●視えた『結末』
確かに、あったのだ。笑顔も笑い声も、にぎやかな喧騒も。
それがーー突然、消えた。
代わりに聞こえたのは、崩れていく音、壊されていく音、悲鳴、悲鳴、ーー絶叫。
何が、起こったんだ?
目の前で、つい先程まで手を繋いでいたはずの幼馴染が『転がっている』。
赤い水たまりに沈んだまま、もう二度と起き上がることはない。
声が出ない。ただ心の中で、『どうして、どうして、どうして』と反芻する。そうやっても何も起こらないのは、わかっている。わかっているのだけど、動かない。
何故なら…あいつを『転がした』あの狼がこっちを見て、いる、から。
『ーーまだ、足りねェな。もっと、もっとダ…!!』
一段と赤く濡れた手を見つめながら、狼は嗤い、咆哮する。
これから狩る存在にその存在を知らしめるために。
●初めまして、よろしくね!
新たな依頼を聞きつけてグリモアベースに集まった猟兵たち。
彼らたちに気づいた一人の女性が、セミロングの金の髪を揺らしながら歓迎した。
「猟兵の皆さん、初めまして!私の名前は、エスティア・ハルヴェン(太陽の魔法探求者・f39001)。
この世界で星霊術を教える先生であり、紋章術の研究者であり…エンドブレイカーでもあり…、
そしてこの度!グリモア猟兵として、皆さんのご案内をさせていただくことになりました!どうぞ、よろしくねっ!」
にっこりと笑顔を見せて猟兵たちに挨拶をしたところで、早速エスティアは今回の依頼概要の説明を始める。
「今回皆さんに行ってもらうのは、ランスブルグの第三階層ーー石壁の街って呼ばれている階層にあるとある街です。その街は農業が特に盛んで、毎年この時期になると街総出で収穫祭を行うんだけど…その最中…しかもお祭りが一番盛り上がっている時にバルバたちに襲われ…街のほとんどが壊滅してしまうエンディングを感知しました」
ーー『バルバ』。
それは、人間と獣を融合したような生物。現代人には『亜人』と伝えた方がわかりやすいかもしれない。その中でも今回は狼のような姿をしたバルバであり、群れを連れて襲ってくるという。
「バルバたちは街の人々が準備していた、収穫祭のための食料を強奪したり、準備をしていた人を襲ったり…最悪の場合は女性の方や小さな子供を攫って酷い目に遭わせたりします。
そういったことはエンドブレイカーとしても猟兵としても見逃せないです。なので、皆さんには今から街の方に行ってもらって、バルバ襲撃への防衛と撃退をお願いします!」
猟兵たちが街に向かう頃には、夜はすでに迎えており、バルバたちが襲撃するかしないかのタイミング。どうしてもこのタイミングでないと送ることができなかったんです。とエスティアは申し訳なさそうに告げる。
「それでも、皆さんならきっとやれると思います!どうかよろしくお願いします。
無事にバルバたちを倒せたら…お祭りの仕切り直しができれば皆さんも参加できると思います。わ、私も行きたかったけど…先生としてのお仕事がこのあと控えてて…」
ガックリと肩を落とす新人グリモア猟兵。よほど楽しみにしていたのだろう。
「と、とにかく!皆さんの無事の帰還を願ってます…!頑張ってくださいね!」
そう言って、エスティアは元気よく陣を描く。魔法を使う職業についているから、その手際は実に軽やか。あっという間に猟兵たちを導くためのゲートが完成する。満足げな顔を浮かべたエスティアはそのゲートへ猟兵たちを導くのだった。
高岡こころ
初めまして。お久しぶりです。マスターの高岡こころと申します。
【収穫祭を切り裂く爪】のオープニングをご覧いただきありがとうございます。
理不尽な終焉を終焉させるエンドブレイカー!の世界から物語をお送りさせていただきます。
●本シナリオの構成
本シナリオは2章構成となっています。
第1章:ボス戦(バルバたちを撃退せよ)
第2章:日常(平和になった収穫祭に参加しよう)
●各章のヒント
本シナリオは2章構成シナリオであり、初心者さん向けのシナリオになります。
第1章では、街の収穫祭の盛り上がっている最中にバルバたちに襲われるか襲われないかの瀬戸際になりますので、すぐに戦闘になります。逃げ遅れた人もいるかもしれませんので避難誘導も忘れずに。
そして見事バルバたちを打ち倒せたのなら、収穫祭を仕切り直し(解決直後かもしれないし、その翌日かもしれません)、その収穫祭に参加することが可能です。
もちろん第2章のみの参加も歓迎です。ちょっとしたお出かけや思い出作り、はたまたデートにいかがですか?街の人々はきっと猟兵たちをたくさんもてなしてくれますよ!
