバトントワリングのようなダイナミックさを、時にフラメンコのような華麗さがある。
そしてこれは猟兵動体視力をもって観察した場合であり、一般人からすれば超高速でぶん回されるスラムハッカーが全身の筋肉と骨格と関節を破壊されたことにより一枚の布めいた残像を残すことから、さながらティーが「ドレス」をまとっているかのように見えたのだという。
「『ふんふふーん、ふんふんふーん(※公式歌詞です)♪』さぁーて次の楽器はと…」
「ヤバい!つかまれたらセプクよりつらい!」
「に、逃げ…!」
「どこに逃げようというのカナ?」
「アイエ!?」
前門の虎がティーなら後門の狼はチトセである。
後ずさったスラムハッカーは振り向きざまにショットガンを発砲!しかし銃口の先にチトセの姿はない!
「ワッザ!?」
「遅いナァ…」
「チェッコラー!」さらにスラムハッカーはショットガンを発砲!しかし銃口の先にチトセの姿はない!
「動きが速かろうが狙いが甘い、ヨタモノの集団ダナ。そういう動きだ。……ということで、ソーレ!」
スラムハッカーの超反応によるショットガン射撃を、超反応を超えた超早業で回避。そして上腕ごとショットガンを事務用品の裁断機めいた手刀で切り落とすとチトセはスラムハッカーをティーに投げ渡した。
「ウギャアアアア!?」
「おぉ、これはちょうどいいサイズ感でございますね。ありがとうございます、チトセ様。」
「|チーター《チート野郎》だけど死なない程度にネー。……さて、次はだれが相手になってくれるカナ?」
「「「ザ、ザッケンナコラーッ!!」」」
スラムハッカー、ショットガンによる統率射撃、散兵射撃を次々に実施!
しかしチトセはこれを難なく回避し、無慈悲に手刀を繰り出していく!
「「「アイエエエエ!」」」
ゴウランガ!おお、ゴウランガ!
圧倒的な力を無邪気に振るうティー、そして圧倒的な技で敵を翻弄するチトセ。
これを求めていたバーリトゥーディスト・ファン、いやジェノサイドボール・ファン達はたまらず雄たけびをあげる。
そしていつの間にか『常在戦場』の大合唱が始まっていた。大衆スポーツによくあるアレである。
『まいぼでぃ~いず、べすとうぇぽぉ~ん♪ふんふふーん、ふんふんふーん(※公式歌詞です)♪』
●
「アイエエエ…こんなの聞いてない!?」
「ナンデ劣勢!?チャンコキメてるのにナンデ!あり得ない話!」
猟兵の参戦によりチャンコチーターズ内に動揺が広まっていた、黃神公司から提供された『チャンコO-141』は確かにスゴク、そして強い。
だから負けはない、負けたとしたら原因はチャンコ以外…即ち彼らがセプク・ケジメの憂き目に遭うは必定!
「チャンコは凄い!だから強い!だから売れるのだ!セプクしたくなかったら猟兵を倒すしかない!」
いつの間にか背水の陣にたたされるスラムハッカー達。だが幸か不幸か『チャンコO-141』はまだ残っている。
「オーバードーズ覚悟でキメればワンチャンいけるかもしれん…」
だがいけなかったら…?そんな気の迷いが彼らの運命を決定づけてしまった。
「な、なんだぁっ」
「なにっ!あいつらは…!」
――時を同じくしてバーリトゥーディスト側ベンチ。
「……ドーモ……救護に来ました。わ、ワぁ…聞きしに勝るネギトロ光景…。」
中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は野戦病院めいた光景に引きながらもこの場に来た目的を果たすべく行動を開始した。
「ウウ…いてぇよぉ…」
「アッハイ、……修正……修復」
「いてぇ…いて……ワッザファ!?どうなってんだブッダ!」
「アイエ!?」
おお、見よ!生きていることが奇蹟めいていたバーリトゥーディストの選手が一瞬にして全身の負傷が完治しているではないか!
「おぉ…ブッダ…」
「俺も直してくれブッダ…」
「ブッダ…」
そんな光景を見せられてしまったものなのだから、まだ戦いたバーリトゥーディスト達はブッダに縋る思いで裕美に助けを求める。
「アイエエエエエ…」(治療はするっ…!するがっ…!コワイので縋るのはヤメテッ…!)
実際ガタイの凄くいいバーリトゥーディスト達に囲まれるだけでなく、ベンチ内を支配する血と汗の匂いは極めて強烈で、ユーベルコードによる治療の疲労は普段の数倍以上にもなったという……。
「「「完全復活だァ!行くぞぉ!」」」
『おおなんという光景でしょう!負傷してコートを去ったはずのバーリトゥーディストの選手がコートになだれ込んできたぁっ!超回復!まさに超回復というべき奇跡です!』
波であった。まさに筋肉の大波であった。
各人が黒帯クラスのカラテ実力者、乱闘上等の乱暴者。それが一気に雪崩れ込むのだから観客にとってはビッグサプライズであろう。
『うおおおおおお!』
『この歓声が聞こえるでしょうか!聞こえますでしょうか!我らのバーリトゥーディストが還ってきたといわんばかりの大歓声であります!凄い大歓声であります!バーリトゥーディスト、大歓声に迎えられて帰還を果たしました!』
「き、キメるんだぁ早く!はやくチャンコを寄越っ……!」
「啜ってる場合じゃねぇ、血管から|注入《たべ》てっ……!」
「もうだめだおしまっ……!」
「「「イヤーーーー!」」」
「「「アイエエエエエエエ!」」」
バーリトゥーディストの圧倒的な暴力がスラムハッカー達を飲み込んだ!
