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エンドブレイカーの戦い⑰〜大魔女の目覚め

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #ラハム・ジ・エンドテイカー #大魔女スリーピング・ビューティ #災害竜

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●大魔女の目覚め
「来たか、エンドブレイカー。……否。六番目の猟兵」
 大地に蔦這う石の薔薇。そびえ立つ城を背に、仮面の女がうっそりと唇に笑みを刷いた。
 大魔女スリーピング・ビューティ。
 ……否。それはかつての『帝竜戦役』にて猟兵に倒された帝竜『ワーム』。それが『11の怪物』の1柱、傲慢と凶暴を司る怪物ラハムと融合することによって新たに生まれようとしている悪女。
 本来は生物の進化を見守るために与えられた、望まぬ未来を何度でもやり直す『エンドテイカー』の能力を己の欲望のためだけに躊躇いなく使用する。
「そう。ラハムを喰らい、『再孵化』した私が、すべて考えたのだ! 11の怪物ではない。『拒絶の壁』も! 『大地母神暗殺』も!」
 大きく手を開く。綺羅が舞い、大地が揺らぐ。ぱらぱらと石の薔薇が毀れ落ちる。
「私こそが、世界の全て……!」
 ラハムの腹より、ずるりと彼女の手が無造作に掴み出したのは6匹の竜。
 エンドブレイカーの中には見たものもあるかもしれない──『災害竜』。大魔女の目覚めの際に現れた幻影の竜。
 それが今は、1体1体すべてが巨大なエリクシルとなって巨大な翼を広げ、猟兵たちの行く手を阻む。
 地の災害竜。枯茶色の鱗を持つ、大地を揺らしすべてを崩す地震。
 火の災害竜。|深緋《こきひ》色の鱗を持つ、すべてを歪め灼き尽くす火災。
 水の災害竜。浅縹色の鱗を持つ、荒波にてすべてを削り呑み込む水害。
 風の災害竜。|柳鼠《やなぎねず》色の鱗を持つ、すべての自由を奪い叩き付ける風害。
 月の災害竜。|月白《げっぱく》色の鱗を持つ、すべての力と気力を奪う疫病。
 陽の災害竜。|黄金《こがね》色の鱗を持つ、すべてから命の源たる水を奪う旱魃。
 大魔女スリーピング・ビューティ。あるいは帝竜『ワーム』。もしくは11の怪物『ラハム・ジ・エンドテイカ―』。
 その女は、6頭の竜の中央に悠然と佇んでいる。
「お前たちを倒し、この戦争を全て最初から『やり直し』してくれよう」
 ふぉん、と彼女の周囲に幾多の魔法円が浮かび上がる。女はその穢れた心のままに嗤う。

「私に勝てるものなど、この世にありはしないのだ……!」

●猟兵たち
「この竜のすべてを、相手どってなんていられない……」
 誰かが言う。
「丁寧な振り分けなんて不要だ。ひとつ。捌ける竜を選んだらいいって訳だな」
 誰かも言う。
「でも、大魔女も先制攻撃してくるんだよね?」
 誰かが問う。
「それも捌きつつ竜への対処をして? 更に攻撃を叩き込めって? ──やったろうじゃん!」
 誰かが笑った。


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 これはもはや意地だ。朱凪です。

※注意※
 このシナリオは20日16時までのの撃破数には絶対貢献できません。
 ただ大魔女と戦いたい、という方向けになりますのでご注意ください。

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プレイングボーナス:戦場を包む「6種の災害」からひとつ指定し、対抗策を考える(敵は必ず先制攻撃してきます)。
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 難易度は『やや難』、簡単にはいきません。怪我もするかもしれません。
 プレイングは公開時から送っていただいて大丈夫です。
 では、皆さまの意地を見せるプレイング、お待ちしてます。
200




第1章 ボス戦 『ラハム・ジ・エンドテイカー』

POW   :    遺失魔術パワーワードキル
【過去をやり直すエンドテイカー能力】を使い、予め設置しておいた【内部の敵の命を奪う『死の魔法円』】を起爆する。同時に何個でも、どんな遠距離からでも起爆可能。
SPD   :    遺失魔術メテオスウォーム
自身が【勝利への意志を失わずに】いる間、レベルm半径内の対象全てに【降り注ぐ隕石】によるダメージか【過去をやり直すエンドテイカー能力】による治癒を与え続ける。
WIZ   :    私こそが、世界の全て。
【エンドテイカー能力により繰り返される戦闘】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴィルヘルム・ファティウス
アドリブ歓迎
対:月の災害竜

治る見込みのない病ほど
力と気力を奪うものはないと思うが
此度はあの災害を退ければ
すべて丸く収められるんだろう?
意地でも月の竜を墜として見せるとも

ぽたりぽたりと
滴るいのちの紅色
自傷した腕から生成される
硝子の剣を手に
鉛のように重たくなる手足も
吸い込む息は浅く
息苦しさも覚えるのも
此の一刃を生みだす度に慣れたもの

代償を払うほど鋭さを増す
硝子剣を手放すことはなく
竜へと向ける攻撃手も
厄介な魔法円を躱すための
歩みを止めることもなく

息の上がる度
高揚を覚える己自身は
別の理由で直す見込みがないかもしれんが
月を墜としたなんて報告できたら
驚く顔も拝めそうだろう……なァ相棒?


トリピタカ・リリット
お前が世界のすべて?
だったらちっぽけなお前だけの世界、オレたちが今ぶっ壊してやるぜ!

先制には精神攻撃・封印術・全力魔法で大魔女の体感時間そのものに干渉してエンドテイカー能力を阻害
勝負勘に任せてきやがったらこっちも勝負勘・第六感で対抗
勝てるまで勝負から逃げ回り続けてきたテメエのソレはそもそも錆びついてたんだろーさ

月の災害竜に気合い全開で立ち向かいつつ対処
魔力溜め後に紋章術に多重詠唱も加えてユーベルコード行使
戦場全体を狂王の試練場で包んで
蔓延する疫病そのものに対して竜と大魔女ごと範囲攻撃
同時に自分含めて全味方猟兵をパワーアップ支援

悪には悪を、疫病には隔離処置をってな



●蝕月
 その姿は神秘すら纏い、煌めく月白は美しい。
 冴えた蒼の双眸が見下ろす先には、ふたりのエンドブレイカー。
「は。あの頃は小世界に行ってやっと会える存在だったってのに、随分お気軽に出て来るんだな」
 竜。かつての大魔女の目覚めの際に現れたものも幻影だった。トリピタカ・リリット(琥狛の魔想紋章士・f39203)は口角を上げて長い首をもたげるそれを見上げた。そのこがねの双眸には、明確な煌めき。
 ヴィルヘルム・ファティウス(愚か火・f39128)は静かに掌の自らの瞳と同じ勿忘草色の『賢者の石』を握り込む。
「治る見込みのない病ほど、力と気力を奪うものはないと思うが」
 此度はあの竜を退ければ、すべて丸く収められるんだろう?
 そうこぼしたならトリピタカの視線が返って互い小さく首肯を交わす。無論怯むことなどない。目的は見誤らない。彼らの目的はただひとつ。竜の中心で悠然と立つ大魔女。そこへ到達するためにも、
「意地でも月の竜を墜として見せるとも」
 スリーピング・ビューティは、うっとりと唇に妖艶な笑みを刷いた。
「無駄だ。私こそが、世界の全て。……お前たちは、『世界』に勝てるとでも?」
「、……!」
 瞬時、世界が歪んだ気がした。
 違和を感じると同時、ヴィルヘルムの足許に、左右に、前後に、魔法円が|既にあった《ヽヽヽヽヽ》。
「危ねぇッ!」
 強く腕を引かれたと知った時には、『死の魔法円』の包囲に取り残された長い柳色の髪の先端が、消し炭と化した。ヴィルヘルムの眦が引き攣る。
「助かった」
「どーいたしまし、てッ!」
 何度でも今をやり直す──否、過去を改竄するエンドテイカーの力。反応できたのはひとえにトリピタカの卓抜した第六感による。ぐるりと月の刃頂く琥月杖を回し、竜の吐いた白く濁ったブレスを薙ぎ払い跳び退った。振り向く頃にはヴィルヘルムも共に駆け抜けている。
──そりゃ何度でもやり直してるんだ、先制であの力を阻害はできねーみたいだな。
 大魔女と|見《まみ》えるのは『二度目』。トリピタカは確かに大魔女の身体硬度が上がっているらしいことを見定めた。
──でもな!
 爛とその瞳がスリーピング・ビューティを見据えたとき。
 ごぼ、と彼の口から血泡が溢れ出た。

