エンドブレイカーの戦い⑯〜曇天黒日
●燦然楼閣ゼルフォニア
それは巨大な口腔に眼球がはめ込まれたような奇妙な生物だった。いや、生物と呼んで良いのかさえ憚れる『それ』の名をエンドブレイカーたちは知っていたことだろう。
かつては『密告者』と呼ばれたマスカレイドであり、エルフヘイムでの戦いにおいて現れた超古代の邪悪。
心がざわめくのを猟兵たちは感じたことだろう。
『密告者』――本来の名を『ウリディムマ』と言う。
そう、『11の怪物』の一柱である。
「こんにちは、『ウリディムマ』です。かつては『密告者』とも名乗っていました。エンドブレイカーの皆さんに、封印を解かれた直後に無限増殖を始めるより早く叩きのめされた者です」
その声は心の中に直接響くものであり、奇妙な居心地の悪さを感じたことだろう。
心の中の触れてほしくない部分に触れられているような、なんとも言い難い不快感。
そして、猟兵達は己の傍らに奇妙な存在が浮かんでいるのを認識する。
それは『ウリディムマ』を小さkうしたような存在。
「ええ、そうです。皆さんの傍らにある『それ』もまた『ウリディムマ』です」
『11の怪物』、『ウリディムマ』の静かな声が心に響き渡る。
「みなさんが『他人から隠している欲望』を元に、私が今作りだしました。ええ、そうです。エンドブレイカーであった皆さんはご存知ですね。私は『知的生命体の欲望から、無限に増殖できる』のです」
『ウリディムマ』は唇のまぶたを瞬かせ、何故か満足げだった。
ことの成り行きは、嘗てエルフヘイムで起こった戦いと同じ。
無限増殖を始める前に『ウリディムマ』を叩くのみ。
だがしかし、『ウリディムマ』の余裕はなんだ。
「隣に『ウリディムマ』のいない人はいませんよね? つまり人の心とは、そういうものです。光と闇があるように。陰と陽があるように。知的生命体に心がある限り、そこには他人には触れてほしくない、見てほしくない後ろ暗い欲望が存在しているのです」
確かに恐るべき能力である。
人である以上、知的生命体である以上、その本能とも言うべき相反する欲望は消せるものではない。
故に『ウリディムマ』は増殖し続ける。
「解っていますよ。前回私は失敗しました」
長々と語る『ウリディムマ』に猟兵達は訝しむ。
今回もまた同じように『ウリディムマ』を叩くばかりであるはずだ。なのに、言いようのない不安が込み上げてくる。
「その対策を、今回施して来ました」
瞬間、エンドブレイカー! 世界に溢れ返るのは、小世界より押し寄せる無数の『ウリディムマ』の姿であった。
そう、『ウリディムマ』は対策を講じていた。
エンドブレイカー……猟兵達が自らの存在を感知したと同時に襲いかかってくるのは自明。ならば、自らを認知されぬ小世界で無限増殖を開始した上で、この世界に戻ってくれば良い。
無限増殖は止められない。
猟兵が如何に生命の埒外であろうと、『知的生命体』であることに代わりはない。
ならば、そこには他者には見せられぬ欲望が隠されている。
「予め小世界で無限増殖を為してきたのです。最早こうなれば私に死角はありません。この世界を無限に増殖した私で埋め尽くします」
微笑むように唇の瞼が閉じられる。
実際『ウリディムマ』は笑んだのだ――。
●エンドブレイカーの戦い
「私をもう止められはしません。無限増殖を続ける私で世界を埋め尽くす。それは誤解もなければ、すれ違いもない開かれた心の世界。それは素晴らしい世界ですよ」
『ウリディムマ』の言葉に猟兵達の心に旋律が走る。
『隠れた欲望』はなくすことはできない。
故に、『ウリディムマ』は増え続け、加速度的に人々の心を糧にしていく。
だが、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は叫ぶ。
「いいえ!」
彼女の言葉に猟兵達は振り返る。
彼女の傍らにも小さな『ウリディムマ』がある。
グリモア猟兵と言えど、知的生命体。その心には他者に触れてほしくない欲望が存在しているのだろう。だが、彼女の瞳は爛々ときらめいていた。
「あけすけに己の心を他者に見せつけることが、良いことだとは限らないのです! あなたのしていることは心を一元化しているだけにすぎない。一元化された心は、それが織りなす心の豊かさを世界に示さない。ならば!」
彼女は息を吸い込んだ。
確かに『ウリディムマ』の能力は恐るべきものである。
『小さなウリディムマ』を叩き潰し続けても、本体である『ウリディムマ』を叩かなければ増殖は止まらない。
自らの傍らにある『ウリディムマ』に対処し、本体へと立ち向かうのは大波を滅するのと同じほど、現実的ではないことだった。
しかし、ナイアルテは叫ぶ。
「『隠された欲望』しか糧にできないというのなら! 隠さなければよいのです! 私は!!」
大声で発せられた言葉を前に猟兵達は空いた口が塞がらなかった。
「隙あらばチョコレート食べたいです! 体重計の目盛りが昨日!! また一つ進んでしまいました! ええ、そうです! 体重が! 重たくなりました!! でも、チョコレート食べたいんです!!」
ものすごい恥ずかしいことを、これでもかという大声量で彼女は叫ぶ。
するとどうしたことだろうか。
他に隠された欲望などない、というかのおように耳まで顔を真っ赤にしたナイアルテの側に『小さなウリディムマ』は存在しない。
隠された欲望という糧をなくした『ウリディムマ』は増殖することができないのだ。
それを身をもって証明したナイアルテは顔を真っ赤にしながら涙目で睨めつけるのだ。
「征きましょう、皆さん――!!」
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『エンドブレイカーの戦い』の戦争シナリオとなります。
燦然楼閣ゼルフォニアにて出現した『11の怪物』の一柱『ウリディムマ』。
この奇妙な怪物は、知的生命体の『隠された欲望』を糧にして増殖する恐るべき敵です。
知的生命体には必ず『隠された欲望』があり、それによって加速度的に増えていくのです。
以前、エンドブレイカー! 世界において増殖を開始する前に叩かれた怪物でしたが、今回は小世界で予め増殖してから舞い戻っています。
これを打倒するため、秘された己の欲望を開放し、『隠された欲望』ではなくしてしまいましょう。
プレイングボーナス……小さなウリディムマを即座に倒しつつ、本体に対処する/自身の欲望を隠すのをやめる。
それでは、エンドブレイカー! 世界から猟兵たちを放逐せんとする『11の怪物』と対決する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『ウリディムマ』
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POW : 抵抗を望む欲望も、私の餌となります。
【小さなウリディムマ】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【言葉で指定】した部位の使用をレベル秒間封じる。
SPD : あなたが隠したい欲望は、何ですか?
対象への質問と共に、【対象の秘めたる欲望】から【新たな無数のウリディムマ】を召喚する。満足な答えを得るまで、新たな無数のウリディムマは対象を【欲望を奪う視線】で攻撃する。
WIZ : これもまた、素晴らしき光景の一端です。
【ウリディムマ】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[ウリディムマ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
おやまあ、たくさんの奇天烈な敵で。
隠された欲望ですかー。まあ簡単なことですー。
お留守番組の玉福と夏夢殿、他の世界に連れていって、いろんなもの見せたいんですよねー。
ええ、そうです、今も二人は留守番ですのでー。
あ、陰海月の踊りは楽しみますよー。
……いえまあ、ウリディムマの反応はどうでもいいのです。
私は漆黒風を投擲して、攻撃するだけですからー。
※
陰海月「ぷ!」
目潰し兼ねてるUCでの発光。
おどーるおどーる。もっといろんな場所で踊りたい!!
