Plamotion Fes Actor
●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
それはプラスチックホビーを作り上げ、自身の動きをトレースさせ、時に内部に再現されたコンソールを操作して競うホビースポーツである。
思い描いた理想の形を作り上げるというのならば、たしかに『プラクト』は心・技・体を兼ね備えたスポーツ。
プラスチックホビーを作り上げ、フィールドに投入し自分自身で動かす。
想像を育む心、想像を形にする技術と、想像を動かす体。
そのいずれもが欠けてはならない。どれか一つでも欠けたのならば、きっと勝利は得られない。
そして始まる世界大会。
その名を『ワールド・ビルディング・カップ』――『WBC』。
今回は第二回大会。
前回の覇者は『無敵雷人』とあだ名された『エイル』と呼ばれた女性。それもチーム戦である『プラクト』において、チームではなく個人で参加し、アメリカ代表をの座を勝ち取り、さらには破竹の勢いで『WBC』の第一回大会優勝を成し遂げた『プラクト』界の偉人でもある。
そんな覇者の風格を携える『無敵雷人』こそ、日本代表チーム『五月雨模型店』の初戦の相手でもあったのだった――。
●初戦
「……相手は、一騎……! それも、旧キットに何の改造も施してない機体なんだぞ
……!?」
『五月雨模型店』の『エース』、『アイン』と呼ばれる少女は呻いていた。
迫る初戦の相手、前回大会の優勝者『無敵雷人』こと『エイル』の操るプラスチックホビーは尋常ならざる踏み込みでもって、その何のギミックもない、つるんとした体躯の人型の腕を振るう。
ただ、それだけでフィールドが砕かれる。
「駆動域を拡張しているわけでもないようです。それにプラ素材を改良しているような気配もない。言ってしまえば、制作技術は凡庸そのものです!」
『ツヴァイ』と呼ばれた少女の機体に肉薄する『エイル』の人型ホビーの一撃が彼女の機体を一撃の内に両断する。あらゆる装甲も彼女の一撃の前には意味を成さなかった。
「これが、世界大会覇者……!」
既に『ドライ』と『フィーア』の機体は『エイル』によって倒されていた。
残るは『アイン』のみ。
会場は盛り上がっている。だが、同時に諦念めいた雰囲気さえ漂っていた。
前回大会覇者と初参加の新気鋭のチームの対決。
だが、圧倒的なまでの強さに『アイン』たちは追い込まれていた。
「若者よ。私にとって機体とはこれくらいがいいのさ。動きづらい。強力すぎない。それくらいがちょうどいい。私が楽しむためには!」
『エイル』は金色の髪を揺らして笑っていた。
己の機体は足枷。
それはともすればハンデマッチ。だが、その瞳に侮りはない。
何故なら、この状況に在っても『アイン』が諦めていないことを理解しているからだ。機体から溢れるような闘気に褐色の肌のアスリートはまた笑む。
確かにこれは試合だ。
一発勝負の後戻りの出来ない試合だ。
真剣勝負だ。
だが、スポーツでもある。死ぬわけでもない。負けたからと言って何か生命に代えてもということがあるわけでもない。
故に、褐色の肌を保ち、桃色の瞳を揺らして『エイル』は笑い、『アイン』という強敵との戦いを純粋に楽しんでいるのだ。
「あんたの身体能力によるゴリ押しってわけか! ならよ!」
「ほう、それを理解してなお闘気満ちるか、少女!」
「たりめーだろうが! こんな楽しいことはないぜ! 私より強いやつがいる! 挑戦し甲斐がある! 悔しいってことは楽しいってことだ! こんな楽しいこと他にない!」
互いの機体が撃ち合う。
拳を、武器を。
砕かれる『アイン』の機体の武装。
対する『エイル』の機体はまるで傷ついていなかった。合気道のように『アイン』の一撃を受け流しているのだ。
「勝つよりも、負けるよりも、私は『今』を楽しんでいたいんだ。だから!」
踏み込んだ『アイン』の機体が武装を捨て、真っ向から『エイル』の機体の放った動きをトレースする。
全く同じ動き。
だが、機体が違う。
何度も負けた。ダークリーガーに敗北もしたし、猟兵達と共に戦いながら、制作能力が追いつかないこともあった。
悔しかった。
けれど、楽しかったのだ。
その経験は彼女の機体を鍛え上げた。
肉体だけではなく、心も、そして作り上げたホビーさえ鍛え上げられたのだ。
故に、心技体揃った瞬間。
いつだって、楽しい、という思いだけは忘れなかった。その結実が今、『エイル』へと叩き込まれる。
そう、それはこれまで一度たりとて敗北したことのない『無敵雷人』、『エイル』が持ち得ぬ敗北という名の経験を得たからこそ放たれる一撃だった――。
●フェス
ワールド・ビルディング・カップの会場は大盛りあがりであった。
初戦から大番狂わせがあったのだ。
前回大会覇者『無敵雷人』、『エイル』が新気鋭の『五月雨模型店』に敗北したのだ。
観客たちは皆、一様に興奮していた。
誰もがあの試合を生で見れた幸運を噛み締めていた。
試合会場の外では大会の連日から物販と言う名の『プラクト・フェス』が行われている。
「いやーすごかったな! 初戦から!」
「なー! 俺もあんなふうに戦ってみてーよ!」
人々は興奮冷めやらぬ様子で、早速、と『勝ち負けにこだわらず楽しくプラクト!』を主眼においたライトな運動会に参加するのだ。
此処には勝ち負けがない。
ただ楽しむ。
それはスポーツという競技性を持ちながら、しかし、根底にあるものであった。
「……」
だが、一人。
そう、ただ一人。
『プラクト』のマスコットぬいぐるみであるウサギのきぐるみを纏ったダークリーガーだけがブルブルと震えていた。
「……ふざけるな」
そう、彼は怒り狂っていた。
『無敵雷人』――あれこそが己の求めたガチなる闘争者!
あの鮮烈なる拳! 強烈なる蹴撃! 苛烈なる投げ!
全てがガチであるが故に彼は『無敵雷人』、『エイル』を信奉していたのだ。
だが、彼女は負けてしまった。
あの勝つことよりも楽しむことを優先したガキどもに!
「認められるかぁ! そんなこと!」
『プラクト』の運動会フィールドに飛び込んだダークリーガー『邪悪ラビット』のきぐるみみたいな丸っこいフォルムのホビーが咆哮する。
それは宣戦布告であった。
緩やかな『プラクト・フェス』の雰囲気はぶち壊され、運動会フィールドに嵐の旋風の如きガチモードの機運が高まる。
そう、そこには最早楽しむという気概はなく。
ただ只管に勝利を求めるだけの殺伐とした空気が溢れ返る。
「『無敵雷人』は最強なんだ! 無敵なんだ! だから! ガチではない連中などに負けはしない! それを俺が示してやるんだ!!」
『邪悪ラビット』は咆哮し、『プラクト・フェス』の運動会フィールドを猛烈なる勢いで駆け抜け、次々と参加者たちをダーク化していくのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアスリートアースにある未だ公式競技化されていないスポーツ『プラクト』の世界大会『ワールド・ビルディング・カップ』――『WBC』の初戦が終わった後の会場にて行われている『プラクト・フェス』にて暴れ狂うダークリーガーを打倒し、ガチモードになってしまっている人々をダーク化から救い出すシナリオになっております。
※『プラクト』は正式には『プラモーション・アクト』と呼ばれるホビースポーツです。
フィールド内に自作したプラスチックホビーを投入し、アスリートの動きをトレースする『モーション』タイプと、操縦席を作り込んで操作する『マニューバ』タイプが存在しています。
主に『モーション』タイプはロボットや美少女プラモデル。『マニューバ』タイプは、カーモデルやミリタリーモデルとなっております。
●第一章
集団戦です。
すでにダークリーガーは『プラクト・フェス』の運動会フィールドにて参加者たちをぶちのめし、ダーク化させています。
この運動会フィールドは、通常の戦いだけではなく、プラホビーによる徒競走や組体操、玉入れなどを行う勝負が盛んに行われています。
これに勝利し、ダーク化した人々を開放しましょう。
また彼らが見失っている『勝ち負けにこだわらず楽しくスポーツ!』という精神を思い出してあげましょう。
●第二章
ボス戦です。
アメリカ代表『無敵雷人』、『エイル』の狂信的信奉者なダークリーガー『邪悪ラビット』との戦いになります。
とは言え、この戦いは運動会。
引き続き、多種多様な運動会競技でもって戦うことになりますが、個々の競技で負けても最終的に総合得点で勝れば勝利となります。
ここでも『勝ち負けにこだわず楽しくスポーツ』の精神を見せつける事ができれば、敵の動揺を誘えるかもしれませn。
●第三章
もしもの時にダークリーガーが用意していた『ごめんなさい屋台』で盛大に楽しみましょう。
屋台や花火大会、多くの催しがダークリーガーによって出資、雇用、設営されています。
まあ、皆さんにぶちのめされて『邪悪ラビット』も反省しているので、遺恨は水に流して思いっきり楽しみましょう!
それでは、新たなるスポーツ競技『プラクト』を巡るダークリーガーと戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『玩具遊戯能力者』
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POW : 愛機との友情「シンクロバースト」
全身を【黄金のオーラ】で覆い、自身の【操作・所持する玩具とのシンクロ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : リミットブレイク
【自身が操作する玩具】で攻撃する。[自身が操作する玩具]に施された【リミットパーツ】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ : 俺が玩具で、玩具が俺だ!
【黄金】のオーラを纏い、自身の【玩具を使った】競技力と【玩具の動きを真似した場合の】競技力を2〜8倍にする(競技が限定的である程強い)。
イラスト:小日向 マキナ
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『プラクト・フェス』――それは年に一回の『プラクト』による運動会フィールド開放のお祭り行事だった。
競技は運動会競技に準ずるもの。
玉入れや障害物競争、借り物競争に徒競走、組体操に集団演技。ありとあらゆる運動会競技を己のプラスチックホビーでもって行うことで、スポーツの根底にある『楽しさ』という初心に今一度回帰しようという催しだった。
しかし、そんな緩やかな雰囲気は一人のダークリーガー『邪悪ラビット』によってぶち壊されてしまっていた。
「な~にが、楽しむことだ! しゃらくせぇ! 勝つことこそが絶対正義! 勝利なき敗者に得られるものなど何一つねぇ! 勝つ! 勝利! ウィナー! それだけが最も正しくて楽しいことだろうがよぉ!!」
咆哮する『邪悪ラビット』のきぐるみめいたホビーがフィールドを疾駆し、次々とゆるい感じで参加していた子供らを次々とダーク化し『遊戯玩具能力者』へと変えていく。
「勝利!」
「勝利!」
「勝利!」
彼らはそれだけが正しいというように次々と感化され、運動会フィールドを疾駆する。
それは『無敵雷人』と『五月雨模型店』が見せた『プラクト』というスポーツの根底にある『楽しい』という心を否定するものだった。
ただ只管に勝利だけ。
それだけしか求めないが故に、参加者たちの心は暗く荒んでいく。
「そうだ! 勝つことだけ考えれば良い! それ以外のことなんて全部捨てちまえ!!」
『邪悪ラビット』は叫ぶ。
己のあり方こそが正しいのだと。
敗北した『無敵雷人』への失望ではなく。
彼女に勝利を果たした『五月雨模型店』への怒りだけでもって、彼はこのお祭りを、スポーツの根底を否定しようとしていたのだった。
猟兵達は、このフィールドに降り立つ。
確かに勝利することは正しいことかもしれない。
けれど、それは正しさの中の一つでしかないのだ。『勝ち負けにこだわらず、楽しむこと』――それこそがスポーツの要なのだと知るからこそ、猟兵たちは『玩具遊戯能力者』たちをダーク化から開放すべく、己のプラスチックホビーをフィールドに投入するのだった――。
シルヴィ・フォーアンサー
……負けても死なないなんて平和だね
『うむ……で人だらけだが大丈夫か』
怖いけど殴ってきそうな人はいなそうだから我慢できそう
ミドガルズは待機、ヨルは人形外部端末
ミドガルズそっくりなマニューバタイプ
『上手にできてる、メンテナンスの経験が生きたのかもしれないな』
スポーツ初めてで楽しむってわかんないけどやってくる
競技は玉入れ、動くプラモに感心しつつ実機より反応鈍い事に戸惑ってリードされるけど慣れてコード発動からのオーバーブースト・マキシマイザーで大量得点
相手も対抗でリミットを次々外して拮抗するけど機体は負荷で崩れていき終了
試合終了後楽しかったと報告
恐る恐る対戦相手に愛機は大事にした方が良いと伝えるね
敗北とは即ち死。
勝利とは生命を存続させること。
戦乱の世界において、その理は特別珍しいものではなかっただろう。弱いものから死んでいく。
弱者とは強者に供されるための供物でしかないというのならば、きっと世界は単純であったことだろう。
戦乱はいつだって物事を二極化する。
そういうものだと割り切ることができたのならば、戦乱に適応することだって出来ただろう。
けれど、少なくとも。
「……負けても死なないなんて平和だね」
戦乱を知るから平和の尊さを知る。
それがどんなに得難いものでるのかを、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は知っている。
己のルーツを保たぬがゆえの孤独。
遺伝子操作。
人工子宮。
奴隷として扱われることに慣れきっていた己に活路を示してくれたのは、サポートAI『ヨルムンガルド』であった。
『……人だらけだが大丈夫か』
己を案じてくれているのがわかる。
確かに怖いと思う。人はまだ怖い。得体が知れない。アンサーヒューマンである自分とは異なる者たち。
人は異質なものを嫌う。
異物はいつだって、そのサイクルを乱すものであるから。けれど、此処はそうではないらしいとシルヴィは知ることができる。
誰もが笑っている。
けれど、ダークリーガーによって彼らの笑顔が奪われている。
勝利すべきというガチな雰囲気が、シルヴィの好ましいと思った雰囲気を壊していると知るのならば。
「今は……怖さよりも。何よりも」
この雰囲気を許せないと思う。我慢しようと思ったのだ。できると思ったのだ。
だから、自分は今ここに居る。
手にした己のクロムキャバリア『ミッドガルズ』をもしたプラスチックホビーを手に彼女は運動会フィールドに投入し、己の身体能力を反映する『マニューバタイプ』の操縦方法を選択する。
「……自分の動きと連動してる。『ミッドガルズ』そっくりだから、動かし方もわかる。これが……スポーツ」
『上手にできてる。メンテナンスの経験が生きたのかもしれないな』
「『ヨル』のおかげ。これなら……やれる」
シルヴィは『ミッドガルズ』を動かす。
かがむ、つかむ。
単純な動作だが、ダーク化したアスリートである『玩具遊具能力者』たちは己のプラスチックホビーを持って、初心者であろうシルヴィを狩ろうと殺到する。
「鈍いぜ! そんな初心者丸出しの動きで!」
「取って喰われるのが落ちだ! なら、さっさと邪魔くせぇのは排除しなくっちゃあな!」
ダーク化によってガチモードになってしまった彼らとて、この『プラクト・フェス』は勝敗関係なく楽しむためにやってきたはずだった。
なのに、それを彼らは奪われている。
笑顔がない。シルヴィはそう思っただろう。
「このまま一気に潰しやるよぉ!」
玉入れ競技に参加したシルヴィに襲いかかる『玩具遊戯能力者』たちのホビー。
その一撃はしかし、彼女の『ミッドガルズ』をとらえることはなかった。
「……手応えがない……残像!」
「……そう、だけど、本物……」
シルヴィの瞳がユーベルコードに輝く。
それはシルエット・ミラージュ。
精巧な『ミッドガルズ』の残像分身を生み出し、さらに次なるユーベルコード、オーバーブースト・マキシマイザーによって加速した分身機体が一気に弾を拾い上げて、掲げられた籠に投げ入れていく。
「こ、こっちの妨害を物ともしないだと
……!?」
「本体、本体が居るはずだ、そいつを潰せば……!」
ダーク化アスリートたちは次々と自身のホビーのリミッターを解除してフィールドを駆けずり回る。
だが、ついぞ、シルヴィの機体をとらえることはできなかった。
結局、玉入れはシルヴィの圧勝だった。
何故なら、ダーク化アスリートたちはシルヴィの機体を壊すことだけを目的としていたからだ。
これがスポーツだという前提を忘れた彼らに玉入れという競技での勝利など望めるものではなかったのだ。
「……楽しかった。でも」
シルヴィは恐る恐る対戦したアスリートたちに声を掛ける。勝利したことでダーク化から開放されているだろう。
「愛機は大事にしたほうが良い」
シルヴィはどんな勝負事でもそうだと言う。だって、愛機は自分の分身。大切に扱わなければ、答えてはくれない。
そう告げ、シルヴィは彼らと爽やかなスポーツマンシップに溢れた悪手を交わすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
いつもの自分そっくりトレースタイプ。
ただ勝つというだけでなく楽しむのを伝えるとなると集団戦でしょうか。
というわけで綱引きで勝負ですわ、五月雨模型店の皆様にお手伝い願いましょう。
綱引きはただ引っ張るだけでなく全員が息を合わせなくては上手くいきません。
勝つことが全てなら勝つために息を合わせようとするでしょう。
協力して行動させ勝つ以外に過程を楽しむことを呼び起こさせようという考えですの。
わたくしが五月雨模型店の皆様と息が合うか?
長い特訓を一緒にした仲ですもの問題ありませんわっ(比喩抜きでぶっ続けで長い)
引っ張って引っ張られてしながら最終的にコードで強化したタイミングで全員で一気に引ききって勝利。
綱引き。
それは嘗て土地の境界線を決めるための神事にも取り入れられた古き競技であると言えるだろう。
武力ではなく、綱引きという死人の出ぬやり方でお互いの領分を決める。
確かにそこに力という絶対的なものは介在するだろう。
だが、人死にが出ない、という点においては、平和的解決に親しい競技でもあった。
それを『プラクト・フェス』の運動会フィールドで行おうというのだ。
「個人では無理ですわね、これは」
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は一つ頷く。
ダーク化アスリートである『玩具遊戯能力者』たちはガチな雰囲気を醸し出しながら、競技が始まるのを今かと待ちわびている。
とは言え、イリスフィーナだけでは勝利は望めないだろう。。
故に彼女は『プラクト・フェス』の会場に居る人々に声をかける。
「どなたかわたくしと共に綱引きをしてくださる方はいらっしゃいませんか!」
その声は試合を終えた『五月雨模型店』のメンバーたちにも届いたことだろう。
機体は十全ではない。
先程の初戦での戦いでもって無事な機体が一つもないのだ。
だが、応急処置を終えた機体がいくつかフィールドに降り立つ。
「おうよ! 待たせたな、ねーちゃん!」
「颯爽登場とは行きませんが……!」
「ふふふっ! こんなこともあろうかと、予備の機体を持ってきた甲斐があった!」
「が、がががんばります!」
『アイン』を始めとする『五月雨模型店』のメンバーと未だダーク化されていない、ゆるふわっと楽しんでいたアスリートたちが集合する。
綱を握りしめるプラスチックホビーたち。
「はん、寄せ集めで何ができる! 綱引きを舐めるなよ!」
「そうとも! こっちはガチ! 全員コンビネーションを高めてある! そんな寄せ集めをいくら束ねてもなぁ!」
綱引き開始の音が響く。
ホイッスルの、ピッ、ピッ! と威勢のよい音が響く。
それはリズムを取る音でもあった。
そう、綱引きは単純な力比べではない。如何にリズムに乗り、如何にメンバーの呼吸を合わせるかに掛かっているのだ。
そういう意味ではダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちの息は抜群だった。全員がガチモードであるからこその連携であるとも言えるだろう。
「勝つことが全てなら勝つために望まぬ相手とも息を合わせる……ええ、やるものです」
イリスフィーナは、たしかにダーク化アスリートたちの息ピッタリの綱引きの強烈さに舌を巻く。
だが、それは彼女の思惑でもあった。
息がピッタリ合う。
それはきっとスポーツの根源的な楽しさだ。
今は勝利しか見えていないだろう。そのための利害の一致。建前だらけの連携であるだろう。
けれど、それでも、彼らの中には不思議な一体感が巻き起こり始めていた。
勝利を目指して一体になること。
その楽しさ。喜び、尊ぶべきこと。
それらが彼らがガチになればなるほどに高まっていく。
「引っ張りこまれちまうぞ!」
「息を合わせましょう。こちらの機体の損壊状況から、そう何度もアタックはできません!」
「無論! イリスフィーナのおねーさんとの特訓の時間を思い出せば良い! いや、マジで本当に物凄くぶっ続けで特訓したからな!」
「だ、だだだいじょうぶです! いけます! イリスフィーナお姉さん!」
『五月雨模型店』のメンバーたちの声にイリスフィーナは応える。
そう、彼らとは長く特訓を重ねてきた間柄である。
即席、とダーク化アスリートたちは言った。
だが、そうではないのだ。彼らと共に経験した日々。辛くも厳しい特訓。けれど、それは勝利を得るため。
そして、勝利を得たのならば、それは楽しい思い出に変わる。
辛かったな、とかしんどかったな、と笑って話せる思い出に変わるのだ。
「故に、征きますわよ! ゴルディオン・オーラですわっ!」
己の機体が黄金に輝く。
イリスフィーナに託された黄金のオーラが意思によって膨れ上がり、『五月雨模型店』のメンバーたちとタイミングを合わせた綱引きの凄まじい牽引力でもって、ダーク化アスリートたちを一本釣りにして、イリスフィーナは綱引きの勝利をフィールドに示してみせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
いやめっちゃ良い試合じゃねーか!つかアインにつヴぁいにまたエイルかよ!?彼奴どこの世界にもいるな!?
「これもエリなんとかの影響かな?」
「それよりご主人サマー☆プラクトだよ☆あれの出番だよ☆」
やだよ!僕はダリル○ルデ使うんだー!?
「やだー!メルシーつかってくれなきやだやだやだー!」(駄々をこねる機神)
だー!?仕方ねーな!?
と言うわけでメリクリウス型マニューバタイプを使用
と言うわけで玉入れや競争をUCを使わずやる
あくまで技能だけで戦い勝ち負けに拘りはない
勝っても負けても楽しいってのはとても大切なことだ。
ストイックだけじゃ見えるもんも見えねーからな
基本慣れてない競技に挑戦して全力で楽しむ!!
