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語られずとも知っている

#UDCアース #ノベル #猟兵達の夏休み2023

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#猟兵達の夏休み2023


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エルネスト・ポラリス
夏休みに旧友の墓参りをするノベルをお願いします。

●概要
UDCアースにて『お盆』を知ったエルネストが、猟兵になって間もない頃にできた友人の墓参りに行き、故人との過去を思い出す様子。

●登場人物
エルネスト
PCです。
下記の友人とは猟兵活動中に知り合いました。
人狼病という共通項から意気投合し、治療法を探して一緒に勉強したり、UDクリーチャーの遺跡に潜ってみたり、死にかけたり、普通に遊んだりしてました。
エルネストも友人に対しては気を許しており、素のぶっきらぼうな態度で接していました。
(伝わると思うので次回作の名を出しますが、一人称が『僕』のエトワールをイメージしてください)

友人
人狼のUDC職員です。
所謂神隠しの子孫としてUDCアースに生まれた人物で非猟兵。
現代医学でも治らぬ奇病をきっかけにUDC組織の目に止まり、そこで働いていました。
当時はUDCアースの常識などまるで知らなかったエルネスト君係にされながらも、同じ病を持った友人として楽しくやっていました。
エルネストと同年代ですが、猟兵ほど身体が強くなかったので、2年ほど前に亡くなりました。
家族は同じく人狼病で他界し身寄りが無かった為、UDC組織が管理する墓地へ埋葬されました。

●流れ
概要通り、墓参りと故人との思い出を思い出す様をお願いします。
友人とどのように関わったか、そもそもどういった人物なのか等は明確に決めていませんので、積極的に捏造して頂ければと思います。

●文字数
とりあえずこの文字数でリクエストしますが、キリが良いところでノベルを終わらせ返金対応となっても構いません。
マスター様の書きやすい文字数でお願いします。

ここまでのご確認、ありがとうございました。
ご検討、よろしくお願いします。



―――死者が戻ってくる時期がある、など思いもよらない事だった。
 日差しは暑く、蝉の声は煩い。
 UDCアースにおける年表としては、8月。その中ごろ。日本におけるお盆と呼ばれる夏真っただ中の時期。とある墓地。
 日本における墓地は大体がお寺やら神社やらと結びついており、墓石やら卒塔婆やらが立ち並ぶどことなく古く、おどろおどろしい場所が主である。
 が、その墓地は『とある財団』によって出資され、近代的に整備された、仏教、神道だけでなく各種主要な宗教に則った埋葬方法に対応する事の出来る場所であった。
 つまるところ、新しく、静かな墓地。整然とならんだ墓石のとある一つ。ある人物の名前が刻まれた前に、黒の礼服に身を包んだエルネスト・ポラリスが佇んでいた。
「失敗したな」
 周囲、どうやら自分と同じように墓参りに来たらしい家族連れ達のラフな格好を見て、思わずそう呟いて額に浮かぶ汗をぬぐった。
「もう少し、涼しい恰好で来ればよかった‥‥‥」
 『お盆』という風習があると聞いただけで一も二もなくやって来たからだろう。葬式の時と同じような礼儀作法で来るべきだと勘違いしていたのは、エルネストとしても不覚を取ったという所だ。今度機会があったら普段着で来ようと青年は固く誓った。
 持ち物は、花束と、ビールの缶。その二つを手に、傍らには水の入った桶と柄杓。人狼病の男は、同じく人狼病を患っていた友人の墓参りに来ていた。
 所謂、お盆参りである。

「それにしても、君、本当に帰ってきてるのかい?」
 言いながら、生年と没年、名前だけが書かれた簡素なそれに、柄杓で水をかける。そのままたわしやスポンジで墓石を丁寧にふいていく。
 丁寧に整備された真新しい墓地だからだろう。墓の周囲に雑草はなく、雑草抜きをする必要はなかった。けれど身寄りがない友人の墓を参るものはいなかったのだろう。ここに据えられて2年経ったそれには、そこかしこに苔やらがすでに生えていた。
「いやぁ、もう少し早く来れればよかったんだが……」
 戦争やら猟兵としての仕事やら。友人が亡くなってからも忙しく、ここに来る機会を見つける事ができなかったのだ。 
 いや、それだけではない。やはり、同じ人狼病を患い、それをどうにかしようと誓った仲間が早逝したという事実に向き合うのが辛かっただけかもしれなかった。
 そういう意味では、今回UDCアースにお盆という風習を知れてよかったとつくづくエルネストは思う。
 
―――は、は、は。君はやっぱり、そういう所、ズボラというか隙があるよねぇ。絶対私が死んだら、墓参りとかしないだろ?―――
 ニヤニヤと笑う友人の姿と言葉が、簡単に想像できた。
 そう、そんな風に話した事もあった。

