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ダルマ・ライク・ア・サンダーストーム【漆】~放蕩無頼

#サイバーザナドゥ #最終死刑囚 #ダルマ・ライク・ア・サンダーストーム #アカダルマファーマシー #抵抗組織『メサイア』 #スシ #サイバーニンジャ

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 サイバーザナドゥには、かつて義憤によってメガコーポに対するテロ行為を計画・実行し、それを半ば成功させた恐るべき犯罪者……「|最終死刑囚《メガテロリスト》」が存在する。
 しかし、彼らの計画は結局メガコーポ側に潰されてしまい、この世界を変革させることはできなかった。
 そして、その首謀者こと「|最終死刑囚《メガテロリスト》」は逮捕され、世の中のモータル達はその名すら情報統制のもとで目にしたり耳に入ってこないのだ。
 なんたる検閲社会であろうか、すべてはメガコーポ側の都合のいいように表社会は欺瞞で塗り固められているのだ。

 そして、|抵抗組織《レジスタンス》『メサイア』のメンバーも、この「|最終死刑囚《メガテロリスト》」に指定されていることが判明した。
「先日、我々の仲間がアカダルマファーマシーの息のかかった警察に検挙され、多数の仲間が逮捕された」
 組織の代表を務めるシルバーに輝く長い髪をひとつに縛ったサイバネ左腕のサイボーグ紳士ことリアム・フォスターは、あと少しでアカダルマファーマシーへのテロ行為が成功していたにもかかわらず、実行グループの摘発というトラブルに渋い顔をしていた。
「エンリケ君のその後の調査で、実行グループはほぼ殺害されたことが判明した。唯一生存しているはずのリーダーも、|最終死刑囚《メガテロリスト》として特別警備刑務所へ強制送還された。そこで彼は……」
「旦那、そこから先は俺が言う」
 自称・義賊兼情報屋の『運び屋』の男性、エンリケがリアムの言葉を遮った。
 そしてエンリケは重たい口ぶりでメンバーへ告げた。
「リーダーは……タカシは……アカダルマファーマシーの手によって、オブリビオンのニンジャになっちまった」
 組織の中でも武闘派だった男がメガコーポ側の手先に堕ちた事実は、組織内に衝撃を与えた。
「奴が近々、俺達のこのアジトにカチコミしてくるらしい。しかし情報が足りねぇ。だから、俺はブラドと一緒に『ダークウェブ』へ潜る」
 エンリケの言葉に、再び組織内がざわついた。
 これを諫めるように、年端も行かない男児が声を響かせた。
「だいじょうぶ。イェーガーも来てくれるはずだよ」
 ゲノム操作で予知能力を獲得した奇跡の子は、救世主めいて微笑んでみせた。

 ―グリモアベース。
「ということで、みんなはエンリケさんとブラド君と一緒に『ダークウェブ』へ向かってねっ!」
 グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)が、招集に応じてくれた猟兵達へ任務内容を伝達してゆく。
「今回の討伐対象の|最終死刑囚《メガテロリスト》なんだけど、情報が殆どなくて予知も出来ないくらいなんだよねっ? なので、今からみんなには|サイバースペース《電脳世界》の片隅にあると言われる、『犯罪者やならず者や裏社会の連中』がたむろする『ダークウェブ』に向かって情報収集してもらうよっ! 現地に行けばエンリケさんとブラド君と合流できるはずだから、情報交換するのもいいと思うよっ!」
 敵の攻撃特性や弱点、そして襲撃タイミングなど、アングラな犯罪者集団ならば断片的でも知っているはず。
 しかし、彼らは素性を隠してサイバースペース内で過ごしているため、真っ当な方法では会う事すらできない。
「なので、これからサイバースペース内のスシ屋に転送するから、そこでとりあえず好きなネタを頼んで暫く食事しててねっ? このスシ屋が裏稼業同士の秘密のサロンらしくって、エンリケさんはそれを嗅ぎつけてスシを食べるらしいよっ!」
 なんでも、スシのネタの注文が合言葉になっているらしく、人相の悪い奴が頼んだ寿司ネタの順番通りに注文することで『オザシキ』に招かれるらしい。
 そこでは違法賭博が出来るラウンジが地下に設けられており、そこで情報の売買が行われているとのこと。
「皆も周りを注意深く観察して、うまく地下の『オザシキ』へ向かってほしいなっ!」
 そこが『ダークウェブ』の中心部だ。
 猟兵達はスシの誘惑と洞察力の二律背反に悩まされながら、サイバースペースへ転送されてゆくのだった。


七転 十五起
 サイバーザナドゥのアングラな電脳世界へようこそ。
 |最終死刑囚《メガテロリスト》の情報を集めるべく、まずはスシを食べましょう。
 なぎてん はねおきです。

●概要
 第1章はサイバースペースの片隅にある、回らないスシ屋で食事します。
 基本的に好きなネタを食べてオッケーです。
 しかし、客層はなんだか強面だったり怪しい奴らばかり。
 実は彼らの食べているスシネタの注文の順番が高度な暗号化された合言葉であり、この合言葉に合致した客だけが奥の『オザシキ』へ案内されます。
(合言葉は多数存在するため、プレイングで自由に合言葉を決めてもらって構いません)
 そして『オザシキ』こと地下の違法賭博場が、お目当ての「ダークウェブ」の中心部です。
 ここで違法な手段で得られた『角度の高い様々な情報』が取引されています。
 上手く潜入し、|最終死刑囚《メガテロリスト》の情報(攻撃手段や弱点、また抵抗組織『メサイア』の襲撃タイミング)を買い付けましょう。
 高額な代金を支払う代わりに、違法賭博で勝利しても情報を入手できます。

 第2章はボス戦です。
 前章で情報を買い付けていれば、完全に猟兵側が主導権を握った状態で戦闘に突入できます。
 |最終死刑囚《メガテロリスト》は生来のタフさと戦闘能力をオブリビオン化によって更に引き上げられている為、真っ向勝負では猟兵と言えども苦戦は免れません。
 入手した情報をもとに、抵抗組織『メサイア』アジトを守り抜きましょう。

 第3章は日常フラグメントです。
 情報のおかげでもし|最終死刑囚《メガテロリスト》を撃破できたのなら、「ダークウェブ」の悪党達にお礼しましょう。
 元々、「ダークウェブ」の構成員達は、気性が荒く欲望に忠実でよそ者に厳しいならず者ばかりですが、アンダーグラウンドの掟に従う姿勢を見せた者には寛容で面倒見のいい奴らです。
 たっぷりとお礼をすれば、今後のサイバーザナドゥ世界での戦いで手助けをしてくれるかもしれません。
 来るべき大きな戦いに向けて、彼らと協力関係を築いてください。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしてます!
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第1章 冒険 『寿司を食べる』

POW   :    ネタを頼む

SPD   :    サイドメニューを頼む

WIZ   :    デザートを頼む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達がサイバーザナドゥ世界に転送される。
 彼らはネットカフェへ赴くと、ヘッドマウントディスプレイを装着もしくはLAN直結して|電脳世界《サイバースペース》へダイブしてゆく。
 サイバースペースは『まるで生身そのままのように活動できる電脳空間』であり、サイバーザナドゥのあちこちにあるフリーポータルから誰でも自由にアクセス可能だ。もちろんアイテムを持ち込めるしユーベルコードも使える。

 猟兵達がダイブした先は、古めかしい、またはノスタルジックな店が軒を連ねる電脳商店街であった。
 サイバーザナドゥ世界では一般的な毒々しいネオン看板や電子公告などは一切存在しないこの電脳商店街は、一見すれば古き良き時代の街並みを再現したかのようである。
 だが、ここら一帯こそ裏社会の住人達の溜まり場であり、素朴な原風景は悪辣を隠匿する欺瞞なのだ。

 この商店街の一画に、更にみすぼらしいスシ屋が佇んでいる。
 回らないスシ屋とあいえ、高級感など全く皆無。
 営業しているかすら外見からでは判別できないほどオンボロであった。
 だが店内をのぞくと、強面の者や怪しい風体の者などが一心不乱にスシを食っているではないか。
 奥の方では『運び屋』エンリケと『救世主の子』ブラドが二人並んでサーモンのスシを食べている。
 猟兵達も恐る恐る店内に足を踏みれ、カウンター内のスジモノめいた店主へ声をかける。

 さて、まずは何から食べようか?
 周囲の悪党達の注文内容に耳を傾けながら、猟兵達は電脳世界のスシを堪能せんとしていた。
カシム・ディーン
同行
フィア(f37659

ひ、ひでーめにあった…(轟天MSリプレイより)

「ご主人サマ☆お寿司だよ☆お寿司だよー☆」
口直しにもなるな畜生め
つかフィアと行くなら普通に食べたかったな…!

【視力】
周りの悪そうな奴の頼んだ寿司の順番を捕捉
同じように食す
「フィアちゃんあーん☆」
うどん一緒にもぐもぐ

オザシキ
【情報収集】
買い付け情報
最終死刑囚について
元々どういう人物だったか
弱点もそうだが
元の仲間として救い出す手段が無いかどうか

後はとわんなニンジャになってるか
「多分だけど…メルシー達が戦った事がある相手かもね☆」
それなら幾つか手は読めるが…

「あ、お礼ならメルシーがたっぷりしちゃうぞ☆」
取り敢えず代金はこれだ(大金


フィア・フルミネ
カシム(f12217) と参加

食べる順番と、頼んでからの来客の動向を察知すればいいと思う。カシムはとりあえず後の取引のことを考えておいて。探知用のコモンカードをこっそり店内に隠しておく

合言葉は一つじゃないのかもしれない。だとすると、あの人と同じ、ってオーダーも確実ではないかもしれない

オーダーはダシ・スウプ、合成タンパク質スシ三種盛り、追いダシ・スウプ、成形肉ウドン
……食べ合わせはこの際問題じゃない。味も。うん。私は拘りはない。

でもカシムと、メルと来るなら、普通に食べたかった

抵抗組織『メサイア』の襲撃タイミングがわかれば準備はできる。ありがとうお返しはまたどこかで…………メルが、する
冗談よ。そんなに怖い顔しないで



 サイバーザナドゥ世界の|電脳世界《サイバースペース》。
 そのひなびたVR商店街の片隅に、これまたひっそりと佇む薄汚れたスシ屋があった。
 当然、スシが更に乗って回転するようなこともなく、無言を貫く店の主人とカウンター席でバチバチに睨み合いながら注文する店だ。
 一昔前はスシ屋の店主の凄まじい覇気に耐えられてこそ一流のカチグミ・サラリマンといわれ、こぞってメガコーポのサラリマン達はスシ屋へ通ってステータスを誇示したのだとか。

 そんなことを知ってか知らずか、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とその相棒メルシー、そして彼の恋人であるフィア・フルミネ(|麻痿悲鳴《まいひめ》・f37659)は入店前に異様なプレッシャーを身体で感じていた。
「食べる順番と、頼んでからの来客の動向を察知すればいいと思う。カシムはとりあえず後の取引のことを考えておいて。探知用のコモンカードをこっそり店内に隠しておくから、って、大丈夫?」
 フィアは、グリモアベースから出立する時から目が死んでるカシムの顔色がいよいよ悪くなっている事に不安の声をかけた。
 そんなカシムの傍らで目を泳がせるメルシー。
「あの状況は保身に徹するしかなかったんだよ……解釈違いかもだけど……」
 声まで震えている。
 一体何があったのか?
 カシムは嗚咽を漏らしながら怒りで拳を指先が魔訶になるまで強く握り込む。
「ひ、ひでー目にあった……なにが『好きだろ? 焼いたの?』だクソが……まだ門前払いされたほうがましだっつーの……あとメルシーが裏切ったの、今回は不問にしてやる……不甲斐ないが……僕も同じ立場ならてめーを売ってたかもしれねーからな?」
「メルシーは酷い事されると興奮するけど、ご主人サマが『拷問』を受けるのは解釈違いだから……あの場はバチバチ過ぎてヤバかったよ……ごめんねご主人サマ……」
「私の知らないところで、カシムとメルはどんな依頼を受けてきたの……?」
 しおしおに萎える二人の様子をフィアは真顔で困惑していた。

 ということで閑話休題。
「そんな事よりご主人サマ☆ お寿司だよ☆ 回らないお寿司だよー☆」
「ああ、店構えボロいがカウンター席で食べる寿司は口直しにもなるな畜生め。つか……フィアと行くなら普通に食べたかったな……!」
 もっと言えばサイバースペースではなく現実世界で、とカシムは言葉を継いだ。

 サイバースペースは肉体ごと電脳世界へ没入したかのようなVR体験が出来る世界であり、どんなに電脳世界内で五感がリアルに認知できるとはいえ所詮は仮想世界だ。01のデータ群で構成されたスシの旨味の電気信号が脳のニューロンを刺激し、満腹中枢を満たすだけで栄養価はないのだ。
 とはいえ、現実世界でも固形物を咀嚼して旨味を感じるのもまた脳内ニューロンの幻覚ともいえる。
 つまり現実世界も電脳世界も五感を認知する過程は一緒であり、むしろ現実も幻覚なのではないかというサトリを開くきっかけが掴めるかもしれない。
 ワォ、ゼン……!

