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エンドブレイカーの戦い⑬〜鮮血淋漓

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #ウガルルム・ザ・グランギニョール #グラン・ギニョール #宝石災魔 #実験都市オペレッタグラン

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●実験都市オペレッタグラン
 オブリビオン『グラン・ギニョール』は嘗て、『アルダワ魔王戦争』において姿を確認された強敵である。
 三十六世界に比類無き暗殺能力を有した恐るべきオブリビオン。
 そんな彼女は『11の怪物』、『ウガルルム』と融合を果たしていた。
「どうだババア!『11の怪物』と合体してめっちゃエロくなったぜ!」
『グラン・ギニョール』は手にした大型のハンマーにそう呼びかけた。
 確かに彼女の姿は嘗て認められた際よりも肌色の面積が増えていた。だが、それは些細な問題である。
 彼女の手にあるは『宝石災魔』。
『脱いだだけだろ。あたしも強くなってるが、体がトンカチのままなのなんとかならんかね』
 ハンマーは嘆くように言葉を発する。
『グラン・ギニョール』は手の内の宝石を弄びながら、ひらいめいた、と言わんばかりに声を発する。
 だが、それを遮るようにしてハンマーは告げる。

『いやいいよ。エリクシルは、あたしの体にするには脆すぎる。それよりは』
「そうだよな! 此処は順当にグリモアベース探索災魔の研究を続けるか!」
 そう、『アルダワ魔王戦争』においても彼女達はグリモアベースに至ることを第一にしていた。
 それもそのはずだ。
 猟兵達の要にして急所。
 それがグリモアベースなのだ。

『ああ、こちとらそれができれば勝ちだからね。問題は猟兵だが』
「あいつらまったく止まらねぇからな! あたしとババアと『ウガルルム』! これらをかけあわせても……うーん、成功率は五分にギリ届かないって感じか!」
『ああ、だけど悪くないね。此処まで成功率を引き上げる事ができた。奴らが来るまで研究を続け、来たら死力を尽くすとしよう』
「おうよ! この『グラン・ギニョール』とババア! そして『ウガルルム』! 合わせて『ウガルルム・ザ・グラン・ギニョール』が猟兵たちを迎え討ってやるぜ!」
『11の怪物』と融合を果たした姿。
 それこそが『ウガルルム・ザ・グランギニョール』。
 彼女は暗殺能力に加え、敵対者の五感を潰す『世界破壊の灼熱』をほとばしらせながら、手にした巨大なハンマーを構え、迫る猟兵たちを向かうたんとする。

「さあ、来な、猟兵!」
『光も闇も、そんなに違いはないだろうよ――!』

●エンドブレイカーの戦い
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。『11の怪物』の一柱、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が根城とする都市国家『実験都市オペレッタグラン』にて、グリモアベース攻撃特化の宝石災魔の研究が推し進められています」
 それは猟兵たちにとって、喉元に突きつけられた切っ先そのものであった。
 グリモアベースにオブリビオンの侵入を許せば、それだけで猟兵達は敗北する。
 故に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の研究は阻止しなければならず、絶対に実現させてはならない。

「しかし、『グラン・ギニョール』は三十六世界に比類無き暗殺者。さらに加えて『11の怪物』、『ウガルルム』が放つ『世界破壊の灼熱』は敵対する者の五感を完全に潰す力。これらを組み合わせた上、さらには『宝石災魔』を解き放ち、皆さん……『猟兵との戦い』を通じて、グリモアベースへと至るデータを得ようとしてるのです」
 あまりにも隙のない敵である。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』だけでも厄介な上に、解き放たれた『宝石災魔』たちを一体残らず倒さなけければならない。
 さらなる進化を成さしめさせるわけにはいかないのだ。

「『宝石災魔』は未だ完全な『世界移動能力』を得てはいません。しかし、放置すれば何れ完成することは歴然としています。未完成な『宝石災魔』とは言え、その力は絶大です」
 数と質が揃った上に、猟兵達はこの戦場に立つ以上、五感を潰される。
 五感の喪失に対処しながら、解き放たれた『宝石災魔』を倒し尽くし、その上で『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を打倒しなければならない。
 それが途方もなく困難な道であることは言うまでもない。
 しかし、ナイアルテは拳を握りしめる。
 猟兵達の力を信じているが故であるし、また同時に猟兵達が五感を失っても立ち止まらぬ者たちであることを知っているからだ。

「征きましょう、皆さん。例え、困難に塗れた道であっても、そこに道があるのならば踏み出さなければなりません。待っているだけでは滅び征くことしかできないというのなら。振り返るのではなく、前身致しましょう」
 そう告げ、ナイアルテは猟兵達の背中を押すように、送り出すのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『エンドブレイカーの戦い』の戦争シナリオとなります。

『実験都市オペレッタグラン』にてグリモアベース攻撃特化の研究を続ける『11の怪物』、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が放った未完成の『宝石災魔』を同時に相手取らねばなりません。
 さらに悪いことには、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は、五感を喪失させる『世界破壊の灼熱』を放った上に、比類無き暗殺能力で慎重に皆さんを確実に仕留めようとしています。
 これの三つの事柄に対処しなければ、苦戦は必至です。

 プレイングボーナス……「世界破壊の灼熱」による五感の喪失に対処する/解き放たれた宝石災魔を1体残らず倒す。

 それでは、エンドブレイカー! 世界から猟兵たちを放逐せんとする『11の怪物』と対決する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ウガルルム・ザ・グランギニョール』

POW   :    ウガルルム・リコシェ
【無数の拳銃】から発射した【致死量の「世界破壊の灼熱」を封入した銃弾】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
SPD   :    ウガルルム殺戮劇場
【無数の拳銃の弾丸、または超重ハンマー】が近接範囲の対象に絶対命中する。元々の命中率が低いと威力減。
WIZ   :    ウガルルム・ハンマーインフェルノ
高速で旋回する【「世界破壊の灼熱」の渦】を召喚する。極めて強大な焼却攻撃だが、常に【ハンマーの回転】を捧げていないと制御不能に陥る。

イラスト:片吟ペン太

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

白石・明日香
ああ、そうだな。光も闇のそんなに違いはないよな。何故なら・・・
五感が失われたら面倒だな・・・避けられるならその動きから軌道を見切って躱ししくじったら奴と嘗て戦った経験を生かして第六感で奴の挙動を把握するしかないな。
意識と研ぎ澄まして奴の動きを読み動き出すタイミングに合わせて
銃弾の嵐と宝石災魔共は動き出す前に2回攻撃、先制攻撃、範囲攻撃、鎧無視攻撃でを吹き飛ばす!
間に合わない場合はオーラ防御、激痛耐性で耐えてやっぱり吹き飛ばす!
光と闇は同居できる即ちそれらを併せ持つ者が強いのさデカ乳様?



『実験都市オペレッタグラン』にて『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は、『世界破壊の灼熱』を発し、敵対する猟兵達の五感を瞬時に焼き尽くす。
 強烈な光は暗闇と代わりはない。
 光しかないのであれば、それは色彩を喪わせるには十分であった。白き闇めいた光景を前にしながら、白石・明日香(欠片が集う・f00254)は冷静だった。
「ああ、そうだな。光も闇もそんな違いはないよな」
 わかっていることだ。
 塗りつぶされた視界。
 その何処かに三十六世界を含めた全てにおいて暗殺、という技能においては比類無き者が『ウガルルム・ザ・グランギニョール』である。
『11の怪物』と合体し、『世界破壊の灼熱』すらも持ち得ているというのに、彼女に油断はない。

「ハッ! 猟兵とは一度やってんだ。そりゃあ慎重にもなるってもんだよな! ババア!」
『そうさね。連中は突拍子もないやり方であたしらの攻撃を無効化してくる。なら、これ消極的とは言わないよ』
 声が聞こえることはない。
 なぜなら五感を喪わされているからだ。
 明日香にとって、聴覚までも『世界破壊の灼熱』によって塗りつぶされていることは手痛いことであったが、五感を越えた感覚、第六感が伝えている。
 己の周囲を取り巻くようにして高速で飛翔するものがあると。
 それは『ウガルルム・ザ・グランギニョール』ではなく、彼女が作り出した無数の拳銃より放たれた弾丸である。
 その弾丸の一つ一つに『世界破壊の灼熱』が籠められ、打ち込まれれば己の五体は焼き尽くされることが容易に想像できる。

 聴覚も、触覚も、視覚も塗りつぶさた状況において、それは絶対なる死を連想させるものであった。
 しかも、『宝石災魔』さえも己に迫っているのだ。
「お前たちと戦った経験ならばある……その状況、経験から私は想像することができる。お前たちならばこう動く。このように攻撃する。聴覚、触覚、視覚が喪われていようとも、私の脳裏には影のようにお前たちの動きが」
 踏み込む。
 迫る『宝石災魔』の足元から噴出する衝撃波。
 さらに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は知るだろ。

「んだぁ?! これは……衝撃波!? どうして私らの位置がわかる!?」
『戦った経験を活かされるってのは癪だねぇ! まさか、こちらの動き出すタイミングを測っている……いや、これは!』
「そう、イメージできる。意識は全て頭の中での予測とシュミレートに回すことができる。五感の全てを封じたのが仇となったな。五感を超える六感を持つ私ならば!」
 大地噴出陣(ダイチフンシュツジン)の衝撃波が彼女の周囲に迫った弾丸と『宝石災魔』、さらには『ウガルルム・ザ・グランギニョール』さえも巻き込んで吹き荒れる。
 その一撃に『宝石災魔』は砕け、迫る弾丸もまた吹き飛ばされるのだ。
「光と闇は同居できる。いや、表裏一体とも言えるな。ならば、それらを併せ持つものが強いのさ、デカ乳様?」
 明日香の視界は未だ塗りつぶされている。
 けれど、彼女は嘗て戦ったであろう『グランギニョール』の姿をまるで捉えているかのおゆに笑み、その様を見たかのように告げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW 色々歓迎

五感喪失とは厄介でありますな!
ならば……無差別攻撃で対処しマース!
いざ勝負であります!

グランギニュールの銃弾は、流石に世界破壊の灼熱の中では回避困難。
なので、持参した瓶の中から出したバルタン艦隊を山積みして遮蔽にしマース!
身を隠したどこかにいるワタシを探し出せねば、跳弾しても当たりマセーン!

そしてファルシオンを掲げて、UC……いえ、コントラ・ソールを起動!
異邦の地で体得した新たな力、《断罪者》!
宝石災魔たちそれぞれの弱点となるだろう属性、炎や氷や雷など、様々な刃を区別なく降り注ぎマース!
ターゲットを指定せず、より断罪すべきと判断した者に殺到するゆえ、ワタシの感覚は無関係デスネ!



