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バイオカワイイダメゼッタイ!

#サイバーザナドゥ

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#サイバーザナドゥ


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『やめられない!とまらない!だけどまったくご安心!バイオカワイイスイーツは甘いものに目が無いアナタの味方です!』
 宣伝車がスピーカーから購買意欲を煽るメッセージと音楽を流しながら、側面に取り付けられた液晶で派手でキャッチーなCMを流している。

『バイオカワイイはバイオだけどオーガニックより安心安全!とってもカワイイ!』
 液晶に映し出されたスイーツは、蛍光色のピンクと水色に淡く光っていた。
 それを誰がどんな環境で作っているのか、そしてどんな目的で作られているのかは、その様子からは一切うかがい知ることはできなかった。

「バイオだけど安全でとってもカワイイ……なんて売り文句ですけど、お気づきの通りちっとも安全ではないのです」
 げんなりした様子で綿貫・小雨は口を開く。
 売られているものはグミなのかソフトキャンディーなのかマシュマロなのかもわからない形状で食感は柔らかく異様に甘い、お世辞にも美味しいとは言えないものだが飛ぶように売れているそうだ。

「飛ぶように売れる理由は、お菓子の持つ中毒性です。これは比喩でもなんでもなく、中毒になる成分がたっぷり含まれているからなのです」
 もちろんそんなものは違法である。
 しかし販売している企業がメガコーポであるBKカンパニーの傘下として資金提供を受けているためか、警察は証拠不十分として動こうとしない。そのせいで販売停止にもなっていない状況だ。

「皆さんにはまずこのお菓子の出所を探ってほしいのです」
 宣伝して売られてはいるものの作られている工場のありかははっきりしない。
 自社オフィスの地下が怪しいとまではわかっているものの、現状では本当に地下に工場があるのかすらわからないのだ。

「売人を辿ってお菓子を出荷するところを押さえれば工場の場所も侵入するための入り口もわかりますからね!」
 まさに一石二鳥。
 工場潜入のためにも情報を集めることは無駄にならない。敵を知ればそれだけ取れる手も増えるのだから。
 手段は各々に一任されている。大きな騒ぎにならならないのなら暴力に訴えることすら可能だ、使えるものはなんでも使って構わない。それがここの流儀なのだから。

「見つけた後も一筋縄ではいかないと思いますが、皆さんなら大丈夫と信じてます」
 厳重に隠された工場だ。中には工場を守る……あるいは脱走を防ぐためのなにかが目を光らせているだろう。働かされている低賃金労働者を見張るためであってもメガコーポが優しい対応をしてくれるとは思えない。

「それからこの会社、このお菓子を作る前の過去がまったく存在していなくて……資金提供しているBKカンパニーがこのお菓子を売るためだけに作った企業の可能性があるのです」
 資金提供だけしているのであれば傘下になにがあっても知らなかったで逃げられてしまうかもしれない。しかしなにか情報が掴めれば、きっと今後に役立つはずだ。

「もしもそれがわかるものが見つかれば、メガコーポに一矢報いるための手がかりになるかもしれません。余裕があればそれもおねがいしますね!」
 甘いお菓子と異なりこの世界は甘くない。それでも抗い続ければ、苦い思いをするばかりではないことを猟兵たちは知っている。


ぬぬかぬれ
 はじめましての方ははじめまして、こんにちはぬぬかぬれです。
 今回のシナリオは「サイバーザナドゥ」メガコーポ傘下の違法工場から働かされている人々を助けだし工場を運営する企業を再起不能にしてください。

●1章 冒険
 危険なお菓子を売っている売人を探しだし工場を突き止めてください。
 お金を払って情報を引き出すのもよし、力で話させるのもよし。お酒の力で口を軽くさせるのも選択肢としては悪くないかもしれません。
 とにかく情報さえ手に入れば、そして大事にならない方法ならば問題ないでしょう。

 2章は工場を警備するために配備されたリアニメイト社・兵隊向け汎用クローンYとの集団戦、3章は終末のシグマ『貪欲な王子さま』とのボス戦になります。

 アドリブ禁止の場合は簡潔で構わないので明記してください。文字数が足りない場合はア禁などだとわかりやすいです。
 共闘は明記されていない限り行いません。
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第1章 冒険 『売人を探せ!』

POW   :    足を使って売人を探し回る

SPD   :    購入者から売人の情報を得る

WIZ   :    電脳空間で売人の情報を集める

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

田中・香織
有害な物を売り捌くなんて許せないわ。
何としても阻止しなければいけないわ。
お菓子を買おうとする客の振りをして売人を呼び出してその後を尾行して工場を突き止めるわ。
向こうも商売だから金を持った買う気のある客がいれば食いつくはずだから。
尾行する際は見失わない程度に距離を取って相手に気付かれないように気を付けるわ。(追跡+情報収集)
気付かれたら全てが水の泡だから。
アドリブ、共闘大歓迎よ。
どんどん動かしてね。
その方が面白いから。



