エンドブレイカーの戦い⑪〜織成す護りの彩布
骸殻工房ガルシェン。其処は謎めいた超巨大獣の骨の中を中心に建設された、巨人達の都市国家。かつては「骸殻荒野」と称された地底都市であった其処は、現在、地上部に工房街が積み上げられて発展している。ガルシェンの地上部に建造された工房街には、多数の武器工房や防具工房が存在しているのだ。
●
「そんなガルシェンの鍛冶職人たる巨人殿達に、『バシュムの毒液に対抗できそうな装備』を開発してもらおうという話じゃよ」
都市の説明を軽く終えた、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は、集う面々にそう告げた。そうすることで後の戦いを有利に運ぶことが出来るだろう、と。しかし、ガルシェンの職人たちは、『身長8メートルの巨人』向けの武装しか作ったことがないとのことだ。
「故に、猟兵向けの武装を開発する為には、やはり其方らの協力が不可欠なのじゃよ」
己のこと、知己のこと、装備を纏う者のことを伝えつつ、職人たちの力添えをしてほしい、と彼女は告げる。
「そうしてな、妾がご案内する工房は、布製の武具や防具などを扱う工房なのじゃ」
金糸のような特殊な加工を施した、魔力と様々な効果を孕んだ糸――かの工房では魔金糸と呼んでいる、それを織り込んだ布を用いて、様々な属性や効果を得た布製の武具や防具の作成を得意としている。
工房主の『ベティさん』ら職人殿たちと協力して、其々の手に馴染む対毒の品を作り上げて欲しい、と彼女は微笑んだ。
「布製の物なら何でもいいと聞いている。武器として扇や布槍などを使う方もおられようし、魔書の装丁に使う表布を仕上げて貰うのもいい。防具として衣装を縫って貰うだとか、手袋やリボンといった小物も良さそうじゃな」
自分の為に作るもよし。誰かの護りとなる贈り物を作ってもいい。思い思いの一品を職人たちと作り上げて欲しいと彼女は言う。
「ベティ殿は常にインスピレーションをお求めとのことじゃから、こちらから提案したり、素材を持ってゆくのも良さそうよぅ」
対毒となる物質に限らず、想い入れの物だとか気に入りの素材を品を魔金糸の素材に加えたり、仕上げに添えたりなどするのもいい。
「そうそう、相談の際は作りたい物やそのものに籠める想いなど、分かりやすくもしかと伝えると良さそうよ。なにせ初めてお会いする職人殿じゃから、伝えるべきはしっかりとなさるとよろしいかと」
きっと籠る想いやこだわりなどにも耳傾けてくれるだろう、と。かの工場主を想い描きながら鈴蘭の少女は笑んだ。
「効果は勿論のこと、想いの籠る品というのは……何よりの護りと力になるじゃろうから」
自身にもそういうものがあるのだろう、あたたかな声音で彼女はそう添えた。
「さて、ではそろそろ向かうとしようか」
良き品との出逢いを、そして、この先の戦いに向けて、大切な護る力を得られますよう。穏やかに藤の瞳を細めた彼女はそう告げて、集う面々をガルシェンの工房へと送り出した。
●
「まあまあ、今日も素敵な色に仕上がってるわねぇ。綺麗よ。あなたはどんな形に仕上げてあげようかしら」
「親方! ベンジャミン親方! こっち、縫製終わりやした!」
「ちょっと! 『ベティさん』って呼びなっつってんでしょ、何年此処にいるのよアンタ!」
「ベティさーん、こっちの魔金糸、月の雫に漬け終わりましたー!」
「まー! 綺麗な月光色に染まったわね。ヴェールにしても綺麗だし、斧の飾り布にしてもきっと素敵だわぁ。迷っち~ゃう」
「親方~! ベンジャミン親方っ! お客様方がご到着ですぜ!」
「だからっ、私のことはベティさんって……あ~ら、猟兵の皆さんかしらっ」
――ようこそ、『ベティの彩布工房』へ!
工房の扉を開けた面々を、一つに纏めた銀糸の長髪をふわりと揺らし、優雅にフリルブラウスとジャケットを着こなした、屈強な巨人族の男性が両手を広げて出迎えた。
四ツ葉
初めまして、またはこんにちは。四ツ葉(よつば)と申します。
此の度は当オープニングをご覧頂き、有難うございます。
未熟者ではございますが、今回も精一杯、皆様の日々を彩るお手伝いが出来ましたら幸いです。
それでは、以下説明となります。
●シナリオ概要
『エンドブレイカーの戦い』、1章完結のシナリオです。
◎【プレイングボーナス】巨人の職人と一緒に、自分にぴったりの「対毒武装」を開発する。
★各章について。
(各章、能力地による選択肢は参考まで、行動はご自由にどうぞ!)
第1章『巨人の武器工房』
ベンジャミ……ベティさんの工房に布製武装を作りに行きましょう。布を用いたものであれば武器・防具・装飾品なんでもOKです。扇や魔書の装丁、布槍や衣装、リボンや手袋、その他にも余程のものでなければ対応可能です。自分用でも贈り物でも、お好みの用途で作成下さい。素材の持ち込みもOK。ベティさんの感性を刺激するものであれば、尚のこと喜んで魔金糸に変えて織り込んで作ってくれるでしょう。(星の欠片や魔魚の鱗、月花の雫など、思いつくものや想い入れあるものがあれば是非)
此方からのアイテム発行などは致しませんが、完成した品の扱いはどうぞご自由に。
●プレイングについて
オープニング公開直後より受付です。
今回は断章の追加はございませんので、公開後いつでもどうぞ。
〆につきましては、状況を見てタグ等でご連絡いたします。
プレイング送信前にご確認ください。
今回も、受付短め、少数対応を予定しております。
有難くも多く目に留めて頂けた場合、採用出来ない方が生じる可能性も多分にございます。全員描写の確約は出来ませんことを念頭に置いて、ご参加頂ければ幸いです。
また、その場合は先着順ではなく、筆走る方から順に、執筆可能期間内で出来る限りの描写、となりますので、ご了承頂けますよう、お願い申し上げます。
●その他
・同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)とID(f○○○○○)】又は【グループ名】のご記入お願いします。キャパの関係上、今回は1グループ最大『3名様』まででお願い致します。また、記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
・逆に、絶対に一人がいい。他人と組んでの描写は避けたい、と言う方は【絡み×】等分かるように記載して頂ければ、単独描写とさせて頂きます。記載ない場合は、組んだり組まなかったりです。
・グループ参加時は、返却日〆の日程が揃う様、AM8:31をボーダーに提出日を合わせて頂ければ大変助かります。
では、此処まで確認有難うございました。
皆様どうぞ、宜しくお願い致します。
第1章 日常
『巨人の武器工房』
|
POW : 巨人と一緒に鎚を振るい、武装を自作する
SPD : 武装を試し振りし、使い心地を確かめて調整する
WIZ : 職人と話し合い、武装の設計を考える
イラスト:純志
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リカルド・マスケラス
「なるほど〜、布製の装備っすか。なら、作ってもらいたいものがあるっすね」
そう話しかけるのは狐のお面。自身の所持品の『ブラックコート』を見せる
「こんな感じのコートを作って欲しいんすよ」
見本あった方がいいっすよね
「で、よければ自分を頭の横につけて欲しいっすよ」
とベティか担当してくれる巨人さんにお願いする。そうすることでリカルドが憑依するとともにUCの効果で憑依先の相手の技能を上昇させる。【裁縫】や【防具改造】の技能が高くなれば慣れないサイズの防具作成も上手く行くっすかね?
