8
カルロッタルーナに影は遊ぶ

#スペースシップワールド #スペースオペラワールド #ロサーリオ群星連合王国

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#スペースオペラワールド
#ロサーリオ群星連合王国


0




 月下美人。
 一夜限りの幻の花。
 儚くも美しき、月の花。

 ロサーリオ群星連合王国内に所属する星、カルロッタルーナ。
 月に酷似しているが、恒星たる王国ではなく連合王国全体の周囲を回っている、惑星とも衛星ともつかぬ星だ。
 自然の光のない『影の地』に暮らす国民が独自の文化を築く、ベレザエピルナの原産地でもある。
 月下美人に酷似したその花は、しかし闇の、影の中に在れば必要な世話を怠らない限りは咲き続ける。そして星の光を浴びるとそれを花弁へと蓄積させて、暗がりの中で淡く碧く光るのだ。
 影の地の民は、その花を灯りとして日々を営んでいる。
 故に彼の地は闇と仄かな星明かりの世界。故に。

「……むにゃむにゃ……ここは住みやすくていい星だわ」

 碧く輝く花畑に横たわる眠り姫。
 その身体が、徐々に大きくなっていく――。


「そんな希少なお花がダメにされちゃうなんて! 全人類の……いや全星人の損失だよ!」
 相変わらず未知の事象に狂気染みた興味関心を寄せる月・英(白昼夢は月の夢・f40538)である。
「改めて説明するとね、カルロッタルーナって星にしか咲かない『ベレザエピルナ』っていう珍しい花がね、オブリビオンに全滅させられちゃいそうなの」
 オブリビオン――成長続ける眠り姫。
 常に睡魔に身を委ねており、寝ることが大好き。オブリビオンであることを度外視するのであれば、それだけなら無害なのだが。
 問題はこのオブリビオン、睡眠時間に比例して身体がどんどん大きくなっていくのである。放置すれば星ひとつ押し潰すほどに、そしてやがては宇宙すらも覆い隠してしまうと言われている――勿論、流石にそこまでの大惨事になった例は今のところないのだが。
 成程、そんな相手ならば花畑のひとつなど、容易く押し潰されてしまうことだろう。
「真面目なお話すると、花がなくなるとそこに住む影の民の皆さんの光源がなくなっちゃって、生活出来なくなっちゃうんだよね。所謂光のある月面側の方は、逆に眩しすぎてそっちに移住も出来ないみたいでさ。そもそも星ごと潰されたら移住も何もないワケだし?」
 単に花を守る、というだけの次元の話ではないらしい。
 幸いにして猟兵達が現場に到着した時、即ち戦闘開始段階では一般的な人間の少女ほどの大きさでしかなく、その時点ではまだ戦闘力も耐久力も然程高くない。
 但し時間をかければかけるほどどんどん大きく、それに比例して攻撃が通りにくくなっていくので、瞬間最大火力を叩き出すつもりでユーベルコードを選出するのがいいだろう。
「無事に終わったらね、カルロッタルーナを観光してくるといいと思うよ。この星にとっての太陽とか月みたいな星は周辺にないから、年中星月夜みたいなところなんだ。灯りは全部花で何とかしてる感じだよ」
 なので少々、肝試しをしているような感覚になるかも知れない。尤も、住人の影の民達は所謂ダークエルフに似た姿をしており、その外見などで驚くことはないだろうが。
 また、星の名前に反してその文化はアース系世界で言うところの東洋文化、日本と中国を掛け合わせて割ったようなものだそうだ。
「家とかの建物には灯りの代わりに光る花が下がってて、街灯も結婚式のフラワースタンドみたいな感じになってて結構綺麗なんだよ。フォトジェニックってやつ? 散策したり写真とか撮ったりしてきたらいいんじゃないかな!」
 オリエンタル建築を碧く照らす花の灯り。確かに映えそうではある。
 思い出を共有したい相手と一緒に行くのがオススメだよ、と英は言うが。雰囲気を楽しめるのであれば、一人でのんびりも悪くはないだろう。
「あ、それとね! 一通り楽しんできたら、また花畑に戻ってくるといいことがあるよ」
 英が言うには。
 基本的に影の民が灯りに使う花は、ある程度花の、そこから生まれる光の色に一定の規格があるようだ。つまり、色が深すぎて明るさが落ちてしまったり、鮮やかすぎて周囲の色すら変えてしまったりすると生活には根ざせない。
 そしてそのまま、枯れてしまうと言う。
「闇の中なら世話を怠らなければ咲き続けるって言ったけど、正確にはそれにも期限があってね。一年だけなんだ。一年経ったら新しい花に交換するんだよ。だから規格から外れた花って無駄になっちゃうらしいのね」
 それでも、そのまま廃棄してしまうには勿体ないと影の民達も考えていたようで。
「そこで星の英雄である皆さんの登場ですよ! 好きな色って言うか青みの花を良識の範囲内で自由にお持ち帰りオッケー! まあ最大三本くらいかな? 同行者がいるならその場で贈り合うのもアリ! 是非好みのお花を持って帰ってあげてね」
 この星を出れば、陽の出ている時間帯は花を閉じてしまうが。
 月下美人と違い、夜の間に月や星の光に当てておいてやればまた次の夜には光と共に花開く。勿論、一年の間であり延命は出来ず、またどういうわけかカルロッタルーナ外での受粉が出来ない為、新しく咲かせることも出来ないようだが。
 それでも、彼の星でしか咲かない月の花は、夜毎に優しい光を齎してくれるだろう。
「というわけで! カルロッタルーナに! GOだ!」