ワールド・ビルディング・カップの初戦を観戦していたカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、その内容に喝采を上げていた。
「いやめっちゃ良い試合じゃねーか!」
彼の視線の先には初戦を勝利で収めた『五月雨模型店』のメンバーたちの姿があった。
『アイン』と呼ばれる少女や『ツヴァイ』、『ドライ』、『フィーア』と言った面々が手を振って歓声に答えている。
アメリカ代表の『無敵雷人』こと『エイル』もまた清々しい表情を浮かべていた。
これがスポーツというものだ。
勝敗を決することあれど、生命を奪うに至らない。
自然界にあって、勝ち負けが命のやり取りに直結しないという、人類が獲得した争いの形態は、ここに結実を見せたようでもあった。
「というか、『エイル』って、またかよ! 彼奴の名前はどこの世界にでもいるな!?」
『これもエリなんとかの影響かな?』
試合を観戦し終えたカシムは物販コーナーという名の『プラクト・フェス』へと足を運んでいた。
プラスチックホビーもそうだが、運動会フィールドが設けられていて、勝敗関係なしに参加賞などが貰える催しが行われているのだ。
隣にいた『メルシー』の言葉にカシムは難しい顔をする。
彼女が言いたいのは『エリクシル』のことだろう。
万能宝石『エリクシル』――願いを歪めて叶える万能の魔神がもたらす災厄でもある。
「さあな。だがまあ、いいんじゃねーの。このアスリートアースでなら、争うことはあっても生命の取り合いにはならねーだろ」
『それよりご主人サマ☆『プラクト』だよ☆ あれの出番だよ☆』
「あー?」
そういったカシムが見たのは『プラクト・フェス』の運動会フィールドを席巻するダークリーガーによってダーク化された『玩具遊戯能力者』たちのガチのガチの真剣勝負の雰囲気に飲み込まれた会場であった。
「ちょ、なんでダーク化されてんだ!?」
『わかんなーい! けど、あれの出番だよ☆』
「やだよ! 僕は……」
『やだー! メルシーつかってくれなきゃやだやだやだやだー!」
カシムに『プラクト』で使いたいホビーがあったようであるが、駄々をこねまくる『メルシー』の勢いに押されるようにして、彼女の機神としての姿を模したプラスチックホビーを手に取る。
「いいか、今回だけだからな! しかたねーから使うんだからな! というわけで、行くぜ『メリクリウス』!」
カシムがフィールドに投入したのは、彼が駆る機神『メルクリウス』とそっくりなホビーであった。
細部まで再現された機体は、その本来の機体と同様に速度に優れる。
ならば、徒競走や障害物競争など、速度を競う競技に参加すれば無双できるはずだった。
しかし、カシムは頭を振る。
「速度を生かした機体で速度を生かすなんて普通のことだぜ! ここは組体操だ!『五月雨模型店』の奴らも来てんだろう! なら、やるぜ、お前ら!」
「さっきか引っ張りだこなんだけど!」
『アイン』たちが応急処置を施した機体で駆けつけてくる。
彼女の言葉も尤もであった。
そう、だって前回大会優勝者を下しての初戦の勝利である。
誰も彼もが彼女たちを歓迎するし、シュプレヒコールみたく『五月雨模型店』の名を叫んでいるのだ。
「組体操の壮麗さなど言うまでもない! 貴様らの損傷した機体で俺たちに勝てるわけねーだろーが!」
『玩具遊戯能力者』たちの組体操は確かに見事だった。
この為に同じ機体、同じカラーリング、そうしいた勝つためだけの演技を行っていたのだ。美しい。けれど、そこなるのは精緻たる美しさだけしかなかった。
スポーツとは楽しむもの。
たとえ、不揃いでも。
不格好でも。
友と共に一つの事をなす。底に喜びを見出すのが組体操というものだ。安全に、無理に高難易度の技を出すひつようはない。
確かに得点ではカシムたちが負けてはいるだろう。
けれど。
「わかるだろう、お前らも! この歓声を! お前たちに向けられている歓声とは少し違う!」
「な、何を……」
「楽しんでるってことが観客にもわかってるってことだ! 慣れていないことも、難しいことも! 挑戦して全力で楽しむ!! それがスポーツってもんだろうが!!」
カシムの言葉と共に不揃いな、それこそ損傷箇所が目立つ『五月雨模型店』のメンバーと共にカシムが行った組体操最後のポーズが決まった時、フィールドには盛大な拍手と完成が轟くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
まあねえ、陰海月がわくわくしてたのがそのWBC観戦でしてー。
泣いてるんですよ、今。
それこそ、楽しむの一つでしょうに。
競技は大玉転がしでー。はい、モーションタイプの『足軽兵』ですよー。
ええまあ、陰海月が身軽に改造してましたので、そのまま大玉を転がしましてー。
陰海月の影響で、ダメージに繋がる妨害行為は上手くいかないんですよねー。
そう、私はただ転がし…砂利などで逸れたりする、そのままならさをも楽しめばいいのですー。
※
陰海月「ぷきゅ〜」(楽しく見てたのにー)
えぐえぐ。泣きながらもUC
霹靂「クエ…」
翼でよしよし
スポーツ観戦というものがある。
アスリートアースに生きる人々であれば、それはスタープレイヤーの動きやプレイを間近で見るものであり、肌で感じるものであったことだろう。
そこに楽しさを見出すことができるのは、例え、彼らが超人的な身体能力を持ったアスリートであっても変わらないことだった。
誰もが違う。
筋力も体の大きさや太さ、長さといったものが異なるものだ。
故に多くのものが違う。
得た経験も、苦難も。
だからこそ、相違を楽しむことができる。
己にあって他者にはないものを見つけ出そうとする。
「ぷきゅ~」
巨大なクラゲが鳴いている。
何故鳴いているのかと問いかける者もあるだろうが、しかし、翳鏡虫霓(カゲニテヤサシクヒカルゲーミングクラゲ)たる輝きは周囲を癒やしの空間へと変換する。
治療に関わる全てが強化され、逆に傷つける行為を弱体化する空間。
運動会フィールドは、今まさに『陰海月』の発したユーベルコードによって書き換えられていた。
「なんだこの空間は……俺たちの能力が減退している?」
ダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちが呻く。
そう、彼らはダークリーガーによってダーク化され、ゆるふわな運動会フェス『プラクト・フェス』をガチガチの真剣勝負の場へと変えていたのだ。
「それは『陰海月』の悲しみであると知って頂きましょうか」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱、『疾き者』はそう告げ、『足軽兵』と呼ばれたプラスチックホビーを操り、運動会フィールドに降り立つ。
彼の眼の前にあるのは巨大な玉であった。
そう、これより行われるのは大玉転がしである。
単純な競技だ。
トラック競技と言ってもいいだろう。巨大な弾を転がし、トラックをぐるっと回るだけ。シンプルだし、これ以上無いくらいにわかりやすい。
けれど、ガチモードになっている『玩具遊戯能力者』たちにとっては、ただ相手より早くゴールすればいいと言うわけではない。
必ず妨害してくるだろう。
「ですが、その妨害行為事態が弱体化されてしまっているのですから、必然、私が動けば動くほど。私を追えば追うほどにあなた方はゴールから遠ざかっていくというものでして」
「何を!」
『疾き者』の操る『足軽兵』が軽やかな動きで持って大玉を転がしてトラックを駆け抜けていく。
だが、この『プラクト・フェス』がただの運動会であるわけがない。
そして、この競技もまたそうである。
所々に仕掛けられた障害物やトラップが作動する。
地面が大きく跳ねるようにして『疾き者』の押していた大玉を空へと跳ね上げるのだ。
「掛かったな! トラップに! これでタイムロスすれば……!」
「ふふ、これもまた一興でしてー」
『疾き者』はアクシデントめいたトラップにも動じなかった。
それどころか笑ってさえいたのだ。
『玩具遊戯能力者』たちは目を見開く。
『疾き者』はアクシデントに見舞われてなお、笑っていた。自分たちであれば、その障害物やトラップと言ったものに悪態をつくであろう。なのに、彼は笑っているのだ。
「何故だ、何故笑っていられる!」
「はて。これはスポーツ。生きるか死ぬかではないでしょう? それにこれは運動会。そのままを楽しめばいいのです。勝敗の前に、それが一番大切なことでしてー?」
その言葉に『玩具遊戯能力者』たちは雷に打たれたように動きを止めてしまう。
そうだ。
その通りなのだ。
これはスポーツ。真剣勝負であることにかわりはない。けれど、彼らはダーク化することによって失っていたのだ。
このスポーツの本質を。
楽しむということを。
それを『疾き者』のアクシデントをものともせずに、それどころ受け入れて楽しむ様さえ見せる姿に『玩具遊戯能力者』たちは衝撃を受け、その動きを止めた横を『足軽兵』は一気に抜き去ってゴールを決めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
いやー、熱い戦いだったね!
皆ナイスファイト!
負けた方のファンは悔しいかもだけど……厄介さんになるのはNGだよ☆
勝ち負けは関係無いけどにぃなちゃんはレース系に出ちゃうぞ☆
例のにぃなちゃんモデルのやつにセパレート型の陸上ユニフォームを着せたら準備完了!
五月雨模型店の皆とかファンの人とか、楽しみたい人を集めてリレーに出ちゃおう!
マニューバのバイクプラモでも良かったんだけど、モーションで自分が走ってる感出した方が盛り上がるはず。
後はもう、ただただ走るだけ!
自分が走ってない時は仲間を応援して、終わったらノーサイド。
そして称え合うのがスポーツのステキな所の一つだよね!
頑張ったねって皆を抱きしめちゃうぞ☆
『五月雨模型店』の初戦は白熱したものだった。
ワールド・ビルディング・カップ。
『プラモーション・アクト』の世界大会の第一回戦。初戦から前回の世界大会覇者でもあり、またチーム戦が基本の『プラクト』において単騎で出場するアメリカ代表に勝利を収めたのだ。
その勝利は大番狂わせであり、また同時に『五月雨模型店』という新気鋭のチームを知らしめる歴史的な一戦でもあったのだ。
「いやー、熱い戦いだったね! みんなナイスファイト!」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は観客席から変装した姿で彼らの健闘を称えた。
彼女が変装した姿をしているのは、ある種当然である。
何故なら、彼女はとあるメーカーとコラボレーションした猟兵である。彼女の体をトレースした美少女プラモデルは、圧倒的なセールスを達成しているのだ。
そんなモデルとなった彼女が変装もなしに居れば、どうなるかなど火を見るよりも明らかであったことだろう。
「うんうん、でも。負けた方のファンは悔しんだろうなぁ……でもでも、厄介さんになるのはNGだよ☆」
ニィナは颯爽と会場の外で行われている『プラクト・フェス』の運動会フィールドに走る。
外ではダークリーガーが怒り狂って、ゆるふわな運動会競技に興じていたアスリートたちを次々とダーク化し、真剣勝負のガチモードへと巻き込んでいるのだ。
これを捨て置くことはできない。
ちょうどニィナがフィールドに己のプラスチックホビーを投入した時に行われていたのは徒競走種目。
「ちょうどよかった☆ せっかく『ドライ』くんと作った陸上フォームが役に立つね☆」
彼女が投入したプラスチックホビーは、彼女がモデルとなった美少女プラモデルだった。
さらに改造が施され、セパレート型の陸上ユニフォームに扮した姿であったのだ。正しく、徒競走にうってつけの機体であると言える。
「おおおー! あれは噂のにぃなちゃん!」
「え、マジで!? 本物!?」
「俺、複数買いしたよ!」
観客席からは歓声が上がる。それにフィールドのモデルとニィナ自身が手を振って応える。
「徒競走、にぃなちゃんと楽しみたい人~☆」
ニィナはモーションタイプの操縦方法で持って飛び跳ねるようにして観客たちに呼びかける。
それはダーク化アスリートである『玩具遊戯能力者』のガチモードを少しでも和らげる意図もあったのかもしれない。いや、ただ楽しみたいと思っていたのかも知れない。
「ニィナお姉さん、一体どうして!?」
「いや、ていうか、飛び入りがすごいな!?」
『ドライ』と『アイン』が応急処置を施した自分たちの機体でニィナの側に駆け寄ってくる。
「だって、あんな熱い試合を見せられたらね☆ にぃなちゃんも一緒に楽しみたくなるってものだよ☆」
だから、とニィナは屈託なく笑う。
そこにあったのは勝ち負けではない。
この運動会を盛り上げ、『みんな』で楽しもうという意思しかなかったのだ。
「よーい……どん☆ だぞ☆」
その掛け声と共にニィナたちは駆け出す。
モーションタイプ故に、競技者の身体能力がもろに影響を及ぼすのが『プラクト』の良いところだ。競技者が疲れれば、モデルだって動きが悪くなる。
へとへとになるし、息が荒くなる。
ニィナだってそこそこ体力には自信があった。
けれど、それにしたってアスリートアースの超人アスリートたちと肩を並べるのは、とてつもなくしんどかっただろう。
息も絶え絶えにゴールを果たせば、着順なんて関係ない。
「ニィナねーちゃん、よくがんばったぜ!」
「ええ、ナイスランです!」
「えへへ、みんなも頑張ったよね☆」
そう言ってニィナは『五月雨模型店』のメンバーや、共に走った『玩具遊戯能力者』たちとも健闘をたたえるように抱き合う。
競い合う相手同士だった。けれど、終わってしまえばノーサイド。共に称え合うのがスポーツの素敵な所だとニィナは笑み、抱きしめたアスリートたちと共に笑い合うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
(ポップコーンとコーラ持って現地で観戦してた)
初戦からベストバウト級の試合が見れたってのに
そいつを
無効試合呼ばわりたぁ無粋なヤローだ
キッチリ灸を据えてやる
行くぞ、ミニタイガー!
重量機体を活かすなら〝棒倒し〟なんかが良さげだな
武装厳禁、運動性能だけでよじ登って
棒を傾けるシンプルな競技だ
あたしは棒の防衛側に回る
群がる連中を片っ端から投げ飛ばしてやるぜ
楽しむからには、先ずはスマイルだ
戦場でだって同じさ
笑顔の消えた兵隊からブッ壊れていく
そうなりたくなけりゃ笑え、悪魔よりも先に笑うのさ
こんな風にな(超笑顔)
スポーツ観戦と言えば、物販もまた華であろう。
手にしたポップコーンは弾けるように宙を舞い、コーラの容器は激戦に握りつぶされていた。
ワールド・ビルディング・カップ。
初戦のマッチングは『五月雨模型店』にとって最悪の相手であった。
前回大海の覇者、アメリカ代表『無敵雷人』こと『エイル』と呼ばれる女性は、チーム戦が当然の『プラクト』において、ただ一人で参加した猛者であった。
新気鋭のチームである『五月雨模型店』の勝利はオッズを見ても難しいように思われていた。
「いぉーしっ!」
チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は思わず叫んでいた。
彼女が知る少女『アイン』が見事に大番狂わせの勝利を飾って見せたのだ。
興奮するなという方が無理であった。
しかし、その勝利は幸運ではなかったのだ。彼女が自ら乗り越え、手繰り寄せたものだった。
故に、それは覆しようのない結果であったはずだ。
だといううのに。
「あのベストバウトを、試合を
無効試合呼ばわりたぁ無粋なヤローだ」
チェスカーは会場の外に設置された『プラクト・フェス』と呼ばれる運動会フィールドにて暴れまわるダークリーガーと、真剣勝負のガチオーラに飲み込まれたダーク化アスリートたちを前にして己の愛機である『ミニタイガー』の重量級の為せる激震でもって示す。
「何がベストバウトだ! 俺は認めないぞ!」
「ハッ! 結果が全てって顔してやがるな! ならよぉ! キッチリ灸をすえてやる。行くぞ、『ミニタイガー』!」
チェスカーに応えるようにしてモーターが駆動する。
一歩踏み出す度に規格外の重量を誇る『ミニタイガー』は運動会フィールドを揺らす。
「棒倒しだ! かかかってきやがれ!」
「チェスカーねーちゃん! 棒の防衛頼むぜ!」
「ああ、俺たちが敵陣に突っ込む! それまでは!」
「おうよ、任せとけ!」
チェスカーは『五月雨模型店』のメンバーたちが味方についてくれたことを心づくよく思える。
激戦の初戦を制した後だからか、彼らの機体は応急処置しか施されていない満身創痍だ。
だが、それでもダーク化アスリートたちを解放するために飛び込んできてくれている。
「おめーらが来てくれるんなら百人力ってやつだ!」
迫るダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちの操るホビー。
棒倒しは武装厳禁である。
しかし、彼らは違う。ガチである。勝利を得るためならば反則スレスレを行ってくるのだ。
「勝利を得るためならなぁ!」
「おっと、足元が滑ったー!」
彼らが操るホビーが人型であることを幸いに棒を防衛する『ミニタイガー』の装甲を踏みつけ、と云う名の蹴撃を見舞ってくる。
しかし、チェスカーは不敵に笑う。
端的に言ってめちゃくちゃ怖い顔だった。子供だったら泣き出すレベルの笑顔。
「な、なんていう装甲だよ……! 硬すぎる……!」
「こっちの特殊装甲を舐めんじゃあねぇよ! おらぁ!」
『ミニタイガー』が己を踏みつけた機体の脚部をひっつかんで、投げ放つ。ひっつかんで投げる。投げる。投げる。
その様は嵐めいていただろう。
「わ、わわわ、す、すごいです。あれだけの敵を一体で……!」
『フィーア』の声にチェスカーは笑う。
ひっ! って彼女が驚くのも無理ない。めちゃくちゃ怖い笑顔である。当人は超笑顔のつもりであったのだろうが、しかし、悲しいかな。
チェスカーの顔は怖かった。
「楽しむからには、まずはスマイルだ。戦場だって同じさ」
そう、彼女がいたのは戦場だ。
多く身を置くのは戦火荒ぶ殺し合いの場所だ。こんなスポーツという名の勝敗だけが得られるフィールドではない。
いつだってそうだ。
笑顔の消えた兵隊から潰れ、壊れていく。
そうはなりたくはない。
なら、とチェスカーは笑う。
「これはスポーツだろうが。ガチのガチだってんなら、命のやり取りしかねぇ! そういうのは違うってんなら、笑え。悪魔より先に笑うのさ」
そうすりゃ、死神も寄せ付けない。
故に、とチェスカーは操縦パーティションから、棒倒しの勝利を示すように笑うのだ。
「こんなふうにな」
その笑顔に敵味方共に凄絶な息を呑む気配が広がり、チェスカーは思っていたのと展開が違うな、と思っただろう――!
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
妖怪紫くねくねが全力を発揮してます……。
五月雨の良い子たちは見ちゃダメですよ!
反面教師だとしてもちょっと強火が過ぎると思います!
っていうか、ステラさん、ステラさんの情緒も、
子供たちの教育も心配しかないのですがー……。
くーる……くるー……くるう……(察し
って、わたし先手ですか!?
ま、まぁいいですけど、心に楽しみをっていうことは、
わたしの場合、思いっきり演奏していいってことですよね! ね!
それではいってみましょう、今日の最初のナンバ痛ぁ!
なんですか、せっかくFM風に決めましたのに!
FMにスリッパ出てこないですよ!
だってゴーって言ったじゃないですか!
演奏しないと行けないんですってばー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
エイル様の!香りがしまぁぁすっ!!
あ、このエイル様は五月雨模型店の店長様の方
ご機嫌いかがでしょうか?
え?今日もいない?
もう、い・け・ず(はーと)
女性のエイル様は初めまして
全エイル様に愛を捧げるメイド、ステラです
以後お見知り置きを
しかし金髪…ふむ
貴女様はもしかして…いえ、後にしましょう
ではレッツ・アク…どうしましたルクス様?
え?私の情緒?
常にクールですが??
フュンフ・エイル様ならば
勝負に際しては心に楽しみを
と言うところでしょう
楽しみを求めるが故に勝利を目指す
それがわからないようでは
このクリムゾンリッパーには勝てないと知りなさい!
はい、ルクス様ゴー
私、後に続きますので!
『プラクト・フェス』――それはワールド・ビルディング・カップの会場の外に設営された物販という名のお祭り会場でも在った。
運動会フィールドが拡がっており、各種競技の順位に応じて賞品が設けられているのだ。
だが、そこにあったのはゆるふわな雰囲気だった。
スポーツというものが楽しむことを前提としているからだ。
勝敗は決すれど、そこに賭けるべきものはない。
戦場であれば、生命を賭けねばならないだろうが、しかしこれは『プラクト』、ホビースポーツなのだ。
故に、楽しむためだけに人々は集っていた。
けれど。
「『無敵雷人』、『エイル』は最強なんだ! それを! 覆すことなんてできないんだ! 俺は認めないぞ! あんな試合なんていうのは!!」
強火の『エイル』狂信者、ダークリーガー『邪悪ラビット』は漲る黒いオーラをほとばしらせながらゆるふわな雰囲気を一気に真剣勝負のガチモードに覆っていく。
彼に感化されたダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちは次々と、あらゆる運動会競技に飛び込み、勝利を貪欲に欲する戦い方で人々を次々と打ち破ってはダーク化していくのだ。
「『エイル』こそが至高!『エイル』以上の選手なんていない! 絶対勝利は彼女のためだけにあるんだ!!」
叫ぶ声にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はこっちにも似たようなのがいるんだけどなぁって思ったが口には出さなかった。
何故なら。
「
『エイル』様の! 香織がしまぁぁすっ!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の絶叫が聞こえたからである。
いつものやつである。
妖怪紫くねくねの全力が発揮されている。やかましいほどの声量でもって運動会フィールドの全域を包み込む絶叫。
みんな競技を一瞬止めてしまっていた。
ステラはそんな空気感なんて全く知らないといわんばかりの顔で、乙女顔で、くねくねっていた。
「あっ、この『エイル』様というのは、『五月雨模型店』の店長様の方。ご機嫌気花芽でしょうか? どちらかでご覧になられているのでしょうか?」
「店長ならお留守番だけど」
『アイン』が冷静に言う。
もう慣れた。
「もう、い・け・ず(はーと)」
「はーと、じゃないんですけど。『五月雨模型店』の皆さんは、見ちゃダメですよ! 反面教師だとしてもちょっと強火がすぎると思います!」
「だが見てくれ! あっちにも似たようなのがいるんだが!」
『ドライ』の言葉にルクスはダークリーガー『邪悪ラビット』を見る。
ああ、似たような感じだとルクスは思う。というか、あの二人の有様も情緒も子どもたちの教育にあまりよろしくないとルクスは判断した。
情熱があるのは認めるが、あまりにもあんまりである。
言葉にし難いなんかあれがあるのである。
「女性の『エイル』様ははじめまして。全『エイル』様に愛を捧げるメイド、ステラです。以後お見知りおきを」
「いや、私の名前は『■■■』と言ってね……ああ、すまない。君らでは聞き取れない言葉らしいんだ。だから、便宜上『エイル』と名乗っている」
ステラがいつのまに騒ぎを聞きつけてやってきていたアメリカ代表『無敵雷人』こと『エイル』に挨拶をしている。抜け目がない。
褐色と金色の髪を持つ彼女は頭を振った。
「だから、キミの言うところの『エイル』では、私はないんだ。だから、挨拶は後にしようか」
「認めないぃぃ!! 敗北した『エイル』なんて認めないぃー!!!」
『邪悪ラビット』の咆哮が轟く。
それに呼応するようにして『玩具遊戯能力者』たちが殺到する。
「貴女様はもしかして……ええ、後にしましょう。ではレッツ・アク……どうしましたルクス様?」
「いえ、ステラさんたちの様子からして、皆さんの情操教育に非常に悪いと思って。小さな子供さんたちの目と耳を塞ぐのに忙しかったです」
「何を仰っていられるのでしょう? 私は常にクールですが?」
「くーる……くるー……くるう……」
あっ、察し。
「まあ、いいでしょう。『フュンフ・エイル』様ならば、勝負に際しては心に楽しみを、というところでしょうか。楽しみを求めるが故に勝利を目指す。それがわからないようでは!」
ステラが投入した赤いプラスチックホビーのアイセンサーが煌めく。
「この『クリムゾンリッパー』には勝てないと識りなさい!」
「そうですよ! ステラさんはどんな世界でも『エイル』さんと見ればナンパ痛ぁ!」
「そういうことじゃないです」
「せっかく決めましたのに! スリッパで叩かないで下さいよ」
「いいですから、ルクス様ゴー。私後に続きますので」
「もー、わかりましたよ」
ルクスは後頭部を誘って、己のホビーを投入する。そして、早速、と言わんばかりに演奏を開始しようとして再び後頭部をスリッパで叩かれていた。
「いったぁ!? なんで!? なんでまたスリッパなんですかぁ!」
「演奏しようとしたからですが?」
「だって、わたしのホビーは演奏しないと操縦できないんですってばー!」
二人のわちゃわちゃしたやり取りを見ながら、ダーク化アスリートも『五月雨模型店』のメンバーも思った。
こうなってはだめだな、と。
強烈な反面教師を前にして、勝利にこだわることは意味をなさなかったかもしれない。勝利を目指す以前の話であった。
「なんかコント見ているみたいだな」
「ツッコミ、スリッパしかないってのがちょっと」
意外に冷静なツッコミが運動会フィールドに寒風を荒ばせるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
『エイル』さん……?
って、そんなことはどうでもいい。誰でもいい。
そんなことより、わたしの『フィーア』さんに、なにしてくれちゃってるのかなー?
しかも行殺とかどういうことかな?
やられるにしてもせめて、涙目で噛み噛みくらいはあってしかるべきじゃないのかな!?
『フィーア』さん、痛かったね。怖かったね。もうだいじょぶだからね。(りおりお)
わたしは『フィーア』さんのプラクトにつけた『幻影』機能を、
自分の『憂国学徒兵』につけて、分身。
サージェさんにも分身してもらって、フィールドをわたしたちで埋め尽くして、
さらに!【白の天蓋】でクロックアップ&ダウン。
サージェさん、数でぼっこぼこにするよ!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、アッ…前口上お呼びじゃない??
あの、私のアイデンティティ……アッハイダマリマス
今日も理緒さんが荒ぶっておられる
『わたしの』宣言でましたフィーアさんにげてー
噛み噛みする前に逃げてー
今日の理緒さんはフィーアさんに飢えておる
私が言い出したことなんですけど、りおりおって便利すぎますよね!!