『11の怪物』、『ウガルルム』の放つ『世界破壊の灼熱』は敵対者の五感を焼き尽くす。
 強烈な光は闇と同義。
 それは頷けるところのものであったことだろう。
「五感喪失とは厄介でありますな!」
「だが、それに対処してくるのが猟兵ってもんだ! 私はな、油断ってものはしねーようにしてんだよ!」
『油断してなくても、こじ開けてくるのが猟兵ってもんさね』
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の言葉に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は無数の拳銃を生み出し、五感を喪失した猟兵であるバルタンに対し、銃弾を解き放つ。

 この五感を消失させれた状況において、通常の感覚は頼りにはならない。
 聴覚は意味をなさず、音の反響から位置を定めることは不可能。
 視覚は光で塗りつぶされているがゆえに、敵の姿はわからない。
 触覚もまた意味をなさないだろう。自らが傷を追った、という自覚すら恐らくできない。故に、バルタンの瞳はユーベルコードに輝く。
 迫る銃弾の跳弾。 
 それは檻のようにバルタンに迫っていた。

 けれど、彼女は手にした瓶を掲げる。
「バルバル!!」
 瞬間、瓶の中からあふれるはバルタン艦隊であった。ミニ・バルタンたちが作り上げた船団であり、次々と瓶から飛び出してはバルタンの周囲を守る。
 世界破壊の灼熱の籠められた弾丸は容易く、ミニ・バルタンたちを破壊するだろう。
 だが、それでもバルタンは構わなかった。
 例え、五感を喪失捺せられているのだとしても、敵は己を討たねばならない。
 故に、跳弾して囲い込むのだとしても、ミニ・バルタンたちが守ってくれる。
「壁を作って攻撃を防ぐか!」
『だが、守ってばかりで勝てる道理はないってもんさ! 畳み掛けるなら今だよ!』
 迫る『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は、その拳銃をバルタンに向ける。

「見えぬのならば、聞こえぬのならば、無差別に断罪すればいいだけの話デース!!」
 瞬間、バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
 それは無数の刃が戦場の空へと浮かぶ光景へと様変わりする。
「断罪者(シュトレーフィング)! いざ、勝負であります!」
 叫んだ瞬間、バルタンは生み出された刃を降り注がせる。
 それは敵味方の区別など付いていない無差別攻撃。そして、その刃は、己が断罪すべきと定めた者を狙うのだ。
「この刃は断罪すべき、と定めた者に殺到する刃! 故に、ワタシの感覚は無関係デスネ!」
 そう、五感が塗る潰されているのだとしても、バルタンは構わなかった。
 迫りくる『宝石災魔』たちを刃が貫く。
 叩きのめし、砕き、さらに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』へと刃が殺到する。

 己の五感の外で溢れ返る嵐のような攻防。
 バルタンは静かに瞳を伏せる。
 これは己が定める断罪の嵐。
 ならば、見えずとも良く。聞こえずとも良く。触れることができなくても良い。
 ただ、ひたすらに己が断罪すべきと定めるオブリビオンを破壊すること。
 それのみを為す刃が、乱舞する戦場にバルタンは静かに立ち、『世界破壊の灼熱』が晴れるその時まで、その瞳をユーベルコードに輝かせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
エンチャント・アタッチメント【Type:I】を拳銃に装着し現場へ
到着次第、ユーべルコードで攻撃を行う
近接範囲に入り込まれる前にダメージを与えたい

このユーべルコードで敵味方を識別するのは正確には俺ではない
使用者の意思を反映した上で、弾丸の纏う魔力が攻撃するべき敵を判断し攻撃と凍結の効果を及ぼす
11の怪物と宝石災魔がという「敵」がいると分かっているのだから、見えずとも捉えてくれる筈だ

宝石災魔ごと11の怪物にダメージを与え、凍結により移動速度を落とし接近を防ぐ
敵の攻撃範囲に入らないようにその場を離れ再度攻撃を繰り返す
五感を失えば臨機応変な対応は不可能
いっそ機械的に、その工程を繰り返す事だけに集中する



 戦いに於いて準備、というものは重要な位置を占めるだろう。
 多くのことは段取りの段階で結果が決まっている。
 戦場に不確定要素はつきものであるが、しかし、その不確定要素を排除するための準備が重要であることは言うまでもない。
 故に、特殊アタッチメントを装着した拳銃を手に、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は戦場である『実験都市オペレッタグラン』へと降り立つ。
 すでに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の放つ『世界破壊の灼熱』によって五感は塗りつぶされている。

 視界はなく。
 何も聞こえず。
 己が握りしめている拳銃のグリップの感触すら感じられない。
 匂いを感じ取ることもできない。
 何も、何も感じられない。
「ハッ! やっぱり慎重になって正解だったな、ババア!」
『そうさね、やはり猟兵達は『世界破壊の灼熱』さえも突破してくる! ジリジリと追い詰められているのはこっちだったなんてお間抜けな話なんざあってたまるかい!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は理解していた。
 猟兵という存在を。
 彼らが扱うユーベルコードは正しく理外。
 故に、手にした拳銃の銃口をシキの眉間に向け、さらに『宝石災魔』たちが一斉に取り囲む。

 油断はない。
 猟兵という存在に対しては、例外なく全力でことに当たる。
 慢心だってない。
 例え、十全に準備を行ったとて、それでも食い破る牙を持つ存在なのだ。
「止まれ」
 瞬間、シキは小さくつぶやき、手にした拳銃の銃口を天に向ける。
 こちらを認識できていないはずなのに、シキは確かに銃口を天に向けて引き金を引いた。放たれた弾丸は氷の魔力を纏っていたが、それだけだった。
 だが、シキは己に引き金を引かせる暇を与えたオブリビオン、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に対して、やはり慢心した、と告げる。

「俺に先手を取らせた。その時点であんたの負けだ」
 シキは相手が己の言葉を聞いているのかどうかわからない。仮に返答があったとしても、耳に届くことはない。
 けれど、ありありと分かる。
 己が放った氷の魔力纏う弾丸は、敵味方を認識する。
 すなわち、シキが敵味方と認識するのではなく、弾丸そのものが敵を認識するのだ。この場合の敵、とは『ウガルルム・ザ・グランギニョール』と『宝石災魔』である。
 故にシキは己に先手を取らせたことを誤ちだと告げたのだ。

 そう、シキを殺すのならば。
 完全に封殺するのならば、先んじてユーベルコードを問答無用に叩き込むべきであったのだ。
 だが、それをしなかった時点で、この戦いはシキに趨勢が傾いたと言って良い。
「この弾丸……自分で敵を認識してやがるのか!」
『だから言っただろう! こんなお間抜けな話!』
『宝石災魔』たちが次々と弾丸によって砕かれる。
 ヘイル・ストームは正しく嵐のように『宝石災魔』たちを打ち砕き、さらに凍結させて飛翔を許さない。
 降り注ぐ弾丸は雨のように。
 そして『ウガルルム・ザ・グランギニョール』のはなった弾丸と激突しては火花を散らす。

「今の俺は機械的だ。ただ行程を繰り返すのみ。だが……それで俺があんたを追い詰めていくことができることを知っている。失敗したな」
 シキは笑むでもなく、ただひたすらに手にした拳銃の引き金を引き、弾倉を入れ替える。
 幾度となく、幾千と、幾万と繰り返してきた動作だ。
 体に染み付いているがゆえに、シキの動きに乱れはなく。
 放たれ続ける氷の魔力纏う弾丸が『宝石災魔』を散々に打ち砕き、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を追い込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ザ・グランギニョールか。懲りないね。放っておけばグリモアベースに襲い来るというなら、その前に潰さなきゃ。

「結界術」「環境耐性」光の「属性攻撃」「侵入阻止」で、『世界破壊の灼熱』を遮断し、結界に入ってきたザ・グランギニョールにカウンターを。

使うは天威千里法。千倍の重力で宝石災魔たちを自壊させながら、『鎧装豪腕』を呼び出し「式神使い」で「盾受け」。
千倍の重力下では、武器を持つだけでも一苦労よね。それで取り回し出来るかしら?
動きが鈍った彼女に薙刀で「貫通攻撃」。武器が持てないなら反撃はないように思えても、ユーベルコードは常識を越えてくるから。『鎧装豪腕』での防御は緩めない。
さあ、今度こそ骸の海へ!



 オブリビオンと猟兵における大きな戦い。
 アルダワ魔王戦争の折に『グランギニョール』は姿を認められた。
 その際にも『宝石災魔』を用いたグリモアベース攻撃に特化した研究を推し進めていたことからも、彼女を打倒せねば、それだけで猟兵の敗北が決定づけられてしまう。
 此度の戦いもそうだ。
 溢れ返る『宝石災魔』たち。
 これらは未完成であることが幸いであるが、しかし、猟兵との戦いのデータによって、いつグリモアベースに繋がる情報を得るかもしれない。
「とは言え、勝率は五分よりちょい低いってとこか!」
『まったくやってられないったらないね! 油断も慢心もなく行くよ!』
「わかってんよ、ババア!」
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は『世界破壊の灼熱』を解き放つ。

 それは敵対者の五感を塗り潰すものであった。
 視覚は言うに及ばず。嗅覚、聴覚、触覚、味覚。
 そのいずれもが喪われる『世界破壊の灼熱』は村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)のそれすらも奪わんと迫る。
 しかし、彼女は結界術と『世界破壊の灼熱』を遮断せんと試みていた。
「思惑はうまく行くようだけど……これ、長くは保たないわね!」
 ゆかりは結界術で己の周囲の僅かな領域のみ五感を有していた。しかし、一寸先は闇ならぬ光である。
 結界の外は塗りつぶされ、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の姿は見えない。
 音も聞こえず、まるで何処から攻撃が飛んでくるのかわからない。
 瞬間、結界が砕ける。

「ハッ! やっぱりこういうことか! 身を守る結界でもって『世界破壊の灼熱』を防いだは良いが!」
『こちとら、戦略級殺人鬼って銘打たれているんだ。やれないことはないだろうよ!』
 その言葉と共に一気に迫る『ウガルルム・ザ・グランギニョール』。
 手にしたハンマーの一撃がゆかりの頭上から振り下ろされる。
「頭が高い!」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝き、己の足を踏み鳴らす。
 瞬間、地面を走るは、輝く多重の同心円状の波紋。
 それは一瞬で『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の体を打ち据え、その体に千倍にも及ぶ重力が伸し掛かるのだ。

「うおっ!? なんだこりゃぁ!?」
『重力……! こっちの行動を封じるつもりかい! けどね!』
 振り抜かれた一撃をゆかりは『鎧装剛腕』でもって受け止める。
「それでも打ち抜くっていうのなら!」
 ゆかりは振り抜かれたハンマーの一撃、その衝撃に身を打たれる。さらに迫る『宝石災魔』たちは、ゆかりの放った波紋によって、重力を受けて大地に押し付けられて砕けて散る。
「『宝石災魔』は一体たりとて残さない! あなたたちの研究は此処でおしまいにしてもらうわ!」
 グリモアベースに至るまえに全て破壊する。
 ゆかりにとって、最も警戒すべきであったのは『宝石災魔』が一体でも逃れること。
 だが、天威千里法(テンイセンリホウ)より逃れられる術など『宝石災魔』たちにはない。例え『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が千倍にも及ぶ重力に順応するのだとしても、ゆかりは動きが鈍っていることを知る。

「さあ、今度こそ骸の海へ叩き返してあげるわ!」
 振るう薙刀の一撃を『ウガルルム・ザ・グランギニョール』へと叩き込み、ゆかりは『宝石災魔』を破壊し続け、グリモアベース攻撃を阻止するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:四天霊障

相手のことは、よく知らんのであるが。かつて、猟兵と交戦しとるんじゃな…。
む、五感喪失は面倒であるな…触覚もないのは勝手が違う。
だが、第六感を使って位置はわかるし…先制攻撃でUC使っておく。

まあ、宝石災魔が勝手にわしを攻撃するであろうし…その時に呪詛は強まる。
すると、さらにはっきりと位置がわかるようになるのよ。
何せ…四天霊障も『わしら』の呪詛の一部と言えるしの。
だからこそ、そのまま重量攻撃…押し潰しをする。



 戦略級殺人鬼。
 そう呼ばれたオブリビオンがいた。
 三十六世界に比類なき暗殺者にして、その手にしたハンマーの一撃はあらゆる生命を殺す。その上、『11の怪物』、『ウガルルム』と融合を果たしているのだ。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の放つ『世界破壊の灼熱』は敵対者の五感を塗り潰す。
 味覚、触覚、視覚、嗅覚、聴覚。
 そのいずれもが『ウガルルム・ザ・グランギニョール』と相対する以上、意味をなさない。
「さらに『宝石災魔』までいる、と」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱、『侵す者』はなんとも戦いづらい相手であると理解する。
 暗殺能力に加え、相手の五感をうばう能力。
 これだけ揃っていれば慢心でもしそうなものであるが、しかし慢心はない。
 そこにあるのは猟兵との戦いを通してグリモアベース攻撃特化能力を『宝石災魔』に得させようとする目論見だけだった。

「まったく! やってらんねーな! 油断も慢心もないにしたって、それでも此処まで迫ってくるとか!」
『若者風に言うなら、クソゲーってとこかい』
「はっ、無理すんなババア!」
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』はハンマーを回転させながら『世界破壊の灼熱』の渦を生み出す。
 ユーベルコードによる五感を奪い続ける渦は、それだけで猟兵の足を止召させるには十分であった。
「貴様たちのことはよく知らんのであるが」
 声を発する『侵す者』。
 されど、その言葉は届いてはいても、返答は届かない。
 