● マスターよりお願い
同行者・連携者がいる場合は、『必ず』お相手様のお名前とキャラクターIDを添えてお書きください。両方の記名がない場合、一方のみでの表明の場合、プレイングをお返ししてしまう場合がございます。
制限のある文字数を消費させてしまいますが、リプレイ製作時のミス防止のため、予めご了承くださいませ。
それでは、みなさまのプレイングを心よりお待ちしております!
第1章 ボス戦
『『黒きバルバ』ザラーム』
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POW : ジ・エンド
【巨躯を持つ"燃えさかる黒炎の獣"】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : バッド・エンド
【エリクシルが齎す赤き絶望のエネルギー】に覆われた真の姿に変身し、筋肉・骨・神経・臓器のどれかを激しく損傷する度に追加攻撃ができる。
WIZ : デッド・エンド
【弱き者どもの血が滴る"黒き獣爪"】【巨大化した獣腕での"握り潰し"】【敵をも服従させる"王者の咆哮"】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
イラスト:あま井
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヲルガ・ヨハ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●咆哮は襲撃のはじまりを告げる
うぉぉおおーんーー…
猟兵たちがゲートをくぐり現場についたと同時に、獣の咆哮が聞こえる。
「なんだ?なんだ?」と人々がざわめくとほぼ同時に、バルバたちの爪が収穫祭を彩っていた灯を伝う紐をひっかけた。その瞬間、バリバリと嫌な音を立てながら崩れていく。
その様子を、バルバたちはニヤリと下卑た笑みをうかべ、そしてその視線は街の人々に向けられる。月明かりに照らされた鋭い爪が怪しく輝いた。まるでこれからすべて壊すーーそう宣言してるかのような。
「ーーば……バルバだあああ!!!」
ある男の一声により、収穫祭で盛り上がっていたはずの街が一変する。歓声が悲鳴に。喜びが恐怖に。
「リア!急げ!あと、あと少しだから!」
「…はぁ、はあ…!!」
その中にはエスティアの視たエンディングで出てきたふたりもいた。幼馴染の少年少女はしっかり手を握り合って逃げている。だが、少女のほうは祭の衣装らしく愛らしいワンピース姿で、逃げるにも一苦労な様子だ。
そんなふたりの背後から、大きな影が近づく。バルバの中でも一段と背の高い狼のバルバだ。その爪はふたりを刈り取ろうとキラリと輝きをはなっていた。
風車・拳正
アドリブ歓迎
おっと、悪いが選手交代だ(二人とバルバの間に割って入り、爪を腕で受け止めながら、背後の二人に声を掛ける)
カップル、俺が合図を出すから、その間に何処か建物とかに隠れてろ
後、余裕があったら他の人達にもそう伝えてくれ(受け止めてた腕を振り払い、バルバを退かす。そして、拳を構えて)
じゃ、行くぜ?
1
2
ーー3!今だ走れ!(それと同時にショックを第二形態へと変化させ、衝撃波を放つ!)
ーー吹っ飛べ、ショック・ザ・インパクトゥ!
衝撃波を撃ったらバルバへと接近して、攻撃を仕掛ける
そして攻撃をしながら周囲を見渡して、他のバルバを確認
そしてタイミングを見計らってUCでバルバを他のバルバへと向けて吹き飛ばす
●爪を弾くは正義の拳
「頑張れ、リラ…!もう少しだからな…!」
「はぁ…っ、はぁっ…きゃ!」
ここまで逃げ続け疲労の蓄積した足がもつれ、つまずく。手を繋いだままだった少年も一緒にそのまま躓いた。リラ、リラ!と幼馴染の名を呼びながら必死に引っ張り上げる少年。だが、ふらりふらりと立ち上がる少女の顔は大分憔悴し切っている。
『ーーはァ…そんなんで逃げられると、思ったのかァ?』
濁った声色と共に、バルバの一人が近づく。バルバと目線と合った少女は途端に青ざめる。
「あぁ、いや…いやぁ…!!」
少女の大きな瞳からボロボロと涙が溢れ、少年の腕に縋る。少年もまたキッとバルバに睨みを聞かせるが、彼の体もまたブルブルと震えていた。
『いいねェ…そういう顔が、たまんねぇんだ…
次は、お前の顔を、絶望に満たしてやる、よ!!』
下卑た笑みを浮かべたバルバが、一直線に近づき、大きく爪を振りかぶる。
バルバの爪が少女を穿つことは、なかった。
代わりに、バルバと二人の間にいたのは…見知らぬ男。その男はーーバルバの鋭い爪を、その身の腕のみによって受け止めている。
『……何?』
「おっと…、悪いが選手交代だ」
風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は爪の食い込まらせながらも、ただ静かに返す。
「…おい、カップル」
「か、かっ、ぷ…!?」
「ち、違います!私たちは、ただの幼馴染…」
「あー…違うならいいけどよ。とにかく」
突然流星のように現れた男にとんでもない勘違いされた二人。二人とも息を荒げながら反論しようとするが、拳正にスルーされてしまう。その表情のまま、彼は言葉を続ける。
「…俺が合図を出す。合図を出したら…その間に、どこか建物とかに隠れてろ。
後、余裕があったら他の人たちにもそう伝えてくれ」
えっ…と少女が驚く間も無く、拳正の腕がバルバの爪を振り払う。その様子を見届けた少年は何かを察したらしく、もう一度少女の手を握り、体勢を整え直す。
「誰かは知らないけど…わかった。でもその代わりに…あのバルバを、やっつけてくれ!」
「…言われなくても!」
拳正の口元にわずかに笑みが浮かべたような気がしたが、すぐに真剣なそれに切り替わる。
深呼吸、一つ、二つ、数える。
「じゃ、行くぜ?
