エンドブレイカーの戦い⑱〜その終焉を問おう
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誰もいなくなった都市楽園組曲ハーティタウン。
その中心で禍々しい赤を放つ宝石。そしてその宝石と融合するのは複数の女と一人の男ぼ姿があった。
くすりくすりと笑う女が宝石に取り込まれれば即座に宝石から別の女が生え、宝石の動きを止めるべくその上半身を這わせる。
「クサリク! 僕達が融合している限り、体内のエリクシルを放出する事はできません」
「……貴様は何者だ……そして、何処から現れた!」
宝石が吼える。
その怒りは自身に、自身と一体化した複数の人間たちに向けられている。
力を放出しようとした瞬間現れ、自身と無理矢理に融合した彼らに。自身の邪魔をする人間に。
その問いに男は静かに答える。
「僕の名はアウィン。はじまりのエンドブレイカー・アウィン!
お前を足止めする為、妻達と共に蘇ったのです」
「馬鹿な……オブリビオンでも無い者が、どうやって蘇り、我と融合したというのだ!?
エンドブレイカーといえど、そんな力は無い筈だ!」
そう、エンドブレイカーは終焉を打ち砕く事は出来ても定命の者が蘇る事はできない。
エリクシルの影響もなく、まして現在を呪うオブリビオンにもならずになんてありえない、ありえない――ありえない!
だが、男――始まりのエンドブレイカーは平然と言い放つ。
「それを決めたのは、誰なのですか?」
あまりにもあっさりと言い放つ男の言葉に宝石――11の怪物『クサリク』は一瞬だけ呆けるも。
「ッ……理屈も道理も通らぬ化け物め! 貴様の|意思《ガッツ》を喰らいつくし、消滅させてくれよう!」
宣言通りに終焉を打ち砕く力を持つ彼らを取り込むべく、エリクシルの門番の異名を持つ宝石が大きく吠えた。
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「お前ら、ちょっくら11の怪物をぶん殴ってくるしゃ」
――最初に断っておくが11の怪物は軽いノリで倒せる敵ではない。
小さな羽を羽ばたかせウーシャン・ラビットポスト(バルバ「ウサギ」のスカイランナー・f39076)はちょっと遊びに行こうぜとでも言わんばかりの軽い口調で言うが、無理な話だ。
だがこの小さなバルバは確かな勝算を見て猟兵達に言葉を紡いでいく。
「11の怪物『クサリク』って奴がいるんだけどね、こいつは体内に大量のエリクシルを持ってる事から『エリクシルの門番』って言われてるしゃ。
んで、コイツ、蓄えたエリクシルを解放して大地母神を殺そうって計画を建てるしゃ。やるスケールがデカすぎるしゃよね」
此度の戦争で大地母神が殺されれば、猟兵達はこの世界に足を踏み入れられなくなる。それはこの世界出身の猟兵が故郷に足を踏み入れられなくなる事をはじめ大きな損失となるだろう。
戦いに赴こうとする猟兵達をウーシャンはまーまー落ち着くしゃと宥める。
「このクサリクなんだけど、今は楽園組曲ハーティタウンでうねうねしてるだけうしゃ。
っていうのもクサリクと融合した始まりのエンドブレイカー『アウィン』って奴のおかげうしゃ」
どういった理論なのかは全く不明だが……この始まりにして全てのエンドブレイカーの始祖であるアウィンとその妻たちはあらゆる理を無視して蘇りクサリクと無理矢理融合することでエリクシルの開放を阻害しているのだという。
「おかげでアイツの戦闘力は大幅にダウンしてるしゃ。それでも強いしちょーっとヤバいビームは出るけど、アウィンの妨害もあるから全力は出せないうしゃ。この隙を突いてお前らはクサリクをぶっ潰すしゃ!」
猟兵達は頷く。
始まりのエンドブレイカーの尽力に応えるべく。
そこである猟兵がクサリクを倒したらアウィンは助けられるのかと問えばウーシャンは無理うしゃと言葉を返す。
「アウィンは始まりのエンドブレイカーだけどそれ以外は大した戦闘力は持たない普通の人間でオブリビオンでもないうしゃ。そんなアウィンがどうやって蘇った経緯もわかんねーし救えないうしゃ。
でもアイツはお前らに助けてもらいたいわけじゃねーうしゃ。そこだけは分かってくれようしゃ」
遭去
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遭去です、よろしくお願いします。
この依頼は戦争依頼で一章で完結します。
書けるだけ書いて書けなかったらごめんなさいな進行となります。ご了承下さい。