「ふぅ…負傷した選手たちの身体データをもとに『チャンコO-141』の効能解析、解毒抑制治療の確立にチャンコチーターズへの|遠隔投与《ハッキング》……間に合った……。」
バーリトゥーディスト側ベンチ、野戦病院めいた光景も今は昔。
そこには裕美が、空き缶となったドラゴンエナジーで形成された丘で疲れ切っていた。
故に、ベンチに負傷者はなく。その体は、きっとエナドリで出来ていた。
●
「多喜殿、ボールいくでござるよ!」
「よし来た!……おらぁっ!」
『数宮選手の見事な|フロム・ダウン・タウン《スリーポイント》が決まったァ~!バーリトゥーディスト、とんでもない逸材の助っ人を見つけたものです!』
「(とはいっても超能力でイカサマしてるんだけどねぇ)……しゃあっ、もう一丁行くよぉ!」
「「「おおーっ!」」」
スラムハッカー集団の戦力が大幅に削がれ、完全回復したバーリトゥーディストが対処できるようになった事でポイントも稼ごうとなった猟兵達。
ほとんどフリースロー状態となったゴール周辺でスリーポイント合戦に興じるのであった。
『嗚呼ぁ~、常在戦場~バーリトゥーディスト~♪』(歌:ティー・アラベリア)
大成功
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第3章 ボス戦
『アッシュ・クイーン』
|
POW : 灰になれ
自身の【|熱線銃《ブラスター》】から極大威力の【|原子崩壊熱線《アトミックバーナー》】を放つ。使用後は【触れた相手の構成物質が灰】状態となり、一定時間行動できない。
SPD : 下僕になれ
レベルm半径内に【姿を隠した無数の軍用鳥型ドローン】を放ち、命中した敵から【戦意と敵意と自我】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 道を開けろ
自身が装備する【アミターバ超鋼製の義足】から【心すら貫く|踵の炸裂杭《パイルバンカー》】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【魅了と恐怖】の状態異常を与える。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠カルマ・ヴィローシャナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
『さぁいよいよ試合は大詰め!助っ人の加勢で息を吹き返したバーリトゥーディスト、乱闘はもちろんポイントでも巻き返しております!』
「フゥン……チャンコO-141をキメてもサンシタは所詮サンシタ。格上のモータル相手には十分だがそれ以上の相手は荷が重いということか。…まぁデータとしては十分。あとは黃神公司の開発部が改良を頑張ればいいだけのことよ。」
チャンコチーターズ側ベンチの最奥から声が響く。
スラムハッカー達が全滅したことで無人と化していたかに思えたが、それは立ち込める大量の|湯気《・・》が声の主と会場を遮断していたに過ぎなかったのだ。
「イヤーッ!」声の主はシャウトと同時にコート内へ跳躍!猟兵達の前に姿を表した。
「ドーモ、イェーガー=サン。アッシュクイーンです。黃神公司サンの企みを次々と妨害しているらしいがそれも今日までよ。貴様らの首を手土産に|特別報酬《ボーナス》をいただくとしよう!」
猟兵達の前にエントリーしてきたのは一人の女性!
軽装ながらも最高品質のサイバネティクス、武装を身に纏ったサイボーグである!
「あ、あれはアッシュクイーン=サン!?格闘戦だけでなくドローンやブラスターを使う強敵だっ!」
「山男」が吠える。しかもアッシュクイーンは今の今までチャンコを摂取し続けており彼の知る以上の戦闘力を有しているに違いない。
『なんということでしょう!チャンコチーターズ、まだ戦力を温存していたぁ!並々ならぬ気迫とともにバーリトゥーディストに挑むようです!既に試合は終盤でありますがっ!一体どうなるというのかぁっ!』
実況とともに観客たちの熱狂は最高潮に達する。ついにクライマックス、「女王」を冠する強敵との戦いが始まろうとしていた……。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
そうだよ、そうじゃなくちゃ面白くねぇよなぁ!
試合も終盤、ラストピリオド。
どうせ盛り上げるならゲームセットまで立っててくれると嬉しいんだけどねぇ、どうもヤル気が抑えきれそうにねぇわ。
これだけの観衆、上がりきってるボルテージ、アナウンサーのマイクも絶好調ときた。
今なら久々にサイバネもドラッグもなしに、あの境地へ達せそうだよ。
そう、第七感の発露までね!
チャンコでカラテを強化してドローンで制圧しつつ蹴散らすつもりだろうが、『電撃』の『範囲攻撃』でドローンを墜とし、そのまま鳥のようにクイーン目がけて踊り込む!
そっちがカラテとスモウならこっちはカンフーだ、覚悟しやがれ!
