エンドブレイカーの戦い⑮〜帰ってきた大海賊であ〜る!
●|水神祭都《アクエリオ》コソコソ昔話
むか~しむかしはるか昔、ゴンドラ海賊のウォータという者がおったそうな。凶悪残忍なウォータは水神祭都アクエリオを荒らしに荒らし回って、ちょっと腹を立てただけでも人を殺すことなど屁とも思わない無法者に恐れた人々は大人しく金銀財宝を差し出すしかなかったそうじゃ。
「ワガハイは大海賊ウォータであ〜る! お前の物はワガハイの物、ワガハイの物はワガハイの物であ~る!!」
そうして行く内に水神祭都アクエリオを荒らし尽くしたウォータは海賊諸島にまで版図を広げるとそこも荒らしに荒らし回り、遂にはアマツカグラにまで到達してしまった。
「この世のお宝はぜ~んぶ、ワガハイの物なのであ~る!」
じゃが、不思議なことにアマツカグラへと上陸しようとした直後、不思議なことにウォータの姿はまるで『神隠し』にでも遭ったかのように影も形も消えてしまった。そんな風のうわさが海賊諸島から水神祭都アクエリオにまで伝わると、悪逆なゴンドラ海賊に泣き寝入りせざるを得なかった人々は安堵したが同時に不安に襲われたんじゃ。ただ姿をくらましただけに過ぎず、いずれあの海賊が戻ってくるかも知れないと。
そこで人々はウォータの脅威を語り継いで行き、一年、十年、百年と過ぎた頃、その話に変化が起きたんじゃ。段々とウォータに纏わる話が|変容《二次創作》されていき、暴れん坊のゴンドラ海賊ウォータがより凶悪なゴンドラ海賊や怪物をやっつける英雄譚や冒険譚へと変わっていき、それが何時しか伝説のゴンドラ海賊ウォータとしてまことしやかに語り継がれて言ったんじゃ。
その顕著な例が、水神祭都アクエリオで催される水神祭のマスコット『ウォータくん』であり、生き写し同然に忠実に再現された姿も凶悪残虐な悪性とはかけ離れたコミカルな姿に人々から慕われ、過去は埋もれてしもうたんじゃとさ。
(語り部:アクエリオ神官トキータ・フジオン)
●そして時は現在
「大海賊ウォータであ〜る! エリクシルの野郎共、ワガハイの願いをバンバン叶えるのであ〜る!」
荒涼とした最果ての荒野に陽気な事が響き渡る。コミカルでカートゥンな姿は水神祭のマスコット『ウォータくん』以外の者でないが、これはウォータくんを元にエリクシルが変化したモノではない。その逆で、忽然と姿を消してオブリビオンと成った伝説のゴンドラ海賊ウォータが迷い込んだ小世界の怪物『クルール』と融合を果たした『クルール・ザ・ウォータ』に以外の何者でもないのだ。生来の凶悪残忍さから神隠しによって世界より放逐された末、怪物と融合したことによって更に凶悪残忍となったクルール・ザ・ウォータは外世界より遂に帰還を果たしたのだ。
幸いなのは、クルール・ザ・ウォータが降り立った地は最果ての荒野で人など住むことも構わぬ大地であったのだが妖しい輝きを放つエリクシルに埋め尽くされており、クルール・ザ・ウォータの願いを聞き届けて眩い輝きを放つ。
──『殺して、バラして、死体を晒せ!』。
それがクルール・ザ・ウォータがエリクシルに願った、単純明快にして曲解の余地も無い願望である。彼の願いを聞き届けたエリクシルは凶悪な進化をし始め、更には最果ての荒野もエリクシルから溢れる副次的なユーベルコードの力によって大海原へと代わりつつあった。ゴンドラ海賊は水上でしか活動できないのであれば、陸地を海に変えることで何処までも屍山血河を築けるという、まさにエリクシルらしい解釈とも言えよう。
「むほ! さっそく、ワガハイの願いを叶えるべく『凶悪進化』をはじめたであ〜るな? その調子であ〜る! 大軍勢で、この世界を擦り潰してしまえであ〜る!!」
●グリモアベースにて
「なのなの、大変なのー! このままじゃ、エンドブレイカーの住民という住民が惨殺されちゃうなのー!」
集まった猟兵たちの前で、クリオネ然めいたナノ・ナーノ(ナノナノなの・f41032)は小さな翼を慌ただしく羽ばたかせながら語り続ける。
「水神祭都アクエリオで開かれている水神祭のマスコット『ウォータくん』のモデルになった伝説のゴンドラ海賊『ウォータ』は生きていたのなの! ウォータは迷い込んだ小世界で怪物クルールと融合して、11の怪物『クルール・ザ・ウォータ』として戻って来たのなの!」
昔話で語られる伝説のゴンドラ海賊ウォータ。相当遥か昔の話だそうだが、現在に至るまでに様々な姿として語り継がれている大海賊であるが、共通しているのはその海賊らしいとも言える残虐性だ。物語の人物であればそれは人物の魅力ともなる要素でもあるのだが、現実となればそうとはならない。何せ読んで楽しむ物語も、|現実《リアル》で血生くさいマネをされては溜まったものではない。
「クルール・ザ・ウォータの願いはありとあらゆる知的生命体を殺戮で、単純明快で残虐極まりないなの。昔はウォータに襲われたら海から陸地に逃げれば良かったそうだけど、ユーベルコードの力で陸を海に変えてしまうから何処まで逃げても無駄なの」
海賊は海から海へと渡って海端の集落を簒奪するモノ。確かに水辺から離れればゴンドラ海賊の魔の手が伸びないのは確かだが、陸地という天然の防波堤が海に変えられてしまえば逃げる術など何処にもない。
幸いなことに、今はまだ人など住むことも適わない最果ての荒野でクルール・ザ・ウォータが版図を広げる準備を行っている最中だと言うことだ。他の11の怪物へ対応しないとならないが、クルール・ザ・ウォータを放っておけばエンドブレイカーの住民は勿論、他の怪物らが退治されて混乱に乗じた殺戮が叶わないと見るや再び神隠しにでも遭ったかのように姿をくらまして他世界に出現する可能性もあり得よう。
そうなれば、今のうちに叩いて今後の憂いを断たねばである。
「問題はここからなの。クルール・ザ・ウォータの願いで凶悪進化したエリクシルが厄介すぎるなの。既にもうゴンドラ海賊団を結成しちゃってて、エリクシルの力でゴンドラも|高速魚雷艇《PTボート》さながらな凶悪改造がされちゃってるなの。速さは水神祭都アクエリオとはまた別物で、ハリネズミさながらな対空紫煙銃座とかも積んじゃって対空防御も完璧とかいう徹底ぷりなの」
果たしてそれはゴンドラと呼べる物なのであろうか?
