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Pumpkin🎃PartyNight°˖✧

作者：皆川皐月

●急募：説明
「――というわけで、お前達にはこれからパリピになってもらう」
　ちょっと何言ってんのか分かんないですね。
　概ねここに集まった猟兵は思ったことだろう。だが説明している御簾森・藍夜（雨の濫觴・f35359）はいつも通りのスーツ姿でいつも通りの抑揚のない顔。
　だが言葉にパンチはあったけれど。
「？ だから毎年のお約束のように今年もハロウィンにかこつけた祭バカ……おっと失礼。｜十二剣神 大祭祀ハロウィン《浮かれた神の一種》が決戦都市を丸々一個ハロウィン化とやらで吞もうとしている」
　なんでお前が一瞬不思議そうな顔をするんだよ。あとさくっとディスらなかったか今。
　突っ込みたいのは山々だが長くなりそうな話を出来る状況でもない、と首を横に振る誰かに皆が追随した時、“ハロウィン化って？”と誰かが囁いた。
「いい質問だ。ハロウィン化とは、簡単に言うと世界が“万物が存在する状態”に変ずこと。これに飲み込まれれば俺達猟兵と言えど毎日毎秒ハロウィンになる」
　――ハロウィンって言えば何でも許されると思うなよ。
「ちなみにこの流れに耐える方法が一つ」
　藍夜が妙に真剣な顔で言うものだから、騒めいていた猟兵達がしんとし、ごくりと唾を飲んだ。

「｜仮装する《Partyppeopleになる》ことだ」

　すごい。なんかただ仮装って言ってるはずなのになんか違う音が聞こえた気がする。しかも仮装って言葉より妙な破壊力と謎の覚悟が必要になるような、たぶん慣れてない人は一瞬というかずっと戸惑うやつ。
「まぁなんてことはない。奴らがハロウィンだなんだとかこつけるなら引くほど楽しんで上書きするのが手っ取り早いとは思わんか？」
　おかしい、なんか何を言っているのか分からないが一瞬“そうかも”とか思えなくも無かったような気がしてきた。
　圧には圧を。
　祭で迷惑をかける奴には祭りを楽しみ過ぎる奴を。
　目には目。歯には歯を。力こそパワーと昔の人は言いました。

「教えてやれ、本当の祭ってやつをな！！！！！！！！」

　たぶんこれ、ヤバいやつでは？

第1章 ボス戦 『『ハロウィンの魔草少女』橙山・南瓜』

POW   :    ハロウィンボム 【ハロウィンの季節の魔力】から【作り出した特大のハロウィンボム】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。 SPD   :    ハロウィンキャレイジ 【南瓜の爆車】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をハロウィンの魔力で満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。 WIZ   :    ハロウィンボムモドキ 偽物の【ハロウィンボムの夜空】を創造し、戦場上空に浮かべることで、【何度でも自爆できるハロウィンボムモドキ】による連続攻撃能力と超再生能力を得る。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●𝓛𝓸𝓿𝓮𝓵𝔂♡𝓗𝓪𝓵𝓵𝓸𝔀𝓮𝓮𝓷
『見て見てっ、ハロウィン限定のクレープっ！えへへ、カラースプレー多めでオバケチョコトッピング～！』
『かわい～！ねぇねぇ一緒に写真とろー！』
　きゃあきゃあと可愛い声が響く此処は決戦都市。
　十二剣神 大祭祀ハロウィンの指示で街を制圧せんとしているハロウィンの魔草少女 橙山・南瓜たちはきゃあきゃあと盛り上がり、クレープショップやケーキショップが軒を連ねるスイーツ通りでポーズを決めたら写真撮影＆映え用にアプリ加工と忙しい。
『ん～……やっぱさぁ、この通りのとこ黒くしちゃってー……あーとーはー、ここのお店はばっばーんとカラフル！』
『いいね！ここの天使の翼、悪魔にしちゃおー！』
『『めっちゃ映える～～！！』』
　刻々と街がハロウィンボムでボムボムされてハロウィンしていっている。
　誰かの思い出も、心も何もかもを塗り潰すように。

　止めなければ。
　ガチハロウィンの力で！！！！！！！！！！！！！
　
　
　
　🎃


●アタシ、｜カルミア《NAMAHAGEｺｽﾌﾟﾚ》！
　Happyな自己紹介が出来ちゃう人類遺跡生まれ人類遺跡暮らし“だった”ゴムガム人のカルミア・ローレンス（空を見上げて・f41695）は、目の前で繰り広げられることあるごとに写真を撮り笑いあう派手な衣装の少女達に目をくりくり。
　控えめ言っても都会ってすごい！それが第一の感想。
　でも此処へ送り出してくれた見上げるくらい背の高い黒い人が言っていたことを思い出す。
　“お前ならきっとできる。あんな遊び半分でハロウィンを知らない奴らをびっくりぶっ飛ばしてくると良い”と。
　正直人類遺跡にパリピという文化は無かったが、黒い人曰くびっくりさせた方が勝ちらしい。
「よーっし！」
　｜シスター服を纏う《一見ハロウィンスタイルな》カルミア。
　普通なら可愛い都会知らずの子がキラキラハロウィンに気恥ずかしさ交じりに飛び込む仮装ラインに見えるだろう。

　荷物から、なまはげの仮面が出てこなかったら。

「よい、しょ！これでみのを着て……よーっし！初めてのハロウィンだって全力で楽しむよ！」
　＼＼HONKI-NAMAAHGE-STYLE／／
　ちなみにカルミアは知っていたのだ。ハロウィンの仮装の本当の意味を。
「（だって、“悪霊や魔女から身を守るため”っていうのが仮装の由来なんだよね？）」
　つまりハロウィンの魔草少女 橙山・南瓜、汝は魔女！！！！！はい、アウト！
　なまはげ＞＞＞＞＞＞＞＞魔法少女理論の完成である。
「だったらやっぱり魔女に勝てそうな強～～～い格好しないと！あっ！ね、ね、そこの魔女の格好のお嬢さん！」
『え～なぁに～？今しゃしくぁｗせｄｒｆｔｇｙふじこ！！？？！？！？！！』
　ぬうっとしたからなまはげに覗き込まれた橙山南瓜Ａ、ダウト！
「やったー！びっくり！あっ、一旦写真撮ろ！」
　カシャ★
　気絶した魔女 ｗｉｔｈ ＮＡＭＡＨＡＧＥ.
　都会の魔女の｜真似っ子《学習》だって｜柔軟《ゴムガム》になまはげ仮装のカルミアには出来ちゃうのだ！！！
『きゃーーーー！！！！！！！！』
『やあああああああああああ！！！！』
「ほら！やっぱりこれがハロウィンなんだよ！」
　連鎖する悲鳴！
　震えあがれよ無知な魔女！！
「ふふふ、あっ、そこのお嬢さーーーーん！！！」
『え？……は？ちょ、やっ、まって、来ないでぇえええええ！！！！』
　クールに一人で映え写真撮ってた魔女にもＵＣ―ゴムガムフォーム―でにゅーっと迫ってどーーーん！！！

「うにょーんってどーんと行くとやっぱりびっくりだよねー！でもほら、ハロウィンらしいよねね！そうだよねー？！」
　カルミアにこたえる魔女は誰一人いない。
　何せ誰もがビビり気絶し死屍累々なのだから。
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​

●一見普通そうに見える奴ほどヤバいんだって知ってるか、君。
　ハロウィンカラーのタイを整え、兎耳の飾り揺れるシルクハットを整えた。
「――ハロウィン。それはこの世ならざる者が訪れる日」
　燕尾服の裾を翻し、ややシリアス風な顔で話し始めたディル・ウェッジウイッター（人間のティーソムリエ・f37834）だが、その手は慣れ過ぎな早すぎる手裁きで支度しているのは二駅前の紅茶専門店で買ったハロウィン限定女王へ捧ぐ薔薇―と名付けられた茶葉 イングリッシュブレックファスト―を注ぐこと。
　スゴハヤイオチャノシタクは日々の研鑽の賜物で、いっそこれUCに昇華できるのではッていうかしていましたわね。ティーソムリエですもの、と某先輩がいたらほほほと笑っていたことだろう。
　人を魅了するほど洗練された所作で突如展開される路上ライブオチャカイスタイルに橙山南瓜達もざわめいては写真を撮っている。
『えっやば何このイケメンお茶淹れだしたんだけど』
『よくない？イケメンだしイベントじゃない？』
『分かった！アレだよイギリスフェア的なあれ！』
『あー！ソレソレ！ね！ヤバ～い！』
　アレとかソレとかヤバいで会話構成ほぼ出来てる方がヤバい。
　最初の橙山南瓜が突っ込んだのはアレとかソレとかヤバーいで吹っ飛んだ。一番まともだったのに。
　シャッター音がいくつ向けられようとディルは揺らがない、洗練された所作でポットを持つと、赤いバラと纏ったポットが注ぐのは真っ白なミルク。
　香り立つミルクティーに誰もが震え、そして手を伸ばさずにはいられない。
　――だが一つ、橙山南瓜は大切なことを忘れていた。
　お茶というものは“客人がいてこそ注がれるもの”。用意された席｜全て《・・》に｜客人はもう着いている《・・・・・・・・・・》！
「つまり見た目が多少人間離れしていても、咎める人はおりませんそれでは始めましょう、本日は雑踏でいただく世にも奇妙なミルクティーをご用意いたしました」
　全ての席へサーブし終わったディルが恭しく礼をした瞬間、それは現れる。
『ほう、秋の風が冷える時期だ。ミルクも悪くはないものだね』
『あら……ロイヤルではないのね。残念だわ。それにしても礼儀の鳴っていない小娘ばかりじゃない！』
『奥様そんな事を仰らないで？彼が淹れたのだもの、きっと美味しいわ。それに彼女たちはきっと幼いのよ』
『『『『ぎゃーーーーーーーーーーー！！！！！！！！』』』』
　ようこそようこそ｜オバケのお茶会《なんでもないティータイム》へ！
　無知な小娘吹き飛ばせ！礼儀正しい紳士はびっくち頭が半分ないのだわ！
　気の強いご婦人はあら大変、白すぎるお肌は骨のよう！
　大人しいご婦人、ころりころりと片目がどこかへ転がった！
「無礼講には南瓜のスコーンと白薔薇のクロテッドクリームにはストロングテイストメープルシロップを合わせてお楽しみください」
『アハハハハ！ぼくこれがいい！かぼちゃの！』
『ずっるーい！じゃあキャンディーの形は私！』
　元気な子供達は片腕どこかで遊んでる！
　次から次へ現れるのは珍妙で賑やかで驚かすのが大好きな｜お客様《ゴースト》ばかり。
『ひいいいいいい！！！！！！！！』
『うふ！うふふふふ！楽しいわ！なんて楽しいの！ディルはぜーんぜん驚いてくれないのにこのお嬢さんたちときたら！うふふ！』
　いっつも遅刻魔お洒落が大好きお嬢様。今日も今日とてリボンで結んだ三つ首犬はわがまま放題南瓜の魔女と追いかけっこで遊んでる！
『きゃーーーーーーーー！！やめてよー！』
『いやあ来ないでー！』
『『『『『『『『『『『『Trick or Treat！！！！！！！！！！』』』』』』』』』』』』
　UC―ゴーストティーパーティー―Halloweenedition！
　優雅な衣装はキラキラ賑やかハロウィンカラー！
　マダムはパープル、お嬢さんはパンプキンオレンジ。紳士はびっくり血色のスーツ。誰もが賑やか、おしゃれじゃないなんて言わせない！