1…
…2…
……
……3! 今だ、走れ!」
合図と共に、少年少女がわずかに残された体力を振り絞り再び走り出す。
そして、それとほぼ同時に放たれる強い衝撃が一帯を駆け抜ける!
「吹っ飛べ!ーーショック・ザ・インパクトゥ!!」
高らかな宣言と共に、拳正によって放たれた衝撃は、超近距離にいたバルバの腹部が大きく凹ませる。胃からせりあがらせる感覚。うめき声すらも上げさせないほどの衝撃。
『…!? が、ぁ…っ!?』
そうしてようやく声を出せた頃には、拳正の連続攻撃を回避防御する隙はなく。
大きく凹んだままの腹部にさらに拳を入れていく。あの下卑た笑みを浮かべていた狼はどこへ行ったのだろう。みるみるうちにその姿は弱っていく。
『お、前は、一体……何モンなんだ…』
「別に名乗るつもりはない。…お前の名前を覚えるつもりも、ないしな」
静かに返しながらも攻撃の手は止めない。そのまま拳正は周囲を見渡す。その少し先には別のバルバが、若い女性たちを追いかけ続けているのを確認した。
「…お前には、もう少しだけやってもらわないとな」
『…何を、言って…?』
「……お前、もう一回吹っ飛べ…!」
バルバがもう一度言葉を返せることはなかった。またしても、しかも今度はまともに衝撃波を受けたバルバの体は重力の力が働くことがないまま、空を舞い……そ女性たちを狙っていたバルバの元へ飛んでいく。そしてそのバルバたちの頭同士がぶつかった。脳震盪を起こしたバルバたちはそのまま気を失ってしまった。
「……とりあえず、二匹は倒せたな」
満足気な表情を浮かべた拳正。その鋭い視線は次なるバルバに向けられていた。
大成功
🔵🔵🔵
カルティリア・フュルフュールス
(アドリブ等何でも歓迎です)
要は一人でも多くの人間を生かせば良いって事ね
腕が鳴る。護るのはあまり得意じゃないけど
稲妻の鎖となって襲い掛かり、バルバを攻撃しつつ撹乱。最終的には巻き付いて感電死させる。
君に恨みは無いけど、消えて。私はお腹が空いているの
人間に近い所に居るバルバは優先的に襲撃。逃げ遅れた人間には声をかけるだけにして自身は戦闘に集中。
(安全な方を指差して)恐れてる暇があったらさっさと逃げて。勝手に死なれると困るから。
稲妻となって移動する時は出来るだけ強く空気を震わして大きな音を立てる。どこが戦場で危険な所だと分かるように
久しぶりの人間との契約。この好機、絶対に逃さない
●駆けろ、稲妻!
バルバたちの襲撃に逃げ惑う人々。そして彼らの血を欲するバルバ。
悲鳴ばかりが響くこの場所を、静かに見つめる者がいる。新緑色の髪を夜風に靡かせるなか、神秘的な雰囲気を醸し出す可憐な少女ーーカルティリア・フュルフュールス(飢渇きかつの雷魔・f40996)が静かに笑みを浮かべる。
「要は、一人でも多くの人間を生かせば良いって事ね。腕が鳴る…護るのは、あまり得意じゃないけど」
ひどく落ち着いた雰囲気のまま、その身には大きい翼を大きく広げ、夜の街の空を舞う。
そして彼女の瞳に映ったのは、まさに逃げ遅れた家族を襲おうとするバルバたちが映る。
「さてと…君たちには恨みはないけど、消えて。私は、お腹が空いているの」
カルティリアの言葉が終わると同時に、彼女の体が変化する。バリバリと巨大な音を立てながら雷を纏いし鎖の姿になると、すぐに現場へ文字通り落ちていく。
「神さえも、私を捕えることは出来ないわ」
鎖のまま少女は落ちていき…バルバと家族の間に降りていく。
突然の襲来に、バルバは『何が起こった…!?』と戸惑いを見せた。
「わ…かみなりさまがおちてきた!!」
父親の背にしがみついていた幼い子供がぱあっと明るい笑顔を浮かべる。だが、カルティリアは気にしない。あくまでも興味があるのはこの後の人間たちとの契約なのだから。
無表情のまま、カルティリアは家族たちに向けて安全な場所へ指差す。
「…あなた達、恐れる暇があったらさっさと逃げて。勝手に死なれると困るから」
「あ、ああ…ありがとう!君も、気をつけて!」
「……別に、大丈夫よこのくらい」
泣きそうな顔を浮かべた父親らしき男が一つ頭を下げた後、家族達を励まし、再び逃げ出す。母親に抱かれた幼子が心配そうな顔のまま小さく手を振りながら、その姿はあっという間に見えなくなった。
『…よ、よくモ…せっかくの、獲物を…っ!』
わなわなと怒りに震えるバルバ。その爪もカタカタと音を鳴らして震えている。
「さぁ…さっさと倒させてもらうわ。久しぶりの人間との契約なのよ…絶対に逃すわけにはいかないわ」
再び、鎖の姿に変身し、瞬間的に翔ける。鋭い雷撃と共に。