兎も角、こちらも何らかの水上戦、もしくは水中戦に特化した備えがなければ厳しい戦いとなるのは必定。水神祭都アクエリオでは運河という制約があったが、今回はクルール・ザ・ウォータがユーベルコードによって大海原と変えさせている。持ち込める船の大きさに制約が出ないのは、まさに天佑とも言えよう。
「こうしている間にもゴンドラ海賊団の進行は始まってるなの。今行けば最寄りの集落に辿り着く前に倒せるのなの」
ならば、迷っている暇などない。ナノは胸のハートマークから人類にケルベロスの力を齎した光たる原獣の力を解き放ち、周囲はグリモアの光で白く包まれたる。
猟兵たちは次第に海へと変わりつつある最果ての荒野へと降り立ち、迫り来るクルール・ザ・ウォータゴンドラ海賊団を迎え討つのであった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
色々とまぁ忙しくも暑い日々続きですが、何とか戦争シナリオを出せる見通しが付きましたのと丁度面白そうなフレームが開放されましたので、初エンドブレイカーのシナリオ&戦争シナリオとなります。
●戦場解説
シナリオ難易度は、『やや難』となります。
クルール・ザ・ウォータは「11の怪物」の1柱で、最果ての荒野でエリクシルの第二軍を編成しています。
遥か昔に水神祭都アクエリオを荒らし回ったという伝説のゴンドラ海賊ウォータは、アクエリオから海賊諸島に版図を広げ、その後アマツカグラで「神隠し」に会い、消息を断ったといいます。が、実は神隠しにより放逐された小世界でクルールと出会い、融合していたのです。より凶悪残忍となって帰還したウォータですが、その姿は、アクエリオの人々が水神祭で伝えてきた姿にそっくり。正確な似顔絵だったんですね。
クルール・ザ・ウォータは、大規模ユーベルコードによって最果ての荒野を一瞬にして「広大な海原」に変えてしまいます!
凶悪改造が施されたゴンドラを高速で駆って襲い来る敵に対抗するには、こちらも何らかの「水上戦、もしくは水中戦に特化した備え」がないと厳しいでしょう。
よって、プレイングボーナスは、『凶悪進化エリクシルの群れに対処する/水上戦または水中戦に適応する』となります。
OPでも語られていますが、難易度がやや難しいのもあって空からの攻撃に対しては凶悪改造ゴンドラから紫煙銃座群による対空砲火の洗礼が発生します。その辺も加味して水上か水の中から高速で動き回る凶悪改造ゴンドラ船団を突破してクルール・ザ・ウォータにダメージを与え続ければ、自ずと勝てるといった感じになるかと。
それでは、クルール・ザ・ウォータの野望にも負けない熱いプレイングをお待ちします。
第1章 ボス戦
『クルール・ザ・ウォータ』
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POW : 海賊殺法
【剛腕】で装甲を破り、【ローキック】でダウンさせ、【馬乗りパンチ】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD : 海賊乱舞
【海賊パンチ】【海賊キック】【海賊頭突き】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ : ウォータ・パワーボム
掴んだ対象を【水】属性の【パワーボム】で投げ飛ばす。敵の攻撃時等、いかなる状態でも掴めば発動可能。
イラスト:ばっじん
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
佐藤・和鏡子
潜水艦の様に水中からガジェットショータイムで作った魚雷で敵のゴンドラに攻撃を仕掛けます。
逃げても確実に仕留められるよう動きを読んで(情報収集、戦闘知識)、大量に魚雷をばら撒いて攻撃します。(範囲攻撃、制圧射撃)
普段着がスクール水着の上にセーラー服の上着を着てるだけの水中戦向きのスタイルなので、水中では魚雷に掴まって水中スクーターの様に使って高速移動します。(水中戦でカバーします)
空中は対空火器で防御を固めていても水中は無防備の様ですから。
海賊の時代にはない近代兵器(魚雷)をプレゼントしてあげますね。
シモーヌ・イルネージュ
おぉ、これが海賊の艦隊か。
さすがに壮観だね。
これだけ船があれば沈め放題。好きなだけ暴れられるよ。
船相手なら、こっちは潜水艦になって勝負だ。
水中は宇宙服を着込んで、渦動ジェネレータ『ベクター』があれば動くのに問題はないだろう。
あとは攻撃手段だね。
予め陸から槍をたくさん持って行って、槍に【焼却】【武器に魔法を纏う】しよう。
仕上げにUC【炸裂星雨】で海中から槍を投げ出して、空中で分裂させれば、火槍の雨が降り注ぐわけだ。
狙う必要はないから、がんがん投げまくろう。
ユーベルコードが創り出した海原はどこまでも果てしなく広がる中、どこか陽気な掛け声が温度を合わせるように木霊する。
『ワガハイらは海賊であ〜る♪ 愉快な海賊であ〜る〜♪ ワガハイらが通れば、嵐を呼ぶであ〜るぜ♪』
ナムアミダブツ! クルール・ザ・ウォータ海賊団だ!!
一見すると陽気なゴンドラ海賊だが、紫煙銃の銃座が据えられた凶悪改造ゴンドラを漕ぐのはクルール・ザ・ウォータの願いを聞き遂げて凶悪進化を遂げたエリクシルである。彼らはどれらもクルール・ザ・ウォータの生き写しであり、クローン人間さながらのそっくりさん。言うなれば、クローンウォータというべき悪夢の光景だ。
これもひとえにクルール・ザ・ウォータがエリクシルへと願った『殺して、バラして、死体を晒せ!』の願望を叶えるべく顕現した姿に過ぎず、それらを成し遂げるには凶悪残忍極まりない願い主の存在が最も理に適ったと判断したに過ぎない。結果として、たったひとりでも厄介極まりない伝説のゴンドラ海賊が際限なく増えてしまったといった次第だ。
「おぉ、これが海賊の艦隊か。さすがに壮観だね」
だが、そんな|悪夢《トンチキ》でしかない事態でも猟兵らにとっては些細なこと。シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は剣呑さを微塵とも見せずに、恐るべきゴンドラ海賊団を一望する。
「ゴンドラなはずですが、物凄く速い速度で漕いでいますね。でも、そのお陰でソナーで拾える音に困らなくて済みます」
シモーヌと隣り合いながら、佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)も水飛沫を上げながら高速接近する凶悪改造ゴンドラ群を遠目で見やる。
『前方に殺戮対象を発見であ〜る。野郎ども、全速前進であ〜るぞ!』
オリジナルであろうクルール・ザ・ウォータの指揮のもと、船団はこちらに気づいて進路を急速に切り替えてくる。
「引っかかったようですね。これでこの場に留め続ければ、この先にある集落へと向かわない筈です」
「それでもこの海はまだ広がってるんだよな。どっちにしろ、ちゃちゃっと片付けるに越したことは無いだろうね」
では私はお先にと、水中スクーターを模したガジェットにしがみついたまま水の中に和鏡子はとぷんと沈み、この場にはシモーヌだけが残される。ゴンドラ海賊団が和鏡子が沈んで姿をくらましたことには意に止めず、紫銃の銃座をこちらに向けて水平射撃を行えば小さい水柱が飛沫を上げながら一斉に沸き立つ。
「アタシも静かな水の中に沈みたいところだけど、まずはコイツをぶん投げてからさね!」
ウォータくんと同じ顔ばかりしかない凶悪ゴンドラを漕ぎまくる凶悪エリクシルに睨みつけ、シモーヌの瞳にユーベルコードが顕現する輝きを秘めた光が灯る。
「我に従え。我が尖兵となり、その姿を、力を大地に示せ……|炸裂星雨《ブリュイ・ドゥ・メテオ》!」
掲げるはゆらゆらと穂先の光がきらめく黒檀の槍……『新月極光』。ユーベルコードの名を叫ぶと同時に天高く投げ放たれれば、槍全体が赫々とした焔に包まれると同時に百以上に分裂してクルール・ザ・ウォータ海賊団へと降り注ぐ。
『ムハハハ! そんな攻撃、躱すに易いモノであ〜る!!』
こうも同じ顔だらけだと、どれが本物のクルール・ザ・ウォータであるかは当ててみなければ分からない。そうでれば数で制圧するまで、と放たれた新月極光であったが凶悪改造ゴンドラの機動性であれば躱すなど造作もないこと。
勝ち誇った笑い声でどのウォータもゲラゲラと嗤いながら対空砲火を交えながら散開し始めたが、その様子にシモーヌはしたり顔でニヤリと口角を吊り上げる。
「何を勘違いしてるんだい? アタシが狙ったのはアンタらでなくて……海の下から来てる奴らさ!」
──BACOOOOOM!