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 某シナリオとセルフネタ被りしたので急遽手直ししてお届け。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:ボス戦『成長続ける眠り姫』
 第2章:日常『惑星都市の夜の祭』
 第3章:日常『この星に抱かれて』

 第1章にてオブリビオン討伐。
 第2章でオリエンタル情緒溢れる花灯りの街を散策、第3章で好きな青みのベレザエピルナを選んでお持ち帰りする流れになります。
 各章、詳細は断章にて公開いたします。

 グループ参加は【2名様まで】とさせていただきます。
 また今回、第3章のみ拙宅グリモア猟兵もお声がけいただければご一緒させていただきます(こちらは人数制限に含みません)
 勿論、呼び出しのないところに勝手に乱入することはございませんのでご安心ください。

 ☆ちょっとした運ゲー要素(第3章のみ)☆
 グリモア猟兵を指名した場合、その人物に『自分のイメージに合う花の色を選んで』と依頼することが可能です。
 基本的には参加者様のイメージで選ばせていただくことになりますが。
 選ぶグリモア猟兵の独断と偏見、場合によっては好みが混ざります。
 こいつにはこんなイメージで見られているのか、という遊び方も出来ます。
 (面識はなくても大丈夫です)

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 前述の通り各章での追加情報も断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
56




第1章 ボス戦 『成長続ける眠り姫』

POW   :    寝る子は育つ
【眠り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    寝る子は育つ
【眠り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    寝る子は育つ
【眠り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。

イラスト:ちびのしま

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミーガン・クインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 降り立ったのは、星月夜の下。
 碧の光が大地を照らす、一面の花畑。
「……すぅ……むにゃ」
 その中心から、寝息が聞こえた。
 星雲を纏い、夜半の――眠りの時間の最中の姫。
 今はまだ、少女のようで。その姿が花畑を、星ひとつを覆い潰す、なんて。信じ難い未来。
 だが、そうなのだ。|月《グリモア》が輝いた以上は。
 花を踏まぬよう、慎重に近づく。地を踏む音さえ、夢の世界には届いていないらしい。
 触れるほど近くにさくりと、響いてもなお。
 ならば、今しかない。眠るのみの内に。
 ユーベルコードを発現させよ。
 その身が星を滅ぼす前に。
響納・リズ
少しかわいそうではありますが、この地に住む方々のために、更なる深い眠りをお届けいたしますわ。
……可愛らしいお姿の方なのですね? よ、容赦は致しませんよ! これでも猟兵ですから……(あせあせ)。

大きいということは、当てやすいということですね。
では、思いっきり当てていきましょう。
この後に控えるお祭りも行きたいですし……!!
お花がなくなる前に、早めに仕留めていきましょう。
戦いの始まりから、全力全開でやらせていきますわね!
必要であれば、他の方と連携していきますわ。

……それにしても、眠っていればいいなんて、ちょっとうらやま……こほん。なんでもありませんわ。
さあ、始めましょう!


八坂・詩織
恒星系全体の周囲を回る、惑星とも衛星ともつかぬ星…うーん、準惑星、あるいは小惑星…?私達の宇宙の常識を持ち出すのも野暮ですが。
主たる恒星や衛星も周囲にない星、ですか…星空観察にはもってこいの環境ともいえますね。

