高難易度レイドクエスト:白き魔神を討伐せよ
超常の力で人々を弾圧し、管理と節制による停滞した世界を築かんとする『白教』――。
その幹部の1人である『白聖者レオボルト』が、次元の狭間に封じられた魔神を蘇らせようとしている。
聖者の導きにより降臨した『白き魔神』は、まったき光によって世界に「完全なる秩序」をもたらすだろう。
それは一切の希望、未来、可能性が失われた、永遠に変わることのない彼らのための理想郷。
君が、自由を愛する冒険者であるのならば。
どうか、このクエストを引き受けてほしい。
白聖者レオボルトから『次元の鍵』を奪い、次元の狭間にて目覚めの時を待つ『白き魔神』を討伐せよ!
心、技、体、全ての要素を兼ね備えた最高の冒険者だけが挑める、最高難度のクエストが君を待つ!
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ゴッドゲームオンラインの大規模な『高難易度レイドクエスト』がバグプロトコルに乗っ取られ、多数のプレイヤーがその犠牲となる事件を予知しました」
|統制機構《コントロール》に支配された世界で、何者かが作り出した「究極のゲーム」ゴッドゲームオンライン。そこは自由と冒険を求める多くのプレイヤーで賑わう一方、バグプロトコルと呼ばれるオブリビオンの侵蝕を受けている。たとえゲームの中の出来事であっても、その脅威は現実と変わらぬものだ。
「バグプロトコルはゲーム内のシステムやモンスター等を乗っ取って、ゲーム世界を崩壊させようとしています」
このバグにより死亡したゲームプレイヤーは|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却され、現実社会での人権を剥奪されてしまう。他世界の猟兵の場合は生身の状態でゲーム世界にログインするため、ゲーム内でのダメージや死亡はリアルと同様だ。
「今回、バグプロトコルが乗っ取ったのはやり込みプレイヤー向けの高難易度クエストで、バグ化によって破壊された結果、生存確率0%の超凶悪クエストに成り果ててしまっています」
元々のクエストの性質上、挑戦するのは腕に覚えのある廃人プレイヤーばかり。危険性を訴えたところで諦める者は一部に留まるだろう。バグプロトコルによるプレイヤー大量虐殺を阻止するためには、猟兵もこのクエストに参加して、レイドボスを攻略するしかない。
「まずはレイドクエストへの挑戦権を得るために、『白聖者』というボスモンスターを倒す必要があります」
本クエストの最終ボスとなるモンスターは、この白聖者が復活させた古代の魔神という設定になっており、彼を撃破することでレイドクエストへの参加が可能になる。管理と節制を重んじるゲーム内の宗教「白教」の聖者で、見た目は人間型NPCと同様だが、ゲームの世界観では超常的な力で人々を弾圧する完全な敵役である。
「この白聖者もレイドクエストが破壊された影響でバグプロトコル化しているので、くれぐれもご注意ください」
強力な魔法を操る白聖者は難敵だが、これを倒せる程度のレベルがなければレイドクエストに挑む資格はない。
白聖者撃破後にドロップするアイテムが挑戦資格の証となっており、これがなければレイドボスのいるエリアには入れないようだ。
「クエスト最終戦のエリアに突入すると、まずはバグプロトコル『アマルガムビースト』の群れが大量に湧いてきます」
これはバグプロトコル化した様々な動物・魔獣型モンスターが融合して生まれた怪物で、下級バグながら群れをなした時の脅威はかなりのものだが、しょせんはボス前の前座である。軽く蹴散らせるようでなければレイドボス挑戦権の持ち腐れだ。
「ですが、その後に待ち構える最終ボス――正確には、その座を乗っ取ったバグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』は、文字通り規格外の存在です」
プレイヤーにまったくクリアさせるつもりがない、異常なレベルやステータスの高さ。バグを疑う(実際バグなのだが)ほど凶悪な攻撃力、削り切ることなど不可能に近い膨大なヒットポイント。このとてつもない強敵を倒すためには、猟兵の力だけでは足りない。
「幸い、このクエストに参加しているのは皆様だけではありません」
レイドという性質上、世界中のプレイヤーが――それもレベルも装備も極限までやり込んだ廃人プレイヤー達が、猟兵と共にレイドボスと戦うことになる。彼らとの協力なくして『セフィロト・エクス・マキナ』の撃破はおそらく不可能だろう。
「ですが、彼らプレイヤーはやられてしまうと|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却されてしまいます」
リアルな死よりはマシかもしれないが、誕生から生涯全てを管理された社会で最低限の人権すら喪失することは、時に死よりも辛い境遇を招く。ゆえに猟兵に求められるのは、この超難易度レイドボスバトルで誰も死なせない立ち回りと、その上で勝利するための戦術だ。
「一人の犠牲者も出さず、バグ化した高難易度クエストを攻略する。皆様ならできると信じています」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ゴッドゲームオンラインのフィールドへの道を開く。
究極のオンラインゲームを侵蝕するオブリビオンというバグ。このクエストをクリアできるのは猟兵達だけだ。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはゴッドゲームオンラインにて、バグプロトコルに乗っ取られた「高難易度レイドクエスト」を攻略する依頼になります。
1章はクエスト参加資格の鍵を握るボスモンスター『白聖者』との戦闘です。
見た目は人型でも設定上は完全な敵役であり、さらにバグプロトコル化しているため遠慮は不要です。
2章は最終ボス手前の前座にあたる『アマルガムビースト』との集団戦です。
これもバグプロトコルですが、猟兵から見ればそれほど強い敵ではありません。ボス戦までの体力を温存しつつさくっと蹴散らして下さい。
3章はバグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』との決戦です。
レイドボスの座を乗っ取ってこのクエストを無理ゲー化した元凶であり、猟兵だけでは倒しきれない圧倒的なステータスを誇ります。
ですが、このクエストはレイド戦なので、猟兵以外にも多数のプレイヤーが同時参加しています。彼らと協力し、なおかつ死なせない立ち回りをとって、ボスを撃破して下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『白聖者』
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POW : ホワイト・オーダー
【節制の光】を宿し戦場全体に「【我欲を捨てよ】」と命じる。従う人数に応じ自身の戦闘力を上昇、逆らう者は【触れる者を崩壊させる白き羽根】で攻擊。
SPD : ホワイト・マジェスティ
【管理を司る白き光】を見せた対象全員に「【白教に従え】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【行動成功率】が半減する。
WIZ : ホワイト・エンジェルズ
レベル体の【純白の天使軍】を召喚する。[純白の天使軍]はレベル×5km/hで飛翔し【白光の矢】で攻撃する。
イラスト:レインアルト
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナナセ・ミカグラ
なんか変わったクエストの補足が入ったなー
長くプレイしてるけど初めてかも
バグプロトコル?まぁトラブってる人をフォローすんの趣味だし、初めての敵ってのもいいね初素材ゲットできそう
ゲーム内でのプレイと変わらぬやり方
わざと姿を見せて圧をかけ射撃しつつ距離詰める
「そんな胡散臭い宗教はごめんだー」
…なんか変だな、体が重いし弾が当たらない
…銃が重い、そもそも引き金引けない
(体調不良でゲームをぶっ続けてもこんな焦燥は感じたことがない。え、あれ…これ、死ぬ?)
これ無理ゲーだな
でもログアウトしたら取り返しがつかない予感がする
「うるせぇ、ちょっと黙って」
敵の声を大声でかき消して一気に距離をつめ無我夢中でUC使用する
「なんか変わったクエストの補足が入ったなー。長くプレイしてるけど初めてかも」
以前よりゴッドゲームオンラインをプレイしているナナセ・ミカグラ(ガンカタおにーさん・f41792)は、今回の依頼を「クエストの変わり種」と認識していた。グリモアベースに招かれたということは彼自身も猟兵のはずなのだが、本人にその自覚はまだ無さそうだ。
「バグプロトコル? まぁトラブってる人をフォローすんの趣味だし、初めての敵ってのもいいね初素材ゲットできそう」
何にせよ、いつもと毛色の違うクエストに興味を惹かれた彼は、ちょっとしたチャレンジのつもりで依頼を受けた。
ゲーム内で密かな問題になりつつある「人権剥奪事件」、その渦中に自分が飛び込んだとの自覚はまだ無いままに。
「管理、節制、秩序……進歩なき世界こそが真の理想郷。『白き神』の目覚めと共に、この世界は浄化されるのです。さあ、貴方も白教に帰依しなさい」
高難易度レイドクエスト『白き魔神を討伐せよ』への参加資格を得るためにはまず、前提クエストボス『白聖者レオボルト』の討伐が必要になる。魔神復活の儀式場にやって来たゲームプレイヤーに対して、彼は設定された通りの口上を述べ、攻撃態勢に入る。
「そんな胡散臭い宗教はごめんだー」
ナナセはわざと敵に姿を見せてヘイトを買うような発言をし、銃撃で圧をかけつつ距離を詰めていく。彼のジョブは月穹士だが、ゼロ距離射撃と蹴りをメインにした格闘戦縛りをプレイスタイルとしている。遠距離職であえてそのような縛りを課しながらソロ中心で活動できている事実が、そのまま彼の実力となっていた。
「従わぬとあらば仕方ありません。管理を妨げる者には罰を」
管理を司る白き光を放ちながら、白聖者は【ホワイト・マジェスティ】を発動。白教に従わない全ての者に、行動成功率半減のデバフをかけてくる。通常のゲームスキルの域を逸脱したそれは、バグプロトコルの用いるユーベルコードだった。
(……なんか変だな、体が重いし弾が当たらない)
普段のゲーム内でのプレイと変わらぬやり方で攻略しようとしていたナナセは、すぐに違和感を覚えることになる。
過去に戦ったモンスターやボスの状態異常攻撃とも異なる、あらゆる行動を阻害される感覚。それは戦っている内にどんどん酷くなる一方だった。
(……銃が重い、そもそも引き金引けない)
入手以来ずっとカスタムして愛用してきた「GOD.NOT.BLESS」を、こんなにも使い辛く感じたのは始めてだ。鉛のように鈍くなった足では距離を詰めるのも一苦労で、白聖者から一方的に魔法攻撃を受ける羽目になる。白光に灼かれる痛みとともに、じりじりとヒットポイントが減少していく。
(体調不良でゲームをぶっ続けてもこんな焦燥は感じたことがない。え、あれ……これ、死ぬ?)
ゲーム上の死ではない、リアルな生命の危機を、その時ナナセははっきりと感じた。事実、猟兵であろうとこの世界で受けたダメージは死もしくは|遺伝子番号《ジーンアカウント》の焼失に繋がる。グリモアベースで案内人が語っていた内容が、彼の脳内にリフレインした。
「これ無理ゲーだな。でもログアウトしたら取り返しがつかない予感がする」
いよいよこのクエストが「普通ではない」実感が沸いてきたか、ナナセの表情が引き締まる。前提クエストの段階でこの調子なら、本戦のほうはもっとヤバいのだろう。無理ゲーで死ぬのはゴメンだが、死にそうな他のプレイヤーを見捨てて逃げるのも性に合わなかった。
「抵抗は無意味だと理解しましたか? さあ降伏しなさ……」
「うるせぇ、ちょっと黙って」
なおも服従を求めてくる白聖者の声を大声でかき消して、ナナセは自分の体に活を入れ、一気に敵と距離を詰めた。
無我夢中のままに発動するのは【スキルクロス・リユニオン】。カウンターと捨て身の一撃を組み合わせた独自技能「マキシマムカウンター」による、強烈な反撃の一射が撃ち込まれる。
「ガァッ……!!!」
ゼロ距離からの弾丸に射抜かれた『白聖者レオボルト』の体からは、血ではなく無数の白い羽がはらはらと散った。
いかにバグプロトコル化したボスモンスターとはいえ、ダメージ自体はちゃんと受けるようだ。そこに一縷の望みを感じたナナセは必死にトリガーを引き絞り、この取り返しのつかないバトルを生き延びるために戦うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
天星・雲雀
ゲーム経験は浅くとも、猟兵の経験が活かせるなら、戦えますよね。
クエスト受けてきます!
最初の関門は、白聖者討伐。この先に進む冒険者さんは全員、討伐済みの人だけですね。
ちょっとでも、不安要素を感じた一部の方は撤退してくれるように、周囲の方の不安を煽っときましょうか。
このクエは、バグ散らかしていて普段のものとは異質な挙動を見せるので、いつも勝ててた方も大損不可避待ったなしで、割に合わないみたいですよ。
自分も頃合いを見て撤退するつもりです。
とか、さも、むりぽ感を漂わせるような半分嘘を流しときましょう。
戦闘はUC
「オトモ!敵が矢を放つ前に光の速さで撃ち落としちゃってください!冒険者を狙う敵は優先です!」
「ゲーム経験は浅くとも、猟兵の経験が活かせるなら、戦えますよね。クエスト受けてきます!」
新たな世界はオンラインゲームの中とはいえ、他世界より訪れた猟兵にとっては生身と変わらぬ世界。技能や装備やユーベルコードも問題なく使えると知った天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は、勇んでゲームにログインした。
『高難易度レイドクエスト:白き魔神を討伐せよを受注しました』
クエストの手続き自体はギルドの受付所ですぐに済む。猟兵ではない一般プレイヤーも、数多くこの戦いに挑戦しているようだ。だが彼らは、このクエストがバグプロトコル――オブリビオンによって乗っ取られ、クリア不可能な死のゲームと化していることを知らない。
「最初の関門は、白聖者討伐。この先に進む冒険者さんは全員、討伐済みの人だけですね」
魔神復活を企む白教の聖者、という設定で出現したそのバグプロトコルは、明らかに通常モンスターとは異なる挙動とユーベルコードで猛威を振るっていた。雲雀の目にはそれがオブリビオンであることは明らかだが、一般プレイヤーはそうと知らず苦戦する者もいる。
(ちょっとでも、不安要素を感じた一部の方は撤退してくれるように、周囲の方の不安を煽っときましょうか)
最終ボスの討伐には一般プレイヤーの協力も必要にはなるが、覚悟や実力のない有象無象ばかりに来られても困る。
軽くふるいにかけておくのも悪くはないかと、彼女は受付所の近くにいるプレイヤーの元にとことこと近寄り、声をかけた。
「このクエは、バグ散らかしていて普段のものとは異質な挙動を見せるので、いつも勝ててた方も大損不可避待ったなしで、割に合わないみたいですよ」
「えっ、マジで?」「またバグかよ、最近多くね?」
しれっとした顔で雲雀がでっちあげた話に、プレイヤー達が返す反応は様々だった。バグプロトコルにより発生した最近のゲーム世界の異常を、彼らもまったく知らない訳ではあるまい。さも「むりぽ」感を漂わせつつ語ってみれば、やる気が萎える者もいた。
「自分も頃合いを見て撤退するつもりです」
「そっか……じゃあ俺もやめとくかなあ」
かくして幾人かのプレイヤーはクエストを断念し、別のクエストやモンスター狩りに去っていった。彼らの後ろ姿を見届けてから、雲雀はくるりと踵を返して白聖者の元に向かう。当然だが、猟兵である自分がオブリビオンの討伐から逃げる訳にはいくまい。
「オトモ! 敵が矢を放つ前に光の速さで撃ち落としちゃってください!」
戦闘フィールドに到着した雲雀は【獅子の座流星弾】を発動し、狐火の「オトモ」に光速超重力推進装置を生やす。
このバトルでは『白聖者』の他に、彼が召喚した【ホワイト・エンジェルズ】の軍団が猟兵や一般プレイヤーを襲っている。まずはそちらを先に対処するつもりのようだ。
「冒険者を狙う敵は優先です!」
彼女の号令に応じて狐火の群れはビュンビュンと戦場を飛び回り、純白の天使軍に着弾する。白光の矢を放つこともできぬまま、彼らは燃え尽きてデータの破片となり消滅した。ゲーム的にはそこそこレベルの高いモンスターなのだろうが、実戦経験を積んだ猟兵の前ではただの雑魚だ。
「おのれ……神の目覚めを妨げる愚か者めが……!」
「それを邪魔するために来たのですよ!」
猟兵という強力なプレイヤーの出現に、白聖者も表情を歪めて不快感を露わにする。それはゲームのNPCとしての反応なのか、バグプロトコルとしての敵意なのか。いずれにせよ自分のやる事は決まっていると、雲雀は狐火たちを引き連れて猛攻を続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
ここがゴッドゲームオンライン…現実世界と比べても全く遜色がないですね
これほどの世界を猟兵でない一般の方が創り上げたのでしょうか
その情熱にはただただ脱帽するしかありません
ですがその情熱を食い荒らさんとする無粋な輩が蠢いているようです
(肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
何の面白みもない真っ白のキャンバスのような敵には
赤と黄色をぶちまけてあげましょう
(UC【蠱の星】を発動し{蜂蜜色の陽炎}を空中に打ち上げ太陽のように輝かせると、その光線で敵を攻撃する)
いずれ統制機構も同じように染め上げてやりたいですね
「ここがゴッドゲームオンライン……現実世界と比べても全く遜色がないですね」
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)が始めてログインした新世界は、アックス&ウィザーズなどのファンタジー世界に似て、言われなければゲームの中とは分からないほどのリアリティに満ちていた。肌を撫でる風の感触や、土や草木の匂いまで、完璧に再現されている。
「これほどの世界を猟兵でない一般の方が創り上げたのでしょうか。その情熱にはただただ脱帽するしかありません」
究極のゲームと謳われ、多くのプレイヤーが熱中するのも頷ける話だと納得する。一体誰が、どうやって、何のために作ったのか、不思議な点は数多く存在するものの――ひとりの表現者として、これだけの作品を生み出した"誰か"には敬意を表する。
「ですがその情熱を食い荒らさんとする無粋な輩が蠢いているようです」
「管理と節制。まったき秩序の光によって、この世界は生まれ変わるのです」
今、目の前に立ちはだかる敵は、バグプロトコル化した『白聖者』。本来はゲーム上の敵でしかないモノが、世界を破壊するオブリビオンと化した存在だ。設定通りの口上を述べ、【ホワイト・エンジェルズ】の軍団を召喚する彼に、クロリアは眉をひそめつつ戦闘態勢に入る。
「何の面白みもない真っ白のキャンバスのような敵には、赤と黄色をぶちまけてあげましょう」
肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後、心から湧き上がる「紅焔の旋律」に合わせてダンスを始める。これは天を衝かんと燃え上がり、鎮まることなく燃え広がる炎を表現した、情熱と欲望のリズム。管理と支配を押し付け、欲望や発展を否定する敵への意趣返しには、もっとも相応しいだろう。
「なんと不埒な。やめなさい、今すぐに」
クロリアの情熱的なダンスに白聖者は不快感を示し、天使軍という暴力によってそれを抑圧せんとする。天使たちの持つ弓から、白い光の矢が一斉に放たれ――しかしクロリアは揺らめく陽炎の如き身のこなしで、矢と矢の隙間を軽やかにすり抜ける。
「もっと輝け! 私の星!」
旋律により高まった「蜂蜜色の陽炎」のオーラは、空中に打ち上げられると太陽のように輝くミラーボールと化す。
この【蠱の星】より放たれるのは、紅焔の力を秘めたオーラの矢。技の見た目は天使軍のものに似ているが、熱量や規模は段違いだ。
「なんだとッ……!!!」
燦然と煌くミラーボールからの光線が、射程範囲内にいる全ての天使を焼き滅ぼす。ゲームで実装されているスキルよりも遥かに強大なユーベルコードの力に、白聖者も驚きを隠せぬままダメージを受ける。しかも、この攻撃はクロリアがダンスを続ける限り、弾切れもなく延々と続くのだ。
「いずれ統制機構も同じように染め上げてやりたいですね」
このゲーム世界の「現実」側を支配する世界政府・|統制機構《コントロール》。ゲーム上の敵役として設定された白教の教義が、機構の理念と類似しているのはおそらく偶然ではあるまい。今はまだそちらの世界には進出できないが、いつの日か――と、厳格すぎる管理への反抗心を燃え上がらせながら、クロリアの踊りは一層キレを増すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クレイユ・オブエミネンス
さてさて、では手に入れたUCを使用するとしますか
人間体からドラゴン体に変容して時間質量を臨界状態になるまで圧縮し、核反応エネルギーが如く熱量を獲得
そのまま、白聖者の群れにエネルギーを放出させて薙ぎ払っていく
そのまま、タイム・フォール・ダウンを獲得
時間操作の早送りと巻き戻しを交互に使い分けて天使軍に超高速で触れて洗脳
そのまま白聖者を攻撃するように仕向けていく
周りにいるプレイヤーキャラに、こう振る舞おうかな…
わたくしは真竜が一柱、名はまだ開かせません
しかしこの真実の姿の楽園に危機が迫っています
勇士達よ、今はわたくしが護衛に付きましょう
ドラゴンプロトコルとして、こういうキャラは美味しいよね
「さてさて、では手に入れたユーベルコードを使用するとしますか」
ゴッドゲームオンラインの管理者として創造され、普段は『受付嬢に身をやつした没落貴族』として暗躍するドラゴンプロトコル、クレイユ・オブエミネンス(舞台裏で重要NPCになりたい竜娘・f41776)。その役柄上バグプロトコルを人一倍嫌悪する彼女にとって、それに立ち向かえる猟兵に覚醒できたことは僥倖だった。
「愚かなる民よ、なぜ抗う……白き威光に帰依すれば、真の降伏が得られるというのに!」
無論、バグプロトコル化した『白聖者』にとってはゲームの管理者だろうが抹殺対象に過ぎない。管理と節制の正しさを高らかに謳い上げながら、召喚した【ホワイト・エンジェルズ】の軍団に矢を番えさせる。本来の仕様よりレベルやステータスも大幅に強化されており、一般プレイヤー相手なら手を焼くボスだろう。
「世界よ、時間よ、摂理よ見よ――これこそ真理を体現した一撃」
しかしクレイユは自信に満ちた表情で、人間体からドラゴン体に変容。時間質量を臨界状態まで圧縮し、核反応エネルギーが如く膨大な熱量を獲得する。これが彼女の手に入れたユーベルコード【我は時という物質を統べ時を御す者である】の力だ。
「我が答えを以て、我は時の理を統べる者として敵を殲滅する」
「なッ――……!!」
そのまま敵軍に向けてエネルギーを放出すれば、天使たちが次々に蒸発していく。彼らの放つ光の矢ですら、呑み込んで消し飛ばすほどの火力だ。猟兵への目覚めに加えて没貴族という特殊なジョブゆえの仕様だろうか、彼女の能力もまたバグプロトコルとは別の意味で、ゲームバランス崩壊級の力を秘めていた。
「あなた達が倒すべき敵は向こうです」
初撃で敵の統制を乱したクレイユは、圧縮した時間の操作による早送りと巻き戻しを駆使して、生き残った天使軍に超高速で触れていく。膨大なエネルギーによって強制的に操作権限を書き換えられた天使たちは、主のはずの白聖者に矢を向けた。
「なッ、なにをしている! 叛逆など許される事では……!」
よもや自身の配下が管理に背くとは思ってもみず、動揺する白聖者の身体に光の矢が刺さっていく。鮮血の代わりに飛び散る白い羽が、彼の受けたダメージを現していた。見た目に大きな変化はなくとも、ここまでのバトルの連続で、ヒットポイントは着実に減少している。
「なんだあのドラゴン?」「演出バトル入った?」
突然現れた謎のドラゴンが天使の軍団を圧倒するその光景は、一般プレイヤーからすればほとんど蚊帳の外だった。
困惑する彼らに場を取り繕うべく、クレイユはさも重要NPCらしい厳かな振る舞いで語りかける。猟兵になる前から彼女はこういうロールプレイが好きなのだ。
「わたくしは真竜が一柱、名はまだ開かせません。しかしこの真実の姿の楽園に危機が迫っています」
ドラゴンプロトコルという肩書きや、たった今見せた実力があれば、その発言もただの妄言だとは考え辛いだろう。
事実、このゲームにバグプロトコルという危機が拡散し始めているのは事実。放置すれば、その害はゴッドゲームオンラインという世界そのものを破壊してしまう。
「勇士達よ、今はわたくしが護衛に付きましょう」
「なんか伏線っぽいな」「とりあえず助かった!」
ひとまずそれで一般プレイヤー達は納得したようで、残っている天使軍を倒したり、遠距離から白聖者を攻撃したりとボス戦を再開する。彼らを導いてクエストを円滑に進行させる、それはゲームの管理者本来の仕事の内でもあった。
(ドラゴンプロトコルとして、こういうキャラは美味しいよね)
満足げな表情を誰にも見せないように気をつけつつ、クレイユもバグプロトコルへの攻撃を再開。圧縮した時間質量を力の限り放出し、破壊の嵐を戦場に巻き起こす、そのド派手さは本当に演出と言われても疑えないものだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菜花・深月
アドリブOK
すう〜はぁ〜よし、やらなきゃ
深呼吸をした後に相手を見る
うちがやらなきゃ…やらないとあんな辛い思いを誰かが…
遺伝子番号を失った時の事を何度もフラッシュバッグするが自分と同じ境遇のプレイヤーを生み出さない様にする為に遮蔽物に隠れながら敵の位置を確認する
この行動は…!