OPでも触れていますが敵を倒してもアウィン達は救えません。また戦闘中に彼らを守る必要はありません。
プレイングに下記の項目を記載するとプレイングボーナスが発生します。
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プレイングボーナス……真っ向勝負で倒す。
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第1章 ボス戦
『クサリク・ジ・エンドブレイカー』
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POW : ライフイレイザー
自身の【体表面に露出させたエリクシル 】から極大威力の【知的生命体抹殺光線】を放つ。使用後は【アウィンがガッツで動きを封じた】状態となり、一定時間行動できない。
SPD : バビロニアンドラゴン
【エリクシルの巨竜 】を召喚する。騎乗すると【アウィンが僅かな隙を作る時以外は無敵】状態となり、【万物破壊】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
WIZ : エンドブレイカーブレイカー
【自身の体内 】から、対象の【アウィンの力を弱めエリクシル軍団を放つ】という願いを叶える【アウィン殺しの槍】を創造する。[アウィン殺しの槍]をうまく使わないと願いは叶わない。
イラスト:波留川
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シュプリムント・メーベルナッハ
アウィンさん、もしかしてずっと昔からこのエンディングが見えていた、のかな。
…ううん、考えても仕方ないよね。
今はただ、アウィンさんが作ってくれたチャンスを逃さないために…!
その|終焉《エンディング》、叩き潰してみせるんだから!
黒旋風を発動の上でクサリクへ接近、【呪詛】で肉体強度落とした処を、呪蛇鎌とそこから出す【斬撃波】で攻撃していくよ。
足とか翼とかを潰せればベストかな?
敵がアウィン殺しの槍を創り出すなら、これも斬撃波で破壊。
彼の|意思《ガッツ》はまだ尽きさせはしないんだからね!
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『おのれ始まりのエンドブレイカー! この、化け物が!』
自らと融合するアウィンと妻たちを引き剥がさんとするクサリクが怒りの咆哮をあげると前足の部分より棒状の物が隆起する。
アウィンを殺さんという純粋なる願いはエリクシルに歪曲されることなくやがて一本の槍を形成され、そのまま青年の体に向けられた。
そのとき、黒き旋風がクサリクの足元で巻き起こった!
『なんだ!?』
黒き旋風に込められるは純粋なる殺意、そして凶気。敵へ向けられた負の感情は呪詛となり、クサリクの紅き石の強度を瞬く間に脆くする。
そのタイミングを見計らったかのように、一陣の白き風がクサリクの足元を通り過ぎた、次の瞬間。4本の足全てが綺麗に切断され、怪物は体勢を整える事も出来ずに地面へと叩きつけられる。
『ぐっ……!』
「アウィンさんの|意思《ガッツ》はまだ尽きさせはしないんだからね!」
一陣の風が吹いた先。そこにいた銀髪の女――シュプリムント・メーベルナッハ(穢死檻の巫女・f38888)が蛇が彫られた大鎌を構え直しながら振り向いた。
苛立った声を上げながらクサリクは彼女に向けて呪いの言葉を紡ぐその横で、本来であれば槍の一閃がカウンターとしてきたのだろうが先の斬撃波によりその槍もものの見事に切断され振るわれる事無く空へと還っていった。
立ち上がろうと体を再生するクサリクの動きを止めようとすると女が、アウィンが宝石できた身を毟り、少しでも再生を遅らせようとする。
(「アウィンさんもしかしてずっと昔からこの結末を知っていたのかな……」)
始まりのエンドブレイカー『アウィン』。生前の彼がどこまで先の未来の終焉を知っていたのだろうか。知っていたうえで、生前どれだけの策を講じたのだろうか。
「どうして、そこまで」
|私達《未来》の事を案じたのか。
暴れ狂うクサリクの上で抗うアウィンとふと、目が合う。
シュプリムントの考えた事を見抜いたのか――彼は言葉は紡がずに、赤い目を細めて笑みをこぼした。
「……ううん、考えても仕方ないよね」
それだけで十分だった。それだけでシュプリムントは再びクサリクの元へと、駆ける!
