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キング・オブ・スプラッター

作者：にゃあら

●目指せバズり｜王《キング》
　血飛沫――！
　ヴィランめいた女が哀れな｜一般人《キマイラ》をジュースにした！！！
　これは素晴らしいマジックだと視聴者は喝采、ランキングもうなぎ登りだ！

　キマイラフューチャーでは最近『バズりランキング』と呼ばれるものが動画と共に大流行している。たのしいこと大好きなキマイラ達はコンコンコンもそっちのけで画面に釘付け。おい、この新人、かなり過激な動画を出してるらしいぞ。マジかよ、こんなん運営が黙ってねえんじゃねぇのか？　それがさ、投稿者はマジックショーだって言ってんだよ、客が参加する前提で。ほーん、つまりはスタンダップ・マジックってヤツだな？　それなら怪我するのも演出だろ？　いやさっき視てきたけどあれ死んでねぇか？？？　気の所為だろ。で、投稿者の名前は？　えっと……モーガン・シュタイナーだってさ。
　……こいつ怪人じゃね？？？
　まあ怪人でも楽しけりゃ良いけど……。
　そうだ！！！
　猟兵も参加させりゃもっと面白くならね？？？
　それ良いな。
　よっしゃ早速猟兵もランキングに登録してきてやったぜ。
　サンクス！！！

●グリモアベース
「隣人ちゃんですよ！！！」
　隣人ちゃんだ！！！
　逃げろ！！！！！！
「そのくだりはもう要らねぇんですよ！！！　あと安心してください、今回は🌈じゃねぇです。いや、別の意味で🌈かもしれませんが……」
「あっ。帰らないでください。えっとですね、なんでもキマイラフューチャーで『バズりランキング』ってのがあるそうなんですよ。キマイラどもが勝手に猟兵を参加させたようでして、まあ、兎も角バズらせろって事なんですが。問題がひとつありまして……グロでスプラッタなドロドロ動画ってとこのやつなんですよこれ……因みに今一番バズってんのが如何やら怪人らしくて……うんまあこの怪人をボコボコにしてくれりゃあ良いんです」
「血みどろな動画撮った奴ほどバズるってワケですね、頑張ってください」
　グリモアが輝いて。

第1章 冒険 『映画は現場で作られる』

POW   :    かっこよく怪人役を倒したり派手なアクションを決める SPD   :    華麗な演技やスタントを行う WIZ   :    脚本に口出したり特殊効果などの演出を行う 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　暴力――！
　恐怖――！
　狂気――！
　血飛沫――！

　キマイラフューチャーとは思えない、凄惨な光景が其処には広がっていた。
　撮影に巻き込まれたキマイラの屍が積み重なり、それを演出として愉しんでいる｜動画投稿者《キマイラ》の群れ。テレビウムのスクリーンから🌈が拭い取られ、視よ、情け容赦のないスプラッターが垂れ流されている。
　猟兵よ、キマイラフューチャー期待の星よ、このバズり地獄を臓物塗れにし、諸悪の根源たる怪人の｜居場所《もと》へと辿り着くのだ！
　ところでキマイラ曰く、ブチ撒ける側でも問題はないらしい。
　存分に自分の役割を果たすと良い！


