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【罪が君を殺すまで】勇者の軌跡を追え【中編】

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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●前回のあらすじ
 ミルベール姫に調査を頼まれ、勇者の心の回収と、元帝国の王である竜の視察を行うことになった。
 資材を持って行商人と合流しながら、墓が連なる辺境に入る事に成功する。
 孤児院に資材を届けたところ、その中のユウ君が竜のおじさんへプレゼントする物を悩んでいる事を聞く。
 ユウ君や子供たちと交流する事によって、孤児院の子達と打ち解ける猟兵達。
 特に、ユウ君は夜にうなされる竜のおじさんを優しく介抱してあげた猟兵達に、好感を持ったようであった。


 朝、猟兵達が起きてみると、教会の孤児院が騒ぎになっていた。
 ユウ君がいない――!
 朝からいなくなったらしく、シスターさんたちが探し回っている。
 猟兵達も急いで、ユウが居そうな大きな小屋に向かうが、中はもぬけの殻だった。

 そんな時。
 猟兵達が持っていた通信機から、ノラ・ネコカブリ(ダークエルフの眠りの歌い手・f35214)の声がした。
「緊急連絡なのら! 罪竜の欠片が現れたのら!」
 オブリビオンが発生したことの通知であった。

「復讐の勇者の躯と呼ばれるそのオブリビオンは、かつて復讐を胸に罪竜に立ち向かった元勇者なのら。
 でも、復讐する事自体に快楽を覚え、勇者としての気高さを失ってしまい負けたのら。」
 スピーカー音から、情報が伝えられる。
「彼の目的は、本来罪を受けるべき存在である、帝国の王の殺害。
 竜となっても魂の罪が晴れるわけではないとして、復讐をしに来ているのら。
 彼の骸には既に勇者としての誇りはなく、復讐する動機のために襲いに来るのら」
 オブリビオンの目的は、竜になってしまった帝国の王の殺害のようだ。

 通信機から、混乱した声が聞こえる。
「でも、帝国の王は本来は法で裁けば死刑は免れない存在……。
 勇者が一体どうして生かしたかはわからないけれど、庇う必要性はあるのら!?
 分からないのら……!
 ここは、猟兵さんたちの判断に任せるのら!」

 王の命に関しては、猟兵の判断に任せられる。
 通信機から立体映像が映し出され、墓の位置が示された。
 地平線まで続く墓の一つに、赤い点が示された。

「復讐の勇者の躯は、墓の方に向かっているのら。
 どうやらそこには少年が、竜を励まそうとして戦死者の父の遺品に手を出してるみたいなのらね。
 竜は少年を迎えに行ったみたいなのら。
 復讐の勇者の躯は少年を巻き込んででも殺す可能性があるのら、何とか守ってほしいのら!」

 手早く要件を話された後、通信機は切れた。
 ユウ君が危ない――!
 猟兵達は、オブリビオンに子供が襲われる悲劇を避けるため、小屋から走って出て行ったのであった。


はるかず
●このシナリオは『勇者の軌跡を追え』の④番目のシナリオの【中編】となります。
 今回は前編、中編、後編があります。

●復讐者の勇者の欠片がオブリビオンとして、竜の王を殺しに来ています。
 竜は元々戦争を引き起こした、帝国の王です。公的には裁きに合わねばなりません。
 竜の王を助けるかは、猟兵にゆだねられますが、助けるか助けないかで分岐が発生します。
 判断は各自に任せますが、子供のユウ君は助けてあげてください。

●生き残った場合、竜から懺悔の言葉が聞けます。
 これまでの、罪やあったことをお話する事になるでしょう。
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第1章 ボス戦 『復讐勇者の躯』

POW   :    燃え上がる憎しみは体をも燃やす
【復讐の蒼い炎 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を復讐の青い炎で燃やし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    憎しみと復讐の連鎖
自身の【振りまく復讐の蒼い炎 】が輝く間、【元勇者の剣・遺志剣】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    無念に死んだ者を、殺した奴を生かしてはおけぬ
対象への質問と共に、【家族が描かれた燃える絵画 】から【勇者の物語で死んでいった人々】を召喚する。満足な答えを得るまで、勇者の物語で死んでいった人々は対象を【復讐の蒼い炎】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ノラ・ネコカブリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 一人、立ち並ぶ墓の一つにユウと呼ばれる少年がいた。
「父ちゃんには悪いけど、竜のおじさんに元気を出してもらうためだ」
 自身の父の墓を開け、遺物を取り出そうとふたを開ける。
 中には懐中時計や兵士の剣と盾が入っていた。
 懐中時計に手を伸ばそうと少年がした時……

