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エンドブレイカーの戦い⑭〜疾風は孤独に征く

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー #天翔回廊ヘイズワース #ウインドゼファー

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●革命を捨てて求めるものは
 滅びの大地、復興した『天翔回廊ヘイズワース』を赤き疾風が駆ける。
 非常に優れたスカイランナーのように星霊建築の壁を、天井を、床を蹴って走る彼女は『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』という11の怪物。
 手にした巨大な蒼き剣から高笑いが響く。再びその『ダイアモード』という喋る武器を手に取った最後の担い手との奇縁を楽しむかのように。
 一方の赤きエリクシルの仮面に顔を隠した女――かつては『革命聖女ゼファー』、キマイラフューチャーへ転生してからはスピード怪人『ウインドゼファー』となった彼女は、ただ一つの目的のためにこのヘイズワースを占拠していた。
 無人の店に偶然行き当たり、この都市国家で作られたらしいジャガイモを一つ手にとった。
 器用に素早く手慣れた手付きで皮を剥いてそのまま食す。革命聖女であった頃から好きだった、懐かしい味。
『……私には、蘇らせたい人達がいるんだ。長い人生を共に歩んだ私の大切な友達……』
 ラビットバニーとエイプモンキー――キマイラフューチャーでも足跡を残しシステム・フラワーズでの戦いで散っていった二人。
 強大だったからかウシュムガルだけの力では蘇らせられなかったが、他の11の怪物と沢山のエリクシルを手に入れれば蘇らせることもできるかもしれない。
 故にかつての革命聖女はありったけの速度で猟兵を迎え討つ。
 たとえどれ程の犠牲を積み上げても、骸に剣を突き立ててでも願いを叶える――誰かのためでなく、彼女自身の身勝手な願いのために。

 グリモアベース。
「拒絶の壁は全て消失し、『11の怪物』との直接決戦も順調に進んでいます。そして、天翔回廊ヘイズワースを占拠する11の怪物『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』についての予知が視えましたので、皆様にはヘイズワースに向かっていただきたいと思います」
 そうマウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)は集った猟兵達に要請する。
「このウシュムガルと融合したウインドゼファーというオブリビオンは既に皆様の中も戦った方がいるかも知れません。キマイラフューチャーの戦争で猟兵に倒され完全に滅ぼされた筈の彼女なのですが、『ドン・フリーダムのCG』が何らかの方法でウシュムガルとコンタクトを取って融合蘇生させたようなのです。そして、このウインドゼファーは元はこの世界のラッドシティでエンドブレイカーと戦った革命聖女ゼファー、更に喋る武器の使い手として再現体として蘇った疾風槍ゼファーでもあるようで、今はかつて振るった喋る剣ダイアモードを再び手にして友であるエイプモンキーとラビットバニーを蘇生する為のエネルギーを探しているようなのです」
 何とも紆余曲折を経て舞い戻ってきた彼女ですが、厄介な速度は変わらないようだとマウザーは説明する。
「ゼファーは完全に防御を捨てて猟兵を駆逐する為に何者にも負けない超スピードで襲い掛かってきます。こちらのあらゆる攻撃は致命傷となり得ますが……向こうは必ず先制して超威力の攻撃を叩き込んできます。攻撃させなければ、当たらなければ問題ないといったところでしょうか。どうにかそのスピードに対応できなければ一撃当てることすら難しいでしょう」
 そう説明したマウザーは、蝋燭の形をしたグリモアに火を灯す。
「……そういえば昔、完全に袂を分かった時に分からず屋と初めて言われたとも言っていましたね。紫の兄弟という同志は居たけれども、真の意味で友だちと呼べる、接してくれる存在が居なかったのかもしれません。だからこそ、同じ目線で共に生きることができた友達を蘇らせたいという想いは強いのかも。推測ですけどもね」
 それでは、ご武運を。そう締め括ったマウザーは太古の時代に伝説の勇者が生まれ、近年ようやく滅びより復興した都市国家へと、猟兵を転送した。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 疾風槍は捨てたようです。