 原色の明かりが夜でもないのに辺りを照らし、無秩序な電子音楽が所狭しと鳴り響いていた。少し前まで派手な広告宣伝映像を横に設置したモニターから垂れ流すようにして走っていたトラックは、今は明かりを消して裏通りに止められている。
 宣伝車というだけでなく販売用に商品を運ぶ役目も兼ねていたとは。治安の悪いところで少し話をふっただけであっさりと案内されてしまったことに少し拍子抜けしつつ、それほどまでに簡単に手に入る状況なのかと嫌な気分にもなる。
 
 どう見ても体に良いとは思えない原色の塊だ。お菓子といえばお菓子に見えるかもしれないが、スーパーボールと言われたらそうかも知れないと思うような形状をしている。お世辞にも美味しそうとは思えない。

「帰りに買いたいんだけど、これいつまで売ってるの?」
「売りきれなきゃ、あと三時間くらいですね」
「ちょっと早いわね、今度はいつ売ってる?」
「明日も来ますよ」

 にこやかに差し出されたチラシを受け取った香織は、バレない様に不快な感情を噛み殺した。いけしゃあしゃあと安全を騙る文字が派手な色合いで並べられているのが気に障る。
 それでも閉店の時間がしっかりと印刷されているのを見て作り物ではない笑みを浮かべた。店じまいをするということは帰るということ、そして証拠になりうるこのトラックを関係のない所に置いておくということは考えにくい。

 普通の客の顔をして別れて、封鎖されていたビルの非常階段を軽い足取りで駆け上がりトラックが上から見える場所まで移動する。
 乱雑に立てられたビルを抜ける排ガス混じりの風が香織の大きな縦ロールを揺らす。しばらく待ち辺りが暗くなった頃に、ようやく動き出したトラックの後を追うようにビルの屋上から文字通り飛び出した。

 夜の闇に光量を増したネオンを背にしてジェットパックで空から走るトラックを追いかける。町の騒音はジェットの噴射音すら一部に変えてしまい、他の車の排気ガスから逃れるために窓を閉めたトラックの運転手では気づくことができなかった。
 静かなカーチェイスを終えて、販売している企業のオフィスビルから少し離れた所にある駐車場にトラックが入っていく。入り口から続く道が地下に続く坂になっているのを確認して香織は口元に笑みを浮かべた。

「そこが入り口ってわけね」

 入るところがわかってしまえばなんてことはない。見つからないうちに立ち去るために踵を返した香織は、再びネオンの中に飛び込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千賀・月晴
アドリブ・連携◎

美味しいものに細工をするなんて酷いことするなぁ。
これ以上被害が広がる前に対処しないとだね。
僕はバイオカワイイスイーツの購入者と話して情報を引き出そうか。(『コミュ力・言いくるめ・グルメ知識・取引』)
僕も商品を購入したいという態度を見せればきっと購入者も売人に繋いでもらえると思うんだよね。
売人の情報を得たら本人に会って『取引』だ。うちのメガコーポと手を組む提案をちらつかせて工場の見学まで持ち込めれば良いけど……ダメなら力づくだね。



 せっかくお菓子として作られたのに勿体ないことをするものだと月晴は軽く眉をしかめた。薬物に割く金を商品開発に使えば柔らかくて甘いものなんてそれなりに美味しくなりそうなものなのに、と。
 しかしそうはならなかったのだから、これ以上被害が出る前に対処しないわけにはいかない。お菓子なんて隠れ蓑でちょっと奮発すれば手に入りそうな値段で中毒性のあるものが売られてしまえば、どれほどの人が迷惑するか想像するのすら嫌になって月晴は視線を巡らせた。

 幸いに目的のものはすぐに見つかった。なにしろとびきり派手なロゴがデカデカと印刷された原色のビニール袋なんてものはこの色に溢れた町の中でもかなり目立っていた。
 目立つというのは目を引くという意味でもある。つまりはそれだけ宣伝効果もあるということで、それを見るだけで考えなしでこんなものを作ったのでなくしっかりとした企業が背後にいるということが分かる。

 これはちょっと骨が折れるかもしれないと考えながら月晴は努めてにこやかに購入者に話しかけた。突然話しかけてきた男に不審げな目を向ける相手を言葉巧みに言いくるめて、売っているところと売人の面相を聞き出すと笑顔のまま別れる。
 ほんの少しだけ「そこまで怪しまないでも」と傷ついたりしないでもなかったが、今はそれを気にしている場合でもない。気にしてないったらないと月晴は頭を切り替える。

 売人は案外とすんなり見つかった。商品に合わせているのだろう、派手で華やかな格好は危険なものを売っているようにはとても見えない。
 名刺を渡して話してみてもあまり良い反応はしない。それを見てこのまま普通に交渉しても話が進みそうにないと判断した月晴は、実力行使に出る前に少しだけ強めに「お話」をすることに決めた。

「こちらはね、仕事の話をしてるんだよ」

 蹴りつけられたガードレールがわずかに歪んだ。響く金属音とは対照的に月晴が出す声は低い。先程までのにこやかな様子はすっかり鳴りを潜めたその姿は衝撃を与えるには十分だった。
 あからさまな威圧にすっかり身をすくめた売人は、必死に自分にはその権利が無いと言いながら見下ろす月晴を見ることすらできずにいる。