「みんなが探し回っているぞ」
 黄色い翼を広げて、竜が墓の中へと降りてきた。
「また見つかっちまった!」
 バツが悪そうに少年が遺品を隠そうとする。

 しかし、暴風が吹き、墓の一つの上に骸骨とステンドグラスの翼をもつオブリビオンが立っていた。
「少年、その竜の正体を知っているか?」
「誰だお前!」
 見知らぬ化け物に恐怖の入った声を上げる少年。
「ユウ、下がっているんだ」
 竜は少年に背を向けて庇うように立ちはだかった。骸骨は竜に剣を向ける。
「そいつは姿こそ変われど、この世界を竜化戦争を起こした原因である帝国の王だ」
「嘘だ!!」
 竜は少年から表情を隠し、骸骨の方を向いて警戒している。
「嘘ではない、その竜の体こそ証。帝国自体を竜にした時に自らも合体し、コントロールをしていた時の名残なのだ」
「嘘だよね。おじさん!!」
 
「……嘘ではない」
「俺はこの手で命令を振りかざし、妻の復活のために竜エネルギーを集める実験を進めた。それは確かだ。俺は、俺の私情のために、竜エネルギーが魂に付着する性質を使って沢山の戦死者を出すことによって、魂と共にエネルギーを回収する最終戦争を起こしたのだ」
「そ、そんな……!」
 骸骨は更に追い詰めるように少年に言い放った。
「父の剣を持ち、その仇を打て。少年!! お前を孤児に追いやった原因に、お前の怒りをその竜にぶつけるといい!」
 少年は父の遺品である、兵士の剣を振り返った。
 手が震え、どうしたらいいか分からない表情でもう一度、竜のおじちゃんを見つめる。
 竜の手は震えていた。まるで泣いているように、体が怯えている。
「俺はこういう男だ。お前に切られても仕方ない、情けない、夜泣くことでしか罪を悔いれない、死ぬこともできないダメな男なんだよ」
 竜の背は寂しそうに丸くなっていた。
 少年を庇うための背、そして自らの命を差し出す背であった。
 骸骨は少年に言う。
「勇者はこの罪人に、情けを掛けたようだが。俺は違う。見ろ、墓の者達はそいつに復讐を願っている。戦争の物語の中で死んでいった者達だ……!」
 骸骨の絵画が光ると、幾千の墓から怨念の声が響き渡る。
 少年はその怨嗟の声に恐怖した。
「今こそ罪を裁くとき、さあ……殺せ!!!!」
 少年はこぶしを握り締める。
「おじさん。おれ……おれ、勇者なんだ」
 小さな勇気のある声。
「おじさんは勇者に生かされたんだろ?そこには、意味があって生かされてるんだよな?」
 不安ながらも、何かに縋るような声で少年は続ける。
「なら、俺はその勇者の軌跡の先をみてみたい。だって、俺だって……俺だって勇者だから!」
 ユウの胸元にあったカーバンクルが光り輝く。

「おぉ……!? これは、勇者の光!? まさか、こんな子供が」
 光に、勇者を最期まで貫き通せなかった、罪竜の欠片が叫ぶ。
「俺の問いかけが……! 復讐への回答が、勇者になる事だとは……!」
 先ほどまで囲っていた怨霊たちが、問いかけの答えに畏れを抱いて引いていく。

 その時、猟兵達が到着した。
 怨霊たちが消えていく中、ユウは縋るように声を張り上げた。
「猟兵さんたち、おじさんを……! 助けてあげて!」


※追記
敵のUC『無念に死んだ者を、殺した奴を生かしてはおけぬ』は、復讐しろという質問にユウ君が「俺が勇者になる」という回答によって、消えています。ないものだと思ってください。
ティティス・ティファーナ
SSPDで判定
*アドリブ歓迎

「怨霊たるオブリビオンよ、お前は少年の【勇気】と『竜への想い』に敗北したのだ」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』でLv機数体の創造して展開しシールドビットで少年を守護し骸骨を見据えて「少年、君の勇気を貰う。猟兵は弱者を守護し悪しきオブリビオンを駆逐し撃滅す存在なり」と見得を切る様に敵と少年の間に入ります。
背中に姉f02580を託し罪竜の懺悔と悔恨をオブリビオンと供に駆逐し昇華撃滅を果たす決意を以って立ち向かいます。
1分先の未来を見ながらファンネルビットを適材適所に変型させながらリニアロンボウとレーザービームでオブリビオンを先制し攻撃をします。
敵の攻撃は空間飛翔して避けながら透明化し視聴嗅覚を阻害しながら攻撃の機会を伺い絶妙な機会に攻撃を仕掛けます。

「少年、君の勇気を武器に敵を倒し未来を切り開く!」
「罪竜を救い手を差し伸べるのは少年、君の役割だ」


祝聖嬢・ティファーナ
【金剛胎蔵】
*アドリブ歓迎

「じゃじゃ~ん☆間に合ったね♪んじゃ、ミンナ~出番だよぉ☆」
と言って『フェアリーランド』の壺の中から各種精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊,死神を呼び出して“七色こんぺいとう”を多めに配って「ユウくを守って悪いのをメっ!しちゃって回復と守護とサポートを頑張っちゃおう!♪」と手を上げて元気に頑張ります☆
ユウくんを天使に守護させて戦乙女と死神が敵に攻撃を仕掛けて英霊がサポートや指示を出して頑張り、祝聖嬢も属性攻撃と聖攻撃を仕掛けながら合間合間に回復と補助サポートをしていきます。時々ユウくんにも「はい☆元気のプレゼント♪」と“七色こんぺいとう”を口に放り込みます☆
オブリビオンの足元や周囲に小妖精の落とし穴や蔦罠を作らせて邪魔や妨害を手伝います♪

