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ノーマーシー・デスボールゲーム

#サイバーザナドゥ #ジェノサイドボール #ミカド・ザイバツ

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#サイバーザナドゥ
#ジェノサイドボール
#ミカド・ザイバツ


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●ルーザーズ・フェイト
「グハハハ! お前もこれまでのようだな!」
 熱狂的な歓声が飛び交う中、コートの上では凄惨な光景が広がっていた。
 周囲に絶命した選手の死体があちこちに転がる中、下手人と思しき巨漢の男が唯一生き延びたであろう少女の首根っこを片手で掴む。
 彼女がチームのキャプテンと言う事なのか、意図して半殺しまでに留めたようだ。
「こ、殺すならさっさと殺しなさい……覚悟はとうに出来ております……」
 四肢は大破し、最早抵抗する力も残されていない少女が巨漢の男を睨み付ける。
 彼女は既に死を覚悟した目であった。

「では、望み通りここで惨たらしく殺して……と、言いたいところだが」
 巨漢の男がおぞましい笑みを浮かべると、身の毛もよだつ一言を口にする。
「お前を|トロフィー《戦利品》として持ち帰って、俺に忠実なレプリカントとして生まれ変わらせてやろう! グッハハハハ!!」
「なッ……!?」
 あまりにも恐ろしい宣告に、死を覚悟したはずの少女の表情が恐怖に染まる。
 そんな事をされるくらいなら潔く死を選ぶところだが……敗者に選択権はない。

 ――情けも公平さもない死の球技、ジェノサイドボールとはそう言う物なのだ。

●ジョイン・トゥ・ザ・ジェノサイドボール
「みんなはジェノサイドボールって言う競技を聞いた事はあるかしら?」
 集まった猟兵達を前に、アヤカ・ホワイトケープ(ロストイノセント・f00740)がその言葉を口にすると、スクリーンに競技の映像を映し出す。
 ジェノサイドボール……この世界で言うところのバスケットボールのような物なのだが、ルールは『シュートは2点』『40分後に点数の多いチームが勝ち』の2つのみで、選手同士の潰し合いが認められている。
 それ故、怪我人や死者が出るのは日常茶飯事と極めて暴力的なスポーツだ。
 勝敗は当然のようにギャンブルの対象となり、常に大金が動く事からこの血生臭い競技はサイバーザナドゥで大人気のスポーツであるとアヤカが簡単に説明をし終えた後で本題に入る。

「そのジェノサイドボールでメガコーポのミカド・ザイバツがオブリビオンを投入し、相手チームを皆殺しにする予知を見たの。それを阻止するのが今回の任務よ」
 皆殺しにされる対象はヤクザクラン『黄龍会』と言う組織のチームで、大きな勢力を持っていながら完全中立を貫く事で知られている。
 しかし、その裏ではメガコーポ・レジスタンスへ秘密裏に資金援助や武器・乗り物などの供給を行っており、今回その尻尾を掴んだミカドがジェノサイドボールで合法的に潰しにかかろうとするとの事だ。
 もし彼らが壊滅すれば、レジスタンスにとって大きな痛手となるだろう。
「みんなにはまずは黄龍会と接触をしてもらう形になるわ。彼らは勢力圏の一つである最下層のダストエリアで人々に施しを行っているみたいよ」
 最下層と言う最低の生活環境の中で生きる人々を黄龍会は定期的に助けているそうなので、彼らの手助けをする事で信頼を勝ち得ればジェノサイドボールのチームメンバーに加わる事を認めてくれるはずだ。

「上手くチームに加わる事が出来れば、後は試合でオブリビオンと戦うだけなんだけど……一応、あんな内容でも球技は球技だから、ある程度『普通にジェノサイドボールをやる』事を忘れないでね?」
 そもそも試合に負けては意味がないし、何よりも本命のオブリビオンを引きずり出して倒す事が出来なければ任務完了と言えない。
 その事を忘れず試合に臨んでもらいたい、とアヤカが〆る。
「説明は以上よ。ジェノサイドボールに情けはいらないわ、派手にやっちゃって!」


NS
 はいどうも、|NS《えぬえす》でございます。
 今月はどこにしようか悩みましたが、サイザナにしました。
 久々のシナリオとなりますが今回もよろしくお願いします。

●目的
 ヤクザクラン『黄龍会』のチームに加わり、ミカド・ザイバツの放った刺客を退けてジェノサイドボールに勝利する。

 本シナリオは三章構成です。
 第一章は日常。黄龍会の手助けをし、彼らの信頼を勝ち取る。
 第二章は集団戦。ミカドの放ったオブリビオン選手との前哨戦。
 第三章はボス戦。投入した切り札であるオブリビオンのボスとの決戦。
 ……以上の構成となっております。

●ご注意
 プレイング受付は章の導入部分を書き次第開始ですので、少しお待ち下さい。
 リプレイはプレイングが届き次第、早めにお返し出来ればと思います。
 また、遅くとも失効までには必ずお返しする方針でやっていきます。

 第一章はクリアに必要な青丸が少ないため、この章のみプレイングを少し貯めてからリプレイをお返しする形となります。
 その際、プレイング受付締め切り日をタグで制定しておきます。

 もしプレイングの数がキャパを超えそうな場合、早めに受付を締め切ります。
 その場合はタグに『プレイング受付〆切』と入れるので、ご確認下さい。
 また締め切り後にプレイングが来た場合、申し訳ありませんが不採用とさせていただきます事を予めご了承下さい。

 それでは『|情け無用の死の球技《ノーマーシー・デスボールゲーム》』を制し、勝利を掴んで下さい。
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第1章 日常 『最下層の棄民生活』

POW   :    重たい瓦礫の撤去などを手伝う

SPD   :    治療や除染をして生活環境を改善する

WIZ   :    娯楽やリラクゼーションを提供する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●コンタクト・トゥ・ファンロン
 ダストエリアにやってきた物々しい装甲リムジンから、黄龍のタトゥーを体に刻み込んだ一人の少女がボディガードのヤクザを伴い降りてくる。
 今日は定期的に行われている黄龍会の施しの日だ。
「さあお前達、今日も活動を始めますよ」
「はッ、お嬢!」
 リムジンから降りてきた少女――黄龍会の現当主であるレイカ・コウリュウは落ち着いた様子で部下に告げる。
 ヤクザクランである黄龍会は勢力圏内の人々への施しや庇護をする事で、暴力ではなく信頼によって支持を得ると言う、悪の暴力組織であるヤクザらしからぬやり方で規模を拡大してきたと言う。
 それ故、彼らの勢力圏内に暮らす人々からは厚い信頼を得ているのだとか。
 先代から行われ続けてきた伝統を、彼らは今も守り続けているのだ。

「……今日はいつもより人員が少ないですね?」
 リムジンの後ろに付いてきた、黄龍会のトラック荷台から降りてきたヤクザの数を見て、レイカが部下に尋ねる。
 彼女の口ぶりからするに、今日は普段の半分以下の人数のようだ。
「実は今月の資金調達にメンツの半分を回していましてですね……」
「ああ、なら仕方ありませんね。足りない分はわたくしも頑張るとしましょうか」
 レイカはサイバネ化した四肢の調子を確かめるかのように、体を動かす。
 彼女もダストエリアの保全活動などに参加するつもりのようだ。
「お嬢自らですか!? そ、そこまでしなくても俺達が倍働けばいいだけの……」
「今日の試合前の軽い運動くらいにはなりましょう。さあ、行きますよ」
 止めようとする部下を無視し、レイカはダストエリアの奥へと足を踏み入れる。
 例え当主とは言え、全て部下任せには出来ない性分なのだろうか。

 猟兵達がゲートを抜けてダストエリアにやってきたのは、彼らが今まさに活動を始めようとしたその時であった。
 向こうは人員が足りてないともなれば、こちらの手助けを断る理由もないはずだ。
 ジェノサイドボールに参加すべくまずは彼らと接触し、信頼を勝ち取るとしよう。
播州・クロリア
相手を殺害するのもありな球技がスポーツ扱いというのがゾッとしますね
私が悍ましく感じるのは選手や主催者より、それを求める観客の心理の方ですが

さて黄龍会の方々の信頼を勝ち取るために配給のお手伝いを名乗り出ましょう
UC【蠱の腕】で{錆色の腕}を荷物運びに最適な形に変えれば百人とはいかないまでも
十人力ぐらいにはなるはずです

あとはダストエリアの人々に私の『ダンス』を披露して、日々の疲れを癒すお手伝いもさせてもらいましょう
踊る旋律としては{桃花の旋律}がいいですね
(微笑みながら翅をゆっくりと震わせ軽い足取りでステップを踏んだ後{桃花の旋律}で『ダンス』を始める自分をイメージしながら)



●ようこそダストエリアへ
(相手を殺害するのもありな球技がスポーツ扱いというのがゾッとしますね。私が悍ましく感じるのは選手や主催者より、それを求める観客の心理の方ですが)
 ブリーフィングでジェノサイドボールの話を聞いた播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は、改めてサイバーザナドゥの異常さを知る。
 スポーツと称した殺し合いをも娯楽とするのは、この世界くらいな物やもしれない。
(色々と思うところはありますが、まずは黄龍会との接触ですね)
 猟兵が当のジェノサイドボールに参加するためには、黄龍会のメンツから信頼を勝ち取らねばならない。
 早速クロリアがダストエリアの内部を進んでいくと……
「オラ、早くトラックから運び出せ! 住民が腹を空かせて待ってんぞ!」
「んな事言ってもよォ、兄貴ィー……今日は人手が足りなさすぎんぜェ」
「グダグダぬかしてる暇があるなら体を動かすんだよ!」
 黄龍会のトラックから重そうな荷物を運び出しているヤクザの姿があった。
 彼らの会話からして、おそらく炊出しか何かの用具などを運んでいるのだろう。
「おや、あれは……丁度いいところに出くわしたようですね」
 これはいい機会だとばかりに、クロリアがヤクザに声をかける。

「あの、すいません。少しいいですか? 何やら人手が足りないそうですが、お手伝いさせていただいても……?」
「あん? 何だお前? ここらじゃ見ない顔だが……まあいい、今は一人でも手助けが必要だからな。じゃ、トラックの積荷をあっちに運んでくれや」
 そう言いヤクザが指差した方向には、広場に展開した黄龍会のマークが描かれた大型テントがあった。
 どうやらあの場所で配給を行うようだ。
「分かりました、精一杯頑張りますね」
 簡単な説明を受けてクロリアがトラックの荷台へと移動すると、そこにはバイオ食材の詰め込まれた超小型コンテナがいくつも積まれていた。
「これですか。それでは早速……!」
 クロリアは『|蠱の腕《コノウデ》』で錆色の腕を荷物運びに最適な形に変化させるとコンテナを一度に数個、まとめてひょいっと持ち上げるとトラックの荷台から降り、言われた場所へと向かうと、軽々とした様子でコンテナを分けて下ろす。
「よっ、と。ここでいいんですよね?」
「ああ……って、一人でこんなに持ってきちまったのか!? お前、すげェな!!」
 たった一人で十人以上の働きをしてしまったクロリアを見たヤクザが素直に驚く。
「これで予定より早く炊出しが出来そうだ、助かったぜ!」
 ヤクザが感謝の言葉を述べると、早速準備に取り掛かる。
 後は彼らの仕事だ。
(広場には配給を待っている人々がいますね。開始まで時間もかかる事でしょうし)
 ちょうど手持ち無沙汰となってしまったクロリアは、広場へ集まった人々に声をかけると、その場で得意のダンスを披露する。
 微笑みながら翅をゆっくりと震わせ軽い足取りでステップを踏んだ後、桃花の旋律でダンスを始めるクロリアの姿に、集まった人々の視線を惹き付けていく。
 娯楽の少ないダストエリアの人々からすれば、特上のエンターテイメントだ。
 日々、生きるだけでも精一杯の彼らの疲れを癒すには、あまりにも十分すぎる物となったのは言うまでもないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
良い意味で、昔気質の任侠さん達ですねぇ。