体感したことない技量を体験して疲れるかもしれないっすから、後でお茶でも淹れようっすかね。巨人サイズはどれくらい必要っすかね?
●
「なるほど〜、布製の装備っすか。なら、作ってもらいたいものがあるっすね」
軽快な語り口でそう口を開いたのは、濡羽色のコートを羽織った青髪の青年……の、頭部についた狐面。リカルド・マスケラス(希望の仮面・f12160)であった。
「あらまあ、お面な種族もいるのねぇ! やぁだ、勉強になるわぁ!」
彼を前にしたベティは、興味津々といった様子で大きな身を屈めつつ、リカルドへと向き合った。
「それでぇ、作って欲しいものって?」
ベティの問いに、こくりと頷いた彼は羽織っていたブラックコートを脱いで差し出した。
「こんな感じのコートを作って欲しいんすよ」
見本、あった方がいいっすよね、と。差出す其れを、大きな手……から伸ばした指にひらりと受け取ったベティは、器用に爪の先で持ち上げ広げしげしげと眺める。
「まあ、細かな所までしっかりと造られていい服ねぇ。ちょーっとサイズは小さいけど、安心なさい」
――ガルシェンの……この工房の面々は、腕利ばかりなのっ。
ぱちん、と、言葉の通り大きな瞳でウインクひとつ。自信たっぷりに伝えてみせるベティの様子に、リカルドは口許に笑み強いて。
「それはなによりっす。で、よければ自分を頭の横につけて欲しいっすよ」
「あなたを?」
問いに頷き、自身が職人に憑依することで相手の技能を向上させることが出来ると、リカルドは語る。その言葉に興味深い視線を向けながら、ベティは耳を傾けて。
「まあ、それは素敵な提案ね! でも私が身体を貸すと、工房の指揮をとれなくなっちゃうから……」
「そういうコトでしたら、あっしにやらせてくだせぇ!」
「あら、アンタがやってくれるの?」
「へい、話は聞いてやした。リカルドさん、あっしでよろしゅうござんすか」
「自分は問題ないっすよ、技能の底上げで慣れないサイズの作成もし易くなるといいっす」
「そいつぁ楽しみだ! よろしく頼んます!」
嬉々とした職人の手へとその身を預けたリカルドが彼の頭部に付けられたなら、憑依の力も相まって、元より細やかな作業を得意とする工房の職人技が冴えわたる。巨人族から見ればミニチュアサイズのコートも見本と貸されたそれに寸分たがわず仕上げられてゆく。一際細く仕上げられた魔金糸に籠められし対毒の効果も申し分ない。
憑依した彼の技量をリカルド自身も感じながら、同時に思うは己に身体を貸してくれた彼のこと。
「体感したことない技量を体験して疲れるかもしれないっすから、後でお茶でも淹れようっすかね」
あゝけれど。
「巨人サイズは……どれくらい必要っすかね?」
今日を機に、相手を知りゆくのは、巨人族だけでなく此方もであるようだ。そうして人々は、戦の中にても、生まれた縁を交わしてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
フィロメラ・アーティア
戦争の最中…とはいえ、
様々な都市国家に足を運べる
機会が頂けるのは嬉しいことですね
職人のベティさんは
綺麗な布を作られるそうで
きらきら ひらひら
ステキなものが沢山ですね
いっぱい目移りしてしまいそうです
フィロメラは剣を武器として扱うのですが
リボンの様に ひらりとしたものが
戦場を舞う姿もステキであると思います
さて どうしましょう?
工房の方々とも楽しく談笑まじえながら
花咲くように開く扇から
更にお花が舞うさまは
ステキな光景である様に思えましたので
ガルシェンにはお花や植物はありますか?
出来れば意匠として取り入れたくもあり
此のさき続いていく旅路にも
今日この日の楽しい時間を
思い出せますように、という祈りを込めて
●
巨人族の住む都市国家。己の立つ其処をくるりと見回し、フィロメラ・アーティア(花盗人・f33351)は、興味と関心の色に瞳を染めた。
「戦争の最中……とはいえ」
――様々な都市国家に足を運べる機会が頂けるのは、嬉しいことですね。
零した言の葉通り、嬉し気に細めた紫色が次に移すのは、彩布工房。一歩中へと歩み入れば、こちらもまた興味をそそるものばかり。
「職人のベティさんは、綺麗な布を作られるそうで」
そうして見回す工房内には、夜空に煌めき揺れる極光の如き薄布に、ひらり柔らかに波打てば蝶の意匠舞う刺繍飾り。他にも目を惹くような布があちらこちらに満ちている。
「ステキなものが沢山ですね、いっぱい目移りしてしまいそうです」
「まあ、ありがとう! 素敵な感想に嬉しくなっちゃうわぁ。あなたはどんなものがお好みなのかしら」
「はい、フィロメラは剣を武器として扱うのですが……」
そう告げて、自身の携える剣をそうっとベティに示して見せる。けれど、と。一度剣に向けた視線を周囲の布へと移して。
「リボンの様に、ひらりとしたものが戦場を舞う姿もステキであると思います」
「そうなのよぉ、殺伐とした戦場にこそ、華やかな彩って必要よねえ!」
うふふ、と楽しげに笑ったベティが、ぱちんと手を鳴らせば、気安いその様子にフィロメラも笑みを深めてから、ふと思案気に。
「さて、どうしましょう?」
迷うような仕草を見せたフィロメラに、ベティはにこりと笑ってみせて。
「迷うなら工房の皆と話してみたらどうかしら? きっと素敵な出会いがあると思うわぁ」
そんな彼からの提案を受け、工房内を見て回りながら、糸を染める職人や刺繍を担う者、様々な職人と談笑を交え歩む先、ふとフィロメラの気を引いたものがあった。それは、細く繊細な扇の骨に布を貼っている職人の手元を見た時だ。完成した扇が彼の手でゆらめくその様が、綻ぶ花に見えたから。
これだと浮かべば、その爪先を職人の元へと向かわせる。想い描いたその品を形にする前に、彼女には聞きたいことが一つあった。
「ガルシェンにはお花や植物はありますか?」
出来れば意匠として取り入れたくもあるのだと、そう告げた彼女に一人の職人が口を開く。曰く、地上に街を構えてから植物は身近になったけれど、自分には特に印象深いものがある、と。地底や暗い中でこそ、光抱き咲く花のことをフィロメラへは語り聴く。
そうして生まれたのは、嫋やかに花咲くように開く扇を振えば、浄化の光燈す花舞う逸品。舞う花はこの地に咲く灯花を模して。手にしたフィロメラは形となったその花扇を胸に抱く。此のさき続いていく旅路にも、今日この日の楽しい時間を思い出せますようにと、祈りも込めて。
大成功
🔵🔵🔵
レーヴィス・アイゼナッハ
戦場に出るのはまだちょっと恐……不安だから
ここなら僕でも役に立てるかもって思って来たんだけど…
街大きすぎじゃない?