新月極光の一振りが水面に突き刺さるや否や、巨大な水柱が爆発音と衝撃波を伴って炸裂した。例え外洋を渡ることが可能な大型なゴンドラであっても、水中からの伝播する衝撃をまともに喰らえば転覆するしかない。
『ナナナ、何が起きたのであ〜るか!?』
「ビンゴ! 熱源探知魚雷くんがシモーヌさんのユーベルコードをしっかり補足してくれたみたいです」
その正体は、先ほど水中へと姿を消した和鏡子が操作する水中スクーターなガジェットに搭載された魚雷である。彼女も自由自在に動き回る凶悪ゴンドラ群へは自動追尾機能があるとしても躱されてしまう懸念が払拭できずにいたが、それを同じく悩むシモーヌと協議した結果生まれた戦術だ。魚雷とは先端に炸薬を仕込んだ兵器であるが、何も直撃せずにも水中で炸裂さえすれば自ら伝わる衝撃波で強固な船の下で炸裂すれば|竜骨《キール》を真っ二つに砕く程の破壊力を発揮する。
しかし、その効力も対象となる船が近くになければ発揮できず、凶悪ゴンドラの機動性にかかればあっという間に離脱されてしまうのは目に見えている。そこでシモーヌの|炸裂星雨《ブリュイ・ドゥ・メテオ》が一役買うこととなる。百を超えて分裂する黒檀の槍はいわば投網であり、円形状の囲めば巨悪改造ゴンドラを内部に押し止めることはある程度可能だ。もちろん、シモーヌにとっても縦横無尽に漕ぎ暴れる凶悪改造ゴンドラに当らずとも、燃える穂先が魚雷の弾頭部に当たる起爆剤と果たせば済むという実にラクな仕事でもあったのだ。
「爆発の余波で転覆したゴンドラがあるようですね。海賊時代にはない|近代兵器《魚雷》のプレゼントはまだまだありますよ〜、発射〜!」
自身のユーベルコード『ガジェットショータイム』で際限なく供給され続ける魚雷を再び発射すれば、今度は転覆してしまった凶悪ゴンドラに直撃を果たして巨大な水柱が轟音とともに再び立ち上がる。キラキラと太陽の光を受けて水柱の飛沫の中で輝くのはエリクシルの欠片だ。
つまり、撃破したのは本物のクルール・ザ・ウォータではなく、凶悪進化の末に彼の姿を模したクローンウォータとなろう。しかしながら、数が減ったとなれば本物を引き当てる確率は確実に高まっていくのだ。そうであれば、決して無駄とは言えない戦果において他ならないだろう。
「さて、もう狙う必要はないから、水の中からがんがん投げまくろうかね」
渦動ジェネレータ『ベクター』が装着された強化動力甲冑『アリアージュ』に身を包んでいるシモーヌも自分たちの戦略が上手くいったのを見届けると、とぷんと沈んで潜水艦さながらに姿が水中へ消えていく。だが、再び黒槍は海面を突き抜けて天高くまで放たれ続け、ゴンドラ海賊の船団を一艘たりとも戦域外へと逃さぬとばかりに分裂しては、容赦なく際限なく無慈悲な降り注ぐのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
榊・ポポ
ポポちゃん知ってるゾ!
ギャグっぽい見た目のヤーツほど実際強い法則!
ヱアボーの【水上歩行】で水上【ダッシュ】だー!
砲撃がなんぼのもんじゃい!そのままゴンドラに乗り込めー!
大将を直接討つぞオラァン!
残虐ファイト...ってこれプロレスじゃねーか!そういう意味?!
外野の|エリクシル《ガヤ》もうぜぇ
デキるロボ子出番ダー!
こっちはガラスの灰皿の凶器持ちだコノヤロー!
エリクシルをガラスの灰皿パンチトンファーキックで【蹂躙】しつつーの
【ジャストガード】アンド【連続コンボ】じゃー!
ウォータ君の顔だ!顔を狙え!(頭で動かすぞう君レバガチャしつつ)
一瞬家賃滞納者の顔がプレイバックした気がする!なんかイラっと来た!
「ポポちゃん知ってるゾ! ギャグっぽい見た目のヤーツほど実際強い法則!」
幾槍の燃え盛る槍が空から降り注ぎ、地雷原さながら魚雷が炸裂して水飛沫と共にクルール・ザ・ウォータと瓜二つの凶悪進化エリクシルが漕ぐ凶悪改造ゴンドラが宙に舞うという地獄めいた戦場。そんな中をヱアボーと呼ばれるエアクラフト式のホバーボードにバランスを取りながら操る榊・ポポ(|デキる事務員《トンチキカカポ》・f29942)が、仲間の猟兵の支援の元で吶喊する。
元来であれば対空紫煙銃座による水平射撃でなす術もなく蜂の巣となり、凶悪残忍極まりないゴンドラ海賊らが祝杯を挙げる際のアテとして焼きカカポになる運命であったのかもしれない。しかし、この混乱を利用すれば|そんな未来など捻じ曲げ《エンドブレイカー》れるのは容易いというもの。
「砲撃がなんぼのもんじゃい! そのままゴンドラに乗り込めー!」
水祭都市アクエリオのゴンドラは張り巡らされた水路を行き来する交通手段として小型であるが、このゴンドラ海賊ウォータが駆るゴンドラは簒奪した財宝を積んだり波が荒れ狂う外洋にも耐え得るよう大型なものだ。エリクシルによりマッドでマックスなマッポーめいた見た目の違法改造ゴンドラとなっているが、依然として動力は人力の手漕ぎ式である。
それでもモーターボード並の速力で漕いでいるのだが、銃座を操る者と漕ぎ手のふたり乗りがほとんどだ。ゴンドラの大きさから鑑みれば大の大人がひとりふたり乗り込めるようであるが、ポポのようなカカポであれば問題なく乗り込めよう。
魚雷が炸裂した際に生じた大きなうねりがポポの前に立ちはだかる。このビッグウェーブに乗るしかねぇと言わんばかりにポポは臆することも無くヱアボーを直進させて跳躍させ、一艘の凶悪改造ゴンドラへの着地を果たす。
『これはこれは、飛んでゴンドラに入る今晩のおかずとやらであ〜る』
『見たことない鳥であ〜る。どこが首と胴体の境目なのか、捩じ切って確かめるであ〜る』
凶悪ゴンドラに侵入者が来れば、その乗組員であるクローンウォータくんとも言うべき同じ顔が襲いかかってくる。
「大将を直接討つぞオラァン! って、どれもこれも同じ顔じゃネーカ!?」
オリジナルであるクルール・ザ・ウォータを元にして凶悪進化を遂げたエリクシルがこうも多いと、当たりなのかハズレか正直迷ってしまう。
「いくぞ、ワガハイであ〜る!」
「合わせるであ〜る!」
ウォータらは互いに拳を振り上げ、乗り込んできたポポへと振り落とす。たが、本来のカカポであればなす術もなくご馳走になっていたかもしれないが、デキるポポちゃんは間一髪のところで避ける。強固な甲板にはウォータの拳が深々とめり込み、その破壊力が窺い知れる。
「残虐ファイト...…ってこれプロレスじゃねーか! そういう意味?!」
はたから見ると正にプロレスのタッグマッチ。しかし、一対二の状況であるが相手はお構いなしにポポを潰そうと畳み掛けて続けてくる。その様子を周囲のウォータらが気づいたのか、そこだの外してんじゃないだのやいのやいのとヤジを送って来れば正しくプロレスであった。
「外野のエリクシルガヤもうぜぇ……こうなりゃ、デキるロボ子出番ダー!」
流石のポポちゃんもコレにはブチギレてしまい、肩掛けしているバッグから隠し玉……家賃滞納者玉砕兵器『デキる子ロボ子』を取り出す。ポポでも持てる大きさのフィギュアであるが、持ち主の危機を感じるや否や巨大化して不意打ちのラリアットをウォータへとぶちかました。
『こっちはガラスの灰皿の凶器持ちだ、コノヤロー!』
ブチギレ状態が続くポポが再びバッグから取り出したのは、|ガラスの灰皿《凶器》であった。それをデキる子ロボ子がよろけさせたウォータの後頭部めがけて、これでもかと言わんばかりの力でぶっ叩く!
