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紙箋、めくるめく目捲る革命

#アスリートアース #超人プロレス #ビブリオバトラーツ #骸の穴

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 リングに高笑いが響き渡る。紫髪の少女が、積み上げた屈強なレスラーたちの倒れ伏す肢体の山の上で、敗北者を嘗めるように見つめていた。

「ハッハッハー! この試合私の勝ちだ!」

 体格としてはほぼ同等の女レスラーを片手で持ち上げる膂力。その並外れた力がダークレスラーのそれであることは明白だった。
 スポーツマンシップを逸脱した一方的な試合ぶりに観客も言葉を失っている。

「……超人プロレス界を追われても、天才と呼ばれた実力は健在でした……ぐうッ! げほッ……見事、見事です、レイラ……!」
「その名は捨てたッ! ダーク総裁の薫陶を受けた今は――『ディザステスト』だ! 約束通り、貴様の『ビブリオバトラーツ』の団員は全て『骸の穴』に引き抜かせてもらう。強者が束ねる、これぞ真の正義の行いというもの」

 敗者の女性、「ビブリオバトラーツ」の団長は残る力を振り絞って首を振る。

「強さこそが正義なんて考え方……誤って、誤っていますよ……! 一週間後、リベンジマッチを申し込みます……っ」
「今しがた負けた貴様がか? フン、一人で何ができる、と言いたいところだが……面白い! 正義に逆らった者がどうなるかッ! 洗脳を免れた気概に免じ、貴様の公開処刑という形で思い知らせてやろうじゃないか」

 『ディザステスト』は一層大きな高笑いで一方的な試合を締めくくる。
 募る悲壮感、悔しさ、突き立つ敵意。それをねじ伏せる力という圧倒的な正義。力のみがこのリングの上では平等で雄弁なのだ。
 新進気鋭のチームがまた一つ、ダークレスラーの無秩序の力で粉砕されようとしていた……!

●正義の審判を下す、闇の使徒!
 嘸口・知星(清澄への誘い水・f22024)は、集う猟兵に頭を下げると、謝辞を述べた。
「召集に応じてくれて感謝する。アスリートアース世界が脅かされている。このままでは世界がダークレスラーに支配されてしまうかもしれない」
 どういうことか、と騒めく一同に知星はこの世界の施設の一つ、「天空要塞デスリング」について説明する。ここは謎めいた支配者「ダーク総統」が支配する地獄の訓練場。ここから送り込まれてくる刺客が、超人プロレス界、そして地上界全体に混迷をもたらすのだという。使命はたった一つ、単純にして極悪な、世界征服という野望だ。
「彼から命を受けたダークレスラーが、『骸の穴』という団体を率いて興行という名の公開処刑を行うとしている。これを阻止し、世界征服に待ったをかけてほしい」

 ダークレスラーに洗脳され『骸の穴』の尖兵となったレスラー達は、姿を『闇の格闘家』に変えて襲いかかってくる。対するのは、「見せしめ」のターゲットになっている、団員を全員引き抜かれて孤独になった団長たった一人である。猟兵が介入しなかった場合の末路はもはや予知するまでもないだろう。幸い乱入することは問題ないので、超人プロレスのルールに則って勝てばダークレスラーを正気に戻すことが可能である。
 ちなみに変貌した姿は『ダークデュエリストの少年ギャング』。野生動物や獣人、パワータイプのクリーチャーの助力をはじめ、圧倒的な力かつ多様なパターンで攻めてくる難敵だ。
「引き抜かれた団員が若手の集う団体だったからだろう。しかし、競技で勝てばその洗脳から解き放つことができ元の姿に戻る。加減は無用だ」

 部下たちを薙ぎ倒せば、いよいよデスリングより遣わされた、強大なるダークレスラーがリングに上がる。『ディザステスト』レイラ・シングス、天才にして、天災。美少女プロレスラーとして一時は注目を浴びていたため、その界隈では名の知られた有名人である。――ゆえにその顛末も知られている。不適切な態度を理由とした無期限の公式試合出場停止処分、事実上の超人プロレス界からの追放である。
 彼女が『骸の穴』に加入し、正義を騙る姿はある種の痛ましささえ覚えてしまう。
「彼女はリングコスチュームを付け替えることで闇の『聖女』となり、理外のパワーを手にする。だご恐ろしいのは予想外の革命的なプロレス技を繰り出してくる技の百貨店である点だ。無論彼女も競技で打ち倒さなければならないが……彼女一人の方が先の集団戦よりもよほど厄介かもしれないな」
 彼女は倒されたとて消滅はしない。そういう意味でも加減なしの真剣勝負で彼女を目覚めさせる必要があるわけだ。猟兵たちの地力が試されるだろう。もちろん彼女と試合経験のある味方チームに助言や助力を求めるのも有効である。ユーベルコードこそないものの介添人として活用しよう。

「あなた方が無事勝利をおさめたあかつきには、焼肉パーティを行う手筈となっている」
 ……ごくり。
「思えばダークレスラーとて思想や信念を持つ競技者だ。ゆえに彼女は正々堂々とした試合の結果を受ければ改心し、必ず焼き肉をご馳走してくれる。さぞかしデスリングは貯め込んでいるのだろうな」
 うんうんと勝手に納得しているが、せっかくご馳走してくれるのなら彼女と食事をするのも悪くない選択肢ではある。
 もちろん無理やり賭け試合紛いで引き抜いたメンバーも元通りにして返してくれるだろう。

「それも、あなた方が試合に勝ち残ってこその話である。健闘を祈る。勝利の女神がきっと微笑んでくれると、私は信じているからな」
 どこからか取り出したゴングを知星は高らかに鳴らす。
 思えば「その他」と括られていた頃からずいぶんと遠くまで来たものだ。だがプロレスの世界に終わりはない。まして征服などさせてなるものか。猟兵たちは闘志を燃やしてリングの待つ世界に飛び込むのだった。


地属性
 こちらまでお目通しくださりありがとうございます。
 改めましてMSの地属性と申します。
 以下はこの依頼のざっくりとした補足をして参ります。
 今回は格闘家たち集うリングにて、ヒールレスラーに立ち向かっていただきます。その他スポーツのプロレス改めて超人プロレス! 今回もお腹に力を入れて踏ん張りましょう。

 この依頼はバイオレンス系となっております。
 そのため、興行的には美味しい、あえて不利な行動をプレイングしたとしても、🔵は得られますしストーリーもつつがなく進行します。思いついた方はプレイングにどうぞ。
 基本的に集まったプレイング次第で物語の進行や行末をジャッジしたいと思います。ぼこぼこに殴り合うのは歓迎ですが、相手ありきのリスペクトをお忘れなく。

 続いて、登場する超人プロレス団体とその団長について補足をば。
 格闘司書団「ビブリオバトラーツ」。リベンジマッチに燃える団長の牧志・千愛は身長150㎝と小柄な女性でありながら頭脳派らしい試合運びに定評があり、本人は認めたがらないですがスタミナ難です。今回そこを突かれて敗れてしまった様子。丸眼鏡と、ルールブックが手放せません。今回の話の前に、別のお話で猟兵の皆様と関わったことがあります。ちなみにどの章でも交流は可能です。
 そして「骸の穴」。こちらはダーク総裁麾下のダーク団体です。反則上等の極悪ヒールレスラーの集団ですがプロレスを愛する気持ちが歪んで表出している様子。全力でプロレスの相手をして、その怨念を晴らしてあげましょう!

 では皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ダークデュエリストの少年ギャング』

POW   :    降りてこい!
【カードに描かれたクリーチャーの特質】を纏った真の姿に変身する。変身中は負傷・疲労・致命傷の影響を一切受けず、効果終了後に受ける。
SPD   :    集え!
レベル体の【カードに描かれたクリーチャー(受肉済み)】を召喚する。[カードに描かれたクリーチャー(受肉済み)]はレベル×5km/hで飛翔し【元々のクリーチャーが備えていた能力】で攻撃する。
WIZ   :    狂え!
【カードをシャッフルしたり投げたりした】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【使用したカードに書かれていた内容】の状態異常を与える。

イラスト:田口 マサチヨ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……おお、おお! 助太刀ですか! それはありがたい!」

 試合開始直後から満身創痍の「ビブリオバトラーツ」団長・千愛。ひび割れたメガネを押し上げて笑みを浮かべる。
 ダーク系団体との死闘を前にして、百人力の助っ人。ここで笑って立ち上がらなければ、女が廃る! とはいえ膝も笑っているのも事実。リングに上がれるのが一人である以上、ツープラトンならともかくバトンタッチのタイミングが今だ。

「小癪なァ……正しい私の力に賛同する者たちよ! まずはあの小生意気な助っ人たちをまとめて血祭りにしろ!」
「姉御の指示だ! カードオープン!」

 事前に知らされていた通り、まずは洗脳した『ダークデュエリストの少年ギャング』をリングに上げてきた。負かした相手からはライフポイントだけでなくみぐるみも全て奪うと豪語する猛者である。当然ルールはプロレスに準じるが、より激しい空中戦になりそうだ。

「……油断せず、油断せずいきましょう!」
天羽々斬・布都乃
えっちな行為はNG
「かーどげーむはよく分かりませんが、正面からの戦いならば!」

天羽々斬剣と布都御魂剣を――反則を取られないよう鞘に収めたままリングにあがります。

『気をつけるのじゃ、布都乃。
あのカードは様々な状態異常を付与してくるようじゃ』
「大丈夫です。――視えています」

式神の子狐の警告に頷きつつ、未来視の力を発動します。
私の目に映るのは、薬品で発情させたり、触手で拘束したりといった破廉恥な攻撃。
それらを運命改変によって発動できなくさせましょう。

「さあ、正々堂々と勝負です」

両手の神剣で峰打ちにして敵を気絶させます。
反則を取られないように5カウント以内で決着をつけますね。

『正々堂々……かのう?』


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
酷い状況ですが、何とか?

【綰閒】を発動、『FLS』により|召喚した品《公開状態の非装備品》を含む全『祭器』を体内に収納、身体能力として使える状態にしておきますねぇ。
相手方の得る『特質』を『FPS』の探査で把握、物理的なものなら『FLS』の空間歪曲と『FMS』のバリアで逸らし、何らかの属性を得るものなら『FES』で『対該当属性』の結界を纏えば問題有りません。
又『変身中の負傷等無効』は「状態異常は防げない」為、この競技なら「転倒させ『FGS』で重力増大、[重量攻撃]によるフォール」で勝利可能ですぅ。
『FPS』の探知に剣術を応用した合気の動作を併せ、競技らしく対応しますねぇ。



「先刻はよくも……よくもやってくれましたね! 公衆の面前でよくも……あんな」

 トップバッターとして名乗りをあげた天羽々斬・布都乃(神剣使いの陰陽師・f40613)は、何やら落ち着かない様子で捲し立てる。真面目で真っ直ぐな、磨き抜かれた日本刀のような気質の彼女が、何の理由もなく因縁づけるなど珍しい。
 豊饒を司る女神の使徒である夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も心配そうな様子だ。

『気をつけるのじゃ、布都乃』
「私もお手伝いしましょうかぁ。酷い状況ですが、合力して乗り切りましょう。警戒すべきはあのカードですねぇ。隠し持ってるものもあるかもしれません」
『うむ。あのカードは様々な状態異常を付与してくるようじゃ』
「大丈夫です。――視えています」
『むう……』

 式神の妖狐が神妙に頷く。その鋭い視線は、布都乃の瞳が宿す残光を確かに捉えていた。彼女の持つ未来を見通す瞳が、如何なる絶望を目にしたのか、想像はできてもあえて踏み込んで聞くのは惨い。
 るこるもまたその様子から察して《豊乳女神の加護・綰閒》を発動させる。ぷるぷると揺れ、淡く光る胸元があたたかくも神々しい輝きのベールを纏い、神聖な祭器の力を合力させた。

「身体能力だけでのぶつかり合いなら、これでこちらに有利かと思いますぅ」
「かーどげーむはよく分かりませんが、正面からの戦いならば!」
「誰が正面から戦うか!」

 布都乃が試合開始直後の握手を交わした後の奇襲! 『ダークデュエリストの少年ギャング』は先制攻撃とばかりに禁止カードをお見舞いしようとする。薬品で状態異常を誘発したり、蛸足や植物の蔓によるバインド攻撃、どれも肉体的なダメージよりも心理的な負荷を強いる、ギャングらしい卑劣な攻撃である。攻撃力はなくとも一度術中に嵌めれば抜け出すことは困難! これが彼の作戦であった。
 しかし、それも事前にタネが割れていれば怖るるに足らない。

「――未来を見通す瞳よ、運命を改変し、絶望の未来をもたらせ」
「何をごちゃごちゃとこれでも喰らえ! ……なにっ」

 翳したカードがその手ごと、鎖でぐるぐる巻きにされたように固定されて自由に動かせない。けたたましく鳴り響くアラート音。その異音と行動でレギュレーションに違反した行動を察知したレフェリーが、注意を呼びかける。
 そのアラート音よりもさらに大音量で『ディザステスト』の怒声が飛んだ。

「チッ、いったい何をやっている。負ければこの手で裁きを下すからな恥晒しめ!」
「く、くそ……ッ、なぜ奇襲がバレた!」
「当然カードによる絡め手を警戒しますよねぇ」

 未来視で睥睨するまでもなく、明確に焦る男。サッカーでも陸上でも、どんな競技でもスタートダッシュを誤ると挽回するのは困難だ。実力が拮抗しているならなおのことである。
 やむを得ず取っ組みかかるようにしてボディタックルを放つも、ギャングの見え見えの動きを布都乃は余裕を持って躱す。

「焦りが隠せていませんよ。見え見えの動きで私を捉えようなんて笑止千万です!」

 軽やかに蝶のようにリング上を舞う影。ひらひらと舞うコスチュームが、まるで演舞のような優美さで観客を夢中にする。重力を無視した動きに翻弄されるギャング。目線ばかりが右往左往して布都乃の華麗な動きに全くついていくことができない。
 早くも、趨勢は決したようだった。
 満を持してるこるもリングにひらりと飛び込む。その手に握られたのは布都乃の二振りの抜き身の刀、天羽々斬剣と布都御魂剣である。全身が祭器と化したるこるはともかく、布都乃の本業は剣士。当然レフェリーはじろりと睨みつけるが――!

「ご安心を、一瞬で勝負をつけます」
「どうやらこれ以上の搦手はない様子。少し警戒しすぎましたかぁ。では参りますぅ」

 勝負は……五カウントで決した。
 すれ違いざまに放つ刀技の一閃が、首裏を二度正確に穿つ。斬りつける直前に刃を返して峰を撫で付けられれば、骨にヒビが入るような凄まじい剣戟音。
 くらりと体を傾けたところにるこるの全身全霊のフライングタックルが覆い被さる。『FGS』で己に掛かる重力を倍増しにしたグラビティ・プレス。ロードローラーに轢き潰されたかと錯覚するほどの衝撃に、ギャングは有無をも言わされず昏倒した。

「あっ、こちらを手放さないとですね」

 抜けている一面を覗かせつつも、そっと刀をリングの外に受け渡す。

「きちんとルールを守った、素晴らしい試合ぶりだったと思いますぅ。お疲れ様でしたぁ」
「ええ、あなたのおかげで有利に試合を進められました。でなければ今頃は……」
『正々堂々……かのう?』

 少々過剰だったかもしれないが卑怯者にはちょうどいいお灸になったことに違いない。
 まずは一勝、並居るギャングたちが浮き足立つほどの鮮烈な勝利! 観客たちからも黄色い歓声が飛んだ。『ディザステスト』は一部始終に対して不愉快さを隠そうともせず、苛立たしげに次なる部下に出撃を命じたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「どもー、助っ人のヒーローマスクっすよ〜」
などと軽いノリで現れる狐のお面
「団員のためにも、団長のいいとこ見せたくないっすか?」
などと言って団長の頭に装着してもらい、リングイン
「『ロープ際の魔術師』に空中戦とはいい度胸っすね」
最初は飛翔するクリーチャーに対して【ロープワーク】で跳躍しての【空中戦】で空中に敵を蹴ってさらに跳躍したり、掴んで別の敵を投げたりなど立ち回るが
「さあ、その聖典に刻まれた技を見せるっすよ団長さん」
UCで団長の技能を強化。知識を元にした戦術眼や先読み能力などを強化してリングの流れを支配。最終的には団長のフェイバリットで仕留められれば言うことなし。
「お疲れ様っすよ、団長さん」



 昏倒したギャングがみるみるうちに元の団員の姿へ変わっていく。やはりダークレスラーの強力な洗脳から解き放つには、超人プロレスの中で勝利をもぎ取る他ない。
 そういうものだ。原理としてわかっていても、困難の壁が聳え立つ。躊躇させる。介抱していた「ビブリオバトラーツ」の団長・千愛は忸怩たる思いでリングを睨みつけた。

「あれほどの身のこなし! 苦境を打破する神通力! ……この体には、体にはそんなものはない……ですが……!」
「よっすー」
「うん? 集中力を欠いていますね……うちで鍛え上げた、この聖典を目指した体技、通用するでしょうか。いやさせてみせます……!」
「そーそー。団員のためにも、団長のいいとこ見せたくないっすか?」
「それはその通りですが……おお、おお?!」

 白地に赤い縁取り、ちりんちりんと鈴の音が耳に心地よい。リカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)が眼前に浮いていて、そのままぴたりと団長の頭部側面にくっついた。
 憑依した相手の技能を底上げする《シークレットポテンシャル》を引き出せば、多少の困惑を塗りつぶす圧倒的に漲る活力、自信、勇気!

「いざ、いざ、正々堂々とした勝負を! 渾身の技をこちらに食らわせてみなさい!」
「そうそうその意気っすよ!」
「なんだこいつら……『ディザステスト』様が出るまでもない! 血祭りにあげてやるぜ!」

 鉤爪と剛翼を生やした鳥人のクリーチャーを召喚すると、その力で飛び上がる。
 コーナーポストに上ったかのような勢いから放たれる「ダイビング・フットスタンプ」に似た蹴り。しかしこれはバシッとクロスした腕で受け止めてみせる。確かにこのまま無防備に足が叩き込まれられれば、年若いギャングの軽い体重でも、落下の加速の相乗効果でかなりの威力が見込めただろう。

「見え見えの攻撃ですね!」
「何っ、満身創痍のはず……もう一度!」

 再びリングのはるか上へ舞いあがろうとする男に、なんと追い縋る千愛。

「先手は譲りましたが今度はこっちの番すよ! にしても『ロープ際の魔術師』に空中戦とはいい度胸っすね」
「うおっ、があっ?!」

 ――ベキィィィッ! ドゴッ……!!

「ぶぐぇっ」

 空中でエルボー・バットを叩きつけ、リングに叩きつける。クリーンヒットだ。
 思いっきり頭をリングに打ち付けてしまい、ギャングは一瞬意識が遠退いていく。

「おや、おや? もう伸びてしまいましたか?」

 逆転の一撃をこちらに打ち込まなければ一方的な試合展開になってしまいますよ? とでも言いたげである。
 ギャングからしてみても、不甲斐ない敗北をすれば懲罰ものだ。切り札のカードを温存する理由もない。バシッっという音ともに掴まえた千愛の足首を、男は思いきりひねった。

「手が蛇に変化してるっすよ! おったまげすね」

 不意を突かれて、バランスを崩してリングに倒れてしまう。無様にリングに転倒すると、会場がどよめき、歓声があがる。
 倒れた千愛は、もう片方の脚で男を蹴ってその場を逃げようと試みたが、その脚も相手に捉えられてしまう。両足を掴まえらて万事休すの状態、そのまま持ち上げられて……俯向けにリングに思いきり叩きつけられた。

「ぐはぁっ!」

 強い衝撃で上半身が潰され、肺の中が空気が全て口から吐き出される。

「ロープ、ロープを掴むっすよ!」

 体勢を建て直そうとロープに手を伸ばしたが、男は再び彼女を持ち上げリングに叩きつける。
 二回……! 三回……! 四回と、先ほどのお返しとばかりに連続で、大きな音を立てて、洗濯物の皺でも伸ばすようにリングに叩きつけられる。
 全身が痺れと痛みでうまく動かせない。打ち身、打撲、顔面から落とされたせいで顔を切って鼻血も出ているようだ。

「……すみません、すみません! ちょっと汚しました」
「いいってことっすよ。でもやられっぱなしじゃあダメっす。さあ、その聖典に刻まれた技を見せるっすよ団長さん!」
「はい!」

 肩から突っ込んでそのまま持ち上げると、無理やりコーナーポストに投げ上げるようにして座らせる。尾骶骨をしたたかに打ち付けて悶絶するギャング。セカンド・ロープに飛び乗ると、フィニッシュに繋がる大技を繰り出していく。
 男の腋に自分の首を捩じ込み、リカルドの目がカッと光ったと思うと、己の体ごとマット上へ投げ出した……! 真っ逆さまに投げ出されていく両者。

「喰らえぇえッ!」

 抱え上げた相手を後方に投げ落とす、いわゆるブレーンバスターの派生技「アバランシュ・ブレーンバスター」……! 飛び降りざまに繰り出されたその技は今では古典的とも言えるが、相手がリアクションをしてくれればくれるほど己にもしっかりとした衝撃が返ってくることから、団長・千愛のフェイバリットの一つである。

 ――ズドォ!!

「ぐぅおおッ?!」

 そのまま固め技を極めてフィニッシュをもぎ取った。ゴングが打ち鳴らされ、千愛の入場テーマ曲が会場に鳴り響く。

「お疲れ様っすよ、団長さん」

 勝ち名乗りを受け、レフェリーが手を取り天に掲げる。
 勝った。
 勝ったんだ!
 プライドと仲間たちを取り戻すための戦いはまだ始まったばかり、だけれど。
 この手に掴んだ勝利は大きく、かけがえのないもので。次はお前だとばかりに『ディザステスト』へ拳を突き出す。眩いばかりの栄光にリカルドもまた嬉しそうに体を揺するのであった――!

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
天井の照明エリアから高笑いをあげて注目を集めるぜ
真紅のコスに、金で装飾された黒の狐面でリングに降り立つよ
アタシの名はザ・フォックス!

ゴングを待たずにドロップキックをぶち込むぜ
ファイトスタイルは空中殺法メイン

カードは叩き落とすがプロレスなので華麗に投擲された際に喰らっておく
って、ゲェー状態異常は石化だ!?
リングの上で固まって終了…と見せて【拾式】の炎を内から燃やし滾らせセルフ改造で動く石像となり石のラリアットをぶち込むぜ

破魔力高めて状態異常を祓えば、トドメは念動力で寄せたパイプ椅子で頭を殴って気絶攻撃します
ちゃんとプロレスなので加減はしとるぜ

ブーイングはむしろ心地いいね
ヒールだもん☆


アニカ・エドフェルト
いろいろ、召喚されちゃう、のですか…。
対大人数戦は、ちょっと苦手、ですが、頑張って、みましょう。

超近接戦で、蹴ったり投げようとしたり、してみます。
召喚する隙は、あげません、よ?
相手が、ダウンしたら、一気に、フィニッシュ、コーナーに駆け上がって、《舞踏天使》を…
えっ、まさか、そこから召喚、を…!?

召喚された、クリーチャー達の攻撃で、どんどん、上空へ、打ち上げられながらも、タイミングを、見計らって…
こちらも、ダウン寸前、最後のワンチャンス、〈空中浮遊〉〈空中戦〉等で、体制を、立て直して、《舞踏天使》を、叩き込みます。
空は、|わたし《オラトリオ》の、領域、ですっ

(アドリブ台詞行動・連携歓迎)



 こと公平な試合において、意外性というファクターは時に思わぬ力を発揮する。力こそ正義と信じて疑わない『ディザステスト』はもちろん、猟兵の助力という新規参入を受け入れた「ビブリオバトラーツ」の団長・千愛も、疑わないところである。今回のようななんでもありの場合は殊更だ。
 意表を突く、アクシデント。
 例えば、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)が扮する「ザ・フォックス」然り、小柄な香雪蘭、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)もまた然りである。

「だらっしゃあぁあ!!」
「てえええぇい!」
「「うぉおおあッ?!」」

 ドグシャリ! とギャングの顔面に突き立つドロップキック。スローモーションで倒れるリング上の男。それを呆気に取られて見惚ける取り巻きの男たち。
 カードをばら撒き召喚することで自信にバフをかけたり優位に立ち回ることを狙ってくるのであれば、狙うは速攻&超近接。試合開始のゴングで不適な笑みの燦と、覚悟を決めたような様子のアニカはアイコンタクト。綺麗に、クリティカルに、先制攻撃を繰り出した。

「と、五カウント以内だったな。もういっちょ、どっせい!」
「うわぁああッ?!」

 ――ぶぉん! ドゴオォ……ッ!!

「この、飛び蹴りでっ!」

 リングの外にバク宙で飛び出したアニカはくるりと反転し、燦がリング外に放り出した別のギャングの一人に強烈な飛び蹴りを見舞う。体が綺麗にくの字に折れ曲がった男は綺麗にリング外の硬い床に叩きつけられて悶絶昏倒した。

「な、なんて奴らだ……!」
「しかし『ディザステスト』様が見ている手前不甲斐ない戦いはできねぇっ」
「数だ。数で押せっ」
「(うう……対大人数戦は、ちょっと苦手、ですが……)」

 ともかく次々と戦力を逐次投入することで猟兵たちの力を少しでも削り『ディザステスト』に繋げたいギャングたち。ダークアスリートに洗脳されている彼らに、己を鑑みる判断力はない。試合に勝つということ以上に崇高な事柄などないのである!

「と、とどめ……!」
「おっと、カメラ回ってる? だーっはっはっは! 『ザ・フォックス』様の華麗なフィニッシュブローをしっかり撮っといてくれよなっ」

 金に縁取られた黒の狐面を被り直す燦に、生真面目なアニカは機敏にコーナーに駆け上がって渾身の技のセットアップに入る。
 もはやその勝負は決したかのように見えた――その一瞬、最初にドロップキックを受けたギャングがばら撒いたカードの一枚を、乱入した別のギャングが拾って投擲する……!

「ゲェー状態異常は石化だ!?」
「あなた、それ、自分から受けに、いってるでしょう……?!」
「それがプロレスの醍醐味だろ? って、思ったよりキツいキツい……ぐぇ……!」

 燦には重量を重くする石化の、アニカは逆に重量を羽のように軽くする状態異常が引き起こされる。
 手が、足が、その呪縛がじわじわと広がっていく。末端部分から石化は進行していくようで、瞬きする間に燦の手脚は半分ほど石になっている。体表面だけでなく体内も変わっていく。硬質化してなおある種の調度品のような美しさを保っているのは、それが初めてではないという経験ゆえか。

「や、やめろ……ぐ……ぇ……!」
「えっ、まさか……くぅ……っ?!」

 アニカはポールの近くから出た足や触手に弾かれ、上へ上へと吹き飛ばされる。重量を失った体は平衡感覚を喪失してまともに防御できない。

「で、でも、軽いからこそやりようは、あるんです……! 空は、|わたし《オラトリオ》の、領域、ですっ」
「バカな、空中で回転して……?!」
「この動き……あなたに、見切れ、ますか?」

 身軽になればなるほど加速する、リング上空にある照明にまで蹴られた勢いで到達すると、ぐるんとそれを掴んで鉄棒の要領で一回転。そのまま錐揉みに捻りを加えつつ、急加速しながら鋭い飛び蹴りをお見舞いした。飛翔し天をステージに舞踏する、天使の技として申し分ない威力である。
 攻撃はそれだけに止まらない。調度品のようにリングの隅に佇んでいた物言わぬ石像が、ガッツポーズの如く両腕を掲げて、それだけでも驚きなのに、その剛腕をリングに上がってきたギャング片っ端に叩きつける……! 鈍い音と共に悲鳴を漏らすギャング。

「ぐふぇッ?! なぜ、うごけ」
「聞いて驚け! 改造したのさ、アタシがアタシ自身をな! おまけのラフファイトをくらいなーっと!」

 何処からか引き寄せたパイプ椅子で滅多打ちにしてKOをもぎ取ってみせる。自称ヒールの仮面レスラーの本領は、騙し討ちと凶器攻撃といったところか。アニカも、己が過去の経験から頭ごなしに卑怯だなんだとは言えないためか複雑な表情で。
 ともあれ、試合において、こと真剣勝負において、公平であろうとなかろうと、意外性というファクターは時に思わぬ力を発揮する。
 そして、燦とアニカの即興のツープラトンは意外性の最たるもの、ウルトラCと言っていいだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

菫宮・理緒
ビブリオバトラーツさんとは縁も義理もある!
ということで、千愛さん、助けに来たよ!

意気込んできたのだけどもー……。

相手はデュエリスト……?
カードからクリーチャー(翼の生えたミミズ状)を召喚されると、
虫であることに足が竦んでしまい、さらにスピードで翻弄されちゃって、
全身をぼこぼこにされると、前回『目覚め』させられちゃった属性もあって、
虫への嫌悪感も、打撃も、全てが快感のスパイスになり、乳首を勃たせ、蜜を垂らして感じ始めてしまうよ。

膝が震えだしたら、身体に巻きつかれ拘束されて、
締め付けながらの全身愛撫に身体は完全にできあがってしまうけど、
快感に震えながらも、なんとか絶頂だけは我慢するね。

だけど、それでも相手の責めは容赦なく、全身をがっちりと締め上げ、
息も骨も限界を迎えながら、股間を容赦なく擦り上げられ続けると限界を超えてしまって、
我慢していた分もあって、思い切り絶頂し続けてしまうね。

それでもギリギリ意識を失う寸前に偽装錬金でカードを書き換え、
クリーチャーを消し去り、デュエリストに一撃入れるね。


篁・綾
アドリブ歓迎。鼻フック、膨体、ふた以外は概ねなんでも可。
衣装はイェーガーカードのエロニンジャスーツにて。

(ちょくちょく組み合いでひどい目にあっている気がするがなんとリングに上がってきた)
そう、使えるものがあるなら好都合ね!
基本飛び技と【空中戦】主体。【残像】も駆使し、機動力で相手を追い回しましょう。打撃には【カウンター】を入れつつ、所謂見栄えのする派手な動きで立ち回る。
(なんてやっていたら奇襲気味に召喚された大柄な召喚クリーチャーに掴まれ、フルネルソンにしばらく固められ、のちスープレックスでマットに叩きつけられる(そして大股開きの姿勢のまま若干固められる)。更にそのまま拘束され、羽交い締めにされた状態で(よく目立つ胸元への)水平チョップの連打を貰う。が、貰っている間に指定UCを発動。召喚体を操り脱出しつつ、【グラップル】を駆使し、同時に操った召喚体の力も利用しつつ、少年ギャングへ召喚体をぶつけた上でドロップキックを見舞う。そして転がした上でトップロープからヒップドロップをキメる)



「あ……あっ、そん、な……ぁ、わたしっい……やぁあッ……!」
「あぎゅっ……! ん、ひぃぃぃっ……!? 私をこんな……ングぅっ!」

 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)と篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)はリングの上、対面し合うように足を抱え、いわゆるフルネルソンの姿勢で辱められていた。片や翼の生えたミミズがより集まったかのような、片や筋骨隆々のゴリラじみた大柄な召喚クリーチャー。唇を噛み締め、涎と脂汗とをリング上に零しながら、懸命に悔し涙を堪えている。
 前回『目覚め』させられちゃった属性と快楽を繋げて悶絶してしまう仮想潜航士。
 組み合いで散々な受けた仕打ちから興奮を覚えつつも、闘志揺らめかす桜の剣士。
 思った以上に傑作なものが見れて、ギャングたちはげらげらげらと嘲笑を降り注がせた。
 そのことを堪らなく悔しく思いながらも、高まった激痛は苦悶に満ちた悲鳴という形で発散され、二人は、明確に、下半身の感覚がなくなるぐらいに締め上げられ、達してしまったことを理解する。
 理緒の瞳に涙が浮かび、綾は泣きこそしなかったが、例え用のない絶望に支配された表情を顔に張り付ける。

 ――ぎりぎりぎりィ……めリ゛ッ!