「今はただ、アウィンさんが作ってくれたチャンスを逃さないために……!」
――その|終焉《エンディング》、叩き潰してみせるんだから!
大成功
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儀水・芽亜
真っ向勝負ですね。いいでしょう。お受けします。
ナイトメアに「騎乗」して、ナイトメアライドで戦いますよ。
アリスランスで「騎乗突撃」からの「ランスチャージ」。
クサリク、早い上に刃が通りませんね。中々に不利。とにかく、万物破壊攻撃を食らわないように、ナイトメアの足を止めずに機会を窺います。
アウィンさんが仕掛けてくれましたか!
今です。突撃しますよ、ナイトメア! クサリクの身体にアリスランスを突き刺して、「傷口をえぐる」ように。
反撃を受ける前に離れなくては。ナイトメアごと「軽業」でクサリクの攻撃をかわしつつ、次の機会を待ちます。
一撃もらったらそこまでですね。逆に言えば、食い下がるほど攻撃の機会はある。
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「真っ向勝負ですね。いいでしょう。お受けします」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)が芽亜がシザークロスから鴇色の穂が長いアリスランスを持ち直すと、それを合図として、夢が現実を侵食するように、純白の白馬型来訪者『ナイトメア』が姿を現した。
ナイトメアへ騎乗すると真っ直ぐに駆ける。狙うはもちろん、かの怪物の急所だ。
『エンドブレイカー……雑兵が!』
クサリクが疾走する芽亜の姿を認めると、彼の体が瞬く間に変化していく。
背中には翼が生える四足獣――ドラゴンの姿を象ると、猛スピードで芽亜を向かえ撃つ!
――!!
鴇色と紅色の爪がぶつかり合い火花を散らす。
『小癪な……!』
「流石に一撃で、というのは厳しいですね!」
腕に伝わった痺れを振り払いながらナイトメアを操り、相手の尾による横薙ぎの|一撃《暴風》を回避。
暴風に巻き込まれた哀れなオブジェが粉々に砕け散り、地面につく前に風に攫われるのを横目に見ながら芽亜は再び距離を詰め攻撃を仕掛けるも、突きは紅の影を貫くだけに終わる。
追撃するにもクサリクの一撃には万物を破壊する魔力を纏う。ゆえに反撃を受けた際の被害は普通の敵のそれよりも大きい。
(「相手は早い上に歯が通りませんね」)
咆哮、光線、横薙ぎの暴風。一撃一撃が重く、災害に匹敵するそれらをナイトメアを操り回避しながら、攻撃の糸口を掴むべく思考を巡らせる。
その時、クサリクの動きがピタリと止まった。
力尽きたのではない、それは――。
「――アウィンさんが仕掛けてくれましたか!」
クサリクに融合する始まりのエンドブレイカーと、その妻が巨竜の動きを止めたのだ。
その時アウィンが視線を向ける。
言葉は無い。だが伝えたいのかは分かる。
それに応えるように芽亜は頷いた。
「今です。突撃しますよ、ナイトメア!」
声に応えるようにナイトメアが|吼えた《速度を上げる》!
四つ足が地を駆ける速度はどんどんと上がり、一条の光となった芽亜がアリスランスを構え――先の猟兵がつけた傷跡、先の4本脚、再生し、結合したその部分を鴇色の穂先が捉えた!
成功
🔵🔵🔴
シアン・マグノリア
……まさか、はじまりのエンドブレイカーであるアウィン様とお会いする事が出来るなんて
いろんな事を経験してきましたが、此れ以上に勝る驚きはないかもしれませんね
アウィン様のお力を無駄にしない為にも、全力を出しましょう
【SPD】
自身に【結界術】を展開しておきます
相手の攻撃は【受け流し】と【見切り】で対処
早すぎて見えない場合は【第六感】を頼りにしましょう
な、何か、元エンドブレイカーとしてアウィン様を攻撃するの、心苦しい部分があるんですが!
いや、【覚悟】を決めましょう。偉大なる先輩に胸をお借りしましょう
【限界突破】し、【ウインターコール】を放ちましょう
全てを飲み込む冬の嵐に、飲み込まれてしまえ!
