災厄は遠雷に似て
●遠雷は身に届かず、人々は恐怖を忘れた
それは始め、誰もが空耳かと思うような微かな響きだった。
人々は、もしかしたら平和に慣れきっていたのかもしれない。それを責めることなど、一体誰に出来よう。
やっと手に入った平和を謳歌する人々は、その響きを無視した。――たった数十分の間。
気づけば、あんなにも微かだった響きは、地鳴りのような唸りに変わっていた。
来る。鬼が来るぞ。
鐘楼に登った男が叫び、その瞬間に彼は伸びてきた何かに腕を掴まれ、鐘楼から引きずり落とされた。まるで吸い込まれていくように街の外に消えていき、ああ、地鳴りに呑み込まれて消えてしまう。
或いは――もしかしたら、その男は幸せだったのかも知れない。
彼はもう、自分の家族が踏み躙られ死ぬところも、己の愛したものが辱められ失意の中殺されるところも、見なくて済むのだから。
地鳴りは、鬼の群れは、今や間近に迫り、村を呑み込みつつあった。
程なく、蹂躙が始まった。
悲鳴は止まず、流れる血を止めるものはない。
●死ぬのは奴らだ
「胸糞が悪い」
集まった猟兵達に、唸るように言ったのは見慣れないグリモア猟兵であった。
「……悪いね。まだちょっと慣れてないんだ。手元を見ながらで、失礼」
彼は壥・灰色(ゴーストノート・f00067)――ナナシノ・ハイイロと名乗った。灰色のミディアムウルフカットをした、無表情な少年である。
手元で極彩色に光るルービックキューブのようなもの――グリモアであろう――を音もなく滑らかに、でたらめに見える動きで回しながら語る。
「場所は『サムライエンパイア』。平和に統治されてる一地方の村。そこでこれから、人が死ぬ。地面が真っ赤になって、三日もすれば一面腐臭がするぐらいに死ぬ」
彼はぶっきらぼうに、端的に、起きる結果だけを話した。「そこにイェーガーがいなかったらどうなるか」だけを。
「鬼の群れが来てるんだ。戦いから遠ざかってた村らしい。なまじ平和だったから、警戒心が薄れてた。鬼が地平線から押し寄せて、間近に近づくまで逃げなかった」
グリモアを弄る手を止め、彼は鋭い目を上げる。
「結果は鏖殺。一人も残らない。――食べ物のうまそうな、豊かな村だった。出来ることなら今すぐ助けに行きたいけど、“視”たのがおれだったんじゃどうしようもない」
悔しげに言いながら、下唇を噛み、彼はグリモアの操作を再開する。
「敵の数が多い。鬼が多数と、やつらを統率する武僧が一人。予知の範囲じゃ数え切れないくらいの鬼がいた。一匹一匹倒すのは骨が折れそうだ。まずは鬼の数を削って、そのあとリーダーを叩く展開になるはず」
グリモアを操作する手を緩めながら、一拍おいて、灰色は続けた。
「……集まってくれたきみたちなら、きっと苦戦するような相手じゃない。鬼の一体一体は弱い連中だ。鬼は金棒による打撃、ゴムみたいに伸びる身体、落ち武者の霊を召喚しての攻撃をしてくる。ただ、武僧は強力で、読経による自己強化、身体の部位を狛犬に変えての噛みつき、金剛力士像二体の召喚を得手とする。……一人じゃ荷が勝つ相手だけど、」
手を一ひねり。
グリモアの六面が、全て同色で噛み合う。
「――きみ『たち』が殺せないオブリビオンなんて、いやしない」
白色に輝きだしたグリモアを片手に、灰色はジャケットの裾を払った。
「送るよ。転送後は、すぐに戦闘だと思ってくれ。祈るばかりしか出来ないけれど――どうか、あの村を救ってくれ。頼むよ」
六面揃ったグリモアから光が発され、空間を切り取る。現地へ至る門が開く。
「無事にケリがついたなら、飯でも食べてきたらいい。……ちょうど、冬の備蓄食が完成した頃だ。それを記念して各所で酒や食事が振る舞われてる。干した塩鱈を新鮮な野菜と煮た鍋とか、旨そうだったよ」
言葉足らずに現地の名産を語りつつ、少年は猟兵達を送り出した。
煙
お初にお目にかかります。
煙(けむり)と申します。
第六猟兵の世界にて物語を紡げること、誠にうれしく思います。
皆様と一緒にたくさんの冒険をしていきたく思いますので、これからどうぞ、よろしくお願いいたします!
あまり気の効いたことも言えないのですが、早速1発目のお仕事に参りましょう。
熱いプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『棍棒鬼』
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POW : 鬼の金棒
単純で重い【金棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 怨念疾駆
自身の肉体を【怨念の塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : 死武者の助太刀
【落ち武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:桜木バンビ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
遠くばかり見ていた男は、最初、鐘楼から引きずり下ろされたことを理解出来なかった。
彼の身体は重力に負けずに、強烈な力で引き寄せられる。
――ああ、あれは、だめだ。
自分の身体を掴んでいるのは、赤黒い異形の手。その先を視線で辿れば、奇妙に首を傾げてこちらを見仰ぐ赤鬼がいる。
数体程度が、もはや村の入口程まで迫っていたのだ。引き寄せる手の力はあらがいようがないほど強く、彼我の距離は加速度的に縮む。 死にたくない! 死にたくない、死にたくない、死にたくない!
死の実感が、身体を強張らせ喉を震えさせる。
「ああああああああっ!!! た、たすっ、助けてくれえええええええええっ!!」
「――任せておけ」
刹那!
一筋の光が、虚空を薙いで馳せ参じる!
ネグル・ギュネス
「悪いが、此処から先は通行止めだ。」
黒塗りのバイクに跨り、サムライブレイドを担いで立ち塞がってやる。
敵が多いならば、まずは【SPD】で引っ掻き回す!
敵の攻撃を回避し、此方にヘイトを集めながら、後進が戦いやすくする。
【騎乗】と【操縦】技能を生かし、一匹たりとも逃すものか!
そして敵が纏まった敵は、【なぎ払い】技能で纏めて轢き潰してやる!
行くぞ我が相棒、ファントム!
ユーベルコード、【幻影疾走・速型】を起動!
仲間に繋ぐ為に、まずは削れるだけ削って、足止めだ!
西行・胡桃
●心情
「絶対に、守る」
世の中に絶対はないかもしれないけど、誓う覚悟に強い言葉を使っても問題はないはず
●行動
即戦闘上等!村には近づけさせない
避難指示とかもしたいけど、私はやっぱりこっちの方が得意……
というか、それしかできないともいうけど
今は戦えないと嘆く壥さんの分も暴れてきましょう
金棒をしっかり受け止めて、斑の周囲も破壊されないようにしたい
受け止められば、そこは私の間合いだ
ハクは槍だけど、棍のように使っていく
「西行の技は妖魅と戦うための技、不足はない」
●その他
衣装は男装ですが、特に男子っぽく振る舞っているわけではないです
アドリブ、他人との絡み歓迎です
よろしくお願いします
大神・零児
妖剣解放を使用し、高速移動で敵の攻撃を回避しつつ、居合術の動作で、先ずは前方に衝撃波を放つ。高速移動の移動エネルギーと、衝撃波の終着点を敵のはるか後方に定めることによる威力増加をねらい、射線上の敵を巻き込む
鞘形の黒剣を左で逆手で剣を持つように持ち、二振り目の剣として、妖刀とは正反対の方向を向くようにふるい、高速移動で攻撃を回避しつつ、自分の隙を無くすように衝撃波を放ちながら戦う。
空を引き裂くエキゾースト・ノート! 幻影――「ファントム」の名を冠す宇宙バイクが跳ねる!
ネグル・ギュネス(ロスト・オブ・パストデイズ・f00099)が地面の起伏を使い、車体を跳ねさせて横合いから襲いかかったのだ。
手にした刀を一閃、引き寄せられる男を縛る鬼の腕を断つ。
狙い通り断たれた腕は塵の如く消えた。落下軌道に入る男を、バイクの後ろから飛び降りた西行・胡桃(残像行使・f01389)が受け止め、ひらりと地面へ舞い降りる。一拍遅れてネグルが土を抉りながらの着地を決め、鬼らと相対した。
「大丈夫?」
「あ、ああ、あんた達は……?」
「猟兵だ」
大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)が、胡桃らの後ろから進み出る。
「後は任せときな」
「安心して。……絶対に、守る」
「わ、分かった! すまねえ、恩に着るよ……!」
胡桃は気丈に笑うと、男を下ろし、避難するように促す。
彼女が前を向き直れば、ネグルが刀の峰を肩に負うところだった。
「悪いが、ここから先は通行止めだ」
腕を斬られた鬼が、ぎぎい、と不快そうに鳴いて、首を逆に傾ぐ。
鳴き声に呼ばれたように、二体、三体と付近にいた鬼――先遣隊か――が集まってくる。ぎし、と乱杭歯を剥き出しにし、鬼らは殆ど同時に棍棒を振り上げた。ネグルらを排除すべき対象として認めたのだろう。応じて、零児が刀の鯉口を切り、胡桃が龍槍「ハク」を構えた。
ネグルが口を開く。
「私は切り込む。君達は」
「付き合うぜ」
「なら、私はここで水際を守るわ」
役割分担を一瞬で決めた三人は、頷き一つ、即座に行動を開始した。
「アクセス! ユーベルコード起動……往くぞ、ファントム!」
ネグルが吼えると、彼の宇宙バイクがそれに合わせて、速度を最重視した形状に変形する。
「全員叩き斬ってやる。行くぞ」
零児もまた、自身の体力を削りつつ妖刀を解き放ち、その怨念を纏う。彼らの視線がちらと重なった瞬間、地面が弾けた。
右を行くはネグルが駆るファントムのロケットスタート! ホイルスピンからの急発進に、意表を突かれて固まる鬼の横を駆け抜ける! 同時に零児が地を縮めたかのような高速移動で、左を抜け、彼らは先陣を切って、間近に迫った大群目掛け駆けだしていく!
左右どちらに意識を向けていいか鬼達が惑った瞬間には、胡桃が行動を開始していた。
「よそ見は感心しないわね」
龍槍が翻り、先頭の鬼を打ち据えた。その動きは槍術と言うよりは棍術、刃に依存しない、打撃主体の振るい方。
瞬く間に三体が打ち据えられ、ひっくり返る。一呼吸置く間もなく次が来る。わらわらと集まる鬼達、振り下ろされる棍棒。しかして胡桃は臆すことなく、龍槍で棍棒を受け止めた。鬼の膂力のあまり、地面に胡桃の踵が沈む。
「西行の技は妖魅と戦うための技、不足はない」
――彼女の瞳の光は消えない。
棍棒を滑らかにいなすように槍を滑らせ、相手の重心バランスを崩す。そして、
「はあッ!!」
寸勁! ほぼ密着状態から繰り出された右の拳が、重い音を立てて鬼の土手っ腹を打ち抜く! ユーベルコード、『灰燼拳』である!
そのインパクトたるや絶大、鬼はまるでボールのように吹き飛び、数体を巻き込んで、地面に落ち――もう、動くことはなかった。「かかってきなさい。西行流格闘術の奥能は、こんなものじゃないわよ」
村を守る強い思いを胸に、胡桃は槍を構え直した。
「――フッ……!」
毎秒の如く削れていく体力を押して、零児は加速する。
ネグルのバイクにも劣らぬ速度だ。彼には思惑があった。
高速移動のスピードを乗せた衝撃波を放ち、敵陣を断とうというものだ。群れから離れた鬼を、ついでとばかり鎧袖一触、刀で切り、鞘で打ち据えながら更に加速する。身体が軋むが、それに構わず彼は踏み込んだ。
最高速になるまで僅か数秒。眼前に迫った群れ目掛け、
「喰らえ!」
抜刀、一閃!
轟ッ、と空を引き裂く衝撃波が鬼らを薙ぎ倒していく! 高速移動の勢いを乗せて放たれた衝撃波は敵を次々に引き裂き、血の道を作り上げていく。
そこに、スピードを落とさないままにネグルが切り込んだ。
「我らが疾走、止められるものかよ!」
すぐさま飛びかかってくる鬼達を、巧みな剣術であしらい、切り裂きながらネグルは駆ける。それはさながら鉄馬に跨がった騎兵の如き動きだ。――しかしやはり敵が多い。飛びかかり来る鬼が振り下ろした金棒を刀で受けた瞬間、重心が崩れる。
あわやクラッシュか――そう思われた瞬間のことだ。ネグルはアクセルを握ったまま身体を倒した。
横転すれすれの所を強烈にバンクし、荒れた地の岩に乗り上げた瞬間、アクセルを最大に開ける!
ファントムがバックファイアを上げ、宙に浮いた。ネグルは自身の身体を中心に、バイクを振り回すようにして宙を飛ぶ。速力を落とさぬまま、周囲の鬼を薙ぎ払う! 敵を蹴散らしながら危なげなく着地、ドリフトしながらネグルは再び刀を構え直す。
鉄馬と彼を止められるものなど、どこにもいない!
「負けてられねえな!」
触発されたかのように零児も再加速。最大の一撃を放った後は、加速と同時に敵を斬り、鞘で打ちつつ舞うように戦う。鬼が飛びかかり、金棒が振りおろした時には既にそこには彼の姿はない。方向転換と、隙を消すための衝撃波を併用し、コンパクトな戦い方で敵を攪乱する。
骸と血風がサムライエンパイアに吹き荒れる。
今、まさに――戦端は開かれた!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
石動・劒
こんなに早く灰色のに一飯を教えて貰った恩を返す時が来るとは。お前が戦えねえっていうなら俺が代わりにやってやる。なぁに、今度俺が“視た”時は灰色のに頼むとするさ。
雑魚が多いなら手数重視だ。着いて戦闘に入ったら、華剣終体で鬼どもへ斬り掛かるぜ。
普段ならここで名乗り上げの一つでもするべきなんだろうが。悪ぃな、鬼畜生に名乗る名前なんてねえや。
残像を活用して回避努力しつつ、機動力と手数で雑魚どもを相手取る。余裕があって、誰かが苦戦してそうなら弓遠当臨で援護射撃しとこうか。犠牲はオブリビオンたちだけで十分だろ。
いやしかし、こんだけ肉を斬ってると肉が食いたくなる。またハンバーガーでも食いに行くか。
「こんなに早く灰色のに一飯を教えて貰った恩を返す時が来るとは」
呵々、と笑いながら戦場を駆けるは、石動・劒(剣華常套・f06408)。
無念げだった、この仕事の依頼主であるグリモア猟兵のことを考えての述懐を一つ。
「――応、そうさな」
まるで馴染みの散歩道を走るように足取り軽く駆ける彼は、笑みを深めて独り言つ。
「お前が戦えねえっていうなら」
鍔鳴り、刃鳴り。
刀を抜き放ちながら、少年は鋭い目で前を見た。
前方、目測で七間の距離に、鬼が四。
「俺が代わりにやってやる」
劒は速力を最重視し、急激に速度を上げて鬼へ迫った。
「普段ならここで名乗り上げの一つでもするべきなんだろうが。悪ぃな、鬼畜生に名乗る名前なんて持ち合わせてねぇもんでよ!」
鬼が声に反応した様に顔を上げたときには、最早劒は鬼の眼前にいた。そのまま鬼の横を駆け抜けるようにすり抜ける。
――無論、ただすり抜けたわけであるはずがない。刹那の後、鬼は前進から赤黒い、血と呼ぶにも悍ましい汚液を撒き散らして絶命した。
「華剣終体。見切れるか」
ひゅうっ、と風が鳴るかのような呼気と同時に、今一度、劒は弾けた。まさにそう表現する他のない、爆発的な踏み込みである。
斬、斬、斬斬斬斬斬ッ! 続けざま、二体を瞬く間に切り伏せ呼吸を継いだ瞬間、横手から振り下ろされる鬼の金棒の一撃。
しかし完全に虚を突いたかに思える一撃は、彼の身体をすり抜けた。
残像だったと、鬼が知覚できたかどうか。金棒が地面を打つのとほぼ同時に、鬼の首から刀身が突き出る。言うまでもない。背後に回った劒の刃である。
「……っと!」
鬼の身体を蹴り放すようにして刀を抜き、劒は素早く飛び退いた。彼のいた場所にどどど、と音を立てて矢が突き立つ。
「またぞろ大勢来たことで……」
遠くに、落ち武者を引き連れた鬼らがいるのを認めると、鋼は短弓――弓遠当臨を構えた。
「あれもか――いやしかし、肉が食いたくなるな、これだけ斬るとなると」
帰りにまたハンバーガーでも食いに行くか、と彼は気負わず笑うのだった。
成功
🔵🔵🔴
雷陣・通
カイさんがどうしようもないと言った
そして父ちゃんが言っていた
「誰かがどうしようもない時に振るうのが空手だ」と
だから今がその時なんだ!