空気が揺れる、動く。鎖と稲妻が擦れ合い、共鳴し、巨大な音を生み出す。まるで、今ここで戦いの最中であると知らせるように。敵から見れば、なんて愚かな策だと嘲笑うかもしれないが、街の人々にとっては危険な場所を避ける手掛かりとなりえる。何より、ここまでするくらいにこの戦いに勝機を見ているという彼女の自信の表れでもある。
その結果どうなったかは、言わずもがもだろう。
成功
🔵🔵🔴
キラティア・アルティガル
今更バルバ如きにこの地は渡さぬ
それにの
同郷の輩が視たエンディングじゃ
我もエンドブレイカー
必ずや悪しき終焉を破壊してくれようぞ
「そこな汚らわしき獣ども!退くが良い!」
まず襲われておる者らの間に割り入ろう
戦いつつ背に庇った者らに
「この場は我が引き受けた!必ず殲滅するゆえ
おぬしらは逃げよ!隠れておれ!」
逃げ落ちるまでは通常攻撃でいなすが
背を守る要が無くなればUC創世神の棘を
数が多い故時間は掛かろうが…何、片端から
大鎌で全てを砕かば良いだけの事!
攻撃は大鎌で受け止め躱しつつ
全霊持ちて棘を伸ばしバルバ共を石に
「戦闘で派手に街が壊れても祭どころでなかろうしの」
近場の敵を全て石にし砕いたら別所へも参じようぞ
●我もまた、エンドブレイカーなり!
「今更、バルバ如きにこの地は渡さぬ。それにの…」
銀の髪を揺らし、エメラルドの煌めきを放つ瞳をたどり着いた現場を見つめながら、キラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)はすぐに巨大な鎌を振り下ろす。
「同郷の輩が視たエンディングじゃ。我もエンドブレイカー…必ずや、悪しき終焉を破壊してくれようぞ」
「た、助けて…!!どうか、ご慈悲を…っ」
若い女性が涙を流しながら懇願している。傍には年老いた老婆が足を引きづり、その隣では老婆の足の代わりであったのだろう鈴のついた杖が棒と同等に転がっている。
「わしのことはいい…!孫だけは、可愛い孫だけは見逃してくれ…!」
「おばあちゃん…!!」
足の動かせないまま、老婆が睨むが、バルバ達はゲヘヘと下品な笑みを浮かべるばかり。
『もう鬼ごっこは終わりかぁ?』
『へへっ…ババアを殺してお前の絶望顔を拝ムのもいいが…お前から先にやれば、ババアの絶叫も聞けるか…どっちの方がいいだろうなァ…』
その言葉に二人の顔が引き攣るが、バルバにそれは関係ない。
バルバのうちのひとりの、突然巨大化した爪が二人のどちらかを刈り取ろうとしたが。
「そこな汚らわしき獣ども!退くが良い!」
ガキン!と金属同士がぶつかり合う音が響く。それは、バルバの爪がキラティアの持つ鎌に受け止められたから。絹のような銀の髪を揺らしながら、彼女はバルバたちの前に立つ。
『…なんだ、お前は…っ!』
明らかに妨害されたのを、獣たちはその黒い顔を真っ赤に激昂する。だが、キラティアは気にせずにバッと後ろに振り返る。
「おぬしら!無事か?」
「は…はいっ!」
「ああ…妖精様がいらしたのか…?」
「…あいにく我は妖精の類ではない。だが、この場を救うために我は来た」
そうして、いつの間にかその手には老婆の杖があり、それを女性の方へ投げて渡す。女性は慌てながらもしっかり受け取り、老婆をなんとか立て直してあげようとした。
「この場は我が引き受けた!必ず殲滅するゆえ、おぬしらは逃げよ!隠れておれ!」
「わかりました… 行こう、おばあちゃん」
「ああ…本当に助かりました…この恩は、必ず…!」
キラティアの言葉に鼓舞された二人は、勇気を振り絞り、逃げていく。
『おい待て!!邪魔をするナ…!』
急いで追いかけようとするものの、キラティアの鎌がそれを阻む。それが余計に彼らを苛つかせる。
彼らを牽制しつつも、後ろを振り返ると二人の影は小さく(最後には女性が老婆を抱えて行ったようだ)、やがて建物の壁の方へ消えていった。もう力を制御する理由はない。
「…頃合いか」
『何?』
ふと漏れた言葉に反応する間もなく、バルバの最後の一撃も大鎌で受け流し、その衝撃を持って間合いをとる。
そして、次の瞬間。彼女の背後から、鋭い棘が繰り出される。かつてマスカレイドへと至らせていた棘が、今度はバルバたちに向かって放たれる。
一番近い距離にいたバルバに棘が刺さった瞬間、手足の先端から石化が始まる。それはあっという間に進行し、何か言うかいわないかの間に一体の石像に成り変わった。その過程を見た他のバルバ達の笑い声が消えた。そして他にも刺されたバルバたちも悲鳴あるいは断末魔を上げながら石像へと変わっていく。
『て、テメェ!!』
かろうじて回避していたバルバが、キラティアの命を刈り取ろうと襲いかかるが、ひらりとかわし、大鎌で対処しつつ、再び棘を放つ。対象の数は多いが、血気盛んなバルバだ。時間さえかければこの近辺にいるバルバ達については大丈夫だろう。それに。
