強く華麗に美しく!
●美への旅立ち
人里離れた、エンパイアのとある渓谷。
『真の強さとは美しいもの――この私の美に、付いて来い!』
川の中に、緑色の肌を持つ河童が激しく動いていた。
その河童の前には複数の人影が川に入って、やはり何やら動いている。
『ここで蹴る!』
ぱしゃんっ。
河童が足が水音を立てると、少し遅れて同じ水音が立て続けに響く。
『そして回る!』
河童が回ると、その前に整列している者達も揃ってくるっと回る。
ぱしゃんっ、ぱしゃんっ。
水音を響かせ、彼らは一糸乱れず動き続ける。
それはまるで『舞い』だった。
『ここで跳んで――着地したら、こう!』
くるんとバク宙からの片足着地ポーズをピシッと優雅に決めた河童の前で、人影達も同じくバク宙からの片足着地を、ややたどたどしくも何とか決める。
『いい! 中々いいぞ、落武者の皆!』
舞ってたの落武者だったー!
『美の道は険しいもの。ただ外見だけ着飾っても無意味! だが河童の舞いで、身体の内なる美を磨いたキミ達なら、美の第二段階へ進んでも良い頃だろう!』
うぉぉぉぉぉー!
河童の言葉の意味することを理解し、落武者達が歓声を上げる。
『さあ、ついに着飾る時だ! 強く華麗に美しく! いざ行かん、ばぁげんへ!』
「美しさってなんだろうね?」
グリモアベースに集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)はなんとも言えない顔で話を切り出した。
「さて、エンパイアで地方の大きな街が、オブリビオンに狙われる事が判った」
奴らの狙いは、その街で開かれる、ばぁげん、だ。
「季節の商品を中心とした売り尽くしの大市さ。反物や帯、かんざしに帯締と言った身につけるものが多いらしい――オブリビオンの狙いも、それなんだよ」
街や市を潰そうと言うのではない?
狙いは、そこで売られる商品そのもの?
「首魁は『河童の怪』。この世で最も美しいと自称する、妖怪の類だ。で、率いているのが落武者。つまりだね。河童は、落武者どもを着飾らせるつもりなんだよ!」
――はい?
「いやうん、そうなるよね。わかる。でも聞いて。
さっきも言った通り、この河童さ。自分が最も美しいと思ってるんだけど、自信があるのは美しいだけじゃなく戦いの強さもだったりするんだ」
己の美と武を追究し続ける、妙な求道者気質。
「今回は、その気質が配下になった落武者にも向けられちゃってるんだ」
落武者達の内面の美が一定の水準に達したと判断した河童は、落武者たちを(ついでに自分自身も)着飾るために、ばぁげんを襲撃し、衣類を奪う気なのだ。
「今から行けば街に着く前、平地で迎撃出来るからさ。倒してきてほしい。……多分、妙なやりにくさのある連中だと思うけど。特に落武者」
その言葉に、猟兵達が首を傾げる。
落武者、そんなに強い敵じゃなかったような?
「河童に鍛えられて、ただの落武者じゃなくなってるから」
具体的に言うと?
「恥ずかしさ耐性、存在感、礼儀作法、ジャンプ、パフォーマンス――辺りの技能をそこそこのレベルで修得している」
ちょっと待て?
「ああ、そうそう。終わったら、ばぁげん寄って来ていいから。よろしく頼むよ」
何か言いたげな猟兵達から視線を逸らし、ルシルは転移の準備を始めた。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
今回も、サムライエンパイアのシナリオをお届けします。
1章は、落武者との集団戦。
ただの落武者じゃありません。
OPに記載した通り、河童のお陰で複数の技能を得ております。
え、戦闘に関係ないのばかりじゃないか? ハハハッ。
2章は河童とのボス戦です。
大体OP前半の通りの奴です。美の求道者。
1,2章の戦場は、特別なものは無いにもない平地になります。
3章はバーゲンです。
お買い物パートになります。こちらの詳細は、章開始時にて。
特に隠し要素なんぞありません。
多分、カオス系戦闘シナリオになるんじゃないかと思います。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 集団戦
『落武者』
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POW : 無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
イラスト:麻風
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●落武者、舞う
『やれやれ――邪魔が入ったか。無粋な。一体どこから嗅ぎ付けたのやら』
待ち受ける猟兵達に気づいた河童の怪が、眉間に手を当て、仰々しく頭を振る。
『しかし、案ずる事はないぞ、落武者達よ』
河童はどこからとも無く薔薇を取り出すtp、それを指揮棒の様に振るう。
『美の道は険しいもの。障害を乗り越えて、美は磨かれていく――。
この試練を乗り越えた時、キミ達の美は更なる高みに達しているだろう!
さあ、存分に戦い、咲き誇るがいい!』
――うおぉぉぉぉぉー!
河童の号令に応えて、落武者達が妙にリズミカルに向かってきた。
來米良亭・ぱん太
「お可哀想に、その姿……」と、落ち武者にさも同情してるかのように。
「戦で命を落とし、名誉の眠りについてるはずの皆さんが、こんなお姿で現世を彷徨ってらっしゃるとは……よし、ここはあっしがひとつ、ご供養に一席」
「え、それどころじゃないだろうって? そうおっしゃらずに。オシャレ落ち武者を目指すなら、落語くらい嗜んでおかないと」
リンゴ箱と座布団を取り出して強引に即席高座設置。
噺は『死神』クライマックスの蝋燭シーンで、
「蝋燭を……割ろう、即!」ダジャレUC発動。
ブリザードでもなんでも吹かせて下さい。
相変わらず決め手はないので、誰かが攻撃に出てくれるといいな。
※アドリブ連携ネタ大歓迎。
御堂・茜
クッッ…!(号泣
御堂、女子力が高い設定にもかかわらず
技能取得がまだ追いついておらぬのですッ!!
(【怪力】で刀をバァン)(【気合い】で生じる【衝撃波】により砕けるそのへんの岩)
ですがそんな時のこの技!
UC【風林火山】!
出陣です、御堂の美しき家臣達よ!
(かわいい衣装を着せられゲンナリしているおじさん達が出てくる)
なんですその顔は!
美しくないですよ!!
家臣達を華麗に【鼓舞】し河童様に対抗いたします
家臣の皆様、お行儀よく整列なさい!
槍をかまえて突撃です!
命中率重視で一糸乱れぬ一斉攻撃を放ち
敵兵のシンクロ率に対抗いたします
最終的には…
やはり【気合い】ですねッ!!
ばぁげんは女子の戦
征するのは御堂ですッッ!
ソフィア・リューカン
……一体どういうことなの!?と困惑しつつも戦闘できるようにするわ。
敵の【先制攻撃】に備えるため、【サイキックブラスト】によって起きる電撃の【マヒ攻撃】によって隙を作っていくわ。それでも数が数だと思うから、人形たちの持っている【星縫い】を敵に【投擲】して【目潰し】による妨害も行っていって、味方の人たちが攻撃しやすいようにしておくわね。
もし接近されてくるのなら、素早い動きで【フェイント】を交えつつ【逃げ足】に徹するわ!
……もしかしたらあの人たちは何か礼儀正しいこともしてくるかもしれないから、その時は【コミュ力】で【優しく】対応していくわね。ないとは思うけど、一応ね!
※アドリブ・他者との協力歓迎
テラ・ウィンディア
ああ、お前達の言っている事は何一つ間違ってはいないぞ
この世界の武術は美しい
そしておれは知っている
この舞台で美しく舞う儀式とは何か
そう
殺陣だ!
属性攻撃
炎剣槍付与
戦闘知識にて敵の陣形を見据え分析
空中戦を利用して飛びながらその中央へと飛び込んで
可能ならそのまま一体を踏み付けっ
周囲に対して早業で槍と剣での斬撃と串刺しによる猛攻
そして踏み付けたのに槍を突き立て…密集した敵軍に掌を向けてグラビティブラスト
そして槍を引き抜いて再び飛び上がり…残りの敵に襲い掛かる
焼き
切り
突き刺す
それらは早業と見切りと第六感を駆使して襲ってくる敵に対しての猛攻として
一種の舞であり殺陣となりえるように
武と美はかけ離れた物ではない
仁科・小夜
とりあえず若輩者の身ですので、支援に徹します。
死霊蛇竜を呼んで、落武者さんたちの足元をのたうち回ってもらって、リズムを邪魔しましょう。
私は戦えませんね。
仕方ないから、河童さんの指揮に合わせて笛でも吹いてみます。
リズムは早いですね…、笛のメロディは間延びしたもの、ダンス系のテンポはキレキレなもの。
これは、こちらでもセッションバトルといっても過言ではないのかもしれません。
私の指と肺活量、持ってください…。
あ、蛇竜さんも頑張ってー。
アメリア・イアハッター
へぇ、なるほど
つまり、ダンスバトルってわけね!