「がはっ……!!」

 身動きの取れない背後から腕が伸び、肘が喉の前に来る状態で左右から挟むように触手が絡みついて理緒の頸動脈を締め上げてきた。人体のような関節がないからこその、完全な拘束状態からの締め付け。赤かかった顔がだんだんと青くなり、急速に意識が薄れていく。
 その無防備な体に追い打ちとばかりに全身をしなる鞭触手が襲いかかる。

 ――ビシィッ! ビシャァァッ! パァァァンッ!!

 牝芯が千切れたような錯覚と、粘膜そのものを打擲される想像を絶する痛み。理緒が触手にどの箇所を重点的に叩かれているかは、言うまでもなく明白だった。
 無防備な秘部、胸先、しなやかな手足、晒された尻。肉体のありとあらゆる箇所に、高速の鞭が雨あられと落ち、みみず腫れを量産していく。
 やがて、さんざん痛めつけられた秘裂がビクビクと震えた。膣口の上にある小さな穴が痙攣を始めたかと思うと、ぷしゅぅぅっと小水と潮の洪水を噴出し、味方である綾に噴きかけてしまう。

 ――プシャァァ……!!

「いやっ……止まってよ、ねぇ゛え゛ーっ……だめ、だ、からぁ……っ! いや……い、やあぁぁぁ……ッ!」
「くうぅ……どこまで屈辱感を与えれば気が済むのよ……」
「余裕そうだな。ならこれでどうだ?」
「えっ……ごはッ!?」

 ――ズドォ!!

 大きく目を見開き、半開きの口から咳に近い悲鳴が洩れる綾。朦朧とする意識が、なんとか自分がスープレックスで叩きつけられたのだと訴えかける。
 ぐるぐると目まぐるしく回る視界の中で、嫌にハッキリと、スローモーションのようにゆっくり迫る、巨漢クリーチャーの次なる一撃が撃ち込まれてしまう。
 お股がぱっくりと開かれた所謂まんぐり返しの体勢でかかげ上げられ、じっくり痛めつける形で拘束されていた綾にダメージを逃す手段はない。助けを求めようにも理緒はさらに雁字搦めに締め付けられて脱出は不可能だ。……受けるしかない。悲壮な決意をもって衝撃に備え目を瞑る。

 ――ボギョ!

「うぇ……ハアッハアッ、げほっ、……クうぅ……痛ぅ……!」

 脂汗が滲み出て、視界がブレる。
 覚悟していても耐えられるものではない。猟兵だとしても鍛え上げれる限界を超越している。目立つ胸元に手刀一閃、心臓が悲鳴を挙げているかのような、悶絶するほどの苦しみが絶え間なく押し寄せ、羽交締めにされていなければ立っていることすら辛くなってきた。
 内臓を直接叩かれたかと錯覚する鈍痛は綾を絶望させるには十分すぎる威力で、ずきずきと主張し続けて止まる様子を見せない。

 ――ドゴッドゴッドゴドゴドゴ……メリィ!

「あぐっ!? がっ、ああっ!」

 乱打。
 追い詰められた綾の元に、クリーチャーの無慈悲な拳が立て続けに浴びせられる。忍びの装いに包まれた豊満でしなやかな体が、左右に跳ね、倒れかけたところを拳によって無理矢理起こされる。

「さっきは随分と見せびらかすように揺らしてたよなあ? その馬鹿みたいにデカい胸をよ!」
「こうすればもっとデカくなるか? おら腫れるまでぶん殴ってやるよ降参なんかさせねぇぞ!」
「ぐっふ……?!」

 勢い余った右拳が深々と突き刺さり、押さえつけられている綾の体が持ち上がった。胃の奥からせり上がってくる耐え難い嘔吐感。かろうじてそれを堪えたが、代わりに意識が遠ざかっていく。
 トドメとばかりに勢いよく右足を前に踏み込み、右腕を振り抜くような勢いで綾の首筋への水平チョップ。

「ゲホぉ!? ギ……ぐっ、はな……ぎっ、痛ッ゛……あぎいッ!?」

 眉間にしわを寄せ歯を食いしばり、目の端から涙をこぼし、切った唇から血を垂れ流し、胸と首と鳩尾とを次々襲う激痛から逃れようと頭をぶんぶんと振る姿は、もはや悲惨を通り越してあまりにも無様で滑稽に見えた。

「助け……ない゛、ど、ねー……あギッ?! や゛……め゛」

 ――じくじくっ……がりッ! メキメキメキッ……べぢいッ! ばぢい! ばちん!

「ぐ、げ……?! むしィ゛ッ、いやあっ?! ひ、あ゛あ゛あ゛〜ッ!!?」

 下腹部に響く触腕の衝撃。大嫌いな虫が理緒のコスチュームの中に入り込み肌の上を這いずり回るだけでなく、正面と突き上げるような触手殴打が交互に打擲した。
 すでに限界を迎えている股間部は敏感になっており、虫への嫌悪感も、打撃も、全てが快感のスパイスになり、気持ちとは裏腹に胸先の桜桃をおっ勃たせ、蜜をとろとろ垂らして感じてしまう。
 触手鞭がしなりつつ、リング上に奏でるのは、細身で引き締まった太股や秘所に食い込む音のみ。桜桃や牝芯を押し潰しては、肉ごと弾ませるリズミカルなその音が羞恥を加速させる。
 ビブリオバトラーツに縁近い猟兵だからこそ、その団長が、悔しげに、歯噛みし食い入るような視線で見つめているのがわかる。朦朧としてダメージの残る頭にそれがはっきりわかるせいで、まるで全身に負う苦痛が愛撫のように感じられる有り様である。

 ――ボグッ……!!

「っ……や、ァッ?!」
「か……はッ!? ぐ……ぎ……」

 ――もはや何度目の蹴撃だろう。
 見開いた理緒と綾の目には、悍ましい怪物が折り曲げた、膝によく似た部位が、それぞれ己らの股間部に突き刺さっているのが見えた。股間部に激痛が疾り、息が止まる。ギャングが手を放すと同時に崩れ落ちた二人は両手で股間部を押さえながら身体を震わせることしかできなかった。
 飛び技を駆使し風のように舞って翻弄する俊敏さも、縁も義理もあると意気込み果敢に乗り込んだ義憤も、単純な惨苦と暴力的な嘔気には勝てない。腹内の――子部屋が直に焼かれるような、未知の悔しさに打ち震えて、顔は俯くことなく真っ直ぐ上方へ向け、涙目で敵を睨み付ける。

 ――メ゛リ゛メ゛リ゛ッ……どぢゅッ!

「ああんッ! うわあああッ……!?」
「くッうううッ!?」

 股間部から伝わった新鮮な衝撃は、下腿を駆け抜け、上腿にまで達し、股関節をも痛め、恥骨にビキビキとヒビ入る感覚を訴えかけてくる。もはや下腹に力を込めることも難しい。

「うっ……んぐっ……! い、き……があっ……!」

 理緒の細首には触手が十重二十重に巻き付いて離さない。ビキビキと筋肉が悲鳴を上げる。顎下から胸元にかけて千切れてしまいそうだ。

「む、ぐ……! ぐっ……! あぐっ、がっ……!」

 極められたそのままの体勢で逆さ吊りに持ち上げられる。頭に血が上るのと空気が不足しているのとで、肉体と精神の両方を責め苛む拷問に、理緒は傍目にも明らかなほどの早さで消耗していく。そのままフリーになった触手でぐちゃぐちゃの股間を弄られようものなら、嫌悪感で全身に鳥肌が立つ。

「(気持ち……悪いん……だよ、もうっ……!)」

 逆向きに涎が伝う理緒の唇を、触手が舐めとるように這い回る。ドス黒い感情が湧いてくるような気色の悪い行為なのに、理緒の体は、顔が土気色になりかけたあたりで、あろうことか快楽を感じ始めてしまう。逆さ吊りの極められた開脚体勢で、ほぼ無重力なくらいに激しく擦り付けられながらともなれば快楽を逃す吐口もなく、ほどなくして。

「ぼっげえええっ……!?」

 ごりごりと下腹部を抉られる感触と、天地逆転した気持ち悪さの狭間の中で、理緒は無様な絶頂を繰り返す。ぶちゅっぶちゅと音が聞こえるほどの乱暴すぎる愛撫に、舌を突き出して理緒が慄く。
 酸素が欲しい。口を開けると触手を捩じ込まれそうで、少しでも抵抗したい一心で口をなんとか閉じようとするも、それを嘲笑うように触手が舞い踊る。

 ――ぐりりっ……!

「いッあああァッ〜?!」

 着衣ごと、グリグリと触手を捻じ挿入れてきた。柔らかな秘肉が、嬲られ、穢されていく感覚に、声が漏れ、喘ぎを発し、容易に絶頂させられる。

「ひ……ぐ……ン……ふ〜ッふゥ〜ッ!?」
「今……助け、ぐフッ」

 ――ずんっ……!

「がっッ、はっ……!?」

 綾の顔くらいはありそうな大きさのゴツゴツとした鉄拳が、無防備な胸部めがけて撃ち込まれる。
 ふわふわたゆんたゆんの、指を添わせれば埋まりそうな水風船の胸が殴られるたびにばるばるんと形を変える。
 鈍痛。鈍痛! 鈍痛!! ベッコリと皮膚が凹まされた感触。開いた唇から涎が溢れたが、飲み込むまでもなく次撃が来る。絶叫。胸先から血の噴水が溢れてきたような錯覚。

 ――ズグんっ……!!

「グ、フ、ふひゅう……ぐうぅぅ~っ……!!」

 殴られる。胸を。
 内臓が押し潰された圧迫感。
 神経の密集した胸先が、唐辛子を塗りたくり引き絞られて捻じられた方がまだマシな痛苦。深く深く臓腑を抉られる。偽りなく衝撃は心臓まで達していることだろう。あまりの連打の衝撃に体内がグリュンッと裏返ったような気がした。
 激痛の発信源である胸元を見つめるだけでその惨めさに屈しそうになるのを、ことさら強く唇を噛む。そんな綾の闘争心を嘲笑うギャングたち。
 ダメ押しに俯いていては表情が見えないと前髪を掴まれ乱暴に頬を叩かれる。ばしんばしんと引っ叩かれれば、汗だか涙だかわからないものが目の中に入って、じわりと視界が滲んできた。

「ギブアップするか? んん?」
「……構造、複写――!」
「……侵せ、侵せ――!」
「ん……んゥ?!」

 ぐしゃりとギャングの顔がひしゃげ潰れる。殴られた、そう思う頃にはローズクォーツのような結晶拳がめり込む。
 遅れて、召喚したクリーチャーが《煌桜侵晶》で幻惑され寝返ったのだと気づくも、手にしたカードさえ《偽装錬金》で紛い物にすり替わっていればもはや現実を疑う他ない。

「たあっ!」
「やりようはある! そう、使わせてもらえるなら好都合ね!」

 かき消えていく触手の群れ。理緒が掻い潜って右ストレートを打ち込む。
 どこまでが幻想で、どこまでが現実なのか、唯一わかるのはギャングがこの一撃でノックアウトされるということだけ。
 トドメとばかりに足を蹴り出すドロップキックを突き込むと、その反動でリング上を跳び上がった綾の、トップロープからのダイビング・ヒップドロップ! 大の字で横たわるギャングたちを文字通り、尻目に、お互いに肩を貸した理緒と綾の二人は勝利を噛み締めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イリスフィーナ・シェフィールド
力とは誰かのために振るってこそ意味があるのです、教えて差し上げましょう。

相手はコードで2m以上の大柄なミイラ男に変身。
不気味な姿に怯まずハリケーン・マグナムで攻撃。
ラッシュからストレートまで反応せずに受ける相手を不振に思いながらフィニッシュ。

ダメージなどなかったように抱きすくめられ相手の纏っていた包帯が伸びてきて腕、足、全身に纏わりついて拘束。
慌てて引きちぎろうとしますが包帯から力の源であるオーラが相手に流れていって脱力感で抵抗できず。
目から下をぐるぐる巻きにされ動けなくなった所で放されリングに倒れ。

相手が自分も使える変身してる間負傷を無効化するコードの使い手と予想しますがどうにもできず。
起こされボディーブロー蹴り飛ばしストンピングなど一方的。
顔を全部覆わなかったのは苦悶の表情が見たかったよう。

抵抗できず嬲られつづけついに意識を手放し……た振りをします。
相手が勝ったと思い変身を解除すると蓄積したダメージが予想以上でそのまま戦闘不能に。
気絶の振りをやめなんとか拘束を破って辛勝。


デナ・マドリク
プロレス、と言うのは経験がありませんが、格闘の技ならば部族で学びました。マドリク族の戦士として、必ずや勝利を!

赤いビキニに身を包んでリングに上がり、高らかに名乗りを上げて勝負を挑みましょう。容姿は人間とほぼ同じですが、毛のない尻尾が一本生えています。

デュエリストはこちらに合わせ、『アマゾネスの女戦士』を召喚して来ました。相手は力強く体格も上ですが、戦士同士の勝負に負ける訳にはいきません。
まずは正面からの力比べでねじ伏せ(自分からは言わないが男なので、力は見た目以上に強い)、打撃や締め上げで相手にダメージを与えていきます。

ところが劣勢と見たデュエリストは、『巨大化』のカードで女戦士を強化して来ました!
身長が数倍になった相手はパワーも圧倒的。巨大な手足による破壊的な打撃、ただ挟まれるだけで全身が軋む絞め技、圧倒的高所から落とされる投げ技。どれもがあまりに強烈で、手も足も出ません。
それでも懸命に立ち上がろうとする私ですが、ヒップドロップで潰されて。その重さと柔らかさに耐えられず、意識が――。



 周囲からの期待。己という存在を知らしめる、圧倒的自負。部族の威信。勝利にかける想い。
 イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼|スーパーヒロイン《承認欲求の塊》・f39772)は力の意義を語り、デナ・マドリク(星降りのアマゾネス・f41560)はその胸に誇りを宿して、リングの上に凛と立つ。
 対する『ダークデュエリストの少年ギャング』は「骸の穴」の標準戦闘員ながらミイラ男のような巨大な覆面レスラーに変身して、さらに体格もそれに近い不屈のアマゾネスを召喚する。この多彩な攻めで相手を翻弄し、その意気を挫くつもりなのだろう。
 その頑健さたるや相当なもので、イリスフィーナが先制とばかりに放った《ハリケーン・マグナム》も、デナが横薙ぎに振るった《グラウンドクラッシャー》もいまいち有効打足り得ない。

「な……当たった箇所から順に包帯がほどけて……?! ほ、本体、中身はどちらですのっ?卑怯ですわよ!」
「くっ、振り下ろしてリングを壊すわけには……ですが! マドリク族の戦士として、この程度で挫けません! 必ずや勝利を!」

 この辺りはスポーツマンとしての経験値の差が如実に出てしまったというところか。技を繰り出してそれがうまく決まらなかった消耗感は、どうしても拭い去れないものである。手応えがなくてもダメージはある。あるはずだ。そう信じて攻め続けるしかない。攻めの手を緩めることは、敗北必至。
 ならば更なる連撃を、と風を両腕に纏い、両手斧「マドリクアックス」を威嚇するように振りかぶる二人であったが――!

 ――ガッ!! メリメリ……メキッ!

「ぐうっ?! しま……ッ!」
「かあ゛ッ……が、ァ゛……ッ!」

 余分な焦りが攻撃の甘さに繋がったか、続けざまに放った技を躱され、カウンターとばかりに首を掴み上げられる。包帯のしなやかさがイリスフィーナの、万力のような握力がデナの、気道をこれでもか! と締め付ける。痛みよりも息苦しさが一瞬でやってきた。
 当然、戒めを外そうともがき抵抗するがまるで敵わず、腕1本だけで体を持ち上げられてしまう。
 そこからは一方的な試合展開だ。
 イリスフィーナには纏わりつく白い呪布が柔らかな肢体を縁取るようにして、優しげな愛撫にも似た締め付けがじわじわ体力を奪っていく。

 ――ギリギリ……ギチっギチ……ッ!

「んくぅ……っ、イヤ……ッ、ひぁっ、む、ぐ、ふ、息が……ぃ……ギっ」

 現に力の源であるオーラがミイラに吸い取られているのだ。刻一刻と抵抗の力が奪われていく。もっともその力をクリーチャーの体力にそのまま変換できるわけでもない……はずだ。
 脱力感でぼーっとしていく頭の中でなんとか必死に抵抗策を模索する。
 悶声を押えようとして、できていなかった。己を軽んじられることを過剰に恐れるイリスフィーナは、恐怖する。己が不当に辱められることを恐怖していた。それはギャングにもよく、よくわかっていることであった。弱点を突くのは普通だ。
 ゆえに、ぐるぐると腕も足も、目元に至るまで縛られていく合間に、より丁寧に、よりいやらしく、徹底的な敗北の準備を整えられてしまってう。
 豊満な胸元、肉付きのいい太腿、ボディラインにぴっちり纏わりついた包帯で縊り出された媚肉がぶるぶる痙攣し、全身から汗が染み出てきて、甘やかな女の香りを漂わせるほどだ。

 ――ギリギリギリギリ……ぬぢゅ、しゅにしゅにしゅに……!

「ぐ……ぶ、ふ……ぐ……息が……ぁ、こひゅー……はなし、なさ……げほ」

 汗ばみ、鳥肌立って泡立つ全身を擦り上げられ、直接割れ目をしゅっしゅっと上下に舐られ、鼠径部をこれでもかと激しくなぞられて、会陰をくにくにくにと揉み込まれる。胸も揉みほぐされるばかりでなく、引っ張られ捻られ、上下にゆさゆさと動かされて玩具さながらに弄ばれてしまう。
 助太刀したいデナも、対するアマゾネスがギャングのスペルカードの力を借り受けみるみるうちに巨大化し、元々の巨躯がリングに収まらないほどの怪巨体に変貌してしまった。
 デナは果敢に攻めかかるも、斧を取りあげられ圧倒的高所から投げ落とされるだけで全身を襲う衝撃に目を白黒させてダウンしてしまう。

「ぐっううう?!」
「ほらもう一丁!」

 肥大化した剛腕で蚊のように両挟みにし、振り回してポストに叩きつける。
 信じられないような打擲音が観客席の端にまで反響した。遅れてデナの悲鳴が木霊する。部族での晒し上げ、公開拷問のような凄惨さ。もはや格闘技の範疇を超えている。そのまま首と胴体を摘んで少し捻るだけで、生理反応で主張する突起や「らしさらぬ」違和感のある箇所を見つけては擦るだけで、全身の骨と筋肉が例えようもない苦痛が全身を迸る。

「ひぃ、ぁ、あぁっっ、そこ……は……、ちが……っ、ちがっ、あ、ぐぅっ……!」
「この感触……そうか! このアマゾネスの面汚しめ! こうなったらタダではノックダウンしてやらないからな!」
「あぁ゛ぇ、あ゛、ぁ……っ、くぉ゛ぉ……っ?!」
「なんてひどいことを! この卑怯も、ぐ、むぐううぅ!」
「フン、お前もああいうダメージの方がご希望かな?」

 イリスフィーナの目が見開かれた瞬間、雨霰とストンピングが降り注ぐ。
 その瞬間に彼女は直感した。目は口ほどに物を言う。だから、彼らはイリスフィーナの苦しむ顔が見たくて、顔だけは、その目だけは、日の目に晒していたのだと。リングから降り注ぐ眩い光が照らし出す、端正なそと顔を全部覆わなかったのは、苦悶の表情が見たかったからなのだと。
 事実、激しすぎる攻めは彼女を白目を剥かせる寸前まで追い込んでいく。意気を吸い込もうとして逆に激しく血反吐を吐き出してしまう。

 ――めぎんっドスッドスッドズンッ……!!

「げ、えっ……!? ごほごほごぶっ……おやめ、なさ、げほッ!?」

 反抗するな、動くなとばかりにぐりぐりと捻じられる。べきばきとすり潰されていく。柔らかな腹部と、胸と、鍛えようもない箇所に踵が深々突き立った。
 小刻みに痙攣するばかりのイリスフィーナの首に、再び巻きついた包帯が鳴動する。

「う、ぐっ……!? ぐえええええっ……!」

 首を吊られて無理やり立たされた。

 ――どごっ!

「がっ……な、にを……?!」
「こっちの方をお望みなんだろ?」
「ぐっ、うっ……わたくしは……こんな……オ゛ッ?!」

 握りしめられた拳が、イリスフィーナの無防備な腹部を抉った。
 くびり出された肢体の、肉の柔らかさを布先で堪能するように、ぐりぐりと捻じり込む。
 女神に捧げた神聖な体が、呪布越しに、オーラを搾り取られ防御を剥ぎ取られながら、ボディブローとヤクザキックで丁寧に、余す所なくへし折られていく。もはや彼女を支えているのはヒーローである己は失望されてはならないという確固たる自負のみ。その気概が、チンピラめいたギャングにプレッシャーを与える。高鳴る心臓の鼓動は、単なる威圧感を受ける以上に焦りと消耗を引き起こす。

「がはっ……! けっ、ほ、く……あアっ……!?」
「な、まだこんなオーラが……呪布が外れてしまったか。ん、布の制御が……おい、そちらのトドメを先に!」

 アマゾネスが頷けば、繰り出すとっておきの「トドメ」はさらに尊厳を責め立てる残酷な恥辱技だ。
 赤いビキニコスチュームはずれ落ちかけ、意識も飛びかけている。メッタうちにされてグッタリしたデナをアマゾネスが摘み上げ、コーナーに逆さづりにすると、散々に顔を踏みつける。懸命に顔を上げようとするたびに踏み砕かれんインパクト、目尻には意志に反して涙が浮かんでしまう。

「がふっ、あがぅ!? や、め゛……あぎッ?!」
「そんなふざけたカッコで神聖なリングを……バカにしてんのかい!」
「やめッ、わたしはぁ゛そ……んなつもりじゃ、ちがいばず……ぉギ?!」

 アマゾネスは耳を貸さず、反対のコーナーから突進してボディプレスを浴びせる。巨大化で膨張した全体重の重量がデナに打ち付けられ、デナの身体が弾んだ。
 さらに、コーナーを跨ぐようにして上って股間を踏みつける。

 ――ぐじゃり! どずっどずっ! どじゅ……!!

「女なら急所攻撃されても余裕よねえ?!」
「げ、ぶぅ゛ぅ゛……ッ!? い゛っや゛ぁ゛……ぁあッ!?」

 股関節から内臓にめり込んでくるような疼痛に激しく嘔吐き、桃色の美しい艶髪を振り乱して激しい絶叫を絞り出すことたっぷり五分。
 ようやくコーナーからずるずるとずり落ちてなし崩しに解放されたデナであったが、場外におりたアマゾネスが休憩を許さない。デナのむき出しの両足と弱点の黒い尾をまとめて引っ張り、手綱を握るようにして無理やり捻り上げ、鉄柱股裂きの拷問技を繰り出した。

「何か言ったらどうだい? しっかりおし! これは気付だよ、アマゾネス流のねぇ!!」

 ――ずどんっ……!

「おぎっッ……!? ン゛っぎゃあ゛ア゛ア゛〜ッ?!!」
「オラオラオラ! どうしたさっきまで言ってた戦士の誇りとやらはよぉ!」

 激しい勢いで股間を鉄柱に打ち付けられ、反論しようとも火花が脳裏に瞬いて言葉は断片的にしか聞こえなかった。
 ブリッジしたような体勢のままデナの体が跳ね、その瞬間を見計らって、アマゾネスの筋力が獰猛に唸った。ぐいぐいと引っ張るごとに両の目玉が完全に白くなり、絶叫したまま蟹のように泡を吹く。
 手足から不意に力が抜け、苦悶に任せてリングに五体が崩れ落ちようとした、直後。

 ――ぐいっぐいいいいっ……!!

「はっき゛ゃ゛アアアあああ――ッ!!?」

 気を失うことなど不可能だった。
 再び全力で引っ張られ最大級の負荷が襲いかかる。
 見るも無惨に、鬱血してズラされ引き伸ばされた股関節とチャームポイントの尻尾は、力任せに引き千切られてしまってもおかしくなかった。表情も股ぐらも、心までもが、グチャグチャだった。
 その見苦しい顔と体を存分に観客に晒し立ち上がる気概が折れかけたところで、アマゾネスの巨尻がデナの顔面に叩きつけられる。その重さと柔らかさに耐えられず、ついにマットに意識を沈めた。

「次はお前だ……ん……ぉ?」

 遅効性の毒でも盛られたか?
 ギャングはそう訝しんだ。じわじわ効いてきた、という意味では確かにそうだったかもしれない。が、ぐらりと傾いて倒れる体が訴えるのは最も単純な事実。蓄積したダメージは想像以上に大きかった。シンプルにして、明確な速攻の効果。

「へこたれない……それがヒーロー、ヒーローの面目躍如ですわ……ね」

 満身創痍でも肩を貸し、相手の消耗を誘ってくれた勇敢な戦士を称賛する。
 誰もが、二人のプライドが掴んだ辛勝だと疑わなかった。そして、惜しみない拍手が勝者に送られたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

高千穂・黒葉
【魔法少女】
「ダークレスラーたちには、魔法少女として負けないんだから!」

近接格闘を得意とする魔法少女の姿に変身してリングに登るよ!
わたしの魔法少女真拳、受けてみて!

青龍連牙撃で魔法少女キックを放つけど……

「ふぇっ!?」

敵の手にあるのは、わたしのぱんつ!?
ってことは、今のキックでスカートがめくれたとき、まさか全部みられちゃた!?

うう、こんな格好じゃ戦えないよ……
困惑している隙に相手はロボットの姿に変身して攻撃してきて。

「そんな遅い攻撃、あたらないよっ」

スカートの中が見えないように気をつけながら回避して、
なんとかキックを使わず、パンチでダメージを与えていくよ。

ふう、この調子なら勝てそうだね。
そう思った瞬間。

「へっ!?」

まるで時間が飛んだかのように、いつの間にか敵に両手両足を拘束されちゃってて!?
そのまま無数のロボットアームが服の中に入り込んできて……

「ひゃあああんっ、な、中、だめぇっ」

大勢の観客の前でロボットアームに犯されて絶頂させられちゃって……
敗北したところをさらに何度も犯されちゃった。


多倉・こころ
【魔法少女】
「にししー。黒葉ちゃんのバトルだね☆
魔法少女の敗北シーン、生配信させてもらって登録者数アップだよ♪」

悪の魔法少女に変身して、生配信を始めるね☆

「こころチャンネルを見てくれてありがとー☆
今回は魔法少女とダークレスラーの戦いの生配信だよ♪」

普通に戦ったら黒葉ちゃんが勝っちゃうから、物質転移魔法でぱんつを転移させて、っと。

「おおっとー、さすがダークレスラー!
いつの間にか黒葉ちゃんのぱんつを盗んでたみたいだね☆
黒葉ちゃんのスカートの中、スローモーションでもう一回再生してみちゃうね♪」

うーん、けど、このままじゃ黒葉ちゃんが勝っちゃいそう。
よーし、時間操作魔法で黒葉ちゃんの時間を停止させちゃうよ☆

動きが止まった黒葉ちゃんを、ロボ化したダークレスラーが捕まえたところで時間停止解除、っと。
にししー、黒葉ちゃん、驚いてる驚いてる☆
さらに精神干渉魔法で、黒葉ちゃんの感度も上げちゃうね♪

負けちゃった黒葉ちゃんが犯されるところをじっくり生配信して♪

「こころチャンネル、番組登録よろしくね☆」



「魔法少女の敗北シーン、生配信させてもらって登録者数アップだよ♪」

 にししーとほくそ笑む多倉・こころ(悪に堕ちた魔法少女にして動画配信者・f41182)。
 同じ黒猫ノワールと契約した高千穂・黒葉(黒猫ノワールと契約した近接格闘型魔法少女・f39170)と共に、興行に乗り込み、裏方としていそいそ撮影機材を準備していた彼女に「ビブリオバトラーツ」団長は覗き込むようにして問いかける。

「げっ」
「……おや、おや? これは自前の撮影機材ですか。なるほど、研究熱心ですね。確かにストレートに勝った時よりも負けた時の方が遥かに収穫は多いもの。どうぞ! できれば他の試合も記録していただけると助かります」
「あーいや『こころチャンネル』はそういうのじゃ、あっははは……」

 ほっと胸を撫で下ろす。団体の進退が決まった大事な試合で、己のことしか考えていない自己中極まりない悪堕ち魔法少女だとバレたら、この場を摘み出されかねない。
 なんとか口裏を合わせ、気を取り直してピントを合わせる。
 こころが狙うは黒葉の無惨な陵辱と敗北シーンのみ。それも「登録者数」という実利と自己顕示欲を満たすためだけという徹底した小悪党ぶりである。当の本人は「黒葉ちゃんがやっぱり撮れ高一番なんだよね☆」とお気楽なものだ。
 ぱっと変身して実況席のマイクを掻っ払ってくると、暴走し始める。

「こころチャンネルを見てくれてありがとー☆ 今回は魔法少女とダークレスラーの戦いの生配信だよ♪ あっ常連さんいつもありがとう☆ 投げ銭ありがとうございま〜す♪」
「ダークレスラーたちには、魔法少女として負けないよ! 魔法少女真拳の連続攻撃、うけてもらうんだからっ!」
「てちょっとちょっとアセアセ! 速攻で黒葉ちゃんが勝っちゃうから! も〜こっちのことも考えて欲しいよね? 視聴者皆さんはどんなピンチをお望みなのかな? ふん、ふんふん」

 一方リング上では始動技の蹴りをお見舞いしようと黒葉が身構える。
 なるほど素晴らしい臨場感。これは採用だ。そしてこの勇敢さが後々の悲劇を彩るスパイスになるのだ。視聴者が求めるのはすなわち落差、ジェットコースターのように乱高下するスリルを求めている。
 こころはそんな考えを巡らせながら試合の様子、そして画面と再びリング上とを、視線を行き来させてぱちんと指を鳴らす。

「なにっ?!」

 『ダークデュエリストの少年ギャング』は、リング上で素っ頓狂な声をあげる。蹴り技に驚いたわけでもなければ、乱入されたり不意のダメージに反応したわけでもない。その手をクロスさせガードしようとした矢先に、事件は勃発した。その手には見慣れないひらひらとした布が握られていたのだ!