勇者の光に聖者の祝福を授けて祈りと願いを込めて歌唱します☆
ティティス/f35555と伽藍/f33020にも協力して助力をします♪


御堂・伽藍
【金剛胎蔵】
アドリブ、即席連携歓迎

みぃ つけ た☆
見事!勇気ある者達よ!!

先制UC発動
炎雷光属性を攻撃力、防御力に付与

残像陽動フェイント忍び足
ユウの側へ

念動怪力炎雷光属性破魔衝撃波UC
無数のすてぜにを繰り出しフェイント二回攻撃追撃を交え範囲ごと薙ぎ払う

敵の攻撃を落ち着いて見切り
カウンター念動怪力炎雷光属性破魔衝撃波オーラ防御受け流し武器受け
すてぜにで敵の攻撃を迎撃

地形が炎になったら地形を利用
炎の魔力を増幅しリミッター解除

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃追撃
ユウと竜を最優先

ゆうしゃは ゆうきあるもの
勇気とは、恐れを知り尚立ち向かうもの
ユウ あなたは みつけた 
新たな勇者の第一歩、しかと見たぞ!


止めは
兵士の剣を念動力で引き寄せ
破魔炎雷光属性UCの魔法を纏わせ
ユウと手をつなぐ

おもい えがいて
剣は、君の想いのまま動く
カーバンクルと剣の光が同調する
伝わる通りに念動力で敵を討つ

旧き勇者よ、妄念の亡者よ
あなたは かこ
鎮め沈め骸の海へ

さようなら
さようなら
御然らば
御然らば


紬雁・紅葉
【金剛胎蔵】
アドリブ、咄嗟の連携歓迎

復讐…復讐と?
正しく妄執なれば、御鎮めします

羅刹紋を顕わに戦笑み
十握刃を顕現

残像忍び足で正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔神罰火雷属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるか見切り
躱せるなら残像などで躱し
さもなくば破魔衝撃波オーラ防御武器受けUC等で防ぐ
何れもカウンター破魔神罰雷属性衝撃波UCを以て範囲ごと薙ぎ払い吹き飛ばす

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

一人、知っています
復讐を謡いながら、力を振るう甘美に呑まれた痴れ者
大義名分を掲げながら一顧だにせず、自らの正義を妄執に摺り替えた戯れ者
数多の命を徒に奪ったその者、最期には名もなき一人の民に刺殺されました
復讐の小さな刃を以て

時に、死は贖罪にそぐわぬ物
生を苦しみ、その中に実りを成す償いもあるのです
断罪の剣は、安易なる道を絶つ為にある
苦しみあるならば尚、貴方は進まねばなりません…竜王

今です、伽藍!

とどめは伽藍達に任せ、自分は援護射撃



「猟兵さん! 来てくれたんだ!」
 駆け付けた猟兵を見つけて、目を輝かせるユウ。
 躯は悔しそうに、元勇者の剣・遺志剣を振りかざし、一払いする。
 すると、ユウと竜、そして猟兵達を分断するように青い火柱が立つ。
 怨恨の強さを思わせる熱さ、簡単には飛び越えられないほどの炎の壁が猟兵達の目の前に立ちはだかった。

 躯はあざ笑うように言う。
「もうこうなれば、力によって竜を殺すしかあるまい。貴様らは邪魔だ!」

 ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は、アームドフォートレスダブルキャノンから火柱にめがけてレーザーを放つ。
 一瞬にして、炎に穴が開いた。
「姉、今だ! 乗り込め!」
「いっくよぉ~☆」
 ティティスのUC《アストラル・エレメント・トランスフォーメーション》によって作られたファンネルビット。
 そのファンネルビットと共に祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、空いた炎の輪の中を一瞬にしてくぐった。

 「何!? この高い炎の壁を簡単に超えるだと!?」
 躯が見ると、炎の穴の向こうにティティスの姿が見えた。
 「怨霊たるオブリビオンよ、お前は少年の【勇気】と『竜への想い』に敗北したのだ」
 青い炎がまた修復するように、炎の壁を作り、ティティスの姿を隠す。
 「おのれ、機械の群れと、妖精一匹に何ができる!?」
 怒り心頭に達したかのような怒号を放ち、躯はユウと竜の方へと剣を向ける。
 しかし、その剣の射線を邪魔するように、ティティスの砲撃が火を貫いて飛んで来る。
 竜が構えると、竜の目の前に小さな妖精である祝聖嬢が下りてきた。