 このシナリオはエンドブレイカー!の復興した『天翔回廊ヘイズワース』で『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』と戦うシナリオとなります。
 ウシュムガル・ザ・ウインドゼファーは全ての守りを捨てた超スピードで襲い掛かってきます。そのスピードから放たれる攻撃は必ず先制攻撃で超威力を誇りますが、逆に猟兵からの攻撃は必ず致命傷となります。
 下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……敵の「超スピード」と先制攻撃に対処する。
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 それではご武運を。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』

POW   :    アクセラレイト・デザイア
全身を【エリクシルの輝き】で覆い、自身の【誰に邪魔はさせないという意志の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    ゼファー・タイフーン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【嗤う剣ダイアモード】から【勢いを増し続ける竜巻】を放つ。
WIZ   :    嘲笑せし斬風
【嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波】を【スピード怪人の加速能力】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルシエラ・アクアリンド
知る限り人の為にと何時も駆けていた彼女
正直共感出来る部分が無い訳でもないけど
同時に決して遂行させる訳にも行かないから


超スピードの先制攻撃の対応

魔法貯めと結界術で強化させたUC elementum展開
自身にオーラ防御で防御を強化させ
無数で光弾で此方に向かってくるのを阻害させつつ
魔力貯めした魔力を纏わせた魔導書の風と羽根で攻撃の軌道そらす
直後精神攻撃で強化したUC蒼の天蓋発動させ状態異常と嵐でスピード抑え込みを狙う

その後空中機動、軽業、第六感、索敵利用しつつ
光弾操り囮や行動の邪魔をしつつ移動しピードに対応し攻撃は魔導書の風と羽根で行い
死角作りつつ可能ならば先に剣を手放させる様攻撃
回復は基本風任せで