 フィアもまたカシムとスシ屋へ来れた事を僥倖と思う傍らで、これがプライベートのデートだったらと悔いていた。
「私も、カシムと、メルと来るなら、普通に食べたかった」
「メルシーも『タイショー! 大トロ2カン! ヨクバリで!』って言ってみたいぞ☆」
「それは今から言える。でもメル、今日は周りの客に注意してね」
「フィアちゃん、りょ☆ ぎゅーっ☆」
 メルシーが抱き着いてくるので、フィアは僅かに口角を上げながらその銀髪を撫でてやってみせた。
「よし……入店するぞ!」
 カシムの号令を皮切りに、3人はノレンをくぐって店内へ入った。
 此処で読者諸君にクエッションだ。
 こういったカウンター席のスシ屋へ入店する際に、カチグミ・サラリマンが行う儀礼的アイサツが存在する。
 カシムは事前にそれを調べ上げていた。
「タイショー、ヤッテル? 連れは2名だ……」
「……空いてる席へ」
 この一連の言葉の符号がないサンシタな客は、店主からオトトイキヤガレ案件で門前払いされてしまうのだ!
 コワイ!
 こうして上手く入店できたカシム達は、空いているカウンター席に座って客層を観察し始めた。
 店内なのにサングラスを外さない黒づくめの男や、身体の大半をサイバネ化しているサイボーグのオイラン、更にはメカ頭の性別不明の人物など、怪しい人物ばかりが一心不乱にスシを食べていた。
「とりあえず、まずは好きに食うか」
 わざとらしくカシムが店内に聞こえるように言葉を発した。
 自分たちは無害ですよというアピールだ。
「タイショー。コハダ、イカ、タマゴ、エビ、マグロを頼む。あとの2人にも同じネタを」
「アイヨ、ヨロコンデー」
 店主は言葉少なにカシムが注文したスシネタを握り始めた。
 フィアはその間に店内の様子を監視するべく、ユーベルコード『招雷』を発動してみせた。
「いたい……こい」
 レアカード「DC」と探知用の、自身より弱いコモンカード「U」を召喚する。
 2枚のカードは店内と客の死角へ素早く移動する。
 フィアはカードを介して客の注文の言葉や店主の動向をチェックし始めた。
(……鼻で、嗤われてる? 私達がシロウトだと思われてるあら?)
 グリモア猟兵の話では、ここは悪党達がこぞって集う情報屋の側面を持つスシ屋だ。
 そこへ本当にスシを食べにきた客が来たら、スジモン共は嘲笑してしまうのも無理はないだろう。
(つまり、作戦成功。私達が嗅ぎまわってることは気付かれない。これで、暗号の言葉を盗み聞ける)
 フィアの思慮深い行動のおかげで、カシム達はノーマークになった。
 何故ここまでやる必要があるかと言えば、それぞれが秘密主義で動いているはずだからだ。
(暗号だってひとつじゃないはず。とすると、あの人と同じ、ってオーダーも確実ではないかもしれない)
 フィアが情報の精査をしている間に、店主がカシムのオーダーした寿司ネタを木製のゲタの上にぬっと差し出した。
「コハダ、イカ、タマゴ、エビ、マグロ。お待ち……!」
「お、来たな? とりあえず食うか!」
「はい、フィアちゃん、あーん♡」
 カシムが寿司を頬張ると、メルシーはスシをフィアの口へ差し出した。顔が近い。
「ん。メル、ありがとう」
 差し出された好意をありがたくフィアは口に含んだ。美味い。かなり美味だ。
 しかし、フィアはこの瞬間、おかしなオーダーをカード越しに聞き入れていた。
「ダシ・スウプ、合成タンパク質スシ三種盛り、追いダシ・スウプ、成形肉ウドン……」
 小声で、しかも早口で店主へ告げたレプリカントの男。
 店主は注文の品の代わりに何かを握らせると、男をトイレへと案内した。
 恐らく、あれが合言葉なのだろう。
 素早くフィアも同じ注文を店主へ告げる。
「ダシ・スウプ、合成タンパク質スシ三種盛り、追いダシ・スウプ、成形肉ウドン」
 食べ合わせの問題ではない。暗号なのだから。
「……あんらもか。奴は口が軽くて困る」
 店主は飽きれたように、フィアの手に何かを握らせた。
 それは真っ赤なサイコロであった。
 フィアは不思議そうにそれを眺めていると、店主は首を傾げた。
「……あんたら、この店は初めてだな? 『トイレ』は突き当りの左だ」
「ありがとう……」
 カシムとメルシーもスシを食べ終えて頷く。
 3人は言われた通りに店内の突き当りの左へ入ってゆく。
 するとそこには、黒服の人物が扉をまもっていた。
「ダイスを……」
 男の言葉にフィアが先程差し出された真っ赤なダイスを見せる。
「連れもいるけど、いいよね」
「勿論です。お通り下さい」
 男が扉を開くと、地下へ続く真っ暗な長い通路が現れた……。

「本当に賭場があるなんてな?」
 カシムは目を輝かせる。
 悪そうなやつらが薄明りの部屋の中で丁半博打やカードゲーム、更にはチンチロリンなど古今東西の賭け事が行われていた。
 ここからはカシムの持ち場だ。
 |最終死刑囚《メガテロリスト》の情報と、アカダルマファーマシーの|抵抗組織《レジスタンス》『メサイア』への襲撃日時の情報、その両方を買い付けるべく丁半博打に挑む。
「さあ、張った張った!」
 振り師の言葉に参加者がどんどん賭けてゆく。
 そしてカシムは……。
「丁、全額で……!」
 ざわ……ざわざわ……っ!
 カシムの行動に会場がざわめいた。
 そしてその結果……!
「出ました、丁! あんたすげーな! 大儲けだ!」
「やったね、ご主人サマ☆」
 メルシーがカシムの勝利に湧きたつ。
 しかし、これはメルシーの権能且つユーベルコートである因果律操作による出来レースであった。
 そんなことは周囲は知る由もないので、カシムのオールイン賭けはまんまと成功したのだった。
「よお、あんちゃん。景気いいじゃねぇか」
 するとカシムへ擦り寄ってくる男がひとり。
 彼は情報屋だという。
 早速、欲しい情報がないかとカシムが尋ねると、情報屋はニタリと笑みを浮かべた。
「そいつなら、アカダルマファーマシーの作ったニンジャスーツの被検体になったそうだぜ? 雷を操るらしい」
「多分だけど……メルシー達が戦った事がある相手かもね☆」
「ああ、僕もそいつなら心当たりあるかもな? それなら幾つか手は読めるが」
 どうやらカシムは、同系統のサイバーニンジャと交戦したことがあるようだ。
 そしてフィアは『メサイア』の情報について尋ねた。
「抵抗組織『メサイア』の襲撃タイミングがわかれば準備はできる。しらない?」
「ああ、来月頭には潰すとか聞いたぜ?」
 情報屋の言葉にフィアが頭を下げて感謝を述べた。
「ありがとう。お返しはまたどこかで…………メルが、する」
「あ、お礼ならメルシーがたっぷりしちゃうぞ☆」
 身体をくねらせるメルシー。
 しかし情報屋の反応は芳しくなかった。
「そういうのは要らねぇ。カネだ、カネを寄越せ。さっきの勝ったカネだよ」
「そんなに怒らないで。ね、カシム?」
「ああ、だなフィア? とりあえずこれでどうだ?」
 勝った金額の8割を情報屋に押し付けたカシムは、この後もメルシーのイカサマで大儲けしてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スイート・シュガーボックス
ディオちゃん(人形態)と一緒にスシ屋に来たよ。
「おスシとか超アガる~☆とりまマグロと熱燗一丁ッ!」
俺は玉子とシメサバでッ!
(店内の空気ガン無視で暫く和気藹々とスシ食う二人)

と、お仕事もしないとね。【菓子錬金術】作った飴細工のこけし(情報収集LV100)を頭に乗っけて、周囲の注文内容に耳を澄ませて合言葉を手に入れる。
合言葉は…タイ、イクラ、大トロッ!
「マジヤバ美味しいッ!」

『オザシキ』に潜入したら更に情報収集だ。情報収集に何が必要か。そうだね、お菓子だね(ドンッ!)
『美味しいお菓子』の菓子折りを配りながら情報収集だ。
「スイート君のお菓子は、大金積んでも食いたい位マジ貴重っしょ☆」


【アドリブ歓迎】



 スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)は|相棒《ズッ友》の幻惑神機『ディオニュソス』(ヒト型ギャル系男の娘形態)と共に、電脳世界のスシ屋へやってきた。
「ディオちゃん、今日は任務でおスシが食べられるよッ!」
「ヤッバ! おスシとか超アガる~☆ とりまマグロと熱燗一丁ッ!」
「俺は玉子とシメサバでッ! ってことで、タイショー、ヤッテル?」
 スイートは店内に入るやいなや、スシ屋入店時の儀礼的アイサツを行った。
 2人はカウンター席へ通されると、まずは店先で言っていた希望の注文を好き勝手に店主へ告げてゆく。
「かーっ! マジうんめーっ! アカミのマグロは熱燗に超合うんですけど!」
「うんうん、サイバースペースのおスシもなかなかイケるねッ! って、お仕事もしなくっちゃいけないね」
 スイートはおもむろにユーベルコード『|菓子錬金術《スイーツアルケミー》』を行使すると、何もない空間から突然、飴で出来たコケシ人形を創造してみせた。
「ちょ、ス、スイート君ってば……人目がある中でコケシなんて作ってどうする気なん?」
 ディオニュソスが急に小声でスイートへ囁いてくる。何か壮大な勘違いをしているようだ。
 当然、スイートは何のことだか分からずにコケシを自分の身体であるお菓子の缶箱の頭にペタッとくっつけた。
「どうする気って、このコケシは『集音マイク』さッ! これで店内の客の会話を盗み聞きするんだ……ッ!」
 スイートもディオニュソスへ耳打ちして返答する。
 彼のユーベルコードで創造したお菓子製のマジックアイテムは、ひとつの技能に特化して強化されているのだ。
 今回の飴製コケシは情報収集能力に長けており、店内の僅かな会話も逃さずにスイートは拾えるようになった。
「ふむ、ふむふむ……ディオちゃん、わかったよ……ッ!」
「マジ? 暗号って何なん?」
「まぁまぁ、落ち着いて!」
 逸るディオニュソスの態度にスイートが宥めながら、店主へ流れるように注文を言い渡した。
「タイショー、タイ、イクラ、大トロッ! そしてアガリ一丁ッ!」
「……ほらよ。ちゃんと食ってから『トイレ』に向かえよ?」
 そう返した店主は、あらかじめ用意していたかのように握りの盛り合わせを2人へ提供してみせた。
 ただし、その脇に添えられていたのは真っ赤なサイコロであった。
「スイート君! これマジヤバで美味しいッ!」
「うん、おスシは美味しいけど、どうやらこのサイコロがないと『オザシキ』へ入れないみたいだね?」
 こうしてスシを完食した2人は、店の突き当りの左へそそくさと消えていった。

 スシ屋の地下に広がる違法賭博場……通称『オザシキ』には、人相の悪いゴロツキやサイバーヤクザ、はたまたサイボーグの殺し屋など、裏社会のそうそうたる職種の百貨店と化していた。
「ディオちゃん、情報収集には何が必要か知ってるかい?」
「なになに? 何が必要なんマジで?」
 ディオニュソスの問いに、スイートは大真面目に答えた。
「それはね、お菓子だよッ!」
 スイートはユーベルコードでお菓子をどんどん量産してゆくと、ハロウィンにかこつけてダークウェブの悪党共へお菓子を配布し始めたではないか。
「賭けで負けてイライラしているキミッ! 糖分が足りてないねッ! 俺のお菓子を食べるんだッ!」
「んだとテメェ? お子ちゃまじゃねーんだぞオレ様はってモゴォッ!?」
 モヒカンサイボーグ男の口にケーキがねじ込まれる!
「さあ! お菓子を食べて俺に|最終死刑囚《メガテロリスト》の情報を教えるんだッ!」
「うンめぇ~ッ! こんな美味ぇケーキ食ったの初めてだぜ!?」
「あたしも同感だ! これほどのお菓子はいくら金を積んでもこの世界じゃ食べられないよ!」
「完全オーガニック・ケーキだと……今日勝った分を全部投げ出しても市場じゃ買えねぇ代物だぞ!?」
 サイバーザナドゥ世界では環境汚染のため自然由来食品は超高額な値で取引されるほど希少品であった。
 それをポンポンと生み出すスイートの存在は、まさに福の神である。
「お、俺が情報を教えるから、もっとケーキを!」
「何言ってんだい!? あたしが教えてやるよ!」
「こっちも情報持ってるぞ!」
 おかげで、思ったよりも簡単に情報が集まってゆく。
「うわぁ、お菓子パワー、マジでぱねぇじゃん……!」
 ディオニュソスは改めてスイートをソンケイの眼差しで見詰めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェシカ・クローリー
こんな所にサロンを作るとは抜け目無いですね
私も警官ですがカジュアルスーツに着替え、しっかり[情報収集]しましょう

[コミュ力]を駆使し店主と滑らかに言葉を交わし二、三好みのマグロスシを食べつつ他の客の注文を[解読]します
「サビ抜き、太刀魚、鉄火巻き」
そして「あがり、とびきり熱いの」
ですか
実に賭場らしい

資金は用意して来ました
賭け事するように見せて彼らを観察
タカシさんと親交深い方を探し、【ザナドゥ・ネゴシエーション】の要領を守り交渉を持ち掛けます

「詳しい情報を提供していただければ、私達が彼を止めてみせます。 彼の誇りを守る為、力を貸していただけませんか」

情に厚い彼らなら肯定的に協力下さることでしょう



 ジェシカ・クローリー(|新米巡査《ルーキーオフィサー》・f36601)は今回の任務内容に興味をそそられて参加した。
 サイバーザナドゥ世界は日夜犯罪行為が絶えない。
 だが、よもやサイバースペースの暗部に違法|賭博場《カジノ》がのさばっている実情に、ジェシカは眉をひそめる。
「こんな所にサロンを作るとは抜け目無いですね。私も警官ですが今回の任務はカジュアルスーツに着替えての潜入調査です。しっかり情報収集しましょう」
 警察ならば、スシ屋に入店する際の符号は新人研修での必須事項である。
 古来よりカチグミ・サラリマン達がスシ屋で接待をする際、店主へソンケイを払う為の儀礼的アイサツ。
 それが出来ぬサンシタ共には、スシヤの敷居は跨ぐことすら許されずにオトトイキヤガレ案件にされてしまうのだ。
 ジェシカは動きやすいデニムのワイドパンツにブラウンカラーのブラウストップス、そして防寒用の白カーデを肩掛けして、上品さを演出しつつ堅苦しくない“抜け感”を表現したカジュアルファッションでスシ屋に入店する。
 カジュアルすぎてもスシ屋では店主にムラハチされて取り合ってくれなくなるため、その匙加減が求められるのだ。
「タイショー、ヤッテル?」
 ノレンを右手で45度の角度で持ち上げての発声、角度15度の敬礼、なんたる完璧な儀礼的アイサツだろうか。
 洗練されたジェシカの所作に思わず店主は目を見張って凝視してくる。
「……こちらへ」
 なんとジェシカ、イチゲン=サンにもかかわらずカミザへ案内された。
 カミザはヤバイ級カチグミ・サラリマンのみが座ることを許された“上座”であり“神座”である。
 そんな場所に見知らぬ女性が案内されたのだから、店内の常連悪党共がどよめくのは当然であった。
「誰だあのスケ……? どこぞのヤクザの愛人か何かか?」
「バカ、ちげぇよ。汚職政治家かメガコーポのご令嬢のオシノビってとこだろ」
「仮にもタイショーが認めた相手よ……私達は目を合わせない方が身のためね……」
 ジェシカは一瞬で悪党共に畏怖の感情を与えてしまったようだ。
(……おかしいですね、基本的なマナーを実践しただけなのですが?)
 ジェシカは心の中で首を傾げつつも、まずジェシカは店主へ質問した。
「タイショー、今日のお薦めは?」
「……お前、モータルじゃねぇな?」
 店主がジェシカを睨む。
 ここで警察だと身バレするわけにはいかないジェシカ、鉄皮面で冷静を繕う。
「申し訳ありませんが、仰ってる意味が分かりません。私はただ、旬のネタを食べたいだけです」
「ほう?」
 値踏みするような店主の目付きに、ジェシカは気付いてしまった。
(もしかして……偶然、暗号の導入部分に引っかかってしまったのでしょうか?)
 あとで知った事だが、サイバーザナドゥ世界でスシ屋の店主にお勧めを聞く行為に2つの意味がある。
 ひとつは表向きのその言葉通りの意味だが、もうひとつは一部の裏社会では『職探し』の意味を持つのだとか。
 |特殊詐欺行為《デンワバン》や|債権回収《キリトリ》、|用心棒依頼《ケツモチ》に|依頼殺人《オソウジ》。
 さっきの言葉は裏稼業のハローワークの常套句なのだ。今回の『オザシキ』の件にも当てはまる。
 つまり、ジェシカは意図せずに『オザシキ』へ指を掛け始めていたのだ。
「……まぁ、いい。今日はマグロだ。食っていくか?」
 店主は頭を振ってジェシカへの猜疑心を払った。
 ジェシカもここは様子を窺うべきだと判断し、素直に答えた。
「ええ、いただきましょう」
 こうしてジェシカはアカミ、中トロ、ナカオチのネギトロの三種の握りを堪能する。
 その間にも悪党達の言動をつぶさに観察する。
「……トイレを借りるぜ親父っさん。戻ってきたら『サビ抜き、太刀魚、鉄火巻き』を握っておいてくれ。それとあがり、とびきり熱いのも頼むぜ?」
「あいよ……んじゃこれ、トイレの『鍵』な?」
 席を立ったサイバーヤクザ風の男が店主へ注文すると、店主は男に何かを握らせた。
 男はそのまま店の奥へと消えていって戻ってこなかった。
(なるほど、どれも実に『鉄火場』に相応しいワードセンスですね)
 ジェシカは早速、男と同じ注文をすると手の中に真っ赤なサイコロを握らされた。
 これが、地下の賭場こと『オザシキ』へ向かうための『鍵』……通行証という事なのだろう。
「突き当りを左に行け」
「分かりました」
 ジェシカは食べた分の代金をそっとカウンターに残すと、目立たぬように言われた通りに『オザシキ』へ向かっていった。