「じゃじゃ~ん☆ 間に合ったね♪」
 祝聖嬢はユウに向かってウィンクした。
「祝聖嬢姉ちゃん!」
 ユウは喜びの声を上げる。
 祝聖嬢は壺を取り出し、ぱっと七色のこんぺいとうがばらまかれる。
「小癪な! 間に合ってなどいない!!」
 ティティスの連続する砲撃を飛んで避けながら、遺志剣を振りかざし、青い炎を剣から噴射する。
 シールドビット達が、祝聖嬢の前に出てきて盾となって炎を防ぐ。
 くるっと祝聖嬢は周り、余裕をもって妖精達を呼び出す。
「んじゃ、ミンナ~出番だよぉ☆」
 UC《フェアリーランド》によってさまざまな妖精が飛び出してきた。
「わぁい! こんぺいとうだ!」
 妖精達はこんぺいとうを受け取ると、ユウと竜の周りをクルクルと旋回した。
「天使はユウ君を守って♪」
「はぁ~い!」小さな白い翼をはばたかせ、ユウの傍に天使が護衛する。

「戦乙女と死神は、悪いやつをメっ!しちゃって!」

「わかった。まかせろ」「いくぜー!いくぜー!」

 躯は砲撃が落ちてくる前に墓上から飛びあがると、剣から複数の炎を戦乙女と死神に連射する。
 二匹は炎の弾丸を避けながら、鎌と槍を構えて突撃する。

 遺志剣の炎が効かないことが分かると、躯は間合いに入った二匹を切り払おうと構える。
 二匹の刺突を剣で叩き、細やかな攻撃を遺志剣でねじ伏せようとする。
 しかしティティスの援護で、射撃をするのを羽を舞わせてなんとか回避する躯。
「小癪な!剣が定まらん!!」
 二つの方向からの同時攻撃に、防御が疎かになる躯。
 突如、ばすんっと躯の片翼が切り裂かれ、翼のステンドグラスが輝きながら散った。

 祝聖嬢の攻撃とティティスの砲撃に集中していた躯は、片目の炎を大きくさせ驚きの声を上げる。
 躯が気付かぬ間に、二人の猟兵が墓を縫うようにして潜伏し、強襲を仕掛けたのだ。

「は、挟み撃ち……だとぉ!」
 御堂・伽藍(がらんどう・f33020)が、墓石の影から飛び出し、躯の片翼を切り落とした。
「それだけではありません。追撃もありますよ」

 優しく、しかしどこか恐ろしい母を思わせる声が響いた。
 羅刹紋を顕わに戦笑んで、もう片翼を十握刃で更に切り落とす。
 UC《九曜八剱・大蛇断》の斬撃によって、更にもう片翼が塵のように散った。
 そうしたのは、巫女服に身を包む紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)であった。

 伽藍と紅葉は互いに守り合うように傍により、武器を躯に突き付ける。
 その二人を死神と戦乙女が護衛するように羽ばたいている。
 羽をむしられ、体勢を崩した躯は咄嗟に起き上がり、ティティスの砲撃が大地をえぐった。

「一人、知っています
 復讐を謡いながら、力を振るう甘美に呑まれた痴れ者
 大義名分を掲げながら一顧だにせず、自らの正義を妄執に摺り替えた戯れ者
 数多の命を徒に奪ったその者、最期には名もなき一人の民に刺殺されました
 復讐の小さな刃を以て……」

「誰の事を言っている!?」
 躯が怒号を紅葉に放つ。
「自覚さえないあなたは、また小さな刃によって敗れる運命でしょう」
 紅葉は後ろにいる竜のおじさんに語り掛ける。

「時に、死は贖罪にそぐわぬ物
 生を苦しみ、その中に実りを成す償いもあるのです
 断罪の剣は、安易なる道を絶つ為にある
 苦しみあるならば尚、貴方は進まねばなりません…竜王」

「私自身の……償い、その先があるというのか」
 何かにハッとしたように、竜のおじさんは紅葉を見た。
 紅葉は伽藍にユウと竜のおじさんを任せると、しゃらんと足を一歩前に出した。
 ティティスによる砲撃が一時止み、紅葉と復讐の躯が対峙した。

 十握刃と遺志剣が衝突し、剣同士の熱い火花が散る。

「俺は……俺は、どうしたら……?」
 混乱したようにユウが戦況を見守っている。
 祝聖嬢がぽいっとユウの口に甘いこんぺいとうを放り込む。
「はい☆元気のプレゼント♪」
 笑顔で応援する祝聖嬢の優しさに、ユウは微笑んだ。
 伽藍がそっとユウの傍により、語り掛けた。

「ゆうしゃは ゆうきあるもの
 勇気とは、恐れを知り尚立ち向かうもの
 ユウ あなたは みつけた 
 新たな勇者の第一歩、しかと見たぞ」

 ユウの父親の墓にあった形見の剣が、ふっと念動力でもちあがった。
 ユウと手をつなぎ、剣の動かし方を教える伽藍。
「名を呼べば、貴方の想うとおりにこの剣は動く」
「この剣の名は……」
 ユウは必至で剣の名前を探った。