箒星・仄々
余程大切なお友達だったのですね…
また会いたい気持ちも当然です

けれど
過去に心惹かれて
未来へと歩めないお姿を
お友達は悲しんでおいでかも知れませんね

超スピードの分
急な方向転換や小回りは難しいはず
都市の入り組んだ路地や曲がり角
天井や床下の穴
等々に逃げ回ったり隠れたりします

剣の嗤い声を猫耳で探知して軌道を予測
にゃんぱらりっと物陰に避難して
竜巻を回避

先制を凌ぎましたら
同上で逃走を続けながら機を見てUC発動

高速で直進してくる経路をペロして
転倒していただいたり
物陰で待ち伏せしてぺろして
武装を取り落とさせていただいたりしましたら
摩擦減の鋭い突きで倒します

海でお友達と会えますように



●疾風の異名は健在
 猟兵達が転移してきた天翔回廊ヘイズワースは酷く静まり返っていた。
 ドローシルフによる風も殆ど感じない、嵐の前の静けさといったところか。
「余程大切なお友達だったのですね……また会いたい気持ちも当然です」
 小柄な体で黒い猫の耳と髭をぴくぴく動かしながら、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はそう呟いた。
「正直共感出来る部分が無い訳でもないけど……」
 ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)が知る限り、人の為にと何時も駆けていた彼女。
 言っている事が真実ならば、そんな彼女に友達ができてその復活の為に戦っているというのは完全には否定しきる事は難しい。
 しかし、同時に、
「決して遂行させる訳にも行かないから」
 ゼファーの祈りが成就すれば猟兵はこの世界から放逐され、大地が殺された世界は恐らく絶望の|終焉《エンディング》を迎えてしまう事だろう。
 もし大地が殺されずに済んでゼファーが逃れたのならどうなるのか、それは不明だがあまりいい事にはならないように思われる。
 そしてそれに加えて。
「過去に心惹かれて未来へと歩めないお姿を、お友達は悲しんでおいでかも知れませんね」
 それ程までに取り戻したいという友人がどんな性格だったのかは、生前の彼らに遭った事のない二人には分からない。
 それでも、もしエイプモンキーとラビットバニーとやらが善良ならきっとそう思うだろうと、仄々は思う。
 ――二人は風を感じる。
 そよ風から疾風、そして暴風へ――スピード怪人としてのエンジン音を響かせ、凄まじい速度で『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』は猟兵達を放逐せんと襲い掛かってくる。
 咄嗟にルシエラはユーベルコードを起動しようとするがそれを凌駕するゼファーの超速度――先制攻撃には対抗できない。
 それでもオーラを纏いつつ魔導書『碧咲の君』に溜めた魔力で風と羽を巻き起こし竜巻をほんの僅かに逸れせば、狩猟者の勘に従って星霊建築の建物を足場に身軽に飛んでどうにかやり過ごす。
 そして仄々の方は、路地へと飛び込み飛翔するゼファーから逃れんと入り組んだ地形を逃げ回っていた。
 地形ごと破壊してくる凄まじい勢いの竜巻は黒猫一匹逃さないと襲い掛かってくるが、振り返りもせず仄々は竜巻を小柄な体で上手く躱していく。
 ぴこぴこと動く猫耳は、ダイアモードの五月蠅い嗤い声からその位置を予測していて、にゃんぱらりっと物陰に隠れた。
 竜巻の初撃を凌ぎきった二人、反撃に移ったルシエラはユーベルコード【elementum】、そして【蒼の天蓋】を同時に起動。
「思う侭に」
 言葉と共に彼女の周囲に防御結界が展開されて、襲い掛かる加速し続ける竜巻の暴威を弾き返す。
「――どうか力を貸して頂戴ね」
 彼女の言葉は穏やかでいて芯が強い。救う術がない敵には迷いなく粛々と、そして暴風に抗い命を賭す仲間を必ず守るという信念・
 その強さを表すかのような蒼き空間の檻が戦場全体に展開されて、ゼファーのただ荒々しい風とは異なる風が吹き始める。
 竜巻に傷つけられた猟兵達の傷が涼やかな癒されていき、逆に凄惨なる嵐がゼファーに襲い掛かり、その精神を惑いへと陥れていく。
 更に嵐に紛れ飛来する光弾は、更にゼファーの速度を見切れる程度にまで抑え込んでいって、そこで物陰に隠れていた仄々が飛びかかり手元をぺろりと舐めた。
 嗤う剣が滑り落ちそうになる。掴み続けようと逆のバトルガントレットを纏う手で掴み直そうとするが、体勢を崩したゼファーの隙をルシエラと仄々は見逃さない。
 ルシエラの魔導書より放たれた羽と風がゼファーの視界を塞ぎつつ、嗤う剣を握らんとする手を強かに攻撃すると同時、摩擦を減らした仄々の鋭い突きが防がんとするゼファーのガードを滑り抜けて、その胴に差し込まれた。
 速度の為に守りを犠牲にしているが故に、そのダメージは甚大。
 だが、ゼファーは手放さない。離れる仄々と魔導書捲るルシエラへと竜巻を放ちながら、再加速する。
『ヒャヒャヒャ! どうあっても俺の事が手放せねえようで!』
『黙れ。お前はただ武器としての役割を果たせ』
『はい』
 その剣を手放したのなら友の復活に届かないと確信しているのだろう。意志の強さは何よりも強く自身の信念に向けて突き進む――その彼女の在り方は怪物と融合してなお変わりないようだ。
 止めるには完全に仕留めるしかない、そう感じ取ったルシエラは粛々と次の攻撃の為の準備を始める。
(「海でお友達と会えますように」)
 そう仄々は祈りながら、嵐の如き元革命聖女を食い止めんと星霊建築の複雑な路地へと駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

豊川・広宣
※連携/アドリブ/改変可

先制攻撃されても当たらなきゃいいじゃん!オレってアッタマいいー!

宇宙バイクに騎乗して【ゴッドスピードライト】で移動速度アップ!さらに逃げ足で素早さ上げて、攻撃飛んできそうな場所は勝負勘で回避!【天賦の才】で行動成功率を上げるのも忘れずに。
追跡しながらバイクブラスターのレーザー射撃で攻撃!