●
アッシュクイーンの登場はまさにドラマチックだ。
|その名《クイーン》に違わぬ王道ともいうべきか、振る舞いも強者としての圧力もすべてが熱狂を加速させていた。
当然猟兵とて例外ではない。
「うおおお!そうだよ、そうじゃなくちゃ面白くねぇよなぁ!これだけ盛り上げられてノらねぇってのは野暮ってもんさ!」
「死に急ぐかイェーガー!ならばまずは貴様の首をもらってやろう!」
多喜は興奮を隠せずアッシュクイーンの前に躍り出る!対するアッシュクイーンも戦闘に臨むべくカラテを構えた!
「ドーモ、アッシュクイーン=サン!数宮・多喜です!踊る阿保と見る阿呆ならあたしは前者なもんでね、付き合ってもらおうか!」
「ドーモ、多喜=サン!踊るのは貴様だけだ!貴様自身へ贈る|レクイエム・ボンダンス《葬送の盆踊り》をな!イヤーッ!」
「イヤーッ!」
互いに挨拶を交わし0.1秒後には奇しくも互いにハイキックを放ち互いにガードで受け止めた!
『すっ…すさまじい破裂音が鳴り響きました!数宮選手VSアッシュクイーン選手!初手ハイキックによって火蓋が切られました!』
「ヌゥッ!この蹴り、カラテではない…貴様、|功夫《カンフー》使いか!?」
「ご名答!しかし怪しいドラッグでズルしてるってのに、アンタのカラテはこんなもんかい?」
「ほざけーっ!貴様程度ドローンの集中運用で十分よ!行けぇい!」
《ピピーッ!ハイヨロコンデー!》
アッシュクイーンの号令を受けて軍用鳥型ドローン群が多喜を強襲!多喜はアッシュクイーンのハイキックを受け止め、自らもハイキックを放っていたため防御不利な体勢である!
「王は自ら手を汚さない」自らのカラテをブラフに本命打を打ち込む隙を作りだす!これこそがアッシュクイーンの恐るべきショーギめいたフーリンカザン!
《急降下爆撃重点!キンボシ・オオキイな!》
『アッシュクイーン選手、伏兵を仕込んでいたぁっ!多勢に無勢の数宮選手危うし!』
「「うおおおおーっ!」」
アッシュクイーンの巧妙な戦術とわかりやすいほどの物量攻撃は正に「力でねじ伏せる」ジェノサイドボール受けの良いファイトスタイルであり、会場のボルテージは天井知らずに昇り続ける。まさに異常事態だ。
そんな異常事態は、窮地に立たされる多喜への刺激剤となり彼女の精神を|尋常《エッジ》の向こう側、|異常《イレギュラー》の境地へと至らせるには十二分であった。
「グォカカカ…ケォォォォ!!!」
「グワーッ!?な、なんだぁっ」
おぉブッダ!多喜の声帯から人間ならざる大音量の異音が発せられる!コワイ!
たまらずアッシュクイーンも耳を抑える!
「感謝するよアッシュクイーン=サン…あんたのお陰で久々に第七感を…|レイヴン《鴉》を出せるからなぁ!イヤーッ!」
|レイヴン《鴉》とは古代ニンジャ神話に登場する漆黒の聖獣!北欧神話においては大神オーディンに仕えたフギンとムニンとして知られる高位存在だ!
雷神めいた多喜の放電がドローン群を殲滅!ラグナロク光景!
「れ、レイヴン…ば、バカナーッ!」
「小鳥の群れ程度じゃ|アタシ《レイヴン》の羽ばたきは止められねぇのさ!目覚めさせてくれた礼だ!こいつを喰らいなっ!」
瞬間、多喜の周囲に鴉羽が舞いそのすべてがアッシュクイーンに襲い掛かる!これはアッシュクイーンのドローン攻撃に対する意趣返しであろうか!
「オラオラオラオラオラァッ!」
「チョコザイナー!……グワーッ!」
アッシュクイーン、状況判断により堅実なガードを選択するも驚異的なラッシュ攻撃の前に打つ手なし!ついに押し切られブッ飛ばされるのであった!
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
よう|チューマ《コーポ野郎》、今更のこのこ死にに来たんでござるか
気に障ったら謝りますぞ、でも貴様もこんな所にドサ回りさせられてる˝サンシタ˝でござるよね?
デュフフフサイバー・パンクな戦い方は夜の8時まで、それ以降はグラップラーに変身するの
拙者と格闘戦しようぜ!まあこれはあくまで本命を叩き込むための前菜みたいなもんでござるが
脚についてる関係上炸裂杭を使う時は振り上げたり予備動作があると思うんでござるよね!なので動作を見切って脚をあげた瞬間に飛び関節で極めるでござる!んかあっ
地面に転がしたら身体を回転させてクロームごとへし折るでござるよ!
君はもう無様に死んでいく事しかできないんでござるね
かわうそ…
●
「よう|チューマ《コーポ野郎》、今更のこのこ死にに来たんでござるか。」
「いきなり挑発か?サンシタらしいな。」
「なんだぁテメェ…?」エドゥアルト、キレた!