【SPD】で行動
フットワークを生かして残像を作り、怨念の塊を避け、さらなる攻撃を【スカイステッパー】で連続ジャンプ!
一気に走り抜けて「スライディング」で相手の股下を潜り抜ければ
「遅いぜ!」
振り向きざまの中段正拳突きからのかち上げる掌底の二回攻撃
「正中線二段打ち(ライトニング・ダブル・ストライク)!」
そして、次の鬼に向かって構える
「来いよ、俺が……俺たちが……」
「イエーガーが相手だ!!」
※アドリブOKです。
草間・半蔵
人は殺させない。
大丈夫、オレはひとりじゃない。
吸って吐いて剣を構える。
オレの剣は大きい。
なら刀や弓の敵じゃなく、同じような大きいのを振り回す敵をやろう。なるべく戦える敵の数を減らそう。金棒を持ってる敵に狙いを定める。
横振りの攻撃に注意しつつ。狙うのは相手が叩きつける瞬間。敵の顔面に向かってブレイズフレイムを放つ。当たればうれしい。けど、当たらなくても構わない。一瞬動きが止まればいいだけだから。瞬間相手の懐に飛び込んで剣を下からはねあげ敵の手首を狙う。
手首が飛べば上々。次の敵に走って数を減らす。
飛ばないなら振り上げたその腕をそのまま下ろすまで…!返す刃で鬼の胴体を斬りつける。
真っ先に敵に突っ込み、攪乱した先遣隊――ネグルと零児の行動が功を奏してか、地を埋め尽くす程大量の鬼達は浮き足立ち、数体ごとの小班となって動き出す。
指揮官率いる一軍は統率がとれているが、多勢過ぎたことが禍して末端に指揮が行き届いていないのだ。
猟兵らはすぐにその状況を理解し、各々が独自に遊撃を開始する。雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)と草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)も同様であった。
「カイさんがどうしようもないと言った。そして父ちゃんが言っていた。『誰かがどうしようもない時に振るうのが空手だ』と。
だから今がその時なんだ!」
この信心も甲斐無く、理不尽に命が奪われる危険をはらんだ末法の世に、通の言葉は一際明るく、清涼に響く。
「ああ、人は殺させない」
半蔵もまた、同意するように首肯した。ポニーテールがひょこりと揺れる。
(……大丈夫、オレはひとりじゃない)
並んで駆ける通は勿論、戦場の各所から猟兵が戦う剣戟、爆発音、裂帛の気合が聞こえてくる。それに勇気づけられながら半蔵は剣を握り直す。
「前にいるぜ!」
通が獲物を見つけた、とばかりに鬼の一団が前にいると警告。半蔵もまた、口元を引き結び、駆ける足を速める。
「俺が引っ掻き回す! そのでっかい剣でやっちまえ!」
言うが早いか、通はスプリント。思い切り駆ける彼の姿が目の錯覚か、――否、確かに揺らぐ。
ぎいっ、と耳障りな声と共に鬼が放った怨念疾駆を通はステップ一つで回避。立て続けに、左右を埋め尽くすように放たれた怨念をも跳躍で回避。地を蹴ったことを好機と視たか、空中に浮いた通に向けてなおも、怨念化した腕が放たれる。
だが!
「遅いぜ!」
空中を『スカイステッパー』により蹴りつけ、更に回避!
攻撃が通を捉えることはない。空中を「駆け下りる」ように、重力を味方に付けて加速しながら、通は五体ほどの群れに一気に突っ込んだ。大柄な鬼が棍棒を振り上げるその動きは、彼にとっては鈍重すぎる!
「鬼さんこちら! あ、本当に向かなくてもいいけど……よっ!」
滑り込むように着地、そのままスライディングして鬼の股下をくぐり抜け、重心移動して最後のスカイステッパー。スライディングする足先の空気を蹴り、跳ね返るように鬼の背後から襲いかかる。
電瞬の早業である。鬼が振り向いたときにはもう遅い。中段の正拳、続けて跳ね上げるような掌底がほぼ同時、彼の字たる雷のように叩き込まれた。これぞ、「正中線二段打ち(ライトニング・ダブル・ストライク)!」
バイタルが集中する部位を攻撃された後に頸骨を破壊され、鬼が仰け反って倒れる。鬼達が浮き足立ったその瞬間を、半蔵は逃さない。
走るその勢いを伸せた一撃が、まず一体の鬼を胴薙ぎ一閃。血に似た汚泥を撒き散らしながら倒れる鬼を後目に、次の対象を探そうと一瞬目を走らせる。
「……くっ!」
「うわったた、ちょっタンマ!」
鬼も、ただ蒙昧なだけの雑魚ではない。二体がやられたとみるや、即座に反撃に転じてくる。
金棒を振り上げた鬼に対し、いなそうと通が態勢を立て直す。しかし、その前に半蔵が動いた。
「当たれ……!」
剣を撫でるように自身の左手を振り、溢れ出る地獄の業炎を振り飛ばす。『ブレイズフレイム』! その熱と勢いに鬼が僅かにたじろいだ瞬間。欲しかったのはその隙だ。半蔵は即座に駆け抜け、金棒を持つ鬼の腕を立て続けに刎ね飛ばす。
「ひとつ、ふたつ、」
腕を無くし、二体の鬼がもんどり打って倒れ伏す。
(……大丈夫、やれる! 注意するのは――横振り!)
ぶおん、と音を立ててスイングされる最後の一体の横薙ぎの一撃を、身を低めながら大刀で受け流す。火花を散らして空を切る金棒、身を翻す半蔵。その瞬間に勝敗は決していた。両手で刀を握りしめ、そのまま一転、
「食らえ!」
――刀身を地獄の炎が這い上がり、大刀は今紅蓮となる!
振り抜いた刃は過たず鬼の上体と下半身を泣き別れにし、劫火で蝕み灼き尽くした。
「っへ、すっげえじゃん!」
「……あんたもな」
軽く言葉を交わし、笑い合うと、彼らは次の一団が駆け寄ってくるのを認め再び身構える。
「まだやれるか?」
「当たり前だ」
通が踵を鳴らす。応じて半蔵が刀を振り、炎の残滓を振り払う。
若き猟兵らは、拳と刀を鬼達へ振り向けた。
「来いよ、俺たちが……」
「「イエーガーが相手だ!!」」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
多々羅・赤銅
わかるよ。
自分で視たら、助けに行けない。このシステムほんとクソッタレ。
まかせてよ。
私鬼なんだ。
_
さあーーー有象無象の鬼どもが わらわら群れて蛆の群れかぁ?
蛆なら此処にはお呼びじゃねえ
此処には一つも死体は無ぇ
鬼さん羅刹さん赤銅様を
味方につけていなかった事
地獄の針山で後悔しな
朗々語りて気を引くさ、【殺気】を無視できる腑抜け揃いじゃねえだろなぁ?その間に【羅刹旋風】で準備運動しとこーな。
よーくよく振り回して気を溜めたなら。あとは簡単、単純な力比べさ。片っ端から死に絶えな。
【生命力吸収、敵を盾にする、見切り、怪力、二回攻撃】で、タフに踏ん張ってやるともさ。赤銅様の大立ち回り、ご笑覧あれ。
そうとも、鬼達にとっては、大したことのない、いくさとも呼べぬいくさだったはずなのだ。
どこにでもある豊かなむらをを襲い、男も女も皆殺し、子を踏み潰してギシギシ笑う。そうして終わりだったはずなのに。
なのに気がつけば戦線は拮抗し、未だ人の生き血も啜れていない。些か、これでは、話が違う。
そんな空気が漂いだした折だ。数体の鬼が、猟兵達の猛攻を逃れ、村へとりつこうと駆けて行く先。
鬼の行く手に、立つ鬼がある。
「さあ――有象無象の鬼どもが わらわら群れて蛆の群れかぁ?」
朗々と歌い上げるように言いながら、多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)が闊歩する。
ゆうらりゆうらり、手に提げた刀を揺らし、まるでバトンのように回しながら。
――蛆なら此処にはお呼びじゃねえ
――此処には一つも死体は無ぇ
鬼達は顔を見合わせるが、すぐにぎしりと軋むような笑いを上げた。
赤銅は傾いた見目をしているが、しかし体躯はすらりとして、見目麗しいと言って相違ない容貌である。鬼達に声があったなら、「女だ、女だ」とでも騒ぎ立てたろう。
彼らは己が欲望を満たすため、金棒を持ち上げる。そうする最中も、赤銅の語りは止まない。
――さあさ鬼さん羅刹さん 赤銅様を味方につけていなかった事
ごうっ!
周囲に放たれる殺気!
びりびりと、立ち枯れた梢が震えるような殺気に、鬼達が踏鞴を踏んだその刹那――
「地獄の針山でぇ、後悔しな!!!」
赤銅は手首を返し、ゆるゆると振り回していた刀を加速。ユーベルコード、『羅刹旋風』!
歌いかけながらの意表を突く登場、そして殺気による威圧によってその効果時間を稼いだ形である。ぐぐ、と身を撓め、赤銅は躍りかかるように敵の群れへ飛び込んだ。
手にした業物は容易く敵の首を刎ねる。振り下ろされた金棒を、その死体を引っかけるように持ち上げて受ける。そのまま死体を振り回して薙ぎ払い、浮き足だった次の敵に襲いかかる。彼女の動きはよどみなく、恐ろしく乱雑なはずなのに精密であった。
――鬼には鬼。
同じ赤でも、殺すは赤銅。
大成功
🔵🔵🔵
ユア・アラマート
なんとも気分の悪い話だ
忘れていてもいいはずのものを思い出させる代償は高いということを、しっかり教えてやらないとね
行こうかイト。カイの代わりに存分に暴れてやろう
SPD判定
敵の攻撃が当たらないよう、かつ集団に囲まれないよう
ダッシュ技能も利用した速度で常に動き回って的を絞らせずに撹乱
魔術回路を起動し、風を纏い攻撃速度を高めながら絲の範囲攻撃でできた穴に飛び込み、暗殺技能で死角に回り込む等して撃ち漏らしを各個撃破
彼女が開いた道を更に広げる形で連携を取って、敵の数を確実に減らしていく
翻るは刹那の銀風
見えた時にはもう遅い
さあ、イト。どんどんやろう
隣りにいるのがお前なら、負ける気なんてこれっぽっちもしないよ
赫・絲
かいちゃんが行けないならいとが行くよ、任せて。
行こうユアさん、代償はあいつらの命だ。
WIZ判定
敵の攻撃は見切り避けつつ、囲まれない程度に集団の近くへ疾駆
斬り飛ばすよ、ユアさん!
攻撃対象範囲に彼女を巻き込まないよう声をかけ、
炎を纏わせた仕込んだ鋼糸の全てを周囲の鬼に向け射出
瞬時に視認できる数を超えるその糸は、鬼に絡みつき縛り付き、その肌を焦がす
終わりと思った? 残念、まだだよ。
手応えを得た糸を引き絞ると、その場で素早く旋回
絡み縛り付けた全ての命を黄泉路へ叩き込むべく斬り刻む
私の役目は風穴を開けること
細かな撃ち漏らしは気にしない、背後には彼女がいてくれる。
任せて、ユアさんと一緒なら百人力だよ!
殺しても殺しても鬼は尽きない。村を囲むように防衛していた劒、赤銅、通、半蔵――そして胡桃が奮戦する、防衛側。
その戦線を軽やかに駆ける二人の女あり。ユア・アラマート(セルフケージ・f00261)と、赫・絲(赤い糸・f00433)である。
「しかしなんとも気分の悪い話だ。忘れていてもいいはずのものを思い出させる代償は高いということを、しっかり教えてやらないとね」
過去を刺激されたのか、ユアは不快げに鼻を鳴らす。灰色の話と反応から、予知はさぞ酸鼻極まる状況だったのだろうと想像できた。
「行こうかイト。カイの代わりに存分に暴れてやろう」
「うん、任せて。行こうユアさん。かいちゃんが行けないなら私たちがやるだけだ。――代償はあいつらの、命」
絲は黙っていれば引く手数多間違いなしの美貌を、露骨な嫌悪に歪めて吐き捨てた。彼女もまた、起こるはずだったはずの惨劇をただ憎んでいる。
村はずれの木立を抜けた所に、敵はいた。ユアは辺りを一望し、――十から先は数えるのをやめた。
「やれやれ。随分な歓待で」
「イヤ? まとまっててくれて楽じゃん」
「まあそれは確かに」
軽口のやりとりを重ねる間に、二人を視認した鬼達が気勢を上げて突っ込んでくる。
「始めようか」
「オッケー」
二人の女は、己が武器を構えながら鬼の群を迎え撃った。
「斬り飛ばすよ! ユアさん!」
「いつでも、お好きに」
仕掛けたのは絲だ。鋼糸に炎を纏わせ、一斉に解き放つ。ユアは姿勢を低くし、その範囲から逃れるように斜めに駆けた。
前方の一群に絡みつく炎の鋼糸は、まるで彼らを逃さぬ檻のようだ。藻掻けば藻掻くほど鋼糸は絡みつき、鬼達の肌を焦がす。
鋼糸が軋み、充分に絡みついたことを感じ取った刹那、絲は凄絶に笑った。
「終わりと思った? 残念、まだだよ」
手応えを得た糸を引き絞り、身体を巻くようにその場で素早く旋回。食い込むだけで済んでいた鋼糸は、絲の操糸術により白刃と化す。斯くして赫・絲の手繰る糸は、絡み縛り付けた全ての命を、等しく黄泉路へ叩き込んだ。
バラバラになった死体がボトボトと地面に崩れ落ち、肉の焦げる異臭が漂う。だがそれでも一網打尽というわけには行かない。少ないながらも逃れた鬼、そもそも絡め取れなかった鬼もいる。鬼達は背を向けたままの絲に向け駆けてくるが、その隙間を縫うように一陣の風が駆け抜けた。
ユアである。
女は艶然と笑う。風の魔術を纏った彼女を捉えられる鬼はそこにはいない。
ユアの攻撃は、絲の攻撃に比べシンプルであった。彼女の獲物はダガーが一つ。シンプルな、それによる刺突、轢断が主な攻撃方法となる。
しかしそれも、彼女の熟達した技能に掛かれば、浮き足だった鬼など問題にもならぬ凶器となる。
ユアは、銀糸の髪を靡かせながら、或いはダガーそのものになったかのような鋭角的な軌道で駆け抜け、彼女を目で追おうとした鬼達の心臓を、首を、的確に破壊していく。糸の切れたマリオネットのように、その場に崩れ落ちる鬼達。
「おやすみなさい、あなた」
手向けるようにかそけく呟き、ひらりと彼女は絲の隣に舞い降りた。
「さあ、イト。どんどんやろう。隣りにいるのがお前なら、負ける気なんてこれっぽっちもしないよ」
「任せて、ユアさんと一緒なら百人力だよ!」
この一陣を葬っても、未だ視界の隅に鬼達がちらつく。二人は、今一度、女豹の如く駆けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
碧・蛇ノ目
血の雨なんて確かに胸糞悪ぃなぁ
蛇ノ目らが傘さして、村に雨が掛かんねぇようにしてやるよ
蛇ノ目はエレメンタル・ファンタジアでやりあうさ
属性は雷、現象は嵐!この雷嵐で鬼共を追い払うぜ
これには全力魔法、属性攻撃を乗せといてやるか。おっと、蛇ノ目の攻撃は1回じゃ終わらねぇぜ?2回攻撃が残っているからな
もし鬼が散り散りになりそうなら、追跡で追い詰めながら地形の利用を駆使し、再度優位に立つ様に立回るさ
落ち武者共の攻撃は見切りで避けちまおう、第六感を信じて避けてみんのもいいかもな
1人で深追いや無茶はしねぇよ。返り討ちは怖いだろう?
