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月神様と秋のお祭り

#サクラミラージュ #ノベル #猟兵達の秋祭り2023

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神月・瑞姫
秋の豊作を祈るお祭りに参加
どこもかしこも美味しそうなものがいっぱいで楽しそう
月神様に使える戦巫女のみぃは、和傘を差し
何処か興味深そうにそんな中を歩いていく
「…賑やかなの これだけいっぱい採れたら、冬も大丈夫だよね 月神様」
「くす…大丈夫 みぃには神様がいるから 寂しくないの」
「くしゅん…うん…ちょっと肌寒くなってきたの」
なにやら、狐のお面と独り言を繰り返す不思議な妖狐の少女である

「紅葉を見て楽しめる天然温泉…? 神様、入ってもいい?」
暖を求める少女は、狐面を抱いて温泉宿へ
大事そうに面を洗い清める姿は奇異に映るが、これが巫女としての
彼女のお勤めなのかもしれない
「真っ赤に染まった紅葉…綺麗なの」

冬の足音が近づく
だけど、この温もりを抱いて 少女は神様とこれからも歩んでいく
人々の笑顔を守りたいと
願わくば、その小さな道程に幸多からん事を



 秋風に吹かれ、桜が舞う。祭りの出店に並ぶ栗やさつま芋の菓子がなければ、春が来たかと見紛う光景かもしれない。人混みから背を伸ばし、好奇心旺盛に売り物を覗く少女がひとり居た。
 瑞姫が大切そうに握る青い和傘にも、花の雨が降りそそぐ。新しく仕立てた巫女服は、フリルとリボンが随所にあしらわれた愛らしいものだ。足取り軽やかに賑わう参道を歩けば、鈴の髪飾りがころころと音を立てた。
「……賑やかなの これだけいっぱい採れたら、冬も大丈夫だよね 月神様」
 この世界ではハイカラな菓子とされるモンブラン。葡萄や梨を使った練り切り。それらを求め列に並ぶ人々は、連れ立って来る者も多い。秋の野菜や果物を詰めこんだ風呂敷を手に下げた瑞姫は、なぜか被った狐面に視線を向ける。
「くす……大丈夫 みぃには神様がいるから 寂しくないの」
 なにやら『月神様』は心配しているらしい。独り言に気づいた者がふと瑞姫をふり返る事があっても、気にかけない。この祭りも元々秋の名月にちなんだものだが、神様がこんなに近くにいるなんて、誰も知らない。

「くしゅん……うん……ちょっと肌寒くなってきたの」
 面を手に取り、微笑んだあと、くしゃみをひとつ。月神様はやっぱり心配そうだ。どこかに暖をとれそうなものはないだろうか。祭りで賑わう一角からすこし離れ、周辺を散策していると、庶民的な温泉宿が見つかった。日帰リ入浴在リ〼、と書いてある。
「紅葉を見て楽しめる天然温泉……? 神様、入ってもいい?」
 同伴者の了承を得て暖簾をくぐる。温泉に入るのも勿論、神様と一緒だ。
 面が傷つかぬよう、丁寧に洗い清める瑞姫の姿を見た近所の住民たちが、あら大事な物なのねえと彼女に声をかける。洗い場に面を持ちこむ姿を奇異に思ったのだろう。
「巫女のお勤めなの」
 そう胸を張って答えれば、人々は微笑ましげにふたりを見た。その笑顔で、瑞姫の心もあたたまる。冬の足音が近づく。だけど、この温もりを抱いて 少女は神様とこれからも歩んでいく。
 鮮やかに染まった紅葉の木で囲まれた外湯につかれば、冷えた身体も暖まる。参道で見た光景。街の人々とのふれ合い。瑞姫は改めて、民の笑顔を守りたいと強く感じた。
 願わくば、その小さな道程に幸多からん事を――。
「真っ赤に染まった紅葉……綺麗なの」
 狐面を空に掲げ、一緒に見てほしいのとちいさな巫女は笑む。神様の笑う声は、彼女にだけ聞こえたことだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年10月30日


挿絵イラスト