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女王様、窘められる

#アポカリプスヘル #ノベル #猟兵達の秋祭り2023

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黒影・兵庫



蜂須賀・美緒




●呼び出しの理由
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は呼び出されていた。
 誰にって言うのなら、蜂須賀・美緒(BeeHive・f24547)にである。
 なんでって言われたのなら……え、なんで? と兵庫は思い当たる節がまったくなかった。何か怒られるようなことをしただろうか。いや、まったくない。
 というか、美緒に迷惑を掛けるようなことをした覚えがない。
 でもまあ、呼び出されたのだから、それなりの理由ってもんがあるはずである。そういうもんだと兵庫は素直であった。
 素直すぎるのも考えものね、と頭の中の教導虫がため息をつく。
「蜂須賀さま! おはようございますのビー……ハイヴ!」
 腕をクロスした決めポーズをバッチリ決めて兵庫は己を呼び出した美緒を見やる。

「よく来たわね、黒影! おはようのビー……ハイヴ!」
 美緒も兵庫と同じく腕をクロスさせた決めポーズを取る。
 それは最早挨拶ポーズなのではないか。
 封神武侠界における拱手的な。礼儀的な。そういうアレではないのかと教導虫は思ったかも知れないが、今回それは問題ではない。
「これをしてくれるのは黒影だけね! 嬉しいけど寂しいわ!」
「かっこいいですから! えっ、寂しいのですか!?」
「そう! それは今回黒影を呼び出したことと関係しているわ!」
「えっ、えっ、蜂須賀さんに寂しい思いをさせるようなことを俺が!?」
 兵庫は戸惑っている。
 それもそうだろう。まるで見に覚えがないのだ。なのに美緒は己に咎が、責があるのだという。

 一体全体どういうことだろう。
「その理由……それはクロリアのことよ!」
 びしぃ! と美緒は兵庫を指差す。
 クロスさせた手の片手をびっしぃっと突き出す。それは糾弾めいた言葉であったことだろう。とは言え、兵庫は首を傾げる。
 クロリア。
 同じく猟兵である彼女のことで何か在ったのだろうか?
「はぁ……」
「わかってない相槌ぃ! この前、浴衣コンステストのために黒リアに浴衣を買ってあげてたよね?」
「はい! 水着をうらやましがっていたのでプレゼントしてあげました!」
 なんだ、そのことか、と兵庫は頷く。
 そう、水着コンテストに出れなかったことは聞いている。あのときの彼女のしょげ具合を見ていたのならば、買ってあげたいと思うのも無理なからぬことであった。
 美緒にも覚えがあった。
 優しいことである。尊ばれることである。
 だがしかし!
 そう、しかし! である!

「……はい!」
 美緒は兵庫に腕を広げる。
 兵庫は何をそれが示しているのかわからない様子であった。低羽化なんだそれ、位の感じ。
「わからない? それはね……? アタシにも浴衣ちょーだいのポーズよ!」
 一々ポーズを決める度に、エフェクトが走るのは仕様だろうか。仕様であろう、そうであろう。
 おねだりであった。
 アタシ、浴衣欲しい。あーゆーおっけー?
 いえすおっけー! 意外の返事はいらんと言わんばかりの顔であった。

 しかし、次の瞬間、いつのまにか黒影の隣に現れていたのは教導虫の『スクイリア』であった。彼女は呆れた顔をしていた。
 本当に呆れていた。
 マジで、表情が呆れていたのである。
 この上ないほどに呆れ顔で彼女は美緒に言う。
「はぁ……蜂須賀さま。黒影におねだりなんてしないでください……みっともないですよ?」
「みっともない!? このアタシが!? なんで!? 別にいいじゃんか! アタシは水着も浴衣もないのよ!? おかしくない!?」
「お買い求めになればよいのでは」
「だってここアポカリプスヘル! 文明の荒廃した世界! あるわけないでしょー!」
「ですが、猟兵……」
「いーじゃなーい! アタシだって浴衣を来て秋風に揺れる髪をかきあげて爽やかに秋祭りを堪能したいのよ!」
 美緒の言葉に『スクイリア』は呆れ果てていた。

「おかしくない!? これでもアタシはこの中じゃ一番偉いのよー!?」
 ジタバタしている。
 もういっそ清々しいくらいにジタバタしている。
 正直引いた。
 だが、兵庫は違った。
 わかる、と言わんばかりの顔であった。

「そうですよね、仲間はずれは良くないです。蜂須賀さんは、浴衣が着たいんですよね。でもですね、クロリアの、あの笑顔を見てくださいよ」
 兵庫が示すのは浴衣を来て嬉しそうな顔をしている彼女の姿だ。
「よい顔よね。だからさー!」
「ですが、蜂須賀さんが、羨ましい羨ましいと妬まし気な顔でそれを見ている、というのは、クロリアは居心地が悪いのでは?」
「それはー……そうだけどさ」
「一番偉い人が、一番良い態度を取らなければならないとは思いませんか? 一番、偉いのですから」
 兵庫の言葉は美緒をたしなめるものであった。
 これはきっつい。
 年下の彼からたしなめられる良い大人!
 傍から見ても、きつい!
「蜂須賀さま……」
「わ、わかったわよ!」
 そんなふうにして、美緒は渋々だが引き下がるのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年09月23日


挿絵イラスト