こういう方々なら、まずは礼儀を通しておくのが良いでしょう。
御協力を申し出て、きちんとご挨拶を。

人手不足とのことですので、【涵輔】を発動し、『|様々な生物の獣人《獣人戦線基準で階梯4~5程度》』の姿の『女神の信徒』を召喚しますねぇ。
彼女達は『各生物の能力』をお持ちですから、重量物の撤去や運搬、暗所や高所での活動も問題無い上、『治癒能力』も使えますぅ。
人手の不足している箇所を尋ね、私も含めて補う形で入りますねぇ。
必要な道具が不足するなら『FTS』から取出すか、『FFS』で指定し「コンコン」しますぅ。

彼女達には、帰還後にお食事で報酬を。



●ヤクザは獣人の手も借りたい
「……クソ、上の奴らめ。ここが最下層だからか遠慮なく捨てやがって……」
 不法投棄物の山を前に毒づくヤクザ。
 うず高く積み上げられた瓦礫や大きな金属ゴミや廃棄された機械など、上層から定期的に捨てられている不法投棄物の山を定期的に掃除するのも彼らの仕事の一つだ。
 そんな大量のゴミの撤去を行うヤクザ達の中へ、一人の猟兵がやってきた。
「初めまして、私は夢ヶ枝るこると申しますぅ。早速でなんですか、何やら今日は人手が足りないとお聞きしまして、もし良ければお手伝いが出来ればと……」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は礼儀正しくアイサツから始め、ヤクザ達に協力を申し出る。
 モラル無きこの世界であっても、ヤクザの世界に礼儀とアイサツは何よりも大事とされている事から、彼らの流儀に従う形でのファーストコンタクトだ。
「オウ、誰だか知らんが助かるぜ。今は一人でも多くの人手が欲しいからな」
 そんなるこるの第一印象は良かったらしくヤクザがあっさり了承する。
 アイサツは大事なのだ。
「ええと、撤去のお手伝いでよろしいんでしょうかぁ?」
「ああ、気張っていけよ。なんたって、ここに住む連中のためだから……な!」
 るこるの問いにヤクザの一人が瓦礫をサイバネアームの力で持ち上げる。
 ゴミの山を掃除する事はダストエリアの人々の暮らしを守る事にも繋がるのだ。
(良い意味で、昔気質の任侠さん達ですねぇ)
 黄龍会のメンツがどう言う者達なのかを知ったるこるは改めて感心すると、早速行動を開始するのであった。

「……なぁ、今日は人手が足りねえって話だったよな?」
「ああ、そう聞いてたんだが……」
 掃除に励むヤクザ達が後ろを振り返る。
 そこにはいつからいたのか、獣耳と尻尾の生えた姿をした女性達が忙しなくゴミの山の片付けを行っていた。
 その数は優に百人を超えている。
 一人でも多くの人手は欲しいと言ったが、まさかこれだけの数とは思うまい。
 この人員はるこるが『|豊乳女神の加護・涵輔《チチガミサマノカゴ・ミタサレシカイゾエ》』で召喚した女神の信徒であり、その外見は獣人戦線で見かける階梯4~5の獣人のそれであった。
 彼女達は各生物の能力を持っており、重量物の撤去や運搬、暗所や高所での活動も問題なく、更には治癒能力も持っている事から、ヤクザの手助けには十分すぎるだろう。
「む、この金属ゴミはデカいな。溶かすには切り分けた方がいいが、道具は……」
「これ、使いますかぁ?」
 道具はないかと辺りを見渡していると、いつ間にか近くに来ていたるこるから何かを手渡しされる。
 金属を易々と切り裂くフォトンセイバーだ。
「お、こいつは助かる! 使わせてもらうぜ」
「他にも必要な物がありましたら言って下さいねぇ。大体の物はありますので」
 それだけ言うと、るこるは他に人手の必要そうな一角へと移動する。
「大体の物はあるって? ……え、どう言う事なんだ?」
 そもそもこのフォトンセイバーはどこから出したんだ?
 そんな疑問を抱くヤクザ。
 実際にはるこるの『FTS』に貯蔵されていた物を取り出した訳だが、当然ヤクザがその事を知る由もない。
 ――何はともあれ、るこると彼女の召喚した女神の信徒達の活躍もあり、ゴミの山は大きく削られていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
これからオブリビオンに叩き潰される予定のチームを救って、逆に叩き潰すというわけですか。
それは楽しみですね。
そのためにはチームに入れてもらわないとです。

黄龍会の救済活動を手伝いましょう。
とにかく人手が足りてないようですから、UCを使う必要もないですね。
まずは手を動かして、物資を受け渡す。
足を使って、物資を配りまくる、です。

バランスは日々の功夫鍛錬でできてますから、物資をどれだけ積んでも崩しませんよ。
例え崩れそうになっても【念動力】で崩れませんよ。

効率よくお手伝いさせてもらいます。



●命を繋ぐ配給物資
(これからオブリビオンに叩き潰される予定のチームを救って、逆に叩き潰すというわけですか。それは楽しみですね)
 以前にもジェノサイドボールに参加した事のある、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はどこかウキウキした様子であった。
 ジェノサイドボールにハマった訳ではないだろうが、試合で合法的にオブリビオンを叩き潰せるのが楽しみで仕方ないと言ったところであろうか?
 だが、まずはチームに入る事を認めてもらうのが先決だ。
「チームに入れてもらうには、信頼を勝ち取る必要があると言ってましたね。そのためにも……おっと、あれは?」
 黄龍会のメンツを探そうとダストエリアを歩いていた摩那が何かを見つけ、足を止める。
「配給品の数は足りていますね?」
「はい、お嬢! 二週間は持つ量を持ってきていやす!」
 若くしてカリスマを放つ少女――レイカ・コウリュウとその手下のヤクザの姿を目にした摩那は、迷う事なく彼女達の方へと歩き出すと、声をかける。
「すいません、黄龍会の方ですよね? お手伝いをさせていただきたいのですが」
「む、あなたはここの住人ではないようですね? ……どなたかは存じませぬが今日は人手が足りません、手助けは歓迎しましょう」
 声をかけてきた摩那を一瞬警戒するレイカであったが、悪者ではないと瞬時に判断したらしく、手伝いに加わる事を許可する。
「ありがとうございます、精一杯やらせていただきます」
「よしなに。では、わたくしに付いてきて下さい」
 摩那を案内するかのように、レイカが荷物の積まれたトラックへと導く。
 まずは接触に成功、と言ったところであろうか。

「……で、この箱を居住区の人達に届ければいいんですね?」
「左様。生活必需品が入っています故、これを待ち望む人々は沢山おります」
 トラックの荷台へとやってきた摩那はレイカからやるべき事を聞かされる。
 荷台の限界ギリギリまで積まれた箱の中には、ダストエリアで暮らす人々が(少しの間ではあるが)生きるのに必要な物が詰め込まれているそうだ。
「それだけ大事な物なんですね。分かりました、キッチリ届けましょう」
「……ホントに大丈夫か? お前、サイバネ化してないだろ?」
 やる気に満ち溢れる摩那を見て、ヤクザの一人が訝しげに問う。
 サイバネ化していない人間はこの世界にいないため、懐疑的な様子だ。
「それは行動で示してみせましょう。とにかく手と足を動かすのみ、です!」
 箱を一つ、二つ、三つと積み上げ、サッと持ち上げると居住区方面へ足早に移動を開始する摩那。
 一つだけでもそこそこの重さだが、それを積んで移動はなかなか大変だ。
 加えて足場の悪いダストエリア故に下手したらバランスを崩し、箱の中身が台無しになってしまいかねないが……そこは鍛え上げた日々の功夫鍛錬と念動力でどうにでもなる。
「まずは三軒届けてきました。すぐ次へ行きます」
 それから僅か数分の内に戻ってきた摩那が再び箱を抱え、居住区へ戻って行く。
 驚くべき速さと言う他あるまい。
「……ほう、やりますね。わたくし達も負けていられませんよ」
「はい、お嬢!」
 そして摩那の仕事ぶりに触発されたか、レイカも手下を伴って配給に向かう。
 このまま効率的に事が進めば、トラックの荷台が空になるのも時間の問題だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
俺の世界でも黄龍会みたいな組織の成立経緯には、こうした地域の防衛組織があるって聞いたことはあるな
そういう意味だと古風な連中だが、消えてもらっちゃあ困る

【行動】
通りがかった傭兵を装って黄龍会と接触(「変装」「演技」を使用)

「掃除」の得意なモーラットを召喚して一緒に対応
子供などがいれば一緒に遊ばせる

「運搬」「ダッシュ」でがれき撤去して、実力がありそうなところを見せる

黄龍会が来たら「コミュ力」で接触
「ちょうど今、働き先を探しているんだが、良い仕事はないかい?」

仕事探してる傭兵のデモンストレーションとでも思ってもらえれば、この世界だとかえって信用してもらえるだろ

後はサービスで「除霊」「浄化」を



●信頼を得るには……
(俺の世界でも黄龍会みたいな組織の成立経緯には、こうした地域の防衛組織があるって聞いたことはあるな。そういう意味だと古風な連中だが、消えてもらっちゃあ困る)
 シルバーレイン出身の能力者である暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は、サイバーザナドゥでも珍しいタイプの昔気質なヤクザクランである黄龍会の存在をブリーフィングで聞いた時、そんな事を考えていた。
 完全中立を貫きつつも、その裏ではメガコーポ・レジスタンスへの支援を行っているとなれば、黄龍会の壊滅は是が非でも避けたいところだ。
「ともかくまずは接触だな。……となると、この世界に合ったやり方で行くべきか」
 魎夜はいかにもそれっぽい姿……傭兵に変装をすると、近くを通りかかったヤクザスーツの男に話しかける。
「なあ、ちょっといいか? ちょうど今、働き先を探しているんだが、良い仕事はないかい?」
 自分は通りすがりの傭兵であると前置きした上で、魎夜がコミュ力を生かしてヤクザへの接触を図る。
「傭兵か? んー、まあ今は使えるなら誰でもいいか。実はな……」
 魎夜が仕事を探していると聞き、ヤクザがここでの活動の事を話す。
 今日は人手が足りず、思うように活動が進んでいないと言う事も含めてだ。
「なるほど、ダストエリアで雑用か。……いいぜ、乗った」
 上手く向こうが仕事の話を持ち掛けてきてくれた事で即決する魎夜。
 渡りに船だ。
「契約成立だ。……しっかり仕事をしねえとギャラは出ないぞ? いいな?」
 そうヤクザが釘を刺す。
 この流れの傭兵が使えるのかどうか、まだ半信半疑と言った様子であろうか。

