#サイバーザナドゥ
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速く、もっと速く。その望みのためだけに集まった者たちの饗宴とも呼べるマシンパーツの蚤の市は、個人間の小規模な取引から始まったとは思えないほどに規模を大きくしていた。
それこそ、目障りとも思われるほどに。
「今回はサイバーザナドゥで事件なのです!」
摩天楼とは縁がなさそうな小柄な体で綿貫・小雨は自分の体を大きく見せるかのように腕を広げて宣言した。迫力はまったくないその姿ではあるが、これから事件が起こるだろうことを見たものに理解させるにはそれで十分だ。
「サイバーザナドゥで走り屋をしている方たちの蚤の市……というにはかなり規模の大きいお祭りが定期定期に開発中止区域で行われているのです」
新しい道路を通す予定が土地関係のゴタゴタでバッツリと絶たれたように開発が中止されている行き止まりでどこにもたどり着けない通り。それがどこまでも走り続ける走り屋たちの祭りの舞台になっているのは随分と昔からであるらしい。
蚤の市の詳細をまとめたらしい紙にはそのあやふやなその始まりと、規模が大きくなり起こった抗争とそれらすべてが『速さ』で解決されてきた歴史も綴られている。
「本当なら蚤の市の方たちに避難してもらって、オブリビオンを撃退すれば済む話なのですが……その、そこにも書いてある通り避難をしてほしい方たちは、ちょっとやそっとでは動いてくれない方たちなのです」
オブリビオンを倒すことだけなら、そこまで難しいことでもない。集団で襲い掛かってくる量産型の蹂躙鉄腕機兵は侮ってはいけない敵ではあるものの、歴戦の猟兵たちに対処ができないというほどではないのだ。
むしろ問題なのは、助けるべき人々の方である。
「彼らは走り屋の中でも特に速さに拘る集団なのです。それこそ、自分たちより遅いものの指示には絶対に従わないほどに」
彼らの価値観では速ければ速いほど尊敬され尊ばれる。逆を言えば遅いやつは軽んじられてしまうため速さを示さなければ話すら聞いてくれない有り様だ。
たとえどれほどの力で脅したとしても彼らは屈しない……だからこそこのままでは、逃げずに立ち向かって多くの犠牲者を出してしまうことになる。
「幸い速さに拘るあまり速ければなんでもいい、という境地に至っているようなのでありとあらゆるものを使って、彼らをぶっちぎってください!」
速さを認めさせることができるなら方法はなんでも構わない。二輪や四輪で挑むのは基本として、キャバリアを出してもいいし動物に乗ってもいい。速くありさえすれば生身だって問題ないだろう。
「早いとさえ認められれば、彼らは話を聞いて指示にしたがってくれるようです。そうすれば、後はオブリビオンを倒すだけですよ!えいやっと退治して、蚤の市の守ってくださいね!」
ぬぬかぬれ
はじめましての方ははじめまして、ぬぬかぬれと申します。
サイバーザナドゥ世界の三章からなる話です。
走り屋たちを速さでねじ伏せ納得させて、無事に危機を排除してください。
●1章 冒険
速くなければ相手がどんな立場でも頑として言うことを聞かない走り屋たちを速さで納得させてください。
純粋に速度で勝負するもよし、多少のズルでも早いと思わせられれば構いません。
クラッシュする相手を目にも止まらぬ速度で助ける、なんて速さの魅せ方でも彼らの心は動くでしょう。
競う相手ではありますが守る対象でもあるので、怪我には気をつけてください。
2章は量産型蹂躙鉄腕機兵『ゴーレム・ガール』との集団戦。
パワー自慢の相手を複数相手する戦闘です。
3章は無事に開催できた走り屋たちの蚤の市で思い思いに買い物をしたり、熱気を楽しんだりしてください。
もしかしたら掘り出し物もあるかもしれませんし、ガラクタでも気に入ればいい記念品です。
アドリブ禁止の場合は簡潔で構わないので明記してください。ア禁などだとわかりやすいです。
共闘は明記されていない限り行いません。
第1章 冒険
『ハイウェイスター!』
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POW : アクセル全開でぶっちぎるぜ!
SPD : 華麗なライディングテクでぶっちぎるぜ!