当然ながらこのユーベルコードによる八つ当たりな凶器攻撃を受けてしまえば、文字通りにウォータの頭が割れて血飛沫が噴き上がろうとした……その時、人型のエリクシル体に戻って粉々に砕けてしまった。つまり、これはハズレだ。
『おのれであ〜る!』
残ったもうひとりのウォータが体重を乗せた海賊キックをポポに仕掛けるが、脚ごとガラスの灰皿パンチトンファーでぶっ叩く!
膝めがけて振り落とされれば、流石のウォータもカートゥン調めいたコミカルな顔を歪めて苦悶に満ちた表情を浮かべるが、ブチギレ状態のポポちゃんにはそんなのは関係ない。あるとすれば、この表情はどこかしら家賃滞納者らが渋りに渋った家賃をもぎ取った際に浮べるものとほぼ一緒ということ。
そう思うと、ポポちゃんの怒りのボルテージは更に急上昇。怯んだウォータへ畳みかけるように、憎ったらしい顔を目掛けてガラスの灰皿で丸っ鼻ごと叩き潰す。ひたすら顔を執拗にぶっ叩き続けるポポであったが、その頭の上ではいつの間に頭で動かすぞう君が置かれている。誰も操作していないのにレバガチャっていて、さながらこれがポポを操っているように思えるがトンチキカカポには何時もののことで、考えたら負けである。
「ぜー、ぜー……コレもハズレじゃネーカ!」
顔面が原型を留めてないウォータくんがエリクシルへと戻って砕け散ると、更にポポちゃんは行き場のない怒りに狂う。
「こうなりゃ、ゴンドラを差し押さえるっきゃねー!」
漕ぎ手もこなせるデキるロボ子に梶を任せ、ポポは対空紫銃銃座のシートに座る。そしてゴンドラ海賊のゴンドラ漕ぎにも匹敵する速度で動き始め、銃座から見据えるターゲットのゴンドラを容赦なく蜂の巣にして沈めて行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
なんだコイツ無駄にコミカルな髭野郎でござるな!
地形を書き換えて大群勢呼び出したはちゃめちゃやったらもう…ネ
【物理演算の神】がお怒りだ!お戯れのバグが来るぞォ!そら世界の処理に過負荷を与えたらそうなるでござるよ
見よ!動けなくなったエリクシルの軍団が一塊になっていくでござるよ!接触判定バグって引っかかってるのかな?
これをひょっこりエリクシル島と名付けよう…ただのデケェ球だけど…
クルール氏は格闘しに向かってくるとしてどう水上戦するか…閃いた!
この塊は物理が狂ってるので軽い衝撃で盛大にふっ飛ぶでござる…つまり上から踏みつけたら空高く吹っ飛ぶ、そして落下で大津波が起こせるのでは?
直接ぶつけてもいいけどネ
「なんだコイツ、無駄にコミカルな髭野郎でござるな!」
見渡せばどいつもコイツも同じ|顔ぶれ《ウォータくん》となれば、流石のエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)も舌を巻くとしか言いようがない|地獄《トンチキ空間》であった。
『それはこちらのセリフであ〜る!』
オリジナルのクルール・ザ・ウォータか、それとも凶悪進化エリクシルが彼の姿を模した|生き写し《クローン》か。操る物は違えど互いに腐れ外道パイロットであるエドゥアルト氏とウォータ氏が邂逅すれば、両者の間に同族嫌悪の念が芽生えるなど当然のこと。
そうなれば最早どちらが生き残るしかない訳であり、買った者こそが真のコミカルな髭野郎ともなれば戦いの火蓋などやすく切って落とされる。
『野郎ども、あのクソ髭をサメの餌にしてやるであ〜る!』
ゴンドラとは早い話が櫂を人力で漕いで推進力を得る手漕ぎボートである。一見すると夢の国のマスコットキャラなカートゥン調なウォータ氏であるが、ソーセージみたいに長く丸みを帯びた腕はゴンドラ漕ぎで培われた剛腕その物。
一度振り落とせば分厚い鋼板など容易く破るほどの膂力を誇るとなれば、ゴンドラを進める速度などまさしく超人的としか言いようがない。モーターボード並の速力を誇る凶悪魔改造ゴンドラが群狼戦術さながらの新たな海賊殺法にかかれば、ティーチ氏が乗っているボートなど取り囲むことなど朝飯前。黒髭が取り舵いっぱいに凶悪魔改造ゴンドラの船首部分に据えられた衝角を回避しようとも、すれ違いざまにウォータ氏は船体に蹴りを浴びせ掛けて転覆を図ってくるのは手漕ぎ式ならではの利点と言えよう。
「むぉほぉお! こりゃあ、|物理演算の神《Hav⚙cサマ》がお怒りになっちまうなァ!? お戯れのバグが来るぞォ!」
なんのこっちゃと眉を顰めるウォータ氏らだが、さては気が狂ったなと判断して一気呵成に沈めようと一団を作り上げる。だが、これこそがエドゥアルト氏が待ち望んでいた状況。両手をかざして天を仰ぐ黒髭の瞳の奥底にはユーベルコードが今顕現を果たす表れの光を宿していたのだ!
「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! 神だ!! これは大破壊の神仕業ですぞー!!」
どう足掻いても気が触れてしまった奇声以外の何者でもないが、|神の奇跡《ユーベルコード》は今ここに現れる。
『むぉおおであ〜る! 何が起きたであ〜るか!?』
ウォータ氏は何が起きたか理解できないのは仕方ない。なんせ、今度こそはエドゥワルト氏のボートを粉々に砕かんと一団となって並走していた強悪魔改造ゴンドラが互いにくっつき合って陸地めいた団子となったのだ!