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「……まさか、はじまりのエンドブレイカーであるアウィン様とお会いする事が出来るなんて」
翼を羽ばたかせ街の上を翔る巨竜、クサリクを前にシアン・マグノリア(天空に紡ぐ詩・f38998)は素直な言葉を紡ぐ。
彼女の意識はクサリク……ではなくクサリクの上に融合する始まりのエンドブレイカー、アウィンにあった。
この世界出身のエンドブレイカーは血縁を辿っていくと彼に行き着く。言い換えればエンドブレイカーは彼の子孫であり、シアンもその一人だ。
ルーツはそうであるがシアンにとって、アウィンにとっても面識はない。だが先祖が未来のためにかの怪物を抑え込んでいるのだ。それをただ見ている選択肢など、今まで理不尽な終焉を終わらせてきた彼女の中にはない。
「アウィン様のお力を無駄にしないためにも頑張りましょうか」
決意を胸に秘め、シオンは襲い掛かる災害へと立ち向かう。
迫りくる巨躯を見切り、受け流し、時には第六感を全稼働して全てを破壊する高速の突撃を回避していく。
「――っ、11の怪物の名は伊達じゃない……!」
全ては御しきれず、事前に張っていた結界に罅を入れながらも攻撃を凌ぎ――やがて、その時は訪れた。
縦横無尽に駆けていた巨竜がその場でピタリと動きを止めたのだ。
『――くそっ、またしても邪魔をするか!』
巨竜が自身の上にいる青年へ向けて忌々し気に言葉を紡ぐ。
攻撃のまたとしても無いチャンス。
とはいえ、とはいえだ。
「な、何か、元エンドブレイカーとしてアウィン様を攻撃するの、心苦しい部分があるんですが!」
『――遠慮はいりません。さぁ早く』
先祖を攻撃する事に一瞬気が引けるも、クサリクの動きを止めるべく紅色の宝玉を削るアウィンとその妻たちを見て、シアンは覚悟を決める。
彼の力を無駄にしないためにも、ここで一気に!
魔力を全て解放し、辺り一帯を包み込むドーム状の魔力の幕を展開すると、空から透き通る蒼い|穹風《そらかぜ》の花が一輪、ぽとりと落ちた。
「――全てを飲み込む冬の嵐に、飲み込まれてしまえ!」
その声を合図に、白い暴風が戦場を蹂躙する。
全てを飲み込む無音の狩人の目はどんなものも逃さない。
それは巨竜も例外ではない。白き暴風雨はクサリクの巨体を音もなく飲み込んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リゼ・フランメ
真っ向より、揺らぐことなく迎えるは想いがある為
私ひとりではそれも為せないでしょう
が、始祖たるものがいる
そこから脈々と受け継がれ、育まれた矜恃と理想がある
それを何よりの強さと思うからこそ、それを以て私は立ち向かうのみよ
故に、構える剣に纏うは破魔にて紡ぎし邪なるを焼却する烈火
その上で、抹殺光線を待ち受ける為に身構え、エリクシルより輝きが溢れれば見切り、早業にて振るうは劫火一閃
私へと奔る死の光を、灼き払いて断ち斬るわ
動けなくなったクサリクに近づき、UCによる渾身の一撃を
誰が定めたかではなく――誰の想いがこの結末と終焉に導いたか
その想いは数多の人のものなれば
そうして起きる奇跡というのは、道理を越えるの
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『おのれ、おのれ! エンドブレイカーが! その思いとやらを無に帰してくれる!』
|クサリク《エリクシル》の体を形成する宝石の体表面が異様な輝きを見せる。
これより放たれるは全ての知性ある物を屠る一撃だ。
『っ――お嬢さん、逃げた方がいいかもしれない』
「いいえ、退きません」
妨害ができない事を悟ったアウィンがリゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)へと声をかけるが、彼女のルビーのような瞳からは怯えの光は無い。
「……私一人ではこの敵を退ける事はおろか、攻撃をなす事も不可能でしょう」
真っ向に揺らぐことなく、リゼは目の前の光り輝く宝石を前にして剣を構えた。
「ですが、始祖たるあなたがいる。未来を信じたあなたが」
アウィンは始まりのエンドブレイカーではあるが敵を退ける力は無い。
だが、彼から始まった血脈。連綿と続いたその力と育まれた矜持と理想が魔女による理不尽な終焉を退けるに至った。
未来へと受け継がれたその力を何よりの強さと思うからこそ、彼女はここに立つ。
怪物の体の輝きが増す。宝石じみたその躰、不揃いな多面体の表面が異様に輝くとそれは来た。
一条の極太のエリクシルの輝きが家を貫き、石畳を砕き、街を焼く。
破壊の一撃が、リゼの体を飲み込まんと襲い掛かる。
「――っ」
劫火一閃。尽きせぬ祈りと、願いを込めたその一閃が光を真っ二つに断ち切る!
