●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net/)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
●ハロウィン前日
「やぁ、希人諸君。よく集まってくれたな」
谷矢市・照樗(ただの小説家。・f41245)は希島の一角、とあるホテルにて希人達を迎え入れた。
「今日呼んだのは他でもない。いやなに、依頼だよ依頼。しかも戦闘もなんにもないお使いさ。まあ、座り給えよ」
辺りに散らばった原稿用紙を踏みつけながら、照樗は希人達にゆらりと近づき、備え付けの椅子に希人達を案内する。照樗の知人ならばそもそも希島在住の照樗がホテルに居る道理が無いことに些か違和感も覚えるだろう。
「明日はハロウィンだろう? 数多くの文学のモチーフとして描かれる、魑魅魍魎が冥界の扉を開けて現世に降り立つ例の収穫祭だ。最も、現代日本においてはただのコスプレイベントとなっているがな」
一般的なハロウィンは仮装やお菓子のイメージが強いものだが、このオカルトヲタクである照樗にはこれが妖怪的な側面が強く見えているらしい。
「ハロウィンの象徴としてよく、くり抜かれた南瓜……まあ、ジャック・オー・ランタンというものをよく目にすると思うんだ。まあ、元々は南瓜ではなくカブが使われていたとされているがな。今回はこのジャック・オー・ランタンの回収を頼みたい。ああ、盗みとかではないぞ。ちょっと私が借りてる貸倉庫から探してほしいんだ」
どうやら、今回の依頼はただの失せ物探しらしい。そもそも自分で探せという言葉が喉に突っかかる。乱暴な希人ならここで怒鳴り声でも上げることだろう。
「わかっている、自分で探せ、って言いたいんだろう? そうしたいのは山々なんだが……あー……こう言うのを聞いたことないか?館詰ってやつだ。ハハハ。デッドラインは5時間後だ」
つまりは、小説ができるまで外界と遮断して原稿を完成させる、小説家の究極体だ。ダメ小説家の行き着く先とも言う。
「明日の授業で使いたくてな。昔に買った『火の消えないジャック・オー・ランタン』とやらを倉庫に押し込めていたのを急に思い出したんだ。頼めるか?」
教師を兼任しているものとして翌日に授業があるような日に籠もっていていいのかとかはツッコんではいけない。
希人に頼む内容ではないような気がするが、まあ偶にはこんな日常的な依頼があっても平和でいいのだろう。
「ジャック・オー・ランタンの伝承は知っているか? 簡潔に言うと現世にも冥府にも拒絶された男、ジャックが現世と冥府の間の暗闇を彷徨い続けるってやつだ。そのジャックが実際に持ってたランタンとか言うので押し売られたんだよ。ま、教材には良いだろう? じゃあ、よろしく頼むよ」
住所が書かれた紙を照樗に手渡され、その場を後にする希人達。
それが、絶望的な脱出ゲームへのチケットとも知らずに。
●貸倉庫
照樗が借りている貸倉庫についたあなた達こと希人達は預かっていた鍵を使い、ホコリ臭い倉庫へと歩みを進めた。
一般的な貸倉庫より広く、パーティができそうなほどのスペースがあった。電灯は必要最低限しかなく、どこもかしこも薄暗い。収納されている呪物たちも合わさって、かなり不気味だ。
薄暗い倉庫内で、光源となるランタンを見つけるのは容易なことだった。照樗の言う通り、そのランタンは碌な手入れをされていない様子で、しかも燃料も見当たらないのに燃え続けていた。
その火は、まるで襲い掛かる獣のような獰猛さと母親のような暖かさを兼ね備えており、ゆらりゆらりと不定形な、ほわほわとした不思議な物質に見えた。
まるでオヤツを目前にした子犬のように、その光景に釘付けとなった。
どれほどの時間が経っただろうか。時間を認識できないほどに没頭していた。