　一般拗らせキマイラ曰く、メイド服はロングスカートこそ至高、ミニスカートなんて認めない。異論を口にした者からスプラッタだ！　芸術性、グロテスクの欠片も無いと謂えよう。そう描写してしまえばイリスフィーナ・シェフィールド、オマエの選択は大正解だったのだ。くるりと一回転してカーテシーでもしてくれたら動画映え抜群、一般拗らせキマイラはカメラを構えて、駆け抜けるオマエの後ろを追った……。
　趣味が悪い。只の一言こそが現状を表すに相応しい音であった。臓物ロードに足を掬われないよう情け容赦なくミミズの群れを｜踏破《ぬ》けていく。そんなにスプラッタが好きなら一度と謂わず何度でも解体されてみればよろしいですのに。お皿に盛られたオマエの脳味噌なんぞ｜脳味噌《きおく》諸共にジューサーと遊ばせてくれる。……忘れましょう、思い出したくないですし。肥えて太ったオコサマのおままごとにお偉いさんの塩タン、焼かれる想いだ、今でも、焼かれ続けているイメージなのだ。でも……期待に応えるのがヒーローですからね。本当に、承認欲求なフリークスではないか。モンスターも吃驚なその青々とした宝石。
　此処等の壁には血肉が埋まっていた。より正確に謂うならば、コンコンコンによって畜生が出現するのだ。今にも｜出荷《ドナドナ》されそうな、哀れな憐れな豚さんが一匹。わたくしも綺麗好きではありますが、背に腹は代えられませんの。おいしくいただきますから、どうか、怨まないで――時計回りと反時計回り、挟まれた獣は人のように縛された。
　肉叩き――血抜き――そのような生易しい考えは捨てた方が良い。装甲を持たない四足歩行はズタズタにされ、只の、肉の塊と見做された。嗚呼、即死だったのが救いとも解せよう。｜意志《ひかり》に塗れたブレイズスラッシャーが切断していく。流れにそっての爆発で――素晴らしい。良い具合の火の通りだ。上手に焼けましたわーっ！　猪突猛進なオマエに相応しいワイルドさだ、それにしても、地が血塗れではないか、猟兵……。
　一般拗らせキマイラ曰く、あれはメイドではない、冥土だ。返り血を垂らしながら振り向いたソレは悪魔の笑みを湛えていた。……豚さんがその身を捧げましたのですから、食べないとか、謂いませんわよね……？　きっと俺もあの豚のようになるのだろう。嫌だ、死にたくない。俺は死に様を撮りたいだけで、死にたくなんか……！
　……あ、なかなかいけるな、これ。
　おかわり！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　｜仮面《マスク》に囚われた死者、生者に混じって行進するサマはひどくオコサマらしく想えた。度重なる滂沱に身を横たえ、絶え絶えに成りながらも、尚、泳いでいく。溜まりに溜まった飛沫の味をなんとか記憶して、抉じ開ける為の立ち振る舞いを心掛ける。
　……第二の人生だって？
　貌を失くしても、無くしても、愉しめるものなのか。
　齢15の結末に、末路に、枕が濡れなかったのは死に様の所為だ。断頭なのか潰頭なのか、最早、想像する事しか出来ないが、嗚呼、ザアザアと脳髄のノイズが騒がしくていけない。キマイラフューチャーには初めて来ましたが……ここでは死者が出ても、気にしないスタンスが普通なのでしょうか？　そういのはデビルキングワールドかアポカリプスヘルでやってくれ、そんな事を何処かの｜猟兵《だれ》かがこぼしたような、気紛れな耳鳴りの数々。不意に、向けられたのは視線だった。カメラ・レンズ越しに期待してくる一般拗らせキマイラども。何かやれって？　グロテスクな事、スプラッタな事をするのが大好きって訳ではありませんが……これも経験ですね、良いですよ。どんな経験だと突っ込まずにはいられないが、厄介な事に、この場に常識的な人類は存在していない。
　莫迦と煙は高いところが大好きだと何者かは罵ってくれたが、それは大間違いだ。煙に巻かれて俯瞰出来ない事こそ、愚かな者が晒した大慌て具合と謂える。階段のその先、先の果て、そこらで最も高いビルの屋上から――何を降らせる？　｜偽物《フェイク》だって？　いいや、あれは｜素顔《フェイス》だ。晴れのち｜生首《ネック》――よりリアルに、より、欲深く。我ながら気味の悪い事をしてますね……怖いですか？　怖くないと困ります。
　悲鳴と歓声が地の底で涌いている。ぶくぶくと泡を吹いているのは、さて、蟹とも海老とも見えるキマイラだろうか。ふふ、人を驚かせるのは割と好きかもしれません。ころりと転がった最後のひとつ、それは酷く白塗りで、目も口も鼻も、凸凹すらもなかったのか。本物の純白こそテラーに相応しい。
　ツルツルとしている……卵肌らしい……これが｜隘路《ネック》なのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ミカンの花の馥郁に誘われた蜂の如くに、あれよあれよと、飛んで火にいる妖精さん。燦々とした太陽すらも恐慌に陥る現状、キマイラフューチャーとは思えない光景にひどく仰天した。あれは何か。あれはキマイラだったものだ。英雄譚が大好きなオマエにZ級の衝撃――頭がクラクラした。
　物言わぬキマイラのジェンガに刹那、思考が止まった。
　悪戯にしてはやりすぎだ。
　臓物ロードの最果て、血飛沫まみれの頂に、視よ、一匹の｜妖精《フェアリー》が舞い降りた。名状し易いほどに可愛らしいその｜外見《さま》は、成程、動画映え間違いなしのヒロインか。スプラッタ映画の巻き込まれ役と見做したらきっと苦情が絶えないレベルだろう。くるりと、ザクロ・パフェの味を確かめるようにして構えたレイピア、トマトに向けてのユーベルコードか、或いは、キマイラに向けての埒外性か――ノブレス・オブリージュな精神的に串刺しキマイラなんて在り得ない。やはりトマトだ。トマト・ジュースを量産するのが正しい――これがボクの全力全開だよ☆　捨て身の如き吶喊にやられた果実の群れ、真っ白なキャンバスにぶち撒けられたグロテスクの卵……。
　嗚々――返り血ならぬ返りトマトだ、ティアラのケチャップだらけな具合にオマエはちょっと顔を暗くする。お姫様の象徴が台無しだ、上品だったお辞儀がなんとも暴力的な雰囲気を醸している。まあ、お祭りだと考えれば良いよね☆　ほら、皆もなんだか楽しそうだし。びちゃりと、レイピアに絡まった汁気を地へはらう。
　改めてのドヤ顔だ。誇り高く、満たされたフウにして、タイトルコール。

