エンドブレイカーの戦い⑨〜カルディナール・シュニッテン
「私情で大変申し訳ないんだけど、ちょっと向かって欲しいところがあります!」
予知には違いないし、とクレープ・シュゼット(蜂蜜王子・f38942)は言うが。
「ランスブルグにはね、第2階層の鉄壁街に、その名の通り学びの園が集う『アカデミック街』があるんだよ。専ら紋章院や星霊学士協会、国立図書館とかがメインなんだけど、色んなジャンルの各種学校もあったりするんだよねえ」
俺が留学した製菓学校もそこにある、と。
つまり、彼の言う『私情』とは。
「ご明察。ランスブルグの街を襲ってる実験都市オペレッタグランの超生物エリクシル……その一体の侵攻ルート上にね、俺の母校が入ってる」
進撃するはジャグランツの母、想像主たる魔女の一人、白婦人――をベースに想像されたエリクシルだ。
「何だろうね、元の性質からして沢山子供を生むから、その為の食料を求める内に甘い香りに誘われたのかも。尤も、実際に食べるのはスイーツじゃなくてその作り手のパティシエ達のつもりかも知れないけど」
あくまでエリクシルだから実際のところはどうなのか解らないけどね、とクレープは肩を竦めつつ。
「皆にはまだ大勢の人が残る学校からどうにか敵を引き離して戦って欲しい……と言いたいところなんだけど。場所が場所だから、近辺に人気のなさそうな場所はないんだよねえ」
そう言ってクレープは苦笑し、続けた。
「だからあんまり気は進まないんだけど、俺の母校って校門からエントランスまでの広場がすっごい広いんだよ。学校自体もそれを囲むように建築されてるから、敢えてエントランス前広場に誘い込んで、敵を包囲しつつ倒すのがいいんじゃないかって思うよ。と言うか、ある程度耐え抜けば敵は勝手に自壊するらしいから」
まあその分、あらゆる攻撃に対してほぼ無敵なんだけどね、とも付け加えるが。
逆に耐え切ることさえ出来れば、一切攻撃せずとも勝てる相手だ。足止めや校舎の防衛、味方の回復に専念するのもいいだろう。
「生徒や先生方は、皆が守ってくれるなら校舎の中に避難して貰えれば一先ずは安全そうだし」
俺は一緒に戦えないから、皆に任せるよと悲しそうに笑うクレープ。
一人の男の、多くの未来ある若者達の、そして彼らを教え導く大人達の大切な学び舎だ。
どうか、踏み躙られることのないように。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあです。
未来ある若者達を守りましょう。
戦争シナリオのため、今回は1章構成です。
第1章:ボス戦『白婦人』
超生物の超攻撃に耐え抜くか、人気のない場所へ敵を誘導することでプレイングボーナスが得られます……が。
今回は前者、つまりは防衛系のプレイングを優先して採用させていただきます。
一定時間(=必要成功数分)耐え抜けば、エリクシルは自壊します。
断章なし、募集開始日時はタグにて告知させていただきます。
オーバーロードのみ公開直後から受け付けております。経験値沢山欲しい方などは活用をご検討ください。
なるべく多くの方の採用を目指しますが、内容や人数によっては全採用がお約束出来ない可能性がございます。
予めご了承いただければ幸いです。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『白婦人』
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POW : 魔女の護り
対象を【薔薇の蔓】で包む。[薔薇の蔓]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【薔薇の棘】と、傷を癒やす【純白の果実】を生やす。
SPD : ジャグランツ・パレード
レベル×1体の【バルバ『ジャグランツ』】を召喚する。[バルバ『ジャグランツ』]は【猛獣】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ : マザーコール
自身が【危機意識】を感じると、レベル×1体の【バルバ『ジャグランツ』】が召喚される。バルバ『ジャグランツ』は危機意識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:京作
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シモーヌ・イルネージュ
アマツカグラではいろいろ食べさせてもらったからな。