白い光を見た途端にさっき敵を見た時に弾道計算を済ませて命令する前にエネルギーを纏った矢を放ち攻撃する
よし、この敵にはこのカードにしよう…
攻撃回数のカードを取り一回目の攻撃は矢弾の雨を放ち敵は回避される
狙い通り!
回避した先にエネルギーを纏う弓矢を放ち攻撃した
…うん、うちならやれる!
昔に味わった恐怖を押し殺しながら敵と向き合った
「すう~はぁ~よし、やらなきゃ」
緊張の面持ちで大きく深呼吸をした後、菜花・深月(止まった時間が再び動き出す時・f41809)は今回の敵を見る。
それはバグプロトコル化した『白聖者』。ゴッドゲームオンラインを侵蝕し、殺害したプレイヤーから|遺伝子番号《ジーンアカウント》を剥奪する、彼女にとってはトラウマの象徴。
「うっ……頭が……」
彼女はこのゲームを遊ぶ多くのプレイヤーと同様、|統制機構《コントロール》の出身である。しかしバグプロトコルに敗北して遺伝子番号を失い、労働奴隷へと落とされていた。偶然にも異世界に迷い込み猟兵となったことで強制労働の日々からは逃れられたのだが、その当時の記憶は今でも心に傷痕を残している。
「うちがやらなきゃ……やらないとあんな辛い思いを誰かが……」
再びこの世界に戻ってきた深月は他の猟兵と同様、生身でゲーム世界に実体化し、故郷である統制機構にログアウトすることはできない。しかし、かつての自分と同じ境遇のプレイヤーが生み出されようとしている事件を、無関係だと放置することもできなかった。
「愚かな民よ、懺悔なさい。欲望や進歩を捨て、白教に従うのです」
バグプロトコル化した白聖者はゲーム内での設定通りの振る舞いを取りながら、他のプレイヤーたちと戦っている。
その様子を遮蔽物の陰に隠れながら窺う深月は、遺伝子番号を失った時の事を何度もフラッシュバックしながらも、戦う覚悟を決めていた。
「この行動は……!」
敵が口上を発しながら白い光を放つのを見た途端、それが【ホワイト・マジェスティ】の発動モーションだと察した深月は月光弓からエネルギーを纏った矢を放つ。月穹士としてゲーム内で培った射撃の腕前は衰えておらず、完璧な弾道計算通りに矢は目標にヒットした。
「ぐっ……何者です!」
ユーベルコードを妨害された白聖者は、矢が飛んできた方向に魔法攻撃を放つ。深月は咄嗟に遮蔽物から飛び出して攻撃を回避しつつ、目の前に出現した3枚のカードを見た。敵に一定ダメージを与えるのに成功したことで、【アルテミスカード】が発動したようだ。
「よし、この敵にはこのカードにしよう……」
深月が取ったのは攻撃回数倍化のカード。走りながら敵に狙いをつけて弓を引くと、放たれた矢は空中で分裂して雨のように降り注ぐ。本数が増えたぶん与えられるダメージも増えるが、攻撃範囲拡大のカードは取らなかったため、矢の落ちる範囲はそれほど広くはない。
「二度目が通用すると思って……ぐはッ?!」
「狙い通り!」
白聖者は弾道を見切って矢の雨を躱すが、回避した先にはもう一本、エネルギーを纏う矢が待っていた。攻撃に時間差を付けることで相手の動きを誘導し、本命の一撃をヒットさせる。これも月穹士として深月が覚えたテクニックだ。
「……うん、うちならやれる!」
昔に味わった恐怖を押し殺しながら、忌まわしきトラウマと向き合う深月。かつて敗北したバグプロトコルに、今度こそは打ち勝ってみせる――異世界で経験を積み、一回り成長して帰ってきたゲームプレイヤーは、もはや昔の彼女ではなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
ふむ、ゲームの中と言えど体感は現実と同一か。いわゆるステータスが表示されるとかは如何やら。
さて、完全なる秩序とは私の思うところ死と同義と言える。
混沌たる自由こそ求めるべきだよ。
戦いとなれば矢の攻撃を誘う。急所への命中を避け、幾らか手足に食らえば、UCを発動。血の矢で反撃し奪い取る。
嗚呼、白は良いね。とても美しい。それが血に赤く染まれば尚更だ。
私も貴公らも、赤に濡れて踊ろうではないか。
「ふむ、ゲームの中と言えど体感は現実と同一か。いわゆるステータスが表示されるとかは如何やら」
始めてゴッドゲームオンラインにログインしたネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)は、この世界の仕様を確認しつつクエストの目的地へと向かう。生産や文明がゲームシステム化されていたり、他の世界との違いもあるようだが、基本的には現実と同じ。猟兵は生身で転送されるため、行動も普段通りで支障はなさそうだ。
「白き神の威光をもって、この世界に完全なる秩序を……!」
そして今回の敵となるオブリビオン――バグプロトコルの名は『白聖者』。管理と節制を題目に掲げ、超常の異能で人々に弾圧と服従を強いる「白教」の聖者だ。ゲームの設定とはいえ極端に過ぎるその思想は、バグ化したことで世界を破壊する狂信となった。
「さて、完全なる秩序とは私の思うところ死と同義と言える。混沌たる自由こそ求めるべきだよ」
本来穏やかな羊脂玉種のクリスタリアンの中であって、闘争を求める異端者であるネフラからすれば、白教の教義は眠たい繰り言に過ぎない。己が欲求のままに刃で血を濡らし、愉悦を味わうその性格は、この世界なら「黒教」のほうが親和性が高いだろう。
「愚かな……貴女の汚れた欲を、我が天使たちが浄化しましょう」
堂々と対立を述べたネフラに白聖者は嫌悪感を示し、直ちに【ホワイト・エンジェルズ】の軍団を向かわせる。本体に比べればレベルは低いが、この天使たちもゲームではそこそこの強敵だ。純白の翼で空を舞い、弓から光の矢を射掛けてくる。
「嗚呼、白は良いね。とても美しい」
ネフラは純白の天使軍を微笑みながら見上げ、降りかかる光の矢を誘いつつ躱す。無傷で凌ぐつもりは最初からないため、急所への命中を避けて幾らかは手足に食らう。血の華を愛でるクリスタリアンの剣士は、自らの流血さえも武器とするのだ。
「それが血に赤く染まれば尚更だ」
『――……!!』
自身の血を矢に変えて放つ【融血苦厄】。それが命中した天使は血を奪い取られ、深紅に染まりながら墜ちていく。
匂い立つ鉄錆の香り、言葉にならぬ悲鳴、そして地に咲く紅い華。これこそ自分の求める戦場の光景だと、心の底からネフラは笑みを浮かべた。
「安心すると良い、貴公の血を無駄にはしない」
【融血苦厄】により天使から奪い取った血は、ネフラの負傷の治癒に使用される。反撃でダメージを受けてもまた血の矢を飛ばし、回復しながら戦えば限界は存在しないという訳だ。何十何百という天使の軍団と撃ち合いながら、彼女はまるで疲れた様子を見せない。
「私も貴公らも、赤に濡れて踊ろうではないか」
「ッ……! この、悪魔めが……!」
白教の教義に真っ向から相反する彼女の振る舞いに、怒りに震える白聖者。そんな彼の元にも血の矢は飛んでくる。
混沌、自由、そして闘争を象徴する矢は、聖者の白き衣さえも赤く染め。ステータスの確認こそできないが、ヒットポイントは着実に減少していた――。
大成功
🔵🔵🔵
ファーラ・フォージマスター
(工廠城塞【悪魔の鍛冶場】の主、『賄賂が通じるボス』ことファーラ。彼女がなぜこの場に居るのか……参加者の誰かがクリアしたさ故に袖の下を払ったか?否。ということは。)
バク取りタイムのスタート、ってワケじゃんね。
じゃ、先ずは前哨戦ね。
まかりなりにも高難度エリアのボスだからねウチは、前座神職との格の差って奴を見せつけてやろうかな!
つー訳でコレだ!我が相棒・マスターズハンマー!
とにかく重く、故にクラス特性も相まって火力が出まくる逸品さ。ついでに【鎧砕き】でエネミーの防御を下げちまえるから加速度的にダメージ倍ドン!
我欲を棄てろなんざくだらねぇ、サクッと粉砕してやるともさ!
「よーし、そんじゃ始めようか」
普段はゴッドゲームオンライン内の高難度エリア・工廠城塞のボスとして君臨するファーラ・フォージマスター(|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》の主・f41782)。『賄賂が通じるボス』として悪名高い彼女が、なぜこの場にいるのか――参加者の誰かがクリアしたさ故に袖の下を払ったかといえば、そうでもなさそうだ。
「バク取りタイムのスタート、ってワケじゃんね」
コレでも彼女はドラゴンプロトコルであり猟兵の1人。悪役の如く振る舞うことはあっても、ゲームそのものを破壊するバグプロトコルを放置するわけにはいかない。それに高難度クエストで大量の「人権剥奪者」を出そうものなら、彼女に賄賂を払う人間も激減であろう。
「じゃ、先ずは前哨戦ね」
そんな訳で今回はプレイヤー側として『白き魔神』の討伐に挑むファーラ。その前に立ちはだかるのは、バグ化したクエストボスの『白聖者レオボルト』だ。本戦前の腕試しという側面のあるボスで、レベルもステータスも相応に高く設定されているはずだが――。
「まかりなりにも高難度エリアのボスだからねウチは、前座神職との格の差って奴を見せつけてやろうかな!」
「傲慢な竜よ。我欲を捨て、白き威光にひれ伏しなさい」
自信満々に言い放つ【悪魔の鍛冶場】の主に対して、白聖者は【ホワイト・オーダー】を発動。欲に塗れた不信心者に白き羽根を浴びせかける。この羽は触れたものを崩壊させる、彼が使用する中でも特に攻撃的なユーベルコードだが――これくらい突破できねばボスの威厳がない。
「つー訳でコレだ! 我が相棒・マスターズハンマー!」
ファーラが取り出したのは巨大な鉄槌。鍛冶では素材を鍛え、闘いでは敵を叩き潰す、彼女が一番愛用する装備だ。
とにかく重く、それ故に獣戦士のクラス特性【タンク・オブ・スティール】の恩恵を大きく受けられる逸品で、本来は防御特化のタンク職とは思えないほどの火力を出せる。
「ついでに【鎧砕き】でエネミーの防御を下げちまえるから加速度的にダメージ倍ドン!」
豪快にブンブンとハンマーを振り回し、白い羽根を払い散らしながら、彼女はまっすぐ白聖者の元に向かっていく。
装備と技能とユーベルコードの相乗効果が生む、圧倒的な破壊力の前では、小手先の防御などまるで無意味だった。
「我欲を棄てろなんざくだらねぇ、サクッと粉砕してやるともさ!」
「愚かな……ッ、グハァッ!!!!?」
渾身のフルスイングで振り下ろされたハンマーは、過たず白聖者にクリーンヒット。鉄の城門さえ打ち砕く衝撃が、バグプロトコルに深刻なダメージをもたらす。フラフラとよろめくその姿にはノイズが走っており――1発でこれだけの痛手を与えたのは、高難度エリアボスの面目躍如と言えるだろう。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
電子世界なのに生身でいるのが変な気分だわ
神鳴抜いて、軽くジャンプして慣らして戦うよ
白聖者を魔法攻撃を見切って切り払って、この世界の敵のレベルを見させてもらいましょ
わりと高威力だったりするのかな
反撃は取り合えず稲荷符から火属性攻撃で狐火を叩き込んでやります
白光を見せられたら答えは当然NO
稲荷神の巫女に改宗迫るとはゲームでも許せん
序盤と同じように攻撃は切り払うが成功率半減で適わないなら仕方ない
世界に体が慣れて来る頃合いを見て限界突破して受け流し精度を上げるぜ
成功率半減なら倍増で打ち消す算数理論だ
【漆式】で紅狐様呼んで吠え声で威圧しながら突撃蹂躙一刀両断してくれる
これがゲームでないリアルな神の威光さ
「電子世界なのに生身でいるのが変な気分だわ」
現実と見紛うほど精巧な電脳空間というだけなら、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)も幾つかの世界で覚えがあった。しかし生身でゲームの中に入り込むというのは流石に奇妙な体験で、感覚を慣らすように軽くジャンプを繰り返す。
「あんまり違和感はないか。装備もいつものまんまだし」
愛刀「神鳴」を鞘から抜いて、感触を確かめた彼女はひとつ頷き、いざ高難度レイドクエストの前哨戦に挑戦する。
敵はバグプロトコルに乗っ取られた『白き魔神』を復活させようとする『白聖者レオボルト』。ゲーム内の敵勢力として設定された白教の彼も、当然のようにバグプロトコル化している。
「この世界の敵のレベルを見させてもらいましょ」
「私を試すつもりですか? なんという思い上がりを」
腕試しのつもりで身構える燦に、白聖者は魔法攻撃を放ってくる。見た目は派手なエフェクトだが、それだけで威力は分からない。流石に燦も無防備に当たってやる気はなく、俊敏な身のこなしで回避と、愛刀による切り払いを行う。
「わりと高威力だったりするのかな」
取り敢えず反撃だと「四王稲荷符・桃華絢爛」一式を取り出し、炎の霊力を籠めた符から狐火をお見舞いしてやる。
この世界にも大将軍というジョブがあるように、和風の文化や魔法は存在するようだが。リアルな実戦で鍛えられた彼女の符術は、ただの魔法スキル以上の火力で白聖者を焼いた。
「ぐっ……なんと罪深き者よ。今すぐ白教に従いなさい!」
火傷を負った白聖者は【ホワイト・マジェスティ】を発動し、管理を司る白き光を見せつけながら燦に改宗を迫る。
超常の力によって人々を威圧し、信仰を強制するのは「白教」の十八番である。これに対して、燦の答えは当然ながら「NO」だった。
「稲荷神の巫女に改宗迫るとはゲームでも許せん」
「ならば死になさい」
再び魔法攻撃を放つ白聖者。これまでと同じように対処しようとする燦だが、敵のユーベルコードのせいで行動成功率が半減しており、全ては切り払いきれずに白い光に身を焼かれる。ゲームの世界とはいえ痛みもリアルに再現されており、喰らいすぎれば命の危険もあるだろう。
「素で適わないなら仕方ない」
劣勢に立たされた燦ではあるが、戦ううちにこの世界の感覚にも体が慣れてきた。その頃合いをみて彼女は五体と感覚の限界を突破し、受け流しの精度を向上させる。成功率が半減するなら倍増で打ち消す、シンプルな算数の理論だ。
「御狐・燦の狐火をもって贄となせ。紅蓮の鳥居潜りて、おいでませ紅狐様!」
人間離れした速度で愛刀を振るいながら、さらに【フォックスファイア・漆式】を発動。召喚された紅蓮の狐が、高らかな吠え声で敵を威圧する。その声量に白聖者が「うっ?!」と怯んだ瞬間、彼女は狐の背に乗って戦場を駆けた。
「これがゲームでないリアルな神の威光さ」
劫火を撒き散らしながら突撃した紅狐と燦は、敵とすれ違いざまに神鳴一閃。紅い稲妻を帯びた斬撃が白聖者の体を真っ二つにする。胴体の上下で泣き別れになった彼の体は、無数の羽根に――正確には、小さな鳩の群れに分裂する。
「バカな、異教徒ごときに……ッ!!?」
この無数の白鳩の集合体こそが『白聖者』の正体。人間と同じ見た目をしていたのは、あくまで擬態だったようだ。
正体を晒したということは、いよいよ敵も追い詰められてきたということ。高難度クエストの挑戦権を得る戦いは、佳境に入ろうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
可愛川・サキ
新しい高難易度レイドクエストキター!今回も面白そうな感じだね。
ま、猟兵っていう新称号を獲得したアタシなら今回も余裕かな♪
それじゃあ……グラファイトぉ~~~、オー!
白聖者の攻撃はデバフ付与系の攻撃?白教に従えとかアタシ的にはちょっと無理かなぁ。
行動成功率半減は厄介だけど、ならその分試行回数を増やせばいいんじゃない?
って事で【グラファイト・スピード】で高威力の衝撃波をじゃんじゃん連発して数撃ちゃ当たる作戦!ただし一発一発がチョー痛いから覚悟してね!
「新しい高難易度レイドクエストキター! 今回も面白そうな感じだね」
伝説の魔神を復活させて世界の支配を企む「白教」の野望を挫け、というゲームらしい壮大な設定のもと発令された今回のクエストに、ウキウキで挑戦するのは可愛川・サキ(さっきゅんくえすと・f41825)。これまでに幾つもの高難度クエストをクリアした実績のある、結構なやり込みプレイヤーである。
「ま、猟兵っていう新称号を獲得したアタシなら今回も余裕かな♪」
能天気な自由人である彼女は、バグプロトコルや他世界の話も「そういう追加設定」と捉えており、リアルな危機とは考えていない。万が一にもこの戦いで敗北すれば、|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却され人権を失うリスクもあるのだが――彼女はまったく普段通りのノリだ。
「それじゃあ……グラファイトぉ~~~、オー!」
クエスト前に独特の掛け声で気合を入れて、いざ『白聖者』戦に挑むサキ。これを純粋にゲームとして楽しんでいるからといって、それは手を抜く理由にはならない。グラファイトスピアをくるくると振り回して、華麗に臨戦態勢だ。
「秩序を拒むものよ、管理を受け入れ、白教に従いなさい……」
いかにも自由人らしい振る舞いを見せる彼女に、白聖者は【ホワイト・マジェスティ】による服従を迫る。その身体から放たれる光は管理を司り、命令に従わない者の行動成功率を半減させる。バグプロトコル化した影響により、効果も増強されているようだ。
「デバフ付与系の攻撃? 白教に従えとかアタシ的にはちょっと無理かなぁ」
|統制機構《コントロール》に反発感のあるサキとしては、それを連想させる白教よりも、むしろ黒教のほうを密かに応援している。なので命令には従えないが、そうなると今度は身体が思うように動かない。さっきまで振っていた槍も重く感じるし、かなり強力なデバフのようだが――。
「行動成功率半減は厄介だけど、ならその分試行回数を増やせばいいんじゃない?」
彼女の対策は非常にシンプルだった。防具の装甲を削って【グラファイト・スピード】を発動し、高威力の衝撃波をじゃんじゃん連発する。ほとんどはデバフのせいであらぬ方向に飛んでいくのだが、気にせず攻撃しまくればどれかは当たるだろうという考えだ。
「数撃ちゃ当たる作戦! ただし一発一発がチョー痛いから覚悟してね!」
「な、なんと愚かな……?!」
思い切った戦法と呼ぶにはゴリ押しすぎる気もするが、サラ自身のスキルとユーベルコードの力がそれを押し通す。
慌てて回避行動を取る白聖者の身体を、衝撃波が掠めて削っていく。そのたびに吹き出すのは鮮血ではなく白い羽。ギリギリまで装甲を削減した【グラファイト・スピード】の威力は、本人も豪語する通り高難度ボスにも通用する。
「こ、こんな事が、あってはならない……!!」
「それがあるんだなー♪」
想定外のダメージに慌てふためくバグプロトコルの姿は、傍から見れば実に滑稽であり。サキは危機として追撃を仕掛け、ボスのヒットポイントを削っていく。この戦いはあくまで本戦の前哨戦、手こずっている暇など無いのだから。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
この世界は初めてだから、チュートリアル代わりに腕試しさせてもらうよ。
取り巻きを召喚してくるタイプか。
圧倒的火力で取り巻きを排除しつつ、一緒にボスのHPも削っていくよ。
やっぱり、バグプロトコル化されたモンスターはイレギュラーな動作をしてくるみたいだね。
ただ、パターンを見切ればいいネットゲームとは違うか。
でも、実践経験豊富な猟兵の敵ではないね。
ああ、そうえいば、この白聖者が古代の魔神を復活させたって設定なんだっけ。
魔神の復活って、停滞を重んじる白教の協議とあわない気がするけど、そんなこと訊いても、教えてはくれないかな?