…っと、今は目の前の眠り姫をどうにかしませんと。
控えめな声で|起動《イグニッション》!
髪を解き、瞳は青く変わり防具『雪月風花』を纏う。

近づいてみればまあ、星雲を纏う綺麗なドレス…
悪意はなくても大きくなり過ぎると星一つ潰してしまうというのはかの有名な童話にでてくるバオバブみたいですね。

では失礼して…【全力魔法】を込めた指定UCでそっと一撫で。
どうかこのまま、醒めない夢の中でおやすみなさい…




 カルロッタルーナは月に酷似した星だと言う。
 天文学と天体観測を好み造詣も深い八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は、まずそちらの方が気になっていて。現場についてもこの星の謎に思いを馳せていた。
(「恒星系全体の周囲を回る、惑星とも衛星ともつかぬ星……」)
 ならば準惑星か、或いは小惑星だろうか?
 尤も、自身の生きてきた世界の知識や常識が、異世界でも同じように通用するという保証はない。それは詩織も猟兵となり、様々な世界を巡ったことでよく理解している。
(「主たる恒星や衛星も周囲にない星、ですか……なら、星空観察にはもってこいの環境とも……っと、今は目の前の眠り姫をどうにかしませんと」)
 ちらと足元で揺れた淡く碧い光に、はっと詩織は我に返り、花畑のもっと先を見た。
 さくり、と響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)が踏んだ足跡すら意に介していない様子……どころか、気づいてすらいない様子で眠り姫は密やかに寝息を立て続けている。
「少しかわいそうではありますが、この地に住む方々のために、更なる深い眠りをお届けいたしますわ」
 そう、他者には聞こえるか聞こえないか程度の微かな声で告げ、改めて眠り姫の姿を認めれば。
「………………すぅ……」
「……可愛らしいお姿の方なのですね? よ、容赦は致しませんよ! これでも猟兵ですから……」
 あどけなく眠る姿に戦意を削がれるところだった。危ない。
 だがその時、ぐん、と少し眠り姫の身体が膨らんだ。正確に言えば見た目はそのまま、一回り大きくなった。
「成程……このように大きくなるのですね。そして大きいということは、当てやすいということですね」
 確かにリズの言う通りの利点もある、と詩織は頷きつつ。
「大きくなりすぎる前に、静かに、けれど一気に行きましょうか……|起動《イグニッション》」
 起こさないよう小声でイグニッションカードに封じた力を解放。解かれた髪がさらりと散らばり、青に変じる瞳の色、花蝶宿して纏う和の装いは雪女としての姿。
 リズもまた、三日月の中に輝く青水晶を宿した美しい杖を掲げて。
「では、思いっきり当てていきましょう」
「そうですね、今の内に……」
「この後に控えるお祭りも行きたいですし……!!」
「あらあら」
 実は。
 説明の後、リズがグリモア猟兵におすすめスポットを聞いたところ、小規模ながら夜市があるらしいという情報を得たので。
 季節ごとの催しがあるのはこの星も同じなのだろうか、と詩織は考察しつつ。
(「まあ、星雲を纏う綺麗なドレス……」)
 少し大きくなったことで、その衣装や纏う星座のような煌めきもより見えるようになった。
(「悪意はなくても大きくなり過ぎると星一つ潰してしまう……というのはかの有名な童話にでてくるバオバブみたいですね」)
 惑星を破壊する、恐怖の象徴。
 そんな恐ろしい存在には、目の前の少女は似つかわしくないようにも見えてしまうが。
「お花がなくなる前に、早めに仕留めていきましょう」
「そうですね。それに星も守らなければいけませんし」
 リズも、詩織も。
 眠っているだけの相手を攻撃することに、躊躇いや罪悪感がないと言えば嘘になる。
 けれど今は、その思いは呑み込んで。せめて、痛み苦しみを感じる時間が彼女にとって、少しでも短くあるよう。
「……それにしても、眠っていればいいなんて、ちょっとうらやま……」
「え?」
「……こほん。なんでもありませんわ」
 うっかり出かかった本音も一緒に呑み込んだリズに、詩織は思わず微笑んだ。清楚でお淑やかな美人、という印象を受けたのだが、案外天然で可愛らしい一面もあるのかも知れない。
「さあ、始めましょう!」
 気を取り直して。
「天の雷よ、安らぎを求める少女に慈悲の御手を」
 祈るように握った杖を、天高くリズが掲げれば。
 裁きの雷は、今は眠り姫に永遠の眠りを齎す慈悲の雨として降る。
「んっ……」
 身動ぎし、眉を顰めつつも眠り姫は夢の中。
 それを宥め、あやすように詩織はその頬を一撫でし。
「どうかこのまま、醒めない夢の中でおやすみなさい……」
 安らかであれと、素敵な夢を見られるようにと願いを込めて。
 眠り姫の時を、眠りの中に、夢の世界へと凍らせていくのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵空・鈴果(サポート)
 こんにちりん☆ 夜空にキラめくエアライダー♪ りんかですりん☆
 なるべく明るく前向きに振舞うりん♪ 新しいものや珍しいものを見かけたらとっても気にしちゃうところもありますりん☆
 戦う理由は、夜の星や月の様に、夜の灯りとして暗闇を照らしてみんなを笑顔にするため。
 隠れて努力をするけれど、ここぞという時はどっせいと泥臭く突撃する事も☆
 都会に強い憧れ有り。

 ランダム設定されるユベコは使っても使わなくてもどちらでもOKですりん☆ アドリブなどなどお任せしますりん☆
 他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。




「わぁ! 綺麗ですりん☆」
 一面に広がる碧花の光――群生するベレザエピルナの輝きに、宵空・鈴果(星と月のエアライダー・f37140)がはしゃいだような声を上げた。
 生来、好奇心旺盛で初めて見るもの、珍しいものは気になってしまう性質。また、星や月などの夜の闇を優しく照らす灯りのような存在でありたいという理念もあり、親近感が湧いたのもあり。
 この星に暮らす影の民は勿論、この花のことも守りたい。鈴果はその思いを一層強めた。
 そして、肝心の眠り姫へと視線を向ければ。
「ちょっと大きくなってますりん?」
 恐らく最初は自分とそう変わらぬ大きさであったのだろうその姿は、二回りほど大きくなっているのではないかと推測された。
「では、大きくならない内に解決しますりん☆ 眠っているならどんな攻撃もきっと回避困難ですりん!」
 星の輝き宿したエアシューズで、星を纏ってふわりと舞い上がる。宛ら地上から天へと流星が昇るかのように。
 黄金の彩を映した星海の光を振り撒いて、踊るようにくるくる、くるくる回り――加速し、急降下する!
「輝け星海のスパイラルっ☆ 深い夢の世界へご案内ですりんっ☆」
 鈴果の身体は輝く流星の尾。
 爪先は一等強く輝く星となって。
 眠り姫の上へと、流星は降る!