「皆様、ようこそお出で下さいました。次のお茶ができるまでの間、どうぞあちらの方とのご歓談をお楽しみください」

　“なにせ、お茶会は始まったばかりですから”
　きっと忘れられない一日になるはずさ、それこそお役目なんて忘れてしまうくらいに。
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​

●ここはキャンプ場じゃないって行く時言ったじゃん
「……Partypeople.」
　今凄いめちゃくちゃ美しい発音が聞こえました。付け焼刃師匠英語なんて霞むくらいのナチュラルイングリッシュ。
「ふふ、なるほど。師匠が私達を送り出してくださった理由が分かりますね、ニイヅキさん！」
「いや、僕はそこまでは分からんが面白い話があるって聞いたし、アミリアも面白いって言うから」
　アミリア・ウィスタリア（綻び夜藤・f38380）が妙に艶やかに微笑もうと尾花・ニイヅキ（新月の標・f31104）は揺らがない。
「えっと……それに僕、盛り上げる方法なんて……あ」
「はいニイヅキさん、それです！」
　ニイヅキの頭に浮かんだものを察したアミリアがパっと手を叩き微笑めば、ニヤリとニイヅキは悪い顔。たぶんこれはよい子が見たら震えあがってお家へすっ飛んで帰る顔。
　でも悪い顔をしてみたものの、消火に走り回った龍神に怒られた記憶が過り元々いい子なニイヅキはちゃんと街を見てからアミリアへふるふると首を振っていた。
「アミリア、今回はダメだ。たぶん今回もやったら怒られるし、何より今回は――｜焼けるものが無い《肉もマシュマロも無い》じゃないか」
　きっと此処に件の龍神がいたら真っ先に突っ込んだことだろう。
　“おい嬢ちゃん、後者の方が力入ってねぇか”と。だがここにいるのは｜アミリア《突っ込みを入れられる方》。古来からボケとボケは組み合わさってもツッコミを生まないのだ！！！
「あら。うーん残念、ニイヅキさんは去年ほどノリノリではないのですね？んー……あ！」
　某死神ならここで閃いちゃったアミリアの顔に素早く変える支度を整えたことだろう。だが残念、此処にいるのはニイヅキである！！！
「アミリア？」
「ふふっ、ニイヅキさんに朗報です！ここは今ハロウィン化の渦中――つまり万物がある状態なんです！」
「ばんぶつ……――ほんとか？！なるほどな！そうだな！そうだ！じゃあハロウィン化も悪い文明じゃないな！」
　ヤバい大変誰も突っ込まないから発想が斜め上へキャンプファイヤーの如く昇ってく！
　英霊にだって止められなかった炎をどうやってとめるっていうんだよ！と突っ込む人などやっぱりいない！逃げろ！地獄が始まるぞ！なんてまず気付く人がいないんだ、サイレンさえならないに決まってる！
――ちなみに此処へ案内したアミリアの師がいたところで“なるほどその手があったか”とかなんとか抜かして自分の大切な人へ走ったに決まってる！役に立たないなんてもんじゃない。悲しいかな、奴も同類ってことさ。
「うーん……でも侵略はよくない。ダメだと思う」
「たしかにそうですね。侵略は困ります。季節限定レンタル当たりがベストかもしれません」
　突然掌ひっくり返さすのなんて十八番の日常茶飯事。この程度で風邪をひいていたら命がいくつあっても足りやしない。
「よし、そうと決まれば｜僕らの力《キャンプファイヤーの思い出ぢから》をみせてやろうじゃないか！」
「いいガッツです！ニイヅキさんも元気になってくださいましたから――ファイヤー☆」

『なんか焦げ臭くない？』
『えー？ケバブ燃えてる感じ？』
『それはそれで映えそうじゃない？！』
『こわ。ないわ』
『ねー。こ……待って。なにあれ、ちょっとっ！ねえ！』
『『『え？』』』
　きゃあきゃあと喋っていた橙山南瓜達は振り返って絶句する。
　あんぐりと口を開けるどころではない、立ち昇る炎にほぼ呆然としていたのだ。
　UC―輝ける焔の思い出―、UC―紅蓮花炎―が合わさった時、生まれたのはとんでもない化学反応。
　輝くどころか点を焼く勢いで立ち昇る炎！
　思い出さえ燃やしてないか？という程の赤々踊る炎！
　炎しか言ってないけど更に炎を炎より鮮やかにする魔法の炎！
　まさに炎のミルフィーユは炎が炎を呼び焱となる大惨事。これが緊急事態じゃなかったら誰が弁償の保証をするんだろうかと言わんばかりの焱は勢いよく燃え上がり街路樹さえ巻き込んで！
　ふと、アミリアは気が付いた。ヤバいヤバいと逃げ惑う橙山南瓜達に。そうして常人ならばコロッと騙されそうな微笑みを浮かべ駆け寄ってその手を取った。
『え？ひいいいいいはなしてええええええええええ！！！』
「ハロウィンも楽しいですよね！ でも、キャンプファイヤーってもーーーっと楽しいものなんですよ！」
　嘘だすっとこどっこい。
　恐怖に引き攣り泣きわめく南瓜が一人炎を包む輪の中へ。
『やだやだやだやだやだやだあああああああああこわいよおおおおおおおおおお！！！』
「あ！焱の強さが怖いんですか？ふふっまだまだこんなものじゃないんですよ？」
　教えてほしくない知識に南瓜は震えた。
　怖いなんてもんじゃない、こんなの狂ってる！ ――そう言えたら、どれほど楽だったことだろう。
　藻掻いても目の前のお嬢様がパワープレーをするものだから逃げられない。ふと、南瓜は炎の前でしゃがみ、うんうんと唸るニイヅキに気が付いた。
「んー……」
『ちょっと！ちょっとあなた助けてよ！あんたの仲間なんじゃないの？！？！』
　オブリビオン橙山南瓜、捨て身の懇願も空しくニイヅキは言った。
「やっぱりスモアにはビターチョコのが大人の女性っぽいな」
『ビターでもミルクでもいいわよ！そんなこ、あ゛っっつ゛！！』
「映えってたしかキャンプでスモアとかしてなかったか？僕は作るのが上手いから一個お裾分けしてやろう」
　突如口に突っ込まれた焼きたてスモアに南瓜悶絶。おしゃれも映えもあったもんじゃない。
『ウワアアアアアアアアアアアンン！！！！！！ハロウィン様許してえええええええ！！！』
「え？待て、何で逃げようとするんだ。今もう一個良い感じに焼けそうなんだが」
「こらこら、ダメですよ。キャンプファイヤーを囲んで踊るともーっとたのしいですからね！」

　やっぱり｜ハロウィン《地獄の釜の蓋が開く》んじゃないか！！！
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●姉妹は意見が合わない時もあるけど案外ぴったりな時もあるんだよ
　パリピってあんな大真面目な顔で言わなくてもいいのではなくって？
　基本妻以外に対しては表情筋が仕事をしない男 御簾森藍夜の説明を聞いてきたものの、何回聞いてもあの人の説明って時々変ですのよね……と｜ラップトップ《シエル》は思わずにはいられなかった。
　最近美希も極偶に“藍夜センセは不思議な人だよね”とボソりと溢しているのをお姉ちゃんは知っているのだ！
　……というのを今は置いておいて。
　まずもう一度言うが、あの大真面目な顔で“パリピになってもらう”というところから一切分からなかった｜ラップトップ《シエル》。
　スマホでPartypeopleについて調べてみたものの、そんな面倒な言い方しないでも楽しんでくれば……そう、思い切り楽しんで“戦って”こいってことなのではなくって？が現在出た妥当な答え。

　ジャジャン！さてここで問題です。
　Q：御簾森藍夜は戦って来いって一言でも言ったでしょーか？
　A：『まぁなんてことはない。奴らがハロウィンだなんだとかこつけるなら引くほど楽しんで上書きするのが手っ取り早いとは思わんか？』でしたー！

　まぁつまりは“そういうこと”である。

「ふぅん」
　この時、｜ラップトップ《シエル》・アイヴァー（動く姫君・f37972）は思った。だったら普通にぶっ飛ばせばいいのではなくって？と。
　｜ラップトップ《シエル》はどちらかというとせっかちだ。良い意味で言えば合理的なタイプ。
　しかし大切なことを忘れていたのである。自分は“二人で一人”だと。

「（ねぇ！お姉ちゃん！）」
　強力な｜妹《美希》という存在を、声を掛けられハッと思い出す。
　近すぎるとついつい忘れちゃうよね人間って。
「なぁに美希、私は」
「（はーい、チーズー！）」
「はぁ？！今、」
　敵陣の真っただ中で笑えと言いますの？！と｜ラップトップ《シエル》の頬が引き攣り、怒ろうと口角を上げた、その時！
「はいっ、どーん！今日はみきがマジカルにどどっとぜーんぶ解決なの！」
　ラップトップ、マジカルチェンジ☆
　さっきよりもちょーっと柔らかめな空気で気軽にスマイルな｜ラップトップ《美希》にチェンジ！
　ちなみにだが、チェンジ！と脳裏で突き飛ばされたシエルはというと不意に真後ろからドーン！され脳内なので気安く展開されたスポンジクッションの海にすっ飛ばされ、頭から飛び込んでいた。
「（う゛！うぐ、うぐぐぐぐぐぐっ、ぷは！みきぃいいいいいい！！！！！）」
「はーい、聞こえませーん！ ……さぁて、お祭はめいっぱい楽しまなきゃ！」

