【初心者クエスト】GGOの世界へようこそ!
「ゴッドゲームオンライン―—その名の通り、オンラインゲームそのものの世界だなんてまた奇妙な世界が発見されたね。まぁ、奇妙なのはこの世界に限った話じゃないけれど。さて、そんな新世界も例に漏れず此処ではバグプロトコルと呼ばれてるオブリビオンの脅威に曝されてる訳なので早速お仕事のお時間です」
少しソワソワした様子で彼女……星凪・ルイナ(空想図書館司書補佐・f40157)が口にした新たに見つかった世界『ゴッドゲームオンライン』は|統制機構《コントロール》と呼ばれる未だ素性が分からない世界における究極のオンラインゲーム――通称GGOと呼ばれるその名の通り、オンラインゲームの世界だ。中世ファンタジー世界を基本としたゲームだがその高すぎる自由度からゲームプレイヤー達によって様々な要素が次々と無秩序に追加されているらしい。
「ただのゲームなら良かったんだけど……バグプロトコルに倒されると現実世界での人権を失うだなんてとんだデスゲームだよね。という訳でこのバグプロコトルからこの世界のゲームプレイヤーを守るのが今回のキミ達のお仕事って事だね」
ルイナはまだ新しい資料に目を通しながら今回の事件の説明を始める。予知された事件の内容としてはGGO内の『初心者クエスト』――それらをバグプロコトルが破壊し、初心者プレイヤー達を襲撃し|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却してしまうというものだ。幸い、初心者クエストにレベル制限などは存在しない為、誰でも参加できる状態なのでそこに猟兵達が|出現《ログイン》しバグプロコトルから初心者プレイヤー達を守るのが今回の目的だ。
「今回はきっとバグプロコトルが初心者プレイヤー達を襲撃している現場に直接転移する事になるだろうから颯爽と戦いに乱入してサクッとバグプロコトルを倒して彼らを救ってあげてね。その後だけど……まだクエストは終わりじゃないしせっかくだから攻略の手助けをしてあげて欲しいかな。彼らも普通の敵モンスターぐらいなら十分相手に出来るだろうし、せっかくゲームを始めたんだから良い思いをさせてあげないとね?――ああ、もちろんバグプロコトルはいつまた襲ってくるか分からないから最後まで油断しないでくださいね」
目を通していた書類を整理して机に置くと、ルイナは猟兵達にチラリと視線を送り、ふっと息を吐くと転送の準備を始める。
「ゲームの世界とは言え、生身で乗り込む以上危険な事に変わらないのはアレだけど……ゲーム内通貨が現実世界でも使えるなんて羨ま……ううん、なんでもないよ。新しい世界で情報も殆どない状況だけどキミ達ならきっと上手くやれる筈。それじゃ、GGOの世界へいってらっしゃい」
視界が白く染まる――ノイズが奔る――電子の海を漂うような感覚の後、何かゲーム音のような音楽が響いた気がした。
鏡花
いつもお世話になっております鏡花です。
ゲーム内通貨が現実でも使えるなんてなんて素晴らしい世界なんでしょう……ディストピアである事に目を瞑れば。という訳で新世界シナリオです。
1章(集団戦)
初心者プレイヤー達が『サルファーゴースト』の集団に襲撃される場面から開始となります。
サルファーゴーストは浮遊するゴーストタイプモンスターで本来であれば初心者でも問題なく倒せる相手ですがバグプロトコル化した影響で異様にしつこくなり仲間を呼び寄せる面倒なモンスターとなっています。
【初心者プレイヤー救助】に関する行動にプレイングボーナスが発生します。
2章(冒険)
初心者プレイヤー達に同行しクエスト攻略の為、クエストボスの待つダンジョンを攻略します。
が、こちらもバグプロトコルの影響でバグが発生し理不尽な即死トラップが跋扈する魔境と化しております。
床から飛び出す棘トラップや、何も無い空間から放たれる理不尽射出トラップ。なんの前兆も無く体力が奪われる見えない毒ガストラップ。古典的な大岩や吊り天井とトラップ祭りの上、通常の敵モンスターも出現する為、せっかくなので初心者達に花を持たせつつ突破してください。
【トラップ対策】【初心者プレイヤーへのアドバイス】等の行動にプレイングボーナスが発生します。
3章(集団戦)
ダンジョンの最奥部で待ち構えるボスモンスター戦ですが、ボスモンスターは正常の敵キャラの為、初心者達に主力になって貰い、猟兵達はその周辺に蔓延るバグプロトコル『アマルガムビースト』の排除を行ってください。アマルガムビーストは探索範囲と素早さ能力に優れた凶暴性の高い異形の四足獣です。
【初心者プレイヤー達がボス戦に専念できる立ち回り】等の行動にプレイングボーナスが発生します。
それでは新しい世界での冒険をお楽しみください!
第1章 集団戦
『サルファーゴースト』
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POW : ゴーストスクワッド
対象の周りにレベル×1体の【小さなサルファーゴースト群 】を召喚する。[小さなサルファーゴースト群 ]は対象の思念に従い忠実に戦うが、一撃で消滅する。
SPD : アンラック・フラッシュ
【全身 】から、物質を透過し敵に【不幸】の状態異常を与える【冷たい輝き】を放つ。
WIZ : 呪う亡霊
自身が触れた物体ひとつに【悪霊 】を憑依させ、物体の近接範囲に入った敵を【呪詛】で攻撃させる。
イラスト:リュイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「手を貸すぜ!ルーキー達!!
焼き尽くせ!スプリット・スピア・バースト!!」
UCによって大量に創造した炎槍を全て投擲
着弾と同時に大爆発してサルファーゴースト達をなぎ払う
オレの炎は灼く対象を選べるからな
初心者達には全く影響を与えないぜ
明らかに世界観を逸脱した[存在感]
あからさまなイレギュラーでありオレに戸惑うだろう
なので、一瞬マスクを外して顔を晒して笑みを浮かべる
「安心しな!オレはキミらの味方、ヒーロー“ブレイザイン”だ!
困っている人を助けるのは当たり前だぜ!
さあ、まだ敵はいる!気を抜くなよ!」
炎剣を両手に創造して一気に駆け抜ける
一騎当千の働きでこの状況を打破するぜ!
シャムロック・ダンタリオン
ふん、今度の世界はゲームの中ときたか。なんとも不思議な感触よ。
それにしても、現実世界の方は超管理社会ときたか。これならば暗黒メガコーポに支配されたサイバーザナドゥの方がまだ暮らしやすいな(【世界知識・情報収集】)。
――さて、ではとりあえず、初心者プレイヤーの援護といこうか。
光属性の精霊を【武器改造(+:攻撃回数、-:移動力)】したガトリングガンで分身ごと【なぎ払い、蹂躙】してやるか(【属性攻撃・弾幕】)。
あとは【存在感】を示しつつ敵をひきつけ――何、この武器が気になるのか?悪いがこれは自前でな、僕以外には扱えんかもしれぬぞ?(ぇ)
※アドリブ・連携歓迎
――――ID認証
――――情報転送
――――ログイン完了
『GGOの世界へようこそ』
そこには澄み渡る青空と一望無垠の広大な緑の大地の境界線が視界いっぱいに伸びている。ゲームの中の世界とは到底思えないその臨場感――右手に書物を抱えた少年。シャムロック・ダンタリオン (図書館の悪魔・f28206)は興味深げにその光景を眺めていた。
「ふん、今度の世界はゲームの中ときたか。なんとも不思議な感触よ。――それにしても、現実世界の方は超管理社会ときたか。これならば暗黒メガコーポに支配されたサイバーザナドゥの方がまだ暮らしやすいな」
知識を司る悪魔であるシャムロックは事前にこの世界の成り立ち。そして表裏一体の存在――もしくは暗部とも呼べる|管理機関《コントロール》の事を一通り調べ上げて来た。この美しい景色の裏側――ある意味では表を取り巻く劣悪な環境に彼は皮肉を込めて苦笑する。そんな彼の肩にポンと何者かの手が置かれた。
「この世界の闇は想像以上に深そうだな。――俺たちが今出来る事は目の前で助けを求める人達に手を伸ばす事だけだ。さぁ、行こうぜ!」
そう言って晴れやかに笑う真紅の|機械鎧《超鋼真紅ブレイザイン》を纏う青年。空桐・清導 (ブレイザイン・f28542)が真っすぐに視線を向けるその先には、今まさにバグプロコトルの群れに襲われようとする初心者プレイヤー達の姿があった。この世界の事情は分からない事が多すぎる。然し、それでもハッキリと分かる事はある。それは彼らが助けを求めているという事。そして清導はそんな彼らを助ける為にこの場所に立っているという事だ。
「おっと、不味いな。俺は一足先に助けに向かうとするぞ!」
清導はシャムロックにグッとサムズアップをすると颯爽と駆けだしていく。そんな清導の背中を見送りながらシャムロックはフッと笑うと、その後を追いかけるように走り出す。
「それもそうだな――さて、ではとりあえず僕も彼らの掩護といこうか」
その刹那、初心者プレイヤーの一団とバグプロコトル――白いドレスを身に纏う幽玄の花を思わせるサルファーゴーストの群れが接敵し、瞬く間にその数を増やして彼らを包囲する。その圧倒的な数を前に初心者プレイヤー達は瞬く間に総崩れとなり騒然となった。
「どうなってるんだ!?これは初心者向けのクエストじゃなかったのかよ!?」
「敵が多すぎる!こんなの敵う訳が無い!」
逃げ惑う事しか出来ない初心者プレイヤー達がバグプロコトルの餌食になるのは時間の問題――そう思われた瞬間。そこに紅い影が飛び込んできた。
「手を貸すぜ!ルーキー達!!焼き尽くせ!スプリット・スピア・バースト!!」
その言葉と共に熱く燃え盛る数多の槍が降り注ぐ。サルファーゴーストを貫き、地面を穿てばその全てが激しい閃光を放ち起爆する。その暴れ狂う炎の渦はこの乱戦状況の中で的確にサルファーゴーストだけを灼き払う。――バーニング・クリエイション。清導が腕部に燃え盛らせた炎が生み出した炎槍は瞬く間にサルファーゴーストの群れに大打撃を与えた。
「どうやら間に合ったようだな!怪我は大丈夫か!」
突然の事に逃げ惑う事すら忘れ呆然と立ち尽くしていた初心者プレイヤー達の前に彼らを庇う形で清導が爽快に降り立つ。だが、サルファーゴーストの群れはその数の理を活かし清導ごと数で飲み込まんと左右から展開し距離を詰め包囲を試みる――が、それは後方から飛来した光弾に阻害される。容赦なく降り注ぐ弾幕は次々にサルファーゴーストを撃ち抜き消滅させていく。清導がその光弾の飛来した方向に視線を向ければそこには黄金のガトリングガンを構えたシャムロックが悠然と立っている。――|精霊武装《エレメンタル・ウェポナイズ》。召喚せし精霊を宿らせ変化させた神秘の輝きを纏う武装をその手にシャムロックが不敵な笑みを浮かべている。
「流石にこの数の相手は骨が折れると思ってた所だ!助かったぞシャムロック!」
「やれやれ、この大軍相手に単身大立ち回りをしようなどとは勇敢と言うべきか、無謀と言うべきか……だが、まぁ貴様が全部片づけてしまいそうな勢いだったのでな。出番を全て奪われては敵わんからこちらも手を出させて貰ったぞ」
「ははっ!ならしっかり手伝って貰うぞ!」
軽口を叩き合う二人を初心者プレイヤー達は困惑と……そして羨望を浮かべながら見つめている。
「す……すげぇ……何者なんだ?」
「もしかしてこれって戦闘イベント?」
「このクエストバグっちゃってるみたいだし運営……それともこれもバグの一種なのかな?」
未だ状況が把握しきれずに戸惑う新人プレイヤー達の様子に気が付いた清導は、彼らを安心させるべくマスクを外し笑みを浮かべるとグッとサムズアップをしてみせる。威圧感のある全身鎧の姿から人間の顔が覗かせられた事に新人達は少し安心したのか僅かに表情が和らいだ。
「安心しな!オレはキミらの味方、ヒーロー“ブレイザイン”だ! 困っている人を助けるのは当たり前だぜ!さあ、まだ敵はいる!気を抜くなよ!
新人らを鼓舞し、再びマスクを被ると両腕に真っ赤な炎を燃え盛らせ二振りの炎剣を作り上げる。
「随分と血気盛んな事だな。さて、では僕の方ももう一仕事させて貰うとするか。さぁ新人達よ。戦わねば勝てぬぞ?僕が援護してやる、存分に腕を振るうが良い」
「さぁもう一踏ん張りだ!行くぞ!」
「わ、分かった!みんな!俺達も行くぞ!」
「折角の初陣なんだ!活躍してやる!」
清導が二振りの炎剣を構え、走り出せばそれに続くように新人達もそれぞれの武器を構えて走り出す。立ち塞がるサルファーゴースト。彼の燃え滾るような心を反映するかのように更にその熱量を増した炎剣を振るい、薙ぎ払えば炎の弧が踊りゴーストを切り伏せる。炎から逃れたゴーストもまた飛来した嵐のような光弾の弾幕に撃ち抜かれて墜ちていく。近距離で戦線を抉じ開ける清導と遠距離から敵群を制圧するシャムロックの連携は新人達の士気を更に奮い立たせ、新人達もまたそれに答えるようにサルファーゴーストへと挑んでいく。予想外の反撃にサルファーゴーストも動揺を隠せず、無理やりに当初の目的である新人達を狙おうとしても後方から睨みを利かせる黄金のガトリングガンを構えたシャムロックの存在がそれを許さない。だが、その存在感に目を惹かれたのはゴースト達だけではないようで――
「なんだあの武器……レアドロップか?」
「黄金のガトリングも炎の双剣もカッコよすぎだろ!俺も早くああいう武器を欲しいな!」
「何、この武器が気になるのか?悪いがこれは自前でな、僕以外には扱えんかもしれぬぞ?」
新人達の羨望の眼差しに気が付き不敵に笑みを零すシャムロック。既存の装備では無く、己のUCを以てして作り上げた装備。事情を知らないプレイヤー達の注目を集める事になるのはやはり当然の事で、それは清導の炎剣も例外では無い。
「ははっ!残念だがこの剣も俺の自前だ!――よし!その調子だルーキー!押してるぞ!」
新人達の窮地に現れた清導とシャムロック。その二人の奮戦に触発されて奮起する新人達もまた二人を見本とし戦いの中で文字通り|成長《レベルアップ》して戦況を好転させていく。その戦いの喧噪は広く高いこのゲーム世界の大空にどこまでも響き渡っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
天道・あや
◎
此処が新世界…!……いや、正確に言うと新世界のゲームの、中…ッ!