 酒とヤニと怒声と暴力と猥雑がごっちゃになったカオスな地下空間。
 ジェシカが『オザシキ』に通されて最初に抱いた感想がそれだった。
「さて、情報収集を……って、何ですか、あなた達は?」
 ジェシカはガラの悪い二人組の男に征く手を阻まれる。
「ネェチャン、カワイイネ! 俺、たくさんカネあるからさ、一晩付き合ってくれねぇか?」
「酒もあるぜ? 電脳ドラックと一緒に飲むと、マジでトブぜ!」
 チンピラのナンパに仕事を邪魔され、ジェシカの眉間に深いシワが刻まれる。
「では、ここで一つ、交渉といきましょう。邪魔なんで消えてもらえませんか?」
 ジェシカはユーベルコードで交渉を行う。
 だが当然、この交渉なんぞチンピラコンビは聞き入れるわけがない。
「ルッセーゾコラーッ! 消えるわけねーだ、ろぉ~?」
「俺たちが遊んでやるって言ってんだ、大人しくし、ろ……? お、おほぉ……?」
 チンピラコンビは突然、虚ろな目付きでジェシカの前から立ち去っていくではないか。
「私のユーベルコード『ザナドゥ・ネゴシエーション』の要求を否定した者は、私に関する記憶と警戒心及び状況判断能力を奪い去ります。二度と私に付きまとわないで下さい」
 チンピラコンビを一蹴したジェシカは、またしても周囲のダークウェブの悪党共に一目置かれてしまう。
「あまり目立つような事はするべきではないのですが……とりあえず、このサイコロでチンチロリンをしてみましょうか。十分な資金はよういしてありますので」
 ジェシカはひとまず賭場をいくつか回り、勝ったり負けたりしながらダークウェブの悪党達と打ち解けてゆく。
 そしていよいよ本題を彼らにぶつけてみせた。
「抵抗組織『メサイア』のタカシさんを御存じですか? 彼の情報を集めています。何か知りませんか? 詳しい情報を提供していただければ、私達が彼を止めてみせます。 彼の誇りを守る為、力を貸していただけませんか?」
 ユーベルコードでの情報収集はかなり効率が良く、悪党共は知ってることを何でもジェシカへ教えてくれた。
 勿論、対価は必要だったが、もとよりそのつもりで潤沢な資金を用意してきた。

「……つまり、雷を操るサイバーニンジャスーツの運用実験の素体としてタカシさんは選ばれてしまい、スーツへ適用するためにアカダルマファーマシーは彼に骸の海を注入し続けたわけですね。なんて惨いことを」
 集まった情報を精査すると、このような結論に至った。
 また、抵抗組織『メサイア』のアジトの襲撃日時も11月の初旬だと判明した。
 幸い、まだ時間に余裕がある。
 アジトへ伝えれば何か対策が打てるかもしれない。
 ジェシカはこの情報を他の猟兵達へ伝達するためにも、一旦グリモア猟兵へ連絡を入れるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

毒島・雅樂
取り敢えず、マグロ。後は酒さネ。
後はゆっくり呑ンでるフリしつつ周囲に目を配っておくぜ。そうさな…同じモノばっか喰ってそウなヤツがイイ。タマゴとかな。そンなヤツが別のモン喰い出シたら、結構怪しいダろ?

ンで。大鮃、鮭、蝦蛄、金目鯛…「おさしき」ってか?
まァ…合ってりゃイイさね。

で、ダークウェブ…煙を吸ってもイイよな?
灰龍ノ思惟を使いながラ博打を見て一考。妾の勝ち筋が見えるンなら博打で情報を巻き上げて、見えないンなら大人しく買い付けと行くぜ。相手は…妾の胸元見て寄って来るようなヤツ相手が手っ取り早いかネ?

欲シい情報は、敵さん本人に関したネタ。
特に弱点なンざの話が出るようなら大いに気になるさねェ。



「よォタイショー、ヤッテル?」
 スシ屋の入店時における儀礼的アイサツを行う毒島・雅樂(屠龍・f28113)は、ニタニタを笑みを浮かべながらノレンをくぐる。
「……こっちの席にドウゾ」
 店主はそんな毒島を一瞥した後、素っ気なく対応した。
 毒島は案内された席にドカッと威勢よく座ると、テーブルに肘をついて頬の乗せながら注文する。
「取り敢えず、マグロ。後は酒さネ」
「……アイヨ。酒は熱燗でいいか?」
「構わなイさね」
「ヨロコンデー」
 店主は見事な手捌きでマグロスシを握ってみせた。
「ヘイ、マグロお待ち。熱燗も置いておくぞ」
「ああ、すまなイね?」
 毒島はくっくと笑いながら、スシを肴に酒を煽ってゆく。
(さァて……妾が酒盛りをしていルと見せかけ、周囲の客の言動を注視しようかね?)
 毒島はそれとなく店内の客の顔ぶれを確認する。
 モノアイメカヘッドが目立つ性別不明のサイボーグ。
 全身黒ずくめのレプリカントの女。
 全身ラバースーツを着込んで拘束中のおっさん。
(いや、スシ屋で全身ラバースーツ着て両腕封じられてるのにスシ食えンのかい?)
 ともかく、癖の強い者ばかりだ。
 そして間違いなく全員が悪人である。
(そうさな……同じモノばっか喰ってそウなヤツがイイ。タマゴとかな。そンなヤツが別のモン喰い出シたら、結構怪しいダろ?)
 実際、モノアイメカヘッドのサイボーグはさっきからイカとタコを交互に注文している。
 どんだけイカタコが好きなんだよとツッコミを入れたくなるくらいには怪しかった。
 もしかしてこいつが?
 毒島は一際マークし続けた、その時だった。
「オ、オヒョウ……サーモン……シャコ……キンメダイ……テッカマキ、アガリで」
「へい、ヨロコンデー」
 暗号めいた注文をした者へ、店主は真っ赤なサイコロを握らせる。
 サイコロを受け取ったのは黒づくめのレプリカントの女で、注文したのは全身ラバースーツのおっさんであった。
「ほら、行くわよ?」
「フゴッ!?」
 女は犬の首輪をおっさんに装着すると、ケツを蹴って席を立たせてみせの奥へ先導させていった。
「……アイツ、また派手にやってやがるな」
「今回の『質入れの品』はおっさんか。おおかた、メガコーポ傘下企業でケジメされたんだろうさ」
「人身売買なんざ地上じゃ大っぴらに出来ねぇもんな? まあ、あのおっさんは二度と朝日を拝めねぇだろう」
「ナムアミダブツ……」
 どうやら会社の損害をおっ被されたメガコーポ中間管理職の男の末路の光景だったようだ。
 サイバーザナドゥ世界のダークウェブの悪党共がブッダも泡吹いて卒倒するほどの非道の限りを尽くしているというあからさまな証左を、毒島はその目で見届けてしまった。
(おっそろしいネェ? しかし大鮃、鮭、蝦蛄、金目鯛……ネタの頭文字で「おさしき」ってか? まァ……合ってりゃそれでイイさね)
 毒島は早速、先程の注文と同じものを店主へ告げて赤いサイコロを入手する。
「……『トイレ』は突き当りの左だ」
「ご親切にどうモ」
 不敵な笑みを浮かべながら毒島は店の奥へ向かい、黒服の男にサイコロを見せて地下へ潜っていった。

 いかにもなアトモスフィア漂う地下の地方賭博場は、血気盛んなゴロツキやサイバーヤクザ、そしてカネの為なら何でもやると言いたげに目をギラギラ輝かせる者どもの巣窟であった。
「ンで、情報を得るには手っ取り早く“打つ”のが一番っテ事かい?」
 毒島は花札の賭場で立ち止まる。ちょうど『こいこい』が行われていた。
 そこで熱くなっている客の肩を、彼女はポンポンと叩いた。
「なァ、ユー? ちょイとコイツの事を知らないかい?」
 毒島はグリモアベースで伝達された情報を尋ねる。
 しかし客は鬱陶しそうに無言で毒島を追っ払う仕草をするだけで取り合おうとしない。
 ならばと、毒島はその場にどかっと座ると、掛け金を差し出しながら客へ告げた。
「妾が勝ったら、この男の情報を集めル手伝いをしてもらおウかね? 負けたら……ユーの借金を妾が肩代わりしてやろうじゃなイか」
 この話に客は目の色を変えて首を縦に振った。
 というわけで、毒島、『こいこい』参戦……!
「……煙を吸ってもイイよな?」
 胴元に喫煙の許可を取った毒島は紫煙を燻らせることでユーベルコード『|灰龍ノ思惟《ヨルヨリホカニキクモノナシ》』を発動させる。
 札が配られる。
(さテ……目立った札は『菊に盃』『紅葉に鹿』『桜に幕』かい? 他はカス札だねェ)
 手札の中で『花見酒』の役が成立すれば勝ち確だ。
 故に、長考するフリをしてユーベルコードの効果を高めてゆく。
 カス札と青短を獲得した後に山札をめくる毒島。
「おや? ツイてるねェ?」
 引き当てたのは『芒に月』の札だ。
 これで『花見酒』だけではなく『月見酒』の役も狙えるようになった。
 それだけではなく、上位役の『三光』も視野に入る。
 一方、相手の札は赤短とタネ札を素早く揃える速攻狙いだ。
 再び毒島の手番が回り、十分にじらして紫煙を燻らせる。
「おい、まだかよ?」
「おっと、すまなイね。煙草が美味くて時間を忘れかけてタよ」
 そんなことを口にしながら、場に出た桜の札と一緒に『桜に幕』を自分の場に置く毒島。
 しかもめくった札が『松に鶴』で、他の松の札と一緒に獲得する。
 これで三光の役が成立だ。
 だが毒島は止まらない。
「こいこい、さね」
 ゲーム続行……!
 手元にまだ強力な切り札があるのだ、このまま『菊に盃』を出してぶっちぎりたい。
 紫煙を狂らせるたびに「次の行動」の成功率が上昇するユーベルコードを使っている限り、毒島が負ける事はない。
 そして、結局……。
「ンで、これでアガリさね。五光、花見酒、月見酒、タネってところかい?」
「ま、参りやした……!」
 文句なしの圧勝であった。
 こうして“協力者”を得た毒島は、ダークウェブの悪党共に抵抗組織『メサイア』にいたタカシの情報を掻き集めてゆく、のだが……。
「なァに妾の胸元ばかりを見ているンだい?」
 寄ってくる男は毒島の豊満な胸元に引き寄せられてくるばかり。
 しかし、そんな男共を彼女は上手に手玉に取ることで更に人手を増やして情報収集の効率化を図ってゆく。
 最後は毒島本人は酒を飲んでるだけで、耳元に情報が集まってくる状況が完成していた。
「欲シい情報は、敵さん本人に関したネタ。特に弱点なンざの話が出るようなら大いに気になるさねェ。何か分かっタかい?」
「ヘイッ! なんでも、完全にニンジャスーツと同調出来てねぇって話でしてね? ユーベルコードを使って150秒後に、必ず10秒間だけ強制停止せざるを得ないそうでサァ」
 へこへこする男が有力な情報を持ってきたようだ。
 思わず毒島の目が細く、弧を描く。
「ほう? そいつは確かかい?」
「勿論ですぜ! アカダルマをよく思ってねぇ連中が送り込んだ企業スパイからの、角度の高い情報ですぜ!」
「そうかい、よくやったよ!」
 毒島のおかげで、|最終死刑囚《メガテロリスト》の弱点が明らかになったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
タカシさんのことは本当に残念です

タカシさんを止めて差し上げることが
私たちにできる
せめてものことでしょうか

アカダルマの思い通りにはさせません
情報を手に入れましょう

人相の悪い方を真似して注文

ヤリイカ
ミルガイ
ノドグロ
クルマエビ
モンゴウイカ
スズキ

もぐもぐ

なるほど!
頭文字をつなげると闇の蜘蛛巣
即ちダークウェブ
超判り易いです♪

オザシキに通されましたら
少々負け越していそうな方へ声かけ

仲良くなって
オザシキのBGMに合わせる形で
その方の好きな歌曲を歌い癒します

運気は元気
元気一杯なら
どんどん運を呼び込めますよ

ツキが回ってきたようでしたら
幸運の黒猫に情報をプリーズ♪

エンリケさん
ブラドさんへ情報をお伝えしましょう



 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はサイバーザナドゥ世界に到着し、電脳世界へダイブする直前のこと。
 彼はグリモア猟兵経由で|抵抗組織《レジスタンス》『メサイア』へ連絡を入れていた。
 出来る事ならば現地で落ち合い、情報共有をしたい旨を伝えて。
 そして現在、無事に電脳世界のスシ屋の前で箒星、そして『メサイア』の奇跡の子ことブラドと『運び屋』エンリケは合流が叶った。
「どうも、お久しぶりです。タカシさんのことは本当に残念です……」
 ふたりに顔を合わせると、箒星は耳をペタッと伏せたままオジギをしてみせた。
 これにブラドとエンリケも奥ゆかしいオジギを披露した。
「ドーモ、仄々さん。ブラドです。タカシは捕まって|最終死刑囚《メガテロリスト》になっちゃった」
「ドーモ。久しぶりだな、黒猫の坊主。エンリケ様の事、覚えていやがるか?」
「ええ、忘れておりませんよ。今はタカシさんを止めて差し上げることが私たちにできる、せめてものことでしょうか。アカダルマの思い通りにはさせません。必ずや情報を手に入れましょう。おっと、お店の前でたむろするのは良くないですね。早速中へ……」
「待った、仄々。俺がやる」
 エンリケは率先して店の扉に手をかけ、ノレンを上げてアイサツをした。
「タイショー、ヤッテル? あとふたり、ツレがいるんだがいいよな?」
 スシ屋の入店時に行われる儀礼的アイサツ!
 この世界のカチグミ・サラリマンの慣例からことを発するこの儀礼的アイサツが出来ないサンシタ共には、スシ屋の敷居をまたぐ死角はないとみなされてオトトイキヤガレ案件にされてしまうのだ。
 箒星は勿論この情報を知らなかったため、エンリケに救われた形になって入店を果たせた。