そのクレープの頼みなら、もちろん引き受けるよ。
で、今回の相手は白婦人か。
数が多いだけに面倒な敵だね。
それに街や学校も守るから忙しくなりそうだ。
黒槍『新月極光』で戦うよ。
相手の攻撃はサイバーアイの動体【視力】で回避したり、
槍で【武器受け】していこう。
とにかく目立って、こっちに敵の目を引き付けないとな。
敵にはUC【鮮血旋風】を使おう。
これで転倒させれば、いやでも気になるだろ。
ここから先は通行止めだ。
●
現地に向かったシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)はアマツカグラでの出来事を思い出していた。
(「アマツカグラではいろいろ食べさせてもらったからな」)
季節の羊羹に栗きんとん、おはぎにぼた餅、月見団子。そして練り切りを始めとした創作和菓子の数々。
ああ、至福の時間だった。それらを一人で用意したパティシエの学んだ製菓学校が、危機に曝されていると言うのだ。
(「そのクレープの頼みだもんな」)
もちろん引き受けるよ、と快く了承すれば、ありがとうと笑顔で返されたのを思い出す。
甘いものは正義。そんなシモーヌにとって、パティシエやその卵は世界の宝と言っても過言ではない。彼らの学び舎を、必ず守り抜くのだ。
「で、今回の相手は白婦人か」
その背を追いながら、シモーヌは考えを巡らせる。
(「数が多いだけに面倒な敵だね。それに街や学校も守るとなると、忙しくなりそうだ」)
今は白婦人の姿しかないが、有事の際には下半身の肉塊から無数のジャグランツが産み落とされると言う。包囲が完了する前に、奴らが街に解き放たれては厄介だ。
シモーヌは黒槍を構えた。新月極光の名の表す通り、今日も月のない夜の色を映した穂先を緑白の光が滑る。
(「とにかく目立って、こっちに敵の目を引き付けないとな」)
白婦人が校門を踏み越え、製菓学校のエントランス前広場に踏み入った。
その背を捉え、下半身へと狙いを定めて槍を振るう!
「風の精霊よ――!」
揺らめく光が赫へと変わる。
鮮血の彩を宿して極光が白婦人の背後で揺れた。
その軌道は旋風を生み、肉塊へと突き刺さる――筈だった。
(「無傷か……」)
確かに直撃した筈の衝撃波。
しかしそれが消えた時、白婦人の身体に傷はなく。
(「けど!」)
少し遅れる形で、白婦人は体勢を崩した。
ずしゃり、とその場に倒れ伏す。風が脚代わりの肉塊を搦め引き止めたのだ。勢い余って、白婦人は前のめりに倒れたというわけだ。
「おっと。来たな?」
母の危機を察してか、ジャグランツの群れが肉塊を突き破り、現れた。母を守れと言わんばかりにシモーヌに殺到する。
それらをサイバーアイにより向上した動体視力で捉え、黒檀の穂で、柄で受け止め弾く。
「ここから先は通行止めだ」
シモーヌを敵と認識し、ジャグランツを差し向けた。それこそが敵の注意を引けている証拠だ。
再び街へと繰り出さぬよう、全力で止めるのだ!
大成功
🔵🔵🔵
ミャルナ・トゥイーティア
一応、私、この世界出身なのよね。
昔の|戦い《あれやこれや》にそんなに関わってたわけじゃないし、
猟兵としてもあんまり戦ったりしてないけど、それでもこの世界、好き勝手させたくはないかなっ
えっ。製菓学校が、エリクシルの侵攻ルート……?
お菓子が食べれなくなるのは由々しい問題だし、何よりエリクシルに好きにさせちゃダメよね。
確か怪物に支援もしてるんだし……。
ココから先には行かせちゃダメってことね。
ってことで、UC『桜花演舞』を使うね。
周りや自分への回復と、エリクシルへの攻撃が一緒にできるなら、もたせる事はできるかなってね。
多重詠唱とかつかえるものは使って、他の人たちと包囲しつつ、武器で攻撃もしつつ。
ミルナ・シャイン
*連携歓迎
イケメンの頼みでしたら!おまかせくださいませ、防衛は城塞騎士の本分ですもの。耐える戦いは得意ですのよ。
他の猟兵の皆様とも協力して包囲陣形をとり、盾『マリンクリスタルバリア』を構えシールドファランクス発動。透き通るこの盾は盾越しでもある程度向こうの様子を伺える優れもの。白婦人の召喚したジャグランツが包囲を抜けたりしないよう目を光らせておきますわね。
建物を背にする等、とにかく背後をとられないような立ち位置を心がけ必ず攻撃を正面から受けるようにしてUC効果を最大限に活かしますわ。
美しくて美味しいスイーツは心の栄養、そんなスイーツを生み出す未来のパティシエさん達を絶対に護りきってみせますわ!