ふと、気づく。あたりを見れば、そこは先の見えぬ暗闇の空間だった。幼い頃から開けていない玩具箱の底のように、暗く、しっとりとした寂しさが溢れる場所だ。手元には先程のジャック・オー・ランタンが一つだけ。
ふと、あなたの脳裏にはジャック・オー・ランタンの伝説がよぎることだろう。
幽玄の狭間へ、ようこそ。希人たち。ハロウィンを存分に楽しもうか。
人参が嫌いな田中になりたい人
注:今回のシナリオは、【南瓜祭】の共通題名で括られるシナリオソースのシリーズです。
コイネガウ暦20X3年10月におけるハロウィンの物語となります。
なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
皆さんこんにちは、南瓜はあんまり好きではない人参が嫌いな田中になりたい人です。この時期は南瓜がいろんな物に混入していて野菜嫌いには微妙にきついですよね。
さてさて…本シナリオでは、くらーい現世と冥府の間を彷徨っていただきます。
簡潔にこのシナリオを説明すると、リアルお化け屋敷みたいなものです。
真っ暗闇を彷徨って、ちょっかいをかけてくる悪魔や幽霊に恐れ慄きながら、あるいはこんなことを引き起こした照樗にキレながら出口を探して下さい。
きっとどこかにあるはずですので。
状況的にはジャック・オー・ランタンの伝承に似ています。ですが、こちらはちゃんと出口を用意しておりますので、探してみてください。遅めの肝試しみたいな感覚でご参加してもらっても大丈夫です。
●POW:とにかく歩き続けてみる
●SPD:走って空間を把握する
●WIZ:ジャック・オー・ランタンの伝承を思い出す
以上、奮ってご参加下さい。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:YoNa
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イリスフィーナ・シェフィールド
お困りとあらば即参上……ではない気がしますわね何故か。
まぁ気のせいでしょう、明日必要というなら早めに持ってきて差し上げた方がよろしいですわね。
……それでどうしてこうなったのでしょう(暗闇のなかにぽつんと立って)
んー……考えても仕方ありませんわね、急いで帰らなくては。
ゴルディオン・オーラを発動してランタン必要ないってほど金ぴかに輝いて。
ちょっかいかけてくる悪魔や幽霊を蹴散らし千切っては投げむしろ出口を聞き出そうとします。
……今さらそこら辺の悪魔とか幽霊程度で怯えたりしませんしわ。
(UCDアースとかダークセイヴァーとかで色々見てるので)
なんだかんだ暴れた末に無事脱出。
「お困りとあらば即参上……ではない気がしますわね何故か」
照樗所有の貸倉庫への道すがら。イリスフィーナ・シェフィールドはそうつぶやきながら歩みを進めていた。
「まぁ……気のせいでしょう、明日必要というなら早めに持ってきて差し上げた方がよろしいですわね」
困っている人を放ってはいけないのがヒーローというものだ。この事件の場合困っているか困っていないかで聞かれれば微妙なところではあるが。
「……それで、どうしてこうなったのでしょう」
街はパンプキンなオレンジとバットな黒、あと謎の紫によってハロウィン一色に染まっているというのに。
よくわからない真っ暗闇のど真ん中にイリスフィーナはポツンと立ち尽くしていた。
暗闇は広く、暗く、何より近年のハロウィンに見られがちな明るくポップでカラフルなイメージと真反対を行くような空間だった。さながらブラックボックスの中のようである。
「んー……考えても仕方ありませんわね、急いで帰らなくては」
そうしてイリスフィーナは暗闇の中を散策しだした。しかし、一寸先は闇という言葉を体現したような空間に、南瓜のランタン一個というのはあまりにも光源が乏しすぎる。精々ないよりはマシと言った程度だ。一寸先は闇が三寸先は闇程度になっただけである。