WIZ : 魔法や破壊工作といった常識外れでぶっちぎるぜ!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
佐藤・和鏡子
愛車の救急車と純粋な運転技術のみで勝負します。
純粋な運転技術(ユーベルコード込みで運転技能レベル1550)のみを駆使して真っ向勝負を挑みます。
多少エンジンや足回りを改造してるとはいえ年代物のアメ車相手に運転技術で負けたらさすがに納得するでしょうから。
スリップストリームでパワーの余裕を作って加速、相手の動きを読んでフェイントで隙を作って抜き返すなど、正統派のテクニックを駆使してクラッシュはもちろん接触すらさせない徹底的にクリーンでフェアなレースをするようにします。
相手に『これで負けたら言い訳のしようがない』と納得させないといけないですから。
※アドリブ共闘全て大歓迎です。
「とんだ骨董品じゃねえか!博物館はここじゃねえぜお嬢ちゃん!」
笑い声と共に向けられた挑発を、和鏡子は注射に駄々をこねる子供を相手にでもするように柔らかく微笑みながら受け流した。ただの性能比べならば彼らの言うことは正しいだろう。しかし車というものは、それを十全に扱える運転手こそが重要なのだということを彼女は知っている。
「無理をして、お怪我をしないでくださいね」
変わらぬ微笑みで向けられる本心からの気遣いは、ウェットに富んだ丁寧な"お返し"と取られたようだった。
「車には、走り方というものがありますからね」
先行していると余裕だった走り屋の表情は、後ろにビタリとつけて追ってくる救急車の前には長く続かなかった。ちらりと振り向いての確認が段々と焦りを帯び、やがて信じられないものを見る目に変わっていく。
焦りは運転に現れる、それが事故に繋がらなくても恐怖は残る。わずかにハンドルを取られた経験は走り屋にアクセルを踏むのを本能的に躊躇させた。その一瞬だけで和鏡子と、彼女の救急車には十分だった。
「ふふ、横を失礼します」
巨大であるはずの車体はタイヤがとらえた道路以外のあらゆるものに一切接触することなく、滑るように走り屋のマシンの横をすり抜ける。腕に覚えのある者たちであればこそ、それを見て理解した。
あれはマシンが強いから速いのではない。ハンドルを握っている者が上手いから速いのだ。圧倒的力量差。あの摩天楼には場違いなほど古いマシンは世間知らずの蛮勇でなく、強者の余裕だったのだと。
ゴールを突っ切った救急車にも、それから降りてきた和鏡子にも誰もなにも声をかけられない。速いというのは強いと言うこと。強者を前にして、彼女より体格で勝るはずの走り屋たちは、すっかりと診断を待つ患者のように従順になっていた。
「あの、お怪我はありませんよね?」
あまりに静かになってしまった走り屋たちに少し不安になった和鏡子が声をかければ、彼らは千切れるように首を縦にふって無事を知らせてくる。
その様子に少しだけ驚いたものの誰も怪我なく終われたことに安堵する和鏡子に、おずおずと一人の走り屋が話しかけてきた。
「なんで……そんなに速いんです?」
走り屋にとっては人生そのものと言うほどの「速さ」の秘訣。しかしどうしても相手を労る微笑みとあのドライブテクニックが繋がらない。
そう考えての問いかけだったが、和鏡子からすればその答えは背後の救急車がその存在と共にすでに示しているようなものだった。
「だって、救急車が速くないと困るでしょう?」
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「速度勝負か…どこにでも速度狂はいるのだな…」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開し空気抵抗と妨害対策をしながら必要なら追加ブースターも駆使して速度を上げます。
光と速度の“海”の中を疾走しながら障害物にはアルテミス・レーザーとリニアロングボウで迎撃対処します。危険行為と妨害行為に対しては空間飛翔にてテレポートで避けながら速度を落とさずに疾走します。
ライディングをしながらファンネルを通して他の速車や敵者を注視しながら飛翔走行し、電束力で疾走します。
「速度勝負か…どこにでも速度狂はいるのだな…」
「妨害横槍なんでもあり、一番速くゴールまで辿り着く。ルールはそれだけだ」
走り屋たちのルールの中でも「なんでもあり」とされるものは最も危険が伴うものだ。人為的に作られた悪路とも言えるその道中を高速で駆け抜けられたのならば、その速度を証明できるというのは疑うべくもない。
「問題ない」
だがどれほどの妨害があろうと、ティティスにとってそれは考慮するほどのものではなかった。生涯を排除するなんてことは、当たり前の常なのだから。