空中に浮かぶ唇と眼球合わさった怪物。
それが『11の怪物』の一柱、『ウリディムマ』であった。
「知的生命体に欲望は不可欠です。誰もが欲望を持っている。そこに正しさも悪しきも内在している。そして、その欲望をひけらかすことを人は恐れる。隠している限り、私は何処にでも存在するでしょう。糧になるのです」
その言葉を前にして猟兵達はおぞけ走る。
隠された欲望というものは、いつだって誰かに知られて欲しいとは思わぬものであった。
けれど、それをもしも、さらけ出したのならば。
「欲望は消える、ということですか。あくまで隠された欲望であることが糧になるというのならば、『11の怪物』、『ウリディムマ』も大したことはないのですねー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は告げる。
四悪霊の一柱『疾き者』はのほほんとした顔を崩さなかった。
奇天烈な敵であることはわかる。
自身の隣に浮かぶ小さな『ウリディムマ』が己にもまた隠された欲望が在ることを示す。だが、簡単なことだと彼は言う。
「私の欲望は……隠していること、とはつまりお留守番組の玉福と夏夢殿を他の世界へと連れて行きたいというものでしょう。いろんなものを見てほしいのです」
包み隠すことはない。
常日頃言うことでもないがゆえに、秘する言葉。
確かに猟兵でもない者を他世界に連れ出すことは多くできないことも、制約が課せられることもあるだろう。
故に、猫である玉福も、幽霊である夏夢も連れ出すことはできない。
他世界を見ることを彼らは望んでいるだろうか。
この連れ出そうと思う己の欲望は身勝手なものではないだろうか。そうした隠された欲望を『疾き者』はこの際だからと告げる。
同時に影より飛び出す巨大クラゲである『陰海月』が、それは虹のように(ゲーミングカゲクラゲ)輝きながら無数の『ウリディムマ』たちを引き付ける。
「ぷ!」
光り輝くゆらゆらダンス。
それを『疾き者』は目を細めて見やる。
己の影の中で連れ出す彼を見やる。
そこに隠された欲望をさらけ出すという下卑た行いは関係ない。踊りたいという願望。もっと、色んなところで。
その欲望は確かに隠されているが、誰かに後ろ指刺されるものではなかったことだろう。
故に『疾き者』は堂々と胸を張って『ウリディムマ』に告げる。
「誰におもねる必要もないでしょうー。これが私達の欲望です。あなたは人の隠された欲望こそが、見られたくなくない後ろ暗いものばかりを差すのだと思っているようですが」
「その通りでしょう。全てがあなた方のようにはあれないのです。そして、その欲望を肯定しましょう。真実なのでしょう」
故にと『ウリディムマ』は、その眼球を蠢かせる。
膨れ上がる不快感。
されど、『疾き者』は気に留めた様子もない。
『密告者』と呼ばれた『11の怪物』の言葉など自分には届かない。
誰に何を言われようとも、今己の胸に去来する感情こそが最も大切なものであり、優先されるべきものであると知っているからだ。
「『陰海月』、踊り続けると良い。それこそが生きるということ。欲望は人の生き方を決定づける。確かに後ろ暗い欲望も生まれるだろう。それは決して悪しきことではない。恥じるべきことでもない」
純粋であることは、同時に不純をはらむことと同義である。
故に、そのままでいいのだと、あるがままであることを肯定するように『疾き者』は満足げに煌めく『陰海月』のダンスに微笑むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
欲望を、隠さない…
も、もっと婚約者に甘えたいです…
甘えたいけど中々素直になれなくて、普通に遊ぶ分にはいいけどいざ恋人らしいことしてくれると恥ずかしくなってまともに受け止められなくなっちゃうから、ちゃんと素直になりたいです…!
こっ、こここれでいい…!?(恥
自身にオーラ防御を纏い翼の空中戦
あまりの恥ずかしさに時々口が回らなくなったりしちゃうけど
これで増殖防げるよねこれでダメだったらはったおすよ!
増殖体達を対処したら高速詠唱、属性攻撃でウリディムマの巨大な目めがけて氷魔法
攻撃兼目つぶしで隙を作り指定UC発動
絶対に逃がさないよ
皆、行っておいで!
破魔を宿した鳥達を放ち、炎ダメージと浄化で攻撃します
隠された欲望をこそ『密告者』と呼ばれた『11の怪物』の一柱『ウリディムマ』は強化される。
小世界によって無限増殖した小さな『ウリディムマ』たちが大元たる『ウリディムマ』の周囲に集っていく。
猟兵と相対する以上、準備は怠らない。
嘗ての失敗は繰り返さない。
「私はすでに準備を終えている。無限増殖はすでに相成っている。それでも私を打倒しようとしますか、猟兵。あなた方にも隠された欲望は存在する。何も後ろ暗いことのない人生など存在しないのです」
故に『ウリディムマ』は不滅であるし、それを糧に増えていくのだと示すように無数の小さな『ウリディムマ』は猟兵達の眼の前に集っていくのだ。
「欲望を、かくさない……」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はそれこそが『ウリディムマ』の無限増殖に対抗する術だと知る。
そう、隠された欲望であるからこそ糧になるのだ。
ならば隠さなければ良い。
隠してはならない。
己の中にある欲望の中で、もっと後ろめたいこと。誰かに隠しておきたいと思う欲望に澪は覚えがあった。
でも、それを告げるのは恥ずかしい。
顔から火が出そうだった。熱い。頬が熱い。どうしよう、と思う。
「……です」
聞こえない。
それではあけすけとは程遠い。
けれど、澪は意を決して叫ぶ。
「も、もっと婚約者に甘えたいです……甘えたいけど中々素直になれなくて、普通に遊ぶ分にはいいけど、いざ恋人らしいことをしてくれると恥ずかしくなってまともに受け止められなくなっちゃうんです! だから!」
そう、だからと赤らむ顔のままに澪は叫ぶ。
こうでもしないと、こういう状況でもなければ、己の背中を自分で押すこともできない臆病者であることは言われなくたってわかっている。
なんだ、そんなこと、と言われるかもしれない。
けれど、それでも、それでも。それでも!