「アンタ、オレとスピードの向こう側に行ってみない?え、ムリ?じゃいいや」
あっさりフラれちゃったねー、気を取り直してジャイアントキリングと行こうぜ!

バイクを脳波操縦モードに切り替え、軽業でバイクから飛び上がりサッカーボールで【ライトニング・シュート】をブチ込む!

「オレ、昔の話知らねーのよ」


フェリチェ・リーリエ
いやあれゼファーなんだべか?なんつーか…イメチェンしたべなぁ…てか知らん間にオトモダチできてたんだべか?(革命聖女時代しか知らない人)
…はっ、つまりおらの知らんとこで友達いっぱいのリア充になってたと!?そんなら爆破せんと!

ヴァルキリーの翼で飛翔、無数の【羽を飛ばす】ことで竜巻の軌道を【見切り】、【空中機動】で【ダッシュ】、全力で回避を狙う。
避けきれないなら【オーラ防御】でダメージを軽減。

どうにか先制攻撃を凌げたなら反撃開始、都市国家の【地形の利用】。建物が密集した狭い通りに誘い込み指定UC発動。竜巻の突風も利用しUC効果であらゆるものを巻き上げ威力と攻撃回数を増加させる。
緊急時なんで、すまん!


臥待・月紬
波乱万丈な経歴だけど、行きついた先の悲願が親友の復活とは。
正直、共感してしまうッス。
それでも、その手段として理不尽を振りまくつもりなら、自分は絶対に認めないッス。
全力で止めさせてもらうッス!

『例の煙』をどろんと出して煙幕をはりつつ【化術】で多数の分身を形成。
標的を分散させて先制攻撃の空振りを狙う。

分身で時間を稼ぎ、UCを使用。
式神化した鉄条網を網状に、立体的に張り巡らしたトラップフィールドを作成。
さらに、化術で【迷彩】を施して鉄条網を見えにくくする。

UCの効果で相手の接近を探知したら、【式神使い】で鉄条網を操って絡め捕り、拘束!
そのまま引き寄せてサブマシンガンの【零距離射撃】を叩き込む!