「おおっとー、さすがダークレスラー! いつの間にか黒葉ちゃんのぱんつとか下着もろもろを盗んでたみたいだね☆ 黒葉ちゃんのスカートの中、スローモーションでもう一回再生してみちゃうね♪」
「ふぇっ!?」
「はっ……? うわっなんだこれは気色悪い!」
「えっ、あっ、ああっ?!」

 突然の事態に困惑するのも無理はない。「黒葉は試合に集中するにゃ!」とノワールが、本心はともかくとして言葉は表向きにそう声掛けして、リングの外に捨てられてしまった下着の回収に赴く。
 仮に回収できたところで試合中に再び着衣できるわけでもなし、黒葉は半狂乱の状態で呆然とした様子になってしまう。繰り出すパンチもぺしぺしと威力がない。片手で胸元や下腹部を庇いながらの攻撃など、威力なんて無に等しい。

「ってことは、今のキックでスカートがめくれたとき、まさか全部みられちゃた!? ううっ、どうしよう……」
「そんなことを心配してる場合か?! この変態女が! リングを侮辱する変態は排除してやる!」

 呆れていたギャングがいよいよ怒り心頭に発して掲げるのは一枚のカード。巨大なロボットアームを備えたマシンタイプのクリーチャーだ。

「へ、変態なんかじゃないよ! で……でもこのメカ、強敵みたい……おねえちゃん、わたしに力を貸して!」
「うーん、勇ましい! けど、この勢いのままじゃ黒葉ちゃんが勝っちゃいそう。勝たれると困るんだよね、撮れ高が♪ よーし……」

 ずんぐりむっくりとした巨大なロボットクリーチャーと、機敏さは半減以下だが有効打も打てない黒葉。組み合うこともなく、大技が放たれることもない。ジリジリとせめぎ合いこそすれ本質的には塩試合もいいところである。
 痺れを切らしたこころは次なる作戦を結構する。彼女にとっては己の動画こそが至高! どれほど他者の尊厳や試合そのものをめちゃくちゃにしてしまってもお構いなしなのだ。

「ダークレスラーさん! 今からチャンスタイム到来のお知らせ☆ ぼっこんぼっこにしてあげちゃってね、『こころチャンネル』の再生回数と登録数のために♪」
「あの目立つ女は、な、何を言ってる……ん?!」
「……」

 先ほどまであれほど頑なに守りを固めていたにもかかわらず、今度は無防備な状態で微動だに静止ししているリング上の対戦相手。もちろんギャングは手を下してはいない。急所をぺろんと丸出しにした「辱めてください」と言わんばかりのポーズと、真剣そのものの表情のミスマッチ感。絶好の動画撮影チャンスとしたり顔のこころ。
 これこそが《闇魔法少女変身》したこころのなせる技である。
 先ほどの転移魔法は序の口で、周囲の時間を止めれば誰にも気付かれずに黒葉をあられも無い姿のまま放置することができ、逆に止める時間の対象を黒葉に限定すればロボ化したダークレスラーが捕まえるお膳立ても、こうしてできてしまう。

「何が何だかわからないが、これでも食らえッ」

 ――ドォォン……!

「手応えがない……壁でも殴ったのか?」
「あっいっけなーい☆ 時間止めてるから反応がないんだった、これじゃ動画映えしないから、とっとと拘束しちゃった方がいいカモー?」

 機械の出力を全開にしたパンチ、辺り一体が揺れ動いたかと思うほどの衝撃だった。
 ……ノーダメージではない、のだろう。静止した時間の中でも、目はきつく閉じられ、口からは小さな呻き声が漏れるように細まりで、露出した胸や股ぐらが痙攣したように小刻みに震えている。
 鵜呑みにする道理もない。一応もう一発、と、機械関節がはち切れそうになる程強く右拳を握りしめ腕を後ろに引いていた。

 ――ドゴォ!

 音を置き去りにせんばかりの凄まじい衝撃。そこで四肢をしっかりと機械腕で雁字搦めに拘束し、それを見計らってこころは時間停止を解除! すると――!

「へっ!?」
「はーい注目注目☆」
「あギッ?! あぁぁ゛ぁ゛ァ゛〜ッ!?」

 自分から急所を丸出しに曝け出していた間抜けなポーズから、くの字に体を折り曲げて拘束された四肢を捻じらんばかりにびたんびたんと胴体を揺らす。コスチュームの残りはほぼ弾け飛び、衝撃で今にも爆発しそうになっているのを理解の追いつかない頭で強制的に「わからせ」られる。

「きぃゃぁ゛あ゛あ゛あッ!?」
「なんだコイツ、急に反応して……?」

 さらに精神干渉魔法で、黒葉ちゃんの感度も上げちゃってあるからね♪ と、こころは周囲に聞こえないようにルンルンと上機嫌だ。
 痛覚も、性感も、魔法で常時の十五倍から二十倍程度に引き上げている。空気がそよいでも騒つく感覚に身悶えすることだろう。
 そのまま機械腕は変態に厳しい罰を与えるべく、さらに本数と可動域を増やして迫り来る。「ひゃあああんっ、な、中、だめぇっ」と泣き叫んで許しを乞うても、それすなわちギブアップ宣言にはならず、ひんひんと喘がされてしまうことだろう。
 敏感になった箇所、充血して今にも弄って欲しくてたまらない卑猥な急所、じゅくじゅくと潤んだアソコ……観客が、動画視聴者が、食い入るように見つめる中で、中継モニターをジャックしたこころはここぞとばかりにこう締めくくるのだ。

「続きが気になる、よね? 続きは〜……こころチャンネル、番組登録よろしくね☆」

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

久井崎・しいな
【ママのみ暴力希望・全体を通しておもらしはNGで】
一対一のバトルということもあって、しいなは観客席で応援にまわる。
「ママ~がんばってねー」
『任せて頂戴、しいな。ママは負けないわ。』
シスター服のママ。フランケンシュタインの彼女は
並外れたパワーを持っている。

ママはその並外れた力を用いた投げ技を駆使する戦術で敵を撃破していく
だが相手も屈強な体を持つクリーチャーを召喚し、その力を借りて『ママ』を追い込んでいく。

休憩無しでの連続バトルが続いたことによって、極限まで追い込まれたママは、ついにクリーチャーの力を借りた相手に強烈な一撃を腹部に食らってダウンしてしまう。

後は観客に、団長に見せつけるように徹底的にママは叩きのめされていく。
屈強な両腕でママの胸部を握り潰したり、何度も膝に叩きつけるバックブリーカーを打ち込んでいく。

しかし、力尽きそうになったところでしいなの
「まけないでー!!」
という大声に再び意思を取り戻して
渾身の一撃を食らわせる。

戦いの後、
ボロボロのママの体をしいなが修復していった


ユーフィ・バウム
さぁ今回もリングが舞台ならば
レスラーの姿にて戦いましょう

オーバーロード!
リングインの際に身を包むスモークが消えた時には
【真の姿:蒼き鷹】として参上ですわ
さぁ試合開始をしましょう

現れるクリーチャーは野生動物や獣人、さぁどんな相手です?
パワータイプなら望むところ!
耐えきって勝つはレスラーの本懐
胸を張りしっかりと立ち相手の技を避けず、受けていきますわ

くぅぅっ……!
ええ、パワータイプの攻撃は堪えきれず
悲鳴を上げることもあるでしょう
ダウンだって奪われるかもしれません、けれど!
倒れても立ち上がります、すかさず反撃し
力強くアピールして声援を集めます

そう、激戦とてこれは試合なのです、
盛り上げなくてなんとしますか!

今度は私の番ですわね!
クリーチャーを功夫を生かしたドロップキックで吹っ飛ばしたら
少年ギャングに絡みつきコブラツイストを狙います
グロッキーとなったところを
必殺の《蒼翼天翔》で
マットに叩き込み粉砕しましょうか!

相手をマットに突き刺したら
駄目押しにヒップドロップを
落とし3カウントを奪いますわね
失礼っ♪



 もうもうと焚かれるスモークの中から現れた、青い炎を纏う正統派レスラーと、その後ろをおずおずと歩むシスター服の女性。
 待ち構える『ダークデュエリストの少年ギャング』を指差し、闘志を燃やして啖呵を切るのはユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)である。一方トラッシュトークを浴びせかけられ戦々恐々とするも「ママ~がんばってねー」の一声で奮起した様子なのは久井崎・しいな(ママの花嫁・f35434)のママだ。フランケンシュタインの彼女がリングに上がった方が適任だろうという判断らしい。

「さあお相手いたしますわ!」
「しいな……私の戦いぶり、見ていてね」

 耐えきって勝つはレスラーの本懐、とばかりにどっしりとした構えで殴打を受けていくユーフィ。一殴られれば二殴り返し、二殴られれば三も四もカウンターをお見舞いする。びしばしと肉が打擲される音が観客席にまで響き、その迫力たるや大いに周囲を熱狂させる。ママの動きはさらに地に足ついたムービングだ。兎にも角にもギャングたちも攻撃には接触が不可欠。その接触を待って、次から次へと放り投げていく。リングの外へ、片手で弾き出す膂力。そのダイナミックさは視覚映えする。
 なるほど、小生意気な助っ人たちはどこまでも鬱陶しい。『ディザステスト』は控える手下たちに高らかに下知すると、屈強な体を持つクリーチャーを召喚させる。野生動物や獣人、怪獣、いずれもパワータイプばかり。加えてギャングたちも逐次投入される。物量作戦に打って出たのは火を見るより明らかであった。元より『ディザステスト』からすれば手下もまた洗脳で数だけ揃えた手駒に過ぎない。多少消耗しようと最終的に己という絶対的な正義が立っていればいい。
 受けて立つ、とばかりにユーフィはばきぼき拳を鳴らした。

「腕が鳴りますわね」
「フン、嬢ちゃんたちよ。その余裕いつまで持つか見ものだな」

 そこからは語る言葉もないほどのぐずぐずの泥試合。自分たちが倒されそうになればクリーチャーを残して交代し、ひたすら姿形の大きく、パワフルな怪物たちをけしかけてくるギャングたち。屈強な体。受けるにはあまりに強烈な威力。生身で受けるには手酷くしんどいハードパンチャーたちの攻撃を、ユーフィとママは受け続ける。
 受けて反撃して、受けて反撃して、受けて受けて受けて反撃して、受けて受けて受けて受けて、受けて反撃して、それから受け続けた。

 ――ズンっ……!

「ご……ほっ」

 今ひとたび、拳から強烈なパンチが放たれると、ママの腹部に深々と突き刺さった。
 腹を打たれたママは口から涎を散らし、鉄拳が腹にめり込んだかと思った次の瞬間には、もう吹き飛ばされていた。リングに頭を強打してようやく止まる。

「がはっ……! ぐっ、あっ……?!」
「隙ありだぜ、オラァ!」

 そしてそんなママに向けてクリーチャーが猛撃する。毛むくじゃらの足が見た目にそぐわない素早さで動き、ママの股間を狙う。コーナーに体を預けている上に、まさしく立ちあがろうと力を入れて踏ん張っており、咄嗟に動ける状態ではない。一時的なダメージのショックで視野が狭くなっており、反応が遅れてしまったのもある。結果、クリーチャーの蹴りは完璧にママの股間を捉えた。

 ――バギィ! メリメリ……ギュリッ!

 股間に直撃を受けたママの体が一瞬浮き上がると、力が抜け、ぺたりと座り込んでしまう。空いている手は痛む股間を抑えていた。大きな目は苦しげにぎゅっと閉じられ、顔は俯き、目尻には涙の粒が浮かんでリングへ落ちていた。

「くっ……ぐあ、う……し、いな……」
「あ? うれしい? ならとことんいたぶってやるよ!」

 ――ドシッ! ズドゥ! メキメキ……ドゴォ!! バチン!

「あぎっ、ふぐっ!? あああ〜ッ!」

 興奮したようにクリーチャーたちが闇雲に手足を無防備なママへ振るい始める。胸部を庇えば、痛みに耐えることに必死で無防備なママの鳩尾にサッカーボールキックがめり込む。逆に下腹部を庇おうとすれば迫り出した胸や古傷は残るがしなやかな手足は格好の的だ。秘部、胸、手足、尻――。女性的な部分は躊躇なく、むしろ徹底して狙うことだろう。肉体のありとあらゆる箇所に、打擲が絶え間なく落ちる。
 挙げ句の果てには屈強な両腕でママの胸部を握り潰し、痕が残るように捻り上げた。

「あくっ! う、ぐっ……! くう……かはっ! ちが、あっ、ああああ〜ッ?!」

 ――ギリギリ…‥ギリィッ!!

 ママはとりわけ大きく絶叫する。
 やむなく助太刀に入ろうとクリーチャーの押し寄せる波を越えようとするユーフィ。そこに致命的な隙が生まれることを、焦ったユーフィ自身はすぐに身をもって知る羽目になる。

 ――ゴッ……!!

「くぅぅっ……!」

 駆け出そうとした瞬間の顔面をぶち抜く強烈なドロップキックで逆に端に吹き飛ばされ、リングを転げるユーフィ。距離を無理やり取らされただけでなく、むざむざ顔を蹴られてしまった屈辱感。

「よくも、やってくれましたわね! 倍返しにしますわよ!」
「口先だけがよ! そこであいつがボコボコにされているのを見てるがいい」
「ママーっ! ま、ママーッ!?」

 いくら叩き潰してもゾンビのように立ち上がるママが、クリーチャーたちの息つく暇もない凶悪な連続攻撃に両脚をガクガクと震わせ、精一杯の力を振り絞って立つのが精一杯。
 万全の状態なら負けるはずのない相手に手玉に取られ、ついにはもう立てなくなるまで叩き潰してからの、その背中がメキメキと逸らされていく。
 いわゆるアルゼンチンバックブリーカーで両肩に担ぎ上げられてしまったのだ!

「あ゛あ゛ァッ゛があ゛あ゛ぁ゛……?!」

 首でママの背中を支えながらその脚をガッチリ固定し、顎にかけた腕を強烈に絞る! そのまま身体を完全に反り上がらせたママを軽々と担ぎ上げ、何度も反り上げて徹底的にいたぶる。

「あがああぁぁ〜っ!?」
「このまま膝に叩きつけてやるぜ!」

 ――ボギョ……ンッ!!

「ぉ……あぁああぁ?! あ……ぁぁ、ぁ……っ」
「へばるなよ? 何度でも打ち付けてやるぜ」
「ま、ママ……」

 呆気に取られるユーフィを現実に引き戻す、強烈な一撃。ユーフィの首元がクリーチャーのかぎ爪でガッチリと捉えられると、そのまま一気に真上に担ぎ上げられ、今度は急転直下、真っ逆さまに振り落とされるいわゆるチョークスラムが決まる。

 ――ドゴォ!

「がぁはッ?!」

 後頭部を強かに打ち付けてしまった。重力、重量! のしかかってくるクリーチャーと、自身の全体重が己の喉を強烈にへし折るように圧迫される。舌を突き出し涎をこぼすユーフィ。意識か半分飛んだのか立ちあがろうとしてもモタモタとぐらついて、構えを取るのも覚束ない。
 無理やりクリーチャーに大の字にリング上に押さえつけられると、腹目掛けてクリーチャーがダイブ、全体重を乗せたままコーナーポストの上から飛んだその最高到達点から一気にユーフィの腹部に襲いかかった。

 ――ドボオォオオォオオ!!

「ううぅゔぐえええぇええっ……!?」

 内蔵をぐちゃぐちゃにプレスされると同時にユーフィの体はVの字に「折れ」た。顔面キックよりも屈辱的な、ヒップドロップだった。腹全体で臀部強打を受け止めれば、込み上げてくる胃液をなんとか飲み下しながらも、濁った悲鳴までは垂れ流すことしかできない。息んでいたとしても、その腹の最奥にまで巨尻を無理やり飲み込まされて、十全に無事でいられるはずがなかった。
 思い切り叩き潰された腹にどっしりと座り込むクリーチャーの尻に、腹の中身をグリグリとすり潰される無様なユーフィ。悔しい。許せない。このままじゃ終わらせない。蒼き鷹の名折れになってしまう。
 そんなプライドと背筋の力だけでクリーチャーを跳ね飛ばし、なんとか闘志を再燃させる。

「ぜっ、はっ……ぜぇ……ひゅー、ふー、群れるだけの獣にやられる私ではありませんわ」
「なんてタフネスだ……もう何人倒してると思ってる?」

 ユーフィが汗だくにされたコスチュームを引き剥がされるのは今か今かと熱気の立ち込めるリング。そんなジメつく熱狂を吹き飛ばすような、快活なまでにクリーンヒットの功夫式ドロップキックがクリーチャーを再びリング外へ吹き飛ばす。
 そのままギャングの左足を絡め取ると己の左足をフックさせアバラ折を極めにかかる。腕越しに背筋を伸ばされるとたまらずギャングは悲鳴をあげた。

「ば……ばかなコブラツイストだと……?!」
「盛り上がって参りましたわね! ママさん!」
「まけないでー!!」
「ええ……たあっ!」

 ママは残る力を全て使い果たして吶喊し、強烈なラリアットで振り解いたギャングを一蹴! 衝撃で浮き上がった体がユーフィに掴まれると、重力に従ってそのままセットアップに入る。

「何の、とは愚問ですわね。お見せいたしますわ、私のフェイバリット・ホールドを!」

 パワーボムのような全身全霊の叩きつけをお見舞いする! 全身クリーンヒットされたギャングの身体は、意思とは関係無く自ら身体を捧げるようにマットに体を横たえる末路。しかし受けた屈辱を返すのは、正々堂々、リングの上でやられたことをやり返してこそだ。駄目押しにヒップドロップを落とし3カウントを奪ってみせた。

「失礼っ♪」
「ママっ、ママっ! すぐ治療すらから、だから……お疲れ様」
「ええ……でも本番はこれからよ、私のかわいいしいな……」

 裸の女王となった『ディザステスト』がリング外から忌々しげに三人を睨む。決戦の時は刻一刻と近づいていた……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メアリー・ベスレム
久しぶりね
ずいぶん無様な負けを晒したみたいじゃない?
ええ、それでこそ|復讐《リベンジ》のし甲斐があるってものだわ
プロレスでもなんでも、逆転劇が一番面白いんだから!

そうでしょ?
と団長に憎まれ口? 激励? を掛けてリングイン
衣装は|ステータス画面の立ち絵《リングコスチューム》

それで最初のお相手はあなたなの?
自分じゃまともに戦えないクセにレスラー気取りだなんて!
と、わざとらしく揶揄して【挑発】し
敵や観客にお尻を魅せつけ【誘惑】【パフォーマンス】
あなたなんかにアリスが捕まえられるかしら?

【軽業】【逃げ足】活かして立ち回るけど
甘く見ていた敵自身が変身した獣? いいえ、ケダモノに!
あっさり捕らわれ反撃もままならず
観客に見せつけるよう痛めつけられてしまう

……敵が正気ならそのままトドメを刺す事だってできた筈だけれど
すっかり【唆る肉体】を貪る事に夢中みたい

やっぱりあなたはレスラーじゃなかったわね
だって、戦いの中で勝つ事を忘れてしまうんだもの!
もう戦えない【演技】で油断させ
変身を解いたところで【騙し討ち】!



 メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)はその顔にべったりと笑顔を貼り付けて、まずは「ビブリオバトラーツ」団長・千愛を見つめた。
 リングで今か今かと涎を垂さんばかりの『ダークデュエリストの少年ギャング』は二の次だ。

「久しぶりね。気分はどう? 最低? それとも最悪?」
「……随分、随分なご挨拶ですね! いいえ、最低とも、最悪とも言うほどではありませんとも」
「ずいぶん無様な負けを晒したみたいじゃない?」
「それで腐る方がおかしいでしょう」
「ええ、ええあなたとってもおかしいわ! こういう時は最高! と叫ばなきゃ」

 もはやビザールファッションなのではとギャングたちが疑う目線の先には、ひたすらに赤いリングコスチュームに締め上げられた、しなやかな媚肉。艶やかな肌。
 あえて彼らに背中を向けて尻を突き出して振りながら、千愛へ微笑みかける。

「完膚なき負け、いいところなし! ええ、ええ、それでこそ|復讐《リベンジ》のし甲斐があるってものだわ。――プロレスでもなんでも、逆転劇が一番面白いんだから!」
「……ふふ、ふふふ! そういう考えもありますね。むしろ私好みです」
「お生憎様、あなただけの大好物というわけじゃないの。この甘美な瞬間を独り占めなんて絶対ダメ」

 嬲り、嬲られ、因果応報の復讐劇。
 この団長が己の体を作品だとするならば、このリングはメアリーの舞台。
 主役は言わずもがな、端役は……さらに言うに及ばずだろう。半開きで何かを凝視するような目つきに変わり、その口先を尖らせて後背を向けて静止する。《唆る肉体》は擬似餌だ。真剣勝負を鼻先に突きつけるための、大きな大きなニンジン。
 さあ、これで勝負する気になったかしら? その気に、なったかしら? そう言わんばかりに。
 たゆんと、ぷるんと、ゆらゆらと。

「それで最初のお相手はあなたなの? この人を倒して分布相応な自信を持った、愚かなあなた! 自分じゃまともに戦えないクセにレスラー気取りだなんて!」
「いきなり首突っ込んできて何言ってやがる。捕まえてお仕置きしてやろうか? あぁん?!」
「あなた――なんかにアリスが捕まえられるかしら?」

 それが試合開始のゴングとなった。
 そしてものの数分で試合の大勢は決してしまう。三つ編みの青髪を掴まれてリング端に追い込まれ、その首筋にざらざらと舌を這われてなお文句の一つも言えないような、メアリーにとっては苦しい展開。というのも子どものギャングなら体格差はいざ知らず、召喚したのはSSR級の獣……否、貪り喰らう屈強ケダモノクリーチャー。驚異的な姿に変じたギャングを止めることはかなわず、今まさにいいようにされようとしている状態である。

「ちょこまかと逃げたつもりだったようだがもうゲームセットだ。だがただで終わらせはしないぜ? おいたが過ぎたからなァ!」
「――ほら、美味しそうでしょう? そのビッグマウスをチャックで閉じて、あなたは口先だけじゃないってことを、アリスと観客の皆さんに証明したらどうかしら?」

 それとも……怖い?
 い く じ な し。
 口をそんな形に開閉させて、彼に伝わるようにとっておきの言葉を囁いてやる。立場をはっきりさせておいた方がいい。これを試合という形で決着させるならば尚更だ。無粋な反撃よりももっと濃厚で刺激的なスパイスでこの試合を彩ってみせよう。

 ――ドゴォ……!

「ふぐうっ?!」

 臀部を容赦なく蹴り上げられる。小さな身体から肋骨がめきめきと鳴る音、ままならない呼吸と激痛に身悶えながら錐揉みで吹っ飛び、コーナーポストに容赦なく叩きつけられてさらに跳ね返る。
 ずるずるとリングへと崩れ落ち、うつ伏せに唸ることしかできない。

「はぁっ……か、あっ……! な……やあンッ?!」

 激しく咳き込みながらも尖らせる唇を、歯を剥く勢いで威嚇する頭部を他所に、岩のような手が尻を鷲掴み、持ち上げる。足先が床を離れ、ぶらぶらと宙吊りにされる人狼の少女。自由な足で蹴り下ろして拘束から逃れようと必死にもがいても、万力のような手はびくともしない。

「はなして……よッ」

 暴れるメアリーの左膝を捕らえる。そのまま膝あたりを、捻りを加えながらギリギリギリィと締め上げ――!

「イ゛ッぁあああ゛ア゛ッ?!!」

 ごぎん、という音とメアリーの悲鳴がリング中に響き渡った。足関節が脱臼したのだから無理もない。
 クリーチャーは、だらりと力なく垂れる左足を庇おうとした右足を捕らえると、なお指に感触を押し返してくるくびり出された臀部と見比べて、ケダモノ顔に、ニタリ……と残忍な笑みを浮かべる。

 ――ギリギリ……ギリッ……ギリギリ……!

「や゛っ、あっ、あ……! づ、ああっ……や゛ああぁ゛ア゛ッ!」

 先ほどよりゆっくりと時間をかけて足を捻り上げ、関節を外すと、メアリーを離した。
 痛いとも熱い、とも表現できない激しい痛みがメアリーの足を襲う。それも一瞬を耐えれば、という痛みではない。絶え間なく波が押し寄せるように、痛苦に足を包まれているかのような逃げ場のない苦しさ。あまりの衝撃にぶるぶると尻を突き出し無様なうつ伏せを晒す人狼の少女。
 痛い、痛い痛い、動けない動かない……! 痛みで狂乱する頭ではすぐに結びつかないかもしれない。しかし、すでに試合は「終わった」のだ。これでは機動力を担保していた両足は封じられたも同然、万事休すなのだから。靱帯などの軟部組織まで応急処置するような猶予をこのケダモノが与えてくれるはずも、ない。だから、終わり。

「それで、この終わりを迎えたアリスをどうするつもり? 丸齧り……とか?」

 ――バギィイイイッ……!!

 勢いよく担ぎ上げてのパワーボム!
 轟音と共に叩きつける攻撃に、両足が頭部側にだらんと垂れ下がった、恥部を晒けだす体勢を披露しまうメアリー。圧倒的な破壊力は、それが回答だと言わんばかりの説得力を帯びていた。跳び上がって放ついわゆるシットダウン式のジャンピングパワーボムだ。技が決まったあとも、全身に高圧電流の如きビリビリと続く痛みと衝撃が叩きつけられるようだ。

「がっッ……アっ……!」
「食材が指図するなよ、どう料理してやろうかなァ! リングの外で見てるあいつに伝わるくらいの絶望感を見せてくれよ! オラッ!」

 ――どぢゅ! メリメリ……ッ!

「ぎ、ゃ……んっ……!」

 踏み躙り、蹴り上げ、痕ができるほどに何度も嬲る。
 メアリーの美しかった肢体は両足の下は感覚と血の気が失われ、艶を保った下腹と腫れ上がった臀部がアンバランスな魅力を放っている。それをもっといためつけたいという欲望がギャングの根っこを頭頂から先端まで貫いて離さない。己が胃袋の容量を完全に見誤ってなお食い続ける、暴食の醜い欲。

「あなたがアリスを見ているなら、メアリもまたあなたを見ている。そういうこと……よ」
「もっとだ……! もっと……! もっとよこせ……女、肉……! 女、肉を寄越せ……ッ!」

 掴み上げて、殴り飛ばす。もう何度目だろう。喀血しながらメアリーが吹っ飛ぶ。もう数も数えられない。リングをバウンドするたびにどんどん頭がバカになっていく。
 痛みと倦怠感に支配された体に鞭打って立ち上がった。これも何度目だったろう。そして立ち上がるたびにより大きな絶望感が彼女を打ちのめすのだ。なお立ち上がり朦朧とする体を引き摺るメアリーの動きを力尽くで封じたケダモノは、振り上げた両手の拳を、眼下の大きく膨らんだ尻へ叩きつけた。

「ごぼぉっ!」

 ――ずむっ、ズドッ! ズドゥ!! ドグシャ……!!

「んグぅっ……うぐっ!! ま、や゛っ……あ、ぎ……ぎゃん?!」

 一撃目で殿筋がちぎれたかと思わんばかりの鋭痛、二撃目で臀骨がひび割れるほどの衝撃を受けたメアリーの口から血塊がごぼっと吐き出される。
 柔らかい肉の脂肪で衝撃が吸収されたとしても、内部に蓄積されるダメージはとうに許容限度をオーバーしている。ずきんっと湧き上がってくる、急所を貫かれる内側からの痛みの、幾度目かの衝撃に耐えかねて、尾を引いた悲鳴が漏れ出る。
 悲鳴に後押しされて増していく威力。苛烈を極めるケダモノの攻撃によって打ち据えられるたびに、あまりに大きなメアリーの尻が逃げ場を求めて、ばうばうと水風船のごとく暴れてしまう。

「あぐゥ……も、もう、きゃああァあ〜ッ!? こ、の……おッ」

 抵抗しようと動かせる腕ががっしと掴まれ、右腕が不自然な方向に捻じられていく。肩関節が悲鳴を上げ、全身が連動してみしみしと軋んだ。ぶわりと毛穴から汗が噴き出す。両足に加えて両手までへし折られたら本当に終わりだ。
 その瞬間、リングの時間が一瞬凍りついたようになる。
 止まる、静寂。
 ひとときのライトアップされた舞台上、観客が哀れ蔑みながら見つめる中、汗と血塗れで仰臥したまま動けないダルマのように、マットを真っ赤になって転がっている己……を想像してメアリーは――顔を、歪めた。
 ドッドッドと動悸は不穏に激しくなり、十指が震える。
 嗚呼、嗚呼、なんてこと、なんて、なんて可哀想な、アリスなのかしら……!