「ちゃんと素直になりたいです……!」
頬の熱さは眦の涙を溶かすみたいにして熱を上げていく。
「こ、こここれでいい……!?」
恥ずかしさのあまりに周囲を見回す。
そこに小さな『ウリディムマ』は存在していなかった。翼を羽撃かせ、澪は飛翔する。
「だ、だいじょうぶだよね、だいじょうぶだよね!? これで増殖防げてるよねこれでダメだったら――」
はっ倒す! と澪の瞳がユーベルコードに輝く。
瞬間、放たれるはあらゆる種類の鳥の姿をした飛翔する破魔の炎。
それは一瞬で迫る小さな『ウリディムマ』たちへと激突して、霧散させていく。
「で、できてる! これなら!」
浄化と祝福(ピュリフィカシオン・エト・ベネディクション)たる炎が乱舞する。
「隠された欲望の発露は、人の心に大きな隙間を生み出すもの。ですが」
「絶対に逃さないよ。皆!」
澪は飛翔しながら『ウリディムマ』を指差す。氷の魔法は礫のような弾丸を生み出して巨大な『ウリディムマ』の眼球へと叩きつけられる。
「話を聞いてはくださいませんか。あなたの願う心は、素直になれないという言葉は、私がいれば、何も隠せなくなってしまう。隔てるものがないのですから。そうすれば、素直になる必要だってないのではないですか?」
隔てる者。
人の心は見えない。だから、恋人がどんなことを思っているのかと疑心暗鬼になる。不安になる。
けれど、澪は頭を振る。
掲げた指先に破魔の炎宿す鳥が集う。
「そういうのは余計で大きなお世話だって言うんだよ! 僕は、僕たちの歩幅で歩むんだから、放っておいて!」
放たれる炎がほとばしり、『ウリディムマ』の体を打ち据え、澪は己の心を発露させるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
わたくしに隠している欲望などありませんっ。
何故ならば……あなたを吹っ飛ばすのが三度目だからですわっ。
(終了済みが1個、リプレイ待ちが1個で両方赤裸々に違う方面の隠し事を暴露済み)
今や望むのは貴方を消し飛ばすのみ。
今度こそ全力で吹っ飛ばしてお別れですわっ。
僅かに飛んでできて妨害しようとする複製体を分身を出して処理。
3人がかりでボコボコにしたのち
オーラで作り出した正四面体に閉じ込めて
ショックの掛け声で内部で大爆発を起こして吹っ飛ばします。
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)に隠された欲望はない。
いや、正確に言えばあった、というのが正しいだろう。
すでに彼女は赤裸々に語った後であった。
故にイリスフィーナの心の中にあるのは『11の怪物』たる『ウリディムマ』に対する怒りだけだった。
怒りしかない。
すでに隠された欲望はなく。
さらけ出された欲望は彼女の顔を真っ赤にしていた。
あんなに赤裸々に語ったのだから当然である。
「最早、あなたをぶっ飛ばすという欲望のみ! 今度こそ全力でぶっ飛ばしてお別れですわっ!」
「本当にそうでしょうか? まだ隠された欲望はありませんか? 私に偽りは意味をなしません。私にとって隠された欲望とは糧そのものなのです。ああ、やはり、ないようですね。全て赤裸々に語り尽くされたのだ。ですが、それこそが素晴らしいことであるとは思いませんか」
「思いません!」
イリスフィーナは断言する。
確かに己の隠された欲望は赤裸々そのものであった。
隠して置けるのならば、ずっと隠しておくべきものであった。
けれど、それでも『ウリディムマ』を前にしては糧にしかならない。
無限増殖。
その糧とすることは、戦う猟兵としては致命的だった。
襲い来る小さな『ウリディムマ』たちをイリスフィーナはオーラまとう拳でもってぶっ飛ばしながらキリがないと憤慨する。
「ならば、こうするまでですわ!」
きらめいたユーベルコードと共にイリスフィーナが飛ぶ。
増殖には分身とでも言うかのように二人のイリスフィーナが『ウリディムマ』の巨体を左右から挟み撃ちにして、拳の殴打でもって叩きのめす。
砕けるようにして力のオーラが散る。
その最中、さらに分身が増える。
「これがトリニティ・エンドですわ!」
三人になったイリスフィーナが『ウリディムマ』へと迫る。
連続攻撃による『ウリディムマ』の巨体を地面に叩きつける苛烈なる攻勢。さらにはオーラでもって『ウリディムマ』を囲い込む。
「人の隠れた欲望を暴き立てるやり方!褒められたものではございませんわ!」
「これがわたくしの全力ですっ!」
「もはやあなたの姿など見たくもございまえんわっ!」
三人のイリスフィーナは、そのオーラでもって囲った内部に大爆発を引き起こす。
それはイリスフィーナの怒りを体現するかのような凄まじい爆発であった。
「これに懲りたのならば誰かの隠し事を暴こうなどとは思わないことですわっ!」
彼女にとって隠された欲望とは、それほどまでに赤裸々なものであったのだろう。
怒りに震える肩を彼女は抱き、赤面しつつも、どことなくスッキリした面持ちで、大爆発を巻き起こす『ウリディムマ』を睥睨するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
拙者は常々ロリハーレムを作りたいと思っているけど貴様は?
今まで特に欲望を隠した事なんかないが…改めてリマインドしておくのも悪くないでござるね!
披露したんだから願いを叶えてくだちぃ…そういうのないのか!?拙者を騙したのかァ!よくも騙したアアア!騙してくれたアアア!!絶対に許さないよ
小さなウリなんたらが出てこねぇなら強化はされねぇ!なら暴力だ!一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやる!
砂をぶちまけて目潰し!そして掟破りの目潰しパンチ連打!目しかねぇからなにやっても目潰しにしかならないでござる!
今の拙者は純真な心を騙された悲しきモンスター…暴の化身でござるッ!
貴様がッ泣くまで殴るのをやめないッ!
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は常々思っていた。
それは隠されるべき欲望であったけれど、それを隠そうとも思っていなかった。だから、目の前に『密告者』……かつてそう呼ばれた『11の怪物』が現れようともたじろぐことはなかった。
それどころか、大コマ使ってフルコースを紹介している時かのような顔をして言うのだ。
「拙者は常々ロリハーレムを作りたいと思っているけど、貴様は?」
後三つってところかな、くらいの感覚。
スナックをつまむ感じでエドゥアルトは『ウリディムマ』に問いかける。
己の欲望を告げたのだから、問いかけた其方にも欲望を開示する必要性があると言うのだ。
それはそうだろう。
『ウリディムマ』の言う素晴らしい世界というのは、互いに包み隠すものがない世界である。
ならば『ウリディムマ』にも隠された欲望が存在しているはずだ。
「私はただ皆様の欲望を開放してさしあげたいだけです。それだけです」
「なんだつまらんでござる。で」
エドゥアルトはここからが本題であると言うように紳士(ヘンタイトイウナノ)のように居住まいを正した。
「リマインドするのって悪くないでござるね。拙者の欲望、はっきりと自覚したでござる。で、『11の怪物』であり、『エリクシル』の親玉ってんなら、欲望披露したんだから願いを叶えてくだちぃ」
「そういうのはないです」
ぴしり、とエドゥアルトと『ウリディムマ』の間の空気に亀裂が走る音が聞こえたような気がする。
なんで?
なんで? とエドゥアルトの顔が言っている。
『エリクシル』の親玉であるのだから、願望を叶えてくれるものだと思っていたのだ。
そのためにエドゥアルトは真摯に叫んだというのに。
別に叶えるとは言ってない。
「拙者を騙したのかァ! よくも騙したアアア! 騙してくれたアアア!!」
アスキーアートみたいな感じにエドゥアルトは叫んだ。
慟哭と言ってもいいものであった。
すでにエドゥアルトの側に小さな『ウリディムマ』は存在していない。
隠された欲望など無い。
それはさらけ出された欲望でしかなく、『ウリディムマ』の糧にはならない。故にエドゥアルトは踏み込む。
今の彼は『ウリディムマ』はより『変態』である。
言い方が悪いが、そういうユーベルコードなのだ。今のエドゥアルトは紳士である。変態とルビがつくけど。
「絶対に許さないよ」
「許すも許さないも叶えるとは言って」
言ってないって言いかけた『ウリディムマ』の眼前にエドゥアルトは飛びかかる。
「なら暴力だ! 一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやる!」
ジャックナイフより切れやすいエドゥアルトの拳が握りしめられる。
放たれた拳の一撃が『ウリディムマ』の眼球を叩きのめし、さらに手にしていた砂をぶちまける。
目潰しパンチの連打であった。
掟破り。
ルールブックに目潰しダメって書いてないからやっていい。それくらいのヒールっぷりであった。
というか、『ウリディムマ』は巨大な眼球である。
眼しか叩く所がないっていうのなら、そこをぶっ叩くしかないのである。
「今の拙者は純真な心を騙された悲しきモンスター……暴の化身でござるッ!」
そう、騙されたのだ。
社会的信用は暴落しているし、社会的地位は失墜している。
もう何も怖くない。
魔法も奇跡もあったもんじゃないが、ユーベルコードなら輝いている。
「貴様がッ泣くまでッ殴るのをッやめないッ!」
エドゥアルト渾身のぐーパンが『ウリディムマ』の眼球を真正面から打ちのめした――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
あやー、藍ちゃんくんから無数のウリディムマがぽこじゃかと!
藍ちゃんくん、確かに大切なヒトに内緒にしているサプライズも用意中なのでっす!
ここで明かしたりはしませんよー!
目玉さんはその相手ではないので!
それにでっすねー、藍ちゃんくんの大切な隠し事から生まれたのだと思えば!
目玉さん、とってもキュートなのでっす!
大事な秘密がある証でっすからねー!
或いは藍ちゃんくん自身が自覚してない欲望から生まれた目玉さんも!?
それはなんとも嬉しいことなのでっす!
藍ちゃんくん、まだまだ知らない可能性を秘めているということでっすので!
あ。
たった今、たった今秘めた欲望ができちゃったのでっす!
藍ちゃんくん、藍ちゃんくんのウリディムマさんをもっと見たいのでっす!
これは秘めておかないと傍迷惑な欲望なのでっす!
eyeちゃんくんというニックネームはどうでっしょ……あや?
あやー。
目玉さん、増えなくなっちゃいましたかー。
なんとも皮肉な話なのでっすよー。
ではお話ありがとうございましたのでっすよーと即興詩!