「妨害を確認、排除する」
走り屋の手元を離れた瞬間にビットに跳ね上げられた小さな球体は、花火のような閃光と爆発でティティスの髪をわずかに揺らした。なにかしようとする段階で全て排除されては、なんでもありと言えども手も足も出すことができない。
その上走り屋が用意できるような妨害道具など、ティティスの武装が本来想定している攻撃と比べてしまえば児戯に等しい。しかしそれがただの花火のように感じられるのはティティスのみ。戦闘用に練り上げられた彼女とは異なり、杜撰な扱いをされていた建築資材に衝撃を与えるのには十分だった。
ぐらりとバランスを崩した鉄骨が地面に降り注ぐのを見て走り屋は慌ててブレーキをかける。しかしティティスは止まることなく、むしろ追加ブースターを用いて更にその速度を上げた。
「おいアンタ……!」
走り屋のかける声よりも速く、落ちてきた鉄骨を避けることなくティティスはその真ん中を少しも速度を落とすことなく突っ切った。レーザーによってまるで空間ごとくり抜くかのように二つに分かたれた鉄柱はそのまま重力に従い地面に落ちる。
その落下音すら置き去りにするようにしてティティスは空を走る流星のようにブースターの残光を尾のようにたなびかせ、影さえ踏ませることなくゴール地点を通過した。
「勝敗は決した、それでいいな」
「ぐうの音も出ねえよ、アンタは速い」
自分が考えた妨害どころか天運すらその速度を止めようとしても速度を緩めることすらできなかったティティス相手に、その速さを否定するようなことは走り屋たちの誰にもできるはずがない。
「ならば、勝利だ」
元に戻ったティティスのつま先がザラリとしたアスファルトに触れてコツリと音を立てるのを、走り屋たちは言葉を発することなく、速い者への畏敬の念と共に眺めていた。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(改造装甲車【エンバール】に搭乗)
速い奴が偉い……シンプルで判りやすくて良いね…
ハッカーの技術に対するものと通ずる価値観を感じるよ
それじゃぁ……ハイウェイを流して蚤の市を目指していそうな走り屋を見つけ次第合図を送って勝負を仕掛けるか…
…【数理導く知性の眼】を使って最適なコースを割り出して突き進むとしよう…
……多少の妨害もビックリドッキリギミックを多数仕込んでいるこのエンバールには無意味だしね…
…流石に体当たりだけは(相手が)危ないから回避して相手よりも先にゴールである蚤市を目指すとしようか…
…そのまま認めて貰えば色々と手間も省けそうだしね
速いやつが偉いという基準はシンプルでわかりやすい。力量差が目に見えるし、勝ち負けをはっきりわからせてしまえば後から駄々をこねて負けを覆そうとするのも難しくなる。
メンカルはそこに自分のよく知るハッカーの技術につながるものを感じて、変わらぬ表情のまま周囲を見渡した。エンバールと共にあるからだろう、走り屋と思われる者たちの視線を感じる。
「合図は……これで」
ゴールだけ記された簡易メッセージ。それを送られた者たちはそれを挑戦状であり、無言の挑発であると取った。速いと思えるのなら乗ってこい、と言われていると。
それを言われて乗らないのならば走り屋ではない。簡易メッセージを受け取った者の全てがスタートの合図を待ちながらエンジンを回転させた。地響きのように排気音が鳴る中で、それでもかき消されないけたたましい電子音がスタートの合図になった。
「妨害か……エンバールには無意味だけど」
生意気なよそ者の出鼻を挫こうと行われた妨害は、エンバールの装甲に触れることもできなかった。ギミックの数でなら改造装甲車であるエンバールは走り屋のマシンよりも遥かに上回っているのだから、メンカルにとってはなにも意外なことではない。
それよりも問題は無謀にも自分のマシンを使って物理的に妨害してこようとする者たちだ。エンバールに危害が加わるから問題なのではない、何一つ傷がつかない改造装甲車がマシンごと走り屋を害してしまう方が問題なのだ。
「避けて……そのまま、速く」
ぐんと速さを増したエンバールは群がる走り屋たちを引き離し、最適なコースでゴールまで向かっていく。
マシン性能と最適化された運転、そして不可能にすら思えるコースすらリスクなく踏破していく数理導く知性の眼の前では、どれほどの速度自慢でも突き放されてからゴールまで一度も影を踏むことすらできなかった。
「手間が省けた……かな」
一番に滑り込んできたエンバールを目にして、蚤の市の走り屋たちも少なからずメンカルとエンバールを認めたことが感じられる。これならば話を広めて貰う必要もなさそうだ。