『――っ、馬鹿め! 死ね、知的生命体よ!』
攻撃を凌いだリゼの剣より万象を焼き尽くす業火が纏わり、火が蝶を形取り彼女に五感を研ぎ澄ませる加護を与える。動きを止めたリゼを認め、次発を放とうとクサリクの体表面が再び輝きを増した時、アウィンが吼えた。
『――やらせない!』
青年の声が、|意思《ガッツ》が化け物の全ての動きを止める。
それはほんの一瞬。
だが、その一瞬の間に、リゼが一気に距離を詰めた。
「――」
誰かに定められたわけでは無い、彼女の想いをのせた一閃が、終焉に導く化け物の体を両断した。
人が生き、死ぬ。その中で現れる次の生。
それが、長きに間伝わってきた|終焉を終わらせる《新しいはじまりを見せる》力。
成功
🔵🔵🔴
龍巳・咲花
真っ向勝負でござるか、ならば此方も最初から全力で挑まねばなるまいでござるな?
アウィン殿の世界を守る強き意志を無駄にするわけにはいかぬでござる!
行くでござるよ、ムシュマフよ!
忍びらしく周囲を駆け相手の攻撃を誘うでござるよ
周囲から生やした龍脈鎖を掴んだり、わざと宙に飛んで狙いやすくした所で自分から生やした鎖を引っ掛け方向転換したりの急制動を利用して回避するでござろう
ブラフも考慮に入れて、常に次の動きへ移れるよう注意しておくでござるな
攻撃を回避した後はアウィン殿が動きを封じる隙を突き、纏ったムシュマフの火炎放射とクナイと手裏剣の投擲をしつつ一気に距離を詰め、全力を籠めた鎖鎌の一撃を叩き込むでござる!
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「真っ向勝負でござるか、ならば此方も最初から全力で挑まねばなるまいでござるな?」
龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)が力を解放すれば、街の至る所より龍脈の力を帯びた鎖が生える。
蜘蛛の巣のように張り巡らされた鎖の一つに飛び乗ると咲花は真っ直ぐに眼下のクサリクとアウィンへと目を向けた。
「アウィン殿の世界を守る強き意志を無駄にするわけにはいかぬでござる! 行くでござるよ、ムシュマフよ!」
自身を守るように侍る炎竜ムシュマフ(の首)を一瞥し、咲花は鎖の上を翔る。
『ええいっ、先ほどから小癪な! 弁えろ、女ぁ!』
今までのうっ憤を晴らすように巨竜の尾っぽをふるい、翼を羽ばたかせれば、動きと共に真空波が、瓦礫が咲花へと襲い掛かる。
「避けれない程ではないでござるな!」
街中に張り巡らされた龍脈鎖が礫を弾いたり、風の勢いを弱めるなど攻撃の勢いを殺してくれるも、それでもかの化け物の動作は災害をもたらす。
「こっちでござるよ!」
礫が頬を掠めるも動きを止めることなく龍脈鎖を伝って攻撃を避け、隙があればクナイや手裏剣といった遠距離攻撃を加えていくも、宝石のような硬度を持つクサリクへの決定的な一撃には至らない。
そんな状況に先に痺れを切らしたのはクサリクの方であった。
『存在全て、残さずに消えるがいい!!』
知性がある生命体が触れれば瞬く間にその命を刈り取る『知的生命体抹殺光線』。咲花を包み込んでもなお余るほどの太さの一条の光が咲花へと向かう。
「――っ!」
仕掛けるなら、今。
直感で判断した彼女は、鎖鎌を垂直に放り投げ、頭上の龍脈鎖へと引っかけると、そのまま大きく垂直に跳躍!
