2
一番星がその背を見ていた

#UDCアース #ノベル #猟兵達の秋祭り2023 #きみのかえりみち

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#ノベル
🔒
#猟兵達の秋祭り2023
#きみのかえりみち


0



麻生・竜星
【君道】

北十字・銀河(f40864)と
呼び方:銀さん
アドリブ歓迎

夕食の買い出しの帰り
いつものお礼だと銀さんが俺達に作ってくれることになった
「料理は得意なんですか?」
結構な量の食材だ……だから気になって聞いてみた
女性が悔しいと思うほどの腕前って……と期待せずにはいられない

銀さんは懐かしそうにその昔話を始めた
話を聞く限りでは、俺の幼馴染と似たような性格の女性だ
でも彼女はその女性と違い、簡単な料理ならなかなか完成度が高い
「店を出せるほど……すごいですね」
きっと練習を重ね、試作を何度も作ったんだろうな。と感心していると、彼からの一言……
「……お、お疲れ様です」
ははっと俺も思わず愛想笑いを
でもきっと、銀さんにとっては大切な思い出の一つなんだろう

「お!いいですね」
銀さんの提案に、にっと俺も微笑む
「えぇ、了解です」
あいつが知ったら絶対拗ねそうだ……
私もそのワイン飲みたかった。と
だがこれは男同士の秘密
今夜は久しぶりに飲み明かそうか……


北十字・銀河
【君道】

麻生・竜星(f07360)と
呼び方:竜
アドリブ歓迎

いつも世話になっている竜とその幼馴染に夕飯をふるまうことにした
そして今はその買い物の帰り道……
「あぁ、元居た世界での相棒の女性が悔しがる程度にはな」
その顔を思い出してしまい、ふっと笑う

彼女は料理が苦手だった
簡単なものでも、どうやったらそうなる?というほどに……
だが結果的には店を出せるほどの腕前に成長した
「アイツは負けず嫌いの頑張り屋だったからな、そこまでできたんだと思う」
でもな?と、俺は少し軽くため息をつく
「そこにたどり着くまでは、こう……表現できないほど彼女の試作を食べたよ」
食べられる物、食べられない物いろいろあったが、けれどまぁ……それなりにいい思い出に、なってる……かな?

「よし、今夜は食事が終わったら二人でとことん話をしようぜ」
たまにはいいだろう、男同士のおしゃべりも……
「ディバイドで買ったお気に入りのワインを開けよう。竜の幼馴染には内緒でな?」

二人で顔を見合わせ、ふっと笑う
今夜が楽しみだ……



 丁度人が多くなってきたタイミングでスーパーを出られたのは、ちょっとした幸運だったのかもしれない。
 二人がスーパーへ到着した時にはまだ橙だった空も、買い物を終える頃には淡い薄紫の衣を纏い始めていた。
「――本当にいいんですか?」
「言っただろ?“いつも世話になってる礼だ”って」
 そんなやり取りも実は二度目の銀河と竜星が並び歩くのは、今夜の夕飯を銀河が竜星にご馳走するから。
 夕飯の食材二人分は銀河の両腕で揺れる白いビニール袋にたっぷりと詰まっていた。
「まさか肉のセールがタイミングよく始まるとは思わなかったな。少しいい肉も買えたし、シンプルに焼くだけでソースを色々作っても楽しめそうだ」
「素敵ですね。先程銀さんが選んでいた塩って、お肉に合うものなんですか?」
「あぁ。良い塩っていうのは案外美味しいものだし、野菜もただ肉と並べてグリルし塩でも美味しいし、塩以外に今日はグリーンペッパーの塩漬けも買えたから一緒に食べても旨いだろう」
 買い物直前、銀河が“女性が悔しいと思うほど”と自負した料理の腕前に偽りはないのだと竜星は直感した。
 塩も胡椒も日常使いが当たり前の調味料。つい拘りを持たずテーブルに置ける小瓶を使いがちなのだが、塩も胡椒もミル挽きの方が香りが良いと笑う銀河の姿に、竜星はひそかに今夜の晩餐が楽しみになりそわそわしかけていた。