「それなら仕方ない、工場には責任者もいるよね?場所を教えてくれたらこっちで交渉するよ」

 先程のことが嘘のようににこやかに戻った月晴壊れたおもちゃのように首を縦にふる売人は促されるままに工場の場所を教えてくれた。
 真っ当な交渉ではなかったかもしれないけれど、力づくで情報を得るよりもよっぽど
平和的に問題が解決できたと月晴は胸をなでおろした。でも一つだけ、気になることもあるのだ。
 
「そこまで怖がるほどだったかな」

 まさか何をするかわからないほど胡散臭くて怖かったわけじゃないよな。と思いつつ、月晴は人のいない路地裏を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
そのお菓子、おいしそうだから、今度買おうと思ってたやつだ。
薬入りなのか。それはダメだな。残念だ。
しかし、ダメだと言われると余計に食べたくなるな。くやしい!
この鬱憤は作った奴らに返そう。

まずは売人だな。
売っているんだから接触は簡単だろう。
あとは後を付けて、工場を突き止めればいい。

こういうのは『サテリット』の出番だな。
【偵察】と【追跡】を駆使して、売人を探らせよう。



 筋張っているわけでもなく柔らかく、味だって甘いのは確かであるならおいしいはずだ。そう思って宣伝を流していたトラックを眺めていてた先日のことを思い出しシモーヌは顔をしかめた。
 買わなかったのは良かったが、食べようと思っていたものがダメになったのはなんだか損をした気分になる。しかも食べてはいけないとなると、少しおいしそうと思っていたのが何倍も魅力的に見えてくるのだからたまらない。

 シモーヌは悔しさに拳を握った。こちらの楽しみを台無しにされたのだ、この責任は取ってもらわねば。

「サテリット」

 羽ばたきの音を一つ置いて飛び去る使い魔を見送って、その視界から雑多な街を見下ろすとシモーヌは本当なら購入するために接触するはずだった売人を探す。宣伝トラックを見つければ手がかりがあるだろう。
 なにしろシモーヌは自分の目で宣伝トラックを見ているのだ、あれがどこを走っていたかは大体だが覚えている。探す範囲が絞れているのならば空から探すことはそれほど難しいことではない。

 間もなく見つけたトラックの周りを探してみれば、明らかに売られている菓子をモチーフにしているのだろう服装をした売人が見つかった。
 菓子はそのまま売り物として並べられているわけではないようで、数人が話しかけてしばらくやり取りをした後に派手なビニール袋に入れられたものを受け取って去っていく。

「やっぱり食べれないのは悔しいな……」

 買っているのを見てしまうと余計に食べたくなってしまう。しかしあれは薬入り、一回くらいなら影響はほぼないかもしれないが食べていいものでもない。それに食べ物を台無しにした相手に金を払うのも癪だと売人を眺めながらシモーヌは考える。
 しばらくしてトラックが走り出すとサテリットもそれを追いかけて飛び立った。側面の液晶で流れていた派手な宣伝は映されなくなり、まるで普通のトラックのように走っていく。

 目立たないように帰っていくということはバレたくない場所を目指すのだろう。そう考えたシモーヌの予想通りにトラックは隠れるようにして工場に帰っていった。
 その姿をしっかりと見届けて戻ってくるサテリットを待ちながら、シモーヌは一つ息を吐いてわずかに口角を上げた。

「食べ物の恨みは怖いということを、しっかりと教えてやらなきゃな」

 しっかりと落とし前をつけてやることを決意してシモーヌはニヤリと笑った。味の期待はできないが、噛み付いてやるのは悪くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『リアニメイト社・兵隊向け汎用クローンY』

POW   :    私が、殺られたようだな
自身が戦闘で瀕死になると【爆発四散し、別のクローン体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    これが、私の仕事だ
【軽機関銃や長ドス】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    後は、他の私に任せよう
自分の体を【爆発四散】させる攻撃で、近接範囲内の全員にダメージと【麻痺毒】の状態異常を与える。

イラスト:滄。

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 手に入れた情報から探し出した工場は、地下に隠されるように存在していた。地下通路を通り抜け、人工的な甘い香りが充満する工場内に猟兵たちは足を踏み入れる。
 派手な音楽、死んだような顔で働く人々、色とりどりの照明、武装して徘徊する汎用クローン。まるで風邪の時に見る夢のようなチグハグさが目の前に広がりピンクや水色の証明が猟兵たちを照らし出した。
 
 けたたましいサイレンの音が鳴り響き、テーマパークのような光景には到底似合わない武装した汎用クローンが一斉に猟兵たちに向き直る。どうやら応戦しなければ、この工場を調べることも破壊することも難しいようだ。
 幸いサイレンの音に慄いた作業員たちは我先にと逃げ出している。止まることのない電子音楽とサイレンの音は耳障りかもしれないが、これから響くであろう銃声と比べれば今はまだ嵐の前の静けさのようですらあった。
千賀・月晴
アドリブ・連携◎

よしよし、ひとまず工場には辿り着けたね。
出来れば穏便に済ませたいんだけど……うーん、やっぱり無理だよね。
仕方ない。ここはダイモントライデントで応戦だ。
【指定UC】を発動。使う能力はアスタロトくんの竜毒で行こう。
人々を中毒にしたんだから、そっちが中毒になるのも因果応報だよ。
向こうの攻撃は『気配感知』をして『見切り』、もしくは『武器受け』で対処しよう。