鎖鎌を回収し勢いのままクサリクの元へと向かっていく!
『馬鹿め』
クサリクは頭上より飛来する少女へ再び光線で攻撃しようと体表面を大きく輝かせるも――。
『させない』
青年の言葉に従うようにクサリクの体表面の異様な輝きは電気が切れた灯りのようにぷつりと途切れる。
『おのれ、またしても邪魔を……!』
忌々し気に言葉を紡ぎ青年の行動へと注意を向けた。
それは一瞬の隙。だがその一瞬の間に炎と、クナイと手裏剣の雨がクサリクの体へと降り注げば大小さまざまな罅を作り出す。
『ぐぅっ!?』
「アウィン殿、その意志に応えよう――これが拙者の全力でござる!!」
炎を切り裂いて化け物の目の前に現れた少女が持つ鎖鎌による一撃が、クサリクの罅へと叩き込まれた!!
成功
🔵🔵🔴
蛇塚・レモン
アウィンさん、持ち堪えてくれてありがとうっ!
あとはあたい達に任せて!
いくよジャスパー(f20695)君っ!
その頑丈さ、頼りにしてるからねっ!
黄金霊波動、最大展開っ!
あたいとジャスパー君を覆うオーラ結界防壁でダメージを受け流す
その槍は使わせないよっ!
念動力で槍を空中に固定
蛇腹剣を振り抜いて衝撃波の範囲攻撃
怪物ごと槍を粉砕だよ!
って、ジャスパー君!?
(結界強度を強化
わぁ……抹殺光線を真正面から浴びて生きてる……っ!
流石ジャスパー君だね……っ!
うん、分かってるっ!
動きが止まった今が反撃のチャンスっ!
ジャスパー君も一緒に!
蛇腹剣クサナギ、変形っ!
所持する全技能Lvを143倍に強化
天候操作で万雷呼び寄せ敵へ堕としUC無効化&封印術
感電で束縛・敵を焼却・属性攻撃・全力魔法で呪詛と成す
手にした大神剣にライムの魂魄を宿し
左の赤き邪眼で弱点を見抜く(情報収集)
アウィンさん、生きる事を諦めないでっ!
あたいが【Q】で助けてみせるっ!
爆炎の大神剣で切断&貫通攻撃
敵内部を爆破っ!
これがあたいの全身全霊だぁぁぁっ!
ジャスパー・ドゥルジー
レモン(f05152)と
しっかしすげえな…
エンドブレイカーってのは理不尽な「エンディング」だけじゃなくて
|理《ことわり》だの道理だのってモンまでブチ壊せんのか?
この最高にイカしたビジュアルで長く存在したいジャスパー様としては
ちょーっと秘訣を教えて欲しいくらいだ
軽い調子でおしゃらけつつ
――あんたのガッツに応えるだけの覚悟は、ちゃァんと出来てるぜ、アウィン
【ライフイレイザー】を真正面から受け止める!
真っ向勝負がお好みなんだろ?