ふふ、望むところよ!
互いの美しさをより高みに持っていくために、いざ勝負!
・方針
こちらは音楽に乗ってスムーズに、そして芸術点高めな感じで勝負だ!
・行動
自身にUC【氷上妖精】使用
帽子についた音楽再生機から音楽を流しながら地上を滑走
敵の攻撃を滑りながら避け、時に体をぐっと曲げて避けながら敵陣を滑り回る
敵の横を通る時にすかさず回転!
足を上げて回し蹴りを叩き込もう!
この氷上での踊りをやってみたいっていう敵がいたら、その敵にもUCをかけてあげましょう
一緒に踊ってみる?
締めは氷からジャンプして、ジャンプ回転蹴りだ!
集団だからこそできるその美しさ……素敵だったよ!
ロダ・アイアゲート
美を追求する河童と落武者ですか…何とも言えない組み合わせですね
着飾るのであればそれ相応に身嗜みは整えておかなければいけませんよ
そのままの状態で良い服を着たとしても、それは『着ている』というより『着せられている』と言った方が合っているのではないでしょうか
ガジェットショータイムでバリカン型のガジェットを召喚して頭部を狙います
あの頭、禿げ散らかしているのはいただけませんからね
(誰です、私の頭を見たのは。撃ちますよ)
恥ずかしさ耐性があるのなら、耐えられるでしょう?
武器を使ってくるのならガトリングガン、肉弾戦ならこちらもそれで応じましょう
私のボディは硬いですから、覚悟してくださいね
アドリブ歓迎
●猟兵VS落武者
『うおぉぉぉぉぉー!』
エンパイアの空に響く、落武者達の野太い声。
リズミカルにスキップしてるけど。
「……一体どういうことなの!?」
その光景に、ソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)が思わず困惑の声を上げていた。
さもあらん。
「美を追求する河童と落武者ですか……何とも言えない組み合わせですね」
ロダ・アイアゲート(天眼石・f00643)の顔こそ表情の変化はなかったが、声色には呆れのような色が滲んでいる。
『ふっ……見ろ! 奴らの顔を! 驚いている顔を! キミ達の美で、もっと奴らを驚かせてやるのだ! それ!』
河童がパチンッと指を鳴らすと、落武者達は一糸乱れぬくるっとその場でターンしてポーズを決める。
「お可哀想に、その姿……」
その様子に來米良亭・ぱん太(魔術落語家・f07970)は、同情しているようだった。
「戦で命を落とし、名誉の眠りについてるはずの皆さんが、そんなお姿で現世を彷徨ってらっしゃるとは……」
さも涙を拭うように、袖を目元やったのは芝居だろうか。それとも。
「クッッ……!」
一方、その隣に立つ御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は、人目も憚らずに号泣していた。
マイナーと言えど、武家の姫。
落武者は死した雑兵とは言え、武人は武人。その死を悼む心は――。
「御堂、女子力が高いにも関わらず、技能が彼らに追いついておらぬのですッ!!」
「そっちですかい!?」
ぱん太の口から、思わず上がるツッコみの声。噺家の性。
「わたくしだって、姫です。女子力は高い筈ですわ!」
ぶんっ、と茜が力と気合を込めて刀を振るうと、放たれた衝撃波で偶々そこにあった岩が砕け散った。
『す、すげえっ』
『何と見事な太刀筋!』
ざわつく落武者達。腐っても武者だね。
「女子力って、ああ言う力も必要なの……?」
その様子に、赤い瞳を丸くしたソフィアがぽつりと呟いていた。
そしてもう1人。
(「皆さん、凄いですね……」)
仁科・小夜(人間の戦巫女・f04343)は無言で驚いていた。元々が人見知りな事もあって、色々驚きの連続で声が出てないだけだ。
『はい、怯まない怯まない。怯んでは美が翳るぞ。美が翳れば、武も翳る。美も武も美しい! ハイ復唱』
『『美も武も美しい!』』
河童の指示で、何故か前転ローリングしてから再び猟兵達に向かう落武者達。
「ああ、お前達の言っている事は何一つ間違ってはいないぞ」
その動きの是非は気にせずに、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が剣と槍を手に進み出る。
「この世界の武術は美しい」
『ほう……』
河童が興味深そうに、テラに言葉の先を促す。
「おれは知っている。この舞台で美しく舞う儀式とは何か――それは、殺陣だ!」
『た……て……?』
その言葉は知らなかったようで、河童が首を傾げる。
「知らないなら、見て覚えろ! おれの魅せる殺陣を!」
『百聞は一見に如かず、か。良いだろう。どれほど美しく舞えるか、見せて貰おうか! 行け、落武者達!』
テラの啖呵に、河童も啖呵を返す。
「へぇ、なるほど。つまり、ダンスバトルってわけね!」
そのやり取りを見て、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)の瞳はどこか楽しそうに輝いていた。
「望むところよ! 互いの美しさをより高みに持っていくために、いざ勝負!」
くいっと帽子のつばを上げて、落武者の向こうの河童にアメリアが言い放つ。
一瞬の後、アメリアの前に広がる地面が滑らかな氷に覆われた。
氷上妖精――フィギュアスケート。
地形を氷の床に変えて摩擦を極限まで減らす、滑走特化の氷の魔法。
「氷上ダンス、試してみる?」
慣れた様子でシャーッと氷の上を滑るアメリアは、滑らないように槍を氷に突き立てるのに手一杯で動けない落武者に、容赦なく回し蹴りを叩き込んだ。
靴底に着いた氷の欠片が、蹴りの勢いで舞い上がる。
それが、一瞬で溶けた。
轟と猛る2つの炎によって。
「もたもたしてると、踏んじまうぞ!」
大きく跳んで氷の床を飛び越えてきたテラの構える槍と剣には、炎があった。
敵陣に飛び込んだテラは、そのまま落武者の頭を踏みつけ、さらに敵陣の奥へと飛びながら炎を纏わせた紅龍槍『廣利王』を大きくなぎ払う。
『成程。たて、とやらはつまり演舞か。そこに氷と炎が合わさり……う、美しい』
この場に氷と炎の業を振るう猟兵が揃ったのは、ほんの偶然。
その偶然の産物に、河童はしばし目を奪われていた。
●主従の形
2人が切り込んだものの、それであっさり蹴散らせるほど落武者は少なくない。
氷の床を逃れた落武者達は、その辺りを避けて部隊を3つに分けていた。
その1つが向かったのは――茜だ。
『あの豪の剣、さぞや名のある大名家に連なる御武家様とお見受けする!』
『その首、貰い受ける!』
落武者達の言葉はいかにも戦場然としており勇ましいのだが、くるくる回りながらなのが色々と台無しである。
「御堂の首を狙いますか。その意気や良し。ですがこの首、安くはありませぬ!」
落武者達の視線に怯むことなく、茜は鞘に入れたままの大太刀を掲げる。
「人は城、人は石垣、人は堀! 正義の戦をお見せいたしましょう!! 出陣です、御堂の美しき家臣達よ!」
風林火山。
茜の号令と言う名の召喚に応えて、御堂家の家臣団の皆さんが現れる。
茜とお揃いの異世界のカワイイを取り入れた春カラーの衣装を着せられて、ゲンナリしているおじさん達が。
『ふっ……数と美しさで対抗する気か。確かに衣装は美しい。だが、そんなゲンナリした顔で、私が鍛えた落武者達に果たして勝てるかな?』
家臣団の顔色を見た河童が、笑みを浮かべて薔薇を掲げる。
『指摘しよう! キミの手勢には、恥ずかしさ耐性が足りない! 恥など捨てた落武者達に勝てるものか!』
河童は、ぴっと薔薇を掲げて振り下ろすと落武者達が華麗に回転ジャンプ。
槍と槍がぶつかり、家臣団が押される。
確かに、恥ずかしさ耐性は落武者達が上だろう。
だが――。
「なんですその顔は! 美しくないですよ皆様!! お行儀よく整列なさい!」
茜の飛ばした檄の気合いに、家臣団がさっと布陣を整える。
「ばぁげんは女子の戦! 征するのは御堂ですッッ!」
意訳すると『わたくしをばぁげんに連れてって』になりそうなのだけど、そんな姫の我侭で力が入るのが真の家臣である。多分。
「いざ、槍を構えて突撃です!」
『『応!!!』』
家臣団と落武者達。槍と槍が再びぶつかり、火花を散らす。
茜は家臣を信じていた。
家臣団もまた、主の信に応えようと一致団結していた。
『何と言う忠誠……落武者達に怨念をまとう暇を与えないとは。美しい』
落武者を蹴散らした家臣団に、河童は賛辞を惜しまなかった。
●絡み合う、華麗さと礼儀と音と氷と炎
『だが、落武者達はまだまだいるぞ!』
「そうそう、先手を取れると思わないことね」
第三の落武者部隊の方を河童が見たとき、丁度ソフィアの両掌から眩い輝きが膨れ上がり、爆ぜたところだった。
放たれた高圧の電流が、雷条となって落武者の群れの中を駆け巡る。
『あばばばばばっ!?』
直撃した落武者は黒焦げになって倒れ伏す。
多くの落武者は感電で済んだものの――スキップ中だった。