 悪霊と言えど五感はあるのだ。
 故に聴覚失いし『侵す者』には『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が何事かを告げようとも届かないのだ。
「む、そうか。これも挑発にも何にもならんのか。その上触覚もないとは」
 握りしめた武器の感触さえない。
 全く持って面倒なことである。
 身を撃つ『世界破壊の渦』による肉体の傷がどれほどものであるかもわからない。触覚が喪われているからだ。

 けれど、五感を超越した第六感は告げている。
 己に迫る『世界破壊の渦』を操る者の位置を。姿見えずとも、聞こえずとも、触れてもわからずとも、その位置だけはわかっているのだ。
 さらに『宝石災魔』とて、己を放っては置かないだろう。
 身を打つ攻撃に体が揺れる。
 だが、別段困った、とはおもわなかった。
「因果は巡りて回る。どこまでも」
 ユーベルコードが発露している。
 己の体を再構築しながら、『四悪霊の呪詛』が体を覆う。それは敵から放たれたユーベルコードやすべての攻撃に対して、比例した戦闘能力の強化を得て、さらには生命力吸収能力さえ得るのだ。

「すなわち、わしは立っているだけでよい。どれだけ主らがわしを攻撃しようとも、この体は尽きぬ。オブリビオンの起こした行いは、必ずや主らに戻るように出来ておる」
 故に、と解き放たれる呪詛と共に肉体を再構築しながら、『侵す者』は、放たれる生命力吸収能力によって『宝石災魔』を砕き、さらには『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の生命力をも吸い上げ続け、続く者たちの鎹となるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
|星幽体投射透視術《アストラルプロジェクションリーリング》、アストラル界に精神を投射して情報収集するこの技に|共感覚《情報伝達》で五感に|翻案《戦闘演算》すれば喪失した五感は補える。
|タイムフォールダウン《高速詠唱早業先制攻撃》、|時間質量を圧縮し時を凍結した空間を展開する《重量攻撃詰め込み凍結攻撃多重詠唱結界術禁呪封印術》。
ま、動いてくるわよね。そして絶対命中、と。だが、今の私は精神が本体、。破壊された肉体は|いくらでも再構築できる《継戦能力、人造生命の創造、召喚術》。
そして、凍結した時はハンマーでも銃弾でも|反射《カウンター》する。自らの力で自滅しなさいな。



「五感を塗り潰す『世界破壊の灼熱』は、掛け値なしに強烈な力だがよぉ……」
『言いたいことはわかっているよ。それ以上に猟兵は五感さえ超えてくる。厄介さね、第六感というものを持つ存在ってのは』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は辟易していた。
『11の怪物』と融合を果たした彼女の力は暗殺能力だけ見れば、三十六世界屈指のものであったし、また恐らく比類する者が存在していない
 そにれ加えて『世界破壊の灼熱』によって、敵対者である猟兵の五感を塗りつぶしているのだ。
 油断も慢心もない。
 確実に猟兵を打倒せんとしているのだ。

 けれど、それでも猟兵たちは五感を越えた第六感でもって対処してくる。
 恐るべき事である。
「私に見透せないものは無いわ」
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の混沌魔術師艶魔少女・f05202)の五感は確かに塗りつぶされている。
 けれど、今の彼女は迫りくる無数の銃弾と『宝石災魔』の群れを前にして躱しているのだ。多重に詠唱された結界術の禁呪封印術を手繰り、迫る『宝石災魔』を止めるのだ。
 見えていないはずだ。
 聞こえていないはずだ。
 どれだけ技能を底上げしても、五感の喪失は避けられない。
 だというのにアリスはまるで見えているかのように力を振るっている。

「まったくどうなってる! 銃弾が届かない。どころか、空間で止まっている。ババア、なんとかしろよ!」
『そうは言っても無理だね。空間を凍結している。時間質量を圧縮して時を凍結した空間を展開するやつを相手に物理は意味をなさないだろう。とは言え……』
「五感は喪失させているってんなら、このまま……」
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の考えは当然のことだった。
 しかし、アリスにとって、迫る銃弾も『宝石災魔』の群れも意味はなかった。
 絶対命中故に因果律さえ超えてくるのが『ウガルルム・ザ・グランギニョール』である。凍結した時間さえも飛び越えて、当たったという結果さえ、生み出せているのならば、アリス銃弾が届かぬ道理はない。

 事実、凍結された時間質量を超えて銃弾はアリスの体を捉えている。
 けれど、彼女にとって肉体とはいくらでも再構築できるものなのだろう。故に、彼女は別段気にした様子もなかった。
「めちゃくちゃやりがやる!」
『とは言え、これは……!』
「ええ、聞こえてはいないけれど、なんだか謗られているような気がしたから教えておくわね」
 アリスは笑む。
 聞こえてはいない。けれど、第六感が告げているのだ。
 今吐き出すべき言葉を。
「星辰(アストラル)界を通じて、過去視、遠隔視、読心術等を複合的に行う遠隔透視の超能力――星幽体投射透視術(アストラルプロジェクションリーリング)」
 アリスは一歩踏み出す。
 凍結した時はアリスのもの。
 なら、その時間軸の中でアリスは自由に動く。全てを知る。見ることができる。放たれた弾丸をくるりと指先でなぞって反転させ、そのままの勢いで射出させるのだ。
 瞬間、弾丸は、それを放った者の元へとほとばしり、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の体を貫く。

「自らの力で自滅しなさいな」
 アリスは絶対命中であるがゆえに、因果律を逆転させることで、己の攻撃はなくとも敵の攻撃を敵に打ち返す。
 銃弾は放たれたという結果だけを残し、その軌跡を逆走するように『ウガルルム・ザ・グランギニョール』へと走るのだった――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・ティフィア
五感が使えないのは、何も見えないのはとっても不安だけど、それでもやるしかない、ですよね。

精霊転身・光と地の歌姫!

不安だからこそこの状況を覆せる最強無敵の盾を!

展開するのは私の周囲全てを覆いあらゆるユーベルコードを反射する金属で出来たドーム状の盾!しかも表面には同様の金属で出来た砲台がたくさん!
これで銃弾を全て弾き飛ばして、さらに全方位に砲撃を放ち続けて宝石災魔もグランギニョールも全滅させます!

追撃や他の策は要りません。それは私の盾だけでは不完全と認めることになるから。
この盾で全て倒し切れる。そう信じ続ければ無敵の盾は答えてくれるはず。

敵が全滅したかどうかは五感の回復でわかりますし!



 不安ばかりが心の中に雪のように積もっていくのをミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)は感じた。
 五感を奪う『世界破壊の灼熱』。
『11の怪物』、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の能力。
 それは視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚。
 いずれをも例外なく奪うものである。
 戦場に降り立った彼女は、まさにその『世界破壊の灼熱』を身に受け、白く塗りつぶされた視界の中で、何も聞こえず、触れたなにかの感触すらわからぬままに立ち尽くすしかなかった。
 不安だ。
 不安が込み上げてくる。

 けれど、ミューは歯を食いしばる。
 それでもやるしかないのだ。どれだけ圧倒的に不利な状況に置かれているのだとしても、戦わなければならない。
 己が猟兵であるからだ。
 そして、己が己自身であるために、足を止めてなど居られない。
 迫る『宝石災魔』も『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の姿が捉えられなくても、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
 不安だからこそ、この状況を覆さなければならない。
「クロリス、力を貸して!」
「なら、願いを込めて想像しなさい」
 ミューの傍らで声が響く。
 瞬間、失われた触覚の中で彼女は確かに握りしめる。
 それは結晶。

 ユーベルコードの輝きを受けて、結晶がきらめいた瞬間、ミューを覆うのはドーム状の盾だった。
「盾を今更作ったところでよ!」
『打ち砕くのみってね! 覚悟しな、猟兵!』
 迫る『ウガルルム・ザ・グランギニョール』と『宝石災魔』たち。
 その攻撃を前にミューは不安を振り払う。大丈夫だと、自らに言い聞かせるようにしてミューは力を込める。
 彼女の想像から生まれた盾は、無敵である。
 ミューが信じるだけでいい。

 疑念を感じる暇など彼女にはない。
 どんなに不安でも、どんなに強敵でも、彼女が勝つと信じている以上、その盾は彼女に勝利をもたらす。
 放たれた銃弾は盾によって防がれ、弾き返される。
「絶対に通さない盾! 私はこれ意外いらない! 必要ない! この盾で私は買って見せる!」
 強く、強く念じる。
 これ以外の策をミューは用意していない。
 ただ一つのことだけに注力しなければ、この盾に疑念を抱いているようなものだ。故に、ミューは信じるのだ。
 己の想像を。
 己のユーベルコードを。

「全方位に砲撃を!」
 受け止めた多くの攻撃をエネルギーに変換し、盾の表面に金属で出来た砲台がハリネズミのように生み出される。
「んなっ!?」
『拙いよ、これは! 防戦一方かと思ったが!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は理解した。
 何故ミューが傍線一方であったのか。
 それは盾にエネルギーを貯めるためだったのだ。蓄積されたエネルギーは砲台より放出され、一斉に『宝石災魔』と『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を打ち据え、ミューが確信した勝利を彼女の手に引き寄せるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
あやー、五感喪失でっすかー。
とっても厄介なのでっす。
暗殺技能との合わせ技で認知不能の襲撃も恐ろしいのでっすが。
そもそも身体を動かすのも一苦労でっしょうからねー!
本来ならば!
自分で自分がどう動いてるのか、動けてるのか分からないというのなら!
これまで積み上げてきた技術と自分自身を信じるまでなのでっす!
藍ちゃんくんでっすよー!
踊るのでっす!
最高にかっこいいロックダンスを!
足場の崩落とかで気付かず退場しないよう空中浮遊した上で!
見えず聞こえず感覚もないでっすが!
自分がどう動いているのか、どう動けば良いのかはこれまでの経験とイメージでなんとなく分かるのでっす!
それにちょっとやそっと勝手が違う動きになっても、それもまた今この時だけの藍ちゃんくんでっすので!
なんら問題ないのでっす!
ウガルルムさん達はこちらを認識できている以上、災魔もまとめて踊っちゃうはず!
ロックダンスとは静と動のダンス!
ハンマーを回し続けることはできないのでっす!
制御不能になった渦も藍ちゃんくんが踊らせて災魔ごと巻き込んじゃうのです!