「この世界は初めてだから、チュートリアル代わりに腕試しさせてもらうよ」
情報を操作する魔法つかいであるアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)にとっても、ゲームの世界に生身で入り込むというのはなかなか無い経験だ。初ログインとなるゴッドゲームオンライン、その高難易度レイドクエストを、彼女は大胆にも肩慣らしの場に選んだ。
「この世界は欲望と混乱に満ちている。我らが管理し、支配しなければならない」
本題となる大ボス『白き魔神』の前に、彼女の前に立ちはだかるのは『白聖者レオボルト』。彼は設定通りの独善的なセリフを吐きながら【ホワイト・エンジェルズ】の軍団を召喚する。いかにもゲームらしい光のエフェクトと共に、空から純白の天使たちが次々に姿を現した。
「取り巻きを召喚してくるタイプか」
この手のボスは特に珍しくもないと、アリスは【ウィザード・ミサイル】を発動。数百本にも及ぶ炎属性の魔法の矢を作り出し、天使の軍団めがけて一斉発射する。数を頼みに攻めてくるタイプなら、まずは圧倒的火力で取り巻きから排除するのが定石だ。
『――……!!』
天使たちも白光の矢で応戦するが、熟練の魔法使いであるアリスの火力には及ばず、あっという間に倒されていく。
魔法の矢の本数は全ての取り巻きに攻撃してもなおなお余るほどだ。残りの分を彼女は白聖者に向け、取り巻きと一緒にボスのヒットポイントも削っていく。
「おのれ、よくも我が天使達を!」
取り巻きを排除されたレオボルトは、怒りを露わにして魔法攻撃を仕掛けてくる。その表情も感情も非常に精巧で、ただのAIプログラムとは思えないほどだ。アリスはひょいと魔法のエフェクトから身を躱しつつ、始めて会うこの世界の敵を観察する。
「やっぱり、バグプロトコル化されたモンスターはイレギュラーな動作をしてくるみたいだね。ただ、パターンを見切ればいいネットゲームとは違うか」
ゲーム的にはある種不親切とも言えるが、こちらのほうがリアルではある。レベルやステータスもバグで強化されているようで、一般のゲームプレイヤーなら相当に手を焼くだろう。その上負ければ現実社会での人権を失うのだから、最悪のバグとしか言いようがない。
「でも、実践経験豊富な猟兵の敵ではないね」
ここがゲームという認識は一旦置いて、いつも通りの感覚でやれば、この程度のオブリビオンは何度も倒してきた。
アリスはイレギュラーなバグプロトコルの動きにも対応し、ウィザード・ミサイルの反撃で攻め立てる。まったく無傷とはいかないが、ダメージレースでは確実に上回っていた。
「私を倒しても意味はない……もはや神の復活は避けられない事だ!」
「ああ、そうえいば、この白聖者が古代の魔神を復活させたって設定なんだっけ」
劣勢に立たされた白聖者が吐いたセリフで、今回のクエストの流れを思い出す。バグプロトコルに乗っ取られてしまったレイドボス『白き魔神』のいるフィールドに入るためには、こいつのドロップアイテムが資格として必要なのだ。
「魔神の復活って、停滞を重んじる白教の教義とあわない気がするけど、そんなこと訊いても、教えてはくれないかな?」
「フッ……あなた達のような愚民に、白教の深淵な教えは理解できまい……!」
もしかしたら重要な裏設定が隠されているかもしれないが、残念ながら白聖者はそれを公開する役ではないようだ。
相変わらず傲慢な態度を続けるボスから、これ以上得られる情報もないと察したアリスは、さっさと次のクエストに進むためにユーベルコードの火力を強めた――。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
ゲームの中にまで湧いてくるとはオブリビオンもご苦労な事だ
まぁいいさ、いつも通り狩るまでだ
《第六感+戦闘知識》の《見切り》で敵の動きを先読み
機先を制し《早業+先制攻撃》を仕掛けるよ
時空間《ハッキング》作用を持つ《ものを隠す+目潰し+捕縛+属性攻撃》、
敵UCの媒介が光なら闇を以て塗り潰そう
敵の抵抗は羽の《体勢を崩す+部位破壊+爆撃+蹂躙+弾幕》で妨害、
《|負けん気《プライド》》で出力を上げて押し切る
仕上げは敵を呑み込んだ闇を媒介とする【世界の不完全証明】
《神罰+地形破壊+属性攻撃》の威力をピンポイントに集中させて
疑似的な重力崩壊で圧殺しよう
……現実の世界を支配する統制機構、か
どうにも気に入らないね
「ゲームの中にまで湧いてくるとはオブリビオンもご苦労な事だ」
これまで様々な世界でオブリビオンと戦ってきたカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)だが、ゲーム上のプログラムがオブリビオン化し、プレイヤーを襲っている事態には驚くやら呆れるやらである。一説には現実側の世界を支配する|統制機構《コントロール》がこのバグプロトコルを生み出したと言うが、確かな事は分かっていない。
「まぁいいさ、いつも通り狩るまでだ」
猟兵以外は倒されても死なないとはいえ、代わりに現実社会での人権を剥奪されるとあっては放置してはおけない。
それが紛れもなくオブリビオンである以上、彼女は勇んで高難易度レイドクエストを受け、挑戦権となる『白聖者』との戦いに挑んだ。
「愚かなる民よ、白き威光の前に……うッ?!」
「悪いね」
敵がバトル前の口上を述べ終わる前に、カタリナは持ち前の第六感と戦闘知識で機先を制し、先制攻撃を仕掛けた。
時空間をハッキングする作用を持つ闇の魔法で、敵のいる辺りを暗くしつつダメージを与える。その力は、管理を司る白き光とは真逆の概念であった。
「敵ユーベルコードの媒介が光なら、闇を以て塗り潰そう」
他者に服従を命じ、従わなければ行動成功率を半減させる【ホワイト・マジェスティ】は、白き光を見た対象にしか効果がない。的確にユーベルコードの行使を封じられた白聖者の顔に「バカな?!」と驚きの表情が浮かんだ。厄介なデバフさえ受けなければ、このレベルのオブリビオンは苦戦するほどの敵ではない。
「我が光を拒むとは……救いがたき者よ!」
「キミに救ってもらうつもりもないさ!」
それでも白聖者は通常の魔法攻撃で抵抗してくるが、カタリナは背中の翼から羽の弾幕を飛ばして妨害。着弾と共に生じる爆発が敵の体勢を崩し、部位にダメージを蓄積させる。ステータスだけなら敵もなかなかのものだが、こちらも負けん気で出力を上げて対抗だ。
「このまま押し切る!」
仕上げは【世界の不完全証明】。敵を呑み込んだ闇を媒介として、ピンポイントに疑似的な重力崩壊を引き起こす。
身に宿した魔神の権能を限定解放することで為し得る神罰の力が、空間もろとも白き聖者を圧殺せんと襲い掛かる。
「ぐ、ぐわあああぁぁぁッ!!!!?」
超重力の檻に閉じ込められた白聖者の体がミシミシと音を立てて圧縮され、苦悶の叫びが闇の中から聞こえてくる。
バグプロトコルにも痛みはあるのか、それとも設定通りに反応しているだけなのかは分からないが、確実にダメージは入っている。
「……現実の世界を支配する統制機構、か。どうにも気に入らないね」
ソレを生み出し、現実だけでなくゲーム世界も崩壊させようとしていると噂される機構に、カタリナは静かな敵意を抱く。管理と抑制を善きもの、進歩と発展は悪しきものと定める機構の方針は、彼女の理念ととても相容れるものではなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
エメラ・アーヴェスピア
世界全体がゲームの中、ね
依頼単体ではそういう事もあったけれどまた変わった世界よね
まぁ、いつもと変わらないように動けるのなら問題は無いわ
さて、この世界でも私の兵器が使えるか試してみましょうか
大丈夫だとは思うけれど、ここで躓くと拙い事になるし…
『出撃の時だ我が精兵達よ』、数を頼りに前衛の防御役と後衛の攻撃役に分けて撃ち続けなさい
成功率が半減していてもそれを超えられる数があれば問題はないでしょう
情報収集も兼ねて色々とやってみましょうか
あ、私自身は魔導蒸気兵に隠れて光を避けるわよ
※アドリブ・絡み歓迎
「世界全体がゲームの中、ね。依頼単体ではそういう事もあったけれどまた変わった世界よね」
現実と見紛うほど精巧な電脳空間やバーチャルリアリティなら、エメラ・アーヴェスピア(歩く|魔導蒸気兵器庫《ガジェットアーモリー》・f03904)がこれまでに訪れた世界にもあった。だが、それが独立した世界として確立され、生身で入り込むという経験は、電脳魔術士としても稀なことだ。
「まぁ、いつもと変わらないように動けるのなら問題は無いわ」
クエストやらシステムやらこの世界独自の決まり事もあるようだが、依頼の内容はいつもと変わらない。バグプロトコルという名のオブリビオンを倒し、脅かされる人々と世界を助けること。それが猟兵として彼女の請け負う仕事だ。
「さて、この世界でも私の兵器が使えるか試してみましょうか。大丈夫だとは思うけれど、ここで躓くと拙い事になるし……」
クエストで指定された戦場にやって来ると、エメラは試運転を兼ねてユーベルコードを発動。自ら製造した魔導蒸気兵の部隊を召喚し、戦線に投入する。銃器で武装した人形兵器の軍団が整然と隊列を組むさまは、なかなかに壮麗だ。
「技術の発展もまた世界に混乱をもたらす……節制を拒む者よ、白教に従いなさい」
中世風ファンタジーを基準にしたこの世界の文明水準とは異なる兵器を前に、『白聖者』は明らかな嫌悪感を示し、【ホワイト・マジェスティ】による改宗と服従を強いる。もちろんエメラ以外の者の命令に魔導蒸気兵は従わないし、エメラ本人にも入信の意思はさらさら無かったが。
「出撃の時だ我が精兵達よ、数を頼りに前衛の防御役と後衛の攻撃役に分けて撃ち続けなさい」
エメラが号令を発すると、魔導蒸気兵たちは白聖者に銃口を向け、前進しながら一斉射撃を開始する。ゲームの世界でも動作に問題はなさそうだが、射撃の精度は普段よりも低い。これは環境的なものではなく、敵のユーベルコードがこちらの行動成功率を低下させているためだ。
「心なきからくり風情が、神の威光に逆らうなど……!」
管理を司る白い光を放ちながら、白聖者は魔法攻撃で応戦する。その火力は魔導蒸気兵一機分よりも高く、命中率も申し分ない。レイドボスの前座とはいえ高難易度に相応しいステータスが、バグプロトコル化で強化されているのだ。
「成功率が半減していてもそれを超えられる数があれば問題はないでしょう」
しかしエメラは慌てず騒がず、魔導蒸気兵に陣形を維持するように命じる。仮に元は命中率50%の攻撃がさらに半減したとしても、4発に1発は命中する計算なら「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」になる。彼女が召喚した兵士の数は計142体にも及び、数的優位で敵を圧倒していた。
「お、おのれ……!」
最初のうちは調子の良かった白聖者も、前衛の防御をなかなか突破できぬまま、後衛の集中砲火を受けて焦りだす。
痛みを感じない機械人形は思ったよりも頑丈で、ボスの火力でも1発では倒せないのが、ダメージレースの差に響いているようだ。
「情報収集も兼ねて色々とやってみましょうか」
余裕の出てきたエメラは魔導蒸気兵に隠れて管理の白光を避けつつ、物陰から兵士たちを個別に操作して動作テストを行ったり、部位ごとに与えるダメージの差はあるのか検証したりする。今後の仕事のためにも今のうちにこの世界の仕様には慣れておいたほうがいいし、技術者としても興味はある。
「ば、馬鹿な……白き神の加護を受けたはずの、この私が……!」
完全に検証モードに入ったエメラの前で、いよいよヒットポイントがレッドゾーンに突入する白聖者。高難易度のはずが気付けばチュートリアルのような扱いを受けていることに憤るが、あまりに大きな数の差は覆しようがなかった。
大成功
🔵🔵🔵
オニキス・ヴァレンタイン
白教の幹部ですか、それはブッ潰すしかないですね!そうしたら僕も黒教内で昇進できるかもしれません。いやぁ、モチベーション上がるなぁ!
月光弓【弾道計算、矢弾の雨】でレオボルトをロックオン。
【殺気】を込めて、近づけた場合は弓の端で殴ったり、矢でそのままぶっ刺します。
白教はミンチにしないと……。
白聖者ァ!二度とそのツラ見なくて済むよう、ぐちゃぐちゃにしてやる!
【アルテミスカード】(SPD)で攻撃回数カードを狙って弓を打ちます。
>敵の攻撃に対して
白教に従えだぁ?
白教徒なんて碌なもんじゃない
廃人プレイヤーの方々が焼却されないように、注意します。いつか(黒教)信徒になるかもしれない方々に何かあったら大変です
「白教の幹部ですか、それはブッ潰すしかないですね! そうしたら僕も黒教内で昇進できるかもしれません。いやぁ、モチベーション上がるなぁ!」
欲望による進化を掲げる黒教の聖者らしく、オニキス・ヴァレンタイン(八月のヴァレンタイン・f41830)が今回の依頼を受けた理由は私情に満ちていた。彼はゴッドゲームオンラインのNPCであり、黒教を広めるべく世界を旅しているが、白教の教徒を不倶戴天の敵と認識している。
「欲望で世界に混乱をもたらす邪教徒よ……悔い改めなさい」
それは管理と節制による支配を肯定する白教側からも同じ事で、彼が纏う聖衣と紋章を見た『白聖者レオボルト』は敵意を露わにする。NPC同士の遭遇ではあるが、片や猟兵、片やバグプロトコル。この戦いはゴッドゲームオンライン世界の命運にも関わるものだった。
「白教はミンチにしないと……」
オニキスは月光弓で白聖者をロックオンすると、狂戦士の如き形相で攻撃を仕掛ける。正確な弾道計算のもとで放たれる矢の雨は、過たず標的にヒットした。黒聖者としての信仰の力だけでなく、月穹士としての射撃技術も大したものである。
「私に弓引くことは、神に弓引くも同然。救われたくば、今すぐ白教に従いなさい!」
対して白聖者は【ホワイト・マジェスティ】を発動し、管理を司る白き光でオニキスを照らす。この白光と共に下された命令に逆らう者は、行動成功率を半減させられてしまうのだが――さりとて彼に白教の言いなりになる選択肢などあるはずがなかった。
「白教に従えだぁ? 白教徒なんて碌なもんじゃない」
「なんですって……ぐはッ?!」
オニキスは命令に背くことも構わずのしのしと敵に近付くと、弓の端でぶん殴り、さらには矢をそのままぶっ刺す。
射撃系ジョブの定石を覆す、殺気に満ちた接近戦。成功率低下のデバフを受けた状態では遠距離から撃っても当たらないという判断もあったのかもしれないが、十中八九は私怨だろう。
「白聖者ァ! 二度とそのツラ見なくて済むよう、ぐちゃぐちゃにしてやる!」
さらに敵にダメージを与えたことで【アルテミスカード】も発動する。出現したカードの中から攻撃回数倍化の効果を選んだ彼は、二本の矢を同時につがえて弓を引く。至近距離から撃ち込まれる月光弓の閃光は、白聖者の体に大きな風穴を空けた。
「ごはぁッ!! く、黒教めが、よくも……!」
普通の人間なら死んでいるレベルに負傷しても、白聖者は白い羽を撒き散らしながら立っている。彼の正体は白鳩の集合体であり、部位ダメージが致命傷になり辛いのはそのせいだろう。とはいえ、全体に蓄積したダメージによって、もはやヒットポイントは残り少ない。
「いつか信徒になるかもしれない方々に何かあったら大変です」
そんな忌まわしき白教への追撃を緩めぬまま、オニキスは他プレイヤーの方々が焼却されないよう注意も怠らない。
ここで彼が白教をボコボコにしてレイドクエストも成功させれば、黒教への入信者も増えるかもしれない。ゲームの中でも現実でも、かの宗教はこうして徐々に支持者を増やしているのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソラウ・エクステリア
よし、僕もやるぞ!
『ここが、ゴッドゲームオンラインね…』
エスパスさんも周りを警戒しながら進んでいると
『ラーミアなのだ』『ゲームなのか』『ラーミアはトリリオンで買ったおやつを食べるのだ』『ラーミアはダンスを踊るのだ』
えっ?!ラーミアがゲームの中にいる?!
『流石に制作者もラーミアは知らない筈だけど…何でいるの?』
エスパスさんが聞こうとした時に敵が居たので戦闘開始
敵のUCを発動してきたが
『うざいのだ』『おやつ食べれないのだ』『誰なのだこいつ』『ラーミアは因果滅殺転生波を撃つのだ』
UC狂気の生命体ラーミア“因果滅殺転生波”を発動して光を消し去った
行くよ!エスパスさん!
