過ぎ去りし幻影、あるいは来たるべき未来へ
#UDCアース
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●
学校の帰り道。今日は委員会が長引いて遅くなってしまった。家に着く頃には、家族は夕食を食べ始めているかもしれない。小走りで道半ばまで来たけれど、少し疲れた。
街灯が点々と灯されてはいるものの、中には消えている場所もあって、そこだけぽっかりと穴があいたようだと思った。
「……早く帰ろっ」
人通りがない夜道はなんとなく心細くて、自然と歩みの速度が速まる。
ようやく、自販機のところまできた。住宅街の住民もよく利用する。今日も誰か――真っ赤なコートのお姉さんが飲み物を求めていたみたい。
軽く会釈をして横を通り過ぎた時。
「私、綺麗?」
「えっ?」
急に話しかけられて驚いた。振り向けば、女性は飲料を買うでもなく、じっとわたしを見つめている。返事をしないわたしに構わず、繰り返される質問。
「私、綺麗……?」
正直なところ、いきなり話しかけられた時点で不気味ではある。それにこの女性、マスクで顔の半分も見えない。目元だけで判断するのは難しかった。
「ええっと。ごめんなさい、よくわかりません」
変な人だ。下手に取り繕うよりも素直に言って早く解放されたかった。思えば、ここで逃げていればよかったのに。
「そう、じゃあこれでも?」
女性はマスクをゆっくりと外す。ゾクリと悪寒がした。
自販機の照明に照らされた顔は、真っ赤な唇が耳まで届いていたのだ。あまりにもアンバランスで、怖い。グロい。気持ち悪い!
わたしは家に向かって全速力で駆け出した。丁字路を曲がり、公園を横切って、家まであと少し。明滅する死にかけの街灯の下をくぐり抜ければ!
――とぷん。
街灯の光の隙間、ほんの少しの暗闇の中から、手の様なものが水音を立て飛び出てくる。足をとられ、転びそうになるがそれすら叶わない。
ずぶずぶと沼に引きずり込まれるようにして、私の意識は真っ黒になった。最後に女の子の笑い声が聞こえたのは、一体なんだったんだろう……。
●
「――というような予知を視たんだ。通称口裂け女、UDCアースでは有名な都市伝説だね」
紫紺の髪を揺らし、いっそ楽しそうな雰囲気でレイッツァ・ウルヒリン(紫影の剱・f07505)は猟兵達に語る。
口裂け女、とは。都市伝説を利用したUDCである。元となった口裂け女には弱点がいくつかあるので、何かしら試すのも良いだろう。また、彼女からの問い掛けにどう応えるかで攻撃能力に差が出る可能性も否めない。
「時刻は夕方、日が沈む前くらい。場所は戦いやすいところを用意しておいたから、其処に転送するね。事件そのものは住宅街で発生したんだけど、一般人に被害が出ても困るから、今回は河道だよ」
壁に貼った地図に、着地点をピン止めする。広く長い河川敷、対面には川、後ろには舗装された細い道。街灯も等間隔で設置されているが河辺に近づく程暗くなるので注意が必要だ。
「口裂け女はね、一体じゃないんだ。口の裂けた色んな女性が、ざっと5~6人。う~ん不気味だねぇアハハ」
それから、と付け加える。先程の笑みとはうってかわって真面目な目つきになるレイッツァ。
「お察しの通り、今回の黒幕は別にいるよ。えーと、たしか『隙間少女』だったかな、このUDCも赤い服を着た女の子。邪神を降ろして、怪談に堕ちた哀れな子。でね、隙間から連れて行かれちゃうんだってさ、異空間に」
口裂け女を利用して追い詰めたら、もしくは追い詰められたら姿を現すみたいと解説を続ける。
「あとはねぇ、良い都市伝説もあるんだ」
手入れの行き届いたある公園のトイレに、鏡が設置されている。内1枚は特別製で、心から見たいと願っているもの、もしくは見たいよりも見たくないが上回るほどのトラウマが映し出されるという。どちらが映るかは、本人にしかわからない。
都市伝説を退治したら、寄ってみるのも良いだろう。
「隙間少女は隙間があればどこにでも来るんだよ。皆も心の隙間を狙われないように気をつけてね。それでは、皆頑張ってね!」
元気に手を振り、レイッツァは猟兵の転送を開始した。
まなづる牡丹
オープニングを読んで下さりありがとうございます。まなづる牡丹です。
今回皆様にご案内しますのはUDCアースより都市伝説戦です。
1章:集団戦闘、2章:ボス戦闘、3章:日常パート、となっております。
戦闘は広い敷地で行いますので、周辺に気を使う必要はありません。
3章は戦場とは違う場所で、思い出・未来・夢等を鏡に映す形で楽しめます。
どう戦い、何を見るのか。皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
第1章 集団戦
『『都市伝説』口裂け女』
|
POW : 私、きれい?
質問と共に【手で口元を隠していたマスク】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
SPD : 黄昏時の口裂けパニック
【自身の影に沈み込み、その場から姿を消す事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【標的に周辺の影から出現、奇襲を仕掛ける事】で攻撃する。
WIZ : 【常時発動型UC】トワイライトゾーン
【戦闘地域の敵対者を異空間(夕暮れ時の町)】【に強制的に招き入れる。また黄昏時は】【「怪異が起こる時間帯」という噂】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:±Y
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オート・チューン
きれいかって?そんなの決まってるわ!!きれいか、不細工か、じゃない!!自分できれいだと思えば良いのよ!
でもおねえさん達は関係ない人達を襲うから心がダメダメのダメ子ちゃん!!
ぐうのねもでない正論だと思います!!ふふーん!
襲ってくるなら迎え撃つまでよ!!うりゃうりゃ!かかってきなさーい!
影に隠れて奇襲を仕掛けてくるのね!わたいは奇襲に備えて、その場で集中するわ!
姿を現した所を千里眼射ちでしゅばばと撃ち抜く作戦!
肉を切らせて骨を断つの!
連携アドリブ歓迎です!(一人称:わたい)
花菱・真紀
なんとも有名なお方じゃないか過去に一斉を風靡した「口裂け女」サマだ。お会い出来て嬉しいぜ。
私は綺麗かって?あぁ、ぞくぞくするくらい綺麗だよ!
【バトルキャラクターズ】使用。とりあえず容易に狙いを定められないように三体くらいに分けるか。一体は【援護射撃】を中心に移動しながら遠距離から攻撃。一体は【スナイパー】で固定遠距離からの射撃。一体は近接格闘戦。【見切り】で攻撃を回避。【だまし討ち】で奇襲。【時間稼ぎ】もできれば最高だな。
しかし…憧れの都市伝説が次々とUDCになっちまうのはちょっと寂しいような感じだな。
鳴宮・匡
◆アドリブ、連携OK
「綺麗かって……、ごめん、興味ないな」
敵だからな、別にどんな見た目だろうと興味ないよ
綺麗だろうが醜かろうが、殺す相手で、死ねば終わりなんだからさ
まあいいや、そんな問答はどうでもいい
交戦中は得物の扱い方や動きの癖をしっかり見ておく
不意に姿が消えた時は下手に動かず
相手の再出現を待ってから
【確定予測】で得た行動予測から軌道を見切って回避
見えてなくても視えるんだ、利くのは目だけじゃないんでね
音や肌の感覚だけでも、けっこうわかるもんだぜ
撃つのは確実に当てられると思った瞬間に絞る
もっと言うなら、一撃で殺せそうな隙があれば更にいいけどな
敵も一体じゃないみたいだ、無駄なくやっていくよ
京奈院・伏籠
俺も結構なおじさんだけど、噂をリアルタイムで聞いた世代ではないんだよなぁ。
有名なのはポマードが嫌いでべっこう飴が好き、だっけ?
彼女とどういう繋がりがあるのか、結構な謎だよね。
…まぁ今回の場合、何人も出てきているってのが別の意味でもホラーなんだけど!
さて、どうやら相手は影に潜って姿を隠す様子。
それなら【レプリカクラフト】で簡易なトラバサミを複製して暗がりに設置、周囲に網を張ろう。
…試しにべっこう飴を罠に組み込んでみようかな。
首尾よく罠に掛かって動きを止めるようなら、その隙を拳銃で撃ち抜いてやろう。
あ、俺はきれいな人よりかわいい子が好みだから。悪しからず。
カイム・クローバー
ホラーは苦手なんだが…今回のは相手がオブリビオンって事と正体が分かってるだけマシか。見た目、特に口元はグロ注意らしいが。さぁて、怪しい徘徊を繰り返す怪異をぶっ潰すとするか!
【P】
マスクを放り投げて来るだって?それじゃ、俺は距離を取って二丁銃を乱射するぜ。【二回攻撃】【零距離射撃】【鎧砕き】【なぎ払い】【早業】んでUC。ボールじゃねぇんだ。距離取ったらひらひら~って地に落ちるだろ?