「藍ちゃんくんでっすよー!」
戦場に降り立った紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は開口一番叫ぶ。
己の存在を示す。
どんな世界にあっても、どんな戦場にあっても、己という存在を示すことが藍ドルなのだ。
故に藍は示す。
『11の怪物』、『ウリディムマ』は視線を向ける。
眼球と唇だけの奇妙な怪物は問いかける。
「あなたの隠された欲望はなんですか?」
その問いかけと共に藍の周囲に生み出されるのは無数の『ウリディムマ』だった。
小さい。
けれど、それは隠された欲望を得て、徐々に複製体から本体と同じ大きさに到達するだろう。
これが無限増殖。
知的生命体が持つ隠された欲望を糧にして成長し、増殖し、世界を埋め尽くす怪物の力だった。
「ぽこじゃかと生まれてますね! 藍ちゃんくん、確かに! 内緒のサプラァ伊豆とかだぁい好きでっす! 喜んでくれる顔を見たいのです。驚いた顔を見たいのです。だって、そうすると藍ちゃんくん、とってもうれしくなってしまうのでっす!」
でも、と藍ちゃんくんはウィンクする。
悪戯っけ、茶目っ気たっぷりな表情だった。
そう、確かにサプライズは大好きだが、ここで明かす趣味はない。秘されることこそ、サプライズの意味があるのだ。
「何故です」
「目玉さんはその相手ではないのでっす! それにでっすねー……」
藍は小さな『ウリディムマ』を見やる。
これは自分の隠された欲望、願いから生み出されたものであるというのならば、奇妙な怪物の姿であっても、なんだか愛おしく思えてしまう。キュートに思えてしまうのだ。
だって、これは自分の中にいくつもの大事が存在している証であったのだから。
また、自分が自覚していない欲望がまだまだあるってことだ。
なら、それは喜ばしいことだ。
多くの秘密がある。
多くの隠された自覚なきものがある。
それを自分が知ることができるという喜びが心に満ちて、さらに大きな喜びに変わっていく。だから、サプライズって良いものなのだ。
「嬉しいでっす! 誰がなんていおうと、この秘密は藍ちゃんくんのものなのでっす! 藍ちゃんくんは、もっともっと大事にすることができるのでっす!」
嬉しい、という感情が爆発する藍の瞳はユーベルコードに輝いていた。
それを前にして『ウリディムマ』はは唇の瞼を細める。
隠された欲望を暴かれた知的生命体の反応は一様だった。
後ろ暗いことがあるからこそ、隠そうとするのだ。故に動揺する。なのに、今眼の前にいる猟兵、藍はたじろぐことさえしていない。
無数に産まれた『ウリディムマ』にさえ、感動してみせたのだ。
「あ、たった今、秘めた欲望ができちゃったのです!」
恥ずかしがるようにして藍は身をよじる。
これは流石に、と言うように身を捩って、よじってよじれる。けれど、藍は構わず叫ぶ。ためらって入られない。
「藍ちゃんくんの『ウリディムマ』さんをもっと見たいのでっす! もっと、もっと、藍ちゃんくんが自覚していない欲望を見せてほしいのでっす!」
「何を」
「それは、はた迷惑な欲望だってわかってるのでっす! あ、eyeちゃんくんというニックネームはどうでしょうか……」
だが、次の瞬間、藍は目を見開く。
「あや?」
藍の眼の前で生み出された『ウリディムマ』が消滅していくのだ。
そう、それははた迷惑欲望であったが、開示された以上、隠された欲望でなくなってしまったのだ。
全てが連鎖反応を起こすように『ウリディムマ』は消滅していく。
「あやー……増えなくなっちゃいましたね」
隠されていないのならば、糧はなく。
そして、本体だけになってしまった『ウリディムマ』を藍は申し訳なく思いながらも、ぺこりと一礼してから、一瞬でユーベルコードの輝きを明滅させる。
「お話ありがとうございましたのでっすよー!」
それは、巡り藍(アイチャンクン・サプライズステーッジ)。
凄まじい速度の早口による即興詩。
その一撃は、目にも止まらぬ速度で『ウリディムマ』の眼球に叩き込まれ、その本体の異形たる体躯に亀裂を走らせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
我らのシルバーレイン世界外にも面妖な敵は多いな
隠された欲望か
…土蜘蛛族の昔ながらの暮らしが恋しい
山の屋敷に主がいて人里で一目惚れした娘に再会…いや逢うのナシ
いびられてすり減ってしまう
まあ僕はそれも楽しかったが
三砂で【なぎ払い】小敵を叩く
恥じて隠してたと言うのでは無い
銀誓館に平定された今謀反の謂れで討たれたくないし
あ、これも告げよう
娘というのは実に可愛い(養女
嫁ぐなとは言わないが手放す日が来るのか…
さて
話すうち距離も縮んだ
大きな的だが外せぬ【怪力と集中力、2回攻撃】唇と瞳孔へUC撃ち込み
あなたは人の心の裡に興味があるのではないね
世界を自分で埋め尽くす欲の為に存在するのかい
なんとも正直な目と口だよ
銀の雨降る世界、シルバーレインにおいても面妖なる敵は数多く存在していた。
それらと戦うことが死と隣合わせの青春を駆け抜けてきた思い出であることは言うまでもない。
しかし、『11の怪物』、『ウリディムマ』の力は群を抜いて悪辣だったことだろう。
人は欲望を隠す。
なぜなら、欲望とはあけすけに語るものではないからだ。
すべての欲望が正しいとは限らない。
正しさがあるのならば、悪しきだって存在している。陰と陽があるように、太極に位置する欲望だってあるだろう。
ときにそれは隠さねばならない。
己の身を守るために。
故に隠されるのだ。そして、その欲望をこそ『ウリディムマ』は糧にする。
暴き立て、対立を促し、滅ぼす。
故に『密告者』と呼ばれたのだ。
「……土蜘蛛族の昔ながらの暮らしが恋しい」
酒井森・興和(朱纏・f37018)は思わず呟いていた。
己の隠された欲望。
それは銀誓館学園に吸収される以前の生活のことを示していたことだろう。
山の屋敷に主がいて、人里で一目惚れした娘に再会したい。
「……いや、違う。今のナシで」
興和は頭を振る。小さな『ウリディムマ』は首を傾げている気配がする。わかっている。これは己の隠された欲望だ。
否定できるものでhなに。
けれど、よく考えれば、あの娘に自分は相当にいびられてしまう。すり減ってしまうのは目に見えていた。でも、それでも、自分は楽しかったのだ。
手にしたツルハシでもって小さな『ウリディムマ』を薙ぎ払う。
「そうだ。わかっていることだった。それでも楽しかったのだ。戻らぬ日々を懐かしむことこそ、欲望。戻らぬからこそ尊いと思ってしまう」
恥じたわけではない。
この欲望は、願望は、今の状況を考えれば謀反の意志ありと捉えられても仕方のないことだった。
けれど、隠してはいけないものだった。
それに、と興和は息を吸い込んで今度こそ叫んだ。
「娘がかわいい!! 嫁ぐなとは言わないが手放す日が来るのかと思うと気が気じゃない!!」
その叫びと共に小さな『ウリディムマ』が消滅していく。
己の中にある隠された欲望は全て発露した。
故に興和は手にした武装を握りしめる。
「それがあなたの隠された欲望なのですか」
「そうだ。これが僕の欲望。戻らぬ日々を願い、来たる未来を遠ざけたいという思い。されど、これが人だ。知的生命体という呼び名ではない。ただ生きている人の感情だ。故に、あなたは人の心の裡に興味があるのではないね?」
「私は人と人の間に隔て理を亡くしたいだけですよ。そうなれば、素晴らしい世界がやってくるとは思いませんか。各仕事のない世界。なんて素晴らしいものでしょうか」
「いいや、それはあなたの方便だ。世界を自分で埋め尽くすための、その欲望のために存在するという欲望そのものだ」
興和の瞳がユーベルコードに煌めく。
指先で触れる敵の感触を覚える。
呼気が練り上げる『気』が爆縮するようにして放たれる。
それは、白虎絶命拳。
渾身の一撃は怪物の体へと叩き込まれる。
「なんとも正直な目と口だよ」