皆で、仲良く、鬼退治だ
柊・明日真
望む所だ。こっちも力づくでぶっ潰してやるよ。
初っ端から全力で攻撃だ。多少の被弾は【激痛耐性】で無視。
なるべく多くの鬼を引きつけて【なぎ払い】で一気に数を削ってやる。
村を手当たり次第破壊されちゃあ敵わんからな。鬼の金棒は【ライオットシュート】で撃ち落としていくぞ。
玉・楓
「諦めるのはまだ早い、でしょう?」
女子供は下がりなさい。
男たちはご老人や負傷者に手をお貸し。避難の手伝いを。
守りやすいよう、皆を一ヵ所に集めなさい。
私もそちらの守護につきましょう。
ユーベルコード。
「相分かった。」
任せましたよ御前たち。
他の猟兵様らと共に侵略者を討ちなさい。
将らが出ている間、私は戦えませぬ。
が。薙刀持つくらいはできましょうや。
民らを不安にさせるわけにはいきませんもの。ね。
この時点で、猟兵達は三種の行動を取っている。
先ずはネグル、そして零児のように敵がもっとも集中している、いわば本陣に突っ込んだ者。
次に、胡桃を代表とした、村を守るべく、その周囲を遊撃する者。
最後に、村で最後の備えをする者だ。
遊撃隊の奮戦のおかげで、村に取り付く鬼の小班は殆ど存在しなかった。
しかし、いかに彼らとて、七人少々で村に寄せる全ての鬼を屠ることは出来はしない。
村の各所、柵を壊し、忍び込んでは寄せる鬼が存在するはずだ。それを予見したのは、玉・楓(琅琅・f01034)であった。
「猟兵殿、あっしらはどうすれば……」
村の若い男が慌てた様子で声をかけるのに、楓は落ち着き払って答える。
「女子供は下がりなさい。男たちはご老人や負傷者に手をお貸し。避難の手伝いを。守りやすいよう、皆を一ヵ所に集めなさい。私たちがそちらの守護につきましょう」
おうおう、と鷹揚に、横合いで応じる声。
「血の雨なんて確かに胸糞悪ぃなぁ。蛇ノ目らが傘さして、村に雨が掛かんねぇようにしてやるよ」
碧・蛇ノ目(蛇ノ目傘・f00403)である。秀麗な眉目を緩い笑みで包んで、緊張を解すように語りかける。
「そんなら、こっちは力づくでぶっ潰してやるよ。鬼がいくら来たって全員ぶっ倒す。村も壊させねえ」
だから安心しろ、といわんばかりに胸を張る大柄な男は、柊・明日真(刻印の剣・f01361)だ。この三人が、村の中央で村人らの最後の守りに当たっていた。
背に負うは、村人らが立て籠もる村で一番大きな屋敷。まさに最後の砦といったところである。
「――ん」
すん、と鼻を鳴らした蛇の目が、視線を上げた。
「ちょいと、降らぁね。下がってな」
伝令代わりに走っていた村の男達が足を止め、上を見仰ぐ。――そこには曇天を引き裂いて飛び来る矢の群れ。
硬直する男達を後目に、蛇ノ目は一歩進み出る。
「さあ、始めようかい。皆で、仲良く、鬼退治だ」
そのまま彼は手を薙ぐように振るった。同時に、空気がバチバチと音を立てて弾け、紫電が風と共に巻き起こる。『エレメンタル・ファンタジア』による雷嵐だ! 天から降り注ぐ矢襖を、天へ駆ける雷乱が爆ぜながら灼き尽くしていく。
蛇ノ目がもう一発分の余力を残したまま矢の出元に視線を向けると、散発的に、数体の鬼が、徒党を組むでもなく寄せてくるのが見える。
「落武者を呼んでやがるな、あいつら。直接行ってぶん殴るか?」
「いいえ、 柊様。ここは私が」
すう、と息を吸い、楓はユーベルコードを発動する。現れる、二体の式神――「槍騎之将」と「材官之将」。
「侵略者を討ちなさい。任せましたよ、御前たち」
「「相分かった」」
二体の式神は素早い動きで駆け、見える範囲にいる鬼を駆逐し出す。その戦闘能力は呼び出した本人である楓のものと些かの相違もなく、単純に頭数が二倍になったようなもの。拠点防衛には最適であった。
「ここはお任せを。柊様は、屋敷の反対を警戒なさってくださいまし」
「よしきた!」
豪快に笑い、明日真は地面を蹴って、回り込むのも億劫だとばかり屋根瓦の上に飛び乗ると、そのまま反対側へと走り出す。
「ああ……鬼が、鬼がこんなところにまで……」
へたり込む村の男に、楓は凛とした声で言う。
「諦めるのはまだ早い、でしょう? ここには私たちがおります」
二体の将を喚びだしたままでは楓は戦うことはままならない。しかし、それでも勇気づけるように長刀の柄を地に突き、凛と堂々と真正面を向く。民を不安がらせる訳にはいかぬという、彼女の矜持であった。
「そうとも、ここには蛇ノ目もいる。ご覧の通り、矢の雨降っても誰も濡れてねぇ」
彼が浮かべる柔和な笑みは、村の男達を勇気づける。
「さぁ、下がってな。まだもう少し荒れ模様だ」
再び後退を促す。後ろで戸の閉まる音を聞きながら、蛇ノ目は再び魔力を練る。
「広いとこまで集めてくれりゃ、一気に焼けるぜ」
「承知致しました」
視線の先は、なおも散発的に現れる鬼。二人らは己の情報を伝え合いつつ、構えを新たにする。
「うおおおっ!」
一方、こちらは反対側である。金棒を担いだ鬼を相手に、明日真はたった一人で奮戦していた。
村にまで取り付いてくる鬼は、体躯も小さいものが多く、遊撃隊の探査から逃れる小狡さも併せ持っているようだ。彼らは次々に落ち武者を召喚し、明日真に向けて矢を射かけてくる。
「効かねえよ!!」
しかし、幾本かの矢が刺さったところで、彼はそれを意にも介さない。激痛に対する高い耐性がそれを可能とするのだ。片手剣を抜き払い刻印魔術によって変形、手甲として纏う。
「うぉりゃああああッ!!」
顔と心臓だけを守りながら低空を飛ぶ。ユーベルコードの域に達する跳び蹴り、『ライオットシュート』だ。鬼の顔面に踵をねじ込むと、獣の如くその顔を蹴り飛ばして一転、着地。豪腕を振り回し、付近の数体を薙ぎ倒す。
「っと――やらせるかよ!」
直後には、金棒で柵などを壊しながら進もうとする鬼目掛けまたもライオットシュートで飛ぶ。高速の跳び蹴りを連打することで戦場をマシラの如く飛び回り奮戦する。
――傷つけさせない、誰も!
三人の猟兵は、己の技の粋を尽くして戦い続ける!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●最前線
――誰もが死力を賭して戦っていた。
ここからは、攪乱した隙を逃さず続いて進んだ者達の戦いを語ろう。
六波・サリカ
敵の目論見が実現すれば、実にむなくその悪い展開ですね。
ですが私たちが防ぎます!
さて、いきなり集団戦ですか。
先ずは照覧式――サリカの眼球になっている式神――を用いて
状況の整理しましょう。
敵の数や狙われている仲間、有利な地形などを瞬時に解析。
仲間と情報共有をして連携を図ります。
次いで攻撃に転じましょう。
範囲攻撃ならば得意です。任せてください。
「制圧式。起動≪ウェイク・アップ≫! 殺戮指令、急急如律令≪プログラムド・ジェノサイド エクセキュート≫!!」
機械めいた砲台型の式神を呼び出し、誘導爆弾の一斉範囲射撃を行います。
少しは数も減らせたでしょうか。
皐月・灯
好き勝手にはさせねーよ。
情けも容赦も一切なしだ。一匹残らずブチ砕く!
オレはヤツらに接近して、《猛ル一角》を叩き込むぞ。
間合いの内に飛び込むまでは回避に専念する。【見切り】が役に立つかもな。
集団相手だ。
ひとつの場所には留まらず、かといって孤立もしねーように…
しっかり足と頭使って動き回るぜ。
鬼どもに恨みはねー。
なんの因縁も、どころか面識すらねーがよ。
…その存在すべてを、オレの拳が、オレのアザレア・プロトコルが許さねぇッ!
……一面の腐臭なんてな……もうたくさんなんだよ。
羽久依・集葉
拙者結構速さには自信があるでござる、忍者でござるので!
というわけで【SPD】で鬼共を翻弄してやるでござる。
美味い兵糧を頂戴するため……じゃなかった、悪には情けも容赦もかけないでござるよ!
【錬成カミヤドリ】で拙者の本体であるクナイを大量に召喚!
力で薙ぐなら薙いでみよ!拙者は速さと技で対抗して見せよう!でござるよ!!
八方からのクナイの連撃、全て受け止められるかな!でござる!
まさに乱戦、まさに合戦。
周りを見れば鬼、鬼、鬼!
倒しても倒しても倒しても――尽きる事なき瀑布のように押し寄せる!
しかし、その場に疑念を抱く者はいない。
――本当に勝てるのか?
そんな疑念を抱く者は、一人としていない!
「敵の目論見が実現すれば、実にむなくその悪い展開ですね。ですが私たちが防ぎます!」
「同感だ。好き勝手にはさせねーよ。情けも容赦も一切なしだ。一匹残らずブチ砕く!」
「意気軒昂とはこのことでござるな! 拙者もお力添えするでござるよ!」
六波・サリカ(六道使い・f01259)を後衛、皐月・灯(灯牙煌々・f00069)と羽久依・集葉(トンチキシノビガール・f03950)を前衛に置いたスリーマンセルが、戦場を駆け抜けていく。
「照覧式、起動」
迫る鬼らを凝視しながら、サリカが呟いた。彼女はその眼の特性上、バックアップをこなすこともできる。
(地形走査――)
敵数は圧倒的に多く、狙われている者も特定しきれないと判断し、サリカは素早く狙いを地形のスキャンだけに絞る。解析が完了した結果を、即座に灯と集葉に連携する。
「この近辺は平地ですが、時折岩が張り出て荒れています。足を取られないよう」
「わかった」
「かたじけない!」
情報を得るなり、集葉は忍びに似つかわしくない明るい声で言う。
「拙者結構速さには自信があるでござる、忍者でござるので!」
一瞬横で灯が浮かべたマジでか、という顔に気づいてか気づかずにか、集葉はそのまま速度を上げ、先行する。疾きこと風の如く、まさに忍びというに相応しい速度であった。
「美味い兵糧を頂戴するため……じゃなかった、悪には情けも容赦もかけないでござるよ!」
前者では、とやや後ろでサリカが首を傾げるのに今度こそまったく気づかないまま、集葉は両の掌をぱあんと打ち合わせ術印を結ぶ!
忍法写し身、『錬成カミヤドリ』!
彼女を中心として、十五本の漆黒の短刀が生まれ出る。これこそが羽久依・集葉の本体にして、嘗て高名な忍びが扱ったというクナイである。集葉は組んだ術印の形を変えつつ、念力を通わせクナイを操作、一本一本の矛先を迫る敵の群れへ向けた。
「力で薙ぐなら薙いでみよ! 拙者は速さと技で対抗して見せよう! 疾風迅雷・自由自在、八面八方からのクナイの連撃、全て受け止められるかな! でござる!」
達者な口上を述べるなり彼女はクナイを斉射! 彼女の言葉通り、クナイは悉く鬼達に突き刺さり、蹴散らしていく。
突き刺さったクナイはそのまま鬼の肉体を貫通し、再び宙へ舞い上がって、燕が舞うが如く翻って再び鬼に迫る! その様はまるで黒死鳥が敵の群れに立て続けに襲いかかるかのようだ。
一気に攻勢に入った集葉を見るなり、サリカと灯もまたブレーキをかける。分断は得策ではない。
「続きます。皐月、攻撃範囲に入らないよう」
「分かってる、さっさとやれよ。オレの出番はそのあとだ」
では早速。
言うなり、サリカは舞うように一転、腕を一閃した。
≪ウェイク・アップ≫
「制圧式。起動!」
機械仕掛けの砲台型の式神が、彼女の周りにずらりと召喚される!
砲身は引っ切りなしに敵を探すようにキチキチと音を立てて動いており、サリカはそれを確認した後、指揮者のように腕を前に振り向ける!
≪プログラムド・ジェノサイド エクセキュート≫
「 殺 戮 指 令、 急 急 如 律 令!!」
それはまさに暴力的な範囲攻撃だった。
集葉と攻撃範囲が被らぬようプログラムされた誘導爆弾が多数吐き出され、敵勢力を猛撃する!
一発ごとに戦争映画でしか見ないような爆炎と土柱が上がり、まるで情景が、一瞬で戦国絵巻から現代映画に変わったような錯覚を覚えるほどだ。
その爆炎が収まるのを待たず、灯は駆けだした。
集団相手だ。決してひとつの場所には留まらず、かといって孤立もしないように立ち回る必要がある。常にサリカと集葉から離れすぎず、浮いた駒をこの「一角」で貫き倒す!
「鬼どもに恨みはねー。なんの因縁も、どころか面識すらねーがよ」
無辜の人々を殺す、そうすることで喜悦する、理不尽なる災害。鬼。何かを虐げるために生まれてきた者――
「……その存在すべてを、オレの拳が! オレのアザレア・プロトコルが許さねぇッ!!!」
術式を籠めた灯の拳に眩い光が宿る!
なおもくすぶる誘導弾が着弾した後の大地を、稲妻のように駆け抜けて!
応じるように召喚される落ち武者など意にも介さず、その矢が放たれる前に鬼の胴に拳を叩き込むッ!
打ち貫かれた鬼はまるで初めからそこにいなかったかのように吹き飛び、あとには何も残らない。――そして灯は止まらない!
その拳に点した「灯」が消えぬ限り!
「……一面の腐臭なんてな……もうたくさんなんだよ」
悲しげに独り言つ少年の目には、しかし理不尽を許さぬ炎が燃えていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リュシカ・シュテーイン
嫌ですねぇ、困りますねぇ
話の通じない相手では交渉も出来ませんしぃ、未来のお客様候補の方をあんな風にされてしまっては困りますよぉ
仕方ありませんねぇ、これも先行投資ということで頑張りましょうかぁ
少し出費ですがぁ、ビー玉サイズほどの鉄の塊を複数取り出してぇ、ルーンライター(ガラスペン)を用いて【高速詠唱】で爆破効果のあるルーンを書き込みましょうかぁ
その後は出来上がった爆破の法石をぉ、少し遠くから【先制攻撃】【援護射撃】【投擲】を用いてスリングで鬼の頭めがけて飛ばしていきましょうぅ
私、実は命中率には自信あるんですよぉ
私は後方援護なのでぇ、こちらに向けての攻撃は【見切り】で回避させていただきますよぉ
アレクシス・アルトマイア
干し塩鱈のお鍋を頂けると聞いて飛んできました。
わくわくしてしまいます。
お鍋を囲めないやんちゃな鬼さんはご退場願いましょう。
SPD重視に効率重視、
ユーベルコードの銃弾をご馳走して差し上げて、皆さんのサポートと参りましょう。
腹ごなしには丁度よい運動かと存じます。
自分一人は少し怖いですから、
皆さんと一緒に闘います。
まるで鬼のような形相ですよ。怖いですね?
援護射撃は得意技、二回攻撃で効率アップ!
味方を襲う鬼さんの手足を撃ち抜いてカバーしたり、
トドメを差す前の抵抗を封じたりしちゃいましょう。
善と銃弾ははやい方がよいのです。
それでは、よろしくお願いしますね?
立花・乖梨
カイ君がグリモア猟兵さんでした!おめでとうございます!…すみません。改めて、よろしくおねがいします。
とてもじゃありませんが、攻撃を受けては私ではひとたまりもありません。
かといって『私』では、戦う力もありません。
私、これでも行動力には自信あるのです。動き回って、死角に潜り込んで――ユーベルコード【咎力封じ】を使って、他の味方さんが戦いやすい状況を。
猿轡、ロープ、手錠――私の全てで、この身勝手な鬼達を抑え込んでみせます。
平和を乱す事なんて、無くていいの。
罪を犯す者を裁く道具係。
死んだ者の痛みと恨みの記憶係。
それが『私』なので。
――がんばりますっ。
前方で派手な爆炎が上がり、鬼達が色めき立つ陣中から僅か離れて、後方。
「干し塩鱈のお鍋を頂けると聞いたら、わくわくしちゃいますねえ。お鍋を囲めないやんちゃな鬼さんにはご退場願いましょう」
ふんふんと鼻歌を歌いながらアレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)は手の中の銃をクルクルとスピンさせ、弄んだ。掌で軽やかに受け止めて安全装置を外す。トリガーを引けば初弾は既に放てる状態。
「よろしくお願いしますね、リュシカさん」
名を呼ばれて思案げだった顔を上げるのはリュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)。えぇ、と生返事を一つ返すなり、彼女はぽそぽそと算盤勘定を続ける。
「嫌ですねぇ、困りますねぇ。話の通じない相手では交渉も出来ませんしぃ、未来のお客様候補の方をあんな風にされてしまっては困りますよぉ」
この世界に於いても宝石が売れるかどうか、はまあともかくとして、大事な大事な顧客候補をこんな騒乱で亡くすなんて、機会損失にも程がある。一つ嘆息すると、彼女は踏ん切りを付けたように懐からビー玉大の鉄塊を取りだした。
「――えぇ、はい、仕方ありませんねぇ。これも先行投資ということで頑張りましょうかぁ」
「? はい! 頑張りましょう!」
よく解らないながらに元気に頷くアレクシスであった。
「ではぁ、私は少々準備がありますのでぇ」
「はい! じゃあ先に始めちゃいますね!」
快活な口調で言うと、彼女は二丁の拳銃をピタリと水平に構える。リアサイトが世界を切り取り、フロントサイトが彼方の鬼を捉えた。
「鬼のような形相ですよ、怖いですね? ――知っていますか? 善と銃弾は早い方がよいのです」
――こう見えてこの少女、援護射撃と二丁拳銃の達人である。
BLAM!!!!!