「ご……げほ、ゴホッ……あひッ!!?」

 ひときわ頓狂な声を上げるメアリー。下半身から湧き上がってきた違和感に、両目を見開きワナワナ震えた。
 ボロボロのリングコスチュームが剥がれまいと必死に食い込む足と足の付け根。ぷりんと丸出しになっている臀部の中央を、獰猛な牙と涎を垂らした舌とが、グイグイと押し込んでくる。パッと手を離して今度はそれだ。もはやいたずらに試合を長引かせようとしているようにしか見えない。欲望塗れの舌先が、尻肉と尻肉の間を割り開くようにして、小さな穴に潜り込もうとしていた。無骨な舌の固さ、体温の熱さがダイレクトに伝わる。不浄の穴から感じる常軌を逸した心地よさと、心がふたつに裂けるような究極の惨めさが、脳内でぐるぐると混じり合っていく。
 あわや丸齧りか、と思われた、その時。

「――やっぱりあなたはレスラーじゃなかったわね。だって、戦いの中で勝つ事を忘れてしまうんだもの!」
「なにを……ぐアッ?!」

 その時、致命的な油断を「メアリ」は見逃さない。無骨な肉切り包丁めいた手刀を振り抜いて首裏に一撃! たった一振りで昏倒に追い込む。
 心が二つだなんて贅沢だ。メアリはアリスで、アリスはメアリ。簡単にひっくり返る、一つ。ゆえに迎える結末もまた、一つ。
 甘美な復讐の決着。
 あまりにあっけない幕切れに誰もが唖然とする中――千愛だけが、惜しみない拍手を送るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マスクド・サンドリヨン
ビブリオバトラーツ……前回も参戦させてもらったけど、それはもう酷い目に合わされたわね。
でも、今度こそは負けない……相手は別だけど、リベンジ戦よ!

そう意気込んでリングに上がった私。だけど相手は既に、『小悪魔少年』を召喚していたの。
一見可愛い少年だけど悪魔のように性悪で、音もなく背後に忍び寄って、不意打ちの七年殺し(カンチョー)を食らわせて来て!
滑稽な技だけど威力は十二分、跳び上がってお尻を抑えて悶絶しちゃう。

その隙にピジョンを剥ぎ取られて無力な『姫華』となった私を襲う、執拗なグラウンド地獄。
痛めつけられると言うより辱めるような技の数々……股裂きされたり胸を強調されたり。しかも相手は執拗に密着して、男の身体を感じさせて来るの。
しかも、耳元で私にしか聞こえないくらいで「ヒロイン失格だな」とか「女が男に勝てる訳ないだろ」とか「ざーこ☆」とか執拗に煽られ続けると、身体以上に精神がボロボロにされちゃう。

「許してください」ってうわ言のように呟くばかりの私は、マッスルバスターでトドメを刺されるの……。


フォス・オネイロス
超人プロレス。興業としては面白そうね。
カンパニーがスポンサーになる価値があるかもしれない。

報告は自分で見極めてからってことで、助太刀しつつ参加するね。

3分あればいけるかな、と、威力強化した攻撃を最初から叩き込むけど、
相手が降ろしたクリーチャー(トロル系)に、その再生能力で耐えきられ、
こちらがオーバーヒートを起こしてしまうよ。

わたしの動きが止まったところで相手のターン。

棍棒のような腕で思い切り殴りつけられ、
意識が飛びかけたところで、相手の片手で両手首を掴まれ、吊り下げられて、
そのまま空いている手で何度も腹パンされると、失禁しながら絶頂してしまうよ。

ぐったりとしたわたしは投げ捨てられるように叩きつけられ、
今度は寝技で、関節を極められ、首などを締め上げられながら、濡れた秘所を弄られ続けると、
痛みを快楽に変えられて、耐えることができなくなってしまうよ。

そこからは打撃、極め技を交えながら、
見せつけるようなポーズで女の弱点を容赦なく責められ、
最後には、泡を吹きながら絶頂して気を失ってしまうね。



「うぅ、クッ……が、はっ、ゴホッ……!」

 頭に茫漠とモヤがかかり、手が痺れ、朦朧とした意識の口元から舌が覗く。胸が痛い、にもかかわらず、手が鉛のように重く摩ることができない。必死に取り込んで手に入れたのは安定した呼吸ではなく、激しい胸の痛みと不快感。過呼吸――誰の目から見ても、すでにフォス・オネイロス(『ブラック・カンパニー』特殊渉外課所属、腕力担当・f36684)が危険な状態であるのは一目瞭然であった。
 一方相対する『ダークデュエリストの少年ギャング』はタフネスと再生力に優れたトロルのような巨躯のクリーチャーに扮し、余裕綽々の笑みを浮かべていた。厄介な《極点崩克》によりカードという戦力の大半を失ったが、ここから逆転の余地はない。愚かなこの女を痛めつけるだけだ。
 頼れる味方のピンチ。どうしても不安が脳裏をよぎる局面だ。しかし、マスクド・サンドリヨン(仮面武闘会のシンデレラ・f19368)である姫華は、己を奮い立たせてリングに飛び込む。

「時間切れ、ね……このままじゃ……」
「くっ……私だってあの時とは違う……! 今度こそは負けない……相手は別だけど、これはリベンジ戦よ!」

 ――ずぼッ!

「きゃっ……いやぁぁっ……?!」

 可憐なリングコスチュームを貫通して、深々と姫華のお尻の中心……穴に小悪魔少年の指が刺さる。大柄なクリーチャーを隠れ蓑に、ギャングは周到に乱入者への対策を施していたのだ。
 お尻の穴に指が根元までめり込むというあまりに強すぎる衝撃! 姫華の体がぐぅんとエビ反りになり、リングのど真ん中に崩れ落ちる。数瞬後気合いで立ち上がったものの、それから程なく姫華は膝を付きお尻を突き出した四つん這いで倒れた。

「これは捨てとくね、ポイっと!」
「あっ……ぁ、ピジョン……かえ……して……んぅううッ」

 正義の仮面プリンセスである彼女はヒーローマスクのピジョンを剥ぎ取られれば戦闘力がガタ落ちする。ただの無力な『姫華』となった彼女を襲うのは絶望的な暴力だけだ。頭をぐりぐりと足蹴にされても屈辱に身悶えすることしかできない。

「リングインしたばかりなのにこんなにお尻を振って誘って……お姉さんって、もしかしてMの素質があるんじゃないの?」
「バカなこと……言わないでっ。誰のせいだと思って……!」
「あははっ、これはMへのプレゼントだよ」
「グヒヒヒ……!」

 トロルと小悪魔少年は無防備になったフォスと姫華へいよいよ情け容赦のない攻撃を仕掛ける。観客としても一向に決め手にならない女性陣の攻撃から一点、パワフルとテクニカルの合わせ技に興奮する。もっとも技の応酬にはなりそうにないのだが。
 姫華は挨拶とばかりに拘束され、小悪魔少年の電気按摩の餌食となっていた。少年の小さな足裏がコスチューム越しに姫華の股間に触れ、外陰部の圧迫刺激をこれでもかと与えるため、思いきり震わしている。振動が襲いかかってくるたびに姫華は錯乱し、叫び声とも笑い声ともつかない声を漏らす。

「う゛っ、ほお゛あ゛ぁは〜っははは!?」
「なっさけな……ヒロイン失格だな」

 スポーツマンシップの欠片もない嘲りの声も己の悲鳴で掻き消してしまう。小悪魔少年は器用に指を操り、全身の体重をこめて姫華の急所を容赦なくムニムニ、ゴリゴリと踏み潰していく。工事現場の掘削工事を思い起こさせるストンピング。
 囁くような罵詈雑言が、見窄らしい姫華の耳にはしかしはっきりと響いた気がした。

「次は股裂でもしようかな。楽しませてよねザコお姉さん?」
「く……あなたの相手は……わたし、よ……!」

 無理やり割り込もうと前に出るフォス。しかし、グン! と強く引っ張られて、踏ん張る間もなくフォスが引き寄せられていく。まるでそっくりそのままそのセリフを返すと言わんばかりの、棍棒のような腕による拘束と引き寄せ。掴まれた片腕を封じられて姿勢も崩れたフォスに――!

「グヒャア!」

 ――ゴッ……!!

「ぐぶッ!!」

 鉄球同士がぶつかり合うような重い音。トロルの左拳がフォスの右頬にめり込んだ。
 唾を飛ばして呻いたフォスが、たまらずロープまで弾かれる。
 その勢いを張り詰めたロープが殺し、やがて減速したフォス。しかしその身体はリング外に大きくせり出し、今にもはち切れんばかりの打撃のエネルギー量を訴える。それも伸長力が限界に達すると、ロープがフォスを押し返して、再びニタニタ笑うトロルの面前へと送り届けた。
 待っていましたとばかりに、ぐるぐる振り回して振りかぶった右拳が腹のど真ん中に命中し、フォスは身体をくの字に曲げて呻いてしまう。

「お……げォッ?!」

 再びロープに叩きつけられ、反動で無防備な体をトロルに晒す。弾んでは手元に戻る水風船さながらに、ロープとトロルの剛腕を行き来する。口や鼻から吹き出た血が、蹂躙の往復路を鉄臭く彩っていく。切った口端からは血反吐が、目尻からは涙が断続的に溢れいた。

「がふッ?! ぬげられな……ん、ぎッ! おぶゥ……ッ!」
「グヒ、もっと鳴かせて、やる!」

 トロルの大腕が両手首を掴み、吊り下げる。サンドバッグのような、というよりもサンドバッグそのものにしてやろうという下卑た思惑が透けて見える。わかっていても抜け出せない屈辱、恐怖、怒り。暴れても足もつかない状態ではぶらぶらと体を揺らすだけで、まな板の鯉に等しい。

「腹パンはイヤかぁ?」
「……ッ、わたしは全てを知って報告する義務があるのよ! そんな弱音、なんてっ」

 拳が引かれ、フォスが身構えたところで、自然が偶然トロルのふくらはぎの筋肉が浮き出るのが見えた。

 ――ボギョ……!

「うぐげぇ……ぇ!?」

 鳩尾にめり込んだ固い膝。
 その衝撃は、最高に昂ったフォスの股間から黄金水をこれでもかと吐き出させた。

「あヒッ……お、ふ……」

 膝蹴りですっかり筋肉が弛緩したところで、そのまま空いている手で何度も腹パンを繰り出す。コスチュームはちぎれ飛び、ボコボコと拳の痕が腹部に刻まれてフォスは悶絶絶叫してしまう。
 放尿が止まるより先にフォスは大ダメージから自分の粗相の上に仰向けに崩れ落ちていた。
 トロルは痛みと尿意の両方と戦っている彼女の後頭部を掴むと、ダウン状態から無理やり顔を上げさせうつ伏せに寝転がらせた。優位な上を取ったまま、フォスの身体をうつ伏せにし、更に素早くキャメルクラッチへ移る。昏倒同然は必至だ。
 両手で顎を掴まれ一気に体を引き延ばされ苦悶するフォス。さらに身動きの取れないところに小悪魔少年が纏わりつき、無防備な股間部に打擲を加える。執拗に、粘着質に、着実に快感が蓄積する。

「あぐっ!? う……ぎ、あ゛ぁあ〜ッ!?」

 まず腰の筋肉が悲鳴をあげる。全身から汗が噴き出して白い肌に雫が伝う。拷問の様な技に晒されて、濁った喘ぎ声を漏らすのが精一杯だ。また、断続的に下腹に与えれる快感に、意志とは反して絶頂へ向かう準備を整えられてしまう。

「背骨が折れるかな? 首が折れるかな? お漏らしお姉さん!」
「ごぼ……ン゛ぉ、おもォ゛、ら……言うなっ、言うなあッ……!!」

 社会人にもなってお漏らしなどと揶揄されれば声を荒げて怒りたくなるもの。
 沸る心とは裏腹に、自分から甘い吐息が漏れたことに困惑する。フォスはどうしようもないくらいに感じてしまっていた。秘部に受ける小悪魔少年からの刺激は強烈至極、そのままトロルに見せつけるようなポーズで女の弱点を容赦なく責められてしまう。対戦相手、競技者というよりは人としての尊厳を喪失してしまう試合展開にも関わらず、嬌声はますます高まって勢いづいてしまう。

「ん゙っ?! やっ……あ、ふぅ゛っ……んっんんっ……っ!?」
「ほら、女が男に勝てる訳ないだろ」
「この子、また周りに聞こえないように……! んぁあッ?!」

 トロルが姫華の片足を踏みつけ固定、小悪魔少年がすかさず、体を密着させて「男」と性感を意識させると、もう一本の足首を掴み――左右の足首を一本ずつ固定したまま、仰向け状態に寝かせた姫華の両足を百八十度の角度になるまで開き、引き裂く! 左右の足がピィィーーンと大股開き、股が横一直線に開ききった後もなお、虐めは飽き足らず、まだ無邪気な手は両足を左右にグイグイ引っ張り続ける。
 そんな股裂き刑の形に寝かされた姫華は、痛みと羞恥で顔を真っ赤にし絶叫した。

「いやっ……ぐぅぅ?! や、やめて……も、ゆるし、て……くぅぅ……!」
「ざーこ☆ ざーこ☆ 雑魚のお姉さん。お願いするなら相応の態度があるよね」
「グヒヒヒ! お前も、謝れ!」

 全身の関節をぐちゃぐちゃにされ、満身創痍の二人。それでも顔を見合わせては俯いて震えるばかりの二人を、股ぐらと胸を強調し見せつけるようなポーズの、いわゆる吊り天井固めで持ち上げられてしまう。腿の外側から、相手の足で巻き込むように挟まれてしまえば、股間や脹脛に甚大なダメージが入り、露出した胸がピンと立ち上がってるのまで晒されて、その屈辱に打ち震え――!

「あぁっ……ぅ、ぅ……おねがいやめて……ゆ、ゆるして、ゆるし……ぐぅ?! も、もう、限界なの……あぁああっ?!」
「あぁっ……いやっ……やめて……あぁぁっ……! こんなの、間違ってる……ああっダメっ、ぐぅぅ……あぁっ……ッ!」

 ――じょろっ……ぷしゃああぁあッ!

 口の端からはぶくぶくと泡を噴き、無惨に広げられた股間からはじょろじょろと黄金水が流れる。
 そのまま首を極めるチン・ロックで意識を刈り取ると、受け身の取れなくなった二人をプロレスリングのマットが二人の着地で大きくめり込むほどに強烈な叩きつけをお見舞いする。ボキィ! と鳴った音は頭蓋か脊髄か、いずれにせよ致命傷に程近いダメージを負わされたことは間違いない。

「いっぎっ……!? あ、あああああ……ぁ」
「あッ、がっ……?! も゛……がっ……ぁ」

 全身が激しく震え、手足の先がぴいぃんと突っ張る姫華。泡を吹きながら白目を剥いて絶頂して、気を失ってしまうフォス。それでも『ダークデュエリストの少年ギャング』の攻撃は止まない。次は互いの対戦相手を変えて、その後は変ずる姿や召喚するクリーチャーを変えて、二人の目の光が消えるまで、飽きることなく、嬲殺をやめないのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイ・リスパー
「スタミナ難の頭脳派レスラーさんですか。
私と同属性で親近感が湧きますね」
『引きこもりゲームオタクのアイと一緒にされては、団長も不本意なのではないでしょうか?』
「シャラップです、オベイロン。
今回の私は一味違います!」

【強化外装】で機動戦車オベイロンをパワードスーツ形態に変形させ、装着します!
こうして、私は身長3メートルの謎の覆面レスラー・オベイロンとして試合に参加します!

「ふっふっふ、この姿ならば運動不足……もといスタミナ難も問題になりません!
さあ、オベイロン、鋼鉄の腕で敵を捻り潰しちゃいましょう!」
『アイ、まことに残念ですが、敵が変身した触手怪人の触手に絡め取られて身動きができません』
「えええっ!?」

って、ちょっとー、装甲の隙間から触手が入り込んできて……
狭いコックピット内で私の身体にも絡みついてきて……!?

「やっ、やあああっ!」

逃げ場のないまま、触手に服の中に侵入され……
下着の中の敏感なところを責められ、奥まで触手に犯され……

『アイが気を失ってしまったので、後は自動操縦で戦いましょう』



「く……せめてあいつだけでも道連れにしてやる……うぉおおおおッ?! なんだァッ」
「ふっふっふ、はーっはっはっは!」

 リングに仁王立ちするのは「機械の掃除屋」に授かった力、《強化外装》のパワードスーツを纏ったアイ・リスパー(|電脳の天使《ドジっ娘電脳魔術師》・f07909)。リングネームはその名も謎の覆面レスラー・オベイロン。眩く輝く白き装甲、三メートルの巨躯、高笑いの中にあるアイは得意げだ。

「ふっふっふ、この姿ならば運動不足……もといスタミナ難も問題になりません! さあ、オベイロン、鋼鉄の腕で敵を捻り潰しちゃいましょう!」
『アイ、運動不足の自覚はあるのですね。全ての必需品が手元か手の届く範囲にないと気が済まない――』
「シャラップです、オベイロン!」

 がしゃんがしゃんと身震いする。その憤ったような、破壊エネルギーの塊さながらの威圧感に『ダークデュエリストの少年ギャング』は戦々恐々としている。
 既にノックアウトして戦線離脱しているギャングが大多数。狙うはこの巨漢装甲覆面を道連れに葬り去ることだけだ。恐怖に竦む心が彼らに一つの天啓をもたらす。

『この違和感……』
「シャラップと言ったでしょう。しかし、団長さんでしたか。私と同族だなんて親近感がむくむくわいてきますね。スタミナ難の頭脳派レスラーさん……特に頭脳派、というところにシンパシーを感じます」

 機動戦車オベイロンはアイの指示を忠実に守り、仁王立ちを続けている。
 自分の体を痛めつけてその古傷を自慢するアグレッシブさと自他共に認める引きこもりゲームオタクではどうしても等号で結びつけられないとか、その団長・千愛が叫ぶように注意を促しているだとか、そもそもいきなり考えに耽るのは合理的でないとか、枚挙にいとまがないのだが。

「え。ええっ……!?」

 そして少女は見てしまう。自分の砦、コクピットの内部に犇き侵蝕する、臓腑を思わせるヌメヌメとした触手の群れ。ほんの僅かな、紙一枚の隙間から湯水のように現れた、一斉に数え切れぬほどの異形の群れがアイを嬲ろうと身を乗り出してきたのだ。

「ちょっと、な、なんで」
『装甲の隙間に召喚カードを差し込まれたようです。振り解こうにも……まことに残念ですが、敵が変身した触手怪人の触手に絡め取られて身動きができません』
「どうしてすぐ報告しないんですか! いやぁっ! いや、いやですっ! 触らないでっ、出てって、くださいよぉっ!」

 ぐいと入ってきた隙間から押し出そうと操縦桿から手を離し、必死に力を込める。しかし暖簾に腕押しで、ゴムのような弾力を持った触手は腕の力に合わせてぐにゅりと変形するだけ。どれだけ力を込めようと押し返せないどころか、逆に指先に絡みつく醜怪なモノに恐怖が秒ごとに刻まれていく。
 どうしようもない。引きちぎろうとしても噛みちぎろうとしても切れない。逃げ場のない体を捻ろうとすると絡め取られてドツボに嵌る。
 ともすれば堅牢だったはずの砦が、アイを閉じ込める檻に早替わりだ。

「やっ、やあああっ?!」

 喉奥から飛び出した叫喚が、恐怖によるものだったのか、それとも艶っぽい嬌声だったのかも判別つかない。どころかオベイロンのコクピットの外にも聞こえないだろう。
 もはやコクピットを埋め尽くす質量の触手の海、アイの日に当たっていない白い柔肌へ密着する触手は忙しなく動き回る。そして、徐々にアイの敏感な部分を探り当て始めていた。

「ど、どこ触ってるんですか?! は、なして……ッ」

 細首も、下腹部も、薄い胸も、牝芯も、女膣も、臍や耳や舌先にまで、触手が絡みつく。締め上げる。ねちょねちょと何度も往復して擦れてなぞり上げて、熱い、身体が熱い。お腹の奥底が焼けただれたようにジクジクと疼いて治まらない。

「だめ、だめだめだめッ?! おかひ、おかしぐなるっ……オ゛ッ?!」

 強かに頬を打擲される。殊更に狭い空間内。突然の頭の揺れるような衝撃で、思わず仰け反ると、服や下着の下で這いずりまわる触手たちとはこれまた比較にならない大ぶりで、屈強な触手が背中側から巻き付くように伸びているのが目に入ってくる。
 折りたたむような姿勢を強制された……この低脳なハズの触手は、召喚したギャングの悪意を確かに汲み取っている。

「いだ、いだいっ!! やめて、くだざびいっ……! 折れ、るぅ折れちゃいます、がらあっ゛……!」

 蛇のように巻き付いた触手にギチギチと締め上げられる。股ぐらを重点的に擦り、性突起をめちゃくちゃに刺激されると、嫌悪感を超える快感が脳天を突き抜けてしまうのだ。抵抗意欲が刻一刻と削ぎ落とされる。酸欠で意識が遠のいていく。薄れぼんやりとする頭に、一際強い鮮烈な快楽。

 ――メリメリメリ……ズブ! じゅぽ、じゅぼ、ごじゅ、ごりゅ……ッ!

「お゛っ?! ひいぃぃっ?! もう、イぎます……ッ!」

 饐えた臭いを放つ触手の抽送運動。鼻先に突きつけられた粘液の、牝軸を疼かせるツンとした背徳的な香り。快感電流で思考回路が焼けていく。リングに立つはずだった気概は蕩け、卑猥なものへと変化していた。愛おしげに五指で触手を押しのけ、己の秘処を悩ましげに弄ってしまう。駄目だとわかっていても、駄目だとわかっているからこそ。

「ぼ、お゛ぉぉっ、くぢ、くちにも゛ぉ触手……い、ぎが、っああぁ……ぬ゛ぐぅっ!?」

 数十本の細い触手が束になったモノが、大挙して秘処と後ろをずぼずぼと穿る。粘膜が化物の群れに掻き乱されてゆく。
 絡み合った肉の束はアイの中で解けて、弱い箇所を見つけては重点的にぼこぼこに叩きつけた。鍛えようとしても鍛えられない、女体の急所を徹底的に痛めつける交尾。倒錯的な快感で意識が飛びそうになる。否、実際何度か飛んでしまったのだろう。快楽の暴力で一時的に感覚を取り戻しているだけに過ぎない。
 生殺与奪をこの低俗な触手に握られている。クレバーな電脳魔術師が、手のひらの上で遊ばれているかのようだ。

「お゛〜っ?! お゛お゛ぉ〜っ?! い……ぐ……あ、おぉっ……!?」

 絶頂に次ぐ絶頂。容赦なく奪われていく酸素供給。アイの視界の中でパチパチと火花が舞い散っていた。痙攣のように身体の震えが大きくなっていく。目尻の端が涙に濡れ、仰け反って舌を出した放心顔は直視も憚られるほどに乱れている。コクピットの中であったことが不幸中の幸いであったろう。
 やがて、途方もない苦しみと快楽の坩堝の中で、頭蓋をこじ開けミントをねじ込まれたような、頭の中がしゅわしゅわと弾ける感覚に襲われ、およそ少女が発していいようなものではない、獣のような咆哮がアイの口から放たれる。同時に意識は完膚ないまでの、完全ブラックアウト。制御を失ったオベイロンは立ち尽くすのみ……かのように思えた。

「へっへっへ! これでこの木偶の坊も終わりだな……な、ちょっと待て! なんで動いてる?!」
『アイが気を失ってしまったので、後は自動操縦で戦いましょう』
「ぎ、ぎゃあぁあっ?!」

 結果的には関節技を極められてからの見事な逆転劇、ということになるだろう。やられ、やり返す、力同士のぶつかり合い、鍔迫り合いもまたプロレスの醍醐味だということを知識としてインプットしている。それに……大事なことは敵の首魁も言っていた。勝てば官軍、勝てば正義。
 そんな身に余る勝利を確信したギャングたちを一方的に逆撃! まとめて薙ぎ倒したオベイロンは、白目を剥いて気絶する主を慮るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『ディザステスト』レイラ・シングス』

POW   :    “正しい私の正しい力”が古き悪弊と象徴を打ち払う
無敵の【超人プロレスを革命するリングコスチューム】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    ラジカル・スペシャル・ハイスパート・レスリング
【相手の“受け”を顧みない激しいプロレス技】で近接攻撃する。低威力だが、対象が近接範囲から離脱するまで何度でも連続攻撃できる。
WIZ   :    プロレス界の病巣を取り除くには痛みも伴う
対象の攻撃を軽減する【超人プロレス界を導く革命聖女 】に変身しつつ、【旧弊とその象徴を打破する革命的プロレス技】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:えんご

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は草剪・ひかりです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 所詮は洗脳した手駒、代替はいくらでもいるだとか、ダーク総裁の薫陶を受けた自分の力はこの比ではないだとか、そんなお決まりのセリフを吐こうかと身構えるところだが、『ディザステスト』レイラ・シングスは、リングに上がればかえって理性的な表情で猟兵たちを睨みつける。
 誰かが彼女を「聖女」と呼び崇めた。また誰かが彼女を「革命家」と呼んだ。
 その闘魂は闇に堕ちてなお観客たちを魅了する。リングに立てば誰が主役かを、その肢体だけで証明してしまう。

「強者が勝つのではない。勝つから強者、これが真理……正しき超人プロレスのあり方だ! 弱者こそがこの世界から追放されるべきだ。貴様ら、それがなぜわからない……?」
「レイラの激しい攻撃を受け続けるのは危険、危険大です……! ですが、ですが心配無用! 共に奴を倒し、勝利を私たちの手に!」

 ダークアスリートという止むに止まれぬ事情を負って、闇に堕ちたプロレス聖女と、病んだとレッテルを貼られたプロレス司書が火花を散らす。
 しかし、今日の主役は猟兵だ。
 狙え番狂せ、手にしろ輝く栄光の勝利――!
ユーフィ・バウム
《真の姿:蒼き鷹》の姿は維持
聖女か革命家か、私にとってはどちでも構いませんわ
ただ、リング上での力と技で全てを語る
さぁ存分に闘りましょう!

リングコスチュームの付け替えは止めません
最も強い相手を受けきることこそレスラーの、私の本懐ですわ!

真向から力比べを挑み、怪力でパワーで拮抗し、
予想外のプロレス技を胸を張って正面から受けます

きゃぁぁっ!

悲鳴が上がって体がマットに食い込んでも心は折れず
身に食い込む打撃を、投げを、関節技を受ける度
豊満な肉体は揺れ、汗を零して悲鳴は上がりますが、
受けきり逆転の機を掴むっ!

レイラさんの必殺ホールドを限界突破!耐え抜き
《トランスクラッシュ》のヒップアタックを叩きつけますっ


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
「勝つから強者」と言う割に、「プロレス」と言う狭い枠組みには拘るのですねぇ?

【翳華】を発動、全身を随時『ブラックホール(以下BH)』に変換しますねぇ。
『打撃』には防御部位を『BH』化し衝撃ごと吸込んでしまえば問題無く、『関節』『投げ』等も同様に『触れようとした時点で[カウンター]の吸引が行われる』状態になりますぅ。
仕留めはしませんが、手足程度は頂いて良いでしょう。
『コスチューム』の無敵も『対プロレス』である以上、その外に有る『BH』への有効性は疑問を抱かざるを得ない筈ですぅ。
此方の攻撃は『BHの重力』で加速した打撃を主体に、仕留めない様気をつけ打撃主体で交戦しますねぇ。



「言いたいことは全て吐き出しましたか? さぁ存分に闘りましょう!」

 ユーフィは指の骨をポキポキ鳴らす。
 るこるが口を開こうとすると身振りで制止する。敵の素性がどうだとか主張が何だとか、彼女にとっては構わない。リングの上で、拳で、力と技のみで語るのを望むのみだ。鍛え抜かれ、蒼き闘気を身に纏うユーフィは手四つの力比べを果敢に挑む。
 ディザステストの力は絶大だ。彼女も己の力に絶対の自信を持っている。ゆえにその自信を打ち砕くのは、得意の力比べが第一と踏んだ。
 彼女の剛腕に押されて一時は身を崩すが、ブリッジの体制から立ち直すユーフィ。

「楯突くつもりか、この『ディザステスト』に!」
「力比べでは負けませんわ……っ!」
「私も助太刀いたしましょうかぁ」

 腕自慢というのであればその両腕をもぎ取ってしまえばいい。「プロレス」という競技に則ることそのものの意義をうがった目で見ているるこる。ディザステストの、言動と振りかざす正義とそのスケールが見合ってない言動不一致に対し、少なからず疑問を持っているというのもあった。掟破りの《豊乳女神の加護・翳華》! 制御下に置いたブラックホールで組み合う手をぐしゃぐしゃにしようとする。仕留めはしませんが、手足程度は頂いて良いでしょう。強い使命感を帯びた瞳で、取っ組み合う二人に割って入り光の存在を許さない一撃を見舞う。

「ただではすみませんよぉ……あら?」
「フン……」

 空気を引き裂くようなバリバリという音を立てて、その衝撃に顔を顰めるディザステスト。興を削がれた、という不満がありありと見て取れる。四次元空間か何かに繋がる空間能力者、プロレス超人界隈では珍しくとも、全く未知の存在というわけでもない。厄介だが、己の掲げる正義を脅かすほどでもない。《“正しい私の正しい力”が古き悪弊と象徴を打ち払う》まで、革命家の戦いは続くのだ。
 ゆえに、無敵。無頼の力は、黒き宇宙の力をも凌駕する。その自負があるがゆえの、無敵。

「その身体では掴むのは厄介……だが、これならどうだ?!」
「えっ?! きゃぁぁっ!」

 素早い動きでユーフィの下半身を掴んで引きずり倒すと、彼女の両足を脇で挟むように持った状態で己自身の体を回転させ、ハンマー投げの要領でるこるに投げつける。遠心力を存分に効かせた、いわゆるジャイアントスイングによる強襲だ。
 ぷるぷると身を揺らして身構えるるこる。投げ技も先ほど下半身を狙った動きのような、突撃のモーションがある。それに合わせてブラックホールを配置すれば掴まれる恐れはない。学がなく、見識の浅い相手というのは困らされるが、無問題だ。

「めが、まわって……あぁあッあ〜ッ?!」

 そのままるこる目掛けて、ユーフィを投げつける!
 鍛え上げた肉体を軸にして繰り出されるパワフルプレイにより微動だにしないディザステストに反して、風車の羽の如く大回転するダイナミックなユーフィ。それが突然るこるに向けてすっ飛んでくるのだ。

「そのバディを受け止める瞬間に、渾身の技を食らわせてやろう」

 勢いに乗じて、吶喊してくる革命女王。るこるはその一瞬で思案する。確かに受け止めるにはブラックホール化を解除しなければならない。その実体化した瞬間にでも繰り出せる技は無数にある。受けは危険だ。なぜならディザステストが繰り出す技は受けを考慮していない。投げ技を相手に向けて行っている点からも、見た目の派手さ以上に危険が伴うものだ――全くどちらが掟破りなのか!
 逡巡するるこるの意を決させる、投げられている最中のユーフィの眼差し。
 力強い……! 蒼き鷹は飛翔の機を待っている、そんな闘志を感じさせる力強い目線だった。
 るこるは頷いた。投げ飛ばされて空中で身動き取れないユーフィ。自分目掛けて無防備に飛ばされる彼女を、るこるは、受け止めない。

「リングアウトさせるか、我が身可愛さとはほとほと呆れ果てるなッ」
「いえいえ、私たちは勝つために来てるですよぉ」

 笑い飛ばしたディザステストに、るこるは反撃の策を講じる。リングに波紋が広がる。たぽんと己の柔肉を跳ねさせて、マットから垂直に跳躍したのだ。重力に反して跳ね上がる肢体は、ぷるぷると撓んで揺れて、その玉体で観客を魅了した。ユーフィはぶつかるはずだったるこるがいなくなったことで、リングの外に向けてすっ飛んでいく。
 はず――だった。

 ――ギュウン……!