「……じゃ、まずはこの地区の掃除をやってもらおうか」
 ヤクザに案内され、魎夜は居住区の一つへとやってきた。
 家と呼ぶには大分怪しい、廃材やら何やらを集めて組み立てた廃屋が立ち並ぶ場所だ。
 周囲には上層から不法投棄されたであろう瓦礫などが散乱しており、見た目的にもよろしくないと言った感じであろうか。
「よっしゃ、任せてくれ!」
 こう言った場では、やる気を見せる事が大事だと分かっている魎夜は『|モラ使い《モラツカイ》』で9体のモーラットを召喚すると同時に早速掃除を始める。
 呼び出されたモーラット達と共に重そうな瓦礫を難なく持ち上げ、素早く撤去を行う事でヤクザに対して『仕事が出来る』奴である事をアピールしていく。
「わー、この白い毛玉可愛いー」
「新しいバーチャルキャラクターかな?」
 その一方で、魎夜が働く様子を見ていたであろう子供達が彼の召喚したモーラットに反応し、近付いてくる。
 娯楽の少ないこのダストエリアでは、モーラットの存在は珍しいのだろうが作業の邪魔になってしまう事だろう。
「おいお前達、危ないから離れろ!」
「まあまあ、ここは任せて。……子供達と遊んできて、ここから遠ざけてくれるか?」
 声を張り上げるヤクザをなだめつつ、魎夜はモーラットに子供達の相手をするように頼むと、『もきゅ!』と答えて彼らの元へ向かうと上手く彼らを作業現場から遠ざけていった。
 ――こうして作業は滞りなく進み、瓦礫の撤去は一通り完了すると。
「……よし、こんな物か。じゃ、最後にこれはサービスって事で」
 そう言い、魎夜はこの場で除霊と浄化を行う。
 このオカルトめいた行為がこの世界で信じられるかどうかはともかく、一通りの仕事をしっかりとやってのけた事を終始目にしていたヤクザは、彼の仕事ぶりを疑う事など最早なく、確かな信頼を得る事に成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「警察も当てにならない世界っすからね。こういう救いの手は必要なんすね」
ヤクザって言っても任侠みたいな感じっすかね〜

「ども〜、炊き出し系ヒーローの登場っすよ〜」
そんな感じで軽快に食料を積んだ荷台をバイクで引っ張りやってくる狐面
念動力で調理器具を動かし【料理】もして施しの手伝いをするっす

何故手伝うのかみたいな話になれば
「ビジネスの話をしに来たんすよね〜」
と、さっくり【コミュ力】で交渉を持ちかける
「ミカド・ザイバツがオブリビオンを次の試合に投入する。自分達は試合を通してそいつらを倒したい。そのための選手枠を譲って欲しいんすよ」
一方的な協力より、ギブ&テイクにした方が向こうもメンツが保てるっすかね



●炊き出し系ヒーロー交渉術
「警察も当てにならない世界っすからね。こういう救いの手は必要なんすね」
 視線の先でダストエリアの住民に施しを行っている真っ最中である黄龍会のヤクザを眺めつつ、リカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)が呟く。
 基本的に警察は腐敗し(中にはごく僅かに正義の心を失っていない者もいるが)、メガコーポの手先となっているこの世界では彼らのような存在は貴重だ。
(ヤクザって言っても任侠みたいな感じっすかね〜)
 そんな事を考えながら、リカルドは遠巻きにヤクザ達の仕事ぶりを観察している。
 上手く彼らに接触する機会を窺っているのだろう。
「くそ、人手が足りんと時間がかかりすぎる……!」
「いつもの半分以下の人数じゃ、配給が今日の試合までに間に合わねえぞ!」
 ……一方、炊出しを行っているヤクザはテント内で右往左往していた。
 ダストエリアの住民達は今日の食事を求め、列を作って配給を待ちわびている。
 しかし、いかんせん人手が足りない事もあってか、配給速度は普段の半分以下と言ったところであろうか。
 このままではここを離れる時間までに配給が間に合わない事だろう。
「ども〜、炊き出し系ヒーローの登場っすよ〜」
「な、なんだ?」
 そこへタイミングを見計らったかのように、リカルドが宇宙バイク『アルタイル』に荷台を付けてテントの脇へとやってきた。
 唐突に現れたキツネ・オメーンの人物を前に、住民やヤクザ達は何事かと言った様子でこちらを見ている。

「何やら人手が足りないようっすね? もし良ければお手伝いするっすよ~?」
「誰でもいいら頼まァ! 見ての通り配給が遅れてんだよ、こっちゃあ!!」
「ほい任されたっす!」
 ヤクザから許可を受け、リカルドがこの時を待っていたかのように動き出す。
 念動力で調理器具を動かし『|戦場の料理人《キツネノコックサン》』でヤクザが作っている物を模倣しつつ、更なる味付けを行う事で料理を仕上げ、空いているトレーに素早く盛り付けていく。
「ひとまず十人分は出来たっす。すぐに次も用意するっすよ~」
 念動力をフルに駆使し、ヤクザの補助もしつつ料理を続けるリカルド。
 彼の働きもあって、人手不足の遅れを取り戻すかのように列が少しずつ解消され、一通りの配給が完了する。
「なんとか配給は間に合ったか。とりあえず礼を言わせてくれや」
「しっかし、なんだってこんなとこに来て俺らの手伝いを?」
 それから配給が落ち着いたところでヤクザ達が礼を述べつつ率直な疑問を口にする。
「や、ビジネスの話をしに来たんすよね〜」
 リカルドはさっくりとコミュ力を生かして交渉を持ちかける。
 ここからが本題だ。
「この後、ジェノサイドボールの試合に出るんすよね?」
「ん、俺らの事を知ってるのか?」
「……実はミカド・ザイバツがオブリビオンを次の試合に投入する。自分達は試合を通してそいつらを倒したい。そのための選手枠を譲って欲しいんすよ」
 その言葉を聞いた途端、ヤクザ達の間に緊張が走る。
「な、ミカド……メガコーポがか!? 奴らが俺らを潰す理由は……」
「しかし奴らが本格的に潰しに来るならマズい事になるぞ」
 押し黙るヤクザ達。
 自分達が狙われる心当たりはいくつかあるようだ。
「まずはお嬢に話を通そう。お前さんは少なくとも信用出来そうだ」
「決まりっすね。……大丈夫っす、黄龍会は潰させやしませんから」
 一方的な協力より、ギブ&テイクにした事で黄龍会のメンツを保てる。
 そう言った意味でも彼らの信用を得る事が出来たリカルドは、ジェノサイドボールの参戦が認められたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『レッドゴブリン』

POW   :    カラテ
【高熱のカトンを宿した拳ないし足】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    スリケン射出
レベル分の1秒で【手首に内蔵された発射機構からスリケン】を発射できる。
WIZ   :    レッサー・カトン・ジツ
【鋼鉄をも溶解させる超高熱の火炎】を放ち、命中した敵を【超高熱の火炎】に包み継続ダメージを与える。自身が【危険なほどのオーバーヒートを】していると威力アップ。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●|ショウ・ノーマーシー《なさけむよう》
 黄龍会り手助けをしつつダストエリアの住民に対する施しの時間が終わった後、彼らの信頼を得る事が出来た猟兵達はレイカに会い、本題である本日行われるジェノサイドボールの試合について話す。
「ミカドがわたくし達を潰そうとしている……!?」
 その話を聞いたレイカ達はさすがに驚かざるを得ない。
 メガコーポに目を付けられてしまえばタダでは済まない事を理解しているようだ。
「……お嬢、試合を棄権しやすか? そうすれば少なくとも」
「いえ、棄権は黄龍会のメンツが丸潰れになるも同然……それにジェノサイドボールはわたくし達の資金源の一つ、ここで手は引けません」
 手下から棄権を勧められるも、レイカは首を振る。
 一つの試合で大金の動くジェノサイドボールは勝ったチームにも多額のファイトマネーが入るとされている。
 黄龍会があの競技で戦うのにも理由がある、と言う事なのか。
「試合には予定通り出ます。ただ、ミカドが本格的に潰しに来たとなれば、わたくし達では勝ち目はないでしょう……そこで、勝つために皆さんの力をお借りしたいのです」
 レイカから力を貸して欲しいと言う頼みを猟兵達は快諾する。
 元よりそのためにここに来たのだ、断る理由などない。
「ああ、恩に着ます……! 黄龍会の仁義、ミカドに見せてさしあげましょう」
 一礼するレイカ。
 これで猟兵達のジェノサイドボール参戦が決定した。
 後は戦いの時を待つのみだ。

 ――数時間後、旧都心部ベイエリア・ジェノサイドアリーナ。
 大勢の観客で埋め尽くされたアリーナは今日も満員御礼、観客からは過激な応援と歓声が飛び交っている。
 対戦相手である『キラーベアーズ』のベンチには、普通の選手ではなくミカドの放ったオブリビオン『レッドゴブリン』達の姿があった。
 奴らは人為的にサイバーニンジャの力を手に入れた量産型サイバーニンジャである。
 本物のサイバーニンジャの能力には劣るものの、数の力は実際脅威的でサイバーザナドゥ由来のカトンと、常人の三倍の筋力で戦うとの事だ。
「なるほど、確かにあの者達が相手ならわたくし達では歯が立ちませんね……」
 普段と違う選手である事を悟ったレイカが相手側ベンチを見やる。
 黄龍会の面々では到底勝てる相手ではないと分かっているのか。
「ですがお嬢、今日は強い味方がおりやすぜ!」
「ええ、そうですね。……頼りにさせていただきますよ?」
 そう言い猟兵達に微笑むと、レイカはバイオケブラー製のビブスと鉢巻を付けると表情を引き締め、こう叫んだ。
「シマッテコーゼ!」
 先程とはまるで別人になったかのように、レイカが仲間を鼓舞するコトダマをかけると、猟兵達の所属するチーム『ホアン・ロン』は意気揚々とコートへ向かっていった。

 それから少ししてコート上に集結した二つのチームが睨み合う中、センターラインにボールを乗せたドローンがやってくる。
『Show No Mercy……Are You Ready?』
 電子音声が試合開始のコールを告げる。
 ここまで来たら、双方とも後には退けない。
『……Go Genocide!!』
 その合図と共に、ボールが打ち上げられると40分の死闘の幕が上がった。
 さあ、まずは黄龍会の選手と共にレッドゴブリンを蹴散らそう。
 向こうが不利になればボスを引きずり出せるはずだ。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
試合開始ですねぇ。
参りましょう。