ゼロコンマゼロ七秒に一度、アレクシスの二丁拳銃、フィア&スクリームが火を噴いた。まるで時すら縮めたような、四発ワンセットの連続射撃。彼女の視界に入った鬼から順に、膝を破壊されてその場にひざまずく。それは傍で作業をしていたリュシカさえも目を瞠るような圧倒的な弾幕であった。
ユーベルコード『従者の時間短縮術』である。タイムキーパーの名を持つ連続射撃が、鬼を片っ端から釣瓶打ちにしていく。
――そして、彼女のその弾幕の間を縫うように走る、影。
立花・乖梨(bye-stader・f05235)は、跳ねるように戦場を駆けながら、自身が持つ武器を再確認した。
猿轡、ロープ、手錠。それらは全て、ユーベルコード『咎人封じ』の布石である。拘束のための道具は、彼女の決意の表れでもある。
攻撃を受ければひとたまりも無く、もう一つの人格ではそもそも戦う力すら無い。彼女はその自己評価を下しながらも、決して戦うことを諦めようとはしなかった。
「これでも行動力には自信があるのです」
ふふ、と小さく笑って、誇るように、自らを鼓舞するように拘束具を構える。
アレクシスがいかに達人であるとて、そしてその狙撃が如何に精密であるとて、ここは戦場。敵も動く。そしてアレクシスの視界もまた有限である。
乖梨はその空隙を埋めることを自分の役割として認識し、前線を駆けるのだ。
懸けるは己の全て。全霊を以て、この鬼達を拘束する!
「平和を乱す事なんて、無くていいの。罪を犯す者を裁く道具係。死んだ者の痛みと恨みの記憶係――それが」
駆け来た鬼が棍棒を振り下ろせばそれを掻い潜り、脚に縄をかけ転ばせる。伸び来た怨念疾駆を掻い潜り、手枷で封じて突き返す。 大柄な鬼が棍棒を振り上げようとすれば、その膝を蹴リ登り、猿轡を噛ませて引き倒す!
「それが『私』なので」
負けない、強い意志の光がそこにある。
後方で、アレクシスの銃のマズル・フラッシュが瞬く。
それがなんだか自分を応援している気がして、乖梨は笑った。
「――がんばりますっ!」
「はぁ、凄まじいですねぇ」
乖梨とアレクシスが己の技倆の全てを用いて敵を封殺していく間に、リュシカはガラスペンを空中に――否、正確には空中に浮かんだ鉄塊に描き入れていた。筆致は淀みなく、一分の隙もなく。無数の鉄塊に、等しくケン――炎の勝利を意味するルーンを書き連ねる。そうして生まれるのは『爆破の法石』。彼女の技倆によって成立するユーベルコードである。
「在庫処分には少し出費ですがぁ――私も張り切ると致しましょうかぁ」
空中から法石をつまみ取るなりジャイアントスリングにセット。引く。照準。発射。命中。爆裂、鬼が霧散する。
問題はその速度である。まるで舞踏するような滑らかさで、照準と射撃を繰り返す。
宙に無数の火線が伸びる! 法石を宙からピックアップしては射撃し、アレクシスと乖梨が封じた敵の頭蓋を、心臓を、易々と貫く。時には一発で数体をも!
密集している為、動きが止まっているためとはいえ、確実なる一発一殺以上。エルフにしてアーチャーである彼女の技倆の冴えは恐るべきものであった。
「……はぁ~」
だが当人の顔は浮かない。休まず射撃しながら、飛んでいく法石を惜しむように見つめている。
「代わりの石なんてこの辺り、落ちていますかねぇ」
「さぁ?」
アレクシスはあっけらかんと――或いは非情に言うのだった。笑顔で。
「石のことはわかりませんけど、このあとお鍋が食べられることは確実ですよ!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
玄崎・供露
任務了解。鏖殺しかえしてやらァな。
取り敢えず、だ。相当な数と聞いたからには、これ以上数を増やさせないのを目標とする。奴らが呼び出す霊体の対処を「エレクトロレギオン」こいつらにさせる。4体一組で押し潰せ。
その間に自分に降り掛かる火の粉は手前で何とかする。インドア派かと思ったか? 刻印(ドライバー)三つも刻んでんのは伊達じゃねェんだこちとら、殴り合いで鬼なんぞに負けるかよ――ッ!
※アドリブ、相談にない連携など大歓迎です。ご自由にお願いします。
ピピティ・ピピニエッタ
鬼ぴ、こっわ〜〜👹
マジヤバじゃんコレ〜〜!💦
鏖殺とか久々に聞くんだけど〜😱
報酬はお野菜🐟鍋か〜美味しそ!じゃ、それでオッケー👌だから助けてあげるね!😊
【ペイルブルー・サラマンダー】
そんじゃ、トカゲちゃんに髪少し食べさせて……全力詠唱で……
「幾千の蒼炎 契約に集いて型を成せ 獄を喰らい 我に仇なす全てを灰燼に帰せ」
「焼き尽くして、トカゲちゃん」
いけいけ〜、いいぞ〜🔥
ファイアブレスだ!ファイアテールだ!ファイア……とにかくガンバレ〜〜💖
解説!
サラマンダーのトカゲちゃんは、地獄の炎(アタシの髪)を食べると強くなるよ💪カッコいい!✨
※好き勝手動かしてオッケー👌
メドラ・メメポルド
おにさんたくさん?
そう、ならおなかいっぱいになれるかしら。
メドもお手伝いにいくわ。
おにさんを見つけたら触手を伸ばすわ。
食べるためにはね、逃がさないのが一番なの。
だから、メドの毒をたくさんあげるわね。
【使用:あなたのために注ぐ毒】
メドの毒はすごいのよ。
いたいことも、苦しいことも、忘れるのよ。
戦うなんて、しなくていいの。
そう、そうよ。
それがあなたたちが奪おうとしたものよ。
奪われたらどうなるかも、おしえてあげるね。
最後の毒は、全部ぜぇんぶ、裏返してくれるのよ。
だから、ね。
メドのごはんになってちょうだい。
……だいじょうぶよ、仲間のみんなも村のひとも、食べないわ。
「鬼ぴ、こっわ~👹 マジヤバじゃんコレ~~!!💦」
血風吹き荒れる戦場にあってマイペースを崩さないのはピピティ・ピピニエッタ(🔥ブレイズムーン🔥・f06845)である。
「鏖殺とかマジ久々に聞くんだけど激ヤバまる~~!😱 とりま誰からいっとく~?」
あたし先陣とかマジ勘弁だし~😊と続くはしゃいだイントネーションの言葉に進み出るのは、メドラ・メメポルド(フロウ・f00731)。
「じゃあ、メドがいく」
茫とした眼はどこに焦点を絞っているのかわかりづらい。ゆらり揺蕩う海月のような足取りで、ふらふらと鬼達の前に彼女は進んでいく。
「あっちょっと~~~! 一人で行くとか激やばスティックじゃなーい?!💦」
「安心しろ、俺の『エレクトロギオン』に行かせる。あとちょっと声落とせピピティ」
怜悧に応じるのは玄崎・供露(間違えられた子・f05850)。彼は一見すれば女性と見紛う細面を右に左に向け、アレクシスらの弾幕とジグザグに戦場を駆ける灯の拳の光を認めると、戦況が悪くないことを冷静に確認した。向こうに支援は必要ない。あとちょっと声落とせピピティ。
「テンサゲ~~~😭」
やかましい妖精が二割減ぐらいに声のトーンを落とす。
「くろピノリ悪すぎじゃない? そんなんだとモテないよ~❓」
「十二億借金ある妖精よりゃモテんだろ。仕事しろ」
「ぐう」
の根くらいしか出ない。
上唇を噛んで震えるピピティを放ったまま、供露は『エレクトロギオン』を起動。小型の戦闘機械が無数に召喚され、宙をホバリングする。なにせ数がある、前線で囲まれたときにも役に立つ手管だ。オーダーはただ一つ、
「メドラを守りながら、四体一組で押し潰せ!」
手を翳せば、指令を受け取った機械兵器らは一斉に散開。四体一組の隊列を組み、鬼達の方へ向け、スズメバチを思わせる動きで飛翔する。
「もー仕方ないな~、それじゃちょっと真面目に……おいで、トカゲちゃん」
ピピティは蒼く燃えるサラマンダーを召喚し、小さなナイフで切った髪を火蜥蜴らの上に散らす。
「幾千の蒼炎 契約に集いて型を成せ 獄を喰らい 我に仇なす全てを灰燼に帰せ」
その髪は蒼く燃える地獄の炎。揺らめくように舞った炎の片鱗を食らう火蜥蜴は、食らったものより順に輝きを増した。
「焼き尽くして、トカゲちゃん」
ピピティの号令に従い、蜥蜴らもまた『エレクトロギオン』の群れの後ろを追う。
「おにさん、たくさんね。そう、ならおなかいっぱいになれるかしら。メドはおなかがすいてるの」
言葉など、通じるはずもない。それを分かっているかいないのかすら、彼女の口調からは読み取れない。
ゆらり、と彼女の髪が揺れ、ざわめくように広がる。駆けてくる鬼の群れを、メドラはそのとき初めて、焦点を絞って見つめた。
「しってる? 食べるためにはね、逃がさないのが一番なの。だから、メドの毒をたくさんあげるわね」
広がった髪が、触腕の如く伸びた。メドラ自身の動きは緩慢だったが、彼女に足りない速度を補うように、供露のエレクトロギオンとピピティのペイルブルー・サラマンダーが付き従い、横合いから飛んでくる矢や落ち武者の攻撃から彼女を守る。
「メドの毒はすごいのよ」
伸びた髪が鬼に触れる。一度目は何も無い。しかし、二本目が触れた瞬間、鬼は雷撃に打たれたかのように動きを止めた。
メドラはゆうらりゆらり、歩く。
「いたいことも、苦しいことも、忘れるのよ」
襲い来る大量の鬼は、メドラの射程に入った瞬間にその動きを止める。
「戦うなんて、しなくていいの」
だらだらと涎を垂らしながら虚空を見上げる鬼達。見ようによっては、それは恍惚とした表情にも見えた。
一度目の毒は、苦痛を消す慈悲の毒
二度目の毒は、幸福を齎す天上の毒。
「そう、そうよ。それがあなたたちが奪おうとしたものよ」
鬼にもう一本。揺れる触手が伸びる。
「奪われたらどうなるかも、おしえてあげるね。最後の毒は、全部ぜぇんぶ、裏返してくれるのよ」
三度目の毒は、
「だから、ね」
――全てを覆す、奈落の毒。
「メドのごはんになってちょうだい」
「AAARRRRRRRGGGGGGGGG?!」
それは悲痛な苦鳴のようにも聞こえた。悶え苦しむ鬼らが感じた苦痛は、村人が受けるはずだった責め苦に等しい。
メドラは淡々と触腕めいた髪を伸ばす。慈悲を。そして、地獄を見せて回るために。
のたうち回る鬼達を、狙い澄ました機兵軍団とサラマンダーの群れが襲う――!
「いけいけ〜、いいぞ〜🔥」
「おい!」
「ファイアブレスだ! ファイアテールだ!」
「ピピティ!」
「ファイア……とにかくガンバレ〜〜💖」
「話聞けやァ! 後ろだっての!!」
「ああああんあなあ!?!?!?!」
乙女にあるまじき声を上げピピティは斜め上に向け飛んだ。振り下ろしでも横薙ぎでも対応できるように避けたのはさすがの機転だろう。彼女の爪先の僅か下を金棒がすり抜ける。場外ホームランを免れ、ピピティは慌てて供露の横へ飛ぶ。
「どおっどどどどどうすんのこれこのまま行くと仲良く✝️墓下✝️超特急じゃない?! トカゲちゃん全部向こうなんだけど!! 助けてクロぴ!😱」
「俺だってエレクトロギオン全部向こうだぞ」
「終わりみ~~~~~~第三部完~~~~~~😭😭😭 」
それでも供露を盾にすることだけは忘れないピピティ。よよよ、なんて泣いてみせる。棍棒を外したはぐれ鬼が、ぐりんと首を供露に向け、棍棒を構え直す。
供露は頭をガリガリと掻き、己に刻まれた「刻印」を起動する。
「勝手に終わらせてくれんなよ。ここからだぜ。刻印(ドライバー)三つも刻んでんのは伊達じゃねェんだこちとら、殴り合いで鬼なんぞに負けるかよ――ッ!」
「えっちょっと手離すから待っギャーーーー!!😱」
ピピティを背中に付けたまま供露は前進、鬼と真っ向からの格闘を開始する!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
難駄芭院・ナナコ
鬼が相手ってか、このナナコさんにも立派なツノがあるからな負けやしねぇな!
そして食べ物の豊かな村って事は…バナナもあるんだな!
許さねぇ!ぶっ潰す!