ここを一人で歩くのも、勇気がいるような…
…ええい、もう行っちゃえ!
野太い声のする方へなんとなく歩いて工房へ
大分個性的な店主みたいだけど
布を扱ってるなら丁度いい
毒蛇と戦うために、毒を弾くような装備が欲しいの
多分…マント、みたいなのがいいかな
多分っていうのは、僕が使うわけじゃないから
腐れ縁のケルベロスに持たせようと思って
どうせろくな対策がなくても突っ込んでっちゃう奴だからさ
元々裏方仕事が僕の役目だし
こういう時くらい頑張るよ
え…デザイン?
…(自信ないから)お任せ!
※アドリブ・アレンジ歓迎
●
ふぅ、と緊張した面持ちでこの地に立った、レーヴィス・アイゼナッハ(雪割りの翼・f40914)は、猟兵として名を連ねてまだ日が浅い。世を取り巻く大きな戦も、猟兵としては初めてのこと。
――戦場に出るのはまだちょっと恐……不安だから。
「ここなら僕でも役に立てるかもって、思って、来たんだけど……」
見回すレーヴィスの眸に映るは巨大な街並み。巨人達の住む街の建物はやはり大きく、ともすれば飲み込まれそうな景の中、行き交う巨人族の足がすぐ近くを踏みしめるたび、鼓動が跳ねる。
「街、大きすぎじゃない? ここを一人で歩くのも、勇気がいるような……」
どきどきと、鼓動がうるさく感じるものの、此処に立っている時点で、自分は一歩踏み出しているのだ。勇気は既に持ち得ている。己を鼓舞するよう、ふるりと一度頭を振れば、青が前を見据えた。
「……ええい、もう行っちゃえ!」
踏み出し往く先。何やら野太い声のする方へと歩いたレーヴィスが辿り着いたのは、彩布工房。開いた扉を覗けば、既に中にいる猟兵や職人たちと会話するベティさんの姿が見えた。そうして、工房を満たすのは数多の布。
「大分個性的な店主みたいだけど、布を扱ってるなら丁度いい」
「あーら、お褒めに預かり光栄だわ~! どんなのが欲しいの?」
突然目の前に現れた巨体――ベティさんに、わっ、と、目を丸くしながらも、咳払いひとつ。向かい合ったレーヴィスは、毒蛇と戦うために、毒を弾くような装備が欲しいのだと告げた。
「多分……マント、みたいなのがいいかな」
「たぶん?」
「あ、多分っていうのは、僕が使うわけじゃないから」
――腐れ縁のケルベロスに、持たせようと思って。
そう告げたレーヴィスの言葉に、ベティの瞳が煌めいたことに彼は気付いていない。
「どうせろくな対策がなくても突っ込んでっちゃう奴だからさ」
「まーっ! そうなのね。その人の為に。いいじゃなーい!」
「元々裏方仕事が僕の役目だし、こういう時くらい頑張るよ」
「ああ、腐れ縁、いい響きだわぁ。ベティさんも頑張っちゃう! 色々聞かせて頂〜戴っ」
噛み合っているのかいないのか。そんな会話を暫し交わし、どんなデザインがいいの、と問う彼に、レーヴィスはぱちりと瞬いて。
「え……デザイン?」
暫し、固まるように言葉を切ったレーヴィスは、すっと真面目な顔向けて。とっておきの呪文を唱えた。そうそれは。
――お任せ!
任されたわ~! と胸を叩いたベティから後に彼へ手渡されるのは、青き輝石の留め具が光る、あたたかな土色をした民族風のマント。隅には赤橙色の魔金糸で凌霄花の刺繍が施され、彼より聞いたサイズを一枚、そして更に小さな匣竜用が、もう一枚。何方にも確と籠るのは、対毒の加護と、|無事を願う《レーヴィスの》想いだ。
大成功
🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
こんにちはですー! みなさんおっきいですね!
くぬぎにちょうどいいサイズの武装も作ってもらえるですか?
くぬぎ、毒にはつよいですけど、そなえあればうれいなしってやつです。ご主人が言ってたです
んーと、くぬぎ、ぼうしがほしいですよ
どんなかたちのぼうしでも好きですけど、どうせならリボンとかつけて、いっぱいかわいくしてほしいですー!
好きなものですか? くぬぎは虫さんが好きです!
いつもいっしょに戦ってくれるスズメバチさんは特に好きです!
よろしくおねがいしますですー!
●
「こんにちはですー! みなさんおっきいですね!」
大きな大きな工房に、小柄な体躯でぴょんと跳ねた、三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)の元気な声が響き渡る。
「くぬぎにちょうどいいサイズの武装も、作ってもらえるですか?」
どうでしょう、と。こてりと首を傾げて問うくぬぎの視線に合わせるように、そのふわりとした体を手上に招いたベティがにこやかに頷いて。
「もっちろんよぉ! 寸法が分かれば、どんなサイズだってお・手・の・物っ」
ぱちん、と、音すら聞こえるような大きなウインクをひとつ飛ばして、ベティはくぬぎに笑って告げる。
「くぬぎ、毒にはつよいですけど、そなえあればうれいなしってやつです」
――ご主人が言ってたです。
ぐっと握り拳を作ってそう告げるくぬぎの姿と言の葉に、素敵なご主人様ね、と微笑んだベティが、どんなものを作りたいのかと彼女に問う。
「んーと、くぬぎ、ぼうしがほしいですよ」
「あら、帽子? いいわねぇ、今被っているのも、と~っても素敵よぉ」
「ありがとうですー! どんなかたちのぼうしでも好きですけど……」
――どうせならリボンとかつけて、いっぱいかわいくしてほしいですー!