 深く裂いた左腕。ちいさく膚に血の雫が膨れる程度ではない。ぽたり、ぽたりと赤の滴るほどの。
 そのいのちの赤が尖り、澄み、刃として伸びていく。瑠璃の一刃──カーネリアン。紅の玻璃には直感に反する冷気が漂い、ヴィルヘルムはそれを握り締めて戦場を駆け続けた。
 咳き込む度に灼けるように胸が痛む。呼気には血が混ざり、視界は霞む。足は鉛のように重くて、吸気の度に喉の奥が痺れて苦しい。
 外傷と疾病の違い。
 痛みには慣れたヴィルヘルムもどうにもならない感覚に眩暈がする。熱があるか。平衡感覚が狂う。今、己は立っているか。
 だが。
 さも元からあったかのように次々と目の前に現れる魔法円を、彼は駆け抜ける。休みなく駆けるなど彼にとっては容易いことだ。じゅう、と音と立てて皮膚が、肉が、灼けるけれど。新たな血が流れるけれど。
 彼は、笑う。胸の奥に、確かな高揚があった。病による熱ではない。もう一度、右手の蒼を握り締めた。
──月を墜としたなんて報告できたら、驚く顔も拝めそうだろう。
 ……なァ相棒?
 高く跳ぶ。
 帝竜の腹を割って出てきたような様の女を、紅い刃が一閃した。大魔女の肩から胸に掛けて、鮮やかな血華が咲いた。
「ッく、なぜ……!」
「さぁ、……どうしてだろうな」
 呻く大魔女に、ヴィルヘルムは片眉を上げてみせた。
 血液を代償に、彼の刃は鋭さを増す。ぴっ、と女の血を払い、彼女の大きな身体を蹴って離れる──駆け続け大魔女の気を惹き続けた彼の蔭で魔力を練り続けたトリピタカが、ぜぃと息を吐きつつ杖を振るった。
「お前が、世界のすべて……? だったら、……ちっぽけなお前だけの世界、オレたちが今ぶっ壊してやるぜ……!」
 杖の軌跡のひとつひとつが、闇の色に輝く。
「底無したる怨嗟と哄笑。殺戮へと到る衝動。万物を侵す狂気……」
 ひとりの少年の声が、広々とした荒野であるはずの戦場に、低く幾多と反響していく。
「其の王の悪徳すべて此の紋章を以って民護る叡智にと変えん!」
 狂王アニールの紋章──アニール・インシグニア。狂える王の呪力で満たされた試練場の幻影が戦場を埋め、大魔女と災害竜たちを包み襲った。絹を裂くような悲鳴の中、トリピタカは崩れそうになる身体を杖で支え、薄く笑った。
 『でも』。
 |それを決めたのは、誰なのですか?《ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ》
「悪には悪を、疫病には隔離処置をってな……」
──後が続けば、いいんだよ……!
 ランスブルグ史上最悪の狂王からの加護は、味方への攻撃力と防御力の強化を与える。
 戦場、全体の。
「ッ小賢しい……!」
 大魔女は憎々し気に唇を歪め、吐き捨てた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・紅
アドリブ歓迎

地の災害竜には空飛ぶギロチンに乗り空飛ぶことで対処

降り注ぐ隕石はガンガン【武器受け】や【第六感】で受け流し、避けちゃいますよぅ!

それでもきっと一杯痛くて
それでも僕はがんばるですっ

だってここは貴方の世界じゃなくて。
僕の世界ですもん!

|【紅の女王】《ワールドイズユアーズ》

僕の流す血はポポンと可愛ゆき彼岸花の飾りに変わりかわゆくメイクアップ!
戦場はメルヘンなお花の世界へとキャルンと模様替え!
僕が可愛いと思うもの以外許しませんっ

魔女さんの『やり直し』の成功率は下がり
それすなわち魔女さんの勝率はダダ下がりなのです

可愛くない魔女さんは
退場!
です!

花に飾られたかわゆきギロチン刃をその胸に贈るです


久留米・圓太郎
■POW
■対地竜
オレの魔法使いとしての血が、教えてくれている
こいつは「魔法をロクでもない事に使う、醜悪な魔法使い」
であると
あと、全然カッコ良くないんだわ、おまえさんは

■対抗策
幸いオレは魔法の箒で飛べるから、地震の直接ダメージはない
[空中戦、高速詠唱、集中力、結界術、地形の利用、逃げ足、騎乗、野生の勘]で跳ね上がった岩を撃墜し、魔法円を破壊出来るだけ破壊する(範囲魔法付きで)

■反撃
【UC】を発動後、兎に角逃げ回る
(魔法属性は水で)
「ええい!魔法円いくつあるんだ?これは!(とフェイク)」
と、「対抗策」を継続

(UC発動後)
「かかったな!その程度の巻き戻しで、オレの使い魔が引っ込むとでも、思ったか!」


儀水・芽亜
災害:地

ああ、なかなかに揺れますね。城ごと崩そうとでも?
ですが、地震大国・日本の住民をなめないでくださいな。地割れ、陥没、隆起。ことごとく「軽業」「環境耐性」「地形耐性」でいなします。

ようやく会えましたね、“大魔女”様。
竪琴を小脇に抱えまずは一曲。
「催眠術」「演奏」「歌唱」「全力魔法」でアンチウォーヴォイス。

さあ、無駄な戦いは止めましょう。争い合ったとて得るものはありません。人は皆、同じ終着点に向かうだけなのですから。あなたも私も同じ。時の流れに抗う術はありません。

これで『エンドテイク』の能力を忘れさせて、60秒経過後に持ち替えた裁断鋏で首を「切断」「部位破壊」します。
思い出してももう遅い!



●地が侵す
 戦場に広がる、禍々しい力。それが他の猟兵による加護であると、猟兵たちは知るともなく知る。
 血赤の咲いた大魔女を見据え、その前に翼を広げる枯茶色の鱗の竜を認めて、久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)は魔法使いの箒に騎乗し、朧・紅(朧と紅・f01176)は意のままに飛翔する二枚一対のギロチン刃の片刃へと両足を乗せた。
 くんっ、と一気に高度を上げた紅は振り返る。儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は大地に足をつけたまま。
「舐められたものだ」
 スリーピング・ビューティの目許は仮面に覆われ確認することはできない。それでも、彼女に不快の感情を懐かせたことは間違いなかった。
「やれ」
 短い命令と共に災害竜は軋むような咆哮を上げ、その巨大な足を大地に踏み締めた。どん、などという音では表現できない。聾さんばかりの轟音と、それよりもまず──大地が波打ち立っていられないほどの揺れが世界を襲った。
「ああ、なかなかに、揺れますね……っ。城ごと崩そうとでも?」
 芽亜には自信があった。地震大国である日本に生まれ育った身である自信が。確かに彼女には耐性があった。ぼこりと大きく罅の走る地割れも想定内。飛び交わすだけの身軽さもあった。彼女の技能。無論卓越したそれ。
「ああ、素晴らしい。けれど、忘れていないか?」
「ッと、危ねぇっ」
「危ないですっ!」
 遺失魔術メテオスウォーム。降り注ぐ隕石が、芽亜を、戦場すべてを襲う。圓太郎は巧みな空中戦で隕石を掻い潜り紅のギロチンの片刃がざきんと隕石の端を断ち切り、芽亜へと一線に降り注いだそれの軌道を逸らした。隕石が更に大地を揺るがし、天変地異と呼ぶに相応しい様相を描く。
 大魔女の攻撃に対する備えなく、大魔女とその眷属たる巨敵を前に技能だけでの対応するには練度が足りなかった。
 だからと言って、彼女の意思は揺るぎはしない。
「紅い髪のあなた、助かりました。なるほど、……さすが、と言ったところでしょうか」
「そう。私は世界の全て!」
 大魔女が長大な腕を広げる。途端にその攻撃力が強まるのを紅も感じる。
「、これか」
 そして圓太郎の前に忽然と現れた魔法円に、彼は口角を上げて見せた。
 視線をやれば、どうかした? とでも言いたげな様子で笑みを浮かべるスリーピング・ビューティ。エンドテイカーの力による、過去のやり直しによって置かれた『死の魔法円』。
 彼の魔法使いとしての血が、教唆する。
──こいつは『魔法をロクでもない事に使う、醜悪な魔法使い』だってな。
 魔法には魔法を。ウィザードとしての矜持、世界を救った偉大な魔法使いの一番弟子たる誇り。ぴるりと三毛の耳を震わせて、圓太郎は教鞭のような杖を振った。
 崩落に伴う土埃の中、高速で放つ水の属性の魔法が、紛れて弾き上がった礫岩もろとも魔法円を相殺する。
「ほう、やるな。では、これでは?」
「っ、ええい! いくつ出て来るんだ、これは!」
 大魔女が指をすいと中空に滑らせるだけで、圓太郎の周囲を取り囲むように、壊された場所、壊された場所へと次々に魔法円が浮かび上がってくる。
 焦りに眉間を歪めつつ、圓太郎は──ひたと竜から生まれた女の姿を、見据え続けた。