んな事してた所に感電して動きを封じられたもんだから、つんのめった落武者達が転んで後続が蹴躓いて、落武者の隊列が乱れる。
とは言え、倒れた落武者の向こうに、落武者はまだまだいた。
「やっぱり、数が数ね……!」
それを見たソフィアが身構えるが――。
『お、おい。お前行けよ』
『え、やだよ。子供に刃を向けるなんて』
礼儀作法を高めたからか。やっぱり腐っても武者なのか。
何れにせよ、落武者達には、ソフィアは実年齢よりも幼く見えているようだった。
「ありがとう。でもね――私はこれでも17歳です!」
再びソフィアの両掌から放たれた高圧の電流が荒れ狂い、落武者達が倒れ伏す。
『跳び越えよ! 同士の屍を超えてゆけ!』
「蛇竜さんお願い」
薔薇を振るいながら河童が出した指示に落武者が動くより早く、小夜が一言告げた。
リザレクト・オブリビオンで召喚した死霊蛇竜。それを小夜は、転んだ落武者達の向こうにまだいる落武者達の足元に向かわせて、のた打ち回らせた。
足元を這い回り、のた打ち回る蛇竜を避けようとして、落武者達はその場で忙しく足を動かしてゴム跳び状態に。
「さて。ここから……どうしましょう」
それを眺めながら、小夜は攻めあぐねていた。蛇竜と一緒に喚んだ死霊騎士を向かわせれば攻撃も可能だが、万が一を考えると傍に置いておきたい。
死霊達がいる間、小夜自身は戦えないのだから。
(「このまま支援に徹します?」)
自身の経験、そして他の猟兵達の動きから、それがベストに思える。
『思い出すのだ、河童の舞を!』
見れば、河童が号令を飛ばして薔薇がシュババッと振るっている。
(「笛でも吹いて、妨害してみましょうか」)
そう思ったそこに――音楽が聞こえてきた。かなりアップテンポだ。
「氷に慣れてきたかな? 一緒に踊ってみる?」
音の源は、アメリアだ。
より正確に言うならば、彼女の帽子の音楽再生機。
「ならもっと、テンポ上げるよ!」
踊るアメリアの動きに合わせて、自動的によりテンポの早い音楽が流れ出す。
『くっ! は、早い!』
『構うな、味方ごとやれ!』
「遅い! 遅いよ!」
他の落武者の手足を斬るのも厭わずに落武者達は刃を振るうが、アメリアは音楽に乗って敵の中を滑りながら蹴りを叩き込んでいく。
落武者達も腕を落としたり骨を折ったりして剣速を上げるが、アメリアも柔軟に上体を反らせて、掠める以上に刃を届かせない。
『くっ! 私がリズムで遅れを取るだと――!?』
河童の薔薇の指揮も追いつかない。
「ははっ! たまには音楽に合わせた殺陣ってのも、いいもんだ!」
その速度に、テラはついて行っていた。
跳び降りた落武者の頭上から炎槍を突き刺し、炎がその体に周り切る前に引き抜いて跳び上がり、星の力を宿す宝剣も炎を纏わせて振り回す。
焼き、斬り、突き、跳ぶ。
基本はこの4つ。
あとは落武者の動きを見切り、感覚で跳ね回る。多少の傷は厭わない。
(「間延びした曲で妨害しようと思いましたが……敵もですけど、お2人がそれ以上にキレキレですね」)
2人の動きを見ていた小夜が、笛に唇を当てる。
(「私の指と肺活量、持ってください……あと蛇竜さんも頑張ってー」)
一抹の不安を感じながら、小夜は2人の動きに合わせたテンポで吹き鳴らし始めた笛の音色に合わせて、蛇竜も忙しなくのた打ち回り続けた。
●結びつくは地獄か
「いただけませんね」
速度を増していく戦場。
その様子を見守っていたロダが、僅かに苛立ちを込めた声を上げる。
「その禿げ散らかした頭は」
ロダはずっと見ていた。
転んだ落武者の。蛇竜を避けようと足踏みをする落武者の。氷の上で必死に武器を振るう落武者の。踏まれた落武者の。
頭で振り乱され続けていた、伸び切った頭髪を。
「今のままの状態で良い服を着ても、それは『着せられている』と言った方が合っていることでしょう。『着ている』事にはなりません。だから整えてあげますよ」
そう告げた次の瞬間、『Meteor』に積まれていたガジェットが飛び出してきた。
「バーバリーガジェット――GO」
平たく言うと、散髪道具。
謎の動力を得たバリカン型のガジェットが、ロダの合図で一斉に落武者の群れに向かって飛んで行った。
『ぎゃあぁぁぁ!』
『か、髪があぁぁぁぁ』
落武者達の頭に僅かに残っていた頭髪が、無残に刈られていく。
『やめてくれぇぇぇ!』
『手前だって髪ねえじゃね――』
パァンッ!
「私の頭の事に触れると、撃ちますよ」
言う前にロダがぶっ放したガトリングガンに撃ち抜かれ、落武者が崩れ落ちる。
「着飾るのであれば、それ相応に身嗜みは整えておかなければいけませんよ。恥ずかしさ耐性があるのなら、耐えられるでしょう?」
淡々と言いながら、ロダはバリカンガジェットを放ち続けた。
『生前はまだ十代だったのに……もうだめだぁ……鏡なんか見れねぇ……』
これは恥ずかしさ耐性じゃ、どうにもならないか。
「見たくないなら、見なければいいじゃない。ジェファーソン! レイニー!」
掌から電撃を消したソフィアの両手の指からは、人形の繰り糸が伸びていた。
白髪のヘルモンド嬢。
青髪のヘルモンド卿。
『目が、目がぁぁぁぁ!』
2体の人形達の手から放たれる剣の様に鋭い針――星縫いが、落武者達の瞼を縫いとめるように突き刺さっていく。
「おいたわしや……髪も目も失うとは」
なんだか阿鼻叫喚な落武者達に、ぱん太がさらに同情を深めたように呟く。
「ですが、皆さんには、まだ耳が残っていらっしゃる。ここはあっしがご供養に一席」
よっこいしょと、リンゴ箱を積み上げるぱん太。
『こ、これ以上何をする気だ……』
「いやいや、そう警戒なさるもんじゃありません。オシャレ落ち武者を目指すなら、落語くらい嗜んでおかないと」
刀や槍で折れそうな心と身体を支えて何とか立っている落武者達の警戒に、ぱん太は笑って返して、リンゴ箱の上に載せた座布団の上に正座した。
「あるところに、金の算段もできず借金で首が回らなくなった男がおりまして――」
ぱん太が語り出した噺は『死神』。
死神との数奇な縁で、一度は名医と大成するも、最後には命を落とす男の噺。
それを、一度死んで黄泉返った落武者に向けるとは、なんとも皮肉が効いている。
「死神の蝋燭を手にした男はですねぇ。こう言いました。蝋燭を……割ろう、即!」
――。河童すら黙する静寂。
「今のは、ろうそくと、割ろう、そく、をかけとりましてね?」
まさかのダジャレだが、これもぱん太のユーベルコード。
ダジャレの寒さで地形すらも凍らせる業。だが、今日この時は――辺りの地形はもう既に凍っていたのだ。
氷の床から氷霧が立ち込める。空気中の水分が凍った結晶が陽光を受けて輝く。
ビキビキと硬い音を立てて、滑らかだった氷が分厚くなって隆起していく。
「わわっ!」
ソフィアが慌てて人形を氷の範囲から回収するが、小夜の蛇竜とロダのガジェットは隆起する巻き込まれて凍り付いていく。
「びっくりしたぁ! けど、これは丁度いいよ!」
突然形を変えた氷の傾斜も、アメリアにとっては氷の発射台。
「集団だからこそできるその美しさ……素敵だったよ!」
勢いそのままに傾斜を上がって高々と跳び上がったアメリアは、空中からの回転蹴りで落武者達を氷のど真ん中へと蹴り飛ばした。
『う、動けない――』
「終わりだ」
氷に包まれた落武者達の前に突き立つ、紅龍槍。その上にテラが降り立つ。
「大地の力……
存在の維持を司る力……
星の力……
我が手に集いて我が敵を滅せよ……
グラビティ・ブラスト――往けぇ!!」
落武者の群れに向けたテラの掌から放たれた重力波の砲撃が、氷を砕いて中の落武者達を吹き飛ばす。
崩壊した氷が消えたあとには、動く落武者はもう残っていなかった。
成功
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第2章 ボス戦
『サムライエンパイア絵巻『河童の怪』』
|
POW : 『私の華麗なる一撃を受けよ!』
【 スタイリッシュな蹴り】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 『水も地も、空さえも克服した私に不可能は無い!』
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ : 『誰がNo.1か決めようじゃないか!』
【『河童には負けられない』】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【特設ステージ】から、高命中力の【No.1決定戦への招待状】を飛ばす。
イラスト:鳥季
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「雛月・朔」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●この河童の怪は高いところがお好き
落武者との戦いは、猟兵達の勝利に終わった。
だが、まだ河童の怪が残って――あれ? 河童どこ行った?