これで安心、後は殲滅するだけ…(ルール無用で飛んできた場合)うおっ!嘘だろっ!?攻撃には【見切り】を使用。回避を試みる。ったく、油断も隙もねぇ!
もし食らったら?中指立てて【挑発】。綺麗だって?ハッ!おととい来やがれ!!
傾いた陽が空を焼く。柔らかい朱色に照らされた戦場に、ぽつりぽつりと街灯が灯り出した。
河川敷に転送された猟兵達はそれぞれ少人数で固まり、都市伝説の出現を待つ。じわじわと濃くなる影を引き連れて、遠くから一人の女が歩いて来た。
●
真っ赤なコートの女は、白い肌と同化しているのではと見間違う幅広のマスクを着用していた。街灯の下、光の中で待機していたオート・チューン(太陽のバースデイ・f04855)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)は女の様子を伺い、女はその視線に気付くと目で笑った。じっとりと、嗜虐的な眼差しを変えることなく二人の前まで歩みを進めたら、前置きもなく問い掛ける。
「私、きれい?」
「ごめん、興味ないな」
身体を強張らせる女。無慈悲な応えを返す匡のフォローをするように、オートが早口で捲し立てた。
「そんなの決まってるわ!! きれいか、不細工か、じゃない!! 自分できれいだと思えば良いのよ!」
「うふふふふ。これでもそう言える?」
自信たっぷり意気揚々と語るオートの言葉を待ってましたとばかりに、勿体ぶった緩慢な動きでマスクを取る女。その下の口は大きく裂け、肉の赤が露出している! 唇で弧を描き、返答も聞かずポケットから取り出した鋏を匡の顔面目掛けて突き上げた!
ガチンと響く金属音。刃元に『Schwarzer Teufel』を噛ませ、ギチギチと鍔迫り合う。女とはいえ今はUDCとなったもの、力任せでねじ伏せられるほど貧弱ではない。右手を鉤爪に真似てなおも執拗に顔を引き裂こうと振りかぶる口裂け女。腕の軌道を予測し思い切り重心を下げた匡は、そのまま足払いを仕掛ける。柔らかい感触を――捉えた。ぐらりと体勢を崩した口裂け女はそのまま影へと沈み姿を消す。
黒銀のナイフが閃く一瞬の攻防を、オートは目を白黒させながら見ていた。匡とオートの間には圧倒的な経験差がある。たった10秒、集中する時間もない。自分に出来る事は何か考える少女は、ぎゅっと弓を握りしめた。その小さな肩を、黒の男は後押しする。
「ぼぅっとするな。来るぞ」
「ん……よし! かかってきなさーい!」
共に戦う仲間がいる。それは決意を固めるに十分な理由になった。すぅっと息を吸い込み、心を落ち着かせる。どきどきと煩かった鼓動はわくわくに姿を変え、オートを鼓舞した。耳を澄ませ、矢と意識を同調すれば、川のせせらぎに混じりコポコポと濁った水音が聞こえてくる。奇襲をしかけてくるのなら待ち構えるだけ。夕陽に照らされた此処では、影の出来る場所など数えられる程度。距離をとり向かい合う二人。互いを見張ることしばらく、足元の影が揺れた。
「綺麗……? 私、きれい?」
溺れたような声を引き連れ、オートの影から白い腕が伸びる! シュッ、と一発。銃声を殺した弾丸が口裂け女の掌を正確に撃ち抜いた。血を流しのたうつ腕は空を掴む。円を描いていた影は小石を投げた水面のように波紋が広がって、黒を赤に染めた。
匡の牽制に合わせ、鳥の力強い脚でオートは真上に跳ぶ。宙で半回転し、頭と鏃を地面に向け、生えた腕に照準を合わせる。
「わたいの矢もあげるわ!」
千里を見通す木菟の眼が、獲物を逃がさない。赤溜まりの中心に射った矢は全ての影を吹き飛ばす。隠れ蓑から引き摺り出された口裂け女は、オートの着地を狩ろうと見上げるた。しかしそれは生から目を逸らす行為。
二度の銃声。一発は背中から胸に、もう一発は後頭部から口を抜けて。吐きだされた赤でコートをより一層紅に染めて倒れる女。じんわり溶け出す身体で、最期になっても……最期だからこそ、この言葉を残して逝く。
「わたし、き、れ、い?」
「おねえさん達は関係ない人達を襲うから、心がダメダメのダメ子ちゃん! 綺麗には程遠いわ!」
華麗に着地し、びしっと指差し。決まった。
「どんな見た目だろうと興味ないよ。綺麗だろうが醜かろうが、殺す相手で、死ねば終わりなんだからさ」
ぼそりと呟いた匡の言葉は、女にはもう届かない。伏した肉塊は夕陽に焼かれ、二人の影に没した。
まだ一体。また聞こえるあの言葉に溜息を吐いて、戦闘を続ける――。
●
そんなやりとりから時を遡る事数分。京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)は、一ヶ所に留まらずせっせとトラバサミを仕掛けていた。罠を仕掛けるのに丁度良い暗がり――橋の下に一定間隔で設置しながら、花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)と軽口を交わす。
「俺も結構なおじさんだけど、噂をリアルタイムで聞いた世代ではないんだよなぁ。有名なのはポマードが嫌いでべっこう飴が好き、だっけ? 彼女とどういう繋がりがあるのか、結構な謎だよね」
「一説によれば、整形手術の執刀医が整髪料にポマードをつけていて匂いがトラウマであるとか。べっこう飴は好物らしいけど、どうしてかは分からないね。調べる価値がありそうだ」
「へぇ、面白いね。まぁ、本当かどうかは今すぐにでも分かるよ」
袖口から手品師も唸る手付きでべっこう飴を取り出す伏籠。手に取ろうとすれば丁度トラバサミに引っ掛かる位置を導き出し、馴れた手付きで取り付けた。小さく収納していた網も張り、気をつけねば相当動きにくい。
――ぴちょんぴちょん。漏れたような音が響く。二人はあえて、橋下の暗い中に留まり口裂け女の現出を待った。都市伝説の通りならば、初手に奇襲はない。都市伝説たらしめる行動が、必ず存在するはずだから。ならば包囲網を張った場所で待つ方が効果的だろう。
電子の世界からゲームキャラクターを召喚した真紀は、二体を後方に、一体を自分の横に付かせ音のする方を睨む。段々と大きくなる音は、ついに人の声となって影より現れた。
「ねぇ、私きれい?」
「うーん、俺はきれいな人よりかわいい子が好みだから。悪しからず」
「お会い出来て嬉しいぜ! でも早速だけどさよならだ!」
ズブズブとせり上がってくる影に、昂揚を隠さず応える真紀。表情は輝いている。
言い終わるタイミングを見越して、手で合図を出す伏籠に従い、バトルキャラ二体と猟兵二人の四方から一気に先制攻撃を叩きこむ。まだ人の型を取り切れていなかった影は実体を持たないのか、弾を柔らかく包みボトボトと地面に落としていった。尚も声は続ける。
「これでも綺麗と言える?」
夕焼けを遮る橋の下、影は暗がりでも分かる真っ赤なコートを着た女へと変わる。
マスクを取り外した姿は、まさしく異形。噂に尾ひれをつけ実体化した、人々の想像。剥き出しの歯茎をちらつかせながら、口裂け女は影に紛れる……はずだったが。彼女にとって抗えないものが、此処には在ってしまった。
「おや」
「あ~」
甘い匂いに誘われ、口裂け女は地面に這いつくばった。予想以上に上手くいった作戦に思わず声を上げる。トラバサミも作動し、地面に縫いとめられてバタバタと手を動かす様は少しシュールだ。とはいえ好機、逃す手はない。伏籠がファントムバレルの銃爪に手をかけた途端、影全体が波打ちいくつかのトラバサミを呑みこんだ!
即座に影から離脱する二人。元居た場所、地面と熱い接吻を続ける口裂け女の周りに、ひとりふたりと同じ姿が浮かび上がった。
「何人も出てくるって別の意味でもホラーだね」
手にした鋏をジャキジャキと鳴らし、皆一様に「綺麗? きれい?」と呟いている。
「はははっ、いいねゾクゾクしてきたよ!」
真紀は心底喜んでいた。沢山いるならそれだけ検証も進む、それが何より楽しくて。戦いの中で得られる知識が眩しくて。早く色んな面を見せてくれと願いながら、バトルキャラと共に銃弾を放った。
何人かの口裂け女が影に潜りながらじりじりと二人と距離を縮めていく。そろそろ橋の影から出てしまう、的を絞るのが面倒だなとどちらかが考えた矢先。辻斬りが通りがかったのかと違える程の衝撃が走った。影の中に突っ込んだカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の銃弾の嵐が、口裂け女達の腕や足に穴を開けたからだ。よろめいたところにイーグルの零距離射撃を腹に喰らわせたら、ラプターで一斉射撃。流れるように駆け抜けて、伏籠らと合流した。
「ホラーは苦手なんだが……相手の正体が分かってるだけマシか。さぁて、それじゃあ怪異をぶっ潰すとするか!」
鎧を砕く紅と黒が交差する。素早い連撃が影に沈むより先に足元を抉り、敵を戦場に留めた。潜れなくなった口裂け女達は声をあげ、むしり取ったマスクに死の言霊を纏わせ次々とカイムに投げつける!