『ええ!』
僕達も指定UCで追撃した
「よし、僕もやるぞ!」
『ここが、ゴッドゲームオンラインね……』
バグプロトコルによる虐殺を防ぐため、ゲームの世界にログインしたソラウ・エクステリア(歌姫の時空騎士と時空龍の協奏曲・f38698)と時空神エスパス。リアルと見紛うほどのクオリティの風景に感心しながらも、周りを警戒しながらクエストエリアまで進んでいくと――。
『ラーミアなのだ』『ゲームなのか』『ラーミアはトリリオンで買ったおやつを食べるのだ』『ラーミアはダンスを踊るのだ』
人語を喋るフクロウの群れが、お菓子を食べながら奇妙なダンスを踊っている。NPCやモンスターのように見えるが、彼女達はそれに見覚えがあった。故郷では次元三大災害の1つにも数えられる【狂気の生命体・ラーミア】だ。
「えっ?! ラーミアがゲームの中にいる?!」
『流石に制作者もラーミアは知らない筈だけど……何でいるの?』
ラーミアをモデルに作成されたNPCだとしても、ゴッドゲームオンラインの制作者が異世界の生物について知る由はないはず。どうやってゲームの世界に紛れ込んだのかとエスパスが尋ねようとするが、残念ながら詳しく聴いている暇はなかった。
「管理を拒む者たちよ……今すぐ悔い改め、白教に従うのです……」
今回のレイドクエストの前哨戦となるボスモンスター『白聖者レオボルト』は、すでにソラウたちを認識している。
管理を司る白い光を放ち、独善的な態度で服従を命じるバグプロトコルに対し、二人はすぐさま戦闘態勢に入った。
『うざいのだ』『おやつ食べれないのだ』『誰なのだこいつ』『ラーミアは因果滅殺転生波を撃つのだ』
白聖者の【ホワイト・マジェスティ】の対象になったのは猟兵だけではなく、たまたま居合わせたラーミアも含まれていた。だが命令に従う気などさらさらないようで、傲慢な物言いに気分を害したようで反撃してくる。次元災害と呼ばれる彼らが持つ謎の力は、自由を束縛するあらゆる効果を無に帰すものだった。
「なっ……我が信仰の光が?!」
因果滅殺転生波なるスキルや魔法はゲーム内には実装されていない。だが、その未知の力によって管理の光を消し去られれば、白聖者は激しく動揺した。これでは命令無視による「行動成功率半減」のデバフを与えることもできない。
「行くよ! エスパスさん!」
『ええ!』
思いがけぬラーミアの加勢によってチャンスを得たソラウは、エスパスと一緒に追撃を仕掛ける。剣技と魔法と次元能力を組み合わせた【時空武神・ウール・エスパスとの超連撃】が、美しき剣閃のエフェクトとともに白聖者を襲う。
「わ、私がこんな奴らに……ぐっ、がはっ、ぐわぁッ!!!?」
防御無視効果もある二人の連撃はボスモンスター特有の高ステータスも意に介さず、一気にヒットポイントを削り取る。真っ白な羽を撒き散らしながら吹き飛ばされる白聖者の表情から、当初の余裕は剥がれ落ち、邪悪な本性を隠しようもなくなっていた――。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
オンラインゲームとは言え、そこで死ぬのは現実の死と同義か
なるほど、ゲームの世界だろうと退屈はせずに済みそうだ
シガールQ1210とシルコン・シジョンを手に持ち、デゼス・ポアを宙に浮かせる
二丁の銃から撃ち出される夥しい量の弾丸で敵を攻撃しつつ、白き羽根も銃弾で吹き飛ばして行動範囲を確保する
デゼス・ポアはなるべく自分の近くにいるように指示して、まずは攻撃より回避に専念しよう
触れれば崩壊する羽根か…確かに恐ろしいな
だが、触れなければ恐れる事は無い
更に白き羽根を打ち落とすように銃弾をばら撒く…が
ただばら撒いてるだけではない
瞬間思考力を高めたスナイパー能力で、私と奴の距離上にある白き羽根を一気に撃ち落とし、同時にUCを発動
次元を切り裂いて現れた錆びた刃を足場にして一気に白聖者へと肉薄する
我欲を捨てよ…か
生憎だが、この戦場でその命令に従う者は少数派だ
銃弾を撃ち込みながら切り込み、UCで追撃
成功したらダメ押しでさらに銃撃を行う
これほどの相手であっても前哨戦か…
大ボスが楽しみだな、まったく
「オンラインゲームとは言え、そこで死ぬのは現実の死と同義か」
|統制機構《コントロール》に叛逆する何者かが作り出した「究極のオンラインゲーム」ゴッドゲームオンライン。仮想空間でも生身で活動する以上、猟兵にとってここは現実とほぼ変わりのない世界である。そこに降り立ったキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、感覚を確かめるように手を握ると、ふっと笑みを浮かべた。
「なるほど、ゲームの世界だろうと退屈はせずに済みそうだ」
立ちはだかる敵はバグプロトコルという名のオブリビオン、護るべきはプレイヤーの人権。ならば他の世界との違いはそうそうない。彼女の役目はいつもと同じ――猟兵として世界を脅かす怪物を討伐する、そのために銃を握るのだ。
「では、まずは前哨戦といこうか」
「愚かな民よ……なぜ救済を受け入れないのですか!」
右手に神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"、左手に強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"を構え、キリカが対峙する相手は『白聖者レオボルト』。このクエストでは伝説の魔神を復活させようとする黒幕という設定で、レイドボスへの挑戦権を得るために倒す必要のあるモンスターである。
「行くぞ、デゼス・ポア」
『キャハハハハハ』
哄笑する呪いの人形「デゼス・ポア」を連れて、キリカは戦いの火蓋を切る。二丁の銃から撃ち出される夥しい量の弾丸は、聖句や秘術による強化が施されており、通常弾より大きなダメージを与える。法衣に包まれた白聖者の体に、幾つもの風穴が空いた。
「おのれ、おのれ、おのれ……我欲を捨てよ、異教徒ども!」
普通の人間なら致命的な傷を負っても、白聖者は怯まず激昂し。怒りの宣告と共に発動した【ホワイト・オーダー】が、節制の光と白き羽根を戦場に撒き散らす。いよいよヒットポイントも残り僅かになったことで、最後の悪足掻きを――俗にいう発狂モードに入ったか。その羽根に接触したものは、地形オブジェクトですら跡形もなく消えていく。
「触れれば崩壊する羽根か……確かに恐ろしいな。だが、触れなければ恐れる事は無い」
キリカはデゼス・ポアになるべく自分の近くにいるように指示して、ひとまずは攻撃よりも回避に専念する。舞い散る羽根を撃ち落とすように銃弾をばら撒いて行動範囲を確保しながら、その表情は何かを狙っているようでもあった。
「欲を捨てられぬのなら……死になさい!」
窮地と怒りで我を忘れた白聖者には、キリカの行動の意図を精査する余裕もないだろう。彼女はただ弾をばら撒いているだけではなく、瞬間思考力を高めたスナイパー能力を活かし、自身と敵の距離上にある羽根を一気に撃ち落とそうとしていた。
「嗤え、デゼス・ポア。貴様に出会った不運な者達を」
『ヒャハハハハハハ!!』
さらに彼女は【苦痛の嵐】を発動。人形の笑い声のトーンが変わり、次元を切り裂いて無数の錆びた刃が出現する。
この刃を足場にして、彼女は白聖者の元まで駆ける。絶える事のない弾幕が、羽根を吹き飛ばして道をこじ開けた。
「我欲を捨てよ……か。生憎だが、この戦場でその命令に従う者は少数派だ」
「なんだと……ッ!?」
一気に肉薄してきたキリカを前に、驚愕と焦りを露わにする白聖者。【ホワイト・オーダー】には背教者への攻撃と同時に、自身に従う者の人数に応じて戦闘力を上昇させる効果もあるのだが、この付近に彼に同調する者などいない。それでもレベル・ステータスともにボスに相応しい数値だが、現実で鍛えてきた猟兵なら十分太刀打ちできる。
「さあ、勝負だ」
「愚か者めが……!」
銃弾を撃ち込みながら切り込むキリカに、白聖者も残された全ての力で抵抗する。弾丸と羽根が双方の間で対消滅を起こし、その余波が衝撃波となって戦場を薙ぐ。一歩も譲らぬ攻防の末、最後に勝敗を決したのは――デゼス・ポアが放った追撃の【苦痛の嵐】だった。
「がはッ……ば、馬鹿な……」
「終わりだな」
錆びた刃に全身を貫かれ動きを止めた白聖者に、キリカはダメ押しの銃撃を行う。心臓と眉間にきっかり1発ずつ、機関銃と拳銃の弾丸を撃ち込めば――ついに全てのヒットポイントを失った敵は、無数の羽根となって分解していく。
「わ……私を倒しても、もう遅い……白き神は目覚め、この世界に真の秩序をもたらすでしょう……」
そんな捨て台詞を残して『白聖者レオボルト』が消滅すると、彼のいた場所に小さな鍵のアイテムがドロップする。
これがレイドボス『白き魔神』への挑戦権を得た証。バグプロトコルに乗っ取られた高難易度クエストの舞台には、これを持っていなければ入れないのだ。
「これほどの相手であっても前哨戦か……大ボスが楽しみだな、まったく」
戦いを終えたキリカはふうと息を吐いて銃口を下げ、ドロップアイテムを回収する。白聖者もなかなかの強ボスではあったが、レイドボスはさらに強大な力を持つという――ゴッドゲームオンライン初参加にしてなかなかハードなクエストなりそうだと、彼女は肩をすくめた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『アマルガムビースト』
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POW : バグプロトコル・クロー
自身の【爪】が触れた対象に【バグ】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。
SPD : アマルガム・ゲイル
【魔獣のオーラ】を纏いレベル×100km/hで疾走する。疾走中は攻撃力・回避力・受けるダメージが4倍になる。
WIZ : ミューテーション・プロトコル
【体表面に出現する「魔獣の顎」】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
伝説の『白き魔神』の復活を企む『白聖者』を討伐した猟兵達。
彼がドロップしたアイテムを手に、一同は魔神が封印されている「次元の狭間」に突入する。
次元の狭間と言ってもそれはクエスト上の設定であり、あくまでそういうフィールド名に過ぎない。
現地にはすでに同クエストの挑戦権を得ていた、猟兵以外の一般プレイヤーの姿も多く見られる。
だが、それよりも遥かに圧倒的にこのフィールド上を占めるのは、モンスターのほうだ。
「なんだこりゃ」「流石に多すぎねえ?」
歴戦の廃プレイヤー達が思わずぼやくほどの、獣、獣、獣の大軍。
それはバグプロトコル化により複数の動物・魔獣型モンスターが融合して生まれた『アマルガムビースト』だ。
オブリビオンとしては下級だが、群れをなした時の戦闘力、凶暴性と速度はかなりのものである。
この膨大な魔獣の群れを挟んだ彼方には、光り輝く人型のモンスターが観測できる。
あれが、今回のクエストのレイドボス。つまりは元凶のバグプロトコルである。
この程度の前座の群れくらい蹴散らせなければ、ボスに挑む資格はないということか。
さあ乗り越えてみせよとばかりに進撃してくる魔獣の群れを前に、猟兵達は戦闘態勢に入った。
クレイユ・オブエミネンス
さぁ、次はこのUCを使ってみようか
ドラゴンロード・ユーザーという技能を作り出し、ドラゴンロードとしての権能を引き出していく
ーー無限成長する紫電、フロンティア・ライン、時間凍結氷結晶、万物魅了、死にません
そして…アタシだけのドラゴンロードを
それは『観測不能な領域での演算処理』による『瞬時の現実改変』…
虚数空間で処理を行い、現実空間を変容させる
まさにドラゴンプロトコルのドラゴンロード…それがアタシなんだよ
さぁ、このまま終幕といこうか
5つの権能を虚数空間で演算処理し、瞬時に連続発動してアマルガムビーストを薙ぎ払っていく
「さぁ、次はこのユーベルコードを使ってみようか」
白聖者との戦闘でユーベルコードの扱い方をひとつ学んだクレイユは、続く『アマルガムビースト』との集団戦でも新たな力を試すように【竜脈と龍を使役する者の秘奥】を発動した。これは彼女だけが使用できる独自技能「ドラゴンロード・ユーザー」を獲得するユーベルコードである。
「我は竜、そして竜にして竜を使役する者。大地と生命を統べ、我が御稜威は竜の概念を掌握する王の権能となる」
その技能はドラゴンプロトコルである彼女から、ドラゴンの|王《ロード》としての権能を引き出すためのもの。自らのデータを書き換えることで本来ありえないステータスやスキルを発現する。一般プレイヤーやNPCから見れば、それはまさにチートとしか言いようがないだろう。
「――無限成長する紫電、フロンティア・ライン、時間凍結氷結晶、万物魅了、死にません。そして……アタシだけのドラゴンロードを」
重要NPCになりたいという願望を具現化するように、クレイユはドラゴンプロトコルの権限を超えた力を獲得する。
それは『観測不能な領域での演算処理』による『瞬時の現実改変』。虚数空間で処理を行い、現実空間を変容する。
「まさにドラゴンプロトコルのドラゴンロード……それがアタシなんだよ」
『ガルルルルッ……!』
押し寄せるアマルガムビーストたちの前で、彼女はノリノリのロールプレイを行う。一体何が起こるのだろうかと、一般プレイヤーの視線も集まっている。ここは舞台裏ではないし暗躍と言うには派手すぎるが、こういうポジションも悪くないものだ。
「さぁ、このまま終幕といこうか」
クレイユはダウンロードした5つのドラゴンロードの権能を虚数空間で演算処理し、瞬時に連続発動させる。成長する紫電の矢が敵を貫き、不可視の波動が全てをドラゴン化し、時間すらも凍りついて彼女に従う。試運転も兼ねているためか、雑魚戦にしてはオーバーキルもいいところの大盤振る舞いだ。
『グギャアッッ!?』『ガオオオォッ!!』
竜の権能に薙ぎ払われたアマルガムビーストは、一瞬にして数十が消滅し。残りの群れが【アマルガム・ゲイル】を発動して反撃を仕掛けてくる。合成された魔獣のオーラによって疾走の速度や攻撃力・回避力を倍増させる能力だが、ドラゴンロードの力に比べれば可愛く見えるほどのバフだ。
「無駄だよ」
『グルッ?! ウ……ウォォォ!』『ギャオォッ!?』
クレイユは回避も防御もせずに攻撃を受け、不死の権能によって瞬時にダメージを回復する。そして己に危害を加えたアマルガムビーストを魅了し、自死を命じる――細胞レベルでの|自死機構《アポトーシス》をオンにされた獣どもは、血反吐を吐いて息絶えていった。
「悪くないね、この感じ」
彼女は戦う中でよりドラゴンロードの力の扱いを学んだらしく、さらに出力を増してモンスターの群れを蹂躙する。
所詮はレイドボスに挑む前の前哨戦。この圧倒的なパワーを前に対抗できる敵は、ここには配置されていなかった。
大成功
🔵🔵🔵
天星・雲雀
聞いた事が在ります!四方八方敵に埋め尽くされた空間、これが、モンスターハウスですね!
先が在るので早速たおして行きましょう!
パズルみたいに、くっついてるから強そうなので、バラバラにしとけばそれほどでもないのでは?
UC千切り糸の結界で、敵の群れを細切れにして行きます!
幾何学模様は若干乱れますが、プレイヤーさんを避けて糸を飛ばしますよ。
自分は、かじられないように、舞うように躱しながら進みます。
ドロップする魔獣肉や素材は、データ化して、すとれーじ?に入っていくのでしょうか?
何が入ったのかは後で確認します!今は斃せるだけ斃しちゃいます!
走り回って拾ってた素材は、装備制作中のプレイヤーさんに上げます。
「聞いた事が在ります! 四方八方敵に埋め尽くされた空間、これが、モンスターハウスですね!」
ひとたび迷い込んだが最後、準備を怠ったプレイヤーは大量のモンスターにたちまち蹂躙されるという死の部屋。
そういう場所が実装されたゲームもあるという話は、雲雀も聞いたことがあった。実際にプレイした経験が少ないがゆえか、この状況にすこしワクワクしているようにも見える。
「先が在るので早速たおして行きましょう!」
このモンスターハウスさえも前哨戦だと言うのなら、立ち止まっている暇はない。他のプレイヤーに遅れは取るまいと、彼女は勇んで最前線に飛び出していった。迎え撃つのは幾多の魔獣を融合させて生まれた下級バグプロトコル――『アマルガムビースト』の群れである。
『ウオオォォォォンッ!!』
外敵を認識したアマルガムビーストは、体表面から様々な魔獣の顎を出現させ、全身で齧りつくように襲ってくる。
物理ダメージに加えて捕食対象のユーベルコードを使用可能にする【ミューテーション・プロトコル】だ。奴らの異形の身体部位も、その幾つかは過去の冒険者から奪い取ったものかもしれない。
「パズルみたいに、くっついてるから強そうなので、バラバラにしとけばそれほどでもないのでは?」
その姿を見て雲雀は戦い方を決めたようで、見えない光粒子で糸を編み、【千切り糸の結界】を発動する。この糸は貫通力が極めて高く、微塵切りもスライスもお手の物だ。どんなバグプロトコルだろうと千々に切り刻んでみせよう。
「うん? 今、なにか横切ったか?」「さあ?」
光粒子の糸は同じフィールドにいるプレイヤーたちを避けて、アマルガムビーストの元に飛んでいく。幾何学模様の軌道は若干乱れはするものの、それで狙いを外すほどではない。逃げ場がないように包囲して、まずは四肢から断つ。
『グギャオッ?!』『ギイイッ!!』
滑らかに切断された傷口から鮮血が吹き出し、獣どもの悲鳴が響き渡る。そのまま次は尾、翼、胴体、最後に首と、混じり合った獣の部位を切り分けるように、雲雀は糸を操作する。凶器の視認が難しいぶん、傍目には勝手に敵がバラバラになっていくように見えるだろう。
『ガルルッ!』
「おっと、危ないですね」
幸運にも糸の結界をくぐり抜ける獣もいるが、雲雀は齧られないように舞うように躱しながら糸をひと振り。全ての敵に触れさせもせず解体を続けながら、フィールドの奥に進んでいく。その道行きに散らばるアマルガムビーストの骸は、ほどなく光の粒子となって消えていった。
「ドロップする魔獣肉や素材は、データ化して、すとれーじ? に入っていくのでしょうか?」
この手のオンラインゲームでは、倒した敵の戦利品は自動で回収されるようになっていると聞いた。何が入ったのかは後で確認するとして、今は斃せるだけ斃してしまおうと、彼女は意気揚々と【千切り糸の結界】を広げるのだった。
「あー、ツノ落とさなかったかぁ。新しい武器の素材にしたかったんだけど……」
「入り用ですか? でしたらこれをどうぞ」
このクエストに参加するプレイヤーの中には、モンスターがドロップする素材目当ての者もいるようだ。雲雀はそうしたプレイヤーを見かけると、走り回る途中で拾っていた素材を惜しみなくあげる。彼女自身にとっては必要なものではないし、活用できる者が持っていたほうが良いだろう。
「ありがとう! お互いボス戦がんばろうな!」
「はい!」
素材を譲られたプレイヤーは満足そうな様子。これで信用を得られれば、レイドボス戦での連携もはかどるだろう。
魔獣の群れを抜けた先で待つ、本クエスト最強のバグプロトコル。それは文字通りの総力戦となるはずだから――。
大成功
🔵🔵🔵
エメラ・アーヴェスピア
あら大軍、そしてたくさんの味方、と…とはいえやられると拙いのよね…
本来のゲームを楽しんでいる人達には悪いけれど、私のやり方で撃滅させてもらうわ
今回の場にいる彼らは数の力に負けなければすぐにはやられないと想定するわよ?
セット、『|この場は既に我が陣地《シェリングテリトリー》』!まずは曲射による|一斉掃射《【砲撃】》!
その後、撃ち漏らしを彼らに抑えてもらい、多少の砲が直射にて仕留めるわ
それ以外の砲は曲射を続けて後ろから来る敵を叩き続けるけれど、ね
援護がいるなら射線を開けて頂戴、歴戦の貴方達ならばそれくらい可能でしょう?
※アドリブ・絡み歓迎
「あら大軍、そしてたくさんの味方、と……とはいえやられると拙いのよね……」
前方から押し寄せるバグプロトコルの群れと、周辺にいる一般プレイヤー達を交互に見て、エメラは少し思案する。
ここに来れたという時点で彼らも相当やりこんだゲーマーには違いないが、このクエストは普通のゲームではない。負ければ人権を失う危険性を理解している者があまりに少ないことが、最大の懸念点であった。
「本来のゲームを楽しんでいる人達には悪いけれど、私のやり方で撃滅させてもらうわ」
安全性を最優先に考えるのであれば、多少は「面白みのない」戦いになっても仕方ないだろう。指揮通信用の魔導蒸気ヘッドセットを被って、彼女はユーベルコードを起動する。白聖者戦でここの環境に合わせた慣らし運転も済んだ、ここからが|魔導蒸気兵器庫《ガジェットアーモリー》の本領発揮だ。
「セット、『|この場は既に我が陣地《シェリングテリトリー》』!」
号令と共にエメラの周りに召喚されるのは、700門を超える魔導蒸気大砲。構造を簡易的にして強度を落とした分、一瞬で大量展開を可能にするユーベルコードだ。この砲列をもって、彼女はまずは曲射による一斉掃射を実行する。
『オォォォォ……ッ!!!?!』
次元の狭間に降り注ぐ砲弾の雨から、逃げ切れる軍団など存在しまい。技術水準の異なる兵器の力に晒された『アマルガムビースト』達は、次々に吹き飛ばされていく。同じバグプロトコル化したモンスターと言っても、さっきの敵と比べれば防御力もヒットポイントも大した事はなさそうだ。
(今回の場にいる彼らは数の力に負けなければすぐにはやられないと想定するわよ?)
まずは自分が砲撃で敵の足並みを乱しつつ数を減らした後、撃ち漏らしを一般プレイヤーに抑えてもらうのがエメラの作戦だった。わざわざ高難易度クエストに挑むような廃人が、ここで指を咥えて見ているはずがない。この世界での戦いの経験なら彼らのほうが豊富なのだから。
「なんだアレ、見たことないジョブだぞ」「このままじゃドロップ品も経験値も全部かっ攫われちまう!」
ある者は異世界猟兵のユーベルコードに驚き、ある者は私欲を全開にしつつも、誰一人臆することなくモンスターに立ち向かう。聖剣士の刃が獣を切り裂き、重戦士の鎧が攻撃を食い止め、黒聖者の魔法が味方を癒やす――パーティでの戦いに慣れているのだろう、同数からやや不利程度の人数差なら、互角以上の戦いを繰り広げている。
「想定通りね」
エメラはプレイヤー達の戦いぶりを後ろで見ながら、砲撃陣地を堅持する。多少の砲は直射にて敵を仕留めるために使うが、それ以外のほとんどは後続の敵を曲射で叩き続けるためだ。無尽蔵とすら感じられるバグプロトコルの大群も、これのせいで接敵前に数を減らされ優勢を取ることができない。
「援護がいるなら射線を開けて頂戴、歴戦の貴方達ならばそれくらい可能でしょう?」
「おーおー、言ってくれるねえ!」「そっちこそ外さないでくれよ!」
軽口を言い合いながらもエメラとプレイヤーの連携に齟齬はなく、巧みなポジショニングによって開かれた射線に、針を通すような砲撃が放たれる。群れでの戦闘を得意とするアマルガムビーストのお株を奪うような戦いぶりに、敵は為す術がない様子であった――。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
妖狐のえっちな超視力で奥の人型ボスを捉えてやる気出しちゃうぞい
よーし雑魚を倒してトリリオンを稼いで楽しむぞ
ちょいと廃プレイヤーたちにアピールすべく神鳴でビーストを一刀両断してみましょ
稲荷符からの火属性攻撃の狐火で牽制して生まれた硬直を逃さず融合した頭部を綺麗に四枚にスライスしてやる
疾走して来るなら周囲に真威解放と罠使いでデストラップを張り巡らせて迎え撃つぜ
別に命中率アップしてねーんだし単調な動きは見切るよ
いよいよ電子世界に身体が順応したし、ジャンプでビーストの頭部に乗って伏せて顎を乗せて、五体目の顔融合☆とか言ってプレイヤーたちの笑いを狙うぜ
その後無慈悲にビーストの頭部を串刺しにして仕留めるよ
「おー、えっちなお嬢さん発見。やる気出しちゃうぞい」
好色な妖狐の超視力は、目の前に『アマルガムビースト』の大群がいても、その奥にいる人型ボスを捉えていた。
レイドボスの座を乗っ取ったそのバグプロトコルは、見た目は機械に接続された一糸まとわぬ少女の姿をしている。それが燦の助平心に火を点けたようだ。
「よーし雑魚を倒してトリリオンを稼いで楽しむぞ」
途上に立ちはだかるモンスターも、彼女には稼ぎの獲物としか見えていない。この世界で手に入る電子通貨「トリリオン」は、ゲーム内だけでなく現実世界でも通用するという。実際、ここに金稼ぎのために来ているプレイヤーの数は少なくなかった。
「ちょいと実力も見せておくとしますか」
同クエストに参加する廃プレイヤーへのアピールを兼ね、燦は正面にいるアマルガムビーストに四王稲荷符を放つ。
符より生じた狐火が敵を牽制し、生まれた硬直を逃さずに、目にも止まらぬ早業で「神鳴」を一閃。融合した獣の頭部が綺麗に四枚にスライスされた。
「おおっ!」「すっげぇ、一撃かよ」
ここまで完璧なクリティカルヒットは、DPS最強職と言われる聖剣士でも難しいだろう。集まるプレイヤー達の注目を心地よさそうに受けながら、燦は嬉々とした笑みで敵群を一刀両断していく。この先彼らと連携することも考えるのなら、ここで自分の腕前を伝えておくのは大事だ。
『ガルルルルッ!!』
もちろん敵も棒立ちになってやられるだけのカカシではない。モンスターとしての脅威を示そうと、魔獣のオーラを纏って疾走して来る。スピードと攻撃力・回避力を大幅に強化する【アマルガム・ゲイル】を発動したようだが――。
「別に命中率アップしてねーんだし単調な動きは見切るよ」
『ギャウッ?!』
魔獣の振るった爪牙はあえなく躱され、燦はとんとんとバックステップで距離を取る。すぐさま敵は追い討ちをかけようと追ってくるが、それこそが誘いだと分かっていない。彼女の指先からひっそりと垂れた、鋼糸「デストラップ」の存在にも。
「既に罠は仕掛けた。KO捕縛ってやつさ」
『ギャ――!!?!』
【真威解放・デストラップ】により張り巡らされた鋼糸の罠に飛び込んだアマルガムビーストは、サイコロステーキのように細切れとなる。燦自身もいよいよ電子世界に身体が順応してきたようで、持ち前の身軽さで戦場を駆け回り、トラップゾーンを広げていく。
「五体目の顔融合☆」
『ガウゥッ?』「あはは、なにそれ!」
寄ってきたアマルガムビーストの頭部にジャンプで飛び乗り、伏せて顎を乗せてプレイヤー達の笑いを狙うくらい、今の彼女には余裕があった。もちろん遊んだ後は無慈悲に脳天から串刺しにして、きっちり仕留めてから飛び降りる。
「まだまだ稼いじゃうぞっと」
合成魔獣の亡骸からドロップする素材や換金アイテムを回収しつつ、レイドボスの元を目指す燦。すっかりゲームの世界に順応したようで、楽しげな様子は一般プレイヤーと変わりない。風のように駆ける彼女に追いつけるモンスターは、一匹も存在しなかった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
最後のレイドボスではプレイヤーとの協力が必須ってことだったけど、中途半端な実力のプレイヤーは危険だから、降りてもらいたいな。
モードチェンジ!ヴァルキリーモード!