さっきまで薔薇を振っていた筈だが。
辺りを見回しても、その姿が見当たらな――。
『はーっはっはっはっは!』
そこに上方から笑い声が響いて来た。
はっと顔を上げた猟兵達の視線の先。見上げる一本の樹(あったんだ)の上に、いつの間にか河童が優雅に立っているではないか。
こやつ、さては無駄に連続で跳び上がったな?
『お見事! キミ達の美は、落武者を超えていた! だが!』
とうっと樹から跳ぶ河童。
3回か4回か、無駄に宙返りしてシュタっと飛び降りる。
『私の方が美しく、そして強い! キミ達と戦いそれを証明した暁には、ばぁげんで勝利の美酒に酔い、喜び舞うとしよう!』
河童が何を言っているのか判らない?
戦いは避けられない。それだけわかれば十分だ。
ソフィア・リューカン
「……美しいのは分かるかもだけど、強いかどうかは比べないと分からないわよ!」
スタイリッシュにしたいのに、動けないなんてダサい真似は嫌なはずっていう【学習力】を生かした作戦を立てて行動するわ。そのために、敵の行動を封じるため、【ダッシュ】で近づいて【先制攻撃】を仕掛けるわ!
人形たちの武装機構を発動、内部に仕込まれた多数の回転刃で勢いよく攻撃していくわ。もちろん相手も避けようとするのは予測がつくから、近づいて切り刻もうとする【フェイント】を仕掛け、麻痺毒が塗られた回転刃を射出して【マヒ攻撃】をするわ。
それを回避しようとするのなら、サイキック能力の【念動力】で当たるように調整していこうと思うわ!
御堂・茜
先の戦いで【礼儀作法】を習得した御堂の女子力に死角なしッ!
礼に始まり礼に終わるケンドーの作法に倣い
河童様にしかとご挨拶致しますとも
礼ッ!
ですが!
刀を持たぬ者に刃を振るうことは
美しき武士道精神に反します!
あえて刀を投げ捨て
この身ひとつで挑む【覚悟】と【勇気】にてお相手します
刀は家臣が拾って下さる筈!
河童様も近距離の間合いがお得意なご様子
あえて敵の間合いまで踏み込み
【捨て身の一撃】をお見舞いします
ええ、美しき青春の決闘シーンには欠かせぬ
クロスカウンター狙いです!
【怪力】と【気合い】で叩きつけるは
UC【控えよ、姫の御前である】!
河童様とも美しき友情が芽生える事でしょう…
必ず勝ってきます、ばぁげんに!
テラ・ウィンディア
いいだろう
貴様の華麗なる技をおれは超えてやる!
属性攻撃
炎を剣槍脚に付与
戦闘知識を行い河童の動きの癖や逃亡そしと殲滅を行えないように散開陣形を意識
そして襲い掛かる
剣で切り裂き少し離れれば槍で串刺し狙いの中近距離の蹂躙
更に武器の持ち替えは早業を用いまさに神速
その幻惑で翻弄して更に空中戦で空に浮かび上がりその上での文字通り舞うが如き猛攻
その上で冷徹に河童の動きを見据え戦闘知識からもどう動くかを解析した上で見切りにて回避
更に第六感も駆使してイレギュラーに対しても避
その上で制空権を取れば
地面ごと粉砕するべくメテオブラスト!
美しさも力も武というのであれば!
時に豪快にいくのも悪くはあるまい!
砕け散れぇえ!!
アメリア・イアハッター
あっ、高い所からの登場なんてずるい!
私もやりたかった!
しかし貴方はまさに陸へ上がった河童
私が空での美しさで負ける筈が無いのよね!
・行動
まずは宇宙バイクに乗り敵の攻撃を速度とハンドル捌きで避けつつ攻撃
敵の翻弄を最優先として攻撃は隙があったら行う程度
味方が攻撃しやすいように立ち回る
貴方は所詮一人
私とエアハート、2人で作るこの一体となった時の美しさは決して出すことはできないでしょう!
更に今は、仲間達もいるしね!
これぞ連携美!
隙が見えた、もしくは敵が空中へ飛び上がったらUC発動
竜巻で敵を空中で拘束、そして敵より高く飛び上がり踵落としを頭の皿に叩き込む
河の中だったら、も少し美しかったのかもしれないのにね
來米良亭・ぱん太
例によって、
「お願いしますよ、一席聴いてやってくださいよ、旦那ほどのラグジュアリー河童でしたら、落語にもさぞかし造詣が深いんでござんしょう?」
煽てたりすかしたりして強引に聴かせる。観客席に立派な座布団用意したり。
今回の演目は『ろくろ首』お化けつながりってことで。
落語している間に、段々と真の姿になりパワーアップ。
盛り上がってきたところで扇子を突きつけUC発動、ダジャレは「ろくろッ首がろくろを回す!」(……変えてくれて構いません。むしろ変えて)敵のUCを封じて、仲間の攻撃チャンスを作る。
※真の姿:凶暴そうなリアルパンダ
※アドリブ連携ネタ大歓迎
ロダ・アイアゲート
何と言いますか…元気があるのは良い事だと思います、はい
(登場シーンに呆れている)
美しさと強さの勝負ですか…
美しいかどうかは分かりませんが、強さなら負けるつもりはありません
UC【ゴッドスピードライド】
ジャンプ出来たとしても、攻撃が躱せなければ意味はないと思いますよ
水も地も、空も克服できたのは凄いと思いますが
速さは身についたのでしょうか?
【騎乗】【操縦】でバイクを巧みに操り、【援護射撃】【早業】で実弾をお見舞いしましょう
自慢のステップで躱せますか?
ジャンプはいつか地に降りるもの
そこにそのまま突進をかましても良いかもしれませんね【2回攻撃】
アドリブ・共闘歓迎
●この河童、おだてなくても空を飛ぶ
――喜び舞うとしよう!
そう言い放った微妙に斜めなポーズのまま、河童は猟兵達の前に立っていた。
「何と言いますか……元気があるのは良い事だと思います、はい」
ロダ・アイアゲートから出た声は、はっきり言って呆れていた。
『どうした? かかって来ないのか?』
それをどう解釈したのか、河童が猟兵達に向けて手招きをする。
「礼ッ!」
それに対し、御堂・茜が気合いの入った礼で頭を下げた。
ケンドーの作法である。
『おっと……これは失礼した。今のは、ぶしつけだったね』
それを見た河童も、両手を合わせて一礼を返す。
「その前もよ! 高い所からの登場なんてずるい!」
『ふっ……それはずるなどではない。アレこそ、私の実力の一端であり――』
アメリア・イアハッターの上げた声に、河童は優雅なポーズを決めながら返す。
「私もやりたかった!」
「そっちですかい!?」
『そっちか!』
それを遮ってアメリアが口にした本音に、來米良亭・ぱん太の入れたツッコミと、河童が思わず入れたツッコミが重なった。
『だが、アレは譲れないよ。高所は美しい強者の特権だからね?』
要するに、この河童は確信しているのだ。
自分は、猟兵達より強いと。そして美しいと。
「美しさと強さの勝負ですか……美しいかどうかは分かりませんが、強さなら負けるつもりはありません」
淡々と告げるロダの声に、ほう?と河童が眉を上げる。
「……百歩譲って、美しいのはわかるかもね。だけど、強いかどうかは比べないとわからないわよ!」
そんな河童に、ソフィア・リューカンが言い放った。
『そうだね。強さは比べないと判らない。その通りだろう』
ソフィアの言葉を、河童は案外あっさりと認めた。
『だが――私は私の美しさと強さを信じている。確信している。勝つと!』
自惚れ。ナルシズム。
河童をそう評するのは、簡単だ。
だが、自惚れる程度の力があるのも、猟兵達は感じていた。言動はアレだが、紛れもなく強者であると。
――だから、どうした。
「先の戦いで礼儀作法を確りと身に付けました。今や、御堂の女子力に死角なしっ! 負ける気はこれっぽっちも致しませぬ!」
茜の切った啖呵に、河童は余裕の笑みを浮かべて返した。
「いいだろう。貴様の華麗なる技を、おれは超えてやる!」
河童を見据えて、テラ・ウィンディアが炎を槍と剣に纏わせる。
「行くぞ!」
炎を両手の先に翻し、テラが地を蹴って飛び出した。
「ジェファーソン! レイニー! お願い!」
別の方向からは、ソフィアは両手の糸の先にある人形を前に出しながらダッシュで河童に向かっている。
『私を超える、か――ならば、私の高さに着いてこい!』
2人を見やりながら、河童がトンッと軽く跳んだ。
「中々速いジャンプですね。ですが、その程度の高さで安全だとでも?」
騎乗しながらの射撃をし易いように変形させた『Meteor』の上から、ロダが蒸気銃『Aiming at a shot』の銃口を向ける。
トトトトトトンッ!