 ――二人が何故帰路を共にし、更に食事もともにすることになったのか……それは何気ない偶然に過ぎなかった。
 竜星が幼馴染であり猟兵として同胞の女性と仕事を終えたのが、つい2時間ほど前のこと。
 疲れた体を解した竜星が帰路につこうとした時、偶然にも同じ猟兵として別件の仕事帰りだった先輩 銀河と出会い、当たり障りのないやり取りから今日自身の反省点やオブリビオンやのデウスエクスの特性と違いの話へと繋がり、気づけば1時間も経っていた。
 まだ話足りない気のした銀河が、せっかくだから夕飯でもと竜星を誘ったのだ。
 理由は常套句のような“日頃お世話になっているから”であり、本当に同胞や先輩後輩としての優しい気持ちと慰労を込めて。

 ガサガサ揺れるビニール袋は|大き目の物二つ分《男性二人分の食材と調味料》。軽々持ち上げる銀河は、人通りの多い道を慣れた様子で歩いてゆく。
 料理は得意だと笑った銀河の言葉に密やかな期待をしている竜星は、その何気ない言葉から繋がる銀河の思い出話―銀河の元相棒の料理下手であり現料理人の女性との話―になっていた。
「――で、昔はそんな感じだったんだ。今はそんなの分かんないくらい、しっかり店をしているんだけどな」
「店を出せるほど……それはすごいですね」
 料理と一口に言っても難易度は様々。
 間に既製品を挟み作るものもあれば、全て手ずから作る拘りレシピまで多岐に渡る。
 件の女性は銀河の元ケルベロスとして銀河と共に世界を駆けるも、今は料理人となった負けず嫌いの頑張り屋。“アイツ”と言いながらもひどく懐かしそうに語る銀河の“アイツ”という三文字に籠る優しさや温かな記憶を感じながら、竜星はどこか既視感を覚えていた。
「(その人はどこか|幼馴染《昴》を似てるな)」
 上手くいかない料理を幾度も練習したのだろうと想像しながら、過るのは簡単な料理なら卒なくこなす幼馴染の姿。
 少し工程や調味料が増えるだけで迷ってしまう可愛らしい人。
「練習すれば――……って、思うだろ? でもな、そこにたどり着くまでは、こう……表現できないほどの物があってだな……」
「……お、お疲れ様です」
 銀河が分かりやすく苦悶の表情を浮かべれば、どうやら現実は可愛らしい思い出ばかりではないのか……と竜星の頬が引き攣ってしまう。
 銀河曰く、食べられるものならばまたマシ。時折できる食べられない摩訶不思議なものから焦げを極めたようなもの、調味料を根本的に間違えた度合いでも食べられるもの無理なものなど種類があり過ぎるとい言葉に滲む苦笑いは、やっぱり“|思い出《楽しい記憶》”。
「そうだ、せっかくなら|あっち《ケルベロスディバイド》で買ったワイン開けよう、俺のオススメなんだ」
「お、いいですね。あっ、でも――」
 二人の脳裏を過るのは居ない日に開けたと知れば頬膨らませずるい!と拗ねる幼馴染の姿。
 パッと目を合わせ、悪戯に笑った銀河が竜星へ向かって人差し指を唇の前へ。
「“竜の幼馴染”には秘密な?」
「えぇ、了解です」
 あえて名前を呼ばないのは“秘密”ゆえ。
 男の秘密は二人だけが知っていればいい。

 笑いあう二人の影伸ばす夕日が鮮やかな朱金の輝きを溢し水平へと沈む頃、菫色へと染まる空が徐々に深みを増してゆく。

 さぁ、帰ろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年10月07日


挿絵イラスト