というわけで、トラメちゃん
理緒さんのりおりおが終わるまでお昼寝してましょうか(丸まってすやぁ
あ、終わりました?
それではクノイチ&トラメちゃん参ります!
【かげぶんしんの術】でトラメちゃんいっぱいのターン
このにくきゅうを受けるがいい!
これくらいの遊び心が欲しいですね!
アメリカ代表『無敵雷人』こと『エイル』の名を聞いて、幾人かは首を傾げただろう。
その名を知る者は、それが何らかの意味を持つことを知っていたからである。
けれど、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は頭を振る。
「『エイル』さん……? って、そんなことはどうでもいい。誰でも良い」
「ご挨拶な言い分だが」
「そんなことより、わたしの『フィーア』さんに、なにしてくれちゃってるのかなー?」
「試合だから倒したまでだが、問題があったか?」
『エイル』は理緒の言葉に心底わからないな、という顔をしていた。
彼女は『プラクト・フェス』の運動会フィールドの騒ぎを聞きつけてやってきていたが『五月雨模型店』のメンバーと違って、フィールドに参加しようとはしていなかった。
恐らく自分の敗北が今回の騒ぎに起因していることを理解しているのだろう。
自分が参加しては余計な燃料を投下することになるからだ。具体的には今の理緒みたいな人が出てくる可能性がある。
そう、理緒は怒っていた。
自分の『フィーア』が行間で倒されていたというナレーション死。
やられるにしたって、せめて、涙目で噛み噛みしまくっていてくれないと困ると理緒は私利私欲に塗れた願望を吐露していた。
そういうんじゃないと思うのだが。
「今日も理緒さんが荒ぶっておられる……」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はいつもの前口上を行間でサクッとキャンセルされていた。
「前口上、言ってもよかったと思うんだが」
「ですよね!?」
「サージェさん」
「……アッハイダマリマス」
完全に理緒にサージェは飼いならされていた。条件反射である。というか『わたしの』って完璧に言っていた。
「『フィーア』さん、にげてー! 噛み噛みする前に逃げてー!」
「えっ、えええっ、逃げる? 逃げるというか、あああ、あの、これ借り物競争で!」
そう言って『五月雨模型店』のメンバーである『フィーア』がフィールドの近くにやってきていた。
これ、と彼女のホビーが手に持っているプラカードにあったのは、『頼りになる助っ人』という文字。
借り物競争ってこんなんだっけ!?とサージェは思った。だが、問題はそこではない。
「『フィーア』さん! そうだよね! わかるよ! 頼りになるよね! わたし! もうだいじょうぶだからね!」
りおりおしている理緒をサージェは横目に見ていた。
いや、あえて言うまいと思っていたが、サージェはそのプラカードが示していた先、『フィーア』が憧れの視線を向けていたのは、隣にいた『エイル』にであったことを胸にしまった。
言ったらこじれる。
「えっ、えっ、えええ?!」
「任せておいて! 頼れる助っ人、わたしがしっかりお助けしてあげるからね! レンタルなんて言わずにずーっと借りておいていいんだからね!」
理緒は大張り切りである。
投入したホビーを持って速攻でフィールドに飛び込む。
速いもの勝ちである。
「じゃあ、私は『トラメ』ちゃんとお昼寝しておきましょう」
サージェは、今回は楽できそうだと言わんばかりに『トラメ』と共にフィールドに降り立ってはいるが、応援席で体を丸める猫のようにしながら借り物競争を眠り眼でもってぼんやりと見ているのだった。
すやぁってやつである。
「え、えええ、あの、あのっ、そうじゃなくって」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。ぜーんぶ、わたしに任せておいてくれたら間違いないから。『フィーア』さんは天井のシミを数えているだけでいいから!」
「こ、ここ、う、運動会フィールドなんですけど……!」
「大丈夫! さあ、行くよ! サージェさん!」
「え、終わってませんよ?」
「サージェさんも分身して! しゃどうふぉーむっていう増えるわかめみたいなユーベルコードあるでしょ!」
「ふえるワカメじゃないですってば! かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)ですってば!」
「いっぱい増えるエルフのクノイチなら一緒でしょ!」
二人のやり取りはともかくとして、フィールドを埋め尽くす理緒の機体とサージェの機体。
それは借り物競走という場においてダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちが借り物をさせぬと妨害を働こうとするのを一瞬で妨害する圧倒的な物量であった。
「な、なぁ!? なんだこいつら、一体どこから
……!?」
「このにくきゅうを受けるがいい!」
「クロックアップ&ダウン! 白の天蓋(シロノテンガイ)でもって、あなたたちの時間は加減速自在だよ! さあ、サージェさん、数でぼっこぼこにするよ!」
「あ、あの、これ借り物競争で……!」
『フィーア』の声も届かない。
敵がガチの真剣勝負で来るっていうのならば、こっちはガチのガチのガチゴチ戦法でいくまでである。
理緒とサージェによる加減速と分身による物量で持って、彼女たちは『玩具遊戯能力者』たちの借り物になるであろう物品を片っ端から確保していくのだ。
卑怯である。
さすがクノイチ、ずるい。
「お、思ってたのと、ち、違いますー!!!」
『フィーア』の叫びが運動会フィールドに響き渡り、理緒はほっこりするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
むむむ……!ここはわたし達の出番ですね!
アイゼンケーファーで行きます!勿論マニューバタイプです!
それでは早速…!【システム:必殺技演出ON】からの演出効果を強化した【ユーシアのプレイ日記~リズムゲーム~】……そう!BGMに合わせてなんか色々とアピールするいわゆる演武ってやつです!
演習用ターゲットとかを相手に、BGMに合わせて弾幕→パイル→かちあげ→ミサイル発射、なスーパーロボット的必殺技演出を魅せますよ!
2P「わたしとアルミィ先生もお忘れなくー!
さて。アンタらがやらないならこっちの不戦勝っすよ?
てかBGMと演出付きで思う存分お気に入りプラモを動かしつつ多くの人にアピールするチャンスっすよ~?」
初戦を制した『五月雨模型店』の戦いは大番狂わせであった。
それはたしかに快挙であったが、同時に大きな波紋を生み出すものであった。その一つが『プラクト・フェス』……会場の外に設営された運動会フィールドに真剣勝負の機運を運び込むものであった。
それが自然と起こったものであるのならば、誰も止めることはなかっただろう。
だが、ダークリーガー『邪悪ラビット』のアメリカ代表『無敵雷人』こと『エイル』の敗北を認められぬ苛立ちに寄るものであったのだ。
「認められない! あんな試合など!」
咆哮と共に次々と彼の放つガチな雰囲気に飲み込まれる人々。
ダーク化されたアスリート『玩具遊戯能力者』たちは、次々と緩やかな雰囲気であった運動家フィールドを席巻していく。
「むむむ……! ここは私達の出番ですね!」
ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)は運動会フィールドに己のホビー、『アイゼンケーファー』を投入する。
操縦パーティションが展開し、彼女の体の動きをトレースするようにしてフィールドの『アイゼンケーファー』が動き出す。
とは言え、通常の『プラクト』とは今回は異なる。
本来はお祭りのような運動会競技を行うフィールドなのだ。種目もそれに準じているのだ。
彼女が飛び込んだフィールドは、創作ダンス種目のフィールドだ。
「創作ダンス……なら!」
『ええ、戦闘BGMも影響カットもオッケーすよ!』
2Pの声が響く。
フィールドのどこかしこから響き渡る謎のBGM。
なんか無駄に壮麗な感じがする。それでいてノリ安いアップテンポ!
「な、なんだこの音は!? こんなプリセットされていたっけ!?」
ダーク化アスリートたちの動揺が拡がっていく。
本来であれば、創作ダンスには規定の音楽に合わせてダンスをホビーに踊らせることで得点を競うものである。
しかし、ユーシアは、その根底をちゃぶ台返しするみたいにひっくり返してみせたのだ。
『わたし! 決めちゃって下さい! システム:必殺技演出ON(リョウヘイヒッサツムービー)!!』
3Pの声にユーシアは頷く。
「必殺技ってなに!?」
『玩具遊戯能力者』たちは戦いた。
いや、これ創作ダンスなんだけど! と彼らは動揺しまくっていた。
そんな動揺島クリの連中を前にしてユーシアは容赦しない。
「そう! これは創作ダンス! なら、BGMだって創作しちゃえってことです!」
「暴論がすぎない!?」
「演舞用ターゲットオン!」
ユーシアはフィールドに突如として現れたターゲットに弾幕を放ち、さらに踏み込んでパイルバンカーを叩き込んで打ち上げ、さらにミサイルを発射し、炸裂する爆発の中でポーズを決めて見せる。
所謂スーパーロボット的な派手な演出。
それに会場が湧き上がる。
創作ダンスってそういうのだっけ!? と誰もが心の中で思ったが、しかし、そういうのは些細な問題である。
『わたしとアルミィ先生もおわすれなくー!』
2Pが操るのは、黄色いぽんぽんを持って応援する美少女プラモデルであった。
もう訳がわからない。
大量の爆発。
謎のBGMに美少女プラモデルの応援。
『玩具遊戯能力者』たちは、自分たちが何をやりにきたのかさえわからなくなっていた。
「アンタらはやらないなら、こっちの不戦勝っすよ?」
「いや、どう考えても、反則じゃないか!?」
「そうですか? でも、楽しんだもの勝ちって言葉もあるじゃあないですか。同じ競技に参加してるんですから、思いっきり楽しんだほうがいいですよ?」
ユーシアの言葉は尤もであった。
そう、これは元々スポーツなのだ。
ガチのガチ、と言っても創作ダンスはもとから真剣に楽しむことを前提としているのだ。
ならば、これはきっと。
「さ、こっちでBGMは選択するっすから。演出も任せておいてくださいっす!」
「お、俺たちの分まで!? 敵だぞ、こっちは!」
「そんなの関係ないっすよ。思う存分お気に入りプラモを動かしつつ、多くの人にアピールするっす。そのチャンスっすよ~?」
その言葉に毒気を抜かれたように『玩具遊戯能力者』たちは、じゃあ、と2Pのもとに集っていく。
これでいいのだとユーシアは思う。
せっかくのお祭りなのだ。楽しまないと損だと言うように、勝ち負けなんて関係なと高らかに宣言するようにBGMをフィールドに響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
まさかプラモで普通に運動会をするなんて
珍しい行事もあるんだなあ
今回は正統派な機体で参戦しよう
タイプはモーションタイプ
今回は重量級で脚部はタンク…即ち無限軌道!
パワー重視、ガチタン機体だ!
参加競技は綱引きといこうじゃないか
こっちは1人で十分、さあ掛かってくるが良い!
綱を機体に巻き付けて…【雷鳴・解放】起動
一気にブーストをかけて、ダークリーガーを引っ張ってや…や…あれ?
ちょっとタイム
いやちょっとタイム
モーションタイプでタンクってどう操縦すれば良いの?
でも脚部には違いないしな…ルームランナーで走るような感じで一生懸命走れば動くはず!
まあ兎に角やってみよう
失敗したっていいじゃない、楽しんだ方が勝ちだよ
「まさかプラモで普通に運動会するなんて珍しい行事もあるんだなぁ」
『プラクト・フェス』は文字通りお祭りであった。
本来、『プラクト』はチーム戦であるし、また互いのチームメンバーを全滅させるまで勝敗が決しないホビー・スポーツである。
ならばこそ、この運動会フィールドで行われている最終的な点数でもって勝敗を決する、ということ事態がイレギュラーであったのだろう。
けれど、こうしたお祭り行事であるからこそ、楽しめることもある。
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は運動会フィールドを眺めていた。ゆるやかな雰囲気。どこかほのぼのとした、牧歌的なとでも言えば良いのだろうか。
良くも悪くも、勝敗にゆるい雰囲気は、スポーツというものを楽しむにはちょうどよい温度であるように思えたのだ。
だが、ダークリーガー『邪悪ラビット』の登場によって状況は一変する。
「勝利こそだろうが! 負けては何も残さない! 花と実のどっちを取るって言われたら、実だろうが!」
そんなことを叫び、宣う『邪悪ラビット』の言葉は運動会フィールドには似つかわしいものであった。
けれど、玲は綱引き競技フィールドに己のホビーを投入する。
「ぬっ! 何奴!」
「誰が呼んだか正統派機体! 重量級の古典! クラシカルヘビークラス! 無限軌道! パワー重視に安定感! ガチタンだ!」
玲は謎のキャッチフレーズと共に操縦パーティションを起動する。
モーションタイプによって投入された下半身が戦車パーツになった機体を操り、綱引きの綱を握る。
しかし、彼女一人であった。
『五月雨模型店』のメンバーや、他の一般参加者たちは平行して行われている他の競技に引っ張りだこで大忙しである。
このタイミングでの綱引き競技に参加できたのは玲だけであった。
「ふっ、まさかたった一人で負け戦に飛び込むとはな!」
「綱引きは単純なパワーだけでは決まらんのだよ!」
「リズムだよ、リズム!」
ダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちが一体だけの玲陣営を見て、嘲笑する。だが、玲は不敵に笑むのだ。
「きゃんきゃんとお題目だけは、ハキハキと喋ってくれるよね。知ったような付け焼き刃の知識でリズムだのパワーだの。もしかして怖いのかい? こっちは一人で十分だっていっているのさ!」
「な、なにをぅ!」
「馬鹿にしさくって! 後で泣いても許してやらんからな!」
「上等! さあかかってくるが良い!」
まるっくり立場が逆転しているような気がしないでもない。完璧に玲のほうが悪役のそれであったが、そんなこと気にも止めていない。
確かに綱引きとは、綱を引くメンバーの息をあわせ、リズムに乗らねば勝てぬ競技である。
たった一人で、その競技に立ち向かう玲に勝機はないように思えた。
だが!
「あ、ちょっとタイム」
「なに!?」
「いや、ちょっとタイム」
なんで!? と思わずダーク化アスリートたちはずっこけそうになった。だが、玲は今一度確認する。
選んだ操縦タイプはモーション。
即ち自分の動きがトレースされるのである。このタイプでタンクってどうやって操縦すればいいのだろうか。わからん。まるでわからん。
「ならば、これを使えば良い」
そこには金髪褐色の女性『エイル』が何故かどこからか持ってきたルームランナーを玲の操縦パーティションに設置してみせたのだ。
「なーる。これなら脚動かしても大丈夫!」
「ああ、後はとにかく……」
「やってみよう!」
失敗したって良いのだ。
だって、其のほうが楽しい。成功から得られるものは多くはない。けれど、失敗からは多くのことが得られるのだ。
そして、何よりも。
玲は失敗しない。
「雷鳴・解放(ライトニング・リリース)! 我が身よ、稲妻となれ!」
瞬間、玲の機体に宿るは疑似UDCの力。
それは稲妻を纏う無限軌道。ほとばしる稲妻はエネルギーとなって凄まじい加速でもって綱を引く。
「え、えええー!?」
「な、なんだこれ!?どうなってるんだ!? ひ、引きずられる!?」
対するダーク化アスリートたちの綱引きメンバーは十数人を超えているのだ。なのに、たった一人の玲の機体の出力に力負けてしているのである。
唸る無限軌道!
その圧倒的なパワーとは裏腹に玲は操縦パーティションのルームランナーの凄まじい設定速度に目を回しそうだった。
「これきっつ……! ってそうか、ここアスリートアース……! 超人アスリートを基準にされてもさー!!」
そう、超人仕様のルームランナーに悲鳴を上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
格好いい機体が沢山……わくわくしてしまうわね
あまり表情には出ないけれど、浮かれているのよ
けれど名試合の興奮冷めやらぬ内に、大変なことになってしまったわね
対戦をお願いするわ
クリーチャータイプのプラモ『弧月』で勝負よ
ふふん、悪魔的でかっけーでしょう?
種目は徒競走でエントリー
操縦は『モーション』タイプだから、私も走ることになるのかしら
普段は浮遊しているし地に足つけて走ることには不慣れよ、でも頑張って完走を目指すわ
ガチではないけど私も真剣よ
本気だからこそ、相手との攻防だって楽しいの
試合の中でなら私も素直に心を伝えられるみたい
ねえもっとあなたのスゴイ技を見せて
私も弧月も全力で応えるわ
『プラクト・フェス』はお祭り行事である。
普段の『プラクト』競技から考えれば、遥かに緩やかなレギュレーションであった。本来の『プラクト』はチーム戦。
無制限の人数でもってフィールドに入り乱れた戦うものであり、勝敗は互いを全滅させるまで続く。だからこそ、最終的な勝敗を決するのが、総合的な得点である運動会競技は、普段の真剣勝負からは少し外れた位置にあるものだった。
言ってしまえば、勝敗よりも己の組み上げたホビーでもって運動会競技を楽しむためのお祭りでもあったのだ。
「格好いい機体が沢山……わくわくしてしまうわね」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)はどこかふわふわしたような雰囲気で持って、周囲を見回す。
運動会フィールドに投入された多くのホビーたち。
それは皆、一様に異なるものであった。工夫をこらされたもの、アイデアが光るもの。どれもが彼女にとっては得難いものであるように思えたのだ。
ただ、表情に出ていない、というだけの話である。
彼女を知る『五月雨模型店』のメンバー『アイン』からすれば、彼女がとても浮かれているということは一目瞭然であったことだろう。
「静璃ねーちゃん、助かったぜ!」
「名試合だったわ。かっこよかった」
「ふへっ! ねーちゃんの『孤月』も相変わらず、かっけーな!」
『アイン』と見知った仲である。運動会フィールドに降り立った今でもこうやって酔ってきてくれるのは嬉しいことだった。
とは言え、今は仲間。
競技は徒競走、ということであるが、どうにも静璃には馴染みのないものであった。
クリーチャタイプの、水晶の鱗まとう悪魔めいた『孤月』の威容は彼女の雰囲気とはまるで異なるものであった。
「な、なんだあのクリーチャタイプ……凄まじい迫力……!」
ごくり、と徒競走ということもあって、肩を並べるようにしてスタートラインに立つダーク化アスリート『玩具遊戯能力者』たちは、静璃の機体に戦いているようであった。
「ふふん、悪魔的でかっけーでしょう?」
見た目からは想像できない言葉に彼らは一瞬毒気を抜かれたようだった。
瞬間、オンユアマークス! とアナウンスが響く。
号砲の音と共に徒競走がスタートするのだ。一気に駆け出していくダーク化アスリートたちのホビー。
彼らは真剣勝負。ガチモードである。
もとより、超人的な身体能力を持つアスリートアースのアスリートたち。その身体能力を掛け合わされれば、圧倒的な速度で持って徒競走を制することができるのだ!
「飛び入りのやつに負けてたまるか!」
「どんなに恐ろしい見た目であってもな! 例え、其の翼で飛んだとしても!」
彼らは静璃のコースを塞ぐようにして走っていた。
そう、彼女のホビーの性能は底が知れない。故に、集団でマークし、絶対に一位を取らせないと妨害していたのだ。
だが、彼らの目論見は外れる。
彼らは『孤月』が圧倒的な加速を翼で得る、と思っていたのだ。
だが、静璃は違った。
モーションタイプであるために、彼女は一生懸命操縦パーティションで駆け足をしていた。
羽衣人であるからか、普段から歩いたり走ったりはしないのである。不慣れなのだ。思いっきり。
その変わらぬ表情から、ものすごい出来る人感を出している彼女からすれば、あまりにも不都合な現実であったのだ。
「静璃ねーちゃん、がんばれー!」
でも、一生懸命なのがわかる。
『アイン』の声援に頷く彼女。けれど、どうあっても速度が上がらない。
どう見たって妨害するまでもなくダーク化アスリート達の勝利だろう。けれど、その一生懸命さ。
そこに本気を彼らは見たのだ。
最初から妨害在りきで考えていたことに彼らは恥じ入るばかりだった。
「スゴイわ、あなたたち。そんなに早く走れるだなんんて。これは、私も『孤月』も全力で走るしかないわ」
彼女は走る。
どんなに超人アスリートたちに叶わなくっても。
それでも直向きに走るのだ。その姿に会場は湧く。確かにダーク化アスリートたちは順位を独占している。
彼女は最下位だ。
けれど。
「もうちょっとだ! がんばれ!」
「腕を振ってみて下さい、少しでも体が前にむくように!」
「あ、あああと、数メートル、ですよ!」
『五月雨模型店』のメンバーたちと、会場の観客たちの声援に応えるようにして、『孤月』がゴールテープを切る。
全力で挑むこと。
ガチではなくとも、真剣であること。それが示すスポーツ本来の精神性を示した静璃は得点以上の盛大な拍手で持って迎えられるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
●おめでとうアイン!
そんな!アイン!
くっアインがやられたか…だがやつは四天王の中でも…って言う準備してたのに!
●個人の見解です
そうだねガチの塩試合は見ててつまらないよね…
それはやる方も……いや一方的に痛さと怖さを思い知らせるのってそれはそれで楽しくない?
●必要なのは…
危機感!ほどよいピンチはよい刺激となって協力を促し協働での危機越えを果たしたときの充実感や一体感は得難いものだよ!
ってわけで今日は流体金属超マシマシのバラバラXくんをころがしま~す
みんなで押さないとみんな潰されてぺっちゃんこで~す!
でも大丈夫!死にはしない怪我もしない!中に取り込まれてさらし者になるだけ!
「そんな!『アイン』! くっ『アイン』がやられたか……だが奴は四天王の中でも最弱……」
なんか薄暗い一室でロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は不敵な笑みを浮かべてモニターを見ていた。
モニターに映し出されていたのは、『五月雨模型店』の初戦の試合である。
初戦から前回大海の覇者『無敵雷人』、アメリカ代表の『エイル』との戦いを大番狂わせで制した彼女たちの活躍は凄まじい熱気と共に迎えられていた。
ロニの練習はまったくもって無駄になったのだが、まあ、それはそれである。
「はー、せっかく練習していたのに!」
でもまあ、勝ったのならいっか! とロニは切り替えて、会場の外に設営されている運動会フィールドに足を運ぶ。
そこは『プラクト・フェス』が行われている。
お祭り行事と云うやつだ。
紅組と白組に分かれて点数を競い合う、『プラクト』の競技ルールを考えれば、非常にゆるいルールでのお祭り行事。
運動会フィールドらしく、多くの競技がゆるっとしたルールでもって運営されているのだが、しかし、ダークリーガーの暴走によって今やガチモード、真剣勝負の場へと様変わりしてしまっていたのだ!
「あちゃー……まあ、ガチの塩試合は見ててつまらないよね……」
わからんでもない、とロニは頷く。
とは言え、手にした『バラバラX』を投入する。
流体金属の超マシン。
もはやプラスチックホビーの枠組みを超えている気がしないでもないが、止められないってことは許容されているってことかもしんない。
というか、止められる人がいないってことでもあるのだが。
「確実な勝利! 絶対的な勝利こそが求められるものだ! スポーツであるからこそ、勝利に邁進するのが正しき道なのだ! ゆえに俺たちは正道の中にいるんだ!」
ダーク化された『玩具遊戯能力者』たちが叫んでいる。
まあ、言わんとしていることはわからんでもない。
けれど、とロニは笑う。
「でも、一方的に痛さと怖さを思い知らせるのって、それはそれで楽しくない?」
「なんか怖いこと言ってるんだけど!」
「ひ、ひえぇ……」
『五月雨模型店』のメンバーたちがロニの笑みに背筋を凍らせる。
ロニが投入した『バラバラX』は流体金属超真芯である。姿かたちを自在に変えられるのである。所謂トランスフォーム的なあれ。
でっかい惑星みたいなやついたでしょ。
あれ。
あれみたいな形になって投入された『バラバラX』はフィールドで大玉転がしの、大玉になっていたのだ。
「そっち!? 押すわけじゃなく!?」
「うん、転がして~みんなで押さないとみんな潰されてぺっちゃんこで~す!」
ロニはぺっかーと笑う。
笑い事じゃないが、笑い話でしかない。
敵味方関係ない。押す力のないホビーはぺっしゃんこ。やってることは、ホビーで正解征服を目論む悪い大人のやるあれである!
「無茶言うな! こんなでかいのをどうやって……って、あー!?」
すぐさま、グラッと揺れた『バラバラX』の球体が『玩具遊戯能力者』のホビーをぷちっと潰してしまうのだ。
其の様にフィールドはガチモード以上の戦慄が走り抜ける。
「……っ!」
「お、押せ押せ! 力いっぱい押せー!!」
俄に高まる大玉転がし! いや、もうこれは大玉へと変貌したロニの『バラバラX』による恐怖競技!