「デュフフ、見たでござるか! 神の遊びを!! 地形を書き換えて大群勢呼び出したはちゃめちゃやったらもう……ネ。そら世界の処理に過負荷を与えたらそうなるでござるよ」
エドゥアルト氏が顕現させた物理演算の神による御技によって、凶悪進化を遂げたエリクシル軍団が接触判定バグって一塊の塊となった。ウォータ氏のユーベルコードによって創り出された大海原にひょっこりと浮かぶ孤島をひょっこりエリクシル島と名付けても良いだろうが、顔が瓜二つなクローンウォータくんが引っ付き合っているただのデカい球体にすぎないのが悩ましいところだ。
『ぐぬぬであ〜る。エリクシル野郎と言えども偉大なるゴンドラ海賊のワガハイらをこうするとは、八つ裂きにして首をぶった斬っても許せねぇクソ髭であ〜るぞ!』
そして、いま洋上から猛スピードでこちらへと突撃してくる強悪魔改造ゴンドラこそ、本物のクルール・ザ・ウォータ船であろう。しかし、一対一の状況に持ち込んだのは良いのだが、エドゥアルト氏のボートでは伝説のゴンドラ海賊が漕ぐ強悪魔改造ゴンドラに太刀打ちできないのは先ほど身に染みるほど分からされた。となれば……こうするだけだ。
「この塊は物理が狂ってるので、軽い衝撃で盛大にふっ飛ぶでござる……。つまり、拙者めが幼なじみのヒロインのおでこを人差し指でコイツぅってな感じに小突けば……」
ジタバタともがくクローンウォータくんの塊をチョンっとすれば、物理法則も空気抵抗もへったくれもない超速度でかっ飛ばんでいく。これには流石の伝説級ゴンドラ海賊と言えども避ける手立てなどなく、互いにぶつかり合って衝突するしかなかったのであった。
成功
🔵🔵🔴
天王寺・七海
水中戦なら七海ちゃんに任してほしいのね。
海賊が陸を海にしてしまうのは分かるけど、七海ちゃんたちはシャチだから海では強いのね。
とりあえず潰さないとね。
なら、七海ちゃんは、お仲間を呼ぶのね。
ここでUC使用
みんな、5頭で行動して、船をどんどん潰しちゃおうね。
もちろん、投げ出された海賊はシャチホコファンネルで狙撃したり、あたしが直に襲い掛かったりするのね。
よかった、海の生き物じゃなくて。
海賊ウォーターだけになったら、もちろん尾びれで叩いたり噛みついたりシャチホコファンネルで撃ったりするのね。
そりゃあ、海賊って言っても所詮は人型だし、「海のギャング」って言われてる七海ちゃんたちには海中では敵わないのね。
海は広大だ。
多くのアース系世界では地球の表面の約7割は海で覆われており、それが貪欲なる海に小さな島々が点在するだけの世界グリードオーシャンとなれば9割近くとなる。更には星の海原が果てしなく、広がり今も膨張している世界であるスペースシップ&オペラワールドともなれば無限に近い。
故に陸地となる場所で住む生物ではなく広大な海原に棲息して支配する者こそ、世界の支配者と言ってもあながち間違いではないだろう。
『のわーであ〜る!』
ドボンと落ちた衝撃で空気が水の中に入り込んで泡となり、ユーベルコードのしがらみから解かれたクルール・ザ・ウォータかそのそっくりさんな凶悪進化エリクシルらが次々と海中に落ちてくる。
水神祭都アクエリオを恐怖のドン族に陥れ、伝承されていくうちに様々な形に姿を変えてはいるが今なおも語り継がれる伝説のゴンドラ海賊ウォータ。|稀有《イレギュラー》なゴンドラ漕ぎ力と凶悪残忍な働きで向かう所敵なしの彼であったが、そんな無法者も元来は陸地で生活する生物であった。人はまだ見ぬ世界を求めて船を作り出したが、ウォータは文明の利器とも言えるゴンドラ船で縦横無尽に海を渡ったに過ぎない。
(来た来た……なのね)
喧々騒々とする水面の下は静寂に包まれ、ユーベルコードによって生じたであろう魚たちが泳ぐ……が、彼らは何かを察知して蜘蛛の子を散らすかのようにこの場から急いで離れていく。それらを意にも介さず昏き海中を泳ぐ者が居た……海のギャングと呼ばれるシャチだ。
当然ながら彼女はただのシャチではなく、天王寺・七海(大海の覇者・f26687)の名を持つ禁忌の生物改造実験および融合実験の果てに造られたバイオモンスターだ。体高で2メートルを優に超える巨大シャチの前に勝てる人喰い鮫など数多の世界でも居るか居ないかレベルであるが、それは七海だけではなくユーベルコード『オルカライヴV2』によって召喚された様々なシャチが群れを成していた。
『ガボガボガボッ!?』
伝説のゴンドラ海賊ウォータに纏わる数多くの伝承の中に、やれクジラだのやれシャチだのを自らの拳ひとつで叩きのめすはなしがあるが、それはゴンドラ船を漕いでいる状況での話。海を知り尽くしている海賊であれば海の恐ろしさを誰よりもよく知っている。水上ならいざ知らず、水中では海獣に到底敵わないということを──。
(逃がさないのね)
シャチはコールと呼ばれる特徴的な鳴音を超音波に変え、群れとコミュニケーションを取る。七海の指示を聞き取った仲間のシャチらは散開して落ちてきた獲物を狙い澄ます。一匹一匹ごとに別方向から襲い掛かろうとして、海面に浮かぶ凶悪改造ゴンドラを目指して浮上しようとするウォータに急接近。それを追い払おうと彼は剛腕や脚を振り乱すが、水中ではその動きは水の抵抗によって鈍らざるを得なく、同時に酸素を否応なく消費してしまう。
それを恐れを成したのか、シャチたちは襲いかかってこない。この隙にとあともう少しで海面に出る瞬間……ウォータの脚に激痛が走り、彼は水中で声にもならない叫びを空気と一緒に泡として吐き出すしかなかった。
(よかった、海の生き物じゃなくて。そりゃあ、海賊って言っても所詮は人型だし、「海のギャング」って言われてる七海ちゃんたちには海中では敵わないのね)
ウォータの脚に喰らいついたのは七海である。つまり、先程のシャチらの攻撃はハナからフェイントに過ぎず、コレが本命の一撃という訳だった。鋭いシャチの牙は肉を裂き骨にまで到達しているが、絶妙な噛み加減で決して噛み切ったりはしない。なぜなら、ここから一気に潜航して溺れ倒すためだ。
最後の悪あがきとも言えようウォータの拳が七海の頭目掛けて叩かれるが、ここまで巨大なシャチとなれば分厚い皮膚と脂肪、更には水の抵抗による減衰も加われば何か当たっているくらいの感覚に過ぎない。仲間のシャチも同じように獲物を捕らえると、そのまま急潜航して行く。
果たしてこ今噛み掴んでいるのはクルール・ザ・ウォータか、それとも彼の姿を模倣したエリクシルなのか。その答えは潜って仕舞えば分かるだけの話で、外れてもまた落ちてきた獲物を捕らえるだけ。己の最後を悟ったのか情けない顔を浮かべるウォータくんに構わず、七海は深き海の底を目指すようにその勇壮な姿を一時的に消したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ラティニア・エルティンバー
え…あのウォータくん…よね?
アクエリオ水神祭でもよくメダルで顔を見た、あの。
で、目的は殺戮。
冗談じゃないわ!
私はステラマリスのゴンドリエーラ。
大切な仲間たちが、そして最愛の家族がいるのよ。
奪われてなるものですか!
…にしても、真っ向勝負は難しそうね。
ここは水中から攻めるとしましょう。
水難事故に備えて、普段から水泳や水中での行動は身につけているわ。
(見渡してウォータくんの位置を見定める)
意を決して飛び込みましょう。
大丈夫、星霊たちの加護があるから呼吸も問題ないわ。
(泳いで相手のゴンドラの下へ)
ウォータくんの影は…この辺りね。
えいっ!