ぴょこんと跳ねて告げるくぬぎの様子は、愛らしさに満ちている。何を隠そうベティは可愛いものに目がないひとだ。んまーっ、と頬に手を当て身を揺らしたなら、にこにこゆるゆる頬緩め。
「とっておきに、キュートに、仕上げてあげるわぁ! ところであなたの好きなものってあるかしら?」
好きなものですか? と、首を傾げるくぬぎへと笑顔で頷くベティの様子を受けて、ほんの少し考えはそぶりを見せた彼女はパッと瞳を輝かせて告げる。
「くぬぎは虫さんが好きです!」
「あらぁ、そうなのぉ?」
「ですーっ! いつもいっしょに戦ってくれるスズメバチさんは特に好きです!」
「まぁ~、それはとっても大事な虫さんねっ、帽子にもしっかり一緒に居て貰わなくっちゃ」
にっこりと笑んだベティとくぬぎが頷きあって、相談の末に出来上がったのは、秋めく色した総柄小花の布製カンカン帽。プリムの縁取りはレースで愛らしく、あたたかな夕陽色の帯には、キラリ煌めく金色の魔金糸でスズメバチの刺繍が施された花めくロゼットが飾られて、蜜色の長いリボンが揺れ靡く。
温かないろのその帽子は、くぬぎが元気に駆け行く先で毒が陰りを生まぬよう、笑顔の花が尚も咲き誇りゆくように。スズメバチと共に添う加護が、彼女を護る一品だ。
大成功
🔵🔵🔵
シリルーン・アーンスランド
布で最上の武具を作られるご様子を近く見て
叶うならばわたくしもこの身に纏いお力得られたらと参りました
工房へお邪魔を…あら
お弟子様方へ激を飛ばしておいでですね
全く違う方を同じに見るのは良くないかも知れませぬが…
ベティさまを拝見致しますと、懐かしい方を思い出しますの
綺麗なものがお好きで、とてもご注文多くとても勇敢で
そして
わたくし達をお助け下さった大切な『親友』を
…いけません、今は思い出を辿る時間ではありませぬ
ご挨拶をし、持参した着物の反物を幾つもお渡しして
お好きに誂えて頂くようにお話を致します
女性用男性用いずれもベティさまのお手になれば
必ず美しく良い武具となりましょう
「どうぞ、宜しくお願い致します」
●
彩布工房の中で織られ編まれ生まれゆく、最上の武具を目の前にして、シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は感嘆の吐息を零した。
「このようにして、数多の武具が生まれゆくのですね」
工房主であるベティを始め職人たちの技巧に、鮮やかに目を引く品の数々に心惹かれ。
――叶うならば、わたくしもこの身に纏いお力得られたら。
そう抱く儘、その願いを伝えるべく、工房内で指揮を執るベティの元へとシリルーンは歩みを進めた。そんな彼女の耳に飛び込んできたのは、職人たちへと向けたベティの声。
「ちょっと、そこ! 小さい分、いつもより繊細に!」
「……あら、お弟子様方へ激を飛ばしておいでですね」
「あらぁ、つい熱くなっちゃって……煩かったかしら?」
「いえ、それも大切なことです。それだけ真摯に向き合われているのだと」
はっと顔を向けるベティへと、穏やかに告げたシリルーンは、それに、と添えて続けた。
「全く違う方を同じに見るのは良くないかも知れませぬが……」
――ベティさまを拝見致しますと、懐かしい方を思い出しますの。
そう紡ぐシリルーンが口許に浮かべるのは、心に刻まれる記憶を紐解く笑み。
「あなたの懐かしい人を?」
「ええ、綺麗なものがお好きで、とてもご注文多くとても勇敢で、そして――」
――わたくし達をお助け下さった、大切な『親友』を。
そっと、その姿を瞼裏に描くよに、静かに目を伏せたシリルーンの声音は何処までもあたたかみを帯びていて。その『親友』が、その想い出が、いかに大切なものかを感じさせた。それを感じているからだろうか、ベティも言葉を挟むことなく、穏やかに細めた瞳で彼女のことを見守っている。
「……いけません、今は思い出を辿る時間ではありませぬ」
「あらぁ、いいのよ。思い出に浸る時間も、ものづくりには大事なんだから」
「ありがとうございます。ですがこちらに参った目的も、為さねばなりませんから」
こちらを、と告げて取り出したのは、彼女が持参した着物の反物。女性用も男性用も交えた様々な素材や柄のものがとりどりと揃えられていた。
「まあ、こんなに? 反物というのだったかしら。これも……この生地も素敵だわぁ!」
「お好きに誂えて下さい。ベティさまのお手になれば、必ず美しく良い武具になりましょう」
キラキラと瞳を輝かせ、職人魂に火のつく様を覗かせるベティにシリルーンは笑み浮べ、どうぞ、宜しくお願い致します、と添えた。
彼女からの反物はベティら職人たちの手によって其々に武具へと姿を変えていき――その中でシリルーンの手には、青地の波めく反物に藤色の魔金糸で風に舞う花模様が刺繍された和風のリボンが、見本の舵輪に結ばれ渡された。そうして――『護』の一字を刻んだ色違いの御守りも、ふたつ。
大成功
🔵🔵🔵
ティターニア・グッドフェロー
■WIZ
対毒の武装、ですか
私のマスターならば、これでもか!なレベルの布地獄・フリル地獄のドレス
を模した衣装、というか武装を作る所なんでしょうけれどもね
(にっこり)
それじゃ、私は普段はケープを着けていますけれども、身体覆うくらいの
マントをつくっていただこうかしら?
今のケープは赤、ですが、色はお任せで
マスター好みのフリル地獄・リボン地獄も悪くはないかもね
(このあたりは、ベティさんと話を詰め、お任せとします)
あとは脚が素足なので足裏保護用のプロテクション・ブーツも欲しいかな?
丁度「ゲートの先の世界」のTVで警察犬特集をやってて、それを着用してる番組を見たので
どうせなら、可愛いのをお願いしようかしら?
●
数多の布に彩られた工房内。並ぶ武具に目を向けて、ティターニア・グッドフェロー(Mature Charm・f40800)は、白と赤の混ざる翼をふわりと一度羽搏かせた。
「対毒の武装、ですか」
そう呟き黒瞳が映すは、様々な防具の並ぶ衣装棚。装飾がシンプルな機動性を重視したものもあれば、舞台衣装かと思う程に凝ったものも見受けられ、それを目にすれば自ずとマスターの姿が目に浮かぶ。
「私のマスターならば、これでもか! なレベルの布地獄・フリル地獄のドレスを模した衣装、というか武装を作る所なんでしょうけれどもね」
告げては浮かぶ口許の笑み。己の纏うケープや装飾品にも彼女の趣味が現れていて。つと触れた赤いケープをふわりと揺らし、さて、とその身を翻した。
「まぁ、あなたはドラゴンなのかしら、色んな種族の武具に携われて私も楽しいわぁ!」
あなたはどんなものがいい? と、笑み問うベティを前に、にこりと笑ったティターニアが尾を揺らす。
「私は普段はケープを着けていますけれども……」
――身体覆うくらいのマントをつくっていただこうかしら?