話も速ければ、今後の動きやすさも変わってくる。成果に満足したメンカルはなにも表情に出さないまま、わずかに埃をまとったエンバールの装甲を撫でた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『量産型蹂躙鉄腕機兵『ゴーレム・ガール』』
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POW : ゴーレムインパクト
単純で重い【蹂躙鉄腕「ゴーレムアーム」】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ゴーレムスマッシュ
【ゴーレムアームに搭載されたロケットの噴射】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
WIZ : ゴーレムロケットパンチ
自身の【戦闘能力の減少】を代償に、【ロケットエンジンで飛翔するゴーレムアーム】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【質量を活かした攻撃や腕に装備したブレード】で戦う。
イラスト:もろ蔵
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
驚くほどあっけなく走り屋たちは開催期間をずらした。元々期間なんてあってないようなものではあったが、彼らにとって重要なのはそこではない。
「あれほど速い人達に言われたら」
あらゆる面で速さを見せつけられた走り屋たちは、なぜ逆らう必要があるのかと不思議そうな顔すらしてみせた。
そこまで信頼されたのならば、やることは一つ。
なるべく"速く"障害を排除し、彼らの元に開催可能の吉報をもたらすのだ。
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「量産型の近接範囲攻撃型…近付く前に迎撃し駆逐して撃滅する」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開し敵の攻撃をテレポートで空間飛翔して回避しながらアルテミス・レーザーとリニアロングボウで的確に各個撃破しつつ大量投入に対してはフルバーストとヘラ・エウピションにて総攻撃を仕掛けます。
他にも透明化にて敵を阻害しながらドローンも駆使して自爆や吸着型にて各個撃破の取りこぼしを防ぎます。
他にも猟兵との信号や通信などで連携しながら完全排除を目標と遂行します。
ボディの少女らしい線の細さとは裏腹に、重機のような足音を響かせているゴーレム・ガールは量産型蹂躙鉄腕機兵の名に相応しい物々しい機械の腕を引きずるようにして押し寄せてきた。
明らかに物量をもって物理ですりつぶすことを目的としたものだが、迎え撃つティティスにとっては"当たれば致命の一撃"は当たらないのならば存在しないものと変わらなかった。
そして彼女には、そうできるだけのスピードが備わっているのだ。
「量産型の近接範囲攻撃型……近付く前に迎撃し駆逐して撃滅する」
ロケット噴射によって加速された攻撃もすでに見えていたのならば避けることは造作もない。ティティスの姿はゴーレム・ガールの拳が触れる前に掻き消え、強力なはずの一撃は髪の一本にすら触れることができないまま大きな隙へと変わる。
背後から叩き込まれたレーザーは的確に動力部を撃ち抜き、バチバチと激しい音を立てながら起動を停止する。どう避けて、どこを射抜けばいいのか、ティティスにはその結果すらもすでに見えていた。
「敵性存在の攻撃範囲を利用、数を減らす」
展開したビットやドローンに翻弄されるゴーレム・ガールは、命令された攻撃を実行するために現れては消えるティティスを追う。機兵のセンサーからも消え失せる透明化は、五感ではなくセンサーで判断する機兵であるからこそより一層その姿を見失わせた。
捉えた、とゴーレム・ガールがアームのロケット噴射を起動させ振りかぶる。しかしティティスは先程見たその攻撃を利用して効率よく排除するために、あえてその姿を現したのだ。
拳を振り下ろす一瞬の間にテレポートで飛翔すれば、後に残るのは破壊の跡。強力な攻撃は、同型機にとっても恐ろしい一撃になる。広範囲の攻撃は多くのゴーレム・ガールを巻き込んでアスファルトを黒く焦がした。
「これで終わりだ」
大きく数を減らしたゴーレム・ガールが全て活動を停止するまで、ティティスの攻撃の手が緩むことはない。最後の一体を最初と変わらない精度で射抜いて、動きを止めるまで確認してから周囲を見渡す。