―――周囲の喧騒が煩い。
 そこは、とある居酒屋だった。日本のとある地方都市の駅前にある、地元の居酒屋。個人店という訳ではなく、地方土着の数店舗しか経営してないタイプのそれ。
 それなりに広い居酒屋の店内は、地元民と評判を聞きつけた旅行者でごった返していた。そんな店内で、彼と彼女は少し毛色の違う旅行者の客としてテーブル席で酒を飲み交わしていた。
「いやぁ。参った参った!今回も空振りだったねぇ!」
 カラカラと笑い、エルネストの友人は、人狼の青年に笑いかけた。
 カラッとした雰囲気の線の細い女性。黒い髪が良く似合う、笑い上戸の女である。
「まぁ。仕方なかったかな‥‥‥」
 そう言いながら、どこか不機嫌そうに青年はやってきたレモンハイに口をつけた。
「あっ!こら!先飲むのは反則だぞぅ!っていか最初の一杯はビール!ビールと決まってるじゃないか!なんで君はいつもレモンハイとかなんだよぅ!ビール飲めビール!!それがこの世界の常識さ!」
「そういうの、なんだっけ?ハラスメントっていうのが今の常識だろ?騙されないぞ」
 そういってかつてはUDCアースの常識が無かったエルネストへと一般常識を教える為に『エルネスト係』として色々と世話していた流れからつるんでる彼女は、エルネストのツッコミにヘヘヘヘ、と笑い返した。

「んっんっんっ‥‥‥っかー!!!ノリが悪いなぁ君はぁ!」
 大ジョッキ、そこになみなみと注がれたビールを一気飲みして勢いよくそれを叩きつけた友人が楽しそうに不満を口にした。
「そういう所でのノリの良さは持ち合わせてないよ全く」
 やれやれ。青年は首を振った。ダークセイヴァーという気の休まらない世界で弟と妹の面倒を見る為に気を張っていたのだ。
 だから酔うという自身の感覚を鈍らせる行為がどうにも好きになれなかった。
 反面、こうやって友人は好きに飲む。そしてベロンベロンに酔っぱらってエルネストに介抱されるのが常となっていた。
「そうだとしても!ヤケ酒位、やらないととやってられないものだろう?特にこうやって『失敗した』日には」
 そうやってビールを一気飲みするなり机に突っ伏した腕から覗く瞳は、快活な言葉とは裏腹にドロリと濁ったものだった。
 その言葉に、さしものエルネストも言葉を詰まらせる。
 そう、二人は失敗したのだ。

 エルネストと『彼女』。二人の共通点として、人狼病があった。UDCアースとダークセイヴァー。罹患した場所は違えど、それぞれ似たような境遇を持っている身である。
 方や母を亡くし、方や自身以外の家族を亡くしている。そして人狼病患者として、互いに寿命が短いであろう事も、分かっていた。
 だからこそ、人狼病の治療方法を見出そうと、互いに協力する事を約束していた。一緒に勉強したり、もしくは、今回のように、過去に治療法の手がかりを求めてUDクリーチャーの遺跡に一緒に潜ってみたり。
 エルネストと違い、『彼女』は猟兵ではなく、またあくまで人狼病という奇病から見出されてUDCの職員となっているだけであり、戦闘能力がある訳でもない。だからこういった遺跡に潜る場合はエルネストが前に出て安全を確保しながら進む形になる事が通例となっていた。
 そうして遺跡の奥に潜って、やはり今回も手掛かりなし。二人してとぼとぼと遺跡から帰って着替えて、居酒屋に来たといった所であった。

 進展がないという事実は、どうやら想像以上に友人の心を蝕んでいたらしい。
「大丈夫さ!」
 エルネストは友人の名を呼んだ。
「きっと見つかるよ。ほら。今回失敗しただけだ。まだまだ猶予はあるはずだ……!」
 やけに明るいエルネストの言葉に、友人は再び突っ伏して答えた。
「うぅ‥‥‥ありがとう友人。けれどね、やっぱり私は友人より『強い体』は持ってないから‥‥‥」
「‥‥‥ッ!」
 思わずエルネストは声を荒げようとして、どうにかここが一般的な居酒屋であることを思い出してとどまった。 
 けれど、友人の突っ伏した腕を握る力がどうしても強くなり、
「キャッ‥‥‥!」
 わずかに友人が声をあげた。それで熱は一気に冷めて、それでも止まれず。
「楽しめよ‥‥‥!酒は楽しく飲むモノだって常識は、君が教えたんだろうが‥‥‥!」
 耳元で小さく、けれど強く友人へと訴えかけた。
「そう、だよねぇ」
 その言葉にさしもの友人も眉根を下げた。
「‥‥‥店員さん!ハイボール1杯!」
 