広範囲攻撃で敵を薙ぎ倒しながら、プレイヤーも巻き込んで攻撃するよ。
これが避けられないなら降りた方がいいよ。この先のレイドボスはバグですごいことになってるだろうからね。
派手に動いてるのはヘイトを稼いでこっちに気を引く目的もあるけどね。バグプロトルにヘイト管理がどこまで有効かはわからないけど。
(最後のレイドボスではプレイヤーとの協力が必須ってことだったけど、中途半端な実力のプレイヤーは危険だから、降りてもらいたいな)
視界を埋め尽くすモンスターの群れと、その先にいるレイドボス『白き魔神』を見つめながら、アリスはそんな事を考えていた。ここはまだ前哨戦なので敗北するプレイヤーはそうそう居ないだろうが、ボス戦は段違いに危険となる。
「モードチェンジ! ヴァルキリーモード!」
まだ引き返せるうちに彼らの実力を試すつもりで、彼女は【性質変化】を発動。戦乙女に変身して戦闘力を強化すると、一般プレイヤーとモンスターの乱戦に飛び込んでいく。ここからは、少々ハデに暴れさせてもらうことになるか。
「いくよ!」
『グギャッ?!!』
アリスは変身と同時に出現した武器を振るって、モンスターの群れに広範囲攻撃を仕掛ける。まだユーベルコードを発動していなかったアマルガムビーストは、不意を突かれてなぎ倒されるが――その攻撃範囲に含まれていたのは敵だけではなかった。
「うおっ?!」「何すんだ!」
敵味方関係のない無差別攻撃に、驚いたのはプレイヤー達である。流石は歴戦の廃プレイヤーと言うべきか、多くは咄嗟に回避または防御するが、中には避けきれずにダメージを受けた者もいる。即死するほどの威力はないが、それでも痛いものは痛い。
「これが避けられないなら降りた方がいいよ。この先のレイドボスはバグですごいことになってるだろうからね」
自分の攻撃が当たったプレイヤーに、アリスはきっぱりとした態度で言い放つ。ゲーム的には完全なマナー違反だが、ここから先はただの|遊び《ゲーム》では済まないリスクがある。多少強引なやり方でも未熟者をふるいにかけようとした彼女は間違っていないだろう。
「いやっ、今のは不意打ちだったから……」
「初見のモンスターに同じことをされたらどうする?」
「う……」
当然、不適格扱いされたプレイヤーは不満たらたらだが、なおも実力や気構えの不足を指摘されると言い返せない。
だいぶ心象は損ねただろうが、あくまで人命優先だ。実力の差を見せつけられて、なおも意地を張るほどの馬鹿ではないことを祈る。
「じゃあね」
「あ、おいっ……」
アリスはくるりと踵を返して先に進み、立ちはだかるモンスターを薙ぎ払いながらボスの元に向かう。道中で出会うプレイヤーに対しては、やはり実力確認を兼ねて巻き込みを遠慮しない。ちらほらと上がる悲鳴や怒声も気にせずに。
(派手に動いてるのはヘイトを稼いでこっちに気を引く目的もあるけどね。バグプロトルにヘイト管理がどこまで有効かはわからないけど)
ここまで大立ち回りを見せれば、敵もアリスのことを他とは別格の脅威と認識したらしい。襲ってくるアマルガムビーストの数が増えたのを実感すれば、彼女はその群れを切り裂くように攻勢を強める。いくら数がいようとも、先程の白聖者に比べれば大したことのないモンスターだ。
「す、すげえ……」「あんなの真似できねえよ……」
余裕の表情で敵陣を進んでいくアリスを見れば、ふるいにかけられたプレイヤーも己の実力不足を痛感するだろう。
結局、彼女の攻撃を避けられなかった者の多くは、レイドボス戦を迎える前にクエストを中断した。無念ではあるだろうが、自らの命と人生を守るうえで、その者たちは最良の選択をしたのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
なるほど数で攻めてきますか…猟兵が取りこぼしたのを一般プレイヤーの皆さんにぶつけて遺伝子番号の焼却を狙うわけですね
しかしこの程度の物量で猟兵を抑え込めると思うのが甘いです
そして一般プレイヤーの皆さんの力量も見誤っています
(直立し目を閉じて両腕で自分を抱きしめるようなポーズをした後{白銀の旋律}で『ダンス』を始める)
この旋律は白銀の旋律。しんしんと降り続ける雪のように
ゆっくりと静かに消えてください
(UC【蠱の宴】を発動し敵の動きを阻害すると旋律によって生まれた力で『凍結攻撃』を行う)
その甘さを抱いたまま骸の海へと沈んでくれたら嬉しいですが
さてどうなるか…
「なるほど数で攻めてきますか……猟兵が取りこぼしたのを一般プレイヤーの皆さんにぶつけて遺伝子番号の焼却を狙うわけですね」
バグプロトコル側も猟兵の参戦を認識して作戦を立てているのかもしれない。押し寄せる『アマルガムビースト』の大群を見てそう考えたクロリアは、ならば受けて立とうと群れの正面に立つ。ゲームの中の世界とはいえ、大量の獣が放つプレッシャーや地響きの音は、リアルと変わりなく感じられる。
「しかしこの程度の物量で猟兵を抑え込めると思うのが甘いです。そして一般プレイヤーの皆さんの力量も見誤っています」
彼女は直立し目を閉じて、両腕で自分を抱きしめるようなポーズをした後、先程と同じようにダンスを踊り始める。
ただし奏でる旋律は前とは違う。白聖者戦が炎を体現した情熱と欲望のリズムなら、こちらは朝日に照らされて輝く雪原を表現するような、静寂と純真のリズムだ。
「この旋律は白銀の旋律。しんしんと降り続ける雪のように、ゆっくりと静かに消えてください」
クロリアが【蠱の宴】を発動すると、旋律によって生まれた力が冷気として戦場に広がっていく。芸術を解する心のない獣のバグプロトコルは、このユーベルコードの効果で行動を阻害され、さらに付随する凍結効果で速度は5分の1から10分の1にまで低下する。
『ガ……オォ……?!』『グォ……!!!』
魔獣のオーラを身に纏い、【アマルガム・ゲイル】の全力疾走でプレイヤーを蹂躙しようとしていたアマルガムビースト達は、この強烈なデバフ攻撃によってガクンと足並みが鈍った。戦いの最中に動きを止めれば、それはもう敵ではなく「いい的」だ。
「なんだ、止まったぞ。処理落ちか?」「なんでもいいさ、やってやれ!」
この機を逃さなかったのが、レイドクエストに参加した一般プレイヤー達である。単純なプレイ時間で言えば他世界の猟兵より遥かに経験豊富な彼らは、デバフのかかったモンスターの狩り方も熟知している。足を止めた者から順に、集中砲火で数を減らすのだ。
「あの娘の踊りのおかげかな?」「かわいー、もっと踊って!」
敵には激しい攻撃を加える一方で、前線で踊るクロリアには拍手や称賛の声が届く。あくまでこれをゲームと捉えているからこそ、ダンスを楽しむ気持ちの余裕もあるのだろう。そのお陰で彼らは【蠱の宴】による行動阻害を受けることはなく、普段通りのパフォーマンスを発揮することができていた。
「その甘さを抱いたまま骸の海へと沈んでくれたら嬉しいですが。さてどうなるか……」
ダンスと旋律を継続して白銀の冷気を振りまきながら、クロリアは戦いの行方を眺める。もし、プレイヤー達の実力が彼女の想定より弱かった場合、もしくは敵がこちらのユーベルコードに対策を講じてきた場合などは、戦況が逆転する可能性もあったが――。
「邪魔だ!」「とっとと道を開けな!」
『ギャオゥッ?!』
その心配はどうやら杞憂だったようで、一般プレイヤー達は十全に己の実力を発揮してモンスターを駆逐していく。
下級のバグプロトコルはあくまでプログラムとしての性質が強いのか、予想外の事態になれば対応ができず、劣勢を立て直せずにいた――。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
速度特化のUCか
下級とはいえこれだけの数で一斉に加速するとそれなりに壮観だね
ま、UCの相性を加味してもアタシの方が速いんだけどさ!
【天災輪舞】発動し《空中戦》。殲滅なら得意分野だ
《第六感+戦闘知識》併用して敵の動きを《見切り》先読み
《ダンス+存在感+陽動+パフォーマンス》の要領で敵の意識を惹きつけつつ攻撃を躱すよ
他プレイヤーも《勝者のカリスマ》で《誘惑》しておけば円滑な連携の一助になるかな
攻め手は《羽を飛ばす+追跡+誘導弾+蹂躙+弾幕+属性攻撃》
戦場全体を俯瞰してプレイヤー側の消耗を避けるよう《援護射撃》も念頭に、
蒼雷帯びた羽の弾幕で敵の逃げ場を奪って追い込み一網打尽に焼き尽くそう
『オオオォォォォォッ!!!』
猟兵達と一般プレイヤーの奮戦によって、次元の狭間に蔓延るバグプロトコルの群れは迅速に撃破されつつあった。
だが、それでも『アマルガムビースト』の数は豊富であり、逃走という選択をプログラミングされていない彼らは、魔獣のオーラを身に纏い、咆哮を上げて突撃を続行する。
「速度特化のユーベルコードか。下級とはいえこれだけの数で一斉に加速するとそれなりに壮観だね」
【アマルガム・ゲイル】で疾走する魔獣の群れを眺めながら、そう語るカタリナの表情には余裕があった。あの力を発動中のアマルガムビーストは、移動速度向上に加えて攻撃力・回避力4倍という大きなバフを得られるのだが――。
「ま、ユーベルコードの相性を加味してもアタシの方が速いんだけどさ!」
スピード勝負で負ける気はさらさら無いと、カタリナは【天災輪舞】で空中戦を挑んだ。神殺しの蒼雷を身に纏い、自慢の翼を広げて空に羽ばたく彼女の姿は、一条の閃光となり。大気を焦がす雷鳴を轟かせながら、一目散に敵陣へと突っ込んでいく。
「殲滅なら得意分野だ」
『グルルルルッ!!』
派手な音と光を発し、踊るように空を翔ける彼女に、アマルガムビーストの意識も引きつけられる。様々な動物や魔獣型モンスターが融合した爪が、牙が、嘴が、獲物を地に落とし引き裂かんと迫るが――彼女は研ぎ澄まされた第六感と豊富な戦闘知識を活かして、その全てを軽やかに躱した。
「残念、読んでたよ」
単純な獣の動きを先読みするくらい、カタリナにとっては造作もないこと。彼女はお返しに翼を広げ、蒼雷を帯びた羽根の散弾を放射する。アマルガムビースト達も回避しようとするが、誘導弾の特性も持ったそれらから逃げ切ることはできなかった。
『ギャオオォッ?!!』
触れたもの全てを焼き焦がす蒼雷を受け、悲鳴を上げる魔獣の群れ。その光景は他の一般プレイヤーの目にも入る。
一般の目線から見て抜きん出た実力と、揺るぎない自信に紐づいた勝者のカリスマは、彼らの士気を大いに高めた。
「あのプレイヤー、すげえな!」「負けてられるかよ!」
閃風の舞手の戦いぶりに触発された一般プレイヤー達は、こぞってモンスターの群れに追撃を仕掛ける。カタリナも上空から彼らの動きを俯瞰し、必要とあらば援護射撃を惜しまない。レイドボス戦を見据えるなら、ここで彼らの消耗を抑えておくのは重要事項だ。
「こんな所で手間をかけても仕方がないからね」
『グ……ギャオオォォォォーーーッ!!?!』
蒼雷帯びた羽の弾幕は絶え間なく降りしきり、魔獣どもを追い込み、逃げ場を奪い、そして一網打尽に焼き尽くす。
ここまでの味方の犠牲者はもちろんゼロ。圧倒的な優勢を保ったまま、彼女はまっしぐらにボスの元へと迫る――。
大成功
🔵🔵🔵
ファーラ・フォージマスター
ま、数には相応の数をぶつけ返すのが一番楽じゃんね。
本来だったらこんなの無粋の極みなんだけども……相手がバグなら遠慮はいらねェってネ☆
つーわけで出てこい我が衛兵・カオスドワーフアボミナブルガード(大型盾+ハルバード装備)、そして蒸気魔導兵器・ランペイジモーター(運用人員:カオスドワーフ)!
作戦は至ってシンプル。ドワーフ達を並べて強固な壁役とし、後ろから臼砲でどっかんどっかん!
ついでにうちもブレスか何かで援護射撃しとこうかな
さぁ気張れよドワーフ共!判ってるとは思うケド、キミ等用の武具・兵器にけっこうなカネと資材突っ込んでっからネ?
此処を越えれるかどうかはキミ等にかかっているんだからな!
「ま、数には相応の数をぶつけ返すのが一番楽じゃんね」
レイドボスの前哨戦として配置された大量のバグプロトコル。これに立ち向かうためファーラが出した解答は、ある意味ボスキャラらしいものだった。工廠城塞の支配者として君臨する彼女は、当然ながら大勢のモンスターやNPCを配下に従えている。
「本来だったらこんなの無粋の極みなんだけども……相手がバグなら遠慮はいらねェってネ☆」
通常のクエストなら彼女も自重はする。だが今回はそうではない。|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》の主として、全力をふるって良いシチュエーションが用意されている。だったら、たまには存分に武威と権威を知らしめるのも一興というものだろう。
「つーわけで出てこい我が衛兵・カオスドワーフアボミナブルガード、そして蒸気魔導兵器・ランペイジモーター!」
【悪魔の鍛冶場】の主の号令に応じて馳せ参じるは、大型盾とハルバードで武装した衛兵モンスターの軍団、そしてカオスドワーフの工兵により運用される機械仕掛けの兵器だ。数の上ではバグプロトコルの群れに劣るのもの、それは立派な軍団と言えた。
「【|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》】の|主《ミストレス》とはうちの事よ。尻尾巻いて逃げるなら今のうちじゃんね?」
にやりと笑ってファーラは言うが、魔獣風情にその名乗りの意味は理解できまい。無論、それでまったく構わない。
言葉よりも力で示してやろうと、彼女は配下に向かって腕をひと振り。さすれば兵士達は意のままに動き、戦場に自らの陣地を築いた。
「やっちまいな!」
ファーラの号令一下、蒸気魔導兵器が一斉に火を噴き、砲弾の雨を敵陣に降らせる。悪魔の鍛冶場にて生産されたそれは、本来は攻城戦用に多数の資材とトリリオンを投じたもの。下級バグプロトコルを打ち砕くには十分過ぎる破壊力を有していた。
『ギャオオォオォォォッ!!!?!』
砲火の嵐に襲われたアマルガムビーストの悲鳴が聞こえる。遠距離攻撃手段を持たない彼らは、多数の犠牲を強いられながらも前に進むことしかできない。それでも数が数ゆえに何体かは突破してくるのだが――砲弾の次に彼らを阻んだのは、ドワーフ達の持つ重厚な盾であった。
「さぁ気張れよドワーフ共! 判ってるとは思うケド、キミ等用の武具・兵器にけっこうなカネと資材突っ込んでっからネ?」
ファーラの立てた作戦は至ってシンプルだ。ドワーフ達を並べて強固な壁とし、後ろから臼砲でドカンと撃ち抜く。
そのシンプルな運用が、このシチュエーションではもっとも効く。問題は砲撃が敵群を殲滅するまで、壁役が保ってくれるかどうかだが。
「此処を越えれるかどうかはキミ等にかかっているんだからな!」
『ヘイ、大親方!』
言葉とは裏腹に彼女の声には配下への信頼がある。カオスドワーフから半神的存在として崇拝される彼女の号令は、配下の魂を燃え上がらせ生命惜しまぬ精兵に変える。彼らを突破したいのならば、せめて破城槌くらいは持つべきだ。
「せめて維持費と修繕費分くらいは稼がせてもらわなくちゃねえ!」
『グ、ウギャオオオォォッ!?!』
ファーラ自身も口からブレスを吐いて援護射撃を行い、カオスドワーフ操る蒸気魔導兵器と共に敵を一掃していく。
恐るべき悪魔の鍛冶場の餌食となったアマルガムビーストは、トリリオンと各種素材アイテムだけを残して消滅し、断末魔の悲鳴は次元の狭間に消えていった――。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
随分と数を揃えたものだ。ふむ、キメラとはあまり美しいとはいえない容姿だね。
しかし其れ程に融合がお好みなら皆一つにしてやろう。
UCの棘を放ち次々に連鎖させていく。赤く咲けば美しいだろう。
他の参加者達が巻き込まれないよう警告を発しておこうか。
噛まれればこちらのUCを使えるようになるようだが、所詮借り物、対処は難しくないだろう。奴らに珪素の味が分かるかな。フフ。
「随分と数を揃えたものだ。ふむ、キメラとはあまり美しいとはいえない容姿だね」
様々な動物の要素が混ざりあった『アマルガムビースト』の異形に、微かに眉をひそめるのはネフラ。体表面のあちこちから新たな魔獣の顎を出現させ、獲物を求めて吼え猛るさまは、バグプロトコルという存在の異常性をまざまざと見せつけていた。
「しかし其れ程に融合がお好みなら皆一つにしてやろう」
ふっと笑みを浮かべた彼女の緑髪が、先端からほのかな赤色を帯びる。それは魔獣どもから向けられる敵意に反応してゆらりと揺らめき、伸びていく。正確には髪そのものではなく、伸びるのはユーベルコードで生成された血の茨だ。
「気をつけてくれ。この茨は少々敵意に敏感でね」
「え? なに言って……」
その警告に一般プレイヤー達が首を傾げた直後、ネフラの茨から【血繋茨苑】が発動する。しなやかに、かつ高速で伸びる無数の棘が、迫りくるアマルガムビーストの群れに次々と突き刺さった。あまりの早業であった為に、敵は反応する暇もない。
「赤く咲けば美しいだろう。咲き乱れる花園と成れ」
『ウギャオッ?!』『グガアァァ!!』
敵がもがけばもがくほど、血の棘は彼らの四肢に、胴体に、首筋に、より深く食い込む。そして互いを繋ぎ合わせて硬化することで、獣と茨が絡み合った不気味なオブジェを作り上げる。こうなってしまえばもう、身動き一つできないだろう。
「まだやる気かな?」
『ウオオッ!!』
後続の魔獣どもは倒された同族を見ても怯みはしなかったが、同時に学習もせず迂闊であった。ネフラの棘は捉えた対象の力を利用して連鎖的に範囲を広げる。敵の数が多ければ多いほど、このユーベルコードは真価を発揮するのだ。
「ヤッベェ……?!」「何あの技、見たことないんだけど!」
あまりにも派手で壮絶な彼女のユーベルコードを見た一般プレイヤー達は、巻き込まれないように慌てて退避する。
敵意さえ向けなければ、基本的に茨が敵以外の対象を攻撃することはない。ネフラとて無差別な殺傷をするほど血に飢えてはいなかった。
(噛まれればこちらのユーベルコードを使えるようになるようだが、所詮借り物、対処は難しくないだろう)
棘茨の束縛を噛み千切ろうとするうちに、【ミューテーション・プロトコル】で同じ能力に目覚めた敵も少数ながらいる。だが「使える」と「使いこなせる」の間には厳然たる差異があり、ネフラから見れば彼らの茨の操作は稚拙に過ぎた。
「奴らに珪素の味が分かるかな。フフ」
『グ、ギャオォォォォ……ッ!!』
茨化した部位にこちらの茨を絡ませ、より強く締め付けて身動きを封じ。全身に棘を突き立て、血の一滴まで奪う。
ありとあらゆる抵抗の術を奪われた上で、一塊にされたアマルガムビーストどもは、ミイラのように干からびて消滅するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソラウ・エクステリア
危ない!
オーラを纏った敵がプレイヤーの一人に襲い掛かって来たので結界術を展開して守る
『落ちなさい!』
次元能力で敵の背後に瞬間移動して切り裂いた
あぁぁぁぁ!
銃槍から音響弾による衝撃波を放ち敵を攻撃した
『ラーミアはトリリオンを稼ぐのだ』『ラーミアは因果滅殺転生波を放つのだ』『ラーミアは必中破光も放つのだ』『キング達にお土産買う為に頑張るのだ』
指定UCの効果でUC狂気の生命体ラーミア“因果滅殺転生波”が発動し因果滅殺転生波と必中破光を敵に放ってくれた
もう一度行くよ!
『ええ…!』
指定UCで攻撃
そういえばラーミアってここにどうやって来たの?
『時空をこじ開けたのだ』『英雄の神の本に書かれた方法は凄いのだ』
「危ない!」
次元の狭間の戦いが激化する中、オーラを纏った獣がプレイヤーの一人に襲い掛かるのをソラウは見逃さなかった。
彼女は咄嗟に結界術を唱え、そのプレイヤーの身を守る。獲物の頭蓋を噛み砕くはずだった牙は、燐光放つ魔力の壁によって阻まれた。
『落ちなさい!』
『ギャウッ?!』
その直後、時空神エスパスが次元能力で敵の背後に瞬間移動し、剣を振るう。武神とも称される彼女の斬撃は、アマルガムビーストの毛皮や装甲を苦もなく切り裂き、ヒットポイントをゼロにする。断末魔と共に獣の骸は消え、ドロップアイテムだけが残された。
「大丈夫?」
「あ、ああ。ありがとう!」
ソラウが結界を解除すると、助けられたプレイヤーはお礼を言って、また戦いに戻っていった。猟兵以外の者たちにとって、このクエストは難易度が高いだけの「ただのゲーム」に過ぎない。だが、ここでの死は現実世界での人権を失うことに繋がるのだ。それを知って見捨てることなどできはしない。
「あぁぁぁぁ!」
雄叫びと共にソラウは「時空騎士銃槍」から音響弾による衝撃波を放ち、バグプロトコルの群れを攻撃する。所詮はレイドボスの前座に過ぎないため、数は多くても苦戦するような相手ではない。あとはどれだけ消耗を減らせるかだ。
『ラーミアはトリリオンを稼ぐのだ』『ラーミアは因果滅殺転生波を放つのだ』『ラーミアは必中破光も放つのだ』『キング達にお土産買う為に頑張るのだ』
何故かここまで付いてきたラーミア達も【狂気の生命体ラーミア“因果滅殺転生波”】で敵を攻撃してくれている。
彼らの放つ謎の波動や光を浴びたアマルガムビーストは、あらゆる因果を否定され、復活も再生も許されずにこの世から完全消滅する。ひとたび彼らに"敵"と見なされることが、どれだけ恐ろしいか理解できる光景だ。
「もう一度行くよ!」
『ええ……!』
何にせよラーミアが味方になってくれている今は好機だ。このまま一気に敵の数を減らすべく、ソラウも【時空武神・ウール・エスパスとの超連撃】を発動。時空を切り裂く連撃が戦場を薙ぎ払い、【アマルガム・ゲイル】を発動しても避けられない速度で魔獣どもをバラバラにした。
「そういえばラーミアってここにどうやって来たの?」
『時空をこじ開けたのだ』『英雄の神の本に書かれた方法は凄いのだ』
戦いの合間に、ソラウはさっき聞きそびれた質問を尋ねてみる。ラーミア達からの返答はさらっとしたものだが、言っていることは相当とんでもない。次元災害と称される彼らが凄いのか、彼らが読んだ「英雄の神の本」とやらが凄いのか――あるいは両方か。
「気になるけど、今はこっちだね!」
眼の前にまだ敵は残っている。そしてその先には本命のレイドボス。この次元の狭間で燦然と光を放つ『白き魔神』の元に向かうために、ソラウはエスパスやラーミア達とともに戦場を駆ける。幾重もの斬撃の軌跡を描きながら――。
大成功
🔵🔵🔵
菜花・深月
うわっ…数が多すぎる!