ここに現れた敵は全て破壊したことを確認し、この場所での戦闘が終了したと信号を出した上で傷一つない姿のティティスは小さく息を吐いた。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
うーん、認めさえしてくれれば話は速いんだよね……
さて……その期待に添うだけの働きはするとしようか…
…量産型の機兵ならこれで対処するか…ゴーレムアームを飛ばしてくるにしてもどっちも無機物…
…アームの攻撃を術式組紐【アリアドネ】を張り巡らせた結界で防いで…
【天地に響く崩塵の歌】を発動…音響ガジェットを召喚して音響による振動によりダメージを与えるよ…
…ただ、そのままだと周囲の建物にも被害が及ぶから…操音作寂術式【メレテー】によってゴーレムアームと本体だけを効果範囲になるように音を操作するとしよう…
…蚤の市も楽しみだからね……さっさと退場して貰うとしよう
想定したよりもあっさりと避難した走り屋たちに少しだけ拍子抜けしつつ、メンカルはいかにも工場生産品といった姿のゴーレム・ガールの群れと対峙する。全て同じ姿、全て同じ表情は彼女たちが作られた存在であることを如実に表していた。
少女めいた外見であったとしても機兵、生体パーツが用いられていたとしても破壊力を求めて作られたのであれば攻撃用のパーツに使われているのは無機物であることは間違いはないだろうとメンカルは冷静に判断する。
静かに佇んでいるだけのように見える存在にも命令の通りに排除するのが機械である。たとえそれが本来ならばターゲットではないとしても、躊躇することなくゴーレム・ガールは排除のためゴーレムアームで狙いを定めロケットのエンジンに火を付けた。
だがそれが届く前に細い紐状の結界で阻まれ、まるで蜘蛛の巣に囚われたかのようにピタリと止まる。エンジンが火を吹き装甲が不快な金属の軋む音を立てても表情一つ変えないメンカルの元には熱すら届きはしない。
「周囲の影響を最小限に……対象をゴーレムアームと本体に指定……」
響き渡っていたエンジンの燃える音がなくなる。操音作寂術式【メレテー】によって音を隔離されたゴーレム・ガールは、それに気づくことなくもう一本のアームを飛ばす予備動作を行っていた。
まるで別世界のものが姿だけそこに浮かび上がってしまっているような、異様な静寂。戦闘中とは思えないほどのその光景にも瞳すら揺らさず、メンカルは静かに言葉を紡ぐ。
「絡繰の鳥よ、歌え、奏でよ。汝は天響、汝は挽歌。魔女が望むは崩れ滅びる鎮魂歌」
召喚された音響用ガジェットが奏でる演奏は、隔離された外側であるメンカルにも周囲の建造物にも届かない。ただ音がないまま、激しい振動でゴーレムアームが、そして本体であるゴーレム・ガールがその攻撃の正体すら掴めないままバラバラに崩れ落ちていく。
術式が解かれ、ガシャンという音が周囲に響く。メンカルにとって、倒した証明はそれだけあれば十分だった。
「被害はなし、退場も速やか……これなら、問題ないだろう……」
危険を排除できたとしても、この場所が人が集まるのに不適切なほどに破壊されれば蚤の市が行われなくなるかもしれない。危険とともにその可能性も排除できたことに、メンカルはほんの少しだけ満足そうな様子で瓦礫一つない周囲を見渡した。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍(サポート)
生まれも育ちもサクラミラージュ。誰かの願いで転生した元影朧。そのため影朧には同情しがち。
それなりの良家の出で言葉遣いは丁寧。だが両親とは違う種族で生まれたのを悩み高等部(高校短大相当)卒業を機に家を出ている。現在は帝都で占い師。
もふもふ大好き。
実家ではいろいろ我慢してたのもあって、飼えなくとも一人暮らし&猟兵となったことで爆発しがち。
猟兵になっていろいろ経験し悩みを乗り越えた。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭いません。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は絶対にしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
複数のゴーレム・ガールを前にした藍は、敵の外見が無骨であったことにそっとかすかな安堵の息を吐いた。たとえ可愛らしかったとしても倒すべきものは倒す、ということに変わりはないがそれでも痛む心というものはある。
破壊に特化したようなその見た目は、集まりを妨害するためでなく集まる人間ごと粉砕することを目的としていることがよく分かる。戦う場合の攻撃力も相当なものになるだろうことは、藍には容易に理解できた。
「一発でも当たれば危険です」