あまりにも理不尽。
「大丈夫! 死にはしない怪我もしない! 中に取り込まれて晒し者になるだけ!」
「それが嫌だっつってんだろうが!」
『アイン』たちの叫びにロニはケタケタ笑う。
楽しい。
一方的に痛さと怖さを思い知らせる。
うん、これぞ神様の特権ってやつだよね、って笑いながら絶対的中率たる大玉になって転がされ、転がり、ぷちっとやったりやらなかったりを、勝敗の斜め上の位置からロニは堪能し尽くすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『邪悪ラビット』
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POW : 賛否両論! 金満チームの本気
自身の【所属チームが誇る潤沢な強化資金 】を代償に、1〜12体の【強奪した他チームの主力選手】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD : 都市伝説? ドームゲイル
戦場全体に【魔改造した空調設備から放たれる強風 】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【風向き自由自在な強風の後押し】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 贔屓判定!? 邪悪アンパイア
戦場内の味方の、10秒以内の【自軍に不利な判定 】を無効化する。ただし、自身の幸福な記憶ひとつを心的外傷に改竄する。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
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ダークリーガー『邪悪ラビット』は歯噛みしていた。
ガチモードにさせたアスリートたちを次々とダーク化アスリートへと変えることに成功はしていたが、己の『無敵雷人』、『エイル』への狂信的信奉は少しも報われることはなかった。
そう、ダーク化アスリートたちと猟兵サイドに別れた組分けにも関わらず、得点差が全く開いていないのだ。
拮抗している。
「くそぅ、あんな楽しいことしかしたくないって連中になんで、こっちが押されてる!」
負けるわけがないのだ。
勝利を得るために、汗を額にし、涙を拭い、血を吐くような努力を重ねた日々こそが正しいはずなのだ。
なのに、あんな楽しいということだけを言動力にした連中が肉薄してきている事実が許せない。
「こうなったら、オレが出る! 勝利こそが絶対なんだ! 正しいことなんだ! 王道、正道! 絶対!!」
『邪悪ラビット』は、怒り狂う。
絶対を傷つけた『五月雨模型店』のメンバーたちを。
在ってはならないことを起こしてしまった不始末を必ずつけさせなければならない。
そうすれば、己が奉じる絶対的な神の如き『エイル』だって己に味方してくれるはずなのだ。『エイル』を一番理解しているのは自分だし、理解できるのもまた自分しかいない。
強者の孤独。
圧倒的な強さというのは孤独を生み出す。
だからこそ、『エイル』はチーム競技でありながら、メンバーを必要としない。
其の絶対性をこそ『邪悪ラビット』は証明する。
「ここからはオレ一人で十分だ! 見ていて下さい『エイル』! オレがあなたの正しさを証明してみせる!」
その言葉と共に『邪悪ラビット』を模したきぐるみめいたホビーが運動会フィールド、すべての競技に飛び込み、猟兵達と対峙するのだった――。
シルヴィ・フォーアンサー
……そういえば全力でただ真っ直ぐ飛ばしたことなかった。
『意味がないし燃料の無駄だからな』
というわけでやってみようと前回と同じマニューバータイプホビーで参加。
徒競走(徒競走といっても歩くでも走るでも飛んでくでも兎に角コース内を直進してゴールすればOK)に参加するね。
EPメガスラスター改を吹かして武器はいらないから最初からパージしておく。
逆風が吹いてくるけど負けじとオーバーブースト・マキシマイザーで加速。
猛烈な勢いですっ飛んでいくホビーに速い……と感心しながら転ばないようコントロールしつつ実機でもやってみようかなと考えてたり。
ホビー動かすのが楽しくて目的とか周りの事忘れてます。
自分が作りあげたホビーを自分が動かす。
それは機体の揺れや振動、加速度Gといったものが己の肉体に負荷をかけない不思議な感触であるようにシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は思えたかもしれない。
これがスポーツ、というのは語弊があったかもしれないが、しかし彼女は今、生死を賭けた戦場ではなく運動会フィールドにて機体を動かしている。
モデルとなった『ミッドガルズ』は本来、操縦者と神経接続で持って直結し、直感的かつ迅速な機体操作を可能としたクロムキャバリアである。
今操る機体はそれとは異なるが、しかし、シルヴィは見事に動かしていた。
とは言え、である。
それは戦場においての動かし方だ。
眼の前にあるのは徒競走レーン。
『オンユアマークス』
アナウンスが響く。
隣りにいるのはダークリーガー『邪悪ラビット』である。
きぐるみのホビーであるが、なんかこっちをすんごい形相で見ている。どういう原理でそんな表情を浮かべることができるのか気になっていたが、しかしシルヴィの関心事はそちらではなかった。
そう、徒競走。
ただまっすぐ飛ぶ。
それも全力で、だ。
「……そう言えば、全力でただまっすぐ飛ばしたことなかった」
『意味がないし、燃料の無駄だからな』
AIの言葉にシルヴィにも頷く。
けれど、意味がないと己達が判断するのではない。
此処は運動会フィールドだ。ルールがあって、ゴールがある。戦場は無法であるが、しかし、此処は違うのだ。
なら、それに倣うのが自分たちというものだ。
「覚悟しろよ、猟兵……! オレが貴様らを下して、必ずや勝利こそが至上であると知らしめてやる……!」
ビキビキィって『邪悪ラビット』のきぐるみホビーの愛くるしい顔が歪んでいる。
いっそ、怖いな、と重たが、しかし空砲が鳴り響いた瞬間、『邪悪ラビット』とシルヴィは駆け出していた。
悪くないロケットスタート。
二人もフライング判定されていない。
「ドームゲイル!」
ユーベルコードに輝くきぐるみホビーのつぶらな瞳。
そう、『邪悪ラビット』はこのフィールドに設置された空中を魔改造することによってシルヴィには向かい風を、自身には追い風を付加しているのだ。
ぐんぐんと離されていく。
その圧倒的な速度にシルヴィは呻く。
「機体が重い……まっすぐ飛ぶしか無いから、もろに圧を受ける……」
『機体の全面に掛かった負荷……ただの風ではないな。意図的に此方の機体にだけ向かい風が吹くようになっているのか』
「逆風に負けない……いくよ。オーバーブースト・マキシマイザー」
煌めくシルヴィの瞳。
ユーベルコードの輝きを発露する『ミッドガルズ』のアイセンサー。瞬間、機体の背面に配されたメガスラスターが凄まじい勢いで持って光を噴射する。
猛烈な勢い。
いつもならば加速度Gを気にするところであるが、今回は違う。
このホビーから伝わる風は感じることができても、加速度Gは体に負荷をかけない。
「速い……でも」
転ばないように速度をコントロールするのが難しい。
体感できない、ということは、こういう弊害もあるのだと思いながらシルヴィは『邪悪ラビット』を追い上げていく。
「追い風をこっちは受けているんだぞ、何故追いつける!?」
その問いかけにシルヴィは答えなかった。
いや、答えられなかった。
だって、ホビーを動かすのが楽しいのだ。
この徒競走の目的は相手よりも早くゴールに辿り着くこと。けれど、そんなことどうでもよかった。
(楽しい……)
いつもと違うやり方。いつもと違う目的。
生き死になど無縁の状況で思いっきり自分の能力を使うことが出来る。今のシルヴィは様々な要因という柵がある中で最も自由を感じ、己が『邪悪ラビット』を追い抜いたことも自覚せぬままに、その白きゴールテープを切るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
孤独でガチだから負けないし正しいと言いますがアイン様が勝ってる時点で否定されてますわよね
それを認めないとは往生際が悪いですわ
もちろんエイル様のプレー方針を否定する気はありません
彼女の場合は一人でやるのが性に合うって可能とする能力があったのでしょう
アイン様にもそのような事おっしゃってたようですし
ですがそれを他人に強いる事もしておりません自分のが正しいなどとは思っていないのでは
ファンだというならその辺理解してあげてほしいですわね
楽しんでる連中に負けないと言うなら逆に一人で抜いて差し上げましょう。
腕相撲で12人をアルティメットモードで瞬殺ボスも負かします
……一人で十分といって助っ人使うのも謎ですわ。
ダークリーガー『邪悪ラビット』の怒りが運動会フィールドに轟く。
それは彼の狂信的信奉を捧げる者を否定する存在への怒りだった。憎悪だった。
彼にとって『エイル』こそが絶対的なものであったのだ。
だが、それは今日という日に否定されてしまった。
「何故だ、何故オレが負ける! 負けるはずがない! 何もかもオレが正しいはずだ!『エイル』のようにやってきたはずだ! なのに、何故負ける。王道にあって正道を走るオレが負けるはずなどないのに!」
その咆哮を前にイリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は立ち塞がる。
彼女をもしたホビーが掲げていたのは、アームレスリング台である。
重たい音を立てて『邪悪ラビット』のきぐるみホビーとの間に降ろされ、イリスフィーナのホビーが指をくいくいと挑発的に動かす。
「腕相撲か!」
「ええ、これならば互いの膂力、腕力のみで競えます。ああ、なんでしたら、そちらから金満でもってトップアスリートを引き抜いてきても構いませんよ?」
ですが、とイリスフィーナは言う。
「孤独でガチだから負けないし正しいと貴方は仰っておりましたが、その力を使うことは、貴方自身で否定していることになりませんか?」
彼女の言葉尤もであった。
アームレスリングアスリートを引き抜いてくるのは構わない。
だが、それをやってしまっては、孤独と孤高がイコールで結ばられることはないと証明してしまうようなものであったからだ。
「ぐぬ……!」
「ですが、『アイン』様たちが勝っている時点で、すでにそれは否定されていますわよね。それを認めないとは往生際が悪いですわ」
「黙れ! 勝てばいいのだ! 勝てば、何もかも正すことができる! いでよ、アームレスリングトップアスリート!!」
札束をばらまくようにして『邪悪ラビット』はユーベルコードを使い、アームレスリングのトップアスリートを召喚する。
ホビーを片手に現れたアームレスリングアスリートたちをイリスフィーナは対峙する。
「……貴方も、『エイル』様たちのプレー方針も否定する気はありません。彼女たちの場合、様々な要因があるのです。『アイン』様もおっしゃっていました。ですが」
イリスフィーナはガッツリとアームレスリング台でもって組み合う。
触れただけでわかる。
強い。
このアームレスリングアスリートたちはトップアスリートであると理解できるだろう。
だが、イリスフィーナの瞳はユーベルコードに輝く。
「それを他人に強いることもしておりません。自分の行いが正しいなどとは思っていないのです。ファンだと、信奉者だというのなら、そのへんも理解して差し上げるのがファンの鏡ではないのですかっ!」
イリスフィーナの裂帛の気合と共に力が籠められる。
アルティメットモード。
ホビーの全身を包み込む黄金に輝く意思の光。
それによって跳ね上がったイリスフィーナの筋力は8倍。しかし、防御力は0になるのだ。だが、これはアームレスリング。
敵の攻撃など存在しないのだ。
故に、彼女は一気に12人のアームレスリングトップアスリートを下し、『邪悪ラビット』に迫るのだ。
「しゃらくさい! 12人も一気に相手したんだ、披露しているはず。疲労困憊のやつにこの俺が……!」
まけるはずがない、とイリスフィーナに立ち向かう『邪悪ラビット』。
しかし、彼は思い違いをしていたのだ。
「一人で十分と言いながら、勝利を得るために如何なる手段をも講じる。履き違えましたわね、孤高と孤独を!」
「な、なにー!?」
「これが意思の力! 一人で十分だというのならば、最初から真っ向勝負を挑んでくる気概を持ちなさい、ですわっ!」
一気に叩きのめされる『邪悪ラビット』のきぐるみホビー。
その腕の甲は一瞬でイリスフィーナに台に叩きつけられ、その勝利を示すように盛大な拍手が会場に響き渡るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』だが
霹靂「クエ?」(大丈夫?翼で撫で撫で)
陰海月「ぷっきゅ!」(ぐしぐし)
…陰海月語を翻訳します…
泣いてばかりではいられないもん!おじーちゃんに代わってもらった!
ぼくがやるのは、玉入れだ!
あ、ぼくになったから、モーションタイプの『操舵手クラゲ兵』にホビーかわってるよ。そう、この前見つけたやつ!
ぼくは一人じゃないもん!おじーちゃんも霹靂もいるから!
その応援が力になるの!って思いながら、ポイポイ投げていくんだ!
それは、10秒以内に収まらないからね!どんどん狙って投げて入れていくんだ!
※
霹靂「クエークエー」(フレーフレー)
楽しみにしていた観戦。
確かにワールド・ビルディング・カップの初戦は大盛りあがりであった。
誰もが心を暑くしたものであるし、誰もが心を震わせただろう。
大番狂わせというものには、そうした抗いがたい魔力めいたものがあるのもまた事実である。しかし、それを認められないものがいる。
己では何かをなすのでもなく。
他者の行動に対して己の何かを託す者がいる。
「何故負ける……! この俺がどうして負ける!」
あり得ないとダークリーガー『邪悪ラビット』は己の正義に従うようにして、その瞳をユーベルコードに輝かせ、玉入れ競技のフィールドに降り立つ。
彼の瞳は憎悪に輝いている。
ただ只管に己の狂信的信奉を捧げた『エイル』の敗北を認められないがゆえに、その力を発露する。
「これでなら!」
「ぷっきゅ!」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と合体を果たした『陰海月』が己のホビーを操縦する。
フィールドにあった『足軽兵』から『操舵手クラゲ兵』と機体を交換し、『陰海月』は友が己を慰めてくれた羽根の感触を思い出す。
泣いてばかりなんていられない。
涙が枯れたわけでもない。
けれど、この心に宿るものは決して枯れさせてはならないのだと思う。
どれだけダークリーガーが試合の結果を受け入れられなくても。
それでも進まなければならないのだ。
「わけのわからんことを鳴いてばかりで!」
『邪悪ラビット』には『陰海月』の言葉は届かないだろう。
玉入れ競技に参加した二人のホビーは交錯するようにして周囲に散らばるプラボールを掴んでは、即座に籠に投げ入れていく。
だがしかし、『邪悪ラビット』のホビーはきぐるみホビーである。
どうしたって腕が二本しかないのだ。
対する『陰海月』のホビーは、『操舵手クラゲ兵』。その触腕は、一気にプラボールを大量に掴んで宙高く掲げられた籠に投げ入れられていく。
「くっ……アンパイアども!」
『邪悪ラビット』の顎が示すのはアンパイアたち。
玉入れにアンパイアって必要かなと思ったが、しかし、アスリートアースの超人競技である。そうした審判役が居てもおかしくない。
ピピー! と笛の音がなると同時に『陰海月』のホビーの動きが止められる。
「ぷきゅ!?」
「レギュレーション違反の可能性がある! 改めさせてもらおう!」
それは時間にして10秒に満たない時間であった
だが、『邪悪ラビット』のきぐるみホビーが籠にプラボールを大量に投げ入れるには十分すぎる時間であった。
なんで、と『陰海月』は思った。
だが、それは『邪悪ラビット』が金で買収したアンパイアたちの策略だったのだ。
勝利すれば良い。
ならば、審判役を抱き込むことなど、どうってことはないのだろう。
その卑劣なる行いに『陰海月』は怒り心頭である。
「ぷっきゅ!」
だが、自分は一人じゃない。
『疾き者』たちも居れば友である『霹靂』だっている。
なら、その応援を受けて戦う自分と、ただ一人で戦うダークリーガー『邪悪ラビット』とでは、その得られる力が違う。
例え、10秒に及ぶ妨害あったのだとしても!
「ぷっきゅー!」
『霹靂』の応援の鳴き声を背に受けて、『陰海月』は無数の触腕を忙しなく動かし、『邪悪ラビット』の卑劣なる行為を物ともしない盛り返しを見せ、そのスポーツ競技のなんたるかを示してみせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
たかだか一回負けたくらいで何だ?
テメーの気持ちの整理がつかねーのを人のせいにしやがって
くだらねー虚栄心なんざ捨てて、細々考えず体を動かせ
ガチで一歩も動けなくなるくらい全力で来てみやがれってんだ!
一対一のフラッグ戦だ
ホビーに取り付けたフラッグを先に奪い取った方の勝ち
武装制限も無しだ
こっちのフラッグは砲身先端に括り付けた
前回から引き続き天使核のビーム砲さ
奪うには、射線に突っ込まなきゃな
こっちは致命傷でなけりゃ回避もしねー
向かい風も構わず只管に前進して距離を詰める
そら、テメーのガッツを見せてみな、ウサギ野郎!
試合後、互いの健闘を称えて一礼
あざぁーしたっ
(相手への敬意すら忘れた〝ガチ〟など戦争と同じ)
スポーツ競技に敗北はつきものである。
それを認めることができるものは敗北を得たものだけであろう。故にチェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は今まで見てきたことを思い出す。
『五月雨模型店』のメンバーたちは何れもが敗北を得ている。
だが、その都度立ち上がってきたのだ。
どんな困難にだって笑って立ち向かえるだけの心がある。
それはスポーツという生死を賭けぬ戦いの場にあるからこそ、培われたものであった。
「たかだか一回負けたくらいで何だ?」
だから、チェスカーはダークリーガー『邪悪ラビット』の物言いが気に食わなかった。
「テメーの気持ちの整理がつかねーのを人のせいにやがって」
「オレが誰かのせいにしていると!? この感情が、この怒りが! 誰かのせいだと押し付けているとでもいうのか!」
きぐるみホビーの形相が鬼のように変わる。
対峙するチェスカーの『ミニタイガー』の重量にも負けぬほどの強烈なる意思。
「くだらねー虚栄心だけは一丁前に持っていやがって。細々考えず体を動かせ」
「いいだろう! お前らがそういうのなら!」
フィールドを走る二機のホビー。
対する二人が行うのはフラッグ戦。
「機体に取り付けたフラッグを奪い取ったほうが勝ち……! フラッグをどこに取り付けるかもまた勝負の行方を左右する重要な要素ですね」
『ツヴァイ』がいきなり解説にカットインしてくる。
これもまた運動会競技の醍醐味というやつであろう。とは言え、たしかにフラッグをどこに取り付けるか、というのは重要なことであった。
『邪悪ラビット』もそれは承知の上であったのだろう。
己のホビー、きぐるみホビーのきぐるみたる所以を示すように、そのフラッグをきぐるみの中に隠したのだ。
「おい、あれずるじゃねーのか!?」
「いえ、ルール上は問題ありません。きぐるみという構造をうまく使った戦法ですよ」
『アイン』の訴えに『ツヴァイ』はごくり、と生唾を飲む。
恐ろしい。
いくらガチとは言えガチすぎる。対するチェスカーはどうするのだろうかと『五月雨模型店』のメンバーが見守る中、チェスカーは『ミニタイガー』の砲身の先端にフラッグを取り付けていた。
目立つ。
いや、それどころか、簡単に奪われ兼ねない場所である。
「え、ええー!? チェスカーねーちゃん、そこでいいのかよ!?」
「ガチで上等! 一歩も動けなくなるくらい全力で来てみやがれってんだ!」
「舐めやがって……!」
突如として戦場に風が吹き荒れる。
それは運動会フィールドの空調を魔改造して放たれる『邪悪ラビット』の仕込みであった。吹き荒れる風は『邪悪ラビット』の追い風となり、また対戦者には向かい風となるように改造されているのである。
『ミニタイガー』を吹き飛ばさんばかりの勢いの風が猛烈に吹く。
だが、チェスカーは不敵に笑むのだ。
「なんのための重量級だよ! それになぁ!」
飛びかかってくるきぐるみホビーを前にチェスカーは『ミニタイガー』を踏ん張らせる。
それはフラッグ戦というルールを考えれば、真逆の行動だった。
自分のフラッグを取らせず、護るか躱すか。
そのどちらかが必須であった。だが、チェスカーは違う。迫るきぐるみホビーを真っ向から捉えている。
「フラッグをとらねーといけねーんなら、確実に射線上に来るだろ。ならよーこっちは致命傷でなけりゃ、回避もしねー。向かい風がなんだってんだ!」
チェスカーは踏み込む。
『ミニタイガー』の脚部がフィールドに深々と突き刺さった瞬間、『アイン』たちは知るだろう。あれが発射形態であることを。
「な
……!?」
「見せてみな、テメーのガッツを! ウサギ野郎!」
フラッグを奪わんと射線上に飛び出した、きぐるみホビーに『ミニタイガー』の砲口が突きつけられる。
この瞬間を待っていたのだ。
放たれる天使核より流入すうエネルギーのビーム。それがきぐるみを焼き尽くし、さらにはフラッグすら燃やしてしまうのだ。
「あーっ!?」
「だ、だめです、ルール的にはフラッグを燃やしては!」
『ツヴァイ』たちが悲鳴を上げる。
だが、その悲鳴は真剣なものではなかった。あーやっちまった! みたいな感じで笑っていた。
「え、なんでだよ。フラッグ、相手から……」
「奪ってない奪ってない! 焼いちゃってるから!」
「……」
チェスカーは、その言葉に頬をかいてから『邪悪ラビット』に向き直り、互いの健闘をたたえるように『ミニタイガー』と共に一礼し……。
「あざぁーしたっ!」
礼を持って敬意を示す。
そう、相手への敬意を忘れたガチなど、戦争と同じ。なら、これは戦争ではない。スポーツなのだと言うように見事な一礼でもって、〆るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
リレー楽しかったね、皆!
でも個人競技も楽しいし、次は障害物競争しよっと!
衣装は……やっぱニンジャかな?
モデルも自分も競技に合わせて着替えたらめっちゃ楽しいからおススメ☆
そんな中強風が吹いてきて、にぃなちゃんもコスチュームも大ピンチ!
だけど運動会につきもののBGMが情熱的になって来た時がチャンス!
確かに勝つ事は大事。
努力も鍛錬もすっごく大事……でも!それはなんで?
その競技が楽しいからじゃないの?
そう、楽しむからこそ、強くなれるんだ!
通りすがりのにぃなちゃんからのアドバイスだぞ、覚えておけ☆
みたいな感じのお説教と決め台詞が決まれば風は止む!
後は楽しく障害物競争を……あ、障害物で衣装が大ピンチ!
「リレー楽しかったね、みんな!」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)はとびっきりの笑顔と共に抱きついた『五月雨模型店』のメンバーたちと共に一生懸命走った楽しさを共有する。
運動会フィールドにはまだ種目が残っている。
これは『プラクト・フェス』にて共通するものであったが、最終的な得点数が互いの勝敗を決める。
未だダークリーガー側と猟兵側とでは点数の開きがそう大差ない。
いつでも逆転できる射程圏外とでも言えばいいだろうか。
「ああ、楽しかったー!」
「ニィナお姉さんの走りっぷりはすごかったな!」
「ふふん、にぃなちゃんに任せてくれたら、あんなもんだよ! でも個人競技も楽しみたいな☆」
「なら、障害物競走がまだ残っているぞ!」
『アイン』たち『五月雨模型店』のメンバーがパンフレットを広げている。
こういうところがお祭り行事である所以であるのだろう。
ダークリーガー『邪悪ラビット』がどれだけガチ感を出しても、つまるところこれは楽しんだもの勝ちなのだ。
「えー、障害物競走? なにそれ楽しそう。アスレチックみたいになってるんだ☆」
『ドライ』の進めにニィナは頷く。
そうだ、と彼女は自らをモデルにした美少女プラモデルの衣装、セパレートの陸上ユニフォームをすぐさまに、くノ一スタイルに変更させてフィールドに投入する。
「障害物っていったらニンジャだよね☆」
衣装を自在に変更できるのも、水着素体であるニィナモデルの良いところである。
競技によって衣装チェンジとは、これまた商品開発がはかどるやつだ。
「はいはーい、にぃなちゃん、障害物競走にエントリーしまーす☆ って、きゃぁ☆」
フィールドに降り立ったニィナのホビーの裾が強風によってめくれ上がる。
際どい位置である。
何がって、それはまあ、そういうお約束のあれである。
「んもう☆ 悪戯な風さんだね☆」
いや、違う。
これは意図して吹かされた風だ。そう、この運動会フィールドの空調システムは『邪悪ラビット』によって魔改造されているのである。
故に、その風量と方向は『邪悪ラビット』が自由自在に操る事ができるのだ。
「フハハハ、楽しむだけの連中が! 些細なアクシデントで狼狽えて!」
先程の競技で燃やされたきぐるみのスペアを被り直した、きぐるみホビーと共に『邪悪ラビット』が、めくれ上がるくノ一衣装の裾を抑えたニィナの横を颯爽と駆け抜けていく。
抜け目ない。
「確かに勝つことは大事☆ そのための努力も鍛錬もすっごく大事……でも!」
ニィナは障害物を華麗に飛び越え、くぐり、網にもつれさせながらも『邪悪ラビット』を追う。ところどころサービスシーンが見え隠れするが、それは大人の事情ってやつである。
「それはなんで?」
「勝利するためだ!」
「違うでしょ。その競技が楽しいからじゃないの?」
「何を……!」
楽しいはずだ。
だって、そうじゃなければこんなに真剣になることなんてできなかったはずだ。勝利したいという純粋なる想いは、スポーツにおいて根底にあるものであり、また楽しさの隣に位置するものだ。
故にどちらが正しいとか、どちらが上だとかはないのだ。
「楽しむからこそ、強くなれるんでしょ☆」
ニィナは、絶対行動不可能領域(ダマッテキクノガオヤクソク)をも抜け出す。
障害物なんてなんのその!