 砲に全てチャージを終えたティティスが、ユウの前に現れ、照準を敵に合わせる。
「少年、君の勇気を武器に敵を倒し未来を切り開く!」
 ティティスはユウを囲む全員に振り向き、長い金の髪をはためかせて敵前に立った。
「そうだ! この感情、この心は……!」
 彼女の声援に、ユウはやっと気づくことが出来た。それは自身の心。自身の強さ。
「名は……勇気!!」
 ユウの胸元にあったカーバンクルが、言葉と共に輝く。

「今です、伽藍!」
 輝きに反応し、紅葉が素早く躯を切り叩き、射線を開ける。

「斃れてたまるかぁあああ……!」

 逃げようとする躯に、ティティスは砲門全開にし、躯の足と片手を吹き飛ばした。
「罪竜を救い手を差し伸べるのは少年、君の役割だ」
「うん……!」
 ユウが頷き、剣の切っ先を落ちていく躯に向けた。
 伽藍のUC《トリニティ・エンハンス十二刻》によって光と炎、そして雷が剣に宿る。
 伽藍が宿したカーバンクルの光を受けて、剣から真っ直ぐ光線が飛んだ。
 最後の恩讐の炎で自爆しようとする躯。
 躯の抱いた絵から炎がとめどもなく噴き出して、周りを巻き込もうとした。

 その絵から噴き出る彼の思いでの家族は、もう見えずに炎の中で顔が消えている。
 かつて美しかった思い出も、恩讐の心地よさで忘れてしまった尊さも。
 すべて、勇気の剣が貫いていく。

 光が。感情が。たった一つの勇気が――

 躯を燃える絵ごと貫いた。

「あぁあああ……!」

 叫び声が木霊し、カーバンクルの赤の光が躯を切り裂く。
 爆発と炎上、恩讐の感情と共に躯は消えて行った。

 猟兵達が見る中、伽藍が唄う。

 旧き勇者よ、妄念の亡者よ
 あなたは かこ
 鎮め沈め骸の海へ

 さようなら
 さようなら
 御然らば
 御然らば

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『懺悔の言葉を聞く』

POW   :    頷いて、相手の気持ちを汲み取る。

SPD   :    相手の喋りたくない事を代弁してあげる。

WIZ   :    賢明なアドバイスを送る。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵と竜のおじさん、そしてユウ君は大聖堂へと帰ってきていた。
 シスタークレアが駆けつけて来て、竜のおじさんを抱きしめた。
「あんたたち、無事だったんだねぇ……! よかった、本当に良かった」
 涙して無事を喜ぶシスターの姿に、届けることが出来た猟兵達はホッとする。

 しかし、竜のおじさんは深刻な顔で、シスターと猟兵に言った。
「聞いてほしいことがある。これは私の懺悔でもあり、この世界で起こったことの史実でもある……」
 緊張した静かな空気が大聖堂を包んだ。
 ユウ君が見守る中、竜のおじさんは祈るような声で言う。
「私はかつて戦争を世界に巻き起こした帝国の王アブールだ」
 竜のおじさんは黄色い体をシスターに向け、頭を下げた。
「シスター、この罪の重さは分かっている。どうかここで、皆の前で懺悔させて欲しい」

 竜のおじさんは語り始める。
 勇者と戦った後何があったか。どうして狂気に蝕まれていたのに、戻ってきたか。
 今からは贖罪のために、竜として生きながら歴史を綴る事にしようと思っている事。
 そして、何よりこのことをユウに話すべきであり、今その時が来た事。

 懺悔の中、勇者の心が現れる。
「僕の心は”赦し”。君が告白してくれる時を、ずっと待っていたんだ」
 勇者の心の出現に、竜のおじさんは……

 猟兵達はその懺悔と、勇者の心のやり取りに耳を澄まして聞くのだった。


※竜のおじさんが過去を語るのを聞き、勇者に赦されるのを見守るシーンにしたいと思っています。
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】

ひとつの静寂が訪れて銀河(そら)の様な静寂だ…と感じてから姉が「さぁ♪一休みも大切な事だから幻想郷(ヴァイスト・ウェル)に戻りなよ☆」と誘われて虚無の深淵に落ち着くも囁き掛けられる微かな聲に耳を澄ませると、心の語れない口にできないお思いや思念がティティスの周りを流れているから猟兵の役割として「聴こう、語れ。内容を精査し些細な点も要約して可能な範囲で伝える事を尽力する」と伝えると対象と接(コンタクト)し先ずは話しを総て聞いてから要点と必要な点を纏めて確認をしてから剤弁の準備を始めます。