見ているであろうボスに情報を与えない為、各『祭器』は隠しておきまして。
【膺劃】を発動し『区画』を支配、丁度『スポーツコート一枚』と言う明確な『区画』の中ですから、内部の相手には最大級の威力が発揮できますぅ。
【カラテ】は近接限定、『鎖』で捕縛し接近自体をさせなければ、味方への攻撃も含め封じられるでしょう。
中空から生えた力場の『鎖』で吊り上げた上で、締め落して仕留めるか、複数の『鎖』で全身を引き千切りますねぇ。
少々残虐なやり方ですが、「こういう競技」の観客なら或る程度耐性は有るでしょう。
これで「超能力系だけの相手」と思って貰えれば最良ですが。



●残虐行為手当
「試合開始ですねぇ。参りましょう」
 開始直後、るこるは相手チームのベンチをチラリと見る。
 ベンチには控えの選手がわんさか待機しており、向こうのキャプテンと思しき巨漢の男の姿はここにはいない。
(ふむ、いませんねぇ。なら今はまだ、こちらの手札を隠しておくべきでしょう)
 ブリーフィングで聞いた通り、奴は試合が劣勢にならねば出てこないのだろう。
 しかし別室でモニタリングしている可能性は十分に考えられる。
 ……だとすれば、敵にこちらの情報を与えるのは愚策。
 るこるのメイン装備である祭器各種は伏せたまま試合を戦うべきだろうと判断する。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 そうこうしている間にも、ボールを奪わんとした黄龍会のヤクザ選手がレッドゴブリンのカラテを受け、大きく吹き飛ばされた。
 常人の三倍の筋力を持つレッドゴブリンのカラテは、屈強なサイボーグであるヤクザを難なく昏倒させる。
 幸い死んではいないようだが目覚める様子はなく、試合の復帰は見込めまい。
「このままだとヤクザの皆さんが危ないですねぇ……でしたら」
 猟兵であればレッドゴブリンの相手は容易いだろうが、今回は猟兵ではないレイカやヤクザも同じ戦場にいる以上、(猟兵を抜きにすれば)戦力差は歴然だ。
 出来る限り、彼らの犠牲を防ぎたいと考えたるこるは『|豊乳女神の加護・膺劃《チチガミサマノカゴ・トメダテシホウド》』を発動し、戦いの場であるコート上を支配する。
 今回はフィールドの広さが決まっている事から、このユーベルコードの本領を発揮するには十分なはずだ。

「「「イヤーッ!」」」
 獲物を見つけたレッドゴブリンがシャウトと共にフォーメーションを組み、るこるへ向け一斉に鋭いカラテを放つ。
 強い相手は数で押して倒せ、と言う戦いの基本に則った戦術だ。
「「「ヌゥゥゥーッ!?」」」
 ……しかし、奴らはるこるの展開したユーベルコードに全く気付いていなかった。
 突然、中空から生えた力場の鎖が次々とレッドゴブリン達を捕縛すると、るこるへ牙を剥かんとしていたカラテを封じる。
 常人の三倍の筋力を持つレッドゴブリンであっても、彼女の放った鎖を引き千切る事は出来ないようだ。
「さあ、今の内にシュートをお願いしますぅ!」
「オ、オウヨ! ……お嬢!」
 相手側の攻撃の手が止まった隙にヤクザがこぼれ球をダッシュで拾い上げると、横にいたレイカへ向けてパスを出す。
 それを阻止せんと捕縛されたレッドゴブリンが必死にもがくが、拘束は解けない。
「「「グゥゥゥ、ハナセ、ハナセーッ!」」」
「さて、それでは少しばかり残虐になりますが……」
 そしてるこるは拘束したレッドゴブリンを宙へ放り投げるように操作すると、そのまま複雑に絡み合った鎖が強烈な力を伴い、一気に全身に食い込み……
「「「グワーーーッ!!」」」
 空中でレッドゴブリン達が数体まとめて引き千切られ、バラバラになった!
 サツバツ!!
「ウオォォーッ! ヤッチマエー!」
「イイゾー、ブッコロセー!」
 残虐シーンあってのジェノサイドボールと言う事もあってか、るこるの見せた残虐行為は観客をヒートアップさせる。
 と、同時にボールを手にしたレイカが華麗なシュートを決め、ホアン・ロンが先制点を決めると、更なる歓声が上がった。
 試合は始まったばかりだが、弾みを付けるにはいいスタートを切れた事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
ジェノサイドボールに無事参加できることになりました。
あとはオブリビオンを殴るだけですね。腕がなるというものです。

いちおうスポーツですから、素手でお相手します。

相手からスリケン飛んできても、スマートグラスで探知。
【念動力】で軌道をずらして回避します。

反撃はヨーヨー『エクリプス』。
といってもUC【乱舞雷花】の発動に使うだけなんですけど。
試合会場に花びらを撒いて、敵を一気に感電させてしまいましょう。

痺れる試合ができて、サイコーですね。



●シビれる試合(二重の意味で)
「あとはオブリビオンを殴るだけですね。腕がなるというものです」
 予定通りジェノサイドボールに参戦する事となった摩那はやる気であった。
 やはり猟兵たる者、オブリビオンを倒してこそ……なのだろう。
 その一方、先程倒された者達と入れ替わるようにコートへやってきたレッドゴブリン達がこちらに視線を向けている。
 特に油断ならない相手がいるためマークせよ、と命令を受けたのやもしれない。
「黒木さん、警戒の程を。向こうはおそらく……」
「大丈夫です、あの程度の相手なら束になっても負ける気はしません」
 相手側の狙いに気付いたであろうレイカの進言に笑って答える摩那。
 実際、猟兵の実力ならばレッドゴブリン相手でも負けはしまい。
「いちおうスポーツですから、素手でお相手します」
 試合再開の直前、摩那は自らが得意とする功夫の構えでレッドゴブリンに向き直る。
『Go Genocide!!』
 そしてアナウンスと共に電子合成ブザー音が会場内に鳴り響くと、試合が再開される。
 果たしてレッドゴブリン達は次にどう仕掛けてくるのであろうか?

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
 開始と同時にレッドゴブリン達の手首が折れ曲がると、内蔵された発射機構からスリケンをマシンガンめいて摩那に射出!
 集中砲火だ!!
(やはりそう来ますか。バカ正直に向かってくる訳はないですよね)
 同じ瞬間、摩那はスマートグラス『ガリレオ』で、相手の手首が折れ曲がった直後から攻撃の軌道予測を行っていた。
 ただの人間ならば、既に針のむしろのように体にスリケンが次々と突き刺さったオブジェと化していた事だろうが、サイキッカーである摩那は相手よりも0.5秒早く、念動力でスリケンの軌道をずらし、回避する。
 あらぬ方向へと飛んでいったスリケンが、観客席を守る強化FRP製の透明な壁にカカカッと突き刺さると、間近で見ていた観客数人がその場で失禁・失神した。
「何ッ!?」「外れた!?」「何故だ!?」
「隙あり!」
 攻撃が逸らされた事に驚くレッドゴブリンの隙を突いた摩那がボールを奪い取ると、コートの上を駆け抜ける。
「最初に素手と言いましたが、飛び道具を使ってきたのなら話は別です」
 右手でドリブルをしつつ、左手で愛用のヨーヨー『エクリプス』を手にすると『|乱舞雷花《フルール・イリゼ》』で七色の花びらをバラ撒いていく。
 目眩ましのつもりか? ……否!
「励起。昇圧、帯電を確認……散開!」
「「「グワアババババーーーッ!?」」」
 エクリプスのワイヤーから電撃が放たれると、バラ撒かれた七色の花びらが一斉にスパークし、眩い閃光が走る。
 その直後、高圧電流に焼かれたレッドゴブリン達がその場に倒れ、動かなくなっていた。
 あれだけ激しい電撃ならば、黄龍会の面々も巻き込まれたのではないかと思われた事だろうが、乱舞雷花は敵味方を識別するユーベルコード、レイカ達にダメージは一切ない。
「よし、今の内にシュートです。それっ!」
 そしてレッドゴブリン達が行動不能になった後、摩那が念動力を生かしたロングシュートを決めると、再びホアン・ロンに点数が入った。
「痺れる試合ができて、サイコーですね」
 決めてやったぜ、と言わんばかりのドヤ顔な摩那。
 見ている側からすれば痺れる試合であり、相手側からすれば物理的に痺れるハメになってしまった……とでも言うべきだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
この試合に勝てば黄龍会の強さを誇示できるし
今回の敵のような連中もしばらくは大人しくなる、と
メンツって大事ですね
(直立し目を閉じて祈るようなポーズをした後{渦流の旋律}で『ダンス』を始める)
あぁレイカさん、ご心配なく。これはいわば戦闘準備みたいなものです
(UC【蠱の足】でボールを蹴り飛ばし敵にぶつけると違う敵をそのまま蹴り飛ばす)
おっと、蹴りでボールを破壊してはいけませんよね
(『念動力』でボールを手元に手繰り寄せ掴むとダンスと蹴りを再開する)
敵を全員潰してからシュートするが必勝のセオリーでしたっけ?
初心者ですし大人しくそのセオリーに従うとしましょうか



●死の舞踊
(この試合に勝てば黄龍会の強さを誇示できるし、今回の敵のような連中もしばらくは大人しくなる、と。メンツって大事ですね)
 そんな事を考えながら、クロリアは直立した状態で目を閉じ、祈るようなポーズからダンスを始める。
 このサツバツとした戦いの場の中では異様な光景だ。
「凄い……皆さん、本当に強いのですね。あの、ところで播州さん、一体何を……?」
 一方、圧倒的な力でレッドゴブリンを蹴散らしていく猟兵の強さを目の当たりにしたレイカが感服しつつも、クロリアの行動について怪訝そうに尋ねる。
「あぁレイカさん、ご心配なく。これはいわば戦闘準備みたいなものです」
 レイカの疑問に対し、そうクロリアは返した。
 今、彼女は『|蠱の足《コノアシ》』で戦闘力を高めている最中であり、ダンスをする事で身軽になって更なる速度を得られるのだ。
 もちろん、その事をレイカ達や相手チームが知る由もないのだが。
『……Go Genocide!!』
 それからすぐに試合が再開されると、ドローンから打ち上げられたボールを無視するかのようにレッドゴブリン達がスリケン射出でクロリアを倒さんとする。
 引き続き要注意人物は真っ先に排除せよ、との命令を受けているのだろう。
「では、行きますか」
 同じタイミングでクロリアが閉じていた目を開くと、地を這うような低姿勢で射出されたスリケンを回避すると、コート上に落ちてバウンドしたボールを……蹴った!
「グワーッ!?」
 鋼鉄をもブチ抜くであろう強烈な蹴りから繰り出されるシュートがレッドゴブリンの頭に直撃すると、錐揉み上に吹き飛ばされる。
 そこからスリケンを躱すような動きで急接近し、別のレッドゴブリンを……蹴り飛ばした!
「グワーッ!?」
 蠱の足で戦闘力を高めたクロリアに蹴り飛ばされ、レッドゴブリンのサイバネ腕が盛大に砕け散る!
 なんたる威力か!!