 五感を喪失させる『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の『世界破壊の灼熱』。
 それはあまりにも厄介な能力であり、また同時に比類無き暗殺者である『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の慢心を誘うものですらなかった。
 慎重に慎重を重ねる。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』にとっての勝利とは猟兵を打ち倒すことではない。
 彼女の目的はグリモアベースの攻撃である。
 秘匿され続けているグリモアベースの所在。これに繋がる猟兵との戦いのデータを多く得ることで、『宝石災魔』にグリモアベース探知の能力を得させようとしているのだ。
「まったく! これじゃあ、十分なデータを得る前にこっちがやられちまう!」
『だから五分以下だって言っただろう! なんとしてでも、『宝石災魔』たちに猟兵との戦いのデータを取らせ続けるんだよ!』
 吹き荒れるようにして放たれる『世界破壊の灼熱』の渦。

 その渦を前にして紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は呻く。
 五感喪失。
 それはあいにとってあまりにも恐ろしいものであった。認知不能なる絶対なる暗殺攻撃。渦を巻く『世界破壊の灼熱』藍の体を容易く引き裂くだろう。
「あやー! 本当に困ってしまったのでっす! けれど!」
 そう、藍は諦めない。
 だってそうだろう。藍ドルは諦めない。くじけない。頑張る姿を皆に見てもらうために、常日頃からレッスンを重ねているのだ。
 体を動かすのだってそうだ。
 今だって、これまで積み重ねてきたレッスンがあればこそ、藍は動けている。
 自分がどう動いて、自分がどのような体勢になっているか、それがわからないことなんてないのだ。

 確かに五感の喪失は恐ろしい。
 何も見えず、感じられない。何も信じられなくなる。けれど、藍は自分を信じている。積み上げてきたものを、技術を、自分自身を信じている。
 それが!
「藍ちゃんくんが藍ちゃんくんであるということでっす! 行きますよ、皆様、ご一緒に!」
「はん!? 何言って……」
『これは、猟兵のユーベルコード! 躱さなければ……!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は即座に理解していた。これは躱さなければならないユーベルコードだった。
 だが、それは土台無理であった。
 藍は踊る。
 ステップを踏む。

 これまで身に受けてきたレッスンの全てを今という瞬間に昇華させている。
 最高のパフォーマンスを瞬時に弾き出す。
 それが藍のダンスパフォーマンス。簡単そうに見える動き。けれど、それを完璧にこなすにはあまりにも膨大な時間が必要となる。
「う、動きが……勝手に!」
『おバカ! ハンマーを振り回す手を止めては……!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』だけではない。『宝石災魔』さえも藍のダンスパフォーマンスに釣られて踊りだしてしまっている。

 無論、藍にはその様子は見えていない。
 けれど、手に取るようにわかるのだ。
 オンステージにおいて、オーディエンスとは、すなわち藍ちゃんくんと愉快な観客達!(リー・アー・アイチャンクーンッ)である。
 今まさに踊って、ステップ踏んで、手を打ち鳴らしているのがわかる。
 感じられずともわかっているのだ。
 自分がミスをしたって、自分が自覚できぬ動きをしていたって。
 今この時だけの藍であることは言うまでもない。自分が自分であることを強く意識しているのならば、五感喪失など些細なことである。
 故に、藍は叫ぶのだ。

「さあ、皆さん! レッツ・ダンシングなのでっすよー!」
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』も『宝石災魔』も、皆まとめて藍の動きを、ダンスを模倣するように踊り狂う。
「むむっ! やっぱりそうですね! どんなに五感を喪わせても、藍ちゃんくんにはわっかるのでっす! みんな踊っていますね! 上手ですね! その渦はコントロールし辛いでしょう! なら、藍ちゃんくんと一緒におどりまっしょう!」
 そう告げた藍は『世界破壊の灼熱』の渦の主導権を奪うように踊りながら、誘導する。
「このまま舞い上がってください! 天より高く! もっともっと高くでっす!」
 その言葉と共に『宝石災魔』たちは『世界破壊の灼熱』の渦に飲み込まれ、舞い上げられていく。

 あの『宝石災魔』を完成させてはならない。
 一体残らず破壊することが、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を打倒するよりも優先されることだった。
 藍はグリモアベースに迫る脅威を振り払いながら、なおもいつものような笑顔で踊り続ける。
 感じられずとも。
 迸る汗はキラキラと。
 藍は、己が何者であるのかを世界に示し、失われた五感の中で最高のダンスパフォーマンスをやってのけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ほとんど裸みたいな格好を自慢するって…
しかも漫才みたいな感じだし

状況的にはツッコミたい事が多いし
聞きたい事も多いけど
かなり厄介な能力だね
相手を認識できない可能性があるなら
戦場全体に対処しようか

静謐誓願を使用
敵や宝石災魔を彫像化で攻撃
視覚や聴覚で相手を捉えられなくても
全てを神気で覆えば攻撃できるからね

相手の攻撃は神気による防御と
静謐誓願で自分の体を現状に固定し
破壊と言う変化から守って対処

普段は動ける程度の現状維持だけど
まともに動けないなら
自分を彫像に変えるくらい強固に固定して身を守るよ

残念ながら相手の声が聞こえないから
何か論争するのも難しいだろうし
神気で戦場を覆う事に専念するよ
まあ、我慢比べだね



『11の怪物』と融合を果たした『グランギニョール』。
『アルダワ魔王戦争』においては戦略級殺人鬼として知られたオブリビオンである。彼女の手にしたハンマーは人格を有しているのか、言葉を発する。
「ハッ! やっぱりまともにやり合うのは分が悪すぎる。私の暗殺能力がどれだけ高かろうが、猟兵はけったいな第六感って奴で私に攻撃を叩き込んできやがる」
『生命の埒外とは良くいったもんだ!』
「私のエロさも通じないしな!」
『ただ脱いだだけで籠絡できるんなら、安い肌さね!』
「うるせえぞ、ババア!」

 彼女達のやり取りを猟兵は聞くことはできない。
 なぜなら『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の発する『世界破壊の灼熱』によって五感が喪失しているからだ。
 聴覚を失った猟兵に声は届かず。
 視覚を白い光で塗りつぶされたが故に姿を認めることはできない。
「なんかよくわかんないけど、漫才やってる気がする」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は思わず、そう漏らしていた。いや、聞きたいことは多いのだが、この状況である。
 きっと叶わないであろうことは理解できていた。
 そして、この戦いを無事に切り抜けることができるかどうかと言えば、かなり妖しい状況であることは言うまでもない。

「ハッ、いってろよ、猟兵! これも聞こえてはいないんだろうが!」
 手にしたハンマーを振るって晶へと叩き込まれるユーベルコードの一撃。
 しかし、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の動きが止まる。いや、軋むようにして止まったのだ。
『……これは神気! 停滞をもたらす神気かい! おい、やばいよ、これは!』
 ハンマーの声が響く。
 そう、晶の体はその場に固定されている。
 瞬間的にユーベルコードによって晶の体は固定化され、如何なる攻勢も現状を崩すことはできない。
 無数の『宝石災魔』の体が停止するように動きを止めている。
「破壊という変化から身を守るのならば、これが一番いいよね」
 静謐誓願(インヴァリアブル・セレニティー)。
 それこそが晶のユーベルコードであった。

 森羅万象に停滞をもたらす神気。
 それに触れた物は須く彫像化、人形化、永久凍結、時間停止といった力の影響を受けるのだ。確かに晶は『世界破壊の灼熱』でもって五感を失っている。
「けど、無差別に戦場全体に影響を及ぼすことができるのならば、話は別だよね」
 とは言え、声は聞こえない。
 己が発している言葉は相手に届いてはいるだろうが、答えは帰ってはこないだろう。

 けれど、それでいいのだ。
 この戦場において『宝石災魔』こそが最も排除しなければならない敵だ。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の目的が『宝石災魔』にグリモアベースを探知させる能力を得させることであるというのならば、一体残らず破壊してしまわなければならない。
「でも、まあ、我慢比べだよね」
 けれど、それでいいのだと晶は己のユーベルコードを発現させ続ける。
 この戦いに勝利するということは、少なくとも晶にとって時間さえかければ叶うものであったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プレゼナ・ハイデッカー
成程、何も見えず聞こえず感じられず。
これは厄介な代物です。

ですが、これが敵に由来する状態変化であるならば。
我が奥義の一つ、蓮月流怒龍拳奥義「焔」を以て解除が叶います。
この身に炎灯している限り、五感は維持できる筈。其を以て敵と相対致しましょう。

なれど無数の跳弾は五感が働けども脅威。
テラーウイングにて【空中機動】、羽ばたきにて放つ【衝撃波】で吹き飛ばしたり【見切り】を駆使するなりして凌ぎます。

付近に宝石災魔が在れば寧ろ好機。
葛藤の鎖にて【捕縛】し【敵を盾にする】ことで跳弾を凌ぎつつこれを殲滅します。
ウガルルム本体へも宝石災魔を盾に接近、魔想の籠手を装着せし拳にて【功夫】を叩き込んでくれましょう。



 猟兵を襲う『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の『世界破壊の灼熱』は五感を喪失させる力を持つ。
 全く持って厄介な能力である。
 それに加えて戦略級殺人鬼である『グランギニョール』の暗殺能力の行使が『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の油断のなさ、慢心のなさを示している。
「成程、何も見えず聞こえず感じられず」
 プレゼナ・ハイデッカー(ロストエクシード・フェアリーテイル・f32851)は己の喪失した五感に頷く。
 こうしている間にも己に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が迫っているだろう。
 だが、とプレゼナは勝算を有している。

 この『世界破壊の灼熱』が敵に起因するものであるというのならば、その変化を解除する力を彼女は発露させる。
「我が炎は、形なきものを焼き滅ぼすのです」
 煌めくユーベルコード。
 拳より発露する蒼い炎が、『世界破壊の灼熱』事態を焼くのだ。
「な、なんで『世界破壊の灼熱』が燃えてんだよ!」
『ありゃあ、こちらを狙い撃ちにしたかのようなユーベルコードってやつだね。まったくもってこれだから生命の埒外ってやつは!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は呻く。
 プレゼナは己の拳に宿る蒼い炎と共に飛翔する。羽撃きによって迫る無数の弾丸を弾き飛ばしながら、躱す。

「流石は脅威。油断などできようはずもありません」
「そりゃこっちの台詞だ!『世界破壊の灼熱』だぞ!? なんで解除できるんだよ!」
『だからそういうユーベルコードってこったろう!』
「うっせーぞ、ババア!」
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は、油断と慢心を保たぬ敵であった。
 しかし、プレゼナは理解している。
 これさえも戦略級殺人鬼と呼ばれた『グランギニョール』の誘導なのだと。漫才めいた、コントめいたハンマーとの掛け合いさえも、己の意識を『宝石災魔』よりそらす方策であると知ることができるだろう。

 迫る『宝石災魔』の姿にプレゼナはむしろ好都合とばかりに、跳弾する弾丸の盾にしながら、凌ぐ
「やはり、恐るべきはあなたのユーベルコード。その跳弾、弾丸に『世界破壊の灼熱』を有していますね」
「チッ……やっぱりお見通しってかい!」
「蓮月流怒龍拳奥義「焔」(エクシードフォース・パニッシュメントフレイム)にて、あなたを討ちましょう! お覚悟を!」
 プレゼナは踏み込む。
 拳に宿った蒼い炎は『世界破壊の灼熱』を解除しながら、一直線に『宝石災魔』たちを破壊しながら『ウガルルム・ザ・グランギニョール』へと迫る。

 吹き荒れる蒼い炎は、戦場にあって一際高く燃え上がり、その拳の一撃を持って『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の体を打ち据える。
 絶対の如き『世界破壊の灼熱』さえも食い物にする猟兵のユーベルコード。
 その末恐ろしさを叩き込みながらプレゼナは裂帛の気合と共に拳を天に突き上げて、その蒼い炎でもって『世界破壊の灼熱』を焼き滅ぼすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
骸の海はよほど暇と見える
悟りの道にでも入ってはどうか。修行の時間にも困るまい

状況は『天光』で逐一把握
直に原理から存在を捉えれば五感喪失は問題にならず
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象はウガルルム・ザ・グランギニョールと宝石災魔及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、周囲全てへ斉射
更に射出の瞬間を無限循環
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

遍く世界を編んだ創世の理に例外はない
万象尽く、無限量の全に触れれば溶け消えるのみ
逃れうる余地を与えなければ討ち漏らす可能性も皆無
宝石も、炎も、オブリビオンも等しく退場するが良かろう

○真の姿
本人の背後に僅か裂けた空間の向こう、果てなく続く透明な“全なる空虚”がその本質



 五感を喪失した世界というものを見る瞳は冷めていた。
 視界を塗り潰す光の白さも。
 聴覚が抜け落ちた空白の静寂も。
 己の指先が伝える大気の感触も。
 全てが己の五感の喪失を伝えている。
「骸の海はよほど暇と見える。悟りの道にでも入ってはどうか。修行の時間にも困るまい」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は燦然楼閣『ゼルフォニア』にて呟く。
 その言葉は『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に届いているだろうが、しかし、今のアルトリウスには届かない。