機動力までは持ち合わせていないと判断した藍は、なるべくゴーレム・ガールから距離を取ることを選択した。力任せに振り回す腕から逃れるだけならば、それで十分だからだ。
だが相手は蹂躙するために作られた機兵、飛び道具の一つもないということはあまり考えにくい。種類によってカウンターを考える必要がある、と藍が考えていたところで焦れた敵の方が次なる公道をしかけてくる。
「なるほど、そうなっているんですね」
強力な一撃を食らわせようとゴーレム・ガールが狙いを定め、ロケットエンジンが唸りを上げる。これから来る攻撃を予想した藍は、避けることを選ばなかった。
避けられなかったわけでも、自棄になったわけでもない。避けなくても問題がないと、自分の力を理解している彼女にはよくわかっていたからだ。
「飛ぶ武器はそちらだけのものではないんですよ」
藍から淡く輝くように力がほとばしり、にわかに周囲の空気が変わる。空間に現れた無数の黒い三鈷剣は幾何学模様の軌跡を描きながら、まるでそれぞれに意思があるかのようにゴーレム・ガールに襲いかかる。
頑丈な装甲があったとしても、神器の波状攻撃の前にはひとたまりもない。迫りくるアームは粉々に砕け散り、藍に届くことなく地に落ちた。
後に残るのは元機兵のスクラップ。無軌道であったように見えた神器は敵対者以外には傷一つつけず、まるで無数にあったことが幻のように元の一本に戻る。
藍はそっと指先で鳴神を撫でると、宙色の瞳をわずかに伏せてからしっかりした足取りでスクラップに背を向けて歩き出した。
成功
🔵🔵🔴
佐藤・和鏡子
接近パワー型の機種の集団相手に真っ向勝負を挑むのはさすがに無茶なので、逃げる振りをして敵を集めた所に強射を撃ち込んで一網打尽にします。
パワーはあってもあまり性能のよくないコンピューターで動いているようなのでこちらのちょっとした動きに乗ってくれるはずですから。
強射は威力が高い反面、一発しか撃てないので、出来るだけ多くの敵を火線上に集められるように高架になった道路やトンネルなどに誘い込むようにします。
明らかにパワー型の機体、しかも相手に真っ向から挑むのは避けたい。けれど複数いる敵を一体一体倒していくのでは、効率も悪いし横から別の敵の横槍が入ってこないという保証もない。
ならば狙うのは一網打尽。目的が明確に指定された量産型故に柔軟に判断できる高度な思考を備えていないと判断し、和鏡子はあえて自分を追い込んでいるように見せるよう動いた。
「私はここですよ。そう、こっちです」
幸い避難が完了しているため周りに人はいない。そこにいる人間を蹂躙するために派遣されたゴーレム・ガールたちは唯一の動くもの、その場にいる攻撃対象めがけて思い足音を立てながら迫ってくる。
狙いがそれないように牽制の攻撃を交えつつ、追い立てられているかのようにゴーレム・ガールを引き連れて和鏡子は目的の場所まで進んでいく。
もしもゴーレム・ガールたちに目的を排除する以外の思考能力があったのならば、追われ逃げているように見える和鏡子が傷一つないことに気がつけただろう。弱者を蹂躙することを目的として作られたのでなければ、逃げ惑っているのでなく明確な意図をもって移動していることもわかったはずだ。
「こちら、行き止まりみたいですよ」
途中で工事が放棄されたせいで行き止まりとなった道路。そこに追い込まれたはずなのに微笑む和鏡子が発する命の危機に瀕しているとは思えないほどの穏やかな口調も、攻撃だけを目的としたゴーレム・ガールたちは疑問に思うことができなかった。もしもできたところで、もうすでに手遅れでもあったのだが。
和鏡子の救急箱からにわかに光が漏れだし形を変える。その変形が完了した直後、周囲を塗りつぶすほどの光を伴う荒れ狂うようなエネルギーが、迫りくるゴーレム・ガールを貫きそのまま飲み込んだ。
「……ふう、全部倒せましたね」
オーバーヒートにより熱された息を吐きだしながら、すっかり元に戻った救急箱を横に和鏡子は地面に座り込む。眼の前にいたはずのゴーレム・ガールは一体残らず荷電粒子砲に消し飛ばされて跡形も残ってはいなかった。
周囲に敵性反応はなく、しばらくそのままでいても誰も和鏡子を邪魔するものはいないだろう。遠くからかすかに聞こえる走り屋たちのマシンのエンジン音だけが、静かな空間に響いていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『アンダーグラウンド・ショッピング』
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POW : 役立ちそうなアイテムが売ってないか見て回る
SPD : 掘り出し物がないかじっくり吟味する