●
「えっ。製菓学校が、エリクシルの侵攻ルート……?」
ミャルナ・トゥイーティア(微睡みに舞う華扇・f39097)は、その話を聞いた時、思わずその目を瞬かせていた。
ここは山斬烈槍ランスブルグ、そのアカデミック街。そこに製菓学校が存在していたことにも驚きだが、まさかそれが今、敵の猛攻に曝されようとしているとは。
(「お菓子が食べれなくなるのは由々しい問題だし、何よりエリクシルに好きにさせちゃダメよね」)
それに確か、怪物に支援もしていた筈だとミャルナは思い出す。
嘗てこの世界で繰り広げられた戦いでも、一部その姿が確認された11の怪物。エンドブレイカーでもあるミャルナも、その存在は知っていた。
(「昔の|戦い《あれやこれや》にそんなに関わってたわけじゃないし、猟兵としてもあんまり戦ったりしてないけど」)
それでも。
自分は、|この世界《エンドブレイカー》の出身だ。
エンドブレイカーとしての力こそあれ、前線に立つ機会は数えるほどしかなかったのも事実で、自分でもつい『一応』なんて言いそうになるけれど。
確かにここは、ミャルナの故郷なのだ。
(「この世界、好き勝手させたくはないかなっ」)
だから、今こそ武器を取り、この力を振るい出せる全力で戦い抜こうと――、
「イケメンの頼みでしたら!」
「えっ」
イケメン??????
そう言えば確かにあのグリモア猟兵、整った顔立ちをしていた気はするけれど。
|自分《ミャルナ》とは別の理由でやる気充分な様子の声の先を視線で辿れば、アクアマリンの瞳を宛ら磨き上げた宝石のようにきらきらと輝かせたミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)の姿があった。
直後、ばっちり目が合った。こほん、とひとつ咳払いするミルナ。
「何はともあれおまかせくださいませ、防衛は城塞騎士の本分ですもの」
耐える戦いは得意ですのよ、とミルナは誇らしげに胸を張り、陽光を受けて輝く海を思わせる盾を構える。
先程は一瞬、一体何事だろうかと思ったミャルナであったが、成程これは頼もしい味方だ。協力して事に当たろう。
二人は既に、例の製菓学校のエントランス前広場で待機、迎撃の構えを取っている。すると予知にあった通り、白婦人がこちらに向かってくるのが見えた。そしてその背後を取り、敵をこちらに押し込みつつ交戦を始めた味方の姿も見える。
と、その時。
白婦人の下半身の肉塊から、無数の光がぎらついた、ように見えた。
「……違う、あれは……!」
「『眼』ですわね……!!」
二人はすぐに察した。
あれは、産まれ落ちるジャグランツの眼なのだと。それが、敵意の眼差しを向けているのだと。
すぐさまずぶり、ぼとりと不愉快な音を立ててジャグランツが産まれ始める。あっと言う間に群れとなり、立ち上がり、睨め回す。
そして、ミャルナとミルナを獲物と定めて迫り来る!