成功 🔵​🔵​🔴​

神野・志乃
オブリビオンとはいえ……この子は、ただ無邪気に寝ているだけなのよね
寝ていては巨大化してしまうと言うならば、起こして追い払うだけでは‪──‬ダメかしら。ダメよね。そうしたら今度は他の星に災厄を齎してしまうもの

……ま、いずれにせよ、私の一存で見逃がして良い道理は無いわ

「……さっさと終わらせましょう」

私はあまり火力重視の戦い方をする方では無いのだけれど
その中でも最大火力、と言うならば

「“をのか”。力を貸して」

UC《をのか》を発動
魔力を【振り絞り】、分散させずに一本の剣に力を込める【全力魔法】
ただ、私の魔力のありったけを込めたら……“をのか”が放つ陽光に目を覚ましてしまったりしないかしら
……やると決めたなら、どうせなら寝てる間に……何も分からない内に倒してしまいたいけれど

「おやすみなさい」
そう呟いて、“をのか”を振り下ろす

オブリビオンらしく、邪悪に喚き散らしてくれるならまだやり易いのだけれど……
……なんて、ただ、見た目に騙されてるだけよね
オブリビオンは倒す。それでいいの、いいのよ




 烏珠の。
 神野・志乃(落陽に泥む・f40390)の瞳が、視線が、眠り姫へと落ちる。
 その大きさは、体長だけで言うなら2メートルは越えているだろうか。3メートルには……まだ辛うじて届いてはいないか。
「……くう……」
 ただ、未だ眠り続けるその表情は、無垢であどけなく見えた。先に到着した猟兵達のユーベルコードを、その身に受けている筈であろうが、にも拘らず。
(「オブリビオンとはいえ……この子は、ただ無邪気に寝ているだけなのよね」)
 過去から染み出した存在は、現在を、そこに生きる人々を、脅かしてしまう。その事実は、志乃だって重々承知している。
 解っていて――それでも、無抵抗の存在に攻撃を仕掛けることに、どうしたって罪悪感は拭えなかった。
(「寝ていては巨大化してしまうと言うならば、起こして追い払うだけでは‪──‬ダメかしら」)
 ああ。
 そうして万事丸く収まるなら、どんなによかったか。
 志乃はゆるりと頭を振った。
(「ダメよね。そうしたら今度は他の星に災厄を齎してしまうもの」)
 少なくとも、カルロッタルーナは当面の危機を逃れることは出来るだろう。それは間違いない筈だ。
 ただ、確実に何処かの星は犠牲になり――最悪、巡り巡って星系レベルで巨大化した眠り姫が、再びこの星に危機を齎す可能性もあった。
「……ま、いずれにせよ、私の一存で見逃がして良い道理は無いわ」
 努めて感情を排して。
 ただ、それでも出来る限り、苦しんで欲しくはなかった。
「……さっさと終わらせましょう」
 出来れば、一瞬で。刹那の内に。
 平素は余り戦いの中でも火力重視の戦い方をする方ではないのだが、ならばその中で最も火力の高い技。

「“をのか”。力を貸して」

 加減はしない。眠り姫が受ける痛みを思えばこそ。
 魔鏡を手に、持てる魔力を全て振り絞り、月が太陽から受けて宿した、|陽光《ひかり》の剣を喚ぶ。
 柄を手に取り、力を込める。分散はさせず、一本の剣に収束させて――輝きは増していく。
(「ただ、私の魔力のありったけを込めたら……“をのか”が放つ陽光に目を覚ましてしまったりしないかしら」)
 それだけが、気がかりではあるけれど。
 いや、しかし。これはもう、祈るしかない。目覚めぬことを。何も知らず、解らず、眠る間に全て終わらせられるように。
「おやすみなさい」
 呟きすらも密やかに。
 静かに振り下ろす、|陽光剣《をのか》。
 彼女の還る先が、安らかな静謐たれと祈りながら。
 そして――星屑にも似た粒子となって、嘘のように夜に溶けた眠り姫。
 光の花の碧海にも、静寂が訪れる。だがそれも一瞬のことで、無音は風に破られた。
 幸いにして心地よい夜風だ。眠りを阻むものではない。
(「オブリビオンらしく、邪悪に喚き散らしてくれるならまだやり易いのだけれど……」)
 あの眠り姫のような存在もいるのだと、身を以て知ってしまったら。
(「……なんて、ただ、見た目に騙されてるだけよね」)
 そうだ。きっとそう。
 ……ほんとうは。
 そんな風にだって、思いたくはないけれど。そう、思わなければ。思って、いなければ。
「オブリビオンは倒す。それでいいの、いいのよ」
 |志乃《じぶん》に言い聞かせるように、繰り返す。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『惑星都市の夜の祭』

POW   :    賑やかな屋台で異星の食を楽しむ

SPD   :    街灯に照らされた夜市の街を行く

WIZ   :    ライトアップされた宮殿を歩く

イラスト:ももんにょ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 夜の街は、碧い灯りで照らされ幻想的な光景を生み出していた。
 住居や店舗などの建築様式は、地球で言うところの日本や中国などの東洋風の木造建築。所謂オリエンタルテイストで、所々にシノワズリの要素が見えるものもある。
 ただ、色合いは灯りの彩に合わせてか、青を主にした寒色が多い。屋根の色や柱の色にそれらは見て取れた。
 道は灰色の丸石が不規則に連なる石畳で、緩やかながら坂が多い。時折、人力車のような乗り物が通り過ぎるのも見える。一人乗りと、二人乗り。
 ベレザエピルナの花弁揺らめく噴水や、碧く煌めく花時計など、写真映えしそうなスポットも沢山あるが。
 祭りの時期だ。何か催し物はないかと探して街の奥へと進んで行けば、小規模ながら夜市が開かれているようで。
 甘味はベレザエピルナの花の蜂蜜漬け。瓶入りのそれは仄かな甘さと、癖になるほろ苦さ。意外とちょっと大人の味、かも知れない。
 土産は球の部分にベレザエピルナの花弁を閉じ込めたビードロに似た硝子の笛に、ベレザエピルナを模した花結びの吊るし飾り。アロマキャンドルのようなものもあり、碧い花弁に熱が触れて溶け出すと、爽やかな甘い香りがするようだ。
 散策するにも、写真を撮るにも、夜市を巡るにも、佳い夜だ。
 ひとりでゆるり、絆ある誰かとふたりでそろり。
 花灯りの街へと繰り出そう。
神野・志乃
天文部顧問の八坂先生(f37720)と
23年浴衣姿