開口一番一触即発の煽りあい、軍配はアッシュクイーンに上がったと思われた。
「…まぁさっきから人のことサンシタ連呼してくれてるけど、貴様も大した器じゃないでござろう?」
「あーっ?今何か言ったかヒゲ?」
しかしエドゥアルトのターンは終わっていなかった。ここぞとばかりにアッシュクイーンのカンニンブクロを温めるべく切り札を投下。
「気に障ったら謝りますぞ、どうもすみませんでした。でも……貴様もこんな所にドサ回りさせられてる˝サンシタ˝でござるよね?名前負けしてる気分はどうでござるか?」
「貴様ーっ私を愚弄する気かぁー!」
アッシュクイーンのカンニンブクロが爆発!その0.1秒後にはアミターバ超鋼製の義足によるヤクザを超えたヤクザキックでエドゥアルトを強襲する!
「貴様のそのふざけた態度ごとグチャグチャのネギトロに変えてくれるわーっ!」
「煽っていいのは煽られる覚悟のあるやつだけでござるって古事記にも書いてあんだよね。すごくない?…って言ってる場合じゃねーでござるな!」
ヤクザキックとは要するに素人丸出しなモーションの大きい前蹴りである。しかしその破壊力は脅威であり、加えてサイバネ義足を用いるアッシュクイーンが繰り出すそれはスピード、破壊力ともにモータルのヤクザが繰り出すそれをはるかに凌駕していた。
アッシュクイーンはヤクザキックから連続キックを繰り出しエドゥアルトを追い詰めようとするが、エドゥアルトも伊達に鉄火場を潜り抜けてはいない。文字通り間一髪の危うさでブリッジ回避に専念していた。
「ヌゥーッ!チョコザイ!」
「ククク…サイバネ脚で一撃必殺狙いの蹴り…遅れてるでござるなぁコーポの喧嘩はよぉ…。」
「なにっ!」「な…なんだぁっ」
エドゥアルトは身に着けていた電子装備や防護装備をすべて取り外すとアッシュクイーンに向き直った。
その行動にアッシュクイーンだけでなく試合場全体がざわめいた。
「デュフフフ。サイバー・パンクな戦い方は夜の8時まで、それ以降はグラップラーに変身するの。さっさと出すでござるよォ、てめ~のパイルバンカーを…。」
そういうと左右の手をわきわきと動かしオーソドックスな構えを取った。
「グゥーッ!私をまだ虚仮にする気かぁ!だったらお望み通り串刺しにしてくれるわーっ」
実際アッシュクイーンは激昂を超えた激昂状態にあった。チャンコO-141による興奮作用もシナジーになっていると思われるが、とにかくキレやすい精神状態にあり、義足に内蔵された|炸裂杭《パイルバンカー》による早期決着を狙いに行った。
対するエドゥアルトは対照的に普段とは打って変わって冷静であった。アッシュクイーンの蹴りモーションは先の攻防で熟知済み、そしてパイルバンカーが踵部から射突される構造であることからキックモーションにあわせて作動させる――つまり予備動作が必要であることは明白。
「ここでござる!」
「なにっ」
アッシュクイーンの中段前蹴りにあわせてエドゥアルトが超低空タックルを繰り出す。そのまま軸足を払い、蹴り脚を股関節、膝関節を固定するように掴み押し倒す。
「く、クソ!離さんかっ!」
アッシュクイーンはエドゥアルトを引きはがそうと反撃するが生身の手打ちでは焼け石に水をかける程度のものである。
「まだ拙者のターンは終わってねぇ~でござる!ンッ!……んかぁ!」
「そ、その技はやめろー!……グワーッ!」
『な、なんという展開だぁっ!ルーデル選手、アッシュクイーン選手の脚を捻じり切り、粉砕したぁっ』
アッシュクイーンの静止を振り切ってマウントポジションを取ったエドゥアルトは上半身の回転に合わせアッシュクイーンの義足を捻じり上げ、義足が火花や異音が生じるのも構わずに根元からばきりとへし折った。
「拙者つながってるものはなんても外したくなる性分ゆえ、ついやっちゃいましたぞ♡そらもう一丁!」
「やめっ……グワーッ!」
『う、う あ あ あ あ!なんという残虐っぷりかぁ!アッシュクイーン選手、両脚粉砕!これはもう試合続行不可能かぁっ!』
『エドゥアルト・ルーデルの正体見たり!その本性はルール無用の鬼畜のような男だったのかあっ!』
実況も興奮して良いのかドン引きすればいいのかわからないテンションで惨状を読み上げる。観客も口笛を吹いてみせたりするもかなり困惑しているようだ。
「アバババ……」
その頃アッシュクイーンはというと、痛覚遮断を怠ったのが祟り両脚粉砕による激痛で失神KOしていた。
「そうか!両脚を失った君はもう無様に死んでいく事しかできないんでござるね!かわうそ……ってなわけでドーン!」
そしてエドゥアルトの無慈悲なサッカーボールキックで強制退場と相成った。
大成功
🔵🔵🔵
チトセ・シロガネ
道は譲らない。ボクがデカいウォールネ!
パイルバンカーを撃ち込もうとする間に割り込む! ボクの結界術を纏ったキックで受け止める。あ、結構威力高いネ! このままじゃジリープア、ボクの乙女回路が大ピンチヨ!
でもそんな殺し文句で射止められるほどボクの乙女回路は甘くないネ! こちらもリミッター解除と推力移動で押し込む、出力の強さと武器の太さなら負けるつもりはないヨ! UC【破邪光芒】を発動させ、脚部に高出力の光刃を展開させてパイルバンカーの破壊を試みるヨ。
どう? ボクの「女王」は、天にも昇るほどデショ?
