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家族と楽しむボナペティ

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知花・飛鳥



水鳥川・大地




「ようやく朝晩涼しくなってきたなぁ」
 それは暑い暑い夏の気配がようやくなくなり、才桜祭という名の文化祭と体育祭が終わったとある秋の日。
 放課後いつものように食研の部室で過ごす知花・飛鳥(コミュ強関西弁男子・f40233)は、お菓子の買い出しに出ている二人を待つ間、窓から見える秋の高い空を見上げてそう呟く。
「そろそろお鍋の季節やなぁ。大地は鍋やったら何が好きなん?」
 寒くなってくれば、それはもう鍋の季節。振り返り、スマホをいじっていた水鳥川・大地(ギャップ系ヤンキー男子・f40237)へと飛鳥がそう声をかければ、大地は鍋ッスか……と呟く。
「わりと何でも好きッスね。寄せ鍋とかキムチ鍋とかごま豆乳鍋も」
「あー、ええなぁ! 最近はカレー鍋とかトマト鍋とかもあるやろ。弟たちは結構そういうのも好きやねん」
 大地としては鍋と言えば猫鍋……猫が土鍋の中できゅっと丸くなっている、悶絶級の可愛い姿がダントツ一位なのだが、もちろんそれは黙っておく。
「そや、ほんでな、前に大地に料理教えたるって約束したやん? 今週末とか都合どない?」
「え、ほんとにいいんスか?」
「当たり前やん! もちろん無理にとは言わんけど、大地さえ良かったら俺んちおいでや」
 確かに夏休み明けに、飛鳥から料理を教えてもらう約束をした。たまたま同い年の弟がいることがわかり、大地が弟にラーメンばかり作っていると話したことから、飛鳥がそれならと料理を教えてくれることを提案してくれたのだ。
(「やっぱ知花先輩は面倒見がいいんだな……ちゃんと約束覚えててくれて」)
 こうして二人だけの時にその話を切り出したのも気遣いの表れだろう。
「あ、はい。週末大丈夫ッス」
「よし、決まりやな! あ、大地は何も準備せんでええから。手ぶらで来てな」

 そして約束の日。
「大地、こっちこっち!」
 飛鳥の家の近くで待ち合わせし、合流してから一緒に向かう。
「知花先輩、今日はよろしくお願いします」
「そんなかしこまらんでええねんで。あ、大地。もしかして手土産とか買うてきた?」
「はい、お宅にお邪魔するわけッスから……」
「ああもう、手ぶらでええのに!」
 大地も少し考えたが、やはりここは手土産のひとつくらいとシュークリームを買ってきたのだ。
「まあ、でもありがとうな。あ、あそこが俺んちな」
 どうぞと言われて玄関で靴を脱いでいれば、いらっしゃいと飛鳥の母親と弟妹たちが笑顔で出迎えてくれた。
「いらっしゃい。大地くんだったかしら。いつも飛鳥がお世話になってるわね」
「おにぃの友達や! ゲーム得意な人?」
「ゲーム得意なんは全やな。今日は大地や。澄春と同い年の弟がおんねんで」
「え、そうなん?」
 賑やかに迎えてくれる様子に大地も思わず面食らう。金髪にピアス、右頬に古傷の傷跡がある自分はお世辞にも柄が良いとは言えないが、知花家の面々にそのことを気にする様子はない。
 コミュ力つよつよの飛鳥なので、普段から友達がよく来てはいるのだろうが、きっと自分のことも飛鳥が家族に話してくれているのだろうと思わされた。
(「知花先輩も家族もすげぇ……」)
 手土産のシュークリームが入った箱を渡し、早速料理しようでと飛鳥が大地をキッチンへと案内する。
「はい、大地の分な」
 渡されたのはエプロン。だが、それが猫が描かれた可愛いものだったので、大地は思わず固まってしまう。
「大地くん、ごめんなさいね。私のだから可愛すぎて嫌よね……?」
 エプロンを手に固まった大地を見て母親が申し訳なさそうに声をかける。
「嫌やったら俺のと変えるか?」
 飛鳥が身につけているシンプルなエプロンを指差し訊ねたところでようやく大地は我に返った。
「あ、大丈夫ッス!」
 まさか猫好きがバレたのかと、ちょっと一ノ瀬先輩を疑いかけた大地だったが、違うとわかれば怪しまれないようにさっとエプロンを身につけるだけ。
「よし、ほな始めるで。飛鳥と! 大地の! 何分かクッキング~! 」
「なんスかそれ」
 イェ~イとノリノリの飛鳥と対照的に、大地は真顔でそう返す。
「そこはもうちょい乗って! マジレス切ない!」
 よよよと顔を覆う飛鳥だが、気を取り直して大地にこう告げる。
「今日のメニューはな……オムライスや!」
「オムライス……って結構手間かかりそうですね……」
 子どもも大人も大好きなメニューではあるが、チキンライスやバターライスを作って、さらにそれを卵でくるむという工程は料理初心者には難しく思える。
「やっぱそう思うやんな? でもこれが簡単に出来るねん」
 そう言って飛鳥が見せてくれたのは、炊飯器の釜に入ったお米。
「チキンライスは炊飯器で作るから、意外と簡単やで」
「炊飯器ッスか……!」
「ポイントはお米にしっかり水を吸わせておくこと」
 塩分が多いものと一緒に炊くとどうしても芯が残りやすいのだと飛鳥は説明した。
 大地は持参したメモ帳にきちんとポイントをメモしていく。
「チキンライスの材料は、鶏肉に玉ねぎだけでもええけど、野菜も食べて欲しいから冷凍のミックスベジタブルを入れると彩りもあってええで」
 鶏肉じゃなくてソーセージでもええし、と説明しながら飛鳥が鶏肉を一口大に切っていく。
「玉ねぎはみじん切りな。こうやって切り込み入れてから切ったら早いで。これも面倒なら、みじん切りにする道具もあるし……な、そんな難しくないやろ?」
「はい、これなら俺でも出来そうッスね」
 飛鳥に教えてもらいながら、玉ねぎをみじん切りにする大地。
「あとは調味料を入れて……」
 浸水させておいた米の入った釜にケチャップにソース、コンソメなどを混ぜておいたものを投入し、目盛を見ながら水を加えてよく混ぜる。
「具材は上に乗せて……混ぜなくても大丈夫や。あとは普通に炊飯するだけ」
「え、それだけ?」
 あまりにも簡単な工程に思わず拍子抜けする。
「そ、後は待つだけ! この間に宿題見てあげたりとか、他のことも出来んねん。今日は炊きあがるまでの間に、サラダ作ろか!」
 そうして飛鳥はキャベツを千切りにしていく。
「これはピーラーでやってもええし、何なら市販のカット野菜でもええねん」
 作るのは簡単コールスロー。和えるドレッシングはマヨネーズに酢、砂糖、粉チーズを加えて手作りする。言われた材料を大地が混ぜ合わせていく。
「コーンとかも入れて……あ、ドレッシングは食べる直前に合わせるからそのままな」
 これであっという間にサラダも完成。
「ほんならあとは卵の準備やな。卵もふわふわ系とかオムレツ系とかいろいろあるけど、今日はベーシックなやつでいこか」
 昔ながらの薄焼き卵で包むオムライスだ。
「それはそれで包むの難しそうじゃないッスか? 破れそうというか……」
「牛乳で溶いた水溶き片栗粉を卵に入れたら破れにくいで」
 大地の心配に、飛鳥はそう応える。確かに薄焼き卵は破れやすい。
 卵を割り、一人分ずつ準備をしていれば、ちょうどチキンライスが炊き上がる。キッチンにはもうすっかりいい香りが漂っている。
「ここにバターを入れてしっかり混ぜて……」
「ちゃんとチキンライスになってますね」
 あれほど手間のかかる料理だと思っていたのに、炊飯器の中では美味しそうなチキンライスが出来上がっていることに大地は驚く。
「さあ、ほんなら卵焼いていくで!」
 飛鳥に教えてもらいながら大地は薄焼き卵を焼き、オムライスを仕上げていく。
「知花先輩って将来いいお母さんになれそうッスよね」
 面倒見が良くて、こうして手際よく料理も作れて。思ったままの言葉をそう口にした大地だったが、飛鳥は反射的にツッコんでいた。
「おいそこはせめてオトンやろ! ……ってこの台詞、弟にも言うた記憶あるわ!」
 キッチンは終始賑やかに、飛鳥と大地が作るオムライスは無事に仕上がり、知花家の家族たちにも大変好評だった。