先生と会ったのは本当に偶然だったけれど
「ええ。でも何となく…」
引き込まれる程に美しい、天蓋を覆う星々を見上げ
「八坂先生が惹かれて来た気持ちは、分かる気がするわ」

えっ、写真…?
あまり撮られ慣れてないので、緊張しながら
どんな顔をすれば良いかしらなんて考えてたら、いつも以上に強張った表情に

花灯りに照らされて目も綾な蜂蜜漬けは、見ているだけで甘い気持ちに…
「…八坂先生、理科教師の顔になってるわよ」

びいどろ?良いけれど…
なぁに、八坂先生だって似合うと思うわよ?
色とりどりの硝子の笛にちらりと目配せして
「…ねえ、折角だから、お互いに選んで贈り合いましょうか」


八坂・詩織
志乃さん(f40390)と。
22年浴衣姿。

示し合わせたわけでもないのに同じ星に来てたなんてすごい偶然!ご一緒できて嬉しいです。

散策がてら夜市へ。写真映えする街ですね、あの噴水の前で写真撮りませんか?
スマホでパシャリ。顔硬いですよ?

夜市でちょっとほろ苦くて癖になる蜂蜜漬けを一口摘みつつ。蜂蜜漬けの蜜もベレザエピルナの花の蜜なんでしょうか。夜が続くこの星でも養蜂業はあるんですかね…

お土産にとビードロに似た硝子製の笛を買い求め。
ビードロ、観光地で売ってるのは見たことありますけど吹いたことはなかったかも。
志乃さんよかったら吹いてみます?志乃さん絶対絵になると思うんです。
いいですね!どれがいいですかね…




「示し合わせたわけでもないのに同じ星に来てたなんて、すごい偶然!」
「ええ。でも何となく……」
 秋の装い、浴衣姿なふたり。
 偶然鉢合わせた天文部、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)と神野・志乃(落陽に泥む・f40390)。これもひとつの星の導きの形、だろうか。
 ふと、徐ろに志乃は天蓋を覆うが如く煌めく夜天の星々を仰いで。
 引き込まれるほどの美しさに刹那、息を止めて。
「八坂先生が惹かれて来た気持ちは、分かる気がするわ」
 向き直り、心からそう告げれば。
 詩織は一層、喜ばしげに微笑みを深めて。
「ふふ、ご一緒できて嬉しいです」
 二人並んで、淡く碧く照る通りを歩く。
 目指すは夜市。けれども道中の光景も、花灯りに東洋情緒。しかしその彩は見慣れないもので、だからこそ、幻想的で神秘的。
「それにしても本当に写真映えする街ですね、……あ、志乃さん。あの噴水の前で写真撮りませんか?」
「えっ、写真……?」
 詩織の指し示した方向に、志乃も視線を遣れば。
 碧く輝く月の花弁揺らめく水面が光を映す、清水湧くかの如き噴水の姿が確かに。
 けれど、志乃の意識の大半が占めたのは、噴水そのものではなく。
(「写真って余り撮られ慣れてないのだけど……どんな顔をすれば良いかしら」)
 噴水の前、詩織と共に並びつつも。
 つい緊張しながらそんな風に考えを巡らせていたら。
 ぱしゃり、とシャッター音。さて、肝心の写真写りはと詩織がスマホの画面を確認すれば。
「顔硬いですよ?」
 詩織の苦笑に、はっと志乃は我に返り。
 明るく照る星空纏う詩織は柔らかな微笑みで。その背後に青く煌めく流れもきらきらと美しかったけれど。
 凛と菖蒲咲かせた装いの志乃の表情は、いつも以上に強張ってしまっていて。それを見た今の志乃は、その表情を申し訳なさそうなものに変えてしまっていて。
 それでもこの思い出も、いつか志乃の中で笑って誰かに話せる一幕になればいいと、詩織は思う。