いやー、最初聞いたときは自分がデータになるの??って思ったりしたけどー……うん、大体何時通り動けそう!(なら問題なし!とシャドーボクシングとかしたりして)
……うし!それじゃ早速お仕事と行きますか!
新世界よし!プレイヤーよし!あたしよし!
それじゃ新世界最初のライブと行きまショータイム!
えーと、確か初心者のプレイヤーさんのお手伝いすればいいんだっけ?
うんうん、初心者は大事にしないとね!
という訳でお手伝いしますぜ期待のルーキー達!
UC発動!敵を少しの間、歌で魅了して痺れさせるんで、その間に敵をバシバシ倒して、ちょーだいっ!
――認証成功
――システムダウンロード
――ログイン完了
暫く靄がかったような光に包まれていた視界が開けると、そこには紺碧の空。遠く連なる山脈。鬱蒼と生い茂る大森林。誰もが思い描くファンタジーの世界が広がっていた。
「此処が新世界……!いや、正確に言うと新世界のゲームの、中……ッ!」
天道・あや(|スタァーライト《夢と未来照らす一番星!》・f12190)は目の前の光景に息を呑む――と、彼女は思い出したかのように拳を握ったり開いたりを繰り返したかと思えば、ぺたぺたと自分の顔を触った。ゲームの中に入ると聞かされた当初は自分がデータとなるのかと多少の危惧を覚えたものだが、いざこの世界に転移してみればなんら現実世界と変わりなく、体にも特に異常は見られなかった。
「うん……うん……よし!いつも通り動ける!これなら問題はなさそう!」
シュッシュッと筋の良い打撃をシャドーボクシングのように放ち、準備運動と言わんばかりのそれを終えると彼女は戦闘の火蓋が落とされ混戦状態と化した戦場をその紫の瞳に捉えると一気呵成に飛び込んで行く。
「新世界よし!プレイヤーよし!あたしよし!それじゃ新世界最初のライブと行きまショータイム!」
新人プレイヤー達と青白い幻花の如き亡霊サルファーゴーストの入り混じる戦場は、新人達も必死に応戦してるとはいえそのゴーストの夥しい数の前では決して予断を許される状況では無い。その経験の無さが祟り新人達は徐々に数で攻めてくるゴースト達への対処が立ち行かなくなっていく。
「く、くそ!どれだけ倒しても減らないぞ!」
「いつまで戦えばいいんだ!もうアイテムだって底を尽きかけてるってのに!」
「だ、駄目!私達じゃ対処しきれない!」
そんな悲痛の叫びが交差する戦場に降り立ったあやはまずは戦況を確認する為に周囲を見渡した。新人達を逃がすまいと包囲を狭めるゴースト達。対する新人達も生き延びる為に必死の抵抗を続けるがその動きはやはりぎこちない。尤も、ゲームを始めて間も無くこのようにバグり散らかした難易度詐欺クエストに放り込まれれば当然の事だ。あやはそんな不運な新人達に同情の念を抱く。
「あちゃ~こりゃ大変な事になってますな~此処は先輩としてあたしが一肌脱ぐとしますか!うんうん!やっぱこういうのは初心者さんを大事にしないとね!」
そう言ってあやは文字通り、戦場の真っ只中へと躍り出る。想いを、その魂をこの戦場へ――世界へ響かせる為に具現化した虹色を帯びたギターを携えてあやは|戦場《ステージ》へと降り立った。その行動は新人達はおろかゴースト達の注目をその一身に集め周囲一帯はどよめいた。
「一体誰だ!こ、こんな時に何をしようとしてるんだ!?」
「あの装備はなんだ?見たことがないぞ?特別な職なのか?」
そんなどよめきを制止するようにあやはギターの弦を弾くと星屑のエフェクトを撒き散らしながら音が響く。
「という訳でお手伝いしますぜ期待のルーキー達!では記念すべき一曲目!サンダー!ミュージック!心が痺れるようなあたしの思い!聴かせてあげる!いぇ~い!」
突然始まったあやのソロライブ。掻き鳴らされる音楽は夜空を翔ける流星のような早いテンポを刻み。それでいて親しみやすいポップなサウンドを奏でている。ロックとポップが調和するその演奏と共に歌い上げられるあやの歌声が騒がしい戦場を塗り替えていく。ギターの音は歌と共に稲妻のように戦場を奔り聞く者全ての心を痺れさせる。
「いつだって希望の星はそこにある!例えこの絶望が現実だとしても一番星は未来を映して!まだ終わらない!キミはまた夢を見れる!」
痺れさせる――というのは決して比喩表現ではない。その演奏を聴いたサルファーゴースト達は皆一様に動きを止めていた。痺れさせるようなあやの演奏は文字通りにゴースト達を感電させたのだ。
「さぁさぁ!今がチャンスだよ!今のうちに敵をバシバシ倒して、ちょーだいっ!」
あやがそう大声で新人達に伝えると、彼らは困惑するように顔を見合わせた。初心者クエストとは到底思えないモンスターに襲われ、更に突然このようなライブが開催されればその反応は当然だ。然し、痺れさせられたのはゴースト達だけではない。あやの演奏を聴いた新人達もまた心を痺れさせられ勇気を奮い立たせていたのだ。
「お……おお!よく分からないけど今ならやれる気がするぞ!」
「……ええ!私達はまだ終わってない!行きましょう!」
疲労を吹き飛ばすように新人達は声を上げると、一斉に痺れて動けないゴースト達に向かっていき次々と打ち倒していく。まだ、倒し切れないうちに感電効果が切れゴースト達が動き出すが、新人達は怯む事なくゴースト達に立ち向かっていく。あやの掩護がある限り彼らが敗北する事はないだろう。戦場には悲痛な叫びは無く、勝利のBGMだけが響き渡っていた。
大成功
🔵🔵🔵
菜花・深月
誰かがうちみたいに人権を失ったら、はぁ…はぁ…ううっ…
昔のトラウマがフラッシュバッグしているが初心者達を助ける為に必死に走る
あっ…居た!って不味い?!
自分も初心者の時に戦ったサルファーゴーストだが違和感がある
危ない!
プレイヤーを攻撃しようとする悪霊をしっかり見ながら神聖攻撃の矢弾の雨を放ち悪霊に攻撃(弾道計算も使用)
大丈夫…!直してあげるからね!
UCを発動してダメージを受けたプレイヤーを直す
はぁ…はぁ…うちは大丈夫だから、皆来るよ!
UCの効果で疲労状態になって他のプレイヤーに心配されるが敵は待ってくれず攻撃してくる
ていっ!
遮蔽物に隠れながら再び神聖攻撃の弓矢を放ちプレイヤー達のサポートに徹した
――ID確認
――遺伝■番■の■■を確■
――ログイン完了
視界が開ける――どこまでも続く広大な世界――見覚えのある、懐かしい風景。
「戻って来た……このゲーム(GGO)に……もし誰かがうちみたいに人権を失ったら……はぁ……はぁ……うう……」
草原を翔けて行く風が桃色の髪を揺らしている。この世界は菜花・深月 (止まった時間が再び動き出す時・f41809)にとって因縁の場所だ。かつての彼女は|統制機構《コントロール》――このGGOにて|遺伝子番号《ジーンアカウント》を――人権を失った。心の奥底に閉じ込めた筈の昏い記憶。それは今もなお深月を苛み縛り付ける。それでも彼女は自分のような犠牲者を出さないために前を向き、走った。
「あっ……居た!って不味い!?」
深月の視界に映ったのは青白い幻花のようなエネミーモンスター『サルファーゴースト』の群れと交戦する新人プレイヤー達。深月は以前にサルファーゴーストと戦った事がある。その時は仲間を召喚する特性こそ厄介ではあったものの、決して新人でも勝てない相手では無かった筈だ。然し、今この場にいる其れ等はその凶暴性からして明らかに正常なものでは無い。つまりバグプロコトル――|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼き払う者。深月は唇を噛み締める。
「いやぁぁぁっ!止めてッ!」
響き渡る絶叫。新人の1人にゴーストの魔の手が迫る。其れは呪いの亡霊――呪詛が哀れな犠牲者を蝕むその直前――
「――危ない!」
既に矢は月光弓に番えられている。その青い瞳が捉えるのは這い寄る無数のサルファーゴーストの姿。――風速良し。――角度良し。――力加減は……。導き出された弾道をなぞるように矢弾の雨は神聖な光を帯びた弧を描き、そしてゴーストを貫いた。煌びやかな粒子となって消滅するゴースト。そのまま深月は疲弊し傷付いた新人達の前へと飛び出して行く。
「大丈夫……!治してあげるからね!」
ダメージを受け、絶望と恐怖の入り交じる表情を浮かべた新人の姿。まるで心臓を鷲掴みにされ、体内から身体が凍り付くような感覚――まるでいつかの自分を見ているようだ。――深月は纏わり付く悪夢を振り払うように頭を振り、己の成すべき事を思い出す。
(そうだ……みんなを守らないと!)
――生まれながらの光。その決意が聖なる光となり、傷付いた新人を回復させていく。その癒しに、助けが来たという事実に新人達は皆一様に安堵の表情を浮かべている。希望は紡いだ――然し、その瞬間に深月はぐらりと体勢を崩した。体が重い――呼吸が苦しい――心臓が早鐘を打つ――力を使った代償だ。深月は体力を大幅に消費し疲労状態へと陥った。そんな深月の姿に数人の新人達が何事かと青ざめた表情で駆け寄ってくる。
「お、おいどうした!?何があった!?」
「大丈夫ですか!?もしかしてモンスターの攻撃で何か状態異常にでも――」
「誰か回復アイテムが余ってる奴はいないのか!?」
次々に掛けられる新人プレイヤー達の声。このまま目を閉じてしまいたい。だけど、そんな事は出来る筈も無い――する訳には行かないのだ。守る為――彼らを守る為に戦わねば――
「はぁ……はぁ……うちは大丈夫だから――皆来るよ!」
狙い定められた容赦の無いサルファーゴーストの攻撃を深月は寸前の所で避け、近くの建築物の残骸に向かって転がり込むとそれに身を隠すようにして半身を覗かせ月光弓を引き絞る。
「――ていっ!」
放たれた弓は鮮やかな弧を描き、先ほど深月に攻撃を仕掛けたゴーストを撃ち抜いた。ゴーストが消失すると同時に深月は新人達に向かって声を上げる。
「みんな!生き延びる為に戦って!――自由の為に進んで!私が援護する!大丈夫、落ち着いて戦えば勝てる!」
「――ッ!?わ、分かった!やってやる!」
「そうだ!せっかくGGOを始めたのにこんなボスでも無いモンスターなんかにやられてたまるか!」
深月の声に勇気を奮い立たせた新人達は逆境を跳ね返さんと前へと進む。後方からの深月の弓矢がゴーストに突き刺されば、トドメとばかりに新人の一太刀がそれを切り裂き、放たれた電撃魔法が打ち砕く。援護射撃を受けながら戦う新人達は少しづつ戦闘に慣れ、徐々に戦況を有利へと運んでいく。今の彼らがバグプロコトルの餌食になる事はないだろう。昏い記憶に苛まれながらも彼らの為に走った深月の差し伸べた手は間に合った――いつかのあの時のようにはさせない――止まっていた菜花・深月の時間は新たに動き出す。
成功
🔵🔵🔴
天羽々斬・布都乃
◎〇
「なるほど、これが亡霊の魔物ですね」
『まあ、ただのゴースト系のモンスターというだけじゃ。
陰陽術や神剣が特攻になる仕様かはわからぬぞ』
「……えっと、げーむのことはよくわかりませんけど、がんばります!」
意外とゲームに詳しい式神いなりの言葉に頷きつつ、未来視の瞳を発動します。
亡霊が触れた物体にとりついた悪霊が初心者プレイヤーたちに呪詛を放ってくるところを視て、霊力を込めた斬撃で相殺します。
「呪詛は私が対応します。
皆さんは亡霊との戦いに集中してください」
死角から呪詛を飛ばそうとしてきても、その行動は視えています。
初心者の皆さんに襲い来る呪詛は、すべて相殺していきましょう。
呪詛攻撃さえなければ!