話し始めや話しの途中でも追加の話や変更点などには気を付けながら注意深くまとめながら話します。
祝聖嬢や伽藍の言葉にも端々に聴きながらユウや竜のおじさんの様子や心情のパルスにも注視しながら会話と対話を選びながら選択して伝えて行きます。
求められている回答や思案も気を付けて話に加えて話します。


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】

落ち着いて静寂の中で妹のティティスが小さな手を握っているのを見逃さずにそっと近寄って「一度静かな幻想郷(ヴァイスト・ウェル)でゆっくり休みなよ♪」と『フェアリーランド』の壺を通して引き入れます☆
シスター、ユウくん、竜のおじさんの順に話しを聞いて行ってちびエンピツとちびノートにメモを取りながら気持ちや気分を落ち着かせれる様に天使と月霊を呼んで“七色こんぺいとう”を少し多めに配ってゆっくりと落ち着いて聞きながら一生懸命メモを取って話がひと段落したらメモを見ながらしっかりと考えながらアドバイスを頑張って伝えます♪

時々紅葉に近付いてこっそり相談もしたりしながらティティスと伽藍の様子を見ながら話をしたりお菓子屋お茶やジュースを進めながらのんびりと安心して話せる様子には気を付けます☆
月霊や天使にも知恵を借りながらアドバイスはしっかり出します♪
お菓子は周りのシスターや子供たちにも配ります☆


御堂・伽藍
【金剛胎蔵】
アドリブ、即席連携歓迎

椅子orその場に静かに座る
(叶うなら、ユウの隣に)

かみも あくまも
きれいも きたないも
がらんどうは こばまない

こばまない
そのために わたしはきたの

叶う限り余さず見て聴いて
がらんどうに落とし込む
なるべく静かに、邪魔せずに


一通り終わって後、ユウと手をつなぐ

ゆうきって いろいろあるの
自分の弱さを認めるのも勇気
他者に助けを求め、感謝をするのも勇気

友の過ちを認めて、許すのも、勇気
ユウは だいじょうぶよね?

あたらしい ページ
大いなる勇者と、新しい勇者の場面…
ものがたりに また1ページ



 銀河のような静寂――
 真空を漂う真っ暗な中。星の生命の輝きを感じる瞬間。
 緊張と、希望――その両方のパルスをティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は感じ取った。

「あれは……俺が勇者の剣に倒れた時――」

 竜のおじさんが話出す中、ティティスは祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)の小さな手を握る。
 祝聖嬢はそっとティティスの傍により、耳元でささやいた。
「一度静かな幻想郷(ヴァイスト・ウェル)でゆっくり休みなよ♪」

 話を聞くのに息をのんでいたユウ君と、竜のおじさんが祝聖嬢に目線を向けた途端。
「えぇ!?」
「今、今ぁ――――!?」

 大聖堂も孤児院も、小さなミニチュアになって壺の中に吸い込まれていく。
 竜のおじさんも、ユウ君も、シスターのクレアさんも。孤児院の子供たちでさえ。
 丁度、近くの礼拝用の椅子に座ろうとしていた御堂・伽藍(がらんどう・f33020)も。
 椅子も台座も神の印の形をした像も、ふわりと浮かんで――

「う、うぁああああ~!!」

 目が点になって、ぱちくりと何が起こったのかキョトンとしているティティス。
 気が付けば、妖精卿の花開く大地が広がっていた。
 季節を感じさせないほど、あらゆる花が咲いた妖精卿の花畑。

 祝聖嬢は手を大きく広げ、連れ去られた全員に声をかけた。
「ようこそ♪ ここは幻想郷(ヴァイスト・ウェル)!」

 ユウ君が花畑に座ったまま祝聖嬢を見て、不思議そうに周りを見渡す。
 伽藍はくすくすと、大きく笑った。
「もう、先生ったら――」
 その和やかな空気に竜のおじさんがほっとする。
 シスターがヤレヤレと、立って言った。
「招待されちまったんならしょうがない、ここで休むかねえ」

 妖精さん達が来客に気がついて、ティーセットを持ってくる。
「やっほー♪」「お茶して遊ぼう~☆」「ケーキはどう?」
 少し山になった花畑の上にテーブルを妖精さんたちが用意する。
 天使がテーブルクロスを敷き、月霊がガラスの杯の中に七色こんぺいとうをさらさらと入れる。

 小さな花畑の山を登り、竜のおじさんとシスター、ユウ君が椅子に腰かけた。
 遠目に見ると、孤児院の子たちが初めて来る幻想郷にはしゃいでいる。
 伽藍、ユウくん、竜のおじさん、ティティス、祝聖嬢、シスターの順でテーブルを囲んで座った。
 丸テーブルでケーキや七色こんぺいとう、ダージリンの紅茶を楽しみながら、竜のおじさんのお話が始まった。