 空間が捻じ曲がる。
 翳華が、両の掌に花開く。
 指向性を指定できる極小サイズの高密度天体。それでユーフィを「引き寄せ」る。飛翔する蒼き鷹は、リングの上を羽ばたく。天の川を翔けるように、光のオーラをはためかせて、彼女自身を弾丸へと変える。文字通りの肉弾戦。この戦いは負けられない。力自慢を力で打ち倒さなければ、彼女の無敵の変身を打ち崩すことなど夢のまた夢だ。
 ユーフィは体を曲げて、お尻をディザステストへ向ける。

「鍛えられた肉体を、めいっぱい叩き込みますっ、レイラさん!」
「その名で呼ぶなッ、ええいっやってみろッ!」
「たあぁあああッ!!」

 蒼い炎。腰部から直視もできない星の煌めきがユーフィを覆い尽くす。リングに舞い降りた彗星だった。重力に引き寄せられ真っ逆さまに、否舞い戻ったユーフィの、決死の《トランスクラッシュ》! 尻から飛びかかるヒップアタックに、軸足だけ着地して反対の足を振りぬくハイキックの追撃!

 ――ボゴォ……!

「く、……ぉッ?!」

 入りましたぁ、とるこるは確信する。ブラックホールの重力で己自身を亜光速に加速して猛追、ダブルスレッジハンマーの要領で勢いよく両掌を振り下ろす。空中でくの字で折れて、マットに食い込むディザステストの体!

「今度は手応えありですねぇ」

 彼女を倒し、闇の力を解き放つにはやはりこのリングで、超人プロレスで倒さなければ。例えばユーフィのように、悲鳴を喉や体から搾り出したとしても、心を折らずに立ち向かう。受けきり逆転の機を掴む、この「受け」を認めない苛烈な攻めをどのように切り抜けて、マットに沈める。そんな方法が果たしてあるのだろうか。
 あるいはそんな矛盾を突破することが、世に言う革命なのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

菫宮・理緒
NGなし
アドリブ・極ハード大歓迎

こちらはチャレンジャーだし先手はとらないとね!

わたしの攻撃を受けつつ相手も技を出すようになってきたら、
追い込まれたフリをしてカウンター狙い、と思ったのだけど……。

想像以上のテクニックとパワーに切り返しの余裕がない!?

打撃をもらってしまえば、その痛みに快楽がぶり返し、
数発もらっただけで、膝が震えて蜜を滴らせてしまうよ。

相手は意識が快楽に堕ちこみつつあるわたしを捕まえ、
アトミックドロップやマンハッタンドロップでさらに股間を打ちすえ、
そのたびに絶頂していることを確かめられてしまうね。

そして最後は、後ろから捕まえられて、相手の足でわたしの足をフックされ、
観客に大股開きで股間を晒されると、そのまま片腕でチョークスリーパー、
もう片方の手はわたしの秘所に指を突き込んで、抉り回され、
弱点を見つけられ、そのまま連続絶頂に陥ってしまうよ。

白目を剥いて、絶息し気を失ったら、UCが発動。
わたしを放した一種の隙をついて、連続攻撃をしかけるよ。

捨て身の中の捨て身、これでどう!?



 『ディザステスト』レイラ・シングスは、相対する理緒に対し、胸の前で手を構えるファイティングポーズを取る。恐ろしく隙がない。
 対して、触腕責めにされたこの体だ。応急処置したとはいえ全身が痛い。リングに上がるのも、激痛を堪えながらの連戦。――だのに、疼き、火照る体。うだるような媚熱に身を灼かれながら、身構え、覚悟する。攻めねば、攻め続けて相手の攻撃が来る前に勝負を決さなければ……!

「こちらはチャレンジャーだし先手はとらないとねー!」
「遅い」

 その一歩が、すでに致命的な過ちであった。不用意な肉薄の刹那、胸元に着弾する……女美神の手刀。逆水平チョップが、理緒の胸にめり込んだ。

 ――メリィッ!

「ッ……か――はッ?! かはッ! げほッ! げほッ!?」

 詰まった息を吐くと共に、きらきらと唾液の飛沫が舞う。胸元に痣ができる程の一撃。撃たれた箇所を押さえながら、リングの中央でのたうち回る理緒。
 なんとかダメージを飲み下し、生まれたての子鹿のように脚をガクつかせながら、よろよろと時間をかけて、何とか立ち上がるのをディザステストは観察している。

「なんだ。濡らしているのか。貴様のような小便垂れがこの『ディザステスト』に刃向かうなど千年早い! ダーク総裁がため、さっさと散ってもらおうか」
「わたしに勝ったつもりになるのは……うっ、早いんだけどねー……」
「減らず口をっ」

 挨拶とばかりに繰り出すのはベアハッグ。無理矢理に立ち上がらせられる理緒の細い腰に、強引に腕が回る。

 ――ミシッ! メキィ!!

「ぎ、が……あ、ぅ……ッ!?」

 両腕に力を込めると、腰骨が途端に軋み、悲鳴を漏らす。理緒は首を何度も何度もぶんぶんと横に振り、余りの激痛に身体を暴れさせる。腰にかかる強烈な圧。外そうともがけばもがくほどより強い力で巻き込む、ローラー粉砕機さながらの剛腕拷問。

 ――ミキッ……ビキキッ!!

 びくんッ! と理緒の身体が、ディザステストの腕の中で跳ねる。技をかけている彼女の口端が満悦に歪む。この手応え、骨にヒビが入ったのだろう。元より触手で体内外を痛めつけられて処置もままならない体、ぶり返す快楽に理緒は翻弄される。そして、先の前哨戦を目の当たりにしていたディザステストが、狙わない理由のない急所でもある。

「あ、ぁ……ん! あっも、だめ、だめだめ止めてよ……ねー?! んンッ?!」

 それまで形だけでも抵抗を続けていた腕はするりと落ち、ぐったりとその身をディザステストに預ける。弛緩した身体は、本来注力してストッパーをかけていた秘処にも影響が出てしまう。

 ――チョロッ……チョロロロロッ……!

 コスチュームの股間部分を黄色く汚す温水を見逃す者など、誰一人としていなかった。手振りで隠す余裕もない。どころか痛みで体は動かず、完全に戦意を喪失してしまったように見えただろう。

「何か企んでいるようだがこの『ディザステスト』の絶対の力の前に不発のようだな! ハッハッハーッ! 正義の前に散るがいい!」

 力なくアヒル座りになる理緒の足を抱えて高く持ち上げると、そのままお尻から膝に落としていく。脇に頭を入れ、股間に腕を入れて高く持ち上げて、相手の尾てい骨を自分のひざに落とす、いわゆるアトミックドロップである。前方になす術なく落とされた理緒の体は、重力に従い自重を足し込んだ威力で尾てい骨を打ちつけられてしまった。ボギョ! と鈍い音がして崩れ落ちる。

「ぎゃああッ?!」
「ほらもう一発!」

 両腿の後ろを両手で掴んで、理緒の体を上に持ち上げる。痺れと強い痛みの残る理緒は、抵抗もできずそのまま再び宙空へ、そして転落、膝が理緒の股下に押し当てられる。そのままの状態でディザステストの右足がマットに着地することで――!

 ――ボッギョオオっ!!

「ぎぐっ……ぐうううううっ!」
「股間から膝に落とすリバースアトミックドロップもくれてやろう。貴様みたいなお漏らし女にはお似合いだろう? 何、その上、感じているのか! これはとんだお笑い種だ!」
「んぐっ、ああッ!? あっ、あ、あッ……!」

 渾身の力で股間を膝に叩き付けられた理緒。まともな言葉を返せるはずもなく、胸と股間とを掻き毟って無様に身を捩ることしかできない。神聖なリングを汚した罰だと一方的に詰られ、返す言葉もなく観客たちもその言葉に賛同したようだった。観客を味方につけ、絶対の自信を持って勝負を一方的に決める。それが『ディザステスト』流の戦い方である。本来なら理緒のUCが反撃するはずだったが、蓄積したダメージと望まない被虐心がその機会を逸してしまった。

「はッ!」

 ――ド、ゴォン……!!

 ディザステストの攻撃に、対戦相手の受けを考慮はしない。ゆえに有効だと見えれば何度でも同じ攻撃を繰り返す。

「んッぎいいいィっ!?」

 もう何度目になるだろう。片手で数えきれないほどのダメージが、理緒の恥骨へディザステストの膝頭を通して食い込んでいく。
 ディザステストの膂力は凄まじい、繰り返し理緒の身体を高く持ち上げ、そのまま後ろへと放り投げることはせず、真下に落として、膝でその臀部や直接股ぐらを打ち据えていく。
 恥骨に、華奢とはいえ自分の体重と加速力の、凄まじい衝撃を加えられた理緒。目を見開き、口を大きく開け、そこから舌を天に向かって突き出す。痛い。骨盤だけでなく、その奥で守られている子部屋までも衝撃が浸透していくのを感じる。歯を食い縛って悲鳴を飲み込むなんて、もはやできない。眉間にシワを寄せて目をつぶって、白目を剥いた無様な表情をほんの一瞬に止めようと努力するだけだ。
 そしてその痴態はリング脇のモニターに大きく、スローモーションで、リピートされる。

「んぅぁっ! あ……あっ、ぁ゛んう~っ! ん゛ほぉっ?!」

 涙と涎でリングをベトベトにしながら、苦悶に呻く中に、甘い感情が過る。
 ディザステストは喚く理緒の苦しみをよそに、上半身ごと突き入れ頭から抱え込むことに成功すると、そのまま彼女の足を持ち上げて肩に担ぎ上げ、いわゆるアルゼンチンバックブリーカーの姿勢に変わる。ミシミシと、背中が弓なりに反らされることによって背骨に鋭い痛みが走れば、下半身だけでなく上体までもが満身創痍となってしまう。

「そらそらそらあ!」
「いッ、い゛いいッ……!?」

 上半身を捩るようにして相手を振り回し続けるディザステスト。やがてバックドロップでマットへ沈めた後、そのまま強烈なストンピングを見舞う。無抵抗で踏まれる理緒。腹を庇えば胸元が、胸を庇えば腹が、バキボキと踏みしめられるたびに折れる音が情け容赦なく響き渡る。胃液が逆流しそうな嘔吐感に苛まされながらも、小刻みに揺れながら雨霰の袋叩きを耐えようと試みる。
 感覚が消え、指先一つ動けない片腕。背中を痛めた際に神経がイカれたのだろう。肩の方から感覚がない。隙だらけのまま蹴り倒され地面にうつ伏せに寝そべった彼女の背中を思い切り踏みつけた。

「うっぐぅっ! ……痛ぅッ……いン!?」
「笑ってるのか? 何をしても感じるとは! かえって都合のいい奴だ、小便垂れめ。こうして背後をとって……ほうら、コレで処刑してやろうか」

 ――ガッ……!

 同じく力の入らない足腰に、ディザステストの長く筋肉質な脚が絡みつく。そのまま足をフックされ、大股開きで股間を晒されれば、観客に向けて秘すべき花園が大胆におっ広げられてしまう体勢。
 しかし本当にキツい苦しみを与えられるのは頸動脈、首の辺りである。片手でいわゆるチョークスリーパーを決られてしまい、理緒は、タップする間すらなく、意識を深い奥底へと沈ませていく。涙、鼻水、涎を垂らし、下腹部からは小水と愛液を漏らし、それでも我慢していると大量の泡を吹いてガクガクと痙攣し始めた。

 ――じょろろろろ……!

「く……んヒぃ……ぉオ……ほ……ぉ!」

 下半身も見る影もなく湿り、濡れ、大量の液体が漏れ出して洪水の如く溢れていた。
 力無く、がに股で今もなおジョボジョボと音を立てて失禁する姿はこの世界に拡散された晒し者。ディザステストの言う「正義」に刃向かった者の末路としてこれほど相応しい姿もなかったろう。愚かで――無様。

「ここも弱点か。どうだ? ここを弄られるのは」
「や……めげェ……」

 目敏く見つけて、指で弾き、摘み転がし、捻り上げて潰す。
 思わず理緒が最後の抵抗をしようとした次の瞬間、足がふわりと地面から離れ、天地のひっくり返る感覚。
 またも持ち上げられたのだと自覚した時には、後ろ首を肩口に乗せられ、首と股ぐらから離した両手で両足首をホールドされてしまう。

 ――ギリギリギリィ……!

「もういや……もう、やめ……ンほお゛ッ゛!?」

 そしてそのまま、両足首を掴まれ力尽くで左右方向に引っ張られた。
 臀部を上に向かって突き出して、生暖かい秘処を晒す大開脚をさせられた破廉恥なポーズ。

「フィニッシュだ! このまま飛び上がり、叩きつけるッ」
「いやあああああっ!!」

 ――ドッガアアアッ……!!

 強引に抑え込まれた首と背中に負荷のかかる、人間二人ぶんの体重の衝撃。
 脳から全身へ、雷撃を食らったように身体の内側から揺さぶる激痛、特に百八十度開脚させられたひび割れた股関節はダメージが甚大だ。身体ごと左右に引き裂かれるかのような錯覚さえして、頭が真っ白に染まっていく。水平方向に広げられた足の付け根は、恥骨から関節部まで完全に骨折してしまってもはや立つこともままならない。

「んぎいいぃ゛おお゛お゛ッ?! あヒュッ……ひグっ……ん゛ォッ……」

 絶叫。そして、身体の上部から巡ってきた激痛が、股先に集約される感覚。痛覚が完全にバカになってしまい、快楽中枢も誤認して嬉しさ半分の小水を漏らしてしまう。
 ボロボロの意識の中、正確な認識はもう困難だったが、落下の瞬間に一際大きく無理矢理開かされたのだろう。足が閉じられない。加えて、背筋もガタガタで体を曲げられない。目も出血したのか視界は真っ赤なまま戻らず、息を吸っても苦しくなるばかりで吐き気に血反吐を垂らす始末。当然……意識を喪失してしまう。
 最後に視界に映ったのは、嘲笑うディザステストの瞳と、そこに反射する理緒自身の無様な敗北姿であった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

篁・綾
アドリブ歓迎。鼻フック、膨体、ふた以外は概ねなんでも可
衣装はエロニンジャスーツのまま

(ゆるく再生だけした)出たわね、道を見失った首魁。
やらせてもらうわよ!
(とはいえ、【グラップル】を駆使し打撃では互角に立ち回るが、組技ではやはり不利であり、組み合いからマンハッタンドロップを食らって悶絶、更にスタンディング・ドラゴンスリーパーの体勢に捕らえられ、首を締められながらハイレグレオタードを食い込まされる。絞め落とされこそしなかったが、今度は食い込まされた状態のままレッグスプリッドを仕掛けられ股関節を痛めつけられる。(UC的に)大きなダメージは受けないものの、相手の範囲から逃れる事も出来ずじっくり甚振られる。更にまたロメロ・スペシャルに捕らえられてしまい、被虐の記憶を呼び起こされマゾヒズムを感じながら、食い込んだソコを強調するように甚振られる)
(うまく行けば触手を生やして脱出、投げ技を仕掛けますが、ダメならコスチュームを剥ぎ取られた上、トップロープへのアトミックドロップを喰らい失神KOされます)



「出たわね、道を見失った首魁。やらせてもらうわよ! 悪行、後悔することね!」
「貴様が我が道を邪魔しているということを思い知らせてやろう! 《ラジカル・スペシャル・ハイスパート・レスリング》を受けるがいい!」
「く、なんて馬鹿力なの……!」

 乱打された体は見た目こそ再生すれ、その状態は万全に遠く及ばないことを綾自身が一番はっきりと知っている。切り札の《破侵桜禍》は行動不能を伴う諸刃の剣。タイミングを見誤ることはできない。対するディザステストはアイ・クイットを引き出すまで止まらない連続技の構え。忍耐力が試されることは必至であった。
 さて両者睨み合い、いざ力比べと組み合うのもそこそこに、素早い身のこなしで綾を正面から抱える。そのまま片膝を立てたディザステストは、挨拶代わりにとその体を離し落とした。腿を抱えられリフトアップされていた当然綾は落下し股間を強打する。

 ――ボグッ……!

「お……ぐッ?!」

 突き出された膝に綾の尾てい骨が強打される、いわゆるリバースアトミックドロップ!
 いささか挨拶にしては乱暴な、それでいて情熱的な交感に、綾はダメージも去ることながら一層の対抗心を燃やした。沸る己がこの外敵を屠れと叫ぶ。空を掴む手が、素っ首を捉えれば必ずへし折るだろう。それだけの気概が、股間にダメージを負った綾から溢れていた。

「気概やよし、だが片腕がお留守だぞ野狐!」
「ぐ……ふざ、けるなァッ!」

 ギリギリギリィと、綱引きのような力比べの後、片腕を脇に挟まれると、首を抱え込むように絡みつく。頭部が脇で締められることでロックされてしまう。

「ふううぅぐぅ……ッ!」

 ――ギリギリ……ギヂィ!

 首の関節が極まりもがく綾。その右手はロックされて無力化され、左手一本で振り解かざるを得ない。そして、そのままの体勢でゆっくりと立ち上がっていくディザステスト。

「お゛ぉおぉお……ン゛!?」

 いわゆるドラゴンスリーパーで首を極められたまま持ち上げられていく綾は、自身の肉付きのいい体躯を支えるために、否応なしに身体を大きく反らせながらの中腰姿勢になる。尻はマットに届かず、不安定なこの体勢では脚を伸ばして立ち上がることもできない。それどころか充分に支えきれない自らの体重が首に圧として掛かり、自らの首を痛めつける始末。身体を支えられなければ、自分の体重で文字通り自らの首を絞めることになるのだ。

「どうした、殊勝だな? ハッハッハー! 自分から股ぐらを開いて屈服のポーズということか!」
「ちがッ、ん゛っ……んン゛ぐぅ、っ……ッ!!」

 窮屈に両脚を折り曲げ中腰になり、涙ぐましい抵抗の末両脚を広げて下半身を落とした。それでも苦しみから逃れられず、今度は両脚を揃えて腰を突き上げ、続いて両脚を大きく広げて突き上げた腰を支える。
 両脚を広げては閉じ、尻と腰とを落としては突き上げ、少しでもダメージを抑えられる姿勢を探す。くぱくぱと股ぐらを開閉しハイレグレオタードのコスチュームの食い込み、果汁たっぷりの花肉の片鱗までもを観客に晒すような、霰もない無防備な股間部を晒す屈辱感。綾当人は顔を真っ青にし眉間に皺寄せた不細工な表情で、劣情を誘う姿勢になることまで考えが及ばない。
 無理な体制で固定され、必死に身体を支える綾。両脚をガクガクと大きく痙攣させ、抵抗すること数分、両脚が力尽きてガックリと折れ曲がると全体重を首に掛ける形になってしまい、完全に極まった首の関節の激痛が濁った悲鳴を催す。

「うゔッ゛ぐうえぇ……っ?!!」
「苦しみから解放してやろうか? これでも喰らえッ」

 綾は仰向けの状態で頭をディザステストの脇に入れられる。そしてその際どすぎるコスチュームの食い込みを確認、刺激するように掴み、股ぐらに指を引っ掛けながら、ぐいと持ち上げられた。

 ――ぐわっ……ド、ズゥンッ! べギィッ!!

「お゛ッ……ぎゅウッ?!」

 後頭部からリングマットに叩きつける、いわゆるリバース・DDTが炸裂する。持ち上がった刹那にそのまま尻もちを付くようにして腰を落とし、相手の後頭部をマットに叩きつけることで、二人分の自重と技の威力をダイレクトに頭部へ伝えたのだ。蛙が潰れた声を漏らして、大股を広げてヒクヒクと震える綾。誰がどう見ても続行は不可能そうだが……もう身体を支えられなくなった両脚は、膝を折り曲げてなんとか立ちあがろうともがく。
 それが、未だ相手に戦意あり、と認めたディザステストは技を仕掛けられる至近距離から離れようとせず、さらなる技を繰り出す。

「はああっ!」
「ぐっなんて悪意のある技を……!? ンぎゃあぁあ〜ッ!?」

 炸裂するディザステストのレッグスプリット。その瞬間、綾の口からまたも新鮮な悲鳴が絞り出される。平時なら百八十度開脚などものともしない、そもそも連続技のダメージなど大してないと見込んでいた綾が、ディザステストの関節技により、絶叫を上げさせられているのだ。
 両足で綾の左足を挟み込み、両腕で綾の右足を抱え込む、この単純な技がレッグスプリットである。
 このシンプルさに破壊力を加えるのが、百八十度に開いた股間をさらに左右に「引き裂く」アクション。足、股関節をも脱臼必至の処刑技に昇華するには十分であった。綾は、ただただ苦痛を和らげるために股間を抑え、まるで自慰でもしているかのように股間を擦る。
 そうすれば自然、被虐の記憶を呼び起こされマゾヒズムを感じてしまうのが道理。みるみる蜜が溢れ、股間が淫靡な涙に咽ぶ。

「あぐっ!? あがああっ!? ……あ……あっ……!!」

 腕、脚、そしてディザステストの胸ががっちりと綾の両脚をホールドし苛む。ディザステストが惜しげもなく晒した谷間は、妖狐である綾の強靭な脚を完璧に呑み込み、巨大な山脈ごと締め付けることで拷問の如き苛烈なはずかし固めを成立させるのだ。機能美を追求した、伊達や酔狂で選んだコスチュームではない。
 やがて、耐えかねた綾の腰が浮き上がり、皮膚へ脱臼寸前の股関節のシルエットが生ずる。

 ――ゴ ッ ギ ィ゛イ゛ッ!!

「オ゛んボォオ〜ッ?!」

 綾に対し渾身の引き裂きが執行された。抵抗も虚しく、鈍い音が響き、脱臼した関節が浮揚して無惨な有り様が露呈した。
 痛みで踏ん張りの効かなくなった股間から、黄金色の液体が勢いよく噴き出し、股間を抑える綾の両手とコスチュームの股間をびしゃびしゃに汚していってしまう。
 それ以上に、痛い。痛い! 痛い!! 痛みで頭が真っ白になった。何も考えることのできない世界に放り出されてしまったかのようだ。

 ――プシャァアア……!

「んんっ!? ヒィッ?! だずげっ……ッ゛!」

 腕と足の先がピンと張ったまま、バキバキと股関節から響く音、そして骨が折れる音。胴体と足が繋がる部分が完全に外れる感覚。
 あまりに痛烈で白目を剝いて口からぶくぶく泡を吹いていた。

 ――ボグッ!

「ぐぅえッ?!」
「立て。試合続行だ」

 強制的に覚醒させられる。うずくまる彼女の髪を乱暴に掴むと、無防備な腹に渾身の蹴りを叩き込んだ。情けない悲鳴とともに、綾の身体が宙に打ち上げられる。ディザステストは飽き足らないとばかりに、彼女の腹を叩き付ける。握り締めた拳を振り抜く勢いで鳩尾に――!

 ――ドゴッ! ドスッ! メキメキ……メリ゛ィ!!

「お゛ほぉッ! ヴっ! お゛ホオ゛おぉぉ……?!」

 容赦ない腹筋責めに、綾の口から酸っぱい胃液混じりの悲鳴が洩れた。感覚のない中で無理やり立たされがくがくと膝が笑い、少しでも股ぐらが広がれば垂直に蹴り上げる。痛みの残る箇所に追い討ちの急所攻撃! 腹筋の痛みで手一杯だった綾が、ぶり返してきた股間のじくじくとした痛みに、間抜けな喚き声を上げる。

「ンへぇえぇ……あ、あ、あひょこがぁああぁ……」
「アソコがどうしたって? そろそろ仕上げといこうか」

 手首を掴まれ、足を何かに絡まれるような感覚。とうにはっきりとした感触は失われていたが、まだ無事だった両肩に激痛が走る。気づいた時には、綾の体は宙に吊り上げられていた。絡められた足先から極められた肩にかけて稲妻のような衝撃。
 天井を仰いで濡れに濡れた大股開きを披露する、いわゆるロメロスペシャルに捉えられた綾。肩へダメージを与える技に股間を高く突き上げ泣き叫ぶが、まるで抜けられない。
 何度も、何分も、強制開脚に加え、肩にまでダメージを負い、ふくらはぎもイカれたところでようやくマットに倒れ伏すことを許された。受けられぬはずの技を受け続ける選択をした綾は《破侵桜禍》の触手を伸ばすタイミングを逸したどころか、逆に自分が伸びてしまう羽目になった。

 ――ぐいっ……!

 いわゆる抱え式バックドロップの、持ち上げる前の体勢。最初に繰り出した技の亜種、尾てい骨にトドメを刺すと同時に、この試合を締めくくるアトミックドロップを仕掛ける動きである。

「尾てい骨割りといきたいところだが、すでに感覚もないだろう? これで勘弁してやる!」

 もはや慈悲は、言葉の意味合いの一片足りともあり得ない。醜悪に張り付いた笑みは、対戦相手の綾により大きな屈辱を与えることのみに執着したものだ。本来なら自分の膝に尾てい骨から叩きつけるのだが、代わりにぶち当てるのはリングに張り巡らされたトップロープ。

 ――ドボッ!!

「あ!? ん……ンヴぅ……ッ」

 それが立っていようとする意思さえも粉砕する、手向けとなるとディザステストは知っている。踏み付ける、足蹴にする……敵を蹂躙し、粉砕し、屈服させる絶対的な力量差。こと超人プロレスにおいて、正義と彼女が信じているもの。

「お……ぼ……あ、ああ……あへえぇ……」
「失神したか。存外楽しめたな」

 砕け散った足腰、鬱血した首、外れた肩、ぐぢゅぐぢゅの股ぐら、蹴られて嬲られ内臓破裂した腹部、力無く折れた耳と尾、涙と涎と鼻水も拭えない顔、血の色味が滲んだ全身の痛ましい赤痣、意識は残っておらず、満身創痍の綾は、ただぴくぴく身体を震わせるだけだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
ビブリオ団長の千愛に|愛と裏切りの《その場のノリで》ラリアット一閃
何故ならアタシは狐軍奮闘で最強を証明するからだ!とストーリーを作ります
ヒールらしくゲス笑いをあげゴング前からレイラを攻めるぜ

キックの乱れ撃ちやルチャ戦法で試合を作るよ
フライングボディプレスが迎撃されるまでワンセットです

ラッシュはロープに追い込まれるとボコボコだわな
顔を腫らし鼻血を流し手足が折れても気合と根性で立ち続けるよ
これが革命…これはプロレスなのかと問うのだ

戦う顔は崩さない
ザ・フォックスへの|声援《コール》が飛び始めりゃ反撃開始だ
無論声援の火付けにサクラを仕込んでます

カウンターで腕を取って投げるぜ
掌底で胸を打って息を詰まらせ、カベルナリアで極めて人体破壊術を完成させる
危なくなる前に技を解いてフォール勝ちに切り替える
文句言われたら殺し合いじゃねーんだと糾弾してリングを降りるよ

油断させといて忍び足で再リングインしてパイプ椅子で頭殴るのはヒールのお約束です
アタシが最強だ!あいあむぱわー!

なお、只の一度も顔やお腹に攻撃しません


メアリー・ベスレム
あら、強者しかいない世界だなんてつまらないんじゃない?
|強者《メアリ》は|弱者《アリス》
|弱者《アリス》は|強者《メアリ》
どちらでもあるからこそ、復讐は愉しくなるっていうのに!

【挑発】【パフォーマンス】で見せつけながら
前半戦のダメージなどないかのように振る舞う【演技】
ああ、だけれど彼女ほどの実力者にはバレバレで
傷付いた箇所を重ねて攻められてしまうかしら!

【継戦能力】【激痛耐性】必死に耐えるけど
アリスの傷付いた肉体を破壊するには充分で
……ああ、だけれど「受け」を顧みないその激しさは
きっと、「寸止め」なんて生易しい事はできないでしょうから
【雌伏の時】の時はもうお終い!

【無防備を装い】トドメを刺しに来たところを【騙し討ち】
腕なり脚なり捕えて関節狙う【部位破壊】!
そのまま復讐を……と言いたいところだけれど?
残念、今回はメアリの為の|復讐《リベンジマッチ》ではないんだもの
メアリはここで敗けてしまっても、復讐すべき千愛が勝てればそれでいい
だからその為に、手足の一本ぐらい喰らっておいてあげるから!



「貴様の自慢の兵隊はこの程度か?」
「まだ、まだそんなことを……言っているのですか?! 力でねじ伏せる、強さこそが正義などと。それに人をまるで駒みたいに……!」
「言うさ。ああ言うとも! 貴様のような! 弱い! 負け犬風情に、どうして人の心を動かせるような正しさが伴うと思う? 愚かさここに極まれりだよ」

 リング外への口撃も冴え渡る『ディザステスト』レイラ・シングスは、口角を吊り上げながら団長の千愛を詰る。言葉を届けたければ力で思い知らせてみろというディザステストの主張と、彼女に力を振り翳すことそのものがすでに彼女の主張を受け入れているという、矛盾。千愛は俯く他ない。
 根底にあるのは業界への復讐心だろう。彼女の激しい言動に、レイラはリンチ同然の扱いで超人プロレス界を追放された。その心痛は理解できる。

「貴様にわかるか? この世界にいられないほどの狂おしい孤独と絶望感を。強者ゆえのこの苦しみを! 知るなら……まとめてかかってこい!」
「知らねえ知らねえよ。復讐と私刑を正当化していいほどの絶望なんかアタシは知らないね! なあ?」
「あら、強者しかいない世界だなんてつまらないんじゃない? それとも、ああ、なあんだ。ひとりぼっちが寂しいって泣く子ウサギの話かしら!」

 燦とメアリーがほとんど同時にディザステストに相対する。
 もはや敵意というより殺意に近い、ドス黒い感情を向けられて、戦慄するどころか闘志を燃やす二人。舌戦も楽しいものだ。沸る試合の火種となるのならば。

「だらっしゃあい!!」

 ――バキィ!