上野・修介
◎○
(ゲームの中とは……不思議な感じだ)
ともあれ、今は眼前の戦いに集中する。
「故あって、加勢させてもらいます」
調息と脱力、場と氣の流れを『観』据える。
先ず状況把握。
敵味方の配置と構成、地形状況、怪我人の有無等を確認
「俺が前に出るので、可能なら援護をお願いします」
基本的にはUC範囲内の敵の氣の流れを鈍化による行動速度の阻害と自身の氣の活性化による行動速度底上げ、また投石による挑発でのヘイト稼ぎと合わせて、敵と味方を隔てる『壁』になるように立ち回る。
また広げた氣を触覚の延長として状況を逐次把握。
『この先』を考慮して、牽制や撃ち漏らしの対処を初心者PLに依頼してある程度は経験値を稼がせる。
――データチェック
――システムチェック
――ログイン完了
(ゲームの中とは……不思議な感じだ)
何処までもリアルな世界の中で、上野・修介 (吾が拳に名は要らず・f13887)は己の拳を握る。現実世界となんら変わりの無い感覚――ふと修介が視界を上げれば隣に一人の少女と一匹の小さな狐――天羽々斬・布都乃 (未来視の力を持つ陰陽師・f40613)とその式神「いなり」が興味深げに前方を塞ぐように展開する『サルファーゴースト』に視線を向けていた。遺伝子番号を焼き尽くすバグプロコトル――その毒牙から初心者プレイヤー達を守る為に修介と布都乃はサルファーゴーストの群れに包囲されたこの戦場へと|出現《ログイン》したのだ。
「なるほど、これが亡霊の魔物ですね」
『ゴースト系のモンスター……という事ならば陰陽術や神剣が特攻になる筈じゃが――このゲームがそういう仕様かは分からぬぞ』
「……えっと、げーむのことはよくわかりませんけど、がんばります!」
ゴースト達をしげしげと見つめながらやけに詳しい説明をする式神いなりの言葉に頷く布都乃に誰かが声を掛ける。それは困惑の表情を浮かべる新人プレイヤーの1人だ。明らかに難易度詐欺のモンスターに襲われた上に、謎の二人組が目の前に現れたら当然の反応だ。
「何がどうなってるんだよ……あ、あんたらは何者だ?」
その問いに布都乃とその式神のやり取りを見守っていた修介が答える。
「故あって、加勢させてもらいます――天羽々斬さんでしたか。ご助力お願いします」
『おうおう、雰囲気のある御仁じゃのう。これは頼りがいがあるではないか。のう、布都乃よ』
「はい、よろしくお願いしますね上野さん」
式神の言葉をスルーしつつ布都乃が返事をすると、修介はそれに頷いて答え、静かに瞼を閉じ深く呼吸を1つ――
――周天、或いは圏境。呼吸を整え、力を鎮め、氣を巡らせる。修介は氣の流れと共に状況把握の為に場を『観』据える。
地形は見通しの良い高低差の無い平原。敵はサルファーゴーストのみの一団が完全な包囲とは成っていないものの円形に纏まった新人プレイヤー達を取り囲むように展開。新人達は消耗しており既にダメージを負っている者も数名存在している。お世辞にも余裕があるとは言えない状況だ。修介は息を一度吐くと、落ち着いた様子で新人達に視線を配り情報を共有させる。
「俺が前に出るので、可能なら援護をお願いします」
「では、僭越ながら私がカバーします」
修介の言葉に新人達に先んじて布都乃が一歩前へと踏み出した。――彼女の右目は黄金色に染まっている。それこそが未来視の力。|未来を見通す金色の瞳《グリモア》だ。
「その瞳は……」
『どうじゃ?なかなか様になっておるじゃろ?』
「――右側から来ます!」
不意に布都乃の視線が動く。その先には揺蕩うゴーストの姿――亡霊の呪いが草花を呪物と化し、湧き出した悪霊が呪詛を以てして新人達へと撃ち放つ。――だがそれが新人達に届く事は無かった。
「その攻撃は、すでにこの未来視の瞳で視ています!」
――|異能打ち消す破邪の瞳《ユーベルコード・キャンセラー》。こうなる事は既に分かっていた。ならばそれを見逃す理由など存在しない。布都乃は呪詛の軌道へと先回りし、新人達の前へ飛び出すと天羽々斬剣と布都御魂剣。その2刀を抜き放ち霊力を込めた斬撃を飛来する呪詛へと浴びせ掛ければその一太刀の下、呪詛を両断し消滅せしめる。
「――これは俺も負けてられませんね」
その流れるような鮮やかな剣舞に修介が感嘆の息を漏らす。それと同時に周囲を取り囲んでいたゴースト達がその円を狭めるように一斉に動き出した。予想だにしなかった存在の出現に一気に片を付けてしまおうという算段だ。
「呪詛は私が対応します。皆さんは亡霊との戦いに集中してください」
「了解です。――前線を抉じ開ける」
修介はゴーストを負傷者達へと近づかせまいと、地面を激しく蹴り付け体を弾くように飛び出すとゴーストの群れへと向かって駆けだした。周囲一帯に張り巡らせた氣と体に巡らせた氣の効果で敵の動きが酷く緩慢に感じられる。駆け抜けるその正面にゴーストを捉える――力強く踏み込み、腰を落とし放たれる掌底打ちはゴーストの真芯を完璧に捉え打ち砕けばその衝撃に大気が揺らぐ。
(左に1、右に1――)
挟撃しようと左右から迫るゴースト――その動きは既に『観』据えている。近づく気配、そのタイミングに合わせ体を捻り裏拳を放てば一体の頭部を打ち砕き、その勢いのまま振り下ろされる拳がもう一体を大地へと叩き伏せた。
「修介さん!しゃがんでください!」
突然響く布都乃の声。それに即座に反応し修介が屈めばその頭上を布都乃の放った斬撃が通り過ぎ、修介を狙い放たれた呪詛を相殺し消滅させる。
「――助かりました」
『ほう?自分の事で精一杯だとばかり思っていたがなかなかやるのう。それともあの御仁に良い所を見せようと張り切っておるのかのう?ん?』
「ええい!戦いの最中ですよ!集中させてください!」
式神に揶揄われながらも、その未来視の力を駆使し新人達を狙う呪詛を切り伏せて行く布都乃。それを疎ましく思ったゴースト達がその目標を新人達から布都乃へと切り替え複数体で飲み込まんと迫っていく。呪詛の処理をしながら複数を相手にするのはいくらなんでも分が悪い。それでもなんとか切り抜けようと迫り来るゴースト達に向かい剣を構える布都乃だったが、その瞬間にゴーストの横面に投石が直撃した。
「あんたらの相手はこの俺だ。さぁ、掛かってこい」
修介の挑発にまんまと引っ掛かったゴースト達は再び進路を変えて移動する。そんな戦いが激化していく中、集団から抜け出したゴーストが修介の側面を突こうとジリジリと距離を詰めていく――そんな時だった。
「うおぉぉぉ!くらえっ!エアブレイド!」
新人プレイヤーの1人がゴーストを強襲し、そのまま切り伏せた。それだけでは無い。呼応するように他の新人達も奮起し各所で分断されたゴースト達に攻勢を仕掛け始めたのだ。事前に修介が新人達に乱戦時の牽制や撃ち漏らした敵の排除を打診していたのもあるが、それ以上に修介と布都乃の活躍に触発された事が大きいだろう。
「挟撃だ!ツインドライブ!」
「援護します!エナジーボム!」
新人達の参戦により戦況は目まぐるしく変化していく。その変化を修介は冷静に見定めて、友軍へと伝達する。ゴースト達の想像を超えた新人達の反転攻勢にその包囲陣はみるみるうちに瓦解していき戦況は既にプレイヤー側に傾きつつあった。
「見事です。このまま押し切りましょう」
戦いの経験を積み、新人達が敵と善戦を繰り広げる草原の中を、後方で待機していた新人達を引き連れた布都乃が修介の下へと合流する。呪詛を捌き切ったのち、未来視の力で安全な道筋を辿り新人達を導いてきたのだ。
「勝機はこちらにあり……ですね!」
『やれやれ、どうやら妾の出る幕は無さそうじゃな。いざとなったら妾自ら――』
「皆さん!がんばりましょう!援護します!」
合流した2人は連携し各々の役割を果たして行く。修介が敵陣を打ち崩し、新人達を守るように立ち回り。布都乃が近づく亡霊を一太刀の下に斬り伏せて呪詛を払い、新人達も2人に続けと最善を尽くして行く。窮地を好機と成す。この戦いの経験は新人達にとって大きな影響をもたらすだろう。始まりの草原に新人達の声が響き渡っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
可愛川・サキ
ヘイヘーイ!そこの|初心者《若葉》chan!GGOは楽しめてるかな?
なんか不具合?で強い敵が出てきちゃうっぽいから上級者(自称)のアタシが助けに来たよ!
って事でいきなり上級者(自称)の実力を見せつけちゃおっかな~♪
バグってるとはいえザコモンスターなのは変わらないし、【グラファイト・スピード】でバババっとやっつけちゃうよ!
どう?アタシってば最高にカッコいいでしょ。
キミたちもレベルが上がればアタシくらい強くなれるよ。
だからこのクエストも頑張ってクリアして、レベルアップしようね!
それじゃあ一緒に、グラファイトぉ~~~、オー!
――ID確認
――遺伝子番号確認
――ログイン実行
温厚な気候に恵まれ、冒険の幕上げを告げるような穏やかな光景が広がる始まりの草原。ゲームを始めたばかりのプレイヤーがまず訪れる初心者向けクエストの舞台ともなっているこの場所では現在、不釣り合いなほどに苛烈な戦いが繰り広げらていた。
「くそ……!難易度詐欺にもほどがあるだろ!」
「これが噂のバグ……?やだ……こんな所で終わりたくない……!」
想定などするよしも無かった事態に新人達は浮足立っている。そんな彼らを嬲るように周囲を取り囲むサルファーゴーストの群れ。そんな緊迫とした草原にのんびりとした足取りで一つの影が現れた。
「ヘイヘーイ!そこの|初心者《若葉》chan!GGOは楽しめてるかな?」
そんな事を言葉にして、この緊迫とした空気感の中とは到底思えない極めて楽観的な雰囲気を纒わせ姿を表したのは可愛川・サキ (さっきゅんくえすと・f41825)。普段からこのGGOを楽しみ、幾度と高難易度クエストもクリアしてやり込んで来たプレイヤーだ。新人達が騒然としたのは何もその登場の仕方だけが理由ではない。肌の露出が多いまるで水着のような衣装の上に、前を大胆に開けた漆黒の衣装を羽織り、そして頭部に生える角と翼。そのサキュバスチックなアバターの姿に多くのプレイヤーの目が奪われる。
「凄い格好だ……それにあの余裕……ベテランのプレイヤーなのか?」
「課金すればあんなアバターに出来るんだ……羨ましい……」
どよめき立つ新人プレイヤー達とサキの登場に警戒を強めるサルファーゴーストの間に歩みを進めたサキは悠々と新人達に振り返った。
「なんか不具合的なアレで強い敵が出てきちゃうっぽいから上級者(自称)のアタシが助けに来たよ!」
自信満々に笑ってサムズアップするサキの姿に新人達はざわついた。この窮地の状況に上級者のプレイヤーが自分達を助けに来た。その事実が新人達に希望を抱かせその表情にも幾許かの安堵を宿らせる。そんな新人達の様子を見てサキは口角をニヤリと上げると、再びクルリと体を翻し立ち並ぶゴーストの群れへと向き直す。
「って事でいきなり上級者(自称)の実力を見せつけちゃおっかな~♪」
唇をペロリと軽く舌で舐め、グラファイトスピアを構えると地面を跳ねるような軽快な動きでゴーストの群れへ向かって飛び込んで行く。瞬く間に距離を詰めると敵の懐へ飛び込む勢いを利用し体を捻って振るったスピアでゴーストを薙ぎ払う。そのまま体を一回転させるとその遠心力でスピアを加速させ、片足で地面を踏み込むと両手で握り締めたスピアを前方へ突き出しゴーストを串刺しにする。
「アハッ!流石アタシだね☆よゆーよゆー♪」
バグプロトコルと化していても所詮は序盤のモンスター。その動きも特性も弱点もサキは熟知している。そんなモンスターが束となったとて蹴散らす事など造作も無い――更にサキの攻撃は苛烈なものとなっていく。――グラファイト・スピード。サキの羽織っていた漆黒の衣装がハラリと落ち、大部分の素肌が露わになる。――それこそがこの技の真骨頂だ。攻撃が重くなり、ますます速度を増していくスピアの連撃(コンボ)は衝撃波を引き起こし数多のゴーストを吹き飛ばし、瞬く間に蹴散らしていった。そうして粗方、ゴーストの前衛を片付けたサキは後方でその戦闘を呆然と眺めていた新人達を振り返り、ウィンクを送る。
「どう?アタシってば最高にカッコいいでしょ?」
「は……はい!凄かったです!」
「やっぱ上級者はすげーな……」
サキの戦闘に瞳を輝かせ興奮気味の新人達を前に、サキは唇の前に人差し指を悪戯っぽく立ててみせる。
「キミたちもレベルが上がればアタシくらい強くなれるよ。だからこのクエストも頑張ってクリアして、レベルアップしようね!」
その言葉に新人達は暫くお互いの顔を見まわし、そして大きく頷いた。
「はい!絶対にクリアしてみせます!」
「くぅぅ……!俄然やる気が出てきたぜ!やってやる!」
「それじゃあ一緒に、グラファイトぉ~~~、オー!」
サキは新人達を鼓舞すると、彼らと共にゴーストの残党掃討を開始する。今度はサキだけでは無く、サキの戦いぶりの見よう見まねで奮起した新人達の活躍もあり、そう時間も掛からずに全てのゴーストを撃破する事に成功した。漸く窮地を脱することに成功した新人達のパーティと、そして彼らを救助した猟兵達は一先ず合流し、そしてこの初心者クエストをクリアするべくクエストボスが待ち受けるダンジョンへと歩き出す。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『バグダンジョンを進め』
|
POW : 地形や罠を力ずくで破壊する
SPD : 初見殺しのバグを見抜き、回避する
WIZ : バグを逆に利用し、物理法則を無視して移動する
イラスト:ハルにん
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
植物が茂る、古びた石造りの遺跡。一部が崩落した天井からは光が差し込み、静寂の中に沈んだそのダンジョンは一見すれば神秘すら感じられる。内部は十分な広さのある部屋とそれらを繋ぐ通路で構成されており、名目上は初心者クエストのダンジョンだからか構造自体は複雑なものでは無い。然し、すでにバグプロトコルの影響で致命的なバグに侵されダンジョンは凶悪なトラップに満ちたバグダンジョンと化している。目指すべきはその深層に待ち受けるダンジョンの主――猟兵達と新人プレイヤーのパーティはそれぞれクエストクリアを目指してダンジョンを進む事になる。今――ダンジョンの扉が開かれた。
天道・あや
◎
ーーとまあ、そんな訳でこのダンジョン、今は突発的時限イベントで難易度高くなっちゃってんだよねー(先導してダンジョンに進みながら新人パーティー達に軽く説明する)(バグプロトコルとは自分の存在はボカして)
だからまー、あたし達みたいな先輩冒険者が来たって訳なのだよ、将来有望なルーキー達!
