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不思議なママチャリ

#キマイラフューチャー #ノベル

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薬袋・あすか




●キマイラフューチャー
 それは見るからに、怪しげな店だった。
 その店があったのは、繁華街の裏通り。
「いらっしゃいませ、なんだよ」
 キマイラの店主はワケありなのか、ブカブカのフードを被って、必死に顔を隠していた。
 ……怪しい。
 この時点で、凄く……怪しい。
「何か欲しいものがあったら、遠慮なく言ってほしいんだよ」
 その視線に気づいたガジ……店主が、愛想笑いを浮かべて、薬袋・あすか(地球人の鹵獲術士・f40910)を店の奥に案内した。
 店の奥には、ガラクタもとい……沢山のモノが所狭しと置かれていた。
(……怪しい)
 それ以外に、何の言葉も浮かばなかった。
 そこに追い打ちを掛けるようにして、巨大な招き猫が両目をピカピカと光らせ、不気味にニャーッと泣いた。
「……ん?」
 そんな中、あすかが一台のママチャリを見つけた。
「おお、お客さん、お目が高いんだよ。これは由緒正しきママチャリで、力のパパチャリと、技のママチャリの間に生まれたハーフ&ハーフなんだよ!」
 その視線に気づいた店主が、エッヘンと胸を張り、ある事ない事、口にした。
「……」
 正直、意味が分からなかった。
「これは、とっても凄いんだよ! これ一台で陸・海・空、怖いモノなしだからねぇ~♪」
 店主がドヤ顔で、ママチャリの凄さを、説明し始めた。
「……悪くないね。これで足りるかな?」
 あすかがママチャリの状態を確かめた後、店主に数枚ほど札を渡した。
「ひゃあ!? こんな大金、持った事がないんだよっ!」
 店主が驚いた様子で悲鳴を上げ、ドシンと尻餅をついた。
「いや、このくらいはすると思うけど……」
 ハッキリ言えば、適正価格。
 高くもなければ、安くもない。
「い、いや、駄目なんだよ。こんなに、お金を持ったら、バチが当たっちゃうんだよ!」
 店主が青ざめた表情を浮かべ、ブンブンと首を横に振った。
 拾い物には福があると言うが、福の神が大行進してきたため、怖くなってしまったようである。
「だから500円でいいんだよ!」
 店主にとっては、それでも大金だった。
「いや、それじゃ安すぎるから。駄目だよ、そんなの」
 あすかが小さく、首を横に振った。
「それなら、オマケをつけるんだよ」
 店主がバタバタと店内を駆け回り、一対の剣を手渡した。
「これは……?」
 その剣は、見た目に反して軽く、とても手に馴染んだ。
『よぉ、相棒!』
『これから、よろしゅうな!』
 ……剣が喋った。
「それは……『選ばれた者』だけが振るう事の出来る剣だよ」
 店主が、キリリとした表情を浮かべた。
「……あっ!」
 その表情で、あすかがすべてを察した。
 間違いなく、これはヤバイ代物。
 この様子では、ガジ……もとい、店主も扱いに困っていたのだろう。
 話を聞くと、剣が『わい等を捨てるんか!』、『一緒に、天辺目指そうって約束したやん!』と騒ぐため、捨てるに捨てられなかったようである。
「これって、ある意味……呪いのアイテムじゃあ……」
 あすかが気まずい様子で汗を流した。
 何となく、呪われた気分。
「処分は……いや、後の事は、任せたんだよ」
 店主が瞳をウルウルさせていた。
 ここで受け取りを拒否する事は、死刑宣告にも等しかった。
「それじゃ、もらっておこうかな」
 それが分かっていながら、拒否する事は出来なかった。
「ありがとうございます、なんだよ」
 店主が、とても喜んだ。
『こりゃ、めでたい!』
『一生ついていきやすぜ』
 剣も、ノリノリで喜んだ。
(ど……、どうしよう)
 そして、あすかは複雑な気持ちになりつつ、ママチャリに乗って帰路につくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年10月30日


挿絵イラスト