 明らかに臨戦態勢の汎用クローンを目にして月晴は一つため息を吐いた。これはどうやっても穏便に、なんていけそうにない。相手に話を聞く気がなければお話で解決をなんて出来るはずがないのだから。
 穏やかな解決を模索するのも無理だと判断してダイモントライデントを握りしめる。話し合いで解決できないのなら仕方がない、そうした場合に取る手段だって選べる程度には用意してある。

 撃ち込まれたマシンガンの弾をまるで当たらないところが分かっているかのように避けて、一気に距離を詰める。
 実際に月晴にはどこに当たるのかが手に取るように分かっていた、そして相手がどのようにして自分の攻撃から逃れようとするのかも同じように分かっていた。

「ごめんね、当たらないよ」

 急な接近に対応できなかった汎用クローンはとっさにマシンガンでダイモントライデントを受けようとする。しかしトライデントの切っ先はまるでそこになにもないかのように通り抜けた。
 マシンガンどころか腕や服さえも通り抜けたダイモントライデントはしっかりと汎用クローンを切りつけた。

 それだけであれば戦闘に特化された兵士用の汎用クローンであるのならば、戦闘を続行することも不可能ではなかっただろう。それが戦闘継続もできずに崩れ落ちたのは、月晴に力を貸している悪魔アスタロトが持つ竜毒のせいに他ならなかった。
 崩れ落ちる汎用クローンにに目を向けず、月晴は背後から迫る長ドスを透過すること無く受け止める。そのままトライデントの長さを利用して打ち払うと、長ドスで攻撃してきた汎用クローンに槍の切っ先を突きつける。

「人々を中毒にしたんだから、そっちが中毒になるのも因果応報だよ」

 ただ命じられたことをしているクローンに言っても仕方がないかもしれない。それでも人を奴隷のように使って作ったもので人を苦しめることに文句の一つくらい言たってバチは当たらないだろう。
 何体目かわからない汎用クローンが床に倒れるのを見下ろしながら、月晴は派手な照明に照らされたままやっぱり穏便になんて出来なかったなとひっそり苦笑いをした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

田中・香織
今日限りであなたたちの商売も廃業よ。
フルバースト・マキシマムでアームドフォートの大砲を撃ちまくって手数に物を言わせて畳みかけるわ。
砲撃、一斉発射、自動射撃、範囲攻撃も組み合わせてより広範囲に大量の砲弾をばら撒けるようにするわ。
やられて次のクローンが出てくるならクローンが品切れになって出てこなくなるまで撃ちまくれば良いだけだから。
工場で働かされていた人も無事脱出出来たみたいだし、被害を気にすることなく撃ちまくれるから助かったわ。
ついでに敵と一緒に工場の設備にも砲弾を撃ち込んで二度と事業を再開出来ないようにしておくわね。
引き続き、アドリブ、共闘、連携、何でも大歓迎だからどんどん動かしてね。



 汎用クローンの最も優れている部分はなんだろうか、それは製造している会社ごとに変わるかもしれないがその中の一つに確実に入るであろうものに数の暴力がある。
 しかしそれも対峙する相手が彼らの常識の範囲内におさまればこそである。

 相手が数で押してくるのならばそれ以上の数で押し切ればいいだけのこと。香織は迫る汎用クローンを前に唇に笑みを浮かべた。数の暴力ならば、こっちにだっていくらでもやりようはあるのだ、と。
 汎用クローンのはなった軽機関銃の発砲音をかき消すような激しい砲撃音。それらは全て香織の武装が火を吹いた合図に他ならなかった。

 砲撃が命中し致命傷を負った汎用クローンは自ら爆発四散し別のクローンを呼び出す。本来ならば敵対する相手をすり潰すはずのそれすら降り注ぐ銃弾や砲撃の前では自ら爆発四散したのかすらわからないような有様だ。
 もしもここに工場で働かされていた人たちがいたのならば、ここまでの攻撃は出来なかっただろう。そう思えば轟音でほとんど聞こえなくなっているとはいえ耳障りなけたたましいサイレンにすら多少の感謝をしてやりたくなると、香織はピンクの回転灯を横目に見る。

「そろそろ品切れかしら?」

 硝煙で縦ロールをなびかせながら、香織は挑発するように微笑んだ。それを向けられた汎用クローンは爆発四散すること無く、崩れ落ちるように地面へと倒れる。
 次が出てこないことを確認した香織は砲撃を、止めることなく派手な色に塗装された工場内の機械に狙いを定める。事業を再開させないためには、これが一番手っ取り早い。

 当然砲撃など想定されていない機械はクローンよりもよっぽどあっけなく大破し、機械でなく金属の残骸となって工場の中に転がった。
 相変わらず工場内を照らし続ける場違いにカラフルな照明を奇妙な色の残骸が反射する。そこはもう違法な菓子を製造する工場ではなく、色とりどりのガラクタの山でしかなかった。
 