「…戦闘で、派手に街が壊れても…祭どころでなかろうしの」
星霊術や紋章術の発達があるものの、損壊が激しかれば激しいほど、復旧にかかる日数は増えていく。全てが解決した後はできるだけ復旧の時間は短い方がいいに越したことはない。
彼女の視界に入ったバルバ達が石像になったのを見届けて、キラティアは次の戦闘の場へと移動してく。
大成功
🔵🔵🔵
黒風・白雨
己が欲を満たすためにただ力を振るい悦に浸る、か
まったく、昔の誰かの姿を見せられているようで気分が悪くなるのう
まずは少し大人しくさせてやるとしよう
雷雲を招来し、落雷をもって獣人達を打ち据える
動きが止まったなら、手に籠めた〈力〉を振るい、地面にそのまま圧し潰そう
この街では先程まで祭りの準備が行われていたと聞く
おぬしらがこの街の者達よりも旨い飯を作れるのならば見逃してやっても良いが、到底はそれは望めまい
おぬしらを綺麗に片付けた後、ゆっくり祭りを楽しむこととしよう
〈竜神体〉へと変化
巨大な竜神としての本性を現し、獣人達を前菜として食らい尽くそう
逃げる輩がいたら〈竜神武者〉で捕えさせようぞ
【アドリブ歓迎】
●竜神成敗
「己が欲を満たすためにただ力を振るい悦に浸る、か。
まったく、昔の誰かの姿を見せられているようで気分が悪くなるのう」
それは一体誰のことを指しているのかは、本人にしかわからない。
さて、こちらでも戦闘が始まりそうな雰囲気だ。黒風・白雨(竜神・f31313)の後ろには街の人々がいたが、すでに避難した後である。
『なんだ、テメェ。せっかくのエモノを横取りしやがって!!』
「…獲物?」
バルバ達の怒りを受けるも、その顔に変化はなく、むしろふふっと笑みを浮かべる白雨。
「それは…こちらの台詞。今からお前たちは…わしの獲物じゃ」
そう言って優雅に手を出して、空に向かって手を伸ばす。すると、月の姿が隠れるほどの黒雲が空を覆う。
そして、刹那。彼女が手を振り下ろすと同時に、白い稲妻がバルバ達の脳天目掛けて落ちる。バルバは強靭な肉体を持っているとはいえど、牽制にはなる。
『…クソォ!!』
雷をまともに受けたバルバが一人、巨大な爪を振り翳し白雨への反撃を試みる。が、雷の影響か足が僅かにふらつく。その様子を彼女は見逃さなかった。
「そんな柔な爪では、わしを貫けんぞ?」
白雨の白い手が、バルバの爪を捉えーーバキン!と音が響く。それは、バルバのあの鋭い爪が割れた音だった。まるで爪切りでパチンと切った時のような。驚く顔を浮かべるまもなく、バルバはそのまま地面に倒され……文字通り、押しつぶされていく。その様子を見た他のバルバ達の顔が一気に引き攣る。
「…ふぅ」とため息をひとつついて白雨が周辺を見やると、他のバルバがすでに臨戦体制になっている。
「…この街では先程まで祭りの準備が行われていたと聞く。
おぬしらがこの街の者達よりも旨い飯を作れるのならば見逃してやっても良いが、到底はそれは望めまい。
おぬしらを綺麗に片付けた後、ゆっくり祭りを楽しむこととしよう」
そうして彼女はふわりと浮かび、美しい女性の姿が竜へーー竜神へと変貌する。
突然の変貌に、バルバは唖然。
『お、お前は…なんなんだァ!?』
あまりにも突拍子もない現実に、バルバ達の顔に焦りが見え始める。だが、竜神はそんなことも気にしない。だって今から彼女は“前菜”を味わうのだから。
「ママ…!おっきなドラゴンさんがいる!」
「ええ、そんなまさか……え、ええっ!?本当にいるわ!」
「あれって…アマツカグラの…?いや、まさか…??」
建物の陰に隠れながらも、その美しい姿を目に焼き付けようとする街の人々。
突然現れた竜神は酒のお供をつまむかのように、次々と自分達を襲っていたバルバたちを腹の中に収めていく。
ーー街の人々が竜神の正体を知るのは…もう少しだけ後のことである。
大成功
🔵🔵🔵
イングリット・イングラム
此度の事件は、この世界の凶暴なバルバによるもの
オブリビオンは関わっていないようですが、街一つが壊滅に至るとあっては見過ごすことはできません
猟兵や使徒ではなく、人としてお相手しましょう
まずは精霊達に命じ、敵に襲われている人達を《結界》で《防護》します
既に負傷している人達がいるのでしたら、《治癒》でそれらを癒しましょう
剣を携え、法紋により強化された身体能力をもって敵陣に接近
《死》のルーンの力を籠めた剣で斬り、貫いていきます
自分達が快楽に浸るために暴力を振るい、街を壊滅させようとしていたのです
当然、自分達が壊滅することくらいは想定していたのでしょう?