故に、と興和は、その欲望を打ち砕くのだというように放つユーベルコードの拳でもって『ウリディムマ』を砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
秘された欲望喰らいの怪物か。趣味が悪い。
あたしの欲望? そうね、このゆりゆりやアヤメや羅睺、ニコルにサラと、恋人の皆と一日中ずっと爛れた愛し合いの時間に没頭する事ね。
一日中みんなと、えっちだけして過ごせたらなぁ。
そんな時間を少しでも作れるように、お勤めはきちんと果たしましょう。
ゆりゆり、魅了の踊りで湧き出たウリディムマを魅了しちゃって。
新しく出てくることはなくなったわね。それならあたしは本体を狩る。
その大目玉に、薙刀で「貫通攻撃」「串刺し」に。
召喚、『鎧装豪腕』。
その唇目玉を両側から掴んで、「怪力」で押し潰しちゃって。どこまでもつか見物ね。
後は複製体か。ゆりゆり、こっちへ来て。絶陣で片付ける。
「趣味が悪いわね『ウリディムマ』」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は思わず吐き捨てていた。
知的生命体の持つ欲望。
その中にある秘された欲望といのは、いつだって正しさと悪しきに二分される。
他者が存在するから個が生まれるように、それは知的生命体である以上、必ず持ち得たものであった。
得てして、そういう欲望というのは後ろ暗いものばかりである。
それを開示させる。
他の誰にも知らしめる。
『密告者』と嘗て呼ばれたのは、そのためである。隔て理のない世界を、隠し事の無い世界を作り出すという方便でしかない。
ただ己の無限増殖の糧にするために、他者の秘密を暴き立てる者。
それが『11の怪物』、『ウリディムマ』である。
小さな眼球めいた怪物が、縁の傍らに浮かんでいる。
息を吸い込む。
敵の無限増殖は隠された欲望があるが故。
ならば、隠されて居なければ良いのだ。
「あたしの欲望は、恋人たち皆と一日中愛し合いたいだけよ!」
叫ぶ。
それは赤裸々な告白だったことだろう。
爛れたものでもいい。清廉潔白であるとは言わない。
それが人の営みというものだ。汚れたものは、清いものの隣に常にあるものだ。清濁併せ呑む、とは言わない。
切っても切っても切り離せるものではないのだ。
故に、ゆかりは叫ぶ。
「少しでも、そんな時間を作りたいのよ! 正直にうと、こんなお勤めなんてやってらんないっていうのが本音かしらね! 一日中イチャイチャしてたいって思うのは悪いことではないでしょう!」
だって、愛しているんだから、と盛大に叫ぶ。
ただ一人ではなく、多くを愛したいと願うのは、欲望そのものであったことだろう。
「急急如律令! 疾く来たりませ。我が愛しき淫祠の女王にして、心を縛るもの。骸の海より戻り来たれ!」
淫雅召喚(インガショウカン)によって召喚された強大なりリスの女王が召喚される。
ゆかりの体に絡みつくようにしてリリスの女王は、全てを魅了する。
「あれだけ熱い告白をされればね」
「いいじゃない。新しく『ウリディムマ』も増殖できなくなっている。なら、あたしは!」
ゆかりは愛おしい体温から離れて、走り出す。
『ウリディムマ』は確かに恐るべき敵だ。
けれど、無限増殖こそが能力の要。
それを失った今、『ウリディムマ』に猟兵に対するアドバンテージなどないに等しい。
「『鎧装剛腕』!」
喚び出された式神が巨大な『ウリディムマ』の唇と眼球の姿をつかみ、動きを止める。
「動きを止めた!」
「欲望のままに振る舞うことに恥じらいはないのですか」
「あるわけないでしょ! 愛するってことは自分の恥ずかしい部分や、柔らかい部分をすりあわせるってことでしょう!」
なら、とゆかりは手にした薙刀の一閃でもって、隠すことを浅ましいと呼ぶ『ウリディムマ』の眼球を斬りつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
風車・拳正
(小さなウリディムマと戦いながら、考える)(欲望、俺の欲望……そりゃやっぱり……いや、それは| 捨てた 《 諦めた 》もんだ。だから違う)
(ーー本当にそうか? 本当に俺はあれを……捨てれたのか?)
オラァッ! ……ちっ、どうやら本当に底がねえみたいだな。(もう何体殴ったか分からない。……どうやら本当に欲望を晒け出さないと駄目らしい)
俺の……欲望
(ーー認めたくねえ。だってそれはもう| 捨てた 《 諦めた 》から)
(ーーけどよ、こうして今| コレ 《 拳 》を振るってるって事は……諦めてきれてないのか)
ーーああ、そうだよ。俺の欲望、そりゃ
ーーもう一度リングに立ちたいだ!!
ショック・ザ・インパクトォ!
迫りくる小さな『ウリディムマ』たちは、全てが人の隠された欲望を糧に増殖したものであった。
小世界にて増殖を完了した『ウリディムマ』たち。
それを拳で叩きのめしながら、風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は思う。
これもまた自分の隠された欲望であると。
そして、その欲望の正体を理解していた。
だが、それは捨てたはずだ。
諦めたと言い換えても良い。
最早、戻ることも。進むことも。にっちもさっちも立ち行かぬのが己である。
だから、それは違うのだと『ウリディムマ』を叩きのめしながら拳正はお思う。
――本当にそうか、と。
本当に己は、あれを捨てたのか。捨てることができたのかと。
諦めることができたのか。
「オラァッ!!」
呼気放ちながら、拳を叩きつける。
忘れたはずのもの。捨てたものが、拳を振るうたびに明滅するようにして脳裏に浮かぶ。
「無駄です。あなたに隠された欲望があり、あなたが自覚しないかぎり、私は増え続けます。そういうものなのです。わかりますよね。見てみぬフリをしている猟兵。あなたは」
隠している。
自らを偽っている。
他の誰にも言えないことを、己の中に抱え込んでいる。
認めたくはないことが溢れかえっている。なぜなら、それはもう|捨てた《諦めた》はずなのだ。
だが、拳を『ウリディムマ』に叩きつける度に込み上げてくるものがあった。
拳を振るう。
それ自体が、諦めていられないことの証左であった。
人のため、世界のためと偽っているのは、己の欲望に蓋をするためであったのではないか。
それを自覚した拳正は目を見開く。
「――ああ、そうだよ。俺の欲望、そりゃ」
笑う。
笑ってしまう。
どんなに苦しい過去があっても。どんなに拭い得ぬ血潮が拳にこびりついていも!
「――もう一度リングに立ちたい!」
拳を天に突き上げる。
スポットライトに飛び散る汗。その飛沫に交じる血潮がある。
迸る情熱だけが拳正の心を突き動かす。どれだけ言い繕っても過去は消えない。拭えな。なら、前に進むしか無いだろう。
そうすることしか自分にはできることはないのだから。
ならば、と吹っ切るようにして拳正の瞳はユーベルコードに輝く。
「ショック!(ヒッサツノイチゲキ)・ザ・インパクトォ!」
振るう拳は『ウリディムマ』の眼球を捉えていた。
超高速なる一撃。
己の渾身を、己の存在を拳に込めて打ち出す一撃。
「どうして見てみぬふりをしていたのですか。どうしてあなたは」
「後ろ暗いからだ。諦めなければならねぇって己で己を縛っていたからだ。自縄自縛だって笑うかい! だがな!」
そう、己は前に進む。そうすることを決めたのだ。
ならば、他の誰にも止められない。
止めようがない。進むと決めた瞬間から、ためらいは消えた。
「オオオオオッ!!!!」
それは裂帛の気合すら置き去りにする速度で持って撃ち出され、『ウリディムマ』の眼球、その水晶体を内部から破裂させるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
私の隠れた欲望とは?
ダンスの事なら隠したことはありません
他には…ううん、しかしこれは…仕方ないですね
あにさんにもっと頭を撫でてもらったり甘えたりしてみたいです!