「おっと、蹴りでボールを破壊してはいけませんよね」
 クロリアは少しやりすぎてしまったかな、と言った顔から念動力で転がっていたボールを手元に手繰り寄せ掴むと、ダンスと蹴りを再開する。
 相手の攻撃をダンスで避け、接近すると同時に鋭い蹴りを叩き込んでレッドゴブリンを撃破していく様子は華麗でありながら凄惨と言う他なく、観客を圧倒する。
「バカな、我々のスリケン射出が当たらんだと……!?」
 対するレッドゴブリンは、クロリアの戦闘力に恐怖すら感じていた。
 マシンガンめいた弾幕を貼っても、彼女の動きはそれを難なく躱しているのだ。
 そこから間合いを詰められ、繰り出される蹴りだけで仲間が一人、また一人と狩られていく。
「これで最後です」
「グワーッ!」
 そして、コート上で最後の一人となったレッドゴブリンがクロリアの蹴りに沈む。
 今出ている相手選手は全滅だ。
「敵を全員潰してからシュートするが必勝のセオリーでしたっけ?」
 邪魔者がいなくなった後、ボールを手にしたクロリアはぽつりと呟く。
 セオリーとしてはやや極端だが、ジェノサイドボールと言うスポーツで見ればそれもまた一つの手だ。
 もっとも相手チームの戦力はまだまだ尽きる事はないので、この後すぐ控えの選手が入ってくるだろうが……戦力を削ると言う意味では彼女の取った手は有効と言えよう。
「初心者ですし大人しくそのセオリーに従うとしましょうか」
 相手選手がいなくなった事でクロリアが難なくシュートを決めると、ホアン・ロンが更にリードを広げるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「さてと、いっちょやってみるっすかね」
黄龍会の団員の体を借り、コートへ入る狐のお面。団員の能力はリカルドと同程度に引き上げられる
「暴力的なことはやめて、穏便にお願いしたいっすね〜」
などと呑気なことを言いつつ、猟兵並みに強化されたフィジカルと【怪力】で突破する
相手が『暴力は選択肢と可能性を与えてくれる』といういにしえのコトワザを使いつつ攻撃してくるのであれば
「下の句をご存じないっすか?」
と言ってUCで自滅や同士討ちを誘発させる瞳術を敵へと飛ばす
「『それと同時に相手にも選択肢と可能性を与える』っすよ」
傍目から見れば、こちらが攻撃を避けた際にからぶった攻撃自滅したように見えるかも

あとはのらりくらり



●キツネ・オメーンからの眼光
 控え選手が待機しているベンチに一つのキツネ・オメーンがあった。
 誰かが置いた物……ではなく、ヒーローマスクのリカルドだ。
「さてと、いっちょやってみるっすかね」
 少しの間、試合を観戦していたようだが、そろそろ働くとしようかと言った感じでリカルドがふわりと宙に浮かぶ。
「っと、出番か……俺も黄龍会の端くれ、根性見せてやるぜ!」
 ちょうどリカルドが動き出そうとしていた時、コート上では先程レッドゴブリンのカラテにやられた選手と入れ替わる形で、ベンチにいる控えのヤクザが気合十分と言った様子を見せていた。
 力の差は歴然としていても、決して退かない勇気だけはあるようだ。
「ちょっと体を借りるっすよ」
「何だ? うおッ……!」
 ……だからと言って、このまま挑んでも重傷を負うか無駄死にするだけだろう。
 そうはさせまいと、コートに向かわんとしていたヤクザの顔にキツネ・オメーン――リカルドが被せられると、体に力が漲る。
 ヒーローマスクを被った者は、その力を一時的に引き出す事が出来るのだ。
「じゃ、ひとつ派手に行くっすよ~」
 かくして、ヤクザ選手の体を借りたリカルドがコートへと向かう……

「暴力的なことはやめて、穏便にお願いしたいっすね〜」
 試合再開直後、リカルドは呑気な様子でボールを手にしてそう呟く。
 その姿はまるで隙だらけと、試合をする気があるのかすら疑わしい。
「穏便だと? 笑わせるな、これはジェノサイドボー……グワーッ!?」
 キツネ・オメーンを被ったヤクザだと侮っていたレッドゴブリンが、リカルドのドリブルを止めようとしたところで強引に突破され、弾き飛ばされる。
 何せ猟兵のフィジカルと怪力を得ている状態だ、そう簡単に止められるはずもない。
「奴はただのヤクザではないのか!? ……止めるぞ!」
 向こうは只者ではないと判断したレッドゴブリン達が包囲するように迫る。
「いや、ちょっと多くないっすか? 穏便にって言ったんすけどね~」
「『暴力は選択肢と可能性を与えてくれる』、その言葉の意味を」
「下の句をご存じないっすか?」
 いにしえのコトワザを引用してにじり寄るレッドゴブリン達に対し、リカルドが『|忍法・鏡魔眼の術《キョウマガンノジュツ》』でギラリと眼光を向ける。
 一瞬、目が合う事で既に彼の術中に嵌ってしまっていようなど、奴らが気付くはずもない。
「……『それと同時に相手にも選択肢と可能性を与える』っすよ」
「それがどうした! イヤーッ!!」
 知った事かとレッドゴブリンのカラテが炸裂する。
 ……だが!
「グワーッ!?」
 放たれたカラテは別のレッドゴブリンに叩き込まれていた。
 敵意を反射し自滅に導く視線を放つ、鏡魔眼の術を受けた影響だ。
 もっとも、傍目から見ればリカルドがレッドゴブリンの攻撃を避けた際、空振った攻撃で同士討ちをして自滅したように見える事だろうが。
「攻撃は無駄っす。全て己自身に返るんすから」
「ほさげ! ……グワーッ!?」
 のらりくらりとしたリカルドにカラテを仕掛けようとし、自滅するレッドゴブリン。
 何故こうなっているのかすらも理解出来ていない様子だ。
 この間抜けな行為(?)で数を減らす事で、キラーベアーズに賭けているであろう観客からは怒号と罵声が向けられる。
「ほい、3ポイントシュート……ま、こっちだと全部2ポイントっすけどね」
 その後、敵の数が減った事でリカルドが難なくロングシュートを放つと、ボールがゴールへと吸い込まれていき、ホアン・ロンが追加点を得るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【戦闘】
量産型サイバーニンジャとはよく言ってくれるぜ
近距離も遠距離も十分に行ける連中で、企業資本に物を言わせてこれだけ簡単に揃える
それが弱いはずもないだろ

黄龍会が弱いとは思わねえが、普通にやって負けるな
ま、そうさせないために来たわけだけどよ

「(レッドゴブリンに)こっちは球技なんて学生時代の授業位でしか経験がなくてね。よろしく頼むぜ?」

【戦闘】
「(レイカたちに)俺に策がある、聞いてくれるか?」

UCを発動して、ホアン・ロンに敵の分析結果を伝える

敵の手裏剣を「見切り」、「グラップル」「気絶攻撃」で攻撃
「悪目立ち」して戦場をかき乱し、ポイントはレイカに任せる



●前半戦終了間際の攻防
 試合は折り返しである前半終了まで残り数分と言ったところまで進む。
 猟兵達の活躍でレッドゴブリンはその多くが蹴散らされ、黄龍会がリードを広げると言った試合展開になっており、ミカド・ザイバツの計画は綻びが生じつつあった。
(量産型サイバーニンジャとはよく言ってくれるぜ。近距離も遠距離も十分に行ける連中で、企業資本に物を言わせてこれだけ簡単に揃える……それが弱いはずもないだろ)
 試合中に負傷したヤクザと入れ替わる形で魎夜がベンチから立ち上がり、コートへ向かう最中、そんな事を考えていた。
(黄龍会が弱いとは思わねえが、普通にやって負けるな。……ま、そうさせないために来たわけだけどよ)
 既に黄龍会のメンツにも試合中にレッドゴブリンの攻撃を喰らって負傷、もしくは意識不明の重体に陥った者が少なからず出ている。
 ジェノサイドボールでケガ人が出ない事はありえないが、犠牲者は少ない方がいいのは言うまでもない。
「こっちは球技なんて学生時代の授業位でしか経験がなくてね。よろしく頼むぜ?」
「フン、せいぜい死なぬようブッダにでも祈るのだな」
 コートに上がった魎夜がレッドゴブリンと対峙する中でアイサツを行うと、相手側は嘲笑うかのように返す。
 向こうはこちらを潰すつもりで来ている以上、一切手加減はしまい。
「……レイカ、ちょっといいか?」
「はい、何でしょう?」
「俺に策がある、聞いてくれるか?」
 試合再開前の僅かな時間、魎夜が近くにいたレイカを呼び、何かを伝える。
 彼はどうやら何かを考えているようだが、一体何をするつもりなのだろうか?

『……Go Genocide!!』
「そら、行くぜ!」
「行かせん! イヤーッ!」
 試合再開と同時にボールを取った魎夜はドリブルで走ると、彼を狙ってレッドゴブリンの手首が折れ曲がり、スリケンが射出される。
「っと、当たるかよ!」
 超高速で飛来するスリケンを見切り、僅かな動きで避けると魎夜は更に前進。
 ゴールへ向けて突き進む。
「こいつは……お返しだ!」
 そこから左右をステップしながら、相手にフェイントをかけつつ一気に踏み込むとリボルバーガントレット『魔召機甲イグナイトバイザー・ツヴァイ』による重い一撃を腹部に……叩き込んだ!
「グ、ワッ……」
 そのまま昏倒するレッドゴブリン。
 しかしゴールの行く手を阻まんと、数人が壁を作って立ち塞がる。
「レイカ、任せた!」
 と、ここで魎夜はノーマーク状態のレイカにボールをパスした。
「バカめ、もらった! イヤーッ!」
「来る! ……はっ、これは……見える、わたくしにも攻撃が見える!」
 そうなれば敵の狙いは当然、彼女に向く。
 だが避けられないと思っていたスリケンの軌道が、まるでスローモーションのごとくハッキリと分かり、レイカは反射的に身を屈めて躱した。
 魎夜が試合再開と同時に発動した『|銀の嵐の記憶《メモリー・オブ・シルバーレイン》』の効果だ。
 敵の分析結果を共有する事で、ホアン・ロンの仲間達も同じように相手の攻撃を見切れるようになったのである。
 今この時において、彼らにスリケンが当たる事はないだろう。
「避けたッ!? バカな、あの小娘のどこにそんな……」
「おらッ、お前達の相手は俺だ!」
「ヌゥゥゥーッ!?」
 驚くレッドゴブリンに襲い掛かる魎夜。
 悪目立ちをする事で戦場をかき乱し、ポイントはレイカに任せる……それが試合再開前に伝えた策であった。
「……皆さんが作っていただいた機会、逃しはしません! それッ!」
 魎夜がレッドゴブリンを翻弄している間、飛び交うスリケンの嵐を次々と避け続けたレイカが正確なシュートを放つと、ボールがゴールに吸い込まれてホログラフネットを揺らした。
 そうしてホアン・ロンがポイントを取った直後、ブザーが鳴り響き前半が終了。
 相手チームに大きく差を付け、なおかつレッドゴブリンに大損害を与える事に成功したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『クラウドドラゴン・ヤクザ』