「っくぅ……! いいえ、まだまだ、がんばるですっ!」
 ざきん、がぃんと、隕石だけではなく跳び上がり襲い来る岩石をギロチンの刃で断ち切り弾き返し、躱す。躱し切れない砂や石片が紅の頬や腕を裂くけれど、彼女はぐいとそれを拭ってスリーピング・ビューティへと迫った。
 大魔女が強くなろうと構わない。なにも有利を得られなくても構わない。
──『私が世界の全て』? ……そうなのかもしれません。
 きゅ、と唇を引き結んだ紅は、けれど次の瞬間には朗らかに微笑みを浮かべた。
「でも、貴方の好きにはさせませんよ! だってここは、貴方の世界じゃなくて」
 重ねた両手を、大魔女を真似るかのように大きく開いた。
「僕の世界ですもん!」
 |【紅の女王】《ワールドイズユアーズ》!
 ぽわ……っ、と戦場に広がった柔らかな幻想。彼女の肌に滲んだ血はぽぽんっ! と彼岸花の飾りにかわゆくメイクアップ! 色とりどりの花々が歪みうねる大地を埋め尽くし模様替え!
 それは紅の空想を基盤にした不思議と不条理の世界。その中では『可愛いが正義で最強!』。つまり。
「僕が可愛いと思うもの以外、許しませんっ」
 満面の笑みを浮かべる紅とは対照的に、大魔女のあかい唇は引き攣った。その表情と世界の変貌に、圓太郎も高らかに笑った。
「その程度の巻き戻しで、オレの使い魔が引っ込むとでも思ったか! 使い魔達よ、遠慮はいらねぇぜ!」
 やってやれ!
 ワシャカ・ハディール。魔法円に焦り逃げ惑う姿はもちろんフェイク。ひたと見据え大魔女を対象と指定して仕込んだ召喚魔法。うにゃぁあああぁあ! と喊声を上げ、百を優に越す赤目の黒猫たちが一斉に大魔女へと襲い掛かった。
「あ、可愛いっ」
 紅の呟きを余所に、縦横無尽なひっかきによる強烈な攻撃を受けて翻弄された大魔女は「く、邪魔だ!」とその大きな掌を振り回す。
「……ようやく、傍に寄れましたよ。“大魔女”様。さあ、無駄な戦いはやめましょう」
 その静やかな声音に、大魔女は使い魔たちの隙間から見下ろす。傷と土埃に塗れてなお凜と立つ、竪琴を抱えた芽亜と視線が合った。
 全力で奏でる、アンチウォーヴォイス。聴く者の精神を揺るがし、戦いに対する疑問と戦意の喪失をもたらす、平和の喜びを歌い上げる歌。
 圓太郎の攻撃によって平静を失った大魔女に、それは届く。
「争い合ったとて得るものはありません。人は皆、同じ終着点に向かうだけなのですから。あなたも私も同じ。時の流れに抗う術はありません」
「き、さま……!」
 降り注ぐ隕石を喚ぼうにも、ユーベルコードは封じられている。歯噛みする大魔女へ、巨大な裁断鋏を開いた芽亜が駆け昇りその首を──断つには至らずとも──深く裂いた。
 地鳴りのような、女の美しさからはかけ離れた悲鳴が上がり、紅は『世界』の中で花に飾られた姿へと変貌したギロチン刃で以て大魔女の前の空中に『立った』。
 『可愛いが正義で最強!』。それに応じない者は行動の成功率が低下する世界だ。
「魔女さんの『やり直し』の成功率は下がり。それすなわち魔女さんの勝率はダダ下がりなのです」
 そうして振り上げる、鋭く煌めく白銀の刃。「可愛くない魔女さんはぁ、」。
「退場! です!」
「がぁあああぁあ!!」
 胸に深々と突き立ったそれに、大魔女は身を捩り虫でも追うかのように闇雲に手を振り回す。その姿に、箒の上の圓太郎は肩を竦めてぽつりと告げた。
「あと、全然カッコ良くもないんだわ、おまえさんは」
 強大な魔法の力を持つかもしれない。
 けれど少しも憧れない。
 その最大級の侮蔑に、仮面の奥で大魔女の瞳は激しい憎悪に燃え上がった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ジゼル・サンドル
ミルナ(f34969)と

やり直し能力は恐ろしいがしかし…そうまでして勝った未来で何がしたいんだろうな。
何でも自分の思い通りというのは、存外に退屈で淋しいものだと思うのだが。
そうだな、抗ってみせよう。エンドブレイカーの先輩方のように。

月の災害竜に対抗、【呪詛耐性】で耐え【浄化】を乗せた歌声を響かせて周囲を浄める。

エンドテイカー能力で何度もやり直しされると厄介だな…【多重詠唱】で幾重にも重ねた【結界術】で身を守りつつミルナと星霊グランスティードに騎乗し先制攻撃をひたすら躱す。

先制攻撃を凌いだら指定UC発動。多少寿命が削れるのはやむを得ないな、威力と範囲を増加させて大魔女と災害竜を纏めて攻撃しよう。


ミルナ・シャイン
ジゼル(f34967)と

そうですわよね、私こそ世界の全てだなんて。我儘もエゴも他者が居てこそですのに…
未来を決めるのはわたくし達だと、教えて差し上げましょう!

月の災害竜に対抗すべく深海のオーラを纏い【オーラ防御】。海が持つ生命力で守りを高め病を【浄化】。

【召喚術】で呼び出した星霊グランスティード『パライバ』にジゼルと【2人乗り】で【騎乗】、可能なら魔法円を【破魔】の力を乗せた【属性攻撃】で破壊しつつパライバの早駆けによる【ダッシュ】で魔法円から素早く離脱。

ジゼルに寿命を削らせるなんて…!こうなったらなるべく早く戦闘を終わらせなくては!
パライバで【騎乗突撃】し大岩斬で大魔女と災害竜を粉砕ですわ!