●
「道を開けろ、サンシタ。イヤーッ!」
「道は譲らないサ、ボクはウォールだからネ!イヤーッ!」
アッシュクイーンVSチトセ。それは両者のキック合戦であった。
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
アッシュクイーンは|炸裂杭《パイルバンカー》内蔵のアミターバ超鋼製の義足、|全身義体《フルボーグ》のチトセは防御障壁を纏った足で絶え間なく蹴り込み続ける。
技量は互角、蹴力も互角。アッシュクイーンの蹴りが「攻め」であればチトセの蹴りは「守り」である。故に千日手となるかに思われた幾十合目の蹴りあいで事態は動いた。
「そろそろフィニッシュだ!イヤーッ!」
アッシュクイーンの蹴りに変化が起きた。これまでハイキック気味に振り上げていたモーションが、一度引き付けるような動作に変わったのだ。
その動きの意味を歴戦の戦士たるチトセは理解した。
「パイルバンカーの射出口がッ!これはマズイ!イヤーッ!」
アッシュクイーンの足裏が顕になると同時に爆音が鳴り、チトセの胸部めがけて鋼鉄の杭が伸びてくる。チトセは直撃を避けようと蹴り返すも被弾!
「グワーッ!結構威力高いネ!」
「ヌゥーッ!|ミルスペック《軍隊仕様》硬度!ならばスクラップになるまで蹴るまでよ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!」
速射砲めいて機械的にパイルバンカー・キックを打ち込んでくるアッシュクイーン。宇宙航行艦並みの耐久力を誇るチトセでなければエメンタールチーズめいて穴ぼこだらけになっていたことであろう。しかしパイルバンカーの重い一撃は確実にチトセを削りに来ており、このままでは|ジリ・プアー《徐々に不利》に変わりなしである。
「ヒューッ!見ろよあの蹴り!まるで大砲みてぇだ!」
「まさかよ、しかしこのままアッシュクイーン=サンがやるかもしれねえ…」
そして観客の中でもアッシュクイーン優勢と見るような声がちらほらと湧き始めていた。恐るべきアッシュクイーンのカリスマ・ジツが場内を蝕みつつある!
「どうだチトセ=サン!これがカチグミだ!一方的な暴力だけでなく、世論をも支配し味方につけ押しつぶす力だ!孤立無援の中でエレファントに押しつぶされるアリの気持ちを味わうがいい!イヤーッ!」
「グワーッ!」蹴り脚駆動系、小破!
おぉブッダよ、チトセを助けるものはいないのか!このままではツキジのマグロめいてネギトロになる運命が待っている!
「フィーヒヒ!ようやく力尽きたか!さんざん手間をかけさせた罰だ、ハイクは詠ません!イヤーッ!」
チトセの蹴り脚が下がったのを好機と見たアッシュクイーンが気合のこもったパイルバンカー・キックを放つ!
「……星光よ、一筋の希望となりて、悪意を断ち切れ。イヤーッ!」
しかしチトセの戦意は失われてなどいなかった!足を下したのは蹴り脚を変えるため。アッシュクイーンのキックを打ち落とすべく、チトセは低姿勢の構えからバックスピンキックを放つ!
「な…あ、あの技は!あの蹴り技は……『メイアルーアジコンパッソ』!!」
いの一番にチトセの蹴り技に気が付いたのは「山男」であった。
ニンジャ伝説に縁のある暗黒武道カポエイラの蹴り技『メイアルーアジコンパッソ』!
それはバーリトゥーディスト所属のオフェンスマンにしてニンジャであるクリダ・シャビエルが得意とする蹴り技であった。
「や、ヤロウ~。まさか技まで盗んじまってたのかァ~ッッ!」
「出力最大!今度はこっちの番ダヨ!」
「ヌゥーッ!ヤバレカバレの蹴りなどォー!……ば、バカナーッ!」
クロムキャバリア級の主機をフル稼働させて放たれるチトセのメイアルーアジコンパッソ。それは蹴り脚に光刃を纏い、技の名が示すように青ざめた月光の弧を想起させた。
一撃必倒の神槍がごときアッシュクイーンのパイルバンカー・キック、|イアイド《居合道》奥義めいたチトセのメイアルーアジコンパッソ。その勝負は一瞬で決した。
「グワーッ!」
「悪意断ち切る破邪光芒の一閃ダヨ。どう?ボクの「|女王《キック》」は?」
猟兵動体視力をお持ちでない方向けに解説すると、アッシュクイーンのパイルバンカー機構の始動と同時にチトセのメイアルーアジコンパッソがアッシュクイーンの義足を側面から直撃。光刃はバターを切るように抵抗なく義足をパイルバンカーごと切断したことでモータルの観客からはアッシュクイーンの脚が突然爆発消失したように見えたのである。
まさに超人、神速の域における出来事であった。
「グ、くっ…クソがぁっ……グワーッ!サヨナラ!」
アッシュクイーンをもってして納得しがたい結末であった。しかし勝負は確かに決し、彼女の心境などと関係なく、行き場を失ったオーバードーズ気味のチャンコの暴走によりアッシュクイーンは爆発四散した。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
「裕美、貴方はしばらく冷たいフートンで眠っているといいですわ」
疲労で潰れた裕美に代わり、副人格のシルヴァーナが現れる
「ドーモ、アッシュ・クイーン=サン。シルヴァーナと申しますわ」
優雅に【礼儀作法】【パフォーマンス】でアイサツを済ませ、試合に参加
ふんわりとお嬢様然とした優雅な動きでコート内を動き回るが、
「イヤーッ!」
一度ボールが渡ったり敵からの攻撃が来れば、緩急をつけて【残像】の残るような【早業】の動きで熱線などの攻撃を回避しつつ、敵を抜き去ってゴールしたり隠し持った惨殺ナイフで相手の武器や四肢を【切断】
「サイバネ義肢は血は出ませんけれど、スパークする火花が風情がありますわね」
●
「うう…つ、疲れが…」
裕美は先の戦闘(というより負傷者看護)で心身ともに重度の疲労状態にあった。故に意識を保っているのが奇跡のようなものであった。
「イディオット!半死人風情が私の障害になると思うてかぁっ!イヤーッ!」
しかしアッシュクイーンは無慈悲に熱線銃を射撃!倒せば|特別報酬《ボーナス》なので手心などは一切ない!