『世界破壊の灼熱』によって五感が喪失しているからだ。
 何も見えず、何も聞こえず、何も感じない。
 この状況に加えて『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は三十六世界に比類なき暗殺能力を有している。
 油断はない。慢心もない。
 ただひたすらに此方の隙というものを伺っているのだろう。
「圧倒的に有利な状況だってのに、まったくもって気が抜けないってのは詐欺にあったような気分だぜッ!」
『そういうない。とは言え、五分以下でこれとなると、もっと勝率を上げるにはグリモアベースを強襲する以外、勝機ってものは存在しないんだろうねぇ』
「弱気になってんな、ババア! そういうの似合わないぜ!」
『それは悪かったね! だが、今しかやるべき時はないだろう。ケリをつけようじゃあないか』
 そんなやり取りがアルトリウスの聴覚の外で行われている。

 敵は暗殺能力に長けている。
 この状況においても慎重を期すようにして『宝石災魔』たちをアルトリウスにけしかけている。
 それは正しい判断であった。
 彼に迫る『宝石災魔』たちは敵意を持ってアルトリウスを害し用途ている。
 ならば、アルトリウスにとってそれは脅威ではなかった。
 己の魔力は全て世界の外から供給している。
 言ってしまえば、己はパスである。無限と有限とを繋いでいるのだから当然である。すべての世界をつなぐのは外である。
 その外から魔力を供給しているのだから、炉である必要はないのだ。
「行き止まりだ」
 己に迫る『宝石災魔』の存在を感知し、アルトリウスの瞳がユーベルコードに輝く。

 以前視界は白に塗りつぶされているが、迫る『宝石災魔』の気配は知れたものである。
 森羅万象。
 障害たるものを無視し、万象を根源から消去する魔弾が飛ぶ。
 天を覆う魔弾の雨。
 それらはすべて世界の外から組み上げられた魔力で持って形成されている。故に、それはすべての行程を吹き飛ばす。
「遍く世界を編んだ創世の理に例外はない」
 放たれる蒼光の魔弾の雨は『宝石災魔』たちを次々と砕いていく。
 放った瞬間に次弾が放たれる。
 間隔は存在していない。途切れることのない魔弾の掃射は、点ではなく線そのものだた。
 逃れる余地などのこしていない。
 あらゆる者を破壊する魔弾の光は、雨よりも濃いものとなって『宝石災魔』たちを射抜いていく。

「宝石も、炎も、オブリビオンも等しく退場するがよかろう」
 響く言葉に答える声はない。
 聴覚を喪失しているのだから、当然と言えば当然である。
 しかし、アルトリウスにとって、それはさしたる問題ではない。己の背後に避けた空間の向こう側こそが己の真の姿。
 はてなく続く透明な“全なる空虚”が本質である。
 空はなく。
 あるのは全であり。
 そして、それらを本質とするがゆえにとらえどころはなく。見えているようでいて見えない。見えるようでいて、視線を向けた瞬間には立ち消える。
 一つのことに集約するからこそ、すべての本質が霧散するように。
 アルトリウスの放つ蒼光の魔弾は『宝石災魔』を例外なく打ち砕き、その存在に蓄積されるデータをも消滅させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
連中が研究している事はつまり「現状エリクシルでもグリモアベースには至れない」って事だよな
その辺りを考えるとグリモアベースも大概謎だが……攻められて困るのは確かだ

神刀の封印を解除して、廻・壱の秘剣【銀流閃】を発動。白銀の神気で強化しながら悪影響を祓う
勿論、万全の状態にするのは無理だが。完全に喪失した状態より遥かにマシだ
それに俺のUC効果で敵は幾らか弱体化している。ウルムガルはともかく、宝石災魔には十分だろう

僅かな五感や気配、心眼で敵の位置を把握しながら進む
宝石災魔は斬撃波で叩き落として、斬って止め
ウルムガル相手には、強化と回復を頼りに突貫。状況的に精緻な動きはできない以上、この方が寧ろ有効だろう



『アルダワ魔王戦争』においてもオブリビオン、戦略級殺人鬼『グラン・ギニョール』はグリモアベース攻撃の研究を重ねていた。
 その手法こそがエリクシル……『宝石災魔』にグリモアベースの所在を探知させ、飛翔するというものだった。一度は倒したオブリビオン。されど『11の怪物』と融合を果たしたことにより、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は新たな力を得て猟兵たちに相対する。
『世界破壊の灼熱』。
 敵対者の五感を喪失させる強烈なる光は、視覚だけではなく、聴覚、嗅覚、触覚、味覚といった人の感覚をすべて塗り潰す。
 それに加え『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は、その類まれなる暗殺能力を持って慎重を期すだけでなく、『宝石災魔』を多数生み出し、猟兵との戦いのデータからグリモアベースの所在を割り出そうとしている。

 これまで戦ってきたオブリビオンの中にあって、恐らく最も猟兵達の喉元にまで迫った敵であることは言うまでもない。
「つまり、現状エリクシルでもグリモアベースに至れないってことだよな」
 そのつぶやき。
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の言葉に対する返答はない。いや、あったのかもしれないが、『世界破壊の灼熱』に焼かれた状況では己に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の言葉が届いていないだけなのかもしれない。
 だが、今はそれよりも重要なことがある。
 神刀の不運を解除し、その瞳はユーベルコードに輝く。
 何も見えない。
 何も聞こえない。
 何も感じない。
 この状況下において己ができることは何か。

「神刀解放。禊ぎて祓え、白銀の光――廻・壱の秘剣【銀流閃】(カイ・イチノヒケン・ギンリュウセン)」
 放たれるは銀色の神気。
 双つの渦は一気に戦場を走る。『世界破壊の灼熱』は言うまでもなく己の五感を奪う。だが、己の斬撃は邪を禊、戦闘力を奪う白銀の力。
 それは手応えなくとも『宝石災魔』を切り裂き、その体を自壊させる。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』には不十分とは言え、敵の能力を削ぎ落とすのだから、後に続く猟兵達の手助けになるだろう。
「万全とは言い難いが……」
 しかし、それでも己の五感を奪う『世界破壊の灼熱』の悪影響を幾ばくでも払うことがでけいたのならば、僥倖。
 僅かな五感の感触を覚える。

 手にした神刀の柄の感触が指先に残る。
「『世界破壊の灼熱』さえも払うかよ!」
『猟兵ってのは本当に常識ってもんがないようだね!』
 聞こえる。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の声だ。
 わずかであっても、聞こえる。感じる。薄っすらと白く染まる視界の端に動く影がある。
 ならば、それで十分だった。

 己の心には眼がある。
 心の眼と書いて心眼。
 それは修行を重ね、修練と練磨の果てにこそ得られる反復動作の極地。
 故に、放たれる斬撃波は『宝石災魔』を叩き落しながら、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』へと踏み込む。
「やぶれかぶれってわけかい!」
『そうじゃない、奴は見えてるぞ!』
「そうだ。見えている。精緻な動きなど今更期待していない。まっすぐ踏み込んで、最速で刀を振るう。重ねてきた月日がものを言う」
 鏡介は神刀を振るう。
 日々の修練が見せた勝利への道筋。
 それを手繰り寄せるようにして放たれた一閃が『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の体へと袈裟懸けに剣閃を走らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・リデル
「確かに魔王戦争の時も居ましたね。グリモアベースを狙った戦略は正しい。それだけに見逃す訳には行きません。」

五感の喪失状態でも『第六感』を研ぎ澄ました鍛錬『功夫』の賜物を発揮して五感があるのと同等以上の動作で敵SPDUC『ウガルルム殺戮劇場』の攻撃を回避、または『オーラセイバー』で切り払いましょう。
しかる後に『蒼雷天嵐』を発動。
戦場全体に蒼い神雷を吹き荒ばせて宝石災魔ごとグランギニュールを討滅します。



「確かに『アルダワ魔王戦争』の時にもいましたね」
 懐かしい、と感じることはあっただろうか。
 戦略級殺人鬼と呼ばれたオブリビオン。
『グラン・ギニョール』は今や、『11の怪物』と融合を果たし『ウガルルム・ザ・グランギニョール』として猟兵達の前に姿を現している。
 いや、現している、というのは語弊があったのかもしれない。
 ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)の瞳に彼女の姿は映し出されていない。拡がっているのは白い光ばかりだった。
『光も闇も大差ないってことさ!』
「してやられておいて言う事じゃあないが、油断も慢心もこっちにはないんでね!」
 嵐のような銃声が響き渡るのをステラは聞くことはなかった。

 五感のすべてを焼き尽くす『世界破壊の灼熱』。
 敵対者の五感を喪失させる能力は『11の怪物』、『ウガルルム』の能力である。恐るべき力は、ステラの五感を奪い去り、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の所在を視界から喪わせるのだ。
「グリモアベースを狙った戦略は正しい」
 しかし、ステラは動じることはなかった。
 敵の能力を正しく理解すること。『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は類稀なる暗殺者である。
 そんな者が『世界破壊の灼熱』という絶大な能力を得てなお、油断も慢心もないことのほうがよほど恐ろしい。

「それだけに見逃すわけにはいきません」
 そう、グリモアベースにオブリビオンが侵入した事例はまだない。
 そうなった時、猟兵の力は喪われるだろう。つまり、猟兵たちの敗北である。しかし、それをさせはしない。
 五感の全てを奪われたというのならば、その先の感覚を研ぎ澄ますまでである。
 周囲に飛び交う何か。
 言うまでもなく『ウガルルム・ザ・グランギニョール』のはなった銃弾であろう。それらが跳弾を繰り返しながら、ステラを追い詰める。
 さらに『宝石災魔』さえも迫っているのだ。
 敵に慢心はない。己をすりつぶすつもりなのだろう。故に手にたオーラセイバーを抜き原い、ステラは迫る跳弾の一撃を切払う。

「は?」
『なんで見えていないのに跳弾を、複雑怪奇に……それも『宝石災魔』が撹乱しているのに切り払えるんだい!?』
 その言葉を聞いてか聞かずか、ステラは吐息を一つ吐き出して言う。
「鍛錬。ただそれだけに尽きます。五感を超えるのが第六感。ならば、これは」
 ステラの手が振るわれ、オーラセイバーの軌跡が斬撃となって放たれる。
 跳弾する銃弾を全て切り裂き、さらに迫る『宝石災害』を見据える。
 見えていないはずだ。
 なのに、ステラの瞳はユーベルコードに輝く。

「受けなさい」
 虚空より出現した魔法陣から放たれるは蒼い神雷の嵐。
 それらは吹き荒れるようにして渦を巻いて『宝石災魔』たちを巻き込み、破壊していく。さらに嵐は巨大化し、ステラが指差す方角へと走る。
「本当に見えてないってのかよ! これで!」
「感覚を超える何か、と言えばいいでしょうか。人間というものを舐めすぎでしょう、殺人鬼」
 ステラは指差す先には、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の驚愕に満ちた表情がある。
 しかし、それは見えない。
 見えずともステラにはわかっていた。
 己の第六感が告げている。その先にこそ、己の討つべき敵がいるのだと。示された先へと迸る神雷の嵐は、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を『宝石災魔』ごと打ち砕く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

光と闇に違いがない!?
なんとこというんですか。そこ、すっごくだいじなとこですよ!

|勇者《ひと》のアイデンティティをなんだと思ってるんですか!

ウガリュ……いえ、ウガルルム・ザ・ギュランギョ……。
光と闇がどうとか言う前に、
その早口言葉みたいな名前なんとかしてくださいよ!

それにですよ!
五感を奪ったくらいでなんだというのですか。
わたしの光の勇者としての魂と、音楽家としての天賦の才は、五感を超えるのですよ!

って、ステラさん?|心の声《ルビ芸》駄々漏れてません?

なんにしても!わたしの演奏は、五感を超えて響くのです!
響け勇者の魂!光が闇とは違うことを思い知れー!

……主にステラさんに!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
脱いだらエロくなる、というのは浅はかが過ぎるというもの
以前の前開きの方がエロかったのでは?

今回はルクス様の演奏が要
頼みますよ?

さてハンマー様、いえ、|弾丸《バレット》様とお呼びしましょう
『光も闇も、そんなに違いはない』
ええ、確かにそう思います
そしてその体現が此処に居ます
|光の勇者にして奏魔法の使い手《どう見ても闇しか放出してない破壊音波使い》
ルクス様の演奏に耐えられますか?
あ、私のことはお構いなく!