●月崩
「うるさい……うるさい……! 私こそが……! 世界の、全てだ……!!」
 女の怒りは、ふたりにも確実に届いた。女の凶暴性が上がっていることで、攻撃力の増加を感じる。
「エンドテイカー……。やり直しの能力は恐ろしいがしかし……そうまでして勝った未来で何がしたいんだろうな」
 ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)は曇りのない瞳で大魔女、スリーピング・ビューティを見つめた。
 もし、やり直しが出来たら? 思うままの未来を選び取ることができたら? 母を喪くしてからの生活も、大きく変わっていた? ──いいや。
 彼女は隣を見る。今、ジゼルを美しい毛並みの白馬に乗せてくれている大親友。珊瑚色に移り変わる美しい髪と尾鰭を持つ彼女。ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)。きっと都合の良い未来ばかりを選んでいたら、彼女と出逢うこともなかっただろう。
「……なんでも自分の思い通りというのは、存外に退屈で淋しいものだと思うのだが」
「そうですわよね、私こそ世界の全てだなんて。我儘もエゴも他者が居てこそですのに……」
 実感を籠めて告げるジゼルの想いなど知らず、ミルナは大魔女へ視線を据えたまま頬に手を添え、ふぅと息を吐く。それからその澄み切った海色の瞳に煌めきを灯し、手綱を引いた。美しい白馬──星霊グランスティードが前脚を掻いて嘶く。
「未来を決めるのはわたくし達だと、教えて差し上げましょう! ──いきますよ、パライバ!」
「そうだな、抗ってみせよう。エンドブレイカーの先輩方のように」

 見上げる竜はあまりに巨大で。見上げる大魔女は明らかに不機嫌で。
「まだ来るのか、第六の猟兵。忌々しい、憎らしい、エンドブレイカーのようにいくらでも湧いて出る……!」
 よほど先の猟兵との戦闘が苦いものであったらしい。女は大きな掌を彼女たちに問答無用で差し向けた。
「っ!」
 踏み出す一歩の、寸前に|あった《ヽヽヽ》魔法円。内部の敵の命を奪う、『死』のそれ。
 ミルナは咄嗟に鰭で軽く横腹を叩かんとし、パライバは鰭が腹に触れる前に跳び上がり魔法円を回避した。
 ふたり乗りできるようにミルナが支援するものの、ジゼルに騎乗の技術はない。それでもこれもひとつの環境と彼女は揺れる馬上で姿勢を保ちつつ、喉を開いた。詠唱を重ね、結界を張って被害を減らす。
 その詠唱の声さえ美しいと、場違いと知りつつミルナはそっと唇に笑みを刷いた。
 しかし高高度から吹き下ろした月白の鱗の竜からのブレスは、パライバごとふたりを包み込んだ。月の災害竜が放つ攻撃は呪いではない。確かに身体を侵す、病だ。
「いけない……!」
 ぽわ、と泡沫のような海のオーラがふたりを包む。ジゼルは瞬時ミルナへ感謝の笑みを向けると、浄化の歌を唄い上げた。彼女の歌声によって、確かに周囲の穢れは落ち着いていく。
「……ッ!」
「ジゼル!」
 けれど、彼女自身は。ジゼルは大きく喉を開き息を吸う。病原を吸う。吐き出した咳には鮮血が混ざり、喉が灼けるように痛み、呼吸が苦しい。熱が上がって、視界が回る。歌は、歌えるか。ぎりとジゼルは拳を握り、視線を据えた。
 誰に? 大魔女に。
「悠長に、……している時間は、ないみたいだ。やむを得ない、な」
 サンドリヨンは唄う。白馬の上で、手を差し伸べ、踊るように、笑みを浮かべて。ゴッドパフォーマンス。因果律を歪めるその歌を──寿命を削ることで、威力と範囲を増加しながら。
 その事実は、言われなくてもミルナにも伝わる。大切な大切なわたくしのお姫様に、寿命を削らせるなんて。
──こうなったらなるべく早く戦闘を終わらせなくては!
 ジゼルの歌声と踊りによって大魔女と月の災害竜を、周囲を、大地を揺らし爆発と炎上に巻き込んでいく。大魔女の悲鳴と火の粉が迸る中、白馬が駆け、ミルナは透明な煌めく細身剣を抜いた。
「粉砕してみせますわ! ──お覚悟!」
 馬上から跳び、無限の色を放つ刃を振り下ろす。大岩斬──アーマーナイト・ファーストアビリティ。単純。だからこそ、大岩をも叩き割り地形を変えるほどの威力を持つそのひと振りは、避けようと差し出した大魔女の掌から腕にかけてを大きく斬り裂き、月の災害竜の長い首を断ち切った。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルシエラ・アクアリンド
想う事は多くその中に小さな感謝も存在しているの
今此処に立っている私は今迄経験して来たどれか一つ掛けても在りえなかったと思うから

全ての想い込め止めさせて貰う

風竜対応
割と負けず嫌いなの
自由はそう奪わせない

先制対処
防御強化の為自身にオーラ防御と環境耐性
UCに結界術、魔力溜め後の全力魔法、属性攻撃編み込み風を多めに光弾用意
後UC天蓋の檻には更に範囲攻撃と精神攻撃加え少しでも大魔女と竜の意識阻害を狙う

地で足場確り確保出来るなら地で怪しくなったら体幹保ち空中機動で宙へ逃れる
時間が巻き戻った際の位置を考慮しと動く範囲考え行動
万一危険な状態の場合は即反応出来る様に備えておく

攻撃は全力魔法と魔力溜め乗せた魔法を纏わせた弓と光弾で
共に範囲攻撃や矢弾の雨、2回攻撃、不意打ちで二体諸々巻き込みつつ若干弱めの
攻撃繰り返し120秒目処に一斉攻撃の強攻撃仕掛け敢えて時間を巻き戻させる
強攻撃が己にとって危険だと認知させればそれで良い
それを繰り返し確実に削る
回復は致命傷以外風任せ

精一杯出来る事をするだけ
今も昔も変わらない


クーナ・セラフィン
ワーム…以前すっごく戦ったけど中身こんなんだったんだねぇ。
災害竜は大空を覆うものと戦った時のアレだし、もっかい倒さないとね?

風の災害竜を狙う。
破魔の力籠めた陽だまりのオーラで体を覆い守りつつ翔剣士の身軽さで風を逆に利用しながら大魔女を目指す。
重要なのは一点、台風の目みたいな切れ目を見出し飛び込む事。
足場になりそうな場所を見逃さず竜に一気に近接しその目にオラクル刺して出来た隙に大魔女を狙う。
降ってくる隕石は瞬間的に躱せる位置を計算し飛び込んで回避。
先制凌いだらUC起動、原初の霧から大量の聖剣実体化させて攻撃しつつ仲間の傷を癒やし支える。
悪しき魔女のお話はここでおしまいだよ。