そう告げてベティの前でくるりと宙を舞えば、身に付けた赤いケープがふわりと揺れて、尾に結んだ愛らしいリボンも彼女を追って軌跡を描く。
「うふふ、とっても素敵なケープですもの。マントも可愛く仕上げるほうがいいかしら」
赤がお好み? と、問うベティに、ティターニアは軽く頭を振って。
「今のケープは赤、ですが、色はお任せで。デザインは――」
続けようとした言葉を一度止め、思案するよに宙を見た黒色の瞳が、柔らかな弧を描いてベティを見る。小さく一つ笑ったなら、結ぶリボンごと尾を抱えて。
――マスター好みのフリル地獄・リボン地獄も悪くはないかもね。
そう告げたティターニアの言葉に、ベティも笑みを深めて頷き、ならばとふたりでデザインを詰めてゆく。くるりと巻いた赤い毛先が映えるよう、そして折角なので今のケープとは異なる印象にと、夜空めいた煌めき纏う濃藍色の生地に、流れ星の涙と呼ばれる鉱石から作られた銀色の魔金糸で編んだレースが重なる。頭部を護るフードの先には大きな星色のリボンが結ばれることとなった。
「もう一つ、お願いできる?」
「ええ、もちろん! 他に欲しいものがあるのかしら」
「私、足が素足でしょう? だから、足裏保護用のプロテクション・ブーツも欲しいかな?」
丁度『ゲートの先の世界』のTVで警察犬特集をやっていて、それを着用してる番組を見たのだと、自分の見たそれをなるべく伝わりやすいようベティに告げる。素敵ね、と両手を鳴らしたベティが用意したのは、マントと同色の夜空めくブーツ。
神秘な夜を纏い翔ける彼女には、毒の魔の手も届かぬだろう。
大成功
🔵🔵🔵
紫乃・レイチェル
よろしくお願いしますベティさん。
凄い職人さんと聞いているのですごくワクワクします。
えっと、幾つか案があるので相談させて貰えないでしょうか。
①、TW3時の城塞騎士のアビリティ「ビクトリーフラッグ」の物理版として旗槍を作成。別に槍を用意するか、所持してるハルバードにつけるか。
②、自分のマントをモチーフにメイガス用のマント防具を用意する。
③、②の前にまず自分のマントを対毒用装備として仕立て直して貰う。
どれを作って貰っても大切に扱います。
よろしくお願いします。
●
活気づく工房内で、先の猟兵との会話を終えたベティへと、紫乃・レイチェル(アヴァルダーナの見習い騎士・f39098)が、歩みを寄せる。
「あら、いらっしゃい! 次はあなたかしら?」
「よろしくお願いしますベティさん。凄い職人さんと聞いているのですごくワクワクします」
「まーっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない? ベティさん張り切っちゃうわよっ」
うふふ、と、笑ったベティへと、レイチェルもにこやかな笑みを浮かべて、実はご相談があるのです、と申し出た。
「で、相談って何かしら」
「えっと、幾つか案があるので相談させて貰えないでしょうか。」
ベティに促され、工房内の製図机に向かい、ベティは椅子に、レイチェルは机に置かれたクッション――巨人族の布製コースターである。に座り、言葉を交わす。
レイチェルの示した案は三つだ。ひとつ。新たに作成する旗槍の旗部分にこの工房の生地を使って対毒の装備とする、そのうち、槍から新調するか、愛用のハルバードに付けるかも悩んでいるという。ふたつ。自分の愛用するマントをモチーフに、メイガス用の対毒マントを用意する。みっつ。自身のマントを対毒装備として仕立て直す。
流石にすべては欲張り過ぎだろう、と。このうちの一つを、此度の機会に作りたいのだと彼女は告げた。
「どれを作って貰っても大切に扱います。よろしくお願いします」
「そうねぇ。時間があれば、全~部、任せて~! って言えるんだけど、急ぎの仕事だものね」
他のも機会があったら、いつでも訪ねてきて頂戴、と。添えながら、今作るのなら、と思案気に語る。
「私は、あなたの|愛機《メイガス》に合う、揃いのマントをおススメするわ」
メイガスそのものは勿論のこと、其処に乗り込むあなたを護るものにもなるし、と、続けながら、そ・れ・に、と笑みを深めたベティは言う。
「お揃いって、素敵じゃな~い! 共に戦う相棒がお揃いを付けてる、それだけで士気も上がるものよっ」
あなたの愛用のマントとそっくり同じに、護りの力もマシマシで仕立ててあげるっ。と言いながら、大きな瞳でウインクを送ったベティが、レイチェルのマントとサイズ以外は全く同じデザインの、メイガス用の対毒マントを手に戻ってくるのは、もう暫し後。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
一つ一つに拘りを感じられる、美しい糸に布だ……これらから対毒武装が作られるというわけだね
さて、如何なる武装にしようか
対毒、守るものならば私は愛しき巫女へ贈るものを仕立てたい
愛しき桜が、毒に侵されることのないように
素材にはベティの工房の他にも、禍津神たる私の祈りと力を込めた組紐を合わせたい
あと、破魔の桜鈴かな
どんな厄をも跳ね除けるだろう
ホムラ?そうか
ホムラの尾羽を共に飾るのもいいね
再誕の力すら宿るだろう
ちゅんちゅん自慢げなホムラを撫でてから、作るのはこれだと決める
美しい春暁の彩をうつした優雅な扇にしよう!
魔金の糸で霞雲と桜を刺繍して、美しく仕上げる
念を神力を込め作る
どんな毒厄をも吹き飛ばす扇だ!
●
彩布工房を満たす魔金糸や、織り編みあげられた数多の布たち。それらを、ほう、と眺めつつ、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は、その一つに手を伸ばした。
「一つ一つに拘りを感じられる、美しい糸に布だ……これらから、対毒武装が作られるというわけだね」
絹のよな衣を手の上滑らせたなら、大切な人の顔が浮かぶ。自ずと笑みを浮かべながら、さて、と視線を周囲へ移した。
「さて、如何なる武装にしようか」
此度この地で仕立てるのは、対毒の品。そう、守るものならば、私は愛しき巫女へ贈るものを仕立てたい、とカムイは裡に抱く。
――愛しき桜が、毒に侵されることのないように。
温かな想いをそうと抱え、くるりと周囲を見渡せば、対毒の効果を持つ魔金糸やそこに加える素材は様々とあるようだ。けれど。
「工房の素材の他に、禍津神たる私の祈りと力を込めた組紐を合わせたい」
そう、愛しき桜を守るもの、そこには他でもない『カムイ』の加護を籠めたいと願う。想いを籠めて、祈りを籠めて、唄うように紡ぐ響きに合わせ、カムイの《いと》が具現する。それは、愛しき桜の為の《いと》。
「あと、破魔の桜鈴かな。どんな厄をも跳ね除けるだろう」
ふふ、と笑みを浮かべたカムイを、つんと横から引くものがある。ん、と視線を向ければそこには、自分のことも忘れないで欲しいと言わんばかりの、緋けき鳥。愛らしい姿で羽搏きながら、ぴぃ、と鳴く不死烏の雛が尾羽をひらりと揺らして見せた。
――ホムラ?