「へぶぅ?!」
「アタシは圧倒的ロンリネス! そういう理論で来んならこっちもその土俵の上でやらせてもらうぜ! 覚悟しとくんだな!」

 先手必勝、ラリアットが残酷に胸を穿つ。千愛の。
 ギャグ漫画ばりに転げ回ってリング外に吹っ飛ばされてく彼女を見送るメアリーも、ディザステストさえも、な、なんで……? みたいな表情を浮かべてしまった――が、気を取り直して(?)攻撃を開始する。燦のキャラ付けはともかく、二人が選んだのは飛びかかり組みつき、そのまま腕の一つでもいただいてしまおうかという魂胆。片やルチャ戦法、片やヒッププレス。

 ――ガッ! べきィッ!

「んグッ」
「あうっ?!」

 視界全てがメアリーの尻と汗に覆われて、これからなにが起こるかを本能的に察知してしまった時、素人ならばそのまま上体で受け止めてしまうことだろう。メアリーの巨大なヒップがディザステストの顔目掛けて振り下ろされた。漫画ならぷるん、という擬音が文字で出るに違いないほどの尻肉に、しなる鞭の如く回し蹴りをドンピシャ命中させた。
 燦の飛びかかってくる膝には、上体を逸らしてからの頭突きをお返しする。空中で受け身の取れない無防備なところを撃墜された形。溜め込んでいた息をまとめて吐き出し、リングに叩きつけられてしまう。

「うぅ……う〜」

 万全の状態なら尻を殴られたり、蹴られたりしたところで意にも介さず、柔らかい尻はかえってその攻撃を吸収しただろう。前哨戦で尻は全面的に叩き潰され、ダメージをもろに受けているとなれば話は別。痛みが、尻から脳天まで駆け巡るようだ。尻肌全体がヒリヒリと火傷したみたいに熱くなり、お尻の芯がズキズキ痛む。

「これが強者の一撃よ。淘汰される子ウサギは果たしてどちらのことかな? ん?」
「あら、口を開けば強者強者と。強者しかいない世界だなんてつまらないんじゃない?」

 |強者《メアリ》は|弱者《アリス》!
 |弱者《アリス》は|強者《メアリ》!
 そのせめぎ合い、二律背反があるからこそ、愉しいのに。挑発を交えながら、蠱惑的な笑みを浮かべてステップを踏む。痛む臀部もへっちゃらだと宣言するように背中を向けて揺すって、魅せる。

「かわいそうだわ! なんてかわいそうなのかしら!」
「……貴様には地獄を見せてやる。もはや試合など関係あるものか」

 信じられない膂力だ。引きずり倒しその片足を右手で掴んでぐいとメアリーを持ち上げてしまう。
 天地ひっくり返った首裏あたりに軽く足先を当て咄嗟にガードを作らせると、フリーの左手を垂直に股ぐらに突き落とした。

 ――ボギョッ……!!

「あ、ぐぅッ?!」

 縦方向の唐竹割りを喰らい、股ぐらから二つに引き裂かれた。
 鍛えようもない人体の急所攻撃に、背筋をくねらせて痛みから逃れようとする。その仕草も捕食者からすれば獲物を誘う蠱惑さであり、甘くどこか爽やかな香りがディザステストの鼻先を魅了した。

 ――ガリッ!!

「ああぁあッ?! アリス、た、べられてぇ……ッ?!」
「クッフッフフ……!」

 あろうことか公衆の面前で尻に齧り付くなど正気の沙汰ではない。桃か林檎か、これぞ採りたての甘露と宣言するのと同義で、血の滲む臀部へこれ見よがしにと歯を立てている。ぶちィ、ぶつッ、と何かが断裂するような音にメアリーは恐怖に打ち震えることしかできない有り様であった。

「アタシのことは無視かよ、そらっ!」
「死にかけの亡者もどきを気にかける必要がどこにある!」
「うおっ! 羽虫じゃねえザ・フォックスだよ」

 渾身のドロップキックをガラ空きの背中に放つ。クリティカルヒット――したものの、直立不動の柱の方が反応があるのではというくらいに手応えがない。蹴りの衝撃がまるで届いていないのか、体幹はほとんど乱れることなくそのままメアリーに手と歯とを用いた蹂躙を続ける始末。
 やがてそれも飽きたのか、そのまま振り回して燦へと投げつけてくる。

 ――バキッ!

「ぎゃんッ?!」
「あっわり」

 咄嗟のことでついその尻目掛けて蹴りを放ちメアリーを撃墜してしまった。南無三! これは不幸な事故だ。心の中で、上体をリングに沈め尻を突き出したポーズで轟沈したメアリーに誠心誠意の合掌をしつつ、燦は足を上げたまま考える。
 ――四王殺人剣『人体破壊術』。
 文字通り、その全てを尽くせば人体を破壊せしめるサムライ流の技巧。すでに殺意を込められるだけ込めた打撃を与えている……ハズだ。そのために努めてヒールムーブを行い、齟齬のない試合展開の運びとしている。ハズ、というのはその怒涛の攻撃力に未だ翳りの見えることのない点。
 手持ち無沙汰になったのか、寝そべるメアリーを肩に担いで持ち上げ、後ろから抱きつくように持ち上げて助走をつけた後、勢い任せに膝に叩き落としていた。尾てい骨がひしゃげ、叫喚をあげてのたうち回る、哀れなアリス。いわゆるスーパーハイアングル式のアトミックドロップを、力が減算された状態でこうも繰り出せるものか?

「お遊びはここまでだ、ザ・フォックス!」
「あっ? うぐぁっ!?」

 ディザステストの発言を問い質そうとした矢先、燦は下腹に灼けるような感触を覚える。恐る恐る下方を向けば、鉄拳が彼女の柔らかな腹の深くまで穿っているではないか。

「おっ…… げ、ごふぁあぁっ!?」

 重い。只管に重い! 腹の中を掻き回される感触に、堪らず燦は腹を抱えてゲホゲホ嘔吐く。

 ――ドドドドドッ!!

 ディザステストの追撃が降り注いだ。遊びは終わりというのも戯言でもないのか、パンチの雨霰を的確に捌く術を持たない燦は、その身に受けながら嫌でも後退を強いられる形となる。
 そして、瞬く間に、彼女はリングロープに背を預ける状態まで追い込まれてしまった。
 フック、フック、ストレート! 寸分違わぬ位置への連続攻撃。重く鋭いパンチが打ち込まれる。臓腑を食い破るような痛みと喉元に迫る嘔吐感で呼吸が止まる。

 ――ドゴッ!!

「ンぎっ?!」

 されるがままの燦の顎先に渾身のアッパーカットが炸裂する。チカチカと眼裏に火花が散る、舌を噛まないようにするので精一杯の燦、鼻血を噴き出しながらも不敵に笑いガードを固める。
 大ぶりに突き出されたエルボーを回避、しかしそれも目論見通り、ディザステストは燦の背中側へと回り込む。闇雲な裏拳で対処する燦をいとも簡単にいなすと、彼女の細腰を抱き込んで、ベアハッグで圧迫した。暴走する人間万力に締め上げられて、べきべきと背骨が悲鳴を上げる。

「ぐ……ぅ、がぁッ?!」
「離してほしいか? 離してやろう」
「えっ、ゴほ?!」

 ――ドッ!! メリメリメリ……!

 腹部に硬く大きな膝がめり込む。視界が明滅する程の威力、燦はディザステストの膝の上で力なく項垂れた。血と涎が燦の意思に反してとめどなく溢れてくるようだ。

「ごぼ……見事だぜ。一つ聞かせてくれ。これが革命……これはプロレスなのか?」
「プロレスではない。超人プロレスだ。打ってこい! 問答無用!」

 目に炎を宿し、片足を上げてバランスを崩しているディザステストの手を取ってリングマットへ投げつけた。
 周到な下準備もあってザ・フォックスへの|声援《コール》が観客席から届くのが反撃の狼煙となる。立ちあがろうと膝立ち状態の相手にそのまま滑り込み、立てた膝の上にのせて、顎を後ろに引いて反り上げる!

 ――ギリギリギリィッ!

「お゛のれ……ぇッ」
「こちとら最初からフォール勝ち狙いでね!」

 しっかり顎をホールドして燦自身の胸元に引き付けると、ディザステストの背骨がしなるように極まっていく。燦の体重がディザステストの顎に乗る関節技、いわゆるカベルナリア! 顎への重圧はもちろん膝が背中に食い込むため前後どちらへも負荷が甚大な大技だ。何より膝蹴りへの意趣返しでもある。
 ディザステストのフリーになった腕を、徐に取るのはメアリー。復活した彼女が片腕を内股に挟んでべきべきと捩じ折ると、さらにその手を組ませて、縛る要領で首をより強固に極める。いわゆるクロスアームカベルナリアを完成させた……!
 「寸止め」なんてできないのは、何もディザステストだけの専売特許ではないのだと、メアリーの爛々と輝く瞳が雄弁に輝いていた。リング上に燦然と輝く星は、一つだけじゃない。届かぬ星に手を伸ばすことも構わず、かわりにぎょぼっと呻くのみで。

「ぎょぼ……っ?!」
「《雌伏の時》はもうおしまい! ああ、ああ、メアリにもっと聞かせてちょうだい! 思っていた通りこの復讐はきっと、甘くて素敵なものになるわ!」
「ははっ、アタシが最強だ! あ い あ む ぱ わー!」

 見事に真上を向かせて、首を固めている。ディザステストの折れた自身の右腕が左腕を下から支えるように絡みつけており、左右どちらの腕を引いてもディザステストの首ががっちり固まる。
 文字通りに自分の首を絞める上、両手足の動きを二人がかりで封じられているため、もはや脱出は横入りでもない限り不可能――かと、思えた。

「ぬうぉおおおッ……!!」
「お前もパワー系かい……!」

 背筋だけで無理やりに振り解き、立ち上がってみせた。その力の源は果たしてどこにあるのか。鬼気迫る表情、気迫、ここが戦場かと見紛う殺気。

「その力は封じたはずだろ? どんなトリックを使ったか教えて欲しいもんだぜ」
「最強はこのディザステストだ! ダーク総裁の薫陶を受けたダークレスラーは……この命にかけて負けるわけにはいかないのだ!!」
「……あ?」
「……ふぅん」

 誰が兵隊で、誰が亡者で、誰に捧げる超人プロレスで、何を正しいと思うか、語るに落ちてしまった。
 居場所を失った人間が、命を使うことを命じられた末の選択は、どれほど尊くても、尊重するには、惨い。
 それしか選べなかったのと、数多ある選択肢から選び抜いたのとはその価値は天と地ほども違うのだから。

「捨て鉢かよ。あいにく殺し合いじゃねーんだ。処刑だなんだって最初から血生臭いんだよあんたは」
「残念、今回はメアリの為の|復讐《リベンジマッチ》ではないんだもの。ただの殺し合いなんて『ごめん』だわ」

 ディザステストの咆哮は、揃って二人の不興を買うものだったようで、かえって冷めてしまった。

「でもよ――」
「……でもね!」

 片や何処からか取り出したパイプ椅子を鈍器代わりに頭目掛けて振り翳して、片やへし折れた腕を再起不能にする勢いの関節技をその身ごと突っ込むように組みついて繰り出して、強烈な一撃を猛るディザステストへ真っ向叩き込む!

「復讐すべき千愛が勝てればそれでいい、よね?」
「ああ! これをまっさらな試合にするために、汚れ役でもなんでもやるのがアタシら流のスポーツマンシップってもんだぜ!」
「そういうこと。だからいくら不味くても、その為に、手足の一本ぐらい喰らっておいてあげるから!」

 耐えかね、大の字に崩れ落ちていくディザステストを一瞥しつつ、狐と狼は満足げに頷いたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イリスフィーナ・シェフィールド
勝つのが正義ですかなら1度追放された貴方は敗者で悪なのでは。
逆恨みで恥をかく前にさっさとお帰りになってはと挑発。

怒ったか衣装替えで凄まじいパワーが。
お色直しするなら此方もオーバー・ドライブですわ(サキュバスっぽいイラスト参照)

破廉恥な馬鹿にしてるのかと……あなたの衣装も大概だと思いますけど。
強烈な打撃で吹き飛ばされロープで戻ってまた打撃が繰り返され
打撃の嵐が止み倒れますが効いてない風に即起き上がります、受けた時に痛みは感じますが行動に影響はありません。
打撃が駄目なら関節技と腕ひしぎ十字固めや足4の字固め、ロメロスペシャル各種関節技で痛めつけてきます。
苦悶の声を上げつつもギブアップしませんし解放されれば効いてませんと起き上がり。
ならばと首絞めで窒息狙いの攻撃してきます、最初のパワーなら振りほどけなかったでしょうが効いてないのかと疑念を抱かれたか弱まっています。
振りほどいて反撃、お返しと打撃から関節技で逆にギブアップを迫ります。
最後に立っているものが勝者、諦めないことがわたくしの正義ですわ。


ユーフィ・バウム
《真の姿:蒼き鷹》維持

「受け」を認めない苛烈な攻めですね
ですが、貴女の革命をも内包するのがプロレス!
貴女が認めないならそれでも良いですが、
受け切るスタイルを私は完遂するのみですわ

体も温まりここから本番、参りますっ
汗まみれの体を真向から飛び込ませ、
功夫を生かしたプロレス風の打撃で押します!
近接範囲から逃げはしません!
相手が“受け”を顧みない連撃を叩き込んでくるなら、
めいっぱい受け切るっ!

あんっ!あぁっ!!……きゃぁあっ☆

豊満な肉体に食い込むプロレス技に
悲鳴を上げ体を揺らしますが、観客が湧くか
私への歓声が背中に届いた頃合いを見て
激痛耐性と覚悟で踏ん張りグラップルを生かしホールド
必殺の投げでマットに食い込ませ逆転しますっ!

受けての逆転、相手がそうしてくれるのを待つ訳ではありません
自分の攻めの時は、自分で取りに行く
それが私のプロレスですわっ!

怪力を生かしたホールドからの投げと
関節技と投げで押しし、観客にアピールして
いざフィニッシュムーヴ!
全力全開、限界突破の
《蒼翼天翔》でマットに沈めてみせます!



「勝つのが正義ですか。なら1度追放された貴方は敗者で悪なのでは?」
「クハッ、出戻りが悪だというなら、そこにいる蒼髪がこの場で紛れもない悪だな」

 顎でユーフィを指しては、大笑して嘲る『ディザステスト』レイラ・シングス。さて、ようやく体もあたたまってきたところだと、イリスフィーナの指摘を省みる素振りすらない。対等、などとは思わない。それどころか二人まとめてかかって来いと言い放つ始末。大胆にして不敵。しかしそれを補って余りある実力、そして溢れるカリスマ性。
 燃えてきた。否、ここで立たねば、燃えねば、女が廃る。ユーフィとイリスフィーナは頷きあう。

「ここから本番なのはこちらも同じ、参りますっ」
「うふふ、さぁさぁ、楽しみましょう?」

 精悍な掛け声とともに、身軽な身のこなしから渾身の飛び蹴りを放つ。
 しかしディザステストは見た目に反しイリスフィーナの攻撃を難なく躱す。反転、リングに着地すると、相手に背中を向ける時間を最短に、連続で蹴りを繰り出していく。

「破廉恥な衣装を着た馬鹿かと思いきや、なかなかな身のこなしじゃないか」
「あなたの衣装も大概だと思いますけど、はっ! せいっ!」

 はためく黒翼、真紅の角、ボディライン剥き出しの扇情的なコスチューム、イリスフィーナの方がヒールレスラーと言われても疑うことはないだろう。その耐久力でディザステストを押さえ込もうという魂胆だ。
 一方、同時に攻めるのが吉と判断したユーフィは対照的な蒼炎のオーラを纏い、苛烈な打撃を繰り返す。功夫仕込みの一発一発には闘気が乗っており、当たれば大ダメージは必至。掠るだけでも厄介で、ディザステストはコスチュームがみるみるうちに破損していくのを目を丸くして目の当たりにする。

「次はこちらの番だ、汗だくの小娘!」
「あんっ! あぁっ!!」

 だが、次の瞬間ユーフィは背中を打たれ、うつ伏せで勢いよく倒れてしまった。横臥する瞬間、極小の水玉コスチュームが食い込む。慌てて下腹部に手を当てコスチュームを戻そうとする。ガードが薄くなった顔面に蹴りを入れる。くぐもった声と口端を切った血がユーフィの口から溢れ、顎を上げた勢いでロープに叩きつけられてしまう。

「きゃぁあっ☆ か、はッ……よくも顔を……許せませんわっ」
「ならもっとくれてやる! おらっ! おらっ! おらぁっ!!」
「ふぐッ!? ぐ……ぅっ!?」

 徹底的、かつ執拗な打撃責め。エルボーや掌底ではなく、握った拳で容赦なく殴り抜いてくる。豊満な肉体に食い込む打撃がなけなしの体力を削り取っていく。やむなくガードを上げ顔を守る。汗と血が滲んで、視界が中々戻らない。

「おぼぉっ!?」

 ガードを上げたため、ガラ空きになってしまったボディへディザステストの鉄拳が突き立つ。

「ふン……ぐぶぅううっ!? お゙ッ☆」

 メリメリ腹に突き込まれていくディザステストの拳。苦悶の表情を浮かべ、ユーフィは口の端からとろりと涎を垂らす。
 連撃、連撃、連撃! 腹筋をめちゃくちゃにするようなラッシュ。イリスフィーナが立ち入る隙を与えない。
 それでもなお受け切る体勢を崩さないユーフィに痺れを切らすと、さっと背後に回りアバラ折りの要領で左足をフック、さらに右脚の付け根のあたりを両腕で抱えるようにロックしながら後ろへ倒れ込んだ。あとはリング上を転げ回る、異様かつ大仰な技の完成だ。ユーフィの肢体が股を何度もおっぴろげながら面白いようにリングを転げ回っていく。いわゆるローリングクレイドルという技、抵抗も出来ぬままにユーフィは足腰立たないほどに股関節を軋ませられ、三半規管を傷つけられ、天地を忘れるまで脳をドロドロに溶かされていく。

「あ゙っ!? おぼぼぼォロロ゛ッ?!」

 たっぷりリングを周遊し、一息つく間も無くさらに半回転体を回す。そのままシームレスに関節技、足首を抱え込むような美しい膝十字固めを炸裂させる。

「んぎぃいいい?! 私のあし、あ゛しがァッ?!」

 足首、膝、股関節の三点に痛手を受けて、ついに立ち上がれなくなってしまうユーフィ。「蒼き鷹」もその翼を捥がれれば脅威度は半減だろう。イリスフィーナが代わって果敢に立ち向かっていくも、その惨状に、彼女もまた浮き足立ってしまう。

 ――バシィイッ!

「くっ……う、卑怯ですわよっ」

 それは隙だ。横からもはみ出んばかりのイリスフィーナの隙だらけの尻に、鞭の如くしなる蹴り上げが叩き込まれる。

 ――グシャッ!

「ンぐっ」
「卑怯? なら望み通り顔面にお見舞いだ! ハッハッハー!」

 反撃がディザステストに届く前に、振り抜いたパンチがイリスフィーナの顔面を捉えていた。火花散り、バランスを崩してよろめくイリスフィーナ。《オーバー・ドライブ》していることで負傷の影響はないにも関わらず、なお平衡感覚を乱す強烈な力だ。銀髪に焦りの汗が滲む。

 ――ゴッ!!

「く……や、りますわね。くっう?!」

 焦りを的確に打ち抜くストレート。ただ真っ直ぐに、腰を入れて殴るだけの右腕のパンチ。だが、単純なだけにその威力もわかりやすい。左頬を打たれたイリスフィーナの身体は真横へと弾き飛ばされ、背中からマットに崩れ落ちた。
 トドメとばかりに空中へと舞い踊る。ディザステストらしからぬ拙速な攻めだ。仰向けに倒れるイリスフィーナに向かって、ディザステストが勢いをつけて飛び上がり、その肢体が重力に引かれてゆっくりと落ちてこようとした、まさにその瞬間。

 ――どガッ!

「お行儀よくとは、いきませんわねッ!」

 ネックスプリングの要領で空中に跳ね上がったイリスフィーナが、ドロップキックでディザステストの体をガツンと蹴り飛ばした。
 空中でバランスを崩し、ドスンと尻もちをつくディザステスト。一方、イリスフィーナは、相手を蹴った反動でくるりと優雅に後方一回転、距離をとって立ち上がる。

「この手応え……?」
「くッうう、ヒロインは優雅に、かつ大胆にでしてよ!」
「その気ならこちらにも考えがある。これは躱わせまいッ」

 再びその身を華麗に踊らせて、空中で姿勢を制御しながら放つ、ガッチリと極まった跳びつき式の腕十時固め。

 ――ボ……ゴンッ!

「……え?」

 呆気ない。鮮やかな手際に痛みもない。鈍い音がイリスフィーナの右肩から響く。自分の体に何が起こっているのか理解できない、そんな表情がありありと浮かんでいる。右肩にゆっくり視線を落とすと、腕はブランと垂れ下がり肩の関節が異様なほど引き延ばされていた。数秒間は気づかないほどに、痛みすらなく綺麗に――外された関節。
 その外れた腕で、無理やりに顔面を殴りつける。

「ごほッ?!」
「んん、グゥうん……効いていませんことよ」

 痛みに悲鳴が抑えられない中で、痩せ我慢のように打ちつけたパンチではない。ディザステストの鼻柱をへし折る勢いの、全力の一撃である。
 さすがに面食らう。関節を破壊されてなお負傷の影響を受けないなど、己の能力に疑問を持つに十分な証拠。不死身か、己を上回る練達者かと、ディザステストにいよいよ焦りの情念が湧き立つ。

「馬鹿な……有り得ん。有り得ないぞぉおッ」

 ディザステストはそのまま流れるように寝技へ繋ぐ。両腕でイリスフィーナの右足をとり、両足を左足に絡め、思い切り引き裂く。いわゆるレッグスプリッドが極まったのだ。百八十度まで引き裂かれた股間の激痛に、悲鳴を絞り上げる……はずなのだが。

「ひぎっ!? はぁっ……はぁっ、効いてませんと言ってるでしょう!」
「貴様……貴様ぁ小癪な真似を……! 受けたダメージを先送りにするか、さもなくば他人になすりつけているな? このディザステストの崇高な技をよくもッ」

 ――ドゴッ!

「ブルーバードは不滅の象徴ですわ……!」
「ぐう……貴様もか? 死に損ないどもめ……!」

 負傷した足腰をものともせず、両足を揃えて首筋に蹴撃を放つユーフィ。口端に唾して捲し立てていたディザステストは不意の一撃でリングに叩きつけられる。いわゆるフライングニールキックを決めて、前方やや斜めに一回転し、着地。はためくコスチュームはまさしく蒼い猛禽類のよう。傷つけられても何度でも立ち上がり、飛び立つことができる。
 股裂きに加え、足を外転させて確実に股関節と下半身のバネを壊されてなお、凛々しい。

「今度こそ正真正銘、お見せいたしますわ、私のフェイバリット・ホールドを!」
「合わせますわ。いえ! わたくしと呼吸を合わせなさい!」

 短い言葉とアイコンタクトで連携をとる。イリスフィーナが背後からディザステストを押し込み前屈させ、そこに覆いかぶさるようにユーフィが組み付いた。
 覆いかぶさるように組み付いたユーフィは、そのまま思い切りディザステストを担ぎ上げる。ユーフィの下半身はガタガタ。しかし、ダメージを無視できるイリスフィーナがディザステストの脚を掴んで同様に担ぎ上げ、ユーフィをサポートする。ツープラトンの、いわゆるパワーボムの体勢だ。

「はなせっ、くそっ、こんなはずではッ」
「いきますわよ! 必殺のブルーバード・ボム!」

 ――ガッ!

 イリスフィーナが両手でディザステストの足首を掴む。

「よくってよ。スーパーヒロインの、フィニッシュの名に相応しい一撃を!」

 ユーフィがディザステストを担いだ状態で高く跳ぶ。
 呼応してイリスフィーナも同時に飛び上がっていた。
 次の瞬間、イリスフィーナが勢いよく両脚を大きく引き裂いた。空中で引き裂かれるディザステストの股間。イリスフィーナはそのまま前に倒れ込むように、足首をリングへと叩きつける。そして、同時に、決死のユーフィのパワーボムが炸裂する。

 ――メギメギぃ! バギィイィいいッ!!

「おごォオぅ?!」

 過激なコスチュームが引き裂かれん勢いで、大きく股を裂かれたまま、パワーボムによりリングに叩きつけられるディザステスト。正義、陥落。足首もリングへと叩きつけられ、大股をおっぴろげにした、パーフェクトなまんぐり返しを晒してしまう。背中に首、そして股ぐらと股関節を根こそぎ破壊する、凶悪な股裂き式のツープラトン!

「ごめん遊ばせ☆ これが全力全開の、蒼き飛翔ですわよ!」
「歓声が心地よいですわね。こういう声援も嫌いではなくってよ」

 仰向けに、上体へ両足を曝け出したモロ出しの痴態をリングに晒した自称正義の強豪プロレスラー。
 勝者として君臨したのは、巫女と、そして蛮人。一見ミスマッチながら気骨を同じくする、麗しい協演の大勝利であった――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォス・オネイロス
NGなし
アドリブ・極ハード大歓迎

ダメージが抜けきらないままの連戦は厳しいけど、
そうも言っていられないね。

短期決戦、と思い切り仕掛けていくけど、
打撃を捌かれて捕まってしまうよ。

そして足を掴まれたまま腹パンされ、
意識がぐらついたところをバックに回られ、持ち上げられて、
そのままバックドロップ……かと思ったら、ロープに股間を打ちつけられるね。

その衝撃に思い切り蜜を噴きこぼしてしまうと、
相手はそのままロープを使ってさらに股間を責め立ててくるよ。

何度も絶頂させられたところで、ロープに振られるけど、
足腰はもう快楽でぐずぐず、走ることもできずにリングに崩れ落ちちゃうね。

動けないでいるわたしに、相手は組み付いてきて、
そこからはそのままサブミッション地獄に引きずり込まれるよ。

肘や膝の関節を壊され、絞め技で落ちる寸前まで追い込まれ、
そのたびに絶頂してリングを涙と涎と愛液で濡らしてしまうね。

そして半ば気を失ったわたしをまんぐり返しにして、観客に股間を晒すと、
思い切りのフィストファックで、とどめを刺されるよ。



「まだまだ……ディザステストが、正義が! この程度で終わりはせん! そこの先ほど白目を剥いてた貴様! 次は貴様の番だ」
「(うん……ダメージが抜けきらないままの連戦は厳しいけど、そうも言っていられないね……)」

 “正しい私の正しい力”を信じ抜きたい『ディザステスト』レイラ・シングスは、形勢不利と見るや否や、己の自信を確固とすべくあえて手負のフォスに狙いを絞るつもりらしかった。とはいえここで拒絶すれば、試合をする前に負けを認めるようなもの。先陣を切ってくれた他の猟兵に示しがつかない。
 幸い少し休憩したお陰で、一から二割程度の体力は回復した。

 ――パシッ!

 と、思っていたのも束の間。

 ――バギィイイ……メリメリ、ゴリュッ!

「げぶううっ?!」

 ハイキックを繰り出した、まさにその足を掴まれたフォスのボディーへと反撃掌打が突き刺さった。聞くに堪えない喘ぎ声を上げ、彼女の口からはスプレー状になった大量の唾液が噴き出してしまう。

「うごぶううぅ! か、は……ッ……おな、かァ、躊躇なく、ひどい、れす……」
「フフ、ヒヒ、そうだそうだ。この手応えだ。アッハハハ! こうでなくては、正義とは、力とは、こうでなくてはなぁ!」

 ディザステストはご満悦だ。数度のやり取りで、今相対しているこの女はどうやら特別な技や細工を繰り出してくることはない、と確信したためだ。超人プロレス界において「天才」であった、己に! あろうことか無策! これがおかしくなくて何だという話だ。そんな愚か者を成敗するのが正義の振る舞いというものだろう。観客もそれを望むはずだ。
 ディザステストはフォスの両脇に手を入れて、その身体を持ち上げると、ロープにフォスの股間を叩きつけた。

「んひぃっ?! ふへぇ……え、えぇっ……!」

 その衝撃に思い切り蜜を噴き溢してしまうと、腹の底から声を張り上げる。取り乱すフォスの腹に正拳突きが放たれる。平時の凄腕エージェントならば痛みと屈辱しか感じられないはずが、彼女の股下からはとめどなく蜜がしたたり落ちていた。
 そのままそれを潤滑液にするように、無理やり掴んで肢体を摩る要領でスライドさせる。

 ――ぷっシャアアアァア……!

 フォスが悶えるロープの下は、湯気の立つような艶っぽい水溜りができていた。膣液を衆人環視の前で垂れ流す恥辱。フォスは身悶えして、しかし苦痛ではなく確かに、その内に、背徳的な快楽をむらむらと生み出していた。今が試合中でなければ狂ったように股ぐらを掻き毟っていたであろう。フォスの心身は限界だった。そしてこれを打開する技能が発揮される気配もない。
 余裕綽々のディザステストはフォスをうつ伏せに寝かしつけて、膝裏に自らの足を乗せると、後転の要領で彼女を海老反りで吊り上げていった。

「んひぃっ!? わたし、あッ、いやぁああ……ッ!」

 いわゆるロメロスペシャルの体勢、高く反り上がって、四肢を拘束されたまま身動ぎできずに、天井のスポットライトを見上げさせられる屈辱感がのしかかる。本来なら鉄壁にすべきカンパニーマンの秘匿の花園が、たっぷり十分近くに渡り衆目に晒されてしまう。痛み、甘さ、恥ずかしさ、浮ついた高揚感、綯い交ぜになった感情の坩堝で、フォスは舌が取れるのではないかというぐらい突き出す。チャームポイントの額には病的に脂汗が滴り、端正な顔が崩れる勢いで目を見開いて身を捩る。
 飽きて解放された――かと思いきや、続け様に極められる関節。両脇に腕を差し込み、両足をフックさせて、後方に転がり込んだ。

 ――メキメギメギィ…‥グギッ!!