ドパパパパパッ!
立て続けに響いた銃声よりも一瞬早く、河童の足がまるで空中に見えない足場があるかのように空を蹴って、駆け上がるように跳び上がって行く。
「そのくらいなら――ジェファーソン! レイニー! 武装機構、発動!」
ソフィアの両手の糸の先。
白髪のヘルモンド嬢。
青髪のヘルモンド卿。
2体の人形に内蔵された武装機構――多数の回転刃が飛び出す。
『その人形の糸――どこまで伸びるかな? 私はまだまだ跳べるぞっ!』
勢い良く回転する刃を生やした人形達が向かってくるのを見下ろし、河童の足が更に空中を蹴って跳び上がった。
「……あ、そっちに行っちゃだめ―!!」
ソフィアがわざと慌てたような声を上げながら、人形から回転刃を射出する。
『ふっ! 甘い甘い!』
河童は更に空を蹴って、ヒラリ。
「自慢のステップで、どこまで躱せますか?」
加速したロダが、落武者戦の前に切り崩された岩を足場を使ったジャンプで高さを稼いで蒸気銃の銃口を向ける。
『なんの!』
空中からの弾丸すらも、河童は更に跳躍して避けてみせる。
だが、河童は気づいていなかった。今のロダの射撃は、避けさせる事を狙った援護射撃だった事に。
●河童の空流れ
『はーっはっはっ! 水も地も、空さえも克服した私に不可能は無い! ここまでは来れなかろう! 翼のない身を恨むがいい!』
いい気になって、高笑いを上げる河童。
「翼はなくても、空は飛べるのよ!」
声は、河童の真横から聞こえた。
『な、なにっ!? この高さで着いて来てるだと?』
赤茶の髪が風に翻し、そこにいたアメリアに驚き、河童の目が見開かれる。
「驚く事じゃないわよ」
風の魔力を纏ったアメリアが、ツバメを思わせる『エアハート』の黒い流線型のボディを軽く撫でる様に触れて、河童に告げた。
「だって、貴方は所詮一人。私とエアハート、2人で作るこの一体となった時の美しさは決して出すことはできないでしょう!」
『くっ……だが、これが私の限界だと思うな!』
アメリアの言葉に、河童の顔から余裕がはじめて消える。
だが、河童はまだ、空を蹴る足を残していた。
タタンッと空を跳び上がり――。
「初戦、陸へ上がった河童。私が空での美しさで負ける筈が無いのよね!」
それを、アメリアが追い越した。
「そっこーでケリをつける!」
『うぉっ!?』
追い抜き様に、渦巻く風を河童に纏わりつかせると、アメリアは『エアハート』から飛び出した。
アメリアの狙いは、河童の頭上で輝く黄金の皿。
『しまった! さ、皿は守らねば』
風で姿勢制御を失いながら、それを悟った河童は両手を頭上で交差する。そこに、黒を基調にしたKick Starterの踵が叩き込まれた。
「落ちなさい!」
『うぉぉぉっっ!?』
流石に空を蹴る足もなくなった河童が、アメリアの一撃でバランスを失い、重力に従って落下を始める。
「星よ……世界よ……流星の力を我が身に宿せ……!」
落ちる河童を、槍の炎を爆ぜさせた勢いに乗って跳び上がったテラが追い抜いた。
「今こそ我が身、一筋の流星とならん」
その言葉の通り、正に流星の如く空中で反転し、テラは河童の後を追う。
「メテオ・ブラスト……受けろぉ!!」
『くっ……私の華麗な蹴りで受け止める!』
炎と超重力を纏ったテラの踵落としを、バランスを取り戻した河童が振り上げた足――その靴底が迎え撃った。
蹴りと蹴りがぶつかった衝撃が、風となって2人の外に吹きぬける。
「っ!」
『ぐぅっ!』
互いに足から伝わる衝撃に顔をしかめながら、テラと河童は同時に動いていた。どちらも足は2本ずつあるのだ。右が駄目なら、左。左が駄目なら、右。
「やるな!」
『キミもな!』
ガンッ、ガンッ!
空中で何度も蹴りをぶつけ合いながら、テラと河童が視線を交わす。
一見、互角。だが足の振り――蹴りの速さは、僅かに河童が勝っていた。このまま蹴り合いを続けていれば、だが。
「後ろ、がら空きになってるのよ――まだ声は聞こえないかな」
河童は気づいていなかった。もう地上のソフィアから自分が見えている事に。
既にソフィアの念動力が届く高さにまで、落ちていたことに。
『ぐぁっ!?』
ソフィアの人形達から放たれたままだった回転刃が、河童の背中に突き刺さる。
『な、なんだと!?』
感じた痺れに、河童が目を見開く。
その視界に振り上げられる、炎を纏ったテラの足。
「――美しさも力も武と言うのであれば! 時に豪快にいくのも悪くはあるまい! 落ちて、砕け散れぇえ!!」
がら空きの黄金の皿に、今度こそテラの踵の一撃が叩き込まれた。
メリッと軋む音を立てて、黄金の皿に日々が入る。
『ぐうぅぅっ! ま、まさかこの私が制空権を奪われるとは!』
その衝撃に苦悶を浮かべながら、河童が何とか着地していた。
『だが、まだ地上戦でも負けたわけでは――ん?』
そこに響くエンジン音。
「水も地も、空も克服できたのは凄いと思いますが。空を飛ぶものは、いつか地に降りるもの。貴方のジャンプも同じでしょう」
続けて聞こえてきたのは、ロダの声。
河童が気づいた時には、突進してきたロダの駆る『Meteor』の前輪がその背中に容赦なく叩き込まれていた。
ロダはそのまま押し倒し、背中に車輪の痕をくっきり残して走り抜けて行った。
●黄金の特設ステージ
『よくも……! よくもよくもよくも!』
あ、まだ河童生きてた。
しぶといなあ。
『こうなったら――カモン、河童リング!』
河童がパチンッと指を鳴らすと、どこからともなく黄金に輝く何かが飛んで来た。
UFO?
いや、違う。アレは、河童の皿型の黄金のリングか!