※アドリブ絡み等お任せ



●狂風
 柳鼠色の鱗が美しく並ぶ翼が、羽ばたいた。
 巨大な薔薇纏う魔女が、血塗れの掌を差し伸べる。
 災害と呼ぶに相応しい暴風と降り注ぐ大小様々な隕石が、同時に襲い掛かった。
──甘かった。
 瞬時、そう脳裏に過ったのはどちらだっただろうか。
 此度の戦場では、災害竜だけではなく大魔女の攻撃も、戦場の誰より疾く発動する。咄嗟にルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は涼やかな蒼い風のオーラを、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はほわりと温かく灯る陽だまりのオーラを身に纏った。
 吹き荒ぶ暴風。
 既に地の災害竜が暴れた所為もあるかないか、そこには細やかな砂や小石を含んで肌を無尽に斬り裂く。溢れる血は見る間に風に攫われ、固まることすら許さぬが故に止まらない。延々と続く風は体温も奪い、無論飛来するのは小さな欠片ばかりではない。
「ッ! っ、」
 大地に足つけることは不可能と素早く見切りをつけたふたりは、風に乗っている。互い、歴戦の勇士。岩板が紙より疾く共に風に巻かれ叩き付けんとするのを、身を捻り、その巨石へ足をつき、蹴り、風を読む。あまりに激しい風に、声が出ない。あるいは、出ているのかもしれない。聴こえない。
 そこへ、スリーピング・ビューティが狙い定めた隕石が降るのだ。
「──!」
 無論、避ける。完全、ではない。
 けれど。
 隕石の熱に灼け、脚が折れたか、もはや感覚はなくても。
 ルシエラの碧の双眸とクーナの藍の双眸は、光を失わなかった。それは折れない意志。そして彼女たちを支援する、既に戦場すべてに撒かれた攻撃力と防御力を増幅させる他の猟兵からの加護もあった。
──今!
 見極め切り込む、風の『隙間』。飛来物を足場に踏み込んだクーナの帽子が、舞い上がる。
 一線に曇り無き刃の美しい細剣が風の災害竜の目を貫いた。鼓膜が破れんばかりの悲鳴が上がり、風が止まった。
「ほう」
 大魔女の感嘆。放り出される形になったルシエラは焦ることもなく、くるり身を捻って敵を視界に収め続けた。
 彼女の傍からぽぅ、ほわ、と種々の光弾が湧き上がり、あらゆる事象に対抗する防御結界を形成していく。それはelementum──ゲンソノリョウイキ。油断なく次の備えと共に足が地に立つ。
 クーナも喚き無分別に暴れる竜から離れると、ふぅわと落ちてきた帽子を掴んで頭上に乗せ、剣の切っ先を大魔女へと差し向けた。
「『大気そのもの』なら、『大空を覆うもの』で経験済だし」
 くいとつばを持ち上げ彼女は血と砂塵に汚れた毛並みに構わず、口角を上げた。
「帝竜『ワーム』……以前すっごく戦ったけど中身こんなんだったんだねぇ」
 能力的には竜というよりも、悪い御伽噺の魔女みたい。実は中身、別のなにかだったり? かつての帝竜戦役でそう訝り続けたクーナの予想が、見事的中していたというわけだ。
「……嬉しくはないけどね」
 ぴるっと耳を払ってクーナが告げ、ルシエラもごしと浅い斬り傷から血の滲む頬を拭った。
「私。割と負けず嫌いなの」
 竜が再び羽ばたこうとするのを冷静に確認して、彼女は薄く唇に笑みを刷く。魔力を溜めて放つ、全力の。
 回復を促す涼やかな風が吹き始めた。天空から光線が描くように蒼い空間の檻が生まれ、大魔女のみならず風の災害竜も中に捕らえる。檻としての空間には充分に余裕があるというのに、大魔女の唇が苦く歪み、災害竜は困惑したように翼を広げ暴風を放つ。蒼の天蓋──ウィンディテイル。そのユーベルコードは敵に『捕縛された感覚』と『超混乱』を与え精神的な負荷を課すと共に、凄惨なる嵐を檻の中に召喚する。その傷は、癒すことが出来ぬほどの。
 自らの翼で喚ぶ暴風か、はたまたルシエラの疾風か。竜自身も判らぬまま、柳鼠色の鱗がぼろぼろと無惨に欠け落ちていく。
「もう、自由は奪わせない」
──精一杯、出来る事をするだけ。
 今も昔も変わらない。
 エンドブレイカーたる彼女の科白に、うん、とクーナも肯く。味方に対してはやさしくそよぐ風に目を細め、ゆらりと尻尾を揺らして、彼女は細剣を天へと差し上げた。原初の霧──プリマビスタ。
 暴風逆巻く蒼い檻の中へ、灰に煙る原初の霧が漂い始めた。
「?! な、なんだ……!」
 混乱している中に更なる異変。大魔女の慌てる声だけが霧の中で微かにくぐもって聴こえる。
 大魔女、スリーピング・ビューティには見えないだろう。クーナの上空に無数に浮かんだ聖なる剣が。術者の想像を実体化させる霧だ。冴え冴えと煌めく刃はすべて、大魔女へと向いている。
「前にも言ったけどね。この世界にキミが定めるくだらない終焉はいらないんだ」
 悪しき魔女のお話はここでおしまいだよ。
 音もなく、細剣を振り下ろす。
「────!!」
 霧の中、逃れられないという焦燥の中、事実──巻き戻しても巻き戻しても、やり直してもやり直しても“戦場”で相対す以上、荒れ続ける嵐と聖剣の雨が大魔女を襲い続けた。
 大きく開いた赤い唇。迸っているはずの悲鳴は、聴こえない。
「……想う事はたくさんあって。その中に小さな感謝も存在しているの」
 火の光弾で灯りを。風の光弾で視野の確保を。一、二、……。胸の裡でエンドテイカーの能力を計りながらルシエラは愛用の白く翼の如き造形の弓の弦を引き絞り、スリーピング・ビューティを見据えた。
 暴風によって得た傷は、ルシエラの風と、クーナの想像を実体化した物質によって次々に癒えていく。
「今此処に立っている私は、今迄経験して来たどれかひとつ欠けても在りえなかったと思うから」
「やめろ、やめろ……!」
 髪を振り乱し喚く女の姿に、時の流れと場所の違いを感じる。
 ルシエラは、ひとつ肯いた。
「だから、止めさせて貰う。──すべての想いを籠めて」
 放つ。
 風を切る矢は全力注いだ光弾を纏い、雨となって広範囲を包み込む。魔力渦巻く鏃は刺さると同時に種々の光弾の属性魔法を弾けさせた。
 竜は地に崩れたらしい。巨大な地鳴りと土埃が舞い上がった。
 大魔女は悲鳴を上げ続けているらしい。
 “雨”の音でやはり、聴こえなかった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ププ・プイッコ
こわい
こわい
……こわい!

だって、あんな化け物、みたことないでち
あんなのがププ達の森まで来たら、来ちゃったら……

みんな、みんな、死んじゃうでち……!

こわくてどうしよもなくて動けない
でも、猟兵達は諦めないで立ち向かってて
……ああ、まるで……
ぎゅううと勇者の剣を握る

ラズワルドサマは、あたちのこと
『小さな勇者』って言ったでち、言ってくれたでち……!
倒せないのに、それでも化物と戦い続けてた
あのヒトみたいにはなれなくても
ここで終わりなんて、イヤでち
諦めたくないでち

あたちは火の災害竜をやっつけるでち
隕石が降ってくるけど……
毛並みがぞわわってなる野生の勘に従って
窪みとかに身を寄せて、ぎゅっと丸くなって少しでも凌ぐでち
全力魔法の火球をえいえい放って
や~いへんてこ!こっちでち!っておびき寄せ

……もう、逃げないでち
お前なんかに負けないでちっ!
頑張る気持ちと、負けたくない気持ち、
勇気をふりしぼってちからにするでち

森のチッタニアンの皆も、あたちを可愛がってくれるママ(※ニンゲン)も
あたちが護ってみせるんでちー!


マウザー・ハイネン
何度でもやり直すなら何度でも滅ぼします。
私の…エンドブレイカーとしての意地、です。

火の災害竜と。
召喚術で星霊ディオスを召喚し聖流のオーラを纏い炎熱の被害を抑えつつ佇む大魔女を目指す。
竜の殺気から攻撃を読んで回避、ブレスには眼前に水魔法で水壁生成、氷細剣で凍らせ直撃を回避。
接近時も水のオーラを冷却して熱を凌ぎつつ竜と比較しての小柄さを活かしてすり抜け突破します。
降り注ぐ隕石は着弾点を読んで勘も活かして大きく躱し間合いに入ったらUC起動。
召喚された星霊クロノスの力を籠めた氷のランスで串刺しにして時に干渉しやり直し妨害、凍らせます。
この世界を再び悲劇に満たさせたりさせません!

※アドリブ絡み等お任せ



●ともる、火
 こわい。
 こわい。
 ……こわい!
 草飾りのついた兜を握り締め自らの頭に押し付けて、ププ・プイッコ(pomme🍎・f38895)は大きな岩の蔭に身を屈めて震えていた。
──だ、だって……。
 ちらと振り返る、戦場。
 幾多の猟兵たちの攻撃によって胸や腕は大きく裂け、それ以外の肌も傷付き血に塗れた仮面の大女。
 そして大地を踏み締め、業火吐き出す巨大な竜が深緋の鱗煌めく翼を開いたなら、こんなにも離れているのに熱気が彼女の毛並みの下にも潜り込んできてチリチリと痛むほど。急いでププはもっともっと岩蔭に身を縮めた。
──だってあんな化け物、みたことないでち……!
 涙がめいっぱいに若草色の瞳に盛り上がる。
「あ、あんなのがププ達の森まで来たら、……来ちゃったら……」
 ママが。おともだちが。“ちょこへな~”な兄達のことだって、嫌いなわけじゃない。そんなみんなが。

──みんな、みんな、……死んじゃうでち……!