「この暗さじゃ埒があきませんわね……そうですわ! 『ゴルディオン・オーラ』ですわっ!」
不意に良いことを思いついたとばかりに彼女がそう宣言すると、全身から溢れんばかりの黄金のオーラを放ちだす。
ミラーボール顔負けのキラキラとした輝きは小さな灯火のランタンとは比べ物にならない光量だった。先は見えないほど遠いものの、見える範囲は明かりに包まれていた。
「これでこんな怪しいランタンは必要ないですわね……まぁ、一応手がかりではあるので持っていきましょうか」
手元にあるランタンはこの不可思議な空間へと導きやがった代物だが、それでもこの何もない虚空のような空間の中では唯一の手がかりだ。それをみすみす捨てる馬鹿は居ないだろう。
何故か足音もしない黒い床を一歩ずつ進むイリスフィーナ。明るくなったとはいえその光景は何一つとして変わらず、壁なのか暗闇なのかすらよくわからない。足元にも妙な浮遊感を感じ、不安感を煽る。しかし、イリスフィーナは臆すること無く進む。
不意に髪の毛を引っ張られるような感覚を覚え、振り返る。しかし、後ろに広がるのは虚空だけだった。
不意に蒟蒻のようなぬめっとりした柔らかいものに触れた気がして見るが、やはりそこには何もなかった。
右足をガシりと掴まれたように思えて、右足を振り払う。しかし、それもまた掴まれたと認識した瞬間以降は跡形もないのだ。
(……)
イリスフィーナは無心で進むものの、ほんの少しだけ、苛立ちを覚え始めていた。誰だって移動の邪魔をされるのは苛つくものだが、この場合は一般的には恐怖するほうが先だろう。
だが、度重なる猟兵活動に慣れきったイリスフィーナにとって、そんな『危害は加えてこないけどよくわからないもの』というのは恐怖するに足りず、ちょっとだけの苛つきが勝る。
不気味な男とも女とも付かないような高笑いが何処かからうっすらと聞こえてくる。気がつけば辺りは明るく視界は明瞭であり、どこにも姿も形も無いのに異様な数の謎の気配を感じる。
そんな不気味な物の定石みたいな現象に苛まれつつ進むものの、段々とこちらから手出しできない苛つきが募ってゆく。
「やァ、お嬢サん。私と遊びまセんか?」
不意に後からそう声をかけられ、振り返るとそこには先程まで存在しなかった、悪魔のような石像が立っていた。
おどろおどろしいその顔はヤギに似ており、体は人のような猿のような物。額には妖しく光る六芒星が刻まれていた。
不気味な空間にて、そんな物に声をかけられたイリスフィーナは……
「ルールは単純明かっブベラ!!」
「ふんっ!! やっと姿を表しましたわね!」
思いっきりの右ストレートをかましていた。
手を出せないもどかしさが募っていたイリスフィーナは、それはそれはきれいで華麗な右ストを決めていたのだ。
台詞の途中でストレートを食らった石像は頭部の部分が砕け散り、叫び声を上げていた。
「ちょっと! アンタだいじょルブぁ!!」
「え、いやいやこの状況でグハッ!!」
その惨状を目撃したのかワラワラと集まってくるのはいわゆる魑魅魍魎達。イリスフィーナはそれらを千切っては投げ千切っては投げをくり返した。魔法使いや小さな幽霊など、UCDアースやダークセイヴァー等で邪神や吸血鬼相手に立ち回ってきたイリスフィーナには敵ではないのだ。
やがて敵対してくる者は、居なくなってきた。
「それで、ここは何処なんですの? どうすれば帰れるんですの?」
イリスフィーナは魑魅魍魎の残骸共に声を掛ける。人間とは構造が違うのか、死の概念がないのかよくわからないが、あからさまにボコボコな惨状でもまだ喋れるようだった。
「ヒッ……ここはあの世とこの世の狭間……だと思う……です」
「多分、そのランタン……ジャックの野郎の魂が悪さしてここに来た……んじゃねぇかな、と思います……」