　一方、置いてきぼり気味の橙山南瓜達は何気なくラップトップから距離を取っていたのである！
『（なんだろ、あの子一人でしゃべってない？）』
『（てゆかあっちでヤバい儀式とかヤバヤバイギリスフェアとか突然なまはげ来たとかストーリーズ通知止まんないんだけど）』
『（ほんとだ。こわ。えー……でも相手いるぽくない？きっとワイヤレスイヤホンで電話してる、とか？）』
『（でも電話してなくない？あっ新しい通知……やば、なんかあの儀式キャンプファイヤーとか言ってるっぽい）』
『（マジ？ヤバイベ多すぎでしょ）』
　ひそひそこそこそ作戦会議。ちらちらラップトップを見てはあの子どうしたのかな？なんてひそひそ話。
　ふんふふんふふん♪なんて明るい鼻歌歌っちゃう｜ラップトップ《美希》はご機嫌。なんたって派手にしていいぞと許可が出ているのだ。どうやって楽しもう？
「うーん、やっぱりいーっぱい楽しむならキラキラピカピカは重要だと思うんだよね！」
　UC―Wish +X―！
　目を焼きそうなほどの輝きは暮れ空のようなパープルカラー！
　鮮烈なそれは｜ラップトップ《美希》の背を照らし煌々と通りのビルに反射する。
『きゃ！眩しー！あっでも一旦写真撮ろ』
『でも紫のライトって可愛くない？！ハロウィンじゃんカメラー！！』
『ほんとだー！みてみて、アイスバニラだと紫っぽく撮れるー！ちょいい！』
『あれじゃんトッピングスターシュガーで大正解って感じ！でもネイルも映える！』
『ねぇねぇ貴女一緒に写真撮ろーよー！』
「みき？」
『そうそう、かわいーもん！』
　かーわーいーいー！！と映えと｜ラップトップ《美希》を見つけた橙山南瓜達はきゃあきゃあ、美希も混ざって大喜び。壁に反射するライトでマジカルビーム☆なんて写真を撮ったり、｜ラップトップ《美希》も真似っ子して遊んでみたり。
「あっネイル美希も後でしたーい！ばけちゃんとか南瓜のランプとか絶対かわいいもん！」
『マジ？！わかる！せっかくならいまグラデネイルちょういいよ！』
『そうそう！先は濃いめ系で根本明るい系！髪色と瞳の色で合わせるとか、お洋服に合わせて自分ネイルとか可愛いかもよ！』
　ふと気付いたネイル一つから会話に混ざればボムもキャレイジもやってる暇なんてないなーい！十二剣神 大祭祀ハロウィンがいたらさぞ怒ったことだろう。
　だが今、このイベント期間にしか受けられないサービスとか、限定でハロウィン時期オンリークーポンあるんですよ？！せっかく先着で取ったのに！！と乙女の大波に呑まれいたかもしれないけれど。
　なにせ世はポイ活＆クーポン戦国時代。ポイントもクーポンも集めないのとか使わないのとかもったいなーい！！ハロウィン様しらないんですかぁ？！仮装してると受けられちゃうサービスってあるんですよ！？
　なんてポイ活もクーポン使いもできなそーな神様はぽーい！
「でも赤系ベースだと南瓜のランタンデコ映え無くなっちゃわないかな？」
『全然！？てゆかあえてシルエットとかよくない？』
『あー、描いてもらうとなるちょっと印象薄めちゃう可能性、なくないけど……ならさ、やっぱハロイベなら３Ｄじゃない！』
『『「それだーー！」』』
　此処にシエルがいればコミュ力の高い美希を遠巻きに見ていたことだろう。
　わかるー！とそれなー！で意思の疎通が軽率できる女の子ってすごい。あとマジの一言で共通認識生れちゃあうのとか。
『ラメマストでしょ！』
『グラデホロよりやっぱ粉末ラメっしょ。あと、箔は弱いからなー』
「うんうんみきキラキラ好きー！」
『じゃあさ、やっぱみきみきラメ推しならネイルはカラージェルでしょ？カットホロかな？』
　盛り上がってまいりました女子トーク！これいつ終わるんですかね？！たぶんハロウィン様待機してるんですけど！
「美希」
『でもさ、あえてチップにして爪先チャームとかアリ？』
「ん～……やりたい！けど、みきそれちょっと苦手かも！もうお姉ちゃんはあーとーでー！」
「美希」
『あー重いってかちょっと邪魔だよねぇ』
『ええ～！かわいいよ！？』

「み　き！！！！」

　シエルはずっとそうだった。
　お転婆で身体的能力もコミュニケーション能力も高い美希をちゃんと見守れるお姉ちゃんでした。
　だからちゃんと、“美希の残した切っ掛けも兆しも逃さず使える力”を持っていたのです。
　ＵＣ―R2@: Dreaming―……それはずーっと光に紛れていた、紫色の輝きの波動。夢への片道切符であり、安寧への導きで、少女でいたかった君たちへ捧ぐ温かな夢。
「――ほら、私があなた達がしたい夢を叶えて差し上げる。でも美希、あなたはダメよ起きなさい。遊び疲れた子は寝る時間だけれど、あなたまだ元気でしょう？」
「（えへへ、バレちゃった！でもみきもすーっごいたのしかったよ！）」

　HappyHalloween🎃DreamingNight
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『十二剣神『大祭祀ハロウィン』』

POW   :    そして世界はハロウィンと化す 【ハロウィン化した世界】を見せた対象全員に「【オマエのハロウィンを見せてみろ！】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【ハロウィンによる肉体変化に抗う力】が半減する。 SPD   :    トリック・オア・ハロウィン 【食べた者をハロウィン化する毒菓子】を給仕している間、戦場にいる食べた者をハロウィン化する毒菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。 WIZ   :    真理を識る大祭祀ハロウィンの視線 視界内の対象1体の精神を【真実の部屋ハロウィン】に追放する。精神が帰還するまで、対象の肉体は動けないが無敵になる。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●｜🎃《十二剣神》｜🧅《大祭祀ハロウィン》
『俺様の！！！！！！！！！！！！！ハロウィンが！！！！！！！！！！！』
『ハロウィン様もうむり』
『あたしかえりたーい』
『えーん！こわいよぉおおお！！』
『あれぇ？ハロウィン様なんでいるの？ウケる』
　やる気萎え萎えピエンも死語になりそうな橙山南瓜達の阿鼻叫喚（一部安眠）に大祭祀ハロウィンは怒りに震えた。
『くっ、誰だ！！！！！！！俺様の街にひでぇことしやがって！！！！！！！！！』
「お友達に慣れたと思ったんですが！」
「ちょっとお客様が盛り上がり過ぎてしまったようですね。ハハハ」
「え？別にそんなに燃やせていないのですが……」
「そうか？僕のスモア泣いて喜んでたやつもいたぞ！」
「私達は特段かわったことはしていませんわ？ねぇ美希」
『ちょっとは！！！！！！！！！！悪びれろよ！！！！！！！！！！！！』
　どうしよう。なんかどっちが正義なのか何なのかよく分かんなくなってきた。
　なまはげは伸びて縮んでぴょんぴょん元気で、ミルクティーと久々の絶叫に酔って斜め上に大盛り上がりのゴーストは飛び回り｜無礼講《アリスラビリンスルール》！ 更に言うなら未だ轟轟とキャンプファイヤーは燃えていて、未だすやすや夢の中な魔草少女達はニッコニコ。
　控えめ言っても割と惨事寄りである。
　大祭祀ハロウィンの言葉が一見正論に聞こえそうな程度には。

「というかそもそもこの街、別にハロウィンのじゃなくない？」

　どこかからこの一言さえ出なければ。

　祭のフィナーレは後片付けまでがお仕事です。
　ぜんぶぜーーーーんぶ綺麗に片して、玉葱の皮一片も残さず｜今日《ハロウィン》を終わりにしなくっちゃ！！
　
　
　
【※】決戦装備について
　元々はキラキラした星のようなエネルギー結晶のような品です。
　強くイメージした形を再現する傾向にあるようで、橙山南瓜達が去った今はご参加くださる皆様のお手元にございます。

　例：⚔星　等漠然としたご記載の場合は（皆川）お任せ品を描写します。
　　　⚔星型のライトが先端についたロッド　と指定の場合そのように描写をいたします。
　プレイング冒頭に『⚔』のマークと決戦装備の希望のフォルムをご記載ください。

　また、一章ご参加で仮装をご記載済みの方は二章でも引き続きと判断いたします。御着替えの場合は一章のプレイング同様に『仮装：○○』またはＭＳコメント記載の【23南瓜】などのご記載でお願いいたします。
　
　
　


●最終兵器 NATA
　ぷにぷにのほっぺをうるるんと染めたカルミア・ローレンス（空を見上げて・f41695）の瞳はまるで初めて｜大勢の人が行き交う交差点《都心の交差点》を見下ろした時のよう。
「うわー……！すごい！武器、」

「かわいい！！！！！！！！」
『……は？』

　この時ハロウィンは思った。鉈がかわいい：とは。世界のKAWAIIが難しすぎる。
　いっそそれこそケルベロスに聞いてやろうかと思ってくるりと首を向けるも、ふるふると高速で首を振る者、腕を交差させ×印を作る者と多々いたが、たった一人だけカルミアだけがこの鉈のディティールの良さを理解できた。
　刃は所謂ダマスカス鋼と思しき波紋浮かぶ艶やかさは宇宙の神秘とカオスのよう。
　更にこの柄は木ではなく樹脂なのか非常に軽く、振るいやすいせいかこつんと街路樹に当たった瞬間、街路樹が切れた。
「「「「「「「「「「『え』」」」」」」」」」」
「～～～～っ、すっごい！すごい！すっご～～～っく切れるのすてきだね！」
　戦場の一角がざわめいてから静まり返った。
　そんな時こそ　説明しよう！
　ダマスカス鋼は錆びにくい（S）、スッパスッパ切れる（S）、スーパー壊れない（S）の刃物向きSSS級素材なのだ！！
　カルミアさんやばい物持っちゃったよ。無邪気な少女が持つもんじゃない物持っちゃったよどうすんの。誰か止めてきなよと押し合いへし合い譲り合い。
『おいやめろ俺様はいやっ』
「あっ、そうだ！えへへ、やっぱりお洋服も鉈に合わせてチェンジしなきゃだよね！」
　いや全然合ってますよなまはげ、なんて押し出されたハロウィンも命が惜しくて言えないまま、マジカル☆かわいい☆チェーンジ！と魔法の合言葉。
「マジカル☆かわいい鉈に合うならー……どーん！」
　キラキラジュエルになったってやっぱり鬼の面の宝石を胸元にきらっと☆
　ふわっとしてそうでちょっと藁カラーよりなスカートをひらっと♡
　同じくふわっとパフスリーブなトップスもきゅるん♪と纏って、きゅっと真っ白リボンの腰ひ……リボンは蝶結び！
　マジカル☆NATA戦士 カルミアの爆誕！！！！！！