くノ一であるのならば、障害物に絡んだ衣装のパージなどお手の物!
歓声が上がる! 一部、なんか違う感じもあったが! しかし、衣装パージしたニィナのホビーは彼女の見事なプロポーションを再現した水着姿となってフィールドを駆け抜ける。
「これはにぃなちゃんからのアドバイスだぞ、覚えておけ☆」
情熱的なBGMが鳴り響き、ニィナの一撃が『邪悪ラビット』のきぐるみホビーのみぞおちをとらえる。
「ぐはっ!? な、なんだ、何故風が止まる!」
「もう悪戯な風はにぃなちゃんには通用しないぞ☆」
そう、ニィナの一撃はユーベルコード。
すでに空調の風は止んだ。後は、フィールドを駆け抜け、障害物を避け、ゴールを切るだけだ。
だが。
「ニィナお姉さん、衣装、衣装! すごいことになってる!」
そう、くノ一衣装をパージしたニィナのホビーは今や水着だけ。
障害物競争でさらにズレたり、こう食い込んだりと大変な姿になっているのである。『ドライ』が顔を真赤にしながら言うものだから、ニィナはおどけて言うのだ。
「あっ、にぃなちゃん大ピンチだぞ☆」
なんて、そんなサービスをしながら、ニィナは笑いながら障害物競走につきもののハプニングを楽しんでしまうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
まあ…スタンスは人それぞれだから…
強火意見過ぎるのも考え物だとは思うけど
ほら、強火意見で競技人口減っても困るし…
エンジョイ精神も大事なんじゃないかなあ…
えっと、それじゃあ何しようか…
運動会の競技としては微妙かもしれないけど、相撲しよう相撲
機体はさっきと同じ重量級!
え?無限軌道は全部が足ですが?
堅牢な足腰!まさに相撲の為にあるような重量ボディ!
生半可な機体じゃあ、押し出されも投げられもしないよ
そして、【断章・機神召喚】起動
機械の腕……のプラモを召喚
そして張り手!
張り手で『吹き飛ばし』て、土俵の外側に奴を押し出そう
エンジョイ精神は大事って言ったけど
やっぱり相手に勝った時が一番エンジョイ出来るよね!
スポーツ競技においてもそうだが、楽しみ方というのは千差万別であり、十人十色である。
大事なのは距離感。
競技に対して如何にして取り組むのか。
そうしたスタンスは人それぞれ故に、いくつもの楽しみ方もある。
そういう意味ではダークリーガー『邪悪ラビット』の物言いもまた、一つのスタンスであるように思えただろう。
「とはいえ、強火意見すぎるのも考えものだとは思うけど」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、ある競技のフィールドにガチタンクと共に仁王立ちしていた。
確かに『邪悪ラビット』の言うこともスポーツ競技においては真理の一つであろう。
勝利を得られなければ、その他のすべてが無駄になってしまう。
努力も、時間も、なげうってきたものすべてが。
勝利というものに、その価値を見出すのならば、当然の帰結でもあった。
「強火だと? このオレの考えが! そんなことはない。勝利を得られなければ、他のすべては無意味になる。無意味に、無為にさせぬために勝利を目指すのがスポーツというものだ! 誰だって望んで敗者になろうとは思わない!」
「でもほら、強火意見で競技人口減っても困るし……エンジョイ精神も大事なんじゃないかなあ……」
そう、間口を広げること。裾野を広げること。
これがスポーツ競技において大切なことだ。自分だけ一人でできないのがスポーツなのだ。
どんな競技においても、己だけでなし得るものはない。
他者がいるからこそ、競技として成り立っているのならば、他者のことを考えることこそスポーツマンシップの根底であるのかもしれない。
とは言え、玲は言っても聞かないだろうことは理解していた。
「そういうわけで、相撲しよう相撲」
ぱぁん! と玲は自らの臀部を叩いて示す。なんで?
会場の観客たちも『五月雨模型店』のメンバーたちも、はたまた『邪悪ラビット』もなんで? という顔をしていた。
「相撲だよ、相撲。わからないかな。このフィールドを見てもさ!」
彼女が仁王立ちしていたフィールドは盛り土された土台の上に円を描く土俵!
そう、此処こそが神聖なる相撲の土俵!
さあ、見合って見合って!
「いきなりアナウンスどうした!?」
「さっき買収しておいたよ!」
「オレが言えたギリじゃあないが、これでは……!」
『邪悪ラビット』は己の金満でもってトップアスリートを買収し、引き抜く。だが、相撲は一対一。
どう考えたって、今から間に合うものでもないし、また八百長疑惑なんて掛けられたたまったものではないので、お金では動かないのがスモウレスラーの良いところである。
まったなし! はっけよーい! のこった!
「ま、待て待て!? そもそも、そnホビーどうやれば勝てるんだ!?」
『邪悪ラビット』の言葉も尤もである。
玲の操るホビーは下半身が無限軌道になっている。どっしりとした重量級。え、脚ですけど何か? みたいな顔を玲はしれっとしているし、無限軌道の突進力でもって放たれる、頭突きの一撃が『邪悪ラビット』のきぐるみホビーのみぞおちをえぐる。
「ぐはぁっ!?」
「見てよ、この堅牢な足腰! まさに相撲のためにあるような重量ボディ!」
「それ、ずっこくないか!?」
「金満でトップアスリートをぶっこ抜こうとしたやつのいうことなんて耳を貸さない!」
おっらぁ! と突撃する玲のホビー。
土俵に刻まれ電車道ならぬ、キャタピラ道!
「ぐ、う、おおお! だが、押し出しが決まり手などにはさせは……!」
「あっまーい! そんなどっちつかずのきぐるみファイトでどうにかなる機体じゃないよ! 断章・機神召喚(フラグメント・マキナアーム)!」
玲の瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、召喚されるガチタンクに二倍はあろうかという巨大な右腕。
え、と誰もが目を見開いた。
無限軌道に加えて、巨大な腕。
それは、そう……言うなれば、ガチの中のガチ。
創意工夫を凝らしたがゆえに辿り着く境地。
相撲とは土俵の外に相手を出すか、膝を付けさせるか、はたまた投げるか。それでもって決着が付く。
なら、玲がしたことは単純明快。
重量を載せた機械腕による一閃。
そう、張り手である。
「それ、ずる……」
「ずるくなーい! 機能美って言ってもらおうかな!」
まるでこのために用意されたかのような機械腕の一撃は『邪悪ラビット』のきぐるみホビーをぶっ飛ばし、土俵の外へと押し出す。
「エンジョイ精神は大事って言ったけど、やっぱり相手に勝った時が一番エンジョイ出来るよね!」
巨大な機械腕でもって手刀を切った玲は、ごっつぁんです! と言わんばかりに楽しそうに笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…訳が分からねー事を言ってる奴がいるな
「ご主人サマ?」
いいぜ?遊んでやるよ兎ちゃんよ?
戦闘競技で勝負
【情報収集・視力・戦闘知識】
邪悪兎の戦い方を冷徹に分析
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体…基プラクトに付与
光学迷彩で隠れ水の障壁で音を隠蔽
【念動力・弾幕・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・空中戦・見切り・電撃】
飛び回り念動光弾で蹂躙しその上で鎌剣で切り刻み蹂躙
容赦なく叩き潰す
その上で
おら…相手してやる
何度でも来いよ
徹底的に叩き潰す
UCに匹する程に鍛えた技能と技で
強者として絶対者として蹂躙する
そして…
来ると思ったぜエイルさんよ?
そいつはダークリーガーだ…一緒に叩き潰すか?
(しかし…兎に味方する姿に笑う
いいぜ?ハンデマッチって奴だ
本気で相手してやるよ
だから…おめーらも本気で来い
UC発動!
超絶速度で飛び回り猛攻を仕掛ける
エイルが久しく忘れていただろう感情…そして兎が見失っているだろう感情
即ち…挑む楽しみを存分に味合わせる
尚勝敗は拘らない
この戦いで僕が死ぬわけでもないからな
生きてりゃ勝ちだ
『プラクト』は言うまでもなく戦うホビースポーツである。
となれば、運動会フィールドにおいても簡易的な戦闘フィールドが用意されている。
「やれやれ……訳のわからねーこと言ってるやつがいるな」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は己の『メリクリウス』をモデルにしたホビーと共にフィールドに降り立っている。
『ご主人サマ?』
『メルシー』は、そんなカシムの様子に首を傾げる。
何をするつもりなのだろうか。
「いいぜ? 遊んでやるよ兎ちゃんよ?」
カシムはフィールドに立って、ダークリーガー『邪悪ラビット』を挑発する。
「遊ぶだと? この真剣勝負を前にして遊ぶと言ったか!」
きぐるみホビーがフィールドを蹴る。
それは侮辱に等しかった。
彼にっって、運動会フィールドであっても勝負は勝負。真剣勝負のガチであったのだ。なのに、カシムは遊びだと言ったのだ。
踏み込んでくる、きぐるみホビーの一撃をカシムは冷静に分析する。
光学迷彩によって隠れた機体に風が荒ぶ。
フィールドに配された空調が魔改造されて『邪悪ラビット』によって自在に操られているのだ。強風が機体を押しのける。
「はっ、フィールドを魔改造して使う、か。真剣勝負って言う割には、やってることがチンピラが三下のそれじゃあねえかよ」
「言ったな! 真剣勝負とは試合が始まる前から始まっているのだよ! 使えるものは何もかも使う。金があるのならば、金を使う。そういうものだろうが!」
「履き違えてんなぁ」
カシムは『邪悪ラビット』の物言いに苦笑いする。
真剣勝負。
ガチ。
それは使い勝手の良い言葉だ。言い訳にだって使える。
方便というやつだ。そうした言葉を弄するものこそ、真剣勝負というものの本質を理解していない。
念動光弾を放ちながらカシムは『メルクリウス』と共に踏み込む。
放たれる鎌剣の斬撃が、きぐるみホビーのきぐるみを切り裂き、そのフレームを露出させる。
「おら……相手してやる。何度でも来いよ」
「貴様……!」
何度だって挑発する。
相手が満足するまで、ではない。徹底的に潰すためである。
策を弄すること。事前に仕込むこと。その全てを踏破してこそ、『邪悪ラビット』の意思は砕かれる。
それが強者として、絶対者としての君臨の仕方だと思ったのだ。
そして、フィールドに新たな風が荒ぶ。
其処に在ったのはつるんとした寸胴を思わせる機体であった。
「あ、あなたは……!」
『邪悪ラビット』は見ただろう。
そこにあるのは彼が狂信的信奉を捧げる『無敵雷人』の機体。だが、その機体は軋むフレームのまま踏み出していた。
試合の後であるから、そのダメージが応急処置では直せな居ところにまで及んでいるのだろう。
機体の状況はハッキリ言って一撃でも貰えば、それでダウンするものだった。
「来ると思ったぜ『エイル』さんよ?」
「この頓痴気な騒ぎの大元が私だというのならばな」
「そいつはダークリーガーだ……一緒に叩き潰すか?」
その言葉に『エイル』は首をかしげる。
「私に味方は要らない。誰かに与するつもりもない。私が出来ることは他者を打倒することと救うことだけだ。だから」
漲る闘気が、つるんとした寸胴めいた機体から溢れる。
十全ではない機体。
なのに、溢れる闘気は十全を通り越している。
「な、なぜです! オレは、あなたの……! あなたの不敗神話を……!」
「不敗か。それに如何ほどの意味がある。戦うことが怖くはないのか。この世界は、戦いに際しても、命のやり取りがない稀有なる世界だ。なのに、それでも真剣を望むのか?」
カシムは、その言葉に肌が泡立つのを感じただろう。
強烈なプレッシャー。
それはカシムを味方として見ていないし、『邪悪ラビット』も味方とも見ていない。
謂わばこれは。
「三つ巴ってやつか……いいぜ、やってやろうじゃねーか! 加速装置起動!」
神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が起動する。
アイセンサーがユーベルコードに輝き、戦場を超速度でもって駆け抜ける『メルクリウス』。
その斬撃は嵐のように『邪悪ラビット』と『エイル』へと襲いかかる。
明滅するフィールド。
光がいくつも生まれては、その衝撃波がフィールドを巻き上げていく。
戦うことは恐ろしいことだと『エイル』は言った。
けれど、これは戦いではない。
真剣勝負と言ったが、しかし、そこに命のやり取りはない。何もかも偽物であるというのならば、そうなのだろう。
人の心はいつだって何かを求めている。
刺激であるかもしれないし、他の何かであるかもしれない。それを得ることでもって汎ゆる生命が活性化される。
その感覚を『エイル』もまたきっと覚えているだろう。
「この戦いで僕が死ぬわけでもないからな。生きてりゃ勝ちだ」
「そういうことだ。死ぬことはない。生きていける。だから、この世界は稀有だ」
「……ッ!」
『邪悪ラビット』は呻く。
呻くしかなかっただろう。明滅するフィールド。戦いの風が吹き荒れ、けれど、そこには楽しさがある。
刺激的だからこそ、楽しい。
己の生命を担保にしなくていい争い。疑似的な、と言えばそれまでだろう。
けれど、そこには楽しさがあった。
忘れていた感情も。持ち得ぬ感情も。見失っていたものも。
全てが、そのフィールドにあるのだと示すように戦いの光は拡がっていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
2P「…努力を重ねる日々は勝利の為に仕方なくやる事で楽しいはずないみたいな言い方っすねあいつ」
3P「…勝利だけが重要で過程に意味はなく、金や不正で得た勝利でも同じ、という事でしょう。
と、競技は移動する的を狙う的当てです。わたし(1P)、準備いいですか?」
……的……
見 つ け た。
(引き続き『戦禍撃ち抜く鋼鉄のカギ』を介しアイゼンケーファーマニューバ操作。そこに小型化した絶望撃ち抜く砲火のカギ+UC。
もう集中しすぎて殺気すら漏れてる。ひたすら動くもの(的だけでなく邪魔しようとするなら敵でも)を追い、狙い、撃ち抜くマシーンと化す。敵もなにもなくただひたすらに己と的との真剣勝負。当人は割と楽しい)
勝利を得るための道のりは酷く辛いものである。
そう規定してしまえば、その道程は最後まで艱難辛苦に塗れたものになるだろう。だが、楽しむことができたのならば。
それさえできたのならば。
人は辛さを得るが故に楽しさもまた得る事ができるはずだ。
また逆も然りであろう。
楽しさを得るために苦しみを得ることもまたあるのだ。
だが、そこに努力という名の言葉が入ってくるだけで様相が変わる。
己で努力という者に得られるものは何一つ無い。確かなものなど何一つない世界において、確かなものを得ようと、その方策を求めるのならば、それに対して与えられるのは報いでしかない。
「……努力を重ねる日々は勝利のために仕方なくやることで、楽しいはずがないみたいな言い方っすね、あいつ」
ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)の2Pは憤慨していた。
確かに努力は大切だ。
けれど、努力を楽しむ才能を持つ者だっている。
自分たちが好きなゲームだってそうだ。楽しむ努力をする。努力する楽しさ。それはにているようで違うものだ。
「勝利だけが重要で過程に意味はなく、金や不正で得た勝利でも同じ、ということでしょう」
3Pはこれまでのダークリーガー『邪悪ラビット』の所業を見てそう思った。
そう、不正を働くことも、金満でもってチームから主力アスリートを引き抜くのも。
全ては勝利のための過程でしかないのだ。
そこに正しさを彼は求めていない。
「そうだ。勝利だ。勝利こそが全てだろうが!」
『邪悪ラビット』のきぐるみホビーはボロボロだった。
如何に金満たる身であるとは言え、猟兵達の追い上げによって総合得点も猟兵が今、僅かに勝っている。
「ならば、射的で見せて差し上げましょう。あなたの言うところの真剣勝負が如何なるものか」
3Pの言葉と共にフィールドが変わる。
それは射的。クレー射撃のように宙を浮遊するターゲットを如何に相手より早く正確に撃ち抜くことができるかを競うスポーツである。
「しゃらくさい! 策を弄するのが自分だけだと思うな!」
『邪悪ラビット』はインカムをつける。
それは彼が射的チームからのアシストを受けている証明であった。フィールドの外、観客席からレザーサイトや、アスリートたちによる指示が『邪悪ラビット』に飛んでいるのだろう。
宙を飛ぶバルーンが次々と『邪悪ラビット』によって撃ち抜かれ、得点へと加算されていく。
だが、ユーシアは己もまた一人ではないことを知っている。
2Pがいる3Pがいる。
一人ではない。なら。
「わたし、準備いいですか?」
「いいよ……いつでも……」
煌めく瞳。
ユーベルコードに輝く『アイゼンケーファー』のアイセンサー。同時にそれは、ユーシアのプレイ日記~シューティング~(トクテンカセギモード)に起因するものであった。
ユーシアは見やる。
全てが的。
つまり、全て撃ち抜けば得点になる。
理性はない。
自分は得点を、ハイスコアを狙うだけの獣。
集中しすぎたユーシアからは殺気が漏れ出るようだった。アスリートアースの超人競技とは言え、殺気は必要ない。なのに、今のユーシアからは集中するがゆえに、殺気すらほとばしるようであった。
「な、なんだ、この悪寒は
……!?」
『邪悪ラビット』は知るだろう。
それが真剣勝負というものだと。本物の真剣勝負とは殺気すら解き放つものなのだと。
その殺気にたじろいだ瞬間、ユーシアの『アイゼンケーファー』の手にしたライフルの引き金が引かれる。
瞬く間に宙に飛び出したすべてのターゲットが一瞬にして撃ち抜かれる。
続くターゲットも同じだった。
すべてユーシアが撃ち抜く。一点たりとて逃さない極限のシューティング。すべて撃ち落とせばハイスコア。それだけを求めたユーシアの射的は、圧倒的な強さを持って『邪悪ラビット』の言うところの真剣勝負が紛い物であることを示すようにバルーンを破裂させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
強者の孤独、ねー。
努力も大事だけど、楽しく努力しないから強くなれないんだと思うけどね。
わたしだってほら、『フィーア』さんへの
信奉はすごいと思ってるけど、
五月雨のみんなもサージェさんもいるし、孤独ではないしね!
っていうか、『邪悪ラビット』さん、羨ましいんでしょー?
なんたってこっちはみんなとーっても仲良しだからね!
わたしと『フィーア』さんなんて特に! 特に!(大事なことなので二回
さ、それじゃあのぼっちウサギを叩きのめしていこー♪
ウサギはやっぱりローストが美味しいよね。
『幻影』使って分身からの【ニムルド・レンズ】面攻撃で、
全匹こんがり焼いちゃって、今夜のパーティメニューにしちゃおう!
強者の隣に並び立てる者は強者だけである。
だが、同時にそれは同じ頂きを見ているだけであって、隣に在るものを傷つけるものでもある。
故に強者は孤独である。
だが、ダークリーガー『邪悪ラビット』の語るそれは、弱者の見た強者の観点であろう。
持ち得ぬ者がたどる理屈とでも言えばいいのだろうか。
「努力も大事だけど、楽しく努力しないから強くなれないんだと思うけどね」
戦問フィールドにて、こてんぱんにされた『邪悪ラビット』のきぐるみホビーがぼろぼろになりながらも立ち上がる。
「何を言っている……!? 楽しく努力!? 訳の分からぬことを!!」
「そうかな、訳わからないかな?」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はフィールドにて首を傾げる。
そんなに矛盾したことを言っているつもりもなければ、訳の分からないことを言っているつもりもなかった。
だって、それは思った以上に単純なことであったから。
「わたしだってほら、『フィーア』さんへの
信奉はすごいと思ってるけど、『五月雨模型店』のみんなもサージェさんもいるし、孤独ではないしね!」
「ふぇっ!?」
『フィーア』が突然名前を出されてびっくりしている。
「いや、今絶対、なんかこう信奉って違う意味で言ったよな」
「ええ、何か良い含めているような気がします。具体的にはルビで別の言葉を当ててるような」
『アイン』と『ツヴァイ』がひそっている。
下手に聞こえようもんなら、理緒が暴走するかもって思っているのだろう。
うーん、理解度。
「ていうか、『邪悪ラビット』さん、羨ましいんでしょー?」
「な、なにがだ」
「えー? みんなと一緒にいるわたしが。みんなが。とーっても仲良しなのが!」
そう言って理緒は見せつけるようにして『フィーア』を抱き寄せる。いや、正確には『フィーア』のホビーの機体を、であるが。
なんかすごい絵面である。
「わたしと『フィーア』さんなんて特に! 特に!」
理緒は大事なことなので二回言った。言い切った。
だって、そうなのだ。
いつだって一緒に戦ってきた。辛い時があれば、支えもした。けれど、それは努力であろうか? 楽しいだけではないはずだし、そもそも『邪悪ラビット』は本当に孤独を愛しているのだろうか。
人は誰だって孤独には絶えられない。
誰かを求める社会性を持つ生き物だ。ならばこそ、孤独なんてものは、愛するものではない。飼いならすものでしかないのだ。
それが『邪悪ラビット』にできているとは思えない。
お金の力で他チームからアスリートを引き抜くのも。フィールドの空調を魔改造させたりするのも、審判役を買収しようとするのも。
すべて孤独を愛するのならば、必要のないことだ。
なのに、それをする。
勝利への工程であるとうそぶいているのと変わりないことだと理緒は断言する。
「だ、黙れ! 黙れ黙れ! 本物の強者は、『エイル』は、そんなことなど気にもとめない!!」
きぐるみホビーがやぶれかぶれのように理緒へと突撃してくる。
理緒は大きくため息を付いて言う。
「仕方ないね。じゃあ、ぼっちウサギを叩きのめしてあげるよ♪ ウサギはやっぱりローストが美味しいよね」
分身した機体が『邪悪ラビット』を取り囲む。
それは彼女の言葉を示すものであったし、また『邪悪ラビット』の孤独を強めるものでもあったのだ。
だが、しかし本命はそれではない。
「屈折率、固定……収斂」
Nimrud lens(ニムルド・レンズ)。
それはユーベルコードであり、大気を屈折させ、レンズを生成することに酔って集約された光による一撃。
あらゆるものを燃やす強烈なる光の一撃は熱線となって『邪悪ラビット』のホビーを一瞬で切り裂く。
「み、みえない、だと
……!?」
「光の一撃だからね! こんがり焼いちゃって、今夜のパーティメニューにしちゃおう!」
「いや、冷静に考えて、理緒のねーちゃん」
「ん? どういうこと?」
「あれ、プラスチックだから。食べられないから」
「……比喩だよ!」
本当かよ! という『アイン』のツッコミをよそに理緒はにぎやかに、それこそ運動会のお弁当時間のような騒がしさでもって、『邪悪ラビット』を圧倒するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさんと同じ系統の方がもう一人……一匹?
なんでこの手の方はみなさま強火が過ぎるんでしょうか。
五月雨のみなさまの教育に良くないです!
それに、強者の孤独、とか言い訳してますけど、
あれってただのぼっちですよね。
だってわたしの知ってる『エイル』さん、
強いですけど皆様にも慕われてましたからね!
わたしもつい当てちゃいましたし!