「そうだな……」
 妖精卿の雰囲気に絆されて、竜のおじさんは迷っているようであった。
 ティティスは聲を聞く、それは妻を失った事から始まる悲しみと、それと向き合う恐怖心だった。
「聴こう、語れ。内容を精査し些細な点も要約して可能な範囲で伝える事を尽力する」
 その横で、ちびえんぴつとちびノートをもってメモの準備をする祝聖嬢。
「聞いて、怒りがわくかもしれない。しかし、最後まで聞いてほしい」
 さわさわと花畑の葉が風に揺れる。

「かみも あくまも
 きれいも きたないも
 がらんどうは こばまない

 こばまない
 そのために わたしはきたの」

 そう伽藍が告げると、竜のおじさんは一度頷いて、話し始めた。

「ユウ、お前に勇者とはどんな存在か、言ったことがあるな」
 隣に座っているユウに、竜のおじさんは語り掛ける。
「うん、あの時は分からなかったけど……」
 ユウは不安そうな瞳で、おじさんを見上げた。
「私は勇者を見た。だから、お前にその心を伝えたいと思う」
「心?」
「悪逆非道の王が、どうして今……ここにいるか語ろう」


「あれは、姫が誕生して小さかったころ。
 私と妻は姫の体が弱く、生きていけないのではないかと心配だった。
 私たちは治療のために、竜化エネルギーの研究をすることになった」
 ティティスが情報を補足するように淡々という。
「竜化戦争では、兵士たちが竜化させられて強化した軍隊になってたという
 その、発端であった研究は、姫の体の治療だったということか」
 竜のおじさんは頷いて、ティティスの方を見た。
「そうだ。国中の体の弱い人に生命力を与えることが出来るのではないか?
 当時はそうで行われていた」
 伽藍が紅茶に口をつけ、一口飲んで置いた。
「どうしてその、意図が戦争へと変わっていったの?」
 伽藍の質問に、おじさんは暗い声で言う。
「妃である妻が亡くなったのだ……」

 沈黙が支配しそうになったところ。
 妖精達が大きな3段ケーキを、どかーん☆とテーブルに置いた。
 全員、目が点になる。祝聖嬢を除いて。
「さぁ☆ 食べて食べて♪」
 祝聖嬢が明るい声で言うと、全員がケーキを分け合って楽しい雰囲気へと変わった。

 食べながら、竜のおじさんが続ける。
「それから、私は偲びの湖で妻の幻影に縋って泣いていた」
 ティティスは胸が苦しくなる姫の恋心と似たパルスを、竜のおじさんから感じ取った。
「偲びの湖。今は姫がそこで勇者を偲んでいる場所……」
 かつて、皆で守り通した湖は、ティティスが姫に勇者と出会える祈りを願った場所だ。
「そうか。今は、ミルベールが勇者を偲んでいるのか……娘には、苦労をかけてしまった。
 私はその湖の底から声を聞き、泡沫の剣という存在に出会った」

「泡沫の剣って、勇者様の剣よね……?」

「ああ、だから勇者と対峙したときは、驚いたよ。きっかけを与えた剣が、殺しに来たように見えた」

「勇者様の剣が、おじさんと出会ってた?」

「泡沫の剣は、世界は最後に大きな竜となる。その竜になった時にまた恋人と出会える。
 という事を話してくれた。私はそれから、竜化エネルギーを集め世界を竜に戻そうと決めたのだ」
 ユウは少し興奮した様子で、竜のおじさんに言った。
「おじさんお墓の時に言ってた。竜化エネルギーは魂にくっついているって。
 だから、戦争を起こすことで沢山の魂を回収すると同時に竜化エネルギーを集めたって」
 おじさんは深く頷いた。
「ああ。それが、世界の竜化戦争の真実だ」

 伽藍達が竜のおじさんから聞いた情報を整理する。
 伽藍は勇者の剣が発端になったことが気になっているようだった。
「泡沫の剣は世界の成り立ちを教えるような、古い存在だったのね」
 ティティスがデータを考えて、具体的な数を計算しながら言う。
「竜化戦争の死者の数だけ、竜化エネルギーが集まったという事か」
 帝国各地で行われた戦争。今回の辺境の地でさえ、死者は多かった。
「うーんと、でも、結末は勇者に止められたんだよね♪」

「おじさん、教えてよ。勇者は、どうやっておじさんを助けたの?」
 ユウがおじさんに首をかしげながら聞く。
「勇者は宇宙竜という分身を身に宿していたらしい」

「うーくんね」
「だぜ★」
 かぱっとピンクのオルゴールが口を開いてアピールした。

「貯めた竜化エネルギーと宇宙竜の力で、妻の魂を現世に呼び戻してくれた」
 キラキラと目を輝かせて、ユウが喜んだ声で言う。
「それで目が覚めたんだ!」
 静かな聞き取りやすい声で、おじさんははっきりと告げる。
「妻は私の歴史書が編纂されている話をしてくれた。
 それを聞いた時。私は自身が歴史に載るような存在でないと思ったのだ。
 妻の怒り、妻の泣き顔、そして妻の愛情で……私は正気に戻ることが出来た」