「というわけで大祭祀さんはじめまして！」
『は、はじめまして』
　別に大祭祀は称号の一部で苗字ではないのだけど！けど！折り目正しく挨拶されたら神様だからお返事しちゃうよね！NATAあるし。カルミアの手に。
「あなたって地球初心者だよね？」
『えっ。あっ、ま、まぁ？俺様も初登場だけど？』
　間違いはない。
　世界を知らなかったわけじゃないけど、ある意味書面の知識とかテレビとかネットの知識的な何かそういう感じの上辺だけしか知らなかった面も無かったわけではないような、あると言われればあるかもしれないし？
「あのね、実はアタシも……へへ、ずーっと……地下のね、遺跡にいたから」
　寂しそうなカルミアの声にケルベロス大ブーイング。
　子供泣かせるなー！責任取れー！さいてー！など言いたい放題さっきまで押し合いへし合い譲り合いした仲だったのに掌なんてクルックルもいいところ。
『へ、へえ。そうなん……ってお前ら俺様のことさっき押しただろこのやろ覚えとけよ！！』
「そうなの。うん、だから――だからアタシなりのハロウィンは漠然としたイメージあるかもしれない。でも！」
『……でも？』
　その時、ハロウィンの中の十二剣神の勘が言っていた。こんなこと聞かないで早く逃げろ俺様のバカ！と。
　でもさ、生き物ってこう……途中まで聞くと最後まで聞きたくなっちゃうじゃん？というのを人間は“好奇心は猫をも殺す”なんて言葉で後世に残したのだが、生憎ハロウィンは人間ではないので知らなかった。残念。
「精一杯、がんばるからね！」
『うおっとぉ！そういうの頑張るっていわねっ、ぎゃああああああ！！！！』
　ざしゅっと切れたハロウィンの――たぶん肉。いや体。
　良い子には見せられないシーンになってしまうので血は飛ばない代わりに赤い花弁がブワッと飛んだ。
「すごーい！この鉈やっぱり普通のより切れるよー！」
『くそっ、なんであいつあんな嬉しそうなんだよ……！さっきの殊勝な感じなんだったんだよ！！』
　しかもあの鉈彫り込みの流星の意匠が｜コズミックに光る《サイキックエナジーに反応する》！！
　無意識か、ＵＣ―サイコキネシス―を使いこなすカルミアはエナジーを纏わせ鉈の刃渡りを伸ばしていた。
『くそー！そうだ、お前のハロウぃッ』
「えーい、やぁっ！」
『ギャーーー！』
　ハロウィンダッシュ×居合鉈ｗｉｔｈサイコキネシス刃渡り！
　ゴムガム人であるカルミアは人間よりも“動き”が柔軟な天衣無縫。飛んで跳ねて時にカメラ目線！ 仮装を楽しむ心が煌めきをさらに大きくする！
「（さっきよりもっとナマハゲだよね！だから今度は……全力でナマハゲの仮装をするアタシを！見せつける！！）」
『ちくしょう、全然なんかさっきマジカルとか言ってたけど物理じゃねぇか！！』
　最もである。

「――悪い子はーいねがー！！！」

　ズッドーン！とFinal NA☆TA Finish！！！がスパンと十二剣神 大祭祀ハロウィンを叩き斬る。
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​

●｜🔥🎃🔥《ハロウィン・ファイヤー・デュエルナイト！》
『あ゛――――――――っ！くっそ、なんなんだ猟兵って奴らは！！』
　きゃぴきゃぴハロウィンを行って街にハロウィンパーティーを永続しろ！というか一生ハロウィンしてろー！と圧政を布くための先兵 橙山南瓜たち魔草少女はなんていうかその、なんか圧倒されて片付けられ、さらに自分は先程鉈を振られた。しかも痛い。
　いっそ“信じられない！さいてー！”なんて十二剣神にあるまじき叫びの一つくらい大祭祀 ハロウィンだって上げてしまいたい程度にはちょっと動揺していた。
「ハピハロ」
「ハッピーハロウィンです！」
『ま゛』
　にこ、と微笑む斯波・嵩矩（永劫回帰・f36437）は紳士的な帽子屋スタイル。南瓜系カラー＆チョコレートカラーでハロウィンな衣装にくすみブルーなカマーバントの差し色がお洒落。
　チェリオ・ヴィルキッド（桜花爛漫・f36842）も嵩矩とお揃いの南瓜系カラー×チョコレートカラーなリボンをきゅっと結んで翻すレースとフリルたっぷりなゴシックロリータアリスは本日ブラック。けれど指先に橙ベースに蝙蝠とチョコレートカラーとを交互に煌めき仮装はばっちり！
　そんな愛らしい二人になぜハロウィンが妙な声を出したかと言えば、炎の軍勢を引き連れていたからである。
『…………俺様は優しいのでつかぬことを聞くが、そのなんか燃えてる奴、多くないか』
「そうかな？チェリオ、こんかいはたしか百鬼夜行だったよね？」
　百鬼夜行。
　今この男、隣の少女に一番似合わなさそうな百鬼夜行だよね？って聞いた？聞いたな？なんで？え？え？この男がこの炎を率いているのではない？？？？？？？？？？？？
　混乱したハロウィンは一歩下がり、そして思う。“あれ？ これヤバいやつなんじゃないか？”と。
　もう一回いうけどこういう時は“あ、用事思い出したわ”とか言える間柄なら良かった。たぶん一生そんな機会来ないけど。
　だが十二剣神として律儀にも名乗ったうえ、決戦都市取っちゃうもんねー☆なんて宣言しなきゃよかったのである。
　いっそ黙ってサイレントに粛々とやったってたぶん数日でバレるけど、姑息とか言われてもやってみればよかったのにお祭パワー☆なんて盛り上がったうえ、使っちゃお！なんて調子ぶっこいたからこんなことになっているのである！！！！
などというのは置いておいて、この時ハロウィンは初めて炎の力の根源が小柄で幼いアリスなチェリオだと知りこの一瞬、舐めた。
　よくある二コマ目には死ぬタイプの“なーんだ、子供じゃん！”の浅はかな発想。お粗末。
『なーんだ、子供の火遊びか？俺様に勝とうなんて――』
「あなた達」
　胸に輝くアイシングクッキーのロゼットには魔王の紋章。
　そんなチェリオが手にしたのは、ひどく可愛らしいスイーツデコレーションなドラゴンランスだった。
　アイスコーンはとがった方を上向きに。先端に向かってクリームはお衣装とお揃いでピンクから先端へ向かって黒へと変わるグラデーション！ そのクリームにカラースプレーのチョコや流行りの“おいり”デコ、差し込まれたカボチャ型クッキーには宝石カットのキャンディアイがきらりと光り、悪魔の角は飴だろうかツヤツヤと。黒いお城のアイシングクッキーからは狼男が遠吠えをワオン！ 幽霊めいたホワイトオーガンジーのリボンが結われ、振るえば揺れるリボンとコウモリのラメが零れる“ハロウィン仕様”！
　――ちなみにこの決戦装備、本体はリボンで、チェリオ愛用のドラゴンランスに嵩矩が蝶結びしたのである。決戦装備自体は幽霊めいていながら雪のような春風のような漣のようなリボン。
　なので“メリークリスマス”と唱えイメージするとクリスマス仕様になるのだ！ 季節の魔法ってすごい！ ちなみに“春一番が吹きそうですね！”と唱えれば桜も咲くし、“夏休みです！”と唱えればたぶん貝殻やヒトデの夏デコもできるぞ！ 季節の魔法ってすごい！
　という間にチェリオが槍の石突で地を叩いた時、小さな獣めいた炎が高らかに王の言葉に燃え上がる。
　UC―炎の軍勢―にとって、領地の王たるチェリオには絶対服従。王を馬鹿にするなど無礼千万八つ裂きだ！
『ひえ』
「――“｜本当の《・・・》”ハッピーなハロウィンをみせつけてあげましょう！」
『『『『『『『『『『Yaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa！！！！！！！！！！！！！』』』』』』』』』』
王の言葉は絶対！ 盛り上がる炎はぴょんぴょこ跳ねて元気いっぱい！ 祭だ祭だ無礼講！ 触った全部、燃やせそう！ やったね！！ 燃え上がれ！
「ほらみんな、忘れ物だよ。一人一個で終わった後食べていいからね」
　なんたってギラギラ燃えてる｜祭壇《ｷｬﾝﾌﾟﾌｧｲﾔｰ》だって存在しちゃうので炎のマナがこの場所には溢れているから余計に元気！ これがハイってやつだぜヒャッハー！！ しかも帽子屋さんやお菓子くれるって！ 並んで並んで、早く早く！
　そんな炎の軍勢ににっこりなチェリオを見下ろす嵩矩がお菓子を配りながら横目でハロウィンを見れば明らかに“おいやめろ”と顔に書いてある、が――……。
「チェリオ、俺もまーぜーて？」
「勿論です、タカさん！」
『おいやめろそれ以上増えるな』
「さーて、みんな元気みたいだけど……やっぱりもうちょっと晴れてた方がみんな綺麗にキラキラみえるんじゃないかな、どうだろう？」
『俺様はお前達に今すぐ帰ってほしいけどどうだろう』
「素敵です！」
「魔王様のご所望とあれば喜んで」
『聞こえてるよな？！お前ら俺様の聞こえてるよなぁ？！？！？』
　菓子も配り終え手も空いた嵩矩がウィンク一つ、シレっとハロウィンを黙殺すると優雅な所作で手にしたのはキャンディーケーン模す仕込み杖。
　黄金のリボン絡むそれは繊細な掘り込み自体は魔術的なもの。纏う色は現状ハロウィン仕様だが、なんとなく嵩矩には分かる。たぶんこれもチェリオと同じく“季節の魔法”に反応しそうだ、と。
　それ自体は次の機会で試すのもいいだろうと頭の隅に置き、とんとケーンの石突で地を叩く。
　瞬間、ぶわりと解けたリボンめいた模様が煌めき纏って天へと延び、呼び起こすのはUC―干天乃慈雨―！
　細く降り注ぐ｜煌めきの雨《シルバーレイン》で余計なものを流しきらめきを添えながら雲の幕を開け、空を晴らしていった。
『わあうそぉ』
「すごいですタカさん、ありがとうございます！ あなたたち、いきますよ！」
　“いってらっしゃい”と送り出した嵩矩が猫のように目を細めれば、逆に引き攣ったのはハロウィンの表情。
　王が先陣を切るならばと一層燃え上がる軍勢は大火となり焱となる！
『ちくしょう！！！！！！！！！！もっともっともーーーっとハロウィンになれーーーーーーーー！！！』
「あ、もう俺達には間に合ってるから」
『え』
　チェリオの焱の軍勢はただの焱ではないし、魔王式ハロウィンパーティーをしていなんて言えるはずもない！
　よく見ればキャンディの盾にクッキーの剣や槍を手にしているではないか！ 魔王様とお揃いのこだわりポイントは刃を飾るチョコスプレーと南瓜ランタン、蝙蝠、オバケに黒猫も！ 可愛らしいアイシングのクッキーでランダムに飾ればみんな違ってみーんな素敵に大変身！して！いた！
「あっそうだ。せっかくならチェリオともっとお揃いだと楽しいかな？」
　コウモリに折られた大きめの黒い式神符を摘まんだ嵩矩が、パッと目を輝かせたチェリオに微笑みすいと飛ばす。
「わぁ、蝙蝠が！」
「――さぁ、華やかにパーティしよう」
　嵩矩フィンガースナップの高らかな音が響いた瞬間、弾けた蝙蝠から溢れたのは魔法のシャワー。輝きは軍勢の武器に輝きと、チェリオとお揃いの蝙蝠エフェクトのアレンジを！
『『『『『『『『『『Yaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa！！！！！！！！！！！！！』』』』』』』』』』
　わぁわぁ上がる歓声に嵩矩とチェリオが笑いあった時、十二剣神なので不意は打たなかったはずの大祭祀 ハロウィンが素早く動く。
『うぐぬぬぬぬぬ！！！！！！！なら俺様のお菓子を受けてみろぉぉお！！！』
「ひゃ！むぐっ……な、なんだかまず……うぐ、これにがいです。頭が、クラクラ……」
　うおおお！！と負けじと投げつけられたのは大祭祀 ハロウィン特製毒お菓子！ いいのか楽しむイベントに毒なんか盛って！ 姑息！ 十二剣神のくせに！ 口にお菓子を放り込まれ食べちゃった魔王様の苦いお顔に軍勢も大ブーイング！
『うるせぇ！大体俺様一人なのにお前らのがいっぱいいるじゃん！！』
『うわ……ハロウィン様、これマジまずいよー！ おいしくなーい』
『ないわ。味見しない系のは無いわ』
『しかも映えないしおばあちゃん系ってか……すっごい普通のクッキーで逆に一周回っても全然映えないわ』
『Ｏｈ』
『｜But that being said...《そう言われたってさぁ…》』
『『『『Ｂｏｏｏｏｏｏｏｏｏｏｏｏ』』』』
『うるせぇええええええええええええ！！！！ハロウィンだよ！！！うめぇだろ！！！！』
　残っていた橙山南瓜勢力も“お菓子だー！”と喜んだのは配られた瞬間のみ。手に取り食べて苦すぎと文句を言う者、映え無いと｜ひそこそ《聞こえる声で》喋る者、いっそ無いわと面と向かって拒否勢力などなどなど。今の時代、映えもお味も大切なのだ。ハロウィンからすれば踏んだり蹴ったりもいいところ。
　更に焱の軍勢は当然大ブーイングでハロウィン会場、混沌としております！！
　けれど再び、コツンと嵩矩のケインが地を叩く。
　何故ならばそれもこれも嵩矩には織り込み済み。当然ハロウィンが妨害に動くこととて予測の範疇だ。ただ、橙山南瓜にまでブーイングされるハロウィンのことは考えていなかったけれど。
「チェリオ、お口直しをどうぞ」
「タカさんありがとうございます！ 美味しい……！ チョコ餡もオバケの求肥ももっちもちです……！」
　淡く降る雨のカーテンがお菓子を燃やしてもつく毒にブーイングをしていた軍勢を雨が撫でれば瞬く間に焱はぴっかぴか！ 美味しいオバケを模した和菓子で魔王様もにっこにこ！
　“タカさん手作りすごいです！美味しいです！”と楽しそうなのでヨシッ！
　このやろう　おぼえていろよ　このやろう。いっそハロウィン謎一句くらいよめそう。あとこれは季語入ってないのでご指導食らうやつ。
　一方そんなの関係ないので仲良く嵩矩手製の美味しい和菓子に舌鼓を打つチェリオはにこにこ。その笑顔につられて寄ってきた橙山南瓜の生き残り(?)にも惜しみなく和菓子は供され、きゃあきゃあと盛り上がる。
　たぶんきっとおそらくこれが一番｜ハッピーなハロウィンイベント《みんなが楽しくなれる理想のお祭》。