それが戦い――死を扱うということです
●精霊たちと共に。
「皆さん、ご無事でしたか?」
今にも襲われそうな子供たちを救出に行ったのは、イングリット・イングラム(教団剣士・f35779)。逃げている最中に親とはぐれてしまったのだろう、中には震えながら泣き出す子供もいる。
「どうやら怪我はしていないようですが…かわいそうに。恐い想いをしてしまいましたね。
でも、もう大丈夫。安心してください」
子ども達に優しく声をかけながら、精霊達を呼び子ども達の元へと行かせる。精霊達はわらわらと集まっていくと、固い結界を構築していく。これで多少なりともの衝撃には耐えられる。
『テメェ…』
攻撃を妨害されたバルバは舌打ちと共にイングリットを睨む。イングリットは、子ども達に「待ってて」と優しく声をかけてから、バルバに静かに剣先を向ける。
「どうやら、オブリビオンは関わっていないようですが、街一つが壊滅に至るとあっては見過ごすことはできません。猟兵や使徒ではなく、人としてお相手しましょう」
『騎士サマのつもりか? だったら、まずはお前から切り刻んでやる!』
激昂したバルバ達が爪を光らせながら、イングリットに襲いかかる。一人に対して数人のバルバ。その強靭な体格から見て不利だと思われる。子ども達からきゃあっと小さな悲鳴が聞こえる。
が、それでもイングリットは複数方向からやってくるバルバの攻撃をひらりと躱していき、受け流す。そして、いつの間にか、法紋の力によって強化された能力を以て、バルバ達に近づく。
そして…祈りにも、呪いにも似た、“死”という名前のルーンを宿した剣を、一番近いバルバの胸元を貫いた。
『ガッ…っ!!』
心の臓は貫けなかったものの、動きを鈍らせるのには十分。貫かれたバルバはフラフラと地面へと伏していく。その瞬間を見てしまった他のバルバ達にも一瞬動揺が垣間見えた。
『テメェ…よくも、俺たちの仲間を!!』
「…何をおっしゃるのです」
バルバの罵声にも屈することなく、イングリットの声は酷く冷静だ。だが、先ほどの子供達に向けられていた柔らかい雰囲気や優しい声色は、ない。氷のように、棘のある冷たさを感じさせた。
「自分達が快楽に浸るために暴力を振るい、街を壊滅させようとしていたのです。当然、自分達が壊滅することくらいは想定していたのでしょう?
それが戦い――死を扱うということです」
『ーー舐めやがって!』
残りのバルバも、やられた仲間の分を取り返そうと再び強襲する。だが、挑発に乗った攻撃は先ほどと比べ乱雑でアラが目立つ。イングリットが精霊の力を借りているため、余計に空を切るばかりだ。
苛立ちを隠せないバルバに、表情の一切崩れないイングリット。
「…愚かな」
強化を重ねたイングリットの剣は一切の迷いなくバルバ達を貫く。
そして、恐怖のあまり目を閉じていた子ども達がやっと目を開けた頃。そこには、彼女の剣によって積み上げられたバルバの山となっており、別の意味で悲鳴を上げさせるのだった。
「さぁ、子供達。親御さんのところまで連れて行ってあげしょう」
優しく微笑むイングリット。子どもたちは別の意味で緊張を抱きながら、彼女の誘導についていったのである。
成功
🔵🔵🔴
第2章 日常
『お祭りに行こう』
|
POW : 物怖じせずに現地の人々と交流する
SPD : 出店や屋台を見て回る
WIZ : 祭りの由来や歴史を教えてもらう
イラスト:純志
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●さあ仕切り直しだ!