「ちょっとはスッキリしたわね」

 ただでさえ悪趣味なものを作っているというのに、工場ですら悪趣味だったのだからなにもなくなったほうがかえって良いというものだ。
 排出された薬莢を置き去りにして香織は工場の奥に進んでいく。火薬の匂いを感じさせないピンク色の縦ロールが、戦闘による惨状など何もなかったかのようにゆっくりと揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大宝寺・朱毘
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。

アイドルでありロッカー。
ロック(漢気があるとほぼ同義)な様を好み、「ロックだ」と感じれば味方はもちろん敵でも賞賛することがある。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。

使用武器は黒いボディに炎の模様が入ったギター『スコーチャー』
演奏によって音の爆弾や衝撃波を生み出してぶつけるという戦法を好む。
必要なら演奏を続けつつ蹴りなども行う。

冒険では、魔力任せに障害を吹き飛ばすといった行動が得意。ただし地頭が悪いわけでもないので、搦め手が必要ならその都度考える。

台詞例
「いいね、ロックじゃん」
「こっちゃ世界の命運背負ってんだよ!」



 嫌いではないはずの甘い香りも出どころ次第ではひどく煩わしくなるものだと、朱毘は指先でヘッドセットを撫でながら眉をひそめた。作り物みたいな可愛さも拘りさえすればロックに通じる。だがこれには魂を感じられない。つまりは全くロックじゃない。
 うまさで勝負しないで薬物の中毒性で買わせる菓子も、いくらでも代わりがいるクローン兵も自分で勝負してやろうという心がない。大体お菓子なんて普通に作ればちゃんと美味しくなるものを。

「観客に不満はあるが、ここで手を抜くようじゃロックじゃねえな」

 しっかりと張られた弦を弾くとスコーチャーは朱毘に忠実に音を響かせた。それは止まることのない電子音楽と鳴り続けるサイレンすらもかき消して、一気に乱雑に物が散らばった工場を演奏者のためのステージに変えてしまった。
 実際に見た目すらもステージに変わってしまった工場で、朱毘は曲をかき鳴らす。その音が衝撃波となって汎用クローンを攻撃して近づくことさえ困難にさせていた。

 それでもクローンであることを最大限利用して何体もの自分を犠牲にしながら迫る汎用クローンが朱毘に迫る。しかし朱毘はそれに慌てることもなければ演奏を止めることもない。
 むしろより一層激しく煽るように演奏は盛り上がり、その衝撃波は汎用クローンだけでなく工場の機械や照明すらも破壊していく。助けるべき人がいないのならば、遠慮なんてする必要はない。
 
「ステージの上のやつには触っちゃいけないって教わんなかったのかよ!」

 朱毘は演奏をする手を止めずに、思い切り汎用クローンの腹を蹴りつける。演奏による攻撃だけを意識していた汎用クローンは突然の物理攻撃に対応できず、防御態勢を取れないまま背後に蹴り飛ばされた。
 そのまま叩き込まれた衝撃波で戦闘続行が不可能だと察した汎用クローンがダメージを与えるべく爆発試算する。しかしその衝撃は朱毘に届くことはなくスコーチャーからの衝撃波にぶつかって消える。

 ギターの音がやみ、朱毘が熱気を逃がそうと息を吐く。観客としてはなっていなかった汎用クローンたちはすでに残骸になってあたりに転がっていた。

「アンコールはまた今度な」

 ひらりと手を降って、朱毘は振り返らずに瓦礫とクローンの残骸を踏み越えていく。衝撃波の余波で壊れたピンク色のライトが、まるでステージの終わりを表すように点滅して消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シモーヌ・イルネージュ
いよいよ出てきたな。
食べ物の恨みは根深いんだ。
ここのオブリビオンを倒して、工場をぶっ潰してやる!

まずはクローン共の相手だけど、後から後から出てくるな。
面倒だ……

黒槍『新月極光』で戦おう。
相手の攻撃はサイバーアイの動体【視力】を駆使して、【武器受け】していこう。
こちらはUC【氷雪旋風】の絶対冷気で相手の動きや機関銃を止めつつ、槍で【なぎ払い】していこう。



 甘い香りが充満する工場に足を踏み入れると、薄れかけていた食べ物の恨みがまた湧き上がってくるのを感じてシモーヌは顔をしかめる。
 こうなってくると流れている電子音楽もこちらの侵入のせいで鳴り出したサイレンも、色だけは派手に塗られている工場の機械もなにもかもが苛立ちを煽ってくるような気がしてならなかった。

 シモーヌとしては本当ならば今すぐにこの工場にいるオブリビオンに一撃入れてやりたいところだが、どうにもそうは行かないらしい。
 立ちはだかるように並んで臨戦態勢を取るクローンを倒さなければ、食べ物の恨みを晴らすことさえ難しそうだ。くるりと回しながら構えた新月極光の穂先が残光を残して揺らめいた。

「来いよ、当てられるもんならな」

 その挑発を合図にしたかのように軽機関銃が火を吹いた。撃ち出された弾丸を新月極光でそらすように弾きながら近づいたシモーヌは、槍ではなく自分の拳で軽機関銃を殴りつける。
 きしんだ音を立てて動きを止めた軽機関銃だけでなく、それを持っていた汎用クローンの腕も凍りつく。シモーヌは汎用クローンが長ドスに持ち替えるのを待つことなく、凍りついて手に張り付いた軽機関銃ごと思い切り槍で薙ぎ払った。