五感を失ったとて口は動く、声は出せる
【アウルム・ラエティティア】でルクス様の後ろから援護射撃を
破壊音波に乗せれば恐怖の状態異常もよく効くでしょう
ただの歌声と侮っていたら痛い目を見ますよ!



『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は言った。
『光と闇に違いはない』と。
 その言葉は正しい。
 表裏一体であるということは境界線れど、それが二つで一つであることを示していた。切り離されぬもの。そして、二つでなければ存在し得ないもの。
 光があるから影が生まれる。闇があるから輝きが増すように。
 しかし、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は意義あり! と言わんばかりに叫んだ。
『世界破壊の灼熱』の中で叫んだのだ。
「光と闇に違いがない!? なんて事言うんですか。そこ、すっごくだいじなとこですよ!」
 己のアイデンティティを否定されたことによるブチギレ。
 光の勇者としてルクスは聞き捨てならなかった。けれど、その言葉は『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に届いてはいても、その返答がルクスに届くことはなかった。

 五感を焼く『世界破壊の灼熱』はルクスから五感のすべてを奪い去っていた。
 また、共するメイドことステラ・タタリクス(紫苑・f33899)においても同様であった。
「脱いだらエロくなる、というのは浅はかが過ぎるというもの。いえ、以前の前開きの方がエロかったのでは?」
 フェチズム的な意味で。
 マニアックな意味で。
 ステラの言が『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に如何なるものを与えたかは定かではないが、あえて言うなら。
「肌面積多いほうがエロいだろうが!」
『そういうことを言っているんじゃないと思うがねぇ』
 とまあ、漫才みたいな掛け合いを『ウガルルム・ザ・グランギニョール』をしていたのだが、それをルクスもステラも聞くことはなかった。

「ウガリュ……いえ、ウガルルム・ザ・ギュランギョ……」
「言えないなら無理すんな」
『そんなに言いづらいかねぇ』
「光と闇がどうとかいう前に、その早口言葉みたいな名前なんとかしてください!」
 ルクスは返答が聞こえていなくてもかまわなかった。
 おのれたちに迫る無数の『宝石災魔』たち。これらと『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の暗殺能力は脅威其の者であった。
 けれど、それでもルクスは叫ぶ。

「五感を奪ったくらいでなんだというのですか。わたしの光の勇者としての魂と、音楽家としての天賦の才は、五感を超えるのですよ!」
「光も闇も、そんなに違いはない。ええ、確かにそう思います。そして、その体現が此処に居ます」
「なんか今すごく失礼なこと言いませんでした!? なんか漏れてる気がするんですけど!」
 二人の言葉に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は慎重さを持つが故に訝しむ。
 この二人、見えていないはずだ。
 聞こえていないはずだ。
 なのに、確かに掛け合いしているように思えるのは、一体どういうことなのか。
 故に此処はおのれが直接手を下すよりも『宝石災魔』による包囲攻撃が打倒だと判断したのだろう、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は動かなかった。
 いや、それ自体が間違いであった。

 この二人を打倒するつもりなのならば、何を於いても先手必勝だったのだ。
 何かをする前にすりつぶす。
 それが最適解。
 だが『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は慎重だった。慎重すぎたのだ。故に、彼女は見誤った。
「|光の勇者にして奏魔法の遣い手《どう見ても闇しか放出してない破壊音波使い》であるルクス様の演奏に耐えられますか?」
 ステラは恭しくカーテシーをキメる。
 こういうときだけキメてどうすんだと思わないでもないが、ステラはメイドである。ある事柄が絡みさえしなければ、普通に有能な万能メイドなのである。
 よくわからん理屈であるが、しかし、ステラは五感失ってなお、ルクスの後方に移動し、さらにアウルム・ラエティティアによって特定の破壊音波魔法を相殺する。
 耳栓が意味をなさないルクスの演奏に対抗して生み出されたユーベルコードである。執念である。

「今すっごく失礼なことを言われました! 絶対に言いました! なら、やってやろうじゃないですか! 響け勇者の魂!」
 ルクスは奏でる。
 己の魂を込めて、勇者としての矜持を込めて。
 光と闇は違う。
 ただそれだけの一念に押されるようにしてルクスの音色が戦場に響き渡る。
「響け、私の心! 響け、光と闇は全然違うし、わたし、光の勇者だってこと! 主にステラさんに!」
 ルクスの叫びはヴァイオリンの旋律に乗って『宝石災魔』たちを打ち砕いていく。
 ステラは涼しい顔をしていた。
 このときばかりは『世界破壊の灼熱』に感謝した。
 聴覚が喪われているから、ステラは耳を塞ぐ必要もない。例え、聴覚をぶち抜いてくるのだとしても、特定の破壊音波を相殺するユーベルコードを使用しているのだ。
 見た目的にはルクスの援護をしている体である。

 そして、ダメ押しのようにステラは言うのだ。
「ただの歌声、演奏と侮っていたら、痛い目を見ますよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・フィアネーヴ
……宝石災魔に最上位の殺人鬼……上等だ、相手にとって不足はない……ッ!!
すまない、ケラヴノス…お前の力に頼らせてもらう…!!

ケラヴノスの力で周囲に嵐の結界を張り、壁にして時間を稼ぐと同時に視界妨害で奴の目を眩ませるぞ
……そこまで慎重なら「確実に殺せたか確認ができない状況」は避ける…故に、奴はこっちに接近せざるを得ない、と思う。
周辺ごと一気に仕留めるまで…!!似たモノを抱えている以上、“そういう力”の気配はまだ読めるつもりだ、光でも音でもなく、“力”の気配に集中、接近に合わせてUCを全力開放、周辺一帯の、敵も災魔も銃弾も、全てを永劫の沈黙と停止の災い、【凍える世界】へと吞み込ませるぞ……!!



 セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)の視界は白く染まっている。
 それだけではない。
 何も聞こえない。
 己の声さえも聞こえない無音。その上に手にした武器の質感すら感じられない。
 これが『世界破壊の灼熱』。
 敵対者の五感を喪失させる『11の怪物』の力。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は、それに加え類稀なる暗殺能力を有している。気配を消すまでもない能力を得ながら、しかし、猟兵の底力を知るからこそ慎重に行動していた。
 それを支えるように『宝石災魔』がセツナに迫っている。

「……上等だ、相手に取って不足はない……ッ!!」
 セツナは封竜槍アドウェルスを掲げる。
 煌めく雷と共にサイキックロードを介して、己のキャバリア『ケラヴノス』が出現する。
 何も感じられずとも、セツナは己のサイキックキャバリアとのつながりを感じる。
「すまない、『ケラヴノス』……お前の力に頼らせてもらう……!!」
 瞬間、セツナを中心にして迸るは嵐の結界。
『宝石災魔』たちがセツナに迫っていたが、その嵐によって阻まれ、それ以上進めない。
 セツナは『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が慎重な行動を取るオブリビオンであることを知っている。
 嵐は目張りのようにして、セツナと彼女の間に張り巡らされている。
 内部に迫らんとした『宝石災魔』たちは嵐の雷によって穿たれ、破壊されている。

「中で何が起こっているのかさっぱりってわけだ」
『となれば、確実に仕留めるってんなら』
「ああ、ババアに同意見だな。至近距離でハンマーをぶっ放して確実に……殺すのみ!」
 その言葉と共に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は走り出す。
 嵐の結界の中にセツナがざしているというのならば、これを打ち倒す。ただそれだけでいいのだ。
 油断していたわけではない。
 慢心していないからこそ、彼女は踏み出した。

「……来た!」
 セツナは感じ取る。
 音でもなく、視界でもなく。
 ただ迫る力の気配を感じ取る。己に迫る力。己を叩き潰さんとする圧力とでも言えばいいのだろうか。
 見えずとも、聞こえずとも、触れずとも。
 感じ取れるものがあるというのならば、セツナの瞳がユーベルコードに輝く。
「凍える世界(エアオーベルング・フェアツィヒト)……これが『凍らせる』のが、体だけだと思うな……ッ!!」
 瞬間、災禍の氷嵐がセツナから放たれる。
 周囲一帯を巻き込む氷嵐。それは『宝石災魔』を巻き込んで、一瞬にして『ウガルルム・ザ・グランギニョール』をも巻き込んでいく。

 無差別なる攻撃。
 狙いをつける必要性すらなかった。
 セツナはユーベルコード輝く瞳でもって示す。敵は己の眼前で全て凍りつく。
「すべて永劫の沈黙と停止の災いに飲み込まれるが良い」
 煌めくユーベルコードは示す。
 己に迫る敵意をこそ凍りつかせるのだと。故にセツナは聞くだろう。
『宝石災魔』の尽くが凍りつき、砕ける最中『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の忌々しげな舌打ちを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
むむ、今度の奴はエリクシル感薄いな…ってグリモアベースをどうこうされるのは困る!やっぱり退治だ…ってぎゃわー!何も見えんし聞こえん!全部位封じとか鬼か貴様ー!とりあえず多少の痛みは我慢してでたらめに幻覚性ブレス吹きまくるが埒が明かぬ……こうなれば、来るがよい我が第二の魔将!

UCを使用、ワルレーン自身も多分同じ目に合うが、雨と津波さえ起きれば問題はない!なぜなら…ワルレーンの力ならこの雨や津波に触れた対象の「得ている効果や異能」を「奪ったり与えたりできる」からだ!
よって、この「五感封じ効果」を我から「奪い」その辺の宝石災魔とか奴本人に「与えて」て同じ目に合わせ、ブレス集中砲火を浴びせてやるぞ!



 万能の魔神『エリクシル』。
 それはエンドブレイカー! 世界における災いであり、知的生命体を喰らうということを目的としている『11の怪物』が解き放つ探索機めいた存在。
 故にワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は己に迫る『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が『エリクシル』感が薄い、と思ったのだ。
『エリクシル」はワルルーナにとっては商売敵ならぬ、悪徳同業他社である。
 ワルであるが、赦してはおけないからこそ彼女は戦場に踏み出している。
「グリモアベースをどうこうされるのはひっじょーに困る! 例え、貴様が『エリクシル』感うっすーいのだとしてもだ! 退治してくれるわー!」
 勢いよく『実験都市オペレッタグラン』へと迫る。
 しかし、ワルルーナの視界を埋め尽くしたのは、光の白だけだった。

「ぎゃわー!? なんだこれは1? 何も見えんし、聞こえんし!? これ感触もないし、味覚も……ない! ないではないか! 全封じとか鬼か貴様ー!」
 その叫びは確かに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に聞こえていたことだろう。
 しかし、その返答をワルルーナは聞くことはなかった。
『世界破壊の灼熱』と呼ばれる敵対者の五感を奪う能力によってワルルーナは五感全てを封じられているのだ。
「いやはや、あんなのもいるのかよ、猟兵ってのは」
『そりゃいるだろうさ、生命の埒外だもの。にしても、油断も慢心もなくても、ここまで追い込まれるとはね』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は『宝石災魔』たちに指示を出す。
 己が傷を追っている今、手駒でもって感覚を失っている猟兵を始末するのがベターだと理解しているのだろう。
 ワルルーナはやたらめったらにブレスを放ち、警戒しているようであるが、五感を失っている以上狙いが付いているわけではない。
『宝石災魔』とて、これを躱すのは容易であったことだろう。

「ぬぅ! 埒が明かぬわ……こうなれば、来るが良い、我が第ニの魔将! ワルレーンン!」
「うぅ…‥いやですぅ」
 第2の獣ワルレーン/緑涙ノ大津波(ワルレーン・ティアーフラッド)は、涙目だった。
 五感が喪われるのなんてやだーと言わんばかりであったがワルルーナは翼持つ人魚背中を押す。
「ええい、いやもくそもあるものか! よいか、貴様であれば、この五感を失っている状況でもどうにかできる!できる! できるのだ! ……あ、これも聞こえていないのか?」
「うぅ、ごめんなさぃぃ~!」
 涙が溢れ、ワルレーンより巻き起こるは、緑色の雨と津波。
 それは一気に『宝石災魔』と『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の体を濡らす。雨である以上、避けようがなく。津波である以上、ワルルーナに迫っていた『宝石災魔』たちは飲み込まれるしかない。