●祈りの涯
 竜巻を放ち殺傷力の高いダイアモードを振り回し、激闘を繰り広げるウシュムガル・ザ・ウインドゼファー。
 その激戦地から少し離れた位置に三人の猟兵が居た。
「先制攻撃されても当たらなきゃいいじゃん! オレってアッタマいいー!」
 健康的な色黒のイノセントの少年、豊川・広宣(フィールドの運び屋・f41336)は能天気にもそんな事を言っている。
 それが簡単にできれば誰も苦労はしないのだが、才能溢れる少年の万能感は意外とそれを実現してしまうものなのかもしれない。
「いやあれゼファーなんだべか?」
 星霊建築の建物の上で、遠くで荒れ狂うスピード怪人の姿を遠目に見ながら、フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうはっさい・f39205)はかつてエンドブレイカーと相対していた革命聖女を思い出し、驚愕していた。
 あの目立つ長い金の髪と嗤う剣ダイアモードの青、そして左手に装備したバトルガントレットと記憶にある姿と一部一致している。
「オレ、昔の話知らねーのよ」
「おらも革命聖女の時代しか知らないけど……」
 首を傾げる広宣にフェリチェが大まかに語ったのは革命聖女として戦いエンドブレイカーと袂を分かち討たれ、再現体として喋る武器の担い手として甦り再び討たれた――そんな、この世界での革命聖女の顛末。
 そこから先はグリモア猟兵の予知で語られていた事で、他の世界に転生し怪人となって今のキマイラフューチャーにさえその足跡を残した彼女はオブリビオンになって猟兵に討たれ、更にドン・フリーダムのCGにより11の怪物の一柱と融合しこの世界に舞い戻った。
 何ともまあ、波乱万丈な経歴である。
(「なんつーか……イメチェンしたべなぁ……」)
 大魔女との最終決戦から約十五年、その三年前だから十八年も経っているのに加え、どうにもキマイラフューチャーで相当長い時間を彼女は過ごしてきたようだ。姿形が大きく変わっているのも無理はなくて、そして、それだけの時間を経て彼女が行きついた先の悲願が怪人時代に得た親友二人の復活なのだという。
「……正直、共感してしまうッス」
 静かに話を聞いていた東方妖怪の臥待・月紬(超級新兵(自称)化け狸・f40122)が抱いた感想はそれだった。
 失った大切な存在を取り戻したい。それが手に届くものであるならば尚更で、誰もが抱いてもおかしくない感情だ。
 それでも、月紬は思う。
「その手段として理不尽を振りまくつもりなら、自分は絶対に認めないッス」
「……てか知らん間にオトモダチできてたんだべか?」
 フェリチェが疑問を口にした。ゼファーがキマイラフューチャーでどのように過ごしたのかの詳細を知るものは猟兵にもエンドブレイカーにも誰も居ないだろう。
「……はっ、つまりおらの知らんとこで友達いっぱいのリア充になってたと!?」
 ――雲行きがなんだか怪しくなってきた。
 実は彼女は大魔女と戦っていた時代からの嫉妬戦士、嫉妬の心は恋愛だけではなく友情までをもリア充と認識するようになってしまっているようだ。
「そんなら爆破せんと!」
 妙に気合の入ったフェリチェはヴァルキリーの翼を広げる。
 そして丁度その時、ウシュムガルは天翔回廊ヘイズワースの街並みを三人めがけ超速度で翔け抜けてきていた。
 恐ろしい速度で低空を飛翔するゼファーが嗤う剣ダイアモードを振るい竜巻を放つ。最初から高速、その上で加速してくる竜巻に最初に狙われたのは宇宙バイクに騎乗した広宣。
「あっぶねーな!」
 彼は逃げ足の速さを活かしてどうにか巻き込まれぬようにバイクを走らせる。どこもかしこも危険だが、僅かに見える活路に躊躇なく飛び込んでいく判断力はサッカー選手としての勝負勘故か。
 それでも圧倒的な力量差は存在しており、このまま戦い続ければそう時間もかからず彼はウリディムマの剣の錆となってしまうことだろう。しかしその時、フェリチェがゼファーの視界に飛び込んでくる。
 反射的にゼファーは加速する竜巻をフェリチェにも放つが、それに対し彼女は翼から羽根を竜巻に飛ばして応戦。
 加速する竜巻はその羽根を容易く蹴散らしその回転に飲み込むが、フェリチェの本命は竜巻の軌道を見切ること。翼を巻き込んで視認し易くなった竜巻を、翼を羽ばたかせた空中機動で加速、全力でその横をすり抜けた。
 二人に攻撃を凌がれたウシュムガルだが、彼女は即座にもう一人、狸獣人のような姿の月紬へ落下速度を乗せて高速で突っ込んでくる。
「全力で止めさせてもらうッス!」
 向かってくるウシュムガルに東方妖怪の少女は煙をどろんと出して煙幕を展開し、視界を悪化させる。