で、こっから先はボスの場所までトラップだらけ! どれもyou達だとまだキツいダメージなんだよねー
だからまー、あたしが解除して進ませて……て、言いたいんだけど、あたし、残念ながらそういうスキルはナッシング!
という訳で諸君!罠を調べながら進みましょう!避けられないのや解除出来ないのはあたしが受けるんで!
皆で頑張ろうぜ!
苔むした壁画が連なるダンジョンの通路をGGO初心者で構成されたパーティーが進む。その先陣を切り新人達を誘導するのは先の戦闘で新人達の救出に貢献すると同時に大いに場を盛り上げた天道・あや (|スタァーライト《夢と未来照らす一番星!》・f12190)だ。
「ーーとまあ、そんな訳でこのダンジョン、今は突発的時限イベントで難易度高くなっちゃってんだよねー」
彼女はダンジョンを進みながら新人達が今の状況を理解できるようにと今回の一連の事件についての説明を試みた。然し、|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却し、プレイヤーの人権を剥奪するバグプロトコルに関する情報は出来る限り具体的な説明は避ける事にした。改めてこのような恐ろしい事実を伝えれば新人達の士気が下がるのは目に見えている以上、懸命な判断だろう。彼らにとって全くもって未知の存在である猟兵というあや自身の立場についても同様だ。
「へぇ……そういう事だったのか。だからってまさか初心者クエストと被るだなんて……」
「ほんとそうだよ。初日からこんな散々な目に逢うなんて……」
「でも、突発的にこんな派手なイベントをするなんて流石究極のゲームと言われるだけの事はありますね」
先ほどの窮地を脱した安堵と、あやという頼りになる味方の存在に新人達は安心しているのかあやの説明を聞きながら和気藹々と談笑をしている。するとあやは突然立ち止まり、くるりと体を反転させてそんな新人達の方へ振り返った。あやのその行動に新人達は慌てて自分達も進むのを中断する。そうしてあやはドンッと胸を叩き、自信に満ち溢れた表情を浮かべてみせる。
「それでもやっぱり初心者には厳しいイベントだからね。だからまー、あたし達みたいな先輩冒険者が来たって訳なのだよ、将来有望なルーキー達!」
ビシッと新人達に向かって人差し指を向ければ、新人達はキョトンとして顔を見合わせる。そんな新人達の様子を見てニヤリと口角を上げると、あやは再び体を翻して進行方向に向き直すと今度はまるで旅のガイド役のように腕を大きく通路の奥へと広げてみせた。
「という訳でこちらをご覧ください!只今、当ダンジョンは出血大サービスでトラップがてんこ盛りとなっております!――という訳でボスの部屋まで行くにはこのトラップを攻略しないといけないんだけど、どれもyou達にはキツいダメージなんだよね。なんであたしがパパっと解除しちゃって――て、言いたいんだけど、あたし、残念ながらそういうスキルはナッシング!」
すっかりトラップもあやがどうにかしてくれるものだと思っていた新人達はその言葉にざわついた。然し、動揺が広がる間も無くあやは新人達に向かってバッチリとウィンクを決める。
「という訳で諸君!罠を調べながら進みましょう!ちゃんと注意しながら協力していけばきっとなんとかなる筈!皆で頑張ろうぜ!」
「お……おお!分かったぜ!トラップ程度なら俺でもやれる筈……!」
「少し不安ですけど……なんだかダンジョンを攻略してる感があってワクワクしますね……!」
「俺、実はこういう時の為に探索スキルを振ってたんだ。まさか早速出番が来るなんてな……」
あやのその一言で新人達は一斉にトラップ攻略を目指して行動を開始する。探知スキルを持っているプレイヤーが軸となって調査を進め。工作スキルやトラップ知識を持ったプレイヤーが発見されたトラップを解除していく。まだまだ不慣れで危なっかしい所もあるがそれでも協力した甲斐もあり順調に前進できていた。然し、不意に一人のプレイヤーが変哲もない壁に手を触れると――あやの足元から鉄製の毒矢が飛び出した。本来、このダンジョン内のトラップの発動トリガーは全て目視で見えるようになっているのだが、バグが原因で一部のトリガーが描写されなくなっていた。つまり、目に見えない不可視のトラップと化しているのだ。
「って!おわぁッ!?あぶなーい!?」
あやは飛び出してきた毒矢を咄嗟に飛び退く事で回避する。然し――
「うわわわわ!ヤバい!なんか踏んだぞ!」
「何もない筈なのになんでだ!?」
「こんなの避けられる訳ないよ!」
ギロチンの振り子、魔法地雷。何処からともなく飛来する毒矢から落下する棘付き吊り天井――様々なトラップが作動し、あや達の行く手を阻む。そんな時こそ眩い星が導くのだ。――それは夜空に輝く最強無敵の星。Twinkle Twinkle Little Star――星屑のエフェクトが弾ければ、そこにはライブ衣装のあやが立っている。
「知ってる? |ステージ《戦場で》に|立ってる人って《私は》ーー|無敵なんだぜ?《倒れない》」
あやは恐れる事無くトラップの蔓延る通路を進んでいく。ギロチンがその頸を狙い。地雷が炸裂し、毒矢がその喉元へと突き立てられる。挙句の果てには天井があやを押し潰そうと迫る――が、あやはそれすらものともしない。解除できないトラップなど自分の身で受け止めてしまえばいいと、正真正銘の|スター《無敵》状態のあやは新人達の為に道を切り開いていく。あやの通った花道には彼女に一切のダメージも与える事の叶わなかったトラップの残骸が転がっている。
「厄介なトラップは任せなさい!という訳で先に進むぞルーキー達!」
「り、了解!」
「よし……!目に見えるトラップはちゃんと俺達の方で片付けるぞ!」
あやの機転により新人達は理不尽なトラップに襲われる事無く、探索の基本をしっかりと守り順調にトラップを突破していく。気が付いてみれば一つの被害も出さずに通路を進む事に成功していた。
成功
🔵🔵🔴
菜花・深月
雰囲気が違う…
周りを見渡していると違和感が拭えない
うちも初心者の時に来たけどこんなおかしな空間なんて…!
床に向かってUCを発動してトラップを破壊
…えっ?氷刻矢雨の月矢のバリアが割れた?!
何も無かった空間から突然何かが当たった感覚がした瞬間自身のバリアが破壊されたので後ろに下がる
ここは危ないから別の道にしようね
別の道を進んでいるとモンスターが出現したが初心者達にアドバイスをする
あのモンスターは攻撃力と防御力は高いけど移動速度は速くないから落ち着いて対処すれば大丈夫だよ!
初心者がピンチになったらUCを使用してサポートする
…おじいちゃん
大切な家族が一瞬頭に浮かんだが今は目の前の事に集中することにした
ひび割れた石畳から雑草が僅かに顔を覗かせる、古典的なダンジョン。菜花・深月 (止まった時間が再び動き出す時・f41809)にとっては懐かしい光景だ。だが周囲を見渡していると、どうも纏わり付くような違和感が拭えない。以前、このダンジョンを訪れた時と外観自体にはそれほどの変化は見当たらない。それでも確かに異質な気配がする。
「あの時と雰囲気が違う……うちも初心者の時に来たけどこんなおかしな空間なんて……!」
深月が覚えた違和感の正体は明らかに初心者向けの範疇を超えたダンジョン設定。厳密に言えば明らかに初心者ダンジョンとは思えないトラップの数。先へと続く通路にはどこを見ても何かしらのトラップが存在した。本来、生成されるべきではない場所に生成されているのを見る限りバグの影響なのは間違いない。
「こんなの近付いたら何が起こるか分かったもんじゃないからね!遠くから壊す!」
通路を阻む無数のトラップをその瞳に捉えたまま深月は月光弓を引き絞る。
――|氷刻矢弓の月矢《コキュートス・アルテミス》。構えを取れば薄蒼のエフェクトと共に深月と新人達の前方にバリアが展開される。そして放たれるのは銀雪の如き冷たい輝きを纏い宙を翔ける必中の月矢。連続して放たれたそれは次々とトラップへ着弾し破壊していく。通路内のトラップの掃討も時間の問題かと思われたその時だ。何かが触れたような感覚がした。
――パリン
最初はグラスの中の氷のような音だった。そんな物静かな音はすぐさま鳴りを潜め、通路内に硝子が砕け散る音が響き渡る。深月達を守っていたバリアが割れたのだ。
「えっ!?バリアが割られた!?」
深月は咄嗟に飛び退き、通路の先の何も無い空間に弓を構えたまま様子を見る。――追撃は来ない。自分の呼吸音だけが浅く聞こえている。すると背後に居た新人達がどよめいた。
「な、なんだ今の!?何もない所から突然何かが飛んできたぞ!?」
「こ、攻撃!?モンスターが居るの!?」
新人達のざわつきを聞いて深月は今起こった出来事を概ね察する事ができた。バリアが割れた原因はトラップだ。凶悪な威力を持つ不可視の理不尽極まり無いトラップ。大方、これもバグの影響だろう。深月は小さく息を零すと、肩を竦めながら新人達を振り返り進路変更を告げた。自分だけならまだしも新人達を連れて強行突破するにはリスクが大きすぎる。新人達もこんな高難易度ルートなど通りたい筈も無く、深月に従い移動する。
一度後退し、別の通路を進んでいくと今度はモンスターの集団がまるで番人かのように通路を塞いでいた。武具を纏う白骨のスケルトン、緑の肌色をした背の低いゴブリン。様子を見る限りではどうやらバグプロトコルでは無い正常なモンスターのようだ。
「よし、じゃあ皆頑張ってあのモンスターを倒してみようか。あのモンスターは攻撃力と防御力は高いけど移動速度は速くないから落ち着いて対処すれば大丈夫だよ!」
グッとガッツポーズを取りながら新人達を激励する。通常モンスター程度なら深月一人ですぐに片を付けられただろう。然し、そうなると新人達が経験を積めずこの先でそれが枷になる可能性がある。そういった視点から新人達に経験を積ませて成長さえようと考えたのだ。新人達もその考えに同意し、更に草原でのゴースト達との戦闘で自信を持ったのか意気揚々とモンスターに挑んて行く。
「さっきのバトルに比べたらこれぐらい大した事ないぜ!」
「油断しちゃダメだよ!私達まだレベル低いんだから、ちゃんと深月先輩の言う通りに気を付けて戦わないと」
「まぁ、タンク役はそれぐらいの気合が合った方がいいんじゃないかな。僕らの方で援護しよう」
タンク役の前衛がモンスターの攻撃を引き付け、アタッカー役が魔法で集まったモンスターを蹴散らし、タンク役がダメージを負えばサポートが回復させて援護する。新人達は初心者ながらも連携を取ってモンスターを撃破していく。モンスターも幾度となく攻撃を繰り出すが深月のアドバイス通りに立ち回る新人達はなんとかそれを凌ぎ切っていた。然し、それでもやはり完璧とまではいかず新人の隙を突いてモンスターが襲い掛かる――
「させないよ!これがうちのとっておき!」
新人に襲い掛かるモンスターを深月の|氷刻矢弓の月矢《コキュートス・アルテミス》が鮮やかに貫いた。モンスターの攻撃は新人へ届かず地面に転がり落ちたモンスターは霧散して消えて行く。
「あ、ありがとうございます!」
「落ち着いて!いざとなったら私が援護するから!」
深月の掩護もあり新人達は順調に戦闘を進めていく。この調子ならもうすぐ掃討が終わる。そうぼんやりと考えていると、不意にとある光景が脳裏に浮かんだ。
『――深月』
誰かが私の名前を呼んでいる。あれは――あれはおじいちゃんだ。優しく頭を撫でてくれたその手の感覚はまだ覚えている。いつかの暖かい記憶の断片。なぜ、急にそんな光景が浮かんできたのは分からない。どうして私は――
「……おじいちゃん」
そう小さく呟いて、深月はしっかりと前を――新人達が戦うその姿を見つめた。見えた記憶の光景は気になるが今はこのクエストに集中せねば。そう自分に言い聞かせ深月は新人達を援護し、彼らを勝利へと導いた。
成功
🔵🔵🔴
上野・修介
◎○
「皆さん、何が出来るか教えてもらえますか?」
ダンジョン突入前に先ずは新人達の状態とそれぞれの技能を確認。
併せて彼ら自身に『自分が現状何が出来るのか』を意識させる。
「俺もまだまだ修行中なので余り偉そうなことは言えませんが、より高みを目指そうというならば『己を知ること』が基本であり、何より難しい事ですよ」
「まあ、先ずは焦らず行きましょう」
最優先は彼らを生きて帰すこと。
基本的には自分が先ず先行して、UCによる状況把握と機動力を用いて突破。
道中、バグ絡みでない通常のモンスターや難度の低い罠があれば、いつもでもフォローできるようにした上で新人達に対処を任せて『経験』を積んでもらう。
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎
「さあ、ダンジョン攻略だ!頼りにしてるぜ、みんな!」
みんなに花を持たせるためにも発破をかける
「こういったダンジョンは何処にトラップがあるか分からない。
けど、何もない空間には大抵なんかある。
後は何かでそうな穴とかにも注意だ。」
そう言いつつ、アインの[封印を解く]ことで未来を見る
あからさまな初見殺しなどを前もって見て、