　でも、｜大事な仕事《十二剣神 大祭祀 ハロウィンをぶっ飛ばす》は終わってない！
「さて……大祭祀 ハロウィンさん」
『なんだ！！！！！！』
「改めて、本当のハッピーなハロウィンをみせてあげましょう！」
『見たわ！！！！！！！！！！！！！！』
　さっきから怒涛の展開にハロウィン息切れしそう。だから言ったじゃないか。イベントっていうのは管理が大変だって。
「赤キャンディの盾は一陣、二陣は青、三陣は緑、遊撃は黄色が行うように」
『Yeah！』
『ya』
　軽く返事をした軍は素早く別れ、構えた。シンとし、ピリリとした空気が交差点を満たす。
『……へぇ？ とうとう俺様にちゃあんと対応しようってことか？』
「私に続いてください！」
　チェリオの合図に声を上げた軍勢が迫る！
　へぇと笑ったハロウィンもまた、カップケーキの毒砲弾と強烈なハロウィンの魔術を内包した弾けるキャンディで応戦を！
　逐次嵩矩の雨が怪しげな魔術効果を振り払うように雨を降らせ大事を回避し、果敢にチェリオの槍が……！
「――とった！」
『甘ぇ！ これでも食ってな！』
「むぐっ、うっ」
「チェリオ！」
　至近距離まで攻め込んだチェリオが槍を振り上げたその時、叫んだ口へ放り込まれる南瓜型の飴！
　ごくりと飲んだチェリオが胸を押さえ“うっ”と呻き、口の端から零れたのは赤々とした“ち”。
『え。　……は、ハーッハッハッハ！猟兵討ち取った、りぃ！？ぐふっ、卑怯だぞ……！』
「甘いです。領地の魔女さんに教えていただいた甲斐がありました。魔女さん言ってました、女の子はちょっとくらい刺激的でも良いのよって！」
　たぶん、その刺激は槍で突き刺すほどのではないと思う、とは誰も突っ込まない。ぐり、と容赦なく捻じ込まれた鋭烈なチェリオの一槍がハロウィンを肉薄する。
　死んだかと笑ったハロウィンが余裕綽々に覗き込みに来た一瞬を突く一撃は、寸分違わずその旨を射貫いたから。

「チェリオ、それジャムじゃなくてベリーソースでとろっと血を意識したの？」
　嵩矩はチェリオが一週間も前からあれこれと軍は勿論、領民達と準備していたのを知っている。
　お祭だお祭だ、と年に一度のハロウィンを全力で楽しむチェリオに、まずもってハロウィンの毒が効くはずもない。
「はい！ ふふふ、これぞ適度なリアル感、です！お楽しみいただけましたか？ あ、でもさっきの飴とってもまずかったので、まだタカさんのお菓子はあるでしょうか……」
「あるよ。蝙蝠の黒糖饅頭、どうかな」
　“わーい！”と楽しんで帰るまでがお祭のお約束。
　ばったり倒れたハロウィンの胸から毀れた血のような紅葉が、秋風に巻き上げられてゆく。
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●玉葱未使用オニオングラタンスープの作り方
『く、くそ……ほんとひどい目にあった。ほんと碌な奴がいない。いやでもさっきのやつはまぁハロウィン楽しんで……あれ？俺様今何を……？』
　迷走している。
　橙山南瓜ショックとかマジカルNA☆TAの衝撃とかで十二剣神頭打ったかもしれない。可能性としてはワンチャンある。
「ハロウィンさん、そこそこお怒りですね？」
『まぁな……くそ、ほんとまともにやり合う気のある奴らってどこにいるんだ？うん？俺様何を言ってんだ？』
　頭を抱えてうんうん唸り出した十二剣神 大祭祀 ハロウィンへそっとアミリア・ウィスタリア（綻び夜藤・f38380）が囁けばYesが返ってきた。
　アミリアがちらりと隣を見れば、あの爆炎でなんとか炙れたマシュマロと格闘していいたが、視線に気づくと“？”と不思議そうな顔。
　一方囁きかけられたハロウィンは凄くシケた顔だ。
「あっ分かりました！ ……はっ。もしかして、」
『なんだ、やっと分かっ』
「仲間外れにされたと思って……？！」
『俺様はそんなこと一言も言ってはいないが？？？？？？？？？？？？？？』
　何言ってんだこの女と、失礼ながらハロウィンは純粋に思った。
　控えめ言ってもまずもってなんで俺様が支配しようと思っていた街のこの大交差点のド真ん中にキャンプファイヤーがあるんだ？とか、ケルベロス共が許可を？と疑ったりとか、猟兵の治安ってどうなってんだ？という真っ当すぎる気持ちになっていたからだ。
　いくら相手が艶やかなハートの女王の仮装をしていようと、それこそ有名な童話のように首を刎ねると言われた方がまだ分かるような気さえしてくる。たぶん大祭祀とてもお疲れなのだわ。
「いけません。それともまだ燃やしたりないのでしょうか」
『もういらねぇが？！？！？！？』
　ハロウィン、ほぼほぼ火がトラウマになりかけようとしていた。あとほんとこの女全然話聞かないんだが？？？？？？？？とニイヅキに一生懸命さっきからアイコンタクトをしているのだが、｜この女の友達《ニイヅキ》全然気づいてくれない。なんかずっと高速でスモア生成して無心でｗ自己消費してる。こわい。
　こんな所で怖気づくとは、おぉ十二剣神 大祭祀よ情けない……なんて、見栄を張っているどころではない。むしろ俺様あの炎にくべようとでもされているのか。危険だ。この女たち絶対に危険だ！ 大祭祀の勘が訴えるも、火に関する拒否を反射的に答えしてしまう程度にハロウィンは動揺していた。
「うーん……あ！」
　この時、俺様の気持ちをまさかこの女察せたのか？と一瞬でもハロウィンは期待した。
　ちなみに今から死ぬほどがっかりする。
「わかりました！ 仲間外れにされたと思われたんですね……？」
『えっ、ちが』
「すみません！ 私ったら……ふふ、大丈夫です！ まだ始まったばかりですからね！」
　何が？ まず何の心配もしていないどころか別に仲間外れにされたなんて俺様1mmも思っていませんけど？？？？？？？？？ それが十二剣神 大祭祀 ハロウィン魂の叫びであろう。
　大体、ハロウィンにキャンプファイヤーは関係ないし。せめて魔女集会の篝火☆とかしゃれこんでくれればワンチャン無きにしも非ずだったが、もう……遅いし。
「は……！もぐ、出たな、｜だいしゃいひ《大祭祀》｜ひゃろいん《ハロウィン》！」
『……いいよ。お前もう食ってから喋れよ……』
　というか俺様に気付かないでずっと食ってたのかよ。うそだろ。いやそうかそういえばこの食ってる女、あのやばい二言目にはキャンプファイヤー言ってる女の仲間だったわ。そうハロウィンは自問自答して秒で完結した。かなしい。だがいかんせん、尾花ニイヅキという少女型ミレナリィドールは食べるのが大好きだ。
　ニイヅキ曰く“エネルギー摂取はいいぞ……お腹も満たされて動きにキレが出て、それで尚且ついいことが大体ある”らしい。分かりにくいけど、とりあえず美味しいものを食べると幸せってことだ。たいへん、一行になっちゃった。
「あっもう！ニイヅキさん、以前もぐもぐお喋りはいけませんってお教えしたじゃありませんか！」
「｜へも《でも》……｜らっへ《だって》、」
　お口いっぱいエネルギーはしあわせです。ついいっぱいもぐもぐしたくなる衝動というのはニイヅキ自身、近年徐々に減っていてニイヅキの食い意地自体おしとやかになりつつある。でもやっぱり、どうしてもその衝動が抑えられない時がある。
　だって、｜出来立て《焼きたてスモア》って美味しいじゃないか。
　そうアミリアへ目で訴えれば、“まったくもう！”と口では言いながらも淑女としての先輩 は困ったように微笑みながら許してくれた。ちなみに大祭祀の目は既に死んでいた。
「｜そうひゃ《そうだ》、んぐっ、ごくっ」
「ニイヅキさん、お口の端っこにチョコレートが付いていますよ」
　アミリアの差し出した真白いレースのハンカチで口元拭いながら礼を言ったニイヅキがけほんこほんと咳払い、仕切り直しのTake2。
「お前、ハロウィンを名乗るのに――」
『なんだ、腹いっぱいにもなれば冷静にもなって俺様に怖気づいたってか？』