POW   :    |雲龍游侠《クラウドドラゴン・ヤクザ》
【全身を自在に泳ぎ回るナノマシン刺青による】【肉体の肥大化】【体表の硬質化】【高圧電流の帯電】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    |情婦兵器《スケ・ウェポン》
自身の【侍らせている女性型レプリカント】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[侍らせている女性型レプリカント]は【酷使】により破壊される。
WIZ   :    |腹鼓光束《ハラダイコ・ビーム》
【腹部に内蔵された炉心から余剰エネルギー】を放ち、命中した敵を【汚染する「骸の海」】に包み継続ダメージを与える。自身が【稼働する為のエネルギーも攻撃に回】していると威力アップ。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黄・於菟です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●クラウドドラゴン・アプローチング
「……ええい、これは一体どう言う事だ!」
 前半戦終了後、別室で試合の様子を見ていたキラーベアーズの監督――ミカドの役員が憤りの声を上げる。
 想定ではこの時点でホアン・ロンはほぼ壊滅、そのまま試合終了までひたすらにレイカを嬲り続けると言う筋書きであった。
 ……だが、試合は相手に大きくリードされ、投入したレッドゴブリンも七割近くがやられると言った大損害だ。
 唯一挙げられる成果は、辛くもシュートが一本決まっただけと悲惨な物である。
「黄龍会め、どうやって我々の計画を見破ったかのは知らぬが……今回に備えて腕利きを雇ったか。こうなっては仕方ない……予定より早いが、貴様にも出てもらうぞ!」
 ミカドの役員が振り返ると、後ろの方で複数の女性――レプリカントを弄んでいた巨漢の男に声をかける。
「オウ、俺の出番か。言われた通りの仕事はさせてもらうが、報酬は……」
「分かっている! 我が社のレプリカントが欲しいのだろう!!」
「あぁ、ミカドの製品は気に入ってるからな……じゃ、行ってくるぜ」
 役員との短いやり取りの後、巨漢の男はレプリカントを伴って控室を出ていった。

「前半戦はわたくし達が大きくリード……皆さんの力がなければ、こうは行きませんでしたね。……もう少しの間ですが、引き続きお付き合いの程をお願いいたします」
 ハーフタイム中、合成スポーツドリンクを口にしつつレイカが猟兵達に頭を下げる。
 黄龍会側にも損害は多少は出ているが、これくらいは十分許容範囲内との事だ。
「俺達は受けた恩と恨みは忘れねえ主義だからな。勝ったら報酬の方はキッチリと」
「残念だが、それはねえなぁ」
 と、ヤクザの言葉に割り込むように、横から何者かの声が聞こえてくる。
「何者です!? な……!」
 声のする方へと振り向いたレイカが言葉を失う。
 身長は2メートル以上あろうかと言う巨漢の男……奴こそがキラーベアーズのキャプテン『クラウドドラゴン・ヤクザ』である。
 腹部に内蔵された炉心を露出し、フンドシ一つと言う出で立ちは実に奇妙な姿だ。
 あのような見た目であっても、おそらく機動力は高かろう。
「お前が黄龍会のボスか。……フフン、試合後が楽しみだぜ」
 クラウドドラゴン・ヤクザがレイカを品定めをするかのようにニヤリと笑う。
 予知によれば試合で大敗し重傷を負った彼女を戦利品として持ち帰り、レプリカントに改造してしまう未来だったそうだが、奴はきっとその事を考えているに違いない。
「……ま、少しは楽しませてくれや。簡単にくたばっちまったら興醒めだからな」
 そう言いたい事だけを言って、クラウドドラゴン・ヤクザがレプリカント数体を引き連れ自分のチームベンチへと去っていく。
 大した自信だが、それだけの実力はあると見るべきか。
「なるほど……あれがミカドの放った本命、ですか」
 あのような下品な輩、近寄りたくもないですね。
 同じヤクザであっても相容れない何かを覚えたのか、レイカが冷たく言い放った。

「そんじゃあ、おっ始めるとするか……お前ら、俺の邪魔だけはするなよ?」
「は、はい、ボス!」
 熱狂の渦の中での後半戦開始前。
 クラウドドラゴン・ヤクザは自身の周囲にレプリカントを引き連れ、それを遠巻きに見ているレッドゴブリンと言うフォーメーションを組んでいた。
 猟兵の相手など、自分だけで十分と思っているのだろう。
 だが奴を倒せばチームは瓦解し、黄龍会が勝利を掴み取れるはずだ。
 そうなればミカドや他のメガコーポが、ジェノサイドボールで彼らを潰しにかかろうなど二度と考えまい。
 ここまで来れば引き続き情けは無用……ひとつ、派手に暴れてやるとしよう。

 さあ、いよいよ後半戦の幕が上がる――Go Genocide!!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
侠客とは言えない悪党ですねぇ。
容赦は無用でしょう。

隠しておいた『祭器』各種を展開、『刀』を抜いて【剴畺】を発動しますねぇ。
『万象を斬る』性質上『硬質化』は無意味、射程の広さから『電流』による反撃も受けません。
『電流』を遠隔で飛ばすなら『FES』の対雷結界と『FLS』の空間歪曲で防げば良く、『肥大化』は『FGS』の重力波で対応、巨体故強く影響を受ける分却って足枷となるでしょう。
押された彼が『レッドゴブリン』達を招けない様、『斬撃結界』の範囲の広さでついでに始末しつつ、斬撃で体内が露出した部位や四肢を狙い『FRS』『FSS』の[砲撃]による[追撃]で[部位破壊]しますねぇ。



●雲龍を斬れ
「侠客とは言えない悪党ですねぇ。容赦は無用でしょう」
 るこるは本命との戦いのために伏せていた祭器各種を展開、更に隠し持っていた霊刀『純夢天』を抜いて戦闘体勢に入る。
 あれだけ分かりやすい悪党なら、気兼ねなく戦えると言う物だ。
「ほう、随分と武器を隠し持ってたじゃねえか。そうでなけりゃあ面白くねぇぜ」
 猟兵の力を侮っているのだろうか、クラウドドラゴン・ヤクザがニヤリと笑う。
「……だが、俺はあのサンシタ共とはまるで違う事を教えてやろうじゃねぇか」
 その直後、巨体に刻まれた雲龍のナノマシン刺青が全身を泳ぎ回ると、クラウドドラゴン・ヤクザの肉体が肥大化し体表が硬質化。
 更に全身が高圧電流で帯電される事により、戦闘力が激増される。
 骸の海の過剰投与による能力『|雲龍游侠《クラウドドラゴン・ヤクザ》』だ。
「グハハハ! どうだ、見たか! これが俺の力よ!!」
 雲龍游侠により体積が倍増した事で、更にタフな見た目へと変貌したクラウドドラゴン・ヤクザが勝ち誇るかのように笑う。
 これでは例え強力な武器があっても、奴に傷を付けるのは難しかろう。
「なるほど……では、私達の力を存分に見せてあげましょう」
 相手から放たれる強烈なプレッシャーなど物ともせず、るこるはクラウドドラゴン・ヤクザへと立ち向かう。
 いよいよ戦いの時だ。

「ヌウゥゥゥーンッ!!」
 クラウドドラゴン・ヤクザのシャウトと共に、耐電状態の全身から激しい放電が巻き起こり、るこるを襲う。
 あの放電を喰らってしまえば、瞬時に黒焦げにされてしまう事だろう。
「効きませんよぉ」
 だが、その程度の攻撃など想定済みだと言わんばかりに、放たれた放電はるこるの展開していた祭器『FES』の対雷結界と『FLS』の空間歪曲であらぬ方向へと弾かれた。
「少しは出来るようだな!」
 骨のある相手だと認識したクラウドドラゴン・ヤクザが楽しそうな笑みを浮かべると、巨体に似合わぬ機動力で飛び掛かる。
 近接戦闘に持ち込むつもりだ。
 しかし飛び掛かった次の瞬間、突然体が鉛めいた重さに包み込まれてズンッ、と巨体がコート上に落ちた。
「……ヌゥッ!? こいつァ一体!?」
 一体何が起きたのか分からず、クラウドドラゴン・ヤクザの表情が一変する。
 祭器『FGS』の重力波を受けた事で、その巨体に圧し掛かる重さが何倍にもなってしまえば自慢の機動力も台無しだ。
「……いかん、ボスを援護しろ!」
 一方でクラウドドラゴン・ヤクザの危機を察した、後方のレッドゴブリン達が助けに入ろうとするも……
「ボスの邪魔をするなって言われてましたよねぇ?」
「アバッ!?」
 戦闘前に発動していた『|豊乳女神の加護・剴畺《チチガミサマノカゴ・センサイノホウチ》』で、るこるが純夢天を振るう事で発生させた、斬撃結界の範囲内にいたレッドゴブリン数体がまとめてバラバラに切断された。
「さて、それでは耐久試験と行きましょうかぁ」
 そして邪魔者もいなくなったところで、るこるが斬撃結界でクラウドドラゴン・ヤクザに攻撃を仕掛ける。
 向こうは体表が硬質化した事で、生半可な攻撃など一切受け付けないはずであったが。
「グワーッ!? お、俺の体に傷が……!?」
 万象を斬る斬撃結界を発生させる剴畺の前には、硬質化した肉体も無意味であった。
 来ないはずの痛みが全身を走り、驚愕するクラウドドラゴン・ヤクザ。
 四肢には切傷が刻まれ、バイオ血液が流れ出す。
「まだまだ終わりませんよぉ」
 そこへ更に追撃で『FRS』『FSS』の砲撃が叩き込まれ、爆炎に焼かれるクラウドドラゴン・ヤクザの肉体。
「ヌゥゥゥーッ!?」
 容赦のない攻撃に晒され、思わず冷や汗を流すクラウドドラゴン・ヤクザ。
 猟兵が油断ならぬ相手であると、早くも身を以て知る事となったであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
いよいよ後半戦で向こうもキャプテンを出してきました。
あとはこれを倒して試合終了ですね。

それにしても面白い刺青ですね。よく動きます。
もっと観察してみたいですが、試合を長引かすとお客さんが飽きてしまいますからね。
手短に済ませましょう。

素手で相手します。
相手の攻撃はスマートグラスと【第六感】で回避。電撃は【電撃耐性】あり。
侍らせてるレプレカントを【敵を盾にする】しつつ、【ダッシュ】で接近。
UC【超重新星】を発動して、キャプテンをキックでぶっ飛ばします。