「私、きれい?」
「綺麗だって? ハッ、おととい来やがれ!!」
素直な感情に挑発を織り交ぜて返す。言霊の力を喪い失速したマスクを蹴り落し、中指を立てれば、怒りの矛先はカイムに集中した。これを狙ってやれるのが彼の強さだろう。
口裂け女達は一体、あからさまな囮を立てた。影に紛れる事もなく、わざとらしく地上で鋏を振う。避ける事は簡単だったが、その一瞬で身を隠した口裂けは三体。バトルキャラが囮を抑えこんでいる間、どこから来る? と悩む間もなく猟兵の影から飛び出す凶刃。
「うおっ、あぶねぇ!」
見切れたのはシーフの勘か剣豪の心眼か、間一髪で避けるカイム。――そして訪れた最大のチャンス。見える敵は全て、三者の中心点に寄った。ならば猟兵の銃弾は、敵だけを確実に仕留めるだろう。
四丁の照準が重なり、口裂け女の群れは弾丸に踊った。倒れる敵は一見しただけでは人間のようで、見ていて気持ちの良いものではない。ゆっくりと消えゆく骸を見送る。
「……憧れの都市伝説が次々とUDCになっちまうのは、ちょっと寂しいような感じだな。」
真紀の静かな哀しみは、夕焼けだけが聞いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
死之宮・謡
へぇ…怪談か…私はそこそこ好きだよ?恐いものを見たい、そんな人の願望が現れた数々の話、それこそ無数にあるよねぇ?それだけ人は未知の恐怖に憧れる……本当に遭遇した時に嬉しいかは知らんがね?結構な確率で死んでると思うけど…ククク…そんな人の愚かな心の現れ、だから私は怪談怪談が好きなのさ…
お前が綺麗かって?聞く意味あるのかい?重要なのは自分がどう思うか…尤も私はその狂気と殺意は綺麗だと思うがねぇ?
まぁ、どうでも良い…私はお前等を殺しに来たんだからねぇ!
サヨウナラダ…【三重血統装具】展開…
●
夕焼けの朱に染まる漆黒の艶髪を靡かせ、死之宮・謡(狂魔王・f13193)は河辺で一人待機していた。ぼんやりと、きらきら輝く川を眺める。
「怪談か……私はそこそこ好きだよ?人は未知の恐怖に憧れる……本当に遭遇した時に嬉しいかは知らんがね」
怖いもの見たさとはよく言ったもので、恐怖の疑似体験をする者のなんと多い事か。そんな人の愚かな心の象徴ともいえる都市伝説が、謡は好きなのだという。愛すべき、矮小な人の精神性に嗤い、小さく呟いていれば、背中に刺さる視線。ようやくかと振り、返り憂いの瞳を向けた。赤い服の待ち人来る。
「私、きれい?」
「聞ク意味アルノカイ? 重要ナノハ自分ガドウ思ウカ……尤モ私ハ、ソノ狂気ト殺意ハ綺麗ダト思ウガネェ?」
綺麗という単語のみを拾った女は、マスクを外す。耳下まで裂けた口が開き、真っ赤な唇は続けた。
「これでも綺麗?」
「ドウデモ、良イ……私ハオ前等ヲ殺シニ来タンダカラネェ!」
応えながら、辰砂よりも赤く紅い血の三重血統を展開する謡。腕に、脚に、蜘蛛の糸より細い赫線が装具となって絡みつき、より一層血を求める!
双葬刀を構え、滅打で口裂け女の首を狙い、飛来するマスクを艶桜で弾ねのける。接近された口裂け女は鋏で首を守り致命傷を避けるが、血によって高められた刃の二重奏についていくのが精一杯。血を流せば流すほど、謡の力は上昇し留まるところを知らない。
押して圧して、ついに鋏を捩り落す! 勢いはそのままに、穿つ。
「ククク……サァ、私ヲ愉シマセテクレ!」
蹂躙はさしずめ消閑か。すぐに殺してはつまらない――。
大成功
🔵🔵🔵
フィーユ・エバーラスト
■楓(f02766)と行動
「さあ、楓の初仕事だ。キミの活躍、楽しみにしているよ」
「しかしよく分からないね。今はスマホのSNS? があるんだろう? 通りすがりに一人一人容姿を尋ねるのは非効率じゃないのかな?」
ボクは怪談に詳しくないからね、対処は楓に任せるよ
楓が一人でいるように見えるよう、離れた位置から追う
対処していた楓が攻撃を受けそうになったら【ダッシュ】で割り込んで防ぐ
■戦闘
【属性攻撃】で剣に銀雷を宿して接近戦を行う
影に隠れられたら【雷鳴討滅刃】で範囲内の影丸ごと攻撃
「悪いね楓、頑張って避けてくれ」
影から攻撃されそうになったら【ジャンプ】で影の無い場所に回避
御剣・楓
フィーユの言葉に
「ま、足を引っ張らないように最善は尽くすわ」
携帯したライトを持ってあえて単独行動で歩き、
敵から問いかけられたら
「醜いわ。見た目も中身もね!」
予め調べて用意しておいたポマードやべっこう飴も
敵に向かって放り投げてみるけど効果あるかしら?
「通行人に問いかけるという
怪談のルールに従ってるからでしょうね
SNS上の都市伝説という存在なら
そちらで被害者が出たのかもしれないけれど」
正直弱いんで援護に専念するわ
アサルトウェポンで足止めや四肢を主に狙いましょう
「そんなこと出来るって聞いてないわよ!?」
攻撃は必死に回避を試みるわ
瀕死になったら【戦場の亡霊】を発動させて
やっぱり援護に徹しましょう
●
フィーユ・エバーラスト(銀帝・f01873)は御剣・楓(錆びた銃・f02766)を引き連れ、戦場に降り立った。実戦経験のあるフィーユと違い、楓はこれが初陣となる。とはいえ、特に緊張した風もなく自然体を保っている。
「さあ、楓の初仕事だ。キミの活躍、楽しみにしているよ」
「ま、足を引っ張らないように最善は尽くすわ」
交わした言葉は軽いものの、初心者の楓がいきなり一人で相手できる程都市伝説は弱くない。それを分かっているから、二人で一体を狙う事を選んだ。
しかし、と前置きを入れて、フィーユは続ける。
「今はスマホのSNS? が、あるんだろう? 通りすがりに一人一人容姿を尋ねるのは非効率じゃないのかな?」
「通行人に問いかけるという怪談のルールに従ってるからでしょうね。SNS上の都市伝説ならそちらで被害者が出たのかもしれないけれど」
他のオブリビオンと違うところがあるとすれば、怪談を怪談たらしめるだけの制約が都市伝説には必要な点だろう。誰かの「こわい」「やれそう」「ありえそう」が揃わなければ、噂になったりはしない。楓はその点を事前調査で理解し、だからこそこの作戦に乗った。
今回の作戦は、楓が囮となり口裂け女を誘き出し、フィーユが奇襲を掛けるというもの。たった一言の間があれば、割り込むには十分だ。楓は河川敷をぶらぶらと、フィーユは楓と少し距離を離してついて行く。
夕陽で出来た影に携帯ライトを重ね、ビニール袋を片手に疑似単独行動をする事しばらく。堂々とした足取りで、一人の女が正面から大股で歩いて来た。釣れた、と内心ほくそ笑む楓。さも無関係を装いながらも視線を逸らさないフィーユ。恐らく勝負は一瞬、そうでなければ囮となった楓が危険すぎる。ぴりりと空気が張り詰めて。
「ねぇ、私きれい?」
女は頬に手を当てながら、マスクで隠れた顔で尋ねる。ふん、と鼻で笑い、楓はゴソゴソとビニ
ール袋に手をつっこみながら答えを返す。
「――醜いわ。見た目も中身もね!」
言いながら蓋を開けたポマードの瓶や包装紙を外したべっこう飴を鷲掴んで投げつけた! 恐れるものと好むもの、その二つが同時に投げかけられ、混乱する女。まだマスクを取る前であるが、端から見える裂けた口が歪む。
たじろぐ口裂け女に襲いかかるのは容易で、ダッシュで急接近し背後をとったフィーユは銀雷を宿した剣で背を切り裂く。
ぎゃっと声を出す時間すら惜しいと影に逃げ込もうとする口避け女の足元を、楓のライトが照らす。影を無くし、退路を断たれては最早どうすることもできず。続けざまに放ったフィーユの二度目の薙ぎ払いを受けどさりと倒れ込んだ。
「……やった?」
「みたいだね、ナイスサポート」
意外とあっさりのような気もするが、作戦が上手かったのだからこういう事もある。誇れる勝利を手に、二人は微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『都市伝説』隙間少女』
|
POW : 領域
【蜘蛛の巣の様に空間の裂け目】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 恐怖
【周囲に作り出した多数の空間の裂け目】から【今まで異空間に捕われていた一般人】を放ち、【その感情を操り、猟兵達に抱き着かせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 移動
小さな【空間の裂け目を作り、その裂け目】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【異空間で、別の場所に裂け目を作る事】で、いつでも外に出られる。
イラスト:祥竹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
陽が沈み、夜。街灯の眩さに負け、星が肩身を狭めてひっそりと輝く濃藍の空。口裂け女を撃退した猟兵の耳に、少女の声が届いた。
「酷い人達。彼女は『隙間』を埋めて欲しかっただけなのに、どうして殺したの?」
空間が放射状にひび割れ、異空間から真っ赤な学生服の少女が姿を現した。都市伝説『隙間少女』。現実と心、あらゆる隙間に入り込んで、自らの領域に誘う怪異。その先にあるものは、死にたくても死ねない永遠の虚ろ。少女は責める口調であるのに、何故か薄ら笑いを浮かべ話を続ける。
「美しくありたい、誰かに復讐したい、存在を認められたい……そんな心の隙間を彼女は満たしていただけ。誰でも覚えがあるでしょう? それなのに、ああ、本当に酷い。せめて私が、あなた達の隙間を埋めてあげる」
隙間少女は蜘蛛の巣を思わせる巨大な空間の裂け目を背に、猟兵に牙を剥いた!