「そうか、ホムラの尾羽を共に飾るのもいいね」
|ぴぃ、ちゅん《そのとおり》。と、得意げに舞うホムラもまた、護りたい想いはカムイと同じ。愛らしい嘴で、すっと尾羽を引けば鮮やかな燈色した長い尾羽がカムイの手に乗せられる。美しい模様の浮かぶ尾羽は雛の其れであれど、十分に神秘的な様をしていた。
「ああ、きっと、再誕の力すら宿るだろう」
笑むカムイの言葉に、ちゅん、ちゅんと自慢げに鳴くホムラの頭を柔く撫で、改めて素材の一つ一つを思い浮かべれば、辿り着いた品は。
「ああ、そうだ。作るのはこれに決めた」
――美しい春暁の彩をうつした優雅な扇にしよう!
頭に描いたその姿が鮮明となれば、カムイの表情も晴れやかに先綻ぶようで。ベティや職人の力も借りながら、扇の形を作ったならば、張られた春暁の繊布へと魔金の糸で霞雲と桜を刺繍を施すのはカムイの指先。ひと針ひと針に念を神力を込め、同時に其処に想いをも乗せて籠めゆくように。己の巫女の手に相応しきよう、美しく仕上げてゆく。
「噫、できた!」
――どんな毒厄をも吹き飛ばす扇だ!
完成した扇を両の手で抱え、カムイはホムラと笑み合った。あゝ、今すぐにでも贈りたい。手にした姿はさぞ――と。逸る気持ちを、煌めく瞳に乗せながら。
大成功
🔵🔵🔵
堺・晃
【毒氷】
貴方は毒で自身を強化できるんでしょう
対毒武器など不要では?
…すみません、ちょっと意地悪でしたね
ベティさんには防具をお願いいたしましょうか
着用し慣れているのはロングコートの類…
毒対策であれば、マスク付きでもいいのかもしれませんね
デザインには拘りはありませんが
ナイフや銃器を扱うので、腕は動かしやすいようにお願いします
特別な思い入れがあるわけではなくて申し訳ないですが…
こちらも毒を扱う身として、負けたくはありませんからね
それと…あまり崇高な理由では無くて申し訳ないですが
母へ…家族への、贖罪をしたいんです
そのためには、例え関わりの無い世界でも…見捨てたくはない
守るための一助を…お願いできますか
シャオ・フィルナート
【毒氷】
……確かに、俺は毒素を取り込めば取り込むほど…強くなれる体質だけど
毒にも色々種類がある
自分の限界もわからないし…
不確定な要素のために確定している有効策を捨てる理由にはならない
あんたも…わかってるくせに
俺も、基本は堺さんと同じでいい
使う戦法は然程変わらないから…ロングコート…
あぁ、でも…俺の場合、青薔薇の要素は…常に入れてる
刺繍とかで…
あと…出来れば、でいいけど
氷使うから、濡れたり凍っても問題無い作りだと…助かるかな…
俺の冷気…強すぎて
触れるもの全部、凍らせちゃうから…
思い入れとかは…よく、わからない…
感情…今、勉強中で……
でも…ここの糸、綺麗だと…思ったから……
作って、ほしい……
●
工房内のあちこちで、対毒の品が作られてゆく。その様を眺めながら、堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)は、ともに赴いた、シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)へと、口を開いた。
「貴方は毒で自身を強化できるんでしょう。対毒武器など不要では?」
そう、己の知る彼の特性は毒を力と変えるもの。チラと視線を向けながら、晃は問いを音に乗せてみる。その問いと視線を受けて、彼の姿を藍色に映したシャオは、一拍の後に口を開く。
「……確かに、俺は毒素を取り込めば取り込むほど……強くなれる体質だけど」
けれども、一言に毒と言っても様々な種類のあるものだ、己の限界もまだまだ分かってはいない。故にこそ、不確定な要素のために確定している有効策を捨てる理由にはならない、と。そう語った後に、柔く瞼を伏せて、ふう、と一息。一度切った視線を再び彼へと向けたなら。
――あんたも……わかってるくせに。
と、さらり言ってのけた。
「……すみません、ちょっと意地悪でしたね」
その言葉を、視線を受けて、眉を下げながら小さく口許に笑みを敷いた晃は、軽く肩を竦め告げた後。ふたりは連れ立ってベティさんの元へと歩み寄った。
「あーら、いらっしゃい、次はあなた達ね? さて、どんなものがいいかしら?」
話を聞かせて頂戴、と。にこやかに問いかけてくるベティさんに、先ずは自分がと一歩前に出た晃が告げる。
「僕は、防具をお願いいたしましょうか。着用し慣れているのはロングコートの類……」
ですが、毒対策であれば、マスク付きでもいいのかもしれませんね、と語る言葉に、ベティは、ふむふむと耳を傾ける。
「なるほどねぇ、どんなデザインがいい、とかはある?」
問いかけるベティの言葉に、ほんの少し考えるそぶりを見せながら、しかしすぐに告げるのは、デザインには拘りはありません、との端的な言葉。
「ですが、ナイフや銃器を扱うので、腕は動かしやすいようにお願いします」
「機動性重視ってコトね? まかせて頂戴っ!」
「品への特別な思い入れがあるわけではなくて、申し訳ないですが……」
――こちらも毒を扱う身として、負けたくはありませんからね。
そう告げる晃の瞳に、同じ土俵で負けるわけにはいかないと、矜持を抱く色を見て、ベティは笑みを一層深め。
「物への思い入れだけが全てじゃないのよぉ? あなたのその意志も、十分、力になるわぁ」
ばちんっ、と、大きな目でウインクをしたベティが笑う。そんな彼の言葉を受けて、口元に笑みを浮かべた晃が、それと……と、紡ぎ語る。
「あまり崇高な理由では無くて申し訳ないですが、母へ……家族への、贖罪をしたいんです」
贖罪? と、返すベティの言葉には頷くに留め、晃は胸の裡に抱く想いを言葉に変える。
「そのためには、例え関わりの無い世界でも……見捨てたくはない」
――守るための一助を……お願いできますか。
そう紡ぐ晃の真摯な言の葉に、もちろんよ、と胸を叩いてベティは応えた。
「それで、そちらのあなたは?」
晃と交わしていた言葉と視線を、ふいに己へと向けられたシャオは、ゆっくりと自らの視線をベティに合わせ口を開く。
「俺も、基本は堺さんと同じでいい。使う戦法は然程変わらないから……ロングコート……」