 倒したと息をつくまもなく次の汎用クローンが長ドスを振りかぶった。シモーヌがそれをサイバーアイでしっかりと視て新月極光で受けると、汎用クローンの近づいた部分が凍りつく。
 それに反応して引こうとする汎用クローンの隙を見逃さず、シモーヌの一撃が脇腹にめり込む。そのまま横薙ぎに吹き飛ばされたクローンは工場機械に突っ込んで動かなくなった。

 何人目かわからない汎用クローンを運搬用のカートに叩き込んでから、シモーヌは周囲を見回した。働かされていた人たちが警報に怯えて逃げた後、クローンを蹴散らしてしまった工場内には動くものは猟兵以外なにもいない。
 それを確認してから、シモーヌはまだ小さく稼働音を鳴らしている工場機械に歩み寄る。そしてそのままそれを踏みつけると、新月極光を構えて楽しそうな笑みを浮かべた。

「オブリビオンを倒す前に、工場の方をぶっ壊せるとはな」

 思い切り槍をつきたてられた工場機械は中で爆発するような音をしばらくさせた後、ただのガラクタになったことを表すようにうんともすんとも言わなくなった。
 それを思い切り蹴り飛ばしてシモーヌは倒すべきオブリビオンを目指すため、少し前まで工場だったガラクタの山を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『終末のシグマ『貪欲な王子さま』』

POW   :    Greed Eyes
【貪欲な獣 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    全部僕のもの
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【対象の身につける美しいもの 】、否定したら【対象の血液】、理解不能なら【対象の五感】を奪う。
WIZ   :    Greed Angels
対象の周りにレベル×1体の【貪欲の天使 】を召喚する。[貪欲の天使 ]は対象の思念に従い忠実に戦うが、一撃で消滅する。

イラスト:つばき

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠都藤・穂です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 工場を通り抜けた先、開けた空間に置かれたデスクの上に腰掛けた翼の生えた少年のような外見のオブリビオンが猟兵を出迎えるように待ち構えていた。
 こここそがこの工場の心臓部、ここにあるものに比べたら工場機械や拐うように連れてきて無理やり働かせていた労働者はいくらでも代わりがあるものでしかない。

 ここにあるもの、それはメガコーポとの繋がりに他ならない。それがあるからこそこの工場は違法な薬物を用いた菓子を作って売ることが出来ているし、劣悪な労働環境で人を酷使することだって出来るのだ。
 そしてそれを守るために配置されたオブリビオンがいる限り、普通の人間ならば情報を持ち帰ることすら難しい。そう、普通の人間であるのなら。

 猟兵は武器を構えオブリビオンと対峙する。工場に漂っていた甘い香りは、もうしてはいなかった。
田中・香織
アームドフォートを砲撃モードに切り替えてアンカーで地面に固定してより正確に狙えるようにしたり、高威力の砲弾を使えるようにして砲撃するわ。
(砲撃体勢の効果で移動力半分、攻撃力5倍)
動かなければ移動力0だから半分になっても変わらないしね。
向こうの超耐久力とこちらの5倍の攻撃力どちらが上回るか勝負よ。
砲撃、一斉発射、自動射撃(姿勢を安定させての正確な砲撃)、鎧無視攻撃(高威力の砲弾)を載せてさらに威力を上乗せするようにするわ。
引き続き、アドリブ、共闘、連携、何でも大歓迎だからどんどん動かしてね。



 オブリビオンが猟兵を迎えた場所は一見すれば普通のオフィスのように見えた。しかしよく見てみれば、そこがオフィスとするには異様に頑丈な作りになっているのが分かるだろう。
 それがなんのためなのか香織はすぐに理解した。無害に見える少年の姿がみるみる内に触れ上がり、四足の獣になってこちらを睨めつける。香織はそれに怯むことなく、むしろ望むところだと言わんばかりに武器を構えた。

「大暴れしたら敵と一緒にぺしゃんこ、なんて洒落にならないものね」

 工場から移動したとしてもここが地下であることは変わらない。脆そうな場所であれば少しだけ立ち回りにも気をつけなければいけないかもしれなかったが、眼の前の獣が暴れても大丈夫な構造ならば生半可なことでは倒壊なんてしないと香織は出し惜しみをしないことを決めた。
 地の底から響くような咆哮を真正面から受け止めて、香織はアンカーを射出する。オフィス風に敷かれたカーペットを突き破り、アンカーがしっかりと床に固定されたのを確認して砲撃の標準を合わせた。

 貪欲な獣が動くのが早かったか、それとも砲撃が着弾するのが早かったか。遅い来る獣を押し返す勢いで放たれる砲撃は、攻撃として通っているかというと難しく見えた。
 防御力が高いのか耐久力が高いのか、それとも即時回復でもしているのか。たとえ正解がどれであっても香織がすることは変わらない。相手がどんな手段を取っているとしても、それを上回り轢き潰すような攻撃を叩き込んでやればいいだけだ。