それとなく初心者に伝える
どうにもならないトラップや敵の場合はオレが前に出る
そしてUCを発動して根こそぎ吹き飛ばす
耐えなきゃいけないやつは[気合い]と[根性]で耐える
「良い調子だけど、慢心は良くないぜ。
どんな危険があるか分からないから石橋を叩くを心がけろ。」
「皆さん、何が出来るか教えてもらえますか?」
目的のダンジョンの入口前で上野・修介 (吾が拳に名は要らず・f13887)は一度、新人達を集めてそう問いかけた。
「戦闘もそうですが、仲間と行動する時はそれぞれの役割が大切になります。――『自分が現状何が出来るのか』。その事をまずは念頭に置いておいてください」
修介は新人達が各々得意とする技能を聞き、そして平行して健康状態を確認し頭の隅に入れておく。今回のような問を新人達に投げ掛けたのはそれだけが目的では無い。修介の言った『自分が現状何が出来るのか』という言葉を彼らに意識させるのが目的だ。
「俺もまだまだ修行中なので余り偉そうなことは言えませんが、より高みを目指そうというならば『己を知ること』が基本であり、何より難しい事ですよ」
「なるほど……長所を活かせって事ですかね?」
「あー……俺は戦闘は得意だけど探索とかそういうのは苦手だからなぁ……という訳でダンジョン攻略は任せたぜ!」
「だからってなんでも人任せにすればいいって話ではないでしょ!」
新人達から聞き出した情報を整理させながら彼らの会話に耳を傾ける。どうやら緊張は解けているようだ――修介は静かに息を吐く。
「まあ、先ずは焦らず行きましょう」
「ああ!そうだ!今は無理な事だっていつかは出来るようになる!それに頼りになる仲間がいるんだから心配する必要なんかないぜ!」
修介と同じくダンジョン入口に歩みを進めた空桐・清導 (ブレイザイン・f28542)は新人達を激励しながら彼らを見まわし、そして修介に視線を向ける。
「どうやら準備はバッチリみたいだな!そろそろ行くとするか?」
「――はい、この状況で時間を掛け過ぎるのも何が起こるか分かりません。行きましょう」
「さあ、ダンジョン攻略だ!頼りにしてるぜ、みんな!」
清導は修介の同意を得ると盛大に新人達を激励し発破をかける。新人達の反応はと言うと先のゴースト達との戦いの余韻がまだ残ってるのか皆一応にやる気を示している。そうして修介と清導は新人達を引き連れダンジョンの内部へと足を踏み入れる。内部は入り口付近がエントランスホールのような広い空間となっており、そこから通路が複数に別れ各部屋へと続く構造だ。2人と新人達はそのうちの1つの通路を進んでいく。屋内に照明らしい照明は存在しないが、そういう仕様なのか不思議と視界は良好だ。
「こういったダンジョンは何処にトラップがあるか分からない。けど、何もない空間には大抵なんかある。後は何かでそうな穴とかにも注意だ」
清導はダンジョン内を進みながら新人達にダンジョンに於ける注意を促す。然し、バグの影響を受けたクエストではそれだけではまだ心許ないだろうと清導は更に行動を重ねる。ヴァイスリッター・アイン――普段はその力の暴走を危惧し封印を施している剣。その封印を解き放ち秘められた力が体に流れ込む。未来視の力――明らかに初見では対処不能と思われるトラップ。理不尽なトラップのビジョンが視界に過る。
「やっぱりバグの影響でルーキー達には荷が重いトラップが混じってるな。意識を向けておけばなんとかなるのもあるが――修介、行けるか?」
「もちろんです。俺達が先行して様子を探りましょう。バグに関与しないトラップやモンスター程度なら彼らでも対処はできる筈ですが――目は離さないようにしなければ」
修介は先陣を切るべく、精神を研ぎ澄ませて瞼を閉じる。――周天、或いは圏境。――呼吸を浅く深く繰り返す。練られた氣がダンジョンに流れる氣を捉え、隠されたトラップの気配を浮かび上がらせる。
「思ったより多いか――俺達が先行して難易度の高いトラップは請け負います。皆さんはその後に続きその他のトラップやモンスターを攻略してください」
「分かった!俺は探知スキルと工作スキルを持ってるからトラップの方は任せてくれ!」
「私は戦闘に全振りだからなぁ~……戦い以外の事は任せたよ~」
二人が先導しバグの影響を受けているトラップを引き受け、後詰めとして新人達が通常のトラップを攻略する。その作戦内容を確認し、そして清導がダンジョン攻略の合図を送る。
「よし!それじゃあ気合入れて行くぞ!」
清導と修介が先駆けて通路を進めば間も無くしてトラップの効果範囲へ入り込む。作動するトラップの数々、それはどれも先の清導の未来視が捉えた理不尽なバグトラップだ。その悪辣さは凄まじく新人で無くとも対処は困難だっただろう。然し、二人の前ではそれはただの杞憂に終わる。
「修介!3秒後に右と後方から射撃!続けて2秒後に左の隠し扉からモンスターの強襲だ!」
「了解――助かります」
清導の言葉に修介は短く返し、呼吸と同時に氣を集中させる。揺らぎ――清導の言った方向から氣の揺らぎを感じる。間髪入れずに修介が身を屈ませればその頭上を掠めるようにまるで槍のような矢が過ぎて行く。そのまま立ち上がる勢いを利用し身を反転させると右側から飛び込んできた砲丸がすれ違いざまに過ぎて行く。――左側から気配。姿を現した獣人型のモンスターが修介を狙い武器を振りかざす。が、遅い。地面を砕くような踏み込みから放たれた修介の肘打ちがモンスターの|鳩尾《みぞおち》を捉え、怯んだその隙を見逃さず下から抉るように放たれた拳がモンスターの顎を打ち砕いた。
「おお!やるな!」
「清導さん。足下と前方に氣の乱れが――来ます」
「応ッ!」
続けて、修介の警告通りに清導が足下に意識を向けていると何かキラリと輝き、次の瞬間にはまるで剣山のような夥しい数の棘が石畳を粉砕し姿を現す。そのタイミングに合わせて清導は高く跳躍するとそのまま空中で体を前方に回転させそのまま拳を下から迫る棘に向かって振り下ろす。身に纏う機械鎧(ブレイザイン)の腕部装甲――ブレイヴ・ガントレットが真紅に煌めく。轟音が響く。棘は爆炎を噴き上げて砕け散る――清導が前方に視線を上げれば遠くから通路を埋め尽くすような機銃がその銃口を鈍く光らせている。
「させるか!まとめてぶっ飛ばす!ブレイヴゥ!ブレイズエクスプロージョォォォン!!!」
清導の恐れぬ勇気と燃え滾る炎の意思――其れ等が超反応を引き起こし眩い閃光を放ち爆裂すれば無数の光焔となって機銃を悉く破壊する。それでも一部の銃弾が清導の身を襲うが、それを避ければ後方の新人達に危険が及ぶ可能性がある。清導は敢えてそれを正面から受け止め気合と根性で見事に耐え抜いて見せた。容赦なく二人を襲う理不尽のトラップの数々だが、二人はお互いをカバーし合う見事な連携で鮮やかにそれを切り抜ける。その活躍と、先の清導の促した忠告と修介の助言が功を成し、その間にも新人達は己の特技を活かしつつトラップへの警戒を払い順調にダンジョン攻略を進めていく。その際にモンスターの襲撃もあったがそれでも新人達は彼らだけで十分に戦う事が出来ていた。――だが、それでもまだまだ未熟な所は多い。今まさにモンスターを倒した事に安堵した新人がその場に立ち止まり、その新人に潜んでいたモンスターの魔の手が迫る。新人がそれに気が付いて振り返ればすでにモンスターの魔の手が届こうとしている――そこに飛び込む赤い影が1つ滑り込み、モンスターをその一撃で打ち倒す。
「良い調子だけど、慢心は良くないぜ。どんな危険があるか分からないから石橋を叩くを心がけろ」
新人の窮地を救う清導。その身にまた別のモンスターの攻撃が迫る。が、清導はそれに気が付きながらも敢えて迎撃を行わなかった。何故ならば――
「――フンッ!」
飛び込んできた修介の一撃がモンスターの脇腹を貫き地面へと叩き伏せる。
「だからこうやって仲間同士で助け合うのが大事だぜ!ともあれ、いい戦いっぷりだった!あと少しだけ頑張ろうぜ!」
「この短い間でだいぶ成長していると思います。――恐らくもうすぐ最奥部ですが油断せずに行きましょう」
二人の掩護もあり正常の範疇に於けるダンジョンの大部分は新人達が自力で攻略する事に成功した。新人達は着実に経験を積み成長を続けているだろう。ダンジョンボスが潜む最奥部――そこに辿り着くまであと僅かだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャムロック・ダンタリオン
ふん、この先に黒幕がいるのか。さっさと突破していきたいところだが…(と、新人たちのほうを見やり)。
待ちたまえ貴様ら、はやる気持ちは理解できるが、いくら初心者向けとはいえ油断は禁物だ。この先に凶悪な罠が待ち受けてるかもしれぬゆえにな(と、そこらへんで捕まえた非バグプロトコルの【敵を盾にし】つつ先導。射出系ので【串刺し】になったら【切断】系の方に投げ込んでる)。
――まあ幸い、この手の罠には見覚えがある。僕のやるように回避するのだ(と、引っ張り出してきた【世界知識・戦闘知識】を基に罠のパターンを【見切り】つつ手本を見せている)。
※アドリブ・連携歓迎
天羽々斬・布都乃
◎〇
「一見すると普通の遺跡ですが――」
『気をつけるのじゃ、布都乃。
ここはすでにバグプロトコルに侵された危険なダンジョン。
トラップも命に関わるものが多いじゃろう』
「はい、わかっています」
式神のいなりの言葉にうなずくと、右目の未来を見通す瞳を発動します。
瞳に映るのは、この迷宮に仕掛けられたトラップに引っかかる初心者プレイヤーの皆さんの姿。
「――視えました。
冒険者の皆さん、あの床から飛び出す棘には気をつけてください。
それからあそこには近づかないように。
あと、毒ガスに備えて防毒マスクの用意と、転がってくる大岩は――気合で逃げてください」
アドバイスをしたら、敵モンスターの注意を引き付けましょう。
石造りの厳かなダンジョン。それはバグの影響で変異した魔境――の筈なのだが、その外観は変哲もない通常のダンジョンとなんら変わりはないように見える。
「一見すると普通の遺跡ですが――」
十分に警戒を重ね周囲に気を配る天羽々斬・布都乃 (未来視の力を持つ陰陽師・f40613)。それが杞憂に思える程にダンジョンの入口は平和そのものだった。そこから奥に続く枝分かれした通路が布都乃達を待ちかねるかのように唯、静かに佇んでいる。
『気をつけるのじゃ、布都乃。ここはすでにバグプロトコルに侵された危険なダンジョン。トラップも命に関わるものが多いじゃろう』
足下から聞こえる式神「いなり」の警告。その言葉が意味する事は承知の上で、ただならぬ気配も薄々通路の奥から感じている。布都乃は改めて慎重な行動を心がけるよう頷いた。
「はい、わかっています」
「ふん、この先に黒幕がいるのか。さっさと突破していきたいところだが……そこの子狐の言う通りにそう易々とは行かんだろうな」
シャムロック・ダンタリオン (図書館の悪魔・f28206)は『いなり』の言葉に同意を示し、肩を竦めて一笑する。シャムロックが視線を新人達へと向ければ、初のダンジョン攻略に対し見るからに浮かれている様子が見て取れた。これが通常通りの初心者向けダンジョンであれば問題は無かった筈なのだが、バグの影響が出ている以上は事情が変わってくる。
「待ちたまえ貴様ら、はやる気持ちは理解できるが、いくら初心者向けとはいえ油断は禁物だ。この先に凶悪な罠が待ち受けてるかもしれぬゆえにな」
浮足立つ新人達をシャムロックは静かに窘める。先の救出戦にて彼らの命の恩人とも言えるシャムロックの言葉は素直に新人達に受け止められ、些か落ち着きを取り戻させた。
『ほう?かの御仁、鶴の一声で新人どもを鎮めおったぞ。これがかりすまという奴じゃな。天晴じゃ』
「なに、大した事ではない。――さて、布都乃と言ったか。少しばかり手を貸して貰おう」
『だ、そうじゃぞ布都乃。さぁ、見せてやれい!』
「もちろんお手伝いさせて頂きます――!」
静かに瞳を閉じる布都乃。神経を研ぎ澄ませ呼吸を1つ。再び開かれるは|未来見通す金色の瞳《グリモア》――そこに映る光景は凄惨なものだった。前兆も無く現れた棘に成すすべなく貫かれる者。即死性の毒ガスから逃げ惑い力尽きて行く者達。理不尽なバグトラップの餌食となる、そう遠くない未来の新人達の姿だ。
「――視えました。冒険者の皆さん、あの床から飛び出す棘には気をつけてください。それからあそこには近づかないように。あと、毒ガスに備えて防毒マスクの用意と、転がってくる大岩は――気合で逃げてください」
布都乃の口から告げられた初心者向けのダンジョンとは思えないトラップの数々に新人達は息を飲み、そして真剣な面持ちで頷いた。すると、シャムロックが通路の奥へと向かって歩みを進める。
「なるほど、未来を見通す瞳とは実に興味深いな。どれ、僕が先行して試してみるとしよう。――ああ、貴様達はまず僕の後ろで見学とでも洒落込んでおけばいい」
石畳に靴底の音を響かせながら新人達を先導して進むシャムロック。通路内にはバグの影響から逃れている通常モンスターの姿が複数見える。
「さて――今の所は特に変わった所はないようだが」