 不可避たるユーベルコードなのだ。
 そして、それは攻撃するためのものではなかった。
「むっ、なんか今いい感じに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』にワルレーンの涙が当たったな! ならば、今だ」
「うえぇん……! や、やりますぅ!」
 そう、第ニの魔将ワルレーンの能力は、雨に触れた者のもつ効果、所持技能、アイテム、異能を奪うことになる。
 そして、逆に耐えることができる。
 すなわち。

「フハハハハッ! これが『世界破壊の灼熱』であるか!」
 思いっきりワルな笑い声と共に奪った『世界破壊の灼熱』たる力を『宝石災魔』にぶつけ、更に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』へとぶつけるのだ。
「おいおいおい! どうなってやがる!『世界破壊の灼熱』を猟兵も使ってやがるぞ!」
『まずい、相殺されている! このままでは!』
「見つけたぞ、貴様ー! 鬼みたいな能力でもって此方を封じてきおって! これはお返しだー!!」
 ワルルーナは相殺された『世界破壊の灼熱』が吹き荒れる最中、取り戻した視界でもってしっかりと『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を見据え、今、此処にブレスの集中砲火を浴びせかけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
五感を失う上に災魔が出て来てグランギニョールが攻撃してくる…
…なんというかこう…徹底してるなぁ…でもあいつ倒さないとグリモアベースが危ない以上やるしかないな…

…五感を失うなら自分が狙わなければ良い…【暁天踊る集い星】を発動…
…自分を中心に『自分以外の全ての存在』を極小の刃を束ねて作り出した無数の剣で切り裂くとしよう…
…更に生み出した剣の一部に術式組紐【アリアドネ】を接続…ハンマーに絡みつかせ回転を阻害…制御不能に陥らせよう…
…あとはまあ…運に天を任せるね…私自身は障壁を張って防御に専念するけど…制御不能に陥った「世界破壊の灼熱」の渦が
私よりも敵と宝石災魔を薙ぎ払ってくれる事に期待するとしよう…



 酷く厄介な相手である。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の総評というのはそういうものであった。
『11の怪物』、『ウガルルム』の能力である『世界破壊の灼熱』は敵対者の五感を喪失させるものである。触覚、視覚、嗅覚、聴覚、味覚。
 その全てが喪われる以上、猟兵達は第六感に頼らざるを得ない。
 勘所を抑えなければ、まともに戦えない上に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は戦略級殺人鬼としての暗殺能力を油断も慢心もなく行使してくるのだ。
「……なんというかこう……徹底しているなぁ……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は関心しきりであった。
 慢心なき敵こそが最も恐ろしい。
 その点を踏まえた上で、さらに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は慎重そのものだった。
 あくまで猟兵たちとの戦いは彼女の研究である『宝石災魔』に寄るグリモアベースの探知攻撃を主軸に於いている。
 彼女を放置することは、すなわち猟兵達の敗北に直結しているのだ。

 喉元に突きつけられた刃の鋭さをメンカルは理解する。
 グリモアベースにオブリビオンが侵入した時点で、己達猟兵の敗北は決定づけられる。
 この状況こそが『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の力と策略の賜物である。
「とは言え、戦わなければならない……でも、五感は喪われている。まともに戦えない……」
 なら、とメンカルの瞳はユーベルコードに輝く。
「我が剣よ、歌え、踊れ。汝は残星、汝は晨明。魔女が望むは彼誰煌めく星嵐」
 手にした黎明剣が極小の刃の花弁へと変貌する。
 それは自律稼働する刃。
 メンカルの視界も、意志も関係ない。術式組紐『アリアドネ』を接続し、刃持つ網となって戦場に迸る。
「こいつ、自動的な……!」
『狼狽えるんじゃあないよ! 自動的なやりようはあるだろうよ!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は己に迫る刃が『宝石災魔』を切り裂きながら網目のように己を捉えようとしていることを知る。
 振り回すハンマーの回転。
『世界破壊の灼熱』の渦は、回転しなければ止まってしまう。メンカルの狙いは、ハンマーの回転を止めること。

 そして、阻害された『世界破壊の灼熱』の渦は制御を失う。
 そうなれば、どうなるかなど明白だった。
「私達を守れ『宝石災魔』ども!」
 だが、遅かった。
 網目は一目には大雑把な、それこそ隙間から逃れられそうな様相であった。しかし、天網恢恢疎にして漏らさずという言葉があるように、それらはあらゆるものを逃さない。
「……あとはまあ……運に天を任せるね……」
 何せ、メンカルの視界は塗りつぶされている。
 聴覚も、触覚も喪失している。手応えはないだろう。故に障壁を張り巡らせ、自身は防御に徹する。
 ただそれだけでいい。
 自律稼働する暁天踊る集い星(デイブレイク・ストーム)の如き力は、刃を唸らせながら『宝石災魔』を切り裂き、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の手にしたハンマーに絡みつき回転を止める。

 瞬間、制御を失った『世界破壊の灼熱』の渦が狂うようにして『宝石災魔』と『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を飲み込んでいく。
 その光景を、手応えをメンカルは感じることはなく。
 しかし、その嵐の最中、メンカルは勝利への期待と共に力の奔流が過ぎ去り、己の五感が戻るのを待つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕凪・悠那
さすがに五感を喪ったらどうしようもないんだよね
ボク、普通の女子高生なので

とはいえ、プログラムさえ走らせられればどうとでもなったり?
例えばこれとか――
思考からショートカットで【Tool-Assisted Speedrun】起動
目標設定:グランギニョールの撃破

『縺上m縺ョ繝「繝弱Μ繧ケ』でスキャンした周辺情報を『Metis』へ
[戦闘演算]開始
全リソースを注ぎ込んで、『Virtual Realize』もキャバリアも、使えるものは全部使って"目標"を最速、最高効率で実行
近接範囲に入らないとか宝石災魔の対処とか全部最適行動で進んでるはず

気付いたら終わってるから、勝ったって実感がないのだけが不満かな



 敵対者の五感を奪う能力。
 それは『11の怪物』、『ウガルルム』の持つ能力であった。
 恐るべき力である。
 五感、すなわち、触覚、味覚、嗅覚、視覚、聴覚の全てを塗り潰す『世界破壊の灼熱』は、猟兵と『ウガルルム・ザ・グランギニョール』との戦いにおいて致命的な損害であった。
夕凪・悠那(電脳魔・f08384)にとっては、そうであったのだ。
「さすがに五感を失ったらどうしようもないんだよね。ボク、普通の女子高生なので」
「そういう油断はしねーんだよ、こっちはな!」
『見た目に騙されて痛い目にあうなんてのは、そう何度も経験したいものじゃあないしねぇ』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の言葉を悠那は聞くことはなかった。
 聴覚まで喪われているからだ。
 しかし、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の言葉も尤もであった。猟兵が五感を封じられたとて、戦いをやめるわけがないのだ。

 そして、事実、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は五感を封じられた猟兵達によって追い込まれている。
 この現実を認められないわけがない。
 彼女にとって、勝利条件とは猟兵たちを抹殺することではないのだ。
「あくまで私達は『宝石災魔』の研究を完遂させればいい。グリモアベースの位置さえわかっちまえばな!」
『こっちの勝利ってわけだ。だけど、その前にこっちがやられちまうのは!』
 吹き荒れる跳弾。
 銃弾が跳ねるようにして悠那の周囲を飛ぶ。
 確かに彼女は普通の女子高生だ。ただし、猟兵、ではあるが。

「五感がなくてもプログラムは走らせることができる」
 彼女の首元の首飾りが淡く輝く。それは回路を組み込まれた演算装置。
 現実と虚構をつなぐ鍵であり、どうじにプログラムが走り出す。
 ユーベルコードショートカットを起動する。
「Tool-Assisted Speedrun(ツール・アシステッド・スピードラン)、目標設定、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』」
『実行を許可しますか?』
 悠那の視界……いや、脳裏に浮かぶのは<Y/N>の文字。
 その『Y』を彼女は選ぶ。
 周辺情報をスキャンし、演算を開始した回路が巡る。

 ユーベルコードによって生み出された己を自動操作ツールは跳弾飛ぶ銃弾の嵐の中へと走らせる。
 頬をかすめる銃弾。
 だが、致命傷にはならない。痛みも感じない。ただひたすらに走る。
 迫る『宝石災魔』たちを前にしても怯むことはなかった。
 始めからそうすることが決まっていたかのような精密な動作でもって悠那は走り込みながら周囲の情報をかき集め、演算し、残されたリソースのすべてを持ってプログラムを起動する。
「な、なんだよあいつ。どうなってる。見えていないはずだ!」
『まずいよ、こっちの情報を全部習得されてる! だから躱される!』
 悠那に何かをしている、という意識はない。

 なぜなら自動的だからだ。
 走るプログラムが彼女のリソースの全てをつぎ込んで、キャバリアを呼び出し、搭乗する。迫る『宝石災魔』を打ち砕きながら、全て『最適行動』でもって踏破していくのだ。
 一つの無駄もない。
 不要なソースなどない。
 美しささえ感じさせる最適行動を前に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は叫ぶ。
 けれど、それは届かない。

 悠那にとって、これは勝利へと至るための遊びのない行動だから。
 勝利の実感もない。
「うん、それだけが不満かな」
 気がついたときには戦いは終わっているだろう。悠那は無意識化で行われる自動的な行動に感慨なく。しかし、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を的確に追い詰めていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
五感の喪失…ですか。
あいにくと、その手の現象は崑崙の修業時代に散々味わいました。
いまさら…!!

『龍脈使い』の秘術で地脈から、『道術』にてコウモリの音響測定を模した術で…この二つで敵や周囲の状況を『情報収集』して対処します。
長年鍛え上げた術を行使する感覚…これは五感…肉体によるものではありません!!
ただの魂に宿った感覚です!!

この戦場…見切りました!!
敵の攻撃を『結界術』で受け止めます。
そして…宝貝「化血神刀」による斬撃で「世界破壊の灼熱」の渦を『こじ開け』て『たたき割り』、宝貝の毒を『毒使い』の術で『限界突破』させます。
毒が己の体を蝕み、宝貝の斬撃が『傷口をえぐる』感覚…ご十分に味わいください



 五感喪失。 
 それは恐るべき力であったことだろう。
 何も感じられず、何も聞こえず、何も見えない。空白だけの時間が過ぎ去っていく。時間の経過すらも感じられない。
 ともすれば、それは董・白(尸解仙・f33242)にとって懐かしいものであった。
 いや、懐かしいからと言ってもう一度味わいたいのかと言われたのならば、御免被ることであったけれど、
「あいにくと、その手の現象は修行時代に散々味わいました。今更……!!」
 そう、今更なのである。
 仙人としての修行。
 その過酷さは言うまでもない。人ではない高次の存在に昇華するのだ。その修業が生易しいものであるわけがない。
 そして、白は、それらの修行を経てきた僵尸の仙人なのである。

 故に、彼女は大地に手を触れる。
 地に流れるは龍脈。
 そう、己の五感だけが世界の全てではない。道術にて得られたコウモリたちの反響定位によって白は顔を上げる。
「そこですよね!」
 白は駆け出す。
 戦場の状況はすでに彼女の頭の中にある。
 戦っているのは自分だけではない。他の猟兵達だって、この五感を喪わせる『世界破壊の灼熱』の中で戦っているのだ。
 それらの全てを白は把握し、戦場に駆け出す。

「次から次へと!」
『自棄っぱちになるない! 来るよ!』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は確かに追い込まれていた。
 猟兵達は五感を失っても、的確に『宝石災魔』を破壊しながら打撃を与えていたのだ。
「どうなってやがる。本当に五感を失ってんのかよ!」
「これは長年鍛え上げた術を行使する感覚……これは五感、肉体に寄るものではありません! ただ魂に宿った感覚故!」
 白は宝貝「化血神刀」(パオペエカケツシントウ)を抜き払う。

 その刀身は、物質を透過させる。
 すなわち、その刀身は迫る『世界破壊の灼熱』を叩き割る。いかに強大な力とて、物質を透過する不可視の斬撃は白の道筋を前に立ちふさがれるものではないのだ。
「猛毒の刃に溺れて……」
 ユーベルコードに輝く白の瞳。
 踏み込んだ彼女の手にした化血神刀の斬撃は、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の体に刻まれ、猛毒でもって侵す。
 それだけではない。
 傷跡が塞がらないのだ。
 手で負債だとて、流血が止めどなく起こり続けているのだ。

『おい、血が止まらないようだが!』
「これは止血できない斬撃ってことかよ!」
「ええ、そうです。毒が体を蝕み、斬撃が傷口を抉り続ける感覚……ご十分に味わいください
 白は化血神刀の切っ先を『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に突きつける。
 見えずともわかる。
 己の体躯に刻み込まれた修業の日々は、この時の為にあったのだと。
 確かな手応えを感じ、白はさらに『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を追い詰めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

わお!素敵なステージだね!見えないけど!
遮蔽するというのも芸が無いというか面白味が足りない!
さあ踊ってみよう!