「そっちが耐えきれるかこっちの攻撃力が上回るか、勝負よ!」

 踏みしめたカーペットは排莢でところどころ焦げ付いて、流れ弾を受けたデスクはすでに原型すらとどめていない。そこまで弾丸や砲撃を叩き込んでも、貪欲な獣は未だ倒れずにそこ立っていた。
 対する香織の攻撃の手も止むことはない。何発めかの高威力の砲弾が横殴りにするように顔面に着弾し、ようやく貪欲な獣はぐらりと体を揺らし音を立ててそこに倒れた。
 
「あたしの勝ちだったみたいね」

 香織はピンク色の縦ロールを払うように顔にかかった髪をよける。その頭に飾られているリボンは、激しい銃撃や砲撃なんてなかったかのように変わらない姿で揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
アンタを倒せば、工場ぶっ壊しの総仕上げというわけだな。
そろそろ工場勤めも飽きてきた頃だろう?
ここで倒されて、解放されなよ。

黒槍『新月極光』で戦うよ。
天使をたくさん呼んできて、面倒だな。
まずはUC【鮮血旋風】を発動して、周りの天使をふっ飛ばしてしまおう。
道が空いたところで王子に【ダッシュ】。
槍に【電撃】も籠めて【怪力】で王子を打ち払おう。



 工場には不釣り合いなほどの華やかな姿にシモーヌは軽く眉を上げてから、あの工場の派手さを思えばこれくらいのやつが工場の責任者というのもおかしくはないかと考えを改めて納得した。
 しかしあんな悪趣味で派手で食べられないものを作っているような工場に勤めてるなんてオブリビオンであっても楽しいものでもないだろう。倒されるついでに退職出来るのだからいっそのこと感謝でもしてくれないかと新月極光を構えた。

「貪欲の天使をここに!」
「これはまた、わらわらとでてきたな!」

 オブリビオンである王子の周りを飛び回る天使は、それだけなら遊園地にでもいそうな楽しげなものに見える。今のシモーヌにとっては倒すべき相手の間で邪魔をする、飛び回る羽虫とそう変わらなく邪魔な存在であってもだ。
 一匹ずつ打ち払っていてもきりがない。なにせ相手は飛び回っているのだし、こちらの邪魔をするためだけに動き回っているようなものなのだ。シモーヌはすぐに対応を決めた、一匹ずつでないのなら全部まとめて倒すだけだ。

「そっちが天使なら、こっちは精霊だ!風の精霊よ。我が槍に力を授け給え!」

 地下空間にしては高い天井近くを飛び回っていた天使すらも捉えた旋風の斬撃波は、まるで道を開けろとでもいうように全ての貪欲の天使を一網打尽にした。
 そうしてがら空きになった貪欲な王子さまに一気に駆け寄り距離を詰めたシモーヌは、勢いそのままに新月極光を振るう。電撃を帯びた穂先はしっかりと天使を失った王子に届き、そのまま部屋の端に弾き飛ばした。

 打ち払われた貪欲な王子さまは体制を立て直して、再び天使を呼び出そうとする。その反撃はその動きがわかっていたかのように再び距離を詰めたシモーヌに防がれ、再び槍の一撃で再び吹き飛ばされる。
 倒れた貪欲な王子さまの様子を伺いながらシモーヌはいつでも近づける距離で様子をうかがう。もうこちらに天使をけしかけてくる余裕はなさそうだった。
 
「天使なんかより、退職届のほうが必要だったんじゃないか?」

 そんなものでこの工場から出られるかも、メガコーポに与えられた仕事をやめられるかもわからないけれど。
 光も届かない地下の人工照明の下、作られて使われた王子とは対照的に自信に溢れた姿で立つシモーヌは、穂先にオーロラを翻しながら新月極光を払った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

下原・知恵(サポート)
「話は聴かせてもらった。つまり……ここは|戦場《ジャングル》だな!」
◆口調
・一人称は俺、二人称はお前
・ハードボイルド調
◆癖・性質
・公正と平等を重んじ、己を厳しく律する理想主義者
・自分の現況を何かにつけてジャングルとこじつけたがる
◆行動傾向
・己を顧みず同志の安全と任務遂行を優先する(秩序/中立)
・UDC由来の人工心臓が巨大ゴリラの変身能力をもたらす
・ジャングルでの戦闘経験から過酷な環境を耐え抜く屈強な精神力と意表を突くゲリラ戦術を体得している
・とりあえず筋力で解決を試みる。力こそパワー
・手軽に効率よく栄養補給できるバナナは下原の必需品
・生真面目がたたり、意図せずとぼけた言動や態度をとることがある



 コンクリートジャングル、それは人間が作り出す戦場。つまりは四方を人工的な建物で囲まれた弱肉強食の世界ということだ。
 その定義の上で今の状況はどうだろうと知恵は考える。ここは四方を人工的な建築方法で作られた堅牢な壁で囲まれた地下室で、自分は今まさに負けたほうが食われるかのような戦いに挑まんとしているのだ。