(船底側から影を狙って魔鍵を刺す)
浮上して確認しましょう
『おのれ、小癪なであ〜る! エリクシルの野郎どもがこうも減っては、ワガハイの願いであ〜る“この世界に生ける全ての命の鏖殺“の遂行など厳しすぎるのであ〜る!!』
『11の怪物』クルールとの融合を果たしたウォータが激しく憤るのも無理はない。何せエンドブレイカーの世界の隅々に至るまでに数の暴力を持ってして、知的生命体の絶滅という邪な願いをエリクシルに願った。その結果爆誕したのが、凶悪進化を遂げてこの世界で最も効率よく知的生命体の殲滅に特化した存在であるクローンウォータ軍団であったのだ。
最初は本当にアホらしい願いを叶えてしまうのではないかと思えるまでの大軍勢であったのだが、猟兵たちの攻防戦によってあれよあれよと数を減らしていく。それでもまだ諦めきれていないのは、エンドブレイカーの全世界は無理だとしてもかつてウォータが狙いをひとつだけに絞っての神出鬼没な襲撃であれば、である。
『残っているエリクシルの野郎ども! 当初の目標はワガハイが小世界に迷い込む前に向かっていたアマツカグラであ〜るが、ワガハイがゴンドラ海賊の旗揚げを行ったアクエリオに変更であ〜るぞ!!』
そんな鼓舞と息巻く鬨の声が聞こえてくる元荒野の岩場であった岩礁の上で、ラティニア・エルティンバー(銀に煌めく星のだめがみ様・f16432)が到底信じ得ない表情を浮かんでいた。
「え……あのウォータくん……よね? アクエリオ水神祭でもよくメダルで顔を見た、あの……」
彼女、ラティニアは運河の街である水神祭都アクエリオで|ゴンドラ漕ぎ《ゴンドリエーラ》に従事しているため、海賊ウォータの顔には心当たりがありすぎるというかアクエリオ水神祭のマスコットしてよく知っている。彼女にとってのウォータくんとは平和の祭典の象徴であって。決して殺戮を何よりも楽しみとする破壊の大王なんて存在ではない。
「冗談じゃないわ! 私はステラマリスのゴンドリエーラ。大切な仲間たちが、そして最愛の家族がいるのよ。
奪われてなるものですか!」
乗り物に乗って迎撃に出た猟兵たちとは別働隊の防衛線で迎撃の準備を行なっていラティニアであったが、アクエリオを襲撃すると聞けば黙っていられない。それにアクエリオへ向かうとなれば、最果ての荒野で突き出た岩場が岩礁地帯を通らねばならない……となれば、彼女は意を決して水の中へと飛び込む。
ゴンドラ漕ぎに従事しているとなれば水難事故の備えとして普段からの備えで水泳を心得ている(とは言え、それらは元来のドジ性からよく足を踏み外している賜物なのだが)。それに星霊ディオスのベネディを始めとした自身と契約する多くの星霊の加護によって、長時間の潜水なんてお手の物。沈んだ岩場の影に身を隠せば、ウォータくんの生き写したちに勘づかれることはまず無い。
『この岩礁地帯を通らねば大きく迂回してしまうのであ〜る。野郎ども、浅瀬に乗り上げるんじゃねぇあ〜るぞ』
いくら凶悪な魔改造がされているゴンドラと言え、外洋の荒波をものともしないとなれば大型化は避けられない。水路の往来をする小型のゴンドラであれば問題なかろうが、クルール・ザ・ウォータと愉快な凶悪進化エリクシルたちは慎重にならざるを得ず速度を緩めた今こそがチャンスである。
岩場の影に息を殺しながら身を潜めていたラティニアが水面から差し込む光に見慣れたゴンドラの影が写し出されれば、ゆっくりと泳ぎながら近づいていく。
(スロースロー……クイッククイックスロー……)
ここぞとばかりのドジは踏まないと、思わず出た貴族領主の次期当主として叩き込まれた社交ダンスのステップをカウントする数え方でラティニアはタイミングを推し量る。
狙うは最後尾のゴンドラ。中途半端に前や中間部分を狙ってしまえば、敵は逃げてしまうどころか反撃によって自身の身が危ういし、何よりも馴染み親しいウォータくんに血祭りとされては甚だしいイメージの既存によって浮かばれないだろう。
(聖なる銀の星の鍵よ、彼の者の影を縛り、その身を封じよ! ……えいっ!)
青い瞳の奥底にユーベルコードの顕現を示す白銀の輝きを浮かび上がらせ、掌から顕現した持ち手が星形となっていて逆に持てば魔法少女のステッキめいた魔鍵による『シャドウロック』が放たれた。鍵の影封じとも呼べる影封じにより音もなくウォータが操舵するゴンドラが止まる。更にゴンドラ乗りだからこそ分かる漕ぎ手の位置も影から特定済みで、影を通して貫通した白銀の魔鍵はウォータを貫いているはず。
恐る恐ると周囲に警戒しつつラティニアが浮上していかついゴンドラの様子を伺うと、そこには漕ぎ手であるはずのウォータくんの姿など影も形もなかった。となれば、魔鍵の魔力吸収によって骸の海へと還ったに相違ない。
『……ですが、まだゴンドラは進んでいるようですね』
浅瀬に乗り上げないよう慎重にならざるを得ないためか、最後尾より前は周囲の警戒と操舵に集中せざるを得ずに後ろのことなど構っていられないとも言えよう。
そうであるならば、また音もなく水面の下から近寄って再びゴンドラの影に魔鍵を突き刺すのみ。クルール・ザ・ウォータの目論みを達成させぬべく、ラティニアは再び潜水すると目の前を進むゴンドラの影を決意を秘めた目で睨むように見据えるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メディア・フィール
SPD選択
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK
【水泳】による潜水泳法でゴンドラ海賊軍団に近づき、水中から【遊撃】による奇襲を仕掛けます。そして、一度宙に舞ってからは【軽業】と【空中機動】を駆使して、サムライエンパイアの伝説めいた武将、源義経のごとくゴンドラ八艘跳びをしてゴンドラ海賊団の隊列を撹乱します。ユーベルコードの【竜闘死連撃】は、すべて命中させて相手を確殺するのではなく、あくまでその可能性を危惧させて敵の追撃を躊躇させる牽制用に使い、実際には敵を直接物理でぶん殴って倒していきます。うまく立ち回れば、高速ゴンドラ同士を対衝突させて、その最大の利点である機動性を潰せるでしょう。
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変大歓迎】
おっとこれはいいマケドニア
これは強敵には違いない!違いないけど海である限り美少女エルフ私に負ける要素がないね!
いざ勝負だー!
というわけで、海での戦いといえば当然サメ!!
まず『メカ・シャーク号(ビーストタイプ)』に乗って水上を高速機動しつつ、毎晩作ってはポーチにいれているキャバリアの量産型の『サメタンク』をポーチからいっぱい出して自動モードで迎撃!!ミサイルやマシンガンで攻撃だー!
海はサメの故郷…今宵のサメタンクは心なしか性能があがってる気がするし数には数だね、はっはっはー!
そんなわけで私はサメタンクに気を取られている船団を突破して視認出来次第敵の髭を【アインス】で貫くよ!