 想像するだけで手足が冷たくなって、心臓が早鐘のように打って、呼吸が浅くなって。
 こわくて、こわくて、どうしようもなくて──動けない。
(大丈夫ですよ)
 あるニンゲンの声が、脳裏に蘇る。
 竜と大魔女の姿を遠望したとき、長い氷の色の髪のニンゲンがププの手をそっと取って言った。その行動、その長いニンゲンの指が、ププのママを想起させた。
(無理はしなくて構いません。それほどに強敵ですから。何度でもやり直すなら何度でも滅ぼします。それが私の……エンドブレイカーとしての意地、です。……でも)
 そう告げた彼女は。もう一度振り返る。
 ニンゲン──マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)は召喚した星霊ディオスによって聖流のオーラを纏い、アイスレイピアを巧みに繰って業火のブレスを躱し、陽炎立つさ中を駆け、跳ね、舞う。
──ああ、まるで……。
 ぎゅうう、とププは指揮棒にも似た木を握り締めた。違う。これはププの、勇者の剣。
 きつく伏せた瞼の奥に浮かび上がるのは、青い瞳。ププのしっていた、あのニンゲン。
──ラズワルドサマは、あたちのこと……、『小さな勇者』って言ったでち、言ってくれたでち……!
 エリクシルを倒す“力”を持たぬ彼。なのにそれでも化け物と戦い続けていた。
 まだ、手は震える。それでもププは瞼を開き、立ち上がる。
──あのヒトみたいにはなれなくても、
「……ここで終わりなんて、イヤでち。諦めたくないでち!」
(でも共に戦ってくれるのなら、これほど心強いことはありません)
 ププは、駆け出した。

「小癪な」
 ダメージの蓄積した大魔女の口数は少なく、忌々し気に歪む唇は鮮やかなまま、引き結ばれる。彼女の指先がすいと動くだけで、空を割って隕石が降って来る。
 着弾点。マウザーは見定める。ただ直撃を避ければ良いというものではない。超速の礫から放たれる熱と亜音速の衝撃波。それらもすべて直観的に察し、大きく躱す。
「!」
 踏み出す寸前、感じる殺気。火の災害竜。しかし躊躇する暇はない。今、この路を。
「や~いへんてこ! こっちでち!」
 その竜の横っ面に、火球がいくつも弾けた。相手は災害と呼ばれるまでの火の化身だ。それなりに大きな、おそらく全力を籠めたであろう大きさの火球だったが、災害竜は不快気に鼻の上に皺を寄せただけ。
 それでもいい。
 それでいいのだ。
 その一瞬でマウザーは活路を見出す。竜の意識を逸らしてくれたププへ礼として笑みを向けて、転がるようにして高温の地熱燻る荒野を移動し、凍らせることで立て直す。
「目障りだ……!」
「ひっ」
 仮面の奥。大魔女の目は見えないけれど、そこに確かな怒りを感じて竦む。次はププへと降り注いだ隕石に、ぞわっと毛並みが逆立ち彼女は荒れた大地の窪みに身を寄せ、ぐるりと尾を巻き込み丸くなって。
「──ッ!! く、ぅうう……っ!」
 それは想像以上の圧。熱くて、息が苦しくて、圧し潰されそうで。
「させ──ません!」
 |星霊氷装錬成《アイスウェポン》。時の星霊クロノスの氷の槍が、大魔女の仮面へと突き上げられた。
 もちろん、マウザーだ。「ッ貴様……!」すんでのところでスリーピング・ビューティが身を躱す。中空で身を捻り、マウザーは自重も乗せて大魔女の身へと突き立てた。刃が刺さると同時に凍結が傷口を中心に広がり、大魔女の身体を縛めていく。
「ッが、あ……!!」
「この世界を再び悲劇に満たさせたりさせません!」
「ッは……! っはあ……!」
 大魔女の意識が逸れたことで隕石も消滅し、ププを苛む圧が消えた。どっ、と恐怖と安堵が綯い交ぜになって彼女の心臓を走らせる。耳が下がる。息。できる。震え続ける手を見つめる。でもまだ、……いきてる。
 瞳孔が開いて、それでも彼女はよろよろと立ち上がった。
「……もう、逃げないでち……」
 物語の中で知っている大魔女。その存在と対峙している事実が、彼女の胸に芽吹いた自覚を育てていく。
 大地を踏み締め、キッと眦吊り上げて睨め上げる。
「お前なんかに負けないでちっ!」
「バルバ風情が……」
 煌々としたあたたかな光が勇者の剣に宿る。ブレイブ・ハート。それはププの勇敢なる心の証。頑張る気持ちと負けたくない気持ちを、ちからに変える。
「そうでち。あたちはチッタニアン。でもでもっ、あたちだって勇者でち! 森のチッタニアンのみんなも、あたちを可愛がってくれるママも! あたちが護ってみせるんでちー!」
 鋭い跳躍。腿を駆け、大魔女の胸へと光纏う剣を突き立てた。けれど傷口は、広がらない。血も溢れない。心優しきププの願いに応じた力は、悪意や憎悪、絶望の終焉だけを討つ。
 だが穢れた心を持つ大魔女の喉から迸った悲鳴は、これまでで最も痛々しく響き渡った。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リヴィ・ローランザルツ
別に憎悪を抱いている訳では無いんだ
確かに貴女が起こした事で沢山の悲劇が生まれだけれどその分笑った事も多くて
俺たちの|始祖《アウィン》やラズワルドにも逢えた。それが今は上回る
此華咲夜若津姫が羨ましかったのだろうか

水竜

攻撃来る事が判明しているなら属性攻撃、継続ダメージ、結界術絡めUC六華の舞使用
底上げした分で少しでも行動阻害の確率を高め環境耐性を自分に
直ぐ様分身呼ぶベくUC使用属性攻撃、継続ダメージ、衝撃波上乗せで分身にも環境耐性付与
攻撃の手数を分身と増やし2回攻撃、フェイント、生命力吸収織り交ぜ行ない
互いに死角作り時に囮とし、気配察知、索敵、第六感、軽業で基本躱し空中機動も使用
見切りで早めに相手の挙動を把握する
水に対しては呑まれぬ様自分の吹雪で凍らせつつ逆に足場を作って利用する

懐中時計で計測し100秒経ったら大魔女に分身と共にこれ迄で一番の渾身の攻撃を連続叩き込む
目的はダメージの蓄積をさせるエンドテイカーの起点作成
隕石には避けつつも狙えるなら氷での相殺やカウンター攻撃も共に行なう
何度だって



●清濁
 赤い景色を切り取る、浅縹色の巨大な翼。大きく開いた咢からは放たれた水の奔流は物理法則をまるで無視して一線に空を射ち抜いた。
「ッ!」
 なによりも先んじて攻撃が来ることは判っていた。リヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)は焦ることなく全霊の第六感で以て攻撃の気配を感知し受け流す。叩き付ける強大な質量の直撃を避け、結界も展開していたことによって水流によるダメージは抑え──視線を上げた。
 空を裂き燃え上がって墜ち来るのは隕石。その勢いから、未だ大魔女ことスリーピング・ビューティは勝利への意志を失っていないことを知る。
「砕け散るがいい」
「上等だ……!」
 大魔女の声が聴こえたときには、灼熱と強大な衝撃波を放つ隕石がリヴィを喰らった。けれど、差し伸べた手に淡く浮かび上がったのは名将カレルヴォの紋章──盾の属性魔法。無論、無傷ではいられない。あまりの圧に膚が裂ける。
 それでもリヴィは、囁いた。
「──領域展開」
 攻撃を喰らってしまいさえすれば、反撃ができる。戦場全体にふぉん、ふぉん、と幾多の魔法陣が浮かび上がった。青白い冷気が立ち昇り、途端に吹雪がスリーピング・ビューティへと噴き付けた。六華の舞。その極寒の雪風は大魔女の体力を奪い、その動きを妨げていく。ついでのように、水竜のそれも。
「別に憎悪を抱いている訳では無いんだ」
 軽い咳と共に口内に絡んだ血を吐き出し、リヴィはひと息吐きつつ銀の柄のレイピアを振るった。翠の宝玉が煌めき描いた軌跡が彼の姿に重なる度に──彼の姿がひとつ、ひとつ、と増える。
「確かに貴女が起こした事で沢山の悲劇が生まれだけれどその分笑った事も多くて……、俺たちの|始祖《アウィン》やラズワルドにも逢えた。それが今は上回る」
 此華咲夜若津姫が羨ましかったのだろうか。大魔女を見上げ、そう呟いた彼の想いのすべては量れない。
 胸や腕から夥しい血を流す仮面の女は仮面の下方で紅い唇を苦々しく歪めた。女の前には、リヴィの姿が四つある。それは分身。四重双撃──カルテット。
「すべて叩き潰せば同じだろう!」
「そんな単純じゃないさ」
 ひとりが告げ、女が吹雪のさ中で手を差し上げた。|命《めい》に従い、水の災害竜が再び口を開くのに、ひとりのリヴィがレイピアを切り上げることで吐き出すブレスは大きく照準を外し、その水流に対してもうひとりのリヴィが手を差し伸べれば魔法によってその流水の端すら凍りつかせ──中空で身を捻り躱したリヴィが逆にその氷結した箇所を足場に駆け抜けた。
 迫る彼に大魔女は煩わしいとばかりに手を振ろうにも、凍えた腕は巧く動かない。跳ぶ。と、見せかけ彼は身を低め足場を蹴った。氷の欠片が砕けてきらと輝きながら散る。
「繰り返しは、させない。──積み重ねてきたものがあるんだ」
 リヴィ達がレイピアを振る。再び幾多と現れた魔法陣から阻害の風と体力を奪う豪雪が吹き荒れた。「──っ!」大魔女が金切声を上げる。
 四重奏撃を更に増幅させる六華の舞は、家族との過去があるからこそ編み上げることのできた研鑚の証だ。動かぬ大魔女の腕に、肩に踏み込み、ふたりのリヴィは澄んだ刃に轟と湧き立つ冷気を纏わせた。
 渾身の力を籠めて振り下ろす、剣技と魔法が織り込まれた斬舞。
「あ゙ぁあああ゙あ!!」
 彼自身の技能も相俟って幾重にも増幅したその『一撃』は深々と大魔女の身を裂き、吹雪の中に赤を咲かせた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ルッツ・ハーミット
相変わらず自分のことばかりだね、貴女は
どうしてあのとき負けたのか
分からないままなら結末は変わらない
否、変えさせない