成功 🔵​🔵​🔴​

　白髪を靡かせ、｜赫々《目の玉》をイッパイに開き、この惨状を全身で味わってみる。凌辱と蹂躙がいっぺんにやってきた、そんなイメージを脳内で反芻していく。被害妄想とネガティブ思考、ごちゃ混ぜになった誰かさんの精神状態みたいだ。
　悪くはない――カチリと、｜鍵《ナイフ》が滑り込む。
　レッド・カーペットの歩き方を伝授するのだと躍起になっていたキマイラは死んでいた。土竜とも蟻とも腐乱死体とも思えた、その｜肉の塊《キマイラ》は丁寧に捌かれたと謂うワケだ。塩気たっぷりな兎の悲鳴すらも失せて逝く中で、優雅にトマトジュースを嗜むのはお嬢様――いついかなる時も、慌てず、騒がす、わたくしらしく。ぎらりと笑った鮫の牙は次の獲物を求めてさまようのか。此処は海だ。砂浜だ。つまりはリア充だらけの失楽園だ。……爆発……爆発……。なんだか主人格が喧しいが気にしてはいけない。
　一般拗らせキマイラ曰く――人格が豹変するタイプの殺人鬼も映えるよね、とのこと。びちゃびちゃになったビーチをゆったりと歩むサマは、嗚々、芸術性、グロテスクの一言に恥じないものだ。お嬢様、お嬢様、オレを今すぐにスプラッタ映像の糧にしてください。懇願されたなら、まあ、仕方がないではないか。マーダーらしさに従って、ダンス・マカブルを決めてやると良い――無差別猟奇殺人祭りの開催だ。ありがとうございます。
　そろそろ怪人さんとご対面出来るだろうか。血液を絵具のようにしてお手紙をひとつ。ドラゴンエナジーは一日一本ですわ、裕美……。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 ボス戦 『『明星の魔術師』モーガン・シュタイナー』