「ここが先ほどの未来視で見えた場所です。あの光景からするとトラップを完全に避けて通る事は出来ないと思います。――お気を付けをシャムロックさん」
剣を構え警戒態勢を取る布都乃。そんな彼女の注意にシャムロックはほうと愉快気に口角を上げる。
「……ならばこうさせて貰おう」
不敵な笑みを零すとシャムロックはなんの躊躇も無く近くに居たモンスターを捉え、藻掻くモンスターを抑えつけたまま盾にするように前進する。
「シャムロックさん!来ます!」
「問題ない。分かっているとも」
起動音が聞こえる――その瞬間には何処からともなくシャムロックを目掛けて弩の矢雨が降り注ぐ。だが、シャムロックは避ける素振りすら見せずにその全てを盾にしたモンスターの体で受け切ってみせた。その全身に矢が突き立てられたモンスターはぐったりと身動ぎ1つせず、ずっしりとした重さが捉えた腕に伝わってくる。
「さて、次はどちらかな」
「数歩前方の足元に大刃のトラップがあります……!」
未来見通す金色の瞳の力で先を読み続けシャムロックへ伝えていく布都乃。彼女の言葉に耳を傾けぐったりとしたモンスターを前方へ投げつければ視界の下から鈍く艶めく鉛色の刃が飛び出し、いとも簡単にモンスターの体を両断してしまう。その光景に後方の新人達から悲鳴が上がる。
「確かにこれは大層な罠だな。――まあ幸いこの手の罠には見覚えがある。僕が先に進むので貴様らはその後に続くが良い。なに、僕の見よう見まねで進めば難なく突破できる筈だ。――布都乃。新人らの護衛を頼めるか?」
『くくく……ありがたい申し出ではないか。布都乃、お主では未来を視ているとはいえうっかり転んでしまうかもしれないからのう』
揶揄うような式神の言葉に布都乃はムッと視線を送ると、小さく溜息を吐き。気を取り直すと真剣な表情で頷いた。
「お任せください。皆さんの事は必ず守り抜いてみせます」
シャムロックが先行し、後に続く新人達を布都乃が守る――その作戦通りにまずはシャムロックが通路を進む。暫く進めば、仕込み矢から落とし穴。断頭刃から槍衾――到底、対応できる筈も無い種類のトラップが待ち構えている。が、知識を司る『ダンタリオン』にとっては全て想定内だ。—―ビブリオテーク・クルーエル。記憶の中にある書物の記載、そこから今回の罠に類似する事例を辿る――飛翔する矢は体を逸らし、槍衾は微かな音を頼りに飛び越える。様々なトラップを容易くトラップを攻略していく彼の姿を見て新人達も奮い立ち、布都乃に指示された装備を整えトラップ群へと挑んでいく。先行したシャムロックの教えもあり順調にトラップを潜り抜け通路を進む新人達。
「よしよし……これなら簡単に突破でき……ってうわぁ!ガスが噴き出して来た!?」
「慌てないでください。防毒マスクを装着すれば問題ありません」
「……?なんだか変な音が……きゃあああ!?大きな岩が転がってくる!?」
「大丈夫です。気合で走れば逃げきれます」
『気合とは便利なものじゃのう……』
時折、危機に陥る事があれど同行する布都乃がさりげなく彼らを補佐し守っていく。このまま順調に進むかと思われたがそうはさせまいと言わんばかりにモンスターの群れが姿を現した。――が、間髪入れずに布都乃は群れに向かって走り出す。
「私が引き付けます!そのうちに突破を!」
刀を抜き放ち一閃。その勢いのままに体を翻しもう一刀を抜き薙ぎ払う。布都乃に先手を取られたモンスターの意識は全て彼女に向けられ、布都乃が有利を取ったまま戦いは続く。そろそろ新人達が通路を抜けた頃だろうかと視線を通路の奥へと向けた瞬間、布都乃の背後にモンスターが迫る――響く銃声。攻撃が届く事無くモンスターは地に斃れ伏した。布都乃の視線の先には黄金銃を構えたシャムロックが立っていた。
「ご苦労だった。新人共は無事に抜けたぞ。先に進むとしよう」
「分かりました。合流します……!」
先導と陽動。2人の役割分担は功をなし新人達を無事に導く事に成功した。散り散りにダンジョンを進んでいた初心者パーティーは猟兵達の働きにより合流を果たし最後の部屋を目指して進んでいく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 集団戦
『アマルガムビースト』
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POW : バグプロトコル・クロー
自身の【爪】が触れた対象に【バグ】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。
SPD : アマルガム・ゲイル
【魔獣のオーラ】を纏いレベル×100km/hで疾走する。疾走中は攻撃力・回避力・受けるダメージが4倍になる。
WIZ : ミューテーション・プロトコル
【体表面に出現する「魔獣の顎」】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ダンジョンの最奥へ辿り着き、装飾が施された大きな扉を開いてその先に足を踏み入れれば其処には巨大な広間が待ち構えていた。石柱に植物が生い茂り、一部崩壊した天井からはカーテンのように光が差し込んでいる。その部屋の中心部に鎮座するは燃えるような紅い鱗を持ったドラゴン――それこそが『初心者クエスト』クリア条件のダンジョンボスモンスター「レッド・ドラゴン」だ。幸いにもレッド・ドラゴンはバグの影響を受けていないようでここまで様々な経験を得て辿り着く事が出来た初心者達なら十分に渡り合う事ができるだろう。――然し、問題はその周辺をうろついているバグプロトコル『アマルガムビースト』。初心者達がボス戦に専念できるように猟兵達はバグプロトコルの気を引く為に歩みを進め。初心者達はレッド・ドラゴンへと対峙する。――大気を揺るがすレッド・ドラゴンの咆哮。反響するアマルガムビーストの雄叫び。それを合図に今、クエスト最後の戦いが幕を上げた。
――――QUEST LASTBATTLE START!!!――――
天道・あや
◎
よし!それじゃ、そっちのドラゴンは任せた!あたしはこっちやらせて貰うぜッ!
あ、大丈夫、大丈夫。ドラゴンはダンジョンのでyou達なら此処までの経験あれば問題ナッシング!
それにこっちの敵はあたしが絶対通さないから!
それじゃ、合図の後にスタートね?
ボスよし!あたし達よし!クエストクリア率ーー100%!
本日最後の一曲、スタートッ!
ダッシュで突撃して、存在感、挑発で敵の注意をあたしに向けて、誘き寄せる!
相手はバグ、下手に触れたらどうなるか分かんない!ならダンスしながら見切り避けるぜ!
そうしながらUCを発動して、あっちのルーキー達にもパワーを与えながら、こっちも攻撃!
パンチ!キック!【属性攻撃炎、鎧砕き
轟くレッド・ドラゴンの咆哮。その振動が空気を伝わり肌をヒリつかせる。天道・あや (|スタァーライト《夢と未来照らす一番星!》・f12190)はそんな中でさえ|気圧《けお》される事なく戦場に立ち続けている。
「よし!それじゃ、そっちのドラゴンは任せた!あたしはこっちをやらせて貰うぜッ!」
ドラゴンを取り囲むバグプロトコル『アマルガムビースト』。がなり立てるその魔獣達に向けてビシッと指を差せば、そんな彼女の姿に初心者達は戸惑いの声を上げた。
「俺達だけであのボスの相手を!?」
「今までは皆さんの助けがあったからどうにかなったけど私達だけじゃ……」
不安感から尻込みする初心者達。そんな彼らに向けてあやは今まで彼らに見せた中でも一番の――それこそ|一番星《スター》の如き笑顔を見せた。
「大丈夫大丈夫!今までの活躍はしっかりと見てきたからね!これまでのダンジョンで経験を積んできたyou達ならあのドラゴン相手でも問題ナッシング!それに――」
グッとサムズアップをキメるあや。続けてウィンクをすると颯爽と体を翻しアマルガムビースト達を真っ直ぐに見据える。
「こっちの敵はあたしが絶対に通さないから!――それじゃ準備は良い?合図の後にスタートするよ!」
――静寂。モンスターの群れと向き合い対峙するあやの背中に初心者達は思わず息を呑む。そして波が押し寄せるように初心者達の声が上がった。
「ああ!やってやる!なぁ、みんな!クエスト初クリアを飾って凱旋してやろうぜ!」
「最後まで頼りっきりってのも格好付かないしね。やってやろうじゃない」
初心者達の声を背に受けながらあやは腕を大きく振り上げる。
「ボスよし!あたし達よし!クエストクリア率――100%!!本日最後の一曲――スタートッ!」
あやの合図と共に初心者達は一斉にレッド・ドラゴン目掛けて駆け出した。その先頭を誰よりも速く流星のように駆けるのはあや自身だ。
「さぁさぁ!未来を照らす一番星此処に参上!遠からん者は音楽を聴け!近くば寄ってダンスを見よ!」
アマルガムビーストの目前へと飛び込んだあやはバッチリとポーズをキメると口上を述べる。星屑のエフェクトがキラリと煌めくその立ち姿はアマルガムビーストの注目を一身に集めるには十分だった。アマルガムビーストが一斉にあやに飛びかかるのと、初心者達がレッド・ドラゴンと交戦を始めたのはほぼ同時だった。
『グォオオオオオオッッッ!!!』
地響きのような一帯を揺るがす咆哮。あやの視界に映るのはアマルガムビーストの前脚から生えた歪んだ牙が敷き詰められた口。異形の大口があやを噛み砕かんと迫る光景だ。噛まれたとしても恐らく耐えられるだろう。然し、此処は発見されたばかりの新世界。ゲームの中の世界。バグ相手に下手に触れたらどうなるものか分かったものではない。で、あるならばそもそも触れないのが最善だ。牙が体を貫くその直前にあやは身を引き、追撃とばかりに迫る爪はステップを踏んで右へ左へと重心を移動させ避けていく。伸ばされた海洋生物のような触手――それを体を軽やかに翻し避ければここぞとばかりにポーズをキメる。
「いえーい!ノッてるかーい!まだまだこんなもんじゃないよ~?」
文字通り、踊るように鮮やかにアマルガムビーストの攻撃から逃れて翻弄するあや。ビースト達はすっかりあやに夢中になり初心者パーティーには目もくれていない。そんな初心者達はドラゴン相手に善戦を繰り広げていた。
「大丈夫だ!慎重に協力していけばやれる!」
「ダメージを受けた!回復をお願い!」
「おっけー!任せろ!」
初心者ダンジョンとは言え、ボスの攻撃は苛烈なものだ。そんな攻撃に晒されながらも初心者パーティーは以前にあやから受けたアドバイス。これまで培ってきた経験を活かして見事な連携で立ち回っていた。
「ほーう?ルーキーくん達やりますなぁ~それじゃ、あたしも張り切ってやらせて貰いますか!」
懸命に戦う初心者達を視界の遠くに捉え、自分も負けてられないと気負い立つ。そんなあやの想いが具現化し、その手にはマイクが握られる。
「さぁ!未来のスピードに乗ってこのままゴールまで突き進んで行くよ~!聴いてください!Dream Onestep!future GO!」
響き渡る咆哮や爆音を塗り替えるように爽快な音楽が響き渡る。夢へと踏み出し、希望を胸に未来へと進むその背を押してくれるような曲。思わず体が動いてしまうようなリズムに乗ってあやの歌声が響き渡る。
「夢へと一歩 ステップ! 未来へ GO! 自分を信じて前へと踏み出そうー♪ 世界へ宇宙へ 伝えようぜ 夢を 未来を 全てをーー!」
それはこの大広間の全ての者へ――その心と魂に響き渡る。
「この歌は……ははっ!粋な事をしてくれるじゃないですか!」
「凄い凄い!本当にラストバトルに相応しい盛り上がりじゃない!」
「よし!このまま押し切るぞ!」
その歌は初心者達の心を震わせ、そして力を漲らせた。その様子に不味いと思ったのかビースト達は束となってあやへと襲い掛かる。その様を見る彼女のその瞳には――一番星が輝いていた。
「おっと――ライブ中の乱入はご遠慮くださいお客様ァ!」
飛び掛かるビーストの顔面に向かって振り抜かれるあやの拳。それは芯を捉え燃え盛る|大輪の華《炎》を咲かせビーストを吹き飛ばす。背後から飛び掛かってくるのを屈んで躱し、そのまま立ち上がりざまに迫り来るビーストにキックを放つ。ビーストは咄嗟に身を固める――が、あやの強烈な炎の蹴りはその防御ごとビーストを蹴り砕いた。
「ルーキーくん達のデビュー戦!あたしが華々しく飾ってあげましょう!さぁ、どんどん掛かって来なさーい!」
ビーストが倒れ伏す広間の中。あやは天を指さし凛として残るビースト達と対峙する――
大成功
🔵🔵🔵
菜花・深月
皆はボスに集中して!雑魚敵はうちに任せて!
と敵を引き付けるように前へ出た
させないよ!
敵にUCを使われる前にUCを発動して周りの敵を凍らせてから神聖攻撃の矢弾の雨で攻撃する
それでも逃れた敵が魔獣のオーラを纏い襲い掛かって来た
やばっ?!
推力移動で回避には成功するがUCのバリアは破壊されてしまった
あっ…ああ…
敵に今度こそ殺されると思ったのと同時に浮かんで来たのは祖父の言葉
『物事の優先度を決めておきなさい…そうすれば素早く動けるからのう』
まず優先する事は囲まれないようにする事!