 箒星は店内の客の動向を注意深く観察しながらも、注文したエビとマグロに舌鼓を打つ。
「サイバースペースですので実物ではないのですが、とても美味しいお寿司ですね」
「まったくだな、すげぇ美味いけど腹は膨れねぇな」
「エンリケ、それは違うよ。満腹中枢は刺激されるから空腹感は感じなくなる」
 ブラドの解説に箒星はふむふむと耳を傾けている。
「ブラドさんはお詳しいのですね」
「うん。リアムからそういうのを勉強しなさいって言われてるから」
「アカダルマファーマシーと戦うのに、毎日プログラムの勉強やハッキング技能の修練をブラドは積んでるんだぜ」
 エンリケの言葉が本当ならば、抵抗組織『メサイア』のリーダーことリアム・フォスターは幼い男児に割ととんでもない事を教え込んでいるようだ。
 それでもサイバーザナドゥ世界はそういう文化風潮なのだ、と箒星は追加で注文したイクラを口に運んで納得していた。
 と、ここでひとりの客が立ち上がり、店主から何かを握らされた後に店の奥へと消えていった。
 恐らく、この奥に『オザシキ』への通路が隠されており、店主が握らせたのはその通行証のようなものだろう。
 箒星だけでなく、裏社会に詳しいエンリケもすぐにそれに気が付いた。
「おい仄々? さっき、あいつはどんな注文をしてたか、聞こえたか? お前、猫なんだから耳は良いだろ?」
 無茶苦茶な理由でエンリケが箒星に泣きついてくる。
 だが実際、箒星の耳はとっても感度がよく、常に注意を払って店内の会話を拾って記憶していたのだ。
「ええ、大丈夫ですよエンリケさん。あの方が注文した内容の一言一句、私が覚えていますので」
「マジか! でかした!」
「では、注文を再現しますね? ……ごほん、タイショー? 『鉄火巻き』はありますか?」
 この注文が違法賭博場へ向かうための符号の枕詞なのだ。
 店主は眉を潜めつつ、首を横に振った。
「生憎だが切らしててな。他ならあるぞ」
「では、『ヤリイカ』『ミルガイ』『ノドグロ』『クルマエビ』『モンゴウイカ』『スズキ』を3人前、お願いしますね」
「……今日はやけに『新参者』が来る日だな」
「タイショー、何か?」
 首を傾げる箒星に、店主は溜息まじりに言った。
「いや、何でもねぇ。ご注文、ヨロコンデー」
 店主は熟練の手捌きで見事な握りを披露し、3人へ提供してみせた。
「これはお見事。では、いただきます」
「いただきます」
「こいつは旨そうだ! いただくとするか!」
 3人はそれぞれ美味しいスシを堪能すると、お会計を済まそうと席を立った。
 すると、店主が箒星の肉球に、真っ赤なサイコロを握らせてきた。
 3人分なので、3個だ。
「……『トイレ』は店の突き当りの左だ」
「ありがとうございます」
 箒星はブラドとエンリケについてくるように言うと、店主の言葉通り店の奥の突き当りを左に曲がる。
 するとそこには、黒服の男が厳重に警備する鉄の門が存在した。
「すみません。『トイレ』へ行きたいのですが?」
 箒星は先程渡された赤いサイコロ3個を黒服の男へ見せると、無言で重い鉄の扉を開けてくれた。
 中は真っ暗で、地下へ続く階段が存在している。
「ではエンリケさん、ブラドさん。参りましょうか」
 いよいよ、箒星と『メサイア』の二人組はダークウェブへ足を踏み入れる。

 無事にダークウェブの違法賭博場に潜入できた3人。
 ここでエンリケが箒星へ尋ねた。
「さっきの注文だが、あれって結局どういうことだ?」
「スシネタの頭文字ですよ」
 箒星は煙草の匂いに辟易しながらも、エンリケへ種明かしをしてゆく。
「私が注文したのは『ヤリイカ』『ミルガイ』『ノドグロ』『クルマエビ』『モンゴウイカ』『スズキ』です。その頭文字を並べると……」
「ヤミノクモオス……闇の蜘蛛の巣、ダークウェブのことだね」
 ブラドが先に応えてしまったので、エンリケは気まずそうに苦笑いしてしまう。
「な、なんだよ……ただの語呂合わせかよ」
「でも意外と盲点かもしれませんね。頭文字だけあっていても、注文するスシネタが違えばタイショーに拒絶されていたかもしれません」
 ありえなくない可能性だ。
 かつてカチグミ・サラリマンがスシ屋を接待の場として活用したのは、注文するスシネタで高度な暗号を生成して産業スパイに対抗したことが由来とされており、サイバーザナドゥ世界では一般的なビジネスマナーなのだ。
「さて、オサシキに潜り込めたら情報収集ですが、ここでひとつ提案があります」
 箒星は周囲をキョロキョロと探索すると、背中を丸めて落ち込んでいる悪党を発見する。
「あの人に聞き込みしましょう。基本的に負けが込んでる方に聞き込みをします」
「いや、普通なら勝ってる相手じゃねぇか? この世界の勝ちはすべてカネだ。カネがある奴に情報が転がり込んできやがるんだぜ?」
 エンリケの言葉はこの世界の道理だ。
 しかし、箒星は他世界出身、その価値観を逆手に取るのだ。
「私がパトロンになるのです。あの方にお金を貸しましょう。そしてユーベルコードを使ってあの方を励まします」
「おい、それって情報収集と関係ないだろ、って、言っちまった……」
 エンリケの制止の声を振り切った箒星は、落ち込んでる悪党の男へ多額の札束をちらつかせる。
「お疲れ様です。よろしければご融資しましょうか?」
「アイエッ!? だ、誰だてめぇ……?」
 警戒心を露にする男へ、箒星は懐中時計を変形させた竪琴を傍らにオジギをしてみせた。
「申し遅れました、私、猟兵の箒星・仄々と申します。あなたに勝利をもたらす黒猫ですよ」
 そう告げると、いきなり陽気で軽快な音楽を奏でながら賭博場で歌い始める箒星。
 普通なら摘まみだされてもおかしくないが、箒星の歌声の魅力に悪党達は心身ともに癒されてしまう。
「♪タカシさんを知りませんか~? 『|最終死刑囚《メガテロリスト》』のタカシさんの事を教えてください~」
 物騒な単語が出てきてギョッとする悪党達だが、次第に音楽に誘われて情報提供者が帯同するエンリケの元へ集まってきた。
 そして負けが込んでいた男も、いつの間にか前向きな態度に戻っているではないか。
「なんだか今なら大勝ちしそうだぜ! ちょっくら大勝負してくるか!」
 男は箒星の融資金の全額を闘技場の大穴の選手へオールインベット!
「♪逆境こそパワーですよ~ がんばってくださ~い!」
 箒星の歌声が彼を後押しする。
 はたして、結果は?

「うおっしゃぁぁぁ! オッズ300倍! マジかよ!?」
 物凄い大金を一瞬で掴んだ男は、箒星へ元金を簡単に返済してくれた。
 ……実は、箒星のユーベルコード『シンフォニック・キュア』の効果が、大穴の選手の共感を得たことで体力が大幅に回復していたのだ。
 よって、全選手の中でずば抜けたスタミナ量を誇った大穴選手が、熾烈な消耗戦の末に優勝を果たしたのだ。
「おめでとうございます! 運気は元気です。ポジティブで元気一杯なら、どんどん運を呼び込めますよ。ツキが回ってきたようでしたら、幸運の黒猫に情報をプリーズ♪」
「ああ、タカシってヤツの事だったな? アカダルマファーマシーに掴まって、雷を操るニンジャスーツの被験者になっちまったって話だ。実験の過程でアイツは自我が崩壊して、今じゃアカダルマファーマシーの傀儡だ。だが、アイツはユーベルコードを発動させるとスーツと強制適合している弊害からか、10秒間だけ動きが止まるんだ……倒すなら、その10秒間に全力をぶつけるしかねぇぜ?」
 かなり有益な情報を箒星は得ることが出来た。
 更に、抵抗組織『メサイア』への襲撃日時は、11月の初旬だとも教えてくれた。
「お前、すげぇ詳しいな? 俺でも情報掴めなかったっつーのによ?」
 エンリケが頭を掻きながら男へ声をかけると、男は謙遜した態度で苦笑いする。
「いやいや、単なるゴシップ雑誌の違法記者ってだけだ。コネは無駄にあるんでな」
「羨ましいぜ、そういうの。俺にも紹介してくれよ」
「エンリケ、今はタカシの事が優先だよ」
 ブラドに小言をぶつけられて、しゅんと背中を丸めてしまうエンリケであった。
「さて、一旦外へ出て、他の猟兵の皆さんと合流しましょう」
 箒星は持ち帰った情報を参加者全員へ共有するべく、地上へ戻ってグリモア猟兵と連絡を取り合うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ケラウノス』

POW   :    雷霆万鈞
自身の【装備する槍】に【迸る電撃】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
SPD   :    付和雷同
【迸る電撃】によって、自身の装備する【槍】を高速飛翔させ、槍独自の判断で【軌道】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ   :    雷轟電撃
自身が装備する【槍】から【自由自在に迸る電撃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【サイバースペースへのハッキング】と【感電】の状態異常を与える。

イラスト:雲間陽子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ラスク・パークスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達と抵抗組織『メサイア』に所属する“運び屋”エンリケ、そして幼い救世主ブラドは、かつての仲間でありアカダルマファーマシーの手先となった『最終死刑囚』タカシの情報をそれぞれが持ち寄って情報共有を行う。
 それらを纏めると以下の通りだ。

・タカシはアカダルマファーマシー製の新型サイバーニンジャスーツの被験者にあてがわれた。
・そこでスーツに適合させるための骸の海を体内に大量注入されたことでオブリビオンとなってしまった。
・もうタカシの自我は崩壊しており、アカダルマファーマシーの命令以外は効く耳を持たない。
・しかしスーツとの適合率は不完全であり、ユーベルコードを発動した130秒間後に、必ず10秒間の強制停止がある。
・抵抗組織『メサイア』のアジトの襲撃は11月初旬。つまりまもなくだ。

 ダークウェブから持ち帰った情報は、いずれも角度が高い信憑性があるものばかりだ。
 これらを頭に入れて最終死刑囚タカシことサイバーニンジャ『ケラウノス』との戦いに臨まなくてはならないだろう。

 一方、抵抗組織『メサイア』のアジトへ向かう、稲妻めいたサイバースーツを着込んだ男がいた。
「アカダルマファーマシーへの反逆は……重罪だ……処刑する……」
 かつての仲間の顔など、もう覚えていないのだろう。
 残虐な殺戮サイバーニンジャと成り果てたタカシが、今まさに襲撃を開始しようとしていた……。
スイート・シュガーボックス
この世界にはお菓子が必要なんだ。『オザシキ』の人達の反応でそれは明らか。
つまりタカシも自我が崩壊してようがその体が、魂がオーガニックなお菓子を求めているに違いないんだよ、ディオちゃんッ!
「マッ?大発見じゃんッ!」

「遠隔操作の槍はウチの『豊穣葡萄』で抑えるし。全方位オールレンジ高水圧ワインレーザーカッターの檻で閉じ込めてやるってのッ!」
俺はタカシの方をッ!【甘く香る極上のお菓子街】ッ!
フルーツ沢山のケーキ、甘いショコラ、サクサククッキー、全てオーガニックッ!
誘惑で動きが鈍るタカシを『ケルベロスリボン』で捕まえ、マスクをこじ開けッ!
さあ、お菓子を食べるんだッ!心の正直なままにッ!


【アドリブ歓迎】



 ――サイバーザナドゥ・現実世界。|抵抗組織《レジスタンス》『メサイア』のアジトにて。

 スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)とそのズッ友こと幻惑神機『ディオニュソス』(ギャル系男の娘の姿)は、|最終死刑囚《メガテロリスト》のタカシことサイバーニンジャ『ケラウノス』の襲撃に備えるべく……大量のお菓子を作っていた。
「この世界にはお菓子が必要なんだ。『オザシキ』の人達の反応でそれは明らかなんだ」
「いや、でもなんで?」
 ディオニュソスはせかせかとキッチンを駆け回るスイートの様子を訝しんでいた。
 これにスイートは、焼き上がったクッキーにアイシングデコレーションを施しながら断言する。
「つまりタカシも自我が崩壊してようが、その体が、魂がッ! 俺の作ったオーガニックなお菓子を求めているに違いないんだよ、ディオちゃんッ!」
「マッ? 大発見じゃんッ!」
 サイバーザナドゥにおいて、合成食材を一切使わない完全オーガニックスイーツは高値で取引されるほど希少な品だ。
 ダークウェブの『オザシキ』にいた悪党共が、スイーツの錬成したオーガニックスイーツを食べて感動のあまりに情報を最安値で提供してくれたほどの価値がある。
 ならばケラノウスもスイートお手製お菓子をたべれば、苦しまずに打倒できるかもしれないと考えたのだ。
 ディオニュソスが戦闘が苦手な性格ということも考慮し、スイートはなるべく切った張ったな荒事を避けたいのだろう。

 かくして、大量のオークションお菓子を用意したスイートとディオニュソスは、アジトへ接近してきたケラノウスを目視した。
「タカシ! これ以上キミを先にはいかせないよッ!」
「仲間同士で傷付け合うなんてマジ止めろって!」
 征く手を阻む猟兵と神機コンビに、雷遣いのサイバーニンジャは緩慢な動作で槍を振り上げた、次の瞬間。

「――付和雷同」

 槍を投げ放った途端、迸る電撃が自我を持ったかのように槍を操り出したではないか。
「あっぶなっ!」
 ディオニュソスが咄嗟に背中から人間サイズの光輪スラスター『VOB(ヴァンガードお酒ブースト)』を顕現させ、スイートを抱えたまま槍を回避!
「なるほど……これを、避けるか。ならば……イヤーッ!」
 ケラノウスは決断的カラテによる深い踏み込みで、一気にスイートへ肉薄!
 繰り出される掌底がスイートを捉えた、かに見えた。
「マジ止めろっつーつ!」
 神器『豊穣葡萄』の宝玉から高圧で噴き出したワインがケラノウスの身体を押し退けてゆく。
 あと一瞬でも遅ければ、スイートの身体がひしゃげていただろう。
「ディオちゃん、助かったよ!」
「ウチのズッ友のスイート君には指一本触れさせねーし! つか遠隔操作の槍はウチの『豊穣葡萄』で抑えるし! 全方位オールレンジ高水圧ワインレーザーカッターの檻で閉じ込めてやるってのッ!」
 大小さまざまな色とりどりの宝珠が空中を飛び交う。そのまま飛翔する槍を追尾し、高圧水流で射出されるワインの檻の中に包囲されてしまう。
「スイート君、今がチャンスっしょ!」
「ありがとう、ディオちゃんッ! それじゃ、今からここは夢の街ッ! 顕現せよ、|甘く香る極上のお菓子街《ヘヴンリィ・スイーツタウンッ》!」
 途端、ユーベルコードで戦場がお菓子の街へ早変わり!
「133分間のスイーツ食べ放題タイムだッ! フルーツ沢山のケーキ、甘いショコラ、サクサククッキー、全てオーガニックッ!」
「なん、だと……!? オーガニックスイーツだと……!? 実在したのか!」
 ケラノウスはサイバーニンジャスーツ越しに周囲を見渡して驚愕する。
 やはりサイバーザナドゥにおいて、純正品のお菓子は希少価値の高い嗜好品なのだろう。
「さあ、お菓子を食べるんだッ! 心の正直なままにッ! そのスーツも脱いで!」
「う、うぐ……強制停止が……!」
 しかし、ケラノウスはサイバーニンジャスーツのユーベルコード負荷に耐え切れずに、排熱を全身で行いながらその場で硬直してしまう。
 これではお菓子を食べたくても食べられない。
「仕方がないなッ! 俺が食べさせてあげるよ!」
 スイートの頭にある青いケルベロスリボンを腕代わりにして、ケラノウスの身体とケーキを掴む。
 そのままケラノウスの顔面にケーキをズドンッと押し付けたではないか。
「さあッ! お菓子を食べるんだ!」
「モゴゴゴーッ!」
 呼吸が出来ずに暴れるケラノウス。
「う、美味い! 腹が膨れても、もっと食べたくなる……苦しい……でも食べたい!」
 だが嫌がっているわけではなく、もっと菓子を食わせろと強請ってくるのだ。
 おかげで満腹でもお菓子を貪り続けるほど、精神と胃腸へのダメージが甚大な被害になってゆく。
「スイート君のユーベルコードって、割とエグくね? 敵が喜んで自分からダメージを喰らいにいってね?」
「そうかな、ディオちゃん? 少なくともタカシは今、喜んでいるよ!」
 窒息寸前までケーキやチョコレートなどを喰らってゆくケラノウスことタカシは、あまりの美味に涙をこぼしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェシカ・クローリー
これは痛ましい姿ですね
その窮屈な鎧から解放してあげましょう
あなたを想う本当の仲間に弔って貰うべきです