「つまりは……ジャングルか」

 己が戦う戦場であるならば間違いはない。笑みを浮かべてこちらを見る貪欲な王子さまは見た目だけなら麗しくはあるが、見た目が美しい捕食者というのもジャングルではそう珍しいものではない。
 簡単な話だ、食うか食われるか。これはもちろん比喩ではあるが、生存に必須であるだけ実際に食らう方がマシかも知れない。おそらく眼前のオブリビオンは、すでに多くの人間を食い物にしてきたのだろう。

「ガキの時間は終わりだぜ」

 群がるように飛んでくる貪欲の天使相を知恵は銃身を握り小銃で思い切り殴りつけた。吹き飛んだものが他を巻き添えにして数匹が消えたものの、依然としてその数は一人で対応するには多くみえる。
 それを見て取った知恵は肩にかけられたコートを目隠しするように貪欲の天使に投げつける。貪欲な王子さまからも一瞬姿が消え、ほんの数瞬だけ敵と知恵が分かたれた。

「群れるからだ」

 コートの影から現れたのは知恵だけではなかった。ピンを抜かれたグレネードがまっすぐに群れをなした貪欲の天使の中にコツリと落ちる。間を置かずにやってきた爆発に、予測していなかったものはまともな対応ができない。
 グレネードの爆発に巻き込まれた貪欲の天使は羽ばたきすら残さずに跡形もなく消滅し、爆風の衝撃を食らった貪欲な王子さまも踏みとどまることが出来ずに吹き飛ばされそのまま壁に激突した。

 飛び回る敵を排除したのを確認して、知恵はゆっくりと煙草を咥えポケットからライターを取り出した。そうして火を付けようとして、ふと何かを思い出したように動きを止める。

「……禁煙かどうかを聞くのを忘れたな」

 ライターの蓋をしめ煙草を元に戻し、爆発により飛び散った破片を踏み越えて知恵は歩き出す。飛び散ったグレネードの破片が踏まれて、小さく硬い音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

千賀・月晴
アドリブ・連携◎

ここが工場の最深部、そして中枢ってことか。
ならさっさと潰しちゃうに限るね。交渉の余地なし!決裂!

まずは護衛みたいになってる天使をなんとかしないとね。
よし、ここは【指定UC】を発動!フルフルくんの雷撃でボスもろともまとめて攻撃だ。
ついでに工場運営に必要な機械類もショートさせておこうか。これでこの工場は少なくともすぐには再起出来ないはず。
あと可能なら『ハッキング』でお菓子に関する情報を手に入れられないかな?
成分を分析出来れば中毒症状も緩和出来るかもしれないしね。



 これが営業で訪れたのならば、なんとか意見をすり合わせて合意に持っていくように言葉を尽くしただろう。しかしことここに至ってはそんなことのためにここに来たわけではない、月晴はもはや片振り構わなくなった貪欲な王子さまをしっかりと見据える。
 呼び出された貪欲の天使の数は多い。その上この戦いももうここが最後、ならばもう出し惜しみをすることはない。月晴はダイモンデバイスを握りしめた。
 
「フルフルくん!全力で痺れさせちゃえ!」

 ここが工場の中核部ならばここにある電子機器を完膚なきまでに破壊してやれば、他の形でさえここを利用することは難しくなる。
 別の場所に作ることは考えられるが、こんな目的で使われる工場が確実に一つ再起不能になるのならば何一つ躊躇する必要など感じられなかった。

 地下の室内を電撃の閃光が染める。辛うじて形を残していたデスクが電撃を受けて消し炭になり床に黒いシミを作る。
 その威力の前ではオブリビオンとてひとたまりもなく、ダイモンデバイスが電池切れを訴える前に取り巻きの天使を失った貪欲な王子さまは黒い煙を出しながら崩れ落ちるように倒れて動かなくなった。

 完全に動かなくなったのを確認してから月晴は肩の力を抜いて息を吐いた。しかしこれで終わりではない。ここでやらなければならないことはまだ残っているのだから。
 破壊の跡が色濃い場所だ、一見すればもう何も残っていないように見える。だがそうではないと月晴は一見すればただの壁のように見える壁面を調べ始めた。

「大体こういうところに隠されたものが……うん、あるよね」

 想像通りに現れた埋込式の金庫はどういうわけか電子ロックが生きていた。隠されていたからかとびきり重要であるために別電源だったのだろうか、理由のほどは分からないが月晴にとって好都合であることに変わりはない。
 手早くハッキングを済ませて解錠させると、月晴は慎重にハンドルに手をかける。ガコンと音を立てて開いたのを確認してから、ゆっくりと重い扉を開いた。

 中にあったのは工場の資料と、金銭の流れが分かる書類が数枚。そして持ち出し厳禁と書かれた工場で制作されているものの秘伝のレシピだった。もちろん菓子だけのものではない、すべてを含めた「効率よく中毒にするための」秘伝である。

「これがどこまで役に立つかはわからないけど……」

 これで大元を潰して全部解決、なんてことにならないというのはよく分かっている。それでも手元にあるものがなにかの手がかりになるかもしれないし、今までの被害者の助けになるかもしれない。
 今の時点ではまだ仮定でしか語れないそれでも月晴が全力を尽くしたのは、そうすることに確かに意味があったからだ。その証拠に、少なくとも怪しげな菓子で中毒になる人間がこれ以上増えないことだけは確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月20日


挿絵イラスト