POW   :    あなたに宇宙を見せる魔法 【全身のバネを使って勢いよくぶん回して】から【の脳天をかちわる棘鉄球の一撃】を放ち、【目から星が出るほどのピヨり】により対象の動きを一時的に封じる。 SPD   :    生き物をトマトジュースに変える魔法 【ミンチを超えてジュースにする勢いの連打】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    空を自由に飛べる魔法 【敵に鎖を絡めて大回転からのぶん投げ】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。 イラスト：とのと 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　動画撮影――大惨事――を繰り広げてきた猟兵は遂に怪人の｜舞台《もと》に辿り着いた。嘗てないほどの｜死体《やま》の上で、嗚呼、高らかに嗤う女はまさしく｜怪人《ヴィラン》。マジックショーの再開よ！！！　種も仕掛けも無い観客参加型の｜魔法《マジック》と謂うワケだ。それにしても、随分と｜脳筋《パワー》に溢れている……。
　誰が脳味噌まで筋肉ですって？？？
　アタシの魔法にケチ付けるってんなら宇宙を見せてやるわ！
　スプラッタにはスプラッタで応えなければならない。
　臓物をブチ撒けるのは｜怪人《オマエ》だと教えてやれ！！！


　頭痛を覚えてもめまいを覚えても、さて、全てが嘘偽りならば甘受も悪くはない。赤と青の何方を切るのが正解か、勿論、何方も『はずれ』である。
　運命の赤い糸、結ばれもしない。
　眼窩――突き刺さった百合の美しさに、くらり、卵白めいた頭皮を、逃避させるかの如くに揺らしてみた。靡く為の風が見当たらないのはきっと現状、惨劇の所為で、混沌にやられた世界の沈黙な｜現象《フェノメノン》とも謂える。貴方の技術はすごいものだと思います、ただ一般人を巻き込むのはいただけません。嗚呼、キラメク夜空の愛おしさもこの場においては泥濘に等しく、地に臥せた血肉の｜生地《パイ》でしかない。楽しんでいるところ悪いですが、マジック・ショーはさせませんよ！　堂々とした宣言だ、猟兵としての宣告だ、刻々と迫りくる〆の御挨拶に――怪人は機嫌を悪くしていた。
　埋め込まれていたのは金属片だったか、或いは天使核だったか、何方にしてもピンク色の脳髄は｜永久《いつ》までも脈動しない。注ぐべきは溶液ではなく、切り込むべきは青々と――ええ、押し切れるとは思っていません。相手は腐ったザクロでも、連鎖する桃でもないのだ。いや……此処は勢いに任せて特攻を仕掛けるのは如何だろう。何せ怪人はエンターテイナー、ディナーに｜人間《フレッシュ》を求めているのは考えずとも解せる。
　一発かましてやりましょう！
　当てられたのだ。中てられて、星が嗤ってきたところで、オマエは｜埒外性《あたま》を使ってやった。その寸前で、混乱の内の冷静さで、ほんのりとした後悔を抱える事となる。遅い、何もかもが遅かった。そもそも、フェイスにフェイクを併せた時点で道連れを選択したものではないか。種も仕掛けもございません、これも立派な｜爆発《マジック》で御座います――ヤグサハと頭がふくれている、泣きっ面にモーニングスターの破片。
　幸せ者らしく死遭わせにしてやれ、首を突っ込んだ末路か。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　剥ぎ取りに成功した皮膚の加工に移れ、カーペットの材料が不足しているとテレビウムがモザイクを垂れ流す。バーチャルキャラクターの輪郭が曖昧になった頃、ようやく｜怪人《にく》に甘い汁が塗りたくられた。
　林檎の果汁は不可欠だとタンが謳う、片面だけを焼くのだ。
　キマイラだった『もの』が積み重ねられ、無数の『山』を成していくサマ、拗らせキマイラどもは興奮を極めており、ある意味での雀躍を散らかしていた。どう見ても、どう考えてもヤバいものが並んでいますけど、あれで騒ぎにならないあたり能天気ですわね。いや、幾等キマイラフューチャーとは謂っても、莫迦踊りの世界とは謂っても、此処まで『おかしな』事にはならない筈。おそらくだが怪人の逸脱的な雰囲気に呑まれているのだろう。兎にも角にも――真っ向勝負ですわ――嗚々、いつも以上に、いつも異常に猪突猛進ではないかイリスフィーナ・シェフィールド。得物も構えず獲物へと吶喊とは、万歳としか描写しようがない。種も仕掛けも無い只のジューサー、オマエと称されるザクロのなんとも行殺な最悪か。ぶち撒けた臓物曰く、どうしてこうなった……。
　上空――｜宇宙《そら》へと舞っていたのは｜本体《オマエ》、拉げた分身を｜観察《み》ながら苦虫を噛み潰す。こっちの｜分身《わたくし》はわたくしより直情的なのですよね、きっと、別の｜分身《わたくし》から見たわたくしも『同じように』映っているのですわ。人の振り見て我が振り直せ、それでも直せないから人は愚かなのだ。云々と思っている内に自由落下の時間だ。今度こそ得物を――ブレイズ・スラッシャーを構えて。
　串刺し――貫通！
　脳天から股までたいへんぶっすりだ。皆様のご期待通りに全部ヒリ出してやりますわ。なんとも下品で、汚らしい決め台詞だ。スプラッタ映像の主人公、殺人鬼スーパーヒロインに相応しい。何処かの豚さんも謂ってました、断食は不要ですの。