●見えない!聞こえない!感じない!
でも別段不便を感じたりはしない
そうボクの勘【第六感】があれば…はわわわ!お菓子の味がしないーーー!!
んもー
【第六感】に任せて攻撃を避け
【第六感】の感じるままに攻撃を避け
そしてボク以外の全てを押し潰すよう設定したスーパーサイズの[白昼の霊球]くんで引きつけてまとめてドーーーンッ!!
そして追い撃ちのUC『神撃』ドドーーーーンッ!!

はぁー…お菓子が美味しいってことは終わりだね!
あー焦った今年一焦ったよ!



 実験都市オペレッタグラン。
 それは『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が生み出したグリモアベース攻撃特化の『宝石災魔』を生み出すための研究都市でもあった。
 彼女の目論見は猟兵達の喉元に突きつけられた切っ先そのものだった。
 今だグリモアベースにオブリビオンが侵入した事実はない。
 すなわち、グリモアベースに到達されることは、猟兵にとって敗北に他ならない。
 故に、その一手を持つ『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を捨て置くことなどできようはずもなかった。

 猟兵達によって追い詰められてはいるものの、今だ『世界破壊の灼熱』と『宝石災魔』は健在である。
「わお! 素敵なステージだね! 見えないけど!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は実験都市オペレッタグランの光景を目の当たりに……していない。
 彼の五感は全て喪われている。
『11の怪物』、『ウガルルム』の持つ能力。
『世界破壊の灼熱』は、敵対者の五感を喪失させる。味覚も、触覚も、視覚も、聴覚も、嗅覚も何もかも喪われているのだ。
「うーん、これを遮蔽するというのも芸がないというか面白みが足りない! さあ、踊ってみよう!」
 しかし、ロニは不便を感じたわけではなかった。
 見えない、聞こえない、感じない。
 これは別段彼にとっては意味をなさない。

 無味無無臭など何の問題にもならない。
 第六感たる五感を越えた感覚を有している以上、ロニには『世界破壊の灼熱』は意味をなさないものだった。
 手慰みのように手元のキャンディーを口に放り込む。
「……はわわわ! お菓子の味がしない――!?」
 味覚も喪われているのだから、当然である。
 ロニは今日一番の驚愕を覚える。甘い味がしない! ついでに舌先の感覚もない!
「そりゃそうだろ。それが『世界破壊の灼熱』ってもんなんだから」
『混乱してくれてるのはありがたいが、油断はできないってんだから嫌になる』
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は油断無き暗殺者である。
 三十六世界を見通して見ても、彼女以上の暗殺能力を持つ者はいない。

「んもー!」
 だが、ロニは迫る攻撃を第六感に任せるままに躱し続ける。
 迫る無数の『宝石災魔』たちを認め、ロニは巨大な球体を呼び出し、鉄球を叩きつけるようにして『宝石災魔』の体を打ち砕く。
「惹きつけてまとめてってのがボクのやり方!」
 砕け散った破片の中をロニは飛ぶようにして蹴って走る。
 第六感が告げている。
 見えずとも、聞こえずとも、感じずとも、己の直感を信じるようにして拳を振るい上げる。
 振り上げた拳が叩きつけられる場所にこそ、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』が存在している。

「ドド――ンッ!!」
 神撃(ゴッドブロー)が『ウガルルム・ザ・グランギニョール』を捉える。
 しかし、それをロニを実感することはなかった。
 すべての五感が失われているがゆえに、確かに打ち据えたという結果だけが彼の中に残されるばかりである。
 これはつまらない。
 とても、つまらない。それ以上につまらないって思ったのは。
「はぁー……お菓子が美味しくないってことは終わりだね! あー焦った今年一番焦ったよ!」
 ロニは味のしないキャンディーをかじりながら、『世界破壊の灼熱』の恐ろしさに戦慄し、叩きつけた拳を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
しつこいよグラン・ギニョール
何度も出て来て、恥知らずかな?
それにどれだけ小細工しようとも、その程度で止まる猟兵じゃないってのは知ってるんじゃない?
そっちの思う通りにはさせない、目論見は此処で潰えさせる

超克……オーバーロード!
外装転送、模造神器全抜刀
さあ、こっちも出し惜しみ無し
そっちが比類無き暗殺能力って言うんなら、こっちは埒外の力
真っ向勝負といこうか!

見えない聞けない…五感を縛るって言うんならこっちも小細工するしか無い
『オーラ防御』、私を中心に同心円状にオーラの盾を多数展開
これで盾が破られた方向に敵が居る!
盾が破られたら、その方向を向いて4剣全て構えて防御体制
細かいタイミングは『第六感』を信じて『武器受け』して攻撃を受ける

宝石災魔と奴の両方相手取る…か
なら纏めて焼き払う!
【断章・必滅ノ焔】起動
全模造神器より蒼炎を放出
効果範囲内の敵を全て『焼却』する
そのまま全て、燃え尽きろ

どれだけ強化されようとも所詮はオブリビオン…即ち過去
今を生きる者達の邪魔をするんじゃないよ



「あーもークソッタレがよう! 此処まで慎重にやって勝率五分以下ってので察してはいたが!」
『そうぼやくない。わかっていたことだろう。勝率なんてのは目安さね。残りの五分をどう埋めるかを考えた方が建設的だろう?』
「ババアのくせに達観するようなことを言うんじゃあねぇ!」
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は嘗て戦略級殺人鬼として『アルダワ魔王戦争』の折に姿を確認されたオブリビオンである。
『11の怪物』と融合を果たすことによって、敵対者の五感を奪う『世界破壊の灼熱』をたぐり、さらに『宝石災魔』さえも放出しながら猟兵との戦いに挑んでいる。
 その類稀なる暗殺能力は五感奪われた猟兵たちにとっては脅威そのものだったことだろう。

「しつこいよ、『グラン・ギニョール』……何度も出てきて、恥知らずかな?」
 しかし、彼女たちは追い詰められていた。月夜・玲(頂の探究者・f01605)の言葉が『世界破壊の灼熱』の渦の最中に聞こえる。
「ハッ! どっからでも湧いて出てきては首つっこんでくる猟兵には言われたくはねぇわな! あァ!?」
『安い挑発に乗るんじゃあないよ! こっちの声はあっちには届いていないんだからさ!』
「どれだけ小細工しようとも、その程度で止まる猟兵じゃないってのは知ってるんじゃない? それとも忘れちゃったかな? 骸の海においてきちゃったかな?」
「テメェ……」
 玲の言う通りだった。
 猟兵はこの程度では止まらない。
 例え、鮮血の濁流が遅い来るのだとしても、五感を喪失させる『世界破壊の灼熱』が襲うのだとしても、立ち止まる理由にはならぬのだというように踏み込んでくる。

 その結果がこれである。
『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は冷静だった。
 けれど、事実を事実と認めるには、あまりにも時期尚早だとさえ思った。
「言わせておけばよぉ!」
「そっちの思う通りにはさせない。目論見は此処で潰えさせる」
 玲の赤い瞳が超克に輝く。
「超克……オーバーロード! 外装転送!」
 副腕が彼女の背後に浮かび、四振りの模造神器の鞘が宙に浮かぶ。柄を握りしめるは、副腕と玲の二本の腕。
「模造神器、全抜刀!」
 抜き祓われる蒼き刀身がきらめいた瞬間、出力を底上げされた力がほとばしり、『世界破壊の灼熱』とぶつかり合う。

「出し惜しみなしってわけかい! なりふり構ってねぇな、猟兵!」
『踏ん張りな、ここが正念場だ! 焦るんじゃあないよ!』
「わかってんよ、ババア!」
 互いに激突する視線。視界はなくとも気配を感じ、玲は叫ぶ。
「真っ向勝負といこうか!」
 対する『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は三十六世界最高の暗殺能力を有するオブリビオンである。
 だが、玲とて生命の埒外たる力を有する存在。

 視界を塗りつぶされ、無音に耳を蓋されようとも、玲は止まらない。
「来なよ! その鼻っ柱へし折ってバキバキにしてあげるからさ!」
 張り巡らせるオーラの盾。
 それは今更めいた防御であったことだろう。少なくとも『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は理解する。玲は五感を失ったままだ。
 第六感という力を発露している様子もない。
 盾を全周囲に多数展開していることからもわかる。どこから己が攻撃を叩き込むのかを把握していないのだ。
 ならば、と『ウガルルム・ザ・グランギニョール』は張り巡らされた盾をハンマーで容易く砕くと同時に『宝石災魔』と共に踏み込む。
「甘ぇよ、猟兵! そんな見え透いた小細工!」
 そう、玲が同心円状にオーラの盾を複数展開したのは、その盾を敵が破壊したことを感知するためだった。
 それによって位置を把握しようとしていたのだ。

 けれど、それは『ウガルルム・ザ・グランギニョール』に把握されていたのだ。
「だろうね!」
 同時に破壊される盾。
 どの方角に『ウガルルム・ザ・グランギニョール』がいるのかわからない。『宝石災魔』と共に同時に盾を破壊したからだ。
「でもさ、同時ってのは悪手だったよね! やるんなら、偏差攻撃でしょ!」
 そう、同時破壊させて、己の位置を悟らせぬというのならば、時間差による攻撃が尤も効率的だった。
 同時に攻撃したのならば、それは玲にとって容易いことだった。

「一気に攻撃してくるんなら、一気に対処する! それができないとでも思ったのかな! なんのための腕四本だと思ってんだろうね!」
 振るう模造神器の刀身は四つ。 
 そう、同時に破壊された箇所があるのならば、その複数を同時に攻撃すれば良い。
 それができる。
 玲は己を信じている。
「まとめて焼き払う! 偽書・焔神起動。断章・必滅ノ焔の閲覧を許可。広域殲滅開始!」
 煌めくユーベルコード。
 断章・必滅ノ焔(フラグメント・バニシングフレア)は、手にした模造神器の刀身より全てを浄化する蒼炎を解き放つ。

「んな――!?」
『だから、焦るなって言ったんだ! 此処まで着た猟兵が」
「たかだか五感封じられた程度で!」
 玲が叫ぶと同時に放たれた蒼炎が『宝石災魔』ごと『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の胴を薙ぎ払う。
 炎が燃え盛る。
 あらゆるものを燃やし尽くす浄化の蒼炎は、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』がこれまで猟兵に刻まれた傷跡をさらにもやし、それがひび割れるようにして炎を立ち上らせる。
「そのまま全て、燃えつきろ」
「こ、の……クソが!」
 振るわれるハンマーの一閃を玲は副腕が交錯させた二振りの模造神器でもって受け止める。
 蒼炎揺らめく、超克の輝きを宿す瞳を持って玲は見据える。
「オブリビオン……すなわち、過去。今を生きる者達の邪魔をするんじゃないよ」
 玲の手にした蒼炎宿す模造神器の交錯する一閃が、『ウガルルム・ザ・グランギニョール』の胴を断ち切り、その体を炎でもって焼き滅ぼした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月11日


挿絵イラスト