 さて、それからまた少し歩いて。
 小さな賑わいを見せる一角に向かえば、確かに小さな夜市がそこに立っている。
 一番手前にあったのは、蜂蜜漬けの並ぶ出店だった。
 花灯りに照らされた瓶の中に秘された蕩けるような黄金は、碧の光を受けて青みのある金という表情もまた見せる。
 目も綾な、とはまさにこのことを言うのだろうと志乃は思った。
 見ているだけで甘い気持ちになってくるような心地さえしていた、のだが。
「蜂蜜漬けの蜜もベレザエピルナの花の蜜なんでしょうか。夜が続くこの星でも養蜂業はあるんですかね……」
 太陽、より正確に言えば紫外線。蜜蜂はそれを頼りに活動する。つまり本来、夜という環境ではそもそも飛ぶことが出来ない筈なのだ。
 紫外線に頼らず活動することが出来る種がいるのだろうか。ロサーリオの生態系もまた奥が深そうだ……などと考えていると。
「……八坂先生、理科教師の顔になってるわよ」
「あら、つい」
 ともあれ。
 いざ試食をさせて貰えば甘さは仄かで、苦味が強めだったがえぐみなどの不快感はなく、癖になる味わいだった。
 食べ歩きながら、次の店を目指す。
「あ……志乃さん。ビードロ? がありますよ。見ていきませんか」
「びいどろ? ええ、良いけれど……」
 詩織に促され、志乃も出店の先に並ぶビードロに似た硝子の笛へと目を向けて。
 碧花を閉じ込めた硝子の球体が、思い思いにといった様子できらきらと光っている。
「ビードロ、観光地で売ってるのは見たことありますけど吹いたことはなかったかも」
 並ぶ花硝子を見比べてふと、思い出したように詩織は志乃へと視線を向けて。
「志乃さん、よかったら吹いてみます? 志乃さんなら絶対、絵になると思うんです」
 浴衣の似合う、清楚な大和撫子。
 そんな出で立ちの彼女がビードロを吹く姿は見映えがすることだろう。
 すると、志乃はくすりと幽かな笑みを口元に浮かべて。
「なぁに、八坂先生だって似合うと思うわよ?」
 そうして、美しい笑みを湛えたまま、色とりどりの硝子の笛にちらり、目配せひとつして。
「……ねえ、折角だから、お互いに選んで贈り合いましょうか」
「いいですね! どれがいいですかね……」
 贈るなら、あなたに似合う最高のものを。
 花灯りの中に二輪、花が綻ぶ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『この星に抱かれて』

POW   :    満喫しよう!

SPD   :    満喫しよう☆

WIZ   :    満喫しよう♪

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 花の管理者達の案内で、猟兵達はベレザエピルナの群生地の奥へと踏み入った。
 そこには硝子屋根に硝子窓の温室のような建物があり、中には鉢植えだろうか、ベレザエピルナの植えられた容器が並んでいた。容器は不透明な青い原石のような色と質感をしている。
 植えられているベレザエピルナは、よく見ると青みが街で見たものより濃かったり薄かったり、または原色である赤味や黄味が僅かに混ざっているのか、角度によって薄っすらと紫や青緑が掛かって見えるものもある。
 これらは街には出回らないそうだ。そして街で見たような、加工商品になるようなこともない。故に、本来であればいずれ廃棄される運命にある。そういう歴史を、このカルロッタルーナの影の民達は歩んできた。
 だが、やはり影の民達も時が経つにつれ、それでは勿体ないと考える者が出始め、その考えは徐々に広がりつつある。この温室も三年前に建てられたもので、言い方は悪いが不良品の生育を行いながら、星を挙げて使い道を考えている最中であるらしい。
 色々と案はあるのだが、まだ検討段階。だが、検討が長引けば長引くほど、花は枯れていってしまう。
 だからこそ、この星を救ってくれた猟兵達に、ここの花達を貰って欲しいのだと言う。お礼でもあるが、この花達をも救ってくれるのではないかという期待も込めて。
 この花達が表舞台に経つ日がいつなのか、それはまだ、誰にも解らない。明日かも知れないし、何年後かも知れない。
 けれどまさに今、ここにいる花達が誰かに、それも星の英雄の手に取られ、その心を少しでも満たすことが出来るのなら、きっと花達も幸せだろうと。

 そんな願いが込められた花達だ。
 さあ、どの花を連れて行こう?
響納・リズ
先ほどの戦いで傷ついた土地を癒していたら、少し出遅れてしまいましたね。
ですが、お花をいただけるとは、嬉しいですね。
廃棄する予定の花達も喜んでいるように見えます……。
どの花を選びましょうか……。

そうです、セラピア様。もしよろしければ、私に似合う花を選んでいただけませんか? 先日、ご一緒していただいた縁です。素敵な花を見つけることが出来たら嬉しいですわ。
枯れてしまった後は、押し花とかにして栞にしたいですわね……。
どんな花を持ち帰れるか……今から楽しみですわ。
願わくば、ここにある花全てに引き取り手がありますように……そう願いながら……。