[ダッシュ]で動き回り、遮蔽等[地形の利用]で上手く敵を翻弄して自分のペースに持ち込みます
″Black Adder″の誘導弾で鎧の隙間を縫う様に射撃して怯ませつつ、槍と脚を巻き込む形で放つ″Bola Charge″の拘束と電撃で体勢を崩させた所をライオットシールドの[シールドバッシュ]で地面に倒し、【ブリッツ・チャージ】で状態異常力を高めたスタンロッドにより耐性を貫通する痛烈な[電撃]を打ち込むことで確実に仕留めましょう

このような非道を行った代償は、いずれ必ず払ってもらいます



 ジェシカ・クローリー(|新米巡査《ルーキーオフィサー》・f36601)は幽鬼めいた足取りで此方へ歩いてくるサイバーニンジャ『ケラノウス』を見遣る。
「アカダルマファーマシーに……反抗する者は……処刑、処刑、処刑……」
 インプットされた言語をひたすら繰り返すその有様に、ジェシカは思わず顔をしかめる。
「これは痛ましい姿ですね。私がその窮屈な鎧から解放してあげましょう。あなたを想う本当の仲間に弔って貰うべきです」
 ジェシカは戦場となった廃倉庫の敷地内を全力で駆け出す。
 たいしてケラノウスは機械槍を手元に呼び寄せると、迸る電撃を宿してアスファルト舗装の地面を蹴って前へ出る。
「イヤーッ!」
 ユーベルコード『雷霆万鈞』発動!
 雷光めいた移動速度でニンジャの槍がジェシカへ繰り出された。
「早い……!」
 眼前に迫る電撃を纏った鉾先を、ジェシカは廃材の山の中へ身を投げるように飛び込んでかわす。
 槍は障害物に激突してスパーク!
「いにしえのコトワザにもある……『ラットは弱いくせによく逃げる』と……無駄な行いの例えだ」
「本当に無駄か、試してみますか?」
 ジェシカはケラノウスとの戦いを何度もシミュレーションしてきた。
 敵の主武器は電撃を纏った機械槍だ。
 長物を振り回すには、ある程度のスペースが必要である。
 故にジェシカはギリギリで回避しながら、敵を障害物の多い廃材の山が放置された区画へ誘導しているのだ。
 だが相手は雷のサイバーニンジャ、誘導が完了する前に追いつかれてしまいそうになる。
「だったらこれで!」
 シンクテックアームズ製スマートサブマシンガン “Black Adder”の銃口をニンジャへ向け、狙いを定めずに散発的に発射する。
 すると、全く見当違いに飛んでった弾丸が物理法則を無視して急旋回を開始、誘導弾となってケラノウスのサイバーニンジャスーツへ命中する!
「グワーッ! 小賢しい、真似を……!」
 不意を突かれたケラノウスが一瞬足を止めた。
 この隙にジェシカは再びダッシュして廃材の山の中へ飛び込んでいった。
 更に彼女はExo Defense “Bola Charge”……スマホ大の電気を帯びたボーラを発射!
 ポーラは槍の石突と柄の部分、それと両脚に絡まって、ケラノウスの動きを制限する。
 そこへ激しい電流がケラノウスの全身を襲う!
「ヌヌーッ!」
 だがケラノウス、耐える!
「……この程度の電撃、生ぬるい」
「そんな……!」
 ジェシカは目論見が外れて思わず舌打ちをする。
 迸る電撃を纏った武器を扱うニンジャのスーツだ、耐電設計がされていてもおかしくないのだろう。
 そしてジェシカの放ったポーラの電流では、ケラノウスをスタンさせるまでにはいかなかったようだ。
「こうなったら……“パニッシャー”モード、展開」
 ジェシカはユーベルコード『ブリッツ・チャージ』を発動させ、状態異常耐性・電気耐性貫通・電撃威力強化を自身に付与する。
 先程のポーラも戦闘開始直後に発動していれば、もっと効果的な結果が出たのだろうが今はもうそんな状況ではない。
 ライオットシールドとスタンロッドで武装したジェシカは、自身の負傷を省みずにケラノウスへ突撃してゆく。
「私の感電は状態異常耐性で防ぎます。電気耐性貫通効果でスーツの守りを突破し、電撃威力強化によるスタンロッドの一撃を叩き込みます」
 シールドバッシュで吹き飛ばしてから、仰向けに倒れたケラノウスへスタンロッドの先端を刺突し電撃を流す。
「グワーッ!」
 流石にこれは効果があったようで、すぐに強制停止モードへ移行したケラノウスを何度もジェシカはおうだしてゆく。
「このような非道を行った代償は、いずれ必ず払ってもらいます」
 アカダルマファーマシーの悪行に、ジェシカは静かな怒りの炎を滾らせるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

毒島・雅樂
あ゛~…今回は探偵としての依頼じゃねェんだ。つまり、タカシって奴の過去に興味はないさね。説得って手段も取れ無さそうだシな。
ま、そう言うことで…全力で戦り合おうゼ? 妾たちが生きているのは今、だからなァ。

さて、奴さんのUC発動からの130秒後。
そこは妾も狙い目と理解シちゃいるシ実行するが…問題はそれまでの間さね。防禦に徹する? 逃げ回る? 否だろ?
妾は毒島雅樂だぞ? そンな三下の思考で戦に赴くとでも?

とどのつまり、130秒後を最大の機会と認識シつつもブッ斃せる時にブッ斃す。今を戦ってこそ未来があるンだよ。
UCは赩龍ノ断罪。カウンター狙いさな。

戦いは兎も角…メガコーポのヤり方は気に食わないさね。



 ゆらり、と雷のサイバーニンジャの身体が揺らぐ。
 さながら陽炎のように、虚像のように、生きている実感の湧かない姿を晒して歩み寄ってくる。
 その前を立ちはだかるは、毒島・雅樂(屠龍・f28113)。竜神にして、探偵である。
 しかし、目の前のニンジャの様子を、毒島は溜息まじりに一蹴する。
「あ゛~…今回は探偵としての依頼じゃねェんだ。つまり、|タカシ《ユー》って奴の過去に興味はないさね。説得って手段も取れ無さそうだシな」
 ゴキゴキと首を左右にねじって頸椎の関節を鳴らす。
 両腕を挙げてぐっと伸びれば、肩と背骨から小気味いい音がパキパキとイクサバに鳴り響く。
 足首を左右交互にブラブラさせた後、軽くトントンとその場で小さく跳躍。
 毒島、戦闘準備、完了……!
「ま、そう言うことで……全力で戦り合おうゼ? 妾たちが生きているのは今、だからなァ」
 身構えた毒島に全く隙が見えない。さながら黄龍が鎮座しているかのような神々しさだ。
 一方、サイバーニンジャは身体を低く身構えると、右手に握り込む機械槍に迸る電撃を纏わせた。
 此方も準備万端だ。
 両者睨み合いが続く。少しでも動いたほうが隙を晒すことになるからだ。
 二人ともパワーとスピードに自身がある猛者同士。
 ならば勝負は一瞬で片付くだろう。
(さて、奴さんのユーベルコード発動からの130秒後。10秒間の強制停止モードに突入する。そこは妾も狙い目と理解シちゃいるシ、当然のコト実行するが……問題はそれまでの間さね。防禦に徹する? 逃げ回る?)
 そこまで思考を巡らせてから、毒島はニタリと笑みを浮かべる。
(いや、否だろ? 妾は毒島 雅樂だぞ? そンな三下の思考で戦に赴くとでも?)
 彼女は『屠龍』の二つ名を背負いし女。
 安全策などクソくらえだ。
(とどのつまり、130秒後を最大の機会と認識シつつもブッ斃せる時にブッ斃す。今を戦ってこそ未来があるンだよ)
 そのためのユーベルコード、そのためのカウンターでの一撃必殺……!
 故に、毒島は掌を上にしてニンジャを手招きする。
「どうしたンだい? いつまでも棒立ちじゃ始まンねェ。一撃でケリつけてやンよ」
「……いいだろう」
 ケラノウスは最大電力を槍に籠めると、全身のバネを弾けさせて前へ踏み込んだ。
「――雷霆万鈞!」
 リスクを負うほど威力が高まるユーベルコードを、毒島に突き付けるケラノウス。
 それを毒島は、槍が繰り出される以上の速度でケラノウスへ肉薄すると、超高速の貫手を敵のスーツの中へ突き刺した。
「………風に落ち 水には浮かぶ 花紅葉」
 ザンシンと共に詠まれたハイクが奥ゆかしくも残忍だ。
 毒島の指が刺さったニンジャの胸元は、紅葉のように真っ赤に染まっていた。
 ユーベルコード『赩龍ノ断罪』のカウンター攻撃が決まった毒島は、ケラノウスの身体から指を引き抜き、赤く染まった血を宙で払う。
「戦いは兎も角……メガコーポのヤり方は気に食わないさね」
 血塗れのまま強制停止モードに陥ったケラノウスへ、薄ら笑いを剥ける毒島であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
メサイアを守ります
それがタカシさんの御遺志のはずですから

風の魔力で空気の帯電を察知
毛皮やお髭がビリっときましたよ

ブラドさんらへ
場所を知られてしまったアジトからの退避を呼びかけたら
急ぎ飛び出し暗がりに身を潜め待ち伏せ

タカシさんに気づかれてしまいましたら
にゃんぱらりっと電撃を回避しながら距離をとります

奇襲出来ましたら細剣での一撃離脱を仕掛けます
まずはご挨拶です

タカシさん
貴方の代わりに貴方を止めに来ました

竪琴を起動と同時に演奏開始

周囲の構造物を変換した魔力を
旋律に乗せて踊らせ
炎のプラズマで電撃のそれに対抗しながら
絶縁体である純水のドームで防御

130秒耐え抜きましたら
全魔力を攻撃へ回し
紅蒼翠の奔流でスーツを粉砕

粉砕したスーツも魔力へ変換

解放されたタカシさんが
オブリビオンとして抗うのか
お心を蘇らせて自らの死を願うのか
それは判りません

どちらにせよ
魔力で優しく包み込み
海へ導きます

鎮魂の演奏後
爪弾きをやめれば
そこに残るのはスーツの欠片だけでしょうか

貴方の思いは皆に受け継がれています
安心してお休みください



 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は現実世界へ戻ると、急いで抵抗組織『メサイア』のアジトへ急行する。
「メサイアは守ります。それがタカシさんの御遺志のはずですから」
 どうにか襲撃前にアジトへ到着した箒星は、ブラドと組織のリーダーであるリアム、そしてエンリケへ告げる。
「場所を知られてしまった以上、皆さんは素早く退去するべきです。明かりも消してください。私は夜目が利きますので、タカシさんを此処で待ち受けましょう」
 これに『メサイア』の面々はすぐさま退去の準備に取り掛かった。
 表では他の猟兵が戦闘を開始している。
 まもなくこのアジトへ辿り着くだろう。
 そうしている間に『メサイア』の面々は裏口から脱出していく。
 箒星は独り、薄暗い元アジトだった屋内で身を潜め続けた。

 暫くして、外の戦闘音が止んだ。
 その数分後、この部屋のドアが開く音がした。
(風の魔力で空気の帯電を察知です。毛皮やお髭がビリっときましたよ)
 |最終死刑囚《メガテロリスト》であるタカシことサイバーニンジャ『ケラノウス』は、携えている機械槍に電撃を纏わせて攻撃する。
 その電撃を感じ取った箒星は、間違いなくタカシが近付いてきているのを確信していた。
 あと2mで奇襲の射程に入る。
 そして遂に。
「――っ!」
 箒星がタカシの真横から魔法の細剣を突き出して炎魔法と風魔法を刃から放つ。
 局地的な火炎竜巻がタカシを呑み込んで吹き飛ばす。
「グワーッ!?」
 しかしタカシはプログラムめいた動作で反撃を即座に箒星へ繰り出した。
 機械槍から発射された電撃が箒星を狙う。
「おっと、危ないですね」
 だが咄嗟に箒星は細剣を投げ捨て、それを避雷針代わりにして感電を防ぐ。
 あたりに激しい放電現象が起こったものの、箒星は大事に至る事はなかった。
「どうもタカシさん。まずはご挨拶です。貴方の代わりに貴方を止めに来ました。無理矢理にオブリビオンに変えられてしまい、自我もなくなった貴方を、私は不憫に思えて仕方ありません。スーツから解放されたタカシさんが
オブリビオンとして抗うのか、お心を蘇らせて自らの死を願うのか、それは判りません。どちらにせよ、魔力で優しく包み込み、海へ導きましょう」
 箒星は懐の懐中時計をちらり。
(先程、電撃を放ったので強制停止モードまであと120秒ほどですか。会話での時間稼ぎは限界ですね)
 箒星は懐中時計のボタンを強く押し込むと、白い蒸気煙を噴射しながら変形した竪琴を構える。
「さあ、楽しい演奏会にしましょう!」
 演奏するのは激しいアルペジオ奏法が特徴的な情熱的な旋律。
 フラメンコを彷彿とさせる音色は、まるで雷のサイバーニンジャを闘牛に見立てて、箒星自身を闘牛士のように鼓舞するのだ。
 タカシは埋もれた壁から飛び出すと、獣めいて箒星へ猪突猛進する。
「イヤーッ!」
 右手の機械槍から電撃が瞬く。
 しかし、箒星は音色によって周囲の無機物を魔力に変換して操作、水のドームで自身を覆い、炎の魔力から生まれたプラズマ炎でニンジャスーツへ反撃する。
「驚きましたか? 本来、水は電気を非常に通しにくい物質なのです。私がユーベルコードで生み出したのは限りなく不純物を排除した純水です。タカシさんの電撃も受け止めてみせますよ」
 故に分厚い水のドームに電撃が突き刺さっても、箒星まで届くことは無くなってしまう。
 逆にタカシはプラズマ攻撃で徐々にスーツのダメージが蓄積してしまう。
 そして、とうとう130秒が経過し、10秒間の強制停止モード並行してしまう。
 全く動けなくなったタカシへ、箒星は紅蒼翠の奔流でスーツへ大打撃を与えていった。
「貴方の思いは皆に受け継がれています。安心してお休みください」
 撃破することは叶わなかったが、それでもタカシへ箒星の想いは必ず伝わったであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

巨海・蔵人
アドリブ絡み歓迎

■心情
踏み躙られたり、
使い潰されたり…
|ここではよくある日常なのかも、だけど《廃棄された自分みたいに》
助かる、という都合の良い夢はないかもしれないけど、
そうだね、頑張れば、最期に一度位はどうにかなるかも?