とはいっても、相手の攻撃は痛そうだしなるべく直撃は喰らいたくねぇ。
ココは「巫覡載霊の舞」を使って隙を見て攻撃を打ち込む感じで攻めていこうかねぇ。
「ただの突撃娘と思ったかい?ちゃんと知恵はあるんだぜぇ!」
新堂・ゆき
また倒しがいのある鬼さんですね。あっ?ちょっとこっちにらんだ気がする。
(怖い怖いと肩すくめ)
討伐にいらした周囲の方々と共闘して戦います。
巫覡載霊の舞で攻撃しつつ、人形で攻撃を受け止め。
動きはどうかしら?見かけ通りかしら。
一撃が重そうね。
要警戒ですね。足元狙って
人形繰り出してみるのもいいかしら。
とにかく討伐に来てるのは私だけではないと思うから、ひたすら攻撃するのみね。
終わったら、美味しいご飯が食べられるかしら。
地を埋め尽くすかに錯覚するほどの量の鬼を掻き分け、新堂・ゆき(人間の人形遣い・f06077)と難駄芭院・ナナコ(第七斉天・f00572)は駆け抜ける。近くでは散発的に戦闘が起きており、その何れでも猟兵が己の技の粋を尽くし、無数の鬼を圧倒していた。
とはいえ量だけは多い。ふう、と息をつきながらゆきは呟く。
「また倒しがいのある鬼さんですね。あっ? ちょっとこっちにらんだ気がする」
怖い怖い、と肩を竦めた。目の前に現れた一団はどうやら回避できそうにない。
足を止め、ゆっくりと構えを取るユキの横でナナコもまた急制動して拳を打ち合わせた。
「鬼が相手ってか、このナナコさんにも立派なツノがあるからな、負けやしねぇな!」
ビシィ、と指を真っ直ぐ正面に指し、鬼共を貫くように睨み据える。彼女こそ、世界中のバナナを探求する自由人な羅刹バナナ。何を言っているかまったくわからないかもしれないが、バナナだったらバナナなのだ。
「そして!! 食べ物の豊かな村って事は……バナナもあるんだな!!」
「風土的にないと思うんですが」
「許さねぇ! ぶっ潰す!」
「あの」
ゆきは怒りに燃えるバナナ、もといナナコの横でなんとツッコミを入れて良いか迷ってから、やる気満々ならそれでいいか、と思考を放棄した。手に持ったなぎなたを中段に構え、戦闘態勢を取る。
合わせるようにナナコが背にくくったデリシャス・バナナ・ブレイカー……略してDBBを抜き払い、八相の構えを取った。
「バナナを狙う不届者は、このナナコさんが許さねぇ! 戦闘開始だぜぇ!」
「はい、許さない、というところだけは同意です。……では行きましょうか!」
二人はまったく同時にユーベルコード『巫覡載霊の舞』を発現する。
このユーベルコードは毎秒、命を燃やして放たれるもの。それだけに効果は絶大だ。
「相手の攻撃は大ぶりな分、当たれば結構痛そうだ。なるべく直撃は喰らいたくねぇ!」
「動きは鈍重――見ていれば簡単に避けられそう。一撃が重そうですね。私もフォローをします、回避優先して……足下を狙っていきましょう」
「おう!」
二人は互いの認識をすりあわせ、神を下ろした如く、神霊体と化した肉体で駆けだした。
「そこ!」
ゆきは先行して人形を放つ。戦闘用の絡繰人形がまるで生きているかのように滑らかに動き、凶器を鬼の脚を刈るように叩きつける。バランスを崩した鬼に、即座にナナコが襲いかかった。彼女の金髪は燐光を帯び、その残光が曇天の下に尾を引く。
「いただきだぜぇ!」
転びかけた鬼の首を一刀で飛ばし、ついでに周囲を牽制するようにDBBをグンと回旋。まさに、こちらを向こうとして慌てた挙動を取った鬼に狙いを定め突きを繰り出す。
「ただの突撃娘と思ったかい?ちゃんと知恵はあるんだぜぇ!」
「お見事です」
きゃらら、と音を立て、ゆきは手に結びつけた絡繰人形の糸を手繰る。絡繰人形は人間の関節ではあり得ない動きで身体を回し、ひねり、次々と鬼の脚を凶器で斬り付け、打ち付けていく。
神霊体化したユキの速度と同等の速度で操られる絡繰人形が敵を翻弄する。生まれた隙をナナコが突く。二人の戦巫女による、即興だが精度の高いコンビネーションがそこにあった。
「終わったら、美味しいご飯が食べられるかしら」
「喰えるぜぇ! 完熟バナナが!!」
「ないと思います」
「よーし、ガンガンやるぜぇ!!」
「あの」
ゆきは説得を諦め、絡繰人形に指示を送ることに集中するのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、カイブツ。リゥ・ズゥは、悪魔。リゥ・ズゥは、鬼より、強い。何匹来ようと、鬼の棒きれ、リゥ・ズゥには、通じない。
リゥ・ズゥの力で、鬼の群れ、叩き潰す。
さぁ、リゥ・ズゥを、恐れろ。お前達のボスを、連れてこい。
全て潰して、灰色の代わりに、リゥ・ズゥ達が、村を守る。
(意訳:私はPOWで鬼達と真っ向から戦います。
「捨て身の一撃」「鎧無視攻撃」「2回攻撃」「衝撃波」を伴う渾身のグラウンドクラッシャーは無数の鬼が相手でも地形ごと叩き潰すでしょう。
鬼達の攻撃は「野生の勘」で察知し回避を試み「カウンター」及び上記技能で迎撃してみせます。)
※彼は悪魔じみた形状を好んで維持しています。
斎部・花虎
承った
おれたちが、その村を救けに征けば良い――そうだろ
虎の毛並みを鬼の血色で染める事など造作もない
劣悪な成りをしているな、鬼
金棒を喰らう前に肉薄して、叩き伏す
血を吸え、熾きろ『虎千代』
刻印を呼び醒まして赤手に歪で厳つい獣の爪の如き武装を纏う
殴れば良いんだろ、識っている
表情変えぬ儘、鬼の頭を握り潰しに掛ろう
敵の攻撃には武装を翳し盾代わりに
多少血が滲もうとも痛みが在ろうと構うものかよ
この矮躯を嗤うか、鬼
――おれに喰われるのはおまえの方だ
屠れば次へ 次を屠ればまた次へ
根を絶やすまで狩り尽くしてやる、雁首を揃えろ
虎は腹が減っているんだ――鬼の味を知ろし食すまで終わらんぞ
「見えた」
最前線を走る三人の内一人――斎部・花虎(ヤーアブルニー・f01877)が密やかに言った。
終わりがないかに思えた鬼の群れのその終端に、遂に至ったのだ。
鬼を統率する武僧――その体躯は一際強大だ――の姿が見える。
先に行け、と花虎は言った。
「ここはおれたちが請け負う」
頷いた最後の一人に言うなり、花虎は脚に力を込める。
「虎の毛並みを鬼の血色で染める事など造作もない。――劣悪な成りをしているな、鬼」
ぐん、と獣の如き前傾姿勢を取り、まるで地を這うように飛ぶ猛禽の如く、駆けた。
「血を吸え、熾きろ、『虎千代』――ああ、そうとも、殴ればいいんだろ、識っている」
彼女の服の胸元で、コォ、と深い藍色の光が一度瞬く。刻印『虎千代』が目を覚ます。ぎゃりん、と音を立てて彼女の右手を、刺々しく厳つい、獣の爪をあしらったが如き腕甲が覆った。拳握ればぎちりと軋り、触れたものを、ただそれだけで傷つけるほど固く鋭いと推測できるそれ。纏っただけで、彼女の細腕はまるでそこだけ、魔獣の腕の様相を呈する。
飛びかかる。それを花虎は無造作に、無慈悲に、振るった。
ぼ、と音がして鬼の頭が吹き飛び、後ろの鬼の顔面を痛打する。花虎は殆ど跳び箱をするような調子で首なし鬼の死骸を跳び越え、顔面を押さえて踏鞴を踏む鬼へ肉薄する。
そのまま頭を、手ごと、腕甲を纏った手で鷲掴み――
「この矮躯を笑うか、鬼」
めきめき、めり、めりめりめり、
軋み音がして、鬼はもがき苦しみながら跪く。彼女の言う矮躯の足下に。
「――おれに食われるのは、おまえの方だ」
ぐしゃり、と、鬼は頭と手を一挙に失って、そのまま後ろに倒れて動かなくなった。腕甲から汚泥を振り飛ばした花虎の横に、ざ、と進み出る影がある。
――それは、あるいは花虎以上の「異形」であった。
「リゥ・ズゥは、カイブツ」
異形は――リゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)は、自己紹介をした。この上なく端的な自己紹介である。相手が言葉を解したならば、少なからぬ畏れを抱いて踏鞴を踏んだやも知れない。彼の身長――全高か?――は、一九〇センチメートルに至る。悪魔の形を取ったブラックタール。それが、リゥ・ズゥだ。
最前衛を突破せんと現れた花虎とリゥを目掛け、無数の矢が降り注ぐ。召喚された落武者による斉射。花虎は腕甲を盾に防御をするが、リゥは――リゥ・ズゥは、その仕草すら取らなかった。
「リゥ・ズゥは、悪魔」
ブラックタールの悪魔の身体に、無数の矢が突き刺さる。沈み込む。
それだけだ。悪魔は悠然と歩く。
「リゥ・ズゥは、鬼より、強い」
金棒で打ち掛かる鬼がいた。リゥ・ズゥはそれを、その巨体に似合わぬ俊敏さで避けると、左手の先を錐のようにして鬼の身体に打ちこんだ。鬼達の中には粗末な装甲を纏うものもいたが、その鋭さの前では鎖帷子とて役に立たなかっただろう。
もんどり打って倒れ込む鬼の脚を掴み、己の力を誇示するが如く振り回して敵に投げつける。数体を薙ぎ倒して、鬼の死骸は塵芥となって消える。
「鬼の棒きれ、リゥ・ズゥには、通じない。リゥ・ズゥの力で、鬼の群れ、叩き潰す」
先頭にいた鬼が、脚を確かに後ろに下げた。
「――ふ」
花虎があえかに笑う。それは、殆ど笑ったとも解らぬ吐息のような声だったが。
――嘲嗤った。
「ふふ、――リゥ・ズゥ」
身体に突き刺さった矢を引き抜きながら。花虎は言った。
「鬼共は、お前を畏れているぞ」
その言葉に緩く頷くと、悪魔は両腕をぐん、と振り上げた。
「そうだ、ならば、もっと。――リゥ・ズゥを、恐れろ」
悪魔は地面を蹴り飛ばす。空中で、彼の腕がぐん、と膨れ上がった。まるで、それは天から下される鉄槌のようだ。
流星の如く、リゥ・ズゥは墜ちた。鬼が集中した一帯のど真ん中に。直撃したものの末路など語るまでもあるまい。ハンマーの如き質量を備えたその肉体によるユーベルコード、『グラウンドクラッシャー』が、鬼達を挽肉と変え、大地に巨大なクレーターを穿つ。 爆弾の直撃に等しいインパクトに、鬼らは転げ、宙を舞う。そこに飛び込んだ花虎が襲いかかった。舞い上がった瓦礫を蹴り飛ばし、空を走るが如く、敵の頭を潰し、首を刈り、殺していく。
魔獣と悪魔は鏖殺を尽くす。これこそが応報と言わぬばかりに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
五十嵐・達也
平和を享受する事の、何もおかしくはない。
それを奪い鏖殺せんとするならば――
「汝らに咎在りき。その身を突き刺し抉り捻り切って、取り出してくれよう。その源を!」
鬼へ咎殺しの一撃を用いる。
被弾は一切気にしない。覚悟は決まっている。負傷が民草で無ければ、私ならば何も問題はない。
鏖殺等微塵も許さぬ。存在が咎ならば、抹消せしめる他無い。
真っ直ぐに狙いを定め、咎抉りの鑷子を槍の様に構え突撃し、鬼の心臓目掛け突き立て串刺しにしてくれる
怪力で心臓を先端で挟み、傷口を強引に押し広げ、引きずり出し、殺してくれる
「汝ら一切の殺戮を許さず。只無為に散れ」
接的前に棍棒を振るうならば、ジャンプで飛び上がり、上から攻撃する
「平和を享受する事の、何もおかしくはない。それを奪い鏖殺せんとするならば――」
花虎とリゥが開いた血路の先。
あれ程にいた鬼は、未だ交戦中のものを除けば最早十数体まで数を減らしている。
ここが、終戦の階となる。
五十嵐・達也(血濡れの咎狩人・f00485)は、その屈強な肉体を操り、ずらりと咎抉りの鑷子を引き抜いた。
身に纏うのが血に塗れた装束という意味では、鬼達と何ら変わらなかったかも知れない。だが、秘めた想いは彼らとは真逆である。
「汝らに咎在りき。その身を突き刺し抉り捻り切って、取り出してくれよう。その源を!」
ドン、と地面を蹴立て、男は駆け抜けた。肩に、腹に、放たれた矢が突き刺さる。だが、達也はそれを意にも介さない。真正面にいた鬼を標的とし、真っ直ぐに狙いを定め、咎抉りの鑷子を槍の様に構え突撃し、鬼の心臓目掛け突き立て串刺しに。
「あギッ いぎぎ」
「――ぬゥん!!!」
そのまま鑷子で心臓を鷲掴みにし、傷口を抉り広げて心臓を引きずり出す。高々と掲げた心臓を、ぐしゃりとひねり潰し、達也は修羅の如く言う。
「汝ら一切の殺戮を許さず。只無為に散れ」
貴様らの全てを否定してやる、と謳いながら、達也は次の敵に迫る。鑷子で心臓を、臓器を引きずり出し、或いは繋がったまま鬼の肉体を分銅のように振り回し、叩きつけて薙ぎ倒す。遠距離から怨念疾駆が飛べば、その巨体に見合わぬ身軽さで跳躍し、引き抜いた鉈で頭をかち割る。着地した瞬間には外套の下から抜いた長銃を振り向け、次の鬼の頭を撃ち抜く。
――まるでホラー映画から現れたダークヒーローのようだ。
気づけば、不気味に辺りは静まりかえっていた。
鬼達が撒き散らした汚泥の如き血液を拭うこともなく、達也はゆっくりと、捨てた鑷子を拾い上げる。
その尖端を腕組みをした武僧へ向け、傲然と言った。
「断罪を汝に」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『仮面の武僧』
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POW : 末世読経
予め【読経を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 狛犬噛み
自身の身体部位ひとつを【狛犬】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 金剛力士の招来
戦闘用の、自身と同じ強さの【金剛力士(阿形)】と【金剛力士(吽形)】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:水登うみ
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ふん」
武僧は緩やかに構えを取った。
「むらを襲う程度の役にしか立たん死霊共よ。だが数だけはいる、今しばらくの足止めにはなろう。所詮は死骸があればいくらでも出来る亡者共。或いは貴様らの死骸で作れば、もう少し使えるものになるやも知れぬ」
低い声でマントラを唱えながら、武僧は武器を構え、フゥーーー、と息をつく。
「名乗りなど必要あるまい。参る」
五十嵐・達也
名乗りは不要、それだけは同意しよう
汝の咎を断つ、只の咎狩人に過ぎぬ身だ
先の鬼程容易くはあるまいが――それが手を止める理由になぞなりはしない
「断罪の刃を汝に届けよう、死力を尽くしてでも」
魔血錬成にて、咎抉りの鑷子を複製、己の周囲に浮かせる
「かつて罪人は磔刑に処された。汝も縫い留められるべし」
長銃と鉈を手に武僧への牽制と迎撃に用いて突撃
必要ならば跳躍による回避、或いは至近距離への飛び込みを
上手く接近したならば鉈と長銃は捨て、浮かせた鑷子を掴み握る
鑷子は閉じて串刺に使い、武僧の手を脚を地に縫い止める、咎人に身動ぎ一つ許しはしない
「死をも冒涜せん悍ましき武僧よ。汝は血肉の欠片すら残す事を許さぬ――!」
「名乗りは不要、それだけは同意しよう。汝の咎を断つ、只の咎狩人に過ぎぬ身だ」
達也は振り向けた咎抉りの鑷子を引き、尖端をいまだ濡らす血を振り飛ばすように振る。
発される威圧感からして、先の鬼ほど容易くはあるまいが――それは、咎狩人たる彼の、手を止める理由になどなりはしない。
「断罪の刃を汝に届けよう、死力を尽くしてでも」
「やってみせよ」
武僧の言葉に、達也は己の手首を短刀で傷つけ、血を振りまく。
敵を囲む数人の猟兵がそれに目を瞠ったが、達也の目の光には些かの曇りもない。振りまかれた血は、空中でピタリと止まり――凝集し、寸分違わず咎抉りの鑷子の形となり、複製する。ずらりと並ぶ咎抉りの鑷子、その数一九。
「御美事也」
「世辞は好かん。説法は閻魔にでもせよ」
猛きものへの言葉から、虚飾は失せる。しかしてその賛辞など、達也が求めるものではない。
欲するものはただ一つ。その首級である。
「かつて罪人は磔刑に処された。汝も縫い留められるべし」
無数に複製された咎抉りの鑷子を自信の周りに引き連れ、達也は鉈と長銃を手に前進した。武僧もまた、厳つい錫杖を手に地を蹴る。
剣戟が響いた。真正面からの打ち合いである。錫杖と鉈がぶつかり合う。至近距離から放たれる咎抉りの鑷子の連射を、武僧も熟達の技で弾く、弾く、弾く! 素早く、スナップを利かせた錫杖の石突きが、空を唸って達也の胸に叩き込まれる。気管を傷つけるほどに深かったか、喘鳴と共に口元から血が飛沫いた。
好機と見るや、武僧は踏み込んで錫杖を横薙ぎにする。達也はそれを地を這うようにして回避。手のスナップだけで長銃の銃身を跳ね上げ、トリガーを引く。ノールックからの一射が武僧の顔面に迫り――がぎ、と音を立てて仮面の牙に食い止められた。しかしインパクトで頭が揺れる。それによる一瞬の四肢の機能喪失は、脳のある生物には避けられぬことだ。
「死をも冒涜せん悍ましき武僧よ。汝は血肉の欠片すら残す事を許さぬ――!」
咎抉りの鑷子が、ここぞとばかりに連射される。連続して突き刺さる咎抉りの鑷子が、よろめいた武僧の四肢を地面に縫い付けていく。
「ぬ、ぐ……ぬうううう!!!」
武僧は吼え、己の四肢を順に狛犬と化し、咎抉りの鑷子を筋肉の律動で外へ弾き出した。なんの痛痒も感じていないわけはあるまいに、それでも立ち上がる。
「我が殉礼……ここでは終わらぬ!」
仮面の奥で、炎のように眼が燃える。
「いいや。終わる」
達也は確信を持って呟いた。
「我らがここに来たのだから」
成功
🔵🔵🔴
赫・絲
お前の名なんて聞きたくも、知りたくもないね。
そんなに死骸をお望みならどっちの死骸が残るか試してみよーよ。
ーー獄に落ちるのはお前だけどね。
瞬時に鋼糸に雷を纏わせ、相手の間など待ちはしない
先制攻撃を仕掛けるべく即座に手元の半数を射出
視線をそちらに誘い、残りは敵の死角を突くように分
ひとつは地を這い、ひとつは空を駆らせ、一筋だけでも意地にかけて命中させる
その一筋が敵に絡みついた手応えを得次第、自身に残る魔力の全てを雷に変換
合わせてユアへの合図に、笑みを一つ
喋る暇なんて与えない。
その口もその身も、獄に縫い止めてあげる。
さ、びりびりする?