「ココから先には行かせちゃダメってことね」
「ええ。城塞騎士の誇りに懸けて、絶対に通しませんわ!」
ミルナが盾を構え直す。
水晶のみならずダイヤモンドも用いた彼女の盾は、堅固ながらも透き通る水面の如き透明さ。盾越しの景色すらある程度見通せるほどで、敵の動きも視覚的に察知することが可能な優れものだ。
その盾で、正面からの全ての攻撃を受け止める光の障壁を展開したならば――どうなるかは明白だろう。
「この包囲網、決して抜けさせませんわよ」
校舎を背に、何匹たりとも抜かせぬと、不動の構えで防ぎ切る。視界の隅々まで目を光らせ、敵の動きと味方の状況に気を配る。
そんな彼女の元に、ふわりと柔らかい春の風が吹いた。
晩夏から秋に移り変わるこの季節に吹く筈のない風だ。それを思えばこの風がどういうものかはミルナにもすぐに理解出来た。
「白婦人はほぼ無敵らしいけど……ジャグランツはどうかし、らっ!」
煌めく花弁は桜花。
ミャルナが扇を広げて舞えば、花吹雪の舞い上がる。淡く温かな光がミルナに、集った猟兵達に力を与えていく。対して、ミルナの盾に防がれたジャグランツは悉く花の刃にその身を刻まれる。
「周りや自分への回復と、エリクシルへの攻撃が一緒にできるなら、もたせる事はできるかなってね」
「白婦人は相変わらず無傷ですが……これなら継戦は難しくなさそうですわね」
敵は未だ健在。しかし包囲から抜けることも叶わず。
ここで押し留め、耐え抜くのだ。
「美しくて美味しいスイーツは心の栄養、そんなスイーツを生み出す未来のパティシエさん達を絶対に護りきってみせますわ!」
「この世界に生きる人達の未来を奪わせたりなんか、絶対にしない。そんな|終焉《エンディング》は……ここで、|終焉《おわ》らせる!」
大成功
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栗花落・澪
自分の母校なら絶対守りたいよね
オーラ防御を纏い翼の空中戦
極力一定距離を保ちつつ
どこまで効くかはわからないけど
催眠術と誘惑を乗せた歌唱で気を引きつつ
思考と動きを鈍らせたり単調化狙い
獣なら耳はいいだろうし
ジャグランツ達にも聞いてくれればいいけど
それにより広場の方へ誘導しつつ彩音発動
歌詞を物理的な文字に、メロディは五線譜のロープとして具現化
歌い続けた分だけ量産し続けながら
言葉の物量で抑え込んだりロープで縛り動きを封じたり
目の前を飛ばしまくる事で視界を妨害
更に高速詠唱で氷魔法の属性攻撃、範囲攻撃
詠唱文も彩音の効果で実体化させつつ
凍結により足止めの重ね掛けで時間を稼ぎたい
僕に出来るのはこの程度だから
●
(「自分の母校なら絶対守りたいよね」)
ここは、彼にとって特別な場所なのだと。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は一度、背にした校舎を振り返った。
(「行こう」)
翼を広げて、飛び立った。
空からも囲い込み、逃しはしない。
(「どこまで効くかはわからないけど……」)
それでも。
届けばいい、その一心で歌い上げる。
朗々と、高らかに。音を、言の葉を繰り、空高く歌の雨を降らせた。
「……?……」
「グ、ァア……」
白婦人は澪を見上げて、首を傾げるばかり。
言葉に込めた、心を囚える力は奴に作用していない。だが、歌に気づいてこちらを見た。
そして、産み落とされるジャグランツには、効いている。頭を振り、何かに耐えるようにその動きを止めている。
(「よし、このまま……」)
敵の猛攻に曝されぬ距離を保ちながら、より広場の奥へと緩やかな滑空で後退し、ジャグランツの群れは導かれるようについてくる。白婦人も、その後をゆっくりと追う。
子供を見守る母親のようだと澪は思った。だが、母と子であることに違いはなくとも、奴らはそんな微笑ましい存在ではない。
「世界に溢れる鮮やかな音、生命の鼓動……見せてあげる!」
旋律は五線譜となり束ねられ、澪の手に。
言葉はそのまま蒼穹へと具現化し、包み込むようにジャグランツらへと向かっていった。
詩は紡ぐだけ物量を増し、壁となって敵を囲い込む。その周囲を澪はくるり、軽やかに旋回した。押し留める言葉ごと五線譜で敵を纏めて縛り上げ、その動きを封じた。
歌はまだ続いている。動きを封じた傍から押し寄せる波のようにして、更に自由と視界を奪っていく。
「僕に出来るのはこの程度……だけど」
大切なものを、奪われようとしている人の。
力になりたいという想いは、誰だって負けない!
「まだまだ行くよ」
歌は終わり、唱えるのは魔法の言葉。
それすらも包囲に加わり、拘束を強めて。
敵の姿が埋もれて見えなくなったそこに降る、吹雪。
具現化された歌ごと冷たく堅く、凍らせて。
その時
「!」
ぱきり、と。
氷の山が割れていく。
もっと歌を――そう考え口を開いた澪は、しかしすぐにその口を閉じる。
そこに残っていたのは、割れた氷と風化していく詩の名残だけ。
学び舎を脅かす白は、歌の中へと消えたのだ。澪は安堵の微笑みを浮かべて、今一度校舎を顧みる。
変わらずに、そこにあった。
大成功
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