■こうふく
とは言え…
|非戦闘員にニンジャの相手とか…《バイトモンスターアバターの出来損ないバーチャルキャラクター》
と、言うわけでUCを展開して距離と時間を稼ぎながら、
蔵人くんセレクションと看板を設置して呼びかけてみよう

おいしい?

だれとたべたい?

だれにあいたい?

どこにかえりたいの?

電脳世界で浮き彫りになった欲望から擬似的に正常だった神経系をエミュレート
最期の挨拶くらい出来るかな?



 薄暗いアジトの室内に、ふらりとやってきた巨躯の男が独り言ちる。
 巨海・蔵人(おおきなおおきなうたうたい・f25425)は半ば困惑気味にこの任務へ参加している。
(いやさ、僕のようなバイトモンスターアバターの出来損ないバーチャルキャラクターの非戦闘員にベルセルクなニンジャの相手とか……)
 絶対に倒せっこないや、と溜息を吐く。
 それでも蔵人が此処までわざわざ足を運んできたのには、彼なりに|最終死刑囚《メガテロリスト》のタカシへ思うところがあったからだ。
(人の命が踏み躙られたり、使い潰されたり……この世界ではよくある事なのかも。例えば、廃棄された自分みたいに)
 蔵人はどこかタカシと自分の境遇を重ねていた。
(助かる、という都合の良い夢はないかもしれないけど、そうだね、頑張れば、最期に一度位はどうにかなるかも?)
 なので、蔵人の役目は戦闘ではなく、後詰の猟兵達が駆け付けるまでの間の足止めだ。
 実際、これから使用するユーベルコードで最終死刑囚を撃破することは不可能に近い。
 むしろいえば成功率もあってないような確率だ、発動すれば奇跡と言っていいほどである。
 そんな圧倒的不利な状況でも、タカシの精神に安寧を齎さんとして蔵人はやってきた。
「奇襲されたら嫌だなぁ……」
 蔵人が死亡フラグを立てた瞬間、左側面から電撃が発射された。
「イヤーッ!」
 タカシのカラテシャウトからのアンブッシュ!
「うわー!」
 蔵人は咄嗟に腰を抜かしたおかげて電撃を回避!
 頭上をプラズマ電流が迸っていった。
「猟兵は……アカダルマファーマシーの敵……排除、する……」
 ゆらり、と幽鬼めいて歩を進めるタカシ。
 その様子はあからさまにニンジャだ。
「これは参ったね。ということでユーベルコード展開させてもらうよ」
 蔵人はこれ以上の接近をゆるわけにはいかないため、対抗手段としてユーベルコード『プレジデント:SYSTEM:フラワーズecho』を発動させた。
「ようこそようこそ電子の海へ、ここは誰もの夢のそこ、誰もが誰もに贈ります、貴方の誰かの手折れた夢を、花降る貴方の、夢のような、国を」
 途端、半径134m圏内が一片とするフラクタル構造が広がり、電脳空間が現実世界に発生する。
 この領域内に収まっている敵味方全て、意識した欲望が具現化される事であらゆることが実現する。そしてまた欲望が強くなる。この世界がキマイラフューチャーのコンコンコンシステムに似通った法則性を持つのだ。
 ただし、欲望の指数が一定割合を超えてしまうと欲望自体がリソース化してしまい、具現化された欲望の存在が弱体化してしまう。
「蔵人くんセレクションのガレージセールを開催だよ。キミの欲しい物は一体何かな? もしも思い出せないなら、擬似的に正常だった神経系をエミュレートしてあげるね」
「グワーッ!」
 タカシの脳内ニューロンが蔵人のユーベルコードによって弄られてゆく。
 ニンジャスーツの適合化の際にタカシは脳内神経にも手を加えられていたのか、これに激しく抵抗する。
「ヤメローッ!」
 蔵人に電撃を放つ!
 しかし蔵人は「電撃を浴びたくない」という欲望を叶えたことで、その身体を電撃が透過して感電すら起きない。
「さあ、遠慮せずにキミの欲望を叶えてあげるよ。ほら、温かいごはんがみえるかな? おいしい? だれとたべたい? だれにあいたい? どこにかえりたいの?」
「グヌーッ! ヤメローッ! コロスッ! オマエ、コロスッ!」
 脳の言語野がショートしてしまったのか、口調が片言になってしまうタカシ。
「シネ! シンデシマエ! ウジムシニタカラレテ、シネッ! ハエニタカラレテ、シネッ!」
「うわぁ酷い罵声だね。うーん、これ以上やると廃人になっちゃうかな?」
 改めて言及するが、蔵人のユーベルコードではタカシは倒すことはできない。
 たとえ脳を破壊したとしても、そこに産み落とされるのは今度こそ人間の理性を失った獣めいたニンジャだ。
 故にここで必要以上にタカシの脳へ負荷をかける事は実際キケンであった。
「最期の挨拶くらい出来るかなって思ったけども。アカダルマファーマシー、なんて酷い事をするんだろうね」
 もうタカシにかつての面影など存在しない。
 目の前の邪魔者を排除することだけを命じられ、その通りに行動する殺戮ニンジャ。ただそれだけだ。
「でも危ないから、ちょっと気絶してもらうね。えいっ」
「アババババーッ」
 タカシの身体が電気ショックを受けたかのように痙攣すると、その場でぐったりとへたり込んでしまう。
「強制停止モードは10秒だったっけ。今のうちに退避しておこうかな」
 ちょうど後詰の猟兵もアジトへ到着したらしく、こちらへ向かってくる足音が聞こえる。
 蔵人は他の猟兵達や抵抗組織の面々が脱出したであろう裏口から、人目を忍んで屋外へ抜け出していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィア・フルミネ
カシム(f12217) と参加

前情報を頼りにするなら、硬直するまでの時間を稼ぐのが最適。私の《雷霆万鈞》でその哀れな生を終わらせる。貫かれて吹き飛ばされても喰らいつく、槍と電気に私は負けない

属性特化の不便さは、身に染みて知っている。その攻撃が通用しない相手を想定して私は鍛えた。耐えた。うん。だから、負けない。勝つまで死なないし、死ねないし、好きなだけ電気を流せばいい。私は最初から、電気を制御しようとしていない
さよなら。どうか安らかに。ダークセイヴァーみたいに死後がないことを祈っているから

お疲れ様……そのスーツ奪ってどうするつもり? 危険は、ない? そういえば盗んだものって普段どうしてるのか、気になったから。


カシム・ディーン
同行
フィア(f37659

…助けられないか
なら…引導を渡してやる…!
「ご主人サマ…やっぱりあれは!」
ああ…メリサの奴が使ってた義体と同じ奴だ

【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の動き
UC攻撃の法則性を分析

得た情報をフィアと共有

【属性攻撃・電撃】
純粋な水の障壁を自分達に展開
フィアには電撃を付与してその能力を強化

【空中戦・念動力・弾幕・スナイパー・属性攻撃】
槍に向けてセメント弾を乱射
石で覆う事で電撃を通させなくしてその動きを妨害

属性特化ってのはすげーがこういう時に不便だよなぁ!

疾駆する神発動
フィアの突撃に合わせて猛攻を仕掛け

強制停止時
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
UC発動
超絶速度で鎌剣と太刀で切り刻みスーツを可能な限り強奪!

問いには
ああ…当然異世界で高く買い取って貰うんですよ
大体は換金してますが…便利そうなもんか使えそうなものは取り合えず保管はしてますね
「フィアちゃんも何か欲しいのがあったら言ってね☆」
このニンジャスーツの一部が使えるかもな…改良してフィアの武装にも使えるかもしれねーな(ぶつぶつ



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は相棒のメルシーと恋人のフィア・フルミネ(|麻痿悲鳴《まいひめ》・f37659)の二人と共に、抵抗組織『メサイア』のアジトへ乗り込んだ。
 するとそこには、理性が崩壊しかかっているサイバーニンジャが呻き声を上げながら徘徊している姿があった。
 あれは既に『手遅れ』だと、その場に駆けつけた3人は一瞬で理解した。
「……ちっ、もはや獣だなありゃ……助けられないか。なら……引導を渡してやる……!」
「ねえご主人サマ……やっぱりあれは!」
 メルシーが黄色いカラーリングのサイバーニンジャスーツを目の当たりにして声を上げた。
 カシムもこれに記憶が呼び起こされた。
「ああ……以前メリサの奴が使ってた義体と同じ奴だ」
 カシムは過去に『ケラノウス』と名乗るオブリビオンと対峙した経験があった。
 あの時は機械義体の名称だったが、今回はニンジャネームとして再びカシムとメルシーに立ちはだかった。
 フィアは2人のやり取りに引っかかりつつも、今は目の前のことに集中する。
「前情報を頼りにするなら、硬直するまでの時間を稼ぐのが最適。だから、私の『雷霆万鈞』で、その哀れな生を終わらせる」
 フィアの殺気が伝わったのか、原始的な危険感知本能による攻撃態勢へケラノウスは移行する。
 突如ケラノウスは明後日の方向へ機械槍を投擲してみせる。室内でまったく無関係の方向へ投げたそれは、電撃を纏ったかと思えば、命が宿ったかのように軌道を急旋回させて猟兵達へ目掛けて突っ込んでくる!
「無駄だよ。たとえ貫かれて吹き飛ばされても、魂人は喰らいついてゆく。自在に飛び回る槍と電気に、私は負けない」
「そうだ、フィアはそう簡単には倒れない……だが、僕はそんな光景を見たくないんでな?」
 カシムは高速詠唱からの|即時魔法《インスタントスペル》を発動させた。
「邪魔させてもらうぞ……!」
 次の瞬間、猟兵達の前に透明で分厚い壁が一瞬で出現すると、電撃纏う機械槍を真正面から受け止めてみせる。
「悪いが、その槍……封じ込めさせてもらう……メルシー!」
「任せてご主人サマ!」
 カシムの強みは常にコンビで戦術を組み立てられる点だ。
 しかも契約によって魔術回路を介して一瞬で互いの思考を読み合えるため、シームレスな戦術の切り替えが出来てしまう。
 今回の場合、純水の魔法防壁で電撃を遮り、槍の刺突の衝撃を吸収しつつ敢えて防壁にめり込ませる。
 こうすることで動き回る槍をがっちりと抑え込むことが出来る。
 ケラノウスは武器を捕縛されたことに今更ながら気付くが、もう時すでに遅し。
 メルシーが地属性魔法によるセメント魔弾を槍とケラノウス本人へ機関砲の如く連続発射しはじめたからだ。
「魔法のセメントはすぐに固まっちゃうぞ☆」
「グ、グワーッ!」
 槍とケラノウスのサイバーニンジャスーツが石膏像めいて身動きを徐々に封じられてしまっている。
「残念だったな|最終死刑囚《メガテロリスト》! こういう時、属性特化攻撃は不便だよなァっ?」
 自称天才魔術盗賊を名乗るカシムだからこそ、属性魔法ごとの対策は知識として当然持っている。
 つまり、どんなに強力な属性攻撃でも、属性の相性を突けば簡単に対処できてしまう。
 ならば今回は光学迷彩魔術など狡猾な手段を用いずとも、真正面からぶつかるだけで完封できてしまうわけだ。
「属性特化の不便さは、身に染みて知っている」
 本来ではフィアはその身に槍を受け止めてからのカウンターを仕掛ける予定だったのだが、カシムの最善手によって杞憂に終わった。
 そのことに感謝しつつ、まもなく130秒が経過しようとしているケラノウスへ歩を進めるフィア。
「カシムの言う通り、セオリーさえ理解できれば対策が出来てしまう。でも、その攻撃が通用しない相手を想定して、私は鍛えた。耐えた。うん。だから、負けない」
 歩みは小走りに変わり、すぐに全速力に変わる。
 その目に鬼を宿したフィアは、自ら自爆するかのようにケラノウスへ飛び掛かった。
「私は勝つまで死なないし、死ねないし、だから好きなだけ電気を流せばいい。だって、私は最初から、電気を制御しようとしていないから」
 携えていた打刀 |魔禍祓霆《まかふってい》『|白雷《びゃくらい》』の切っ先を前に突き出すフィア。
 その先端が石化しかけているケラノウスのサイバーニンジャスーツごと胸元を易々と貫通してみせた。
 だが最後の悪あがきか、ケラノウスは己の発電能力を直にフィアに肉体へ流し込む。
 一瞬で高電圧の熱がフィアの骨肉と脳細胞を焼き切ってみせる。
 だとしても、フィアは魂人。
 ユーベルコード『永劫回帰』による死の否定を行った直後、自身の発電能力を全開放!
「いたい……のこさない」
 ユーベルコード『雷霆万鈞』から放たれた万雷めいた電撃は、突き刺された打刀の刃からニンジャの肉体をものの数瞬で丸焦げにしてしまう。
「フィア! 折角、僕が守ったのに!」
 ユーベルコード『永劫回帰』は使用者の幸せな記憶をトラウマとして改竄させてしまうデメリットを備えている。
 カシムはフィアの記憶を守るためにも戦っているのだが、如何せん本人が無茶をしたがるようだ。
「大丈夫、カシム……今のは、一昨日食べた朝食の好物が美味しかったって記憶が、ちょっと嫌な感じになっただけだから」
 一方、フィアは大したことはないとアピールしたいらしい。
 そうこうしている間にも、超過電圧による強制停止モードに突入したケラノウスは、全身から焦げ臭い煙を上げながらもまだ指先をぴくぴくと動かしている。
「こいつ……まだ生きてやがるのか……?」
「ご主人サマ……!」
「うるせぇメルシー! ……やるぞ!」
 10秒後には瀕死といえども再び攻撃してくるであろうケラノウスへ、カシムとメルシーがトドメを刺しに向かう。
「「ロバーズランペイジッ!!!」」
 カシムとメルシーは互いの魔力と思考をリンクさせ、マッハ45という超音速から繰り出される連続斬撃コンボを繰り出す。
 10秒など今の2人にとっては永遠に近い時間感覚だ。
 実際はたった1秒でケラノウスの全身は、スーツごと細切れになって、元アジトのコンクリ床にぶちまけられていった。
「さよなら。どうか安らかに。ダークセイヴァーみたいに死後がないことを祈っているから」
 フィアは変わり果てたニンジャの呆気ない最期に、黙祷をささげている。
 一瞬で物言わぬ肉塊に成り果てたケラノウス――|最終死刑囚《メガテロリスト》タカシは、こうしてその生涯に幕を閉じた。