花菱・真紀
隙間女って言ったらじとっと見つめてるだけのイメージだったがなるほど異次元の隙間か…隙間女も深いな。
確かに異次元でもないとあんな狭いとこに潜めないわな。
【バトルキャラクターズ】使用。
二体くらいでいいか場所は俺と三角になるように設置。攻撃は俺と同じでいい。
【クイックドロウ】で【先制攻撃】【二回攻撃】以降は【スナイパー】【援護射撃】で攻撃を確実に当てて他の猟兵さんの援護だ。
敵攻撃は【第六感】で【見切り】
都市伝説の扱いも気をつけなきゃなぁ…
京奈院・伏籠
たとえば、だ。
……犠牲者が出て、その人を失ったっていう心の隙間が周囲の人に生まれる。
そうして生まれた新しい隙間に付け込んで次の犠牲者に……、と。随分と趣味の悪い連鎖じゃないか。
主武装はハンドガン。術式付与・矰繳をかけた弾丸を装填して構える。
隙間から現れる一般人に命があるかどうかを確認。生きているようなら、左手のワイヤーで電柱等に縛り付けてあげよう。
死体や亡霊の類を操っているのであれば…銃弾を撃ち込んででも動きを止める。
一般人の抱き着きを躱したら、隙間女にUCを込めた弾丸を連射だ。
俺の隙間を埋めるのものは、俺が自分で考えるよ。少なくとも、アンタじゃない。
カイム・クローバー
こいつが今回の事件の黒幕か?見た感じは普通の少女だと思ったが…ああ、なるほどな。領域とやらに誘い込んで自分のコレクションに加えるって訳だ。これが邪神を降ろした人間の末路か…哀れだぜ。
【S】
二丁銃を撃ちながら牽制。一般人を盾に使うってのが厄介だな。これが亡者とかなら叩き切るんだが、息があるんだろ?ちっ、姑息な真似しやがるぜ。下手に銃を打ち込んじまうと巻き込む恐れもある。必要最低限の牽制、もしくは確実な時だけ。
【二回攻撃】【鎧砕き】【なぎ払い】【串刺し】UCで攻める。銃よりは剣がマシと判断。出来れば死角から行きてぇトコだが。
攻撃には【見切り】【武器受け】で対応。
少女に思うトコはあるが、これも仕事だ
暦の上では春とはいえまだ肌寒い季節だというのに、いやに温い風が肌を撫でた。隙間少女と対峙した猟兵は視線を逸らすことなく、真っ直ぐに前を見つめる――風は少女の背後、割かれた空間から流れていた。
「こいつが今回の事件の黒幕か?」
カイムの言葉に微笑み返す少女。夜闇に埋もれない金の瞳を猟兵に向け、隙間少女の作り出す異空間が明滅をはじめた。
「黒幕? 何の事かしら。私は人々の理想の具現、もしもから生まれた想像の産物。神が与えたもうたこの世の理……。隙間を埋めて欲しい誰かが私を呼んだのよ」
「……たとえば、だ。犠牲者が出て、その人を失ったっていう心の隙間が周囲の人に生まれる。そうして生まれた新しい隙間に付け込んで次の犠牲者に……と。随分と趣味の悪い連鎖じゃないか」
伏籠の鋭い指摘に、心外だと少女は抗議する。ビキっと音を立てながら空間の亀裂は広がり、感情の揺れを表わした。やはり、と伏籠は考える。笑みを絶やさず少女の脳天にファントムバレルの照準を合わせ、拒絶の言葉を紡ぐ。
「俺達はその誰かじゃない。他の奴らだって、アンタを呼んだわけじゃないはずだ」
「違いねえな。人の弱みを利用して、自分のコレクションに加えるなんて悪趣味にも程がある。これが邪神を降ろした人間の末路か…哀れだぜ」
いっそ可哀想なものを見る眼差しで少女を射抜くカイム。鋭利な言葉と共に放たれる伏籠の弾丸が、柔らかい空気を貫いた。何を映しているのか知れぬ少女の瞳が僅かに伏せられ、再び開かれたかと思えば稲光と見紛う轟音を連れ空間が捻じれ渦巻く。弾丸は渦から現れたナニかを掠め、異空間に消えた。
それは、学生風の男だった。向こう側に囚われた、埋まらない隙間を抱える『誰か』のうち一人。昏い表情に虚ろな瞳、自らの意思などそこにあるかも分からない。少女は腕を伸ばし、トンっと男の背を押した。
「私のコレクションを見てもそう言うの? 委ねるだけであなた達もこうなれるのに」
「そんなところ御免だね!」
威勢よく啖呵を切る真紀。その心境は少し複雑だ。自らの調べてきた都市伝説、それが今ではこうして実害を生んでいる。それが悔しいような、それでいて沸き起こる昂揚。だからこそ、ここで確実に仕留めなければいけないと強く心に決め、バトルキャラクターズを呼び寄せ後方に配置した。
一方。男は少女を守る様に前面に立ち猟兵の射線を切る。これが屍人なら、気にせず撃つ事も出来ただろう。しかし男はまだ生きている。呼吸があり、銃弾の掠めたわき腹は血を流していた。身を守るだけならば異空間に逃げ込めば良いものを、少女はあえて盾を使う。その方が猟兵の動きを鈍らせると識っているから。
「ちっ、姑息な真似しやがるぜ」
カイムの二丁拳銃は、男が邪魔で本領を発揮しきれない。銃弾の雨に巻き込まない為に、より鋭く獲物の感触を掴めるよう、銃を黒銀の大剣に持ち替えた。
――先に動いたのは真紀。真横に大きく踏み出し、少女の脚を狙う! 速い、が。少女の反応速度は更に上を行き、背後に展開された異空間に逃げ込んだ。くすくす、と河川敷一帯に笑い声が響く。優位を信じて疑わない、都市伝説の皮を被った邪神は告げる。
「人の心はどうしてこうも単純なのかしら。ただ真っ直ぐ撃てばよいだけなのにそれが出来ないなんて。その隙、私のものにしてあげる!」
猟兵達を取り囲む黒い亀裂が宙に走り、細い線の隙間から落とされた複数の影が彼らに纏わりつく。それは男と同じく無を湛えた影人間。ただ命令されるままに、腕を絡め、脚にしがみつこうと蠢いた。動きはあくまでも一般人なのに、感情を操られた人間は拳銃も剣も恐れず立ち向かってくる。
「左右に分かれよう!」
真紀が叫び、其々が影人間を振り払って走る。カイムを頂点とし、三人と二体は三角形になるよう陣を組んだ。追いかけてくる者は伏籠とバトルキャラクターズが牽制し、カイムと真紀に近寄らせない!