 数日後、母の帰りが遅いというので、大地は早速、飛鳥に教わったオムライスを家で作ることにした。
 先日は薄焼き卵のオムライスだったが、飛鳥にふわふわオムレツ風にも出来ると聞いて、動画を見て研究した大地はそれに挑戦することにした。
 初めは少し上手くいかなかったが、それは自分用にして、二回目の挑戦ではかなりいい出来となった。
 チキンライスの上に乗ったふわふわオムレツにそっと包丁を入れると、中からとろとろの卵があふれ、チキンライスを覆っていく。
「えっ、このご飯どしたの?」
 出来上がったオムライスを前に、弟の大河が驚きの表情を浮かべていた。
「俺が作った」
「うっそマジで!? 兄貴、こんな本格的な料理作れたっけ?」
 いつもラーメンや簡単な料理を作ってくれるが、オムライスが登場したのは初めてだ。
「こないだ知り合いに教えてもらったんだよ」
「あ、分かった! 彼女だな!」
「ちげーーよ!」
「彼女じゃなかったら誰がこんな本格的な料理教えてくれるんだよ?」
「将来いいお母さんになれそうなコミュ力つよつよの先輩だよ」
 大河は不思議そうな顔をしていたが、目の前のオムライスの美味しさにそれどころではなくなったようだ。
「卵がふわふわだ! チキンライスも美味い!」
 幸せそうに食べる弟を見ながら自分も口に運べば、確かにこれを自分で作ったとは思えない美味しさだった。
(「知花先輩に感謝だな」)
 あの時、おせっかいでも料理を教えてくれると提案してくれなければ、この大河の笑顔は見れなかっただろう。
「あ~~美味かった! なぁなぁ、今度母さんにも作ってあげようぜ。俺も手伝うからさー!」
 弟の称賛も嬉しいが、母にも作ってあげたいという心遣いも嬉しくて。本当に、料理ひとつでこんなに何かが変わるとは思っていなかった。
「……ああ、それもいいかもな」
 知花家のみんながそうだったように。料理は家族で食べるともっと美味しいと思うから。
 ――|Bon appétit《食事を楽しんで》!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年10月22日


挿絵イラスト