…言葉にすると欲の深さを再認識しました。そして己に対する嫌悪感も
(肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
あにさんには最愛の方がいます
私にとっても大切な方です
先ほどの私の言葉はその方への裏切りに等しい言葉です
それを曝させた貴方を絶対に許しません
(翅を震わせ空中に飛び上がるとUC【蠱の翅】を発動し小さなウリディムマと本体をまとめて貫こうと『衝撃波』を起こしながら突撃する)
隠された欲望を糧に『11の怪物』、『ウリディムマ』は無限増殖を為す。
すでに小世界で無限増殖を完了した『ウリディムマ』は無数の『ウリディムマ』と共にエンドブレイカー! 世界に侵攻している。
そして、さらに猟兵達の中にある隠された欲望を糧に成長していくのだ。
再現はない。
敵対するものが知的生命体である以上、『ウリディムマ』の能力は止めようがない。
そういうものなのだ。
「ヒトの心は一元ではない。必ず隠された裏面が存在しています。それは仕方のないことです。あなたにも、あなたにも、あなたにも。必ず他者には開かせぬ欲望があるのです」
どんなに信頼を寄せる者がいるのだとしてもだ。
どうしようもないほどに人の心は表裏を生み出す。
けれど、と播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は頭を振る。
己の隠された欲望。
踊りたいという欲望。ダンスに関連する欲望は隠したことがない。いつだって踊りたいと思っているのだ。
そうでなければ自分ではないのだから。
けれど、クロリアは他に思い至る物があった。
なぜなら、己の隣には小さな『ウリディムマ』が浮かんでいる。
これが証明。
これが己の心にある隠された欲望。
「それがあなたの隠された欲望。あなた自身も理解しているのでしょう。情熱の裏側に存在する甘ったれた感情を」
『ウリディムマ』の言葉にクロリアは激昂する。
それは己の触れてほしくない部分に遠慮なしに触れるものであったからだ。
赦してはおけない。
許せない。
けれど、その感情が跳ね上がる度に『ウリディムマ』は増殖していく。
「あにさんにもっと頭を撫でて欲しいです。甘えたりしたいです。ずっと、もっと!」
叫ぶ。
隠された欲望は敵の糧になる。
だから、言葉にする。発する。世界に発露する。
隠された欲望は発せられば、隠されず。けれど、クロリアは己の激昂に水をぶちまけられたような気分になっただろう。
己の欲望の深さに。
業に。
嫌悪する。こんな己に嫌悪する。。
これは祓わなければならないものだ。
肩幅に開いた足、その大腿をなで上げる指先の鋭さをクロリアは知る。
「ならば、そうすればいいのです。ですが、そう出来ない理由があるのですよね。浅ましい自分を見たくないから、心に蓋をしてしまうのです。それはあまりにも」
「あにさんには最愛の方がいます。私にとっても大切な方です」
だから、とクロリアは己を恥じる。
あの隠された欲望は、裏切りでしかない。だから、それを暴き立てものを赦してはおけない。
翅が震える。
怒りに眼の前が真っ赤になる。
それは紅焔めいた旋律となって彼女の体を飛翔させる。
旋律のオーラがほとばしりながら、クロリアは『ウリディムマ』へと飛ぶ。
「貴方を絶対に赦しません」
煌めくユーベルコード。
蠱の翅(コノハネ)が震える。怒りに震える。迫る小さな『ウリディムマ』をも吹き飛ばしながら、衝撃波を生み出しながらクロリアは飛ぶ。
自覚しなければよかった。
識らなければよかった。
蓋をしたままにすればよかった。
例え、己の隠された欲望が世界を破滅させる『ウリディムマ』の糧になるのだとしても。
けれど、ああ、と思う。
それでも、己は己が踊ること以上の感情に勝るものはないのだと知る。
膨れ上がった旋律のオーラと共にクロリアは『ウリディムマ』の巨体を貫く。
それは己の情熱を示すものだった。執着と言ってもいい。
「それでも私は踊るのです――」
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
お呼びじゃなくてもお邪魔します!
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
で?
我等が『菜医愛流帝』を推してない不届き者がいると聞きましたが!
『菜医愛流帝』の良さがわからないとはそんなの欲望って言えると思ってるんですか??
いいでしょう、我らの『菜医愛流帝』で萌え殺してあげましょう!(長ランばさぁ
とかなんとかやってる間にNo2の動きが速い!良すぎる!
見なさい!アレが正真正銘のチョコ肌たゆんパイ
あの素直さとボディのアンバランスがナイアルテさんですよ!
チョコは美味しい
つまりナイアルテさんも美味しい!!
食べたくなる可愛さがナイアルテさんの別名!
菫宮・理緒
【サージェさんと】
ナイアルテさんの言うとおり!
隠さなければどうということはない!
『菜医愛流帝』長ランばさぁ。
我がファンクラブに、欲望を隠す、などという言葉はない!
常に全開フルオープンで菜医愛流帝を推すだけだ!
あ、はい、ナイアルテさん。これ貢ぎ物のチョコ。
ゴ●ィバって言ってね、わたしの世界で有名なんだよー♪
はい、あーん。ほら、あーん。あーん、だってば!
そしてついでにサージェさんにもあーん♪
ちょっと高めにチョコをセットして、ジャンプでして食べてもらうよ。
そう、それそれ!
甘たゆんはみんな笑顔になるよね!
あ、そいえばウリディムマとかいうの、どこにもみえないんだけど……
え?最初からなんにも隠れてない?
「お呼びとあらば参じましょう! お呼びじゃなくてもお邪魔します!」
戦場にダイレクトイン!
颯爽登場、クノイチ!
揺れる二つの果実は、忍べてない証!
「私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
忍べてないサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は躍動感たっぷりに『ウリディムマ』が無数に増殖した戦場に降り立つ。
きっぱりと言い放つ。
前口上はしばらくぶりにしっかり言えた。
まあ、それもそうだろう。『ウリディムマ』はサージェの前口上を阻む必要性がない。『ウリディムマ』にとって必要なのは隠された欲望という糧である。
「で? 我らが『菜医愛流帝』を推してない不届き者がいると聞きましたが!」
「何の話をしていらっしゃるのです?」
本当である。
まじで何の話してる?
『ウリディムマ』は思っただろう。もしかして、話の通じないたぐいの猟兵なのだろうかと。
だが、しかし、確実に『ウリディムマ』が産まれている。
隠された欲望をサージェは持っているのだ。
「『菜医愛流帝』の良さがわからないとは、そんなの欲望って言えると思っているんですか??」
一切わからん。
この猟兵はマジで何を言っているのか、『ウリディムマ』には理解できなかった。
「そう! 隠さなければどうということはない!」
ばさぁ、って背中に『菜医愛流帝』の刺繍が施された長ランを翻しながら、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は叫ぶ。
マジでどういうこと?
「我がファンクラブに、欲望を隠す、などという言葉はない! 常に全力全開フルオープンで『菜医愛流帝』を推すだけだ!」
だから、『菜医愛流帝』ってなんだと、と『ウリディムマ』は思っただろう。
本当にどういうことなのだろうか。
「いいでしょう。我らの『菜医愛流帝』で燃え殺してあげましょう!」
いつの間にかサージェも長ランを翻している。
怖い。本当にこの猟兵たち怖い。一体全体何が言いたのかさっぱりだ。なのに、『ウリディムマ』は隠された欲望という名の糧が喪われていくのを感じたことだろう。
「あ、はい、あーん!」
理緒はさらっと後方のグリモア猟兵の元へと走っていた。
さっそうと走っていた素早さはサージェにとっても意外であったし、いつもその動きが出来てればいいのにと思わないでもなかった。
それほどまでに早かった。
手にした裸婦の王妃を由来にしたチョコレートメーカーの高級チョコを食べさせているのだ。
「これはごっでぃーゔぁ! わたしの世界では有名なんだよー♪」
「悠長がすぎる! ですが、これが世界の答えです!」
「なんのことですか」
「わからないのですか! みなさい! アレが正真正銘チョコ肌たゆんパイ!」
サージェが力説する。
一切わからん。本当に何を見せられているのか『ウリディムマ』にはわからなかった。この時間、一体何?