 煙であるなら風には吹き散らされる、嗤うダイアモードが耳障りな音とともに斬撃の衝撃波を煙幕に叩きつけてきた。
 煙は散らされてしまい、その中に居た人影を両断、
『ギャハハハ! まず一人だぜぇ!』
 嗤うダイアモードとは異なり静かなゼファーが着地、そのまま走り抜けようとしたがそこにあるべき死体がない事に気がついた。
 周囲を見回せば月紬が沢山――妖怪の化術により創り出した分身だ。
 無言でゼファーは片っ端から切り捨てにかかるが、いずれも手応えはなく本体には届かない。全てを切り捨てて既に月紬自身はどこかへ逃げたのだと理解し、ゼファーは路地へ――フェリチェが降下した辺りを目掛け再加速する。
 襲いかかる竜巻を凌ぎきったフェリチェは一気に加工し星霊建築の路地を走っていた。
『逃さない……!』
 そんな彼女をゼファーはその超高速で追いかける。全てを切り捨て、彼女自身の私欲を遂げようとする元革命聖女はかつて以上に必死なようにも見える。
 ダイアモードより竜巻が再び放たれフェリチェに襲いかかる。それをギリギリの軌道で回避しつつ、掠めそうな位置もオーラで守り無傷のまま。
 しかしゼファーは速すぎる。このあたりが限界だと、判断してフェリチェは振り返って、
「緊急時なんで、すまん!」
 ユーベルコード【なんちゃってバインドウインド】を起動すれば、一陣の突風が建物の間を吹き抜けて転がっていた雑多な物品を空へと巻き上げる。
 巻き上げられた砂塵や看板は真下からゼファーに襲いかかり命中、連続で受けたことにより守りを捨てたゼファーに重大なダメージを与えることに成功する。
 そして、フェリチェの目的地では月紬が応戦準備を整えていた。分身とフェリチェが稼いだ時間で月紬は琥珀色の瞳を瞬かせて、ユーベルコード【結界術「標縄張り・改」】を起動する。
 1270メートルもの式神化した鉄条網が周囲の地形を利用しつつあっという間に自身の周囲に立体的に敷設していく。
「そこは既にこっちの領域ッス!」
 飛び込んできたゼファーに月紬が叫ぶ。この領域はは月紬が構築したトラップフィールド、接近した者を感知するための結界だ。
 更に化術で迷彩されたそれは非常に視認しづらくなっていて、まして、超高速で駆けるゼファーがそれを認識できるかどうかはわからない。
 足止めを喰らったゼファーに、広宣がバイクで飛び込んでくる。容赦なく迎撃の竜巻が襲いかかってくるが、それを彼は見事な操縦技術で躱してみせた。
 例えほんの僅かでも可能性が存在するのならば、彼の【天賦の才】はそれを最低でも六割は可能にし、その成功を見事引き当てたのだから。
 距離を取ろうとするゼファーに追い縋り宇宙バイクに装着した大型ブラスターのレーザーを発射する。
 嗤う剣で光線を弾くように切り捨てるウシュムガルに対し、広宣はちょっとした悪癖から高速でバイクを飛ばしながら声をかける。
「アンタ、オレとスピードの向こう側に行ってみない?」
『無理』
 一刀両断。たとえ天賦の才あれど0であるものは不可能なままだ。
「え、ムリ? じゃいいや」
 あっさりフラれてしまったが、そこからの立ち直りの早さも広宣の長所、気を取り直しこの|大物喰らい《ジャイアントキリング》を狙いにかかる。
 広宣に気を取られたウシュムガルに対し、月紬は式神化した鉄条網を操作して侵入したゼファーを一気に絡め取る。
『……邪魔だよ!』
 ダイアモードの斬撃波で吹き飛ばし高速から逃れようそうとするが、この鉄条網は恐ろしく長く、無事な部分が次から次に襲いかかり、とうとうスピード怪人を拘束する。
 そこに広宣の宇宙バイクが突っ込んできた。
 脳は操縦モードで操られるバイクの上に乗った彼は、そのバランス感覚で更に高くに跳躍、彼の意思に呼応して雷を帯びたサッカーボールをゼファー目掛け全力で蹴り込んで、鋭い爪のような傷跡を刻み込んだのだった。
 血を吐くゼファー、しかしその闘志は全く失われておらず、強い目的意識が肉体を凌駕し、彼女を立たせ続ける。
 ウシュムガルが嗤う剣を振るい鉄条網を弾きとばす衝撃波を放とうとするが、その前に式神はウシュムガルの身体を45口径サブマシンガンを構えた月紬へと引き寄せて、そして、化け狸の妖怪は零距離からありったけの弾丸をぶち込んだ。
『そん、な……』
 赤き仮面の下から、ゼファーの声が聞こえる。
 守りを完全に捨てた状態でまともに猟兵達の攻撃を幾度も喰らった以上、その肉体は限界を越えている。
 俯せに倒れ込むゼファーの身体が消滅していく。
 風のように消えゆく彼女を見送った猟兵達は、このエンドブレイカーの世界を守るべく、次の戦場へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月18日


挿絵イラスト