多すぎ敵を見て驚くも結界術を展開する
とりあえず何かする前に倒す!
敵の動きを見て弾道計算をして神聖攻撃の矢弾の雨を放ち周りの敵を攻撃する
な…急に速くなった?!ど…どうしよう!
敵が魔獣のオーラを纏うと攻撃されたが結界術を展開していたのでダメージを受けずにすんだがこの攻撃力は不味いと思った
そういえば…おじいちゃんが
祖父が昔言っていた事を思い出す
『速い奴は、追いこんで詰める…!』
と言って蚊を叩き潰していた事を思い出した
行けー!
UCを発動して敵を囲うように凍らせた
後に動けなくなった敵に対して凍結攻撃のエネルギー弾を放ち敵を攻撃した
ありがとう…おじいちゃん!
大好きな祖父を頭に浮かんだ
「うわっ……数が多すぎる!」
前方から押し寄せるモンスターの大群を見た深月は、驚きながらも結界術を展開する。射撃職である彼女にとって、敵との近接戦はあまり望ましいものではない。そのための防御スキルではあるが、果たしてこの数相手にどこまで持ちこたえられるものか。
「とりあえず何かする前に倒す!」
勝算が高いとすれば先制攻撃だと、彼女は月光弓に矢を番えて射る。この手の魔獣系モンスターに有効な神聖属性を付加した魔法の矢だ。敵の動きを読んだ正確な弾道計算も、瞬く間に数十の矢を放つ連射速度も、元プレイヤーとして素晴らしい腕前だ。
『ガルルッ!!』
「な……急に速くなった?!」
だが、アマルガムビーストは魔獣のオーラを纏って【アマルガム・ゲイル】を発動。深月の計算を超える加速で矢の雨を回避すると、そのまま襲い掛かってきた。展開していた結界のおかげでダメージを受けずに済んだものの、初撃で術の耐久値が大幅に削られる。
「ど……どうしよう!」
スピードや回避力のみならず、この攻撃力は不味いと深月の表情が青ざめる。後続の群れに取り囲まれてしまえば、弓術だけではどうにもならないだろう。この状況を打開する術はないかと、彼女は必死に思考をフル回転させる――。
(そういえば……おじいちゃんが)
その時、脳裏に浮かんだのは祖父が昔言っていたことだった。まだ自分が遺伝子番号を失う前、統制機構の管理下で息苦しくも平穏な日々を送っていた頃。あるとき自宅に入り込んできた蚊を、彼はこう言って叩き潰していたものだ。
『速い奴は、追いこんで詰める……!』
まっすぐに狙っても躱される。なら、躱せない状況を作ればいい。祖父の言葉にヒントを得た深月の頭の中で、ピンとひらめきが浮かんだ。すぐさま弓を構え直し、番えるのは先程とは違う矢――ヒット時に凍結状態を引き起こす【氷刻矢雨の月矢】だ。
「行けー!」
大声と共に放たれた深月のとっておきの矢は、アマルガムビーストの群れを囲うように地面に刺さり、凍結させる。
凍りついた地面はつるつると滑りやすく、なんの備えもない獣がその上を疾走すれば転倒は必至。それを避けるために敵群は慌てて動きを止めた。
『グ、グルルッ……?!』
「そこだっ!」
その瞬間に深月はもう一度、本命となる【氷刻矢雨の月矢】を撃ち込む。光り輝くエネルギーの矢は、今度こそ過たずに目標に命中し、たちまちのうちに凍結させる。『ギャオ……!!』と、断末魔の悲鳴さえ上げられずずに、魔獣の群れは戦場に立ち並ぶ氷像と化した。
「ありがとう……おじいちゃん!」
窮地を救ってくれた、大好きな祖父の顔を頭に思い浮かべながら、ほっと笑顔を見せる深月。だが、まだ戦いが終わったわけではない――むしろ、本命となるボス戦はこれからなのだ。彼女はすぐに気を引き締め直すと、弓弦をぐっと引き絞るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
まったく、数だけは多いな
たかが獣であっても、これだけの数なら油断は出来んか
シガールQ1210とシルコン・シジョンを手に持ち、敵の集団に一斉発射
2丁の拳銃から吐き出される高速弾でアマルガムビーストの群れを殲滅する
突っ込んでくる群れの先頭が倒れたら、後続の群れは足止めされるだろう
動きが止まった群れにさらに銃弾を撃ち込んでいく
さて、次だ
お前達の「爪」と私の「牙」…どちらがより鋭いか、試してみるか?
そのままUCを発動
分裂した無数のナガクニを群れの中に撃ち込む
そのまま付近の個体を巻き込むように爆発させ、生き残った者達は力と生命を吸い上げて倒す
さぁ、踊ろうか!
お前達の爪で私を捕らえられるか、試してみろ!
敵を減らしたら今度は自分から突撃
踏み付けと悪路走破でアマルガムビーストの身体を足場にして空中から次々とUCを撃ち込み倒していく
これだけの数だ、爆破すれば容易に周囲の敵を巻き込めるな
群れの多さが仇となったか
コレが終われば次はレイドボスか…
フン、ドロップアイテムを拾っている暇はなさそうだ
「まったく、数だけは多いな」
レイドクエストの舞台にはびこる『アマルガムビースト』の大群を見て、キリカは呆れたように嘆息する。ボス戦の前哨戦として軽く打ち破ってみせろということなのだろうが、バグプロトコル化したモンスター達は本気でプレイヤーを殺しにかかっている。
「たかが獣であっても、これだけの数なら油断は出来んか」
下手な出し惜しみで足元をすくわれぬよう、彼女は己を戒めつつ二丁の銃を構える。シガールQ1210とシルコン・シジョン――先程は白聖者レオボルトも討ち倒してみせた愛銃が再び火を噴き、敵集団へと一斉に弾丸の雨を浴びせた。
『グギャウッ?!』『ガオオッ!!』
群れなして押し寄せるアマルガムビーストのうち、先頭にいた数体が銃撃を受けて絶命する。その骸はすぐには消滅せず倒れたまま残り、後続の同族たちを足止めする障害物となる。そこにキリカはさらなる銃弾を撃ち込んでいった。
「単純に突っ込んでくる群れの相手は楽でいいな」
元々雑魚モンスターだったために、それほど複雑なプログラムは組まれていないのか、敵の行動パターンは単純だ。
左右の銃から吐き出される高速弾は魔獣どもを次々と殲滅し、大きな損害をもたらしていた。他の猟兵やプレイヤーとの戦闘も含めて、そろそろ後続の数も尽きる頃だろう。
「さて、次だ」
そのままキリカは【ヴィヨレ・ドゥ・エクレール】を発動。腰にさしていた黒革拵えの短刀「ナガクニ」を宙に放ると、その刀身が何十、いや何百何千と分裂する。それらは見えない力によって空中に浮かんだまま、正面にいる敵群に切っ先を向けていた。
「お前達の『爪』と私の『牙』……どちらがより鋭いか、試してみるか?」
『グッ……ギャオオォォォォォッ!!!?!』
挑発的な言葉とともに放たれた無数のナガクニは、アマルガムビーストの群れの中へと撃ち込まれ、爆発を起こす。
直撃を受けた者はもちろん、付近にいた個体も爆風に巻き込まれてダメージを負い。さらに爆心地からは紫電の鎖が発生し、生き残った者に絡みついて力を生命を吸い上げる――獣どもの苦悶の絶叫が戦場に響き渡った。
「さぁ、踊ろうか! お前達の爪で私を捕らえられるか、試してみろ!」
一斉掃射で敵の数を減らすと、キリカは今度は自分から突撃を仕掛けた。動きの止まった獣の身体を踏みつけて足場とし、空中から次々とナガクニを撃ち込んで。立て続けに上がる爆発と紫電が、無慈悲に敵の生命を奪い去っていく。
(これだけの数だ、爆破すれば容易に周囲の敵を巻き込めるな。群れの多さが仇となったか)
せっかくの数の暴力も十全に活かせなければ、逆に一網打尽にされるのみ。彼女の戦いぶりはそれを物語っていた。
アマルガムビーストも必死に【バグプロトコル・クロー】で反撃するが、舞うが如く縦横無尽に戦場を駆けるキリカの元に、その爪が届くことはなかった。
『グ……ガ……』
こうして次元の狭間にはびこるアマルガムビーストの群れは掃討されていき、咆哮や悲鳴の数も次第に少なくなる。
キリカはその中を颯爽と走り抜けながら、フィールドの彼方に浮かぶ光――最後のモンスターをじっと睨んでいた。
「コレが終われば次はレイドボスか……フン、ドロップアイテムを拾っている暇はなさそうだ」
前哨戦を終えて、いよいよレイドクエストは本番を迎える。バグプロトコルに乗っ取られた『白き魔神』を撃破し、ゲームの世界に平和を取り戻すために、彼女は今一度気合を入れ直した。これまでのモンスターとは比較にもならないほどの脅威が、この先に待っているのだから。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『セフィロト・エクス・マキナ』
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POW : アイン・ソフ・オウル
【セフィロト型魔力回路】から、レベル×5mの直線上に【魔力の奔流】を放出する。【コアの耐久力】を消費し続ければ、放出を持続可能。
SPD : マキナ・セフィラ
【セフィロト型魔力回路】から無限に供給される【美しく輝く魔力の矢】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。
WIZ : スターリー・トライアングル
【セフィロト型魔力回路】から【三角形型の光】を放ち攻撃する。その後、着弾点からレベルm半径内が、レベル秒間【移動不能】状態になる。
イラスト:傘魚
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「どうやらプレイヤーの中に、想定外の力を持つ者がいるようですね」
前哨戦に配置された『アマルガムビースト』の群れが撃破されると、次元の狭間に浮かんでいた光が近付いてくる。
近くで見たそれは、磔のような体勢で機械とコードに繋がれた、人型のモンスターだと分かる。そのデザインはまさしく機械仕掛けの神を連想させ、無機質にして神々しい雰囲気をまとっている。
「麾下にあるプロトコルの99%を喪失。プレイヤー撃破率は1%未満。早急な"修正"が必要です」
彼女の名は『セフィロト・エクス・マキナ』。
高難易度レイドクエスト『白き魔神を討伐せよ』を乗っ取り、その最終ボスである『白き魔神』に扮した、指揮官種バグプロトコルである。
これまでに出てきた大量のバグプロトコルをコントロールしていたのは、全て彼女の力によるものである。
また、クエストを乗っ取ったことでレベルやステータスもレイドボス仕様となっており、理不尽なまでの耐久力と、絶大な攻撃力を誇る。少数精鋭である猟兵の力だけでは、このモンスターを撃破するのは不可能だ。
「こいつがレイドボスか」「なんかメタっぽい事言ってるぞ?」「いいじゃん意味深で。別格って感じだしさ!」
だが、ここには猟兵だけではなく一般プレイヤーもいる。
あえて高難度クエストに挑むほどの熱意と時間をこのゲームに注ぎ込んだ、いわゆる「廃プレイヤー」である彼らの実力は、ゴッドゲームオンライン内でもトップクラス。彼らと共闘すれば理不尽な無理ゲーと化したレイドボスの討伐にも希望が見える。
ただし、彼ら一般プレイヤーがバグプロトコルに倒された際、待っているのはリアルにおける人権の喪失である。
|統制機構《コントロール》に支配された世界で、個人の身分を保証する|遺伝子番号《ジーンアカウント》。それは彼らにとって生命の次に大事なものだ。迂闊に捨て駒にするような戦い方はできない。
「クエスト最終段階、レイドボス『白き魔神』戦に則り――全参加プレイヤーを、この手で排除しましょう」
動きだした白き魔神。身構えるゲームプレイヤー。
これはクリアの保証されていないクエストであり、誰一人犠牲を出すことの許されない戦い。
現実と変わらぬ緊張感の中で、猟兵はおのおのが信じる力をもって、最強のレイドボスとの決戦に挑む――。
菜花・深月
あんたになんか負けないよ!誰も死なせない!
敵を睨みながら神聖攻撃の矢を放ち攻撃する
あ…あれ?あんまり効いてない?ってきゃあぁぁぁぁ!
敵も魔力の矢で攻撃してきて相殺どころかうちが放った神聖攻撃の矢を破られて魔力の矢が飛んで来たが移動しながら結界術で防御して凌ぐ
皆!今がチャンスだよ!
魔力の矢が止まったらUCを発動して敵を凍結させる
凍結状態を解除させないよ!永遠に凍らせてあげるから!
UCの効果でアルテミスカードを発動して攻撃回数のカードを取り凍結攻撃の矢弾の雨を放ち、その後UCを発動して敵を凍らせ続けて味方をサポートした
さあ!最後まで気を抜かずに行こうね!
これもおじいちゃんが良く言っていた言葉である
「あんたになんか負けないよ! 誰も死なせない!」
ついに出現したレイドボスとの決戦。指揮官種バグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』に最初の一撃を見舞ったのは深月だった。鋭い目つきで標的を睨みつけながら、月光弓より神聖攻撃の矢を放つ。その威力は、これまでの戦闘でも見せてきた通りだが――。
『排除します』
セフィロト・エクス・マキナも同時に【マキナ・セフィラ】を発動。背部の「セフィロト型魔力回路」から供給される魔力を、美しき光の矢に変換して射出する。それは深月の矢を相殺するどころか一方的に破り、本体へのダメージは皆無であった。
「あ……あれ? あんまり効いてない? ってきゃあぁぁぁぁ!」
これまでのモンスターとは別格の強さに、呆気にとられる間もなく反撃が来る。深月は悲鳴を上げながらバリアを張り、降り注ぐ魔力の矢を防いだ。しかし無尽蔵の|魔力《MP》を持つレイドボスの攻撃には温存という思考がまるでなく、新しい矢は無限に供給される。
「足を止めてたらやられる!」
「うおっ、いきなりヤベぇ!」「みんな避けろー!」
深月は必死に走り回って矢の雨を回避しながら、バリアの結界を味方全員に展開する。ただ攻撃に特化した遠距離職ではなく、サポート系の身に付けているのが彼女のプレイスタイルだ。そのお陰で他の一般プレイヤーにも大ダメージを受けた者はおらず、各々どうにか攻撃を凌いでいる。
『思ったよりもしぶといようですね』
逃げ惑う地上のプレイヤー達を見下ろしながら、セフィロト・エクス・マキナは矢の斉射を止める。魔力そのものは無限でも、攻撃ユーベルコード自体には継続可能時間が設定されているらしい。彼女はすぐに次の斉射の準備に入るが、プレイヤー側もこの機を見逃さない。
「皆! 今がチャンスだよ!」
「「おうっ!!」」
深月の放った【氷刻矢雨の月矢】が、今度こそは魔力の矢に相殺されずにヒットする。このユーベルコードはたとえレイドボスが相手だろうと、状態異常耐性を無視して確定で凍結状態にする技だ。セフィロト・エクス・マキナの体の一部が凍りつき、動きが鈍った瞬間、一般プレイヤー達が一斉に攻撃を開始した。
『この私にバッドステータスなど……』
「凍結状態を解除させないよ! 永遠に凍らせてあげるから!」
セフィロト・エクス・マキナはすぐさま異常を回復しようとするが、深月はさせじと【アルテミスカード】を発動。
出現した3つのカードから「攻撃回数倍化」を取り、凍結攻撃の矢を連発する。ダメージを稼ぐ役は味方に任せて、敵の足止めに専念する気のようだ。
「うちのとっておき、何度でも味わってね!」
【氷刻矢雨の月矢】を発射する前後には味方へのバリアも張り直し、敵からの反撃に対する備えも怠ってはいない。
凍って動けないうちに一般プレイヤー達の全力攻撃がヒットすれば、レイドボスの膨大なヒットポイントも少しずつ減っていく――とんでもない強敵だが、それでも絶対に倒せないボスではないようだ。
「さあ! 最後まで気を抜かずに行こうね!」
「ああ!」「ここまで来て負けられるかよ!」
おじいちゃんが良く言っていた言葉で励ますと、プレイヤー達も大声で応える。生命や遺伝子番号がかかっていることを除けば、通常のレイドクエストと変わらぬやり取り。そこに深月は高揚感を覚えながらも、決して気を緩めない。彼らの誰にも自分のような目にあわせないために、弓を引き絞るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クレイユ・オブエミネンス
そちらがシステムを悪用するなら、こちらもシステムを利用するまでさ
緊急レイドバトルを開始します
突然の発表につき申し訳ありません
ですが補填として特殊アイテムの配布と参加者に無敵付与等を始めとした特殊バフ効果を発表致します…
これで、特殊アイテムを使う無敵状態…撃破されても遺伝子番号は喪失しない
まぁそれ以前に特殊バフ効果という事で普通にやっていれば大体勝てちゃうけどね
ドラゴンプロトコルとして自身を竜化させ、バフ効果を更にプレイヤーへと重ねながら指揮を行いバグプロトコルを追い詰めていく
この世界に無粋な『コントロール』は不要です
即刻退場してもらいましょう
重要NPCの口調でそう語り、トドメを刺す
「そちらがシステムを悪用するなら、こちらもシステムを利用するまでさ」
高難易度レイドクエストを乗っ取って強大な力を手に入れ、クエストフィールドをプレイヤーの虐殺場に変えたバグプロトコル。この事態に対抗するために、クレイユはドラゴンプロトコルに与えられた力――ゲームマスターとしての権限を行使する。
「緊急レイドバトルを開始します」
【緊急発動・戦乱齎す謝意と加護を貴殿に】。このフィールドにいるプレイヤーの付近に「お知らせ」ウィンドウが浮かび上がり、クエストの発令を伝える。その討伐目標は言うまでもなく、眼の前にいるバグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』だ。
「突然の発表につき申し訳ありません。ですが補填として特殊アイテムの配布と参加者に無敵付与等を始めとした特殊バフ効果を発表致します……」
すでにレイドクエストの最中に改めてクレイユが緊急レイドバトルの宣言を行ったのは、この詫び補填をプレイヤーに配布するためだった。通常手段では入手することのできない特別な強化アイテムと、専用のバフ効果が全ての参加者に与えられる。
「レイド戦中にまたレイド戦のお知らせ?」「まあいいさ、どっちみちやることは同じだ!」
不自然な緊急宣言に違和感を覚える者も少なくはなかったが、貰えるものは貰っても損はない。補填アイテムを受け取った一般プレイヤー達は、その効果を確かめるように意気揚々とレイドボスに戦いを挑む。これがただのゲームだと信じているからこそ、彼らの士気は高い。
「これで、特殊アイテムを使う無敵状態……撃破されても遺伝子番号は喪失しない」
と、クレイユは言っているが、このユーベルコードによるバフ効果はあくまで攻撃力と防御力の強化なので、こちらの想定を超えるダメージを受けた場合はどうなるか分からない。バグプロトコルが遺伝子番号を焼却する仕組みが判明していない以上、あまり過信するのは危険だろう。
「まぁそれ以前に特殊バフ効果という事で普通にやっていれば大体勝てちゃうけどね」
そのくらいに強力な――普通のクエストなら過剰なほどのバフを彼女はプレイヤーに与えた。その効果は明らかで、攻撃を受けたセフィロト・エクス・マキナのボディにはっきりと傷が付いていく。廃プレイヤー達の元々のスペックが増強されれば、レイドボスの理不尽な防御力も突破できるようだ。
『セフィロト型魔力回路を臨界に――スターリー・トライアングル、発動』
もちろんセフィロト・エクス・マキナも攻撃を受けるだけではない。背部の機械から巨大な三角形の光を放ち、強烈な反撃を仕掛けてくる。バフ効果のお陰で倒されずとも、この光の着弾点周辺にいた者は移動不能状態に陥るようで、巻き込まれたプレイヤーの足が止まった。
「やべっ?!」
「心配はいりません。範囲をよく見れば回避できる攻撃です」
焦るプレイヤー達の頭上を、一頭のドラゴンが飛んでいく。人間形態から竜形態に変身したクレイユだ。彼女は追加のバフ効果をプレイヤーに重ねながら、戦場の最前線で指揮を取る。普段から重要NPCのロールプレイを楽しんできただけあって、味方を鼓舞する態度も堂に入ったものだ。
「さあ、反撃です」
「よし、いくぞっ!」「くらえーッ!」
クレイユの指揮とバフにより勢いを取り戻したプレイヤー達は、再びボスに攻勢を仕掛けていく。相手も「普通に」やっては勝てないバグプロトコルとはいえ、こちらにも猟兵という普通ではない戦力が付いているのだ。油断せずに戦えば勝算は五分以上。
「この世界に無粋な『コントロール』は不要です。即刻退場してもらいましょう」
『所詮は管理端末のひとつに過ぎぬものが、偉そうな事を……ッ!!』
重要NPC口調で語るクレイユにセフィロト・エクス・マキナは悪態を吐くが、自身が追い詰められつつある事実を認めないわけにはいかなかった。配下は全て撃破され、残っているのは己のみ。言葉通りの「裸の女王」となったレイドボスに、プレイヤー達の攻撃が降り注ぐ――。
大成功
🔵🔵🔵
ソラウ・エクステリア
さあ、こいつを倒そう!エスパスさん!
『ええ!ソラウ!…でもラーミアはさっき帰ったわよ』
エスパスさんが剣を構えながら話す
まずは皆を守る!