「なんで玉葱の姿をしてるんだ？」

　・・　・　？

『玉葱じゃねぇが？』
「なるほど！キャンプファイヤーにはスープ料理、いえ火を囲むためのお料理が必要ですものね！ ふふ、ミラもハロウィンさんが何故玉葱の仮装なのか気になっていたんです！」
　私ったらお茶目☆みたいな風体のアミリアだが、ハロウィンからすればにはなんも意味が分からないが？というかこれガワじゃないし。徹頭徹尾俺様だし。ガワじゃないってやめろ剥こうとするな痛いわこの野郎。十二剣神 大祭祀 ハロウィン、ムカ着火もカム着火も飛び越えて激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム（死語）にもなる。
『おいおいおいおいお前ら俺様をなめるのもいい加減にしろ！珍妙な衣装で俺様誤魔化そうったってそうはいかねぇからな！！！！！！！！！！！！！！！！』
「僕は玉ねぎは飴色派なんだ。まず焼いても美味しいし火が通れば通るほど玉葱はおいしい。そして何より、お前は｜玉葱によく似ている《どうして玉葱の姿なんだ》しな？」
『ばぁぁぁぁか！！！！！！玉葱じゃねぇ！！！！！！！！俺様は十二剣神 大祭祀ハロウィン！ お前のハロウィンを見せてみろ！！！！！！！！！！！』
　 ハロウィンが唱えた瞬間、ニイヅキ目線的には世界が｜お菓子《ハロウィン》になる。
『……お前、ほんと食い意地張ってんな』
「何言ってるんだ。お前と同じくこのパンプキンマシュマロ焼いて挟んだスモアは美味しい。あと僕のお腹を空かせる意地悪するならアミリアにスープにしてもらうからな！」
　ちゃ、とニイヅキが構えたのは｜いつの間にか持っていたフォークとナイフと胸ポケットにはスプーン《ニイヅキ専用決戦装備》。
『（こいつも、やっぱり……）』
「なんだその顔は。そういう玉葱にはこうだ！」
　ニイヅキのUC―紅蓮花炎―がキャンプファイヤーを加速させる！！！！！！
『うわやばあっっっっっっっっつ！！！！！！！！！！！！！！』
「わぁ……！ ありがとうございます、ニイヅキさん！ ふふ！ 私今、大きな玉葱を使ったお料理を思い出したんです！」
　轟々と燃え上がる紅蓮の焔の余波に悲鳴を上げたハロウィンが一般的な反応。輝く瞳で見つめ、“あの日みたいです……！”なんて幸せそうなアミリアはちょっといやだいぶかなりヤバい方だと思う、と後にこの記録を取っていた補助担当のケルベロスは書き残すだろう。
「――ハロウィンさん、私とっても考えました」
『いい。考えなくていいからこっち来んなあっち行けというかお前の！！！ハロウィンを！みｓ』
「ハロウィン。それはあなたの仰る通り不可能を可能にする――……つまり、｜ハロウィン化《ハロウィンも玉葱になれる》ということです！」
『――ねぇよ』
　大祭祀、もうほぼ素だった。
　｜皮《気遣い》も剥かれ、半ばつるっとすべすべな心でハロウィンは口を開いていたから。
　猟兵ってなんだ。こんなヤベぇ奴しか揃ってねぇのか。それとも今俺様が出くわした奴らがヤベェのか、もう上下左右くらいしか正確に分からない程度にハロウィンは摩耗していた。ひどい。
「実は今、ミラ師匠に偶にお料理を｜習っている《レシピ情報を頂いている》んです！」
　――習ってるのに、なんであの人｜鍋《決戦兵器》しか持ってないんだろう。
　もう誰も突っ込む気力さえなく、むしろあの美少女の師匠ってのがおかしい奴なのでは？と憶測が飛び交いどこかで黒い長身の男がくしゅんとくしゃみをしていたかもしれない。
　ちなみに“玉葱は無いが思いついた料理は壮絶だった。我々には理解しえず、写真のみの資料を残す”との記録書類と共に記録担当は数日休暇をもぎ取った。
　添付写真には巨大な十二剣神ハロウィンが釜茹でに処されながら藻掻く中、ナイフとフォークを手に飛び掛かる少女と巨大な鍋蓋を閉めようとする少女の姿が映っていた。
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ごめんって言えば何でも許されるわけじゃないけどつい言ってしまうのはやった側
　“すまない”
　その時、青梅・仁（鎮魂の龍・f31913）は短い半人型猟兵人生において久々でもなく深々と謝罪したい気持ちになった。
　別段、仁が何かをしたわけではない。
　だが事を起こした者の監督者、つまり保護者欄に名前を書く者として申し訳なくて仕方が無かったのだ。

　まずもって事の発端は仁が保護監督をしている少女型ミレナリィドールからSMSで送付された写真。
　都心の巨大交差点で二人の少女がピースしていた。キャンプファイヤーに推定｜ハロウィン《巨大玉葱》を突っ込んだ大鍋を掛けながら。
　見て放心しかけたのも一瞬。
　すぐに仲の良い霊の一人に｜揺さぶられ《どさくさ紛れに一発叩かれ》意識を取り戻し、この発端の通知が来たよとつい置きっぱなしにしがちな仁のスマートフォンを居間から届けてくれたリコ・リスカード（異星の死神・f39357）と共にこの｜巨大交差点《事件現場》へとやってきた。
　ちなみにリコのスマホには目線の高さがほぼ同じな友人から“たすけろ”と伝言と着信履歴が数十本残っていたことも道すがらに発覚している。
　伝言は“誰が弁償するんだどうにかしてくれあいつら何も聞こえてない”という珍しくも悲壮な声と“連れてきたのアンタでしょ！！”という怒った声と“しらん！！”と必死にシラを切ろうとする彼の声が途中で切れていた。かわいそう。

「ねぇ仁さん」
「しかたねぇだろ。だいたい写真からしてヤバかったじゃねぇか」
　“これはなに？”と分かっていたが反射で尋ねるリコに、諦め気味の仁が首を振る。
“……まぁ”と溜息交じりに吐き捨てたリコの目が目の前の光景を認識した瞬間、もう一度死んだ。
　仁とリコが此処に着いた瞬間“どうすんだこれ！”とキレ気味だった気がしなくもない真っ黒な友人の言葉も心も仁とリコにはよく分かったが、同時に“過去のお前はあっち側だったよな”なんて思いが過ったのは良心から言わないでおこうと思う。
「だから言っただろ、お互い一人じゃ手が足りんだろって」
「うん、あのさ」
「？ なんだ、気になるもんあったか？」
　“その”ともごもご言いづらそうなリコが指さしたのは先程からずっとナチュラルに仁が手にしていた消火ホース。
「ねぇなんでホースなの！？ 仁さんドラゴンでしょう！？」
「龍神な」
「そういうとこ冷静じゃなくていいから！」
　場数を踏み過ぎて冷静な仁にリコが息をするように突っ込めば、ケタケタと笑う仁は余裕なのか。それとも逆に、目の前の光景の解決方法が思いつかずいっそ面白可笑しくなっているのかリコには分からない。
　だが笑ってもボケでも突っ込んでも炎は消えず、交差点囲むビル群を反響するのはハロウィンの悲鳴と、キャッキャと楽し気な少女の声、火加減に文句というか意見を出す少女の声の計三つ。
「仮装がちゃんと魔除けなハロウィンって俺初めてだよ、たぶん。ほんと、もっとあの機関職員の方に機関のジャケット借りた方がよかったかも」
「それだと仮装になんねぇだろ」
「でもほら、俺達此処出身じゃないから仮装じゃない？」
　正直、仁もリコもあの炎からちょっと目を逸らしたい気持ちが無くもない。でもこれ以上大事になって方々へ迷惑をかけるのは言語道断。そろそろ腹を括る時間というわけだ。
『あ゛～～～～～～～～～～～～～～っづいわ！！！！！！！！！！ とんでもねぇ女たちじゃねぇか！！！』
「「それは俺も思う」」
　思い切り鍋の蓋と思しきぶ厚い板を蹴り飛ばし錐揉み回転しながら着地をチャレンジをするもハロウィン失敗。ゴロゴロと坂道を転がるお野菜よろしく転がった後、リコと仁に気付き十二剣神 大祭祀ハロウィンはカッコよく登場のポーズを決めていた。仕切り直しである。
だがその直前、ほぼ素で放ったハロウィンの言葉に、仁とリコは脊髄反射で同意してしまってからお互い顔を見合わせた。
『お前らもかよ！』
「うん、思う。俺だって本当はハロウィン化っていうのの仕組みが気になってたんだ。魔術的ならこの世界自体、いや各都市の上空か地底に極大の魔法陣でもなければできないけどパっと見ないし」
『この俺様がお前ら猟兵程度にバレる仕掛けでもすると思ってんのか？』
　ナメんなよ――そうニヒルに笑ったハロウィンからほかほかと湯気さえ立っていなければ、僅かばかりでもカッコよかった……かもしれない。
　だが秋風に冷えた体でハロウィンは大きなくしゃみを一つ。
「…………あのさ。キミ、本当に｜この状況の街《交差点でキャンプファイヤーされた街》を侵略する気、ある？」
『俺様が仕切るようになったらキャンプファイヤーとやらは禁止だ』
　真っ当すぎる。此処はキャンプ地ではないのでいいと思う、とリコが同意しそうになるくらいハロウィンは真っ当な発想だった。
「いや、あの、まぁそらそうだわな。それが妥当だな、うん。というか、ハロウィンってのは何でもかんでも好き放題するもんじゃねぇってのに」
『そうだぞ。ハロウィンは復活祭、つまり俺様の威厳回復には最高の日取りだったのにおのれあの女ども……！』
　ここで訂正するが、大祭祀ハロウィンと青梅仁及びリコ・リスカードは敵であり、キャンプファイヤーの方で“あーっ！スープがスープだけに！”やら“僕は具のあるスープが良い！”とドタバタしている少女二人と仁とリコが仲間である。
　厄災のように見えるあの二人と仁とリコ“が”仲間なのだ。
　再三いうが大祭祀ハロウィンは敵である。
「……――というか、なんでここのコンクリこんなに焦げてんだよ！火の海にでもしたってのか？！」
『あのちっちぇえ女の方がやった』
　“分かる。だよね、この魔力痕跡ってニイヅキさんだよね”とリコの目が一瞬で遠くを見たし、この会話は一見すると警察と被害者っぽい会話のように見えなくもない。大惨事。
『というかお前ら、誰だ？』
「今更かよ！」
「遅すぎだよね！？」
　ハロウィン、こう見えて実はでもなくいっぱいいっぱいだったのだ。
　鍋からの大脱出からの受け身失敗での傷は深い。膝に矢くらい深い貫通してますわこれ。
『うるせーーーーーーーーー！！！ こっちはなぁ、お前らの知らない酷い目に合ってんだ！ ちくしょう、お前らもお前らも“ずっとハロウィンを楽しめる場所”にぶっ飛ばしてやるよ』
　茫洋と輝くハロウィンの瞳が仁とリコを捉え――……ようとして、思い切り噴射された水に阻害された。
「悪ぃな！ 俺らもそろそろ消さないと後が閊えてんだ！ お前さんもセットで冷ましてやるよ、水でも被りゃこんなとこに夢持って来ちまった現実から覚めるだろうからな！ お前ら、アレ消火して街を守るぞ！」
「はは、たしかに。んー……でも雪の中で寝直して夢にしちゃうっていうのはどう？ 俺はそっちもオススメなんだけど」
　UC―怨嗟の海の誘い―、UC―雪花舞う夜―！
　仁が合図をすれば勢いよく｜手中のホース《決戦兵器》から射出された水が零れ始めていた火や火の粉は勿論、キャンプファイヤーの剛焱で乾ききった大地に潤いと消火を！
　そしてリコの風が放つシャワーのような雨が後押しし、ついでと言わんばかりにハロウィンの視線を邪魔しその身に風の爪牙を立て暴れ出す。
　そんな風を操るリコの決戦兵器は小ぶりな銀の犬笛。
　リコの笛の音に従い雨のような水を纏った犬が次々キャンプファイヤーだったものを湿らせ埋め火を掘り出しては根幹まで消化の手を緩めない。