(「先ほどの戦いで傷ついた土地を癒していたら、少し出遅れてしまいましたね」)
 その為、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)は直接温室へと足を運ぶことに。
(「ですが、お花をいただけるとは、嬉しいですね。廃棄する予定の花達も喜んでいるように見えます……」)
 影の地の、影の民達の生活には根ざさぬ花々。しかしそれでも、清く美しい月の花は、ここでひっそりとその生涯を終えるには、余りに惜しい。
 どれも瑞々しく、目を惹かれる花ばかりだ。
「さて、どの花を選びましょうか……」
 いざどれかに絞るとなると、悩ましい。それほどまでに、優劣つけ難い見事さだったのだ。
 自分一人で決め切れるだろうか。そう思っていた矢先、見知った人物の姿がリズの目に留まった。
「そうです、セラピア様」
 名を呼ばれた人物――セラピア・ヒューレーが、きょとんとした目をリズへと向ける。どうやら彼女も見学に来ていたらしい。
「もしよろしければ、私に似合う花を選んでいただけませんか?」
「……ワタシ、でいい、ですか?」
 辿々しくも問うセラピアの言葉に、リズは頷き笑顔を見せる。
「先日、ご一緒していただいた縁です。素敵な花を見つけることが出来たら嬉しいですわ」
「……ン、ちょっと、待ってて、ください」
 頷き返したセラピアの表情に、はっきりとした変化こそなかったが。
 その若葉色の瞳が、朝露を受けたように輝いたことにリズは気がついていた。頼られて嬉しかったのだろうか。
 待つ間、ベレザエピルナのある生活へと思いを馳せるリズ。
(「どこに飾りましょうか……枯れてしまった後は、押し花とかにして栞にしたいですわね……」)
 咲いて枯れて、それでおしまい。……では、何とも勿体ないではないか。
 人もまた、死してなお忘れられなければ想い出の中に生き続けると言う。それは花も、ひとつの生命として同じではないだろうか。リズもそう思うのだ。
(「どんな花を持ち帰れるか……今から楽しみですわ」)
 すると、まさにその時。
 セラピアがリズの前に、花を差し出す。
 色素は薄めの、淡い碧の花だ。しかし、角度を変えてみれば、ほんのりと紫がかかり、青味のかかった淡い桃色にすら見える角度さえある。
「リズさん、アジサイの、|女性《ヒト》。土に、触れて、色を、変える……世界の、どんな、相手にも、理解をもって、寄り添うヒト」
 だから、紫陽花の彩を。
 鮮やかな赤こそないが、赤を帯びて彩を変えるその花に寄せて。
 微笑み、受け取るリズは再びちらと花々へその眼差しを向けて。
(「願わくば、ここにある花全てに引き取り手がありますように……」)
 手の中に在る、この花のように。
 祈るように、そう願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
グリモア猟兵の虹目・カイさん(f36455)をお誘いして花選びを。
先ほど夜市で買った蜂蜜漬け、虹目さんもいかがですか?

地球では光る植物はまだ研究段階ですから、夜に光る幻想的な花をいただけるのはありがたいですね。天体観測のお供にもよさそうです。
…そもそもベレザエピルナはどうして光るんでしょうね、光ることで虫を引き付けて受粉を手伝ってもらうとか?
すみません、私いつもこうですね。職業病でしょうか…

これだけ様々な色味があるとどれを持って帰るか悩みますね、せっかくなので私のイメージの花の色を選んでもらえませんか?
虹目さんはそうですね、以前緑や水色もお好きと聞きましたし…
水色に近い薄い青みの花を贈ります。




「先ほど夜市で買った蜂蜜漬け、虹目さんもいかがですか?」
「ありがとうございます、お言葉に甘えていただきますね」
 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)の差し出した蜂蜜漬けを、虹目・カイがひとつ摘んだ。
 彼女達もまた、ベレザエピルナの温室へ。僅かな差異ではあるが、それぞれに異なる光と彩を以て煌めく月の花が、静かに佇んでいる。
「地球では光る植物はまだ研究段階ですから、夜に光る幻想的な花をいただけるのはありがたいですね。天体観測のお供にもよさそうです」
「自然の光ですから、眩しすぎることもないでしょうしね」
 語り合う内、詩織はふと。
「……そもそもベレザエピルナはどうして光るんでしょうね、光ることで虫を引き付けて受粉を手伝ってもらうとか?」
「ああ、成程。虫は月を目印に夜の活動を行っているという説もあるくらいですからね」
 カイが反応を返すと、詩織ははたと我に返り。
「すみません、私いつもこうですね。気になることがあると、思考の海に溺れると言うか……職業病でしょうか……」
 未知の事象、特に自身の興味関心の深い分野については殊更、解明したいという意欲が高まってしまうのだ。そして時折、その思考が外に漏れる時がある。
 直した方がいいのだろうか、と詩織は思うものの。
「いえ、思考している際の八坂様は、溌溂としているようにお見受けしますから」
「……わ、私そんなにはしゃいでましたか?」
「いえ、目に見えてどうこうと言うよりは……何と申したものでしょうか。好きなことを堪能している、と申しましょうか」
 やりたいことを、のびのびとやれている。そんな印象なのだと。
「勝手ながら、八坂様は思考することそのものを好ましく思っているのでは、と」
 好きなことを無理に我慢する必要はない、とカイは言う。カイの見立てが正であるかは、詩織にしか解らない。けれど少し、気が楽になった気はした。
 改めて、花々の光に視線を向ける。その輝きはどこまでも優しく、目を灼くことはない。
「これだけ様々な色味があるとどれを持って帰るか悩みますね……あっ、せっかくなので私のイメージの花の色を選んでもらえませんか?」
 虹目さんの分は、選ばせていただければ……と。
 そう提案すれば、カイは是非、と笑顔を見せる。その柔らかさに少し安堵して、詩織は花々と向き合った。
(「そうですね、以前緑や水色もお好きと聞きましたし……この水色に近い薄い青みの花を」)
 今日も彼女は水色の――淡い碧の瞳をしている。その彩に合わせて。
 お待たせしました、と戻ってきたカイの手には、殆ど白に近い、薄く透き通るような碧の花。雪の花にも、詩織には見えた。
 そしてよく見ると、花弁の付け根にほんのり、薄桃の彩も乗せられていて。
「お互い、猟兵でありながらも能力者ですから。やはり能力者としての彩を探してしまうのですよね」
 苦笑しつつ、カイが手渡してきた花を交換で受け取る。
 いつかこの花が枯れても、その彩を忘れることはないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
(アドリブ歓迎)
以前知り合ったセラピアさん(f38058)にお声掛け
(此方のイメージ花色を選んで頂きたいです)