ひび割れた空間に向けてカイムは剣を振り降ろし、素早く斬り返すと、蜘蛛の巣を模ったヒビはさらに広がった。
くすくす、と再び聞こえる声。その時――真っ赤な腕が異空間より伸びてカイムを引き摺りこもうと服を掴む!
「させるか!」
秒もかからない一瞬、強く握りしめていた腕に銃弾が食い込む。緩んだ腕を思いきり引きはがし、距離をとるカイム。
「あっぶねー。隙間女って言ったらじとっと見つめてるだけのイメージだったがなるほど、確かに異次元でもないとあんな狭いとこに潜めないわな」
「おう、助かったぜ」
真紀に軽く礼を言い再び剣を構えるカイム。影人間たちは伏籠の巧みなワイヤー技術で地面に縫いとめられている。多少暴れたものを黙らせたりもしたが不可抗力だろう。
少女は異空間の向こうで何を考えているのか、猟兵達に知る術はない。あの耳に付く笑い声もなりを潜めている。
「あんたのコレクションとやらも在庫切れか? そりゃ結構、俺達もやりやすい」
影人間が動けない今がチャンスだと、真紀と伏籠は異空間に銃口を向ける。次に出て来るのは、人か少女か。咄嗟の判断力がものをいうタイミングで、幸運なことに第六感に追跡、早業と習得していた三人。少女だけを撃ち抜く自信があった。
長い時間が経った、実際は一分もなかったのかもしれない。そんな凝縮された時を破り、裂け目から指先が出る。まだ誰の者かわからない。手は外に出たがっているような動きだが、罠とも知れない。
やがて指は諦めたように異空間に戻り、ガスっという乱暴な音と共に外に放り出された。ならば次に来るのは。
「今だっ!!」
それは誰が言ったのか。あるいは示し合わせもせず偶然重なっただけか。影人間を押しだし、半身を見せたところに弾丸が四方八方から責め立てる。猛攻は少女の片腕を吹き飛ばし、腹をぐちゃぐちゃにしたが、少女は笑っていた。地面に倒れ込んでいる人間を踏み台にうっとりと語る。
「くすくす。あなた達、私を倒すという事は、埋まらない傷を抱えて生きていくと言う事よ。それでもイイの?」
「俺の隙間を埋めるのものは、俺が自分で考えるよ。少なくとも、アンタじゃない」
『術式付与・矰繳』を込めた弾丸を装填し、心臓を狙い撃つ伏籠。同時に走り込み少女の背後を取るカイム。発砲、着弾。意識がそちらに向けば後ろはガラ空き。
「この間合いなら外さねぇぜ?」
バリーンッと大仰に音を立て、カイムは空間ごと少女の背中を斬りつけた。耳を劈く絶叫が響く。攻撃の手は緩めない。確実に仕留めるまで撃つ……はずだったが。おかしい。銃弾も剣戟も、少女に届かない! 何か膜の様なもので覆われた少女は、先程までの余裕を消し、怒りだけを灯していた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オート・チューン
何で邪魔するかって言うとね!その隙間ってやつは他人じゃ埋められないからよ!永遠に迷うだけだもの!
ちなみに!隙間を埋めてあげるって言われても、わたいには隙間とか無いんだよねー!ふふーん!
強そうな敵ちゃんだ!
ならこっちも虎鶫で相手の動きを止めるわ!
動けなくなると裂け目に逃げ込んじゃうかもしれないから、逆に裂け目から出て来たところを狙えるなら!チャンスは逃さず!
まともに立っていられなくしてあげる!
サポートと回避メインで敵ちゃんの足をひっぱってやるわ!
一般人にしがみつかれたら、ごめんねだけど怪我しない程度にぶん殴ってでも気絶してもらうね!
連携アドリブ歓迎です!(一人称:わたい)
「何で邪魔するかって言うとね! その隙間ってやつは他人じゃ埋められないからよ! 永遠に迷うだけだもの!」
走り寄りながら叫ぶのはオートだ。愛用のクランケヴァッフェを構え、隙間少女の前に堂々と躍り出る。少女を守る薄い膜は、霧か煙か、寒気を感じる影の盾。もやもやとしていたそれらはやがて人の形をとり、地面にドサリと落ちる。生きているのかいないのか、遠目には判断が難しい。
「うるさい子。私なら、いくらでも埋めてあげられるのよ。恐怖という塗料は全ての隙間を塞いでくれるわ」
「そんなの『怖い』って感じる隙間が新しく生まれるだけよ! 騙されませんー!」
少女は苛ついた様子で小さく溜息を吐くと、腕を振り上げ周辺の空間に切れ目を作り出した。チラリと見える向こう側を覗けば、無数の目がオートを見つめている。人によっては恐れるに十分な光景であるが、しかし彼女は違う。
「ちなみに! 隙間を埋めてあげるって言われても、わたいには隙間とか無いんだよねー!」
ふふーん、と胸を張り高らかに宣言するオート。心に宿した太陽が輝き、仄暗い視線も何のその。 隙間少女は人が入るには狭すぎる空間の隙間に体を吸い込ませ、戦場から姿を消す。残された切れ目のどこから再出現するのか、考え、考えても分からないならば。
「……もらったわ!」
最後に頼れるものは野生の勘だ。理屈ではない、天性の感覚。
異空間側から、現世は見えている。避ける事も不可能ではない。そのまま空間を閉じてしまえば猟兵の攻撃は当たらないのだから……という考えは甘い。クランケヴァッフェから放たれた、空気を揺さぶる強烈な超音波は次元の壁を貫通し、異空間まで届く! ぐらり、体勢を維持できない。上も下もない隙間の世界ではより強く作用し、現世に逃げる。先には猟兵が待ち構えていると分かっていても、少女に生まれた『焦り』という隙間を埋める者は誰もいない――。
成功
🔵🔵🔴
死之宮・謡
何故殺したか?別に、私が殺したかったからだが?私はずっとそうして生きてきたし此れからもそうやって生きていく…殺戮と破壊こそが私の生き甲斐だからねぇ?
私の隙間ねぇ…無いよ?そんなもの…強いて言うなら私と殺し合ってくれないか?其れだけが私の望み…
【天燐血統装具】展開…武器に「呪詛・生命吸収」を有効化、自身は「怪力・見切り・オーラ防御」を使用、「二回攻撃・傷口を抉る」で攻撃…場合によってはスレイヤーで意識外から「暗殺」しても良いかねぇ…
鳴宮・匡
◆アドリブ、連携OK
相手の動きをしっかりと見切り
【確定予測】で致命打を避けながら戦闘
【見切り】や【聞き耳】で現れる一般人の数/動きを把握
別に身体能力が上がっているわけじゃないんなら
動きを見れば回避は出来る
その間隙を掻い潜って隙間女と距離を詰めるよ
――ああ、さっきみたいに盾にするのはやめとけよ
そんなもので躊躇するほど、俺は甘くないぜ
十分に近づくまでは
敵を撃つのは回避も防御も出来ないと見えた瞬間か
他の味方の攻撃を援護するときだけ
距離を詰めたら、あとは遠慮なしだ
全弾くれてやる、遠慮せずに持っていきな
この距離なら「盾」も無意味だろ
他人に埋めてもらいたい心の隙間なんて持ち合わせてないんだ
相手が悪かったな
●
殺すことに躊躇いなどない。猟兵としても、そうでなくても、ずっとそうして生きてきた。今も昔も変わらない、生の答え。誰に理解してもらう気も必要もない当たり前の感覚。
分かちあう事はなくとも、似た過去を持つ者は案外近くに居たりする。もし引かれ合ったのだとしたら、仇なす者は間違いなく不運だろう。
隙間少女は勢いよく裂け目から飛び出すと、着地と同時に領域の裂け目を放った。狙いは謡。亀裂は周囲の土や草を呑みこみ、其処に空虚を創りだして襲いかかった。
握りしめた謡の黒き呪槍が空を薙ぎ、鋭角を描いて斬り返したら地を這う亀裂に刃を突き立てる!