『この上で、誰がNo.1か決めようじゃないか!』
「おっと。その前に、あっしの落語を一席、聴いてくださりゃしませんかね?」
指に挟んだ『No.1決定戦への招待状』を投げ放とうとした河童に、舞台の外で座布団を抱えたぱん太が声をかける。
「一席聞いてる間、休めますぜ? 旦那ほどのラグジュアリー河童でしたら、落語にも造詣が深いんでござんしょう?」
『ら、落語? う、うむ。まあな』
戦闘の最中に、落語を聞け。
大概は断られそうなものだが、ぱん太は河童の自尊心を上手くくすぐっていた。
自分に自信があるからこそ、河童は落語を知らないと言えない。
「それでは――演目は、ろくろ首」
座布団の上に正座したぱん太が、手馴れた様子で落語を語り出す。
その姿は、徐々に大きくなっていた。
ぱん太の身体が、黒と白の被毛に覆われて膨れ上がっていく。もふもふで盛り上がった身体が、和服を押し上げる。
『これは――熊!?』
そう。熊に似ている動物。熊猫。パンダ。
熊とも思われそうな凶暴そうなパンダこそが、ぱん太の真の姿である。
「女房の首が伸びたと騒ぐ男に、ご隠居は言いなされた。
ばかやろう、首が伸びるのは知ってただろうに――首を見くびりやがったな、と」
すっかりパンダのそれになった手で、ぱん太は扇を河童に突きつける。
「今のは『首」と見『くび』る、をかけとりまして。
おわかりですかい? 旦那も同じでさぁ」
『な、なんだと!?』
「あっしらの事を見くびってたでしょ? それが、旦那の首を落とすんでさぁ!」
ぱん太が開いた扇をぶんと振るうと、河童の手から決定戦への招待状が離れて、何処かへ吹き飛んで見えなくなった。
『くっ……お、おのれ! まんまとのせられて聞いてしまった』
「招待状はいただいておりませぬが、御堂が上がりましょう」
黄金の上に膝を付いて呻く河童の前に、茜が進み出た。刀を持たずに。
『……どういうつもりだい? 君は武士だろう?』
「この身ひとつで、挑ませて頂きますとも。刀を持たぬ者に刃を振るうことは、美しき武士道精神に反しますので!」
目を細めた河童に、茜が言い切った。
『私の間合いで挑むと? 愚かな――しかし美しい覚悟だ』
河童が膝に力を込め直し、立ち上がる。
そして茜と河童は、手を伸ばせば触れる距離で向かい合った。
「ジャスティスミドウ・モンドコロ!」
『私の華麗なる一撃を受けよ!』
その場で跳躍した茜が、河童の頭のひび割れかけた黄金のお皿を目掛けて、天下自在符を握り締めた拳を振り下ろす。
ほぼ同時に、河童の右足が掻き消えて見えるほどの速さで振り上げられた。
蹴り上げられられた茜の体が、宙に浮き上がる。
「――っ!」
突き抜けた衝撃が肺の空気を押しやり、髪留めが飛んで髪が解ける。
それでも――茜は届いた手を放さなかった。
「わたくしは、御堂の姫です! 平伏しなさい!!」
グッと腕に力を込めて、押し込む。
『な、なんだと……こんな力が、どこから』
「この紋所が目に入らぬかぁー! でございます!!」
河童の膝が崩れて、茜の腕にさらに力が篭る。
黄金の舞台に叩き付けられて砕けたのは河童の頭の黄金の皿だった。
『見事な、美しい女子力だったよ』
倒れたまま茜を見上げて、河童が告げる。
『空を飛ぶ君もまた、美しかった』
アメリアに空で上を行かれたショックがなければ。
『炎の演舞も美しかった』
テラに皿を割られていなければ。
『人形の技も美しかったよ』
ソフィアのマヒがまだ僅かでも残っていなければ。
『その鉄の車輪、そして私の皿にも似た頭も美しい……』
「黙らないと撃ちますよ?」
ロダに容赦なく轢かれていなければ。
『白黒の熊の姿も美しかかった……』
ぱん太のダジャレが精神を削っていなければ。
どれかひとつ欠けていれば、河童はまだ立っていたかもしれない。
だが、そうはならなかった。
『……私の負けだ。私と落武者達の分まで、楽しむが良い。ばぁげんを!』
「必ず勝ってきます、ばぁげんに!」
茜の一言に、河童は猟兵達全員へウィンクを返す。
それが、最後。力尽きた河童の姿は風に溶ける様に消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『ばぁげん、なのです!』
|
POW : 周囲を牽制しつつお買い得商品を気合いで確保する。
SPD : 客の流れを読み素早く目当ての品を確保する。
WIZ : 誰も目をつけていない棚の奥から幻の限定商品を発見する。
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●いざ、もうひとつの戦場へ
河童の怪と、それに鍛えられた落武者達。
それらを無事に撃破した猟兵達は、しばしの休息の後、河童達が目指していた街へと向かった。
そこで開かれている大市。
ばぁげん、に赴くために。
――安いよ、安いよ! この安さ、今日限り!
――季節の反物、今ならお安くしとくよ!
――そこ行くお武家様や。奥方にかんざし、如何かね?
市場のそこかしこから、物売りの商人達の声が聞こえる。
見渡せば、既に人だかりが出来ている出店もあった。
サムライエンパイアで冬場に手に入るものならば、大抵のものが此処で揃いそうだ。
疲れたならば、市場の外側の方に甘味処や食事処も開かれている。
いつの時代、どこの世界でも、買い物は魅惑のイベントだ。
さあ、何を買おうか?
===================MSより===================
3章、日常パートです。
サムライエンパイアの街での買い物イベントとなります。
この章だけの参加も歓迎です。
現代風に言うならば、季節の商品売り尽くし大バーゲン。
反物や帯、かんざしに帯締などなど。
サムライエンパイアにありそうなものは、大抵売られてます。
買い物せずに、茶店や食事処でのんびりしても良いです。
(なお、アイテムとしてこちらから発行する事は出来ません。シナリオの結果に合わせて作成するのはご自由にどうぞ)
●アイテム設定考えます
需要があるかわかりませぬが。
【設定希望】とプレイング冒頭に記載して頂ければ、プレイングからばぁげんでゲットしたと判定した品物の名称と設定を当方の方で考え、リプレイに描写します。
(※お一人1つまで)
(※その設定で申請されて、運営チェックが通る保証は一切ありません。それでもよろしければ)
(※そんな訳ですので、気に召さなければ使わなくても大丈夫です)
============================================
ソフィア・リューカン
【設定希望】裁縫箱
【WIZ】
「ひ、人が多すぎるのー!?」
・哀れ、あまりの人数と優しい?ポンコツな性格、年齢の割に小さな身長のせいで、人形様にと欲しかった布や道具が買えずじまいでとぼとぼとしています。その後も行く店行く店、人波に飲まれて疲れたため、人気の居なさそうな場所で一休みするために入店し、のんびりと物色しています。ふと、棚のところを見かけると、うっすらと埃を被った白い桐箱を見つけ、店主の方にこれが何か、尋ねてみます。(あとはお任せでお願いします)
※アドリブ・他者との協力歓迎
アメリア・イアハッター
【設定希望】
なんだか憎めない河童だったなぁ
まぁいいや!
折角のばぁげん、楽しまなくっちゃね!
あんまりこういうの来たことないけど、活気があって楽しいな!
可能ならさっき一緒に戦ってくれた皆が何買うかとか見てみたいけどなぁ
ちょっと気になる!
さて、私が買うならやっぱりアクセサリーだよね!
かんざし
さっき聞こえたかんざしにしようかな!
うーんいろいろあるなぁ
そういえばさっきの河童のお皿の色は、金色だったよね…
よし、金色のかんざしを買おう!
すいませーん! これくださいな!
購入したら早速付けちゃおう
新しいアクセサリってテンション上がっちゃうよね!
そのままくるくる回ってみたり
川に映る自分を見て、笑顔になっちゃうかも
御堂・茜
【設定希望】
こちらが本番とも言えますね!
うおおおッ!!いざ出陣です、ばぁげんへ!!!
武士たるもの、やはり大将首を狙うべきです!
本日は江戸の老舗呉服屋が手がけた
ぶらんど物の振袖が爆安と
忍から報告を受けておりますッ!!
なりふり構わず目玉商品に押し寄せるご近所の奥様方…
まさに戦です
しかし御堂も【気合い】では負けませんともッ!
あっ、お一人様一点までですよ!
ぐぬぬ…旦那様やお子様まで動員してごまかすとは
恐るべし激安への執着…!
御堂も家臣を連れて参れば…
いえ、そのような卑怯な真似は非正義!!
正々堂々と奥様方に挑み
これは!という一点を掴み取りましょう
敵将討ち取ったり!!
皆様が何を買われたのかも気になります!
ロダ・アイアゲート
【設定希望】
しぶとい相手ではありましたが、潔さは見習いたいですね
さて、そんな彼らが目指していたばぁげんを楽しみましょうか
ばぁげんは戦場だと言っていましたし、さぞ凄いのでしょうね
(市場を見て回り、人の多さに少し驚きつつも自分は人の少ない店へ)
こうも色々あると目移りしてしまいます…ん?
(ふと棚に目が行って、そこにあるものを手に取る。何となく自分が買わなければ、『コレ』は誰にも気づかれない…そんな気がしたのだ)
(アイテムはお任せします)
來米良亭・ぱん太
【設定希望】
「サムライエンパイアはネタの宝庫~♪」
ご機嫌で市場を探検。
団子等食べ歩きしながら、市場の様子や商人達のやりとりを観察。
そのうち手拭い屋さんを発見。
「良い手拭いが欲しいと思ってたんですよ。大事な小道具ですからね」
「すみませーん、丈夫で趣味がよくて舞台映えがして洗濯が楽ちんでタダ同然のお値段の掘り出し物はありませんか?」
あれでもないこれでもないとうるさく交渉しているうち、不思議な力に導かれるように、棚の奥に眠っていた藍染めの豆絞りの手拭いを発見。手拭い屋さんも「こんなのあったかなあ?」と首を傾げている。
※落語用語で手拭いは『まんだら』というらしいです。
※アドリブ連携ネタ大歓迎
テラ・ウィンディア
【設定希望】
この世界のご飯は色々美味しいの一杯だよな!
色々食べ歩くぞ!そして堪能だ!
何せこの世界のおにぎりってのも天に昇る程の美味しさだったからな!
(テラの空中戦スキルはしおおにぎりによるものです(!