シルバーコヨーテを喚びその背を撫で
自身はナイフを構えて
さぁ、いこう

⚫陽の災害竜
…嬉しくない再会だね
僕はもっと優しい陽の光が好きだよ

フード付きのローブで顔と体を覆い
肌の露出を抑え、動きや口呼吸も最小限に
恐らくスピリットのコヨーテには旱魃の影響はない
自由に動いて敵を翻弄してもらう

環境耐性があるとは言え
体力が尽きる前に早期撃破を目指す
最後は意地と根性だ

⚫魔女
常に行動が読まれているかもしれないという前提で動く
挙動や気配から攻撃狙いやタイミングを見切り
隕石は落下地点を予測し、極力回避や受け流し
避けた先の追撃も警戒

少しでもダメージを重ね仲間に繋げるように
コヨーテと連携し休まず攻撃
片方が隙を作り片方が討つ
友の動きに合わせ体は勝手に動く
例え巻き戻されてもその都度変わる連携に
ついてこられるものならやってみろ

皆の、世界の未来を奪わせはしない
独りじゃない
願い重ねる仲間がいる
だから、僕達は負けない



●灼陽
「……嬉しくない再会だね」
 金の輝きを持つ滑らかな鱗。
 温度の感じられない眼。
 家ほどもある体躯。
 開いた翼はその倍ほどもあるように見える、──竜。
 見覚えのあるその姿を見上げ、ルッツ・ハーミット(朱燈・f40630)は被ったフードの端を掴んで引いた。かつての“目覚め”の際にも対峙した災害。
──人々を巻き込んでない分、あの時よりまし、かな。
 口許に布を巻き、灼熱、かつ乾燥し切った空気で喉や肺を傷めないよう配慮しながら、彼は駆けた。それだけしてもなお、吸い込む空気は強い熱を孕み、じりじりと皮膚は焼け、痛む。何度か呼吸を繰り返すことで環境に身を適応させつつも、ルッツは早期の決着を見据えた。
 大きく開いた竜の咢。そこに輝く、直視できぬ熱と光のエネルギー。放たれる直前、ルッツは大魔女を走り見た。血に塗れなお、憎々し気な痛みを確かに懐いてなお、微笑みを浮かべる女。すい、と指が動く。
「『繰り返し』は、良いだろう?」
「ッ……!」
 降り注ぐ隕石。遺失魔法メテオウォーム。回復にも用いられるはずのこの|ユーベルコード《アビリティ》を攻撃に使うという点において──スリーピング・ビューティは焦っている。偵察、索敵……その他狩猟者としての観察眼でルッツは確信した。
 挟み撃ちが如き隕石と疑似太陽が、ルッツを巻き込み大爆破を起こした。
 赤い大地に開いた大穴。
 もうもうと土埃の上がる中、薔薇を纏う魔女はうっそりと嗤った。
「ふふ。ふふふ……! やはり私に勝てるものなど、この世にありはしないのだ……!」
「……相変わらず自分のことばかりだね、貴女は」
「!」
 大穴の縁。傍らに立つ白銀の獣の背を撫で、茜色の双眸が爛と光った。銀狼牙──シルバーファング。もちろん、彼も無傷ではいられない。小規模とは言えど超新星爆発の如き衝撃に、だらりと下がった血塗れの左の腕はもはや感覚もない。それでも。
 いくよ、と声を掛けたなら、ぐるると牙を剥いた獣と共に、水分を失い崩れる縁から跳んで避けたのは同時。ルッツも“牙”を抜く。
「どうしてあのとき負けたのか。分からないままなら結末は変わらない……いや、変えさせない。|二度目の邂逅《『繰り返し』》だから良いんじゃない。すべてが望む通りになるわけじゃなくても、それでも……!」
 灼熱の空気にもたじろがぬ、体力の消耗すら度外視できるシルバーコヨーテのスピリットが軽妙に大地を駆け、黄金の竜の視界を過る。
 竜は長い首をもたげてその輝きを追ってブレスを撃つ。弾ける衝撃は水分を奪い、更に大地を崩していく。
「僕はもっと優しい陽の光が好きだよ」
 ぽつり呟いたとき、既にルッツは大魔女の『ワーム』の部分を踏み越え跳んでいる。
 互いが互いの陽動であり、援護。友の動きには合わせるともなく身体が動く。例え時を巻き戻されたとしても、最適を選び続ける絆を、信じている。
──ついてこられるものならやってみろ。
「皆の、世界の未来を奪わせはしない」
 大魔女の傷だらけの身体へ、彼は“牙”を突き立てた。
──独りじゃない。
 絹を裂くような悲鳴を上げて身を捩り、払い落そうとする巨大な血塗れの掌を蹴ってルッツが躱す。馳せ違った銀の獣の咢が彼女の皮膚へと喰らいつき、更に大魔女は狂乱した。
 くると身を捻り、着地。金の竜の動向を視野に入れつつ、彼は再び土塊を蹴った。
 スリーピング・ビューティの焦りはこれまでの仲間たちが穿った蓄積あってのものであり、願いを重ねる仲間がいることは間違いないから。
「……だから、僕達は負けない……!」
 

成功 🔵​🔵​🔴​

紫・藍
【藍九十】地の災害竜
舞い踊るとは即ち藍ちゃんくん!
空中浮遊で地震も地割れもせり上がってくる大地も華麗に回避!
おねーさんがピンチな時は手を取って社交ダンスを踊るかのように回避!
シャル・ウィ・ダンス?

頭上にも注意&致命傷回避!
隕石でなくおねーさんだけを見ていたいのでっすが!
そのお姿も魅力的なのでっすよー?
そんな恋人達を魔女さんも食い入るように見ているはず!
勝利への意志が激強な分、攻撃の結果は気になりまっすからねー!
ですが二人の舞踏、催眠術でもあるのでっすよー?
幻惑の舞なのでっす!
くらりとさせて意志を一瞬でも途切れさせ反撃でっす!
意志を取り戻した時には全ての対象が藍ちゃんくんになってるのでっす!
隕石がどれだけ来てもおねーさんに守られてまっすし、治癒だって藍ちゃんくんに対象が移っちゃいまっすので!
やっちゃえなのでっす、おねーさん!

藍ちゃんくんも究極的には自分にしか興味なかったのでっすがー。
一人での|完結《エンディング》、ブレイクされちゃいましたからねー!
一人では作れない未来を作ってくのでっす!