突如姿を現した猟兵たちの活躍により、多少の損壊や怪我人はあったものの、死亡者を出すことなくバルバたちの群れを見事撃退することができた。
街の人々は、あなたたちの活躍を大いに崇め感謝することだろう。そして、被害もなんとか最小限に収まっていたことから、今夜は動ける大人で片付け作業を行い、次の日改めて祭りを行うこととなった。
一部の猟兵たちは片付けの手伝いを申し出るかもしれないが、街の人々は頑なに断る。その代わりにこの年に一度しかない収穫祭を楽しんで欲しい!と強く願われることだろう。
せっかくの街の人々からの言葉だ。猟兵たちはお言葉に甘えて、次の日の祭りを楽しむことにする。
ーーさあ、仕切り直しだ!
風車・拳正
アドリブ歓迎
昨日の影はさっぱりだな。
パワフルというか、元気がいいというか……ま、何にせよ、せっかく仕切り直したんだ。遠慮なく、楽しませて貰うぜ。
確かグリモアベースで聞いた話じゃ、この祭りは収穫祭なんだよな?
となれば屋台の料理を食べて回ろうかね、俺は。(聞いたことのない料理や食材、そういうのを積極的に食べる。食べる前にどういう物なのか、尋ねながら)
ふぅ、採れたての食材を使った料理ってのはやっぱ違うな。
と、あそこにいるのは、昨日のカップルじゃねえか。
よう、お二人さん、昨日は周りに声掛けつつ、避難してくれてありがとうな。お陰でスムーズに対処出来たぜ。
言いたい事はそれだけだ。そんじゃ二人仲良くな。
●喧騒、再び。
昨晩、つまりあの事件の爪痕は完全に消えた訳ではない。だが、それでも、今年の収穫祭を中止したくない、悲しい事件だっただけに収めたくないという強い想いが街の人々を動かした結果、1日を経て再び開催される運びとなった。彼らの想いを動かしたのは、猟兵達の活躍があったからこそである。
「ーー昨日の影は、もうさっぱりだな」
香ばしいタレのかかった鶏と野菜の串焼きを頬張りながら、風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は、喧騒を取り戻した街を練り歩く。
「にしても、これ…結構うまいな。あとでもう一回寄って買うか…」
もぐもぐと口を動かしながら、拳正はその串焼きをしっかりと味わう。プリプリとした張りのある肉と、採れたばかりの野菜のシャキシャキ感を、しっかりと焦がした甘辛いタレが優しく包み込んでいる。
なんて料理名なんだ?と聞いたが、屋台をしていた男は「ただの串焼きだ。それ以上でも、それ以下でもない。この街ではありきたりな料理さ」とにひひと笑っていたのが印象的だった。多分、レシピなんてものはない。街には良くあるものだとは言うが、全く同じものはきっと彼にしか作れないのだろう。
「あ…!猟兵さん!」
賑やかな街中を歩いていると、女性の声が後ろから聞こえてくる。
声に気づいた拳正は、一度串焼きを口から外してから振り返る。振り向いた先には、昨日彼が助けたーーエスティアが視た、殺されるはずだった少女がにこやかな笑顔で手を振っていた。隣には、幼馴染の少年もいた。
「よう、お二人さん」
軽く返事をして、拳正は二人の元へ行く。二人とも「こんばんは!」と笑顔で挨拶を返した。昨晩のような、恐怖に強張った顔ではなく、穏やかで楽しげな笑顔だ。
「あ、あの、昨日は…その、助けてくれて、本当にありがとうございました!」
少年はものすごい勢いで頭を下げる。その様子に少女はふふっと笑みを浮かべる。
「もう…そんなに頭下げたら猟兵さんがびっくりしちゃうでしょ。
ごめんなさい。彼、ルカって言うんですけど…ルカったらずっと猟兵さんにお礼を言いたくて、ずっとあなたのことを探していたんです」
「り、リラ!そんなこと言わなくても…!
でも、本当に、助かりました。あのままだったら…俺たち、怪我どころじゃすまなかったから」
気恥ずかしそうにしながらも、少年はまっすぐな目で拳正を見つめる。それは、憧れや羨望のそれであった。
だが、拳正はそれに顔を緩ませることはない。しっかりした手で、少年の頭を撫でる。
「いや、二人が周りの声をかけつつ、避難してくれたからな。おかげで、スムーズに対処できたんだ。こっちこそ、ありがとうな」
そう声を掛けると、二人は目を合わせて照れくさそうにする。
「…じゃあ、俺はいくぜ。二人とも、これからも仲良くな」
少年の頭から手を離し、その手をひらりひらりと揺らしてから、拳正はサラッと別れを告げ、離れていく。なんとスマートなことか。
別れをちゃんと告げられないまま別れた二人。呆けた顔のまま、少年は言う。
「……リラ、俺。あの人みたいになってみたいな…」
「ルカが?ふふ、じゃあまずはしっかり体を鍛えないとね。」
大成功
🔵🔵🔵
カルティリア・フュルフュールス
(アドリブ等何でも歓迎です)
さて、猟兵としての依頼は済ませた事だし、私も好き勝手させて貰うよ。
欲深そうな人間を探して、取引を持ちかける。
「君、力を欲しているね。悪魔の力に興味はない?」
(多分上手くいかない。もし上手く行った場合UCで相手の望む装飾品を作成)
ちょっ…私はそんなに讃えられるような存在じゃない 待って
(人から崇め感謝されるとたじろぎ、最終的に困って逃げ出す)
…疲れた。長年生きてきたけど、こんな気持ちになるのは初めてよ。
離れた上空から祭りを眺める。
逞しいものね。昨日にあんな事件があったというのに。
この街に末永い豊作と繁栄がもたらされますように。飢えに苦しむのは私一人で充分よ
●さて、釣果は?