塵1つ残さず敵の影を獄に刻むべく、全力の雷を鋼糸を通じ叩き込む
ユア・アラマート
お前が鬼どもの親玉か
役に立たないとは言ったが、連中は仕事をしたぞ?
少なくとも村人に脅威と恐怖を与えたんだからな
――村に辿り着く前に死ぬお前よりは、よほど有能だ
イトが駆け出すのを合図として同時に敵へと疾駆
その間に魔術回路を起動。血のように赤く刻まれた胸元の月下美人に軽く触れて、嗤う
敵の攻撃が命中しないように素早さで撹乱しながら、イトの鋼糸が的に絡みついたのを確認し次第速度を上げ。そのまま敵の横を通過
すぐさま振り返り、その背中に向けて手を向け
足掻く権利くらいは施してやる。――古の風よ、来たれ
イトが雷を叩き込むのと同時に術式を発動
刺されば体内で爆ぜる無数の風の杭を、その命脈を抉り取ろうとばかりに放つ
「お前が鬼どもの親玉か。役に立たないとは言ったが、連中は仕事をしたぞ? 少なくとも村人に脅威と恐怖を与えたんだからな」
次に進み出たのはユア・アラマート(セルフケージ・f00261)だ。村の周りを遊撃し、ここまで早駆けしてきたのだろう。彼女の表情にはただただ、侮蔑の色だけがあった。吐き捨てるように続ける。
「――村に辿り着く前に死ぬお前よりは、よほど有能だ」
「ほざいたな、女――」
「ほざくよ、いくらでも。お前の名前も声も何もかも、聞きたくも、知りたくもないね」
ざあっ、と土煙を上げながらユアの横に馳せ参じる、赫・絲(赤い糸・f00433)。
「そんなに死骸をお望みならどっちの死骸が残るか試してみよーよ。――獄に落ちるのはお前だけどね」
「吼えるな、童女風情が――目にもの見せてくれよう」
「やってみせなよ、変顔坊主!」
絲は斜め前に駆け出す。それに合わせ、ユアも同時に行動を開始した。彼女らは事前に打ち合わせたとおりのコンビネーションを展開する。
まずは絲だ。鋼糸に雷を纏わせ、敵に向け繰り出す。
「ぬうん! 二相金剛、招来!!」
それに応じ、武僧は金剛力士を招来。糸は金剛力士(阿形)に遮られ、武僧本人には届かない。歯噛みをする絲に、武僧は肩を揺らす。嗤っているのだろう。
絲の攻撃が金剛力士(阿形)とせめぎ合う一方、ユアは真っ直ぐ敵に突っ込むように駆けた。事前の説明により、力士が出ている間本人は無防備であると識っている。
彼女は指先で艶めかしく、胸元の魔術回路を撫でる。見惚れてしまいそうなその光景は、しかして死の先触れである。
駆ける彼女の前に、金剛力士(吽形)が襲いかかる。大振りの金棒だけが能かと思いきや、その実の戦闘能力は高度に洗練されており、武僧本人と同様である。
「馬鹿力め」
ユアは繰り出される棍棒の一撃を身体を折って避け、時折ダガーで受け流すようにして攻撃を掻い潜りながら、一瞬の虚を突いて更に前進した。そのまま、身構える武僧とすれ違うように駆け抜け、地面を蹴る。
月下美人が宙を舞う。空中で身を翻し、天地逆さのまま、照準。
「足掻く権利くらいは施してやる」
空中、下にいる絲とのアイコンタクト。その時になって、絲は悔しそうな顔をやめ、唇をつり上げた。
「残念だったね。生意気なこと言ったら、甘く見てくれるかと思ったけど、想像以上」
「何――?」
「女はしたたかってこと。たとえ子供に見えてもね!」
絲が最初に放ったのは、全体の糸の半数である。目に見える攻撃が全てではない。残りの糸は、宙を、そして地を、巧みな繰糸術によって巡らせ、金剛力士の守りをすり抜けて、武僧へと至らせたのだ。
まるで蛇がその首に巻き付くように、音もなく、絲の糸が武僧へと巻き付く。
身体に覚えた違和感に、武僧が身動ぎをしようとした刹那、
「何と――」
二人の猟兵は、己が術式を発露する
「その口もその身も、獄に縫い止めてあげる!」
「――古の風よ、来たれ」
ボルト換算で何ボルトになるか、計測するのも憚られる電流が武僧の身体を焼いた。筋肉が収縮し、がくがくと身体が震え、痙攣する。そこに後ろから、ユアが放った『刹無』の風弾が無数に突き刺さる。九十発の風の魔弾は、命中した瞬間に炸裂弾のように爆ぜ、武僧の身体を痛めつけていく。声も無く武僧は吹き飛んだ。釣られて引かれぬよう、絲は束縛を緩め、降り立ったユアの横に参じる。
「――不覚」
四肢から血を垂れ流しながら、武僧は唸るように低い声で言った。かふう、とかすれた息を吐き出す。黒煙めいた色の呼気は、焼かれた際に生じたものや否や。
「これは、認識を改めねばなるまいな」
「いいや、必要ないね」
ユアがダガーを差し向ける。
「お前はここで死ぬんだから。それとも生きて帰れるつもりでいた?」
絲が、鋼糸を巻き取りながら次の術式を編む。
武僧はそれに応じるように、低い声でマントラを紡ぐ。
「この身は修羅に捧げ、既に修羅道に在る。――最早嘲るまい、貴様らを同じ道の獄徒として扱うのみよ」
武僧は口の中で呪句を連ね出す。――初めとは確かな空気の違いを、絲とユアは感じ取った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
草間・半蔵
名前も言えないのに、独り言は上手いのか?
ブレイズフレイムで炎を剣にまとわせて斬りかかる。
最初に唱えていた何かが気になる。最初は慎重に攻撃をよくみて。
あんたの名前も言葉も興味はない。けどその声は不愉快だ。
もう一度マントラを唱えさせる暇を与えないように連続で攻撃。腕や足が傷ついたところでやめないかもしれない。でも顔面なら。狙いを顔面に定めて炎を飛ばす。
あとは懐に飛び込んで【鎧砕き】の一撃を。一度で倒せるなんて思っていない。だから攻撃したらすぐ避ける。他の人が攻撃しやすいように。
桜庭・英治
命のやり取りをほんの少し前まで都会の学校で優等生してたような俺ができんのか?
できるわけねーだろ
滅茶苦茶こえーよ馬鹿野郎
戦いなんていつまで経っても慣れねーよ
けどさ、戦わなきゃ人が死ぬってんなら
イモ引いてられねーよな
恐怖で固まってしまいそうな体を自ら『鼓舞31』する
気付かれぬように予め影の追跡者の召喚を怪僧に対して使用
喧嘩と呼びかけてファイティングポーズをとり、自身は囮になる
敵の攻撃や金剛力士には、防御と回避に専念
防戦一方で攻められない風に『パフォーマンス13』で演出し
【影の追跡者】が怪僧へと接近する時間を稼ぐ
そこだ! 思い切りブチ込めッ!!
桜庭・英治(NewAge・f00459)は、猟兵になって日が浅い。
おそらくは、その場にいた他の誰よりも浅かった。
突如として武僧の動きが変わったのを、彼は目の当たりにした。別次元の技の冴え、油断の一切消えた動き。一線級の猟兵をして、直及ばざるが如きその俊敏さ、膂力、技量。脚が震え、手が戦慄き、彼の戦う意思は潰えて消えてしまいそうだった。
――命のやり取りをほんの少し前まで都会の学校で優等生してたような俺ができんのか?
自問自答をする。ああ、視線の先でまた打ち掛かった猟兵がいなされ、弾き飛ばされる。腕が、脚が、あらぬ方向に折れ曲がるのまではっきりと見える。けれども彼らは立ち上がるのだ。――こんな異常が他にあるか? ないだろう?
――できるわけねーだろ、滅茶苦茶こえーよ馬鹿野郎。戦いなんていつまで経っても慣れねーよ。
高校で殴り合いのケンカをしたことくらいはある。けれどそれは命のやりとりとは違う。これに比べたらお遊戯みたいなものだ。
脚が、竦む。
――でも、それでさ、俺が動かなかったら、誰かが死んじまうんだとしたら。
譲れぬものがある。平穏の中で生きてきた少年は、猟兵となり、戦いに触れてその尊さを識った。
彼がこの場に立っているのは、誰かを救うためだ。
猟兵として、男として。譲っちゃならないときがある。
彼は拳を握りしめ、ユーベルコードを発動する。
――そうさ。俺が戦わなきゃ人が死ぬってんなら。イモ引いてらんねえよな。
「名前も言えないのに、独り言は上手いのか?」
臍を固めた英治の横で挑発するように言うのは、草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)である。
彼は己の役割を正しく理解し、静かに息を吸う。刀を右後ろに下げ、脇構えをとり、刀の射程を悟らせぬよう構えている。
視線が絡む。殆ど反射的に、英治は頷き、やっちまおうぜ、と口を動かす。
切迫した――けれど、やってやるぜという思いを呼び覚ますような――心を衝き動かすような、英治の表情。
半蔵は微かに、だが確かに頷く。それを確認すると、英治は半蔵と同時に、果敢に飛び込んだ。
「あんたの名前も言葉も興味はない。けどその声は不愉快だ」
業! と半蔵の大刀が燃え上がる。裂傷を刻んだ手から迸らせた地獄の炎が、刀を伝ってその刀身を紅蓮と化す。
大刀を振るい、連続攻撃を仕掛ける半蔵に、しかし武僧は滑らかに応じてみせる。半蔵の攻撃をいなし、受け止め、弾く。
連続攻撃を織り交ぜながら、びっ、と手をスイングし、地獄の炎を顔面へと浴びせかける、刀法のみではない柔軟な攻撃にも武僧は対応してみせた。喝! という気合の一声に、地獄の業火が掻き消される。
「主らの興味など、我が道に不要。主らが我を識ろうとせぬのと同じ事よ」
「……ッ!」
錫杖の振り下ろし。半蔵は刀を跳ね上げ、錫杖を受け止める。力勝負となると、半蔵のウェイトと武僧のウェイトでは、文字通り大人と子供ほどの差がある。鍔迫り合いは一瞬だ。すぐに押され、メリメリと地面に踵が沈む。武僧はそのまま叩き潰さんと力を込め――
「ッだああああーーーーー!!」
「む……!」
裂帛の気合、というには些か気の抜けた響きが、武僧の横合いから迫る。
反射的に視線を振り向けた武僧の胴に、英治の拍子抜けするほど軽い拳が命中した。小揺るぎもしない武僧は、叫びと打撃がブラフであったことを悟る。
「貴様!」
「おっと、本命はこのあとだぜ」
勇気を振り絞って駆けてきたことが一目でわかる青ざめた顔――けれども決意に満ちた顔で、英治は笑った。
「今だ! ブチ込め!」
英治が叫ぶのと同時に、「影の追跡者」が武僧の脚を地面に縫い止める。注意を引き寄せての確実な拘束。そして、逸れた意識と力が緩んだ、その値千金の隙を、半蔵が活かす。
「――砕けろ!!」
僅かに力が緩んだ隙に打撃をいなす。地面を抉る錫杖を後目に半蔵は刀を振りかぶる。地獄の炎は止まることを知らぬ。彼の意思に呼応し、今一度!
紅蓮の剣閃が空を薙ぐ!
「ぬうああァーーーーッ!!?」
胴前が砕け、欠片が宙を舞う……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
大神・零児
まずは納刀
妖刀に付着した鬼たちの血から「生命力吸収」
真の姿で妖剣解放を使用
敵が末世読経を使ったのなら高速移動で回避はいけるか
まずは接敵
高速移動で瞬時に駆け抜ける
力士に妨害されそうならば二体の間のすり抜けを試し、無理ならば重心移動と体軸操作で姿勢制御しつつ高速移動で「追跡」を使いながら迂回
肉薄し妖刀「魂喰」による居合切りとその衝撃波を浴びせる
敵の接近攻撃に対し黒剣「黒鞘」で「武器受け」し、そのエネルギーを受け流しつつ利用して加速させた斬撃を浴びせ、削れた体力を「生命力吸収」で回復
刀と鞘の二刀流で流れるように戦う
真の姿、第一段階:「全身の毛が白銀色となり、妖刀から血のような色のオーラが立ち上る」
斎部・花虎
髪がふわりと風を孕んで膨らむ
肌を虎の縞が這ってゆく
瞳孔が縦にきゅうと窄まる
獣じみた――これがおれの、まことのかたち
そうだな、嗚呼、嗚呼、名乗りなど要るまい
屠られる側の名など必要ない
根の国までは送ってやろう
自分の為の読経か、それは
ははあ、成る程、感心、感心――
そう言いつつもおれの表情は動かんが
手脚は躊躇いなく首筋目掛けて圧し折りに動かそう
読経を防げずとも相手の攻撃は当たりにくくなる筈だ
動じず避けるに努める
敵に投げ付けたるは呪符と聖別された小刀
額にでも留めてやろう
「破魔」と「捨て身の一撃」を宿し
おれの影に囚えた獣を引き摺り上げ、解き放つ
何の獣かも解らぬ醜悪な姿――いらせられませ、闇御津羽
雷陣・通
確かに名乗りは必要ないかもな
あんたは坊主で俺はイエーガー
【POW】で判定
刀を構え、ゆっくりと近づけば
「先制攻撃」による面打ちからの飛び蹴りの二回攻撃
相手の末世読経にはジャブ二連発で牽制して様子を見る
手ごわい相手だと悟れば、自分もすべきことがある
「コォオオオオオオ!」
三戦、息吹、そして解放するのは真の姿
全身を帯電させ、能力を向上させる
「ライジング・スタイル! いっくぜー!」
そこからはフットワークと二回攻撃で出来るだけ翻弄してからのユーベルコード『剣刃一閃』
相手の武器を破壊する
「今だ!! みんな、ここで決めるんだ!!」
――半蔵と英治が作り出した隙と、ダメージを、逃そうとしない三者がいた。
この隙を逃してなるものか、とばかり、彼らは己の真の姿を露わにする。
大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)は刀を納める。妖剣解放の影響で、彼の体力は刻一刻と削られている。最早一刻の猶予もない。刀を納めたと同時、ここまで殺してきた鬼の魂を吸い上げ、僅かながらに体力を補填する。
「はァ……!!」
苦鳴に似た声。ざァ、と体毛から色が抜け落ち、白銀色を帯びる。禍々しい紅いオーラが刀から立ち上り出す。
斎部・花虎(ヤーアブルニー・f01877)の髪がふわりと風を孕んで膨らむ。まるで虎のような縞が、膚を這いずるように濡らしていく。
瞳孔が縦に割れ、きゅうと窄まる。それは彼女の名を示すかのような、獣じみた容貌――
「――これがおれの、まことのかたち」
ぎちり、と獣爪をかみ合わせ。
「そうだな、嗚呼、嗚呼、名乗りなど要るまい。屠られる側の名など必要ない。根の国までは送ってやろう」
息吹、と呼ばれる呼吸法がある。空手に独特の呼吸法だ。
「コォオオオオオオ!」
雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)が成したのがまさにそれである。
内股に引き絞った膝、肘を肋骨に付けて緩いV字を描くよう、前に出した前腕。三戦立ち。
バチバチと爆ぜる大気が、彼の変容を告げる。帯電しているのだ。――凄まじいほどに!
「ライジング・スタイル! いっくぜー!」
三者は同時に地を蹴った。
よろめいた武僧は念仏を唱えながらも、即座に印を結び、再び二体の金剛力士像を召喚する。読経の力が残っているのか、二体の力士像もまた、先程とは異質な速度で迫り来る。
「自分の為の読経か、それは。ははあ、成る程、感心、感心――信心深い甲斐があるといいが」
先頭を行くのは花虎である。欠片もそう思っていないような口調で嘯き、無表情のまま金剛力士に襲いかかる。振り下ろした拳が阿形の金棒と軋り合った。
援護に向かおうとする吽形を、通が許さない。刀を納めての徒手空拳、鋭いステップワークからの打撃で吽形に反撃の糸口を掴ませない。突如として能力が向上した猟兵らによる、目が慣れる前の強襲。武僧本人ですら適応するまでしばし時間を要するものを、その分け身たる金剛力士らにしてみれば、青天の霹靂のようなものだ。戸惑ったように動きが鈍る力士らの隙間を縫い、零児が駆け抜ける。
その場にいた三人による、全く即興・同時の連係攻撃。猟兵らのコンビネーションの結実である。その在り方を武僧は知らなかった。故に、仮面の奥の眼が見開かれる。――瞳に映るのは、零児。そして、その手の内にある禍々しい刀だ。血の霧霞のごとく周囲の空気を色づけるその妖刀の名は、魂喰。
「腹が減ったかよ、タマグライ」
――喰わせろ、喰わせろ!