「おっと、これはいいマケドニア。これは強敵には違いない! 違いないけど、海である限り美少女エルフ私に負ける要素がないね!」
岩礁地帯を抜けたクルール・ザ・ウォータらを待ち構えるは、一匹のサメ……いや一体のサメ。それもメガ級の巨大なサメだ。
『ヌハハハ! オブリビオンと成る前のワガハイは、数多くの巨大ザメをブッ飛ばしたのを知ってであ〜るか!?』
だが、クルール・ザ・ウォーターは目の前に現れたルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)が駆る巨大ザメキャバリア『メカ・シャーク号(ビーストタイプ)』に臆することなく、むしろ今でもウォータくんのやんちゃ伝説で語り継がれている素手でのサメ殺し武勇伝を懐かしんで|殺《ヤ》る気満々なご様子。気のせいか凶悪魔改造ゴンドラを漕ぐ速さが少し早まった気もするが、それだけ伝説のゴンドラ海賊にとっても倒し甲斐ある相手と認識されたということであろう。
『お前なんぞ八つ裂きにして、ぐっちゃらぐっちゃらにして、塩揉みの開きの叩きの蒲焼きにしてくれるであ〜る!』
「な、何だか言葉の意味はよく分からないけど……物凄く凶悪で残虐な料理方法で、とにかく凄い自信なのだけは良く分かる……ッ!」
普通なら戦意を喪失してもおかしくないところを逆に闘争心を高めさせるクルール・ザ・ウォータのゴンドラ海賊魂を見せつけられ、メカ・シャーク号の背びれ部分に相乗りしていたメディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)は戦慄を覚える。
屍人帝国の尖兵として王都を陥落させた空賊を始めとして数々のならず者に出会ってきた彼女であったが、彼らは己の欲望の吐口として嬲り者とはするが命だけは奪っていない。だが、このクルール・ザ・ウォータは違う。彼は純粋に殺戮を愉しんでおり、仮に屈服させられれば即ちそれは死となろう。
「それだけサメ退治には自信があるってことだろうね……しっかり掴まっててよ!」
凶悪進化を遂げてクローンとなったウォータ船団がモーターボート並の速力で強襲してくるが、メカ・シャーク号は巨大なれどその姿に反して機動性は抜群。弾雨の如く放たれる紫煙銃座の一斉射が水柱を立たせながら追撃するが、激しい水飛沫と白波を舞い起こすメカ・シャーク号に追いつけるのは至難の業だろう。
そうなれば、それぞれのウォータくんは凶悪魔改造ゴンドラを数艘ごとの隊へと分かれて四方八方からの十字砲火を仕掛けようと動き出すが、これこそふたりが狙っていた動きであることは思いもよらないだろう。
「今だ! 量産型サメタンク、浮上!!」
ルエリラが指示を送れば、なんとも言い難い形状の水陸空宇宙両用のサメタンクが海中より急浮上。ヒレ状のアームをジタバタと動かしている姿はどこか愛らしいが、あんぐりと口を開けば、そこには格納されたミサイルやらマシンガンやらが冷たい銃口を剥き出しとする。
それらが自動モードで一斉に火を噴き、凶悪魔改造ゴンドラの比にもならない火線で動きを阻害させる。
「海はサメの故郷……今宵のサメタンクは心なしか性能があがってる気がするし数には数だね、はっはっはー!」
そうルエリラが勝ち誇ったかのように高笑いを上げるが、いくら火力があったとしても当たらなければどうということはない。このままではどちらかが弾切れになるまで平行線を辿るのは自明の理であるのだが、そこで背びれに捕まって相乗りしているメディアの出番となる。
「タイミングを合わせて……たぁッ!!」
メカ・シャーク号がアクセルターンばりの急旋回を決めると、それで生じる遠心力を利用してメディアは投げ出されるように|翔《と》ぶ。
『馬鹿めであ〜る。ワガハイらのゴンドラに着地するには距離がまったく足らんのであ〜る』
更には自由自在に漕ぎ回っているのだから、例え距離が足りていても躱されてしまうか対空砲火の餌食となるのが関の山だ。
だが、そんなことなどメディアには百も承知。それに彼女が目指している着地地点はゴンドラではなく……サメタンクなのだ。
『な、ななな! アレは何であ〜るか!?』
おお、見よ!
あれこそはサムライエンパイアの伝説めいた武将、源義経が古事記を参考に考案したとされる舟から舟へと跳び渡る八艘跳びの原形……白ウサギが島から島へと渡ろうと凶悪な|鮫《ワニ》の背中を跳んで渡ったとされるイナバウアーの白ウサギだ!
華麗に上半身を仰け反らせることで華麗なる制動を生み出し、更なる跳躍と空中機動を可能とするという神話級のワザである!
そして、この跳びは見る者を虜にする美しさがあり、凶悪残酷なウォータでさえ感嘆の息を漏らすほどであった。それもメディアの狙いであることを露知らず、ゴンドラの接近を許してしまえばこちらのものだ。
「ボクの秘奥義、受けてみろ!」
前後左右の軽快なステップでサメからサメへと飛び移りながら、メディアは密かに瞳の奥底に黒き炎の闘志を浮かばせてユーベルコードの準備を果たしていた。
ウォータが気づいた際には時既に遅し。炎の纏った拳撃の四連打……竜撃死連撃が炸裂して瞬く間に浴びせれば、丸々とした身体は海へと投げ出されながらも爆破四散したかのようにエリクシルの結晶体となって粉々に散っていく。
『はわわであ〜る!?』
そして櫂を奪い取って凶悪魔改造ゴンドラを急ブレーキを掛ければ横向きとなって後続であるゴンドラの進路に立ち塞がり、互いに衝突しあう直前にメディアは足場として移動したサメタンク目掛けてジャンプして難を逃れる。
『おのれであ〜る! 小癪な|小娘《ガキ》など、ワガハイの手でボッコボコにわからせて……』
「おっと。私の存在を忘れてもらっちゃ困るね。その髭、貫かせてもらうよ?」
ルエリラはメカ・シャーク号のキャノピーを開いて身を乗り出すと、長いポニーテールを風で靡かせながらお手製の弓にユーベルコードで生み出した|貫通する矢《アインス》を据える。中てるは見据えた今の瞬間、偶然にも重なり合った凶悪魔改造ゴンドラを操るウォータたちの姿。
蒼き光と共に放たれた全てを貫通する魔力の矢は、針の穴を通すかのような精密さと光の速さを持ってして貫く。
『ぐ、ぐぬぬであ〜る……!』
クルール・ザ・ウォータは間一髪のところで避けたが、ルエリラの宣言通りに魔法の矢は自慢の顎ヒゲを貫く。その横では纏めて貫かれてしまった|生き写し《エリクシル》が結晶体へと戻って砕け散っており、恐い者知らずで無法の限りを尽くすゴンドラ海賊の背筋に冷たい物が走ったのは言うまでもなかったのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【凶悪進化エリクシル】
「武器改造」したバイクで「水上機動」
「天候操作」で嵐を起こしてかく乱し、「斬撃波」でゴンドラを破壊していく
【心情】
『殺して、バラして、死体を晒せ!』ね
曲解しようはねえが、何をどうすればそんな願いができるのか、理解できねえ
そんな奴をうちへ来させるわけには行かねえ
この世界のためにもな
【戦闘】
「最凶の海賊って聞いてどんな凶悪な面かと思ったら、中々の男前じゃねえか」
驚くほどにシンプルな能力だぜ