　バシャン、と水溜まりが爆ぜるころには焦げ臭いにおいだけが残っていた。
　ちなみにハロウィンは妙に手際よくホースと水圧を操る仁によってふたたび吹き飛ばされて転がって行った。もごもごと“このやろうおぼえとけ！”とテンプレートのような約束されし負けセリフを添えて。
「ほんと悪かった。でも火も消えたし問題ねぇ、よな」
「終わり良ければ総て良しなんじゃなぁい？」
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●湯が沸けるまでの5分は“君が”楽しめる時間さ
「いやー……良かったんですけどね、キャンプファイヤー」
　“あの赤々とした炎は久しぶりですね”と嫌ににこやかなディル・ウェッジウイッター（人間のティーソムリエ・f37834）は手馴れた優雅な所作で五度目のお茶会に興じていた。
『……言いたくなかったけど、あの子って変態なんじゃない？』
『だめよあなた、レディはそんなことを言わないものよ』
　お嬢様の指摘を扇子で隠して注意するマダムも、言葉より目はディルと消されたキャンプファイヤーを交互に見ては訝しんでいれば、気が付いたディルがぐるりと首を巡らせて――にっこり。ビクン！とお嬢様の方が震えてマダムに縋りつく。
「えっ」
『やだー！ あなた偶に変よ！ ｜ああいうもの《キャンプファイヤー》が目の前にある時とか！』
「まぁまぁそう仰らずに。おかしいでしょうか？ ｜街にキャンプファイヤーが上がっているの《目の前の惨状》」
『あんた今惨状って、』
『こら、しっ。オホホホホホホホホホホ、楽しくて結構でしてよ。さ、次のお茶は？ わたくしさっぱりしたものが良いのだけれど』
　｜ゴースト歴より生前年齢《亀の甲より年の劫》とでもいうのか、パシンと扇子でお嬢様の口を塞いだマダムが誤魔化せばにこっと笑ったディルはそうですねぇと素知らぬ顔。
『いやあ、しかし。ククク、あの巨大な神とやらは面白いじゃないか。私は君も｜アレ《大祭祀ハロウィン》も実に素晴らしいと思うがね！』
「おほめに預かり光栄です」
　だが、面白いもの好きらしい紳士はニコニコ。
　猟兵達に翻弄される大祭祀ハロウィンを高みの見物でもするように面白がって、“アレはいつ来るのかね？”なんてディルをつついて今にも落ちそうな目を輝かせている。
　と、そこへ勢いよく転がってきたのはびしゃびしゃに水で濡れた大祭祀ハロウィン。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！ 何なんだあの野郎共！ ちくしょう寒い！』
「そうですね、あの方は人気者なようですので難しい――……訳ではなかったようです」
　TOKYOのハロウィンってすごい！ なんでもすぐ手に入っちゃうんだもの！
　転がってきたハロウィンを喜んだのは紳士だけではない、キャラキャラ笑いの三番目のマダムだってオペレグラスで覗く真似。
「TOKYOのハロウィンはこうでなくては。ねぇ、皆さん」
『勿論だとも！ 物で溢れる都会の茶会の醍醐味だとも』
『まあ！ うふふっ、まあまあまあ！ 素敵ね素敵ねどうしましょう？ 何をなさるの？彼はテーブル？ それとも席を？』
　クスクス。
　アハハ。
　ククク。
　ウフフフフ。
　悪態をついていたハロウィンだが、ハッとした時には淡い気配の笑い声に囲まれ戦慄した。何者だ？どこから？いつから？ 動揺するのも無理はない、彼らは｜ゴースト《幽霊》。オブリビオンでも銀の雨降る世界のゴーストでも何でもない、｜ゴースト《幽霊》。
　同時にディバイドの世界でもはっきり存在しない、概ね現代めいた異界と同様の枠に潜む者。
『おい！ お前！』
「はい？」
　お茶会の招待状はお持ちですか？とディルが笑えば“そんなもんねぇよ！”とハロウィンは拒否。――そう、この時大祭祀ハロウィンは拒否した。茶会への誘いを。
　｜テーブルルール《ﾊﾛｳｨﾝﾃｨｰﾊﾟｰﾃｨｰﾙｰﾙ》No.1『茶会への参加は“拒否”してはならない』
『君は客人ではないのかね』
『まあ、まあ残念！ ウフフッ！』
『なんだ、そうだったんだ。じゃあアンタがパイってわけ？ そろそろ私、スモアも飽きてたとこなの』
『そう。残念ね、あなたは“参加者ではなかった”のね？』
『参加者じゃないとお喋りだめなんだよー！』
『知らないの？おっかしー！』
　ハロウィンが拒否した瞬間、“ティーパーティー参加者”の目が吊り上がる。
　そう、ここは先程ディルによって｜ティーパーティー会場《お茶会ルール》が敷かれたばかり。知らないのも無理はない、なんてお人好しここにはいない。死んで長らく、｜面白いもの《おもちゃ》を求める者しか存在しないのだ！
　ディルの振るったモートスプーンが漆黒のティーカップに涼やかな音を響かせる。
　揃いのポットはふくよかな丸みで“わらって”、“おこって”百面相！
　くるくる変わるティーセットこそディルの決戦装備。適温の湯を魔法のように沸かす陶器のポットから漆黒の色剥がれるように蝙蝠が舞えばカップも同じく色変わり。今度は幽霊めいたスモーキーな透明感へと様変わり。
「あぁ――お待ちくださいお客様、もしかすれば彼は“｜お茶会《ハロウィン》”が初めてなのかもしれません」
『おやおやおや？ 君、初めてだったのかね』
『まあ、うふふ！ なら仕方が無いわ、仕方がないもの！ お茶目な方ね！』
『えー？ うっそお、招待してくれる人いないんじゃない？ だから“礼儀”の一つも、アタシ達の“優しさ”も知らないのよ』
『おやめなさい、そんなことを言っては可哀想よ』
『……なん、だと？お前ら、俺様を馬鹿にするな！！！ この十二剣神 大祭祀ハロウィンたる俺様を！！！！！！！！！』
　クスクス、フフフ。アハハハハ。
　煽るような言葉を並べるゴースト達はディルからすればお歴々、だがハロウィンは知り得ない、“彼ら”は察したうえで面白がっているなんて。
　神といえど万能でも全知でもない、まして彼らは“ハロウィンの茶会を楽しんでいる”。ハロウィンの魔力で侵せる対象ではない。
「大祭祀様、最初は｜どうすればいいか《お茶会への参加の仕方》は不安なものです。ですから、」
『聞けよ！ 俺様は遊びに来てんじゃないんだ！ お前もろともこれでも食ってろ！！！』
『あら、アンタ新しい給仕だったの？ へぇ、カップケーキ』
『まあまあ！ うーん……ねえあなた、わたくしもう少し華やかな方が好きだわ？』
　三番目のマダムとお嬢様はつまらないと頬を膨らますのは｜ハロウィン作の毒菓子《非常にシンプルな見た目の量産型カップケーキ》。
『ほうほうほう、面白いではないか一ついただこう！』
『供されたものは楽しむことこそ、お茶会ですものね』
『わあ、おばあちゃんが作ってくれたやつに似てる！』
『ちがうよ、バレンタインの時おねえちゃんが作るやつ！』
　紳士もマダムも双子の子も口にした瞬間、“うっ”と胸を押さえて倒れる者、口を押えて涙目になる者、混乱する者、暴れる者、飛び出す者と素敵なお茶会は大混乱！。
　勿論、長い長い茶会のテーブルに座る全員が！
「では私も後学のために一つ……うっ！」
『ハハ。アハハハハ！！ ほらな！ 苦しめ、俺様特製のトリック・オア・ハロウィンだ！！』
『『『『『『『『『『『「すっごく普通だな／ですね／よね？／じゃない／だねー」』』』』』』』』』』
『……は？！ なんで！ なんでお前ら！』
　ハロウィンは毒菓子で悶え動きの遅くなった茶会などと遊びに興じる全てを物理的に排除するつもりだった。
　だが結果は散々、橙山南瓜や他の猟兵に指摘された通り“まずい”ではなく“普通”にまでランクアップしただけマシなのだろうか。
　ナプキンで口を拭ったディルが笑む。やはり大祭祀は茶会慣れしていない、と。
「大祭祀様、やはり｜先輩《ゴースト》の皆様に作法をお伺いするのがよろしいかと」
『よろしい私が教えよう！』
『あらあらあら？ 知らない？ 知らないの？ わたくしが教えましょう！ さあお椅子に縛って！』
『うそ、教えないと駄目なわけ？ パイで給仕で、次は無作法とかお笑い種じゃない』
『まったく、だめよあなた。彼は赤ん坊より幼いのだから』
　みんなみーんなわらってる。新しい｜後輩《おもちゃ》の登場に喝采を！
　新たなる娯楽の着席には鎖を巻いて！ だめだめ暴れないで、お茶会の始まりはしゃんと背筋を伸ばさないと！
『なんだこれ、なんで――！』