「んぎぃいいいッ?!」

 自ら開脚して相手の股をおもいきり開かせる、いわゆる恥ずかし固めに見かけほどのダメージはない。ましてや義足のフォスだ……なのだが、度重なる重点的な股間責めにより恥骨や関節はガタガタ。結果的に勢いよく開かれただけで連戦の無理が祟り、致命的な苦しみとそれを覆い隠すような強烈な快楽を催すことになる。
 それからさらに十分ほど、今度の今度こそ解放されて、フォスは恥も外聞もなく、股間を抑えてリング中央を転げ回る。

「ぴぎぃいぃッ!? はッほひぃいぃッ?!」

 四つん這いで突き出された尻を、ディザステストは乱暴に蹴飛ばした。そのまま横髪を掴んでリングロープへと振る。

「ちっ重い……義手か?」
「ふンみゅう……」
「オラっ!!」

 崩れた足腰は今すぐにでも前のめりに倒れたいと叫んでいる。足腰はもう快楽でぐずぐず、走ることもできずにロープに体を預けるのみ。
 しかし、力と正義の使徒であるディザステストはそれさえも断じて許さない。フォスの顔面にストレートが突き刺さる。口元が無様な音を立て、口内を切った鮮血が吐き出された。ディザステストはそのリアクションにむしろ凄惨な笑みを浮かべて、彼女の顔面に次々とパンチを放り込んだ。

「豚みたいに鳴きな! オラオラオラァッ!」
「ん゛ほオ゛っ゛! げ、ぶぇッ、ブひュぅうァッ!?」

 息もつかせぬ猛攻に晒されて、フォスは踊るようにリングを暴れ回る。いつ終わるともしれない地獄のラッシュ、肉体的にはもちろん、フォスの精神をも抉る鉄拳の嵐! 凄まじい刺激にみくの意識は動転し、視界が白から赤に染まっていく。
 全身の痛みを清算する暇もなく、今度はフォスの女の場所へと、ディザステストの鋭い足先が叩き込まれた。女子選手には凡そ御法度とされる攻撃――であるが故の有効打。人生で経験する必要のない鮮烈すぎる痛みに悶絶の声が捻り出される。

「ンほ゛ォ゛っ!! んぎぃいい〜ッ!?」

 ――ヒュッ……バギョ!!

「ひぎゅゥううッ!? 女の大切なところを、二度もぉおおッ、しょ、正気なの……ォッ?!」

 力の抜けたフォスが、膝から崩れ落ちていく。顔色は真っ青を超えて土気色に、銀の髪は汗で湿り、舌先を口腔に戻すこともできずリングに涎を垂らす。
 一度でも悶絶級の攻撃が二度までも、先の痛みも抜けきらない秘部に掟破りの追撃が振りかかったともなれば、避けられない状態であった。
 尻を突き出して股間を押さえブルブル震えているその姿が、ディザステストの嗜虐心を掻き立てることを、満身創痍のフォスは気づけていない。そのまま引き摺り込まれるのはサブミッション地獄。手始めにその長い両脚でフォスの頭を後頭部から挟み込み、そのまま自身の膝下に自らの足首を通してアラビア数字の4を意識した形に極める、いわゆる首4の字固めを仕掛ける。挑発的に腰を浮かせて頸部が圧迫される。

 ――ギリギリギリ……ッ!

「んぐっ、んぁ……!」

 太ももを締め付けるように力を入れる。それどころか、太ももを締め付けながら、フォスの上半身に手を伸ばした。呼吸困難に陥っているフォスに抵抗の余地はない。その手つきで先端が固くシコっているのを確認すると、嘲る調子で笑う。太ももの柔らかさと絞めつける圧力、ゴシゴシと荒っぽい手つきで胸元を乱暴に弄られ、酸素を求める脳は危機的に敏感になった全身が快楽を貪ってしまう。

「うぐ、ぃぎぎぎ……! んひぃいいッ?!」
「涙と涎と愛液で神聖なリングを穢す、さぞ喜悦だろうな! そしてそんな惰弱を成敗するのがこのディザステストの指名よ」

 社会人失格と名指しで言われてるかのような屈辱。白目を剥いて失神寸前になったところで技を解除され、無理やり立ち上がらされて次のセットアップに向かう。フラフラのフォスの背後からディザステストは両足を内側から引っ掛けると、その両手をチキンウイングで絞り上げる。
 すぐにフォスの義手に勘づくが、構わず強引に極める。

「ああぁぁん……?! も、ゆるじ、ぎぃいいッ?!」

 ――ごギッ……!

「ンぎょおおお〜ッ?!」

 あまりの激痛に顔を歪め、解放されるや否や悶絶していた。辛うじて動くのは義手だけ。関節を外された腕は戻る兆しはない。トドメとばかりに、無防備なフォスの股間に右足を乗っけると、グリグリと踏み躙った。M字の体勢を解きディザステスとの剛脚を退かそうと抵抗するが、片手ではびくともしない。
 両足を手でガッチリと掴むと股ぐらに当てた右足を小刻みに動かす。いわゆる屈辱技の電気按摩! 絶えず襲い掛かる振動に、股間は崩壊寸前の衝撃に晒される。

「うぎゃあ?! ギいいやァ〜?! やめでぇええッ?! 股が!! おまたがあぁッ?!」

 体を反ったりくの字に曲げたりと快楽の奔流から逃れようとする。逃れられず快楽に飲み込まれ、フォスの股間から、勢いよく透明な液体が噴水のように噴き出してもなお、止まらない。股間はビショビショでリングに真新しい水溜まりを作り、太もも辺りまで濡れても、それでも止まらない。

 ――ボギョン! め、ごギッ!

「ウグぅっ! ぐうぅッ?! んぎいッ! ギいぃっ! もうやらぁ゛ぎああっ!?」

 結局止まったのは、引き抜くように股関節を外し、さらに組みついて膝関節まで外したところだった。腕、脚、両方が不全となった今、試合の続行は不可能だ。まもなくこの地獄は終わる。フォスはまだ正気を保てている自分への安堵に浸っていた。

 ――ズッッッッポォン……!!

「ぬ゙ッ……ほお゙ぉ゙お゙~~ッ?!」

 ……先ほど豚だなんだと言われていたが、それさえもまだ生温い。鼻の下を限界まで伸ばしきった、寄り目アホ面。畜生のような濁り切ったオホ声を上げた。
 ディザステストの腕がフォスの股ぐらに深々と突き刺さったのである。

「お゙……ッ。ん゛……ほお゙ぉ゙ッ」
「ふん。あとで消毒しなくてはな。ハハッ! アッハッハー!」

 ぶくぶく泡を吹き、虫の如く腑抜けた声で呻く。拡張された肉穴が観客に晒される、もはや元通りにはならないであろう、ぽっかり空いた孔。
 当の本人はそんな事など知る由も無く、敗北の夢見に堕ちていく。鼻の下を伸ばしきった白目豚面のまま、ちょろちょろと失禁し続けるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リカルド・マスケラス
引き続き千愛の身体を借りて戦うっすよ
「なーんか、話聞いてると窮屈そうって思っちゃうんすよね」
レイラの話を聞いてそう思ってしまう
「プロレスはスポーツでありエンターテイメント。たとえ試合で負けようが、観る人を感動させ、勇気づけることが出たのなら勝ったようなもんっすよ」
強さこそ思考っていう考えも否定する気はないっすけど
「『革命』で自分に合わない思想を切り捨てるって言うのなら、追放した側との違いは何なんすかね」

「千愛なら、相手のユーベルコードなんて怖くないっすよ」
千愛の|肉体《本》に刻まれた技の数々。その|記憶《ページ》とレイラの技を結びつける。憑依で強化されたフィジカルで攻撃を受け止め、彼女の【学習力】で情報をアップデートさせれば対応できるはず。受け止めている間はしんどいと思うっすけど
「牧志・千愛というレスラーを甘く見過ぎっすよ」
そのまま技を返して、レイラを掴んだまま空中に飛び上がる
「頑丈な相手にしか使えない、自分のフェイバリット、今回は特別に見せちゃうっすよ」
最後は【暴風直行便】を叩きつける



「なーんか、話聞いてると窮屈そうって思っちゃうんすよね」

 窮屈。このリングに、舞台さながらの広さと雄大さを求めて、観客の喝采に応える、それが超人プロレスというものだ。嘆息して然るべきだろう、強者しか生きられない、生きてはいけない世界など。熱帯魚の泳ぐ水槽よりも狭苦しく感じる。リカルドは、千愛の額に在って、そう思う。
 笑ったり、否定する気も、毛頭ないが。強さこそ至高、それも考えの一つだ。
 考えを否定するという在り方が、窮屈だというのを『ディザステスト』レイラ・シングスは理解しているだろうか。総統の麾下で、「骸の穴」として立ちはだかる彼女は、考えを巡らす余裕があるのだろうか。

「プロレスはスポーツでありエンターテイメント。たとえ試合で負けようが、観る人を感動させ、勇気づけることが出たのなら勝ったようなもんっすよ。現に、千愛の姿にこれだけの観客と――猟兵の助力が集まった。もしアンタが逆の立場ならどうだったっすかね」
「何が言いたい……?」
「質問を変えるっすよ。『革命』で自分に合わない思想を切り捨てるって言うのなら、追放した側との違いは何なんすかね」

 独りよがりの、孤独。
 相手あってこその超人プロレスが、破綻してしまう根本的な矛盾。己の選んだ者、選ばれなかった己、あまりにもあんまりなアイロニックな構造に、ディザステストは、怒りで顔が赤くなるのを通り越して青くなる。純然たる殺意と言っていいだろう。元より「ビブリオバトラーツ」団長である牧志千愛を排除すればこの試合は終了する……!

「アンタは……いや、それ以上は腕っぷしで語るべきっすね」
「来いっ、かかって来いっ、レイラ! 勝負といきましょう」
「私は『ディザステスト』だ! 貴様だけは――この手で、殺す!」

 右手を顔のあたりに構える《ラジカル・スペシャル・ハイスパート・レスリング》のスタイルで、リカルドに襲いかかる。数々の猟兵を苦しめた連続攻撃は、「受け」知らずでリングの狭さでは逃げ場もない。紫の髪がはためくのを見たら死を覚悟した方がよいだろう。

「千愛なら、相手のユーベルコードなんて怖くないっすよ。落ち着いて、結びつけるっす」
「結び……?! 何を、何を……ガっ?!」

 ディザステストは千愛の両肩を掴むと力尽くで体勢を崩し、下から突き上げるように膝を打ち込む、いわゆるニーリフトで強襲した。足がマットから浮く程の威力に、千愛は息を詰まらせる。
 続いて、ディザステストは股間に右腕を差し込み、肩に担ぐように千愛をリフトアップ。そのまま抱え投げでマットに叩きつけた。

「げふぅうっ! ぐ……ぐう」
「ハッハッハー! どうだ!」

 衝撃が千愛を襲う。しかしリカルドは頭部に在ってどっしりと構え揺るがない。背骨が痺れるような痛みに、マットの上で背中を反らしたまま硬直してしまう千愛。やはり無謀だったのか。悔しさに熱い涙が全身を走る痛みはずっと引いていない。

「いいっすか。ずっと痛みが引いてないってことは、それは今受けたダメージじゃあない。今のはうまく受け止められてるっすよ。言うなれば、千愛の|肉体《本》に刻まれた技の数々を、|記憶《ページ》とレイラの技に――」
「結び……つける……?」
「それっす!」

 そう。何も結びつける先が、自分の技と自分の体である必要はない。自分で自分を鞭打つ、トレーニングでは有効だろう。でもリングの上では、一人じゃない。かけてくれる相手がいて、かけられる相手がいる、だからプロレスは成立するのだ。試合として興行として、人々に愛される。革命しなければならないほどに見切りをつける、そこに執着はあっても「愛」はないだろう。
 憑依したリカルドには、現地のスポーツアスリートとして訓練してきたフィジカルが裏打ちしているのを、体感している。

「強さだけで推し量れない厚みってやつを、教えてやる時っすよお!」

 千愛をロープへ振り、大ぶりにラリアットを繰り出すディザステスト! だが、その腕が捉える前に、さらに低く体勢を屈める。振り抜かれた腕を潜り抜けた千愛は、もう一度ロープの反動を利用して方向転換し、蹴ってくださいと言わんばかりの背中へドロップキックを放った。

 ――ドガッ!

 リカルドの憑依で倍増した打撃力が生み出した衝撃か、背中に受けてバランスを崩すディザステスト。前方へよろよろ足を動かしてしまう。
 千愛は相手の背中目がけて大きく跳躍する。千載一遇の好機を見逃す「読書家」ではない。
 すたりと肩の上に乗ると、肩車のような体勢から両脚でディザステストの首を挟み込んで、バク宙の要領で回転しつつ、巻き込んだ彼女の脳天をマットへ真っ逆様に叩きつける!

 ――ドッゴォ!!

「ふぐぉッ?!」

 いわゆるリバース・フランケンシュタイナーでディザステストの後頭部をマットに叩きつけた。ふわりと舞い上がった狐面を、空中でキャッチすることも忘れない。その仕草に、パワフルながらも優美な、気概の余裕のようなものが溢れていた。観客からはわっと歓声が上がり、ボルテージも鰻登りだ。

「ウェーイ! この調子で押せ押せっすよ、大丈夫、レイラも十二分にタフっすからね」
「ええ、ええ! ここからは技の掛け合い、いえ魅せ合いですね!」
「くう……ズルい、ズルいぞ貴様ら! どうして貴様らだけが歓声を受け仲間を得ることができる?! こちらの方が才能も実力も、ずっと、ずーっと上回っているのに! 私の方が――プロレスを愛しているのに!」
「聞き捨てなりませんねっ」

 ――ドゴッ!

「んぐぅ!」

 咄嗟に上体を反らしてクリティカルヒットを避けたものの、ボディアッパーがディザステストを打ち据えた。そのまま左右の連打が、何度も何度も彼女の剥き出しのわき腹に突き込まれていく。

「それが本心だというのなら、全力でぶつかり合うのみっ」
「急な攻めは禁物っすよ!」
「黙れッ。正義の行いを正そうとは思い上がるなよ!」

 そもそも才覚だけでなく体格もディザステストの方が上回ってはいるのだ。追い討ちの掌底をギリギリで見切り躱し、リーチ差を生かして平手打ちを千愛の横っ面に叩きこむ。それでも平手打ちに怯まずに放った蹴りをまたも回避し、流れる動作で放った裏拳を潜り抜けて千愛に肉薄。そのまま頭突きを食らわせた! 巌のような頭が千愛を吹き飛ばしてしまう。
 痛い。否、痛くない! 前の試合に繰り出してきたものと違い、苦し紛れということもあるだろう。プロレス技ではない。気持ちが入ってない。こんなものが、ぶつかり合いでは断じてない。

 ――ボグッ!

「ぐふッ?!」

 隙を突き、千愛の古傷だらけの腹筋へとディザステストは膝をメリ込ませた。苦悶の表情を浮かべ、千愛の口から涎の飛沫が飛ぶ。眼鏡がリングに落ちるのを、リカルドが身を挺して引っ掛けることで防いだ。

「ぐ……ふふ、軽い、軽いですね。これなら、いけます。お願いします!」
「あいよぉ! 空の旅へご招待っす!」

 両腕の筋肉が盛り上がり、フィジカルにMAXのエネルギーを送り込む。その膝を抱え上げて、ぶん投げた! 目指すはコーナーやリングではない。はるか上空、その彼方を目指すが如く。

「なンっ、にぃいいいいッ?!」

 これはセットアップだ。空中においてリング上の如く強烈な関節技を極め、ホールドをかけることで破壊力を倍増しする、それが|暴風直行便《ストーミィデッドドライブ》の真骨頂である。
 膝蹴りで勝負を焦ったディザステストが掴んだのは地獄への片道切符だ。
 高速で叩き上げられた無防備な無重力下で仰向け状態から足首を持ち上げられ、身体を折り曲げさせられる。その足を千愛の足でホールド! さらに両腕を足の内側から通してがっちり掴むことにより、脱出不能の形を作り上げた。

「おおぉおおおッ!」
「気合十分! さ、ちょっとしたドライブに付き合ってもらうっすよ」

 音速もかくやのスピードで飛翔した後に迎えるのは――自然落下。先ほど空中で相手の手首をクラッチ、さらに両脚で下半身を抑え込み、うつ伏せに折り曲げかつ股裂きにした状態。受け身はおろか頭を曲げることすらできず、二人がそのまま向かうのは一直線、リングコーナーの鉄柱の先端だ。そこが狙うべき箇所、そして横暴を働いたディザステストが辿り着く、終着点。

「まさかコーナーポストにッ……ば、止め、止めろオォォッ!」
「これでも相手は選んでるつもりっすよ! もっとも、目的地はアンタの敗北っすけどね!」
「たあああっ!!」

 ――ドゴォ゛オオオァ……ッ!!!

「おっごぉおおおおッ!!」

 コーナーポストの先端にディザステストの頭部がしたたかに打ち付けられる。リングどころか会場全体を揺るがすインパクト音。奇妙奇天烈に空中で絡まり合ったシルエットが、ポストに当たったことでぱらりとほどけ、正義を標榜する天才を崩れ落ちさせるに至る。《暴風直行便》の名に相応しいドライバー技を、完璧に決めて見せたのだ。
 ……やりすぎた。顔面のあまりの惨状に、千愛がおずおずと確認を取るが、ディザステストの心はまだ折れていないらしい。
 とはいえこの試合の勝利の栄光は、リカルドが手にしたのは間違いない。驚き半分だった観客たちから万雷の喝采が送られ、熱気にむせ返りそうになる。

「あー、恨むならその頑丈さを恨むっすね、レイラ……って聞こえてないっすか」
「ばか……な゛っ……お゙……」

 勝者の名乗りを上げ、マイクパフォーマンスもそこそこに千愛は速足でリングを降りていく。
 嬉しい。嬉しい! 勝った。勝った。勝った! 止まらない手の震え、体に刻まれた熱狂と痛烈な技の記録。

「やりました、やりました……ありがとうございます! 使い込まれた、皺に、解れ、折れ目、私の理想に近づきました。この身を『聖典』に、ふふ、ふふ」

 勝利のみならず。むしろ、自分だけの「愛読書」……自分の体が、あらゆる技を刻んだ肉体に近づいた興奮に打ち震えていたのだ。
 彼女の喜悦を知るのは、最も近くにいたリカルドだけなのだった――まだ、今は……!

「ささ、次はどんな相手とバトるっすかね、千愛」
「い、今は、今は少し休憩ですね……!?」

 そう。今は、さらに広がる未来に想いを馳せながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャーロット・キャロル
メインイベントには間に合いましたかね、プロレスとあっては黙ってられませんよマイティガール華麗にリングインです!

聖女にして革命家……無論存じてますとも私もレスラーの一人ですから。

「勝つから強者ですか。その言葉このマイティガールから3カウント取ってから言ってもらえませんかね!」
ディザステスト相手にそうマイクパフォーマンスで言い放ってバチバチにやる気満々な状態でゴング!

まずは打撃戦で様子見。鋭い逆水平チョップやローキックで攻め立てますよ。

そこからはパワー勝負!自慢の怪力で掴みかかってはパワーレスラーらしい豪快な投げ技を繰り出す!
相手の反撃ももちろん全部受け止める!どんなにダメージを庇うとも!

そして終盤、相手の切り札でリングコスチュームが変わり強化されますが私も一歩も退きません!

相手のフェイバリットを受けそれでも立ち上がる……!
「レスラーは最後まで諦めない……観客の声援があるのなら……!」

強引に起き上がって今度はこちらのターン!
私のフェイバリット●マイティ・パニッシャーを食らえぇっ!!



 ヒーローは遅れて登場する。ならばこの場に現れたシャーロット・キャロル(マイティガール・f16392)は間違いなくヒーローであっただろう。師匠と共に「ビブリオバトラーツ」のトレーニングに出向いたこともある。その姿に団長・千愛をはじめ団員たちは心踊らせたものだ。
 その彼女が、今、華麗にリングイン! 『ディザステスト』レイラ・シングスを歯牙にもかけない、マイティガールのコール。コール! コール!! 会場は割れんばかりの歓声の嵐に包まれる。あらゆる超人プロレスの試合に参加してきた彼女は、猟兵でありながら、名実共にこの業界の「顔」であろう。圧倒的な認知、圧倒的なカリスマ、圧倒的な実力。
 レイラには喉から手が出るほど欲しかったもの。その心から欲したもの。

「そう! このディザステストにはその全てが手中にある。私は――」
「聖女にして革命家……無論存じてますとも」

 私も、レスラーの一人ですから。
 胸に手を当て、目を閉じて、想いを馳せる。その所作が、着実にダメージを負っているディザステストの胸を穿つ。「も」と、言った。追放された己を、この業界の看板であり顔が同列に扱ったのだ。リスペクトの精神ここに極まれり、スポーツマンシップの鑑ともいえる、優れた人間性……!

「……貴様のような者ばかりだったら、どれほどよかったか。どれだけ救われたか。でもそうはならなかった!」

 美しい所作こそラフファイトにおける隙。懐に飛び込むと、ディザステストはエルボーを腹に突き刺した。グラマラスな肉体が躍動し、大きな打撃音をリング内に響かせる。

「ぐっ」
「結局は強さだ。強くなければ居場所はない。そして勝者こそが強いのだ!」
「勝つから強者ですか。その言葉、このマイティガールから3カウント取ってから言ってもらえませんかね!」
「抜かせ!」

 吠える彼女を素早く立ち上がらせて羽交い締めにし、捕らえる。そして、そのまま勢いよくスープレックスを決めた。

「ぐぅ……あッ?!」
「貴様こそ|正しい私の正しい力《コスチュームチェンジ》を引き出すほどの試合ぶりにしてくれよ」

 健闘など生温いと、強烈な衝撃をシャーロットの脳天にぶち当てる。ぎゅっと片目を瞑ったもののディザステストの投げ技を耐えて立ち上がってみせる。同時に、そのままお返しにとばかりテレフォンパンチを繰り出した。立ち上がる勢いを乗せ、その拳を天高くかち上げる!

 ――ガゴォッ!

 渾身のアッパーが、ディザステストの顎を突き上げる。文字通り、ディザステストの体がぐんと浮いた。まるで虹の如くアーチ状に、鮮血を盛大に鼻から吹き出しながらドサッとひっくり返った。

「ぐぅお……渾身の右、今のが|伝家の宝刀《マイティ・パニッシャー》か……?」
「まさか! お楽しみはこれから! でもお望みとあらば、師匠譲りのこいつで決着をつけてやりますよ!」

 立ち上がってくるディザステストに、シャーロットは鋭い逆水平チョップやローキックで追撃をかける。ビシッバシィッと肉を打ち穿つ音が高鳴れば、ディザステストも負けじと手足を振るう。その姿から、いきなりの肉弾戦の様相を呈していた。
 いつの間にかコーナーに追い詰められてしまったシャーロット。振り翳す拳が真っ直ぐ腹部に吸い込まれれば、水袋を殴ったような音が響き、シャーロットは咳とともに唾を散らす。

 ――ドボっ!

「お……ごォ?!」

 背中がコーナーにフィットしているせいで衝撃が跳ね返り、内臓を前後から潰される。
 涎をぱたぱた散らしながら今にも吐いてしまいそうな声で悶えるマイティガールの姿は、普段の彼女の試合ぶりを知っていればいるほど、見ている観客を驚かせる。内臓を直接打たれている刺激、これには耐えられまいとほくそ笑みながら、臍の少し上から、腰の入ったアッパーをぶち込んだ。胃がグチュッと潰される音が、手応えが、直に伝わる。

「げはッ! おゲッ――ご、ぽ……っ!」
「いかに鍛え上げたといえどこのラッシュは効くだろう? ハッハッハー! いい気分だなァ!」

 ――ドゴォォッ!

 言い返そうとしたシャーロットの口からは言葉にならない格好悪い悲鳴が漏れる。拳の次は、目にもとまらぬスピードの蹴り! 身構えようとした瞬間には、ヤクザキックが彼女の腹にめり込んでいた。ついで放たれる蹴りの乱舞、上段下段中段とあらゆる高さと角度から突きつけられるキックに、シャーロットはしかし怯むことなく敢然と立ち向かう。

「ふぅぅううう! マイティ! パワースロー!」

 蹴ることに夢中になったこの隙を見逃さない。フラフラとしながらもディザステストの背後に回り込み、腰をガッチリと掴んだ。その両腕は万力の如く、凄まじい馬力で一度掴んだら標的を離さない。なんとか投げられまいと、渾身の力で踏ん張り、身体を浮かせまいと重心を下げる。抵抗に次ぐ抵抗。正義を掲げるだけのプライドか、単なる意地か。
 それでもシャーロットは綱引きの末、思い切り――ブッコ抜く! いわゆるジャーマンスープレックスが炸裂した。

 ――ばぎィいいいィッ!!

「グギャアアァッ?!」

 一切の受け身も取れず、脳天から叩きつけられたディザステスト。喉奥から絞り出す無様な悲鳴を上げながら、ひしゃげてペシャンコになってしまった。
 もはや異論を紙箋の一枚も挟む余地はない。勝者はマイティガール。クリティカルヒットしたパワフルな投げ技が、その結果を物語る。ガッツポーズをしかけたところで、ゆらり立ち上がる影に気づく。

「な……ッ?!」
「《“正しい私の正しい力”が古き悪弊と象徴を打ち払う》……! 今のは、今のはぁ、効いたぞ! マイティガールうぅううッ!!」

 眩暈く、めくるめく、一際強い輝きを放つ革命家のコスチューム。
 レイラがそのプロレスラー生命の全てを投げ打って手にしたと言っても過言ではない、ガチンコの姿。纏うだけで無敵とも思われるほどの膂力と、俊敏性、そしてタフネスを与える。この力が正義でなくて何なのだという強い信念がなし得る、境地にたどり着いた。
 そこからは驚くほどの一方的な試合展開が続く。

「さっきまでの勢いはどうした!」
「ぐっ? ごッ?! 痛ゥッ……ガフっ?!」

 もはやその力は本人にも容易く御せるものでもないのか、力任せのパンチを連続で繰り出すディザステスト。
 そのうち一つの拳がシャーロットの整った顔面に直撃し、彼女の小さな鼻から血が吹き出す。

「フんグぅぅっ!」

 続いて腹部。腹筋に力を込めていても、彼女の体内を逆流した酸っぱい液体が飛び出してしまう。そして三発目は……!

「クッ、あはぁぁん?!」

 リング外にまで響くシャーロットの色っぽい悲鳴。それもそのはず、見れば、シャーロットの柔らかく、大きく主張する胸にディザステストの拳がめり込んでおり、形を歪ませていた。シャーロットにとっては、相手の攻撃が急所に当たった状態、マイティガール絶体絶命の危機である。なお踏ん張ろうとするシャーロットの、その下半身に、ハイレグのリングコスチュームに包まれ、ガニ股に気味に大きく開いて立ち続けようと踏ん張る股間へ。

「ふゥんッ!」

 ――メギャッ、メリメリメリ……ッ!

「ひっぎゃぁああ……?!」

 シャーロットの股間を勢いよくカチ上げるサッカーボールキック! 足の甲がシャーロットの股関節に激突し、粉砕されたかのような衝撃が痛烈なダメージとして襲いかかる。もはや恥も外聞もなく股間を抑え内股になり、プルプルと震えている。黄金のツインテールが萎びて垂れ下がり、がくがく震える全身。その目は裏返りかけて星がチカチカ瞬き、潤んで視界もぼやけて惨めな姿を自認できない。股間が決壊したかのような苦しみに悶えるのみである。

「ひぐぅ……! ひっ、ひ、きょうです……神聖なリングで、こんらぁ……!」

 あまりの恥ずかしさに試合中であることさえも一瞬忘れてしまったのか、油断していたシャーロットを思い切り上に持ち上げたディザステスト。
 そのまま下で待ち構えるように立てていた膝目がけて突き落とす。股間を狙い撃ちした、いわゆる リバースアトミックドロップによって、シャーロットは甲高い悲鳴を上げてしまう。

 ――ド……ゴギんッ!

「なぁっ!? あ゛ぐぅ゛〜ッ!?」
「まだダウンをくれてやるものか。もう1発!」
「あグッ?! ンぎぃぃッ! ひギャぁぁぁっっ!」

 再び同じ技で持ち上げられ、落とされる。自然、再度、否幾度も股間に食い込む膝に悶絶するシャーロット。そのまま何度も繰り返される地獄に、分泌液は染みになり、口からは涎まみれの舌が垂れる始末。あまりの痛みに内股になり、両手は股間に伸びていた。
 トドメとばかりに、背後に回り込んだディザステストは、垂れ下がったシャーロットの腕ごと胴体を抱え込み、ゆっくりと持ち上げていく。じわじわと頂点に届くまでに恐怖とインパクトまでの力を増長させる。

「私流のスープレックスホールドで返してくれる。はああぁあッ!!」

 そのままぐいんと、剛力を生かして大きく弧を描いてのジャーマンスープレックスが決まり、シャーロットの背中が強くリングに叩きつけられた。

 ――ドゴォオオァ……!

「あ、ぐぅぅぅ……ッ!?」

 いわゆるダルマ式ジャーマンスープレックス! 自分の必殺技で決められた精神的動揺と、嬲られたダメージによりもはや立ち上がることはできまい。勝利が己が頭上に眩く輝くのは確信的だとディザステストは高らかに笑う。そう、己こそが勝者であり、絶対の強者なのだと大笑する。

「ハーッハッハッハ! ……は?」
「やりますね。でも、レスラーは――」

 再び巻き起こるマイティガールのコール。コール! コール!! コール!! 呼ばれた。応える。それがヒーローのあり方であり、リングの上を戦場に選んだ己の使命だ。その瞼の裏に幻視する偉大な師匠の背中が、静かに物語っている。彼女が蹲って負けを認めてきたことがあっただろうか?

「――最後まで諦めない……観客の声援があるのなら……! 聞こえますか……!?」
「き、貴様……!」
「あなたもそうでしょう! レイラ!」

 ――タッ タッ タッ ギシッ!