WIZ : 有利に取り引きできるよう交渉する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
襲撃などなかったかのように、当初の予定通り走り屋たちの蚤の市は開催された。
そこにあるのはマシン強化のパーツや、まだ使えるかもしれないなにかのスクラップ。マシンの装飾用のスプレーやステッカーもあれば、本当になにに使うのかわからないような機械の破片のようなものまで様々だ。
この蚤の市ではなにを買うのも自由。どんなものに価値を見い出すかは人それぞれ。
ルールが一つあるとすれば、それは「速い者勝ち」ということだけだ。
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「レースも終わった…帰還するか」とテレポートを準備していると小さな男の子と手を引かれている女の子がメモとぬいぐるみを手にキョロキョロと探しているのを見て「姉なら「助けて上げな♪」と言うだろうな」と近付いて膝を曲げて「エライな、探し物なら手伝おう」と優しい笑顔で手の平を差し出しながら声を掛けます。
聴いてファンネルをモニターにしてマップと連動させながら品物を探しながら買い物をしていると女の子がジュースを見ているから男の子に「私よりも貴方からの方が嬉しいだろう」と購入して手渡すと女の子はぬいぐるみを男のに預けてジュースを両手で持って飲んでいる姿を見て「次はキミのだ」と渡す。
先程までの戦いなどなかったかのように賑やかな声が聞こえてくる蚤の市を眺めながら、ティティスは自分の仕事が終わったことをその場の少々浮ついた空気から実感していた。
「レースも終わった…帰還するか」
戦う必要もなければ、もはや速度を競う必要もない。ならば帰還するまでと準備をしていると、眼の前をいかにもなにかを探しているといった様子の子供が通りかかる。
別に助ける必要はない。それでも姉がここにいたならば、きっと助けるように言うだろう。そう考えて、ティティスはそっと近づき幼い子どもたちの前に跪いて微笑みながら手のひらを差し出した。
「エライな、探し物なら手伝おう」
突然話しかけてきた美女に子どもたちは慌てたものの、手伝ってもらえるならとおずおずと下手な字の書いてあるメモを差し出した。どうやらそれは小さなマシンのパーツのようで、話を聞いてみると子どもたちの予算でも買える範囲で考えた精一杯の兄貴分へのプレゼントらしい。
そこまで珍しいものでもないのだろう。周囲のマップをファンネルのモニターに反映しながら探せば、それらしいものは数個見つかった。どうやら買うのは一つではないようなので、店を梯子するようにして目的のものを買い揃えていく。
その道中、女の子の足がふと止まる。視線の先にはいかにも人工甘味料といった色をしたカラフルなジュースが並んでいた。元々パーツの売買から始まった蚤の市も、今では飲食物を売る店も少なくなくなっている。
「私よりもキミからの方が嬉しいだろう」
さり気なく購入したものを男の子に渡すと、小さな声でティティスにお礼を言いながらジュースを女の子に差し出した。喜んだ女の子は、抱きしめていたぬいぐるみを男の子に渡して嬉しそうに両手で飲み始める。
それを眺めている男の子に、もう一杯のジュースが差し出された。差し出している手はティティスのもので、そっと持っているぬいぐるみを預かり男の子の空いた手にジュースを渡す。
「次はキミのだ」
先程よりも大きな声のありがとうを聞きながら、手の中のぬいぐるみを眺める。女の子の一口の小ささを思うと、これが持ち主のもとに戻るまでにはもう少し時間がかかるだろう。帰還の予定は随分と先延ばしになってしまったが、ティティスはそれでも微笑んで子どもたちを眺めていた。
大成功
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メンカル・プルモーサ
さーてここからが本番だ……なにか掘り出し物あるかなー
こう言うところでの醍醐味は……やっぱりよく判らないジャンク品漁りだよね…
…本来の用途に使えなくても別の用途に使えるかも知れないし……と
…
ジャンク品を買い漁るついでに店主と世間話をして情報を集めようとするか…
企業の動き、裏社会の動き…これだけ人が集まってるなら走り屋に関係する諸々の情報は集まりそうだからね…
走り屋達のたまり場(飲み屋台)にも顔を出して今後のためにも情報交換をしておくとしようか
いったいどこから持ってきたのか、なんの用途に使われていたのか。小型の折り畳みコンテナの中に詰め込まれた部品は個別に値段を付ける気もないようで、1キロ単位で投げ売りされている。