さて…色々と小物とかも見て回るけど…
そうだな…これからも続く闘い
その戦いで役立つ武具について探してみようかな
まぁ…ばぁげんって所じゃ難しいかもしれないが
それでも…此処じゃ色々な商人が集まるようだからな
…それに…本当におれが必要とするものなら
それこそ…出会えるってもんかもな
シルも名刀持ってたし…一つおれも色々と探してみるか(という訳で武具を色々と散策してみます。果たして何か良い物は見つかるかな?
●ばぁげん――それは戦場
エンパイアの街へ歩く道すがら。
「なんだか憎めない河童だったなぁ」
「しぶとい相手ではありましたが、潔さは見習いたいですね」
なんとはなしに蒼穹を見上げているアメリア・イアハッターがぽつりと零した言葉に、ロダ・アイアゲートが頷き同意を示す。
怪異、妖怪、化生。
彼らはそんな風にこの世界で呼ばれる存在だった。
猟兵達の呼称では、オブリビオン。
まごう事なき倒すべき敵。だがそこに憎しみを抱くかどうかは、また別だ。
そんなオブリビオンだっているだろう。
「まぁいいや! 折角のばぁげん、楽しまなくっちゃね!」
「そうですね。そんな彼らが目指していたばぁげんを楽しみましょうか」
アメリアとロダは顔を見合わせ頷いて――。
そして、街の入り口で立ち尽くした。
見渡す限りの、人、人、人。
まさに黒山の人だかり。
街の規模にして、おかしくない? 皆さん、どっから出てきた?
――ちょっと! それは私が先に取ったのよ!
――後から出てきて何を言ってんのよ!!
「な、何か不穏な声があちこちから聞こえて来るの……ひ、人多すぎない?」
喧騒の中から聞こえて来た剣呑な声に、ソフィア・リューカンは既に飲まれている。
もしかして、落武者の方が礼儀正しかった?
「矢張り、出陣されておられますね。ご近所の奥様方」
そんな街の様子を前にしても、御堂・茜は落ち着いていた。
「皆様、此処は既に戦場でございます。そしてこちらが、当家の忍からの報告書――本日の爆安商品一覧でございます」
御堂家の皆さん、頑張るなぁ。
「おにぎりの店はないのか?」
茜から受け取った巻物を開いて眺めながら、テラ・ウィンディアが訊ねる。
「お、おにぎりでございますか?」
「ああ。この世界のご飯は色々美味しいの一杯だが、特におにぎりは天にも昇るほどの美味しさだからな。お陰で空中戦も覚えたし」
テラが何を言っているのかわからない?
彼女のステシ開いて、しおおにぎり見ておいで。空中戦すごいから。
「おにぎり……抜けておりますね。忍! 再調査なさい!」
「忍の方も大変ですなぁ……いやはや、苦労が偲ばれます。忍びだけに」
茜の一言で気配が遠ざかるのを何となく感じながら、來米良亭・ぱん太がしれっと駄洒落を混ぜ込む。
「あ、ありがとう。何が売っているか判ったから、なんとか……なる……多分」
受け取った爆安リストに視線を走らせていたソフィアが、巻物から顔を上げる。
直前まで、視線は巻物の一点を見つめていた。何か気になるものがあったのだろう。
他の猟兵達も、それぞれ目星を付けられたようだ。
「では、皆様――御武運を! いざ出陣です、ばぁげんへ!!!」
グッと拳を握って突入した茜に続いて、猟兵達は思い思いの場所を目指して、ばぁげんの人波に入っていった。
●アメリアとかんざし
「あんまりこう言うの来た事なかったけど、すごい活気だね」
売る側、買う側。値切るもの。売り込むもの。
商売で賑わう街並みを、アメリアは楽しげに歩いていた。
この活気も、怪異達を倒したからこそ、だ。
そして、アメリアも見ているだけで終わるつもりは毛頭ない。
「さて、私が買うならやっぱり、アクセサリーだよね! 確かこの辺で――」
目星は付けている。
その商品の名前を叫ぶ声が聞こえた辺りへ、アメリアは足を進める。
『かんざし! かんざしは如何かな! 金銀に瑪瑙、鼈甲、翡翠もあるよ!』
「あ、あったあった」
色々見ている途中で聞こえていた、かんざし。
この世界でアクセサリーならばこれだろうかと、アメリアは人波をするりと抜けて、かんざし売りの前に進み出た。
「うーん、いろいろあるなぁ」
材質、造り、飾りの種類が様々なかんざしが並んでいる。
屈んで眺めていると、アメリアは妙に金色のかんざしが気になっていた。
(「そう言えば――さっきの河童のお皿、金色だったよね……」)
だから、だろうか。
(「よし、金色のかんざしを買おう!」)
そうと決まれば、後はその中から選ぶだけだ。
「うん――これ」
目に留まったのは玉簪。
淡い桜色の桜石と白い月長石の飾り玉が見立てる、花と月。添えるは風鳴る鈴。鳥はかんざしの二つ足を嘴に見立てたのだろう。
豪奢ではないが、作り手の拘りを感じる。
「すいませーん! これくださいな!」
買ったばかりの品を、赤い髪に挿して。
チリンと楽しげに鈴を鳴らし、アメリアは人波の中に戻っていった。
名称:花鳥風月
設定:黄金の玉簪。簪の足を鳥の嘴に見立て、桜石と月長石の飾り玉に添えるは、風鳴る鈴。
●不思議な質屋・ロダ
「さぞ凄いのでしょうと思っていましたが……凄まじいですね」
市場を見て回っていたロダは、人の多さに少なからず驚きを感じていた。
どこもかしこも、ではない。
熱量の差はあるが、凄いところは、本当に凄いの一言。
「先ほどの帯び狙いの母娘など、近寄り難かったですからね」
うっかり2人が狙っていたものと同じ品に手を伸ばしかけ、向けられた噛み付かれそうな視線を思い出し、ロダは機械の体ながら感じた身震いしそうな感覚を思い出す。
ばぁげんを戦場と言っていたのは、思えば河童だけではなかった。
誇張ではなかったようだ。
「……静かな店で落ち着きましょう」
辺りを見回し、ロダは人の少なそうな店の暖簾を潜る。
中に並んでいるのは、なにやら雑多な品々だ。その分、品数も種類も豊富だ。
『いらっしゃい。ここは質屋さね』
店の奥で、老婆がひっひと笑う。
ロダは少し、この店を見てみる事にした。
「こうも色々あると目移りしてしまいます……ん?」
一通り見て回ろうとしていたロダの視線が、棚の一点で止まった。
「これは……河童ですね?」
ロダが手に取ってみたのは、金属性の小さな河童の顔だった。
福福しいと言うか妙に丸いと言うか、あの河童とは似ても似つかないが。河童だ。
『見ての通り、河童の根付さねぇ』
いつのまにか店の置くから出て来ていた老婆が、ロダにそう告げる。
『何でも、空から降ってきた魔除けの鉄を使ったと言う事さね。
さらに頭の皿が開くからくりの根付ってぇ話だったけどね? 壊れてるのか開かなくってねぇ。誰にも売れないんだよ』
老婆の話が、どこまで本当かは判らない。
だが、ロダは自分が買わなければこの河童のからくり根付は、この先も誰にも気に止められない気がしていた。
何故か感じたその気持ちに背中を押され、気づけばロダは根付を手に店を出ていた。
名称:河童之根付
設定:隕鉄製の妙に丸い河童の顔の根付。頭の皿が開く絡繰があるらしいが、今は壊れている。
●茜VSエンパイアの奥様
「武士たるもの、やはり大将首を狙うべきです!」
茜の瞳には、情熱の炎が燃えていた。
目指すは忍の調べでも本日最大の目玉。
江戸の老舗呉服屋が手がけた『ぶらんど物』の振袖である。
――お一人一品、一人一品で頼むよ! 買いすぎは駄目だよ!
そんな声が聞こえるその店は、ばぁげん指折りの激戦区。
『ちょっとぉ! あんた、さっきも買ったでしょ』
『ふんっ! アレは姑の分だよ! そう言うあんただって2つ目じゃない!』
『さっきのは旦那の分なの!』
一人一品、なんてお店の人の話を聞いちゃいない奥様方の。
「ぐぬぬ……旦那様やお子様まで動員するのみならず、嫁姑様が手を結んでいる家まであるとは……爆安への執着、恐るべしです……!」
その様子に、流石の茜も、二の足を踏まされていた。
ここは家臣を連れてくれば、人海戦術でたくさん買えたのではないか?