ぐりぐりと抉れば裂け目は口を閉じ、引き潮のように少女のもとへ戻っていった。少女は舞い戻った空間の裂け目をなぞり、じっと謡を見つめる。
「寂しい、悔しい、妬ましい……人間はそんな隙間を持つもの。そうでしょう? 私に委ねれば、全て埋められるのに」
深緋の瞳で少女の視線を蹴る。『都市伝説』が語るまるで『人間らしい』感情を謡は哂った。
「隙間ネェ……私ニハ無イヨ? ソンナモノ……疾ウノ昔ニハアッタカモ知レンガネェ」
久遠の闇に隙間が入る余地などなく、満たすのは殺戮と破壊の衝動のみ。死を携えた荊の王が求めるものはたったひとつ。
「……強イテ言ウナラ私ト殺シ合ッテクレナイカ? 其レダケガ私ノ望ミ……」
呪詛を込めた一刀を浴びせるべく、駆け出す謡。隙間少女は返事もせず、空間を操り鋭利な隙間を呼び出した。謡の髪が少し触れれば、真空の速さで吸い込まれていく。もう一歩踏み込んだら髪飾りももっていかれたかもしれない。弾き、叩き付け、隙間を躱せば覆いかぶさるように天から降ってくる影。
影は、人だった。ずしりと重く、質量がある肉塊。息はあるが、目の焦点は合わず虚空を見ている。邪魔だな、と謡は思った。生きていようとなかろうと、単純に障害物として邪魔だ。
隙間少女は微笑む。結局のところ、人間であることを手放した邪神にとって人は盾程度の価値しかない。取り込んだらあとは自由に――隙間を埋める為に利用する。幾人かが少女の前に立ち、壁を作った。蜘蛛の巣状に張り巡った隙間から、どんどんと人数は増えていく。
「やめとけよ。そんなもので躊躇するほど、俺は甘くないぜ」
銃弾が謡を横切り、ひゅんっと後から音が届く。謡の後方、銃口から上がる煙を朽葉の瞳に映して、匡は続けて銃爪を引いた。
鉛牙は虚人に当たり、命がけで少女を守る。無傷を保つ少女の背後に、ピシリとヒビが入った。
人が人を傷つければ生まれる恐怖・罪悪感・後悔……その隙間を縫って、猟兵を狩る心算でいたのに、どうしてか上手くいかない。『焦り』は膨らみ、微笑みを凍てつかせた。
少女が腕を振り上げると、意思なき人々の波が押し寄せる。悲しいかな、訓練も受けていない一般人の動きなど匡は目を瞑っていても避けられるのだが。
個では押し負けると踏んだのか、隙間も無い程密に集まり動きを縫いとめようと蠢く集団を、匡は何の感情も無く撃った。
――心はいつも通り凪いでいた。可哀想だとか痛そうだとか、想像はできても共感は出来ない。他人に心の隙間を埋めてもらうような人間に、静寂の海は揺らがない。
倒れ込む人々を踏みつけ、少女に近づく。足取りはゆっくりと、着実に。
薙刀に生命力を吸収する異能を付与し、虚人の意識を奪う謡。いつの間にか隣に立った匡に驚きもせず、隙間を切り裂いては割り壊す。一連の動きを視界の端で捉えながら、ぼそりと呟いた。
「……『人』ニ化ケルノガ上手イネェ」
皮肉めいた謡の言葉に、匡は一瞥もくれず返す。
「そう見えるなら結構。お前もな」
褒め言葉ととるか迷った謡だったが、ただの軽口と受け流した。深い意味を探る程、手は暇ではない。少女の絶え間ない召喚と、引き摺り込もうとする空間の裂け目が、物量で二人を攻める。
「人は誰かに隙間を埋めてもらいたがっていると、あなたたちは気付かないのね」
「勝手ニ言ッテロ……」
謡は溜まりに貯まった呪詛を放出し、纏めて人の壁を吹き飛ばす。数が多ければ多いほど、人の念は増長し力となる。余波は少女まで届き、大きな隙が生まれた。
「生憎と、他人に埋めてもらいたい心の隙間なんて持ち合わせてないんだ。相手が悪かったな」
僅かな隙間を抜け、匡の鈍色の一矢が少女に命中、眩く炸裂する。
脇腹に空いた穴の向こう、黒より深い闇がこちらを覗く。跳ねるように異空間に逃げ込んだ少女は、激しい怨嗟を浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーユ・エバーラスト
「さて楓、ひとっ走り行ってくるよ。援護を頼めるかい?」
「いいや、期待させて貰うよ。それができると、ボクは確信しているからね」
【見切り】で蜘蛛の巣の裂け目と一般人の隙間を【ダッシュ】と【ジャンプ】で掻い潜る
体を活性化させている雷が全身から迸り、銀の閃光を引く
人を巻き込むわけにはいかないからね、確実に敵を掴んで【襲奏雷撃】を【全力魔法】で叩き込む
「キミは誰かの理想の産物と言ったね。否定されるのは辛いだろう、肯定されなければおかしいのだからね」
「そしてそれがキミの隙間だ。理想を叶えて『あげて』も、キミの隙間は埋めて『貰えない』。……先達からの忠告さ。覚えておくといい」
御剣・楓
「私に出来るかしら? 実戦不足なのは否めないし……不安だわ」
「……分かったわ、フィーユの信頼を裏切らないよう、何とかやってみる」
フィーユが敵に近づけるように援護をしていくわ
【サモニング・ガイスト】で古代の戦士の霊を召喚し
空間の裂け目による高威力の攻撃をフィーユが受けないよう庇わせたり
捕らわれていた一般人がフィーユに絡んできたら
止めたり引き剥がしたり
私自身も行動が可能ならば
一般人に当たらない状況でのみ敵にアサルトウェポンで牽制射撃したり
いざという時は盾になるわ
確かに誰にでも隙間はあるのかもしれない
だからってそれが免罪符になるとでも?
呑まれてしまった貴女に
あげられるのは弾丸だけよ
●
銃声と刃風が鳴り響く戦場。いたる所に亀裂が入り、ひび割れ、地と空を裂く。遠く、戦う猟兵達を見据え、フィーユと楓は好機を待っていた。傍らを眺めれば真剣な眼差しがある。目があった二人はどちらからともなく笑った。
程よく緊張も解れ、気持ちの準備が整ったところで話を切り出す。
「さて楓、ひとっ走り行ってくるよ。援護を頼めるかい?」
「私に出来るかしら? 実戦不足なのは否めないし……不安だわ」
眉を寄せ表情を曇らせる楓に、首を横に振るフィーユ。
「いいや、期待させて貰うよ。それができると、ボクは確信しているからね」
「……分かったわ、フィーユの信頼を裏切らないよう、何とかやってみる」
青い髪を紫電に染め、全身に雷を纏う姿は勇ましく自信に満ち溢れていた。ここまで言い切られて否定するのも可笑しいと、楓も再び微笑んで力強く応える。今はまだ足りない部分があるのだとしても、都市伝説の入り込む隙間はない。
隙間少女の生み出す裂け目がすぐそこまで来ていた。異空間から排出される虚人の数も相当に増えている。彼らを掻き分け、まずは近づくところから始めなければならない。
楓は腕を伸ばし重ね、意識を手先に集中させる。降霊召喚――星光の下呼び起こすのは、強靭な肉体と闘技を持つ古代の戦士。自ら先陣を切る事は出来ずとも、値するものを操る事は可能。これが楓の戦い方で、強さだ。
フィーユは戦士の霊を引き連れ、裂け目に向かい走る。人の間を跳んで潜って掻い潜り、時に旋回しながらじわじわと距離を詰めていく。周囲の裂け目から伸びる歪みの波は霊が引き受け、駆る勢いを支えた。反撃の霊炎を浴びた裂け目は火傷に痙攣したかのように空間を振るわせ、隙間少女を勢いよく吐き出す!
地に堕ちた少女は風穴のあいた脇腹に虚無を詰め込み、空間に亀裂を広げる。巨大な蜘蛛の巣に見える中心で、焦りと怒りに塗れながら一人佇む少女に、フィーユが迫る!