『『『『『『『『『「さぁ、お茶会を始めましょう」』』』』』』』』』

　ほら、丁度お湯が沸けたもの。
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​

●大体長女っていつも“前から言ってたでしょ”っていうけど、今初めて聞いたんだけど？
　猟兵って碌なのがいないのだろうか？
　それとも猟兵という存在全てが危ないのだろうか？
『ちくしょう！！！！！！！！！！ どいつもこいつも本当にとんでもねぇ！！！！』
　十二剣神 大祭祀ハロウィンはこの時始めて心から、いやちょっと前くらいからガチで考えていた。“やっぱり俺様、ヤバいところに来てしまったのでは？”と。
　だがそれを差し引いても季節の魔力というのは魅力的だった。つまり退くわけにはいかない。
『俺様こそ、ハロウィンなんだよ！！！！！！！！！！！！！！！！！』

　一方その頃、ラップトップ・アイヴァー（動く姫君・f37972）の瞳が、どこかいつも以上に輝いていて浮足立っていた。
「（ふふ。うふふふふ！ ハロウィンエディションの銃、というのも素敵だわ……！）」
　一見漆黒のホディだが実は奥深い紫色のボディは艶やかで、光に翳せば丁寧に作られていることがよく分かる。
　銃口より銃床へ向け深くなる繊細なグラデーションは他のものと比べられぬほど美しく、更に銃口から引鉄へ向け奔るビビットピンクのラインは撃鉄へ向かうにつれきらめきへと解け花弁が舞うさまにも似ている。
　自動小銃型ではなく、あえてリボルバーなところがレトロだが趣深い。
　いつもは自動小銃型に近いエアを扱う｜ラップトップ《シエル》はせっかくなら、と路地裏でひそやかに一発試し打ちをした際、引鉄を降ろした瞬間銃口へ浮かんだ二重の円。
「あら？」
　その円へ刻まれたのは標的への距離、命中率、ダメージ、急所、標的の状態、ふと銃握で小さく突き出たスイッチを押せば情報が切り替わる。弾速、標的へ命中までの時間がコンマ単位で、弾種等ある意味欲しい情報が山のようだ。
　レトロな見た目と裏腹に｜ラップトップ《シエル》の故郷―アスリートアース―のバトロワ銃とはまた異なる趣ながら、その実ひどく現代的な仕組み。
「（なるほど！ ふふ、これは計測もスコープも無く勘ではなく計測に自身の腕前が乗った確率――……姿勢で命中率も変わる。あぁなんてこと！）」
　知りたい全てが集約された決戦兵器に一人の使い手として｜ラップトップ《シエル》は胸をキュンとトキめかせていた。
　セットで現れた美希の好きそうなフェイクスイーツデコの弾薬箱に納まっていたのは宝石めいた“candy bullet”。
　箱を開けた瞬間、ひらりと舞い落ちた一枚のメモを拾えば、美しい筆跡で“私を撃って”の一筆が。
「そんなの当然でしてよ。ふふ、勿論言われずとも試し撃ちの一つや二つ」
　あえて｜ラップトップ《シエル》が仕掛けも無く純粋に“ただ撃つだけ”の試し撃ち。
　それは決して好奇心に負けたわけではなく、性能の確認と小さな声で言い訳をしながら徐に装填、一発は試し撃ちと再三自身へ言い聞かせ撃ってみれば、発射した瞬間クラッカーのようにリボンや南瓜ランタンのエフェクトが舞い飛び、ラメのような煌めきが弾けて遊ぶ。
　スタイリッシュな銃が放つ魔法少女のようなエフェクトはアンバランスなように見えて、どこか“｜ラップトップ《二人で一人》”に似ていた。
「（わぁー！お姉ちゃんこれ綺麗だね！）」
「えぇ……えぇ、本当に！ ふふ、決戦装備といえどハロウィンのようになってしまうのは季節の魔法の力かしら？」
　クスクスと嬉しそうに笑う姉を見れば、つい美希も嬉しくなる。
「（でさ、お姉ちゃん）」
「？」
「（みきも撃つー！ 撃つ撃つ撃つーー！！）」
　駄々をこねるように裡で地団駄を踏んでみれば、姉はにこっとわらった。
　
「さあ、美希！」
「（はいはいはーい）」
「はいは一回でよろしい！！」
「（えー！ お姉ちゃん前までそういうの言わなかったじゃん！）」
　ぶーぶー！とブーイングをする美希にシエルはどこ吹く風《慣れたもの》。逆に“あーら？”なんて釣り上げた目を猫のように細めてニンマリ笑えば魔女のよう。
「さっき勝手に私で遊んだのはどこの誰かしらーーーー？？？」
『（また賑やかなのが来た）』
　大祭祀ハロウィンの目はまだ死んでいた。此処には教会も無ければ司祭もおらずまして死者蘇生の呪文は無い。せめてハロウィンマジックでゾンビが関の山だ。
「（もー！ 楽しいハロウィンの為に必要なことだよ！ ほら、あのハロウィンセンセもそう言ってるよ！ この街は――）」
「この街が何だったか」
　なんて大祭祀心のボケに姉妹は当然気付かず、｜内側《美希》との喧嘩は勃発せずに終わる。
　同時にシエルは視線を動かし“世界”を見ていた。
　この街―DIVIDEの決戦都市の一つ―はよく見れば実に機能的な構造だ。どこかバトロワのスタジアム内部を思わせる効率のいいビルの建て方をしており、“｜たとえ被害が出ても余波を受けても被害が分散しない《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》”。
「（実に見事な設計ですこと）」
「（この交差点が大きいおかげですっごく戦いやすいし、隠れられちゃう心配のないぶん私達に遮蔽物は無いけど展開もできるし）」
　そう姉妹がじっと街を見つめる姿を自身に気付き圧倒されて呆然としていると勘違いしたハロウィンは“やっとこの反応が……！”と思う気持ちをひた隠し、ここぞとばかりに叫んだ。
『――お前らぁ！ いや、あれ？ いいや！ お前！ ふふ……ふふふふふ！ お前を特別には俺様特製“真のハロウィンルーム”へおくってやろう！！』
「あら。ごめんなさい、よく聞いていませんでしたわ。あぁ――……あなたがハロウィンですのね？」
『む。そうだ！ 俺様こそ十二剣神が一柱 大祭祀ハロウィン！！ さぁっお前たちを、』
「――変身」
　上から下までボロボロなハロウィンを横目に｜ラップトップ《シエル》は瞼を伏せ集中、静かに心を研ぎ澄ます。
　ちなみに“今かよ！！！！！！！！！！！”と叫んだハロウィンのツッコミは虚空へと消えた。
　ぶわりと溢れた白煙が晴れた時、靡かせた髪をはらった｜ラップトップ《シエル》が艶やかに微笑み優雅なカーテシー。
　洗練された所作に見える余裕こそ、｜先程の《戦わずして勝つことへの》動揺を払拭する狼煙なのだから――！
　焦げ臭い臭いの残る秋風が吹きすさび、睨み合うハロウィンの顔は十二剣神が一柱 大祭祀ハロウィンらしい悪戯めいた表所へと変化する。
『へえ、お姫様にしちゃあ｜そいつ《腰の銃》が随分と物騒じゃねぇか』
「姫君も時に修羅にならねばならぬときがありましてよ」
　ヒュウと口笛を吹くハロウィンと一切視線を交わさないこともまた｜ラップトップ《シエル》の作戦の裡。
　しかし、思い出せば出すほど笑ってしまう。
　同胞で同業の彼は決して“戦え”等と言っていない。圧倒しろとは｜笑っていた《無表情なままだった》けれど。
「（まったく、本当に……えぇ。えぇ、そうでしょうとも。別に“戦う”必要なんぞ初めからなかったのです）」
　｜それこそがハロウィン《奇妙なる祝祭》！
　歌えや躍れ、踊れやうたえ！ 踊らにゃ損だ！
「――だって此処はお祭の会場なのですから」
『そうだ！ 祝え！ 楽しめ そしてこの俺様へ永久にハロウィンの魔力――……いや、“季節の魔法”を捧げるがいい！』
　翼染みた両腕を掲げ高笑いするハロウィンの腹が何かを燃料に燃えている。煌々と尽きぬ輝きは徐々にその輝きが増しているようにも見受けられる。
「えぇそうね、私は須らく、ようやっと思い出したのですから！ 一年中ハロウィン？ そんな一つに頼るなど言語道断、この魂が私の――」
「（……ねぇ、みきは？）」
　キラキラ輝いて最高潮に達しかけたシエルへそっと囁く声。
「………………じゃあ私たちの！！」
「じゃあって何なの！？ ほんともー！ “じゃあ”とか付け足すのやめてもらえますー！？！！」
「っは！ ハロウィンが楽しいのでしょう？ 一生続けたらよいのではないかしら！！」
「ちょーーーーーーっと？？？？ それとこれとは違うでしょー？！？！」
　喧々諤々姉妹の喧嘩は大忙し！
　右で怒れは左で煽って一人で怒って二人でしゃべる！
『ああ～～～～～～～～～～～～～～～～～～っもう！！！！ お前らそーーーーんなに仲良しなら、ずーーーーーーーーーーーーーーっとハロウィン考えてろー！！』
「「考えていたのはあなたでしょう！？」」

　ぷうっと膨れた美希がつんつん！そうして盛り上がった喧嘩へ飛び込んだハロウィンへ突き刺さる視線は一つなのに二つ分！
　“お祭は終わるから楽しくってよ！”と笑う死の魔女纏う紫のバラが鮮やかに咲き誇り、そして銃口に装填された飴玉が今か今かと最高のハロウィンを待っている！

「魔法でも使いましょうか。私が扱うのは火花の魔法！ あぁでも、本日は特別！ ハロウィンエディションでしてよ――｜Trick or Treat？《準備はよろしくて？》」
　UC―Shout―！！！
　この魂こそ二人で一人！ 明日を願う人々へ、｜永久の夜《ハロウィン》の｜終焉《朝》を告げましょう、この銃声と言葉を以て！

　魔法めいた煌めきごと、お星さまになっちゃえ☆
　
　
　
　

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年11月09日