【猟兵】としての仕事は、おしまい。
この時間は、猟兵ではなく、カルティリア・フュルフュールス(飢渇の雷魔・f40996)個人でやりたいことをやらせてもらう。彼女はそう意気込んで、収穫祭に臨む。
そして、彼女はちょっと内気な青年に声をかけてみる。背丈は平均的だが、突然声をかけられた彼の瞳は緊張の色に染まった。
「ねぇ、君。力を欲しているね?ーー悪魔の力に興味ない?」
「えっ…あの…」
「ふふ…私と契約すれば、どんな望みも叶えてあげる。それなりの対価はもらうけど」
「た、対価ですか…?」
「ええ…例えば…」
例えば、君の魂の一部を。
そう口にしようとしたが、その言葉が紡がれることはなかった。
「あっ!かみなりのおねーさん!!」
カルティリアの背後から、快活な少女の声がする。振り向くと、父親に肩車されたままニコニコを笑顔を浮かべる幼い子供が、彼女に向かって大きく手を振っている。
「…あら、君は」
一瞬の間を置いて、少女は父親におろしてーとお願いして、そのまま降ろされる。カルティリアの顔を見て、ぱあと明るい笑顔になったその子供は、たたたっと素早く彼女に近づいた。
「かみなりの、おねーさん!!きのーは、パパやママや…メリアたちのこと、たすけてくれてありがとー!あのね、メリア、ずっとかみなりのおねーさんにあえたらいいなっておもって、パパとさがしてたの!それで、それでね!おねーさんに、これ、あげるー!!どーぞ!」
そう言って、子供はカルティリアに手渡したのは、折り畳まれた紙。開いてみると、なんとそこには雷を放ちながら戦うカルティリアの似顔絵が描かれているではないか。年相応の絵でなんとも味がある。そして、その端には大きな字で『おねーさんへ ありがと! めりあより』と現地の言葉で書かれてた。
「…これは…」
「おねーさんのえ!です!ありがとしたかったから、がんばったの!」
突然のプレゼントに呆気を取られるカルティリア。そして、子供の隣に寄り添ってきた父親が言う。
「本当にありがとうございました。あなたのおかげで、妻も子供たちも怪我をせずに避難できました。本当に、本当にありがとう…!」
「えっ、ちょっと…!」
同時に大きく頭を下げられてしまって、戸惑うカルティリア。
その様子を見た住民達はカルティリアが自分たちの危機を救った猟兵達の一人だと理解し、次々と彼女の元へいき、お礼の言葉を紡がれる。
「ちょ、ちょっと…!」
いつもはクールにサラッと流す彼女だが、あまりの勢いにたじろいでしまう。
耐えきれなくなったのか、カルティリアはその場で翼を広げ、『大空』へと飛びだってしまった。
翼をはためかせながら、眼下の様子を眺める。
すぐ真下で、カルティリアの姿を見て手を振る者が多くいる。そして、それを抜きにして一日遅れとなった収穫祭を楽しむ人々の姿を見ることができる。
「…はぁ、せっかく契約が取れると思ったのに」
慌てて飛び立ってしまったせいで、契約を迫ったあの青年の姿はすっかり見失ってしまった。また契約者の探し直しだ。魂の一部だけでも大変なのだ、悪魔の契約とは。
「それにしても…昨日あんなことがあったのに、もうこんなに楽しんでいるのね。
…逞しいわね、人間って」
降りてしまってはまたすぐに感謝の群れに迫られるだろう。あの群に迫られてしまえば、契約とれる取れないの話ではなくなってしまう。何より、そう言ったことのには慣れていないカルティリアは、しばらくの間だけ『大空』の飛行散歩に勤しむことにした。
空を飛びながら、カルティリアは、もう一度子供から受け取った似顔絵を広げる。稲妻とともに駆けていく姿は大きく描かれ、感謝の言葉もそれに負けじと大きく書かれている。カルティリアの口元がわずかに上向いた。
ーーどうか、この街に末永い豊作と繁栄がもたらされますように。
彼女の飢えが満たされたかどうかは…また別のお話。
大成功
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