勝負は一発、この距離では相手が異空間を開くのとどちらが早いか。考えつくより先に、少女が一歩足を引く。よろめいた少女の太腿に、何発かの弾痕が見えた――それは楓のアサルトウェポン。降霊召喚を維持しながら、複雑な魔術式をねじ伏せ必死に援護している。
千載一遇のチャンス。きっとこれが最期になる……いや、終わらせるのだ。埋まらない隙間を抱え続ける少女の闇を、ここで断つ。
「キミは誰かの理想の産物と言ったね。否定されるのは辛いだろう、肯定されなければおかしいのだからね」
ばちばちと迸る閃光が、フィーユの手を包んだ。静かで優しい手向けの言葉と共に、少女の服に掴みかかる。ぐいっと上体を捻り、一瞬のタメ。狙いを心臓に合わせ、渾身の力を乗せて襲奏雷撃を叩きつけた! 溢れる雷光が視界を埋め尽くす。
「そしてそれがキミの隙間だ。理想を叶えて『あげて』も、キミの隙間は埋めて『貰えない』。……先達からの忠告さ。覚えておくといい」
掌底で吹き飛んだ少女は、傷を再び埋めようと裂け目を呼び寄せようとするも、背後に立った楓が近接射撃によって阻止される。銃口を突き付けて見下ろす楓を睨みつけ、少女は憎らしさを隠さず吐き捨てた。
「隙間は人がある限り消えないわ。その度に、私も呼ばれるのよ」
「確かに誰にでも隙間はあるのかもしれない。だからってそれが免罪符になるとでも?」
邪神に呑まれてしまった少女に、今あげられるもの。それは弾丸だけ。二言目を紡ぐ前に、楓はアサルトライフルを全弾撃ちこんだ。
倒れた少女の身体は粒子に分解され、さらさらと崩れた。残されたのは未だ虚な人々と、猟兵のみ。
「やれるじゃないか。お疲れ様、楓」
「どうにかね。すごく疲れたわ」
徐に腕を掲げるフィーユに、何をしてるのか戸惑った楓だったが、やがて気付いて同じく腕を掲げる。こつん、と拳をぶつけ合って、この戦いはこれにて終幕!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 日常
『逡巡の迷宮』
|
POW : なんだか怖いから鏡を割って強行突破
SPD : 何が映っても見ないようにすればいい。素早く出よう
WIZ : 鏡に映った対象に何かしらの行動をしてみる
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
※捕捉
大変恐れ入りますが、3章プレイングは2019年3月18日(月)8:30より受付いたします。
皆様の参加心よりお待ちしています。
●出口なき迷宮
鏡は見たものを映すだけに非ず。見えないもの、見たくないもの、果ては心まで。それらを見るのは幸か不幸か。決めるのはあなたの――。
公園に設置されていることも珍しくない公衆便所。そこにある鏡の内1枚には、本人だけでないあらゆるものが映るという。
好奇心か希望か。数人の猟兵が順々に覗きこんだ。
花菱・真紀
鏡…この間の敵とは違うんだろうけどあの時は鏡を見たら頭が痛くなって…だめだこれ以上は思い出せない。
見ない方がいいのかもしれない…けど見なきゃいけない気がする。
映っているのは…姉ちゃんか。確か今は友達と旅行に行ってるんだっけ?
シスコンてほどではないとは思うけど…まぁ一番影響を受けた人ではあるな。都市伝説やオカルトの話をしてくれたのも姉ちゃんだったし。
ゲームも一緒に沢山やったな。ガンシューティングでは姉ちゃんにスコアで勝てたことはなかった。このヘアピンも姉ちゃんを真似てな…。
あぁ、駄目だな俺完全にシスコンじゃねーか。
姉ちゃん、また、遊ぼうな。
オート・チューン
鏡に何かが映るのね!わっくわく!
あれー?何にも映らないなー?わたいの顔も見えないくらい真っ黒くろくろ!
何か見えないかな~?むむーー
あ!これはファルセットノイズと初めて会った時!
いきなり齧られてびっくりしたんだよね!
それからカッコいい名前で猟兵になったんだよね!
自動調整と書いてオート・チューン!かっこいいでしょーふふーん!
”自動調整を行う器官”
そういえば、元の名前はなんだっけ?
真っ黒くろくろ
…はっ!レイッツァくん!お疲れ様ー!
あれ?なんだっけ、忘れちゃった!まぁいっかー!
うちあげにビッグパフェ食べに行こうよー!
●
いつか視たオブリビオンとは違う、敵意も狂気もない鏡面が真紀を映す。鏡の中の真紀は、不安と期待がないまぜになった表情で自分自身と瞳を合わせた。
以前は頭痛に苛まれたものだが、今日は肝心なところに霞がかかったようで思い出せない。酷く、喉が渇く。どうしてかは分からない。見ない方がいいのかもしれない、でも見なきゃいけない気がして。
一度目を閉じ、意を決して鏡を見直せば映っていたのは……。
「はは、姉ちゃんか。やっぱりな」
ある程度想定はできていた。
都市伝説やオカルトの話をしてくれた姉。ゲームも一緒になって沢山やった。ガンシューティングで姉に勝てたことはなかったし、姉の教えてくれる逸話や怪談はいつも楽しくて。少しでも姉に追いつきたくて、話題を共有したくて、あるいは自分を見て欲しくて。都市伝説を辿り、ヘアピンを真似、今は隣にいない姉の背中を追った。
鏡の中の姉は記憶通りの笑みを湛え、じっと真紀を見つめている。まるで向かい合っていると錯覚しそうだった。そうであれば良いと、願うくらいは許されるだろうか。
「友達と旅行行ってるんだっけ? あーあ、早く帰ってこねーかな」
そうしたらまた遊べるのに。
でも、旅行っていつから? どこに? 友達って誰と? 深く考えようとするとズキズキと頭が痛む。これ以上は見ていられない。頭を振って頭痛を逃し、再び鏡を見れば、映るのはひどい顔をした真紀自身。また遠くなってしまった姉を残念に思うと同時に、くしゃっと顔を手で覆った。
「あぁ、駄目だな俺。完全にシスコンじゃねーか」
乾いた笑みが零れる。自分の心には嘘をつくのは難しい。
誰にも届かない想いは、鏡の中の自分だけが知っている――。
●
「あれー、何にも映らないなー? わたいの顔も見えないくらい真っ黒くろくろ!」
うきうきドキドキわくわくと、心を弾ませながら鏡を覗きこむオート。しかし悲しいかな、其処には不自然に黒い板があるばかり。ぺたぺたと鏡を触ってみれば、黒はぐんにゃりと歪み曇りが晴れた。この光景は今も強烈に、鮮烈に、昨日の事の様に思い出せる。
最早傍に居るのが当たり前になった相棒、クランケヴァッフェ『ファルセットノイズ』と出会った時の事。出会い頭にいきなり齧られ突かれ啄まれたのは、後世まで残したい一大遭遇イベントと言っても過言ではないだろう。
「あの時はびっくりしたな~。懐かしいね!」
鏡の中のオートは元気よく、ファルセットノイズに自己紹介をしていた。
自動調整と書いてオート・チューン、かっこいいでしょう! と胸を張る少女。その手はしっかりと弓を握りしめ、絶対に逃がさないとばかりに笑顔で威圧する。きゅう……と、どこから声を出しているのか不明だが、ファルセットノイズは怯えたように鳴いた。ちょっと可愛いかもしれない。
「猟兵になる前は……あれ、なんて名前だっけ?」
絶対にあるはずなのに、頁が抜け落ちたように丸々記憶が途切れている。鏡に映るのは、黒く塗りつぶされたオートの目元と手元。真っ黒くろくろ、ずっと見ていたら最初から何も無かったのかと勘違いする程の黒。
不思議と怖くはない。瞬きする間に黒は澄み、今のオート自身を映しだす。――今思い出せない事ならば、今のオートには不要なものなのかもしれない。今を楽しむ彼女にとって、理由はそれで十分だ。
ただの鏡に戻ったのを確認し、場を後にした。猟兵達の帰還をぼぅっと待つレイッツァを打ち上げに誘い、今日もまたオートは日々を堪能していく。忘れてしまった何かを気にも留めず、楽しそうな声を夜空に響かせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アスカ・ユークレース
【WIZ】
悪魔が私に取引を持ちかける
お前の知りたいものを…お前の過去を見せてやる
条件はお前とお前の友人の命…
ずっと追い求めてきた私のルーツ
電子の海の奥深くまで潜っても見つからなかったもの
それが手に入る
こんなに嬉しいことは…
取引に応じかけ我に帰る
ふざけないで…!
これは私自身の問題、貴方にすがるほど落ちぶれちゃいません!
確かに記憶が戻るのは嬉しいけど…それが私や誰かの犠牲の上に成り立つなら、私は迷いなくその夢を捨てます…!
カイム・クローバー
鏡に映った世界ったやつか。仕事は解決したはずだが、もしかするとそれもUDC関係の仕事かもしれねーし…確認しとくか。
んで、トイレの鏡だっけな。まさか女子トイレ限定、なんてこたぁないよな?
【P】
いい都市伝説という話だし、予知にも化物の類はねーみたいだから、警戒する必要はねーんだろうが。いきなり鏡の世界に引き込まれる、なんて冗談でも勘弁だぜ?(右手で銃を鏡に向けながら)
さて、鬼が出るか、蛇が出るか…
映し出されるのは過去。俺の子供のころの記憶。まだ組織に売られる前の記憶。貧しい故郷の村だったが、両親は優しい人…だった気がする。
…下らねぇな。ガキだった頃の記憶じゃねぇか。こんなの…今更どうしろってんだ
御剣・楓
やはり私が見るのは此方だった
戦場傭兵の訓練を受けていた時の忌まわしい出来事
厳しくも優しかった上官が
気のいい同期達が
あの日突如出現したUDCに為す術もなく虐殺された
私たち姉弟もまた死を待つばかりだと思ったけれど
アレはなんと弟の中に入り込んだ
それから色々あって二人とも猟兵になったけど
未だにアレを弟から切り離す手段は見つかってない
必ず助け出す方法を見つけないと
……あ、あら、ごめんなさい
平気よ、ありがとうね
それよりフィーユはどうだった?