まぁ、そのおかげで妖怪紫くねくねに憑かれたりしてますが……。
なんにしましても!
ぼっちのジェラなんて証明されても困りますので、しっかり倒しますよ!
ということで、今回は演奏しちゃっていいですよね♪
響け、【ツィゴイネルワイゼン】! 勇者の想いと光の波動でぼっちを駆逐です!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ふむ、便宜上のエイル様……つまり、エイル様(仮)
理解しました
何ですかその顔
これでもエイル様については一番存じ上げている所存です
貴方様はむしろ…アルカディア戦争でふらりと現れた女性やノイン様側に近い存在…と推測しますが
まずあの強火の迷惑なファンを
同担拒否しきますのでお待ちください
え?貴女様が仮とてエイル様なら私の主人様たる方ですので
という訳で非常に不本意ですが!が!
ルクス様の演奏も致し方なしとして
いきます、セラフィム!
エイル様の孤高は優しさの裏返し
ええ、残酷なまでに勝利を求めからこそ
必要以上に人を巻き込まない
まだまだ強さと孤独が足りないのでは?
後、エイル様理解度がね!
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は納得していた。
何に、と問われたのならば、『エイル』と名乗るアメリカ代表選手『無敵雷人』の名前に関してであった。
「ふむ、便宜上の『エイル』様……つまり『エイル』様(仮)。理解しました」
「いや、待て。何も理解していない気がするのだが」
『エイル』と名乗る女性はステラの物言いに違和感を覚えた。
違う、と言ったのに、何か勝手に納得されているし、これを放置しては後々に大いなる遺恨が生まれることがわかってしまったからだ。
「これでも『エイル』様については一番存じ上げている所存です」
何故かステラはドヤっている。
「なんだその顔」
「ふ、貴女様はむしろ……アルカディア戦争でふらりと現れた折に存じております。あの時は負傷者のトリアージ見事でしたと言う他ないでしょう。『ノイン』様側と考えておりますが」
「あの空の世界は、忙しなかった。とは言え、ここは、しあわせなゆめをみるにはうってつけの世界だ。なら、私は」
『エイル』の言葉を遮るように運動会フィールドに咆哮が轟いている。
敗北を認めない者の咆哮。
それはダークリーガー『邪悪ラビット』の咆哮であった。
彼は未だ戦闘フィールドに座している。
敗北を認めていないのだ。
「まだだ、まだオレはやれる! どれだけ『エイル』がオレを否定するのだとしても、オレが奉じた『エイル』は負けてない! 負けてなんかいなんだー!!」
「……まずはあの強火の迷惑なファンを
同担拒否してきますのでお待ち下さい」
「キミも大概だな」
「ほんとですよー」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はステラと『邪悪ラビット』のバチバチ具合に嘆息する。
ステラと同系統の存在がもう一人、一匹? いるという状況は彼女にとって頭の痛いものであった。
何せ、情操教育によろしくない。
「なんでこの手の方々は皆様強火がすぎるんでしょうか」
「さあな。私にはわからないことだが」
「『五月雨模型店』のみなさまの教育によくないです! それに、強者の孤独、とか言い訳してますけど、あれってただのぼっちですよね」
ルクスのナイフみてーな言葉が『邪悪ラビット』をえぐる。
「うぐぅ!」
チーム戦に個人だけで参戦する『エイル』に憧れるあまりアメリカでは『プラクト』チームを脱退する重症者が続出したのだ。
それは社会問題にまで発展したことがあるのだ。
「でもですね、わたしの知ってる『エイル』さん、強いですけど皆様にも慕われていましたからね! わたしもつい当てちゃいましたし!」
ルクスはそこまで言ってから、背筋がゾワリと寒気が走るのを感じた。
振り返ると、そこにはステラのすんごい形相があった。
「わー!?」
「やはり、当ててんのよは、故意でしたか」
「ち、ちがいますー! た、例えばですってば! 妖怪紫くねくね!」
ルクスは慌てて否定するが、とんだとばっちりである。
いっときの気の迷いで、ここまで粘着されてしまうのである。強火ファンの厄介さはそういうところである。
「大変だな、キミらも」
「なんで他人事みたいな顔をしているんですかー!」
ルクスがわたわたしている。
「少々お待ち下さいね、主人様」
「いや、キミを雇ったつもりもなければ、主人様と呼ばれるのは……」
『エイル』は否定する。
だが、ステラは本気でわからない、といった顔をしていた。
「え? 貴女様が仮とて『エイル』様なら私の主人様たる方ですので」
「これが妖怪紫くねくねですよ……! なんにしましても!」
「……後で、当ててた件については問いただしますので。審問会ですから」
「やだー! っていうか、違いますってば! ぼっちのジェラなんて証明されても困るって話ですよ! しっかり倒しましょう!」
ルクスはしっかりと演奏の準備を始めている。
「ぼっちの心を癒やすのに音楽は特効薬なんですよ♪」
「♪、じゃないでしょう! 非常に付保にですが! が! ルクス様……致し方なしです。頼みますよ、『セラフィム』!」
ルクスのヴァイオリン楽曲ツィゴイネルワイゼンがフィールドに響き渡る。
「な、なんだこの音は……BGM!? まて、オレはこんなの許可したつもりは……!」
「事後承諾でっす♪」
ルクスのヴァイオリンが奏で荒れる。
文字通りフィールドは荒れに荒れる。勇者の重いと光の波動によって、戦場は『邪悪ラビット』を圧倒するように荒ぶのだ。
その光の勇者の奏でる演奏の最中を真紅の翼が切り裂くようにして飛ぶ。
「『エイル』様の孤高は優しさの裏返し。ええ、残酷なまでに勝利を求めたからこそ、必要以上に人を巻きこまない。貴方とは真逆!」
ステラの手繰る機体が一気に『邪悪ラビット』のきぐるみホビーへと肉薄する。
放たれるビームが逃げ場を消失させる。
さらに後方に真紅の光をときはなちながら、ステラは飛び込む。
「まだまだ強さと孤独が足りないのでは?」
「オレの孤独が、孤高ではないと言うか!」
「ええ、あと『エイル』様理解度がですね。足りてませんよ。圧倒的に。様々な世界の『エイル』様を知る私のほうが上! つまり!」
出た、『エイル』マウント、とルクスは思ったが口をつぐんだ。
あえて後で行われるであろう審問会で不利な証言を取られるわけにはいかなかった。
「この勝負、私の勝ちです!」
きぐるみホビーの背後に高速で回り込んだステラの一撃が『邪悪ラビット』を殴打し、馬乗りになって、文字通りのマウント合戦を制したのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ねえそのプレイヤーってただのぼっちなんじゃ?
と思ったけど口に出すだけに留めるのがボクのやさしさ!
●なんてことだ
●神は買収された
●お菓子三日分で
んも~
アインが悪いよ~アインが~
ボクはせっかく悪い四天王ごっこする準備してたのに~
おらおら~はやくごめんなさいしちゃいなよ~!
とバラバラXくんデビルモードで五月雨模型店のみんなを追い詰めていこう!
おっとなんかラビットくんも潰した気がするよ!
●分かってくれたんだね!
そうこれはチームプレイのなかで彼にその楽しさ充実感を知ってもらうためにあえてボクは悪役を演じて…
え、優勝賞品はお菓子一年分?
ボクが独り占めだよ!みんな潰れちゃえ~!
圧倒的な強者。
それは強すぎるがゆえに孤独を呼び込むもの。それに憧れを抱く心を否定するものではないが、しかし、言い換えるのならば。
「ねえ、そのプレイヤーってただのボッチなんじゃ?」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、そう言葉を発するのを止めなかった。
いや、口に出すだけにとどめているだけでもボクってばやっさしーっとか思っている時点で、優しさとは程遠い気がする。
少なくともダークリーガー『邪悪ラビット』は動揺している。
彼は確かに単身でもってチーム戦に挑み、並み居る世界強豪チームを薙ぎ倒して優勝した『無敵雷人』、『エイル』を信奉している。
狂信的と言ってもいいほどに。
憧れているのだろう。
そうありたいと思うのだろう。
あの強さを得られるのならば、他の何者もいらないと思っているのだろう。
けれど、それができるのは限られた者だけだ。
孤独に耐えられる者は多くはない。
「でもさ~今なら~? やさし~? ボクが~?」
「な、なんだ……?」
「お菓子3日分でお買い得ってことさ」
それは闇取引であった。買収って素直に言えばよかったのだが、なんてことだろうか、よりによって一番厄介な猟兵の一人がいきなり『邪悪ラビット』側に寝返ったのである。
孤独と孤高を気取りながら、他者を利用することはやめられない。
そうすることでしか自分の孤独を紛らわすことができないのだ。それが『邪悪ラビット』である。
「んも~『アイン』が悪いよ~『アイン』が~!」
「は!? なんでだよ!」
「ボクはせっかく悪い四天王ごっこする準備してたのに~」
ロニはデビルモードになった『バラバラX』と共に『五月雨模型店』のメンバーたちを追い立てていた。
ゴロゴロと球体になりながら転がり、フィールドを更地にしていくのである。
「ホント質悪い!」
「おらおら~はやくごめんなさいしちゃいなよ~!」
「謝ること一つもなんだけどな!」
「いいから、ほら~! あっ」
ロニは今なんかぷちって音がしたなって思った。
恐る恐る下を見たら、球体の下敷きになってる『邪悪ラビット』のきぐるみホビーがあった。
「……」
ロニは操縦パーティションから『邪悪ラビット』を見やる。
あっ、めちゃくちゃな形相してる!
「違うんだよ。これはね」
ロニは頭を振る。
リスポーンしたみたいに下敷きになったきぐるみホビーが、配管工みたいな感じで、フィールドに降り立つ。
「こっちを巻き込むな! 優勝賞品に目がくらんだか!」
「そんなそんな、これはチームプレイの最中にキミがその楽しさや充実感を知ってもらうためにあえてボクはね」
いや、違うな、とロニは優勝賞品の飾られた台座を見やる。
なんかこう沢山のお菓子が並んでいるではないか。
「……お菓子はボクが独り占めだよ!」
「ほらやっぱり!」
「あいつマジでこっちを全滅させるつもりだぞ!?」
「あ、あわわわっ!」
ロニはもう其処からやりたい放題であった。
大玉転がし? なにそれ? 塊なんちゃらってゲームみたいに次々と運動会フィールドに設置されたオブジェクトを吸収しながら、競技の枠組み事態をぶち壊す。
「みんな潰れちゃえ~!」
そんなロニに立ち向かう『五月雨模型店』のメンバーと『邪悪ラビット』。
奇しくも、ロニの言い訳に放ったチームプレイの楽しさ、充実感を楔として『邪悪ラビット』に打ち込むきっかけになったことは、まあ、なんていうか結果オーライってやつである――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
声援をもらって嬉しかったわ。一生懸命走ってよかった
次は五月雨模型店の子達と玉入れに出てみたいわ
チーム戦もやってみたいの、がんばりましょうね
相手からの妨害は私と弧月が受け止めるわ
私はさっきの勝負で負傷もしていないから
少しくらいのダメージは大丈夫だけど
不思議ね……アイン、あなたならわかるかしら
邪悪ラビットの攻撃から心の痛みが伝わってくるの
エイルが負けた事が原因だとしても尋常じゃない動揺よ
教えて、あなたはどうして苦しんでいるの?
優しく尋ねて捕まえるわ
だってあなた、壊れてしまいそうなんだもの
癒やしてあげたいと思うのはいけない事かしら
ほら弧月の膝、開いてるわよ
胸に温かいものが宿っている。
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、それを改めて知った。
この胸に宿るもの。
暖かさをくれたのは、『五月雨模型店』や観客たちの声援が元であった。嬉しいと思う。一生懸命走ってよかった、と静璃は思った。
確かに競争は最下位であったけれど。
それでも掛けられた言葉は優しかったし、暖かった。それが嬉しい。何よりも、と思ってしまう。
「次はチーム戦もやってみたいの」
彼女の言葉に『五月雨模型店』のメンバーたちは、じゃあ、何する? とパンフレットを広げてみせた。
この『プラクト・フェス』の運動会フィールドには多くのチーム競技がある。
個人競技もあるが、やはり楽しいのはチーム競技であろうと静璃も思ったのだ。いや、単純にみんなと遊んでみたいと思っただけかもしれない。けれど、それでもいい。
そんなこと些細な問題だ。
「では、これとかどうです?」
「こっちのがいいだろー!」
「俺たちの機体の状況を考えると激しいのは無理だぞ!」
「あ、あの、あの、まずはお水飲みましょう。す、水分補給大切、です!」
『五月雨模型店』の子供らが静璃を囲んでワイワイやっている。
そんな中、彼女はポツリと言う。
「玉入れ、してみたいの」
その言葉にメンバーたちは目をまんまるにする。あ、何かおかしなことを言ったかも知れないと思ったが、違った。
「いーじゃん! そうしようぜ!」
その一言が決まり手だった。
メンバーたちとともに静璃は玉入れフィールドに移動する。
当然ながらダークリーガー『邪悪ラビット』もやってきている。
「遅れは取ったが……! 次こそは!」
すでに審判役も買収している。
これならば、相手を妨害することもできる。玉入れだからこそ、やれることは多いのだ。玉入れのプラボールを重くしたり、数を少なくしたり、そういう妨害工作はすでに周到に澄んでいるのだ。
「うぉっ、なんだこれ、プラボール重くないか?」
『アイン』たちが戸惑いながらも、籠にプラボールを投げている。
「……彼の差し金かしら」
静璃は一人で玉入れをしている『邪悪ラビット』を見やる。
確かに点数では『邪悪ラビット』が上だ。それは彼が真剣であるからだろう。勝ちたいという執念があるからだろう。
けれど、と彼女は思うのだ。
『孤月』が味方の玉入れフィールドから離れて、『邪悪ラビット』のフィールドへと踏み込む。
「……!? な、なんだ!? 妨害するつもりか?!」
「不思議ね……『アイン』、あなたならわかるかしら」
静璃は思う。
玉入れフィールドに入った自分を排除せんと『邪悪ラビット』のきぐるみホビーが『孤月』を打ち据える。
だが、その痛みは普通なら感じないものだった。
『プラクト』はダイレクトにアスリートの動きをトレースする。
けれど、ホビーの傷や痛みを反映しない。
なのに、静璃は己の心がシクシク痛むのを感じた。
「……悔しんだよ。自分がそうじゃないっていうことが悔しくって仕方ないんだ。だから、それがわからなくって、悲しさの大元もわからなくなってしまったことも悲しんだよ、そいつは」
だから、と『アイン』は応える。
「私達が勝たないといけないんだ。あいつの悲しみは」
「そうね。『エイル』が負けたことが原因だとしても尋常じゃない動揺よ」
『孤月』と共に静璃は『邪悪ラビット』のきぐるみホビーへと近づく。
きぐるみは柔らかくても、内部のフレームは冷たく硬い。
それは『邪悪ラビット』の心の内を示しているかのようであった。誰にも本心を見せられない。己の悲しさも、苦しみも分かち合うことのできないもの。
だから、彼女は言う。
「教えて、あなたはどうして苦しんでいるの?」
「やめろ、よせ!」
近づくなと、きぐるみホビーがプラボールを投げつける。
けれど、それは痛くもなんともない。
静璃は『孤月』でもって『邪悪ラビット』のきぐるみホビーを優しく捕まえる。
「なんでこんなことを……!」
「だってあなた、怖て終いそうなんだもの。そんな人を癒やしてあげたいと思うのはいけないことかしら」
静璃にとって、それは特別なことではなかったのかもしれない。
泣いている者がいるのならば、その心を慰めて上げたいと思うのは、人の善性である。故に、彼女はきぐるみホビーの柔らかな外側を『邪悪ラビット』の心の柔らかさだと知るだろう。
「ほら、『孤月』の膝、あいてるわよ」
示す水晶の鱗の大腿。
「……かたそーだけどな!」
『アイン』はその様に笑う。
でも、それでいいのだ。別に無理に戦わなくたって良い。こんな結末だっていい。
静璃は優しく『邪悪ラビット』の頭を撫で、誰にも見せることの出来ない悲しさや苦しさや、言い表すことのできないものを溶かすようなユーベルコードの輝きを前に、きぐるみの中から滂沱の如き涙を溢れさせ……。
「ごめんなざい~……!」
その悲しみを溶かす――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『ごめんなさい屋台村』
|
POW : 屋台料理の全制覇を目指す
SPD : 射的やわなげの屋台で新記録に挑戦する
WIZ : スポフェス参加者達と乾杯し、ご歓談を楽しむ
イラスト:十姉妹
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ダークリーガー『邪悪ラビット』の謝罪の声が『プラクト・フェス』の運動会フィールドに響き渡る。
それは猟兵達がダークリーガーに勝利したことを示すものであり、また同時に彼がもしものときの為に用意いていた『ごめんなさい屋台』の開催を意味していた。
「……もしもの時って、負けたときのこと考えてたんかよ」
『アイン』は、呆れていた。
けれど、己の非を認めることができるのもまた強さの一つであると知っている。
自分が弱いことを認めること。
それもまた耐え難いものであり、苦痛を伴うものだ。
「でも、あんたもこれでまた一つ強くなれたってことだよな」
べそべそしている『邪悪ラビット』の背中をバシバシ叩いて『アイン』は笑う。
ともあれ、『プラクト・フェス』は様々な屋台が並んでいる。
食べ物や飲み物だけでなく、プラモデル屋台なんかも出ている。UDCアースの都心で行われるビッグな模型イベントみたいな様相を呈する『プラクト・フェス』の会場。
もはやダークリーガーとの勝負はついた。
遺恨を残す必要もない。
何一つ生命は奪われていないし、損なわれていない。
なら、わだかまりは水に流してしまえば良い。そうやって、流して、また新たな清流を引き込むことができるのがアスリートたちの精神性の清廉たる所以でもある。
「ま、細かいことはいいよな。せっかくだし、楽しもーぜ! ええと、アンタ名前なんていうんだっけ?」
「……ぐす、ぐす、ぐす……『フュンフ』……『フュンフ・ラーズグリーズ』……」
きぐるみの頭をカポって外すと、其処に居たのは亜麻色の髪をした少年だった。泣きべそかいている、『アイン』たちよりも幼い少年を前にメンバーたちは、そんな泣くなよ、と、笑顔を見せる。
「試合が終わったらノーサイドだぜ! 泣いてばっかいないで、楽しもうぜ!」
そう言って『五月雨模型店』のメンバーたちはべそべそしている『邪悪ラビット』の手を引いて、運動会フィールドから屋台フィールドに変わった『プラクト・フェス』へと引っ張っていくのだった――。
馬県・義透
引き続き『疾き者』のまま
屋台ですかー。変わった屋台もあるんですねー。
陰海月が焼きそば食べたあと、プラモデル屋台に興味があるようでー。
見ていたら、陰海月が以前から「これが出たら買う!」と鳴いて(言って)いた物がありましたね。
※
陰海月「ぷきゅ〜…」
泣いて動いてお腹減ったので、焼きそば大盛り四人前食べた。爆発した食欲
プラモデル屋台は…あ!幻想騎馬隊の最新作『グリフォン&ヒポグリフ牧場』がある!買う!
霹靂「クエ…」
友の食欲が爆発してる。一応は安心
試合が終わればノーサイド。
敵味方関係なく交友を深めることができるのがスポーツ競技の良いところである。相争うことを競い合うことに変えたからこそ生まれた文化であるとも言えるだろう。
『邪悪ラビット』の中身であった少年と『五月雨模型店』の少年少女達が手を繋いで駆け出していく姿を見やり、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、一件落着であると納得する。
とは言え、この『ごめんなさい屋台』の凄まじいこと。
もしもの時を考えて用意していたのならば、なとも消極的なことであっただろう。
けれど、これが無駄にならなかったのは猟兵達が駆けつけたからこそである。
「とは言え、これは本来ダークリーガーが勝利していたら、どうなっていたのでしょうか……祝勝会?」
『疾き者』はなんとなしに思いついたが、詮無きことである。
勝負事は時の運でもある。
今回は自分たちが手繰り寄せただけに過ぎない。
そして、護りきった『プラクト・フェス』の雰囲気だけは大事にしていかなければならない。
「屋台ですかー。変わった屋台もあるんですねー」
もはや目の前に広がるのは屋台広場というか、何かのイベントめいた光景であった。
「ぷっきゅ!」
『陰海月』と『霹靂』の二匹はもう辛抱たまらないというようにソワソワしている。
「ああ、いいですよ。お小遣いはこちらに」
そう言って手渡すがま口を受け取って『陰海月』と『霹靂』がすっ飛んでいく。
其の様を見て『疾き者』たちは笑む。
いつだってお祭りというものは幼い心を持つ者たちをソワソワさせてしまうものである。出囃子が鳴り響き、屋台のあちこちからソースの匂いや油の跳ねる音、または氷を削る音など、雑多な音が響き渡る。
「今回はこれでよしとしましょう」
彼らの笑顔を護れたのならば、これに勝る報酬もないと『疾き者』は『陰海月』達が戻ってくるのを待つのだった。
そして、ところは変わって。
「ぷきゅ~……」
もりもり動いたので『陰海月』はもりもりやきそばを四人前平らげ、爆発した食欲をなんとかなだめすかしていた。
「クエ……」
すんごいな、と『霹靂』は思った。
ものすごい食欲。
ちょっと真似できそうもない。けれど、元気が出たようなら、よかったと一安心である。
とは言え、この『ごめんなさい屋台』は面白い。
多くの食べ物の屋台もそうだが、模型関連の屋台も多く出ているようだった。
制作に必要な道具や消耗品のつかみ取り大会やらなんやらかんやら。多くの楽しげな雰囲気が溢れている。
そんな中、『霹靂』の瞳が捉えたのは『陰海月』がよく購入しているシリーズもののロゴマークであった。
「クエッ!」
あ! と声を上げると『陰海月』も気がついたのだろう。
「ぷきゅ~!!」
そう、幻想騎馬隊シリーズ最新商品『グリフォン&ヒポグリフ牧場』である。
牧場と云うだけあって、情景モデルとのセット。
中々、少年ハートをくすぐってくれるモデルである。『陰海月』はがま口の中身を確認する。
だがしかし、やきそばを四人前の代償は大きかった。
「ぷきゅ!」
お小遣いの前借りである!
そう直談判するために『霹靂』を屋台に残して、商品を確保してもらう。自分はおじーちゃんたちに説得しにいくのだ。
なんとしてでも予算を勝ち取ってこなければならない。
がんばろう! お手伝いもがんばる。言いつけも守る! 色んな説得材料を頭に浮かべながら、『陰海月』はいつも以上に早くふよふよしていくのだ。
急げ、『陰海月』。
きみのプラモデルが購入してくれるのを今か今かと待っているぞ――!
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
POW判定。
……よくわかんないけど終わったっぽい?