 残された血肉塗れのサイバーニンジャスーツの破片は、カシムとメルシーが丁寧に拾い上げて回収してゆく。
 これにフィアが不思議そうに眺めながら問い掛けた。
「お疲れ様。ねえ、前から聞きたかったのだけど……そのスーツの破片を回収してどうするつもり? 危険は、ない? そういえば盗んだものって普段どうしてるのか、気になってたから。興味ある」
「ああ……当然、異世界の闇ルートで高く買い取って貰うんですよ」
 カシムは当然のように言葉を返す。
「異世界からの珍品は、危険だろうがなんだろうが買い手の自己責任なので……大抵はどの世界でも裏社会で取引出来てしまうんで僕は殆ど換金してますが……便利そうなもんか使えそうなものは取り合えず保管はしてますね。このニンジャスーツの一部もそーゆーのに使えるかもな……? フィアの武装の改修材料にも使えるかもしれねーし……」
 ブツブツと何かを呟いた後、カシムはふとメルシーと目が合った。
「そういや、初めはこの馬鹿も売り飛ばす算段だったんですがね? どうしてこうなったんだか……」
「てへぺろ♪ ご主人サマが無知な状態で生体認証と契約を完了させちゃったよ!」
「詐欺師だ! こいつ詐欺師じゃねーか! 知ってたけどな!」
「うぇへへへへへ☆ ご主人サマ~! もう逃がさないゾ☆ レロレロレロレロレロレロレロ♥」
「おっふッ? ヤメローッ! 耳の穴に舌先を突っ込んでくんなー!? ぉっ、んッッ!!!」
 メルシーの強火のスキンシップにカシムは色んな意味でがくがくと全身が震えてしまう。
「あっ、フィアちゃんも何か欲しいのがあったら言ってね☆ それとフィアちゃんも左耳の穴イッとく?」
「……回答、保留させて?」
 野獣の眼差しのメルシーに、フィアはやんわりと断ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『廃棄区画に健康を』

POW   :    マッサージを行う

SPD   :    診察を行う

WIZ   :    カウンセリングを行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして、|抵抗組織《レジスタンス》『メサイア』のアジト襲撃事件は収束に向かい、彼らは新たなアジトを構えて再びアカダルマファーマシーとその傘下企業との闘争を、今一度互いに誓い合った。
 猟兵達の活躍でアジトにいた『メサイア』の構成員達に死傷者はなく、最終死刑囚のタカシが纏っていたニンジャスーツの破片の1ピースは、遺品として代表のリアム・フォスターに手渡されたのだった。

 さて、今回の事件の功労者はなんといっても『ダークウェブ』の悪党達だ。
 彼らの情報がなければ、かなり不利な状況で戦わなければならなかっただろう。
 そして闇社会の掟として、『貸し借りは即座にチャラにすべし』というのが礼儀である。
 早速、猟兵達は再び|電脳世界《サイバースペース》へダイブして件のスシ屋の地下の違法賭博場へ足を踏み入れた。
 是非、悪党達へ情報提供のお礼をしよう。
 そのためには何が必要か?

 ……ずばり、彼らのメディカルチェックだ。

 サイバーザナドゥ世界は骸の海による汚染が進んでいるため、基本的に人々は健康とは程遠い生活を過ごしている。
 合成食品による偏った食生活や体調不良、サイバネ部位の動作不良、メンタル面でのケア、その他諸々。
 ただでさえ違法合成タバコやバイオ合成酒などあからさまに健康的にキケンでオタッシャ案件な嗜好品を好むアングラな悪党達の健康状態が良好なわけがない。
 ここは恩返しもかねて、あらゆる手段で彼らを健康にしてしまおう。
 そうすれば、いつかこの世界が滅びの危機に瀕した時、彼らは猟兵達に力を貸してくれるかもしれない。
 未来の見返りを期待するためにも、猟兵達のバーチャル総回診が今、始まる……!
スイート・シュガーボックス
お世話になった『オザシキ』の人達へのお礼にメディカルチェックしに来たよ、ディオちゃん。
「でもウチら、総回診なんてやったことないっしょ?」
大丈夫さ、ディオちゃん。
彼らの健康には何が必要か。
そうだね、オーガニックなお菓子だねッ!(バァーン)

オザシキの空いたスペースを見つけて俺の箱の中から『キッチンカー』を取り出すよ。
キッチンカーの中のキッチンで俺の箱の中から『極上食材』を取り出して…いくよ、【甘い幸せ彩る調理錬金】ッ!

甘く美味しいオーガニックお菓子を次々作ってお出ししていくよ。
美味しいだけじゃなく状態異常・負傷・呪詛を治療する自信作さ。
取り合わなくてもドンドン作るから安心してね。


【アドリブ歓迎】



 スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)は相棒のディオニュソスと共に、再びサイバースペースのスシ屋にいた。
 そして符号通りに注文して地下の違法賭博場『オザシキ』……ダークウェブの悪党共のサロンに降り立つと、二人は今回の任務を速やかに開始する。

「お世話になった『オザシキ』の人達へのお礼にメディカルチェックしに来たよ、ディオちゃん」
「でもウチら、総回診なんてやったことないっしょ?」
「大丈夫さ、ディオちゃん。彼らの健康には何が必要か。そうだね、オーガニックなお菓子だねッ!」
 ドンッ!と効果音が出てきそうなほどの自信で言い放つスイート。
 早速、スイートは『オザシキ』の空きスペースを発見すると、そこへ自身の身体であるお菓子の缶箱からキッチンカーを召喚してみせた。
「さあ、ディオちゃん! 開店準備だよッ! 俺はお菓子を作るから、ディオちゃんは宣伝よろしくッ!」
「りょっ!」
 こうしてディオニュソスをキッチンカーの宣伝に向かわせている間に、スイートは肝心の調理を開始する。
「調理と錬金術を組み合わせた至高にして究極のクッキングッ!」
 ユーベルコードで一気にお菓子の大量生産を押し進めるのだ。
「いくよ、『|甘い幸せ彩る調理錬金《スイートハッピークッキング》』! 俺の極上素材よ、美味しいお菓子になぁれッ!」
 すると、たった10秒で134品ものお菓子がズラリと完成してみせたではないか!
「スイート君ただいま~、宣伝ばっちりだし! って、うわ、ヤバッ! この数、全部スイート君が作ったん?」
 呼び込みから戻ってきたディオニュソスは、134品のスイーツの数々に目を輝かせる。
「ああ、勿論だよディオちゃん! しかも完全安心オーガニックなお菓子ばかりだッ! さあ、開店だッ!」
 こうしてスイートのオーガニックお菓子店が臨時開業した。
 ディオニュソスの呼び込みの甲斐あって、開店から長蛇の列が並ぶほどの大盛況!
「うおおっ! うめぇぇぇ!」
「これが完全安心オーガニックなお菓子の味なのか!」
「こんなの食べちゃったら、合成ケーキなんて食べられなくなっちゃう……♪」
 悪党共が思わずうっとりしてしまうほどの甘美で贅沢な味わいは、スイートに多額の電子マネーを支払わせるほど注文が殺到してゆく。
「みんな、ちょっと待っててッ! 今お代わりを作るから! 美味しいだけじゃなく状態異常・負傷・呪詛を治療する自信作さッ! 取り合わなくてもドンドン作るから安心してね?」
 スイートはこの後、3時間ほどぶっ通しでお菓子を作り続けた。

 こうして悪党達は極上の甘味を堪能しながら、身体の中から健康になってゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェシカ・クローリー
健診の一環として私の[メカニック]技術で義肢を診ます
負担の掛かる使い方をしている人も多いですね……
私のコネを使った[取引]で官製品並みのものを用意できるので、診断結果からそれぞれに合ったものを提案しましょう
折角ですしダークウェブに合った、高性能チップ搭載の戦闘・電子戦両対応型を提供します
内蔵武器もある程度融通を利かせます

警察官としてはともかく、こちらとしてはメガコーポの悪事と戦える人々と手を結ぶことに否やはありません
義肢に加えて体内の汚染を[浄化]し、ある程度取り除くカプセル剤を合わせて用意しておきましょう
完全に取り除けないとはいえ、汚染物質による体調不良を幾分か楽にしてくれるはずです



 ジェシカ・クローリー(|新米巡査《ルーキーオフィサー》・f36601)は、ダークウェブの悪党共へ問い尋ねた。
「最近、義肢の接続に不具合を感じたことはありませんか?」
 これにかなりの数の悪党達が「動作が遅延する」「パーツを好感したいがローン返済で手が出せない」「そもそも直せる職人を知らない」などと、義肢絡みの悩みを聞くことが出来た。
 これにジェシカは|電脳世界《サイバースペース》とはいえ、フルダイブしている悪党達が現実世界にフィードバックできるように留意しながら、彼らの義肢を診る事にした。
「どうやら、聞く限りでは負担の掛かる使い方をしている人も多いですね……」
 闇ルートから入手した義肢やパーツは、正規品と違って肉体への負荷が多いものが多いと聞く。そして裏社会の者の多くがスラム街や貧民層の出自が多く、学が十分備わっていないためか義肢の土地扱いの知識が乏しいことも装着者への負担を増す要因になっていた。
「私のコネを使った取引で官製品並みのものを用意できるので、診断結果からそれぞれに合ったものを提案しましょう。皆さん、少し義肢を拝見させてください」
 こうしてジェシカは悪党達の義肢を一人ずつ丁寧に回診してゆく。
 内部ギアのグリスが足りていなかったり、人口神経伝達コードの劣化など、すこし覗いただけでも欠陥がわんさか出てくるあたり、ダークウェブの悪党共は自身の義肢に無頓着だったことがハッキリと分かった。
(折角ですしダークウェブに合った、高性能チップ搭載の戦闘・電子戦両対応型を提供しましょうか)
 乗り掛かった舟ということで、ジェシカは義肢の修繕だけではなく改良にも力を注いでゆく。
「内臓武器、ですか? はい、あまり複雑でなければ融通できます」
「あら、助かるわぁ。左手からナイフが飛び出る奴がいいんだけど? 暗殺のお仕事で需要があるのよねぇ?」
 たおやかに微笑む妖艶な半機半人の女性が、義体化した左腕を見せつけてくる。
 警察官のジェシカとしては未来の殺人事件を此処で未然に防ぐ事も出来なくはないのだが、今は猟兵達の損得勘定で動く。
 警察官としてはともかく、こちらとしてはメガコーポの悪事と戦える人々と手を結ぶことに否やはないからだ。
「……はい、追加装備のカスタマイズと、骸の海の汚染を出来る限り除去してみました。完全に取り除けないとはいえ、汚染物質による体調不良を幾分か楽にしてくれるはずです」
「本当だわ! 指先や関節の稼働域が広がって動かしやすい! ありがとうね、お嬢さん!」
 殺し屋のサイボーグ女性はジェシカへ礼を述べると、連絡先をしたためたトランプのジョーカーのカードを手渡した。
「何か困ったことがあったら、遠慮なく連絡してね? お姉さん、手下を引き連れてすぐ駆け付けてあげるわ」
「ありがとうございます。その時が来たら、是非力を貸してください」
 こうしてジェシカは、無事にダークウェブの悪党共と信頼関係を築き上げる事に成功した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

巨海・蔵人
アドリブ絡み歓迎

■心情MMR風味
件のタカシ君や遅れて会いに行ったスジモノさん達、
伝統の山吹色の御菓子よりこの世界だと山吹色じゃないお菓子の方が喜ばれると、
これまた情報のお礼に伝統のオーガニックヨウカンを持ち込んだけど…
ウカツだったね、
この世界の人達にオーガニック砂糖の過剰摂取はキケンなのを忘れていたなんて、
既にオーガニックグラニュー糖が摂取量ギリギリだったから、
圧倒的にイイになってても僕のオーガニック三温糖を拒んだのか

■|鹹点心《広義の菓子》
それなら、体の中から健康になってもらおー
建材はパンダの御菓子、竹!
UCでここに医食同源菜館を建ててオーガニックおもてなし!
パンダ師匠の弟子として負けないよ



 巨海・蔵人(おおきなおおきなうたうたい・f25425)は、ダークウェブの巣窟である地下違法賭博場に到着してから後悔していた。
「件のタカシ君や遅れて会いに行ったスジモノさん達、伝統の山吹色の御菓子よりこの世界だと山吹色じゃないお菓子の方が喜ばれると、これまた情報のお礼に伝統のオーガニックヨウカンを持ち込んだけど……しまった、これはウカツだったね」
 先手を打たれていた、蔵人は思わず顔が曇る。
 他の猟兵が大々的にオーガニックスイーツを報酬として、ダークウェブの悪党共へ提供している真っ最中だったからだ。
「この世界の人達にオーガニック砂糖の過剰摂取はキケンなのを忘れていたなんて、既にオーガニックグラニュー糖が摂取量ギリギリだったから、圧倒的にイイになってても僕のオーガニック三温糖を拒んだのか」
 流石に考えすぎではないか、と傍から聞けば首を傾げてしまう蔵人の独り言。
 しかし、報酬のネタが被ってしまった事で、確かに報酬の印象が薄らいでしまうだろう。
 では、どうするか。
 オーガニック食品がもてはやされるのは間違いない。
 問題はスイーツ以外のジャンルで勝負しなくてはいけない事だ。
 甘味に対抗できる味覚……塩味のある食品を、蔵人は模索した結果、辿り着いた答えがこれだった。
「それなら、体の中から健康になってもらおー。ここからは、みんな楽しい夢の塔。かわいいミニパンダ師匠とアシスタントテレビウムドローンの共演をお楽しみ」
 ユーベルコード「|遥かに望む夢と理想の巨塔(パンダ師父監修)《クッキングマスター・パンダマジック》」を発動させ、134体のお料理用パンダ型とテレビウム型のドローンを召喚する。
 これらはお菓子建材を作り、十分な時間があれば城や街まで築くことが可能である。
「建材はパンダの御菓子、竹! ここに竹で建てた医食同源菜館を建てて、オーガニック点心でおもてなし! パンダ師匠の弟子として負けないよ」
 サイバースペースのアングラの片隅に、突如として建築される竹製の飲食店。
 ダークウェブの悪党共はその珍しさに遠目から様子を窺うばかり。
「ほら、警戒しなくても大丈夫。温かいオーガニック肉まんや餃子、小籠包に春巻き、甘い物を食べた君達はちょうどしょっぱいものが食べたくなった頃合いじゃないかな?」
 香しい肉の匂いが悪党共の鼻腔を刺激すると、ひとり、またひとりと竹製の店舗へ吸い込まれてゆく。
「やべぇぞ……! これ、合成肉じゃないオーガニックポークだ!」
「肉汁、美味ぇえっ! 合成肉にはもう戻れなくなっちまう……!」
「甘いのを食べた後のしょっぱい食べ物……罪悪感が堪らないわ!」
 円卓に運ばれてきた|鹹点心《シェンテンシン》……塩味の点心、つまり餃子 ・シューマイ ・小籠包 ・春巻き ・肉まんといった品々を、悪党共は一心不乱に口に運んで感動してみせた。
 ここサイバーザナドゥ世界では、砂糖以上にオーガニック肉は希少価値の高い代物だ。
 たとえそれがサイバースペース内の仮想の味覚だとしても、もはや悪党共のニューロンには『本物』を知った記憶が深々と記憶されてしまったのだ。
「これが食べられるなら、いくらでも猟兵達に手を貸してやるぜ!」
「次は現実世界でこれが食べたい物だわねぇ?」
 蔵人の目論見はまんまとハマり、有事の際の彼らとの交渉材料がまたひとつ増えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