「お母さんの強さ、か……」
 ユウがぽそりと声を出す。
 孤児になったユウは、母の温かみを恋しく思ってしまう。
 それが、竜のおじさんが抱いていた寂しさと同じだと思うと、さらに辛さは増した。

「私は愚かだった。勇者が居なければ、今の私はいなかっただろう……」
 竜の手を重ね合わせ、過去を顧みる表情で目を伏せるおじさん。
「でも、おじさん。わからないよ、どうして勇者はおじさんを助けたの?
 おじさんを助けた意味って、一体何?
 それで開ける未来があって、勇者はおじさんを助けたんだよね?」

「それは……」
 竜のおじさんは言葉に詰まった。
 勇者が助ける決断をした心意気をいう事は出来た、だがその意味まで知らなかったのだ。

「知ってほしかったんだ」

 透き通った声が幻想郷に響いた。
 花畑に勇者の心が立っていた。

「愛し愛されること、人は優しくて、悲しくて、憎んだりもするけれど、その中で生きているってこと」

 白い髪、優しいほほえみを浮かべた勇者が手を胸に置いて言う。

「君にも同じ目線をもって、それを実感してほしかったんだ。それが……僕のわがまま」

 竜のおじさんは立ち上がって、勇者へと走っていった。
「勇者様……! 勇者様、私は、私が愚かでした……」
 泣き崩れる竜のおじさんの前で、勇者の心は優しく頭を撫でた。
「いいんだ。苦しんだんだね、悲しかったんだね……」

 ユウは席を立って、その光景を目に焼き付けていた。

「罪が君を殺すときがくるかもしれない。
 でもそれまでに、貴方が生まれてきた意味を知って、そして死んでいってほしい。それが僕の願い」
 慈愛に満ちた表情が向けられ、竜のおじさんから熱い涙がこぼれる。
「……それが僕の思い」
 花畑の中で竜のおじさんは涙していた、喜びと、赦されたことに対する激震であった。
「俺はどうしたらいいんだ。触れていいのか、こんな……こんな大愛に。いいのか、俺だけが……」

 勇者の心はユウの方へと目を向ける。
「ユウ。ありがとう、彼の事を守ってくれて」
 ユウは精一杯気持ちを込めて、勇者に言った。
「勇者様、俺!俺! 強くなって、勇者様みたいに……!」
「勇者は何より心を守ること。忘れないで」
「はい……!」
 ユウは頷くと、高揚した心で胸に拳を置いた。

「猟兵さん」
 勇者の心がふわりと体を浮かせて、テーブルの方へ近づいた。
「しばらく、彼がこの世界の優しい人たちに触れるのを見守っていてほしい」
 ティティス、祝聖嬢、伽藍が顔を見合わせた後、勇者の心を見た。
「了承した」
「まかせて」
「幸せを振りまくよ♪」
 元気な返答に、勇者は優しい声で頭を下げた。
「……ありがとう」
 にこやかに微笑むと、伽藍ががらんどうにしまっていたオルゴールの方へと入っていった。

ユウが立ち上がろうとした時。
伽藍がその背に、語り掛けた。
「ゆうきって いろいろあるの
 自分の弱さを認めるのも勇気
 他者に助けを求め、感謝をするのも勇気

 友の過ちを認めて、許すのも、勇気
 ユウは だいじょうぶよね?」
 その声を聴いて、元気よくユウは頷く。
 そして、竜のおじさんへと駆け寄っていった。

「あたらしい ページ
 大いなる勇者と、新しい勇者の場面…
 ものがたりに また1ページ」
 小さな勇者を見送って、伽藍はつぶやいた。

 花畑の中で、熱い涙をぬぐった竜のおじさんにユウが駆け寄る。
「おじさん、行こう。僕が、おじさんを守るよ」
「ユウ……情けないおじさんですまないな」
 おじさんは立ち上がり、ユウに向き直る。
「勇者に言われた通り、私はもっとこの世界を見ようと思う……それまで傍にいてほしい」
「うん!」
 ユウはガッツポーズを決めた。
「罪が私を殺すまで……一緒だ」
 そういうと、竜のおじさんはユウを抱きしめた。

 その様子を、全員が見守っていた。未来が明るいことを信じて。


◆がらんどうの中で……
 ふわふわとオルゴールが回りながら、伽藍と勇者の声が聞こえる。

「オルゴールから勇者様の強い信念を感じる……」
「僕は強くはないよ。全ての人に赦されるとは思えなかった」
「憎しみを抱く存在は消えない 決断を決めたのはなぜ?」
「悪に飲まれた人こそ、愛に触れてほしいと思ってたんだ」
「それは誰の愛?」
「ミルベールのお父さんは小さいころは優しかったと聞いていた」
「美しい思い出 信じること それも強さ」
「ああ、僕は信じてる」

 がらんどうの中でオルゴールが鳴る。
 新しい勇者の歌が聞こえるのも、もうすぐかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年12月15日


挿絵イラスト