妖刀『魂喰』が金属が軋るが如き声を上げるのを聞き、零児は歯をむき出して笑って見せた。
「いいぜ。好きなだけ――カッ喰らえ!」
踏み込み、抜刀。一歩一間、二歩四間、三歩六間!! 零児の速度は、ともすれば音の壁を破らんばかりに迫る。抜刀したその手の速度は何をか言わんや。
鞘を走る刀――魂喰が凛とした音を立て鞘走り、音速を遥かに超え、衝撃波を溢れさせながら武僧を切り裂いた。
「ッグ……ううう!」
「――いける!」
武僧に攻撃が通る、イコール金剛力士像が消え失せる、ということ。
踏鞴を踏む武僧を見た瞬間、金剛力士像と打撃戦を繰り広げていた通は、薄れて消える金剛力士を突き抜けるように電瞬の前進。零児に続き、彼もまた――刀を抜く。ばじじ、じじり、と空気を爆ぜさせる刀は最早スタン・ロッドの様相だ。
この一瞬に、全てを懸ける。いま俺が懸けた力が、勝利を作る!
「――確かに名乗りなんていらねえや。あんたは坊主で俺はイエーガー。なら、結論は一つっきりだ!」
大上段に振りかぶり、狙うは武僧が巧みに振るうその錫杖!
「……今ここであんたを、倒す!」
通が振り下ろした刀が、受け太刀した武僧の錫杖に食い込み――
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
――過たず、真っ二つに断ち切る!
「何と――」
「今だ!! 皆、ここで決めるんだ!!」
通の、雷鳴のように響く声。
武僧は、如何に敵が多勢とて、信心を失った者ども何するものぞと思っていた数刻前の自分を思い出す。決して折れることのなかった、自身の半身とも言える錫杖が、今まさに断たれるのを目の当たりにした。
――信仰を断たれたに等しい男の仮面に、とつ、とを音を立てて何かが突き刺さる。
それは、聖別された銀の小刀であった。柄に、呪符が揺れる。
「いざや、いざ。火之迦具土の血を啜り、いらせられませ、闇御津羽」
花虎であった。
影の内側に住まう、何の獣かも解らぬ醜悪な姿を解き放つ。呪符と共に突き刺さった小刀は、しるしのようなものだ。
解き放たれたこのけものが、餐うものを示す楔。
――斯くして、零児が駆け抜け、通が繋ぎ、花虎が穿つ、一繋ぎの連携はそこに完了した。
武僧は呆然と立ち尽くす。彼の右腕は、肩ごと『闇御津羽』に喰われ、喪失していた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●そして
武僧が、これでは勝てぬと認め。
身を翻そうとした先に、悪魔の影が一つある。
リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、戦う。敵が強いなら、リゥ・ズゥは、更に強く、なる。
鬼どものボス、叩き潰す。
名乗りは、いらない。
リゥ・ズゥの名も、覚えなくて、いい。すぐ、消えてなくなる、だけだ。
(POWで正面からぶつかります。グールドライバーの性質で体内に蓄えている血液を用い、ブラッドガイストで真の姿を更に強化し、敵の読経にも真正面から立ち向かいます。
敵の攻めがどれほど強くとも、流動体の身体と「激痛耐性」で受け切り、「カウンター」「捨て身の攻撃」「衝撃波」「2回攻撃」でより強力な攻撃を返してみせます。力士が来たら「ダッシュ」で一気に抜けて本体を狙います。噛み付きの場合は逆に捕まえ味方の攻撃のチャンスを作ります。)
「リゥ・ズゥは、戦う。鬼どものボス、叩き潰す」
ずしゃり、と悪魔の爪先が地面を抉る。重さを感じさせるゆっくりとした歩みで、武僧の退路を断ったのはリゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)であった。
「――おまえだな」
彼もまた、真の姿を現していた。その四肢は鬼を蹴散らしたときよりもよりしなやかで、強固な質感を持っている。
そこに更に、グールドライバーとして体内に蓄えた血液を使用し、『ブラッド・ガイスト』を使用。黒色に紅が混ざり、武器たる四肢がさらに強化される。一歩ごとに血が脈打ち、蠢く様はまるで火口のマグマを連想させた。
その異様は、相対したものに純粋なプレッシャーを与える。
「――く」
武僧は、もはやこれまでと悟ったか足を止める。
止め処なく血液が流れ落ちる右腕から手を離し、左手で刀印を切る。――そして、砕けかけた仮面の下で、笑った。
「美事、美事。――貴様らが我の修羅道の果てとなるか。ここが果て、このまま道半ばに骨を埋めるならば、六文銭代わりにいのちの一つも持って逝かねば」
今一度、武僧はすう、と腰を落として構える。訥々と念仏を口の中で転がす様は、覚悟を固めた様子に他ならない。
「南無摩訶毘盧遮那仏――猛きものよ。我が今生の果てよ。いざ、尋常に」
勝負、と唸る武僧に正対し、リゥ・ズゥは両の拳を打ち合わせる。
棘の如く血液が巻き付き、硬化したその拳は、金属質な音を立てて彼の意思を代弁した。
「おまえが、強くなるのなら。リゥ・ズゥは、それよりも強くなる。おまえを、倒す」
「りう・ずう。また面妖な名よ。冥土の土産に丁度よかろう」
「――覚えなくて、いい」
リゥ・ズゥは低く身をかがめる。そして、
「すぐ、消えてなくなる、だけだ」
突撃した。
蹴立てられる地面が弾け、土石を撒き散らす。一直線の突撃に、武僧もまた前進する。
「ィいいいいいいいぃいいりゃアッ!!!」
溢れ出る血が、真っ赤な狛犬を形作る。失われた腕を補うべく、最後の力で編んだ秘術。
それは強力だった。速く、鋭く、おそろしいものだった。
けれど、
狗に悪魔は殺せない。
振りかぶったリゥ・ズゥの拳は、ブラッド・ガイストを帯びて鮮紅に染まる。パンプアップするかのように肥大した右拳が、彼の全速力を乗せて放たれた。
それが武僧の見た最後の光景。彼の身体は、狛犬もろともに打ち砕かれ、遥か後方に吹き飛んで墜ちた。
「地獄へは、一人で行け。リゥ・ズゥは悪魔だが、出来るのは、案内までだ」
リゥ・ズゥはぽつりと呟く。
――乱戦が終わった瞬間であった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『季節の行事』
|
POW : 体力が尽きるまで全力で楽しむ
SPD : イカサマを辞することなく楽しむ
WIZ : 効率よく無駄なく全てを楽しむ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●小さな祭り
戦いは終わり、鬼らを退け終えた後。
村に戻り村長に話をすると、彼は涙を流しながら猟兵らに告げる。
「本当に……本当にありがとうごぜえますだ、猟兵様」
涙を流す老人を労るように肩を叩くものあり、速くも村の壊れた柵や設備などを補修するものあり。見回せば、戦いが終わってもめまぐるしく動く猟兵達。
猟兵らに幾度も礼をしながら老人は続ける。
「祭りと言うにも小せえもんじゃあございますが……この後、むらぐるみで宴をしよんです、よけりゃあ猟兵様がたも、楽しんでいかれては」
宿もごぜえます、と村長は続ける。
聴けば、塩鱈の鍋、良質な野菜の漬物、物々交換で手に入った酒、団子などの食べ物や、遊戯程度のことではあるが博打を打てるところもある。来年の豊穣を祈願した相撲大会などの催しもあり――自由に楽しんで欲しいと、老人は語った。
それとは別に村の修繕をしても構わないか、と勤勉な猟兵が言うと、ありがてえ事です、と恐縮した風に老人は身を縮める。
――猟兵らは守った村をぐるりと眺め、さあ、何からしようと頭を悩ますのであった。
赫・絲
壊れちゃったモノもあるけど、みんな無事で何よりだねー。
修繕のお手伝いもしたいけどお腹空いちゃったや。
まずは目一杯楽しもっかな!
村の人がきっと鍋に合うと用意してくれた熱燗を受け取り
ユアさんを突いて、ささ、一杯いかが?なんてお酌しつつ
猫舌故にゆっくりながらも、塩鱈鍋に舌鼓
ふーふー、あつつ、んんん、美味しいねー暖まるねー!
楽しみつつも喫茶店の顔見知りを見つければ、
ゆうらり手を振っておつかれさまを
それにしてもこのお鍋本当に美味しいし、かいちゃんにも食べさせてあげたかったなー。
しょんぼり頭を垂れるも、直ぐ様顔を上げて
そだね、お団子ならお土産にできる!
がんばってきたよーって一緒に持っていこー、ユアさん!
ユア・アラマート
賑やかで暖かいな
村の補修も手伝いたいが…先にちょっと楽しませてもらうとしよう
イトと塩鱈鍋に舌鼓を打ちつつ、戦闘の疲れを美味しいもので瘉す
あ、これすごく美味しいな。最高のご褒美じゃないか
未成年と一緒だし、あまり強くないからお酒は控えようかと思うけれど
イトがお酌をしてくれると言うので、ありがたく一杯だけ
見渡してみて、同じ喫茶店の顔なじみ同士が見当たればお疲れ様の気持ちを込めて声をかける
仕事中は忙しなくて、なかなかゆっくり話もできなかったからね
ああ、そうだイト。鍋は難しいけど、お団子なら持ち帰れるんじゃないか?
私達の帰りを待ってるカイに、戦果報告ついでにお土産を持っていこうか
きっと、喜んでくれるよ
「壊れちゃったモノもあるけど、皆無事で何よりだねー」
「ああ、何とか守れた。途中何度か肝を冷やしたけどね」
「私はユアさんと一緒だったから全然不安じゃなかったけどなー。だいしょーり!」
「それはどうも。……私も安心して仕事が出来たよ」
美人が二人連れ立って歩くと、とても絵になる。彼女らが通っただけで場の空気が華やぐかのようだ。
一貫して行動を共にしていた赫・絲(赤い糸・f00433)とユア・アラマート(セルフケージ・f00261)は食べ物を探し、村の中を練り歩いていた。村の補修も手伝いたいが、何分動き詰めで空腹だ。
「そこの別嬪さんがた! 寄っといで!」
横合いから掛かる声にユアが振り向くと、そこには大鍋で煮込まれる塩鱈鍋の屋台。
「あんたたちがむらを守ってくれたんだって? ありがとうねえ!」
「……まあ、そういうことになるかな。私たち二人だけではないけれど」
今も村の復興を手伝ったり、思い思いの時間を過ごしている猟兵達の姿を思い浮かべながら、少々面映ゆそうにユアは答えた。もとより、余り人に感謝されるような仕事をしていない。鍋の前にいる女性からの率直な言葉と笑顔は、煌めくような報酬だった。
「沢山食べてお行きよ。今日はいくらだって食べていい、長い冬を迎える前の景気づけさね」
木椀に鍋がよそわれ、一人前ずつ手渡される。頬を掻きながら、二人分の鍋を受け取るユア。ありがとう、と小さく零した礼に、給仕の女性はにっこりと笑った。
「そーそー、貰えるなら楽しまなきゃ損だよ。厚意で呼んでくれてるんだから、めいっぱい受け取ろ?」
ユアが傍らの絲に目をやれば、彼女はいつの間にやら徳利を手挟んでいる。
「イト、それは酒じゃ……」
「もーちろんいとが飲むわけじゃないよ。ユアさんの! ほらこっちこっち!」
絲は茣蓙までユアをほとんど引きずるように歩いて、一足先に上がり込み、座った。
酒を猪口に注いでささ、一杯いかが、と差し出す絲に、ユアは困ったように、けれど嬉しそうに笑った。
「潰れてしまうとあとに差し支えそうだけれど」
「そしたらいとが二倍働くからだいじょーぶ!」
「それは頼もしい」
ばーん、と胸を張る元気娘に並び座り、ユアは笑みを深めながら熱燗を受け取る。
湯気を上げる鍋を、二人並んで一口啜る。
「……これ、すごく美味しいな。最高のご褒美じゃないか」
「あつつ、んんん、美味しいねー暖まるねー!」
淡泊だが滋味のある味わいの塩鱈に、新鮮な野菜の歯ごたえと出汁が利いている。白菜、塩昆布、人参、塩蔵してあった山菜類、干したキノコがふんだんに用いられ、ふっくらとした塩鱈を引き立てていた。
ユアは続いて日本酒も傾ける。するりと喉の奥に落ちるキレのいい味わい。鍋の供に飲むと塩気がさっぱりと流され、いくらでも食べられる、そしていくらでも飲める気がしてくる。
「危険だ……」
「そだね……危険なくらいおいしいね……」
二人とも、妙齢の女性である。おなかにつく肉はやはり気になるのだ。
「それにしてもこのお鍋本当に美味しいし、かいちゃんにも食べさせてあげたかったなー」
かいちゃん、と彼女が呼ぶのはグリモア猟兵の壥・灰色の事だろう。少しだけしょげた顔でうつむく絲。
「そうだね……カイなら沢山食べただろうね、これは。まあ、でも、仕方がないさ。鍋は難しいけど、お団子とかなら持ち帰れるんじゃないか? 私達の帰りを待ってるカイに、戦果報告ついでにお土産を持っていこう」
「!」
ユアの提案に、絲はまたすぐに眦を上げ、パッと笑顔を咲かせた。
「そだね、お団子ならお土産にできる! がんばってきたよーって一緒に持っていこー、ユアさん!」
「ああ、これを食べ終わったら探しに行こうか。……きっと喜んでくれるよ」
感情の起伏の忙しい少女を、ユアは妹を見るような目で見つめるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
草間・半蔵
助けても嫌な目で見られない。閉じ込められない。
感謝される。
まだなれないありがとうにはとまどってしまうけど、いい匂いがして腹がなる。祭りは、乗らない方がバカだと、誰かが言っていたから。だから、今はこの腹を満たしてもいいだろう。
…甘いものもあるのか?