何か用と言う訳ではなく、ただ……星空の下で光るベレザエピルナを見て、先日のセラピアさんを思い出したの
でも私、これまでの人生で人と遊ぶという経験が殆ど無かったものだから
こんな理由で誘って良いものかと、緊張というか……迷惑ではないかしらとそわそわしてしまうわ

そう、先日、手を取り合って踊ったあの夜のセラピアさん
辿々しくも一生懸命で、真剣で……きらきらして見えたの
強烈に照らすような光じゃなくて
ちょうど、この薄光を放つ星石みたいに
ちょうど、この花々みたいに……
と、ちらりとネックレス(アイテム欄参照)を見せながら

だからね、セラピアさんにこの花を贈りたくなったの
青の中でも、緑色にも近い。青いというより“青々しい”……そんな光を湛えた花を選んで
草木の温かさに似た仄灯りに照らされたセラピアさんは‪──‬うん、思った通りとても綺麗……貴女らしい色

……セラピアさんからは、私は何色に見えているのかしら




「セラピアさん」
 見かけた背中に、その名前を呼ぶ。
 神野・志乃(落陽に泥む・f40390)の声に、セラピアは振り返り瞬いた。
「……その、何か用と言う訳ではないのだけど」
 声を掛けたはいいが、話題に詰まってしまった。
 何を話したものか……少し志乃は思考しかけたが、取り繕ってどうするのだ、と思い直し、意を決し。
「ただ……星空の下で光るベレザエピルナを見て、先日のセラピアさんを思い出したの」
 思ったこと、伝えたかったこと、ありのままを言葉にすればいいのだ。
 正直に、全てを。その為に声を掛けたのだから。
(「でも私、これまでの人生で人と遊ぶという経験が殆ど無かったものだから」)
 やはり、人を遊びに誘うのには、相応の理由が要るのではないか。
 こんな理由で、曖昧な心で誘って良いものかという思いは、拭い切れなかった。
(「緊張というか……迷惑ではないかしら、と」)
 そわそわと、浮足立つようなその心。
 ひとつ、呼吸して。何とか、落ち着かせながら。
「そう、先日」
 丁寧に、言葉を紡ぐ。
「手を取り合って踊ったあの夜のセラピアさん」
 セラピアは、静かに耳を傾けている。
 真っ直ぐな視線は刺さるようだ。それでも、志乃は目を逸らさぬように、見つめ返して。
「辿々しくも一生懸命で、真剣で……きらきらして見えたの」
「……ワタシ、が?」
 首を傾げたセラピアに、しっかりと頷いて見せて。
「強烈に照らすような光じゃなくて、ちょうど、この薄光を放つ星石みたいに。ちょうど、この花々みたいに……」
 ちらりと小さく見せた、橙色の星の石。
 志乃の首元を彩り煌めく、想い出のアストロール。
「だからね、セラピアさんにこの花を贈りたくなったの」
 掲げた花は、青の中でも、緑にも近く。
 青いと言うより『青々しい』……そんな表現の似合う彩、その光。
 湛えた光を彼女らしいと思った、その花を、セラピアへと贈る。
「──‬うん、思った通りとても綺麗……貴女らしい色」
 草木の温かさに似た仄灯りに照らされた、セラピアの姿。
 無垢で清らかな樹霊の娘。健気でひたむきな姿で、微かながらも温かく照らす木漏れ日。
 志乃にとってのセラピアは、そういった存在だった。
 ふと、志乃は思う。
「……セラピアさんからは、私は何色に見えているのかしら」
 何となく、気になって。
 思い切って、聞いてみたくなったのだ。
「エ、と……」
 セラピアは、受け取った花をそっと降ろし、温室の台へと置いて。
 きょろきょろと忙しなく辺りを見渡して、たたっと遠くへ駆けていく。
「あ……」
 やはり迷惑だっただろうか――そんな考えが、志乃の脳裏を過った一瞬、後のこと。
「……ハイッ」
「え」
 ずい、と。
 駆け戻ってきたセラピアに、花を差し出された。
 その花もまた、淡く碧く、けれど薄らと緑に見えるもの。しかしその色合いは、志乃がセラピアに渡したものとはほんの少し違った。
 緑掛かっている、と言うよりは、黄味掛かっている。その理由はすぐに解った。花弁の付け根から、放射状に薄く黄色の彩が伸びているのだ。まるで太陽の光のように。
 だから、碧の内に秘められた彩は黄緑に近く見えた。
「ペリドット」
「?」
 セラピアは、それだけ言って思案するような素振りを見せていた。言葉を探している、のだろうか。
「太陽の石、言う、らしい、です。太陽の光、赤か、黄色か、悩んで、でも、黄色、ペリドットの色、なる、気づいたら、これ、って、思っ、て」
 必死に、真剣に、言葉にして、伝えようとしている。
 太陽の光の黄色。照らされた碧が生み出す橄欖の色。天の光を秘めた魔法使いに贈る、太陽の光を受けて煌めく月の光、その花だった。
「あう、ごめんなさ、ことば、まだ、むずかしい」
「いいえ、いいの。……いいのよ」
 人との交流の機会に乏しく、その言葉に慣れない樹霊の娘。それがこうして、人に歩み寄り、その言葉を覚えて話そうとしている。
 そうして自分に接してくれる、その心が嬉しかった。
 碧の中に橄欖の光を秘めた、その花を受け取る。
 月の、そして太陽の|芳香《かおり》がした、気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月10日


挿絵イラスト