ついでにゴールで得点狙いましょうか。



●ステゴロ・ケンカバトル
「まさか俺の体に傷を付けられるくらいの奴がいたとはな……」
 猟兵をその辺りのサンシタに毛が生えた程度の相手だろうと侮っていたクラウドドラゴン・ヤクザは早々に痛手を負う事となり、自分の迂闊さを恥じる。
 これまで負けなしの強さを誇ってきたが故の慢心、と言う奴だろうか。
「ここからは俺も本気でやらせてもらうぞ。ヌゥゥゥン……ッ!」
 向こうとは命を張って殺し合いをするに値する相手と認識したクラウドドラゴン・ヤクザが唸り声を上げると、再び体に刻まれたナノマシン刺青が体表を泳ぎ回り、全身が帯電する。
 奴はまだまだ戦えると言った様子だ。
「本命のお出ましですか。それにしても面白い刺青ですね。よく動きます」
 一方で、クラウドドラゴン・ヤクザと対峙する摩那の興味はナノマシン刺青に向けられていた。
 一体どんな原理なのか観察してみたいと言う欲はあったが、試合を長引かせては血気盛んな観客の熱が引いてしまう事だろう。
 鉄は熱い内に打て、である。
「では、手短に済ませるとしましょうか」
「面白ぇ、出来るならやってみろ。武器があるならさっさと出しな」
「前半戦は武器を使いましたが……今度こそ素手でお相手しましょう」
 と、功夫の構えを取り、摩那が戦闘体勢に入る。
 本来、この世界のサイボーグならば体のどこかに武器を隠し持っている物だが、クラウドドラゴン・ヤクザに限って言えば腹部に内蔵された炉心以外、武器らしい武器は持っていないはずだ。
「ステゴロで俺とやり合うたぁいい度胸じゃねえか。いいぜ、乗ってやる」
 相手が女であっても一切の容赦はしないと言った感じで、クラウドドラゴン・ヤクザも構える。
 睨み合う両者……やがて、誰が合図した訳でもなく双方が一歩踏み出すと同時に戦闘が始まった。

「ウオォォォッ!」
 丸太よりも太い腕を振り上げ、クラウドドラゴン・ヤクザが殴りかかる。
 屈強なヤクザが束になっても一撃で吹き飛ばしてしまう程の威力だ。
「来る! ……くぅっ!」
 スマートグラスに表示される情報と第六感を生かし、摩那が攻撃を躱す。
 しかし攻撃を避けたとしても、相手の耐電した腕から放出される電撃までは避けられず、多少なりとも喰らってしまうが、幸い電撃耐性を所持していた事もあって、受けたダメージは軽い。
「はっ、たっ、やっ!」
 もちろんやられてばかりではないと、摩那は鋭いキックの嵐をクラウドドラゴン・ヤクザに浴びせ、反撃する。
 鍛えた功夫が生きる時だ。
「なかなかやるな! フンハァーッ!」
 攻撃を受け止めつつ、クラウドドラゴン・ヤクザが更に反撃を試みる。
 コート上の激しいバトルに観客の声援もヒートアップ気味だ。
(さすがに硬いですね。それに動きも早い……やはり一気に決めるしか)
 少しの間、相手と壮絶なステゴロ・バトルを繰り広げていたが、いつまでも打ち合う訳にはいかないと摩那が一旦バックステップで距離を取り、タイミングを見計らって走り出した。
 狙いは相手の後方、クラウドドラゴン・ヤクザが侍らせているレプリカントだ。
「……それっ!」
「アァッ!?」
 上手くレプリカントの背後に回り込み、手を回して盾にしつつ相手に向け……接近!
「ヌゥッ!? 俺の女に何を……」
 この予想外の行動に思わず攻撃の手が止まるクラウドドラゴン・ヤクザ。
 奴が好色漢であるが故に生じた隙である。
「せやぁぁぁっ!」
「グオーッ!?」
 シャウトと共に摩那が盾にしていたレプリカントを前へ投げ、『|超重新星《シュペールノヴァ》』でダッシュからの飛び蹴りを放つと、クラウドドラゴン・ヤクザをレプリカントごと大きく吹き飛ばした。
 一瞬の油断にやられた形だ。
「……おっと、ボールはフリーでしたね。いただき!」
 その直後、すっかり忘れ去られつつあったボールを念動力で手にすると、そのままシュートを決め、点を入れる。
 既に試合はジェノサイドボールから殺し合いに移行しつつあるが、その辺りの事を摩那は忘れていなかったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
正直、このゲームのことは好きになれねえ
でもまあ、このスポーツで稼いで生きている奴もいる
であれば、よそ者の俺にどうこう言える筋合いはねえさ

だが、必要以上の哀しみが生まれるのなら、俺はそれを止めるために戦うだけだ
「(誰何の言葉に)俺は雇われただけの、通りすがりの能力者さ、覚えておきな! イグニッション!」

【戦闘】
「(レイカたちに)下がってな、アイツはこっちがやる」
この件、負けてりゃレイカもああなってた訳だしな

素の実力だけでも十分食っていけるだろうに……
文字通り女を使い潰すそのやり口が気に食わねえ

「来な、外道。こっからは俺も情けは無用だ」

「リミッター解除」で「グラップル」のUCの拳を叩き込む



●激突する拳と拳
「正直、このゲームのことは好きになれねえ。でもまあ、このスポーツで稼いで生きている奴もいる……であれば、よそ者の俺にどうこう言える筋合いはねえさ」
 激しい試合にヒートアップする観客の様子を目にした魎夜が一人呟く。
「だが、必要以上の哀しみが生まれるのなら、俺はそれを止めるために戦うだけだ」
 もしこの戦いで黄龍会が壊滅する事にでもなってしまえば、彼らの勢力圏に住む人々を待ち受ける運命は極めて過酷な物となるだろう。
 特にダストエリアで暮らす人々は生活の支援を失う事で生きていけなくなり、やがてメガコーポの食い物にされるのが関の山だ。
 ならば相手チームを完膚無きにまで叩き潰す……自分達がすべき事はそれだけだ。
「グ、グウゥゥッ……まさかここまでやるとは……」
 先程、大きく吹き飛ばされたクラウドドラゴン・ヤクザが頭を抑えつつ立ち上がる。
 予想以上に猟兵の戦闘力が高い事に驚きを隠せないようだ。
「この俺をここまで圧倒するとは、お前は……いや、お前達は何者だ?」
「俺は雇われただけの、通りすがりの能力者さ、覚えておきな!」
 魎夜が懐から何かを取り出す。
 それは一枚のカード……銀誓館の能力者の証である、イグニッションカードだ。
「……|イグニッション《起動》!」
 叫びと共に自身のリミッターを解除する魎夜。
 ここから先は本気の戦いだ。

「下がってな、アイツはこっちがやる」
 本気の戦闘モードになった魎夜が後ろに控えるレイカと手下のヤクザに告げる。
 実際あれだけの敵を相手に出来るのは猟兵以外にいない。
「……お願いします!」
 自分達では到底歯が立たない事を理解しているのかレイカは手下を伴い、戦いに巻き込まれないよう下がる。
「お前ら、こいつは本気のタマの取り合いだ。……邪魔をしたら潰すぞ?」
「は、はいッ!」
 一方のクラウドドラゴン・ヤクザもサシの戦いを望んでいるのか、周囲のレプリカントとレッドゴブリン達に釘を刺すと、連中も下がって戦いを見守る事になった。
「来な、外道。こっからは俺も情けは無用だ」
「おうともよッ!」
 それ以上の言葉は不要とばかりに、両者が激突。
 拳と拳による格闘戦が始まった。
「おぉぉぉぉぉ……ッ!」
「フゥゥゥゥゥンッ!!」
 まるでマシンガンめいたラッシュの打ち合いが繰り広げられ、魎夜は的確なガードをする一方、クラウドドラゴン・ヤクザは硬質化した肉体に自信があるのか、ノーガードで攻撃を受け止めていく。
(素の実力だけでも十分食っていけるだろうに……文字通り女を使い潰すそのやり口が気に食わねえ)
 戦いの最中、魎夜はふとそんな事を思う。
 確かに奴は素の実力だけで生きていける事だろうがここはモラルが死に絶え、腐敗と退廃を極めたサイバーザナドゥ。
 このような輩は吐いて捨てる程いるのが現実だ。
 ……だからこそ、一切の慈悲をかけなくても済むのだが。
「グハハハ! なかなか悪くない攻撃だが、俺を倒すには足りんぞ!」
 激しい打撃戦の中、クラウドドラゴン・ヤクザは余裕たっぷりの様子で笑う。
 やはり硬質化した肉体を打ち破る、大きな一撃が必要のようだ。
(確かに手応えが薄い……となれば一か八か、やってみるしかねぇな)
 ここで魎夜は賭けに出た。
 狙いは相手の次の攻撃。
 寸前で躱し、カウンターをブチ込む……それしかあるまい。
「ヌゥゥゥゥンッ!」
 魎夜の考えも知らず、クラウドドラゴン・ヤクザが動き出す。
 極太の腕から飛んできた右ストレートを引き付け、躱した……次の瞬間!
「こいつの威力は一味違うぜ!」
 構えからイグナイトバイザー・ツヴァイが炎の妖気に包まれると同時に、『|紅蓮撃《グレンゲキ》』がアッパーカットめいてクラウドドラゴン・ヤクザの胸部を撃ち抜いた。
「ア、ガッ……!」
 全身を貫く衝撃に打ち上げられ、そのままコート上にズゥンッと頭から叩き付けられるクラウドドラゴン・ヤクザ。
 ――これがかつてシルバーレインの世界を救った、能力者の力である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
私と大きさはそこまで変わらないのに随分と強気ですね
横に大きいと態度もデカくなるんでしょうか
では私は縦に二回りほど大きくなります
(UC【蠱の砦】発動)
む?体表を電気が迸っていますね
(レッドゴブリンを掴み棍棒替わりにする)
壊れてしまいました
では手掴みで…ちなみに私は『電撃耐性』持ちです
(敵を持ち上げ上空に投げ飛ばすとブレイクダンスのウインドミルで回し蹴りの連打を浴びせる)
おや、あなたボールを持っていますね
ちょうどいい
このままあなたごとシュートしましょう



●情け無用、問答無用
「私と大きさはそこまで変わらないのに随分と強気ですね。横に大きいと態度もデカくなるんでしょうか」
 クラウドドラゴン・ヤクザを見て、クロリアがダンスをしつつ思った事を口にする。
 ここまで語られていなかったが、分類上はバイオモンスターである彼女の背丈は237センチ弱と、確かに大きさで言えば敵と同等だ。
「俺をここまで追い詰めた奴らは初めてだ……だが、まだ負けた訳じゃあねえぞ!」
 傷だらけの体となったクラウドドラゴン・ヤクザが立ち上がり、吠える。
 叩き上げのヤクザ故、奴にもプライドと言う物があるのだろう。
「ヌ、背丈が同じくらいの女も初めてだな……しかしそれだけで俺に勝てるとでも」
「では私は縦に二回りほど大きくなります」
 クロリアが割り込むように言うと『|蠱の砦《コノトリデ》』が発動。
 翅が消えた替わりに、三対の爪のような虫の足を生やした、首から下を錆色の甲冑のような殻で覆う巨人に変身する。
 しかも、その大きさは自身の三倍……実に7メートル越えだ。
「な……」
「な……」
 コート上に突如として現れた巨人を前に、観客やレイカ達黄龍会のメンツの他、敵であるレッドゴブリンらも唖然とした様子でクロリアを見上げる。
「なんだぁ、こりゃあッ!?」
 巨人と化したクロリアを前に、クラウドドラゴン・ヤクザも驚愕するしかない。
 あんな奴は初めて見る、そんな様子だ。
 ……しかし、奴にとっての地獄はここから始まるのであった。