周りに念動力を纏った結界術を展開して敵の魔力の矢を防御する
『魔力回路を破壊しないとずっと攻撃され続けるわ!』
エスパスさんが敵の矢を見ながら敵の懐へ飛び込んだ
(UC時空剣士・ウール・エスパスを発動)
『旋風!』
エスパスさんが推力移動を利用して一時的に魔力回路を切り裂き、矢を止める
さあ、歌おう!愚者の歌を!
指定UCを発動して破滅の歌で敵の概念を無効化した後、音響弾による衝撃波で追い打ちをかける
『霞斬り!』
エスパスさんが曲通風流剣術の霞斬りで敵の背後に回り込み切り裂いた
「さあ、こいつを倒そう! エスパスさん!」
『ええ! ソラウ! ……でもラーミアはさっき帰ったわよ』
いよいよレイドクエストもクライマックスとなり、やる気十分の様子で「時空騎士銃槍」を構えるソラウ。エスパスも剣を構えながら答えるが、あの丸っこい謎生物の群れがいつの間にかいなくなっているのに気付いていた。ここまで何やかんやで彼らの存在はバグプロトコル撃破に貢献していたが、もう助力は期待できないようだ。
「セフィロト型魔力回路、再起動。マキナ・セフィラ、発射」
立ちはだかる敵は『セフィロト・エクス・マキナ』。空中で立ち止まったまま背面の装置を起動させ、無数の魔力の矢を地上に向けて放ってくる。設定上、彼女は白教徒が崇拝する『白き魔神』ということになっているが、まさに神と呼べるだけの絶大な力を誇っていた。
「まずは皆を守る!」
ソラウは自分の周りに念動力を重ねた強固な結界術を展開して、【マキナ・セフィラ】による魔力の矢を弾き返す。
一緒に守られた一般プレイヤーからは「ありがとう!」とお礼の声が届くが、それで危機が過ぎた訳ではなかった。
『魔力回路を破壊しないとずっと攻撃され続けるわ!』
レイドボスとして設定された無尽蔵の魔力は、セフィロト・エクス・マキナに無限の矢を供給している。このまま上空から一方的に撃たれ続けていては、攻撃が止む前に結界が壊されるだろう。もし自分達は無事でもプレイヤーに犠牲が出るかもしれない。それがエスパスには気がかりだった。
『私が行くわ!』
状況を打破するために飛び出したのは【時空剣士・ウール・エスパス】。矢の軌道をよく見て切り払いながら、白い長髪をなびかせて敵の懐に切り込む。かつては傲慢で自己中な性格だった彼女も、壮絶な経験を経て大きく成長し、神にふさわしい精神と力を手にしていた。
『旋風!』
「なに……っ」
そのまま自らの推力を剣に乗せ、「曲通風流剣術」の構えから放たれる鋭い斬撃が、敵の背後の装置を切り裂いた。
これにより一時的に魔力回路の循環が遮断され、矢の発射が止まる。人形のように無表情だったセフィロト・エクス・マキナが、微かな動揺を顔に浮かべた。
「さあ、歌おう! 愚者の歌を!」
エスパスの頑張りを無駄にはしまいと、ソラウもユーベルコードを発動。破滅の歌姫に変身した彼女は銃槍をマイクスタンドのように構え、【ソラウの歌『愚者』】を奏でる。戦場全体に響き渡ったその歌声は、バグプロトコルを構成するプログラムに概念レベルでのダメージを与えた。
「回路の復旧が妨害されている……? この歌の仕業ですか」
「気付いても手遅れだけどね! そこだっ!」
自身や魔力回路に発生するエラーから立ち直るため、演算処理を忙殺させられるセフィロト・エクス・マキナ。すかさずソラウは銃槍の矛先を向け、音響弾による衝撃波で追い打ちをかける。滅殺の歌のフィナーレにふさわしい炸裂音が、空中で敵の体勢を崩した。
『霞斬り!』
「しまっ……うッ!!」
間髪入れずにエスパスが敵の背後に回り込み、今度は真一文字に剣を振るう。無防備な瞬間を狙われたセフィロト・エクス・マキナは苦痛に顔をしかめ、ボディにノイズが走る――いかに理不尽仕様のレイドボスとはいえ、時空を渡る猟兵達が与えたダメージは、決して小さくはなかった様子だ。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
さすがここまで残った熟練プレーヤー、みんな、すごい術力者だね。でも、相手は、攻撃前予備動作なし、攻撃後硬直なし、その上、ずっとスーパーアーマーでひるみなし。さすがにこれはチートすぎるよ。さすがバグプロトコル。
そっちがチートならこっちもチート能力を使わせてもらうよ。
ビー玉を投げて、破壊不能、効果無効オブジェクトの壁に変換。
さらに、飛び出しを狙った攻撃にあわせて、別のビー玉を変換した反射障壁で返すよ。
高性能攻撃が徒になったね。移動不能になった隙をみんなで総攻撃だ。
「あいつら凄え……俺達も負けてられないぜ!」「貢献度1位は譲らないからな!」
猟兵達がレイドボスとの激闘を繰り広げる一方で、その活躍を見た一般プレイヤー達も大いに奮闘していた。ユーベルコードは使えずとも、数千時間をかけて鍛えたレベルや最強装備、そして経験で磨かれたプレイヤースキルは、このゴッドゲームオンラインという世界において彼らを一騎当千の猛者たらしめている。
「さすがここまで残った熟練プレーヤー、みんな、すごい実力者だね。でも、相手は、攻撃前予備動作なし、攻撃後硬直なし、その上、ずっとスーパーアーマーでひるみなし」
アリスは彼らの強さに心から感心するが、同時にレイドボス『セフィロト・エクス・マキナ』のスペックも確認していた。プレイヤー達の猛攻を食らっても敵はほとんど体勢を崩さず、背面の魔力回路から次々に強力な攻撃魔法を乱発してくる。普通のボスなら攻略のために用意されているような隙が、こいつには一切存在しないのだ。
「さすがにこれはチートすぎるよ。さすがバグプロトコル」
クリアさせるつもりが全く感じられない、まともなクエストならクレーム待ったなしの理不尽ボスに、呆れとも感嘆ともつかない言葉を漏らすアリス。いくら実力者が揃っているとはいえ、こんなのと馬鹿正直にやり合っていたら生命が幾つあっても足りない。
「そっちがチートならこっちもチート能力を使わせてもらうよ」
そう言って彼女はおもむろにビー玉を投げ、【類推的手法による物質変換】を行う。オンラインゲームの世界という性質上、ここにある物質は全てデータだ。情報を分解・再構成することで他の物質に変換することなど、彼女にとっては造作もなかった。
「ぼくにかかれば、なんでも作れるよ」
アリスが投げたビー玉はプレイヤー達を守る防壁に変換され、セフィロト・エクス・マキナの【スターリー・トライアングル】を受け止める。普通ならどんな強固な材質であっても、このレイドボスの攻撃を防ぐことは不可能だろう。だが、直撃を浴びたはずの壁には傷ひとつ無かった。
「……なぜ? まさか、破壊不能オブジェクトを生成した?」
その光景を見て敵が推測した通り、アリスの作った壁はゲームの仕様として「破壊不能・効果無効オブジェクト」に設定されていた。何もかも攻撃などで壊せてしまうとゲームバランス的によろしくない事が起こるため、例えば町中の建物などはこの仕様になっているケースが多い。もちろん、本来ならプレイヤーが作成できるはずのない代物だ。
「なるほど、それは私にも壊せそうにありません。ですが、隠れているだけで私は倒せませんよ?」
「その通りだね」
破壊不能オブジェクトを目の当たりにしても、セフィロト・エクス・マキナは冷静だった。自分というレイドボスを討伐しようと思うなら、絶対に攻撃を仕掛ける必要があるのだ。そのためにプレイヤーが姿を晒す瞬間を、彼女が狙い撃とうとしているのは明白――それを分かった上で、アリスは壁から飛び出した。
「そこです……ッ?!」
即座に放たれた三角形型の閃光。だが、その攻撃が捉えたのはアリスではなく、彼女の前に展開された障壁だった。
なにも【類推的手法による物質変換】で作成するオブジェクトは一種類に限らない。別のビー玉を変換したそれは、敵の攻撃を反射する特性を有していた。
「高性能攻撃が徒になったね」
「しまッ……!!」
セフィロト・エクス・マキナの【スターリー・トライアングル】は、ダメージに加えて移動不能のバッドステータスを付与する魔法。アリスの反射障壁によって自らそれを浴びる羽目になった彼女は、空中でピクリとも動けなくなる。
「今だよ、みんなで総攻撃だ」
「よしきた!」「食らえオラァ!」
この隙を逃さず、アリスの号令に応じた一般プレイヤー達が襲い掛かる。多種多彩な近接・遠距離・魔法攻撃の嵐がセフィロト・エクス・マキナを捉え、膨大なヒットポイントを一気に削り取っていく。チートにはチートで対抗という見事な意趣返しにより、無敵のレイドボスは窮地に追い込まれつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファーラ・フォージマスター
やはりというか何と言うか、バグった高難度クエストってのは厄介だネ!
うちんトコはこうならないようにしないとな
ともあれ先ずはコレをどうにかしやくちゃだ
変…身ッッッ!(ユーベルコードを発動、巨大な竜の姿に)
有象無象には目をむけてくれるなよ、このファーラと相対しているのだからね!(いわゆるプロボーク……タゲ取りである)
では行こうか!まずはっ
(手始めにドラゴンブレスを浴びせつつ、一気に接近。そして……)
でもって喰らえッッッ!
(鏖殺巨鎚マスターズハンマー……重戦士のスキルを活かせるよう超重量になっているソレは、主の巨大化に伴い更に大きく重くなっている。
そしてソレを振るい、痛烈な一撃を叩き込むのがこの竜だ)
「やはりというか何と言うか、バグった高難度クエストってのは厄介だネ! うちんトコはこうならないようにしないとな」
ただでさえハードな内容から文字通り「殺しにきている」レベルになった、レイドボス『白き神』の暴れっぷりに肩をすくめるのはファーラ。クエストそのものがバグプロトコルに乗っ取られてしまうという今回の事態、エリアボスである彼女にとっても他人事ではない。管理者として今後は気をつける必要があるだろう。
「ともあれ先ずはコレをどうにかしなくちゃだ」
高レベルプレイヤーをクエストで大量虐殺されるのも、これまたボスキャラとして一大事。燦然たる輝きで猛威を奮う『セフィロト・エクス・マキナ』を前に、ファーラも今一度気合を入れる。先程は配下を率いるボスとしての側面を見せたが、今度はまた異なるボスの力を見せるとしよう。
「変……身ッッッ!」
掛け声と共にユーベルコードを発動したファーラは、全身を強靭なる外皮と業物の装甲で覆った【|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》に君臨せし竜】に変身を遂げる。そのサイズは人間形態時の身長のおよそ3倍に及ぶ、本来なら自エリアでのイベントクエストのラスボス戦で披露する最終形態である。
「有象無象には目をむけてくれるなよ、このファーラと相対しているのだからね!」
その形態で空に飛び上がり、堂々たる雄叫びで敵を威圧する。いわゆるプロボーク――タゲ取りである。このまま勝手気ままに暴れられては味方プレイヤーの被害が大きすぎる。あちらの目から見ても、突然戦場に出現した巨大ボスを放置できないはずだ。
「……優先排除目標を変更。アイン・ソフ・オウルを起動」
ファーラの狙い通り、セフィロト・エクス・マキナは彼女を強敵と認めた。背面に接続されたセフィロト型魔力回路が発光し、大技を発動する体勢に入る。おそらくは直線上の対象を一掃するビーム系の攻撃。避ければ後方にいる味方が犠牲になるが、もちろん彼女は真っ向から挑む構えだ。
「では行こうか! まずはっ」
白き魔神が魔力の奔流を放つのとほぼ同時に、赤き竜は渾身のドラゴンブレスを放った。鍛冶場の主たる彼女の吐息は、鋼鉄すら溶かし尽くす炉の炎。絶大な熱量が無限の閃光とぶつかりあって相殺し、花火のように火の粉が散った。
「でもって喰らえッッッ!」
間髪入れず、ファーラは全速力で敵に接近する。次の攻撃が飛んでくる前に、自分の得意距離の戦闘に持ち込んだ。
その手に携えしは「鏖殺巨鎚マスターズハンマー」。重戦士のスキル活かせるよう超重量になっているソレは、主の巨大化に伴いさらに大きく重くなっている。そしてソレを振るい、強烈な一撃を叩き込むのがこの竜だ。
「ッ……――!!!!!」
極めてシンプルな質量と怪力による攻撃。並みのプレイヤーがやってもこのバグプロトコルに大したダメージは与えられないだろうが、同じボスキャラのスケールで実行した場合どうなるか。オーバーフロー級の衝撃を叩きつけられたセフィロト・エクス・マキナは、言葉にならぬ悲鳴を上げて墜落していった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
無粋な輩の親玉が現れましたか
しかし私だけではこいつを倒すのは難しそうです…ならば助力を願うのが最適ですね
(一般ユーザーに近寄る)
申し訳ありません…実は私、戦闘職ではないのでボスを倒すほどの火力がないのです…
なのでボスの攻撃は私が防ぎますから全員で一斉攻撃を仕掛けていただけないでしょうか?
(肩幅ほどに足を開き、深く息を吐きながら全身の力を抜いた後{霹靂の旋律}で『ダンス』を始める)
この踊りですか?これはですね
(敵が攻撃をすると同時にUC【蠱の共犯者】で狙われたプレイヤーたちに次々とワープして旋律で生まれた『電撃』で敵の攻撃を相殺する)
迸る稲妻のように動き守るための踊りですよ
「無粋な輩の親玉が現れましたか」
過酷な現実から目をそらし、ひとときの冒険と幻想を楽しむためのゲームの世界。それを崩壊させようとするバグプロトコルの指揮官種――『セフィロト・エクス・マキナ』を、クロリアはじっと睨みつける。あれを撃破することで、このクエストはようやくクリアとなる。
「しかし私だけではこいつを倒すのは難しそうです……ならば助力を願うのが最適ですね」
元々このクエストはレイド戦。1対1では勝ち目のない敵を、仲間と力を合わせて攻略するのが肝だ。フィールド上には今も大勢の一般ユーザーが猟兵に負けじと奮闘を繰り広げており、クロリアはそのうちの一組に近寄っていった。
「申し訳ありません……実は私、戦闘職ではないのでボスを倒すほどの火力がないのです……なのでボスの攻撃は私が防ぎますから、全員で一斉攻撃を仕掛けていただけないでしょうか?」
「え、それって大丈夫なの?」「あいつの攻撃、バカみたいにどれもヘタすりゃ即死なんだけど」
戦闘職ではないプレイヤーが、あのレイドボスの攻撃を防いでみせるという。クロリアからの提案を一般プレイヤーは奇妙に感じただろう。レベルや装備を極限まで整えた廃人クラスの者達でさえ、セフィロト・エクス・マキナの攻撃はマトモに食らうと危険で、回避や防御を優先するしかなかったのだから。
「できます。ご覧ください」
しかしクロリアは自信ありげな口調でそう答えると、肩幅ほどに足を開き、深く息を吐きながら全身の力を抜いた。
深い脱力――その後、弾けるように始まるのは「霹靂の旋律」のダンス。瞬く間に広がる雷光と、心を怯ませる轟音を表現するように、全身を躍動させて舞い踊る。
「そのスキルは……?」
「この踊りですか? これはですね」
思わず見惚れるプレイヤー達の前で、クロリアが踊りの詳細を説明しようとした時。セフィロト・エクス・マキナが【マキナ・セフィラ】を発動する。背面のセフィロト型魔力回路から無限に供給される魔力を、美しき光の矢に変えて放つユーベルコード。その連射速度は機関砲すら凌駕する。
「排除します」
「ッ、やべぇ!」
ターゲットになったのはクロリアを含めた多数のプレイヤー。異常数値に設定された破壊の光が戦場へと降り注ぐ。
それを見た者達の表情が恐怖と焦燥に染まる――その刹那に、クロリアは動いていた。敵の攻撃を上回るスピードで彼らの元に|瞬間移動《ワープ》し、旋律から生まれた電撃で矢を相殺する。
「これは、迸る稲妻のように動き守るための踊りですよ」
「い、いつ動いたんだ?!」「すげぇ……!」
霹靂の旋律により発動したクロリアのユーベルコード【蠱の共犯者】の効果は二つ、ダンスの時間に応じた武器強化と、同世界上にいる任意の味方も元に出現するテレポート能力だ。敵がフィールド上のどこにいる味方を攻撃しても、彼女は瞬時にその場に駆けつけ、ガードできる。
「さあ、攻撃を」
「お、おう! 助かった!」「任せろ!」
ここまで身を張って守られておいて、何もしないではレイドクエストに参加した意味がない。プレイヤー達は各々の攻撃スキルを駆使して、ボスに一斉攻撃を仕掛けた。数千時間の経験の果てに到達した武技や魔法の数々が、セフィロト・エクス・マキナに突き刺さる。
「ヒットポイントが50%未満に……この私が、押されている……?」
プレイヤー達の総攻撃を受けてもなおセフィロト・エクス・マキナに大きな外傷はなかったが、内部的なダメージは確実に蓄積していた。高難易度クエストを乗っ取り、クリア不可能なレベルに到達したはずの自分が窮地に陥っている――ありえない事実に困惑しながら、魔力の矢を乱射する。
(虫けらの私でもこんなことができる。やはり仲間という存在は素晴らしいものです)
クロリアはその矢に狙われた者の元に次々とワープし、旋律の稲妻で撃ち落とす。フィールド全域を網羅する彼女の防御範囲に隙はなく、プレイヤー達も彼女を信頼して攻撃に専念している。猟兵と一般人の垣根を超え、同じクエストを攻略する仲間という絆で繋がれた一同の連携は、攻略不可能のレイドボスを地に墜とさんとしていた――。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
美人さんの裸に口笛ひとつ
スクショ撮っただろと廃プレイヤーどもに笑いかけるぜ
今度データ寄越せよな
へいお姉さん、こっちだと挑発しておびき寄せるよ
プレイヤーたちは援護射撃よろしく
後ろの回路を撃って射撃体勢を整えさせるなってな
トライアングルが着弾されちゃあ適わんので、飛んできた三角形を稲荷符で受け止め、結界術で包んでお空の彼方へと受け流すぜ
どっせーい、ってな
プレイヤーの援護射撃で隙が出来りゃ神鳴抜いて真威解放して飛ぶぜ
三角光はこうなったら神鳴で斬って捨てる
間合いに入ったら女の子と回路を繋ぐケーブルぶった切るとするよ
柔肌斬るような無粋はできねえや
こちとら生身なもんで…ゲーム中のただの敵とは割り切れんなー
「ひゅぅ。なあ、今スクショ撮っただろ」
「と、撮ってねーし!」「ウソつけ」
外見上は裸の美女のようにデザインされた『セフィロト・エクス・マキナ』の姿を見て、口笛ひとつ吹いたのは燦。
隣にいたプレイヤーをからかうと、そいつは顔を赤くして否定しながらも何かを隠す素振りをし、他のプレイヤーにツッコまれている。
「今度データ寄越せよな」
「ちっ。しゃーねえな、内緒だぞ?!」
危険なレイドボス戦の前にするような話ではないように思えるが、こういったやり取りが戦場の緊張をほぐすのだと彼女はよく知っていた(おそらく半分は趣味だが)。あくまでコレはゲームなのだと、楽しく陽気な気分にさせておいたほうが事故の防止になる。
「へいお姉さん、こっちだ」
いざレイドボス戦の火蓋が切って落とされれば、燦は率先して敵を挑発し、自分のほうに誘き寄せようとする。相手も猟兵という脅威を理解しているなら、この誘いを無視はできないだろう。機械のように冷たい視線が向きを変える。
「プレイヤーたちは援護射撃よろしく。後ろの回路を撃って射撃体勢を整えさせるな」
「オッケイ!」「任せろ!」
それに合わせて燦が指示を飛ばすと、月穹士を始めとする遠距離職プレイヤーが攻撃を仕掛ける。ダメージは心許ないが、集中砲火を浴びせれば多少の妨害にはなるだろう。敵の背面に接続された「セフィロト型魔力回路」が、矢弾や魔法を受けて微かに明滅する。
「無駄な足掻きです」
セフィロト・エクス・マキナは煩わしげに眉をひそめながら【スターリー・トライアングル】を発動。回路から供給される魔力を三角形型の光に変えて、ちょろちょろと足元を走り回る不埒者めがけて放つ。直撃すれば勿論大ダメージだが、このユーベルコードは着弾点から一定範囲の対象を移動不能状態にする追加効果もある。
「あんなのが着弾されちゃあ適わんので……どっせーい、ってな」
燦は飛んできた光の三角形を稲荷符で受け止め、炸裂しないように結界術で包んでお空の彼方へと受け流す。非常に繊細な技術が要求される行為を、彼女は汗ひとつかかずやってのけた。尋常な敵でないことはすでに分かっているが、対処しようが無いわけではない。
「構うな、撃ち続けな」
「お、おうっ!」
燦がボスの攻撃を凌いでいる間にも、一般プレイヤーの射撃はセフィロト・エクス・マキナを襲う。雨垂れが岩を穿つような積み重ねが、魔力回路に損傷をもたらし。その輝きが弱まった瞬間を捉えると、妖狐の剣士は愛刀を抜いた。
「御狐・燦が願い奉る。今ここに雷神の力を顕さん。神鳴――真威解放!」
天より刀に落雷を受け、痛みに耐えながらも、凛々しく煌びやかな戦巫女の装束へと変身する。これぞ【真威解放・神鳴】の力。紫電を帯びた天女の羽衣は稲妻の如く空を翔ける力を与え、紅雷の神刀は立ちはだかる全てを断ち切る。
「形態変化……?! いえ、その程度で……ッ!」
セフィロト・エクス・マキナは再度【スターリー・トライアングル】を発動するが、体勢不十分のまま発射した光は燦の神鳴に斬って捨てられる。そのまま彼女は猛スピードで飛翔し、敵との間合いを一気に詰めると、刀を振るった。
「ッ……? なに、を」
「柔肌斬るような無粋はできねえや。こちとら生身なもんで……ゲーム中のただの敵とは割り切れんなー」
紅雷一閃。燦がぶった斬ったのはセフィロト・エクス・マキナ本体でなく、彼女と魔力回路を繋ぐケーブルだった。
せっかくの美人さんに傷を付けるのは彼女の心情に反するか。しかし仕事のほうはきっちり果たす。回路との接続を切られたレイドボスの|魔力《MP》回復速度は大幅に低下し、これまでのような魔術の乱発は困難となるだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
こういう多数での戦闘ではバフ、デバフが有効というもの。
奴の攻撃でプレイヤーに被害が拡がった頃を見計らってUCで治療、強化を施す。
刺剣を手に先頭へ躍り出れば皆に呼びかけ奮起させる。
白く美しい姿が壊れる様もまた美しい。さあ、貴公の血は何色かな?