 ロープへと走り、その反動を利用して蹴りを見舞うつもりか。ならばと胸元あたりをガードするようにして守りを固める。しかしディザステストは知らない。超人プロレスラーでありながら、ヒーローでもある彼女が繰り出す技の本領を。
 シャーロットが放つのは強烈なパンチ、それも前方へ、マットに対して平行に飛び上がり、相手の腹を目掛けて、両拳を前に突き出したボディへ飛び込むような豪快かつ鋭いパンチなのだ。

「マイティ! ロケットパーンチ!!」

 ――ボゴォっ……!

「ごほッ……まずいッ」
「まだです! これが渾身の!」

 バァンとリングに向かって倒れ込もうとするディザステスト。当然ガードは無に帰し、隙だらけの肢体を晒す。軽やかに着地したシャーロットは、そのまま拳を振り下ろし、下に向かって殴り付けるようにしてフェイバリットをぶちかます!

「マイティ――パニッシャーですっ!!」

 ――ずどんっっ……!!

「ぶっッ……げっっ……!?」
「私のフェイバリットを受けて立ち上がってきた者はいません……!」

 呼吸が、止まる。脳に酸素が行き渡らなくなり、足の指から全身に至るまでくらぁと力が抜ける。透明な胃液がごぷりと溢れたあとは、そのままうつ伏せに、リングに抱擁される結末を迎えた。
 柔らかな肉がひしゃげ、崩れ落ちて戻らないディザステスト。
 両手を掲げ、弾ける笑顔で勝ち名乗りを上げるシャーロット。
 ――きっと、観客の応援のおかげだと目覚めた彼女に言うだろう。師匠から教わったように、今度はそう好敵手に教えるのだ。
 だから、その価値に、その意味に、勝ちも負けもない。レイラが欲していたものは、ここにずっとあったのだ。この歓声を、二人に向けられた惜しみない拍手を、気絶せずに聞けたのならすぐに理解できただろう。頭ではなく、心で。

成功 🔵​🔵​🔴​

サマエル・マーシャー
※アドリブ歓迎
※ヤコブ・スタイルでプロレスラー衣装(id=190735)に変身してリングイン。
※通常時の格闘スタイルは総合格闘家風。

聖女にして革命家ですか…私は救世主です。あなたが革命を望むほどに苦しんでいるというのであれば私があなたをお救いします。

プロレスを軽く見るつもりはありません。しかし、事実としてプロレスラーの矜持を見せつける戦い方では総合格闘家による『打・絞・極・投』をスピーディに繋げる遊びのない戦闘スタイルに対応しきるのは難しいのでは?

革命を謳われている以上、総合の戦い方にも対応可能なのかもしれませんが…格ゲーキャラになっている私の技を受けきれますか?
ゲーム同様に技の継ぎ目、その瞬間が喪失する人外のコンボを。

それだけでは彼女に自身の能力に疑念を生じさせることは難しいかもしれませんが、戦闘開始と同時に私の羽根を常にリングに撒きながら戦います。私の羽根にはアイテム『神の毒』が含まれています。その毒で彼女の感情を操り心の強度を下げます。

私が勝てば、あなたは私に救われてくれますか?



「私が勝てば、あなたは私に救われてくれますか?」

 歓声で埋め尽くされた中で、ともすればかき消されてしまいそうな声音で、サマエル・マーシャー(|電脳異端天使《サイバー・グノーシス・エンジェル》・f40407)は問うた。問いかけに、リング上で対する『ディザステスト』レイラ・シングスも、自分が話しかけられたとすら思わなかっただろう、普段なら、絶好のコンディションなら、一笑に付す。だが《 “正しい私の正しい力”が古き悪弊と象徴を打ち払う》――それは、己の正しい力を信じ抜ける限りの戦闘力を担保する代物。

「できたらな」
「苦しむ者の救済が、私の役目ですから」

 で、誰だ貴様はと、嗤うことは変わらない。馬鹿にしているのかと、嘲ることも変わらない。もはや張りぼての戦闘力しかなかったとしても、耳を傾け頷き返すほどの脆い精神力だったとしても。
 不敵に、不遜に、嗤い、ねじ伏せる。
 それが力、それが正義。それが生きる世界。
 苦しむ者、弱者――救済、救い。
 そんな言葉がぐるぐると堂々巡りに頭の中を回っている。もう沢山だと叫び出したくなるくらいに喧しく、我が物顔で。

「はっ」
「ヌッ……ほう」

 嘆息。ディザステストをして嘆息を催すほどの切れ目のない連撃。変身……投擲……絞首……。
 明らかに人体の可動域や筋肉の自然な動きを無視している。一つ一つはどうということがなくても、異常、まるでそうプログラミングされた精巧なロボットとでも戦わされているような違和感。

「天国はすぐそこに……」

 素早く放たれた手刀の一閃が、ディザステストのコスチュームをティッシュペーパーのように容易くバラバラに引き裂いた。

「威力も出鱈目と来たか! ハッハッ……ハハハ!」
「そこ」

 面食らうとは比喩表現、しかしその隙にぬるりと入り込んだサマエルの伸びやかな両腕が、首をしっかりと掴む。生気のない赤い瞳、ぐらぐらと覚束ない塩梅の首、それらからはにわかに信じがたい膂力。

「この苦しみを終わらせましょう」

 プロレスという競技を軽く見るつもりも、相対するディザステストを甘く見るつもりもない。しかし、事実としてプロレスラーの矜持を見せつける戦い方では自ずと限界がある。遊びのない戦闘スタイルに対応しきるのは困難だろう。その包帯を巻いた細首を手折り、試合を終わらせよう。その命を奪うのではなく、選手生命を終わらせることによって――。

 ――ボキッ!

「これで終わる……私の革命も、超人プロレス界のまだ見ぬ革新も……全……て」

 ――パシッ、バヂィ……ガッ、ぐぐ……ッ!

「ん……?」
「まだ、此処に――楽園はありません。ましてや、試合の最中に見る白昼夢の中などには」
「なんだ……く、ゥッ、頭が……」

 肉と肉のぶつかり合う音。白熱した力比べに双方の胸同士がくっついて、吐息と鼓動がまざまざと感じさせられる。手四つからの力比べ。両手は掴んだまま、拷問式にサマエルの肉付きのいい体を絞り、体勢を立て直す暇を与えない。呻き声と共に体を捻ると、光輪が瞬いて羽根がリング上に舞い散らされる。上気した頬、滴る汗、その全てがこちらが現実だと訴えかけるようだ。先ほどの一方的な苦戦がまるでウソのよう。
 まやかし、そうまやかしだ。

「くッ小癪な真似を! その救済などと意味不明な言葉――!」
「意味が、わかりませんか? わかるまで何度でもその苦しみから解放しましょう」

 リアル、仮想……電脳世界、時にあり得ないほどのリアリティがその境界を超越し、曖昧にさせる。サマエルの瞳を見遣ると、吸い込まれそうになる。あるいは本当に吸い込まれてしまったのかもしれない。彼女の中は彼女の分身が所狭しと犇く蠱毒の壺。幸福で怠惰な生活も、破滅的な永遠の安らぎさえも、思うがまま、我儘に与えられる。

「ま、ずいっ……しまっ、がアッ?!」

 ディザステストが表情を歪めるも、時既に遅し。瞳術に嵌められたかのように硬直したディザステストの、そよ大きく実った右乳房、並びに腹部、腕……次々と包帯が彼女に突き刺さっていく。ただの包帯と侮ることなかれ、捻られ螺旋の形状となったバンデージは馬上の突撃槍の如く鋭利で、プロレスラーとして磨いてきた肉体には容易に刺さる。
 こんな事態には今まで陥った経験はなかったのだろう、ごぷと血を吐きその身を震わせる元天才、両の手に力を込めて、なんとか、その脇腹に刺さった包帯を掴み引き抜かんとする。しかし所詮は折り重なっただけの薄布。血が染み込むばかりで抜き取るほどの圧力をかけるには至らない。
 そうこうする内に傷口周辺に溢れる大量の自身の血で滑り、包帯螺旋槍がグリグリと、さらに奥へ奥へと押し込まれ、更に傷口から大量の鮮血が溢れ出す。無敵と信じた革命のコスチュームがみるみる赤に染まっていく。

「あなたに、その命に祝福あれ」

 天に祈るようなポーズで掌を合わせる。しゅるしゅると膨大な量の包帯が、ディザステストに巻きつく。首元にみっちり食い込む感覚。それは優しくもあるが、確実に彼女を終わらせる感触でもある。だが首の包帯の巻きつき以前に、失血により呼吸そのものが厳しく制限され、まともに酸素を吸入することができないのだ。心神喪失寸前にまで追い込まれた意識は、刻一刻とレベルが低下していく。

「ここ……までか……こんな……」

 ――ボキッ!

 折れて、終わる。
 革命の聖戦乙女が槍のような刺突で滅多刺しにされ、首を折られるのはいかにも、ではあった。
 しかし、終わらない。この試合はエンドレス。がくんと意識が落ちたその瞬間に、まるで時間が巻き戻ったかのように手四つの力比べに戻されてしまう。リングという漆黒の暗闇と無音に閉じ込められ、新鮮な苦痛のみを延々と味あわされているのである。正常で居続けろという方が無理だろう。抵抗もする。拳を振り上げ、技を繰り出し、少しでもその差を埋めようと肉弾戦を挑む。体力と気力をすり減らしだけに終わり、時間だけがただ過ぎてゆく。そのうちに呻くように縋りつき、這いつくばり、言葉にならない叫びが感情とない混ぜに吐き出された。

「う゛っ……う゛う゛……う゛ぐぐっおオォオオォッ!!」
「あなたは助けを求めますか?」
「黙れッ黙れ黙れ黙れ! その小煩い口を今すぐに閉じろ!」

 拳圧で空気が高鳴るほどの掌底。当たれば首の骨でも粉砕するであろう威力だが、サマエルは体の軸をズラしあえて軽く受けることでダメージを最小限に抑える。そのまま肢体を半透明に変容させ、逆撃の絞殺攻撃をお見舞いする。いわゆるダウン回避と呼ばれる技術、柔道でいうところの受け身とは全く違うシステムに位置する、理不尽の押し付け!
 また入り込んでくる――取り込めなくなる。首が絞まるということは単に息ができないというだけに留まらない。それすなわち、脳への血流まで止まってしまうということだ。脳がサマエルに支配される苦しみに等しい。そのため、ただでさえまともに考えられなくなっているディザステストの意識がより一層深く、酷く混濁してゆくのだ。

 ――ボキッ!
 ――ボキッ!!
 ――ボキッ! ボキッボキッボキッボキッボキッ……!!

 胸が焼けつくほど狂おしく、倒錯的に、酸素を求める。悔しさのあまり地団駄を踏み、闘志を剥き出しにする。
 その行為そのものがサマエルの戦術の、大きな大きな神の手のひらの上なのだ。彼女が生やした翼には神の薫陶もとい『神の毒』がふんだんに含まれている。それはウイルスの如く空中に漂うだけでなく肉体の接触でもディザステストに取り込まれ、彼女の感情を操り心の強度を下げる効果を持つのである。HPを減らすというよりはHPの上限値そのものを削り取るような、心身に作用する神威の猛毒。
 無敵と思われたディザステストの牙城を崩す、優しく、寡黙で、残酷な、救済の二文字。

「はーッはあッはあッ、ぜヒュ、ふぅうウッ!」
「大丈夫ですか?」
「黙れ偽善者、まやかしの、紛い物の、ペテン師め! 貴様のやっていることはこの試合と、この試合に参加したものと、すべての観客への侮辱行為だ。我が正義にかけて貴様は完膚なくまでに潰す! 私は、貴様を倒せない私を許せないのだ!」
「そこまで」

 嗚呼、そこまで、この競技を愛している。それがあなたの在り方……か、と。
 サマエルは優しく、どこまでも深くあたたかい慈愛でディザステスの首を包み込み、優しく抱きかかえ、手折る。斃る。
 折って、祈る。
 私が勝てば、あなたは私に救われてくれますか? それは否、であったろう。少なくとも試合が始まったあの瞬間は、そうだ。だから何度でもあの瞬間に戻って、何度でも嘆願する。どうか私に救われてくださいと、その愛を受け入れてくださいと。
 プロレスラーとして戦い、プロレスラーであることを黙殺されこの世界から追放され、悪の汚名を背負いながらも革命の二文字を引っ提げ正義のプロレスラーとしてこの世界に舞い戻ってきた。猟兵たちにもダークレスラーではあるがあくまでプロレスの力だけでねじ伏せようとした。プロレスの埒外の神威を見せつければ、憤慨さえする。プロレスラーとして戦えと、プロレスを穢すなと吠える。
 これが彼女の愛。真面目で、歪んで、凝り固まって、己でも解けなくなった、狂おしいほどの愛。その矛盾こそが愛なのだと、サマエルはプログラミングするし定義した。だから異端の天使として、彼女は彼女なりの役割を遂行するのに躍起になる。邪道には邪道、蛇の道は蛇、そういうこと。

「知恵の実には蛇がつきものだから」

 ――どさっ……!

 観客席が騒つく。
 サマエルからの問いかけに答えようとしたディザステストは、一歩踏み出し、戦うその前に膝をついてしまったのだ。神の名を冠した猛毒は、たったひと触れで彼女の正常な心を奪い取った。否、正義に毒された、汚れていた心を拭い去ったのだ。戦意喪失するまでに幾百の試合を行ったが、それも一瞬のまばたきの間に過ぎ去った。サマエルは、何かを感じたように太もものバーコードをそっと撫でる。救わねばならないという漲る決心が自然とそうさせたのだろう。現に、サマエルの前に跪くディザステスト。
 彼女は、つうと両の目から涙を流し、嗚咽し、大口を開けて全身を震わせていた。
 ダークレスラーの目に映ったのは、戦った結果迎える未来、そのあらゆる可能性の具現。

「祝福は私にあります。この手を取るかどうかはあなた次第」

 詰め寄り、ディザステストのあごに手を当て、ぐいとその目線を己の赤い瞳に向けさせる。この目、この目だ。
 この目だ、と、ディザステストは思う――が、それは「誤り」。確かに特徴的なルビーの瞳だが、サマエルは瞳術は専門外だ。実態は、肉体的な接触により、相手の体内に直接毒物を投与投薬する、シンプルな、天意。
 言い換えれば、神の悪意、それこそサマエルが対象を天国に堕とす、たった一つの冴えたやり方だ。
 目に見えたものだけを信じ、翻弄され、自分の人生を転げ落ちるように悪化したものだと、そうして悪の道に堕ちた者には、どこまでも滑稽だと笑ってやろう。良い。でもわ構わない。その愚かさも笑って赦し、愛そう。悪と癒しは、紙一重。裏表のように、一体で、どちらにも転ぶ。
 今までもそうしてきたように、これからも。転ぶのだから、そこはまだ「底」ではない。

「3カウントも必要ありません」

 手際よく殺人的な技巧でディザステストをリングに投げつけ、その上に縫い付けると、そのまま処刑だと言わんばかりに包帯で絞めようとする。首の骨を折るのも容易い。あの世までの三カウント。

「1、2――」
「こ、降参する……私は、救われたかったんだ……」

 彼女は、泣いていた。
 泣きじゃくって、独りにしないでと叫んで、誰も手を伸ばさないことに逆に憤り、そしてこの世界を飛び出すのではなく壊そうとした。

「あなたを愛します。だから私を愛してください」
「……それは……ッ」
「同じです。あなたも、私も」

 偽りのメシア。
 偽物の正義の革命聖女。
 その未来に救いはなかったとしても、互いに救いを与え合うことができる。業界の変革は絶たれ、元ダークレスラーとして新たな苦難の道を歩むことになる。だとしても、道は続いていく。この胸に愛がある限り、この胸に超人プロレスへの感謝ある限り。
 二人の感動は伝播し、観客から惜しみない拍手が送られる。長くに続いた一戦は、こうして喝采の中で幕を閉じたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『レスラーの打ち上げ焼肉』

POW   :    お言葉に甘えて肉を沢山食べる

SPD   :    理想の身体を作る為に選び抜いたメニューを食べる

WIZ   :    甘いデザートでエネルギー補給する

イラスト:九印

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 デスリングより遣わされた、『ディザステスト』もといレイラ・シングスは猟兵の奮闘の前に敗れ去った。それはダーク化され無理やり引き抜かれた「ビブリオバトラーツ」の面々が、無事にダーク化から解放されたことを意味していた。早速試合後のクールダウンとトレーニング、と息巻く彼らに、団長・千愛は一喝する。

「皆さん、皆さん! まずは助っ人の方々に感謝を! そして戦勝の宴をするのがアスリートのあるべき姿とは思いませんか」

 もちろん、疲れ切った体に新しい技を刻み込むのもやぶさかではありませんが、などとアブない言葉を口にしているが、ともあれ! 満身創痍の体に、焼肉はどこまでもあたたかく沁み渡る!
 早速試合会場近くの焼き肉屋を貸切にして、あれよあれよという間に焼肉パーティが始まった。

「敗者は強者に従う者……その勘定、全てこの私、レイラ・シングスが受け持とう! 全おごりだ。ハーッハッハッハー!」
「なんと、なんと、実に心強いですね! ……デスリング、デスリングって意外とお金持ちなんでしょうか……?」

 ええ〜っ?! れ、レイラも来るの……?!
篁・綾
アドリブ歓迎。鼻フック膨体ふた以外OK。

(物理的にベコベコにされ、リング外に運び出されたのち、ダークリーガー特有の敗者への雑な扱いで適当にバックヤードに半裸で放置され忘れ去られていた狐。大股開きで転がされたまま、周囲の生命力をちょっとずつ吸収しつつ、UC効果で白目を剥いたまま緩やかに再生しているが……、それがまずかった。無意識下の再生故か、本体諸共破壊されたコスチュームは再生されず、得も言えぬ格好のまま関節やダメージだけが復元されていく。そしてその様子を偶然見つけた野次馬達にじっくりと観察されるハメとなる。X時間後、再生し意識を取り戻した綾は異臭に顔を顰める事となる)



「全員揃っているわけではないのか。試合中には見かけたものもここには来てないと見える」
「ええ、ええ。その辺りは彼らの自由意志だと思いましょう。全ての方にお礼を言いたかったのですが」

 「骸の穴」もダーク化による洗脳で無理やり引き抜いた面々が離脱しただけで団体としては健在なのと同様に、猟兵もまた途中参戦したりその逆もいる。全ての参加選手が打ち上げに来るいわれもない。数多いる猟兵の燦然とした煌めきに、眩しそうに目を細めれば、次の瞬間には偉業を残して姿を消す。
 レイラは団長・千愛の言葉に頷いた。なぜなら彼女もまた猟兵に魅せられた一人なのだから。

「……そういえば、そういえば私も聞きたいことがありました。現役時代の話なのですが」
「あまりそこを蒸し返すな」
「いえ、いえ。そういうわけにもいきません」
「強情だな」

 そして、その魅力を語り合い、己が過去と向き合うばかりでおざなりになっていることがあったのを二人は忘れてしまっていた。猟兵は、そういうものだとどこか納得と共に飲み込んでしまった。
 試合会場、バックヤード。
 華やかな宴の席の裏側、誰も来ないような一角に打ち捨てられ、たまたま興奮冷め止まぬ野次馬が通りかかってしまうような、不運の重なる場所。

「う……ぅッ……」

 綾は呻き、その意識を手放して微睡の中にいた。《夢桜遡流》により歪められる現はあくまで覚醒の最中に効力を大きくする。無意識下、しかも傷んだ肉体や関節の修復に能力を割き、本来耐えられない痛みを治そうというのなら……保ち続けることだって無理筋なのだ。
 だから目覚めないし、気づかない。裏返った瞳は戻らない。戻るのは肉体だけ。
 例えばそこが人通りの多い場所であれば、生命力の吸収はもっと迅速であったろう。
 それでも彼女が思いの外早く目覚めたのは、持って生まれた幸運からからか。

「ん……な……く、ふゥッ……」

 それとも別の要因からか。
 妖狐特有の優れた嗅覚が、饐えた欲望の臭いを敏感に察知する。しかしそれが己が好き放題にされたその結果とまでは判然としない。ダメージを負った彼女が、羽虫を呼び込む誘蛾灯のように艶かしく、光を放っていたという自分自身の魅力にも頓着しない。一枚岩でないのは猟兵も、アスリートたちも、観客たちだって同じことだ。現に目を凝らせばわかるはずである。破損した過激なニンジャ風のコスチュームから覗く胸や腋が……使われた形跡。汗の一滴、分泌液まで貴重なものであろう。それでも目覚めないし抵抗もないとわかった、さらに調子に乗った野次馬たちは、「ご自由にどうぞ」とでも開放されたまま、ガニ股で放置された下腹部を前に容赦しない。持ち上げられ、無茶苦茶に舐められた股ぐら。それどころか無理やり押し入れられ、抽送されて、男の欲望を存分に締め付け愉しませ、吐き出され――そんなこびりついた欲望のあとまで見て取れる。粘つく液体を胎にたっぷりと仕込まれていては、体を捩るのでさえ億劫に感じることだろう。
 嗚呼、散華は儚く刹那のもので、眠っているうちに着実に蓄積した快楽は波が打ち寄せるようにぶり返し、傷んだ綾の肉体を緩慢に浸らせる。
 一部の私物、インナー……下着類は持ち去られ、引取り処分料とばかりに得も言えぬ格好の撮影をされる。接写、動画、一部始終。神出鬼没の猟兵の痕跡は貴重なものだ。高値で取引されることだろう。

「んゥッ……く……ぐぅ」

 さて、彼女が、思いの外早く目覚められた理由は、意識のないうちに散々にやりたい放題された、彼女の胎の中だけが知っている。
 あまりに早すぎる覚醒、その違和感には、幾許かの時間が流れ、写真や動画がとっくに拡散された頃に、ようやく気づくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
どういうわけか、スポーツの打ち上げは焼肉が多いですよねぇ。

正直なところ、私が全力で食べる方に回りますと、幾ら有っても全く足りませんからねぇ。
折角ですから、主に『焼き役』に回りましょうかぁ。
【豊饒佳饌】を発動し[料理]と[グルメ知識]を強化、焼き加減の好みを尋ねた上で、肉ごとに分けてしっかりと焼きますねぇ。
野菜類やご飯の用意もしっかりと。

そういえば、この世界の競技で『フードファイト』は聞きませんねぇ?
其方でしたら、手段も多数取り揃えておりますし、得手と言ってよいと思うのですが。
興味のある方がいらっしゃる様でしたら、同様に強化済みの[大食い]と[早食い]をお見せしますねぇ。


イリスフィーナ・シェフィールド
POW判定

おおお……肩と股関節がびっしびしですわぁ。
(先送りしていた痛みに悶えながらも打ち上げに参加中)

利き手でない方と股関節の痛みで食べるのに四苦八苦してるとレイラ様がやってこられます。
自分以上にダメージ負ったはずなのにピンピンしてる姿に感心してると
なんだ全然食べてないではないか負傷なぞ肉食えばすぐ治る、肉食え肉っ
食べられないなら私が食べさせてやろうっと次から次へと椀子そば如く
食べる側から口に突っ込まれ消化しきれず目を回してばったーんと倒れてしまいます。
何だもう満腹か、はーっはーはっと去っていかれました……嵐のような方ですわ、うっ。


結城・愛莉
試合を観戦させていただきましたが、医術を修めるものとしてはちょっと心配なところもありますね。
関節や内臓に痛手を負ってる方が多く見受けられそうなので異変があったら治療をお勧めしますよ。
皆さん厳しいトレーニングや元からの強さもあるでしょうが、疲労やダメージの蓄積は知らないうちに蝕んでいますからね!

あ、差し入れですこれ(消毒液とか痛み止め、包帯、シップなどなど)。
重傷者はどなたでも見てあげますから遠慮なくどうぞ、リング外なら敵味方関係ありませんし。
ギタギタしてあげますよ!
愛するプロレスもそれを支える肉体があってこそです!
皆さんには釈迦に説法かもしれませんけどね。
あ、私にもお肉いただけます?


四王天・燦
満身創痍で消沈してます
肉ノ味ガ分カラナイ
必勝のカベルナリアを外されたのが精神的に来ている

|孤《狐》高の最強ファイターになるには|必殺技《専用UC》は必要なんでせうか?
レイラに質問するぜ
千愛に相談しないのは実力で選んだからだ
悔しければ強くなれよと|因縁《ストーリー》作りに余念なしだよ

タンパク質取るべきっすか?
マスクの上から不思議パワーで焼肉食べるけど
サーセン、これ以上ウェイト付けると本職の技のキレがなくなるからと慎まやか

本職聞かれたら侍ですけど何か、と
ビールで酔った勢いで殺気と催眠術を組み合わせ、エア抜刀術で斬り殺されたかのような錯覚させちゃうぞい
試合より死合なアタシにプロレスはできるのだらうか



「ふむふむ。ふーむ。医食同源とは言いますが異変を感じた方は速やかな治療をお勧めしますよ」

 試合を観戦していた結城・愛莉(求める者・f27223)が立ち上がってそう宣言する。なるほど言い分ももっともと言えるだろう。彼女が言うことには、疲労やダメージの蓄積は知らないうちに蝕んでいるという。しかし、既知未知以前に、関節やら内臓やらに甚大なダメージを受けている者も多そうなのは自明であった。

「ウウ、肉ノ味ガ分カラナイ……」
「おおお……肩と股関節がびっしびしですわぁ。そこのマスクの方もですの……ぉおッ、今ピキって」

 ふるふると首を振るのはマスクに顔を包んだ燦、先ほどまでのダメージが一気に押し寄せたイリスフィーナも、皺寄せにブルブル震えている。もっとも燦がショックだったのは必殺のフェイバリットがいまいち決めきれなかったこと。慰めるには反省と、そしてやけ食いしか今は選択肢が無さそうである。

「お注射しますよ!」
「グワーッ?!」
「そこのあなたはギタギタしてあげますよ!」
「んぅううッ、クセになってしまいますわぁ……!」

 医療品を差し入れに来た愛莉は、思わぬところで研究対象が舞い込んだことでほくほく顔である。医の道に生きる彼女にとって女神に仕える巫女たちの体は貴重な被験体、逃す手はないのだ。
 一方で、悶える彼女たちが視線を逸らした隙に、眼前の机に塊肉をドンドンと積み重ねていく。プロレスラーたちに混じって給仕するるこるは普段に増してイキイキとした様子である。

「治療は行き届いているようですから、ここは焼き役に回らせてもらいますぅ」

 すでにるこるの味見段階で店側の在庫が悲鳴をあげかけていたのを察知して、全力で食べると肉が行き渡らないと判断したようだ。

「バランスが大事ですよぉ」
「あ、私にもお肉いただけます? ウェルダンで」

 一仕事終えてツヤツヤした愛莉は、野菜やらご飯やらを確保しつつちゃっかりるこるにオーダーしていたりする。
 燦はショックを流し込むようにビールをオーダーし始めた。一度エンジンが掛かってしまえば歯止めをかけるものもなく、ぐびぐびと誰が注ぐでもなくジョッキを空にしていく。

「あーあ、誰か可愛いお姉さんでもお酌してくれないもんかね」
「未成年や利き腕の上がらない者に注がせるわけにもいかないだろう。どれ」

 ずいッッと体を割って入れてくる、ダークレスラー。レイラさんほんといい性格してるぜいと燦はよりマスクを深く被る始末である。

「なんだ貴様は全然食べてないではないか負傷なぞ肉食えばすぐ治る、肉食え肉っ」
「あ、圧がすごいですわ……!」

 先ほどまでにがっつりとダメージを受けていたとは思えない健在ぶりにイリスフィーナは面食らう。驚く暇に肉を食わんかと椀子そば如く、次から次へと開いた口に肉を放り込まれれば、あっという間にダウンしてしまった。さすがのスーパーヒロインも食べ物を無駄にしない倫理観と、自分自身のキャパシティの板挟みに目を回してしまったようだ。

「嵐のような方ですわ、うっ」
「あらあら。お医者さんにお診せした方がよいでしょうかぁ」
「そうれギッタンバッコン!」
「ふンぐうううッ、麻酔は、麻酔はないんですのぉッ?!」

 哀れヒーローはばったーんと倒れ臥し、愛莉の外科手術の餌食となってしまった。肉は焼いても食われるな、これぞ弱肉強食とるこるは手を合わせる。

「そういえばぁ、この世界の競技で『フードファイト』は聞きませんねぇ? 其方でしたら、得手と言ってよいと思うのですが」
「元よりこちらが不得手には見えなかったが……」
「はい、はい! キャンプ飯や運動会のパン食い競争、あとは休憩時間のお弁当などは有名だと思いますよ……!」

 逡巡するレイラに助け舟と、千愛がそう言うところには、なんだか含蓄がある様子。来るべき大きな戦があった暁には、その辺りは押さえておくのが吉かもしれない。
 興味がありそうな方がこの場にいなかったのは至極残念だが、代わりに収穫はあったとるこるは一人頷いている。

「|孤《狐》高の最強ファイターになるには|必殺技《専用UC》は必要なんでせうか?」
「それは、それはですね……」
「すっこんでろい、ヒヨッコちゃん」

 ズバシ! と言葉の刀で両断されたように千愛は硬直してしまった。エア抜刀術で斬り殺されたかのような錯覚に、そのままぶくぶく泡を噴いてしまう。
 元より彼女もまた満身創痍の身、殺気で倒れる程度の心許ない体力だった。現地人ならではの元からの強さを究明、もとい救命すべく愛莉が八面六臂の活躍をしてみせる。

「必要ということもないだろう」
「私も特に専用の技があるわけではございませんしねぇ。汎用的なものを揃えておく方が、後々有効に活用できる場合が多いと思いますぅ」

 ぷるぷると震え、同調している。何の因果か神の薫陶を受けた者たちが集った宴席の場、マスクの上から鼻頭を掻いた燦は「タンパク質でも取るべきっすか?」とボヤくばかりである。

「今回は我々の負けだ。敗者ができるアドバイスなど、笑って聞き流せるくらいであれよ、強き者たちよ」

 まだまだ甘いがな――私も含めて、とレイラは鍛え直すことを誓ったように笑う。一度は猟兵たちと千愛を認めたような発言も、試合中の高揚と共に一旦胸にしまったようだ。
 団長・千愛は白目を剥いて立ち上がってこない。しばらくはリハビリが必要だろうか。心配そうに猟兵たちが見つめる中で、悔しければ強くなれよと|因縁《ストーリー》作りに余念なしの燦は、その寝顔に声をかけるのであった。
 今後の超人プロレス界の先行きは、まだまだ混沌の最中。しかし、大きなうねりが刻一刻と目の前に迫っていた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月01日


挿絵イラスト