おぉブッダよ、寝ているのですか!このままでは裕美は消し炭めいて炙り焼きにされるであろう!
「イヤーッ!」
「グワーッ!ワッ…ワッザ!?」
直後、裕美の口から気合の掛け声が放たれると同時にアッシュクイーンの放った熱線がアッシュクイーン本人に直撃!余りにも不可解光景!
「うふふ、裕美は対人関係はからっきしなのですから素直にわたくしに変わっていればいいものを……ドーモ、アッシュ・クイーン=サン。シルヴァーナと申しますわ。」
突如として裕美の雰囲気が変わった……いや、これは中村・裕美にありて裕美にあらず!
リバーシ・チップめいて反転したかの如く白髪に、アイサツする彼女の背後に「お」「嬢」の二文字を浮かび上がらせるその存在は中村・裕美の別人格、シルヴァーナ!
「ぐっ…ド、ドーモ、シルヴァーナ=サン。アッシュクイーンです。貴様、多重人格者か!」
「|彼女《裕美》はニューロンのなかでフートンで眠ってもらっていますわ。さて、|踊っていただけますこと《シャルウィダンス?》?」
「ほざけーっ!イヤーッ!」
アッシュクイーン、再度の熱線銃射撃!対するシルヴァーナは直撃を優雅に回避!
アッシュクイーン、続けてファニングショットめいて熱線銃連続射撃!対するシルヴァーナは直撃を優雅に回避!
アッシュクイーン、予備の熱線銃も取り出し二丁拳銃射撃!対するシルヴァーナは直撃を優雅に回避!
まるで雲霞を撃たせるがごときシルヴァーナの回避技術は神業の域にあった!
「ヌゥーッ!なぜ当たらん!」
「わかりませんかアッシュクイーン=サン?貴方のカラテには|エレガント《優雅さ》が足りませんわ。ノーエレガント、ノーカラテですわ。」
「何がエレガントだ!私は|女王《クイーン》だ!イヤーッ!」
アッシュクイーンは続けざまに熱線銃を乱射する。一撃でも当たれば対象を原子レベルで崩壊させる必殺の熱線は、しかしシルヴァーナを捉えること適わず。
「アイエエエエ!」「うわ!アッシュクイーン=サンご乱心だ!」
『危険弾アラートドスエ、危険アラートドスエ。命の安全重点で回避推奨。もしくは遮蔽物の使用……ガガ、ピー。』
それどころか我武者羅な乱射は観客に向けられることになり会場は騒然である。
もはやジェノサイドボールどころではない、このまま続けていれば単純な|殺戮《ジェノサイド》しか残らないだろう。
「おごれる人も久しからず……ノーブレスオブリージュ、これ以上長引かせるのは良くありませんね。イヤーッ!」
シルヴァーナは隠し持っていた惨殺ナイフを構えるとアッシュクイーンめがけて突撃!
「消えろイェーガー!私は!私が|女王《クイーン》だ!イヤーッ!」
対するアッシュクイーンは熱線銃を最大出力で発射!しかし直後、懐まで入り込んだシルヴァーナの放つ斬撃が熱線銃を機関部ごと切断!
「グワーッ!」熱線銃の爆発がアッシュクイーンを襲う!
「イヤーッ!」シルヴァーナ、続けて右義足を切断!
「グワーッ!」アッシュクイーンがバランスを崩す!
「イヤーッ!」シルヴァーナ、続けて左義足も切断!
「グワーッ!」顔面から地面に倒れ伏すアッシュクイーン!
おお、エレガント!まさに神速の所業!シルヴァーナが走り抜けた後にはアッシュクイーンが地を這っていた!