「こういう多数での戦闘ではバフ、デバフが有効というもの」
自分たち猟兵だけでなく、大勢の一般プレイヤーが入り乱れてたった1体の強敵に挑む、熾烈なレイドボス戦の戦場を眺めてネフラは微笑む。一対一の生命のやり取りや、雑兵の血の花を咲かせる戦いも好みだが、このような多対一の戦闘の心得も当然彼女は知っている。
「ヒットポイント残量40%……セフィロト型魔力回路に異常……これ以上、お遊びに付き合う暇はありません」
戦況はプレイヤー側の優勢だが、バグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』もまだ余力を残している。回路から引き出した魔力を三角形型の光のエフェクトに変え、プレイヤーの密集しているエリアに解き放つ――広範囲攻撃型ユーベルコード【スターリー・トライアングル】だ。
「やべ……食らっちまった!」「早く回復ねえと、次が来るぞ!」
着弾したユーベルコードの光は爆発的に拡散し、周辺にいた者達にダメージと移動不能の状態異常を与える。レイドボスの前で足を止めることは、限りなく死と同義だ。巻き込まれてしまった一般プレイヤー達の表情に焦りが浮かぶ。
「さあ、鋭利なる力を与えよう」
その時、彼らの元にキラキラと輝く結晶が飛んでくる。味方の治療と強化を同時に行う、ネフラの【クリスタル・エンチャント】だ。結晶は接触したプレイヤーの傷を癒やし、さらに装備中の武器に包み込むことで性能を向上させる。
「反撃の時だ、諸君」
勿論ネフラ自身の装備にも【クリスタル・エンチャント】は付与されている。結晶を纏った「血棘の刺剣」を手に、先頭へと躍り出た彼女は、軽やかなステップでセフィロト・エクス・マキナとの間合いを詰め、鋭い一刺しを見舞う。
「うっ……!!」
攻撃がヒットした瞬間、刃に付与されていた結晶が爆発し、鋭利な無数の破片を飛ばす。傷口を抉られる痛みに敵が微かなうめき声を漏らし、体勢を崩す――やはり、余裕があるように見えてもダメージは蓄積しているのだ。刃から伝わる手応えがそれを教えてくれる。
「見ろ。もう一息で奴は斃れるぞ」
「効いてる……!」「よっしゃ、行くぞ皆!」
ネフラが己の戦果をもって呼びかければ、それを聞いた皆も奮起する。爆裂結晶を纏った剣で、斧で、槍で、矢で、次々に叩き込まれる攻撃。そのたびに爆散する結晶片は美しくも危険な刃となり、レイドボスにダメージを刻みこむ。
「白く美しい姿が壊れる様もまた美しい。さあ、貴公の血は何色かな?」
「ッ、冗談では……くぅッ!!?」
羊脂玉の剣士は常に戦いの最前線に立ち、敵とダンスを踊るように華麗なる剣戟を魅せる。結晶刃にて抉られたセフィロト・エクス・マキナの肌からは、つうと深紅が流れ落ち――ゲームとはいえなかなかの再現度だと、彼女は笑みを深めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
バグに乗っ取られているとはいえ元はゲーム
その設定を毛嫌いするのもナンセンスだね
まぁ…やる気が出てきた、という事にしておこうか
希望を掲げて未来を謳う、閃風の舞手がお通りだ!
【絶演】発動し六翼備えた真の姿の《封印を解く》事でオーバーロード
放つ雷狼は《追跡+狩猟+誘導弾》の性質を持つ《神罰+属性攻撃+蹂躙+爆撃+弾幕》さ
《戦闘知識+第六感》併用して敵の動きを《見切り》先読み、
《空中戦》機動力も活かし3倍以上の効率で焼き払えば
敵UCの《カウンター》誘爆迎撃に留まらず活路を開くには充分だろう
こうして《覇気+勝者のカリスマ》をアピールする攻防の傍ら響かせる《歌唱》で
プレイヤー諸君を《|誘惑《魅了》+鼓舞+ドーピング》強化して支援、
共演者のお手並み拝見といこう
扇動した味方が前面に出たところで雷狼は一度彼等を《庇う+護衛》にシフト
敵の注意が分散し隙が出来れば足を止め、攻撃速度3倍に切り替えて焼き尽くすよ
神を騙る|作り物《ゲーム》風情が未来を閉ざすとは片腹痛い
|やられ役《エネミー》の身の程を知るがいいさ!
「バグに乗っ取られているとはいえ元はゲーム。その設定を毛嫌いするのもナンセンスだね」
停滞と管理を是とする白教の崇拝する神、『白き魔神』として降臨したバグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』。その教義はあくまでゲーム内の設定とはいえ、自由と進歩を好むカタリナの信条的には好ましくはない。口では割り切ったことを言っても、若干の不満が滲み出ている。
「まぁ……やる気が出てきた、という事にしておこうか」
ゲーム内においても白教は完全な敵対勢力に設定されている。であればプレイヤーの1人として自分が奴らをぶちのめすのは何の問題もない。鋭い目つきで上空のレイドボスを睨みつけながら、彼女は【絶演:殲殺猟群】を発動した。
「希望を掲げて未来を謳う、閃風の舞手がお通りだ!」
高らかな叫びとともにカタリナの背には六枚の翼が広がり、魔神"暁の主"の力を顕現した真の姿の封印が解かれる。
|超克《オーバーロード》に至った彼女は翼持つ蒼雷の狼を呼び出し、上空のレイドボスめがけて放つ。これらは標的を自ら追跡する誘導弾の性質を備えた、神罰を体現する眷属たちだ。
「未来などありません。あなた達はここで|消去《デリート》します」
対するセフィロト・エクス・マキナは【スターリー・トライアングル】を発動。セフィロト型魔力回路から三角形型の光を放ち、雷狼の群れを吹き飛ばす。直撃を免れた場合でも、着弾点から拡散する光を浴びた狼は、移動を封じられそれ以上進めなくなった。
「"天征く翼は我が矜持。猛る爪牙は我が瞋恚。屠神の蒼雷が沙汰を下す――地に伏し罪を悔いるがいい"」
しかしカタリナもここで『白き魔神』に負けるのはプライドが許さない。その魂が折れぬ限りは雷狼の射出が止まることはなく、誘爆上等で敵のユーベルコードに激突して焼き払う。自身に対する攻撃だけでなく、経験と第六感を活かして敵の動きを先読みし、全ての攻撃を迎撃するつもりだ。
「すげえな、あいつ……!」「ああ、やってくれるぜ!」
レイドボスにも負けない派手な能力を披露し、レイドボスと互角に立ち回るカタリナの勇姿は、他のプレイヤーにも注目される。空を見上げれば華麗に飛翔しつつ歌声を響かせる、六翼の女神が目に入るだろう。これは覇気とカリスマをアピールする演出の一貫であり、魅了と鼓舞によるドーピング――一種のバフ効果も伴っていた。
「共演者のお手並み拝見といこう」
「おう、やってやらあ!」「よーく見てろよ!」
カタリナの支援と扇動を受けたプレイヤーたちが、開かれた活路を通じて前線に飛び出していく。彼らもこのクエストに参加するに足る実力を持ったベテランであり、最高の装備とステータスから繰り出される攻撃スキルはバグプロトコルにも通用する。
「有象無象が、調子に乗って……!」
セフィロト・エクス・マキナは【スターリー・トライアングル】で邪魔なプレイヤーを一掃しようとするが、閃光が放たれる瞬間、割り込んだ雷狼の群れが彼らをかばう。味方が前に出た時点でカタリナは戦法をシフトし、護衛と援護を優先していた。
「ここからはアタシ達の独壇場だ」
「食らえッ!」「オラァ!!」
「くっ……!」
上空からは雷狼の群れが、地上からは廃プレイヤーのパーティが、相互に連携してレイドボスを攻め立てる。その全てに対応するためにセフィロト・エクス・マキナの注意は分散させられる。そこに生じる隙をカタリナは見逃さない。
「神を騙る|作り物《ゲーム》風情が未来を閉ざすとは片腹痛い」
空中で足を止めて六翼を大きく広げれば、雷狼の射出速度が増す。機動力を引き換えに瞬間火力を強化する構えだ。
これまでの3倍に迫る速度で放たれる狼の群れは、蒼き牙を剥き出しにして偽りの魔神に襲いかかり、食らいつく。それは、不遜なる者を焼き尽くす雷そのものだ。
「|やられ役《エネミー》の身の程を知るがいいさ!」
「ぐっ、がぁぁぁぁァァァーーーッ!!!?!」
蒼き雷狼によってその身を焼き焦がされ、たまらず絶叫するセフィロト・エクス・マキナ。いかに強大なレイドボスと言えども、全てのエネミーはプレイヤーに倒されるためにいるのだ。その宿命を厳然と突きつけるように、カタリナの攻勢は緩むことなく――攻略不能の理不尽クエストに、エンドマークが打たれる時が迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵
エメラ・アーヴェスピア
周囲の味方を守りつつ相手に対処する…また大変な事になりそうね
…いいわ、やるべき事は決めた、私にしか出来ない事をやりましょう
ここがゲームの世界というのなら、一応通じるとは思うのだけれど…
まずは『CODE:Observer』で周囲のモンスターを全て【情報検索】、【情報収集】
そしてその情報を元に『CODE:Predator』による【ハッキング】よ
ボスは無理でも周りのモンスターは別の筈
ハッキングしたモンスターを使ってボスや他モンスターの攻撃の壁にしたり同士討ちさせたりするわよ
最悪、モンスターの攻撃力を落とせればそれだけで格段にプレイヤーは楽になるでしょう
制御の奪い合いになるのなら【瞬間思考力】を全力で回して対処
逆に余裕があれば情報を元に【情報伝達】で他のプレイヤー達に危険になっているプレイヤーの位置を伝えてカバーに入ってもらうわ
相手側が開発側じゃなかったのが幸いね、こうやって問題なく戦える
さぁ、実際に戦うプレイヤー達の裏側で、私達の戦いを始めましょうか、バグプロトコルさん?
※アドリブ・絡み歓迎
「周囲の味方を守りつつ相手に対処する……また大変な事になりそうね」
どちらかではなく両方を成し遂げなければならないのが、ただでさえ難しいクエストの難易度を高めている。それが猟兵の務めとはいえ楽ではないと、エメラは小さく溜息を吐いて上空の『セフィロト・エクス・マキナ』を見上げた。
「……いいわ、やるべき事は決めた、私にしか出来ない事をやりましょう」
ヘッドセットを被り直して、立体映像のウィンドウを周囲に表示。ここまでは魔導蒸気技士としての面を見せてきたが、彼女にはもうひとつ電脳魔術士としての顔がある。元UDC所属の情報戦要員としての腕前、今こそ披露する時だ。
「ここがゲームの世界というのなら、一応通じるとは思うのだけれど……」
エメラはまず【CODE:Observer】を起動し、情報収集用プログラムによる迅速な調査と解析を開始。このフィールド周辺に残存するモンスターの所在を確認すると、その情報を元に【CODE:Predator】を追加起動――遠距離ハッキングによる操作を試みる。
「ボスは無理でも周りのモンスターは別の筈。その制御、貰うわよ」
「なっ……バカな!」
0と1のプログラムで構成されたモンスターなら、彼女に支配できないはずがない。それは本来配下のコントロールに長けた指揮官種である、セフィロト・エクス・マキナのお株を奪う行為だった。先程まではプレイヤーの脅威となっていた魔物たちが、お互いに牙を向けて同士討ちを始める。
「役に立たないどころか、足手まといになるとは……度し難い!」
苛立ちを隠せぬ様子で【マキナ・セフィラ】を放つセフィロト・エクス・マキナ。セフィロト型魔力回路から供給される無限の魔力が、無数の矢となって戦場に降り注ぐ。だが、それらの大半はエメラが制御を奪ったモンスターの群れが受け止め、プレイヤーへの被害は少ない。
「なんだ? モンスターが守ってくれた……?」「バグかな? まあいい!」
状況を把握しきれないプレイヤーたちから見ても、これはチャンスに違いなかった。モンスターの壁がボスの攻撃をガードしている隙に、スキルや魔法による総攻撃で一気にボスのヒットポイントを削る。このクエストに参加できるだけの実力を備えた者たちであれば、与えるダメージも無視できないレベルだ。
「くっ……制御を取り戻せない……!」
セフィロト・エクス・マキナ自身も被ダメージの蓄積により万全ではない時に、多数のプレイヤーに攻められれば、対処のリソースを回さざるをえない。エメラからモンスターの制御を奪い返すほどの余裕はなく、苦しい状況に立たされていた。
「そこの貴方、近くにいる戦士さんの体力が残り少ないの。座標をマークするから助けてあげてくれるかしら」
「わかった、すぐに回復する!」
逆にエメラのほうは制御権の維持に思考力を費やしても、まだ他のことを気にかける余裕があった。このフィールドの情報は常にモニタリングしており、危機に陥っているプレイヤーがいればすぐに分かる。他のプレイヤーにその位置を伝え、カバーに入ってもらう――こうした情報伝達やオペレーターとしての仕事も、彼女の得意分野のひとつだ。
「相手側が開発側じゃなかったのが幸いね、こうやって問題なく戦える」
どれだけ強大な力を持っていても、相手はあくまで世界に潜り込んだバグ。ゲームデータとしては破格のスペックを誇っても、電子戦・情報戦における強さとイコールではない。対するエメラにはこれまでにも数々の異世界のシステムに触れてきた経験と実績があり、口元には自信の笑みが浮かんでいた。
「さぁ、実際に戦うプレイヤー達の裏側で、私達の戦いを始めましょうか、バグプロトコルさん?」
「ッ、調子に乗るな、人間風情が……!!」
挑戦とも取れる発言に憤るセフィロト・エクス・マキナだが、プレイヤーの対処に追われている間に、いつの間にかモンスターデータへの|接触《アクセス》さえブロックされ、完全に制御権を奪われつつあった。主を変更された魔物の群れは、エメラの意のままにプレイヤーを守る盾となり、時には剣にもなってレイドボスに牙を突き立てた。
「これが私にしか出来ない事、よ」
オンラインゲームの世界という新たな舞台で、自らの特技を遺憾なく発揮したエメラ。その"戦闘内容"を理解する者は少ないが、レイドボス攻略において欠くべからざる功績を彼女は残していた。全ての配下を失い、裸の王様となったボスに、プレイヤー達の攻撃が浴びせられる。
「ヒットポイント残量、10%……この私が、負ける……?!」
理論上は負けるはずのない戦いが、想定を超える事態へと転げ落ちていく。セフィロト・エクス・マキナはその事実を処理しきれぬまま驚愕の表情を見せる。膨大にあったヒットポイントも残り僅かとなり、決着の時はもはや目前だ。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
修正か…フン
修正されるべきは、お前のようなバグプロトコルだろう?
シルコン・シジョンとシガールQ1210を装備
2丁の拳銃による一斉発射で敵を攻撃
常に敵を観察して、アイン・ソフ・オウルによる魔力の奔流の予兆を感じたら即座に横移動による回避を行う
君達にも手伝ってもらおうか
なに、弾幕ゲームに比べればこれぐらい楽勝だろう?
参加プレイヤーには魔力の奔流は直線状にのみ放出する単純な動きである事を伝え、自分が見せた避け方を参照にしてもらい攻撃に参加してもらう
狙いはコアの耐久力だ
四方から断続的に攻撃を受け続ければ反撃をせざるをえまい
私は直撃を受けそうなプレイヤーを抱えて横に飛び退けたり強力な銃弾の攻撃でヘイトを自分に向けたりと人的被害が出ないようにサポートしよう
さぁ、踊ろうか
un、deux…trois!
四方からの攻撃で持続的な放出を誘い、コアの耐久力を消費させたらUCを発動
魔力の奔流を見切りで避けながら連撃を次々と撃ち込んでいく
初レイドボスがこれとはな…
やれやれ、運営に苦情を入れておくか
「修正……至急修正しなければ……」
「修正か……フン。修正されるべきは、お前のようなバグプロトコルだろう?」
ゲーム環境を乱している張本人がなにを抜かすのかと、舌鋒鋭く言い返すのはキリカ。熟練プレイヤーのために用意された高難易度クエストを勝手に改変し、クリア不可能にするなど許される所業ではない。|遺伝子番号《ジーンアカウント》を失う人間が出る前に、早急に討伐してくれよう。
「私が、お前達を待つ|Désespoir《絶望》だ」
決め台詞とともに咆哮を上げる「シルコン・シジョン」と「シガールQ1210」。秘術と秘蹟で強化された2丁の拳銃による一斉発射が、バグプロトコル『セフィロト・エクス・マキナ』を襲う。その火力がこのゲーム内でも有効であることは、すでにクエスト中に実証済みだ。
「黙れ……黙りなさい!」
もはや神を気取るだけの余裕もないのか、銃撃を浴びたセフィロト・エクス・マキナは怒号を上げて【アイン・ソフ・オウル】を発動。もはや耐久限界寸前のセフィロト型魔力回路から強引に魔力を引き出し、眼前のプレイヤーどもを一掃せんとチャージ体勢に入る。
「バグでも自分の"死"が迫れば焦るのだな」
冷静に敵を観察していたキリカは、攻撃の予兆を感じると即座に横方向へ飛び退く。直後、偽りの魔神から放たれた膨大な魔力の奔流が、ビームのように彼女のいた場所を突き抜けていった。直撃を食らえば猟兵でも無事では済まない威力だろう――しかし、当たらなければ意味はない。
「君達にも手伝ってもらおうか なに、弾幕ゲームに比べればこれぐらい楽勝だろう?」
「なるほど、そうやって避けるのか」「だったら、いける!」
キリカが実際に避け方を実演し、魔力の奔流は直線状にのみ放出する単純な動きであることを伝えると、他の参加者もそれを参照するようになる。流石は高難易度クエストに挑戦するような廃プレイヤー、一度例を見れればそれで十分だったらしく、完璧にパターンを見切って回避してみせる。
「食らいなっ!」「とりゃー!」
「ッ……ただのプレイヤー風情が……!」
回避パターンが組めれば次は反撃だとばかりに、廃プレイヤーの集団は攻撃にも参加する。数千時間をかけて鍛え上げられた武技や魔法の数々が、セフィロト・エクス・マキナの残り少ないヒットポイントを削る。脅威となるのは猟兵だけではない事実を突きつけられ、ボスの表情に焦りが浮かんだ。
(狙いはコアの耐久力だ。四方から断続的に攻撃を受け続ければ反撃をせざるをえまい)
ここまでに蓄積されたダメージでセフィロト・エクス・マキナの魔力回路は限界に近いはず。そこに過負荷をかけてコアを機能停止させるのがキリカの目論見だった。そのためにも一般プレイヤーとの連携は重要だったのだが、彼らは期待以上の働きをしてくれている。
「私も負けてはいられないな」
彼女は常に敵の動きを観察し続け、的確な対応で人的被害が出ないようにサポートする。味方が敵意の矛先を向けられたなら銃撃でヘイトを自分に向けさせるなど、レイドボス攻略の定石に則った戦法も見事なものだ。プレイヤーとの連携も呼吸が合っている。
「削除です、削除しなければ……抹消を、破壊を、修正を!」
「っ、ヤバ……?!」
いよいよ絶体絶命の窮地に立たされたセフィロト・エクス・マキナが、【アイン・ソフ・オウル】の放出を続けながら出力を上げる。これまでの数倍の規模はあろうかという魔力の奔流、その攻撃範囲を読み違えたプレイヤーがあわや呑み込まれそうになるが、駆けつけてきたキリカのおかげで辛くも難を逃れた。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとう、助かったよ……!」
窮地のプレイヤーを抱えて奔流から間一髪飛び退く、その勇姿が拡散されればゲーム内でファンが増えそうである。
しかし、そんなことよりも今は気にすることがある。渾身の一撃を躱されたレイドボスの様子がおかしいのだ。背面の機械がガガギギと異音を立てて、ぷつりと光を失う――ついにコアの耐久力が限界に達したようだ。
「さぁ、踊ろうか。un、deux……trois!」
作戦は成功し、敵は攻撃のための重要な機関を喪失した。間髪入れずにキリカは【Danse des Papillon】を発動し、二丁拳銃を連射しながら標的に駆け寄っていく。コーラスのような銃声とともに放たれる銃弾が、無防備となったボスの装甲を突き破る。
「ッ、わ、私は、まだ……!」
「いいや、貴様はここで終わりだよ」
続け様に近距離からの銃弾が、標的を空から撃ち墜としてダウンさせ。至近に迫ったキリカは流れるように隙のない所作で「ナガクニ」を抜く。極めてスムーズに行われた連撃の最後は、その短刀による必殺の一撃で締めくくられた。
「ヒットポイント、0%……想定外、想定外……修正、しっぱ、い……」
龍の刃にて首を刈り取られたセフィロト・エクス・マキナは、信じられぬといった表情のまま大地に崩れ落ちる。
その発言にかかるノイズが大きくなり、肉体は0と1のデータに分解され、最後には跡形もなく消滅する。同時に、全ての猟兵とプレイヤーの視界には「クエストクリア!」の文字が踊った。
「初レイドボスがこれとはな……やれやれ、運営に苦情を入れておくか」
肩をすくめながらキリカが銃と短刀をしまった直後、プレイヤーたちから割れんばかりの歓声が上がる。それは支払われた大量の経験値やトリリオンに対するものだったり、純粋にスリルある戦いに勝利した喜びでもあったりするが、過酷なクエストを乗り越えた達成感は、みなに共通するものだった。
こうして、猟兵達は攻略不可能となったバグプロトコル製のレイドクエストを攻略し、多くのプレイヤーを救った。
正常化されたクエストはその後「普通の」高難易度クエストとして再開され、負けても遺伝子番号が焼却されることはない。いまだ不穏の種を潜ませながらも、ゴッドゲームオンラインは今日も絶賛運営中だ――。
大成功
🔵🔵🔵