「はい、あーん。ほら、あーん。あーん、だってば!」
理緒はぐいぐいチョコレートをグリモア猟兵に押し付けている。
いや、食べます。
食べますけども、体重計が! と叫ぶ声が聞こえたような気がしたが、気にしない。食べれば良いのである。
食べたら、動けばいいのである。
結局のところ、体重というのは運動量に比例するのだから、動けば解消されるのである。故に、甘味の誘惑に負けたところで、動けば帳消し!
ノットギルティ!
汝罪なし!
「そして、ついでにサージェさんにもあーん」
「あーん! そうです! 素直さ! そして、わがままボディのアンバランスさ! それが『菜医愛流帝』なのですよ!」
サージェは理緒から差し出されたチョコレート頬張って目をユーベルコードに輝かせる。
「わかりません」
「チョコは美味しい! つまり、『菜医愛流帝』も美味しい!! 食べたくなる可愛さが『菜医愛流帝』の別名!」
なるほど、わからん!
サージェは、威風堂々(シノベテナイクノイチ)と踏み込む。
忍べてないとか、クノイチのアイデンティティよ、とかそんなことは些細なことであると示すように彼女は堂々と『ウリディムマ』へと踏み込む。
困惑仕切りである『ウリディムマ』。
けれど、さらに理緒はユーベルコードに輝く瞳でもって、高級チョコレートを偽装錬金(ギソウレンキン)する。
ユーベルコードの使い方ってそういうのでいいのかなって思わないでもなかった。
だが、いいのである。
「甘味は世のルールの全てを超越するんだよ! そう、それこそが!」
「ええ、『菜医愛流帝』が皆に笑顔を生み出す証拠!」
そうかなぁ。
「そうなの! みんな笑顔になっちゃえば、隠された欲望なんてどうでもよくなちゃうよう!」
理緒の言葉が証明するように、彼女たちの周囲には『ウリディムマ』が増殖していない。
欲望フルオープン。
火力強めの欲望に圧倒された『ウリディムマ』たちは、彼女たちの周囲から消えているのだ。
「どこにもいないよね」
「ふっ、私たちの欲望に恐れをなしたのでしょう」
確かにそれは真実かもしれないが、どう考えても不都合な真実な気がしないでもないなってグリモア猟兵は後方でそんなことを思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
欲望を隠さなければいいじゃない!という事かあ…
未成年の主張かな?
屋上は何処だ屋上は!
まあ屋上無くても言うけど!
面倒な事は他人に押し付けて、楽しい所だけいただきてぇ〜!!
というか押し付ける!押し付けた!
よっしゃラッキー!
良い人が居るもんだ!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
大きなろうが小さかろうが、纏めてなぎ払えばヨシ!
【Code:T.S】起動!
雷刃…本体に届くサイズまで拡張!
『2回攻撃』…まずは一太刀目で小さなウリディムマを斬る
即座に二太刀目、飛ばしてくる小さなウリディムマごと本体を『なぎ払い』斬り裂く!
最初から増殖してくるのは小賢しいけど…それすら乗り越えてみせようか!
『11の怪物』、『ウリディムマ』の能力は恐るべきものであった。
隠された欲望。
それは知的生命体には必ず存在するものであった。それを糧に、暴き立てながら無限増殖する。何処にでもいる。誰にでも存在する。その噛み合う能力によって『ウリディムマ』は小世界で無限増殖を完全に終えてからエンドブレイカー! 世界に舞い戻ってきたのだ。
飛来する無数の『ウリディムマ』を前に猟兵達は果敢に戦う。
だが、猟兵にも心はあるのだ。
心が一元でない以上、相対する以上、猟兵達の心に秘された欲望さえも『ウリディムマ』は糧にしてしまう。
ならば、なんとするか。
簡単なことである。
「欲望を隠さなければいいじゃない! という事かぁ……未成年の主張かな?」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はUDCアースあたりのエンタメ番組を思い出して首を傾げる。
「なら屋上は何処だ屋上は!」
そう未成年の主張にはお立ち台たる屋上がなければならない。
学校の屋上こそ、人々の耳目を集める場所であった。
いつもは入れない屋上というサンクチュアリ。
そこで叫ぶのは、確かに未成年ならではであったことだろう。残念ながら玲さんは未成年ではないので、成年の主張となるだろうが。まあ、些細なことである。あっ、ぶたないで!
「まあ、屋上なくたって言うけど!」
玲は叫ぶ。
隠された欲望。
「面倒なことは他人に押し付けて、楽しいところだけ頂きてぇ~!!」
身も蓋もないことを言った。
めちゃくちゃ言った。
楽して稼ぎたい。他人より優位に立ちたい。優れたものを持ちたい。優越感に浸りたい。
それは隠されるべき欲望であったことだろう。
けれど、それでも人には必要不可欠な欲望であったことだろう。それがなければ、人は前に進むことさえままらぬのだ。
「というか、押し付ける! 押し付けてきた! ラッキー! 良い人が居るもんだ!」
玲は諸々の雑費は惜しまぬが、面倒だけはとにかくしたくないのだ。
とある世界の温泉小国家だってそうだった。
楽しい運営部分は噛み締めたい。
けど、面倒な運営部分はぶん投げたい。ていうか、投げた。ぶん投げてきた。でも、それでもやる人がいるか世界は回っている。
「それがわかっているから、私はやるんだよ!」
抜き払った模造神器が青く煌めく。
二刀が励起し、出力を上昇させていく。雷の刃が形成されていく。
「Code:T.S(コード・サンダーソード)! 出力上昇、雷刃形成! 大きかろうが、小さかろうが、纏めて薙ぎ払えばヨシ!」
膨れ上がった雷刃が振るわれる。
即座に振るうのにためらいはなかった。横薙ぎに払った一撃が小さな『ウリディムマ』を切り裂きながら、数多巻き込んでいく。
「なんという欲望」
「それが人ってもんでしょう! 私は人であることを否定しない。後ろ暗いことがあるのは当然だって、飲み込んでいかなきゃ! 未成年でいられるのなら、それを守るのが大人ってもんでしょ!」
己の中にあるはずべき部分さえも認めるからこそ、人は大人になっていけるのだ。
玲は自分を大人とは認めたくないかもしれない。
けれど、それでも守らなければならないものがある。
「最初から増殖してくるのは小賢しいけど……」
振るう雷刃が縦に振り抜かれる。
それは本体たる『ウリディムマ』に振り下ろされていた。大人になりきれていないと言われてもいい。
だって、楽しいことが大好きだ。
そのためにはオブリビオンは邪魔なのだ。世界そのものが己の楽しむ場であるのに、それを滅ぼそうとするものは。
「乗り越えてみせようか!」
玲の一閃が『ウリディムマ』の巨体を切り裂いた――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
うわぁ…
うわぁ…
という視線をナイアル亭に送りつつ事に向かって出発しよう!
●つまり…
みんながボクを崇めたり可愛がったりしたいって思ってるのを隠しちゃダメってこと…?
いいことするじゃん!
ボク?ぇー?ボクって何か隠してた?(つんつん)無いよねえ?
でも秘すれば華とも言うし!
ボクがそれを見抜いて指摘する楽しみを奪ってもらっちゃ困るよね!
●すでに犠牲者が大勢いるならば
犠牲者の会の力を借りればいいまでのこと!
みんな!欲望をバラさなくてもこんな実はありますよってされちゃうハラスメント許せるの!?許せないよねえ!
とUC『神心』で全世界に訴えかけ
ズッバーーーーーーンッ!!とやっちゃおう!