え?
いつも通りの凛とした頼もしくも可愛いフィーユだけど?
……そう、ね
ええ、帰りましょうか
フィーユの質問、気にはなるけれど
今の私が聞くにはまだ早いのかしらね
フィーユ・エバーラスト
■
楓? 表情が険しいようだけど、大丈夫かい?
ボクかい? そうだね……
楓、キミにはボクの姿がどう映って見えるかな?
……そうか
すまない、変な質問をしてしまったね
まあ、見えたのは誰にでもよくある光景だよ
さて帰ろう。楓も長居はしたくないようだしね
■
『誰も映らない』……か
まったく皮肉の利いた鏡だ
ボクは理想の誰かであって、ボクは誰でもないということか
分かっていたことだ
ボク自身を人の理想に捧げて、ボク自身には何も与えられなかったのだから
空っぽなのは当然だろう
隙間か……果たして空の器のことを、隙間と呼べるのだろうか
●
鏡の中のアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は、不自然に口角を上げ笑っていた。同じ形をしていても、中身は全くの別人である。鏡に映っているのは『悪魔』だ。アスカを誘惑する堕落の腕が、向こう側から差し出される。
――お前の知りたいものを……お前の過去を見せてやる。
――条件はお前とお前の友人の命……。
あまりにも魅力的な提案に、ごくりと喉が鳴る。ずっと追い求めてきた自身のルーツ。電子の海の奥深くまで潜っても見つからなかったものが、腕を伸ばせば掴める。この手の中に収めることができたなら、どんなに嬉しい事だろう!
悪魔の囁きは甘く、思考を溶かしてゆく。自然と鏡の中の自分と同じように笑っていた。気付けば鏡に触れる寸前。大きく弧を描く悪魔の唇に、ハッと我に返る。
「ふざけないで……! これは私自身の問題、貴方にすがるほど落ちぶれちゃいません!」
手を引き胸元で固く拳を締め、射抜かんばかりに鏡の中の自分を睨みつける。アスカの顔をした悪魔は至極つまらないといった眼差しを返した。両者の間に剣呑な雰囲気が漂う。先に口を開いた悪魔は、フっと笑って背を向ける。
「いつでも縋れ。乞え。望め。お前が過去を求める限り、私は何度でも現れよう」
そう言い残して、鏡の枠から退場した。もう鏡には何も――アスカ自身すら映っていない。ただ背景を反射するだけ。
「……記憶が戻るのは確かに嬉しい。けど……それが私や誰かの犠牲の上に成り立つなら、私は迷いなくその夢を捨てます……!」
例え何度悪魔が来ようとも、何度でも突っぱねれば良い。命と釣り合うものなど、アスカの中には無いのだから。
●
ひとまず安堵の溜息を吐くカイム。此処は男子トイレ、一番奥側の洗面台。公衆便所にしては小綺麗に掃除され、特有の悪臭もしない、不思議な場所だ。
「女子トイレ限定、なんてこたぁなくて良かったぜ」
ひと仕事を終え目前の危険は去った。とはいえ件の鏡も怪奇現象の類である事は間違いないのだろう、万が一にもUDC関連では困る。予知を信じるならば良い都市伝説で警戒する必要はないのだが、いきなり鏡の世界に引き込まれるなんて事がないとも言い切れない。『良い』は人によって判断が分かれるのであるし。
銃口を鏡に向けながら、ゆっくりと鏡を覗きこむ。鬼が出るか、蛇が出るか……ほんの少しの好奇心を織り交ぜた瞳に映ったのは。
「こいつぁ、過去か」
朗らかな笑顔、暖かい眼差し。両親と団欒を楽しむ、家族のあるべき姿。
仕舞い込んでいた思い出の光景から目を逸らせない。どくどくと、血が身体中を巡る音がうるさく響く。
カイムの両親は優しい人だった。今では記憶の中で曖昧になってしまったが、そんな気がする。貧しい中にも幸福があり、安らぎと充実感を感じられる生活。組織に売られる前は確かに享受していた感情を懐かしく思う。
構えた銃を降ろし、食い入るように見つめた。やがて鏡はゆっくりと曇り、白く濁ってしまう。
「……下らねぇな。こんなの……今更どうしろってんだ」
感傷に浸るなど、非生産的な自己満足。どんなに願っても過去は戻ってこない。ごしごしと手袋をしたままの手で鏡を擦れば、普段の自信溢れる様からは想像もつかないような――穏やかな表情のカイムが映っていた。
●
楓とフィーユ、二人並んで鏡の前に立つ。通常ならば同じものを見るはずだが、これは都市伝説。それぞれの瞳に映るのは、鏡の中と隣の猟兵だけ。
――忌まわしい過去。無惨で残酷な、あの日の陰。
楓は戦場傭兵の訓練を受けていた。いつも通り流れる日常の風景。共にいるのは厳しくも優しい上官と、気のいい同期たち。そして姉と弟。辛い事も嬉しい事も詰まった、暖かい日々だった。
しかし、その平穏はあっさりと壊される。前触れもなく現れたUDCが、仲間を襲ったのだ。応戦し、逃げようと試みるも、ひとりまた一人と引き千切られ、潰され、締め上げられていく。鏡の中は半分以上血で濡れていた。血溜まりは赤い模様を描き、思い出というキャンバスを紅く染める。
死の香りが訓練場を満たした感覚が甦り、唇を噛む楓。今更どうにか出来る事ではないと分かっていても、身体は心に連動し自然と動いてしまう。それでも目を逸らしはしない。この記憶に背くことなど、絶対にしたくなかった。
暴虐の限りを尽くすUDCに為す術もなく、自分達姉弟はただ死を待つだけだと――思っていたのに。UDCはあろうことか、弟の中に入り込んでいった。鏡の中、助けを求め手を伸ばす弟の貌が、脳裏に焼き付いたものと全く同じで嫌な汗が流れる。弟の手が空を掴んだところで、鏡は急に本来の姿を映しだす。これ以上、見せるものはないとでも言うかのように。
「楓? 表情が険しいようだけど、大丈夫かい?」
はっとして横を向けば、心配そうに楓を見つめる銀の瞳と視線がぶつかる。
「……あ、あら、ごめんなさい。平気よ、ありがとうね。それよりフィーユはどうだった?」
「ボクかい? そうだね……楓、キミにはボクの姿がどう映って見えるかな?」
鏡に視線を戻す楓。其処に映っているのは紛れも無く、青銀を宿す少女。真剣に聞くフィーユに少し違和感を覚えつつも、見た通りを返す。
「んー、いつも通りの凛とした頼もしくも可愛いフィーユだけど?」
「……そうか。すまない、変な質問をしてしまったね。まあ、見えたのは誰にでもよくある光景だよ」
誤魔化している。誰が聞いてもそう思うような、曖昧な言葉だった。楓は気にはなったものの、追及はしない。――今の自分が聞くには、まだ早いのかもしれないと思うと、返事に詰まってしまったから。
「さて帰ろう。楓も長居はしたくないようだしね」
「……そう、ね。ええ、帰りましょうか」
立ち去る間際、フィーユは一度だけ振り返り鏡を見た。相変らず背景だけを映している。先程と変わらず『誰も映っていない』。
とびきりの皮肉だ。誰かの理想、誰かの求めたフィーユ像。それはフィーユであってフィーユでない幻想。映す価値のあるものがお前には無いのだと、無言の罵声を浴びせられた気分になる。
誰かに捧げた理想は、結局は消費されていくだけ。フィーユ自身は何も与えられず、得るものも無く、ただ空の器があるのみ。背負った名に絡め取られ、動くこともままならない。
虚を抱いた器に満ちるのは、不毛で希薄な感情の渦。干上がった土地の方がまだ潤っているかもしれないと、フィーユは自嘲した。
哀れだとは思わない、悲しくもない。理想を体現する事は誉れで、間違っても無駄ではないと分かっている。誰かの為に行動出来るのは、とても尊い事だと理解している。それでも――。
「隙間か……果たして空の器のことを、隙間と呼べるのだろうか」
屠った赤の少女に自身を重ねる。隙間を自分以外の誰かが埋めてくれるなど、胡散臭いまやかしだ。フィーユは其れを識っている。
――それでも、いつか満たせる日が来るのを夢見る事くらい、許してくれ。
誰からも返ってこない問いに、自身が応えられるのは、まだ先の話。
●
斯くして都市伝説との戦いに勝利した猟兵達は、胸に刻まれた思い出と言う名の傷跡を背負い歩いて行く。
未来は明るい。ならば彼らの長い旅路にも、いずれ夜明けが来るだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