末代之光・九十
【藍九十】
>地の災害竜
空中戦で躱すよー
(地の崩落を見下ろし)
僕は形だけとは言え|大地《ホノリ》の名を継ぐ身。地表で喰らったら最悪即死だかんね。

有難う藍。
そして|I would love to《よろこんで》!

藍のリードならステップだって踏める。
大魔女なんか見せるのは勿体無いけどね


>メテオスウォーム
…藍に見せるのは緊張するけど
(オーバーロード。|左瞳《ホノリ》の神核を開き真の姿に)
収集・結合。及び第一権より第八権迄の越権行使。十権バフ全重ねでの【生命の神】。
(無尽蔵に生え続け膨れ上がる万種の生命の肉体部位(空中戦の為翼多め)、九十自身の身を中心に肥大化して行く生命の凝縮塊。隕石に砕かれる傍から補充され寧ろ拡大し藍を囲って護り、大魔女へ向け毒を持つ牙や爪や針を伸ばす)

要するに物量ゴリ押し力技!
やり直しても対処しようが無さそうな戦法って言うと。これかなって!(蛮族思考)

強力な6匹が油断を生む。
やり直せる安心が一回一回を温くする。
君は強いけど。強過ぎて弱い。


…ぁう。
(藍の言葉に赤面して沸騰してる)



●地続き、つながり、望むまま
 長い首をもたげ、竜が見る。強大な脚で大地を踏む、それだけで。
 赤い地面が沸騰した水面みたいに大きく揺れて割れ、隆起し、跳び上がり弾け、裂けて──。
「っ!」
 跳躍、違うだめだ、とにかく空へ、

「シャル・ウィ・ダンス?」
「! |I would love to《よろこんで》!」

 末代之光・九十(|何時かまた出会う物語《 ぺ て ん 》・f27635)の前に風を切って現れたのは、鳥? 飛行機? いいや──紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)だ。
 それらと見紛うばかりの完璧な空中浮遊。差し伸べられた白い手をはっしと掴めば、一気に空までひとっ飛び!
「有難う藍」
「舞い踊るとは即ち藍ちゃんくんでっすから!」
 大気を震わす藍の声と元気を圧縮して機動力にしてしまう靴で、中空さえステージにして彼は踊る。九十の手を引き足を滑らせ、しなやかにナチュラルターン。瞬きひとつ前まで藍の居た場所へ、拳大の岩が飛び過ぎていった。
 五十を超す戦場を駆け抜けた藍のいつも通りの笑顔に、やや強張っていた九十の口許も綻んだ。眼下では、揺れ動き土埃を立てる大地。
──僕は形だけとは言え|大地《ホノリ》の名を継ぐ身。……地表で喰らったら最悪即死だかんね。
 そんなふたりを、仮面の女はぎりと奥歯を鳴らし、中空へ指を滑らせる。
「目障りな奴らめ……!」
「おっやー? おやおやおっやー? 仮面をつけているのにダンスを解さないなんて、もったいないのでっすよー?」
 降る、隕石。視界の端で藍は確認し、踊り続けた。致命傷を避けるべく。もちろん、完全に無事だなんて甘い考えはしていない。だけど。
「……藍に見せるのは緊張するけど」
 ぽつり。
 腕の中で呟く声を、ちゃんと藍は聴いている。
 隕石と崩落の轟音の中。音もなく九十は両の指先揃えて瞼を伏せ、……開いた。|左瞳《ホノリ》の神核。
「収集・結合。及び第一権より第八権迄の越権行使。十権により遍く強化」
──一緒に居てよ。
 撫でるように触れる、自身の身。そこから無尽蔵に生え、膨れ上がる万種の生命の肉体部位。真の姿を解放したうえでの、生命の神──ホノリ・カムイ。九十自身を中心に、肥大化していく生命の凝縮塊。
 超大な猛禽の翼、馬の頭、鱗の生えた蝙蝠の如き翼に鋭く捻じれた角。肌に浮かんだ赤い紋。背から生えた長い長い猿の腕が、虎の尾が、鹿の脚が、藍を隕石より護る笠を成す。見る者によっては恐怖を呼び起こすかもしれない、その姿。
 ちらと盗み見る。
 ただ藍は咲う。
「そのお姿も魅力的なのでっすよー?」
 当たり前みたいに。
 いとおしいって瞳に浮かべて。
「……っ! あ、ありがと……」
「本当、隕石でなく他のものでもなく、おねーさんだけを見ていたいのでっすが!」
──そんな藍ちゃんくんたちを、魔女さんも食い入るように見ているはず!
 既に多くの猟兵たちの攻撃により限界も近いであろうラハム・ジ・エンドテイカー。それでもこの戦場に隕石が降り続けているということは、彼女は勝利への意志を失わずにいるということだ。視線をやれば藍の想定通り、痛いほどの鋭い大魔女からの視線が突き刺さっている。
──勝利への意志が激強な分、攻撃の結果は気になりまっすからねー!
 だがそれこそが藍の、藍達の術中だ。藍のダンスそのものが、催眠術。蠱惑し幻惑し誑惑して進ぜましょう!
「さぁさご注目! 余所見厳禁!」
 凝塊の笠の下、藍は大きく両手を広げて歌い、改めて踊り始める。それは極めに極めた、最高のパフォーマンス。
「この世界のステンドグラスに、新たなる物語を!」
 藍は盲目──アイキャッチ。戦場全体に熱狂の渦を起こし、ダメージとすべての行動の対象を強制的に藍へと定めるユーベルコード。
「大魔女のお姉さん、楽しんでまっすかー?」
 くるり、ひらり。煌めきさえ生む藍のパフォーマンスに、いつしかスリーピング・ビューティの仮面の下、ほんのりと朱が昇っている。完全に魅了されてしまっているが故に、例え隕石を藍へと降らせても九十の笠が彼を庇護し、治療をするならば藍へとその癒しは注がれる。
──……、なんだろう、藍が格好良いのは、いいんだけど。……なんか、……。
 ほんのちょっぴり、九十の胸にちいさく疼いた“なにか”。けれど藍色のまっすぐな髪を翻した彼のきらきらした瞳が向いた。
「今なのでっす!」
「、うん。藍のリードなら僕にも複雑なステップだって踏める。ふたりのダンスを大魔女なんかに見せるのは勿体無いけどね」
 大きく羽ばたく複数の翼。伸ばした腕から生やす、毒を持つ牙に爪、針。エンドテイカー、それはやり直しの能力。例え大魔女がそれを用いたとしてもダメージを蓄積させて確実に倒すには? 答えは物量ゴリ押し力技!(※あくまで九十の回答です)
「強力な6匹が油断を生む。やり直せる安心が一回一回を温くする。君は強いけど。強過ぎて、弱い」
 肥大して、膨張して。なにかも判らない、いのちの形が巨大な塊になる。
「やっちゃえなのでっす、おねーさん!」
「勝てないよ、それじゃあ──……僕らには」
「──!!」
 九十の“拳”が大魔女の頸を叩き付け、仮面を弾き飛ばした。
 彼女の眸が露わになるより早く、再孵化したラハム・ジ・エンドテイカーの巨大な身体は砂の如くざらりと崩れて、風に消えた。

 見回せば、残っていた災害竜たちの姿もいつの間にか霞のように掻き消えていた。
 改めて赤い大地に足をつけて、藍はだだっ広い荒野を眺めた。赤い石の薔薇が蔦を這わせる場所。城でただひとり、何度も何度もやり直しをして自らの、自らだけの望む世界を創ろうとしていた大魔女。
(私こそが、世界の全て)
「……藍ちゃんくんも究極的には自分にしか興味なかったのでっすがー」
 自分のための服。自分の存在のための歌。最初はそうだった。最初は。
 でも。
 藍は隣に並ぶ普段の姿に戻った九十の手をきゅっと握った。
「一人での|完結《エンディング》、ブレイクされちゃいましたからねー! これからも一人では作れない未来を作ってくのでっす!」
「……ぁう」
 振り返った九十の頬は真っ赤で、「あやっ」思わず藍も握った手を離しそうになってしまうけれど。
「……でっす」
 もう一度、しっかりと握り直す。

 ね、良ければ|応答《コール》して?
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月03日


挿絵イラスト