じゃあ、「生き残ってやる」
頼みの綱はレモンが張ってくれた結界と
オウガの血が流れる人よりちょっとばかし頑丈な身体
そんだけだ
そんだけで充分だ
引き千切れそうな身体を【リサシテーションの刃】で無理やり動かす
いぇーい生きてる、らくしょーらくしょー
レモンの驚愕に余裕のピースサインで返すぜ
奴は反動で暫く動けねえ筈
その隙にレモンに決めてもらう
俺も魔炎をクサリクにぶつけて援護するぜ
――だな
今は無理でも
現に一度蘇ってんだ
必要な時が来たら、また逢えるかも知れねえぜ
そうだろ、始まりの英雄さんよ
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――竜の咆哮が轟く。
しかしその声には先のような超越たる覇気はなく、血混じりの焦燥が混じっていた。
『おのれ猟兵め、始まりのエンドブレイカーが!』
竜、『11の怪物クサリク』が怒りを向けたのは斬り結ぶ猟兵、そして自身と融合する始まりのエンドブレイカー『アウィン』である。
動きを直接止めてくる、妨害してくるアウィンとはクサリクにとって邪魔な事この上ない。
『おまえが倒れるまで、僕たちは諦めません』
アウィンらの瞳に絶望はあらず、|意思《ガッツ》の力でかの怪物の食い止めているが、彼らが結晶化する部分は増え、妻たちの数も少なく、動きも緩慢になってきていた。
『――やはり貴様、貴様たちの動きを止めるのが先か』
それをクサリクが見逃すはずがなく。
化け物が願うと赤い体が輝き、複数の槍が形成される。それは始まりのエンドブレイカーを殺すという化け物の願いを叶えた赤黒い槍だ。
『――っ』
『死ね』
アウィン殺しの槍が彼の喉元を貫く僅か数cm、穂先は金色の結界に阻まれ、甲高い音を立てて動きを止めた。
「アウィンさん、持ち堪えてくれてありがとうっ! あとはあたい達に任せて!」
その声と共に槍が細かく切断され、カランと音を立てて地面に落ちる。
蛇腹剣の刃がしゅるりと納まる振動を片手に受け止めると、操者である少女、蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)は隣にいる男へと目を向けた。
「ジャスパーくん、一緒に来てくれてありがとう! その頑丈さ、頼りにしてるからねっ!」
レモンがちらと共に来た男へと目を向けると彼もにっと笑顔を向けた。
「なーに良いって事よ。しかししっかしすげえな……エンドブレイカーってのは理不尽な『エンディング』だけじゃなくて|理《ことわり》だの道理だのってモンまでブチ壊せんのか?」
ちょーっと秘訣を教えて欲しいぜと笑うジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は目の前の化け物と青年に目を向ける。
ジャスパーは悪魔と見間違わんばかりの風貌ではあるがその実ただの人間。イカかしたビジュアルで長く存在したいからとは言うが、そのとき脳裏に浮かんだのは誰の姿だったか。
『小癪な……!』
クサリクが悔し気に言葉を紡ぐと彼の周囲に複数の槍が展開され二人の元へ飛んでいくも、
「黄金霊波動、最大展開っ!」
彼女を包む黄金霊波動が膨張し二人を包み込めば、先と同じように槍の動きを止めていく。
「あたい達にその攻撃はもう通らないよっ!」
「狙いやすいな」
ジャスパーが指を鳴らせば全ての槍が瞬く間に燃え上がり、蝋燭が溶けるように液体となり、ぼたりぼたりと地面に落ちていく。
最後の一本が地面に落ちた、その瞬間であった。
クサリクの咆哮が轟き、紅い体が脈動しながら赤く輝く。
力が集まっていく。次に発せられるのは全ての知的生命体を殺す必殺の一撃だと、二人は確信する。
「……! ジャスパーくん、回避を」
これは防ぎきれない。
そう察したレモンがジャスパーへと攻撃回避を提言するも、彼は動く気配がない。
それどころかその顔には悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべているではないか。
「……レモン、後は任せていいか?」
「へ? ……ま、まさかジャスパーくん」
「受けてみたいなって 」
「だ、ダメだって! いくら頑丈な君だからってあの攻撃を受ければ」
「レモン、頼むよ」
軽く言っているがその瞳には真っ直ぐな決意が見え、レモンは彼を止めるのをあきらめる。
「……いい? ぜったい、ぜーったい生き残るんだよ?」
そう言ってレモンは彼を守るためのありったけの魔法の力が込められた術を結ぶ。
レモンから受け取った黄金の魔力を力を感じながらジャスパーは目の前の光に向き直った。
『死ねぇ!』
あらゆる生命体を滅ぼす光がほとばしる。
それは知性を持つ生命体を殺すデスサイズ。飲み込まれれば悪魔であろうとも――否、悪魔だからこそ必死の一撃。
赤く輝く極太の光が、ジャスパーを包み込む……!