成功 🔵​🔵​🔴​

　防護の術には自信があった。故に、大切な者の我儘も、大切な人の笑顔も、守れるのだと思っている。地獄に一輪の花、冠を作るのには苦労しそうだが。
　――ええ、足蹴にするつもりはないの。
　――筆くらいにはなってあげる。
　暴力の化身として地に堕ちたのは神だったのか王だったのか、噛み付くようにして巡る獣の所業は、愈々以て肥え太った｜合成《コンフュージョン》に相応しい。俺から見てすら吐き気を催す悪趣味な催しだ。嗚呼、狂っているのではないか、触れているのではないか。撫でようと試みたところでベッタリとこびり憑く罪、濯ぐ為の液体すらも赤く、それらは禁忌の味に興奮していた。M'lady、下がっておいで――どうやらこの辺り一面、貴女が踏むには相応しくない血の海になるらしい。果て、その原因は枯れ葉ではなかったか、娘を抱いた魔障ではなかったか。……俺が今からするのだが。それでも、貴女の足元に敷く緋絨毯にはお粗末だ。足掻いても藻掻いても、覆す事の出来ない非現実、あの道化を赦してはならない。
　おい、貴様――其処の貴様だ。ふざけた化粧を誇っていそうな、其処の化生だ。ピエロなのかマジシャンなのかハッキリしない、混迷がお似合いな｜怪人《フリークス》、クスクスと哄笑するサマは忌まわしくて仕方がない。いかにも頭の悪そうな装いをしているが、せめて、臓物をぶち撒けることくらいは出来るのだろう？　丁度良いものを持っているではないか、空を飛ぶとは謂ったが、成程、昇天を意味するとは賢いのかもしれんな。その棘鉄球が、モーニングスターが貴様の目覚まし代わりと知れ……。観衆が嗤う、キマイラが哂う、世に咲いたあの世の花に、血飛沫にバズりの肥料が這入り込んだ。
　帰還はお断りだ、それより貴様は寸暇を惜しんで血を流せ。
　死ぬならば娯楽で、潰れるなら花畑で――貴様。
　頭蓋骨に脳髄を詰め忘れるとは、伽藍洞め……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　暴力的な事に変わりはない、如何に脳味噌を泡立てるのか、だ。
　一般拗らせキマイラ曰く、人の最もドス黒い感情は『愛』でなければ成らない。とある世界の存在が宣っていた通り、愛とは即ち、支配欲の水面でしかないのだ。心の、精神の、魂の奥底、のたうち、蠢動しているマイナスに比べれば他人の僥倖など愉快な塵でしかない。視るが好い、聞くが好い、菊の花、百合の花を哄笑し、嘲笑するが為の動画撮影の沙汰を。フィルターを通してのレッド・カーペットがヤケにバズりを意識していた。
　怪人――モーガン・シュタイナーは嫌な予感に苛まれていた。普段通りで在れば、通常の舞台で在れば、きっと自分が臓物の地獄を構築していた事だろう。だが、アレは何だ。モーニング・スターを叩き付けても、拳で殴っても、まったく手応えがない。アタシは何を攻撃している？　アレは猟兵だった筈だ。少なくとも、物体で在った筈だ。コールタールが如くに絡み憑いてきた。気付いたところでもう遅い。怪人は愈々ただの女と見做され、嗚呼、血肉ではなく衣服をバラバラにされる。何をするつもりか。いや、ナニをするのだ。前門の虎後門の狼――ケダモノだ、こっちに来るんじゃない、獣め。
　聖女の微笑みによってガードが崩れた。誇っていた怪力も、抱えていた残虐性も、ちっぽけな少女の如くに衰えてしまった。スプラッタだ。スプラッタ―こそが、マジックこそが存在を証明する為の埒外性だったと謂うのに。蹂躙されていく現実、崩壊していく過去のカタチ――この大喰らい。そう、認めてあげる。アタシはストリップの方が……。辱めを受け入れる度にイヤらしい音が跳ねる。甘美に、莫迦みたいに、ポールに縋るかの如くに。
　――目が眩んでいるのは貴女だけじゃないの。
　嘘偽りのカメラ・アイを通せ、怪人は既に死んでいる。催眠術を籠めたなら、さて、次の犠牲者は君だったか。平和ボケで刺激に飢えた連中には良い薬でしょ？
　まだまだ、愉しまなきゃ勿体ないわね。
　種も仕掛けも上々だ、伴うのは苦痛か、もしくは悦楽か。