「ば、馬鹿な…私は|女王《クイーン》だぞ…っ!?」
「暴君は倒されるのが常、女王の座も力の強さだけでは保てなかったということですわ。……エレガントの必要性、お分かりいただけたかしら?」
「エ、エレガント……む…無念……。」
圧倒的な力を見せつけられ、玉座から蹴落とされ地を這わされ、そして見下ろされたアッシュクイーンの屈辱は如何ばかりであろうか。
己が驕り、慢心、増長。それら全てが「エレガント」というただ一つ、己が省みなかったステータスの前に敗れた悔しさとともに|アッシュクイーン《暴君》はシルヴァーナを見上げながら意識を手放した。
大成功
🔵🔵🔵
ティー・アラベリア
もう少しジェノサイドボールを楽しみたかったところですが、どうやら前座はここまでの様ですね
真打登場となれば、謹んでお相手致しましょう
しなやかかつ優美なフォルムと鋼鉄特有の堅牢さを持ったその義足
我が敵ながら、素敵なセンスをお持ちでいらっしゃるようですね
ダンスの相手として、理想的なお方です
その身体能力とサイバネティクスを十分に生かして頂きましょう
全力でお相手すると同時に、観客の皆様にも楽しんでいただきませんとね
自在魔導刀を抜刀し、同時に反重力魔術を発現
会場を自在かつ優雅に飛翔しながら、美しい魔刃を振るいます
その名の通り、攻撃距離を自在に変更できる魔刃をリボンや鞭のように撓らせ、あざとく、容赦なく、美しく戦いましょう
洗練された足さばきと共に繰り出される炸裂杭を、時には反重力機構による急激な制動によって回避し、時には魔刃によって叩き落としながら、会場全体を使用してクイーンとの舞踏を楽しみます
ショーはまだ終わっておりません
互いの技と躯体を限界まで躍動させ、フィナーレを華々しいものに致しましょう
●
「ほう、最近のオイランはメイドの真似事もできるようになったのか?」
アッシュクイーンがティーの事に気がついたのは彼がスラムハッカーの残骸を処理し終えた直後の事であった。
そしてその挑発めいた言葉に微笑みながらティーは応えた。
「これはこれは…真打ちの方とお見受けします。いえ、ボクは|こちら《メイド》が本業でございます。どうもはじめましてアッシュクイーン様、奉仕人形のティー・アラベリアです。」
「ドーモ、ティー=サン。アッシュクイーンです。|人形《ドール》?……ホーホーホー。実に興味深い、工業品ならば黃神公司の新プロダクツに採用するのもやぶさかではないな。どうだ、我らメガコーポに鞍替えしないか?悪くは扱わんぞ。」
アッシュクイーンのカチグミ・サラリマンめいた高圧的ネゴシエーション・ジツだ!
「…いいえ、ボクの身体は企業秘密でございまして。」
「マァマァ、そう固くならずに…」
「いいえ、お断りします。」
「ソコヲナントカ…」
「いいえ、お引き取りください。」
まるでチャドーめいた超高等ネゴシエーション合戦!高圧的なアッシュクイーンに対し、ティーは奥ゆかしい態度で断り続ける。カチグミのネゴシエーション特有の慣例として、仕掛けた側は「3回」以内に交渉を成立させなければシツレイとなり|ムラハチ《政治的制裁》される運命にある。
ティーがアッシュクイーンの申し出を「3回」断ったことによりアッシュクイーンのネゴシエーションは失敗!
「ならばその四肢を削ぎ落とし、黃神公司技術開発局まで連行するまでよ!イヤーッ!」
故に強硬手段にでるアッシュクイーン、アミターバ超鋼製義足から繰り出されるミドルキック!
「しなやかかつ優美なフォルム、鋼鉄特有の堅牢さを持った見事な義足でございますね……アッシュクイーン様、貴女はダンスの相手として、理想的なお方です。謹んでお相手致しましょう。」
対するティーはイアイドめいて引き抜いた85式汎用型自在魔導刀の薄刃をで受け止める!ワザマエ!
「ヌゥッ!面白い!だが何時までも保つと思わないことだ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
アッシュクイーンの速射砲めいた連続キックだ!パイルバンカーを用いないが、一撃あたりの威力は49口径マグナム弾の直撃を遥かに凌ぐ!
「これがサイバネ・カラテ……義足から繰り出されているとは思えないほどに生物的であり、しかし機械の如く的確に急所を突いて来る……なんと素晴しい技術力でしょうか。」
対するティーは魔導刀で蹴りをいなし、時折り魔導刀を変形させてはトリッキーな反撃をくり出しながらアッシュクイーンと一定の距離を保ち続ける。アッシュクイーンに間合いを詰められたら詰められた分だけ下がり、アッシュクイーンが間合いを開こうとすればその分詰めていく。
決して近づかせず、そして離れない。
平安時代の剣豪が繰り広げた巌流なる孤島でのイクサめいていながら、しかし風流を感じさせる立ち合いは「武」というより「舞」。
「緩」と「急」のセッション、叩きつけられる鉄脚と魔刃の小気味よいビートはフラメンコの情熱的な旋律を彷彿とさせる。
普段のように喧騒と野次に塗れていた観客たちも、いつしか手拍子を叩き時折歓声をあげていた。
そしてティーとアッシュクイーンの鮮烈熾烈な舞踏は最高潮に達する。
「はーっ、ジェノサイドボールでこれほど昂るとは!素晴らしいぞティー=サン!」
「観客の皆様にも楽しんでいただいてこそプロの仕事でございますからね。…宴もたけなわ。そろそろフィナーレと参りましょうか、アッシュクイーン様。」
「応とも!私のキンボシ・オオキイで有終の美を飾ってくれよう!」
幾十度目かの打ち合いの末、一度間合いを開く両者。ティーは両手二刀の魔導刀を下段に構えて、対してアッシュクイーンは両脚二槍の炸裂杭を唸らせ|前傾《クラウチング》の独特な構えを取る。
続けて場を静寂が支配する。店内環境制御AIが空気を読み鳴り物を停止させ、観客も一人の例外なく固唾を呑み見守る。
時間にして僅か十数秒。
「イヤーッ!」
仕掛けたのはアッシュクイーン、左脚の炸裂杭を地面に打ち込み、その勢いを利用してティー目掛けてフロントキック跳躍!狙うは数ある急所の一つ。身体の中心、丹田!