同じ感じね、と、頷き告げるベティへと、あぁ、でも……と、言葉を添えて。
――俺の場合、青薔薇の要素は……常に入れてる。
刺繍とかで、と。自身にとって決まりごとのようになっている其れを言添えた。
「あらぁ、青薔薇、いいじゃなーいっ、あなたにとってもお似合いだわっ」
何か思い入れのある花なのかしら、と、問うベティに、ほんの少し困ったように眉を動かしたシャオは、たどたどしく口を開いた。
「思い入れとかは……よく、わからない……感情……今、勉強中で……」
ぽつり、ぽつりと、けれども伝えんとして紡ぐ彼の言葉を、ベティは言葉挟むことなく、穏やかに細めた目で耳を傾けている。
「でも……ここの糸、綺麗だと……思ったから……作って、ほしい……」
そう告げ終えたシャオへと、満面の笑みを向けたベティは、任せてー! と、両の手を大きく打ち鳴らす。そんなベティの様子に、シャオは瞬きをひとつふたつ。後にふと思い出したように再び口を開いて。
「あと……出来れば、でいいけど」
「あ~ら、なぁに?」
「氷使うから、濡れたり凍っても問題無い作りだと……助かるかな……」
己の使う冷気が強すぎて、触れるものすべてを凍らせてしまうのだ、と、告げたシャオの言葉にも興味深げな視線を向けて、氷の耐性が強い物か、そもそもの素材に氷属性の物を混ぜてしまいましょうか、と楽し気にメモを取っている。
「オーケーよっ、ふたりのコート承ったわ! 完成まで待ってて~!」
と、機嫌よく職人への指示を飛ばしに行ったベティが去って暫くの後、晃の手には宵色をした対毒の魔金糸を織り込んだロングコート。腕周りの動き易さは勿論のこと、隠しポケットが多く施され、毒や暗器を仕込むにも便利な作り。襟は大きく作られ口許を隠せばマスクの代わりにもなる。シャオに渡されたコートも作りは似ているが、氷への耐性強めた魔金糸による青薔薇が、襟にワンポイントの刺繍とコートの裏地の布に施されている。
晃とシャオ、其々の為の対毒装備が完成だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨河・知香
毒だけで最強って事はとんでもなく範囲が広いとか威力が強いとかあるんだろうねえ。
どれだけ実現できるか分からないけど頑張らないとね!
巨人のベティって言うんだね。今回は宜しく頼むよ!
ベティさんに依頼するのはストール。
風の魔力をたっぷり含んだ魔金糸で空気を清らかに保つイメージになるかねえ。
…月の雫って言うのかい、これは。いい色をしてるねえ。
そうだ、ここにアクエリオの水神様に加護授けて貰った水があるんだけど、最後の仕上げにこれを使ってみるのはどうだい?
ふわりと包み込んで着ている人を悪いものから守るような…毒も浄化して阻むような。
そんな願いを込めて、実際に付けたりして調整してみるよ。
※アドリブ絡み等お任せ
●
工房で作られてゆく対毒装備を眺めつつ、雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)が、思い馳せるのはこの装備を手に対峙するバシュムの存在。
「毒だけで最強って事は、とんでもなく範囲が広いとか威力が強いとかあるんだろうねえ」
それに対抗する為の手段の一つとして、己が、そしてここに集う皆々が懸命に開発に勤しんでいる。其処に籠る熱い想いをも感じながら、知香はふわりとした白い手をぎゅ、と握りしめた。
――どれだけ実現できるか分からないけど、頑張らないとね!
明るくそう気持ちを固めたなら、赴く先は工房主であるベティの所。
「巨人のベティって言うんだね。今回は宜しく頼むよ!」
「あらまあ、素敵な毛並みの白熊さんねぇ! こちらこそ宜しくお願いするわ」
気風の良い気質が合うと感じたのか、ベティも明るい笑みを浮かべて知香に笑み告げた。どんな装備がいいのかと問うベティへと、依頼したいものはストールだと知香は語る。
「風の魔力をたっぷり含んだ魔金糸で、空気を清らかに保つイメージになるかねえ」
「毒を風の膜で阻みながら、内部を浄化する感じかしら? いいわね」
それなら、この糸が合うだろうかと、素材棚をベティは探る。そのすぐ傍、小壜――巨人サイズの為、知香からすればそれでも大きいものであったが。に、満たされた淡く光る液体が知香の目を引く。
「ああ、気になる? それ、月の雫よ」
「……月の雫って言うのかい、これは。いい色をしてるねえ」
「でしょ? 月の魔力を帯びてるから浄化にも――それも使いましょ!」
にこりと笑みを向けたベティが小瓶を摘まみ、月の雫を移した器に風の魔金糸をひたりと浸した。その様子を興味深げに見ていた知香が、ふと思い出したように己の荷を探る。
「そうだ、ここにアクエリオの水神様に加護授けて貰った水があるんだけど」
「まー! アクエリオの!?」
「あははっ、いい喰いつきっぷりだね。最後の仕上げにこれを使ってみるのはどうだい?」
「いいじゃなーい! それで行きましょっ」
彼女から受け取る素材をうっとりとした目で眺めるベティを知香も楽しげに眺め笑って。
「こう、ふわりと包み込んで、着ている人を悪いものから守るような……毒も浄化して阻むような」
そんなストールになればいい。と、願いを込めて、知香は制作の場に立ち合い共に開発を進めてゆく。ストールを選んだのは、自分が付けるためだけでなく、他の人たちも纏いやすいものになるように、との思いから。一度開発が上手くいけば、此処の職人たちなら量産も叶うだろう、と。
そうして出来上がったのは、銀月のよな淡い光纏った、柔らかなストール。魔金糸が持つ風の魔力が身を包み、水の加護で強めた浄化の力が毒を阻む。知香の願い描いた優しき対毒の品が、此処に生まれた。
大成功
🔵🔵🔵
蓮見・双良
【空環】
後先も使えるよう
毒以外の耐性もと思って
杜環子さんは何を作りますか?
僕はオーガンジー風の薄い布にしようかと
色は…やっぱり白で
縁はレースで飾って清楚でも華やかに
…え?あはは、勿論杜環子さん用ですよ?
ふふ、ありがとうございます
あなたと離れるつもりはありませんが
僕が居ない時の有事用に
あの…内在的な力を籠められる宝石、みたいな物ってありますか?