周りを見て初心者達が敵の攻撃範囲に入らないようにしてから方向転換しようとしてきた敵に凍結攻撃の矢弾の雨を放ち凍らせてUCを放つ
響き渡る咆哮を開戦の合図として、レッド・ドラゴンの周囲にたむろしていたアマルガムビースト達が一斉に動き出す。慌てて武器を構える初心者達――その中から飛び出すように菜花・深月 (止まった時間が再び動き出す時・f41809)がアマルガムビースト達に向かって駆けだした。
「深月先輩!?」
「皆はボスに集中して!雑魚敵はうちに任せて!」
初心者達がレッド・ドラゴンとの戦いに専念出来るようにと陽動を試みる。その狙い通りに周囲のアマルガムビースト達の注意は深月の一身に集中した。距離を詰め深月の喉元へと喰らい付こうとビースト達が身構え不穏な動きを見せる――が、それよりも早く深月は月光弓に矢を番えていた。
「させないよ!これがうちのとっておき!」
――|氷刻矢雨の月矢《コキュートス・アルテミス》。攻撃と同時にバリアを展開する攻守優れたUC。その五月雨が月光のような淡色の弧を描きビーストの体を射抜けばその体に氷を纏わせた。体表に霜が降り動きが鈍るビースト。それを深月は見逃さない。間髪入れずに矢を番え引き絞る――姿を捉え弦を弾けば月の光を帯びた聖なる矢が雨の如く降り注ぎ次々とビーストを撃ち抜き地面に縫い付けて行く。――が、その矢雨の隙間。同胞の体を盾に逃れたビーストがまるで仇討ちと言わんばかりに悍ましき魔獣のオーラをその身に纏わせ凄まじい速度で深月へと飛び掛かる。
「やばっ!?」
推力に身を任せ速度を殺さぬように跳ぶ事により直撃は間逃れる――だが、その際に振り下ろされた爪が深月の纏ったバリアを打ち砕いた。ガラスが割れるような甲高い音。星屑のように飛び散る青色を帯びた破片。その合間から怒り狂うようなビーストの瞳を覗き込んでしまった。――ドクリと心臓が脈打ち、鈍痛が奔る。
「あっ……ああ……」
――二度目は無い。昏い記憶が蘇る。この身を奴隷に堕とした忌まわしき記憶。押し寄せる悪夢の記憶に体が動かない。視界に映るのは今度こそ、その命を絶とうと迫るビーストの姿。――殺される。息が詰まり、青い瞳に涙が浮かぶ。
『――深月』
またあの声だ。穏やかないつかの記憶。懐かしき祖父の声――
『物事の優先度を決めておきなさい……そうすれば素早く動けるからのう』
「――ッ!?」
死の情景と共に浮かんできた祖父の言葉。その瞬間、頭の中の靄が晴れるかのように意識が鮮明とし愚鈍だった世界に速度が戻る。
「――まず優先する事は囲まれないようにする事!」
以前よりも体が軽い。深月は飛び掛かって来たビーストの振り下ろした爪を体を逸らして避けるとそのまま横を通り抜けるように交差した。周囲の確認――素早く視線を巡らせる。先ほどの先制攻撃で多くのビーストを打ち倒す事に成功していたがそれでもまだ数は多く、既に遠くにいたビーストも集まりつつあった。このままこの場所に留まれば囲まれるのは必然。そう考えが浮かんだ時には既に深月は走り出していた。
「深月先輩がモンスターのタゲを取ってくれてる間に終わらせるぞ!」
「これが最後なんだから出し惜しみなんかしなくていいからね!」
深月の視線の先では初心者達がレッド・ドラゴンとの激戦を繰り広げている。彼らをこっちの戦いに巻き込む訳にはいかない。――死ぬのは怖い。――だけど、あの人達を過去の自分のような目に遭わせる訳にはいかない。深月は新人達とドラゴンが交戦する場所とは真逆の方向。その中でもビーストの配置が甘い場所に向かって駆けて行く。当然、ビースト達は深月を逃すまいと追撃しようとその体を翻す――が、次の瞬間。気温が急激に下がったかと思えば矢の雨が着弾し、あちこちに氷柱を作り上げる。ビースト達の瞳に映る光景――それはこちらを振り向き、月光弓を引き絞る深月の姿だった。
「二度目の正直!もう一度、とっておきをお見舞いしてあげる!」
凛と|撓《しな》り、弾ける弓矢。|玲瓏《れいろう》な弧を空に描き翔ける月矢は吠えるアマルガムビーストを撃ち抜いた。どさりと倒れ伏すビースト、その向こう側では今もなお初心者達がドラゴンと戦っている。陽動の成果もあり、何の気兼ねも無くボス戦に集中する事の出来ている初心者達は今までの戦いで成長していた事もあり順調にドラゴンの体力を削っている。このままいけばクエストクリアもそう遠くはないだろう。安堵の息を漏らす深月の周囲に再びビースト達が集まってくる。深月は一度深く呼吸をすると、月光弓を強く握り締めた。
「頑張ってねみんな……!さて、うちももう一頑張りしようかな!」
広間にはドラゴンの咆哮と、初心者達の声が響き合っている。
成功
🔵🔵🔴
天羽々斬・布都乃
◎〇
「あれがバグプロトコル……」
『気をつけよ、布都乃』
「――わかっています」
天羽々斬剣と布都御魂剣を抜いて、右目を開き――
「きゃあっ」
『大丈夫か、布都乃!?』
「……かすり傷です。それより――」
私の肩口に掠った牙。
それによって魔獣の瞳が金色に変化し――。
『まずい、奴め、布都乃の未来視をコピーしおった!』
「くっ、こちらの攻撃が避けられて!?」
お互いに未来を視て攻撃を回避しあって――
これでは私の体力が先に尽きてしまいます……
『ええい、仕方がない。
そこのレッドドラゴンよ!
お主、ドラゴンプロトコル――管理人なのじゃろう!?
ちっとはバグ退治に協力せい!』
「えええっ、そんなのありですかー!?」
「あれがバグプロトコル……」
天羽々斬・布都乃 (未来視の力を持つ陰陽師・f40613)が対峙するは異形の獣アマルガムビースト。レッド・ドラゴンとの決戦に挑む初心者達への注意を逸らす為に布都乃は単身でアマルガムビーストへ挑もうとしていた。
『気をつけよ、布都乃』
「――分かっています」
距離を測るように布都乃とアマルガムビーストはお互いに構えたままジリジリとその距離を詰めて行く。
『来るぞ!』
式神いなりの言葉に布都乃は鞘を滑らすように天羽々斬剣と布都御魂剣を同時に引き抜いた。その白刃が玲瓏な光を宿し、布都乃の未来を見通す黄金の瞳が開かれる――
『いかん!躱すのじゃ布都乃!』
「――ッ!?」
アマルガムビーストの群れの中を縫うようにして猛進してきた一体のアマルガムビーストがその暴力的な迄の速度のままに布都乃へ飛び掛かる。布都乃は咄嗟に自分の体を無理矢理に飛び退かせ回避する。――が、一瞬。ほんの僅かに反応が遅れた事が仇となりアマルガムビーストの歪んだ牙が布都乃の肩口を掠める――鋭い痛みが奔る。
「きゃあっ」
『大丈夫か、布都乃!?』
「……かすり傷です。それより――」
傷を受けた事自体に問題はない。それよりも布都乃が危惧したのは金色に変化していくアマルガムビーストの瞳。胸騒ぎがする――
『まずい、奴め、まさか布都乃の未来視をコピーしおったか!?』
「させません!」
布都乃は咄嗟にアマルガムビーストの懐に飛び込んで剣を横薙ぎに払う。この速度。この距離ならば避ける事など不可能――然し、魔獣はその攻撃が来る事を予知していたかのようにいとも簡単に避けてみせた。
「くっ!?こちらの攻撃が避けられて!?」
――ミューテーション・プロトコル。アマルガムビーストは僅かに喰らった布都乃の血を以てその技を模倣した。――|未来干渉を観測する瞳《リーディング・バタフライエフェクト》。布都乃は己の未来視の力と対峙する事になる。唸り声を上げ、尾を布都乃に向けて振り下ろす魔獣。そうなる未来は既に視えていた。布都乃が立ち位置を僅かにずらせば尾が石畳を砕き割る。その風圧を受けながら尾をそのまま断とうと剣を振るえば魔獣は素早く尾を引き戻す。お互いに先を読み合う攻守の応酬は永遠に終わらない演舞のように繰り広げられている。
「くっ……このままじゃあ……!」
未来が視えていても反応しきれない。この応酬で着実に布都乃の体力は削られていき徐々にその動きに鈍りが見え始める。純粋な持久戦となれば布都乃の体力の方が先に尽きるのは明白だった。万事休す――遠くでドラゴンの咆哮が響き渡る――その時、不意に布都乃の肩に式神いなりが駆け上がって来た。
『ええい、仕方がない。そこのレッド・ドラゴンよ!お主、ドラゴンプロトコル――管理人なのじゃろう!?ちっとはバグ退治に協力せい!』
いなりのとった行動はまさかのレッド・ドラゴンへの協力要請。予想だにしないその作戦に布都乃は当然ながら驚愕する。
「えええっ、そんなのありですかー!?」
レッド・ドラゴンは離れた場所で初心者達と激闘を繰り広げている。いくらなんでもその作戦には無理があるのでは――そう思った矢先。
《グギャァァァ!――ああ、もうやる事が多い!》
ドラゴンの咆哮に混じりそんな声がしたかと思えばレッド・ドラゴンが大きく翼を掲げ、こちらに向かって火球を放った。予想しえぬ第三者の介入。未来視の範疇を超えた攻撃にアマルガムビーストは対応できず火球をその体にもろに受け爆発炎上し燃え尽きた。
「ま、まさか本当に手を貸してくれるなんて……」
『流石、出来る管理人は違うのう、天晴じゃ!』
バグであるアマルガムビーストが爆散したのを見届けるとレッド・ドラゴンは再び初心者との戦いに専念――したかと思えば再びアマルガムビーストの群れに向かって火球を放った。初心者相手にも全力を尽くしつつ、バグの排除に勤しむその姿に、布都乃といなりは何処か哀愁のようなものを感じ取った。
「なんだか大変そうですね……」
『管理職とはとにも難儀なものじゃのう』
哀愁漂わせるレッド・ドラゴンを視界に捉えたまま言葉を交わす布都乃といなり。そんな最中、レッド・ドラゴンの火球で燃え盛る炎の中から今だ健在のアマルガムビーストが数体飛び出してくる。その様子に気が付いたいなりが布都乃へ注意を促した。
『さぁ、まだやるべき事は残っておるぞ。あやつらがくえすとくりあするまであと少しの辛抱じゃ』
「はい……!初心者の方々の為にも……頑張ってくれてるドラゴンプロトコルさんの為にも負けられません!」
迫り来る魔獣達を前に布都乃は天羽々斬剣と布都御魂剣の2剣を構え、深く息を吸い込み精神を研ぎ澄ませる。猛る魔獣、風を切り振り下ろされる獣の爪――それを布都乃は一太刀の下に切り伏せた。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「いよいよボス戦だな。[気合い]入れていこうぜ。
キミ達は全力でレッド・ドラゴンと戦ってくれ。
オレはその邪魔をするモンスターをやっつけるからさ!」
笑顔で背中を叩いて見送る
「…さぁてと。コッチもお仕事始めようか!」
UCを発動させて超速でアマルガムビーストに接近
攻撃を[根性]で避けながら拳を叩き込み続ける
強力なUCだって当たらなければ問題ねえ!
そして、[存在感]を放ってビーストの目をオレに引き寄せる
いや、こんだけぶち込めば嫌でもオレに注意が向くか!
「さあ、コイツで決着だぜ!」
足に[力を溜め、][限界突破]!