恐る恐る、といった様子で妖怪達は話し出す。
ジャック・オー・ランタンの伝説によると、ジャック・オー・ランタンはジャックという男が南瓜に取り付き、あの世とこの世の間を彷徨っているのだという。
イリスフィーナをここに呼んだランタンは、本当に伝説の代物だったらしい。
「だから、その南瓜……ジャックを壊せば、多分帰れると思います……」
怯えながら話す幽霊は嘘を言えるほど余裕もなさそうだ。
「……信じますわよ?」
イリスフィーナはその言葉を信じ、ランタンを砕いた。
ふと、イリスフィーナがはっと顔を上げると、そこは薄暗い貸し倉庫の中だった。
眼の前のランタンは見るも無惨に壊されているが、それ以外は今までの出来事を証明するものはなかった。
「……無事、帰って来れましたわね……」
あの空間は白昼夢だったのか、現実だったのか。はたまた、このランタンが見せた幻だったのか。
真相は闇に葬られてしまった。
しかし、これだけはわかる。
|ここに来た目的《南瓜のランタン》は壊れてしまっているということだけだ。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
ミドガルズとヨルがメンテナンス中で軽くお仕事と思っただけなのに……何処だろここ、一人だし怖いんだけど(表情は変わらないまま)
おっかなびっくり(見た目は普通)歩いて探索。
クロムキャバリア出身で幽霊とか触れないものは苦手、悪魔は触れられるだけましといったイメージ。
ビビりつつも冷静を装いますが限界を超えたらポロポロ泣きだします。
……そして無理やりユーベル・コードでミドガルズを呼び出して身に纏い何もかも消そうとします。
ミサイルとガトリング砲とハイペリオンランチャーが火を吹いてランタンも含めて何もかもぶっ壊すでしょう。
ビビらせ過ぎなければ要望には応えます、暴れて帰るでもそれ以外で帰ってくるかはお任せで。
「ミドガルズとヨルがメンテナンス中で軽くお仕事と思っただけなのに……何処だろここ、一人だし怖いんだけど……」
真っ暗闇の謎の空間。そんな中にポツリとひとり佇んでいる金髪の少女が一人。彼女の名前はシルヴィ・フォーアンサー。無表情でとても怖がっているようには見えないが、とりあえず、怖がっているらしい。
すっきりと立った彼女は、照樗の依頼でカボチャのランタンを取りに来た希人の一人だった。普通にただのお使いだと思ってやってきたのに、とんだ詐欺である。
「とりあえず、出口を探そう」
シルヴィは不安を抱えつつ、不思議と踏みしめた感覚は無い真っ黒な床をすすむ。真っ黒闇の空間には一つとして明かりは見えず、壁も何も無い。きっとこの調子だと壁まで黒いのか、ただ単に壁まで暗すぎて見えないのかすらわからない。
頼りない炎を燃やすジャック・オー・ランタンを頼りに、眼の前の暗闇を進む。特徴的な三角の目と釣り上がったギザギザの口角から漏れる光は、前方に少しだけ明かりをもたらすばかりであまりランタンとしては有用ではない。それでも、ここでは唯一の光源なのだから困りものだ。
平気な顔をして突き進むシルヴィだが、その内心はとんでもなく焦りと恐怖に支配されていた。先の見えない暗闇は、人間に本能的な恐怖を植え付けるには充分すぎた。
それに、いかにもな場所に放り込まれて、強制肝試しのような状況になっているのだ。無理もない。
「ひゃっ?」
どこからともなく木枯らしのような風が背筋を撫でた。風の動きはそれ以降はなにも感じることは無いのに、不意に一瞬、なにかが背筋の後ろを通り抜けたように空気が動いたのだ。
シルヴィは少し狼狽えるも、足を止めて動かないわけにもいかず、少しして再度歩み出した。
そこから、少しずつシルヴィの身には異変が起こり始めた。
すこし進めば、何者かからの視線を感じ、足を掴まれたかと思えば、何かに抱きつかれたような感覚に襲われた。