できれば青い…夏空の様な色の
ベティさんに尋ね
それに僕の夢の力を注いで星空の様に布に鏤め
纏う人への全ての攻撃を夢幻に還す魔法をかけましょう
完成品は杜環子さんの頭へ
花嫁さんみたいで綺麗ですよ
ふふ、可愛い
僕にも?ありがとうございます
一生大事にしますね
幸せに笑む
壽春・杜環子
【空環】
なるほど、後先にも使える物
そらくんが後先にも使える物…!
むむむ、む?
なるほど、すとーるですの?
違いますの?でもそらくんが使っても素敵そうでしてよ!
あらあら頼もしいお方だこと
ふふふ!
そうねぇ、わたくしどうしましょう
…夜空のような貴方
星瞬くことを知る貴方へ蚕糸の羽織を
胸元に大粒の蛋白石と真珠星を刺繍して、襟や裾にも小粒の蛋白石と真珠を散らし夜空の外套を仕上げて
ベティ様へ、刺繍した石に身代わりの呪い、布自体に異常無効の呪いを込めらえれないかお尋ねして
頭に掛けられたヴェールにきょとんとするも、言葉に頬染めて
こ、これを戦場で!?そんな、もうっ
わたくしからは、これを…
差し出すのは畳んだ夜空の外套を
●
工房内に満ちた糸や布、そして様々な素材を、蓮見・双良(夏暁・f35515)は、熱心に眺めている。その姿を隣添う、壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)が、きょとりと眺め問う。
「そらくん、何かお探し?」
「後先も使えるよう、毒以外の耐性もと思って」
そう笑みながら、何かいいものが浮かぶかと眺めていたのだと、彼は言う。その答えに、なるほど、後先にも使える物、と、杜環子も彼に倣ってその瞳をくるりと巡らせた。
一通り工房内を眺め巡った頃合いに、隣の彼女へと双良は穏やかな声音で問う。
「杜環子さんは、何を作りますか?」
「そらくんが、後先にも使える物……!」
むむむ、む? と、首捻り、未だ思案中であったのがありありと分かる杜環子の様に、双良は愛らしさを覚えながら、僕はオーガンジー風の薄い布にしようかと、と、先に告げる。
「色は……やっぱり白で、縁はレースで飾って清楚でも華やかに」
「なるほど、すとーるですの?」
其の形状で、彼が纏うならばそうではないかと、杜環子が告げれば、ぱちりと瞬いた彼は笑みを零して。
「……え? あはは、勿論、杜環子さん用ですよ?」
ストールでもないですね、と、笑いながら添える彼に、次に瞬き返すのは杜環子の方。
「違いますの?」
――でも、そらくんが使っても素敵そうでしてよ!
想像したなら、とても素敵に思えたから。目の前の彼に力強く伝えて見せれば、その答えも彼女らしくて、双良の笑みはいっそう深まる。
「ふふ、ありがとうございます」
柔らかな笑みで礼を述べれば、そうっと視線を彼女の其れにに合わせて、ひそかごとのよに囁き告げる。
「あなたと離れるつもりはありませんが。僕が居ない時の有事用に」
「あらあら、頼もしいお方だこと、ふふふ!」
決して離れるつもりはないのだと、その意志をも伝えながら、それでいてもしもに備ええてくれる彼の言葉は、響こそ柔らかながら、頼もしく。それがとても、嬉しくて。弾む声で、杜環子は笑み綻んだ。
そうしてふたりはベティさんの元へと歩み寄る。
「あの……内在的な力を籠められる宝石、みたいな物ってありますか?」
できれば青い……夏空の様な色の、と、問いかける双良の言葉に、ベティは少し思案して。
「そうねえ……アマツカグラから取り寄せた、あの玉が合うかしら?」
ちょっと待っていて、と、少し離れて戻ってきた彼の手には、澄んだ空色の水晶玉のような輝石が乗っていた。感謝の言葉と共にその玉を受け取った双良は、その青に己の夢の力を注いでゆく。
杜環子には完成した物を見せたいのだ、と、そう願った双良は仕上げを別の職人と共に行う為、場所を移しゆく。そんな彼を見送ったベティは、杜環子へと向き直り。
「あなたは、どんなものを作りたいの?」
「そうねぇ、わたくしどうしましょう」
思案しながら、浮かべるのは先ほどまでずっと一緒にいた彼のこと。
――……夜空のような貴方。
そうっと瞼を伏せて彼を想い描けば、自ずとイメージが湧き上がる。
「星瞬くことを知る貴方へ、蚕糸の羽織を」
湧き出す言葉が口をついて一度零れれば、あとは溢れるばかり。胸元に大粒の蛋白石と真珠星を刺繍して、襟や裾にも小粒の蛋白石と真珠を散らし夜空の外套を仕上げて。先ほどまで悩んでいたのが噓のよう、彼を想えばこんなにも鮮明に。
そんな杜環子の言葉を、ベティは余すことなく拾い上げてゆく。そして杜環子が望むのは、刺繍した石に身代わりの呪い、布自体に異常無効の呪いを込めたいとの願い。込めるまじないが、彼の身を護るように。それもまた、多様の魔金糸に満ちたこの工房でなら叶うだろう。縫い留める糸に、織りなす布に、呪いを乗せて出来上がるのは、双良の為の外套だ。
完成した外套を綺麗に畳んで抱えた杜環子の元に、製作を終えた双良が戻ってくる。彼に背を向けた状態の杜環子の頭にふわりと乗せられたのは、透けるよに繊細に織られた白き薄布に、星空の如く青き夢の輝石が散りばめられた美しいヴェール。それは、纏う人への全ての攻撃を夢幻に還す、そんな魔法の掛かった護りのヴェールだ。
己の頭に贈られたヴェールにきょとんとした様の杜環子へと、愛らしさと愛おしさを覚えながら、双良は眩げに目を細めて笑み告げる。
「杜環子さん。花嫁さんみたいで、綺麗ですよ」
その言葉に、色々を理解した杜環子の頬が一気に赤へと染め上がる。その様もまた可愛いものだから、双良の笑みはますます深まるばかり。
――こ、これを戦場で!? そんな、もうっ!
真っ赤になって抗議しても、双良は笑むばかりなものだから。赤い顔をそのままに、杜環子は綺麗に畳んだ夜空の外套をそうっと彼へと差し出した。
「わたくしからは、これを……」
「ふふ、可愛い。僕にも? ありがとうございます」
杜環子の手から受け取る外套を広げて見れば、其処に籠る彼女の想いも見えるよう。
――一生大事にしますね。
彼女からの贈り物も、目の前で赤く染まる愛らしい花嫁めく彼女のことも。必ず、と。言葉に籠めて、誓って、双良は幸せに笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