でもこいつは一番手の付けられねえ、シンプル過ぎて防げない類だな
「(誰何の声に)通りすがりの能力者さ、覚えておきな! イグニッション!」
真っ向から「グラップル」のUCで勝負
「心眼」「見切り」で回避しつつ、「足払い」「フェイント」を仕掛けて「リミッター解除」「限界突破」
多少食らうだろうが、追撃受けないよう「激痛耐性」で耐えて「カウンター」「捨て身の一撃」
「そんなに殺したきゃ、俺から殺していきな。やれるもんならな!」
このクラスが11体とか、エンドブレイカーたちの頑張りには頭が下がるぜ、本当
「『殺して、バラして、死体を晒せ!』……ね」
前輪と後輪の下部へ付け加えられた板による浮力を得て、独特で特殊な形状のパターンを刻んでいるリアタイヤが水を掻くことで推進力を得れるという水陸両用のカスタマイズがなされた大型のタンディムバイク『レッドバージョン』。激しい白煙と見間違える水飛沫を巻き上げながら、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は歪な願いを叶えるべく過去から戻ってきた髭面のオブリビオンを見やる。
「曲解しようはねえが、何をどうすればそんな願いができるのか、理解できねえ」
確かに、どんな解釈をしようとも地上すべてのあらゆる知的生命体を殲滅するに行き着く願いだ。
海賊とういうものは英雄的で義侠心に溢れる義賊が居る一方、奪い犯し殺すのを純粋に愉しむのが第一な人クズとしか言えない海賊も居る。このウォータは後者であって、オブリビオンとなったことで破壊願望が際限なく増大されたと思ば理に叶う。が、魎夜は理解しようとは到底思えない。どんな理由であれ、人はおろか動物でさえも嬲り殺すという破壊願望には反吐が出てしまう。
それに仮にではあるが、今はアクエリオへと進路を転進させていても、状況が不利と見るや生前のウォータが小世界へと迷い込んだように他世界へと向かう可能性という話も看過できない。それはエリクシルが様々な世界に襲来していることが雄弁と物語っており、もしそれが自身の出身世界であるシルバーレインに出現でもすれば、銀誓館学園は在りし日のゴースト退治にやっきとなっていた日々に戻るのは目に見えている。
「──そんな奴をうちへ来させるわけには行かねえ……この世界のためにもな」
静かながらんも激しく燃え上がる|魎夜《ストームブリンカー》の決意に呼応するように、波は大きくうねりをあげた。快晴だった空はいつしか暗転となり、黒々しい雲から迸る雷鳴の轟きが嵐の到来を告げた。
『この嵐はなんであ〜るか。ただの嵐ではないであ〜る!』
クリール・ザ・ウォータの生き写しである凶悪進化エリクシルらは狼狽えながら沈まんとゴンドラを操舵するが、そのすれ違いざまに魎夜が振った蒼玄の刀身を持つ『震鎧刀・月魎斬式』から迸る斬撃波が襲いかかって容赦なく沈める。
そうして敵の警戒網を突破して狙うは中心のゴンドラ。クルール・ザ・ウォータ本人が漕いでいるに相違ない凶悪魔改造ゴンドラ艦隊の旗艦である。転覆したゴンドラを踏み台とし、高らかに上空へと跳んだレッドバージョンがそのゴンドラの飛び移れば、もはやウォータも融合したクルールにも逃げ場などはどこにも無い。
「へっ。最凶の海賊って聞いてどんな凶悪な面かと思ったら、中々の男前じゃねえか」
『お、お前は何者であ〜る!?』
丸い目を剥かせて喫驚するクルール・ザ・ウォータを前にして、ゴンドラ船の上に擱坐したレッドバージョンから降り立った魎夜はしたり顔で答える。
「通りすがりの能力者さ、覚えておきな! |起動《イグニッション》!」
二指で挟み持っていたイグニッションカードが烈火となって魎夜の身体を包み込むと、うねりを上げながら真紅の|気魄型戦闘服《プロテクター》『魎皇百夜』を展開する。
余裕綽々な魎夜の様子に苛立ちを隠せないクルール・ザ・ウォータは、ゴンドラの舵を離すや否や、拳を振り上げてウォータの伝説譚では如何なる大岩も砕いたと語り継がれる海賊パンチを放った。
「どんなに強烈なパンチだろうがな、当たらなければ意味はねぇんだよ!」
だが、魎皇百夜によって高められた力によって増大された魎夜の双眼はクルール・ザ・ウォータが放った海賊パンチの軌道を確かに見切ってギリギリの所で最小限の動きで避けてみせると、ウォータが次手と用意していた海賊キックに対するカウンターで脚を払い転倒させる。
「そんなに殺したきゃ、俺から殺していきな。やれるもんならな!」
『小僧め、後で吠え面をかくなよであ〜る!』
その一言に柔和そうなクルール・ザ・ウォータが鬼のような形相となって、跳ね起きながらの頭突きを魎夜へとぶちかます。強烈な一撃に意識が飛んでしまうかと思えるほどであったが、幸いながらも魎皇百夜の兜が護ってくれたからこそ無事であったとも言えよう。強烈な海賊頭突きによて砕け散った魎皇百夜の兜から魎夜の素顔が顕となるが、そこから覗かせる瞳には激しい炎の闘争心とともにユーベルコードが今顕現を果たそうとする煌めきを宿している。
「それは、こっちのセリフだ!」
お返しとばかりに|強烈な頭突き《ライジングインパクト》を渾身の限りに見舞えば、今度こそ魎皇百夜の兜が完全に砕け散ってしまう。自身が放った海賊頭突きよりも強烈な頭突きで与えられれば、流石のクルール・ザ・ウォータも額が割れるまでの衝撃に意識が一瞬飛んでしまったかのようにフラつく。
「大人しくしてな。すぐ終わるからよ!」
その間隙を突くように無防備となったクルール・ザ・ウォータの胸へ、魎夜は捻らせた腕を螺旋状に回転させた|敵の内部を破壊するパンチ《インパクト》をすかさず打ち込む。元来であれば幾重にも続けられる連続攻撃である『アビリティコンボ』であるが、手数が多い分一撃は軽い。そうであるならば、手数を限りなく減らせば一撃の威力を増大させれるというもので、この頭突きとパンチに全てを賭したのだ。
その威力は紅の手甲を通して拳に肋骨を砕く感覚が雄弁と物語り、遂には心臓を直に叩きつけるまでの衝撃をもってして破裂へと至らしめたのだ。
『ご……ぱ……ッ!』
独特な間伸びした口癖を出すことなくクルール・ザ・ウォータは大きく眼を剥かせ、砕けた肋骨が肺や気道にも突き刺さったのか吐血する。そして完全に命が絶たれたのを示すかのように身体がぐずくずと崩れだし、徐々に塵となって骸の海へと還っていく。
「このクラスが11体とか、エンドブレイカーたちの頑張りには頭が下がるぜ……本当に」
どっと押し寄せてくる疲労感に魎夜はそのまま倒れ込んでしまい、漕ぎ手を失ったゴンドラが波に揺られる感覚に身を委ねながら黙考する。
この世界の人間を始めとした種族は生命の埒外たる存在の猟兵に匹敵する能力を持つが、それでもユーベルコードという絶対的な力は有していない。それにも関わらず、こんなバケモノ相手に身一つで戦うとは尊敬に値する。
そんな彼らにも負けない働きをしないとな、と魎夜は誓った頃にはいつしか嵐は過ぎ去っており、雲の隙間から差し込む光が今までの水飛沫で冷えた体を温かく照らしたのであった。
大成功
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