『そのようだな、お疲れ様だ』
屋台で美味しいもの一杯食べたいけど少食なので
一割ほど食って残りはヨルの外部端末(某青狸ロボットみたく食べたもの分解できる)に処理してもらって複数食べてる。
五月雨模型店メンバーに話しかけられて初対面の人間にはビビりなのでヨルの影に隠れておどおど返事してます。
キャバリアとかメカ関係とかなら普通に答えられますが家庭環境を聞くとドン引きな返答を考えずに返すでしょう。
細かい所はお任せでよろしくお願いします。
(性格上自分から行くとか無理なので向こうから来てくだされればなと、お友達程度ならヨルも問題視しません)
「……よくわかんないけど、終わったっぽい?」
『プラクト・フェス』のフィールドに花火が打ち上がる。
それはダークリーガー側と猟兵側とに別れた運動会競技の終了を知らしめるものであった。
巨大な電光掲示板には、双方の得点が表示されている。
そこに刻まれていた数字は僅かに猟兵が勝るものであった。
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は、その数字を見て己達猟兵が勝利を収めたことを知る。
『そのようだな、お疲れ様だ』
AIである『ヨルムンガンド』の声に頷く。
どうやらダークリーガーも改心したように思える。ならば、試合が終わればノーサイドと言った『五月雨模型店』の少年少女たちの言葉に従うまでだ。
戦いだけがすべての世界にあって、敗北とは即ち死である。
けれど、此処アスリートアースではそうではないらしい。敗者にも生きる権利がある。道筋が残されている。
それどころか、再起を促すことだってあるのだ。
不思議だけれど、これもまた世界のあり方の人るであるとシルヴィは知るだろう。
「この屋台……? これは、シルヴィも食べていいの?」
『どうやらそのようだ。参加した者たちも、そうでない者たちにも振る舞われているらしい』
『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは目を輝かせる。
食べて良いのだ。
だが、種類が多い。どれを選んでいいかわからなくなってしまう。できることなら全部食べたいとシルヴィは思ったが、彼女の胃袋のスペースは残念ながら全てを収めることはできない。
『安心するといい。少し食べたのなら外部端末に処理させればいい』
そう提案してくれる『ヨルムンガンド』にシルヴィは頷く。
そこからは屋台を片っ端から梯子していく。
一口食べては『ヨルムンガンド』の外部端末に手渡していく。
「ふむ、ふむ、ふむ……」
面白い。
りんご飴や焼きそばは定番であろう。焼きとうもろこしなんていうのもいい。焼き鳥、きゅうりの一本漬けなんかも楽しい。
一口ずつ食べては、歩みを進める。
そうしていると前方から『五月雨模型店』のメンバーたちがやってくる。
彼らも屋台を楽しんでいるのだろう。
『アイン』と呼ばれた少女がシルヴィを見つけて手をふる。
「おーう! さっきはあんがとなー! 玉入れ、すごかったな!」
「ああ、スピードもすごかった! 改造はどんな方法を行っていたのだろうか!」
『ドライ』と呼ばれた少年の声の大きさにシルヴィはすっかり萎縮して『ヨルムンガンド』の外部端末の影に隠れてしまう。
「大きな声を出すから、びっくりされているではないですか」
「だ、だいじょうぶ、ですよー?」
「……あ、ありがとう……改造は、初めてだけど自分のキャバリアを参考にして作ったから……」
其のシルヴィの言葉に『アイン』たちは目を丸くする。
「初めてであれかよ! すげーな!」
賞賛の言葉にシルヴィはますます小さくなってしまう。
けれど、それは良い傾向かも知れない。
恐らくシルヴィより『アイン』たちは年下だ。けれど、偏った年齢層としかコミュニケーションを取るよりは良いだろう。
ただまあ、初対面のメンバーとの会話は長くは続かない。
それにシルヴィはビビリなのだ。すぐさまどうこうしろ、とは言えないだろう。
「あ、ごめんな。いきなり色々聞いちゃって。でも、ほんと助かったぜ! また機会があったら一緒にあそぼーぜ!」
な! と屈託なく笑う『アイン』たちにシルヴィは首を縦に振るだろうか。
彼女たちとの出会い。
それがシルヴィにとって善きものになることを『ヨルムンガンド』は願ったかもしれない――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
SPD判定。
終わったのでフュンフ少年に全力即殺は大人げなかったかなと謝罪するもスーパーパワーで13人即抜きでビビられてショック受けるも五月雨模型店にフォローされて一緒に縁日的競技(輪投げとか射的)を一緒に遊んで回ったりします。
ダークリーガー『邪悪ラビット』の中から出てきた少年『フュンフ・ラーズグリーズ』は泣き虫だった。
まだべそべそ泣いている。
それは猟兵たちに打倒されたからではない。
自分の中の悲しみや、其の理由を思い出したからかもしれない。孤高に憧れども、孤独には耐えられないのが人間だ。
だからこそ、彼は涙していたのかもしれない。
涙の理由を思い出したとて、その滂沱たる流れがせき止められるわけがない。いや、止めなくてもいいのだ。
其の涙はきっと明日のためのものであるはずだろうから。
「あの……」
「ぐす……なに?」
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は本当に申し訳ないというように頭を下げる。
何故、彼女が頭を下げるのか『フュンフ・ラーズグリーズ』には理解できなかった。
涙に溢れる瞳で持ってイリスフィーナを見上げていた。
「全力即殺は大人げなかったですわっ! ごめんなさい!」
イリスフィーナはこれまで、ダークリーガー及び、ダーク化アスリートを運動会競技で瞬殺していた。
腕相撲に至っては13人抜きである。
ちょっとやりすぎである。
いやまあ、アスリートアースのことを考えれば、超人スポーツが溢れているので、そういう破天荒な戦い振りをすることは別段珍しくはない。
けれど、それでも相手が、ダークリーガー『邪悪ラビット』の中身が、こんな幼い少年であるとは思いもしなかったのだろう。
「……うわーん!」
泣いちゃった。
それもそのはずである。『フュンフ・ラーズグリーズ』にとっては、イリスフィーナの快進撃はトラウマもんであったことだろう。
金満主義でアスリートを引き抜いてぶち当てても、イリスフィーナは関係ないとばかりに彼らを千切っては投げ、千切っては投げを繰り返してきたのだ。
「いい加減泣き止めよー」
そんな『フュンフ・ラーズグリーズ』のもとに『アイン』たちがやってくる。
ナイスフォローですわっ! とイリスフィーナは彼女たちのフォローに期待する。
けれど、『アイン』は腕を組んで頷くのだ。
「確かにイリスフィーナねーちゃんのはやりすぎだったけど」
「なんでですのっ! そこはフォローしてくださるところじゃあありませんかっ」
「いやだって、あれはやり過ぎ。ぶち抜きすぎ」
『アイン』は頭を振る。
「でもまあ、かっこよかったよな。13人抜き。あんなふうになりたいって思うよ」
「……うん」
『アイン』に促されて『フュンフ・ラーズグリーズ』が頷く。
まだイリスフィーナには慣れていないようであるが、しかし、その瞳に若干の怯えは消えたようであった。
「そ、そうですわっ! 一緒に遊びましょう。怖がらせてしまったお詫びに!」
「ま、そうだよな。楽しんだもん勝ちだぜ!」
イリスフィーナの言葉に『アイン』も頷く。
そう、もう試合は終わったのだ。そうなればノーサイド。共に健闘を称えたのなら、後は楽しめば良いのだ。
彼女たちと共に屋台を回る。
射的をしたり、輪投げをしたり。時折、イリスフィーナが負けず嫌いというか、大人げない本気を出したりもしたが、それもまた徐々に『フュンフ・ラーズグリーズ』に笑顔を取り戻すきっかけとなっていくだろう。
涙は楽しさで拭える。
いつだってそうだけれど、涙は心の澱。
熱さでもって溶けてしまう。アスリートアースの熱き、スポーツマンシップ。イリスフィーナのいつだって本気の姿勢に、その涙はきっと別の何かとなって、少年の心を後押しするだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
おー、用意周到だね!
にぃなちゃんも用意周到さでは負けないぞ、プラモデルが水着姿になった時に備えて同じ水着を用意してきたもんね!
とにかく細かい事は抜き、皆で飲んだり食べたりプラモ動かしたりして盛り上がろう☆
五月雨模型店の子達も、フュンフ君も、エイルちゃんも、参加者皆で!
色々協力してくれるドライ君には特別盛り上がってもらいたいなぁ。
にぃなちゃんがジュース注いで上げたり、ご飯食べさせてあげたりしようかな?
はい、あーん♡って感じでね☆
あ、でもビールはまだダメだよ。
お酒はにぃなちゃんみたいなオトナの特権だからね☆
いっぱい動いたからお酒が体に染みる!
気持ち良くほろ酔いになって、皆にちょっかい出しちゃうぞ☆
ごめんなさい屋台。
それはダークリーガー側が運動会競技で敗北した時の為に用意されていた催しであった。『プラクト・フェス』を乗っ取るつもりであったし、また勝利した暁には祝勝会をするつもりだったのだと、ダークリーガー『邪悪ラビット』の中身である『フュンフ・ラーズグリーズ』は、べそべそしながら言っていた。
「おー用意周到だね!」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は、彼の根回しの速さに関心したようだった。
だが、と彼女は私服の変装用であろうメガネを投げ捨て、さらには私服を剥ぎ取るようにして宙へと放り投げる。
「な、何をしているんだー!?」
『ドライ』たち青少年が顔を真っ赤にするし、『アイン』たちは『フュンフ・ラーズグリーズ』の目元を覆った。
「???」
「にぃなちゃんも用意周到さでは負けないぞ☆」
そこにあったのは水着姿のニィナであった。
コラボレーションモデルのプロモーションビデオを撮影する時に着用していたスポーティな水着姿。
まさかの行動にニィナファンたちのコールが会場に、それこそごめんなさい屋台の会場に渦巻く。
「水着かよ! じゃなくって!」
「ふふん。プラモデルが水着姿になった時に備えて同じ水着を用意してきたもんね!」
どやぁ☆
『アイン』たちはニィナの大胆さにあっけに取られているようだった。
「みえないー」
『フュンフ・ラーズグリーズ』はもだもだしているが、まあ、刺激が強いので見せられない。
「細かいことは抜き☆ みんなで飲んだり食べたりしないとね☆ さ、みんないっくよー☆」
ニィナは『五月雨模型店』のメンバーたちと連れ立って、屋台を次々と梯子していく。
屋台はどれもアスリートアースらしいものだった。
プロテイン配合だったり、必須アミノ酸配合していたり。それでいて味が損なわれていないのだから凄い事ところだ。
「はい、あーん☆」
ニィナはこれまで色々と手伝ってくれている『ドライ』にたこ焼きを差し出したり、飲み物を付いだりしている。
其の様子にニィナファンたちの血涙が流れまくっているのは言うまでもない。
羨ましい。
うらやまし過ぎて、ねたましすぎて『ドライ』アンチが生まれそうな勢いであった。
「はい、あーん、だとぉ……!」
「許せねぇ……!」
もうめちゃくちゃだ。
「あ、あの、ニィナお姉さん。ちょ、ちょっとそういうのは」
思春期来たのか、ちょい『ドライ』は恥ずかしそうだった。それをニィナは、あ、と気がつく。
「もしかして……ビール気になる?」
「ん? んん?」
「ダメダメ☆ お酒はにぃなちゃんみたいなオトナの特権だからね☆ まだはや~い☆」
そう言ってニィナは泡立つジョッキを、ぐいーって煽る。
ぷっはーって息を吐き出せば、その美味しさが体に染み渡っているのだろう。運動の後のビールほど美味いものはないのである。
「いや、俺はまだ……むぐっ!」
「ほら、食べて食べて☆」
ニィナは気持ちよくほろ酔いになってしまっている。お酒に弱いのだろうか。でも、飲むのは大好きなのである。
次々とビールジョッキを開けて楽しくなってきてしまう。
そうなるとちょっかいを掛けたくなるのがお姉さん心というものであろう。
「んふふ☆ にぃなちゃん、楽しくなってきちゃったぞ☆」
そう言っていつもよりずっとオトナなニィナの笑顔に新たな魅力を感じ取り、『ドライ』は一人ドギマギしてしまう。
ニィナちゃんの初恋泥棒の始まりであった――!
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒さんと】
どうやら私のクノイチ
力では理緒さんの
暴走は止められないようです
アッハイ忍んでました
えっカコイチ?そんなことないでしょいつも忍んでますよ!
この世界はしあわせなゆめですかー
良い表現ですね
だとしてもここの人たちには現実ですし
楽しまないとね
そこのりおりおしている生き物はフィーアさんにお任せします
フィーアさん強く生きてたまにはビンタとかしていいですけど喜びますよその人!!
あと噛むとなんか感染しますよたぶん
ナイアルテさんにお土産ですか?
それは賛成なんですけど
こないだ作ってたプラスチックモデル??
ねこぱんちの衝撃であまり記憶無いんですけど
また羞恥プレイするんです??
菫宮・理緒
【サージェさんと】
くっ。ここに来て泣き虫キャラだと……!
やはりアスリートアースは破壊力が高い!
でもでもー♪
やっぱり『フィーア』さんの属性致死量にはかなわないよね!
なんというかもう、噛んで、すぐ噛んで、わたしを噛ん……。
アッ、ハイ。ごめんなさい。
それにしてもサージェさん、すごい忍んでたね。
なんか1章分いなかったみたいなだったよ。カコイチじゃないかな!
せっかくの屋台村だし、今日はぱーっといっちゃおう!
ごはんでもドリンクでも、プラモデルでもなんでも奢っちゃうよー♪
そだ、サージェさん、わたしたちもナイアルテさんにお土産買っていこうよ!
こないだ作ってたプラスチックモデルに似合いそうな服とかどうかなー?
ダークリーガー『邪悪ラビット』の中身こと『フュンフ・ラーズグリーズ』はまだべそべそしていた。
敗北したからではない。
己の孤独を孤高と履き違えていたことへの羞恥やら情けなさやら、悲しみやらが入り交ざって本来のそれがわからなくなってしまった迷子の如き涙故であった。
そんな彼の姿をみて、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は思わずアスリートアースの破壊力を思い知る。破壊力って何を破壊するのだろうか。
理緒の癖?
「でもでもー♪ やっぱり『フィーア』さんの属性致死量にはかなわないよね!」
「ぞ、属性とは!?」
「あーもうなんていうかもう、噛んで、すぐ噛んで」
ぐいぐいと『フィーア』へと身を寄せる理緒。
『フィーア』は小学生にしては身長が高い方である。成人している理緒とほぼ身長が同じか、少し高い位なのである。
そんな彼女に理緒はぐいぐい押していく。
「わたしを噛ん……」
「ちょい! そこまでしとこーぜ!『フィーア』が目を回しcちまう!」
『アイン』の言葉に理緒は、アッ、ハイ、と大人しくなる。
「い、いえ、いや、じゃないんですけど……そ、その……は、恥ずかしい、ですから」
萌えー! とまた理緒の中の荒ぶりおがあらぶりそうになるのだが、まあそれはまた別の話でいいか。
それしたって、とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はめちゃくちゃ忍んでいた。
過去一に忍びまくっていた。
あの運動会フィールドで一切の気配を遮断していたのだ。
凄まじいレベルである。まるで一章分不参加していたかのような雰囲気である。
「あー! どこにいってたんだよ! 大変だったんだぞ!」
『アイン』がサージェを漸く見つけて、うぉい! と肩パンしてくる。こうなるともう男子高校生のやり取りである。
「あたっ、いえ、どうやら私のクノイチ
力では理緒さんの
暴走は止められないと判断致しまして……」
「それはもとからないだろ」
『アイン』の冷静なツッコミにサージェは目を見開く。
えっ、もとからない?
え?
「ない。クノイチ落第生だよ!」
「ガーンッ!? そ、そんなことないでしょいつも忍んでいますよ!?」
「ないよ! しのべてない! ニンジャの風上にもおけない!」
『アイン』の痛烈なるツッコミは、オブリビオンとの戦いの中でさえ感じたことのない衝撃をサージェに与えたことだろう。
「な、なん、だと
……!?」
「いやぁ、でも今回は本当にすごい忍んでたね。カコイチじゃないかな!」
一章分いなかったから。
まあ、それは仕方ないことである。そういうこともある。というか、逆に理緒の凄まじい暴走という名のりおりおの輝きが生み出す影があったらこそしのべていたのではないか。
理緒のりおりおは強烈な存在感を醸し出していたのだから。
「それはいいんじゃないかな! せっかくの屋台だし、今日はぱーっといっちゃおう! ごはんでもドリンクでも、プラモデルでもなんでも奢っちゃうよー♪」
「太っ腹!」
「そうですね。楽しまないと……あ、りおりおしている生き物は『フィーア』さんにお任せします」
「ふえっ!? な、なんでですかぁ!?」
「いいですか、『フィーア』さん、強く生きて。たまにはビンタとかしていいですよ。喜びますよその人!!」
サージェのめっちゃ雑な勧めに『フィーア』は挙動不審になってしまう。
そんな人いる? 稀に居るのである。
「叩くより噛んで!」
「ええええっ!?」
「噛まれると感染しますよたぶん!」
「何がですか!?」
『ツヴァイ』たちと共にサージェたちは屋台を姦しく歩いていく。ごめんなさい屋台はアスリートアースらしい食べ物で溢れているし、此処にきてプラモデルの屋台なんてものがあるのが『プラクト・フェス』らしいと思うだろう。
和やかでにぎやか。
試合が終わればノーサイドとはよくいったもんである。
「あ、そだ。サージェさん、わたしたちもナイアルテさんにお土産買っていこうよ! こないだ作ってたプラスチックモデルに似合いそうな服とかあるのかなー?」
「それは賛成なんですけど、ねこぱんちの衝撃であまり記憶ないんですけど」
サージェは、はてな? という顔をする。
お部屋に押しかけたあの日の一撃。
柔らかいけど、衝撃打で脳を揺らすあの一撃。
「また羞恥プレイするんです??」
「そういうこと言うから猫パンチもらうんだよー?」
理緒とサージェは、そんなことを言いながら屋台を見て回る。
本当に色々なものがある。兎角、理緒は出費がすごいことになっていた。『アイン」や『ツヴァイ』がたくさん屋台の食べ物を買い込んだこともそうであるが、『フィーア』のおねだりが凄かった。
「あれもこれもお持ち帰りしようねえ♪」
「あ、あわわわ……ちょ、ちょっとした冗談だったんです! 布服、高いですから! それオーダーメイドの高いやつですから……っ」
「はい、お買い上げー♪」
「今ですよ、『フィーア』さん。タイミングよくビンタして理緒さんをりおりおモードから正気に戻してあげましょう」
「む、無理ですー!!」
とかなんとかそんなやり取りがあったとかなかったとか、あったとか――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ステルク】
なるほど、フュンフ・ラーズグリーズ様とおっしゃっる……はい??
まさか…店長様とエイル様(仮)の隠し子…?!
これは由々しき事態です
さ、全てを話せば楽になりますよ
ちなみに同担は拒否です
ええい、ルクス様放しなさい
大切な事なのです
この世界のエイル様を落とせるかどうかの!
誰がヤベーメイドですか!
むぅ(扱いに不満)
まぁ、フュンフ様がエイル様(仮)を求めた理由はわかるような気がします
人の思いをつなぐのが彼ならば
人の思いを増幅させるのが貴女様、ですか?
ただの推測ですが
それにしても人の縁とは、想いとは不思議なものですね
そこの勇者は演奏しようとしない!
ツッコミがスリッパのみで不評でしたので銃撃しますね
ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさん、すとっぷ! すとーっぷ!?
相手子供ですから! 圧がオーバーキルです!(羽交い締め)
三十六世界にやべーを振りまくのは、あまりに強火が過ぎます!
え、『この世界の』って……。
その言い方ですと、別な世界では落とせたみたいじゃないですか。
ステラさん、どこの世界線見てきたんです?
って、『フュンフ』さん、『人の思いを増幅させる』んですか?
それは、
わたしと同じということですね!
それならば!
『フュンフ』さん、さっそくセッションしちゃいませんか?
その涙はきっと、大切な経験としてみんなを幸せにすると思いますので!
……ステラさん?
あの『当ててんのよ』以来の銃撃ツッコミなんですが!?
薄翅・静漓
子供達が一緒に遊んでいて和むわ
アインはなんだかお姉さんみたい
折角の『プラクト・フェス』、ファングッズを買いたいわ
応援席で他の人が持ってるのを見て羨ましかったの
五月雨模型店のも多いけれど、エイルのグッズもさすがの充実ね
ブロマイドにポスター、Tシャツもほしい、どれも格好いいわ
あとはエイルの特集がのった本にも興味があるわ
私はプラクトビギナーだから、凄い選手のことはもっと知りたいの
フュンフになにかお勧めはあるか聞いてみましょう
あら、エイルもまだ会場にいるの?
頼んだらサインしてもらえるかしら……
歓声を上げて、ごめんなさい屋台へと走り出していく子供らの背中を薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は見送り、どこか心に暖かなものが宿るのを感じていた。
これが和むということなのだろう。
彼らの無邪気さは、競技を終えた後の一種の清涼剤めいていた。
先程まで争っていたとは思えないほどの打ち解け方をする『アイン』たち『五月雨模型店』のメンバーとダークリーガー『邪悪ラビット』の中身であった『フュンフ・ラーズグリーズ』。
泣きべそかいていた『フュンフ・ラーズグリーズ』はもう、涙を浮かべていない。
年相応の様子で『アイン』の後ろをちょろちょろしている。
「『アイン』、なんだかお姉さんみたい」
静璃は、その様子を見やり自分も屋台を巡ってみようと思い立つ。
せっかくの『プラクト・フェス』なのだ。
何か関連商品がないだろうかと思ったのだ。ワールド・ビルディング・カップという世界大会だ、なにこう、代表選手たちのブロマイドであるとか、ファングッズが手に入れられないだろうかと思ったのだ。
「そうしたものはないのかしら」
屋台を運営する人々に聞いてみるが、どうやら彼女が会場で見たあれらのファングッズというのは、ファンによるお手製のものであるらしかった。
なるほど、ととも思う。
『プラクト』は自分で作って、自分で動かし、自分で戦うホビースポーツだ。
ならば、そのファンたちだって自分でグッズを作るということはわけないことなのだろう。だが、同時にそれは商機というものでもある。
誰も彼もがグッズを自ら作れるわけではない。
第二回大会ともなれば、そうした商機を掴むディーラーめいたものだって現れてくるのだ。
「どうです、この充実度! 一回戦を勝利で飾った『五月雨模型店』のものもありますよ!」
屋台らしい声出しに静璃は誘われるようにして覗き込む。
そこにあったのはワールド・ビルディング・カップに参加する競合チームのブロマイドやら団扇やらサイリウムやら、多くのグッズが雑多に並べられている。
「こうしてみると『エイル』のものが多いのね」
「そりゃあね。前回大会の優勝者ですし、今回も優勝候補だったんですから」
「そうね……ポスター、Tシャツもあるのね。どれも格好いいわ」
静璃は屋台のあちこちを隅々まで見やる。
表情はそう変わるものではなかったけれど、彼女の内面は幼い子供のように浮足立っていたことだろう。
そんな彼女の側に『フュンフ・ラーズグリーズ』もいつのまにかやってきていた。
きゅ、と彼女の裾を握っている。
どうやら、最後に膝枕をして頭を撫でて上げたせいか、懐かれているようだった。
「……あら、『フュンフ・ラーズグリーズ』。あなたも?」
「……うん。『エイル』の、いっぱいあるから」
「そう。私は『プラクト』ビギナーだから。すごい選手のことはもっと知りたいの。何かお勧めはあるかしら?」
彼女の問いかけに『フュンフ・ラーズグリーズ』は、屋台の中に平積みにされていた雑誌を指差す。
そこにあったのは『エイル』の姿が表紙になった雑誌だった。
どうやら情報誌らしい。『プラクト』の専門誌とでも言えば良いのだろうか。
「それが、一番『エイル』のこと乗ってる。あっちは『無敵艦隊オーデュボン』の特集。『超人皇帝』のインタビューもあるよ」
へえ、と静璃は関心する。
幼い少年だが、こうした得意分野では物怖じしないで語ることができるのだろう。また一撫で『フュンフ・ラーズグリーズ』の頭を撫でる。
そうするとますます彼は得意になってあれこれ教えてくれるのだ。
「結局、色々買ってしまったわ」
二人はお揃いの『エイル』ロゴのTシャツを着ていた。
すごく満足感がある。
「あっ……!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』が声を上げた瞬間、二人の前にはいつのまにか『エイル』の姿があった。
まだ会場にいたのだろう。もし居たのなら、サインを頼もうと彼女は思っていた。
だから、と声を発する前に『エイル』は笑み、意を即座に汲み取ったように彼女たちが着るTシャツにマジックでサインを施す。目にも止まらぬ速度であった。
「勝手に書いてしまったことは詫びる。だが、私のTシャツを着てくれていたものでね。嬉しくなってしまったのさ」
そう言って『エイル』は手をひらひらさせながら、颯爽と去っていく。
「あれが、前回の優勝者」
なるほど、静璃は『フュンフ・ラーズグリーズ』が夢中になるのがわかる、と彼女の側で感激に震える彼の頭をまた一つ撫でるのだった。
よかったね、と――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
屋台だー!
事件が終わればノーサイド…というかええい、そんな些事は気にしない!
楽しまなきゃ損ってね
とりあえず、目指すのは全屋台制覇!
お祭りだから、カロリーだって気にしない
片っ端から買い食いとかして、練り歩こう
けどあれだよなあ、屋台と言えば微妙にパチモノというかコピー品を売ってるグレーな屋台とか
やたら景品が豪華なくじとかちょっと怪しい店も無いと
特にくじ引き!
最近は全部引いてみたとかやってる人も居るけど、くじはハズレを引く為にある!