メンカルが持ち上げたなにを計るか定かではないメーターは、元はなにかに組み込まれていたものらしい。その横に突き刺さっているシャフトは未使用なようなので、新品も中古品も区別はされてないようだ。
「これは……なんのメーター?」
「エンジンでも速度でもねぇのはわかるが、それ以外は俺にもわからねえ」
「元々なにに……ついていたかも?」
「さあな、でも処分にも金がかかるんで企業は捨てちまうんだよ」
おそらく不法投棄されたメガコーポの廃棄物だろう部品たちを眺めても、元々なにに使われていたかという形は見えてこない。流石になにに使われていたか分かるような機関部分はここにはないのだろう。
それでもこれだけちゃんと形が残っているならば、なにか他のことに転用するのも難しくはないはず。そう考えたメンカルは複数の部品をまとめて購入する旨を店主に伝えた。
「はいよ、1キロ分まけとくな!」
「これ……どこから来たか……わかる?」
「そこそこ遠い企業都市だった気がするが、拾ってきたやつのがわかるだろうな」
拾ってきた人はここにいるのか、今日一番走り屋が集まっているとしたらどこか、売れたことで期限を良くしたのか店主はメンカルの細々とした質問までなんでも答えた。ついでにと話した内容も、他の情報と合わせれば企業の動きを予測する補助になるだろう。
別れを告げて走り屋が集まっている場所まで移動したメンカルは、まずすでに盛り上がっている走り屋たちの話に耳を傾けた。そうやってかなりの人数の中から、有用な話をしていそうな集まりに目をつける。
「その……道を塞いでいたものの話……聞かせてくれる?」
彼らからすれば単なる障害物であったとしても、話を聞く限り企業が関わっている何かしらであると推測できた。
やはり人が集まるところには物も人も集まるものだ。メンカルは予想通りの結果に満足しながら、彼らの話を聞くために椅子代わりにされたプラスチックのコンテナに腰掛けた。
大成功
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佐藤・和鏡子
車関係のレアアイテムが集まるようなので、救急車に使える強化エンジンや足回りのパーツが無いか探してみようと思います。
私の救急車は旧型(1955年型)のアメ車なので一般向けより強化されたレース仕様や警察仕様のアメ車の中古パーツがありそうですし、目当てのパーツは無くてもこういった市場を見るのは楽しいですから。
果たしてサイバーザナドゥに、旧型の救急車に使えるようなパーツはあるだろうか。そんな事を考えながら、和鏡子は賑やかな走り屋たちの蚤の市を眺める。
これだけ色々なものが売られているのなら、なかったらなかったとしても売られているものを見るだけでも楽しめそうだ。そう考えながらいくつかの店を眺めていく。
「これは流石に組み込めませんね」
エンジンに連動して光るらしいチューブ状のパーツは、どうやらマシンの側面に這わせてビカビカと光らせるためにあるようだ。これを救急車につけたとしても、機能が向上せず派手さだけが跳ね上がってしまうだろう。
マシンを早くするためのパーツだけでなく、拾ってきた使えそうなものもこれを機に売り払ってしまおうという意思が感じられるような品揃えが面白くなった和鏡子が辺りを見渡していると、視界の端に積まれている大きなものが目に入った。
「これは……」
積み重ねられてなんらかのオブジェに見えるそれは、タイヤのホイールだった。見た目だけなら新品に見えるが、おそらくタイヤの規格が変わったとかそもそもタイヤを使わなくなったとかでここに流れてきたのだろう。
サイズも救急車に取り付けるのに問題はなさそうに見える。ホイールは消耗品でもあるので、良いものが予備として確保できるのならばいい買い物をしたと言えるかもしれない。
「お嬢ちゃん、そっちのパーツは規格が古くてあんま使えたもんじゃないよ」
「いいえ、これがいいんです」
実際に試してみなければ使えるかどうかはわからないが、それでも使えそうなパーツがあったことに和鏡子は笑みを浮かべた。古いと言われても今でも現役で存分に走れる救急車よりも新しく、特殊な金属で作られていて丈夫そうだ。
タイヤのホイールを購入すると、大きな商品が売れたのが嬉しかったらしい店主が和鏡子が遠慮するのも気にせずにおまけとして別の品物もつけてくれた。
「ええと、どうしましょう」
それがあのよくわからない光るチューブだったので、押しに負けて受け取ってしまった和鏡子は少しだけ当惑して「なにかの役には立つかもしれない」と気を取り直した。
こういうよくわからない買い物も、ある意味ではこういった市場の楽しみではあるのだから。
大成功
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