ゆるみそうになる顔をごまかしたら変に睨むような表情になった。それでもそわそわした気持ちは隠しきれず。オレが尻尾のある生き物だったら困ったかもしれない。
団子を出されたらドキドキしながらかぶりつく。
甘くて、うまい。
もうどうしようもなく頬が緩んでしまう。いくらでも食べられそうだ。
だされるだけ山ほど平らげる。
おいしかった…ありがとう。
★アドリブ歓迎
かつて隠れ里において、彼の力のみを欲したもの達がいた。
里を襲ったオブリビオンを倒した事をきっかけに、外敵排除のための兵器として使われた来歴を持つ草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)にとって、その村は――
(温かいな)
「へええ、こんなにちっこいなりで、そんなでっけえ刀を! 猟兵様ってのはまっこと力持ちなんだなあ」
「ありがとうねえ、小さな猟兵様。ほら、これもお食べ」
「わ、わ、わ」
次から次へと半蔵に、握り飯やら鍋やら漬物やら和え物やら焼き魚やら猪の肉やらが振る舞われる。
もぐもぐと出されるものを出されるがまま食べると、周りにいる村人らはやんややんやと喝采する。
――助けても嫌な目で見られない。閉じ込められない。感謝される。
何もかも、かつていた集落とは別だった。まだなれないありがとうには戸惑ってしまうけど、いい匂いに誘われるように腹が鳴る。
……祭りは、乗らない方がバカだと、誰かが言っていたから。だから、今はこの腹を満たしてもいいだろう。
半蔵は猪肉を頬張りながら、不意にぽんと差し出された団子を前に咀嚼を止めた。
半蔵よりやや年上の少女が、皿に載せた団子を彼に差し出している。
「猟兵様、ウチの父ちゃんがこれを持ってけって。父ちゃんの作る団子は、このむら一番の甘味なんだ!」
半蔵は目をらんらんと光らせ、手に持っていた猪肉の椀を一瞬で片付けた。喉に詰めそうになりながら茶で流し込み、
「……甘いものもあるのか?」
顔が緩みそうになるのを何とかこらえるが、どこまでうまくいっていたか。もしかしたらちょっと睨む様な顔になってしまったかも知れない。
けれども村娘の笑顔は小揺るぎもしない。慣れた様子だ。
「もちろん! 団子だけで足りなきゃあ、鶉餅だって饅頭だってあるよ!!」
「……! ありがとう、」
実は甘党の半蔵である。勢いよく貰いに行こうとする身体を何とか自制しつつ、落ち着いた動作で団子を受け取り、頬張る。
(……甘くて、うまい)
頬が緩む。事前にあれだけ飯を食べたのに、いくらだって食べられてしまいそうだ。二口もかぶり付けば串が一本消えてしまう。三本ほど皿に乗っていた団子はあっという間に串だけになった。
「あははっ、いい食べっぷりだねえ猟兵様! おかわりだって沢山あるよ!」
「もらう!」
今度は我慢しきれなかった。飛びつくように言う半蔵。もし尻尾がオレにあったらちょっと大変だったかもな、と半蔵は思う。きっと千切れんばかりに振っていたに違いないからだ。こんなに美味しいんじゃあ、隠せもしない。
宴はまだ暫く続くだろう。温かく、安らぐ時間が。
終わるときにはきっと笑顔で言える。
――おいしかった、ありがとう。
成功
🔵🔵🔴
大神・零児
効率よく無駄なく全てを楽しむ。
せっかくの申し出、楽しまなきゃな。
催し物のスケジュールを確認して、第六感で美味そうな物や楽しそうな所を見つけては立ち寄ろう。
備蓄食は村の大切な食料でもあるから、もらうのは少量ずつにして。
そうだな、一品ずつ味を確かめ、その味や食感を楽しむように食べようか。見た目や匂い、味や食感の感想もくわえながら、ベストな食べ合わせも探そう。見つけたら村人に進めよう。
金も少し落としていくか。村人に交じり相撲大会の時間が来るまで博打で楽しく騒ごう。少しでもいいから当たるといいな。
相撲大会は欠かせないな。番付表なんかがあればもらって、村人に見どころでも聞いて、声援を送りながら楽しもう。
「さぁて、と――せっかくの申し出、楽しまなきゃな」
腰に刀を佩いた獣人が、戦闘の時とは打って変わってゆるりと歩く。大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)である。
村人の誘いを受け村を流し歩きつつ、時折振る舞われる食べ物は、ありがたく少量ずつ受け取っていた。
小さめの椀を受け取った零児に、村の若い男が笑いかける。
「猟兵様、もっと沢山喰わねえと力が出ないんじゃあねえですかい?」
「俺ぁ小食なんだよ。それに、この村だってキッチリ助けてみせたろ?」
「ははぁ、違えねえ」
軽いやりとり。彼の本意は、この村に僅かでも多く、食糧が残ればいいと思っていることに他ならない。
ざっくばらんな物言いをして、それを感じさせないのも彼の器量だろう。
受け取った獣肉の入った椀を眺め、零児は一口一口、確かめるように匙を口に運ぶ。
まずは猪肉と山菜が一緒に煮込まれ、ダメ押しで味噌が入れられている汁物。こっくりとした味わいと、猪の脂の甘さが際立ち、寒い季節にぴったりだ。
次は醤油を塗って香ばしく焼かれた焼きおにぎり。焼かれた外側の香気と中の米の粘りが合わさり、しみじみうまい。
箸休めに食べる漬物。一緒に茶が渡された。なるほど、長期保存をするために塩味がかなり強めに付けられている。身の締まった人参や蕪、大根が、共に漬け込まれた大葉の香りを纏って爽やかだ。
零児は咀嚼しつつ、塩味の強い漬物と、供された茶、焼きおにぎりを見比べた。
「ってぇことはだ」
焼きおにぎりを椀に入れる。熱々のお茶を注ぐ。細かめに刻んだ漬物をあしらう。
「これだろ」
ひと匙すくって口に含むと、茶の香気と渾然一体となった飯の香ばしさ、そして野菜からにじみ出る旨みと塩気が同時に流れ込んでくる。野菜の食感も楽しいおまけ付きだ。
「猟兵様、変わった食い方をされやすなあ」
「旨いんだぜ、これ。今度やってみるといい」
給仕の男に勧めながら、零児は椀の残りを一息に啜り、ごちそうさん、と木椀を返す。
「ところで、博打を打てるって聴いたんだが、どの辺でやってるんだ?」
「賭場は向こうの方でさ。ただ直に賭け試合が始まるもんで、胴元も賽子振るよりそっちに掛かりっきりじゃあねえですかね」
「賭け試合……相撲か」
「へえ」
そういえば見なければいけないと思っていたのだ。賭けも同時に出来るなら言うことはない。
「番付表なんかはあるか?」
「名簿くれえならごぜえやす」
男は出場者の名が書かれた和紙を取り出し、零児に渡した。簡単な下馬評なども記してある。
ふんふん、と楽しげに読み進める零児の目が一箇所で留まる。笑顔もちょっと固まった。
「どうなすったんで?」
「……これじゃあ賭けになんねぇぜ」
笑って零児は名簿に指を落とした。覗き込む男も、あぁー、といわんばかりの反応を返す。
だよなあ、と、零児は男と声を合わせて笑うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
●おまえかい
名簿の片隅に、「りぅ・ずぅ」という記述があれば、それは零児も笑うしかないというものだろう。
リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、たくさん、食べる。身体、癒やす。血もあると、助かる、が。誰か、くれるだろうか。
それと、リゥ・ズゥは、相撲というもの、やってみたい。
誰か、リゥ・ズゥと勝負、しないか?
相撲、覚えたら、リゥ・ズゥは、更に強くなれる、はず。
(POWで祭りを存分に楽しみます。たっぷり食事を楽しんで体力を回復し、捌いた家畜や狩猟した獣の血を貰ってドライバーに補給します。可能であれば献血も出来ると嬉しいです。また、相撲という格闘術も興味深いので、互角の勝負が出来る猟兵と競い体験してみたいです。バーバリアンの戦闘法に相撲は相性が良さそうなので、この機会に学べばより戦力を高めることが出来るでしょう。)
立花・乖梨
村人達の表情が、心が柔らかくなりました、ですです。
色々と為すべき事はありますけど、
折角なので宴に参加させて貰いましょう。
鬼さん抑え込んだから、腕が筋肉痛になりますよぅ…。
宴では食事…
お鍋と、お酒を頂きたいです!
旬の鱈のハリのある身、村で採れた新鮮なお野菜、この村の地酒なんかも、頂きたいですです。
美味しいご飯を食べる、村人が宴で賑わう――生きるというのは、死ぬことよりも、幸せです。…なんて。
ふふ、嬉しさとおいしさで、ほっぺがおちそうです。
斎部・花虎
美味そうな団子だな、一串貰おう
甘味で腹を慰めたらば、おれは村の修繕に回ろう
体力の残る限りは尽くすさ
御老体には難しかろう、高所の作業を請け負うよ
ものはついでだ、雨漏りなんぞしていたら塞いでおこうな
後は重い資材の運搬も難しいだろ
ああ、構わん、おれがやる
…こんななりだが御老体たちよりかは力が出る 本当だ
――灰色、灰色
おまえは来ないか
来れそうなら手伝ってくれ、ほら、資材を持つ持つ
おれより大きいのだからおれの倍は運べるだろ
来れないのなら帰った後に聞かせてやる土産話でも考えておくか
おまえの懸念は晴らされたよ、と
団子美味かったな 誰ぞの土産があれば食ってみろ
メドラ・メメポルド
ごはん?ごはんくれるの?
わーい、ごはん!
メドね、おなかぺこぺこなのよ。
メドは好き嫌いしないのよ。
だからどんなのも食べるわ。
ねえ、おすすめは何があるの?
おすすめしてもらったものを一通り食べたら、お団子をひとつもらって
みんなのオスモウ?を観てくるわ
力比べ?スポーツかしら。すごいわね、メド、こういうのも好きよ。
生き物が強さを比べ合うのは自然なことだもの。
あっ、見たことあるひとが出てたら応援するわね。
がんばれ、がんばれーっ
誰が勝ってもうれしいけど、
お知り合いだとちょっぴり、うれしいが増すのね。
ふふふ、ふしぎ。
……ほんとは、血が欲しいのだけど、そこはがまんね。
だってメド、わるいこじゃないんだもの。
村の復興を手伝おうという想いはあれど、まずは少しだけ休みたい。
最前線を駆け抜け、その手練手管で鬼達を捕縛して回った立花・乖梨(bye-stader・f05235)は、先程までとは打って変わって活気に満ちた村の中を後ろに手を組んで歩いてゆく。
(色々と為すべき事はありますけど、折角なので宴に参加させて貰いましょう)
多少は栄養を取って休息しなければ、如何にイエーガーといえども筋肉痛は確実である。ましてや彼女の細腕で鬼達を引き倒して回ったとあれば尚更だ。
幸い、炊き出しはそこかしこで行われていた。乖梨は労せず大鍋の一つに寄って、頭の上に音符でも浮かんで見えそうな笑顔で給仕の男に声をかける。
「お鍋と、お酒を一つずつ頂ききたいです!」
「やあ、猟兵様じゃあねえですか。どうぞどうぞ、たっぷり召し上がっておくんなさい」
「ありがとうございます!」
大椀に綺麗によそわれる鍋と、この寒空にぴったりの熱燗がすぐさま差し出される。感謝の言葉と引き換えに押し戴くと、どこか適当に席を探して左右を見渡す。
「……あら」
乖梨は目を瞬かせた。ザワついた祭りの喧噪の中でも、一際どよどよとざわめいている一帯があったためだ。
歩み寄れば、何が起きているのかはすぐに解る。
堆く積み上がる空の椀。その隣でもちもちと焼きおにぎりを頬張るメドラ・メメポルド(フロウ・f00731)。
そして、悪魔めいた姿のまま、頭部にある口とおぼしき部分を開けて、鍋を喰らうリゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)の姿があった。
「リゥ・ズゥは、血を使いすぎた。まだ、腹が満ちない」
「どへええ、魂消た! こんなに食う御仁は初めてだあ」
「おうい、他から鍋持ってこい鍋!」
「血もあると、助かる」
「血ィですかい」
流石に少々面食らった顔をする村人だったが、けれど相手は自分たちを救ってくれた英雄である。滅多なことではないと思ったのか、提案するように言う。
「鶏舎で鶏を〆てるころでさ、それでよけりゃあ掛け合ってみやしょう」
「構わない。助かる」
「よかったら、メドのぶんも欲しいわ」
「へい!」
ドライバーを用いる性質上、血液の補充を求めるのは自然なことだろう。出来れば人のものがよかったが、リゥ・ズゥもメドラも贅沢は言わなかった。サムライエンパイアの片田舎の村のどこかに注射針とシリンダーが転がっているわけもない。おとなしく村人の厚意に甘える。
村人らが慌ただしく行き交う中、リゥ・ズゥはまた一つ空の椀を重ねる。それと同時に焼きおにぎりをひとつ平らげたメドラが、ぱちぱちと目を瞬いて、自身の隣を指で示す。
「座らないの?」
「え、ええ」
インパクトが大きすぎて座っているどころではなかった。腰を下ろした乖梨の座高よりも高く、木椀が積み重なっている。
「……これ……一人で?」
「メドも少しだけ食べたけれど、ほとんどはリゥさんが食べたのよ」
ゆらゆらふわふわと答えるキマイラの少女。ここには空気も地面もあるのに、なぜだか周囲が海のような気すらしてくる。
月の夜に揺蕩う海月のような印象を受ける、そんな少女だ。
「食べないのか?」
暫くメドラに視線を注いでいた乖梨に不意に横から掛かる声、リゥ・ズゥだ。ブラックタールである彼の表面は泥が渦巻くように流動しており一種異様な様を呈していた。目(或いは眼窩)とおぼしき窪みの奥で瞬く赤い光が、乖梨の手元で湯気を上げる鍋にちらりと向く。
「だ、ダメですよっ。まだ私、頂いてないんですから!」
「そうか」
リゥ・ズゥはしょげた風もなく佇まいを直し、村の男達が消えていった方向に視線をやった。
些かぶっきらぼうで言葉少ななきらいはあるが、けれども言い換えれば物静かで落ち着いている。黙って胡座を掻き村人らを待つその佇まいからなんとなく愛嬌を感じて、乖梨は微笑みながら箸を手に取り、手を合わせて鍋をつつき出す。
決して豪華絢爛ではないが、旬の鱈のハリのある身、村で採れた新鮮な野菜、乾物から取られた豊かな出汁が、しみじみと染み入るような旨みを実現している。
「はあ……美味しい。美味しいご飯を食べる、村人が宴で賑わう――生きるというのは、幸せですね」
「そうね、メドもそう思うわ。おいしいものを沢山食べて、ふわふわするの、好きよ。死んでしまったら、それもできないもの」
メドラは調子を変えず、揺蕩うような口調で言う。微かにその頬が上気しているのは、彼女もけっこうな量を食べているからであろう。よく見てみれば、積み上がっているのは鍋の空椀だけではない。焼きおにぎりの乗っていた木皿、骨付きの獣肉、湯呑み、野菜の欠片が僅かに残った陶器の皿。「猟兵様、ウチのお団子も食べておくれよ」「わあ、うれしい。いただきます」串団子が横からエントリー。こうして見ているだけでもけっこうな量である。
もちりもちり、と一つ団子を口に含んで細い喉を動かしてから、ところで、とキマイラの娘は言葉を続ける。
「そのすてきなビンに入っているのは、なあに?」
メドラが示したのは燗を付けてもらった徳利である。ああ、これはお酒ですよ、と回答しながら、ふと乖梨はリゥ・ズゥのほうへ目を向けた。
「……ちなみにリゥ……さんは、飲める年だったりするんですか?」
「試したことは、ないが。相撲のあとに、貰ってみるのも、悪くないか」
「あっ、オスモウ、リゥさんも出るのね」
メドラがふわふわながらに、やや華やいだ声を出す。生存競争を原義とする自他の個体性能の比較は、本能的で自然なことだ。メドラはそうした競争ごとに肯定的であった。
「応援するわね、がんばって」
「どういったルールかは、知らないが。興味深い。相撲、覚えたら、リゥ・ズゥは、更に強くなれる、はず」
強さに対して貪欲なリゥと、競争を肯定するメドラ。どこか波長が近いのか、楽しげである。
宴の中で、なんとなく他の猟兵との距離が縮んでいく。戦い終わったあとの開放感と共に訪れるこの時間を噛みしめるように、乖梨は手酌した熱燗をくい、と傾けるのであった。
「美味そうな団子だな、一串貰おう」
「はいっ、どうぞ! また欲しくなったら声をかけてね、猟兵様! さっきもこんな小さくって可愛い猟兵様が、沢山召し上がってくれたんだよ」
「それは重畳、重畳。……おれは燃費がよくてな、一つきりで充分だ。ありがたく頂くよ」
祭りの喧噪が途切れるあたり。村の中心からやや離れた場所。
団子を配って回る少女から一串の団子を受け取り、ひらり手を振り歩むのは斎部・花虎(ヤーアブルニー・f01877)である。食みながら村はずれに向かって歩く。
今もその場では、交代で柵や鐘楼、壊れた家屋などの補修を行っている男達が引っ切りなしに動き回っている。
「あいたたた……」
腰を痛めたのか、壁に手をついて痛みをこらえる風な壮齢の男性を認めると、花虎は小さいが、通る声で彼に声をかけた。
「もし、御老体」
「あたた、……うん? こりゃあ猟兵様、お見苦しいところをお見せしちまいやして」
「向き直ることはない、そのままでいいよ。皆忙しく動いているから、手伝いに来たんだ」
慌てて姿勢を正そうとする老人を宥めるように言う。手近な男らに作業概要を聞き、腰を痛めた老人の世話を引き継ぐと、花虎は軽く腕を捲る。
「いや、あの、猟兵様。ありがてぇこってすが、本当にいいんで……?」
「ああ、構わん、おれがやる。……こんななりだが御老体たちよりかはずっと力が出る。本当だ」
花虎の体躯は恵まれたものとは言いがたい。身長は一四四センチメートルほどと、彼女が矮躯と自分で言うように小柄である。しかし、大きな木の柱を片手でひょいひょいと持ち上げてみせれば、村人も引き攣った顔で「是非よろしくお願ェします」としか返せない。
花虎はよく働いた。大きな資材を運び、屋根に刺さった矢を抜いて周り、板を接いで雨漏りを治し、散らかった刀や金棒やらを鍛冶場に運んで炉に入れたり。額に汗して動き回った。
最後の仕事は、鐘楼の柵の修理だった。他にも補修を手伝っていた猟兵がいたのだろう、自分一人ではこうも早くは終わらない。
資材片手に鐘楼を跳び登り、頂点に着地する。地の果てで、もうすぐ夕日が沈もうとしていた。
(灰色は、来なかったか)
彼にとっての初仕事である。きっと緊張が勝っているだろう。
ならば仕方ない、と花虎は鐘楼の、無事な柵に肘をついた。
太陽が沈んでいく。明日も、ここで生きていくひとびとを照らしてくれるだろう。
「おまえの懸念は晴らされたよ、灰色」
もう暫くしたら、美しい夕焼けが見えるだろう。
それは猟兵達が勝ち取ったもの。それを見られるまで、もう少しここにいようかなと――
花虎は長い睫を伏せ、あえかに笑うのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