「デカブツめ、それくらいで俺が怯むか!」
 最初は驚愕していたものの、バチバチと放電しつつクロリアを威嚇するクラウドドラゴン・ヤクザ。
 ヤクザたる者、舐められる訳にはいかないのだろう。
「む? 体表を電気が迸っていますね」
「アッ!? な、何を……アババババーッ!?」
 ならばとクロリアは手を伸ばし、唖然としているレッドゴブリンを掴むと棍棒代わりにするが、激しい放電に身を焼かれてあっと言う間に絶命する。
「壊れてしまいました。では手掴みで……」
「ヌオォォォォッ!? は、放せ! 放せぇぇぇッ!!」
 レッドゴブリンが使えないと知るや、今度はクラウドドラゴン・ヤクザに手を伸ばし、直接掴むクロリア。
 それに対し向こうは激しく放電して抵抗するが、電撃耐性を持つ彼女からすれば大したダメージにもならなかった。
「あ、レイカさん。危ないですから下がっていて下さいね?」
「え……? あ、は、はい……!」
 クラウドドラゴン・ヤクザを鷲掴みにしたクロリアは、信じられない物を目にして呆然としていたレイカ達に下がるよう呼びかけると、彼女達は慌ててコートから遠ざかる。
「ハーフタイムは過ぎてますが、ちょっとしたダンスショーと行きましょう」
 黄龍会のメンツの安全を確認すると、鷲掴みにしていたクラウドドラゴン・ヤクザを上へ放り投げたクロリアは、コート上で華麗なブレイクダンスを披露する。
「グワーッ!? グワーッ!? グワーッ……!?」
 一方、空中に放り投げられたクラウドドラゴン・ヤクザはブレイクダンスのウインドミルで回し蹴りの連打を浴びせられ、ボコボコにされていく。
 何せ体の大きさが三倍もある相手だ……質量差もあり、ひとたまりもあるまい。
「……おや、あなたボールを持っていますね」
 空中でボコられるクラウドドラゴン・ヤクザが(何故か)ボールを手にしていた事に気付いたクロリアは、ここで何かを思い付く。
「ちょうどいい、このままあなたごとシュートしましょう」
 なんたる無慈悲!
 しかし外道にかける情けは実際不要だ!!
「な、何だと……アッ、ヤ、ヤメロー! アァーッ……!!」
 まるで紙ゴミのように、クロリアの手の中でクラウドドラゴン・ヤクザが丸め込まれると、ゴールへ向け……シュート!
 そのまま綺麗な放物線を描き、ホログラムのネットを揺らして……ゴール!
 ナイスシュート!!
「わ、わたくし達は夢を見ているのでしょうか……?」
 後方でその様子を見ていたレイカは改めて猟兵の規格外っぷりに言葉を失う。
 ……彼らが敵じゃなくて本当に良かった、そう思ったに違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「さ、レイカもやってみるっすか?」
後半戦はレイカに憑依。こうやって猟兵のハイレベルな動きを体験させておくことで、今後の戦いで身を守る経験の足しになればと思うんすよね
「試合中なんでまともなインストラクションにはならないかもしれないっすけどね」
【シークレットポテンシャル】でレイカの技能を引き上げる
「美人には酷いことしたくないところっすけどねぇ」
情夫達が襲いかかってくるなら、【メカニック】で機械的に脆弱な部分を見抜いて四肢のパーツを【解体】【盗み攻撃】して体の自由を奪い、コート外に蹴り出す(一応【念動力】で優しく軟着陸)
その他レイカの義肢に何か機能があれば、それを駆使

「これで邪魔者はいないっすね」
そう言ってヤクザに指でキツネサインを作って挑発
「肉厚だからさっきみたいな分解は無理そうっすけど」
攻撃を避ける際に腹部の炉心にさっき奪ったレプリカントの腕を突き刺す。あとはすり抜けるなり相手を踏み台にするなりして抜いて、豪快にゴールを決めて盛大にアピール。黄竜会を簡単にちょっかい出せないと印象付けっす



●|アンタッチャブル《触れてはならぬ物》
「あのデカいのもいよいよ虫の息って感じっすかね。だとしたら、そろそろ……」
 リカルドは体を借りていたヤクザから離れると、レイカの元へ向かう。
「わたくしにもあの方々のような力があれば、黄龍会を守れるのでしょうか……」
「さ、レイカもやってみるっすか?」
 これまで猟兵達の強さを目の当たりにしたレイカは、羨望の眼差しを向けて呟いたところへリカルドが素早くレイカに憑依する。
 仕上げとして彼女に憑依してクラウドドラゴン・ヤクザを倒し、黄龍会の力を大々的に見せ付けようと言うつもりだ。
 実は彼女がとんでもない実力者であった事と思い込ませれば、今後メガコーポとて彼女に手を出す事を躊躇うはずである。
「!? リカルドさん、一体何を……え、これは……?」
 彼が憑依した直後、レイカは自身の体から沸き上がる何かを感じる。
「とりあえずアレっす、猟兵の動きを体験出来れば今後の戦いで身を守る経験の足しになる……と思うんすよね」
 まあ試合中なんでまともなインストラクションにはならないかもしれないっすけどね、とリカルドが付け足す。
「わたくしに出来るのでしょうか……?」
「アレっすよ。女も度胸、とにかくやってみる物って言うじゃないっすか。……で、行けそうっすか?」
 まだどこか信じられない様子でレイカが問うと、リカルドは冗談めかして返しつつ大丈夫かどうかを確認する。
 何せこれからクラウドドラゴン・ヤクザと戦う事になるのだ……暴力的行為に慣れていない訳ではないだろうが、覚悟があるかだけは聞いておきたいのだろう。
「……実のところ、過剰な暴力行為をわたくしは好みません。ですが」
 左腕部が開き、内部に隠されていたドスソードを抜くと、レイカの表情が一変する。
 それはまさに冷酷なヤクザクランの当主の顔だ。
「黄龍会に仇をなす者には相応の報いを受けさせましょう。そのためにも……」
「うっす、自分が力を貸すっすよ。さあ、大物狩りの時間っす!」
 レイカの覚悟を聞いたリカルドは彼女に同調すると、クラウドドラゴン・ヤクザへと向き直るのであった。

「こうなったらプライドは抜きだ! ……お前達、ヤッチマエー!」
 いよいよ余裕がなくなったか、満身創痍で憤怒の形相となったクラウドドラゴン・ヤクザは周囲に侍らせていたレプリカント達に命令を下すと、彼女達の顔や腕、足が真っ二つに割れ、中から物々しい銃火器が現れ砲台めいた姿に変わる。
 彼女達は有事には武装へと変形する違法改造レプリカントであり、それを攻撃に使う『情婦兵器スケ・ウェポン』を切り札として使うようだ。
「美人には酷いことしたくないところっすけどねぇ」
 早速無数の鉛弾が飛び交う中でジョークを飛ばしつつ、リカルドは『シークレットポテンシャル』でレイカの技能をブーストすると、稲妻のごとき勢いでコート上を駆け抜け、弾幕を躱していく。
「さぁて、向こうの弱点は……お、ちゃんと見えるみたいっすね」
 レイカに憑依して体を借りているリカルドは、彼女の高性能サイバーアイに表示される高速スキャン結果を目にして即座に機械的に脆弱な部分を見抜くと、手にしているドスソードを振るい、四肢を瞬時に切断。
 そのまま行動不能に陥らせるとコートの外へと蹴り出す。
「……っと、せめてもの情けっす」
 その際には一応、念動力で優しく軟着陸させる事も忘れないリカルド。
 いくらクラウドドラゴン・ヤクザの所有物とは言え、彼女達はオブリビオンではないのだ。
「グゥゥゥッ……な、何をやっている、あの小娘を近付けさせるなッ!」
 攻撃がまるで当たらず、一体、また一体と狩られていくレプリカント達にクラウドドラゴン・ヤクザが苛立つ。
 そんな中、リカルドはドスソードの他にもレイカの左腕に内蔵されていたマンティスセイバーを高速回転させ、銃弾を弾き返す離れ業も見せていく。
「アァッ……」
「これで邪魔者はいないっすね」
 そして、レプリカントの最後の一体が戦闘不能となった事でクラウドドラゴン・ヤクザと一対一の状態を作り出したリカルドはキツネサインを向ける。
 キツネサインとは、この世界で使われる敵対と威嚇を意味する挑発のサインだ。
「オ、オノレーッ! よくも俺の女達を!」
「お覚悟を。わたくしの力をその目に焼き付け、ジゴクへ行きなさい」
 実際にはレイカの力ではないが、リカルドに『トドメの前にそう言うとカッコイイっす!』と提案された事から、そのセリフを口にする。
「……お前のような小娘など、俺一人で十分だ! ウオォォォーッ!!」
 完全に頭に血が上ったクラウドドラゴン・ヤクザが殴りかかったところへ、リカルドが隠し持っていた何かを取り出した。
「肉厚だからさっきみたいな分解は無理そうっすけど」
 取り出したのは四肢を切断した際、密かに奪い取ったレプリカントの腕だ。
 リカルドはサッと身を屈めて相手の丸太めいた腕を避けると、貫手の状態にした腕を腹部の炉心目掛け、一気に……突き立てた!
「ア、アバッ……」
 ここまで蓄積したダメージに加え、露出した弱点でもある炉心に致命的ダメージを受けた事でクラウドドラゴン・ヤクザの命の灯が急速に消えかかる。
「……イヤーッ!!」
 そこへレイカが落ちていたボールを拾い上げるとシャウトと共に飛び上がり、クラウドドラゴン・ヤクザの頭部を踏み台にすると同時に、彼女の両足のガンレッグがゼロ距離で火を噴いた。
 相手の頭部を撃ち抜いた反動で更に高く飛び上がると、派手な回転も加えてダンクシュートを決めた直後、大きなブザー音が鳴り響く。
 反射的にスコアボードへ目を向ければ、今更言うまでもない事だろうがキラーベアーズに大差を付けていた。
『ゲームセット。勝者、ホアン・ロン』
 機械的アナウンスが流れた瞬間、割れんばかりの大歓声に包まれる。
 そんな中、クラウドドラゴン・ヤクザはコート上で大の字になったまま、目を見開いた状態で絶命していた。
 これにて完全決着である。

「……今日は本当にありがとうございました、皆さんは黄龍会の恩人です。このご恩、いつか返せる時が来ましたら、その時はわたくし達の命を賭してでも必ず……」
 試合後、レイカは猟兵達に深々と頭を下げた。
 あれからミカドの連中はどうなったかと言えば、あり得ない大敗に尻尾を巻いて逃げ出したそうな。
 これでメガコーポの連中も当面は黄龍会に手出しする事を思い留まるはずだ。
 それは即ち、彼らが収める地域で暮らす人々の生活の助けやメガコーポ・レジスタンスへの支援は今後も続くと言う事であり、結果的に猟兵達が多くの人々を救った……と言っても過言ではあるまい。

 ――かくして黄龍会壊滅の危機は去った。
 これからも彼らは弱き人々を守る異端のヤクザクランとして、この世界で存続し続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月02日


挿絵イラスト