いずれも、振り向いた所で姿は見えず、不安感はつのるばかりだった。
「……なんで……?」
シルヴィはクロムキャバリア出身者であり、非科学的な物とは無縁に育ってきた。
つまりは、そういう幽霊的なものに対しての耐性が著しく低いのである。
悪魔のような実体がある物ならまだしも、姿形も見えない今回のケースはシルヴィの苦手分野をドンピシャに突いていた。
彼女の内心は焦りと不安と恐怖でいっぱいであり、まるで崖際のように何かに追い詰められたような、そんなに気分だった。
「クスクス…………クスクス…………」
何処からともなく嘲笑うような笑い声が聞こえる。
「ワォーーン……」
何処からともなく狼にしては野太い、男のような遠吠えが聞こえる。
何かが足に絡みついたような感覚を覚え、なにか焦げ臭い、髪の毛が燃えたような香りがする。
遠くのほうで、淡く光る橙色の何かが見えた気がした。
この不気味な空間は、五感全てにガンガンと不気味を語りかけてくるのだ。たとえVRホラーゲームだとしても、精々視覚と聴覚しか支配できない恐怖が、現実で起こることにより五感のすべてを支配したのだ。
「ぅ……ううっ………」
平成を装って強がっていたシルヴィだったが、とうとう許容範囲を超えてしまったらしい。ポロポロと大きな瞳を溶かしながら、大きな雫を零しだした。
なぜ自分がこんな目に遭わなければいけないのか。なぜその様に自分に意地悪をしてくるのか。なぜ姿を見せてくれないのか。なぜ帰れないのか。
恐怖と理不尽の感情が脳を埋め尽くし、シルヴィは泣き出してしまったのだ。
しかし、泣き出すこと自体は幽霊達も見飽きた存在だったらしい。
泣き出してしまったとはいえ、幽霊達の対応は変わらず、悪戯を繰り返していた。
それが、考えうる限りの最大の悪手であるとは知らず。
「………ミドガルズ」
ポツリ、不意に出てきてしまった独り言のように、シルヴィはつぶやいた。
そして、それに呼応するように、シルヴィはいきなりこの暗闇には似つかないキャバリアに身をまとった姿へと変貌を遂げる。
黒ボディに赤の差し色がよく映える人形の大きなキャバリア。シルヴィのメンテナンス中の愛機、ミドガルズだ。彼女のユーベルコードであるアーマード・ミドガルズによりメンテナンス場から召喚されてきたのである。
「もう……全部、壊せばいいよね」
キュィィ……というチャージ音をコングとして。
そう呟いた彼女は、無差別に暗闇に攻撃を仕掛け始めた。
空中をミサイルが舞い、ガトリング砲は人には不可避に近い弾幕を貼る。
「きゃぁぁぁ!」
「なになになになに?!」
「反則すぎない?!」
いきなりホラー展開に出てきた近代兵器に、幽霊や妖魔達もびっくりし、さけびごえを上げていた。アメリカ映画じゃないんだから、初めて見る兵器に戸惑いと恐怖は隠せないものである。
そんな声はお構いなしに、シルヴィはミドガルズに積まれた兵器を総動員して手当たり次第に攻撃を続ける。前後不覚になるほどに激しい攻撃に小さな幽霊や悪魔は成すすべもなくやられていった。物理攻撃だからといってダメージがないわけではないのだ。
激しさをどんどんと増していくシルヴィの攻撃。ハイペリオンランチャーの電粒子ビームの光の中に、カボチャのランタンは巻き込まれていったのだった……。
「……はっ……あれ?倉庫……?」
ふとシルヴィが気がつくと、そこは暗闇に迷い込む前の照樗の貸倉庫だった。
あたりは特に変わりはなく、薄暗い倉庫内にはちょっとしたホコリが舞っていた。先程まで騎乗していたはずのミドガルズもいつの間にか居なくなっており、まるで、今までのことはなかったような感覚だ。
あの空間は白昼夢だったのか。否か。
シルヴィの眼の前にあるジャック・オー・ランタンがあったはずの空間には塵一つ残っていない事を答えとしておこう。
大成功
🔵🔵🔵