レモンの防御のバックアップがあるとはいえ、クサリクが放つその一撃は知的生命体を滅ぼす力をもつそのビームに、並みの人間はおろか埒外の存在である猟兵ですら受けたら絶命、良くても人格崩壊は避けられまい。
だが、ジャスパーには少しも恐怖も不安も無かった。
「それがご自慢の必殺ビームだろ? いいぜ、受けとめたうえで『生き残ってやる』」
オウガの血が流れる、常人より少し体が丈夫が取り柄の普通の人間。
(「そんだけだ、そんだけで十分だ」)
――これが俺の|あんた《始まりのエンドブレイカー》のガッツに応えられるだけの覚悟だからな。
永遠、もしくは刹那の時が経った。
光が収まったその場にいたのは、その直撃を受けた男の姿。
至る所が焦げ付いていた。
だが、
「はっ、はは……いぇーい生きてる、らくしょーらくしょー」
炭化しているかのようなかすれた声。 ジャスパーは顔前にピースを示した。
彼は、いきていた。
「なぜ生きている、なぜ死なぬ!? お前は知的生命体ではないのか!?」
クサリクの声に戸惑いが滲む。
――はじめてだった。この一撃を受けてもなお生きている生命体がいるのは。
初めてのありえない事象に、化け物には対処ができない。
「自分の力を過信しすぎだ、『怪物』。オレは『生きてる』ぜ?」
にぃと笑った男にクサリクは生物に2回目の恐怖を感じた。背中があればゾッとするという感情を知った事だろう。
格下の、餌と認識していた知的生命体に感じたこの感情は屈辱であった。
「レモン、今だ」
「うん、わかってるっ!」
ジャスパーの声に後押しされながら、金の影が躍り出た。
「――蛇腹剣クサナギ、変形っ!」
周囲を舞っていた蛇腹剣がレモンの手元へと集まり、一本の剣へと姿を変える。その刃は青白い光を纏うその剣に籠る|光《魂》をしかと認めると、瞬きよりも早く、レモンが動く。
『ちぃ……!だが、剣がその状態であれば先の様に攻撃を防げまい!!』
自由が利かない体を酷使しクサリクが周囲に槍を形成しレモンに差し向けた。
「あたい『たち』にそんな技、効かないんだよ!」
レモンが森羅万象を司る大神剣の剣先を槍に向けた瞬間、曇天より放たれた雷が全てを撃ち落としていく。
ふと、レモンとアウィンの視線が交差する。
(「アウィンさん、生きる事を諦めないでっ……!」)
クサリクと融合するかの大英雄を本当に救う手立てがない。
だが、『それを決めたのは誰なのか?』
儀式魔術【Q】があればもしかしたらば――。
レモンの想ったことを察してか、アウィンは微笑みながら視線を自身の腹よりずっと下を見やった。
アウィンの視線の先、そこは前脚のちょうど真ん中――。
「……っ」
レモンは頭を振りかぶり金と赤の眼を真っ直ぐに彼へ向ける。
(「分かったよ、アウィンさん。今はただこの力を持ってあなたの意志に応えるよ!」)
「さぁライム、いくよ!」
――了解だよ、姉さん! あんな奴、あたしたちにかかれば絶対負けない!
自分の唯一無二の妹の名を呼べば、応えるように輝く大神剣を握り直して、足を踏み込み駆ける!
『くそっ、ここは撤退……!』
「おせえよ」
逃走を図った翼はジャスパーが召喚した黒き魔炎に焼かれ、僅かに浮き上がっていたその巨体が地面を揺らす。
「ジャスパーくん!」
「振り向くな、突き進め」
「うん!」
もがきながらもクサリクが体勢を整えた、その眼前に見えたのは
「これがっ! あたいの全身全霊だぁぁぁっ!!」
――蒼き清廉なる光がが、化け物の体を両断した。
その一撃を受けて化け物にはもはや立ち上がるための脚も、再生の力も無く。
『ばか、な……』
体を無様に地面に叩きつけたクサリクはその言葉を最後に活動を止めた。
「やっ……た……」
クサリクが動かなくなったのを確認するとレモンは纏っていた力を解いてその場にへたり込んだ。
クサリクの体が粉々になるのと同時に、融合していたアウィンとその妻たちも消えていく。
その表情にあるは悲しみでも恐怖でもなく、
ただ、今を生きる子らへの祝福に満ちていた。
●
『にゃーん』
「ん? ……猫ちゃん?」
声の方へ視線を向けると、そこには紫がかった毛並みをした一匹の猫。
「飼い猫かな。鈴をつけてる」
「なんだ、逃げ遅れてたのか? よく生きてたなぁ……」
猫はレモンとジャスパー、そして猟兵達の周りを一周した後、
『なぁん』
言葉一つ残して、いずこかへと駆けて行った。
大成功
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