そんな訳で、くじ引き!外れ!ヨシッ!
むしろ当たるな、これはこう…ロマンなんだよ
ひとしきり屋台を楽しんだら、新作のプラモデル情報を眺めに行こう
どんなマイナーなプラモ出るかな
戦いが終わればノーサイド。
それがスポーツの良いところである。争いながらも、しかし手を取ることができる。友情だって芽生えることだってあるだろう。
互いを好敵手と認めたのならば、次なる再戦を望むかもしれない。
そんな精神性こそが、もっともスポーツでは尊ばれるものであったのかもしれない。
「まっ、事件って言えば事件だったんだけど、終わればノーサイドっていうか、ええい、些事は気にしない!」
そう、楽しまなければ損である、と月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、ダークリーガー『邪悪ラビット』が、こんなこともあろうかと用意していたごめんなさい屋台へと飛び込む。
そう、楽しいことは楽しい。
なら、楽しまないことこそ敗北である。
「とりあえず、目指すは全屋台制覇!」
「どう考えても摂取カロリーを超えていますが」
「そこ、冷静に言わない!」
玲の言葉に『ツヴァイ』が言うが、彼女だって焼きそばをズルズルすすっている。多分、『五月雨模型店』の中で彼女が一番よく食べるのかもしれない。
「……頭を使うとカロリーが消費されるんです。よく考えている証拠です」
「理屈はいらなーい! 片っ端から行くよ!」
玲はそう言って『ツヴァイ』たちと共に屋台を練り歩く。もう、それは俗に言う『此処から此処まで一つずつ持ってきて』っていうあれである。
そう、焼きそば屋に足を運べば、ソース、塩、オムそば、そういうメニューは全部買う。
とにかく買う。
目についたら買う。
ときめいたら買う。
財布のがま口は開きっぱなしである。
「けどあれだよなあ、屋台と言えば微妙にパチモノというか、コピー品とか打ってるグレーな屋台とか、やたら景品が豪華なくじとかちょっと怪しい店も無いと」
「あっちにありましたよ?」
「そら来た!」
玲は、その言葉にびゅーんって駆け出す。駆け足。そう、こういうホビー関連が好きな者はいつだって、目的地が近づくと心拍が上がって、スッハ、スッハしてしまうものである。
早足にもなるし、普段はしない腕振りだってしてしまうもんである。
故に玲は屋台の前に腕組みして、さっそうと袖から財布を取り出す。
「狙うはくじ引き! 特にくじ引き!」
そう、玲がやりたいのはくじ! 運試し!
「でも、どうみてもこれ……」
『ツヴァイ』の言うことは尤もである。紐が幾束も束ねられ、そしてそれらが景品に繋がって吊るされているタイプのくじ。
このタイプはくじ糸を束ねているのがポイントなのである。
豪華商品には繋がっておらず、吊るされているだけ。束ねた部分で誤魔化していたりするものなのである。
だが、玲は頭を振る。
罠だ、と冷静な自身が告げている。
「罠でも良いッ!」
「いえ、よくはないのでは……?」
「良いかい。大人ってのは生きているだけで業がたまるもんなんだよ。くじはハズレを引くためにある!」
「嘘でしょ」
愕然とした顔を『ツヴァイ』がしている。
どういうことなのかさっぱりわからんという顔である。
「おっちゃん、まずは一枚!」
玲がくじを引く。糸を引っ張れば、カスッと軽い手応えがする。ハズレである。
「ハズレ! ヨシッ!」
「よくないですよね!?」
「いいんだよ……もっかい!」
引く。ハズレ。引く! ハズレ! 引く!! ハズレ!!
すごい確率であった。
ちょっとした景品すら引けない。此処まで来ると逆にスゴイのではないかと思えて着てしまうのだから不思議である。
「むしろ当たるな、これはこう……流れが来てる」
「来てませんよね!?」
「……ロマンなんだよ! でぃすてぃにーどろー!」
しゅば! と玲が引っ張った糸。当たった! という感触がする。
だがしかし、現実は非常である。
此処まで言えば結果がどうなったかは言うまでもないね。
「……わぁ、あのタイトルのプラモデルが出るんだー」
玲は号外とばかりに『プラクト・フェス』にて撒かれたチラシを手にとって真っ白になっていた。
「……『憂国学徒兵』シリーズの最新作『ビーストフロントライン』かぁ……」
玲は手に取ったチラシをくしゃっとすると立ち上がる。
「当たるまで引けば、当たるんだよね!」
それ、当たらんフラグであるが、そう、玲の『プラクト・フェス』は始まったばかりなのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
(ちゃっかり物販の屋台で買った記念Tシャツ着用)
こーいうのは楽しんだモン勝ちだからな
折角だ、お前らが優勝したらシャツにサインくれよ
何やかんや言いそびれちまってたな
初戦突破おめでとさん
良い戦いっぷりだったぜ、お前ら
勝っても負けても腹は減る
デカい勝ち星の記念だ、好きなモン奢ってやんよ
お前も来い、フュンフ
しっかり運動して腹減らした後のメシは格別だぞ
(前に戦った奴も『フュンフ』……? と思いつつ今はスルー)
(珍しくミニタイガーを壊さなかったのに、浮いた修理費は全て吹き飛んだ)
前にも言ったが、大事なのは勝った時より負けた時だ
だがまあ、お前らに関しちゃ……
〝次は負けない〟
そう思えるなら十分だろーよ
チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)はちょっと気まずい気持ちがあった。
なんていうか、いつものノリで口汚い言葉を叩きつけていたのが、まさかあんな『アイン』たちよりも年下の少年だったとは思いもしなかったからである。
そう、ダークリーガー『邪悪ラビット』の中身である『フュンフ・ラーズグリーズ』。
彼は泣きべそをかいていた。
まさか、あんまりにも強烈な言葉を叩きつけたからか、と思ったりもする。
けれど、そういうわけではないようだということはチェスカーにも理解できていた。
あれはきっと、自分の悲しいという理由もわからないままに、ただ暴れていただけなのだ。子供の癇癪、と言えばしっくり来るだろう。
とは言え、である。
「こーいうのは楽しんだモン勝ちだからな」
彼女にしては珍しく自身の機体が破損することはない戦いであった。
まあ、『プラクト・フェス』は通常の『プラクト』とは異なり、運動会競技という比較的損傷するシーンの無いものであったからだ。
そのため、彼女がプールしていた修繕費が浮いているのだ。
チェスカーは早速物販の屋台でワールド・ビルディング・カップの記念Tシャツを購入して着込んで改めて『五月雨模型店』のメンバーたちと合流するのだ。
「おー、チェスカーねーちゃん!」
「よぉ、お前ら」
「さっきはありがとなー! いつも頼もしいぜ!」
「ハッ、お前らもな。初戦突破おめでとさん。よい戦いっぷりだったぜ、お前ら」
チェスカーは言いそびれていた祝辞を告げる。
初戦の試合はチケットを取って観戦しにきていたのだ。
『五月雨模型店』の大番狂わせ。あれは痛快だった。
「勝っても負けても腹は減るよなぁ?」
「当然、その後で運動会競技も参加したから、ぺっこぺこ! 何食べてもまだ足りないって思っちまうぜ!」
「なら、デカい勝ち星記念だ。好きなモン奢ってやんよ」
そう言ってチェスカーは笑う。
そして、『アイン』の背中に隠れるようにしていた『フュンフ・ラーズグリーズ』にも言うのだ。
「お前も来い、『フュンフ・ラーズグリーズ』。しっかり運動して腹減らした後のメシは格別だぞ」
「……うんっ」
素直だ、とチェスカーは思った。
以前『五月雨模型店』にやってきた『フュンフ』と名乗るダークリーガーとは異なるのだろうか。
いや、気になることはれど、しかし今は気にしない。氣にしたってしかたのないことであるし、今目の前にいるのは『フュンフ・ラーズグリーズ』だ。
あのダークリーガーではない。
なら、自分がとやかく言うことでもないだろうとチェスカーは思ったのだ。
大切なのは、今いる『フュンフ・ラーズグリーズ』が笑うことだ。
「じゃー、ねーちゃんのおごりってことで! 右から左まで全部な!」
おい、とチェスカーは思ったが、自分が奢ると言った手前である。
大人には二言はない。
奢ると言ったのだから奢るのである。とは言え、である。『ミニタイガー』の修繕費をプールしていた予算を軽く超えそうである。
「……えっと……」
「遠慮すんない。好きなの頼みな」
そう言ってチェスカーは笑う。彼女にしては有効的な笑みであったかもしれないが、ちょっと怖い。
『フュンフ・ラーズグリーズ』はおずおずと言った感じで、りんご飴を指差す。
「これでいいのか? 男ならでっかいのを頼みな」
そう言ってチェスカーは大きなりんご飴を『フュンフ・ラーズグリーズ』に手渡す。そして、彼の目線似合わせるように膝を折って告げるのだ。
「前にも言ったが、大事なのは勝った時より負けた時だ」
「……僕には、今?」
頷く。
そうだ。けれど、こうやって自分が言うことでもないのかもしれないとチェスカーは思っただろう。
彼らは自分の脚で立ち上がることができる者たちだ。
アスリートなのだから。
「“次は負けない”よ」
「そうかよ。なら、上等。十分だろーな」
また今度、と言うようにチェスカーと『フュンフ・ラーズグリーズ』は互いの拳をコツンと合わせて、再戦を誓うように笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
……ユーシアです!今わなげ屋台の前に居ます!
2P「単純に誰がプラモ屋台で買い物ができるかをこれで決めようって話なんすけどね」
3P「これならサイズ差(一応2・3PはUCなしだと小さい)は関係ないですからね」
たまにはわたしだってプラモとかを買いたくなったりもするんです!……あの「クリムゾン・メタル・ドラグーン」ってやつ!
2P「まさかのモンスター系。しかし、やっぱり時代は美少女系っすよ!」
3P「ふっ、わたしに勝てると思ってます?カスタム性の高いロボ系で決まりですよ」
……それじゃ、始めましょう!勝負です!
(その後、勝負は白熱し、結局三人揃って夢中で目的を忘れわなげ屋さんで予算を使い果たしたという)
ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)たちは、輪投げ屋台の前に着ていた。
何やらただならぬ雰囲気を放っているのは、これが自分たちの購入したいプラモデルのジャンルを推すために必要な行為だからである。
そう、予算は一人分。
されど、ユーシアたちは1P、2P、3Pとバーチャルキャラクターの人格を分けている。
当然そうなれば、互いの好みというのも差異が生まれてくるもの。
「なーなー、何がほしーんだよ?」
『五月雨模型店』のメンバーの一人である『アイン』がなんか面白そうなことをやってるなーってユーシアたちの輪投げ対決を見物に着ている。
イカ焼きを頬張っている姿は、先程までのアスリートとしての顔はない。
「わたしは、あの『クリムゾン・メタル・ドラグーン』ってやつが欲しいんです!」
『まさかのモンスター系!』
「あー、いいよな。造形が格好いい。ドラゴンは格好いいってのは、どこ言っても共通認識ってやつだよな!」
うんうん、と『アイン』が激しく同意している。
首振り人形みたくなっている。
『ふっ、しかしやっぱり時代は美少女系っすよ!』
2Pは頭を振る。
確かに彼女の言うこともうなずける。
可憐なる少女たちを立体に起こした時、その可能性は無限大である。武装させてもよし、日常の表現してもよし、ドールハウスを作って自分だけの箱庭を生み出すのもよし!
そう、美少女プラモデルには夢が詰まっている!
『ふっ、輪投げで私に勝てると思ってます?』
「3P! でも、みんなの体格によらない勝負ってことで輪投げにしたんですよ!」
『そうでしょうね。ですが、輪投げは投げる力、方向によって運命が決まります。それに、カスタム性の高いロボ系を買いたいという私の心に勝てるわけがないのです!』
『まさかの根性論すか!』
互いの好みが完全に食い違っている以上、これを決する方法は唯一。
そう、勝利のみである。
ユーシアたちはなけなしのお小遣いを手に輪投げへと挑戦する。
「……それじゃ、始めましょう! 勝負です!」
三人の白熱した輪投げ対決が始まる。
一進一退。
だがしかし、彼女たちは自分たちの事をもっと知るべきであっただろう。
そう、自分たちが白熱しやすく、またそうなってしまえば負けず嫌いになってしまうことを。そして、他ならぬ自分という中にいくつかの人格を持つが故に、譲れない戦いが生まれることも。
彼女たちは白熱するあまり、商品のプラモデルを買うお金すら輪投げに投入しきってしまっていたのだ。
目的を完璧に忘れていた。
いや、手段が目的になっていた、と言えばいいだろうか。
すでに自分の好みのプラモデルを買う、ではなく。
相手に勝つ、ということに目的がシフトしてしまっていたのだ。だが、三人の決着が付く前に財布の中身が付きてしまっていたのだ。
「……も、もしかして」
『……すかんぴんっすか?』
『わ、私の計算が……』
愕然とする三人。
だが、そこに現れたのは『アイン』たちであった。彼女たちは手にしたプラモデルの箱をユーシアたちに手渡す。
それは彼女たちが欲していたものであった。
それぞれに手渡されると『アイン』たちは笑う。
「さっき、其処の射的で落としてもらったんだ。欲しがってやつだろー? 私達は試合で忙しいから作る時間ないからさ、よかったら作ってくれよな」
そう言ってユーシアたちは、試合もノーコンテストになったし、勝負は勝敗を決めるどころではなかったけれど。
「お、おおおー!! ありがとうございますー!」
しかし、共に戦った彼らの計らいによって、期せずして己たちが望んだものを手に入れるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
いやごめんなさい屋台ってなんだよ!?
「ごめんなさいが出来るのはとっても立派な事だぞご主人サマ☆」
いやそれよりもさぁ…
フュンフ…かよぉおおおおお!!??
アブねぇ…屋台のコーラ飲んでたら吹いてた所だった…!
取り合えず屋台巡りだ!食いまくるぞ!
「おー☆」(焼きソバやたこ焼き屋お好み焼き巡り
んで食べまくってたらなんかプラモデル屋台(五月雨模型店)もあって…
…あー…ぅー…くそ!(何か買った
よぉ兎ちゃん…いや…フュンフ…だったか…ぁー…ぅー
「ご主人サマー?」
くれてやる
プラクトとして自分の愛機にするか普通に捨てるか好きにしろ
という訳でプラモデルの「セラフィム
Ⅴ」「セラフィム・エイル(青)」「ダリル◎ルデ」をあげる
んでさ…おめー…五月雨模型店の奴らの戦い方を見たらどうだ?
何ならチームに入るのもいい
エイルに打ち勝った奴らの戦い方を学ぶのもあれだ…最強の道って奴だ
「ねぇねぇ皆ー☆カキ氷食べようー☆」
だぁぁ空気読めねーなおめーはよー!?
まぁ…これは唯の一つの選択肢だ
選ぶのは自由って奴だ
謝罪、というのは罪を認めることである。
罪を濯ぐことは並大抵のことではない。だがしかし、その最初の一歩である謝罪に踏み出すことのできる意思こそが最も大切なことであっただろう。
少なくともアスリートアース世界のダークリーガー『邪悪ラビット』、その中身である『フュンフ・ラーズグリーズ』は、それができる存在であった。
だがしかし、である。
そう、しかし、である。
「いや、ごめんなさい屋台ってなんだよ!?」
思わずカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は叫んでいた。
すでに『プラクト・フェス』の運動会フィールドは無数の屋台で埋め尽くされていた。
『ごめんなさいが出来るのはとっても立派なことだぞ☆ ご主人サマ☆』
わかる。
すっげーわかる。わかるんだけどさぁ、とカシムは『メルシー』の言葉に難色を示す。
ネーミングセンスってもんがあるだろうがよぉ、とまだカシムはなっと言ってない様子であった。
でもまあ、ここでなんやかんや言ってもな、とカシムは頭を振って屋台で購入した瓶コーラに口をつけた瞬間、目に写った亜麻色の髪の少年の姿を認め、思いっきり吹き出しそうになっていた。
「って、『フュンフ・ラーズグリーズ』かよぉおおおお
!!??」
え、なんで、とカシムは思った。
ん? 自分の知っている『フュンフ・ラーズグリーズ』はもっと年齢が……それこそ青年くらいの年の頃であった。
明らかにあの『フュンフ・ラーズグリーズ』は『アイン』たちよりも幼い。
とことこっと走っていく姿を認めながら、カシムは頭を振る。
「とりあえず! 屋台巡りだ! 食いまくるぞ!」
『おー☆』
考えても答えの出ないことだ。
今は運動会競技でもってペコになったお腹をデコにするのに忙しいのである。
焼きそばやたこ焼きお好み焼き。
粉ものソースもの。様々な屋台が拡がっている。なら、それらをお腹に収めることが今の至上命題である。
ソースの甘辛さも、しょっぱさも、競技で流した汗の塩分補給と考えれば、この上ないごちそうである。
濃いソース味をコーラの炭酸で流し込めば、口元もスッキリである。
『美味しいね、ご主人サマ☆』
「中々イケるな……って、ん? あれって『五月雨模型店』の店長じゃねーか。何やってんだ?」
カシムが目にしたのは『五月雨模型店』の看板の掲げられたプラモ屋台であった。
積み上げられた商品。
そうしたものの影に隠れるようにして店長が店番をしているのだ。
其処に並ぶシリーズ。
『憂国学徒兵』シリーズを目にすれば、カシムは呻く。
悩んでいるようだったが、『メルシー』は彼が何に悩んでいるのかわからない様子だった。
「……あー……うー……くそ! 店長!」
カシムはお札を握りしめていくつかのプラモデルの箱を手に取る。
包装は? と店長が聞いてくるあたり、全部お見通しってわけである。仕方ないのでぶっきらぼうに、よろしく、としかカシムは言えなかっただろう。
「おーい、『フュンフ・ラーズグリーズ』! こっちこっちー!」
『アイン』が呼ぶ声に顔を上げて振り返り、『フュンフ・ラーズグリーズ』は駆け出そうとする。だが、振り返った其処に居たカシムにぶつかってしまって尻もちを付いてしまった。
「あっ……ご、ごめんなさい」
「いーや、気にすんな。よぉ兎ちゃん……いや、『フュンフ・ラーズグリーズ』だった、か……ぁー……うー……」
カシムはまだ迷っているようだった。
手にした包装された箱。
それがなんであるのかを『メルシー』は知っている。
元よりそのつもりで購入したのに、何をそんなに、と思ったら『メルシー』は理解する。照れくさいのだろう、と。
「くれてやる」
「え……」
「だから、くれてやるってんだよ。『プラクト』、まだやるんだろ。自分の愛機にしてもいいし、普通に捨ててもいい。好きにしていいって言ってんだ」
そう言って押し付けるようにして『フュンフ・ラーズグリーズ』に包装された箱を押し付ける。
ぶっきらぼうにしかできないのだろう。
照れくさそうなカシムの頬を『メルシー』が突く。
「ありがとう!」
その言葉にカシムは、これだから子供は、と思ったかも知れない。
屈託がないにも程がある。あれだけ『邪悪ラビット』として戦っていた時は、憎たらしかったのに。終わればこんなもんかよ、とも思った。
「……んでさ、おめー……『五月雨模型店』の奴らの戦い方を見たらどうだ? 何ならチームに入るのも良い」
カシムは独り言のように呟く。
彼らの戦い方を見て、そして憧れた『エイル』に近づきたいとは思わないのかと。
「『エイル』に打ち勝った奴らの戦い方を学ぶのもあれだ……最強の……」
『ねぇねぇご主人サマー☆ みんなでかき氷たべようー☆』
響く『メルシー』の声。
せっかく良いところだったのに! とカシムは頭を抱える。
「だぁぁ!! 空気よめねーな、おめーはよー!?」
『えーなになに☆ メルシーわかんなー☆』
追いかけ回すカシム。逃げる『メルシー』。その様子を見て、『フュンフ・ラーズグリーズ』は笑う。
屈託なく。
それこそ、憑き物が落ちたように。
「まぁ……唯の一つの選択肢だ。おめーが選んでいーんだよ。それが自由ってやつだ」
そう言ってカシムは『フュンフ・ラーズグリーズ』の道行きがどうなるものであろうと、それが彼の選んだものであることを知るからこそ、再び見える時の彼の姿が、今日とはまた違うことを願うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
うんうん分かってくれればいいんだよ!
いやーボクが悪役を演じた甲斐があったねえ!
●閑話休題
おめでとうアイン!やったね!
キミの…いやキミたちの勝利をちゃんとボクは見てたよ!
まあ勝ちだけが大事じゃないとかやったばっかのとこだけど!
こう、経験が活きた、とか、友情・努力の後におまけに勝利!って感じでよかったんじゃないかな!
うんうんボクも鼻が高いよ!
いやーやっぱり楽しむことが大事だよね!(賞品のお菓子ぱくぱくぱく)
勝ちにこだわってばかりじゃよくない、いい言葉だよ!(賞品のお菓子もぐもぐもぐ)
●ところで
バラバラXくんが背景みっしり埋まるくらい大きくなっちゃったんどどうしよう?
『プラクト・フェス』の運動会フィールドは、猟兵サイドの勝利でもって幕を閉じた。
すでにダークリーガー『邪悪ラビット』の中身『フュンフ・ラーズグリーズ』は改心しているし、念のため用意していた、ごめんなさい屋台が拡がっている。
その屋台を見ながらロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は満足げにうなずいていた。
「うんうん、わかってくれればいいんだよ! いやーボクが悪役を演じた甲斐があったねえ!」
何故か得意げになっていた。
「いや、どう考えても好き勝手にアンタやってただけだろ」
思わず『アイン』がロニに突っ込む。
「えーそうかなー?」
ぽりぽりと優勝賞品のお菓子をぱくぱくしながらロニは首を傾げる。
何もおかしいことは言ってないはずだと言わんばかりの自信満々であった。どこから一体その自身が溢れてくるのか『アイン』には不思議でならなかった。
「でもまあ、おめでとう『アイン』! やったね!」
「いや、ごまかされねーぞ! ていうか! あれ!」
「いやーキミの……いや、キミたちの勝利をちゃんとボクは見てたよ!」
「だから、ちょ……」
「まあ勝ちだけが大事じゃないとかやったばっかのとこだけど! こう、経験が活きた、とか、友情・努力の後におまけに勝利! って感じでよかったんじゃないかな!」
ロニは『アイン』が何かを言う度に遮るように言葉を紡ぐ。
何か隠しているようであったが、『アイン』には何も隠せてねーだろうが! という雰囲気がビシバシ伝わってくるようだった。
故にロニは、さらに言葉を紡ぐ。
「うんうんボクも鼻が高いよ!」
「いやだから……」
「いやーやっぱり楽しむことが大事だよね!」
聞いちゃいいない。
ロニは言葉を遮り捲くり続けた。それはもうびっくりするくらいに遮りまくっていた。
まるで何か他のことから目を逸らさせるような、そんな雰囲気さえあるものであった。だからこそ、『アイン』はなんとかしてロニに何かを伝えようとしていたのだ。
「勝ちにこだわってばかりじゃよくない、いい言葉だよ!」
「いや、いい加減直視しろよ! アンタの後ろ、あれー!!」
そういって『アイン』の手がロニの顔を掴んで背後を振り向かせる。
そこにあったのは、ロニのホビー『バラバラX』であった。だが、尺がおかしい。スケール感がおかしい。
そう、ロニの『バラバラX』は流体金属を使ったものである。もうプラホビーとかなんとかっていうのは関係ないなにか別のやつって感じがする機体であるが、それがもう『プラクト・フェス』の会場をみっちりと埋めるほどに大きくなってるのだ。
「あれどーすんだよ!」
「どうしよう?」
ロニはあくまで他人事であった。
まあ、なんとかなるんじゃない? とお菓子をポリポリしている。ただまあ、ああいうのってオブジェクトとかになったり、エンディングで記念碑になったり、そういうあれになるはずだからいいんじゃないかなーってロニは勝手に思っている。
だがしかし、まだ世界大会であるワールド・ビルディング・カップは初戦が終わったばかり。これが決勝戦後とかだったら、まだまあ、なあなあで済ませたかも知れないが!
「プラスチックホビーの後始末ー!」
その言葉をロニは無視して、お菓子食べ終わるまで待ってと言わんばかりにポリポリ、ポリポリ、ポリポリしまくるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