そんな考えすらよぎってくる。
(「いえ、その様な卑怯な真似はいけませぬ! 非正義です!」)
ノットジャスティス。
正義でない事など、茜は出来ない。
それに、この勝負。もう一人のものではない。
必ず勝って来ます――そう消え行く河童に告げた言葉を、違えてなるものか。
「御堂は正々堂々と! 負ける気はございません!」
茜は人波に飛び込み、気合いで自分の拠点となる空間を死守しながら、そこから手の届く範囲で着物を選んでいく。
「これです、これをくださいな!」
そして。
呉服売り場を出てきた茜は、むふーと満面の笑みを浮かべていた。
名称:翡翠之小紋
設定:江戸小紋の振袖。緑青と淡い橙の上下二色は川鳥の翡翠の色。一直線な姫に忍が勧めた。
●不思議な質屋とソフィア
「ひ、人がー!?」
人波に飲まれたソフィアが、なす術なく流されていく。
「多すぎるのー!?」
何とか人波を抜け出し、再チャレンジも今度は逆方向に――。
「うぅ……ジェファーソンとレイニーに、何か作ってあげたかったんだけど……」
行く先々で人の流れに乗り切れず、何度も人波に飲まれ流されるのを繰り返したソフィアの声は、疲れ切っていた。
人形達の服に出来ればと目指した反物を売る店にも中々辿り着けず、近づけても商品までが手が届かない。
年齢の割りに低い身長でなければ。
こんな時でも、周りに遠慮してしまう優しい性格でなければ。
「取りあえず、どこかで一休みさせて貰いたいわね」
人混みを避け、とぼとぼと歩いたソフィアが辿り着いたのは、街外れの小さな店。
「ここは、何のお店かしら?」
包丁から蒔絵箱まで。なんとも統一感のない品揃えだが、そこは質屋だ。
その中をのんびり見て回っていると、棚の中にうっすら埃を被った白い桐箱がソフィアの目に入ってきた。
「これは――?」
『ああ、それはねぇ……曰くつきの品さぁ』
店の奥から出てきた老婆の声に、ソフィアの肩がびくりと跳ねる。
「い、曰くつき……?」
だが、不穏なものは何も感じない。意を決して開けてみると、中にはほとんど使われていなさそうな針と糸切り鋏が入っていた。
『針箱さ。持ち主はもう、この世にゃおらんがねぇ』
それが曰く、なのだろう。
だが、老婆はその詳細を話そうとはしないまま、ソフィアを見つめて――。
『そう言えば……薬代の足しにするとそれを持ってきたのも、あんたと同じような年頃の娘だったねぇ。……良かったら、持ってくかい?』
懐かしむような惜しむような老婆の言葉に、ソフィアは黙って頷いていた。
名称:白桐針箱
設定:縫い針と糸切鋏が入った桐の裁縫箱。ソフィアが見つけたあの日、何年かぶりに開かれた。
●ぱん太と手ぬぐい
「サムライエンパイアはネタの宝庫ですなぁ~♪」
黒一点、団子片手に食べ歩く、ぱんたの足取りは軽やかだった。
商人達のやり取り、客同士のやり取り。
時に起こる揉め事を収めるお役人達。
市場探検で見える光景には、ネタが溢れている。
「お、あれは――手拭いじゃねえですかい?」
その内、ぱん太の目に飛び込んできたのは手ぬぐいを売る露天だった。
「丁度、良い手拭いが欲しいと思ってたんですよ。大事な小道具ですからね」
噺家が高座で使う道具は、扇と手拭いのみだと言う。たった2つと仕草と語りで、噺を盛り上げるのだ。
その片方ともなれば、確かに大事な小道具である。
さしずめ、騎士にとっての剣と盾、と言ったところか。
「すみませーん、丈夫で、趣味が良くて、舞台映えがして洗濯が楽ちんで、タダ同然のお値段の掘り出し物はありませんか?」
だからって、その注文は無茶じゃないですかね?
『……』
無言の店主の顔も、無茶言うな、と物語っているようないないような。
「あっしは本気ですよ? とりあえず、色々みせてくださいな」
だが、そこは商売人。
ぱん太が冷やかしでないのは悟った様で、すぐに色々と手拭いを見せて来る。
「うーん……これは色が派手過ぎですね。これは薄すぎですし」
『お前さんも、粘るねぇ。んじゃあ、こっちのはどうだ!』
あれでもない、これでもないと物色するぱん太も大概だが、それに張り合って次から次へと商品を出してくる相手も、まさに商売人である。
いつしか、2人のやり取りは店の奥の棚の前に場所を移していた。
「お? こいつぁ――いいじゃないですかい」
何かに導かれる様にぱん太が伸ばした手が触れたのは、藍染の手拭いだった。
独特な玉模様は、豆絞りだろう。
『はて……こんなもん、いつ仕入れたっけなぁ? ま、いいや。兄ちゃん、あんたにゃ負けたよ。タダとはいかねぇが、安くしとくぜ』
覚えのない手拭いに首を傾げていた商人だが、切り替えて売りに出る。
この交渉、ぱん太の勝利である。
名称:藍染曼陀羅
設定:三尺ほどの藍染め豆絞りの手拭い。白地に藍の玉模様が並ぶ中、中央には藍玉が渦を巻く
●不思議な質屋とテラ
「うん。昆布のも良かったけど、やっぱおにぎりは塩が美味いな!」
塩を塗しただけのシンプルなおにぎり片手に、テラは市場を食べ歩く。
既に何個目なのかは、控えておこう。
「しかし、色んな商人がいても、武具売ってるのは見当たらねぇなぁ」
とは言え、テラも食べてばかりではなかった。
ちゃんと探している物もあるのだ。
それが、武具。これからも続くであろう戦いに、役立ちそうなもの。
そう言う市でない事は街に着いてすぐに判ったが、それでも探していたのだ。
(「本当におれが必要とするものなら……出会えるってもんだろ」)
やがてテラは、街外れのある店に辿り着く。
『ここは質屋だよぉ。何かお探しかね? ひっひっ』
「刀はあるか?」
店主の老婆の特徴的な笑いも気にした風もなく、テラがそう訊ねる。
刀――と思わず言っていたのは、双子の姉が持つ名刀の事が、頭の片隅に浮かんでいたからだろうか。
『あるよぉ――曰くつきだけどねぇ』
あったよ。
しかし、老婆が出してきた刀は――錆びているように見えた。
『ご覧の通り、錆び付いて鞘から抜けやしないと来てる』
「……」
老婆の言葉は聞こえていたが、テラは何かを感じてその柄に手を伸ばす。
スラリ、と。
錆びた見た目が嘘の様に、軽々と刀身が現れた。
『こいつぁ驚いたね……』
「幾らだ?」
驚く老婆を尻目に、テラの心は決まっていた。
名称:錆鞘之太刀
設定:無銘の太刀。鍔と鞘が錆び付いていたが、テラが掴むと不思議と鞘からスルリと抜けた。
●再び集まって
日が傾き、空が赤く染まり行く。
黄昏時が近づくにつれ、ばぁげんも終わりが近づいていた。
最後の掘り出し物を探す客もいるが、既に店じまいしている所も少なくない。
「ふっふー!」
一足早く街を出て、外の川に映るかんざしを挿した自分の姿に笑みを浮かべているアメリアの後ろから、それぞれの戦利品を手に他の猟兵達も街から出て来た。
「皆は、何を買ってきたの?」
「敵将討ち取ったり!! でございます」
アメリアに問われて茜がドヤと広げるのは、緑青と橙二色の振袖。
翡翠の印象なんだとか。色々と一直線な姫に、きっとお似合いです。
「え!? 着物買えたんだ!? 私、反物届かなくて……」
それに驚いたのは、色々と残念な思いもしたソフィアである。
「でも、こんな裁縫箱を見つけたの」
ソフィアが抱えていた箱を置いて、開いてみせる。
横に開いた二段重ねの箱の中には今は僅かな道具しかないが、これからは新たな主の裁縫道具が増えていくのだろう。
「私は……こんなものを見つけてしまいまして、はい」
「「「河童だー!」」」
ロダの河童の根付に、思わず上がる声。
「河童が目に付いたのもありますが。中の絡繰が壊れているとのことで……小さいながらも分解のし甲斐がありそうですよ」
心なしか楽しげに、ロダが告げる。
「おれはこの刀だ。鞘は後で磨いて錆を落とさねえとな」
錆まくりの鞘から、テラが刀をスラリと抜いてみせる。
鞘と裏腹に錆染の1つもない刀身には、鮮やかな刃紋すら浮かんでいた。無銘ではあるが、腕のいい刀鍛冶のものだろう。
「あっしはコイツですねぇ。かなり安く手に入りまして」
びしっとぱん太が広げたのは、水玉模様のような点が並んだ柄の藍染めの手拭い。
「そうそう。この手拭いなんですが。あっしの生業とする落語の世界じゃ、これは『まんだら』と呼ぶんですがね?」
何を言い出すのかと、他の猟兵達の視線がぱん太に集まる。
「――皆さんもいい物が手に入って、まんざらじゃないんじゃですかねぇ?」
おあとがよろしいようで?
大成功
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