人形といえ人体を模している以上、丹田への強打は十分致命傷になりうる!
そしてアッシュクイーンの右脚踵部から破裂音と共に鋼鉄の杭が射出!これがアンブッシュであれば何人たりとて絶命必至!
対するティーの魔導刀は依然下がったまま――受けるでもなく、避けるでもなく。
まるでティーのみ、時間が止まってしまったかの如く。
(ゴウランガ!これがチャンコO-141の真価か!イェーガーの反射神経ですら捉えられぬ超常の力!黃神公司はやっぱりスゴイ!)
故にアッシュクイーンは勝ちを確信し、笑みを――――
ごとん。
――――浮かべた。
がくん。
「……あ?」
不意にアッシュクイーンの口から漏れたのは疑問の声だった。
……なぜ、|お前は《ティーが》見下ろしているんだ?
後頭部に広がる鈍い痛みに一瞬目の前がフラッシュする。しかし依然として広がる光景は変わらず。両手の二刀を下げたままのティーが表情を変えずに見下ろしている。
立ち上がろうと力を込めるも、それは叶わず。大腿より先にあるべき鉄脚がそこになかったからだ。
「ば、バカな……!」
「実に見事な脚技でございました。実に正確で迷いがなく。あのままでは相打ちもやむ無しと思わせられるほどに……なので義足のみを切断し、無力化させていただきました。」
そう告げるティーの背後には……宙に浮いたままの一振りの魔導刀!
みなさんの中に、並外れた猟兵反射神経の持ち主はいるだろうか!?
であればあの刹那の瞬間、つまりアッシュクイーンの炸裂杭が射出される直前、ティーの後方から一直線に伸びた魔導刀の刀身がアッシュクイーンの両脚を貫いたのを確認できたであろう!
ティーは先の乱打戦において、自らが発する反重力圏にフリーの魔導刀を配置し、何時でもフィニッシュを決められるように準備していたのだ。
しかしアッシュクイーンの速射砲めいた蹴りに隙はなく、故に“仕切り直させ”、一騎打ちという決闘の王道を“利用”したのであるっ!
つまりアッシュクイーンがノッてくるのも、先手を取ってくることも、丹田を狙ってくることも、ティーには全てお見通し……というより、ティーの狙い通りであったのだ!
「なるほど…結局踊らされていたのは私のほうだったか……見事だティー=サン。私が睨んだ通り、やはり貴様は黃神公司に必要なプロダクツ…いや、人材だ……。」
ティーを見上げて告げるアッシュクイーンにもはや勝ち目はなく、当人もそれを理解していた。
「どうだ…やはり黃神公司に来ないか……?」
故にヤバレカバレ、最後のゴリ押し勧誘。
「申し訳ありませんアッシュクイーン様。そこまで買っていただき恐悦至極ではありますが、ボクにも猟兵としての立場がありますので。」
対するティーは困ったような笑みを見せて、やはり拒絶。
「取り付く島もなし、か。……ならば仕方がない。敗将として最後の仕事をするとしよう。」
アッシュクイーンは両腕で上体を起こすと、そばに転がる一組の鉄脚を拾い踵部を自らに押し当てる。
「……必要であれば介錯させていただきますが。」
「……いらんさ、私は|灰の女王《アッシュクイーン》。覇道敗れ敗将となれど、フられた相手の手を煩わせるほど落ちぶれてはいない。スゥーッ、ハァーッ………イヤーッ!」
ティーに背を向け自らのカラテを直接炸裂杭に流し込むアッシュクイーン。直後、彼女のシャウトとともに起動した二本の炸裂杭が心臓を破壊!
「ゴッ……ゴホーッ!た、楽しかったぞ、イェーガー=サン!先にサンズ・リバーの向こうで待っている!」
サ ヨ ナ ラ !!
チャンコO-141で増大し、心臓の崩壊で抑えきれなくなったアッシュクイーンのカラテが高熱を放出しながら爆発四散!
直後、忘れ形見のごとく試合場には大量の灰が降りしきり、アミターバ超鋼製義足はその積もる灰の山に埋もれゆくのであった。
「お見事でしたアッシュクイーン様、ナムアミダ・ブッダ……。」
そしてティーもまた奥ゆかしく灰の山に手を合わせ、サイバーザナドゥ式に祈りを捧げるのであった……。
【チープ・チャンコ・チーターズ ◆完◆】
大成功
🔵🔵🔵