隠された欲望。
それは人の心が一元ではないことの証明であった。
正しきがあるからこそ、悪しきがあるように。
揺れ動く心の中に、その昏き心は確実に存在している。嘗て『密告者』と呼ばれた『11の怪物』、『ウリディムマ』は、その隠された欲望を曝す。
貶め、動揺さえ、それを糧にして増殖していくのだ。
どうしようもないことだ。
知的生命体にとって、それは決して不可分であるから。
「うわぁ……うわぁ……」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はグリモア猟兵の叫びに心底残念なものを見るような視線を向ける。
正直に言って、そこまであけすけに語るのかと。
ハッキリ言ってドン引きである。
バカ正直に程がある。はっきり言って、そうでもしなければ、隠された欲望を、ただの欲望に変えることはできないのだろう。
つまり、とロニは思う。
「みんながボクを崇めたり可愛がったりしたいって思ってるのを隠しちゃダメってこと……?」
ロニはかなり好意的に状況を解釈していた。
わかる。
神だから恐れ多いって気持ち。
でもでも、そういうのを隠して我慢して抑圧されるっていうのならば、開放しちゃったほうが良いんじゃないかなっていうのは自明の理ってやつだとさえ思っていたのだ。
「いいことするじゃん!」
「そうでしょう。何も包み隠すことのない、隔て理のない世界は素晴らしいものです。誰もが隠せない。誰もが隠し事をしない。それは素晴らしいものですよ」
『ウリディムマ』の言葉が響く。
でも、とロニは首を傾げる。
自らに隠す欲望なんてない。
いつだってフルオープンである。フルオープン過ぎて、心の奥底まで透けて見えるからこそ、底が知れないという闇を見出すように。
「でも秘すれば花とも言うしね! ボクがそれを見抜いて指摘して、きゃっきゃするっていう楽しみを奪うのは如何と思うよ!」
ロニは手前勝手な理屈を言う。
神はいつだってそんなものだ。人間の自乗なんてもんをッ考慮しない。なら、とロニは指先を掲げる。
「いっぱい犠牲者がいるんだね! 小世界で増えてきたってことは、小世界には君の犠牲者がたくさんいるってこと! ならさ!」
神心(ゴッドウィル)が迸る。
小世界にて『ウリディムマ』によって心を晒された人々に問いかける。
その無意識に。
あらゆる世界のすべての意識に呼びかけるのだ。
「みんな! 欲望をバラさなくてもこんな実はありますよってされちゃうハラスメント許せるの!? 許せないよねぇ!?」
訴える。
それは自分の楽しみを奪われた怒りでもあったが、しかし、同時に小世界の人々の心を撚り合わせるものであった。
みなぎる力が拳に宿る。
暴かれた悲しみも。
己の心の偽りを指摘された羞恥も。
すべてがロニに同意するのだ。
「だよねぇ! それをしていいのはボクだけだもんね! というわけで『密告者』くん! いや、『ウリディムマ』くん! 君は!」
ズッバーンとやっちまうよ! とロニは世界から溢れんばかりの同意を得た力をユーベルコードでもってみなぎらせながら、その拳を『ウリディムマ』へと叩きつける。
炸裂する光。
それは『ウリディムマ』の言うところの隔てりのない世界が見せることのできない光であり、同時にその異形たる体躯を打ち砕く一撃となるのだった――。
大成功
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洞木・夏来
私の隠してる欲望、一つだけ心当たりがあります。
私は今までこの呪いを怖いと思ってた。逃げたい、なかったことにしたいってずっとと思ってた。
今の私は恐怖は悪いことじゃないと知りました。この力のおかげで、私はみんなに合えました。
助けられたことだって、背中を押されたことだって何度もあります。
猟兵になれたのも、猟兵になってからも。もちろん神器にだって何度も助けられました。でも、きっかけはこの呪いだったんです。
今までずっと隠してました。私はこの感情を肯定しちゃいけないと思ってたから。
だって今までずっと疎んで、消したいって思ってたのに虫の良い話じゃないですか。私はこの呪いを払うために猟兵になったんですから。
まだ戦うのは怖いけど。それでも、私はこの力と共に強くなりたい。だから、お願いします。私に力を貸してください。
【UC:リアライズバロック】を発動させます。今まで見たいに暴走ではなく自分の意思で、この力と向き合って。
ありがとう。そして、これからもよろしくお願いします。
(アドリブ等々全て歓迎です)
後光が明滅する。
いや、黒い光を発し、また色彩豊かに明滅する。それは己に課せられた呪いであると洞木・夏来(恐怖に怯える神器遣い・f29248)は知っている。
この呪いが多くを傷つけた。
猜疑心や恐怖心が誰かを傷つける光景を何度も見てきた。
己の親しい者たちを、その傷を見てきた。
だからこそ、彼女は猟兵として家を出たのだ。もう誰も傷つけなくて住むようにと。恐怖心を受け入れられるようにと。
けれど、その道は平坦なものではなかっただろう。
すべては自分のためだ。
呪いを克服し、誰かを傷つけぬようにと願っておきながら、そうすることで己が孤立することを恐れたのだ。
全部利己的な願いのために己は世界を救う。
それを後ろめたい、と思うほどには彼女の心は清廉であっただろう。故に、その心に宿る後ろめたさは、色濃く刻まれるようであった。
「私は今までこの呪いを怖いと思ってた。逃げたい、なかったことにしたいって、ずっと思ってた」
なければいい。
こんな呪いなど。誰も傷つけたくない。バロックメイカーは、その恐怖心でもって他者を傷つける。
けれど、と思うのだ。
こんなにも疎ましい力こそが、己が誰かを救うための力なのだと。
「今の私は恐怖は悪いことじゃないと識りました。この力で私はみんなに会えました」
それは得難きものであろう。
この感情は誰にも否定できるものではない。
例え、己の中にある後ろ暗い、隠された欲望にも否定できない。
「ですが、貴方はそう思っていても、他者はそう思っていないでしょう。疎ましく思うでしょう。いなければよいと思うでしょう。そういうものです。誰しもが自らの傷には敏感でも、他者の傷には鈍感なのです。自らの言葉が、所作が、行動が。誰かを傷つけるなんて露とも考えていないのですから」
そういうものです、と『ウリディムマ』は言う。
その言葉は真実が含まれている。
夏来が抱く猜疑心や恐怖心が証明している。
けれど、と彼女は言う。
「『助けられたことだって、背中を押されたことだって何度もあるんです。猟兵になれたのも。猟兵になってからも。勿論、神器にだって何度も助けられました。でも」
そう、忌むべき呪いこそが切っ掛けだった。
これが始まりだった。
今までずっと隠してきた思いがある。
恐怖も猜疑も。
それは肯定してはならない感情であったからだ。
誰もが汚いものを見たいとは思わないだろう。己のこの感情は酷く醜いものだ。だから、隠した。
戦うのはまだ怖い。
恐れが先走る。けれど、己の背を支えてくれる優しくも温かい者たちの掌を知っている。
だから、恐れをいだきながらも、夏来は叫ぶ。
「だから、私は肯定します!」
虫の良い話だとはわかっている。
疎み、消したいと思っていた呪い。
されど、この呪いは鎹なのだ。己と皆をつなぐもの。恐れは願いに変わる。
この力は己自身。
ならば、ともに強くなりたいと願う。
「お願いします。私に力を貸してください」
夏来の瞳がユーベルコードに煌めく。
己の中の猜疑心も、恐怖心も形に変える。
バロックレギオンが立ち並び、迫りくる『ウリディムマ』へと走り出す。
それは整然と居並ぶ軍勢であった。
これまで暴走によって放たれる攻撃ではなく。
自らの意志で向き合うことによって得られた整然たる行軍。故に、夏来は『ウリディムマ』へと立ち向かうバロックレギオンたちが、次々と小さな『ウリディムマ』を破壊し、さらに本体たる『ウリディムマ』へと迫る様を見上げる。
これまで猟兵達によって刻まれた傷跡を引き裂くようにしてバロックレギオンたちは力を振るう。
隠された欲望は晒された。
それは心の柔らかな部分を切開するようなものであっただろう。
痛みが走る。
けれど、と夏来は己の中より生み出されたバロックレギオンたちに向かっていうのだ。
憎むのではなく。疎むのでなく。
「ありがとう。そして、これからもよろしくおねがいします」
ともに歩んで往こうと。
砕け散り、霧散する『ウリディムマ』を背に、夏来はバロックレギオンに手を差し伸べるのだった――。
大成功
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