毒島・雅樂
借りを速攻で返すのにゃ異論はねェが、メディカルチェックと来たか…チト、予想外さね。まァ、どの世界も究極的にゃ身体が資本、ってか。

さて…妾は医者じゃねェから本格的とはいかねェが。
そうさな…マッサージをシながら悩み辛みを訊くとするか。メンタルケアってのもこの世界では重要そうだシな。

マッサージはまァ…普通に普通。施術者に美少女を期待シてた奴は別のに頼みなァ。その代わり、妾、力にゃ自信はアるので結構キくとは思うぜ。
悩み辛みに関シちゃ適度に相槌を打ちながら訊くのがメインさね。吐き出すだけ吐き出してスッキリするのならそれでヨシ。なンか解決策が欲シいなら…そうだな、少しだけ道筋を示すように奥床しい進言を。



 毒島・雅樂(屠龍・f28113)はサイバースペース地下の違法賭博場に舞い戻ると、柱に寄りかかって腕を組んだまま思案に暮れている。
「借りを速攻で返すのにゃ異論はねェが、メディカルチェックと来たか……チト、予想外さね。まァ、どの世界も究極的にゃ身体が資本、ってか」
 たとえサイバースペースとはいえフルダイブLAN直結状態でこの場に滞在している以上、此処と現実世界の心身状態はリンクして然るべき。この場で実際キケンな嗜好品を愛用すれば、現実世界でも同様の刺激を求めてしまうだろうから。
 故に、毒島は簡易的なカウンセリングとマッサージを行うことにした。
「さて……妾は医者じゃねェから本格的とはいかねェが。そうさな……マッサージをシながら悩み辛みを訊くとするか。メンタルケアってのも、この世界では重要そうだシな」
 という事で、賭場の一画を借りての毒島リフレケア店の開業である。
 まずやってきたのは、殺し屋が生業という40代前半のサイボーグ男性だ。
「よろしく頼むよ。だが、もう少し愛想よく出来ないものかね?」
「うるせェ、施術者に美少女を期待シてた奴は別のに頼みなァ。その代わり、妾、力にゃ自信はアるのでマッサージ自体は結構キくとは思うぜ」
「ほう? では、背中と腰を重点的に頼む」
「あいヨ、ンじゃ、上着を脱いでそこにうつ伏せになンな?」
 殺し屋の男性は言われるがまま腹這いに寝転ぶ。
 その上に毒島が跨ると、両掌をごりごりと男の背中を下から上へ捏ねるように押し上げてみせる。
 しこりのような硬い筋肉の感触に、毒島は思わず顔をしかめてしまった。
「あァ~、こいつは酷いな。僧帽筋が亀の甲羅みてェにガチガチだ、こりゃ肩も相当凝ってンじゃないかイ?」
「はは……実はそうなんだ。いやね、殺し屋家業なんて言うものをやってると……」
 マッサージが効いたおかげか、殺し屋の男性は毒島に自身の悩みや愚痴を零し始めた。
 勿論、業務上の秘匿事項こそ男は話さなかったが、それでも殺し屋への過剰な期待度の高さに応えなければならないプレッシャーや責任感、任務成功後の身の危険が付きまとう事への精神的疲労、そしてなにより他人に迷惑を掛けられないが故に伴侶を持つことに躊躇している吐露とした。
「私は殺し屋が天職だったが、本当は向いてなくても別の職種に就いて悠々自適に暮らしたかったんだ……私の気持ち、分かってくれるかい?」
「あァ……ユー、苦労してきタんだな? そりゃ辛かっタよなァ……」
 毒島は基本、男の言葉には同調と相槌しか打たない。自分から意見や感想を述べる事はせず、ひたすら理解者であることを男にアピールし続ける。
(まァ、悩み辛みの類は吐き出すだけ吐き出してスッキリするのが手っ取り早いさね)
 毒島の施術と聞き役が終わると、殺し屋の男性は晴れやかな表情で起き上がる。
「こんなスッキリとした気分はいつ以来だろうか。ありがとう。この恩はいずれ返すよ」
 簡易リフレケア店を後にした男性の口コミのおかげで、その後も毒島は悪党共の施術と聞き役に徹してゆく。
 時折、意見や解決策を求められることもあったが、毒島は敢えて回答そのものを口にすることはなかった。
「……そうだな、妾は少しだけ道筋を示すようにおくゆかしい進言をするだけさね。でなきゃユーの成長に繋がらねェからな?」
 敢えてヒントだけを口添えするだけの毒島の悩み相談スタイルは、悪党共のリスペクトを一身に浴びる事になるわけだが、それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
無事に皆さんをお守りできて
きっと海で喜んで下さっていますね…


ご協力に感謝です
ぜひお礼をさせてください

リクエストにお応えをして演奏します

因みに
カッツェンリートは竪琴が基本形ですけれども
スイッチオンしたりや針を操作すれば
サクセフォンやクラリネット
ウクレレやアコーディオン等にも変形します

曲に合わせて楽器を変形させて
賑やかに参りましょう

楽しく歌ったり
軽やかなリズムに笑顔が弾ければ
ほら、身体も心も
みるみる治療されていきます

これまで随分とご無理をなさっていたようですね

これですっかり健康体ですけれども
また良くないものを採ったり
不規則な生活を続けていては
またまた同じになってしまいます
ご自身を労って下さいね



 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はダークウェブの地下違法賭博場で単独コンサートを開催している真っ最中だ。
 ユーベルコード『シンフォニック・キュア』で聞かせた歌声が、聞く者の共感を得られると対象のあらゆる不調を治療してくれるからだ。
 ちょうど1曲終わると、悪党共へ頭を下げて清聴への感謝を表した。
 賭博場のあちこちから称賛の拍手が鳴り響いた。
(無事に皆さんをお守りできて安心しました。タカシさん……きっと骸の海で喜んで下さっていますね……)
 斃されたタカシの冥福を祈りつつ、箒星は次の曲へ移る準備を行う。
「皆さん、この度はご協力に感謝です。ぜひお礼をさせてください。リクエストにお応えをして演奏しますよ」
 箒星は竪琴のスイッチを押し込む。
 すると竪琴は白い蒸気煙を噴き上げてその形状を再び変形させてゆく。
「因みに、このカッツェンリートは竪琴が基本形ですけれども、スイッチオンしたりや時計の針を操作すればサクセフォンやクラリネット、ウクレレやアコーディオン等にも変形します。曲に合わせて楽器を変形させて、皆さん、賑やかに参りましょう」
 楽器の変形機能を駆使して、悪党共のあらゆるジャンルの楽曲に応じて演奏と歌唱を箒星は披露してゆく。
 いつしか地下賭博場はライブ会場へ早変わりし、悪党共が演奏に合わせて合唱する事態まで盛り上がった。
 演奏前と比べると、明らかに悪党共の血色が良くなっている事に箒星が気付く。
「楽しく歌ったり軽やかなリズムに笑顔が弾ければ、ほら、身体も心もみるみる治療されていきます。皆さん、もうお気付きなのではないですか? 普段よりも身体が軽かったり、精神的に晴れやかになっている事に。これまで随分とご無理をなさっていたようですね。ですが、これですっかり健康体ですけれども、また良くないものを採ったり、不規則な生活を続けていてはまたまた同じになってしまいます。ご自身を労って下さいね」
 箒星の忠言に、悪党共は自らを諫めるように苦笑いを浮かべてしまっていた。
「さあ、まだまだ楽しんで参りましょう♪ 次のリクエストは、ロックンロールですね? 挑戦してみましょう!」
 箒星はカッツェンリートをギターに変形させ、ジャンジャカと豪快に弾き語りをしてみせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・フルミネ
カシム(f12217) と参加

カシムは私も治療する気みたい。私が無理をしているのを見抜かれている。うん。それなら好意に甘えたい

持ってきたコモンカードを破って《鬼雷源》を使う。毒素を血ごと吸って治療しよう。キミたちの蓄積した不摂生や不健康は私が引き受ける。……言っておくけど、私は魂人であって吸血鬼ではない。うん。タバコと酒と麻薬の味だけする。トラウマになりそう

ついでなの? 私は「ついで」、ね。……拗ねてみた
カシム、悪い顔してる。マッサージ……したい? あ。うん。そういう色々、際どいマッサージ、ツボ押しも? 魂人の半透明な足をバーチャル空間で……? 痛いのは慣れてるけど、か、加減して。あっ、あ〜っっ


カシム・ディーン
同行
フィア(f37659

疾駆する神常時発動
尚メルシーはナース姿だ!
「治療しちゃうぞ☆」

まあお礼をするのは吝かじゃねー
僕も大抵それ目的が多いしな?

だがサイバースペースで治療してもよくなるのか?
「大丈夫だよご主人サマ☆怪我が現実でも起こるなら治療の効果も反映される筈だぞ☆」

それなら…やってみるか!ついでにフィアもな!

って拗ねないでーっ!?(わたわた

【情報収集・医術】
悪党達の身体の状態を可能な限り把握
特に健康状態から漢方医学における気血水の状態も分析

【属性攻撃】
気属性を悪党とフィアに付与

ツボ押しやマッサージ
フィアは僕
悪党はメルシーが
筋膜リリース等簡単に自分でも出きるアドバイスを伝え

フィアは主に足つぼメインで
足裏は色々な部分に通じているようですからね?
大丈夫…此処で悪い部分をしっかりとほぐさせて貰いますっ!(ごりごり

皆が集まってるところで
UC発動
フィアと悪党達の蓄積したダメージを治療!

そもそも朝ご飯ってカシムさん特製ベーコンエッグ(ジ◎リ風)をトラウマにしてたまるかっ
「メルシーも手伝ったぞ☆」



「いくぞメルシー! 万能支援機構『疾駆する者』発動! メディカルチェックモードだ!」
「ラジャったよ、ご主人サマ! ミニスカナースが悪党のみんなを癒しちゃうぞ☆」
 件のスシ屋の地下、違法賭博場は今、白衣を着込んだカシムとピンクのミニスカナースに扮したメルシーが悪党共の健康診断を行おうと張り切っていた。
「この間の|最終死刑囚《メガテロリスト》の情報を売ってくれた俺に、おめーらを健康体にしてやんよ! まあ、見返りを期待してお礼をするのは吝かじゃねー。つか僕も大抵それ目的が多いしな?」
 カシムは割とざっくばらんに本音をぶっちゃけて周囲からウケてゆく。
 その隙にカシムは小声でメルシーへ尋ねた。
「だがサイバースペースで治療してもよくなるのか?」
「大丈夫だよ、ご主人サマ☆ こっちで負った怪我が現実に影響するなら、治療の効果も反映される筈だぞ☆」
「そういうもんか……ああ、フィアも治療対象に含まれてますからね? そもそも、フィアの言ってた朝ご飯って、カシムさん特製ベーコンエッグのことじゃねーか! あの自信作をトラウマにしてたまるかっ!」
「メルシーも作るの手伝ったぞ☆」
 フィア・フルミネ(|麻痿悲鳴《まいひめ》・f37659)はカシムの言葉に思わず肩を竦めてしまった。
「……カシムは私も治療する気なんだ。これって、私が無理をしているのを見抜かれている? うん。それなら好意に甘えたい。それとカシム、ひとつ提案がある」
 フィアは悪党のひとりに小声で何かを話すと、悪党は少々怯えながらも首肯した。
「カシム、今から私、ダークウェブの数名の不健康を取り込んで全部引き受ける。真の姿になれば、多分可能だから」
 真の姿となる事で他者から吸血し、噛み付いた相手の状態異常も吸い取ってしまおうというのだ。
 カシムはこれに反対こそしないが、恋人が進んで無茶をしたがるので困り顔だ。
「フィア、またそうやって無茶をして……フィアは悪党のついでに癒すつもりだったのですが……」
「ふぅん? ついでなの? 私は『ついで』、ね。そう……」
 ぷいっとそっぽ向いたフィア。
「ちょ、フィア!? 拗ねないでーっ!!」
 慌てるカシムを無視して、フィアは持ってきたコモンカードを破ってユーベルコードを発動させる。
「いたい……かわく」
 ユーベルコード『鬼雷源』によって真の姿となり、吸血衝動が込み上げる。
 そのまま目の前の悪党の首筋に歯を立てようとする。
 だが寸前で悪党の男がこれを遮った。
「ま、待った! 吸血鬼に血を吸われたら俺も吸血鬼になっちまうのか?」
「……言っておくけど、私は魂人であって吸血鬼ではないし、キミが吸血鬼に鳴る事はないから」
 そのままガブリと悪党の男に首筋に噛みつき、血を啜る。
 途端、フィアの眉間にしわが寄る。
(まずい……この血、仮想空間なのにニコチンと酒と麻薬の味だけする。これだけでトラウマになりそう)
 フィアは舌がビリビリ痺れる感覚に見舞われながら、他数十人の悪党共の体調不良をも取り入れてゆく。
 十分にフィアの体内に毒素が溜まったら、カシムの元へフラフラと歩み寄る。
「……この中で一番の重症者は私。だから、一番最初に治して? そうしてくれたら許してあげる」
「もう、フィアってば……」
「フィアちゃんの愛情表現が不器用で可愛いゾ☆」
「まったくだな……! こうなったら全力でフィアを治療するぞ! アポロンソウル、リンク開始……! ナノマシン起動、システム『アスクレピオス』起動……! 太陽神の子よ、フィアを癒せ!」
 ユーベルコード、|対病根絶機構『医術の神の子』《システム・アスクレピオース》を発動!
 メルシーから治療型ナノマシンが放出されると、フィアの身体を覆い尽くして彼女の心身や魂魄を含めた全ての瑕疵をなかったことにしてみせた。ただし、1日に146秒以上発動し続けると、カシムは死んでしまう。
「他の悪党達の治療もあるからな……5秒で取り除く!」
「おけまる水産☆」
 1秒ごとに全力でフィアを癒すことで、溜め込んだ毒素や不調は無くなり、失った朝食の幸福の記憶も取り戻したのだった。
 他の悪党達は1秒で癒してゆき、限界ギリギリまでカシムはダークウェブの悪党全員を健康体に変えてみせたのだった。

「はぁ、はぁ……サンズ・リバーが見えたぞ今……だが、まだフィアには治療を受けてもらいますからね?」
 ニタリと笑みをフィアへ向けるカシム。
「カシム、悪い顔してる。もしかして、マッサージ……したい?」
「ご明察です。足ツボマッサージを少々……その他、指を使って『内側』も解してゆきますよ」
 意味深なカシムの言葉に、フィアが死蝋めいて白い頬を赤く染めた。
「ん。そういうマッサージも期待してる。けど、私の足のツボを押すの? 魂人の半透明な足をバーチャル空間で……?」
 フィアが解せぬと言いたげに目を細めて仏頂面をすると、カシムはメルシーを呼び寄せて告げた。
「足裏は色々な部分に通じているようですからね? それに大丈夫……メルシーが左足の裏、僕が右の足の裏を同時に押すことで、フィアの悪い部分をしっかりとほぐさせて貰いますっ!」
「ご主人サマとの連係プレイだぞ☆」
 がしっとフィアの左右の足首を二人が掴むと、同じタイミングでゴリゴリとツボを押し込んでゆく。
 その刺激にフィアは思わず背筋がピンと伸びてしまう。
「い、痛いのは慣れてるけど、これは……っ、か、加減して。あっ、あ〜っっ!」
 足裏左右の同時攻撃に、流石のフィアも5分も持たずに白旗を上げざるを得なかった。

 こうして、猟兵達はダークウェブの悪党達と信頼関係を築くことに成功した。
 来るべき大きな戦いの際には、彼らの情報源が役立つ日が来るかもしれない……。

<了>

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月18日


挿絵イラスト