 それからはいつも通りに、二人だけの楽しい飲み会となった。エルネストが他の世界の話をして、それを楽しそうに友人が聞く。逆に友人の方はUDCアースの方であった出来事や、それだけじゃない。本人の近況も面白おかしく話した。
「さっきは、ごめんね」
「いや、僕の方も熱くなり過ぎた」
 改めて謝罪し合ったのは、宴もたけなわといった雰囲気になったところだった。
「けれどやっぱり、このままだとやっぱりキミより僕の方が早く亡くなるのは避けられそうにないからなぁ」
「酒が不味くなるような話をするな、って言ったのは君じゃないかい?」
「それはそうだけど」
 そう言いながら、友人はエルネストから少し目を逸らして話を続ける。
「そうだけど、私達だって別に夢をずっと語り合えるほど大人じゃないだろ?」
「そうやって自分たちに言い訳が出来る程、僕達は大人じゃないつもりだったけど?」
「ハハハ。こりゃ一本取られた。まぁいいさ。ほら」
 友人がエルネストへと何か小さいモノを投げ渡した。
「これは?」
 ニヤァっと酒で赤らんだ顔のまま、友人は笑う。
「お守り」
 それは、小さなキーホルダーだった。何やら毛が束ねられてるそれ。黒く、艶やかなその毛は、今しがた目の前にいる友人の髪と、まったく同じ色をしている。

「いや、こんな重いもの貰っても困るけど」
 そういってエルネストが付き返そうとするその腕を、友人は不満そうに、けれど分かっていたとでも言うように押しとどめた。
「なんだよもー。いいじゃんか。ちょっと髪の毛をまとめただけの代物だよ?」
「それはな、お守りじゃなくて呪いの品っていうんだよ‥‥‥!」
「んなこたぁない」
 そう言いながら、突き出したエルネストの腕に、友人が頭を乗せた。そのまま流し目に青年の顔を見る。瞳と瞳が交錯した。
 ニカっと女が笑う。
「貰っとけ貰っとけ。願掛けみたいなもんさ。もし人狼病の治療法が見つかったら返してくれればいい」
「‥‥‥もし、見つからなかったら?」
「そりゃお前さんや、持っておいて欲しいねぇ」
「ずっとかい?」
「そりゃ勿論だとも?僕君。それで偶に私の墓の前でちゃんと持ってる報告するよーに」
「なんだよそれ」
「いやだって君さ」
 
「そうでもしないと、絶対私の墓参りしないだろ?」




「残念だったな。するよ」
 そう言いながら、エルネストは墓前にビールを置いた。墓石にかけてやっても良かったが、それは流石に。後で掃除する人たちが大変だろう。
 そういった慮りだった。
 あの時の飲み会が終わって、それからも友人との交流は続き、けれどやっぱり、先に亡くなったのは友人の方だった。享年24歳。丁度同い年の彼女は、やはりと言うべきが身寄りがなかった故にこうやってUDC傘下の共同墓地にて葬られている。
「ま、元気にやってるさ」
 しゃがんで、墓石と同じ目線に立ってエルネストはそう言った。
「あ?だったら何で毎年来ないんだって?煩いよ。仕方ないさ。忙しかったし。いや、むしろこうやって一番君と話せるかもしれないこういうお盆の時期に来た事を感謝する事だね」 
 いるかもわからない友人へと向かって、エルネストは楽し気に語り掛ける。
 返事はない。当然だ。
 けれども楽し気にひとしきり語った後、墓石に置いたビールの缶とは別にもう一つ。エルネストはビールの缶を墓前に掲げた。
 カシュっと軽い音がして、缶の蓋が開けられる。そしてそのまま、ビールを一気。
「~~~~っかーーーー!!!良く分からないな!やっぱりこれ苦くない?でも、何時か分かるようになるさ。なにせ僕は、生きてるからね」
 そう言って見せつけるように空になった缶をトンと墓前に置いて、ついでに花も添えた。

「そう、生きてるのさ、僕は。君とは違う」
 その差がもしも猟兵であるかそうでないかという所に起因するのならば。
「そして僕が生きている事にはきっと意味があるとするなら」
 立ち上がった。
「その意味を伝えにまた来るよ。お盆っていうのは、そういう日なんだろ?」
 そう言いながら、エルネストは墓石に背を向けて、去っていった。

 

 最期まで、スマホのストラップを見せびらかす事はなかった。
 
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年09月24日


挿絵イラスト