成功 🔵​🔵​🔴​

　人間とは汚いものを容れておく袋にすぎない。
　大は小を兼ねると謂うが、果て、腸の長さは『おおきい』ものだ。
　レッド・アイに不可欠なのは黒コショウではない、ブラック・ジョークを重ねての惨状にオマエは目眩を覚えた。積まれているのは死体だ、キマイラの肉塊だ、恐れ知らずが飛び込んだスプラッタ動画の末路と謂うワケだ。嗚呼、赦せる筈がない。たとえ、キマイラ達の好奇心が原因だったとしても、それを煽りに煽った怪人を野放しに出来る筈もない。ルビーのような毛髪を耳にひっかけて、引っ掻けられた者どもの始末をつけてやると宜しい。藍色を逸らす事は不可能だ、なあ、キミ、そんなにもレッドカーペットが好きなんだね。空を舞い、宙を魅せ付けるべく、モーニング・スターがやってきた。
　十秒だ。十秒は既に経っていたのだ。星の美しさを訴え掛けてくる、只の物理攻撃に｜攻性植物《シード》が萌えた。絡み付いた蔦が、蔓が、鈍器の軌道をズラし地面に穴を開ける。私はね、キミのような乱暴者があんまり好きじゃないんだ。護る為に揮ってきた、守る為に使ってきた騎士の誓い――｜槍衾《ファランクス》は咆哮し、あの臓物に狙いを定める。
　気合いと根性だ。明るく元気よく、溌溂とした心身こそが日々を乗り切る秘訣と謂えた。纏わせた魔法は貫通力を高めに高め、怪人の頑強さを容易く突破して魅せる。鍛え方が雑だね、畑仕事の基本からやり直してきたら如何かな？　ハギスのモノマネがお上手だ、骸の海へと散乱するが好い。これでお終い、アンコールは要らないね。


【この動画は削除されました】

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2023年10月31日