「超必殺!ブレイジング・キイイック!!」
全力の飛び蹴りを叩き込む
広間に轟くレッド・ドラゴンの咆哮。ボスに相応しいその威圧感に初心者達は言葉を無くし呆然と立ち尽くしていた。そんな初心者達の前へと歩み出たのは真紅の|英雄《ヒーロー》。空桐・清導 (ブレイザイン・f28542)だった。
「いよいよボス戦だな。気合い入れていこうぜ。キミ達は全力でレッド・ドラゴンと戦ってくれ。オレはその邪魔をするモンスターをやっつけるからさ!」
そう言って笑う清導に初心者達はお互いの顔を見まわし合い、そして力強く頷いた。これまで、幾度と無く彼らは清導に助けられてきた。それは何もバグプロトコルの魔の手から命を救われただけでは無い。清導の真っすぐな笑顔、言葉に精神面でも彼らは救われてきたのだ。今回もまた、清導のその言葉に消えかけていた初心者達の闘志の火が再び灯ったのだ。
「――はい!せっかくここまで来たんだ!絶対にクリアしてみせます!」
「最後まで面倒を見てくれてありがとう!ボスは必ず私達の手で……!」
「ははっ!その意気だルーキー!――さぁ、行ってこい!」
そう言って清導は激励を込めて初心者の背中を叩いて最後の戦いに向かう彼らを見送る――視線を移せば広間の全域に跋扈するバグプロトコル『アマルガムビースト』の姿が視界の中に捉えられた。恐らく、ボス戦に挑む初心者達の虚を突き|遺伝子番号《ジーンアカウント》を喰らおうという腹積もりなのだろう。ゲーム世界内のクエストに発生したバグという特性上、管理者であるドラゴンプロトコルも即座に対応できないのが実情だ。そんな時だからこそ、猟兵の出番なのだ。
「……さぁてと。コッチもお仕事始めようか!」
――スーパー・ジャスティス。己の正義を貫く時だ。ヒーローとして猛る熱き意思が黄金のオーラとなってその身を包む。活力が漲る――体の奥底から力が溢れて来るのを感じる。清導は拳を握ると視線の先のアマルガムビーストを真っ直ぐ見捉えた。
「行くぜッ!」
音すら置き去りにするスピードで清導は敵を目掛けて駆けて行く。アマルガムビーストがその接近に気が付いた時には既に拳を振り上げ構える清導の姿が目の前にあった。
「どりゃあッ!」
全力を以て、アマルガムビーストの横面に拳が叩き込まれる。何かがひしゃげるような乾いた音――ギロリとアマルガムビーストの瞳が清導に向けられ、肉体の構造を無視した力ずくの動きで大木のような前脚の爪を清導を捩じ切らんと振るう。攻撃を放った直後の清導は当然回避行動を取れる体勢では無い。然し――
「うおぉぉぉッ!!根!性!だぁッ!」
あろう事か清導はその凄まじいまでの根性で無理な体勢のまま攻撃を避ける。その勢いを活かし石畳が砕ける程力強く足を踏み込ませ体勢を戻すとアマルガムビーストに連撃を加えて行く。
――1撃。――2撃。――3撃。
その猛攻に耐えきれなかったアマルガムビーストは地面に体を打ち付けながら吹き飛ばされ広間の壁へと激突する。息をつく暇も無く影2つ。清導の背後に回り込んだ他のビーストがその背を襲う。だが、怯む事なく清導はそれを迎撃し烈しく殴打を浴びせ掛けた。アマルガムビーストの群れを前に大立ち回りを披露し獅子奮迅の活躍をみせる清導の存在感は当然の如くその場にいる者の視線を釘付けにした。それは初心者達の目にも留まり、彼らを奮い立たせる。
「すげぇ!めちゃくちゃ派手で映画みたいだぜ!」
「モンスターの注意を引き付けてくれてるおかげでボスに集中できるわ!」
「あと少しだ!ガンガン攻めるぞ――って、アッチぃ!……熱いけど……気合で耐える!」
清導の陽動戦も初心者達の決戦もどちらの戦いも佳境を迎え、最高潮の盛り上がりを見せている。周囲を囲むアマルガムビースト達を前にして、清導は初心者達の声を背中越しに聞いている。
「見込んだ通りやるじゃないか!俺も負けてられないな!」
視界に映るのは一斉に飛び掛かってくるアマルガムビースト達。清導はそんな魔獣を前に口角を上げる。
「さあ、コイツで決着だぜ!」
神経を研ぎ澄ませ、足に力を込める。――限界など気にするな。燃え滾る魂で超えていけ。腰を落とし、息を深く吸い込む。迫り来るアマルガムビースト、次の瞬間に清導は跳んだ。石畳を踏み砕く程の勢いで自らアマルガムビーストに飛び込む清導。そんな彼に向かって鋭い爪が振り下ろされる――刹那、風切り音が響いた。
「超必殺!ブレイジング・キイイック!!」
アマルガムビーストの攻撃を遥かに凌ぐ速度で繰り出された跳び蹴り。限界を超えたその一撃はアマルガムビーストをその攻撃ごと粉砕する。大気が揺らぐ程の衝撃。魔獣の群れはその一撃で木の葉のように薙ぎ払われ石畳の上へ転がった。
「さぁ、ルーキー!次はキミ達の番だぜ!カッコよく決めてくれよ!」
最終局面――誰にも邪魔をさせてなるものか。清導の陽動の下、初心者達は目の前に見えるゴールに到達する為、苛烈な戦いを続けている。
成功
🔵🔵🔴
上野・修介
◎〇
「この冒険は元よりあなた達のモノだ。
雑魚は引き受けますが、俺からそれ以上の手助けはしません」
最後に一言。励ましや気休めでなく、確信を持ってそれを口にする。
「あなた達なら成し遂げられます」
調息と脱力。
目付は広く、場と氣の流れを観据える。
――為すべきを定めて、水鏡に入る
「推して参る」
真正面から敵陣に突貫。
敵の懐から懐を渉るように常に動き周り、また遠距離の敵に対してはアサルトペン投擲による牽制・挑発を入れながらヘイトを稼ぎつつ殲滅。
無粋や横槍は入れさせない。
【爪】による攻撃を最大限警戒。
攻撃軌道を予測し極力被弾を回避するが、受けざる得ない際は被弾予測部位から氣を急速放出し弾くことで対抗。
ダンジョンの主たるドラゴンの威圧感、響き渡る咆哮に緊張を隠せない初心者達を前にして上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は静かに彼らの顔を見廻した。その表情はどれも不安に苛まれ、修介の指示を待っているようだった。そんな彼らを真っすぐその瞳で見据え、修介は言葉を紡ぐ。
「この冒険は元よりあなた達のモノだ。雑魚は引き受けますが、俺からそれ以上の手助けはしません」
その言葉の通りに本来、この初心者クエストは初心者のみで挑むべきものだ。然し、バグプロトコルの干渉という異例の事態により修介ら猟兵達が介入する事になった。バグプロトコルの排除は当然として、全面的に修介達が初心者達に協力すれば容易くクエストをクリアする事も可能だろう。――だが、それでは未来が無い。初心者達の現実世界に大きな影響をもたらすこの究極のゲーム、|GGO《ゴッドオンラインゲーム》は本当の意味で彼らの人生そのものと言えるだろう。だからこそ、この先、彼らが猟兵達の力なしでも戦えるように自分達で成し遂げなければならない。修介は初心者達の未来を見越して彼らに委ねる事にした。その事は初心者達も薄々気が付いている。だが、改めてそう言葉にされるとやはり不安を抱くのは仕方のない事だろう。そんな初心者達に修介は最後に言葉を贈る。
「――あなた達なら成し遂げられます」
今まで彼らと共に戦っていたからこそ分かる。近くでその成長を見ていたからこその確信だった。励ましや気休めでは無い。修介は心から彼らを信じ、その背を押した。
「はい……!今まで色々参考にさせて貰いました!大丈夫です!やって見せます!」
「ようし!みんな行こうぜ!晴々しいGGOデビューを飾ってやろうぜ」
自信を胸にレッド・ドラゴンとの決戦に向かう彼らを見送り、修介は静かに広間を跋扈する魔獣アマルガムビーストを見据えた。後は己がすべき事を為すのみだ。
呼吸を一つ。酸素が体を巡り神経が研ぎ澄まされていく。柔をもって剛を制す――適度の脱力が靭やかな動きを可能とさせる。息を吐き、視野を広く保ち広間全域とその氣の流れを正確に見据える。
――心は静寂に満ちている。その漣の無い水鏡に映るは己が為すべき役目だけ。
「――推して参る」
敵の正面目掛けて地を蹴りつける。一歩、二歩。腰を落とし足を踏み出すたびに速度は加速していく。体の氣を巧みに操り、場の氣の流れを読む。体勢を安定させ最短距離を駆ける修介は瞬く間にアマルガムビーストの懐へ飛び込んだ。アマルガムビーストは飛び退こうと脚に力を込める――が遅い。速度を乗せた修介の掌底はアマルガムビーストの顎を打ち砕き、思わず怯んだ所へ追撃の拳が即座に打ち込まれた。修介の襲撃に成すすべなく吹き飛ばされるアマルガムビースト。その同胞の姿を見た他の魔獣達は警戒態勢を取る。
「――シッ!」
石畳へと叩き伏せられる魔獣。修介はその警戒態勢の中を潜り抜けるように敵の懐から懐を渉るように移動を繰り返し敵陣をかき乱す。戦いが混沌としていく中、初心者達もまた、レッド・ドラゴンと激しい戦いを繰り広げていた。
「敵の攻撃は俺が防ぐ!ヒーラーは回復に専念してくれ!」
「裏を取った!強烈な一撃を入れてやるぜ!」
初心者達は各々の強みを活かし、その連携でレッド・ドラゴンを追い詰めていく。各地で分散し陽動戦を仕掛ける猟兵達の立ち回りが功を奏しバグプロトコルの干渉を受けずに順調に戦いが推移していると思われたその矢先、一部のアマルガムビーストが混戦状態に乗じて移動を開始した。バグプロトコルの本能とも呼べる挙動なのか|遺伝子番号《ジーンアカウント》の焼却を優先しようとする傾向があるようだ。そんなアマルガムビーストの横面に鋭利なアサルトペンの切先が突き刺さる。
「あれは彼らの戦いだ。お前達に出る幕はない。――無粋な真似をするのなら俺が止めてやる」
アサルトペンを投擲し魔獣の思惑を阻んだ修介。そんな彼に対し、邪魔をされた魔獣は苛立ち気に咆哮する。彼らの戦いに無粋な横槍など入れさせない。その為に魔獣の気を引き付ける事こそが今の自分が成すべき事だ。使命を果たす為、直実に敵のヘイトを集め群がる敵相手に立ち回っていく修介。そんな彼に魔獣の爪が迫る――爪とは呼ぶにはあまりにも歪な刃物。咄嗟に身を引いて躱せば風切音と風圧が修介の髪を微かに揺らす。続けて繰り出される連撃――氣の流れを読みその軌道を予測する。身を屈ませ横に跳べばさっきまで居た場所の石畳が抉られる。更に追撃として迫る尾を跳躍で躱せば再び凶悪な爪が修介を捉える。――避けられない。爪が皮膚を切り裂くその刹那。
「切り札というのは最後まで隠しておくものだ」
爪が触れようとするその位置に氣を集中させ一気に放出し攻撃を弾くと修介はお返しだと言わんばかりの強烈な一撃をアマルガムビーストに叩き込んだ。石畳を転がっていき動かなくなる魔獣。後方からは初心者達の必死に戦う声が背中越しに聞こえている。
「あと少し……あと少しだ!みんな頑張れ!」
「ダメージレースはこっちが勝ってる!大丈夫!やれる!」
彼らなら大丈夫だ。修介は初心者達を信じ、後ろは振り向かない。今やるべき事は目の前の魔獣達を此処で足止めする事だ。
「――この先には行かせん」
決着まであと僅か――その時間を稼ぐ為。修介は魔獣の群れと交戦を続けていく。
大成功
🔵🔵🔵
シャムロック・ダンタリオン
ふん、いよいよ大詰めといったところか。
よかろう、ボスの方は任せた。僕らはそこのうっとうしい雑魚ども殲滅してやろう(【威厳・存在感・悪のカリスマ】)。
――で、こいつらは噛みついた者の能力を奪うようだが…(【世界知識・戦闘知識・情報収集】)。
まあ、噛まれなければ問題あるまい。「デバッグ」の「竜巻」で【蹂躙】してやろうか(【属性攻撃・全力魔法・なぎ払い】)――ああ、このままの勢いでドラゴンにもぶつけてやろうか(勿論とどめは新人たちに任せる)。
※アドリブ・連携歓迎
「ふん、いよいよ大詰めといったところか」
ダンジョンの深層。その最後の部屋に鎮座するレッド・ドラゴンとその周囲を闊歩する魔獣アマルガムビースト達。正真正銘の最終決戦――その雰囲気に初心者達は浮足立っていた。興奮から勇み足を踏みかねない者。不安から二の足を踏む者――様々な表情を浮かべる初心者達を一瞥してシャムロック・ダンタリオン (図書館の悪魔・f28206)は不敵に笑った。
「貴様らのハレの舞台だ。よかろう、ボスの方は任せよう。――ああ、うっとおしい雑魚どもは僕が殲滅しといてやろう。貴様らは自分達の戦いに専念するが良い。なに、心配はいるまい。貴様らもここまで生き残って来たのだ。勝てない相手ではないだろうよ」
シャムロックなりの激励。その知識の悪魔由来の厳かな立ち振る舞いは初心者達の背中を押した。
「は、はい!行ってきます!そちらもご無事で……!」
「これがベテラン……!いつか私も……」
勇気を奮い立たせ決戦へと向かう初心者達を見送り、シャムロックはゆっくりと体を翻しアマルガムビーストの群れへと相対する。本能的に警戒せざるを得ない、どこか危険な気配を醸し出すそのカリスマ性。異様な存在感はアマルガムビーストの注目を浴びるには十分だ。周囲の魔獣達は唸り声を上げ、シャムロックを警戒するように距離を保ちつつ様子を伺っていた。
「ふっ……新人らに心配されては立つ瀬が無いな――で、こいつらは噛みついた者の能力を奪うようだが……まぁ、噛まれなければ問題あるまい」
アマルガムビーストの特性、それを調べ上げる事は知識の悪魔の力を以てすれば造作もない事だ。モンスターとしての生態は当然として、バグプロトコルとしての挙動、性質に至るまで調べ上げその行動パターンを把握する。それは謂わば、知識の暴力――図書館の悪魔に相応しい所業だ。ともすれば、後はそれに相応しい対処をすればいいだけの事。シャムロックは不敵に口角を上げ嗤う。
「バグ――であるならば修正してやる他あるまいな?どれ、一つ面白い魔術でも試してみるとするか」
シャムロックがエレメンタルロッドを振るえばたちまちのうちに竜巻が巻き起こりアマルガムビーストの群れを引き裂いた。分解し、修正し、排除する。謂わば、プログラムに於けるデバッグの属性を持つその竜巻はこのゲーム世界のバグの影響を受けたアマルガムビーストにとってはまさに致命的であり、為す術無く薙ぎ払われるその様はまさに蹂躙だ。数体のアマルガムビーストが竜巻の合間を縫ってシャムロックに迫ろうとするがその最大出力で放たれた魔術である竜巻を潜り抜ける事は至難の業で一体、また一体とデバッグの竜巻に巻き込まれ消失していった。
「死体が土へ還るように、大人しく電子の海へ還るが良い。――さて」
シャムロックの視線の先にはレッド・ドラゴンと死闘を繰り広げる初心者達の姿がある。その様子から察するにもうすぐ決着が付くだろうと思われたその時。初心者の1人がドラゴンの反抗により体勢を崩しその身に極めて強烈な追撃が迫ろうとしていた。パーティメンバーのフォローは間に合いそうにも無い、為す術なく退場が確定したと思われたその時――激しい竜巻がドラゴンの攻撃を弾いた。
「おっと、つい勢い余ってちょっかいを出してしまった。まぁ、一人だけ退場というのも味気ないものだろう。くく、運が良かったな」
気転により初心者を救ったシャムロック。それとほぼ同時に歓声が上がった。――ついに初心者達がレッド・ドラゴンを打ち倒したのだ。
倒れ臥すレッド・ドラゴン。気が付けば周囲のアマルガムビーストも一掃されている。鳴り響く勝利のファンファーレ。戦いは終わった。猟兵達が導いたあの初心者達はこのバグに侵された初心者クエストを生き抜き、ついにクリアに至ったのだ。喜びを分かち合う初心者達、それをシャムロックは遠くで眺めている。気が付けば僅かに自分の頬が緩んでいる事に気が付いた。
「ふん、成し遂げたか――見事だ」
バグの浸食を受けるこの世界。その素性の殆どは未だ謎に包まれたままだが、猟兵達の活躍により小さいながらもその謎に風穴が穿たれた今。停滞していた物語が動き出す時は近い。ふと天井を見上げれば戦いの余波で崩れ落ちた天井の一部からは青い空が顔を覗かせていた。――このゲームの世界で人々は今日も懸命に生きている。
――――RESULT――――
◇GET ITEM
・亡霊の朧布
・魔獣の爪
・赤竜の鱗
大成功
🔵🔵🔵